You are on page 1of 63

4 申立ての理由

(1)申立ての理由の要約
ア 特許法第29条第1項第3号、同条第29条第2項(特許法第113条第
1項第2号)

求 本件特許発明 証 拠

甲第1号証:米国特許公開2008/0219
578号公報

A 変換係数ブロックを A・「本発明は、コンテキストベースのバイナ
データストリームに符 リ算術符号化および復号化のための方法およ
号化するための装置で び装置を提供」([0027])
あって、前記装置は、 ・「エントロピー符号化ユニット1340は、
所定のサイズの残差ブロックの単位でコンテ
キストベースのバイナリ算術符号化を実行
し、それによってビットストリームを生成す
る。」([0084])
・なお、残差ブロックは変換係数ブロックであ
る(例えば周知技術を示す甲第2号証86頁)

B コンテキスト適応エ B・「H.264は、圧縮効率が向上した算術
ントロピー符号化を介 符号化手法であるコンテキスト適応型バイナ
してシンタックス要素 リ算術符号化(CABAC)を使用します。
9 を前記データストリー CABACは、シンボルの確率を使用してデ
ムに符号化するように ータを圧縮するエントロピー符号化方式であ
構成され、 る。」([0006])
・「エントロピー符号化ユニット1340は、
所定のサイズの残差ブロックの単位でコンテ
キストベースのバイナリ算術符号化を実行
し、それによってビットストリームを生成す
る。」([0084])
・図1及び図14では、シンタックス要素が入
力され、コンテキストベースのバイナリ算術
符号化装置1400がコンテキスト適応エン
トロピー符号化を行い、ビットストリームを
出力している。(図1、図14)

C 各々の前記シンタッ C・「図3Bにおいて、有意マップ32は、4
クス要素が、前記変換 ×4残差ブロック内の係数のうちの各有意係
係数ブロック内の対応 数を1として表現し、ゼロの値を有する各非
する位置に関して、有 有意係数を0として表現することによって得

2/63
意変換係数が存在する られる。」(図3、[0018][0019])
かどうか、および前記
変換係数ブロック内の
前記有意変換係数の値
に関する情報を示し、

D 前記装置が、複数の D・「たとえば、4×4の残差ブロックがジグ
走査順の中から決定さ ザグスキャン順序でスキャンされると仮定す
れた走査順で前記シン ると、4×4の残差ブロックの各係数は、そ
タックス要素を前記デ のスキャン順序に従うスキャンインデックス
ータストリームに符号 1~16のいずれかで示される位置に存在す
化するように構成さ る値として定義される。」([0052])
れ、 ・「図7の残差ブロック1に示されるように、
ジグザグスキャン順序でスキャンされ、有意
マップ81~84はコンテキストベースのバ
イナリ算術符号化がされている。」([0054])

E 前記装置が、前記変 E・表1には、残差ブロックのサイズ毎に異な
換係数ブロックのサイ るコンテキストが適用されることが記載され
ズ、前記変換係数ブロ ている。([0013])
ック内の前記シンタッ ・「現在の残差ブロックの有意マップを符号化
クス要素の位置、およ するために、以前の残差ブロックの対応する
び前記シンタックス要 係数が有意係数である場合と、対応する係数
素の前記位置の近隣に が非有意係数である場合とを分離する。そし
おいて以前に符号化さ て、異なるコンテキスト、すなわち、異なる
れた前のシンタックス 確率モデルが適用される。」([0063])
要素に関する情報に少 ・「現在の残差ブロックの有意マップを符号化
なくとも基づいて各々 するためのコンテキストが決定されるときに
の前記シンタックス要 考慮される、以前の残差ブロックの有意マッ
素について選択された プを決定するために、現在の残差ブロックの
コンテキストを、各々 以前に符号化された1つの残差ブロックの有
の前記シンタックス要 意マップ、または以前に符号化された少なく
素のコンテキスト適応 とも2つの残差ブロックの有意マップ、また
エントロピー符号化に は現在の残差ブロックの上または左に位置す
おいて、使用するよう る2つの隣接する残差ブロックの有意マッ
に構成される、装置。 プ、をそれぞれ使用することができる。」
([0067][0068])
・有意マップは有意係数の位置を示すものであ
る(図3、図11)。
甲第1号証:米国特許公開2008/0219
578号公報

H デ ー タ ス ト リ ー ム に H・「本発明は、コンテキストベースのバイナ
お い て 符号 化 さ れ た 変 リ算術符号化および復号化のための方法およ

3/63
換 係 数 ブロ ッ ク を 復 号 び装置を提供」([0027])
す る た めの 装 置 で あ っ ・図17では、ビットストリームが入力され、
て、 コンテキストベースのバイナリ算術復号化装
置1700がコンテキスト適応エントロピー
復号化を行い、シンタックス要素を抽出し出
力している。(図17)

I コ ン テ キ ス ト 適 応 エ I・「本発明は、コンテキストベースのバイナ
ン ト ロ ピー 復 号 を 介 し リ算術符号化および復号化のための方法およ
て 前 記 デー タ ス ト リ ー び装置を提供」([0027])
ム か ら シン タ ッ ク ス 要 ・図17では、ビットストリームが入力され、
素 を 抽 出す る よ う に 構 コンテキストベースのバイナリ算術復号化装
成 さ れ たデ コ ー ダ で あ 置1700がコンテキスト適応エントロピー
って、 復号化を行い、シンタックス要素を抽出し出
力している。(図17)

J 各 々 の 前 記 シ ン タ ッ J・「図3Bにおいて、有意マップ32は、4×
クス要素が、前記変換係 4残差ブロック内の係数のうちの各有意係数
数 ブ ロ ック 内 の 対 応 す を1として表現し、ゼロの値を有する各非有
る位置に関して、有意変 意係数を0として表現することによって得ら
換 係 数 が存 在 す る か ど れる。」(図3、[0018][0019])
うか、および前記変換係
数 ブ ロ ック 内 の 前 記 有
意変換係数の値を示す、
前記デコーダと、

K 複 数 の 走 査 順 に 基 づ K・「たとえば、4×4の残差ブロックがジグ
い て 決 定さ れ る 走 査 順 ザグスキャン順序でスキャンされると仮定す
で 各 々 の前 記 シ ン タ ッ ると、4×4の残差ブロックの各係数は、そ
ク ス 要 素を 前 記 変 換 係 のスキャン順序に従うスキャンインデックス
数 ブ ロ ック 内 の そ れ ぞ 1~16のいずれかで示される位置に存在す
れ の 位 置に 関 連 付 け る る値として定義される。」([0052])
よ う に 構成 さ れ た ア ソ ・「図7の残差ブロック1に示されるように、
シエータとを備え、 ジグザグスキャン順序でスキャンされ、有意
マップ81~84はコンテキストベースのバ
イナリ算術符号化がされている。」([0054])

L 前記デコーダが、前記 L・表1には、残差ブロックのサイズ毎に異な
変 換 係 数ブ ロ ッ ク の サ るコンテキストが適用されることが記載され
イズ、前記変換係数ブロ ている。([0013])
ッ ク 内 の前 記 シ ン タ ッ ・「現在の残差ブロックの有意マップを符号化
クス要素の位置、および するために、以前の残差ブロックの対応する
前 記 シ ンタ ッ ク ス 要 素 係数が有意係数である場合と、対応する係数
の 前 記 位置 の 近 隣 か ら が非有意係数である場合とを分離する。そし

4/63
以 前 に 抽出 さ れ た 前 の て、異なるコンテキスト、すなわち、異なる
シ ン タ ック ス 要 素 に 関 確率モデルが適用される。」([0063])
す る 情 報に 少 な く と も ・「現在の残差ブロックの有意マップを復号化
基 づ い て各 々 の 前 記 シ するために、現在の残差ブロックの以前に符
ン タ ッ クス 要 素 に つ い 号化された1つの残差ブロックの有意マッ
て 選 択 され た コ ン テ キ プ、または少なくとも2つの残差ブロックの
ストを、前記シンタック 有意マップ、または現在の残差ブロックの上
ス 要 素 のコ ン テ キ ス ト と左にそれぞれ位置する2つの隣接する残差
適 応 エ ント ロ ピ ー 復 号 ブロックの有意マップ、を使用することによ
において、使用するよう ってコンテキストが決定される。」([0093])
に構成される、装置。 ・「現在の残差ブロックの有意マップを復号化
するためのコンテキストが選択されるとき、
コンテキスト選択ユニット1710は、以前
の2つの復号化された残差ブロックの有意マ
ップ、または現在の残差ブロックの上および
左に位置する2つの隣接する以前の残差ブロ
ックの有意マップ、をそれぞれ使用すること
ができる。」([0099])
・有意マップは有意係数の位置を示すものであ
る(図3、図11)。
甲第1号証:米国特許公開2008/0219
578号公報

O デ ー タ ス ト リ ー ム に O・「本発明は、コンテキストベースのバイナ
お い て 符号 化 さ れ た 変 リ算術符号化および復号化のための方法およ
換 係 数 ブロ ッ ク を 復 号 び装置を提供」([0027])
す る た めの 方 法 で あ っ ・図17では、ビットストリームが入力され、
て、 コンテキストベースのバイナリ算術復号化装
置1700がコンテキスト適応エントロピー
復号化を行い、シンタックス要素を抽出し出
力している。(図17)
17
P コ ン テ キ ス ト 適 応 エ P・「本発明は、コンテキストベースのバイナ
ン ト ロ ピー 復 号 を 介 し リ算術符号化および復号化のための方法およ
てシンタックス要素が、 び装置を提供」([0027])
前 記 デ ータ ス ト リ ー ム ・図17では、ビットストリームが入力され、
か ら 抽 出す る ス テ ッ プ コンテキストベースのバイナリ算術復号化装
であって、 置1700がコンテキスト適応エントロピー
復号化を行い、シンタックス要素を抽出し出
力している。(図17)

Q 各 々 の 前 記 シ ン タ ッ Q・「図3Bにおいて、有意マップ32は、4
クス要素が、前記変換係 ×4残差ブロック内の係数のうちの各有意係
数 ブ ロ ック 内 の 対 応 す 数を1として表現し、ゼロの値を有する各非

5/63
る位置に関して、有意変 有意係数を0として表現することによって得
換 係 数 が存 在 す る か ど られる。」(図3、[0018][0019])
うか、および前記変換係
数 ブ ロ ック 内 の 前 記 有
意変換係数の値を示す、
前 記 抽 出す る ス テ ッ プ
と、

R 複 数 の 走 査 順 に 基 づ R・「たとえば、4×4の残差ブロックがジグ
い て 決 定さ れ る 走 査 順 ザグスキャン順序でスキャンされると仮定す
で 各 々 の前 記 シ ン タ ッ ると、4×4の残差ブロックの各係数は、そ
ク ス 要 素を 前 記 変 換 係 のスキャン順序に従うスキャンインデックス
数 ブ ロ ック 内 の そ れ ぞ 1~16のいずれかで示される位置に存在す
れ の 位 置に 関 連 付 け る る値として定義される。」([0052])
ステップと、 ・「図7の残差ブロック1に示されるように、
ジグザグスキャン順序でスキャンされ、有意
マップ81~84はコンテキストベースのバ
イナリ算術符号化がされている。」([0054])

S 前記変換係数ブロッ S・表1には、残差ブロックのサイズ毎に異な
クのサイズ、前記変換係 るコンテキストが適用されることが記載され
数 ブ ロ ック 内 の 前 記 シ ている。([0013])
ンタックス要素の位置、 ・「現在の残差ブロックの有意マップを符号化
お よ び 前記 シ ン タ ッ ク するために、以前の残差ブロックの対応する
ス 要 素 の前 記 位 置 の 近 係数が有意係数である場合と、対応する係数
隣 か ら 以前 に 抽 出 さ れ が非有意係数である場合とを分離する。そし
た 前 の シン タ ッ ク ス 要 て、異なるコンテキスト、すなわち、異なる
素 に 関 する 情 報 に 少 な 確率モデルが適用される。」([0063])
く と も 基づ い て 各 々 の ・「現在の残差ブロックの有意マップを復号化
前 記 シ ンタ ッ ク ス 要 素 するために、現在の残差ブロックの以前に符
に つ い て選 択 さ れ る コ 号化された1つの残差ブロックの有意マッ
ンテキストを、前記シン プ、または少なくとも2つの残差ブロックの
タ ッ ク ス要 素 の コ ン テ 有意マップ、または現在の残差ブロックの上
キ ス ト 適応 エ ン ト ロ ピ と左にそれぞれ位置する2つの隣接する残差
ー復号において、使用す ブロックの有意マップ、を使用することによ
るステップとを含む、方 ってコンテキストが決定される。」([0093])
法。 ・「現在の残差ブロックの有意マップを復号化
するためのコンテキストが選択されるとき、
コンテキスト選択ユニット1710は、以前
の2つの復号化された残差ブロックの有意マ
ップ、または現在の残差ブロックの上および
左に位置する2つの隣接する以前の残差ブロ
ックの有意マップ、をそれぞれ使用すること
ができる。」([0099])

