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jP6211223B12017,10.11

(19)日本国特許庁、P) ('2)特許 公報(B1)('1)特許番号


特許第6211223号
炉621
122
3リ
(45)発行日平虜29年10月11日(2017.10.11) (24)登録日平成29年9月22日(2017.9.22)

(
51)
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リ A23F 5/04
Goプ月 7
ノロ8 餓認 GO1H 1
1/0
8 ,

請求項の数7(全25頁)

(21)出願番号 特願2017-lOl858P2017-lOl858) (73)特許権者510195238


(22)出願日 平成29年5月23日(2017.5.23) 山本裕之
審査請求日 平成29年5月23日(2017.5.23) 東京都:
(31)優先権主張番号 特願2017-37461(P2017-37461) (74)代理人lOOlO6002
(32)優先日 平成29年2月28日(2017.2.28) 弁理士正林真之
(33)優先権主張国 日本国(JP) (74)代理人lOOl20891
弁理士林一好
早期審査対象出願 (72)発明者山本裕之
東京都

審査官松岡徹

最終頁に続く

(54)【発明の名称】コーヒー豆のハゼ発生予定時期予測方法、コーヒー豆のハゼ発生予定時期予測装置、コーヒー豆
のハゼ検知方法、コーヒー豆のハゼ検知装置、及び培煎コーヒー豆の製造方法

(57)【特許請求の範囲】
【請求項l】
陪煎中のコーヒー豆及び倍煎装置から発生する5kHz以上80kHz以下の範囲に含
まれる範囲の周波数の音を経時的に測定するに際し、
ハゼ未発生期間中の音圧の平均値を算出する平均値算出工程と、
前記音圧の平均値を闘値として用いて、測定した音圧が該閉値を超え、且つ該閏値を超
えた時点より0.1ミリ秒前から100ミリ秒前までの期間から選択される0.1ミリ秒
以上99ミリ秒以下の時間幅において、該闘値のn倍以上(nは、l/6超l/3未満)
の音圧を検知していない場合に、コーヒー豆のハゼを検知したと判断するハゼ検知工程と


、を有する
コーヒー豆のハゼ検知方法。
【請求項2】
陪煎開始2分後から、前記音を継時的に測定することを開始する
請求項lに記載のコーヒー豆のハゼ検知方法。
【請求項3】
少なくとも陪煎開始2分後まで、陪煎中のコーヒー豆から発生する一酸化炭素量を測定
する初期一酸化炭素量測定工程をさらに有する
請求項l又は2に記載のコーヒー豆のハゼ検知方法。
【請求項4】
前記音を継時的に測定するに際し、陪煎中の前記コーヒー豆から発生する音をサンプリ 2

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ング周期0.2ミリ秒以下で測定する
 請求項1乃至3のいずれか1項に記載のコーヒー豆のハゼ検知方法。
【請求項5】
 前記ハゼ検知工程において、0.1kHz以上50kHz以下の半値幅を有する周波数
の音圧に基づいて、コーヒー豆のハゼを検知する
 請求項1乃至4のいずれか1項にコーヒー豆のハゼ検知方法。
【請求項6】
 焙煎中のコーヒー豆及び焙煎装置から発生する5kHz以上80kHz以下の範囲に含
まれる範囲の周波数の音を経時的に測定する音測定部と、
 ハゼ未発生期間中の音圧の平均値を算出する平均値算出部と、 10
 前記音圧の平均値を閾値として用いて、測定した音圧が該閾値を超え、且つ該閾値を超
えた時点より0.1ミリ秒前から100ミリ秒前までの期間から選択される0.1ミリ秒
以上99ミリ秒以下の時間幅において、該閾値のn倍以上(nは、1/6超1/3未満)
の音圧を検知していない場合にコーヒー豆のハゼを検知したと判断するハゼ検知部と、を
有する
 コーヒー豆のハゼ検知装置。
【請求項7】
 焙煎中のコーヒー豆及び焙煎装置から発生する5kHz以上80kHz以下の範囲に含
まれる範囲の周波数の音を経時的に測定するに際し、
 ハゼ未発生期間中の音圧の平均値を算出する平均値算出工程と、 20
 前記音圧の平均値を閾値として用いて、測定した音圧が該閾値を超え、且つ該閾値を超
えた時点より0.1ミリ秒前から100ミリ秒前までの期間から選択される0.1ミリ秒
以上99ミリ秒以下の時間幅において、該閾値のn倍以上(nは、1/6超1/3未満)
の音圧を検知していない場合にコーヒー豆のハゼを検知したと判断するハゼ検知工程と、
 前記ハゼの検知に基づいて、焙煎条件を変更する制御工程と、を有する
 焙煎コーヒー豆の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
 本発明は、コーヒー豆のハゼ発生予定時期予測方法、コーヒー豆のハゼ発生予定時期予 30
測装置、コーヒー豆のハゼ検知方法、コーヒー豆のハゼ検知装置、及び焙煎コーヒー豆の
製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
 コーヒー豆は、焙煎することにより、その香味を引き出すことができる。しかしながら
、コーヒー豆の香味は、焙煎条件によって変化する。したがって、所望のコーヒー豆の香
味を引き出すためには、焙煎条件を制御する必要がある。
【0003】
 ところで、コーヒー豆は、焙煎段階において、加熱に伴い2度、ハゼ音(「クラック音
」とも言う。)を発生させる。所望の香味を得るため、この2度のハゼ音の少なくとも一 40
方の発生時期を目安として、焙煎中の豆に与える熱量を変更する操作が行われている。ま
た、オペレーターの経験や勘によりハゼ音の発生時期を予測して、ハゼ音の発生の1∼2
分前に焙煎中のコーヒー豆に与える熱量を変更する操作が行われることもある。このよう
に、焙煎段階におけるハゼ音の発生時期の検知又は予測が重要である。
【0004】
 ここで、例えば、非特許文献1には、音圧レベル及び周波数スペクトラム解析によって
コーヒー豆から発生するハゼ音を検知する方法が知られている。一つのコーヒー豆が発す
るハゼ音は、数ミリ秒から10数ミリ秒継続するが、このハゼ音のうち数百Hzから数十
キロHzの帯域の音について頻繁に周波数スペクトラム解析し、焙煎装置から生ずる雑音
やその他背景雑音を除去し、コーヒー豆から発生されたハゼ音のみを高感度で検知するた 50
(3) JP 6211223 B1 2017.10.11

めには、信号処理専用プロセッサ(DSP)が必要となり、コストを要する。また、この
方法によれば、1度目のハゼ音と2度目のハゼ音と対比して両者を区別する必要があるた
め、両者を焙煎中リアルタイムに区別することは困難である。
【0005】
 また、特許文献1には、1度目のハゼ音及び2度目のハゼ音が、その間の期間に発生す
る音(装置音や環境雑音)に比べて音圧が大きいことを利用し、2度目のハゼ音の発生に
基づき、焙煎条件を調整することが開示されている。しかしながら、このような方法では
、1度目のハゼ音及び2度目のハゼ音の間の期間に発生する音の音圧と、2度目のハゼ音
の音圧の程度に大きな差がなく、ハゼ音の発生を正確に区別して検出することは困難なこ
とも多い。 10
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】カナダ国特許出願公開第2267608号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】P.S.Wilson,J.Acoust.Soc.Am.,135(
6),2014.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】 20
【0008】
 本発明は、以上の実情に鑑みてなされたものであり、コーヒー豆の焙煎に際し、ハゼの
発生時期を簡易且つ正確に検知し、又は予測する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
 本発明者らは、焙煎中のコーヒー豆から発生する一酸化炭素の量と、ハゼ音の発生に相
関関係があることを見出し、本発明を完成するに至った。より具体的には、本発明は以下
のようなものを提供する。
【0010】
 (1)本発明の第1の発明は、焙煎中のコーヒー豆及び焙煎装置から発生する5kHz 30
以上80kHz以下の範囲に含まれる範囲の周波数の音を経時的に測定するに際し、ハゼ
未発生期間中の音圧の平均値を算出する平均値算出工程と、前記音圧の平均値を閾値とし
て用いて、測定した音圧が該閾値を超え、且つ該閾値を超えた時点より0.1ミリ秒前か
ら100ミリ秒前までの期間から選択される0.1ミリ秒以上99ミリ秒以下の時間幅に
おいて、該閾値のn倍以上(nは、1/6超1/3未満)の音圧を検知していない場合に
、コーヒー豆のハゼを検知したと判断するハゼ検知工程と、を有するコーヒー豆のハゼ検
知方法である。
【0011】
 (2)本発明の第2の発明は、第1の発明において、焙煎開始2分後から、前記音を継
時的に測定することを開始するコーヒー豆のハゼ検知方法である。 40
【0012】
 (3)本発明の第3の発明は、第1又は第2の発明において、少なくとも焙煎開始2分
後まで、焙煎中のコーヒー豆から発生する一酸化炭素量を測定する初期一酸化炭素量測定
工程をさらに有するコーヒー豆のハゼ検知装置である。
【0013】
 (4)本発明の第4の発明は、第1乃至第3のいずれかの発明において、前記音を継時
的に測定するに際し焙煎中の前記コーヒー豆から発生する音をサンプリング周期0.2ミ
リ秒以下で測定するコーヒー豆のハゼ検知装置である。
【0014】
 (5)本発明の第5の発明は、第1乃至第4のいずれかの発明において、前記ハゼ検知 50
(4) JP 6211223 B1 2017.10.11

