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セ メ ン ト囘 轉 窯 の 「ヒ ー トバ ラ ン ス 」

の 吟 味 (第1報)
第四九七號 295

セ メ ン ト 囘 轉 窯 の 「ヒ ー トバ ラ ン ス 」の 吟 味 (第1報)

吉 井 豐 藤 丸

The Investigation of "Heat Balances" of the Cement Rotary Kiln. ‡T

By Toyofujimaru Yoshii

Abstract.

1. A notable error of heat balance of the cement rotary kiln hitherto depends upon
mismeasurements and miscalculations of radiation and convection heat losses of the kiln
and cooler shell, chiefly.
Then author measured them by means of "elongation method" , which is contrived
by myself, with a view to make a correct heat balance.
2. The loss due to flue dust, which is ignored as yet, play an important part of heat losses .

3. Author atempt to manifest the calculation method of heat balance in order to popularize
it in practical use, expecting to improve of the kiln conditions and combustion efficiency
of fuel, which is proposed by myself.

緒 言
「入 るを は か つ て 出 づ るを 制 す る」 は 經 濟 の要 諦 な るが 如 く 窯 の熱 經 濟 を は か らん に は 先 そ の 「ヒ ー トバ ラ

ンス 」を 知 ら なけ れ ば な ら ない 。 こ の意 味 か ら從 來 「ヒ ー トバ ラ ン ス 」 の研 究 も少 くな い が そ の研 究 に あた つ

て ま ゝ閑 却 され た る點 及 誤 謬 も亦 少 くは ない 。 次 に示 す もの は其 一例 で あ る 。

Table. 1. Heat Balance of Cement Rotary kiln

(1) Die chemie der hydraulischen Bindmittel.


(2) Portland cement (Meade)
(3) "Zement" 1930 Nr. 14
* Cal/kg of Clinker
, 略 以 下 同樣

即 ダ ス トに よ る熱 損 の無 視, 輻 射 及 對 流 に よ る熱 損 失 研 究 の不 充 分 な り しが 爲 「ヒー トバ ラ ンス 」 の作 製 に

あ た り辻 褄 の合 は ぬ 部 分 は 全 部 これ を輻 射 及 對 流 に よ る熱 損 に轉 嫁 した の で あ る。 著 者 は これ ら の點 に つ き吟

味 し新 に 正 しい ヒ ー トバ ラ ンス を作 つ て見 た い と思 ふ 。

A 乾 式 囘 轉 窯 の ヒ ー トバ ラ ン ス の 計 算

本 計 算 は3.03m×49.4mの 窯 の 順 調 な る場 合 に つ き試 驗 し其 結 果 に 基 き外 氣15℃ を基 準 と して 計 算 した る
296 吉 井豐 藤 丸 第 四二集

もの に して 其 時 の原 料 石 炭 ク リ ンカ ー等 の成 分 及 使 用 量 は 次 の如 し。
Table 2.

セ メ ン トー樽 を170kg.と しク リ ンカ ー165kg.石 膏5kg.使 用 す る もの と し ク リン カ ーに 對す る 石 炭 の使

用 量 は重 量 に て23.59%即 ク リン カ ー1kg當 りの使 用 熱 量 は0.2359×7340=1731.5Cal.な り。

又 原 料 を燒 成 す る場 合 に は原 料 中 の灼 熱 減量 が 逃 げ る外 に ダ ス トと して飛 ぶ もの あ り, 同 時 に又 燒 成 用 炭 の

灰 分 が これ に 加 は る も の に して其 割 合 は 下 の 如 し。

原 料 燒成物 石炭 灰 分 ダスト ク リン カ ー
1.6674kg→1.0838〃+0.0212〃-0.1050〃=1.000〃

1. ク リン カ ー燒 成 に要 す る 熱

上 に 示 す が 如 く1kgの ク リン カ ーを燒 くに 要 す る 原 料 は1.6674kgに して これ を 更 に粘 土, 石 灰 石 及 鐵 鑛

等 の各 原 料 成 分 に 擴 げ る時 は其 内 譯 は 次 の如 くな る。

Table. 3

Chemical ingredients of

raw materials required

per Kg of Clinker.