6/63
・有意マップは有意係数の位置を示すものであ
る(図3、図11)。
2.前記近隣から以前に抽 ・「少なくとも1つの以前に復号化された残差
出 さ れ た前 記 前 の シ ン ブロックの対応する係数が0ではない有意係
タ ッ ク ス要 素 に 関 す る 数であるかどうかに応じて、所定のフラグ、
前記情報が、前記前のシ すなわち復号化される現在のブロックの有意
ン タ ッ クス 要 素 の 値 に 係数の位置を示す有意マップ、を復号化する
関連する、請求項1に記 コンテキストが選択される。上述のように、
載の装置。 現在の残差ブロックの有意マップを復号化す
るために、現在の残差ブロックの以前に符号
10.前記近隣から以前に符 化された1つの残差ブロックの有意マップ、
号 化 さ れた 前 記 前 の シ または少なくとも2つの残差ブロックの有意
2 ン タ ッ クス 要 素 に 関 す マップ、または現在の残差ブロックの上と左
る前記情報が、前記前の にそれぞれ位置する2つの隣接する残差ブロ
10 シ ン タ ック ス 要 素 の 値 ックの有意マップ、を使用することによって
に関連する、請求項9に コンテキストが決定される。」([0093])
18 記載の装置。 ・「現在の残差ブロックの有意マップを復号化
するためのコンテキストが選択されるとき、
18.前記近隣から以前に抽 コンテキスト選択ユニット1710は、以前
出 さ れ た前 記 前 の シ ン の2つの復号化された残差ブロックの有意マ
タ ッ ク ス要 素 に 関 す る ップ、または現在の残差ブロックの上および
前記情報が、前記前のシ 左に位置する2つの隣接する以前の残差ブロ
ン タ ッ クス 要 素 の 値 に ックの有意マップ、をそれぞれ使用すること
関する、請求項17に記 ができる。」([0099])
載の方法。 ・有意マップは、例えば値が1である有意係数
や値が0である非有意係数に関連している
(図11)
3.前記近隣から以前に ・「少なくとも1つの以前に復号化された残差
抽出された前記前のシ ブロックの対応する係数が0ではない有意係
ンタックス要素に関す 数であるかどうかに応じて、所定のフラグ、
る前記情報が、前のシ すなわち復号化される現在のブロックの有意
ンタックス要素が有意 係数の位置を示す有意マップ、を復号化する
変換係数の存在を示す コンテキストが選択される。上述のように、
3 位置の数に関連する、 現在の残差ブロックの有意マップを復号化す
請求項1に記載の装 るために、現在の残差ブロックの以前に符号
11 置。 化された1つの残差ブロックの有意マップ、
または少なくとも2つの残差ブロックの有意
19 11.前記近隣から以前に マップ、または現在の残差ブロックの上と左
符号化された前記前の にそれぞれ位置する2つの隣接する残差ブロ
シンタックス要素に関 ックの有意マップ、を使用することによって
する前記情報が、前の コンテキストが決定される。」([0093])
シンタックス要素が有 ・「現在の残差ブロックの有意マップを復号化
意変換係数の存在を示 するためのコンテキストが選択されるとき、
す位置の数に関連す コンテキスト選択ユニット1710は、以前

7/63
る、請求項9に記載の の2つの復号化された残差ブロックの有意マ
装置。 ップ、または現在の残差ブロックの上および
左に位置する2つの隣接する以前の残差ブロ
19.前記近隣から以前に ックの有意マップ、をそれぞれ使用すること
抽出された前記前のシ ができる。」([0099])
ンタックス要素に関す ・「図12に示すように、現在の残差ブロック
る前記情報が、前のシ の有意マップを符号化するために、以前の2
ンタックス要素が有意 つの残差ブロックの対応する係数がすべて有
変換係数の存在を示す 意でない係数である場合(ケース1:0→0
位置の数に関連する、 →0、0→0→1)、以前の2つの残差ブロ
請求項17に記載の方 ックの対応する係数がすべて有意な係数であ
法。 る場合(ケース2:1→1→1、1→1→0)、
および以前の2つの残差ブロックの対応する
係数の1つが有意な係数であり、もう1つは
有意でない係数である場合(ケース3:0→
1→0、0→1→1、1→0→0、1→0→
1)が分割され、異なるコンテキスト、つま
り異なる確率モデルが適用される。より具体
的には、以前の残差ブロックの対応する係数
がすべて重要でない係数である場合(ケース
1)には、空間の相互関係が考慮され、それ
によって現在の残差ブロックの係数も重要で
ない係数である確率がより大きいコンテキス
トモデルが選択される。」([0076][0077])
・図11では、4×4画素のブロックの中に有
意係数を複数有しており、有意マップは、有
意係数の存在を示す位置の数に関連する情報
である。(図11)
4.各々の前記シンタッ ・「残差ブロック内で0ではない有意係数を1
クス要素の前記コンテ として表現し、非有意係数を0として表現す
キストが、前記走査順 ることによって生成された有意マップ81、
にさらに基づいて選択 82、83、および84があると仮定して、
される、請求項1に記 有意マップ81から84の符号化を、今説明
載の装置。 する。図7の残差ブロック1に示されるよう

に、ジグザグスキャン順序でスキャンされ、
12.各々の前記シンタッ 有意マップ81~84はコンテキストベース
12
クス要素の前記コンテ のバイナリ算術符号化がされている。」(図
キストが、前記走査順 7、[0054])
20
にさらに基づいて選択 ・「有意マップは、所定のスキャン順序でスキ
される、請求項9に記 ャンされ、コンテキストベースの算術符号化
載の装置 が実行される。例えば、コンテンツが左側か
ら右側へ、そして上から下へとスキャンされ
20.各々の前記シンタッ るラスタースキャンの場合、図3Aに示され
クス要素の前記コンテ る有意マップが符号化され、11111111101010

8/63
キストが、前記走査順 00というビン文字列がコンテキストベースで
にさらに基づいて選択 符号化される。有意マップを符号化するため
される、請求項17に に、15の異なる確率モデルがsignificant_
記載の方法。 coeff_flagとlast_significant_coeff_flag
に使用される。有意マップを符号化するため
に使用されるコンテキストは、所定のスキャ
ン順序のスキャン位置に従って決定される。
すなわち、従来技術によれば、図3Bに示さ
れる有意マップが符号化されるとき、それぞ
れの係数の位置に従って符号化に使用される
コンテキストが決定される。」([0017]~
[0019])
5.現在のシンタックス ・「少なくとも1つの以前に復号化された残差
要素の前記近隣が、前 ブロックの対応する係数が0ではない有意係
記現在のシンタックス 数であるかどうかに応じて、所定のフラグ、
要素の前記位置に隣接 すなわち復号化される現在のブロックの有意
する少なくとも1つの 係数の位置を示す有意マップ、を復号化する
位置を含む、請求項1 コンテキストが選択される。上述のように、
に記載の装置。 現在の残差ブロックの有意マップを復号化す
るために、現在の残差ブロックの以前に符号
13.現在のシンタックス 化された1つの残差ブロックの有意マップ、
5 要素の前記近隣が、前 または少なくとも2つの残差ブロックの有意
記現在のシンタックス マップ、または現在の残差ブロックの上と左
13 要素の前記位置に隣接 にそれぞれ位置する2つの隣接する残差ブロ
する少なくとも1つの ックの有意マップ、を使用することによって
21 位置を含む、請求項9 コンテキストが決定される。」([0093])
に記載の装置。 ・「現在の残差ブロックの有意マップを復号化
するためのコンテキストが選択されるとき、
21.現在のシンタックス コンテキスト選択ユニット1710は、以前
要素の前記近隣が、前 の2つの復号化された残差ブロックの有意マ
記現在のシンタックス ップ、または現在の残差ブロックの上および
要素の位置に隣接する 左に位置する2つの隣接する以前の残差ブロ
少なくとも1つの位置 ックの有意マップ、をそれぞれ使用すること
を含む、請求項17に ができる。」([0099])
記載の方法。
6.前記位置の数が、可 ・表1には、複数のコンテキストの種類に対し
能性のあるコンテキス て、例えば「0: Luma-Intra16-DC」や「1: Luma-
トインデックスの組を 4x4」というインデックスが設定されている。
6 指すコンテキストイン ([0013])
デックスに対応する、
14 請求項3に記載の装
置。

14.前記位置の数が、可

9/63
能性のあるコンテキス
トインデックスの組を
指すコンテキストイン
デックスに対応する、
請求項11に記載の装
置。
7.前記近隣が、前記シ ・「少なくとも1つの以前に復号化された残差
ンタックス要素の前記 ブロックの対応する係数が0ではない有意係
位置に横方向に隣接す 数であるかどうかに応じて、所定のフラグ、
る少なくとも1つの位 すなわち復号化される現在のブロックの有意
置を含む、請求項6に 係数の位置を示す有意マップ、を復号化する
記載の装置。 コンテキストが選択される。上述のように、
現在の残差ブロックの有意マップを復号化す
8.前記近隣が、前記シ るために、現在の残差ブロックの以前に符号
ンタックス要素の前記 化された1つの残差ブロックの有意マップ、
位置に縦方向に隣接す または少なくとも2つの残差ブロックの有意
7 る少なくとも1つの位 マップ、または現在の残差ブロックの上と左
置を含む、請求項5に にそれぞれ位置する2つの隣接する残差ブロ
8 記載の装置。 ックの有意マップ、を使用することによって
コンテキストが決定される。」([0093])
15 15.前記近隣が、前記シ ・「現在の残差ブロックの有意マップを復号化
ンタックス要素の前記 するためのコンテキストが選択されるとき、
16 位置に横方向に隣接す コンテキスト選択ユニット1710は、以前
る少なくとも1つの位 の2つの復号化された残差ブロックの有意マ
置を含む、請求項13 ップ、または現在の残差ブロックの上および
に記載の装置。 左に位置する2つの隣接する以前の残差ブロ
ックの有意マップ、をそれぞれ使用すること
16.前記近隣が、前記シ ができる。」([0099])
ンタックス要素の前記
位置に縦方向に隣接す
る少なくとも1つの位
置を含む、請求項13
に記載の装置。
(請求項1~21)
⑴ 請求項1~21に係る発明は、甲第1号証に記載された発明もしくは

記載されているに等しい発明と同一である。

⑵ 仮に請求項1~21に係る発明と、甲第1号証記載の発明との間に相

違点があったとしても、請求項1~21に係る発明は、甲第1号証に記

載された発明に基づいて、または甲第1号証に記載された発明と周知技

術に記載された発明に基づいて、出願前に当業者が容易に発明をするこ
とができたものである。

10/63
イ 特許法第36条第6項第1号及び第2号(特許法第113条第1項第4号

本件特許の請求項3、6、11、14、17、19に係る発明は、発明の詳細
な説明に記載されたものではなく、また、明確ではない。

(2)手続の経緯
出願から設定登録に至る経緯は、以下のとおりである。

特許出願日 2018年 7月11日(特願2018-131150号)


原出願日 2011年 4月11日(特願2013-504229号の分割の
分割の分割の分割)
(優先日 2010年 4月13日)
出願公開 2018年12月20日(特開2018-201202号公報)
出願審査請求書 2018年 7月12日
拒絶理由通知書 2019年 8月13日(発送日)
手続補正書 2020年 2月12日
意見書 2020年 2月12日
特許査定 2020年 3月31日(発送日)
特許権設定登録 2020年 5月 7日
特許掲載公報発行 2020年 5月27日(特許第6700341号公報)

(3)申立ての根拠
ア 取消理由1
本件の請求項1~21に係る各特許発明(以下、それぞれ、「本件発明1」~
「本件発明21」といい、これらをあわせて「本件発明」という。)は、甲第1
号証に記載された発明と同一であり、特許法第29条第1項第3号の規定により
特許を受けることができないものであるから、その特許(以下、本件発明1~本
件発明21に係る特許をそれぞれ「本件特許1」~「本件特許21」といい、こ
れらをあわせて「本件特許」という。)は同法第113条第1項第2号に該当

11/63
し、取り消すべきである。

イ 取消理由2
仮に本件発明1~本件発明21と、甲第1号証記載の発明との間に相違点が
あったとしても、本件発明1~本件発明21は、甲第1号証に記載された発明に
基づいて、または甲第1号証に記載された発明と周知技術に記載された発明に基
づいて、出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第
29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特
許1~本件特許21は同法第113条第1項第2号に該当し、取り消すべきであ
る。

ウ 取消理由3
本件発明3、6、11、14、17、19は、本件特許明細書の発明の詳細
な説明中に記載も示唆もされておらず、サポート要件を満たしていないものであ
って、また、明確ではなく、特許法第36条第6項1号及び第2号の規定により
特許を受けることができないものであるから、本件特許3、6、11、14、1
7、19は同法第113条第1項第4号に該当し、取り消すべきである。

(4)具体的理由
ア 本件発明
本件発明1~21は、本件特許第6700341号(以下、「本件特許」
という)の願書に添付した特許請求の範囲記載のとおりであり、本件発明
9、1及び17について構成要件毎の分説は次のとおりである。

(ア)本件発明9
A 変換係数ブロックをデータストリームに符号化するための装置であっ
て、前記装置は、
B コンテキスト適応エントロピー符号化を介してシンタックス要素を前
記データストリームに符号化するように構成され、

12/63
C 各々の前記シンタックス要素が、前記変換係数ブロック内の対応する
位置に関して、有意変換係数が存在するかどうか、および前記変換係数
ブロック内の前記有意変換係数の値に関する情報を示し、
D 前記装置が、複数の走査順の中から決定された走査順で前記シンタッ
クス要素を前記データストリームに符号化するように構成され、
E 前記装置が、前記変換係数ブロックのサイズ、前記変換係数ブロック
内の前記シンタックス要素の位置、および前記シンタックス要素の前記
位置の近隣において以前に符号化された前のシンタックス要素に関する
情報に少なくとも基づいて各々の前記シンタックス要素について選択さ
れたコンテキストを、各々の前記シンタックス要素のコンテキスト適応
エントロピー符号化において、使用するように構成される、装置。

(イ)本件発明1
H データストリームにおいて符号化された変換係数ブロックを復号する
ための装置であって、
I コンテキスト適応エントロピー復号を介して前記データストリームか
らシンタックス要素を抽出するように構成されたデコーダであって、
J 各々の前記シンタックス要素が、前記変換係数ブロック内の対応する
位置に関して、有意変換係数が存在するかどうか、および前記変換係数
ブロック内の前記有意変換係数の値を示す、前記デコーダと、
K 複数の走査順に基づいて決定される走査順で各々の前記シンタックス
要素を前記変換係数ブロック内のそれぞれの位置に関連付けるように構
成されたアソシエータとを備え、
L 前記デコーダが、前記変換係数ブロックのサイズ、前記変換係数ブロ
ック内の前記シンタックス要素の位置、および前記シンタックス要素の
前記位置の近隣から以前に抽出された前のシンタックス要素に関する情
報に少なくとも基づいて各々の前記シンタックス要素について選択され
たコンテキストを、前記シンタックス要素のコンテキスト適応エントロ
ピー復号において、使用するように構成される、装置。