工程において、0.1kHz以上50kHz以下の半値幅を有する周波数の音圧に基づい
て、コーヒー豆のハゼを検知するコーヒー豆のハゼ検知装置である。
【0015】
 (6)本発明の第6の発明は、焙煎中のコーヒー豆及び焙煎装置から発生する5kHz
以上80kHz以下の範囲に含まれる範囲の周波数の音を経時的に測定する音測定部と、
ハゼ未発生期間中の音圧の平均値を算出する平均値算出部と、前記音圧の平均値を閾値と
して用いて、測定した音圧が該閾値を超え、且つ該閾値を超えた時点より0.1ミリ秒前
から100ミリ秒前までの期間から選択される0.1ミリ秒以上99ミリ秒以下の時間幅
において、該閾値のn倍以上(nは、1/6超1/3未満)の音圧を検知していない場合
にコーヒー豆のハゼを検知したと判断するハゼ検知部と、を有するコーヒー豆のハゼ検知 10
装置である。
【0016】
 (7)本発明の第7の発明は、焙煎中のコーヒー豆及び焙煎装置から発生する5kHz
以上80kHz以下の範囲に含まれる範囲の周波数の音を経時的に測定するに際し、ハゼ
未発生期間中の音圧の平均値を算出する平均値算出工程と、前記音圧の平均値を閾値とし
て用いて、測定した音圧が該閾値を超え、且つ該閾値を超えた時点より0.1ミリ秒前か
ら100ミリ秒前までの期間から選択される0.1ミリ秒以上99ミリ秒以下の時間幅に
おいて、該閾値のn倍以上(nは、1/6超1/3未満)の音圧を検知していない場合に
コーヒー豆のハゼを検知したと判断するハゼ検知工程と、前記ハゼの検知に基づいて、焙
煎条件を変更する制御工程と、を有する焙煎コーヒー豆の製造方法である。 20
【発明の効果】
【0017】
 本発明によれば、コーヒー豆の焙煎に際し、ハゼの発生時期を簡易且つ正確に検知又は
予測する、その結果に基づきコーヒー豆を焙煎する方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】コーヒー豆のハゼ検知装置の概略図である。
【図2】ハゼ検知部の一例の概略図である。
【図3】コーヒー豆のハゼ発生予定時期予測装置の概略図である。
【図4】焙煎コーヒー豆製造装置の概略図である。 30
【図5】焙煎装置の装置音及び環境雑音のマイクロフォンの出力波形(a)、10kHz
バンドパスフィルタ通過後の波形(b)、ピークディテクタ出力の波形(c)である。
【図6】ハゼ音のマイクロフォンの出力波形(a)、10kHzバンドパスフィルタ通過
後の波形(b)、ピークディテクタ出力の波形(c)である。
【図7】実施例2−1における焙煎開始からの各時間における排出ガス中の一酸化炭素の
濃度、10秒ごとのハゼ発生回数、設定温度及び排気温度のプロファイルである。
【図8】実施例2−2における焙煎開始からの各時間における排出ガス中の一酸化炭素の
濃度、10秒ごとのハゼ発生回数、設定温度及び排気温度のプロファイルである。
【図9】実施例2−3における焙煎開始からの各時間における排出ガス中の一酸化炭素の
濃度、10秒ごとのハゼ発生回数、設定温度及び排気温度のプロファイルである。 40
【図10】実施例2−4における焙煎開始からの各時間における排出ガス中の一酸化炭素
の濃度、10秒ごとのハゼ発生回数、設定温度及び排気温度のプロファイルである。
【図11】実施例2−5における焙煎開始からの各時間における排出ガス中の一酸化炭素
の濃度、10秒ごとのハゼ発生回数、設定温度及び排気温度のプロファイルである。
【図12】実施例2−6における焙煎開始からの各時間における排出ガス中の一酸化炭素
の濃度、10秒ごとのハゼ発生回数、設定温度及び排気温度のプロファイルである。
【図13】実施例2−7における焙煎開始からの各時間における排出ガス中の一酸化炭素
の濃度、10秒ごとのハゼ発生回数、設定温度及び排気温度のプロファイルである。
【図14】実施例2−8における焙煎開始からの各時間における排出ガス中の一酸化炭素
の濃度、10秒ごとのハゼ発生回数、設定温度及び排気温度のプロファイルである。 50
(5) JP 6211223 B1 2017.10.11

【発明を実施するための形態】
【0019】
 以下、本発明の具体的な実施形態について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実
施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲で適宜変更することが
できる。
【0020】
 <コーヒー豆のハゼ検知方法>
 本実施形態に係るコーヒー豆のハゼ検知方法は、焙煎中のコーヒー豆及び焙煎装置から
発生する5kHz以上80kHz以下の範囲に含まれる範囲の音を経時的に測定するに際
し、ハゼ未発生期間中の音圧の平均値を算出する平均値算出工程と、前記音圧の平均値を 10
閾値として用いて、測定した音圧が該閾値を超え、且つ該閾値を超えた時点より0.1ミ
リ秒前から100ミリ秒前までの期間から選択される0.1ミリ秒以上99ミリ秒以下の
時間幅において、該閾値のn倍以上(nは、1/6超1/3未満)の音圧を検知していな
い場合にコーヒー豆のハゼを検知したと判断するハゼ検知工程と、を有する。本実施形態
に係るコーヒー豆のハゼ検知方法は、このような構成を有することにより、ハゼの発生を
正確に検知することができる。そして、その結果に基づき、コーヒー豆の焙煎条件を制御
することができる。
【0021】
 このように、音圧を測定する周波数の範囲は、5kHz以上80kHz以下に含まれる
ものである。このような範囲においては、コーヒー豆から発生するハゼ音が急峻に立ち上 20
がる傾向があり、また、例えば装置から発生する音やコーヒーが流動する音等によって影
響を受けにくい。したがって、このような周波数の範囲で音圧を測定し、所定の速度で立
ち上がる音圧のパルスを測定することにより、他の雑音に左右されることなく、コーヒー
豆のハゼを検知することができる。
【0022】
 (焙煎工程)
 焙煎工程は、例えば、コーヒー豆に対して熱を供給し、コーヒー豆を焙煎する工程であ
る。
【0023】
 熱の供給手段としては、特に限定されず、従来のコーヒー豆の焙煎において使用される 30
公知のいずれの手段を用いることもできる。具体的には、例えば、焙煎容器(例えば、コ
ーヒー豆の焙煎用の回転ドラム)内に収容されたコーヒー豆に対して、電熱ヒーター等の
熱源から発する熱を圧縮機(ブロワ)、送風機等により送風し、コーヒー豆に熱風をあて
ることにより、熱の供給を行うことができる。供給する熱の温度は、通常のコーヒー豆の
焙煎に用いられる加熱の温度を用いることができ、例えば、100∼300℃の範囲の温
度を用いることができる。また、熱風の送風量は、コーヒー豆1gあたり毎分0.1∼1
Lの範囲内の風量を用いることができる。なお、焙煎工程における熱を供給する対象のコ
ーヒー豆は、焙煎されたコーヒー豆の原料となるコーヒー豆のことを指す。
【0024】
 コーヒー豆としては、特に限定されず、従来の公知のコーヒー豆の銘柄(例えば、ガテ 40
マラ、ブラジル(サントス、ダテーラ等)、エチオピア(モカイルガチェフ等)、コスタ
リカ、キリマンジャロ、ベトナム、コロンビア、タンザニア、モカ、ブルーマウンテン、
クリスタルマウンテン、ケニア、マンデリン、メキシコ等)等を、1種単独で使用するこ
とも、2種以上をブレンドして用いることもできる。また、銘柄以外にも、ロット、産地
、精製方法及び生産年について、いずれのコーヒー豆を用いることもできる。さらに、銘
柄、ロット、産地、精製方法及び生産年のいずれかが異なる、2種以上のブレンドであっ
ても、ハゼ発生時期を予測することができる点で、本実施形態に係るコーヒー豆のハゼ発
生予定時期予測方法は有用である。
【0025】
 焙煎方法としては、例えば、焙煎容器(回転ドラム)を回転させて、コーヒー豆を混ぜ 50
(6) JP 6211223 B1 2017.10.11