a. CaCO3の 加 熱 及 分 解 に要 す る熱

CaCO3の 分 解 温 度 は其 ア トモ ス フエ ヤ ーに よつ て異 り周 圍 のCO2ガ ス の一 定 壓 力 下 に於 て の み分 解 温 度 は

一 定 な り從 而窯 の條 件 に應 じてCaCO3の 分 解 され る温 度 に も多 少 の差 は あ れ ど も此 窯 に 於 ては800℃ 前 後に

於 て 大 部 分 のCaCO3が 分 解 さる ゝ もの と考 へ ら る ゝが 故 に 今 其 平 均 分解 温 度 を800℃ と して 計 算 す る 。

CaCO3を15°-800℃ 迄 加 熱 す るに 要 す る熱 量 はA. Magnus氏 に よれ ば其 平 均 比 熱 は0.267な る故

1.1968kg×0.267×(800°-15°)=250.8Cal.な り

次 にCaCO3の 分 解 に 要 す る 熱 量 はG. Martin(1) 氏 の 例 に よれ ば 下 の 如 し 。

(1) Chem. Eng & Thermodynamics applied to the Cement rotary kiln p. 8-3.
セ メ ン ト囘 轉 窯 の 「ヒ ー トバ ラ ン ス 」の 吟 味 (第1報)
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Q800℃=-379.2Cal

∴ 1.1968×379.2=453.8Cal

合 計250.8+453.8=704.6Cal.な り。

b. MgCO3の 加 熱 及 分 解 に 要 す る熱

MgCO3は 平 均 約650℃ に 於 て分 解 す る もの と考 へ ら る ゝ故 それ 迄 に加 熱 す るに 要 す る熱 量 は

.0376kg×(650-15)×0.24S.H.(2)=5.7Cal.

又Meacle氏 に よ れ ば 其 分 解 に要 す る潜 熱 は1282B.T.U/lb=712Cal/kgな る故

712×.0376kg=26.8Cal.

又 一 旦 分 解 され たMgOを800℃ 迄 熱 す る に 要 す る熱 量 は

.018kg×(800-650)×0.222(3)=0.6Cal

合計 5.7+26.8+0.6=33.1Cal.な り。

c. CaOを800℃ 迄 熱 す る に 要 す る熱

メ ラ ー 氏 に よ れ ばCaOの1mol.を θ°.C.に 熱 す る に 要 す る 熱 量 は 次 式 に て あ ら は さ る 。

11.4+0.001× θ

此 式 よ り計 算 す れ ばCaOの15° ∼800℃ に於 け るM.S.H(4)=0.2109な り。

∴ .0743kg×(800°-15°)×0.2109=12.3Cal

d. Fe2O3を800℃ 迄 熱 す る に要 す る 熱

J. W. Richards氏 に よれ ばFe2O3の0°-t℃.に 於 け るMS.Hは 次 式 に て あ ら は さ る。

M.S.H=0.1456+0.000188t

從て 15°∼800℃.に 於 け るM.S.H=0.2988に して 其 所 要 熱 量 は

0.0268×0.2988×(800-15)=6.3Cal.と な る。

e. カ オ リ ン の加 熱 及 分 解 に 要 す る 熱

Martin氏 に よ れ ば カ オ リ ン1lb.を 分 解 して800℃.迄 熱 す る に 要 す る 熱 は633.5B.T.U/lb=352.0Cal/kg. な

り。

∴ 352×0.141=49.6Cal.

f. 含 水 珪 酸 の 加 熱 及 分解

Martin氏 に よれ ば 含 水 珪 酸 (5%の 水 分 含 有 の 場 合) 1lb.を 分 解 して800℃.迄 熱 す る に 要 す る熱 は439.9B.

T.U/lb.=244.4Cal/kg.な り。

∴ 244 .4×182.2=44.5Cal.

g. ク リ ン カ ーを (遊 離 石 灰 も含 む) 800°-1450℃.迄 熱 す る に要 す る熱

Harrison氏 に從 へ ば ク リ ン カ ー の 平 均 比 熱 は 次 式 に て あ ら は さ る 。

Q=0.1754t+139144×10-9t2-125×10-9t3+4685×10-14t4.

tに1450℃ 及800℃ を 夫 々 代 入 して 其 差 を も と む れ ば

(2) by. 2 A. S. Herschel.