13/63
(ウ)本件発明17
O データストリームにおいて符号化された変換係数ブロックを復号する
ための方法であって、
P コンテキスト適応エントロピー復号を介してシンタックス要素が、前
記データストリームから抽出するステップであって、
Q 各々の前記シンタックス要素が、前記変換係数ブロック内の対応する
位置に関して、有意変換係数が存在するかどうか、および前記変換係数
ブロック内の前記有意変換係数の値を示す、前記抽出するステップと、
R 複数の走査順に基づいて決定される走査順で各々の前記シンタックス
要素を前記変換係数ブロック内のそれぞれの位置に関連付けるステップ
と、
S 前記変換係数ブロックのサイズ、前記変換係数ブロック内の前記シン
タックス要素の位置、および前記シンタックス要素の前記位置の近隣か
ら以前に抽出された前のシンタックス要素に関する情報に少なくとも基
づいて各々の前記シンタックス要素について選択されるコンテキスト
を、前記シンタックス要素のコンテキスト適応エントロピー復号におい
て、使用するステップとを含む、方法。

イ 引用発明の説明
(ア)甲第1号証(米国特許公開第2008/0219578号公報,2008
年9月11日発行)
a 甲第1号証の記載事項
甲第1号証(以下甲1発明明細書という)には、コンテキストベースのバ
イナリ算術符号化および復号化のための方法および装置に関して以下の記
載がある。
① 「本発明は、コンテキストベースのバイナリ算術符号化および復号化のための
方法および装置を提供し、残差ブロックの有意係数の位置を示す有意マップが
符号化されるとき、以前の残差ブロックとの関連を使用するコンテキストモデ

14/63
リングがさらに分離される」([0027])
② 「H.264は、圧縮効率が向上した算術符号化手法であるコンテキスト適応
型バイナリ算術符号化(CABAC)を使用します。CABACは、シンボル
の確率を使用してデータを圧縮するエントロピー符号化方式である。」[0006]
③ 「エントロピー符号化ユニット1340は、所定のサイズの残差ブロックの単
位でコンテキストベースのバイナリ算術符号化を実行し、それによってビット
ストリームを生成する。」([0084])
④ 「図1は、従来技術によるCABAC用の装置を示すブロック図である。H.
264に準拠したエンコード処理では、4×4のサイズの残差ブロックの単位
で離散コサイン変換が実行され、それぞれの4×4残差ブロックに関連してシ
ンタックス要素が生成されます。」([0007])
⑤ 図1

SYNTAX ELEMENT:シンタックス要素
BINARIZER:バイナナライザ
BIT STRING:ビットストリング
CONTEXT MODULER:コンテキストモデラー
REGULAR CODING ENGINE:レギュラー符号化エンジン
BYPASS CODING ENGINE:バイパス符号化エンジン
BITSTREAM:ビットストリーム

15/63
⑥ 図14

QUANTIZED RESIDUAL BLOCK:量子化された残差ブロック


BITSTREAM:ビットストリーム
CONTEXT SELECTION UNIT:コンテキスト選択ユニット
ARITHMETIC CODING UNIT:算術符号化ユニット
STORAGE UNIT:記憶ユニット
SYNTAX ELEMENT:シンタックス要素
⑦ 図17

BITSTREAM:ビットストリーム
CONTEXT SELECTION UNIT:コンテキスト選択ユニット
ARITHMETIC CODING UNIT:算術符号化ユニット
SYNTAX ELEMENT:シンタックス要素

16/63
⑧ 図3

SIGNIFICANT COEFFICIENT:有意係数
SIGNIFICANT MAP:有意マップ
⑨ 「動作220において、ゼロ以外の係数値(以下、有意係数と呼ぶ)が現在の
4×4残余ブロックに存在する場合、有意係数の位置を示す有意マップが符号
化される。有意マップは、有意ビットとend-of-block(EOB)で形成される。
有意ビットは、各スキャンインデックスに従った係数が有意係数であるか0で
あ る か を 示 し 、 significant_coeff_flag[i] で 表 さ れ る 。 こ こ で 、
significant_coeff_flag[i]は、4×4残差ブロックの16個の係数のうちi
番目のスキャンインデックスの係数値が0であるかどうかを示す。図3Aおよ
び3Bは、従来技術による4×4残差ブロックの有意マップを示す図である。
図3Aにおいて、4×4残差ブロック31内の係数のうち、Xでマークされた
位置の係数は、所定の非ゼロ値を有すると仮定される。この場合、図3Bに示
す有意マップ32は、4×4残差ブロック内の係数のうちの各有意係数を1と
して表現し、ゼロの値を有する各非有意係数を0として表現することによって
得られる。有意マップは、所定のスキャン順序でスキャンされ、コンテキスト
ベースの算術符号化が実行される。例えば、コンテンツが左側から右側へ、そ
して上から下へとスキャンされるラスタースキャンの場合、図3Aに示される
有意マップが符号化され、1111111110101000というビン文字列がコンテキスト
ベースで符号化される。有意マップを符号化するために、15の異なる確率モ
デルがsignificant_coeff_flagとlast_significant_coeff_flagに使用される。
有意マップを符号化するために使用されるコンテキストは、所定のスキャン順
序のスキャン位置に従って決定される。すなわち、従来技術によれば、図3B

17/63
に示される有意マップが符号化されるとき、それぞれの係数の位置に従って符
号化に使用されるコンテキストが決定される。」([0017]~[0019])
⑩ 図7

RESIDUAL BLOCK:残差ブロック
⑪ 「スキャンインデックスは、残差ブロック内の各係数の位置を示す指標であり、
所定のスキャン順序に従って、残差ブロック内の係数の位置または有意マップ
のバイナリ値を示す。たとえば、4×4の残差ブロックがジグザグスキャン順
序でスキャンされると仮定すると、4×4の残差ブロックの各係数は、そのス
キャン順序に従うスキャンインデックス1~16のいずれかで示される位置
に存在する値として定義される。」([0052])
⑫ 「例えば図8に示すように、残差ブロック内で0ではない有意係数を1として
表現し、非有意係数を0として表現することによって生成された有意マップ8
1、82、83、および84があると仮定して、有意マップ81から84の符
号化を、今説明する。図7の残差ブロック1に示されるように、ジグザグスキ
ャン順序でスキャンされ、有意マップ81~84はコンテキストベースのバイ

18/63
ナリ算術符号化がされている。本発明によれば、現在の残差ブロックの有意マ
ップのバイナリ値、すなわち、significant_coeff_flag[i]が符号化されると
き、少なくとも1つ以上の以前の残差ブロックの有意マップの対応するバイナ
リ値が0か1かに応じて、現在符号化されている有意マップのバイナリ値0お
よび1を符号化するために使用されるコンテキストが決定される。例えば、有
意マップ4の第1のスキャンインデックス89のバイナリ値である0が符号
化される場合に、以前の隣接するブロックの有意マップ3の第1のスキャンイ
ンデックス88のバイナリ値に対応するかどうかに従って、異なるコンテキス
トが選択される。ここで、MPSとLPSの確率値に基づいてコンテキストが
形成され、以前の有意マップの対応するスキャンインデックスに対応するバイ
ナリ値と同一の、バイナリ値がMPSになる。。つまり、前有意マップの対応
するスキャンインデックスのバイナリ値が0の場合、0がMPSになり、また、
もし対応するスキャンインデックスのバイナリ値が1の場合、1がMPSにな
る。」([0054])
⑬ 「H.264標準の草案によると、現在符号化されるブロックは、以下の表1
に示すような、およそ5つの種類のいずれかに分類されます。それぞれの種類
に属するブロックに関連するシンタックス要素を符号化するために、異なるコ
ンテキストが適用されます。

19/63
Block types:ブロックの種類
# of coeff.:係数の数
Context Type:コンテキストの種類」([0013])
⑭ 「本発明によれば、現在の残差ブロックの有意マップを符号化するために、以
前の残差ブロックの対応する係数が有意係数である場合と、対応する係数が非
有意係数である場合とを分離する。そして、異なるコンテキスト、すなわち、
異なる確率モデルが適用される。」([0063])
⑮ 図11

SIGNIFICANCE MAP OF CURRENT RESIDUAL BLOCK(100):現在の残差ブロック


の有意マップ(100)
SIGNIFICANCE MAP OF PREVIOUS RESIDUAL BLOCK 1(110):以前の残差ブロッ
ク1の有意マップ(110)
SIGNIFICANCE MAP OF PREVIOUS RESIDUAL BLOCK 2(120):以前の残差ブロッ
ク2の有意マップ(120)
SIGNIFICANCE MAP OF PREVIOUS RESIDUAL BLOCK 3(130):以前の残差ブロッ
ク3の有意マップ(130)
⑯ 「図11は、本発明の実施形態に従って、現在の残差ブロックの有意マップが
符号化されるときに使用されるコンテキストを決定するプロセスを示す詳細

20/63
図である。上述のように、現在の残差ブロックの有意マップを符号化するため
のコンテキスト[が決定される]ときに考慮される、以前の残差ブロックの有意
マップを決定するために、現在の残差ブロックの以前に符号化された1つの残
差ブロックの有意マップ、または以前に符号化された少なくとも2つの残差ブ
ロックの有意マップ、または現在の残差ブロックの上または左に位置する2つ
の隣接する残差ブロックの有意マップ、をそれぞれ使用することができる。」
([0067][0068]、なお、原文では[が決定される]が抜けているが、[0067]を見
ればこの抜けは明らかであり補って翻訳した。)
⑰ 「動作1610において、少なくとも1つの以前に復号化された残差ブロック
の対応する係数が0ではない有意係数であるかどうかに応じて、所定のフラグ、
すなわち復号化される現在のブロックの有意係数の位置を示す有意マップ、を
復号化するコンテキストが選択される。上述のように、現在の残差ブロックの
有意マップを復号化するために、現在の残差ブロックの以前に符号化された1
つの残差ブロックの有意マップ、または少なくとも2つの残差ブロックの有意
マップ、または現在の残差ブロックの上と左にそれぞれ位置する2つの隣接す
る残差ブロックの有意マップ、を使用することによってコンテキストが決定さ
れる。」([0093])
⑱ 「より具体的には、コンテキスト選択ユニット1710は、以前の残差ブロッ
クの係数が有意係数である場合、現在の残差ブロックの対応する係数が有意係
数であることを示すフラグの確率がより高いコンテキストを選択する。そして、
もし、以前の残差ブロックの係数が非有意係数であった場合、コンテキスト選
択ユニット1710は、現在の残差ブロックの対応する係数が非有意係数であ
ることを示すフラグの確率がより高いコンテキストを選択する。」([0098])
⑲ 「ここで、現在の残差ブロックの有意マップを復号化するためのコンテキスト
が選択されるとき、コンテキスト選択ユニット1710は、以前の2つの復号
化された残差ブロックの有意マップ、または現在の残差ブロックの上および左
に位置する2つの隣接する以前の残差ブロックの有意マップ、をそれぞれ使用
することができる。」([0099])
⑳ 「図12に示すように、現在の残差ブロックの有意マップを符号化するために、

21/63
以前の2つの残差ブロックの対応する係数がすべて有意でない係数である場
合(ケース1:0→0→0、0→0→1)、以前の2つの残差ブロックの対応
する係数がすべて有意な係数である場合(ケース2:1→1→[1]、1→1→
0)、および以前の2つの残差ブロックの対応する係数の1つが有意な係数で
あり、もう1つは有意でない係数である場合(ケース3:0→1→0、0→1
→1、1→0→0、1→0→1)が分割され、異なるコンテキスト、つまり異
なる確率モデルが適用される。より具体的には、以前の残差ブロックの対応す
る係数がすべて重要でない係数である場合(ケース1)には、空間の相互関係
が考慮され、それによって現在の残差ブロックの係数も重要でない係数である
確率がより大きいコンテキストモデルが選択される。」
([0076][0077]、なお、
原文ではケース2で1→1→0が2度重複して出てくるが、このうちの1つは
図12及び文脈から1→1→1の誤記であることが明らかであるため、1→1
→[1]と訂正して翻訳した。)
㉑ 図8

SIGNIFICANCE MAP 1 (81):有意マップ1(81)


SIGNIFICANCE MAP 2 (82):有意マップ2(82)
SIGNIFICANCE MAP 3 (83):有意マップ3(83)
SIGNIFICANCE MAP 4 (84):有意マップ4(84)

22/63
b 甲第1号証に記載された発明
以上の記載によれば、甲第1号証には、符号化について以下の発明(以下、
「甲1発明1」という。)が記載されている。
ⅰ)ビットストリームにおいてDCTと量子化がされた残差ブロックを符号
化又は復号化するための装置であって、
ⅱ)コンテキストベースのバイナリ算術符号化装置が、コンテキスト適応エ
ントロピー符号化を介してシンタックス要素をビットストリームに符号化
し、
ⅲ)シンタックス要素の一つである有意マップが、残差ブロック内の対応す
る位置に関して、有意変換係数が存在するかどうか、および残差ブロック
内の有意変換係数の値に関する情報を示し、
ⅳ)所定のスキャン順序に基づいて決定されるスキャン順でシンタックス要
素をデータストリームに符号化し、
ⅴ)残差ブロックのサイズ、残差ブロック内のシンタックス要素の位置、お
よび現在の残差ブロックの上と左の隣接する残差ブロックであって以前に
符号化された残差ブロックのシンタックス要素、に基づいてコンテキスト
が選択され、当該コンテキストがシンタックス要素のコンテキスト適応エ
ントロピー符号化において、使用される、装置。

また、甲第1号証には、復号化について以下の発明(以下、「甲1発明2」
という。)が記載されている。
ⅵ)ビットストリームにおいてDCTと量子化がされた残差ブロックを符号
化又は復号化するための装置であって、
ⅶ)コンテキスト適応エントロピー復号を介してビットストリームからシン
タックス要素を抽出するように構成された復号化装置であって、
ⅷ)シンタックス要素の一つである有意マップが、残差ブロック内の対応す
る位置に関して、有意変換係数が存在するかどうか、および残差ブロック
内の有意変換係数の値に関する情報を示し、

23/63
ⅸ)所定のスキャン順序に基づいて決定されるスキャン順でシンタックス要
素であるそれぞれの変換係数を残差ブロック内のそれぞれの画素の位置に
関連付けるように構成され、
ⅹ)残差ブロックのサイズ、残差ブロック内のシンタックス要素の位置、お
よび現在の残差ブロックの上と左の隣接する残差ブロックであって以前に
符号化された残差ブロックのシンタックス要素、に基づいてコンテキスト
が選択され、当該コンテキストがシンタックス要素のコンテキスト適応エ
ントロピー復号化において、使用するように構成される、装置。