ながら、コーヒー豆を焙煎することができる。回転の条件としては、従来の公知の条件を
用いることができ、例えば、5∼60rpmの条件を用いることができる。
【0026】
 焙煎工程において、温度センサー等の温度測定手段を用いて、焙煎容器内の温度を測定
してもよく、測定しなくてもよい。焙煎容器内の温度を測定することで、焙煎時の焙煎容
器内の雰囲気温度を確認することができる。
【0027】
 本発明における焙煎工程において、焙煎しながら、コーヒー豆のチャフ(いわゆる、シ
ルバースキン)を除去するために、焙煎により発生したチャフを回収することができる。
【0028】 10
 本発明における焙煎工程において、焙煎時間は、指標とする一酸化炭素の設定値に応じ
て、自ずと定まるものであるが、例えば、300∼1500秒の範囲内で行うことができ
る。
【0029】
 (音測定工程)
 音測定工程は、焙煎中のコーヒー豆及び測定装置から発生する音を経時的に測定する工
程である。
【0030】
 具体的に、音測定工程では、マイクロフォン等、例えば電気信号等の信号に変換する装
置を用いて、音を測定する。 20
【0031】
 測定箇所(測定対象)としては、焙煎中のコーヒー豆及び測定装置から発生する音のう
ち、上述した特定の範囲の周波数の範囲の音圧を測定可能な箇所であれば、特に限定され
ない。ただし、一般的に知られた回転ドラム式の焙煎装置は、その内部に円筒形耐熱ガラ
スを備えることがある。焙煎装置が、このような円筒形耐熱ガラスを備える場合、ハゼ音
が透過せず、ハゼが十分に検出されないおそれもある。したがって、例えば、回転ドラム
式の焙煎装置は、金属製(具体的には、真鍮製等)により構成されることが好ましい。
【0032】
 音測定の開始時期としては、特に限定されず、例えば焙煎開始(加熱開始)2分後から
開始することが好ましい。すなわち焙煎の初期(例えば、焙煎開始2分後、好ましくは3 30
分後、より好ましくは4分後まで)の段階では、音圧測定工程を行わなくてもよい。焙煎
の初期(例えば、焙煎開始2分後、好ましくは3分後、より好ましくは4分後まで)の段
階では、焙煎の対象であるコーヒー豆が冷たく、その表面が硬い状態となっている。この
ような場合、コーヒー豆同士の衝突や、コーヒー豆と焙煎装置との衝突により、5kHz
以上80kHz以下の範囲に音圧パルスが生じ、誤検知を生ずることがある。一方で、こ
のようにコーヒー豆が硬い状態では、まだ十分に加熱された状態とはいえず、ハゼ音は発
生し得ない。したがって、焙煎の初期の段階では、音圧の測定は必須ではない。
【0033】
 なお、必須の態様ではないが、少なくとも焙煎開始2分後までの期間は、焙煎中のコー
ヒー豆から発生する一酸化炭素量を測定する初期一酸化炭素量測定工程を設けることがで 40
きる。上述のとおり、焙煎の初期の段階では、コーヒー豆同士の衝突や、コーヒー豆と焙
煎装置との衝突により、5kHz以上80kHz以下の範囲に音圧パルスが生じ、正確な
焙煎の状態を把握することが難しい。そのため、一酸化炭素量を測定することにより、よ
り確実に焙煎の状態を確認することも可能である。なお、初期一酸化炭素量測定工程の具
体的な方法及びそれに用いる装置としては、例えば、後述する一酸化炭素量測定工程及び
一酸化炭素量測定部を用いることができる。
【0034】
 (平均値算出工程)
 平均値算出工程は、ハゼ未発生期間中の音圧の平均値を算出する工程である。
【0035】 50
(7) JP 6211223 B1 2017.10.11

 ここで、「ハゼ未発生期間」とは、ハゼが発生していない期間であって、焙煎開始(加
熱開始)2分後以降の任意の期間をいう。具体的な時期については、加熱条件やコーヒー
豆の種類等によって異なるものであり特に限定されるものではなく、適宜設定することが
できる。また、例えば焙煎対象のコーヒー豆を加熱し、ハゼを聴覚にて検出した時点から
、所定時間前の期間(例えば、聴覚で最初にハゼを検出した時点から2分前∼1分前の期
間等)をハゼ未発生期間とすることもできる。
【0036】
 ハゼ未発生期間としては、特に限定されないが、例えば焙煎開始から540秒未満の任
意の期間(例えば480∼540秒の間の60秒間)、閾値を設定すればよい。焙煎開始
から540秒未満であれば、通常ハゼは発生しない。 10
【0037】
 平均値としては、例えば、ハゼ未発生期間(例えば60秒間)を等分し、その等分した
期間内(例えば60秒間を60等分して1秒ごと)の音圧のピーク値をハゼ未発生期間で
平均したものを用いることができる。
【0038】
 (ハゼ検知工程)
 ハゼ検知工程は、平均値算出工程において算出した音圧の平均値を閾値として用いて、
測定した音圧が閾値を超え、且つ閾値を超えた時点より0.1ミリ秒前から100ミリ秒
前までの期間から選択される0.1ミリ秒以上99ミリ秒以下の時間幅において、閾値の
n倍以上(nは、1/6超1/3未満)の音圧を検知していない場合に、コーヒー豆のハ 20
ゼを検知したと判断する工程である。
【0039】
 具体的に、ハゼ検知工程において、パルス発生回数は、所定の期間(例えば、1秒、1
0秒等)内に、上述した閾値を超える音圧パルスが発生した回数を計数する。所定の期間
内に計数された値が、閾値の値を超えた場合に、ハゼが発生したと判断する。
【0040】
 ここで、閾値としては、平均値算出工程にて算出したハゼ未発生期間中の音圧の平均値
を用いる。そして、コーヒー豆の焙煎中に、測定した音がこの閾値を超え、且つその音が
発生した時点より0.1ミリ秒前から100ミリ秒前までの期間内の0.1ミリ秒以上9
9ミリ秒以下の時間幅において、その閾値のn倍以上(nは、1/6超1/3未満)の音 30
圧を検知していない場合、ハゼが発生したと判断する。
【0041】
 測定した音がハゼ未発生期間中の音圧の平均値を超えたことは、背景雑音に比べ大きな
音が発生したことを意味する。しかしながら、このような判断基準だけでは、発生した音
がハゼの発生によるものであるのか、それとも機械音によるものであるのかは判断するこ
とができない。そこで、その音が発生した時点より特定の期間前の時間幅において閾値の
n倍以上(nは、1/6超1/3未満)の音圧を検知していないことを確認する。上述し
たとおり、コーヒー豆から発生するハゼ音が急峻に立ち上がるため、ハゼ音の場合、その
発生した時点より特定の期間前の時間幅において大きい音を発しない。これに対し、例え
ば装置音や環境雑音等は、それらが発生した時点より特定の期間前の時間幅においても大 40
きい音を発することが多い。このようなハゼ音と装置音の発生前の期間における音の発生
の挙動の相違を利用して、両者を区別することができる。
【0042】
 閾値のn倍以上(nは、1/6超1/3未満)の音圧を検知しているか、判断可能な期
間としては、測定した音が発生した時点より0.1ミリ秒前から100ミリ秒前までの期
間内であれば特に限定されないが、例えば、測定した音が発生した時点より0.2ミリ秒
前から50ミリ秒前までの期間内であることが好ましく、0.3ミリ秒前から30ミリ秒
前までの期間内であることがより好ましく、0.4ミリ秒前から20ミリ秒前までの期間
内であることがさらに好ましい。このような期間が所要の値であることにより、ハゼ音を
より正確に検知することができる。 50
(8) JP 6211223 B1 2017.10.11