(3) by. Marks Handbook.

(4) M. SH. 平 均 比 熱 の 略
吉 井 豐藤 丸 第 四二集
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Q1450∼800=188.3(centigrade heat units) とな る 。

∴ M.S.H(800° ∼1450℃)=Q/t=188.3/1450 -800=0.290

∴ 1kgの ク リ ン カ ー を800℃ →1450℃ に熱 す るには

1×(1450-800)×0.290=188.3Cal.を 要 す。

h. ク リ ンカ ー の發 熱 反 應

Nacken氏 に よれ ば 其 發 熱 量 は100.0Cal/kg.Cな り。

i. ク リン カ ー の冷 却 に よ る囘 收 熱

1450℃ の ク リ ン カ ー が1250℃ (窯 出 口 に 於 け る温 度) 迄 冷 却 され る故 其 囘 收 熱 量 はHarrison氏 の式 に よ

つ て 計 算 す れ ば 次 の 如 し。

Q1450∼1250℃=66.0Cal/kg.Cl

j. 原 料 の分 解 に よつ て生 ず る瓦 斯 の もつ熱 量

k. ク リ ン カ ー の廢 熱 に よ り ク ーラ ー内 に て空 氣 が 豫 熱 され て

囘 收 さ る ゝ 熱 量=153.1Cal/kg.Cl. (詳 細 後 出)

故 に ク リ ン カ ー1kg.を や くに 要 す る 正 味 の 熱 量 (Qd) は

Qd.=a+b+c+d+e+f1
.0838(=原 料 燒 成 物 重 量kg/kg.Cl)

=784.6+188.3-(100.0+66.0+113.2+153.1)=540.6Cal/kg.Cl.な り。

2. ク リ ン カ ー の もつ 廢 熱

ク リ ン カ ー が ク ー ラ ー か ら 出 る 温 度 は 平 均385℃ な る 故 其 中 に 含 ま る ゝ熱 量 はQ385∼15=79.4Cal/kg.Cl.な

り。
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3. ク ー ラ ー の セ ル か ら逃 げ る熱 及 豫 熱 空 氣 に よ る 囘 收 熱

著者の考 案 にか ゝる 『
線膨脹法(1)』
に よりセルの温度を も とめ其輻射及對流 に よる熱損 を算出す るこ と下 の如
し。

又 ク リ ン カ ー が ク ー ラ ー 入 口 と 出 口 に 於 て 保 有 す る 熱 量 の 差 はQ1250∼385°=306.9-82.1=224.8Cal/kg.Cl.に し

て こ れ よ り上 の 輻 射 及 對 流 に よ る 熱 損 を 差 引 た る224.8-71.7=153.1Cal.が 豫 熱 空 氣 と して 囘 收 さる ゝこ と ゝ

な る。

4. 窯 の セ ル か ら 失 は る ゝ熱 量

著 者 の曩 に 研 究(2)
せ し と こ ろに よれ ば 之 に フ ッ ド及 窯 尻斷 面 よ り逃 げ る もの を 加 へ15264Cal/bbl即15264/

165=92.6Cal/kg.Cl.な り。

5. 窯 に供 給 さ る外 氣 の もつ 熱

ク ー ラ ー 尻 に 於 け る 空 氣 の 温 度 は 平 均20℃.な り 故 に 其 もつ 熱 量 は1.9381m3×0.241S.H×(20°-15°)=2.3Cal/

kg.Cl.な り。

6. 燒 成 用 炭 の 温 度 よ り來 る 熱 量

0.247(S.H)×0.2359kg×(67°-15°)=3.0Cal/kg.Cl.