なお、甲1発明1と甲1発明2を併せて甲1発明という。甲1発明明細書
には、符号化/復号化の一方の処理として記載されている箇所があるが、
H.264等の符号化の分野の当業者であれば、同一の処理を符号化/復号
化のどちらでも適用できることは自明である。

ウ 取消理由1
(ア)本件発明9について
a 甲1発明1との対比
(a)構成要件A
本件発明9の構成要件Aは、「変換係数ブロックをデータストリームに符号化す
るための装置であって、前記装置は、」である。
甲1発明1及び本件発明は、いずれもH.264/AVCに基づく発明で
あり、H.264/AVCは、すでに符号化された画像フレームからの動きを
推定して予測信号を生成し、残差信号(符号化する画像から予測信号を引き
算した信号)を離散コサイン変換及び量子化した後、エントロピー符号化を
行うものである(例えば周知技術を示す甲2号証86頁)。
ここで、甲1発明明細書には以下の記載がある。
「本発明は、コンテキストベースのバイナリ算術符号化および復号化のた
めの方法および装置を提供し、残差ブロックの有意係数の位置を示す有意マ
ップが符号化されるとき、以前の残差ブロックとの関連を使用するコンテキ

24/63
ストモデリングがさらに分離される」([0027]、上記イ(ア)a①)。
「エントロピー符号化ユニット1340は、所定のサイズの残差ブロック
の単位でコンテキストベースのバイナリ算術符号化を実行し、それによって
ビットストリームを生成する。」([0084]、上記イ(ア)a③)
また、甲1発明明細書の図1(上記イ(ア)a⑤)及び図14(上記イ(ア)
a⑥)に記載されているように、甲1発明1では、シンタックス要素が入力さ
れ、コンテキストベースのバイナリ算術符号化装置1400がコンテキスト
適応エントロピー符号化を行い、ビットストリームを出力する。
すなわち、甲1発明1は、「ビットストリームにおいてDCTと量子化がさ
れた残差ブロックを符号化又は復号化するための装置」に関する発明であり
(上記イ(ア)bⅰ)、「ビットストリーム」はデータのストリームであるか
ら「データストリーム」に相当し、DCT(Discrete Cosine Transform:離
散コサイン変換)された残差ブロック」は、変換係数ブロックに相当する。
従って、甲1発明1は、本件発明9の構成要件Aを具備する。

(b)構成要件B
本件発明9の構成要件Bは、「コンテキスト適応エントロピー符号化を介してシ
ンタックス要素を前記データストリームに符号化するように構成され、」である。
ここで「シンタックス要素」とは、H.264/AVC規格などで規定され
ている、ヘッダ情報や変換係数、動きベクトルなど、シンタックスで伝送する
ことが規定されている情報のことである(例えば周知技術を示す甲2号証1
48頁)。また、本件特許明細書を参照すると以下のように記載されている。
マップ/係数エントロピーデコーダ250は入力254に接続され、この
入力254に、有意マップおよび有意変換係数値を表すシンタックス要素が
入力される。以下により詳しく記載するように、有意マップおよび有意変換
係数値を記述するシンタックス要素がマップ/係数エントロピーデコーダ2
50に入力される順序に関して、異なる確率が存在する。
(段落【0045】)
以上によれば、変換係数や、変換係数の位置を示す有意マップはいずれも
シンタックス要素の一つである。

25/63
甲1発明明細書には以下の記載がある。
「H.264は、圧縮効率が向上した算術符号化手法であるコンテキスト
適応型バイナリ算術符号化(CABAC)を使用します。CABACは、シン
ボルの確率 を使用 し てデータを圧縮するエントロピー符号化方式である」
([0006]、上記イ(ア)a②)。
「エントロピー符号化ユニット1340は、所定のサイズの残差ブロック
の単位でコンテキストベースのバイナリ算術符号化を実行し、それによって
ビットストリームを生成する」([0084]、上記イ(ア)a③)。
また、甲1発明明細書の図1(上記イ(ア)a⑤)及び図14(上記イ(ア)
a⑥)に記載されているように、甲1発明1では、シンタックス要素が入力さ
れ、コンテキストベースのバイナリ算術符号化装置1400がコンテキスト
適応エントロピー符号化を行い、ビットストリームを出力する。
すなわち、甲1発明1には、「コンテキストベースのバイナリ算術符号化装
置が、コンテキスト適応エントロピー符号化を介してシンタックス要素をビ
ットストリームに符号化する」点が記載されている(上記イ(ア)bⅱ)、
従って、甲1発明1は、本件発明9の構成要件Bを具備する。

(c)構成要件C
本件発明9の構成要件Cは、「各々の前記シンタックス要素が、前記変換係数ブ
ロック内の対応する位置に関して、有意変換係数が存在するかどうか、および前
記変換係数ブロック内の前記有意変換係数の値に関する情報を示し、」である。
甲1発明1の図3及びその説明箇所には、「動作220において、ゼロ以外
の係数値(以下、有意係数と呼ぶ)が現在の4×4残余ブロックに存在する場
合、有意係数の位置を示す有意マップが符号化される。有意マップは、有意ビ
ットとend-of-block(EOB)で形成される。有意ビットは、各スキャンイン
デックスに従った係数が有意係数であるか0であるかを示し、
significant_coeff_flag[i]で表される。ここで、significant_coeff_flag[i]
は、4×4残差ブロックの16個の係数のうちi番目のスキャンインデック

26/63
スの係数値が0であるかどうかを示す。図3Aおよび3Bは、従来技術によ
る4×4残差ブロックの有意マップを示す図である。図3Aにおいて、4×4
残差ブロック31内の係数のうち、Xでマークされた位置の係数は、所定の
非ゼロ値を有すると仮定される。この場合、図3Bに示す有意マップ32は、
4×4残差ブロック内の係数のうちの各有意係数を1として表現し、ゼロの
値を有する各非有意係数を0として表現することによって得られる。有意マ
ップは、所定のスキャン順序でスキャンされ、コンテキストベースの算術符
号化が実行される。」と記載されている(図3、[0017]~[0019]、上記イ(ア)
a⑧及び⑨)。
この記載の通り、有意マップが、4×4画素の残差ブロック内のそれぞれ
の画素の対応する位置に関して、有意変換係数が存在するかどうか、すなわ
ち、有意変換係数であるか非有意変換係数であるかを示し、また、有意変換係
数はその値を1として示されている。ここで、有意マップは、前述の通りシン
タックス要素の一つである。
すなわち、甲1発明1には、「シンタックス要素の一つである有意マップ
が、残差ブロック内の対応する位置に関して、有意変換係数が存在するかど
うか、および残差ブロック内の有意変換係数の値に関する情報を示す」点が
記載されている(上記イ(ア)bⅲ)。
従って、甲1発明1は、本件発明9の構成要件Cを具備する。

(d)構成要件D
本件発明9の構成要件Dは、「前記装置が、複数の走査順の中から決定された走
査順で前記シンタックス要素を前記データストリームに符号化するように構成さ
れ、」である。
甲1発明1には以下の記載がある。
「スキャンインデックスは、残差ブロック内の各係数の位置を示す指標で
あり、所定のスキャン順序に従って、残差ブロック内の係数の位置または有
意マップのバイナリ値を示す。たとえば、4×4の残差ブロックがジグザグ
スキャン順序でスキャンされると仮定すると、4×4の残差ブロックの各係

27/63
数は、そのスキャン順序に従うスキャンインデックス1~16のいずれかで
示される位置に存在する値として定義される。」「例えば図8に示すよう
に、残差ブロック内で0ではない有意係数を1として表現し、非有意係数を
0として表現することによって生成された有意マップ81、82、83、お
よび84があると仮定して、有意マップ81から84の符号化を、今説明す
る。図7の残差ブロック1に示されるように、ジグザグスキャン順序でスキ
ャンされ、有意マップ81~84はコンテキストベースのバイナリ算術符号
化がされている。」(図7、図8、[0052][0054]、上記イ(ア)a⑩、⑪及
び⑫)。
「有意マップは、所定のスキャン順序でスキャンされ、コンテキストベー
スの算術符号化が実行される。例えば、コンテンツが左側から右側へ、そし
て上から下へとスキャンされるラスタースキャンの場合、図3Aに示される
有意マップが符号化され、1111111110101000というビン文字列がコンテキス
トベースで符号化される。有意マップを符号化するために、15の異なる確
率モデルがsignificant_coeff_flagとlast_significant_coeff_flagに使用
される。有意マップを符号化するために使用されるコンテキストは、所定の
スキャン順序のスキャン位置に従って決定される。すなわち、従来技術によ
れば、図3Bに示される有意マップが符号化されるとき、それぞれの係数の
位置に従って符号化に使用されるコンテキストが決定される。」([0017]~
[0019]、上記イ(ア)a⑨)。

この記載の通り、例えば図7の様なジグザグスキャン順序で走査されるこ
とにより、シンタックス要素の一つである有意マップ81~84のコンテキ
ストベースのバイナリ算術符号化が行われている。
すなわち、甲1発明1には、「所定のスキャン順序に基づいて決定されるス
キャン順でシンタックス要素をデータストリームに符号化」する点が記載さ
れている(上記イ(ア)bⅳ)。
従って、甲1発明1は、本件発明9の構成要件Dを具備する。

28/63
(e)構成要件E
本件発明9の構成要件Eは、「前記装置が、前記変換係数ブロックのサイズ、前
記変換係数ブロック内の前記シンタックス要素の位置、および前記シンタックス
要素の前記位置の近隣において以前に符号化された前のシンタックス要素に関す
る情報に少なくとも基づいて各々の前記シンタックス要素について選択されたコ
ンテキストを、各々の前記シンタックス要素のコンテキスト適応エントロピー符
号化において、使用するように構成される、装置。」である。
ここで、甲1発明1には、「H.264標準の草案によると、現在符号化
されるブロックは、以下の表1に示すような、およそ5つの種類のいずれか
に分類されます。それぞれの種類に属するブロックに関連するシンタックス
要素を符号化するために、異なるコンテキストが適用されます。

Block types:ブロックの種類
# of coeff.:係数の数
Context Type:コンテキストの種類」
という記載がある([0013]、上記イ(ア)a⑬)。

表1には、サイズが16×16画素のブロックである「Luminance DC
block for INTRA 16 x 16 mode」のシンタックス要素に対しては「0: Luma-

29/63
Intra16-DC」というコンテキストが適用され、サイズが4×4画素のブロッ
クである「Luminance block for INTRA 4 x 4 mode」のシンタックス要素に
対しては「1: Luma-4x4」というコンテキストが適用されることが記載され
ている。すなわち、「残差ブロックのサイズに基づいて各々のシンタックス
要素についてのコンテキストが選択されること」が記載されている。

また、甲1発明1には、以下の記載がある。
「現在の残差ブロックの有意マップを符号化するために、以前の残差ブロ
ックの対応する係数が有意係数である場合と、対応する係数が非有意係数で
ある場合とを分離する。そして、異なるコンテキスト、すなわち、異なる確
率モデルが適用される」([0063]、上記イ(ア)a⑭)。
「図11は、本発明の実施形態に従って、現在の残差ブロックの有意マッ
プが符号化されるときに使用されるコンテキストを決定するプロセスを示す
詳細図である。上述のように、現在の残差ブロックの有意マップを符号化す
るためのコンテキストが決定されるときに考慮される、以前の残差ブロック
の有意マップを決定するために、現在の残差ブロックの以前に符号化された
1つの残差ブロックの有意マップ、または以前に符号化された少なくとも2
つの残差ブロックの有意マップ、または現在の残差ブロックの上または左に
位置する2つの隣接する残差ブロックの有意マップ、をそれぞれ使用するこ
とができる」([0067][0068]、上記イ(ア)a⑯)
「動作1610において、少なくとも1つの以前に復号化された残差ブロ
ックの対応する係数が0ではない有意係数であるかどうかに応じて、所定の
フラグ、すなわち復号化される現在のブロックの有意係数の位置を示す有意
マップ、を復号化するコンテキストが選択される。上述のように、現在の残
差ブロックの有意マップを復号化するために、現在の残差ブロックの以前に
符号化された1つの残差ブロックの有意マップ、または少なくとも2つの残
差ブロックの有意マップ、または現在の残差ブロックの上と左にそれぞれ位
置する2つの隣接する残差ブロックの有意マップ、を使用することによって
コンテキストが決定される」([0093]、上記イ(ア)a⑰)。

30/63
「コンテキスト選択ユニット1710は、以前の残差ブロックの係数が有
意係数である場合、現在の残差ブロックの対応する係数が有意係数であるこ
とを示すフラグの確率がより高いコンテキストを選択する。そして、もし、
以前の残差ブロックの係数が非有意係数であった場合、コンテキスト選択ユ
ニット1710は、現在の残差ブロックの対応する係数が非有意係数である
ことを示すフラグの確率がより高いコンテキストを選択する」([0098]、上
記イ(ア)a⑱)。
「現在の残差ブロックの有意マップを復号化するためのコンテキストが選
択されるとき、コンテキスト選択ユニット1710は、以前の2つの復号化
された残差ブロックの有意マップ、または現在の残差ブロックの上および左
に位置する2つの隣接する以前の残差ブロックの有意マップ、をそれぞれ使
用することができる」([0099]、上記イ(ア)a⑲)。

これらの記載によれば、残差ブロック内でシンタックス要素である有意係
数の位置を示す有意マップの内容や、現在の残差ブロックの有意マップの上
と左に隣接する以前に符号化又は復号化された残差ブロックの有意マップの
内容に基づいて、符号化又は復号化に用いるコンテキストが決定されること
が記載されている。また、そのコンテキストは残差ブロックの有意マップの
符号化又は復号化に使用されることが記載されている。なお、構成要件Bで
説明した通り、有意係数も、有意係数の位置を示す有意マップもいずれもシ
ンタックス要素の一つである。また、甲1発明には、符号化/復号化の一方
の処理として記載されている箇所があるが、H.264等の符号化の分野の
当業者であれば、同一の処理を符号化/復号化のどちらでも適用できること
は自明である。
すなわち、甲1発明1には、「残差ブロックのサイズ、残差ブロック内の
シンタックス要素の位置、および現在の残差ブロックの上と左の隣接する残
差ブロックであって以前に符号化された残差ブロックのシンタックス要素、
に基づいてコンテキストが選択され、当該コンテキストがシンタックス要素
のコンテキスト適応エントロピー符号化において、使用される、装置」が記