【0043】
 また、その期間内において、実際に判断をする時間幅としては、0.1ミリ秒以上99
ミリ秒以下の時間幅であれば特に限定されるものでないが、例えば0.5ミリ秒以上90
ミリ秒以下であることが好ましく、1ミリ秒以上80ミリ秒以下であることがより好まし
く、2ミリ秒以上70ミリ秒以下であることがさらに好ましい。当該時間幅が所要の値で
あることにより、ハゼ音をより正確に検知することができる。
【0044】
 nの値としては、1/6超1/3未満であれば特に限定されないが、5/24以上7/
24以下であることが好ましく、1/4であることがより好ましい。nが所要の値である
ことにより、ハゼ音をより正確に検知することができる。 10
【0045】
 音圧を測定する周波数の範囲としては、上述の範囲内であれば特に限定されないが、例
えば、7kHz以上であることが好ましく、8kHz以上であることがより好ましく、9
kHz以上であることがさらに好ましく、9.5kHz以上であることが特に好ましい。
また、周波数の範囲としては、70kHz以下であることが好ましく、50kHz以下で
あることがより好ましく、40kHz以下であることがさらに好ましく、30kHz以下
であることがさらに好ましい。周波数の範囲が所要の範囲内にあることにより、ハゼ音と
装置音との区別の精度を高めることができる。なお、「音圧を測定する周波数の範囲」と
は、測定対象である所定の周波数の幅を有する音を包含する周波数の範囲をいう。具体的
には、例えば後述する半値幅の範囲の音が全て含まれる範囲であってよい。測定時におい 20
ては、上述の範囲を全て含むように測定すれば良く、他の周波数の範囲も併せて測定する
ことを排除するものではない。なお、他の周波数の範囲も併せて測定した場合には、例え
ばバンドパスフィルタ等により、所要の周波数の範囲のみを抽出することもできる。
【0046】
 音圧を測定する周波数における半値幅としては、特に限定されず、例えば、50kHz
以下であることが好ましく、30kHz以下であることがより好ましく、20kHz以下
であることがさらに好ましい。半値幅が所要値以下であることにより、ハゼ音と装置音と
の区別の精度を高めることができる。一方で、半値幅としては、例えば、0.1kHz以
上であることが好ましく、0.2kHz以上であることがより好ましく、0.25kHz
以上であることがさらに好ましい。半値幅が所要値以上であることにより、ハゼ音と装置 30
音との区別の精度を高めることができる。
【0047】
 音圧のピーク値(例えば、ピークディテクターの出力)を測定するサンプリング周期と
しては、特に限定されないが、例えば、0.2ミリ秒以下であることが好ましく、0.1
5ミリ秒以下であることがより好ましく、0.1ミリ秒以下であることがさらに好ましく
、0.05ミリ秒以下であることが特に好ましい。サンプリング周期が0.2ミリ秒以下
であることにより、ハゼ音と装置音との区別の精度を高めることができる。ハゼ音は急峻
にピークが立ち上がるのに対し、装置音は急峻にピークが立ち上がらないという特徴を有
する。
【0048】 40
 具体的に、上述したような所定の周波数域及び半値幅を有する音を検出する手法として
は、例えば、所定の周波数域及び半値幅を有するバンドパスフィルタを用いることができ
る。
【0049】
 なお、このようにしてハゼを検出したと判断した場合、例えば、所定の期間、焙煎温度
(例えば、火力)を増加・減少させるか、又は焙煎装置内の空気の送風量を変更させる等
の操作を行う。送風量の調整は、例えば、焙煎装置に設けた排気ダンパーの開閉により調
整することができる。これにより、所望の香味を有するコーヒー豆を精度良く製造するこ
とができる。
【0050】 50
(9) JP 6211223 B1 2017.10.11

 <コーヒー豆のハゼ検知装置>
 本実施形態に係るコーヒー豆のハゼ検知装置は、例えば、上述のコーヒー豆のハゼ検知
方法を実現することができる装置である。以下に本発明の一実施形態であるコーヒー豆の
ハゼ検知装置1について、図1を用いて説明する。
【0051】
 図1は、コーヒー豆のハゼ検知装置の概略図である。図1に示すように、コーヒー豆の
ハゼ検知装置1は、音圧測定部10と、ハゼ検知部11と、制御部12と、を備える。音
測定部10は、焙煎装置3の焙煎容器30の近傍に配置される。また、制御部12は、焙
煎装置3の焙煎条件(温度、時間等)を調整する調整部36に接続される。
【0052】 10
 〔焙煎装置3〕
 必須の態様ではないが、まず、測定対象であるコーヒー豆の焙煎に用いる焙煎装置3に
ついて説明する。焙煎装置3は、コーヒー豆に対して熱を供給可能な熱源を有し、このコ
ーヒー豆を焙煎可能な手段である。コーヒー豆の焙煎装置としては、特に限定されず、従
来の公知のコーヒー豆の焙煎手段のいずれのものを使用することもできるが、本実施形態
においては、焙煎装置3は、焙煎容器30と、熱源部31と、送風部32と、温度測定部
33と、排気部34と、チャフコレクター35と、調整部36と、を備える。
【0053】
 焙煎容器31は、コーヒー豆を収容するための容器である。焙煎容器31としては、特
に限定されず、コーヒー豆を混合するために、回転可能に構成することが好ましい。また 20
、焙煎容器31としては、上述したコーヒー豆のハゼ発生時期予測方法と同様の回転条件
とすることができるものを用いることができる。
【0054】
 熱源部31は、熱を発生可能な手段であり、例えば、電熱ヒーター等を用いることがで
きる。また、熱源部31としては、例えば、上述したコーヒー豆のハゼ発生時期予測方法
と同様の加熱温度とすることができるものを用いることができる。
【0055】
 送風部32は、熱源部31から発する熱を焙煎容器30に収容されたコーヒー豆に対し
て送風可能な手段である。送風部32は、上述したコーヒー豆のハゼ発生時期予測方法と
同様の送風条件とすることができるものを用いることができる。送風部32としては、例 30
えば、圧縮機(ブロワ)等を用いることができる。
【0056】
 温度測定部33は、焙煎容器30内の雰囲気温度を測定する手段である。
【0057】
 排気部34は、焙煎中のコーヒー豆から排出された気体を排気する部位である。
【0058】
 チャフコレクター35は、コーヒー豆のチャフ(いわゆる、シルバースキン)を除去す
る手段である。
【0059】
 調整部36は、コーヒー豆の焙煎条件を直接的に変更可能な手段である。例えば、制御 40
部12からの指示に応じて、焙煎条件を変更し、調整することができる。例えば、制御部
12からの指示に応じて、焙煎温度や焙煎時間等の焙煎条件を変更したり、焙煎を終了さ
せ(つまり、熱源からの熱の供給を停止させ)、焙煎容器30内において冷却を開始した
り、あるいは、冷却を開始してから、排出口の温度が一定温度になったことを指標として
冷却を停止したりするように制御できる。
【0060】
 〔ハゼ検出装置2〕
 ハゼ検知装置2は、音圧測定部20と、ハゼ検知部21と、制御部22と、を備える。
ハゼ検出装置2は、焙煎装置3の焙煎容器30内に格納されるコーヒー豆から発生する音
のうち、5kHz以上80kHz以下の範囲に含まれる範囲の周波数の音圧を経時的に測 50
(10) JP 6211223 B1 2017.10.11