7. 窯 入 原 料 の温 度 よ り來 る熱

1.6674kg×0.197×(55°-15°)=13.1Cal/kg.C

(原 料 のM.S.H=0.194+0.000077t)

8. ダ ス トに よ り て 失 は る ゝ熱

煙 道 及 ボ イ ラ ーま は り (こ の窯 は 餘 熱 ボ イ ラ ー を 附 屬 す) に て 沈 澱 す る ダ ス トは 燒 出 ク リンカ ー の 目方 の

約3%.收 塵 室 に て 沈澱 さ る ゝ もの約13.8%.な り而 して ダ ス トの温 度 は 廢 ガ ス温 度 と同 一 な りと見 做 し うるが

故 に 計 算 の結 果46.4Cal.と な る。 (詳 細 後 出)

又 ダ ス トは 一 部 分 や け て 居 る故 化 學 的 ヱ ネル ギ ー を保 有 す 。 即 ダ ス トは 窯 内 に て 概 ね800℃ 以下熱處理 を

うけ た る も の と考 ふ べ く且 ダ ス ト中 の殘 存 灼 熱 減 量 よ り推 せ ばCaCO3は 其 約71%だ け やかれて居 ること ゝ

な り1. のa. b. e. fの 項 と同樣 の計 算 を行 へ ば ダ ス ト中 に 保 有 さ る ゝ化 學 的 エ ネ ル ギ ーは41.7Cal/kg.Cl.と

な る。

9. 廢 ガ ス の も つ 熱

a. 原 料 か ら くる ガ ス

CaCO3中 のCO2 1196.8g×.44=526.6g

MgCO3 〃 CO2 37.6〃 ×44/84


.32=

然 るに 收 塵 室 へ 分 解 せ ず に とぶCaCO3中 のCO2分 は次 の如 し。

(1)
本 誌No. 461 (昭 和6年5月) 及Rock. Products Vol Ⅹ Ⅹ Ⅹ Ⅴ No. 4の 著者 報 文 參 照
(2)
吉 井 豐藤 丸 第四二集
300

而 してCO2 1l (0.℃ 760m/m) の 目 方 は1.9632gな る故 其 容 積 は

と な る,

b. カ ホ リ ン か ら く る 水 蒸 氣=19.6g
含 水珪酸

c. 石 炭 の燃 燒 に よ る ガ ス

先 この石 炭1000gが 燃 え た場 合 の瓦 斯 量 を もとむ べ し。

序に後章に於て必要 ある故此石炭 中の炭素 の全部が不完 全燃 燒をな して一酸化炭素 を生 じたる場合 のガス量


を計算 し一括表示す るこ と下 の如 し。
Table. 4 Gasses from Coal 1kg

(1) n-m3はm3/0℃. 760m/mの 略 以 下 同樣


セ メ ン ト囘 轉 窯 の「 ヒ ー トバ ラ ン ス 」の 吟 味 (第1報 ) 301
第 四九七號

而 して セ メ ン ト一 樽 (ク リンカ ー165kg.) に 付38.92kgの 石 炭 を使 用 せ し故 ク リンカ ー1kgに 對 す る生 成

ガ ス量 は 次 の如 し。

石 炭 の燃 燒 に よる もの

原料 中 の 石灰 石 か らのCO2
カオ リ ンか らの 水蒸 氣
計=2.2138n-m3

然 るに本試驗 中は石炭 の 完 全燃燒 を保證す る爲廢 ガ スが常 に約1%の 遊離 酸素を含 む樣に 調整せ し故其場

合 のガス容積 及成 分は次の如 し。
Fig 1.
過剩空氣 mean specificheats ofexit gasses
of cement iln
故に

Table 5.

Chemical compositions of kiln exit gasses

次 に 廢 ガ ス の比 熱 は其 ガス成 分 に よ る もの に して 詳 細 な

る計 算 の結 果 これ をFig. 1に 示 せ り。

Table 6.

Mean specific heats of gasses at const•Œ press•Œ ln-m3

10. ヒ ー トバ ラ ソ ス の 總 括

以 上 を 綜 合 して 熱 量 の受 拂 の計 算 を行 へ ば差 引923.9Cal. の熱 量 が 廢 ガ ス及 其 中 に 浮 游 す るダ ス トの保 有 す

べ き 熱 な り。 而 して 廢 ガ ス トと ダ ス トとは同 温 度 と見 做 す べ く今 此 温 度 をx℃ とせば 次 の式 を得 べ し。

V.S0.(x-15°)+D.Sd:(x-15°)=Qg (1)

∴ x=Qg/V.S0+D.Sa+15
302 吉 井豐 藤 丸 第 四二集

即 Fig 2.
eat tlce (dryprcess
但 Qg: 廢 ガ ス 及 ダ ス ト中 に 含 ま る ゝ熱 量 (Cal)

V: 廢 ガ ス の容 積 (n-m3)

S0: 此 廢 ガ ス 中 に1%のO2を 含 む 場 合 の恒

壓 平均 比 熱 (15°∼1000.7℃)

D: ダ ス トの 重 量kg/kg.Cl.