31/63
載されている(上記イ(ア)bⅴ)。
従って、甲1発明1は、本件発明9の構成要件Eを具備する。

b 小括
以上のとおり、本件発明9は、その構成要件のすべて(構成要件A~E)
が甲第1号証に記載され、もしくは、記載されているに等しい発明であるか
ら、新規性を欠き、本件特許9には、特許法第29条1項3号に違反する取
消理由(同法第113条第1項第2号)がある。

(イ)本件発明1について
a 甲1発明2との対比
(a)構成要件H
本件発明1の構成要件Hは、「データストリームにおいて符号化された変換係数
ブロックを復号するための装置であって、」である。
甲1発明2及び本件発明は、いずれもH.264/AVCに基づく発明で
あり、H.264/AVCは、すでに符号化された画像フレームからの動きを
推定して予測信号を生成し、残差信号(符号化する画像から予測信号を引き
算した信号)を離散コサイン変換及び量子化した後、エントロピー符号化を
行うものである(例えば周知技術を示す甲2号証86頁)。
ここで、甲1発明明細書には以下の記載がある。
「本発明は、コンテキストベースのバイナリ算術符号化および復号化のた
めの方法および装置を提供し、残差ブロックの有意係数の位置を示す有意マ
ップが符号化されるとき、以前の残差ブロックとの関連を使用するコンテキ
ストモデリングがさらに分離される」([0027]、上記イ(ア)a①)。
また、甲1発明明細書の図17(上記イ(ア)a⑦)に記載されているよう
に、甲1発明2では、ビットストリームが入力され、コンテキストベースのバ
イナリ算術復号化装置1700がコンテキスト適応エントロピー復号化を行
い、シンタックス要素を抽出し出力する。
すなわち、甲1発明2は、「ビットストリームにおいてDCTと量子化がさ

32/63
れた残差ブロックを符号化又は復号化するための装置」に関する発明であり
(上記イ(ア)bⅵ)、「ビットストリーム」はデータのストリームであるか
ら「データストリーム」に相当し、DCT(Discrete Cosine Transform:離
散コサイン変換)された残差ブロック」は、変換係数ブロックに相当する。
従って、甲1発明2は、本件発明1の構成要件Hを具備する。

(b)構成要件I
本件発明1の構成要件Iは、「コンテキスト適応エントロピー復号を介して前記
データストリームからシンタックス要素を抽出するように構成されたデコーダで
あって、」である。
ここで「シンタックス要素」とは、H.264/AVC規格などで規定され
ている、ヘッダ情報や変換係数、動きベクトルなど、シンタックスで伝送する
ことが規定されている情報のことである(例えば周知技術を示す甲2号証1
48頁)。また、本件特許明細書を参照すると以下のように記載されている。
マップ/係数エントロピーデコーダ250は入力254に接続され、この
入力254に、有意マップおよび有意変換係数値を表すシンタックス要素が
入力される。以下により詳しく記載するように、有意マップおよび有意変換
係数値を記述するシンタックス要素がマップ/係数エントロピーデコーダ2
50に入力される順序に関して、異なる確率が存在する。
(段落【0045】)
以上によれば、変換係数や、変換係数の位置を示す有意マップはいずれも
シンタックス要素の一つである。

甲1発明明細書には以下の記載がある。
「本発明は、コンテキストベースのバイナリ算術符号化および復号化のた
めの方法および装置を提供し、残差ブロックの有意係数の位置を示す有意マ
ップが符号化されるとき、以前の残差ブロックとの関連を使用するコンテキ
ストモデリングがさらに分離される」([0027]、上記イ(ア)a①)。
また、甲1発明明細書の図17(上記イ(ア)a⑦)に記載されているよう
に、甲1発明2では、ビットストリームが入力され、コンテキストベースのバ

33/63
イナリ算術復号化装置1700がコンテキスト適応エントロピー復号化を行
い、シンタックス要素を抽出し出力する。
すなわち、甲1発明2には、「コンテキスト適応エントロピー復号を介して
ビットストリームからシンタックス要素を抽出するように構成された復号化
装置」が記載されている(上記イ(ア)bⅱ)。
従って、甲1発明2は、本件発明1の構成要件Iを具備する。

(c)構成要件J
本件発明1の構成要件Jは、「各々の前記シンタックス要素が、前記変換係数ブ
ロック内の対応する位置に関して、有意変換係数が存在するかどうか、および前
記変換係数ブロック内の前記有意変換係数の値を示す、前記デコーダと、」であ
る。
甲1発明2の図3及びその説明箇所には、「動作220において、ゼロ以外
の係数値(以下、有意係数と呼ぶ)が現在の4×4残余ブロックに存在する場
合、有意係数の位置を示す有意マップが符号化される。有意マップは、有意ビ
ットとend-of-block(EOB)で形成される。有意ビットは、各スキャンイン
デックスに従った係数が有意係数であるか0であるかを示し、
significant_coeff_flag[i]で表される。ここで、significant_coeff_flag[i]
は、4×4残差ブロックの16個の係数のうちi番目のスキャンインデック
スの係数値が0であるかどうかを示す。図3Aおよび3Bは、従来技術によ
る4×4残差ブロックの有意マップを示す図である。図3Aにおいて、4×4
残差ブロック31内の係数のうち、Xでマークされた位置の係数は、所定の
非ゼロ値を有すると仮定される。この場合、図3Bに示す有意マップ32は、
4×4残差ブロック内の係数のうちの各有意係数を1として表現し、ゼロの
値を有する各非有意係数を0として表現することによって得られる。有意マ
ップは、所定のスキャン順序でスキャンされ、コンテキストベースの算術符
号化が実行される。」と記載されている(図3、[0017]~[0019]、上記イ(ア)
a⑧及び⑨)。
この記載の通り、有意マップが、4×4画素の残差ブロック内のそれぞれ

34/63
の画素の対応する位置に関して、有意変換係数が存在するかどうか、すなわ
ち、有意変換係数であるか非有意変換係数であるかを示し、また、有意変換係
数はその値を1として示されている。ここで、有意マップは、前述の通りシン
タックス要素の一つである。
すなわち、甲1発明2には、「シンタックス要素の一つである有意マップ
が、残差ブロック内の対応する位置に関して、有意変換係数が存在するかど
うか、および残差ブロック内の有意変換係数の値に関する情報を示す」点が
記載されている(上記イ(ア)bⅷ)。なお、甲1発明2は、構成要件Iで説
明したように復号化装置(デコーダ)に関するものである。
従って、甲1発明2は、本件発明1の構成要件Jを具備する。

(d)構成要件K
本件発明1の構成要件Kは、「複数の走査順に基づいて決定される走査順で各々
の前記シンタックス要素を前記変換係数ブロック内のそれぞれの位置に関連付け
るように構成されたアソシエータとを備え、」である。
甲1発明2には以下の記載がある。
「スキャンインデックスは、残差ブロック内の各係数の位置を示す指標で
あり、所定のスキャン順序に従って、残差ブロック内の係数の位置または有
意マップのバイナリ値を示す。たとえば、4×4の残差ブロックがジグザグ
スキャン順序でスキャンされると仮定すると、4×4の残差ブロックの各係
数は、そのスキャン順序に従うスキャンインデックス1~16のいずれかで
示される位置に存在する値として定義される。」「例えば図8に示すよう
に、残差ブロック内で0ではない有意係数を1として表現し、非有意係数を
0として表現することによって生成された有意マップ81、82、83、お
よび84があると仮定して、有意マップ81から84の符号化を、今説明す
る。図7の残差ブロック1に示されるように、ジグザグスキャン順序でスキ
ャンされ、有意マップ81~84はコンテキストベースのバイナリ算術符号
化がされている。」(図7、図8、[0052][0054]、上記イ(ア)a⑩、⑪及
び⑫)。

35/63
「有意マップは、所定のスキャン順序でスキャンされ、コンテキストベー
スの算術符号化が実行される。例えば、コンテンツが左側から右側へ、そし
て上から下へとスキャンされるラスタースキャンの場合、図3Aに示される
有意マップが符号化され、1111111110101000というビン文字列がコンテキス
トベースで符号化される。有意マップを符号化するために、15の異なる確
率モデルがsignificant_coeff_flagとlast_significant_coeff_flagに使用
される。有意マップを符号化するために使用されるコンテキストは、所定の
スキャン順序のスキャン位置に従って決定される。すなわち、従来技術によ
れば、図3Bに示される有意マップが符号化されるとき、それぞれの係数の
位置に従って符号化に使用されるコンテキストが決定される。」([0017]~
[0019]、上記イ(ア)a⑨)。

この記載の通り、例えば図7の様なジグザグスキャン順序でシンタックス
要素の一つである変換係数が残差ブロック内のどの位置にあるかを関連付け
る有意マップが構成されている。
すなわち、甲1発明2には、「所定のスキャン順序に基づいて決定されるス
キャン順でシンタックス要素であるそれぞれの変換係数を残差ブロック内の
それぞれの画素の位置に関連付けるように構成される」点が記載されている
(上記イ(ア)bⅸ)。
従って、甲1発明2は、本件発明1の構成要件Kを具備する。

(e)構成要件L
本件発明1の構成要件Lは、「前記デコーダが、前記変換係数ブロックのサイ
ズ、前記変換係数ブロック内の前記シンタックス要素の位置、および前記シンタ
ックス要素の前記位置の近隣から以前に抽出された前のシンタックス要素に関す
る情報に少なくとも基づいて各々の前記シンタックス要素について選択されたコ
ンテキストを、前記シンタックス要素のコンテキスト適応エントロピー復号にお
いて、使用するように構成される、装置。」である。
ここで、甲1発明2には、「H.264標準の草案によると、現在符号化

36/63
されるブロックは、以下の表1に示すような、およそ5つの種類のいずれか
に分類されます。それぞれの種類に属するブロックに関連するシンタックス
要素を符号化するために、異なるコンテキストが適用されます。

Block types:ブロックの種類
# of coeff.:係数の数
Context Type:コンテキストの種類」
という記載がある([0013]、上記イ(ア)a⑬)。

表1には、サイズが16×16画素のブロックである「Luminance DC
block for INTRA 16 x 16 mode」のシンタックス要素に対しては「0: Luma-
Intra16-DC」というコンテキストが適用され、サイズが4×4画素のブロッ
クである「Luminance block for INTRA 4 x 4 mode」のシンタックス要素に
対しては「1: Luma-4x4」というコンテキストが適用されることが記載され
ている。すなわち、「残差ブロックのサイズに基づいて各々のシンタックス
要素についてのコンテキストが選択されること」が記載されている。

また、甲1発明2には、以下の記載がある。
「現在の残差ブロックの有意マップを符号化するために、以前の残差ブロ
ックの対応する係数が有意係数である場合と、対応する係数が非有意係数で
ある場合とを分離する。そして、異なるコンテキスト、すなわち、異なる確

37/63
率モデルが適用される」([0063]、上記イ(ア)a⑭)。
「図11は、本発明の実施形態に従って、現在の残差ブロックの有意マッ
プが符号化されるときに使用されるコンテキストを決定するプロセスを示す
詳細図である。上述のように、現在の残差ブロックの有意マップを符号化す
るためのコンテキストが決定されるときに考慮される、以前の残差ブロック
の有意マップを決定するために、現在の残差ブロックの以前に符号化された
1つの残差ブロックの有意マップ、または以前に符号化された少なくとも2
つの残差ブロックの有意マップ、または現在の残差ブロックの上または左に
位置する2つの隣接する残差ブロックの有意マップ、をそれぞれ使用するこ
とができる」([0067][0068]、上記イ(ア)a⑯)
「動作1610において、少なくとも1つの以前に復号化された残差ブロ
ックの対応する係数が0ではない有意係数であるかどうかに応じて、所定の
フラグ、すなわち復号化される現在のブロックの有意係数の位置を示す有意
マップ、を復号化するコンテキストが選択される。上述のように、現在の残
差ブロックの有意マップを復号化するために、現在の残差ブロックの以前に
符号化された1つの残差ブロックの有意マップ、または少なくとも2つの残
差ブロックの有意マップ、または現在の残差ブロックの上と左にそれぞれ位
置する2つの隣接する残差ブロックの有意マップ、を使用することによって
コンテキストが決定される」([0093]、上記イ(ア)a⑰)。
「コンテキスト選択ユニット1710は、以前の残差ブロックの係数が有
意係数である場合、現在の残差ブロックの対応する係数が有意係数であるこ
とを示すフラグの確率がより高いコンテキストを選択する。そして、もし、
以前の残差ブロックの係数が非有意係数であった場合、コンテキスト選択ユ
ニット1710は、現在の残差ブロックの対応する係数が非有意係数である
ことを示すフラグの確率がより高いコンテキストを選択する」([0098]、上
記イ(ア)a⑱)。
「現在の残差ブロックの有意マップを復号化するためのコンテキストが選
択されるとき、コンテキスト選択ユニット1710は、以前の2つの復号化
された残差ブロックの有意マップ、または現在の残差ブロックの上および左

38/63
に位置する2つの隣接する以前の残差ブロックの有意マップ、をそれぞれ使
用することができる」([0099]、上記イ(ア)a⑲)。

これらの記載によれば、残差ブロック内でシンタックス要素である有意係
数の位置を示す有意マップの内容や、現在の残差ブロックの有意マップの上
と左に隣接する以前に符号化又は復号化された残差ブロックの有意マップの
内容に基づいて、符号化又は復号化に用いるコンテキストが決定されること
が記載されている。また、そのコンテキストは残差ブロックの有意マップの
符号化又は復号化に使用されることが記載されている。なお、構成要件Iで
説明した通り、有意係数も、有意係数の位置を示す有意マップもいずれもシ
ンタックス要素の一つである。また、甲1発明には、符号化/復号化の一方
の処理として記載されている箇所があるが、H.264等の符号化の分野の
当業者であれば、同一の処理を符号化/復号化のどちらでも適用できること
は自明である。
すなわち、甲1発明2には、「残差ブロックのサイズ、残差ブロック内の
シンタックス要素の位置、および現在の残差ブロックの上と左の隣接する残
差ブロックであって以前に符号化された残差ブロックのシンタックス要素、
に基づいてコンテキストが選択され、当該コンテキストがシンタックス要素
のコンテキスト適応エントロピー復号化において、使用するように構成され
る、装置」が記載されている(上記イ(ア)bⅹ)。なお、甲1発明2は、
構成要件Iで説明したように復号化装置(デコーダ)に関するものである。
従って、甲1発明2は、本件発明1の構成要件Lを具備する。

b 小括
以上のとおり、本件発明1は、その構成要件のすべて(構成要件H~L)
が甲第1号証に記載され、もしくは、記載されているに等しい発明であるか
ら、新規性を欠き、本件特許1には、特許法第29条1項3号に違反する取
消理由(同法第113条第1項第2号)がある。