定することにより、ハゼの発生を検知する。以下、各部についてそれぞれ説明する。なお
、制御部22は必須の態様ではない。
【0061】
 (音測定部20)
 本実施形態に係る音測定部20について説明する。音測定部20は、焙煎装置3の焙煎
容器31に格納されたコーヒー豆から発生するハゼ音を測定可能に構成されるものである
。そしてこのため、音測定部20は、焙煎容器30の近傍に配置されて用いられる。
【0062】
 音測定部20は、焙煎中のコーヒー豆から発生するハゼ音を検出及び例えば電気信号等
の信号に変換可能な手段である。具体的に、音測定部20としては、一般的なマイクロフ 10
ォン等を用いることができる。より具体的には、Knowles社 SPU0410LR
5H−QB 100Hz−80kHz等を用いることができる。音測定部20は、本実施
形態においては、焙煎容器30の近傍に配置されているが、この例に限定されず、少なく
とも5kHz以上80kHz以下の範囲に含まれる範囲の周波数の音圧を経時的に測定す
ることができるものであれば特に限定されない。
【0063】
 (ハゼ検知部21)
 ハゼ検知部21は、音測定部20により測定した音の信号から、ハゼ音を抽出し、計数
するものである。
【0064】 20
 以下、ハゼ検知部21のより具体的な実施形態について、図を参照して説明するが、本
発明は以下の具体例に限定されるものではない。
【0065】
 図2は、ハゼ検知部の一例の概略図である。ハゼ検知部21は、例えば、バンドパスフ
ィルタ211、ピークディテクタ212、波形解析器213及び計数器214を備える。
【0066】
 バンドパスフィルタ211は、音圧測定部20(例えば、マイクロフォン)により検出
した音の電気信号のうち、所定の周波数の範囲を有する信号のみを抽出するものである。
本実施形態に係るコーヒー豆のハゼ検知方法においては、例えばこのようなバンドパスフ
ィルタ211を用いることにより、5kHz以上80kHz以下の範囲に含まれる範囲の 30
周波数の音のみを抽出し、その周波数の範囲のみにおける音圧を測定することができる。
【0067】
 ピークディテクタ212は、バンドパスフィルタ211を通過した所定の周波数の音の
電気信号の交流成分のプラス側のピーク値を検出し、所定の期間保持する。
【0068】
 波形解析器213は、ピークディテクタ212からの出力波形のうち、波形の立ち上が
り前後を比較解析し、急峻に立ち上がった波形をハゼ音であると判定するものである。波
形解析器213は、ハゼ音を判定した都度、計数器214に信号を送信する。
【0069】
 計数器214は、波形解析器213から受信した信号を所定の期間ごとに計数し、所定 40
の期間(例えば、1秒、10秒等)ごとに発生したハゼ音の数を制御部22に送信する。
【0070】
 (制御部22)
 必須の態様ではないが、制御部22は、ハゼ検出部21によるハゼ検出に基づいて、焙
煎装置3における焙煎の条件を調整可能な手段である。
【0071】
 制御部22は、ハゼ検出部21からハゼ発生の出力を受け取り、そのデータに基づいて
、焙煎装置3の制御部に焙煎条件を変更するように指示をする。これにより、焙煎装置3
における焙煎の条件を調整可能とする。そして、このようにして、焙煎条件を調整するこ
とにより、適切に焙煎条件が制御された焙煎コーヒー豆を製造することができる。 50
(11) JP 6211223 B1 2017.10.11

【0072】
 制御部22において、焙煎条件の調整する具体的な方法としては、目的に応じて適宜選
択されるものであり、特に限定されないが、例えば、コーヒー豆の焙煎度に連動して、コ
ーヒー豆に対する熱の供給の条件(例えば、焙煎温度、焙煎時間、送風の条件、回転ドラ
ムの回転の条件等)を変更し、焙煎の進行速度等を調整することができる。また、コーヒ
ー豆に対する熱の供給を停止することもできる。より具体的には、コーヒー豆に対する熱
の供給を停止するように調整部36に指示することができる。
【0073】
 また、本実施形態においては備えていないが、制御部22は、一酸化炭素量における気
体ポンプのスイッチのオン・オフを指示することができる。また、制御部22は、データ 10
(例えば、ハゼ音発生回数、焙煎開始からの経過時間、焙煎温度内の温度、気温等)を記
録するために、例えば、別のコンピュータ(パソコン)にデータを送るように構成するこ
ともできる。
【0074】
 なお、ハゼ検知部11及び制御部12は、それぞれが通信可能な状態で音圧測定部10
及び調整部36に接続されていればよい。例えば、ハゼ検知部11及び制御部12をネッ
トワーク上のサーバに設置することができる。
【0075】
 <コーヒー豆のハゼ発生時期予測方法>
 本実施形態に係るコーヒー豆のハゼ発生時期予測方法は、焙煎中のコーヒー豆から発生 20
する一酸化炭素量を測定する一酸化炭素量測定工程と、その一酸化炭素量に基づいて、コ
ーヒー豆のハゼ発生予定時期を予測する予測工程と、を有する。本実施形態に係るコーヒ
ー豆のハゼ発生時期予測方法は、このような構成を有することにより、ハゼの発生予定時
期を適切に予測することができる。そして、その結果に基づき、コーヒー豆の焙煎条件を
制御することができる。なお、本実施形態に係るコーヒー豆のハゼ発生時期予測方法によ
れば、その焙煎の過程においてコーヒー豆から発生する2度のハゼ音のうち、第1のハゼ
及び第2のハゼいずれも予測することができる。
【0076】
 〔焙煎工程〕
 焙煎工程は、例えば、コーヒー豆に対して熱を供給し、コーヒー豆を焙煎する工程であ 30
る。
【0077】
 熱の供給手段としては、特に限定されず、従来のコーヒー豆の焙煎において使用される
公知のいずれの手段を用いることもできる。例えば、焙煎容器(例えば、コーヒー豆の焙
煎用の回転ドラム)内に収容されたコーヒー豆に対して、電熱ヒーター等の熱源から発す
る熱を圧縮機(ブロワ)、送風機等により送風し、コーヒー豆に熱風をあてることにより
、熱の供給を行うことができる。供給する熱の温度は、通常のコーヒー豆の焙煎に用いら
れる加熱の温度を用いることができ、例えば、100∼300℃の範囲の温度を用いるこ
とができる。また、熱風の送風量は、コーヒー豆1gあたり毎分0.1∼1Lの範囲内の
風量を用いることができる。なお、焙煎工程における熱を供給する対象のコーヒー豆は、 40
焙煎されたコーヒー豆の原料となるコーヒー豆のことを指す。
【0078】
 コーヒー豆としては、特に限定されず、従来の公知のコーヒー豆の銘柄(例えば、ガテ
マラ、ブラジル(サントス、ダテーラ等)、エチオピア(モカイルガチェフ等)、コスタ
リカ、キリマンジャロ、ベトナム、コロンビア、タンザニア、モカ、ブルーマウンテン、
クリスタルマウンテン、ケニア、マンデリン、メキシコ等)等を、1種単独で使用するこ
とも、2種以上をブレンドして用いることもできる。また、銘柄以外にも、ロット、産地
、精製方法及び生産年について、いずれのコーヒー豆を用いることもできる。さらに、銘
柄、ロット、産地、精製方法及び生産年のいずれかが異なる、2種以上のブレンドであっ
ても、ハゼ発生時期を予測することができる点で、本実施形態に係るコーヒー豆のハゼ発 50
(12) JP 6211223 B1 2017.10.11

