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220 (22) 光学 第5巻 第6号(1976年12月)

ア フ ォー カ ル系 の 評 価

小川 良 太*・ 手 島 康 幸*・ 立原 悟*

(1976年9月1日 受 理)

On the Evaluation of the Afocal Lens System

Ryota OGAWA, Yasuyuki TEJIMA and Satoru TACHIHARA

Department of Optical Research, Asahi Optical Co., Ltd.


(2-36,Maeno-cho, Itabashi-ku,Tokyo 174)

Assumingthe viewingopticalsystem such asspectacleglasses,


binocular,telescope,asan afocallenssystem,the
performanceevaluationmethods of thesystemarediscussed.
The firstproblemisthe claculationof the White LightMTF which issolvedby applyingthe GeometricalMTF
calculation
to the afocalsystem.The secondproblem istheevaluation method of the chromaticaberration.This
problem issolvedby the expressionof the chromaticitydistribution,
which is appearedat the boundary of the
polychromaticEdge SpreadFunction(E.S.F.)of theafocalimage,on theChromaticityDiagram.
As an instance of the calculation, the data of the binocular lens was used.

な い.し た が っ て,色 収 差 のた めに被 写 体 の 像の 輪 郭 に


1. は じ め に
現 わ れ る 色,す な わ ちEdge Spread Function (E.S.F.)の

レンズの 性能 を表 わす 要因 の 中で鮮 鋭 度 に関 す る一 般 色 の に じ み をMTFと 合 せ て 評 価 す る必 要 が あ る.こ こ

的 な 表示 方 法 と してMTFが 定着 して以 後,フ ィル ムや で は,白 色MTFを 計 算 す る際 に行 な う光線 追跡 の結 果

視 覚系 も一 種 の画 像伝 達 要素 と考 えて空 間 周 波数 特 性に を 流 用 し,Line Spread Function (L.S.F.)を 求 め,こ れか

よ り表 示 され る よ うに な った.特 に視 覚 系 に関 して は, ら 多 色E.S.F.を 計 算 し,そ の エ ッジ に 現 わ れ る色 の に じ

い くつ か の研究 機関 で デー ター が 得 られ てお り,そ の概 み を色 度 図 上 に 表 示 す る方 法 に つ い て も解 説 す る.

要,そ の傾 向,数 値 は公 表 され て い る.し か しなが ら視


2. ア フ ォ ー カ ル 系 のMTF
覚系 に 直接 コ ン タク トす る 眼鏡,双 眼鏡,望 遠 鏡 の よ う

な観測 光 学 系の 性 能評 価 につ いて は,MTFが 設計実 務 2.1 ア フォー カル 系 の収 差 の定 義

の場面 で用 い られ て い るこ とが 少 な い.そ の理 由 と して, 光 学 系 が複 数 の系 か ら構 成 され る画 像 伝達 系 の 中 に組


レンズ系 が ア フ ォー カ ル とな るた めに 比較 的不 慣 れ で あ み 込 まれ て い る場 合,こ の系 の み を取 り出 してMTFで

り,ま た プ ロ グラ ミン グに若 干 の面 倒 さが あ る ため と思 評価 す るに はMTFの 積 の法 則 の成 立条 件,す なわ ち そ

わ れ る.こ こ では 視覚 系 に直 接 コ ンタ ク トす る光 学 系 を の系 と コン タ ク トす る前 後 の 系 との接 点 がイ ンコ ヒー レ

ア フ ォー カル 系 と して捕 え,そ の 鮮鋭 度 を評価 す る ため ン ト結合 にな って い るか ど うか に 注意 し な けれ ば な らな

に,第 一 に ア フ ォー カ ル系の 白色MTFの 計算 方法 に つ い.本 報 で対 象 とす る観 察 系 は アフ ォー カル系 であ り,

い て解 説 す る. そ の直 後 に フ ォー カル 系 と して の視 覚 系 が 直 接 コン タ ク

第二 の 問題 はア フ ォーカ ル系 の色収 差 の 評価 であ る. トす る た め に,両 系 の接 点 は コ ヒー レ ン ト結合 とな り,

す な わ ち白色MTFは 色に 対 す る情 報が,波 長 に関 す る 厳密 には ア フォー カル 系+視 覚 系 を二 ケ に分 離 し,各 々

積 分 の 中に 埋 もれ て しま うため に,MTFは 単 に 白色 の のMTFの 積 で 両系 のMTFを 定 義 す る こと がで きな い.

被 写 体 を全色 盲 の 人が 知覚 す る情 報 の ような もの にす ぎ しか しなが ら光学 設 計 の 立場 か らす ると ア フ ォー カル系

を単独 に評 価 す る必 要 が ある た めに,実 務上 は ア フォー

* 旭 光学 工業(株)光 学 研 究 部 カ ル系 の 出力,す なわ ち眼光 学 系 へ の 入 力 が無 収 差 であ

(東 京 都 板橋 区 前 野 町2-36) る場 合 に,ア フ ォー カル 系 の空 間 周 波 数 特 性 が100%


ア フ ォ ー カル 系 の評 価(小 川 ・手 島 ・立原) 221 (23)

(光 の 回 折 を考 えて いな い)と な るよ うに考 えて差 支 え に よ り,ア フ ォー カ ル 系 の デ フ ォ ー カ ス 量 が 定 義 さ れ る.