39/63
(ウ)本件発明17について
a 甲1発明2との対比
(a)構成要件O
本件発明17の構成要件Oは、「データストリームにおいて符号化された変換係
数ブロックを復号するための方法であって、」である。
甲1発明2及び本件発明は、いずれもH.264/AVCに基づく発明で
あり、H.264/AVCは、すでに符号化された画像フレームからの動きを
推定して予測信号を生成し、残差信号(符号化する画像から予測信号を引き
算した信号)を離散コサイン変換及び量子化した後、エントロピー符号化を
行うものである(例えば周知技術を示す甲2号証86頁)。
ここで、甲1発明明細書には以下の記載がある。
「本発明は、コンテキストベースのバイナリ算術符号化および復号化のた
めの方法および装置を提供し、残差ブロックの有意係数の位置を示す有意マ
ップが符号化されるとき、以前の残差ブロックとの関連を使用するコンテキ
ストモデリングがさらに分離される」([0027]、上記イ(ア)a①)。
また、甲1発明明細書の図17(上記イ(ア)a⑦)に記載されているよう
に、甲1発明2では、ビットストリームが入力され、コンテキストベースのバ
イナリ算術復号化装置1700がコンテキスト適応エントロピー復号化を行
い、シンタックス要素を抽出し出力する。
すなわち、甲1発明2は、「ビットストリームにおいてDCTと量子化がさ
れた残差ブロックを符号化又は復号化するための装置」に関する発明であり
(上記イ(ア)bⅵ)、「ビットストリーム」はデータのストリームであるか
ら「データストリーム」に相当し、DCT(Discrete Cosine Transform:離
散コサイン変換)された残差ブロック」は、変換係数ブロックに相当する。
従って、甲1発明2は、本件発明17の構成要件Oを具備する。

(b)構成要件P
本件発明17の構成要件Pは、「コンテキスト適応エントロピー復号を介してシ
ンタックス要素が、前記データストリームから抽出するステップであって、」で

40/63
ある。
ここで「シンタックス要素」とは、H.264/AVC規格などで規定され
ている、ヘッダ情報や変換係数、動きベクトルなど、シンタックスで伝送する
ことが規定されている情報のことである(例えば周知技術を示す甲2号証1
48頁)。また、本件特許明細書を参照すると以下のように記載されている。
マップ/係数エントロピーデコーダ250は入力254に接続され、この
入力254に、有意マップおよび有意変換係数値を表すシンタックス要素が
入力される。以下により詳しく記載するように、有意マップおよび有意変換
係数値を記述するシンタックス要素がマップ/係数エントロピーデコーダ2
50に入力される順序に関して、異なる確率が存在する。
(段落【0045】)
以上によれば、変換係数や、変換係数の位置を示す有意マップはいずれも
シンタックス要素の一つである。

甲1発明明細書には以下の記載がある。
「本発明は、コンテキストベースのバイナリ算術符号化および復号化のた
めの方法および装置を提供し、残差ブロックの有意係数の位置を示す有意マ
ップが符号化されるとき、以前の残差ブロックとの関連を使用するコンテキ
ストモデリングがさらに分離される」([0027]、上記イ(ア)a①)。
また、甲1発明明細書の図17(上記イ(ア)a⑦)に記載されているよう
に、甲1発明2では、ビットストリームが入力され、コンテキストベースのバ
イナリ算術復号化装置1700がコンテキスト適応エントロピー復号化を行
い、シンタックス要素を抽出し出力する。
すなわち、甲1発明2には、「コンテキスト適応エントロピー復号を介して
ビットストリームからシンタックス要素を抽出するように構成された復号化
装置」が記載されている(上記イ(ア)bⅱ)。
従って、甲1発明2は、本件発明17の構成要件Pを具備する。

41/63
(c)構成要件Q
本件発明17の構成要件Qは、「各々の前記シンタックス要素が、前記変換係数
ブロック内の対応する位置に関して、有意変換係数が存在するかどうか、および
前記変換係数ブロック内の前記有意変換係数の値を示す、前記抽出するステップ
と、」である。
甲1発明2の図3及びその説明箇所には、「動作220において、ゼロ以外
の係数値(以下、有意係数と呼ぶ)が現在の4×4残余ブロックに存在する場
合、有意係数の位置を示す有意マップが符号化される。有意マップは、有意ビ
ットとend-of-block(EOB)で形成される。有意ビットは、各スキャンイン
デックスに従った係数が有意係数であるか0であるかを示し、
significant_coeff_flag[i]で表される。ここで、significant_coeff_flag[i]
は、4×4残差ブロックの16個の係数のうちi番目のスキャンインデック
スの係数値が0であるかどうかを示す。図3Aおよび3Bは、従来技術によ
る4×4残差ブロックの有意マップを示す図である。図3Aにおいて、4×4
残差ブロック31内の係数のうち、Xでマークされた位置の係数は、所定の
非ゼロ値を有すると仮定される。この場合、図3Bに示す有意マップ32は、
4×4残差ブロック内の係数のうちの各有意係数を1として表現し、ゼロの
値を有する各非有意係数を0として表現することによって得られる。有意マ
ップは、所定のスキャン順序でスキャンされ、コンテキストベースの算術符
号化が実行される。」と記載されている(図3、[0017]~[0019]、上記イ(ア)
a⑧及び⑨)。
この記載の通り、有意マップが、4×4画素の残差ブロック内のそれぞれ
の画素の対応する位置に関して、有意変換係数が存在するかどうか、すなわ
ち、有意変換係数であるか非有意変換係数であるかを示し、また、有意変換係
数はその値を1として示されている。ここで、有意マップは、前述の通りシン
タックス要素の一つである。
すなわち、甲1発明2には、「シンタックス要素の一つである有意マップ
が、残差ブロック内の対応する位置に関して、有意変換係数が存在するかど
うか、および残差ブロック内の有意変換係数の値に関する情報を示す」点が

42/63
記載されている(上記イ(ア)bⅷ)。なお、甲1発明2は、構成要件Pで説
明したように復号化装置(デコーダ)に関するものであり、シンタックス要素
はデータストリームから抽出される。
従って、甲1発明2は、本件発明17の構成要件Qを具備する。

(d)構成要件R
本件発明17の構成要件Rは、「複数の走査順に基づいて決定される走査順で
各々の前記シンタックス要素を前記変換係数ブロック内のそれぞれの位置に関連
付けるステップと、」である。
甲1発明2には以下の記載がある。
「スキャンインデックスは、残差ブロック内の各係数の位置を示す指標で
あり、所定のスキャン順序に従って、残差ブロック内の係数の位置または有
意マップのバイナリ値を示す。たとえば、4×4の残差ブロックがジグザグ
スキャン順序でスキャンされると仮定すると、4×4の残差ブロックの各係
数は、そのスキャン順序に従うスキャンインデックス1~16のいずれかで
示される位置に存在する値として定義される。」「例えば図8に示すよう
に、残差ブロック内で0ではない有意係数を1として表現し、非有意係数を
0として表現することによって生成された有意マップ81、82、83、お
よび84があると仮定して、有意マップ81から84の符号化を、今説明す
る。図7の残差ブロック1に示されるように、ジグザグスキャン順序でスキ
ャンされ、有意マップ81~84はコンテキストベースのバイナリ算術符号
化がされている。」(図7、図8、[0052][0054]、上記イ(ア)a⑩、⑪及
び⑫)。
「有意マップは、所定のスキャン順序でスキャンされ、コンテキストベー
スの算術符号化が実行される。例えば、コンテンツが左側から右側へ、そし
て上から下へとスキャンされるラスタースキャンの場合、図3Aに示される
有意マップが符号化され、1111111110101000というビン文字列がコンテキス
トベースで符号化される。有意マップを符号化するために、15の異なる確
率モデルがsignificant_coeff_flagとlast_significant_coeff_flagに使用

43/63
される。有意マップを符号化するために使用されるコンテキストは、所定の
スキャン順序のスキャン位置に従って決定される。すなわち、従来技術によ
れば、図3Bに示される有意マップが符号化されるとき、それぞれの係数の
位置に従って符号化に使用されるコンテキストが決定される。」([0017]~
[0019]、上記イ(ア)a⑨)。

この記載の通り、例えば図7の様なジグザグスキャン順序でシンタックス
要素の一つである変換係数が残差ブロック内のどの位置にあるかを関連付け
る有意マップが構成されている。
すなわち、甲1発明2には、「所定のスキャン順序に基づいて決定されるス
キャン順でシンタックス要素であるそれぞれの変換係数を残差ブロック内の
それぞれの画素の位置に関連付けるように構成される」点が記載されている
(上記イ(ア)bⅸ)。
従って、甲1発明2は、本件発明17の構成要件Rを具備する。

(e)構成要件S
本件発明17の構成要件Sは、「前記変換係数ブロックのサイズ、前記変換係数
ブロック内の前記シンタックス要素の位置、および前記シンタックス要素の前記
位置の近隣から以前に抽出された前のシンタックス要素に関する情報に少なくと
も基づいて各々の前記シンタックス要素について選択されるコンテキストを、前
記シンタックス要素のコンテキスト適応エントロピー復号において、使用するス
テップとを含む、方法。」である。
ここで、甲1発明2には、「H.264標準の草案によると、現在符号化
されるブロックは、以下の表1に示すような、およそ5つの種類のいずれか
に分類されます。それぞれの種類に属するブロックに関連するシンタックス
要素を符号化するために、異なるコンテキストが適用されます。

44/63
Block types:ブロックの種類
# of coeff.:係数の数
Context Type:コンテキストの種類」
という記載がある([0013]、上記イ(ア)a⑬)。

表1には、サイズが16×16画素のブロックである「Luminance DC
block for INTRA 16 x 16 mode」のシンタックス要素に対しては「0: Luma-
Intra16-DC」というコンテキストが適用され、サイズが4×4画素のブロッ
クである「Luminance block for INTRA 4 x 4 mode」のシンタックス要素に
対しては「1: Luma-4x4」というコンテキストが適用されることが記載され
ている。すなわち、「残差ブロックのサイズに基づいて各々のシンタックス
要素についてのコンテキストが選択されること」が記載されている。

また、甲1発明2には、以下の記載がある。
「現在の残差ブロックの有意マップを符号化するために、以前の残差ブロ
ックの対応する係数が有意係数である場合と、対応する係数が非有意係数で
ある場合とを分離する。そして、異なるコンテキスト、すなわち、異なる確
率モデルが適用される」([0063]、上記イ(ア)a⑭)。
「図11は、本発明の実施形態に従って、現在の残差ブロックの有意マッ
プが符号化されるときに使用されるコンテキストを決定するプロセスを示す

45/63
詳細図である。上述のように、現在の残差ブロックの有意マップを符号化す
るためのコンテキストが決定されるときに考慮される、以前の残差ブロック
の有意マップを決定するために、現在の残差ブロックの以前に符号化された
1つの残差ブロックの有意マップ、または以前に符号化された少なくとも2
つの残差ブロックの有意マップ、または現在の残差ブロックの上または左に
位置する2つの隣接する残差ブロックの有意マップ、をそれぞれ使用するこ
とができる」([0067][0068]、上記イ(ア)a⑯)
「動作1610において、少なくとも1つの以前に復号化された残差ブロ
ックの対応する係数が0ではない有意係数であるかどうかに応じて、所定の
フラグ、すなわち復号化される現在のブロックの有意係数の位置を示す有意
マップ、を復号化するコンテキストが選択される。上述のように、現在の残
差ブロックの有意マップを復号化するために、現在の残差ブロックの以前に
符号化された1つの残差ブロックの有意マップ、または少なくとも2つの残
差ブロックの有意マップ、または現在の残差ブロックの上と左にそれぞれ位
置する2つの隣接する残差ブロックの有意マップ、を使用することによって
コンテキストが決定される」([0093]、上記イ(ア)a⑰)。
「コンテキスト選択ユニット1710は、以前の残差ブロックの係数が有
意係数である場合、現在の残差ブロックの対応する係数が有意係数であるこ
とを示すフラグの確率がより高いコンテキストを選択する。そして、もし、
以前の残差ブロックの係数が非有意係数であった場合、コンテキスト選択ユ
ニット1710は、現在の残差ブロックの対応する係数が非有意係数である
ことを示すフラグの確率がより高いコンテキストを選択する」([0098]、上
記イ(ア)a⑱)。
「現在の残差ブロックの有意マップを復号化するためのコンテキストが選
択されるとき、コンテキスト選択ユニット1710は、以前の2つの復号化
された残差ブロックの有意マップ、または現在の残差ブロックの上および左
に位置する2つの隣接する以前の残差ブロックの有意マップ、をそれぞれ使
用することができる」([0099]、上記イ(ア)a⑲)。

46/63
これらの記載によれば、残差ブロック内でシンタックス要素である有意係
数の位置を示す有意マップの内容や、現在の残差ブロックの有意マップの上
と左に隣接する以前に符号化又は復号化された残差ブロックの有意マップの
内容に基づいて、符号化又は復号化に用いるコンテキストが決定されること
が記載されている。また、そのコンテキストは残差ブロックの有意マップの
符号化又は復号化に使用されることが記載されている。なお、構成要件Pで
説明した通り、有意係数も、有意係数の位置を示す有意マップもいずれもシ
ンタックス要素の一つである。また、甲1発明には、符号化/復号化の一方
の処理として記載されている箇所があるが、H.264等の符号化の分野の
当業者であれば、同一の処理を符号化/復号化のどちらでも適用できること
は自明である。
すなわち、甲1発明2には、「残差ブロックのサイズ、残差ブロック内の
シンタックス要素の位置、および現在の残差ブロックの上と左の隣接する残
差ブロックであって以前に符号化された残差ブロックのシンタックス要素、
に基づいてコンテキストが選択され、当該コンテキストがシンタックス要素
のコンテキスト適応エントロピー復号化において、使用するように構成され
る、装置」が記載されている(上記イ(ア)bⅹ)。なお、甲1発明2は、
構成要件Pで説明したように復号化装置(デコーダ)に関するものである。
従って、甲1発明2は、本件発明17の構成要件Sを具備する。

b 小括
以上のとおり、本件発明17は、その構成要件のすべて(構成要件O~S)
が甲第1号証に記載され、もしくは、記載されているに等しい発明であるか
ら、新規性を欠き、本件特許17には、特許法第29条1項3号に違反する
取消理由(同法第113条第1項第2号)がある。