生予定時期予測方法は有用である。
【0079】
 焙煎方法としては、例えば、焙煎容器(回転ドラム)を回転させて、コーヒー豆を混ぜ
ながら、コーヒー豆を焙煎することができる。回転の条件としては、従来の公知の条件を
用いることができ、例えば、5∼60rpmの条件を用いることができる。
【0080】
 焙煎工程において、温度センサー等の温度測定手段を用いて、焙煎容器内の温度を測定
してもよく、測定しなくてもよい。焙煎容器内の温度を測定することで、焙煎時の焙煎容
器内の雰囲気温度を確認することができる。
【0081】 10
 本発明における焙煎工程において、焙煎しながら、コーヒー豆のチャフ(いわゆる、シ
ルバースキン)を除去するために、焙煎により発生したチャフを回収することができる。
【0082】
 本発明における焙煎工程において、焙煎時間は、指標とする一酸化炭素の設定値に応じ
て、自ずと定まるものであるが、例えば、300∼1500秒の範囲内で行うことができ
る。
【0083】
 〔一酸化炭素量測定工程〕
 一酸化炭素量測定工程は、焙煎中のコーヒー豆から発生する一酸化炭素量を測定する工
程である。 20
【0084】
 測定対象の一酸化炭素の量としては、特に限定されず、発生した一酸化炭素の絶対量及
び相対量(濃度)いずれを用いることもできる。
【0085】
 一酸化炭素の測定手段(センサー)としては、特に限定されず、例えば、根本特殊化学
社製のNAP−505等を用いることができる。
【0086】
 測定箇所(測定対象)としては、特に限定されず、例えば、焙煎が行われる箇所(空間
)、又は焙煎が行われる箇所から排気したものを測定することができる。排気したものを
測定する場合、一酸化炭素を測定するための測定手段に一酸化炭素を送気する際に、より 30
正確に測定を行うために、フィルター(例えば、チャフフィルター等)による異物の除去
を行うことが好ましい。また、送気は、一酸化炭素の量を正確に測定するために、一定の
速度で行うように行うことが好ましい。一酸化炭素の送気は、送気の速度を調整するため
に、気体ポンプにより行うことも、気体ポンプを用いずに行うこともできる。送気により
、測定箇所の圧力が変化する場合、測定箇所の圧力を一定に保つために、圧力を測定箇所
の外部に逃がすこともできる。
【0087】
 測定頻度としては、特に限定されず、連続的に行うことも、断続的に行うこともできる
。連続的又は断続的いずれであっても、経時的に測定を行うことが好ましい。経時的に測
定を行うことにより、将来の一酸化炭素発生量をより正確に予測することができ、その結 40
果として、ハゼ発生時期をより正確に予測することができる。
【0088】
 〔予測工程〕
 予測工程は、一酸化炭素量に基づいて、コーヒー豆のハゼ発生予定時期を予測する工程
である。
【0089】
 具体的に、予測工程では、一酸化炭素量測定工程で測定した一酸化炭素の量が閾値を超
えた場合に、所定の期間後にハゼが発生することを予測する。閾値の決定方法としては、
例えば予め複数種類(銘柄、生産年等)の豆で一酸化炭素量とハゼ発生時期の相関を記録
し、ハゼ発生の所定期間前(例えば、1∼2分前)の一酸化炭素量を閾値とする。そして 50
(13) JP 6211223 B1 2017.10.11

、予測工程では、測定した一酸化炭素量が閾値を超えた場合に、その時点をハゼ発生の所
定期間前(例えば、1∼2分前)と判断し、その時点から所定期間後(例えば、1∼2分
後)にハゼが発生すると予想する。
【0090】
 また、ハゼ発生時又は発生中の一酸化炭素量を閾値としてハゼ発生時期を予想すること
もできる。さらに、実際の運用で制御装置等に学習させることもできる。
【0091】
 なお、コーヒー豆のハゼ発生予定時期を測定した後、コーヒー豆の焙煎条件を変更して
焙煎コーヒー豆を製造する場合、実際には、コーヒー豆のハゼ発生予定時期より所定期間
前(例えば、1∼2分前)の条件変更時期を見積もる。このようにして条件変更時期を見 10
積もって焙煎条件を変更することにより、所望の香味を有するコーヒー豆を得ることがで
きる。
【0092】
 そして、このようにしてハゼ発生を予測した場合、例えば、所定の期間、焙煎温度(例
えば、火力)を増加・減少させるか、又は焙煎装置内の空気の送風量を変更させる等の操
作を行う。送風量の調整は、例えば、焙煎装置に設けた排気ダンパーの開閉により調整す
ることができる。これにより、所望の香味を有するコーヒー豆を精度良く製造することが
できる。
【0093】
 <コーヒー豆のハゼ発生予定時期予測装置> 20
 本実施形態に係るコーヒー豆のハゼ発生予定時期予測装置は、例えば、上述のコーヒー
豆のハゼ発生時期予測方法を実現することができる装置である。以下に本発明の一実施形
態であるコーヒー豆のハゼ発生予定時期予測装置について、図3を用いて説明する。
【0094】
 図3は、コーヒー豆のハゼ発生予定時期予測装置の概略図である。図3に示すように、
コーヒー豆のハゼ発生予定時期予測装置2は、一酸化炭素量測定部20と、予測部21と
、制御部22と、を備える。一酸化炭素量測定部20は、焙煎装置3の排気部34に接続
される。また、制御部22は、焙煎装置3の焙煎条件(温度、時間等)を調整する調整部
36に接続される。
【0095】 30
 〔焙煎装置3〕
 必須の態様ではないが、測定対象であるコーヒー豆を焙煎するための焙煎装置としては
、排気部34が、一酸化炭素量測定部20に一酸化炭素を送気可能に構成されること及び
調整部36が予測部11と通信可能に接続されること以外、上述した焙煎装置3と同様の
ものを用いることができる。
【0096】
 〔ハゼ発生予定時期予測装置2〕
 ハゼ発生予測時期測定装置2は、一酸化炭素量計測部20と、予測部21と、制御部2
2を有する。ハゼ発生予測時期測定装置2は、上述した焙煎装置3内において焙煎される
コーヒー豆から発生する一酸化炭素量に基づき、ハゼの発生時期を予測する。以下、各部 40
についてそれぞれ説明する。なお、制御部12は必須の態様ではない。
【0097】
 (一酸化炭素量測定部20)
 次に、本実施形態に係る一酸化炭素量測定部20について説明する。一酸化炭素量測定
部20は、焙煎装置3から送られた一酸化炭素の量を測定可能に構成されるものである。
なお、図示しないが、本実施形態に係るコーヒー豆のハゼ発生予定時期測定装置2は、一
酸化炭素量測定部20と排気部34の間にフィルターをさらに備えるものである。
【0098】
 一酸化炭素量測定部20は、焙煎中のコーヒー豆から発生する一酸化炭素の量を測定可
能な手段である。一酸化炭素量測定部20としては、例えば、根本特殊化学社製のNAP 50
(14) JP 6211223 B1 2017.10.11

−505等を用いることができる。一酸化炭素量測定部20は、本実施形態においては、
焙煎装置4から排気された一酸化炭素を測定するように、焙煎装置3とは別に(焙煎装置
3の外部に)構成したが、焙煎装置3の内部に一酸化炭素量測定部20を設けることもで
きる。
【0099】
 また、フィルターは、焙煎装置3から送気された一酸化炭素が一酸化炭素量測定部20
に達するまでの間の一酸化炭素の通路に配置されるものである。このようなフィルターに
よって、一酸化炭素量測定部20に一酸化炭素を送気する際に、異物(例えば、チャフ)
を除去することができるため、より正確な一酸化炭素量の測定を行うことができる。フィ
ルターとしては、特に限定されないが、例えば、チャフフィルター等を用いることができ 10
る。
【0100】
 また、コーヒー豆のハゼ発生予定時期予測装置1は、本発明の効果を損なわない範囲に
おいて、適宜他の構成要素を備えることができる。例えば、一酸化炭素を測定部1に送気
するための気体ポンプをさらに備えることができる。
【0101】
 (予測部21)
 予測部21は、一酸化炭素量測定部20による一酸化炭素量の測定結果に基づいて、コ
ーヒー豆のハゼ発生予定時期を予測する手段である。
【0102】 20
 (制御部22)
 必須の態様ではないが、制御部22は、予測部21によるハゼ発生予定時期の予測に基
づいて、焙煎装置3における焙煎の条件を調整可能な手段である。
【0103】
 制御部22は、予測部21からハゼ発生予定時期の出力を受け取り、そのデータに基づ
いて、焙煎装置3の制御部に焙煎条件を変更するように指示をする。これにより、焙煎装
置3における焙煎の条件を調整可能とする。そして、このようにして、焙煎条件を調整す
ることにより、適切に焙煎条件が制御された焙煎コーヒー豆を製造することができる。
【0104】
 制御部22において、焙煎条件の調整する具体的な方法としては、目的に応じて適宜選 30
択されるものであり、特に限定されないが、例えば、コーヒー豆の焙煎度に連動して、コ
ーヒー豆に対する熱の供給の条件(例えば、焙煎温度、焙煎時間、送風の条件、回転ドラ
ムの回転の条件等)を変更し、焙煎の進行速度等を調整することができる。また、コーヒ
ー豆に対する熱の供給を停止することもできる。
【0105】
 また、本実施形態においては備えていないが、制御部22は、一酸化炭素量における気
体ポンプのスイッチのオン・オフを指示することができる。また、制御部22は、データ
(例えば、一酸化炭素濃度、焙煎開始からの経過時間、焙煎温度内の温度、気温等)を記
録するために、例えば、別のコンピュータ(パソコン)にデータを送るように構成するこ
ともできる。 40
【0106】
 なお、予測部21及び制御部22は、それぞれが通信可能な状態で一酸化炭素量測定部
20及び調整部36に接続されていればよい。例えば、予測部21及び制御部22をネッ
トワーク上のサーバに設置することができる。
【0107】
 <ハゼ検知方法とハゼ発生時期予測方法を組み合わせ>
 なお、上述したハゼ検知方法とハゼ発生時期予測方法を組み合わせて用いることができ
る。これにより、ハゼ発生をより高精度に検知することができる。
【実施例】
【0108】 50
(15) JP 6211223 B1 2017.10.11