Sd: ダ ス トの 平 均 比 熱

故 に廢 ガ スの もつ 熱量 は

2.3244×0.383×(1000.7-15)=877.5Cal.

ダ ス トの も つ 熱 量 は

0.168×0.28×(1000.7-15)=46.4Calな り。

合 計 923.9″

上 の 計 算 よ り得 た る廢 ガ ス の温 度 は窯 か ら の逃 口 に於 け

る温度 に して (エ ヤ シ ール か ら の リー ケ ー ジ其 他 輻 射 熱 損

等 の爲 に所 謂 キル ンハ ウ シ ングに於 け る ガ ス温 度 は これ よ

り も5∼10%低 き を常 とす) 計 算 の結 果 と數 次 の 實 測 とは

よ く近 似 す るが 故 に 此 ヒ ー トバ ラ ンスが 正 しき こ とを 證 す るに 足 る。

以上 の結果 を總 括 して表 示すれば次の如 し。

11. 石 炭 の 燃 燒 効 率

以 上 は 廢 ガ ス 中に1%の 酸 素 を含 む場 合 の ヒ ー トバ ラ ンス な り。 然 れ ど も 更 に 理 想 を い ふ な らば 『全 々過

剩 空 氣 を用 ふ る こ とな く して 石 炭 が 完 全 燃燒 す る』 こ とが 望 ま しい 。 著 者 は か ゝる場 合 を 『理 想 燃 燒 』 と名 づ

け 今 そ の場 合 の ヒー トバ ラ ン スを 算 出 せ ん 。

a. 石 炭 が 理 想 燃 燒 を な した る場 合

廢 ガ スの 温 度 は 一 の窯 の順 調 な る場 合 に は 常 に一 定 特 有 の もの と考 ふ べ きが 故 に前 同樣 (1000 .7℃) と し前

の場 合 (1%のO2を 含 む) よ り も石 炭 がxkg/kg.Cl. だ け節 約 され た と假 定 す る

然 る時 は次 の式 を 得 。

〔(c-x1)Vc+Vr〕S.(T-t)=(Q0-x1H) (2)

但 C =石 炭 使 用 量kg/kg.Cl (廢 ガ ス温 度T°. C. そ の 中 に1% O2を 含 む)

x1 =理 想 燃 燒 に よつて 完 全燃 燒 (1% O2含 有) の 場 合 よ り も 節 約 され る 石 炭 量 (kg/kg .Cl)

Vc =理 想 燃 燒 の 場 合 の 燃 燒 ガ ス量n-m3/kg .Coal.

Vr =原 料 か ら 出 る ガ ス 量n-m3/kg.Cl.

S =理 想 燃 燒 の場 合 の廢 ガ スの平 均 恒壓 比 熱 (at∼T° .C)

T =廢 ガ ス 温 度 (℃)

t =外 氣温度 (℃)
セ メ ン ト囘 轉 窯 の 「ヒ ー トバ ラ ン ス 」の 吟 味 (第1報) 303
第 四九七號

Q0=廢 ガ ス (1% O2含 有) 中 の熱 量 (Cal)

Qc=石 炭發熱量 (Cal/kg)