(エ)本件発明2、10、18について
本件発明2は、「前記近隣から以前に抽出された前記前のシンタックス要素に関
する前記情報が、前記前のシンタックス要素の値に関連する、請求項1に記載の

47/63
装置。」である。
本件発明10は、「前記近隣から以前に符号化された前記前のシンタックス要素
に関する前記情報が、前記前のシンタックス要素の値に関連する、請求項9に記
載の装置。」である。
本件発明18は、「前記近隣から以前に抽出された前記前のシンタックス要素に
関する前記情報が、前記前のシンタックス要素の値に関する、請求項17に記載
の方法。」である。
甲1発明明細書には「動作1610において、少なくとも1つの以前に復
号化された残差ブロックの対応する係数が0ではない有意係数であるかどう
かに応じて、所定のフラグ、すなわち復号化される現在のブロックの有意係
数の位置を示す有意マップ、を復号化するコンテキストが選択される。上述
のように、現在の残差ブロックの有意マップを復号化するために、現在の残
差ブロックの以前に符号化された1つの残差ブロックの有意マップ、または
少なくとも2つの残差ブロックの有意マップ、または現在の残差ブロックの
上と左にそれぞれ位置する2つの隣接する残差ブロックの有意マップ、を使
用することによってコンテキストが決定される」([0093]、上記イ(ア)a
⑰)と記載されている。
また、「現在の残差ブロックの有意マップを復号化するためのコンテキス
トが選択されるとき、コンテキスト選択ユニット1710は、以前の2つの
復号化された残差ブロックの有意マップ、または現在の残差ブロックの上お
よび左に位置する2つの隣接する以前の残差ブロックの有意マップ、をそれ
ぞれ使用することができる」([0099]、上記イ(ア)a⑲)と記載されてい
る。
ここで、現在の残差ブロックの上または左の近隣から以前に符号化され抽
出されたシンタックス要素に関する情報である有意マップは、図11に記載
されているように(図11、上記イ(ア)a⑮)例えば値が1である有意係
数や値が0である非有意係数に関連している。
すなわち、甲1発明には、「近隣から以前に抽出された以前のシンタック
ス要素に関する情報が、以前のシンタックス要素の値に関連する」ことが記

48/63
載されている。
また、その他の構成要件についても甲1発明に記載がある旨は、上記
(ア)本件発明9について、(イ)本件発明1について、(ウ)本件発明1
7について、において説明した通りである。
従って、甲1発明は、本件発明2、10、18のすべての構成要件を具備
する。

以上のとおり、本件発明2、10、18は、その構成要件のすべてが甲第
1号証に記載され、もしくは、記載されているに等しい発明であるから、新
規性を欠き、本件特許2、10、18には、特許法第29条1項3号に違反
する取消理由(同法第113条第1項第2号)がある。

(オ)本件発明3、11、19について
本件発明3は、「前記近隣から以前に抽出された前記前のシンタックス要素に関
する前記情報が、前のシンタックス要素が有意変換係数の存在を示す位置の数に
関連する、請求項1に記載の装置。」である。
本件発明11は、「前記近隣から以前に符号化された前記前のシンタックス要素
に関する前記情報が、前のシンタックス要素が有意変換係数の存在を示す位置の
数に関連する、請求項9に記載の装置。」である。
本件発明19は、「前記近隣から以前に抽出された前記前のシンタックス要素に
関する前記情報が、前のシンタックス要素が有意変換係数の存在を示す位置の数
に関連する、請求項17に記載の方法。」である。
ここで、「位置の数」についてはその意義が不明確であり、一義的に確定
することができないが、審査経過をみると、令和1年8月13日発送(8月
5日起案)の拒絶理由通知において、分割出願時の請求項3、7、13、1
7、23、26に記載されていた「いくつかの位置」という文言について、
発明の詳細な説明に記載したものではないという第36条6項1号の拒絶理
由が通知されている。この拒絶理由に対して、令和2年2月12日付提出の
手続補正書により本件発明3、11、19の記載の「位置の数」に補正した

49/63
上で、同日付提出の意見書において、当該補正が段落【0048】に基づく
ものと主張している。
しかしながら、本件発明明細書の当該段落【0048】には、有意マップ
の中に有意係数が存在する、ということ以外には「significant_coeff_flag
のシーケンスの符号の前に、有意係数位置の数がデータストリーム内にシグ
ナリングされてもよい。」という記載があるのみであって、この記載から
は、有意係数位置の数がシンタックス要素の位置の近隣から抽出又は符号化
されたシンタックス要素に関する情報なのかどうなのか定かではないし、ま
たこの「位置の数」に基づいてコンテキストが選択されているかどうかも開
示が無い。
そうしてみると、結局、当該段落【0048】やその他の記載からは、有
意マップの中に有意係数が存在していて、これが複数であって、これらに基
づいてコンテキストが選択される、ということが記載されている程度のもの
である。

一方、甲1発明明細書には「動作1610において、少なくとも1つの以
前に復号化された残差ブロックの対応する係数が0ではない有意係数である
かどうかに応じて、所定のフラグ、すなわち復号化される現在のブロックの
有意係数の位置を示す有意マップ、を復号化するコンテキストが選択され
る。上述のように、現在の残差ブロックの有意マップを復号化するために、
現在の残差ブロックの以前に符号化された1つの残差ブロックの有意マッ
プ、または少なくとも2つの残差ブロックの有意マップ、または現在の残差
ブロックの上と左にそれぞれ位置する2つの隣接する残差ブロックの有意マ
ップ、を使用することによってコンテキストが決定される」([0093]、上記
イ(ア)a⑰)と記載されている。
また、「現在の残差ブロックの有意マップを復号化するためのコンテキス
トが選択されるとき、コンテキスト選択ユニット1710は、以前の2つの
復号化された残差ブロックの有意マップ、または現在の残差ブロックの上お
よび左に位置する2つの隣接する以前の残差ブロックの有意マップ、をそれ

50/63
ぞれ使用することができる」([0099]、上記イ(ア)a⑲)と記載されてい
る。
ここで、現在の残差ブロックの上または左の近隣から以前に抽出されたシ
ンタックス要素に関する情報である有意マップは、甲1発明明細書図11
(上記イ(ア)a⑮)に記載のように、4×4画素のブロックの中に有意係
数を複数有しており、有意マップは、有意係数の存在を示す位置の数に関連
する情報である。これらの記載は、上述の本件発明明細書における段落【0
048】及びその他の記載における記載と同義である。
さらに、甲1発明明細書には、「図12に示すように、現在の残差ブロッ
クの有意マップを符号化するために、以前の2つの残差ブロックの対応する
係数がすべて有意でない係数である場合(ケース1:0→0→0、0→0→
1)、以前の2つの残差ブロックの対応する係数がすべて有意な係数である
場合(ケース2:1→1→1、1→1→0)、および以前の2つの残差ブロ
ックの対応する係数の1つが有意な係数であり、もう1つは有意でない係数
である場合(ケース3:0→1→0、0→1→1、1→0→0、1→0→
1)が分割され、異なるコンテキスト、つまり異なる確率モデルが適用され
る。より具体的には、以前の残差ブロックの対応する係数がすべて重要でな
い係数である場合(ケース1)には、空間の相互関係が考慮され、それによ
って現在の残差ブロックの係数も重要でない係数である確率がより大きいコ
ンテキストモデルが選択される。」([0076][0077]、上記イ(ア)a⑳)と
記載されており、上及び左の以前の2つの残差ブロックのすべての係数が有
意な場合、一部が有意な係数である場合、全てが非有意な係数である場合、
という有意変換係数の存在を示す位置の数に応じて異なるコンテキストが選
択され得る旨が記載されている。

すなわち、甲1発明には、「近隣から以前に抽出された以前のシンタック
ス要素に関する情報が、有意変換係数の存在を示す位置の数に関連する」こ
とが記載されている。
また、その他の構成要件についても甲1発明に記載がある旨は、上記

51/63
(ア)本件発明9について、(イ)本件発明1について、(ウ)本件発明1
7について、において説明した通りである。
従って、甲1発明は、本件発明3、11、19のすべての構成要件を具備
する。

以上のとおり、本件発明3、11、19は、その構成要件のすべてが甲第
1号証に記載され、もしくは、記載されているに等しい発明であるから、新
規性を欠き、本件特許3、11、19には、特許法第29条1項3号に違反
する取消理由(同法第113条第1項第2号)がある。

(カ)本件発明4、12、20について
本件発明4は、「各々の前記シンタックス要素の前記コンテキストが、前記走査
順にさらに基づいて選択される、請求項1に記載の装置。」である。
本件発明12は、「各々の前記シンタックス要素の前記コンテキストが、前記走
査順にさらに基づいて選択される、請求項9に記載の装置。」である。
本件発明20は、「各々の前記シンタックス要素の前記コンテキストが、前記走
査順にさらに基づいて選択される、請求項17に記載の方法。」である。
甲1発明明細書には以下の記載がある。
「動作1610において、少なくとも1つの以前に復号化された残差ブロ
ックの対応する係数が0ではない有意係数であるかどうかに応じて、所定の
フラグ、すなわち復号化される現在のブロックの有意係数の位置を示す有意
マップ、を復号化するコンテキストが選択される。上述のように、現在の残
差ブロックの有意マップを復号化するために、現在の残差ブロックの以前に
符号化された1つの残差ブロックの有意マップ、または少なくとも2つの残
差ブロックの有意マップ、または現在の残差ブロックの上と左にそれぞれ位
置する2つの隣接する残差ブロックの有意マップ、を使用することによって
コンテキストが決定される」([0093]、上記イ(ア)a⑰)
「現在の残差ブロックの有意マップを復号化するためのコンテキストが選
択されるとき、コンテキスト選択ユニット1710は、以前の2つの復号化

52/63
された残差ブロックの有意マップ、または現在の残差ブロックの上および左
に位置する2つの隣接する以前の残差ブロックの有意マップ、をそれぞれ使
用することができる」([0099]、上記イ(ア)a⑲)
「また、残差ブロックのスキャンについて、甲1明細書の図7及びその説
明箇所には「残差ブロック内で0ではない有意係数を1として表現し、非有
意係数を0として表現することによって生成された有意マップ81、82、
83、および84があると仮定して、有意マップ81から84の符号化を、
今説明する。図7の残差ブロック1に示されるように、ジグザグスキャン順
序でスキャンされ、有意マップ81~84はコンテキストベースのバイナリ
算術符号化がされている。」(図7、[0054]、上記イ(ア)a⑩及び⑫)。
「有意マップは、所定のスキャン順序でスキャンされ、コンテキストベー
スの算術符号化が実行される。例えば、コンテンツが左側から右側へ、そし
て上から下へとスキャンされるラスタースキャンの場合、図3Aに示される
有意マップが符号化され、1111111110101000というビン文字列がコンテキス
トベースで符号化される。有意マップを符号化するために、15の異なる確
率モデルがsignificant_coeff_flagとlast_significant_coeff_flagに使用
される。有意マップを符号化するために使用されるコンテキストは、所定の
スキャン順序のスキャン位置に従って決定される。すなわち、従来技術によ
れば、図3Bに示される有意マップが符号化されるとき、それぞれの係数の
位置に従って符号化に使用されるコンテキストが決定される。」([0017]~
[0019]、上記イ(ア)a⑨)。

これらの記載の通り、現在の残差ブロックの上または左の近隣から以前に
抽出されたシンタックス要素に関する情報である有意マップは、例えば図7
の様なジグザグスキャン順序で走査されることにより、有意マップ81~8
4のそれぞれの有意係数がスキャンされてコンテキストが決定されるのであ
って、その走査順序によっては有意係数の並びも変わってくるのであるか
ら、走査順に基づいて対応するコンテキストが決定される旨が記載されてい
る。

53/63
すなわち、甲1発明には、「コンテキストが有意係数の走査順に基づいて
決定される」ことが記載されている。また、その他の構成要件についても甲
1発明に記載がある旨は、上記(ア)本件発明9について、(イ)本件発明
1について、(ウ)本件発明17について、において説明した通りである。
従って、甲1発明は、本件発明4、12、20のすべての構成要件を具備
する。

以上のとおり、本件発明4、12、20は、その構成要件のすべてが甲第
1号証に記載され、もしくは、記載されているに等しい発明であるから、新
規性を欠き、本件特許4、12、20には、特許法第29条1項3号に違反
する取消理由(同法第113条第1項第2号)がある。

(キ)本件発明5、13、21について
本件発明5は、「現在のシンタックス要素の前記近隣が、前記現在のシンタック
ス要素の前記位置に隣接する少なくとも1つの位置を含む、請求項1に記載の装
置。」である。
本件発明13は、「現在のシンタックス要素の前記近隣が、前記現在のシンタッ
クス要素の前記位置に隣接する少なくとも1つの位置を含む、請求項9に記載の
装置。」である。
本件発明21は、「現在のシンタックス要素の前記近隣が、前記現在のシンタッ
クス要素の位置に隣接する少なくとも1つの位置を含む、請求項17に記載の方
法。」である。
甲1発明明細書には「動作1610において、少なくとも1つの以前に復
号化された残差ブロックの対応する係数が0ではない有意係数であるかどう
かに応じて、所定のフラグ、すなわち復号化される現在のブロックの有意係
数の位置を示す有意マップ、を復号化するコンテキストが選択される。上述
のように、現在の残差ブロックの有意マップを復号化するために、現在の残
差ブロックの以前に符号化された1つの残差ブロックの有意マップ、または
少なくとも2つの残差ブロックの有意マップ、または現在の残差ブロックの