 <焙煎コーヒー豆製造装置の準備>
 焙煎コーヒー豆製造装置4として、図1に示したハゼ検知装置1、図3に示したハゼ発
生予定時期予測装置2、及び図1及び図3に示した焙煎装置3をいずれも備える装置を作
製した(図4)。それぞれについて、以下に詳細に説明する。
【0109】
 [焙煎装置3]
 焙煎手段3は、GeneCafe CBR−101(GeneSys社製)を用いた。
焙煎手段3は、焙煎容器30と、熱源部31としての電熱ヒーターと、送風部32として
のブラワと、温度測定部33としての温度センサーと、排気部34と、チャフコレクター
35と、調整部36とを備えるものである。 10
【0110】
 なお、GeneCafe CBR−101は、通常、焙煎容器30としての円筒形の耐
熱ガラスを有する。本実施例においては、ハゼ音を透過させるため、0.1tの真鍮製の
筒を製造し、変更して用いた。
【0111】
 調整部36は、温度や焙煎時間のタイマーに応じてコーヒー豆の焙煎条件を直接変更可
能なものである。
【0112】
 排気部34は、ハゼ発生予定時期予測装置2の一酸化炭素量測定部10に排気ガスを供
給するように設計した。 20
【0113】
 本実施例において、具体的な焙煎条件としては、ドラム回転数10∼11rpmであり
、風量約150L/分、温度調整範囲60∼250℃とした。
【0114】
 [ハゼ検知装置1]
 ハゼ検知装置1における各部の詳細は、以下のとおりである。
【0115】
 (音圧測定部10)
 音圧測定部10としては、マイクロフォン(Knowles社 SPU0410LR5
H−QB)を用いた。 30
【0116】
 (ハゼ検知部11)
 ハゼ検知部11は、図3に示したように、バンドパスフィルタ111と、ピークディテ
クタ112と、波形解析器113と、計数器114と、を備えるものを構成した。
【0117】
 バンドパスフィルタ111としては、アナログオペアンプによる2段増幅型バンドパス
フィルタを用いた。ピークディテクタ112としては、アナログオペアンプとアナログコ
ンパレータで構成した。波形解析器113としては、アナログコンパレータとマイクロコ
ンピュータで構成した。計数器114としてはマイクロコンピュータを用いた。
 (制御部12、22) 40
 また、制御部12、22では、データを記録するために、10秒あたりのハゼ音の発生
回数、COガス濃度、経過秒、設定温度、排気温度をコンピュータ(パソコン)へ送信す
るように設定した。
【0118】
 [ハゼ発生予定時期予測装置2]
 ハゼ発生予定時期予測装置2としてのセンサーユニットは、更に、フィルター、気体ポ
ンプを備えるものとして設計した。ハゼ発生予定時期予測装置2における各部の詳細は、
以下のとおりである。
【0119】
 (一酸化炭素量測定部10) 50
(16) JP 6211223 B1 2017.10.11

 一酸化炭素量測定部10としては、根本特殊化学社製のNAP−505(CO測定範囲
:0−1000ppm)のセンサーデバイスを用いて、CO(一酸化炭素)を測定した。
【0120】
 (チャフフィルター)
 チャフフィルターは、焙煎装置3の排気部34から供給された排気ガスに混じったチャ
フ等の異物を除去するためのものである。チャフコレクターとしては、上述のGeneC
afe CBR−101(GeneSys社製)の付属品を用いた。
【0121】
 (気体ポンプ)
 気体ポンプは、焙煎装置3における排気部34からの排気ガスをハゼ発生予定時期予測 10
装置1へ送るものである。気体ポンプとしては、KNF社製のNF−11を用いた。この
気体ポンプ能力は、100ml/分であった。
【0122】
<実施例1>
 上述した焙煎コーヒー豆製造装置4を用いて、250gのコーヒー豆(モカシダモG4
)を焙煎した。加熱温度を230℃で一定とした。このとき、ハゼ未発生時(焙煎開始か
ら約440秒)の焙煎装置の装置音及び環境雑音を主とする音と、ハゼ発生時(焙煎開始
から約620秒)のハゼ音を主とする音を測定し、バンドパスフィルタの入出力及びピー
クディテクタの出力の3チャネルを同時にデジタルオシロスコープで測定・記録した。
【0123】 20
 図5(a)∼(c)は、焙煎装置の装置音及び環境雑音のマイクロフォンの出力波形(
図5(a))、10kHzバンドパスフィルタ通過後の波形(図5(b))、ピークディ
テクタ出力の波形(図5(c))である。
【0124】
 図6(a)∼(c)は、ハゼ音のマイクロフォンの出力波形(図6(a))、10kH
zバンドパスフィルタ通過後の波形(図6(b))、ピークディテクタ出力の波形(図6
(c))である。
【0125】
<実施例2>
 (実施例2−1∼2−4) 30
 上述した焙煎コーヒー豆製造装置4を用いて、250gのコーヒー豆を焙煎した。加熱
温度を230℃で一定とした。また、一酸化炭素量測定部において測定された排出ガス中
の一酸化炭素の濃度が600ppmとなったとき、調整部36にて加熱を停止した。
【0126】
 ハゼ音未発生時の期間として、焙煎開始から480∼540秒の60秒間を選択し、そ
の期間の装置音及び環境雑音を測定した。この60秒間の各秒のピーク値を記録し、60
秒間の平均値を記録し、焙煎開始から541秒以降の閾値とした。焙煎開始から541秒
以降では、測定した音圧がこの閾値を超えており、閾値を超えた時より0.5ミリ秒前か
らの3ミリ秒前の期間に閾値の1/4以上の電圧が記録されていない場合、ハゼ音と判断
し、計数器に信号を送信する。一方で、この期間に閾値の1/4以上の電圧が記録されて 40
いる場合、雑音と判断し、計数器に信号を送信しないものとした。
【0127】
 コーヒー豆の銘柄としては、サントスNo.2(実施例2−1)、モカシダモG4(実
施例2−2)、ガテマラSHB(実施例2−3)、ブラジルダテーラリザーブ(実施例2
−4)を用いた。図7∼10は、焙煎開始からの時間における排出ガス中の一酸化炭素の
濃度、10秒ごとのハゼ発生回数、設定温度及び排気温度のプロファイルである。
【0128】
 表1に、実施例2−1∼2−4において、第1のハゼ音発生時の排出ガス中の一酸化炭
素の濃度、第2のハゼ音発生時の排出ガス中の一酸化炭素の濃度、焙煎開始から4ppm
、5ppm、30ppm、40ppm、50ppmまでの時間を示す。なお、表1におい 50
(17) JP 6211223 B1 2017.10.11