即 理 想 燃 燒 を な せ ば0.0083kg/kg.Clの 石 炭 が 節 約 され て

(0.2359-0.0083)×7340=1670.6Cal/kg.Clに て足 る こ と ゝな る。

今 理 想燃 燒 の場 合 の石 炭 の燃 燒効 率 を100%と し1%の 過 剩 酸 素 を用 ゐて 完全 燃 燒 した る場 合 の 石 炭 燃 燒効

率 をE1と せば

E1=100(c-x1)/c=100×0.2276/0.2359=96.48%と な る

b. 石炭 が 不 完 全 燃 燒 を な し廢 ガ ス 中 に1%のCOを 含 む場 合

若 し又 空 氣 が 不 足 した る場 合 に は廢 ガス 中 に はCOガ スが 殘 り明 に 不 經 濟 に して今 假 に1%のCOを 含む

場 合 に つ き計 算 を試 み ん 。

但 廢 ガ ス温 度 は前 同樣 (1000.7℃) と し1kgの ク リン カ ーをや くに (x+y)kgの 石 炭 を 使 用 し内xkgが 完

全 燃燒 を な し (C→CO2)ykg. が 不 完 全 燃 燒 を な し (C→CO) た り と假 定 す 。

然 る時 は次 の式 を得

(3)

(x2.Vc+y.Vm+Vr).Sm.(T-t)=x2.Qc+y.Qm+Qr-Qb (4)


V0c=石 炭 中 の 炭 素 が 全 部 不 完 全 燃 燒 し た る 場 合 のCOガ ス の容積 (n-m3/kg.coal)

Vm=同 上 の場 合 の燃 燒 ガス總 量 (n-m3/kg.coal)

p=廢 ガ ス 中 のCOガ ス のVol′%

Qm=石 炭 中 の 炭 素 が 全 部 不 完 全 燃 燒 した 場 合 の 發 熱 量 (Cal/kg.coal)

Qr=原 料, 石 炭, 所 要空 氣 の 温度 か ら くる總 熱量 (Cal/kg.Cl)

Qb=所 要 總 熱 量 と廢 ガ ス 中 の 熱 量 との 差 (Cal/kg.Cl)

x2=完 全 燃 燒 せ し石 炭 量kg/kg.Cl.

y=不 完 全 燃 燒 せ し石 炭 量kg/kg.Cl.

Sm=廢 ガ ス (1% CO含 有) の恒 壓平 均 比 熱 (@T-t℃)

Qc, Vc, Vr, T及tは 本 節aの 場 合 と 同 樣 とす

上 式 に それ ぞ れ數 をあ ては むれ ば

次 にx2=0.2233と な る 。
304 近 藤淸 治 ・山 内 俊 吉 第四二集

故 に 此 場 合 の 石 炭 使 用 量 は0.2233+0.0157=02390kg/kg.Cl 即

0.2390×7340=1754.3Cal′/kg.Clに 相 當 し理 想 燃 熱 に對 す る 此 場 合 の 石 炭 燃 燒 効 率E2は

1670.6
E2= ×100=95.23%と な る。
/1754.3

Martin氏 は其 著書の中 にセメ ン ト囘轉窯 の石炭燃 燒に就 て論 じ繁雜 なる式 を與へ て廢 ガス中に1%の 過剩

酸 素が存在す る時 は使用 石炭量 の約1% (但廢 ガス温度580℃ に於 て) の損失又COが1%存 在す る場合に

は廢 ガス温 度の如 何に拘は らず約5.84%の 損失 な りとのべ て居 る。

然 れ どもこれは前提 に於て既 に大 なる錯 誤があ り其他に も首肯 され ない點が ある。從て余 の結果 とは甚 しき

逕庭 があ る。い づれ機會 を見て詳 しく論詳 を試 みて見 たい と思ふ。

兎 もあれ石炭 の不 完全燃燒 の場合 は も とよ り過剩 なる空 氣を用ふ る場 合 も亦不經濟 に して吾 人は最善 の注意

を拂 つて石炭 の燃燒 効率を100%に 接近せ しむ る樣努 めね ばな らぬ。

而 して 實 測 の結 果や ゝもすれば 石炭 の燃 燒効率が100%を 超 える場合 なきに しもあらず。然れ どもこれ は

石炭焚 燒 の技術 に よる ものにあ らず して測定 の誤差 にあ らざれ ば即窯 の條件が明 に改善 され たる證査 にて此 場

合にはそ の因つて來 る原因を探 究 して新に改善 され た窯 の條件 に應 ずる ヒー トバラ ンスを作製 して焚燒技 術に

よ る石炭 の 燃燒効率 はあ くまで100%迄 漕 つける樣心がけねば ならない。 (昭和8年12月 受理)

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