54/63
上と左にそれぞれ位置する2つの隣接する残差ブロックの有意マップ、を使
用することによってコンテキストが決定される」([0093]、上記イ(ア)a
⑰)と記載されている。
また、「現在の残差ブロックの有意マップを復号化するためのコンテキス
トが選択されるとき、コンテキスト選択ユニット1710は、以前の2つの
復号化された残差ブロックの有意マップ、または現在の残差ブロックの上お
よび左に位置する2つの隣接する以前の残差ブロックの有意マップ、をそれ
ぞれ使用することができる」([0099]、上記イ(ア)a⑲)と記載されてい
る。
すなわち、甲1発明には、「現在の残差ブロックのシンタックス要素であ
る有意マップ又は有意係数の近隣が、現在の残差ブロックの上または左に隣
接する残差ブロックの位置を含む」点が記載されている。また、その他の構
成要件についても甲1発明に記載がある旨は、上記(ア)本件発明9につい
て、(イ)本件発明1について、(ウ)本件発明17について、において説
明した通りである。
従って、甲1発明は、本件発明5、13、21のすべての構成要件を具備
する。

以上のとおり、本件発明5、13、21は、その構成要件のすべてが甲第
1号証に記載され、もしくは、記載されているに等しい発明であるから、新
規性を欠き、本件特許5、13、21には、特許法第29条1項3号に違反
する取消理由(同法第113条第1項第2号)がある。

(ク)本件発明6、14について
本件発明6は、「前記位置の数が、可能性のあるコンテキストインデックスの組
を指すコンテキストインデックスに対応する、請求項3に記載の装置。」である

本件発明14は、「前記位置の数が、可能性のあるコンテキストインデックスの
組を指すコンテキストインデックスに対応する、請求項11に記載の装置。」で

55/63
ある。
ここで、(オ)本件発明3、11、19について、において説明したよう
に、「位置の数」の意義が不明確であり、何を指しているのかが不明である
が、有意マップの中に有意係数が存在していて、これが複数ある、というこ
とを指している程度のものである。
甲1発明明細書の表1には、複数のコンテキストの種類に対して、例えば
「0: Luma-Intra16-DC」や「1: Luma-4x4」というインデックスが設定され
ていることが記載されており([0013]、上記イ(ア)a⑰)、値などを参照
する際にインデックスが使用されることは広く用いられていることである。
すなわち、甲1発明には、「位置の数が、可能性のあるコンテキストイン
デックスの組を指すコンテキストインデックスに対応する、」点が記載され
ている。また、その他の構成要件についても甲1発明に記載がある旨は、上
記(ア)本件発明9について、(イ)本件発明1について、(ウ)本件発明
17について、及び、本件発明3、11、19について、の箇所において説
明した通りである。
従って、甲1発明は、本件発明6、14のすべての構成要件を具備する。

以上のとおり、本件発明6、14は、その構成要件のすべてが甲第1号証
に記載され、もしくは、記載されているに等しい発明であるから、新規性を
欠き、本件特許6、14には、特許法第29条1項3号に違反する取消理由
(同法第113条第1項第2号)がある。

(ケ)本件発明7、8、15、16について
本件発明7は、「前記近隣が、前記シンタックス要素の前記位置に横方向に隣接
する少なくとも1つの位置を含む、請求項6に記載の装置。」である。
本件発明8は、「前記近隣が、前記シンタックス要素の前記位置に縦方向に隣接
する少なくとも1つの位置を含む、請求項5に記載の装置。」である。
本件発明15は、「前記近隣が、前記シンタックス要素の前記位置に横方向に隣
接する少なくとも1つの位置を含む、請求項13に記載の装置。」である。

56/63
本件発明16は、「前記近隣が、前記シンタックス要素の前記位置に縦方向に隣
接する少なくとも1つの位置を含む、請求項13に記載の装置。」である。
甲1発明明細書には「動作1610において、少なくとも1つの以前に復
号化された残差ブロックの対応する係数が0ではない有意係数であるかどう
かに応じて、所定のフラグ、すなわち復号化される現在のブロックの有意係
数の位置を示す有意マップ、を復号化するコンテキストが選択される。上述
のように、現在の残差ブロックの有意マップを復号化するために、現在の残
差ブロックの以前に符号化された1つの残差ブロックの有意マップ、または
少なくとも2つの残差ブロックの有意マップ、または現在の残差ブロックの
上と左にそれぞれ位置する2つの隣接する残差ブロックの有意マップ、を使
用することによってコンテキストが決定される」([0093]、上記イ(ア)a
⑰)と記載されている。
また、「現在の残差ブロックの有意マップを復号化するためのコンテキス
トが選択されるとき、コンテキスト選択ユニット1710は、以前の2つの
復号化された残差ブロックの有意マップ、または現在の残差ブロックの上お
よび左に位置する2つの隣接する以前の残差ブロックの有意マップ、をそれ
ぞれ使用することができる」([0099]、上記イ(ア)a⑲)と記載されてい
る。
すなわち、甲1発明には、「現在の残差ブロックのシンタックス要素であ
る有意マップ又は有意係数の近隣が、現在の残差ブロックの縦方向である上
または横方向である左に隣接する残差ブロックの位置を含む」点が記載され
ている。また、その他の構成要件についても甲1発明に記載がある旨は、上
記(ア)本件発明9について、(イ)本件発明1について、(ウ)本件発明
17について、及び、本件発明5、6、13について、の箇所において説明
した通りである。
従って、甲1発明は、本件発明7、8、15、16のすべての構成要件を
具備する。

以上のとおり、本件発明7、8、15、16は、その構成要件のすべてが

57/63
甲第1号証に記載され、もしくは、記載されているに等しい発明であるから、
新規性を欠き、本件特許7、8、15、16には、特許法第29条1項3号
に違反する取消理由(同法第113条第1項第2号)がある。

(コ)まとめ
以上のとおり、本件発明1~本件発明21は、いずれも甲第1号証に記載さ
れ、もしくは、記載されているに等しい発明であるから、新規性を欠き、本件
特許1~本件特許21には、特許法第29条1項3号に違反する取消理由(同
法第113条第1項第2号)がある。

エ 取消理由2
(ア)本件発明1~21について
本件発明1~21が甲第1号証に記載された、または記載されているに等
しい発明であることは、上記「ウ 取消理由1」で述べたとおりである。
しかしながら、仮に、本件発明1~21と甲1発明が相違するとしても、
その相違点は、単なる設計変更もしくは周知技術の単なる寄せ集めであって
新たな効果を奏するものではない。また、同じ符号化の技術分野におけるも
のであれば組み合わせることに阻害要因も無い。
例えば周知技術を示す資料として以下がある。これらの周知技術には、い
ずれも本件発明と同じH.264/AVCに関連するエントロピー符号化/
復号化のコンテキ ス ト適応型バイナリ算術符号化(CABAC(Context-Based
Adaptive Binary Arithmetic Coding))又はコンテキスト適応型可変長符号
化(CAVLC(Context-Adaptive Variable-Length Coding)に関する技術が開
示されている。
甲2号証:インプレス標準教科書シリーズ 改訂三版 H.264/AVC
教科書、第1版、2009年1月1日発行、株式会社インプレスR&D、p.
85-94、p.109-116、p.143-162、p.325-32
7、p.336-345
甲3号証:米国特許公開第2008/0310745号公報(甲4号証の

58/63
優先権基礎出願であり甲4号証と内容は同じ)
甲4号証:国際公開第2008/157268号公報(特表2010-5
30183に対応)
甲5号証:国際公開第2008/157431号公報(特表2010-5
30190に対応)
甲6号証:特表2009-522968号公報

従って、本件発明1~本件発明21は、甲第1号証に記載された、または
記載されているに等しい発明から、若しくは甲第1号証に記載された、また
は記載されているに等しい発明及び周知技術から、当業者が容易に発明をす
ることができたものであるから、進歩性を欠き、本件特許1~本件特許21
には、特許法第29条第2項に違反する取消理由(同法第113条第1項第
2号)がある。

オ 取消理由3
(ア)本件発明3、11、19について
本件発明3は、「前記近隣から以前に抽出された前記前のシンタックス要素に関
する前記情報が、前のシンタックス要素が有意変換係数の存在を示す位置の数に
関連する、請求項1に記載の装置。」である。
本件発明11は、「前記近隣から以前に符号化された前記前のシンタックス要素
に関する前記情報が、前のシンタックス要素が有意変換係数の存在を示す位置の
数に関連する、請求項9に記載の装置。」である。
本件発明19は、「前記近隣から以前に抽出された前記前のシンタックス要素に
関する前記情報が、前のシンタックス要素が有意変換係数の存在を示す位置の数
に関連する、請求項17に記載の方法。」である。
ここで、「位置の数」についてはその意義が不明確であり、一義的に確定
することができないが、審査経過をみると、令和1年8月13日発送(8月
5日起案)の拒絶理由通知において、分割出願時の請求項3、7、13、1
7、23、26に記載されていた「いくつかの位置」という文言について、

59/63
発明の詳細な説明に記載したものではないという第36条6項1号の拒絶理
由が通知されている。この拒絶理由に対して、令和2年2月12日付提出の
手続補正書により本件発明3、11、19の記載の「位置の数」に補正した
上で、同日付提出の意見書において、当該補正が段落【0048】に基づく
ものと主張している。
しかしながら、本件発明明細書の当該段落【0048】には、
「significant_coeff_flagのシーケンスの符号の前に、有意係数位置の数が
データストリーム内にシグナリングされてもよい。」という記載があるのみ
であって、この記載からは、有意係数位置の数がシンタックス要素の位置の
近隣から抽出又は符号化されたシンタックス要素に関する情報なのかどうな
のか定かではないし、またこの「位置の数」に基づいて本件発明1、9、1
7のコンテキストが選択されているかどうかも開示が無い。
そうすると、「前記近隣から以前に抽出された前記前のシンタックス要素
に関する前記情報が、前のシンタックス要素が有意変換係数の存在を示す位
置の数に関連する」という記載は、本件特許明細書の発明の詳細な説明中に
記載も示唆もされていない。また、出願時の技術常識に照らしても、本件発
明3、11、19の範囲まで、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張な
いし一般化できるとはいえない。
また、当該「位置の数」が何を指しているのが不明でありその技術的意味
が明確でないため、本件発明3、11、19が明確でない。
従って、本件発明3、11、19は、サポート要件を満たしておらず、ま
た明確でないから、本件特許3、11、19には、特許法第36条第6項第
1号及び第2号に違反する取消理由(同法第113条第1項第4号)がある。

(イ)本件発明6、14について
本件発明6は、「前記位置の数が、可能性のあるコンテキストインデック
スの組を指すコンテキストインデックスに対応する、請求項3に記載の装
置。」である。
本件発明14は、「前記位置の数が、可能性のあるコンテキストインデッ

60/63
クスの組を指すコンテキストインデックスに対応する、請求項11に記載の
装置。」である。
いずれも前述の通りサポート要件違反及び明確性違反の取消理由のある
本件発明3及び11に従属する請求項であり、本件発明6及び本件発明14
もサポート要件を満たしておらず、また明確でないから、本件特許6及び本
件特許14には、特許法第36条第6項第1号及び第2号に違反する取消理
由(同法第113条第1項第4号)がある。

(ウ)本件発明17について
本件発明17の構成要件Pは、「コンテキスト適応エントロピー復号を介
してシンタックス要素が、前記データストリームから抽出するステップであ
って、」であるが、シンタックス要素が、何かをデータストリームから抽出
する処理は本件明細書に記載がなく、またその意味内容が理解できず不明確
である。
従って、本件発明17は、サポート要件を満たしておらず、また明確でな
いから、本件特許17には、特許法第36条第6項第1号及び第2号に違反
する取消理由(同法第113条第1項第4号)がある。

(5)むすび
ア 取消理由1
本件発明1~本件発明21は、甲第1号証に記載された発明と同一であり、
特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができないものであ
るから、本件特許1~本件特許21は同法第113条第1項第2号に該当し、取
り消すべきである。

イ 取消理由2
仮に本件発明1~本件発明21と、甲第1号証記載の発明との間に相違点が
あったとしても、本件発明1~本件発明21は、甲第1号証に記載された発明に
基づいて、または甲第1号証に記載された発明と周知技術に記載された発明に基

61/63
づいて、出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第
29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特
許1~本件特許21は同法第113条第1項第2号に該当し、取り消すべきであ
る。

ウ 取消理由3
本件発明3、6、11、14、17、19は、本件特許明細書の発明の詳細
な説明中に記載も示唆もされておらずサポート要件を満たしていないものであ
り、また、明確ではなく、特許法第36条第6項1号及び第2号の規定により特
許を受けることができないものであるから、本件特許3、6、11、14、1
7、19は同法第113条第1項第4号に該当し、取り消すべきである。

5 意見書提出の希望の有無 希望する。

6 証拠方法
(1) 甲第1号証:米国特許公開第2008/0219578号公報及び抄訳文
(2) 甲第2号証:インプレス標準教科書シリーズ 改訂三版 H.264/AVC
教科書、第1版、2009年1月1日発行、株式会社インプレスR&D、p.8
5-94、p.109-116、p.143-162、p.325-327、p.
336-345、写し
(3) 甲第3号証:米国特許公開第2008/0310745号公報及び抄訳文(対
応する特表2010-530183号公報)
(4) 甲第4号証:国際公開第2008/157268号公報及び抄訳文(対応す
る特表2010-530183号公報)
(5) 甲第5号証:国際公開第2008/157431号公報及び抄訳文(対応す
る特表2010-530190号公報)
(6) 甲第6号証:特表2009-522968号公報

7 添付書類又は添付物件の目録

62/63
(1) 甲第1号証写し及び抄訳文 正本1通及び副本2通
(2) 甲第2号証写し 正本1通及び副本2通
(3) 甲第3号証写し及び抄訳文 正本1通及び副本2通
(4) 甲第4号証写し及び抄訳文 正本1通及び副本2通
(5) 甲第5号証写し及び抄訳文 正本1通及び副本2通
(6) 甲第6号証写し 正本1通及び副本2通
(7) 証拠説明書 正本1通及び副本2通
(8) 特許異議申立書 副本2通
(9) 代理権を証明する書面及び訳文 1通

8 援用の表示
(9)の代理権を証明する書面及び訳文については、2020年11月27日提出の包括
委任状を援用する。

63/63

You might also like