ては、排出ガス中の一酸化炭素の濃度が3ppm以上30ppm未満の範囲で検知した最
初のハゼ音を「第1のハゼ音の開始」、同50ppm以上で検知した最初のハゼ音を「第
2のハゼ音の開始」としている。
【0129】
【表1】

10

【0130】
 (実施例2−5∼2−8)
 180℃で300秒、200℃で120秒、224℃で120秒、その後230℃で保
持する温度プロファイルにおいて、排出ガス中の一酸化炭素の濃度が9ppmとなったと
き20秒間そのときの設定温度を10℃低下させ、また、排出ガス中の一酸化炭素の濃度
が80ppmとなったとき20秒間そのときの設定温度を30℃低下させるよう設定した
以外、実施例2−1∼2−4と同様にして、コーヒー豆を焙煎した。図11∼14は、焙 20
煎開始からの時間における排出ガス中の一酸化炭素の濃度、10秒ごとのハゼ発生回数、
設定温度及び排気温度のプロファイルである。
【0131】
 表2に、実施例2−5∼2−8において、第1のハゼ音発生時の排出ガス中の一酸化炭
素の濃度、第2のハゼ音発生時の排出ガス中の一酸化炭素の濃度、焙煎開始から4ppm
、5ppm、30ppm、40ppm、50ppmまでの時間を示す。なお、表2におい
ては、排出ガス中の一酸化炭素の濃度が3ppm以上30ppm未満の範囲で検知した最
初のハゼ音を「第1のハゼ音の開始」、同50ppm以上で検知した最初のハゼ音を「第
2のハゼ音の開始」としている。
【0132】 30
【表2】

【0133】 40
 表1及び表2を対比すると、焙煎温度のプロファイルに相違があるにも関わらず、実施
例2−1∼2−8においてはいずれも、第1のハゼ音を検知したときの排出ガス中の一酸
化炭素の濃度と、第2のハゼ音を検知したときの排出ガス中の一酸化炭素の濃度は、それ
ぞれ5ppm∼9ppm、55ppm∼81ppmの範囲にある。したがって、ハゼ音の
発生と、排出ガス中の一酸化炭素の濃度はコーヒー豆の個体差や焙煎温度にもかかわらず
、対応関係があるものと示唆される。
【0134】
 上述した焙煎コーヒー豆製造装置4を用いて、250gのコーヒー豆(モカシダモG4
)を焙煎した。加熱温度を230℃で一定とした。解析の対象とする音の中心周波数(k
Hz)と半値幅(kHz)を表3のとおり変更して、第1のハゼ発生時(焙煎開始後54 50
(18) JP 6211223 B1 2017.10.11

9∼789秒)及び第2のハゼ発生時(焙煎開始後799秒∼999秒)それぞれにおけ
る、ハゼ発生回数(各期間の総発生回数)、10秒あたりの平均のハゼ発生回数を測定す
るとともに、第1のハゼ発生時及び第2のハゼ発生時のハゼ発生回数の分布について、歪
度及び尖度を計算した。その結果について、表3に併せて示す。
【0135】
【表3】

10

20

30

【0136】
<実施例3>
 上述した焙煎コーヒー豆製造装置4を用いて、250gのコーヒー豆(モカシダモG4
)を焙煎した。加熱温度を230℃で一定とした。
【0137】
 ハゼ音未発生時の期間として、焙煎開始から480∼540秒の60秒間を選択し、そ
の期間の装置音及び環境雑音を測定した。この60秒間の各秒のピーク値を記録し、60
秒間の平均値を記録し、ハゼ音発生時の期間における閾値とした。
【0138】 40
 ハゼ音発生時の期間として、焙煎開始から590∼620秒の30秒間を選択し、その
期間のハゼ音を測定し、バンドパスフィルタの入出力及びピークディテクタの出力の3チ
ャネルを同時にデジタルオシロスコープで測定・記録した。また、併せて聴覚でハゼ音、
装置音及び豆のドラム内での流動音を測定した。なお、この条件及び時間においては、比
較的ハゼ音の密度が小さく、聴覚でハゼ音を正確に判定することができる。
【0139】
 そして、測定した音圧がこの閾値を超えており、閾値を超えた時より0.5ミリ秒前か
らの3ミリ秒前の期間に閾値の1/12以上の電圧が記録されていない場合、ハゼ音と判
断し、計数器に信号を送信する。一方で、この期間に閾値の1/12以上の電圧が記録さ
れている場合、雑音と判断し、計数器に信号を送信しないものとした。これにより、ハゼ 50
(19) JP 6211223 B1 2017.10.11

の検知を行った。
【0140】
 次に、計数器に信号を送信する際の電圧値の基準を、閾値の2/12以上(1/6以上
)、閾値の3/12以上(1/4以上)、閾値の4/12以上(1/3以上)、閾値の5
/12以上、閾値の6/12以上(1/2以上)、閾値の7/12以上、閾値の8/12
以上(2/3以上)、閾値の9/12以上(3/4以上)、閾値の10/12以上(5/
6以上)、閾値の11/12以上、閾値の12/12以上(閾値以上)にそれぞれ変更し
、同様にハゼの検知を行った。
【0141】
 表4に、590秒∼619秒間の各秒ごとの聴覚によるハゼ検出回数と、計数器に信号 10
を送信する際の電圧値の基準を上述のとおり変更して焙煎コーヒー豆製造装置4により測
定したハゼ検知回数を示す。
【0142】
【表4】

20

30

40

50
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※表中、小括弧(())は誤検知を、大括弧([])は聴覚により判定が不可能なものを
意味している。
【0143】
 計数器に信号を送信する際の電圧値の基準を、閾値の3/12以上(1/4以上)とし
た場合、誤検知数が最も少なく、且つ数多くハゼ音を検知できることが分かった。
【符号の説明】
【0144】
 1    ハゼ検知装置
 10   音圧測定部
 11   ハゼ検知部 10
 111  バンドパスフィルタ
 112  ピークディテクタ
 113  波形解析器
 114  計数器
 12   制御部
 2    ハゼ発生予定時期予測装置
 20   一酸化炭素量測定部
 21   予測部
 22   制御部
 3    焙煎装置 20
 30   焙煎容器
 31   熱源部
 32   送風部
 33   温度測定部
 34   排気部
 35   チャフコレクター
 36   調整部
 4    焙煎コーヒー豆製造装置
【要約】
【課題】コーヒー豆の焙煎に際し、ハゼの発生時期を簡易且つ正確に検知又は予測する方 30
法を提供する。
【解決手段】本発明に係るコーヒー豆のハゼ検知方法は、焙煎中のコーヒー豆及び焙煎装
置から発生する5kHz以上80kHz以下の範囲に含まれる範囲の周波数の音を経時的
に測定するに際し、ハゼ未発生期間中の音圧の平均値を算出する平均値算出工程と、音圧
の平均値を閾値として用いて、測定した音圧が閾値を超え、且つ閾値を超えた時点より0
.1ミリ秒前から100ミリ秒前までの期間から選択される0.1ミリ秒以上99ミリ秒
以下の時間幅において、閾値のn倍以上(nは、1/6超1/3未満)の音圧を検知して
いない場合に、コーヒー豆のハゼを検知したと判断するハゼ検知工程と、を有する。
【選択図】図4
40
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【図1】 【図2】

【図3】

【図4】 【図5】
(22) JP 6211223 B1 2017.10.11

【図6】 【図7】

【図8】 【図9】
(23) JP 6211223 B1 2017.10.11

【図10】 【図11】

【図12】 【図13】
(24) JP 6211223 B1 2017.10.11

【図14】
(25) JP 6211223 B1 2017.10.11

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(56)参考文献 カナダ国特許出願公開第2267608(CA,A1)  
豪国特許出願公開第2004100812(AU,A1)  
WILSON, Preston S. et al.,Coffee roasting acoustics,The Journal of the Acoustical So
ciety of America,2014年 5月13日,Vol.135, No.6,EL266

(58)調査した分野(Int.Cl.,DB名)
A23F
G01H 10
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
FSTA/WPIDS(STN)

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