ない場 合 が多 い. 収 差 量 は,一 般 光 線PQと 参 照 光 線PQ0の 角 度 で あ る.

以 上 の観点 よ り,MTFの 計 算 の前 段 階 で ある収 差 に こ こ でPは,一 般 光 線 と射 出 瞳 と の 交 点 でP0Pは 瞳ベ ク

つい て は,眼 光 学 系 の調 節 状 態 のみ を考 慮 に入 れ て定 義 トル で あ り単 位 ベ ク トル をu(ux,uy,uz)で 表 わ す.主

す るこ とに す る.Fig. 1 (a)の よ うに 眼光 学系 が 無限遠 光 線,一 般 光 線,参 照 光 線 の 単 位 ベ ク トル は,各 々t0

方に 調 節 され て いる場 合 には,平 行 平面 波 が参 照 波で あ (t0x,t0y,t0z), t(tx,ty,tz), s(sx,sy,sz)と す る.

り,(b)の よ うに 無 限遠 方 よ り近 方 に調 節 されて い る場 合 座 標 系 は 光 の 進 む 方 向 をxと し た 右 手 系 で,メ リデ ィ オ

には 発散 球 面 波 が参 照 波 とな り,参 照 波 の中心(参 照 点) ナ ル 方 向 はy,サ ジ タ ル 方 向 はzで あ る.ベ ク トル の 和

にア フ ォーカ ル系 の全 光線 が 向 う場 合が 無 収差 とな る. の 法 則 よ り,P0P+PQ0=P0Q0と な る の で,以 下のよ

参 照 点 の位 置 は デ ィオ プ トリー で表 わ す こと とす る. うに し て 参 照 光 線 の 単 位 ベ ク トル の成 分 が 求 め ら れ る.

(2)

(3)

Fig. 1 Reference wave and ray are shown as solid (―) 一 般 光 線 と主 光 線 の 方 向 余 弦 は,ス キ ュ ー レイ の 光 線
and dotted (……) line indivisually. The afocal system
追 跡 に よ り求 め る こ と が で き る の で,角 度 で 表 現 し た収
should produce a) straight or b) divergent reference

wave and ray, according to whether the eye is 差 量 は,メ リデ ィオ ナ ル 方 向 を ωy(η,ζ),サ ジタ ル方


focused to infinity, or closer than infinity respec-
向 を ωz(η,ζ)と す る と,
tively.
ωy(η,ζ)=tan-1(ty/tx)-tan-1(sy/sx)

2.2 収 差 の計 算 =tan-1(ty/tx)-tan-1{t0y/t0x
-(η'-η'
眼 光 学 系 の ア イ ポ イ ン ト位 置 を ア フ ォー カ ル 系 の 射 出 0)D/(1000cosω0)} (4)

瞳(η',δ')に 選 ぶ.(Fig. 2)基 準 波 長 の 主 光 線 と射 ωz(η,ζ)=tan-1(tz/tx)-tan-1(sz/sx)

=tan-1(tz/tx)-tan-1{-ζ'D
出 瞳 との 交 点 をP0(η'0,0)と し,主 光 線 上 に 前節 で定

義 した 参 照 点Q0を 設 け る.す な わ ちP0Q0を 〔m〕で 表 /(1000cosω0)} (4)'

わ した逆 数 を 得 る.

2.3 MTFの 計算
(1)
入 射 瞳 座 標(η,ζ)の 関 数 と して(4), (4)'で計 算 さ れ た

収 差 ωy(η,ζ), ωz(η,ζ)は 角度 表 示 で あ りこの 単位

を[degree]と す る と,対 応 す る メ リ デ ィオ ナ ル,サ ジ タ

ル 方 向 の 空 間 周 波数u, vの 単 位 は[lines/degree]と な る.

波 長 λに お け る 幾 何 光 学 的OTFは

Fig.2 Ray situation


arroundthe exitpupilin theafocal
system.P0Q0,PQ, PQ0,and Q0 show principal
ray,
actualray,referenceray and reference
ray point A=有 効 瞳領 域
indivisually.
t0, t, s, and u are unit vectors
respectively. S=入 射 瞳 の 面積
222 (24) 光学 第5巻 第6号(1976年12月)

とな る.ま た 白 色OTFは,
4. 双眼 鏡 による計算 例

4.1 計 算 に用 い た双 眼鏡

で あ り,こ の絶 対 値 Fig. 3は 計 算 例 に 用 い た8×21 BINOCULARで あ る.

R(u,v)=│R(u,v)│ レ ン ズ 構 成 は,対 物 レ ン ズ,プ リ ズ ム,視 野 絞 り を経 て

が 白 色MTFと な る. 接 眼 レ ン ズ 系 とな っ て い る.視 度 調 整 は 図 中 の 間 隔eを

B(λ)は 系全 体 の 分光 感度 であ り,視 覚系 の 比視感 度, 増 減 して 行 な う.

光 源 の分 光 分布,レ ンズ系 の分 光特 性 の積 で ある が,実 双 眼 鏡 の 性 能 に は,視 野 の中心 付 近 では解 像力 が寄 与

際には 比視 感 度 の バ ン ド幅 が狭 い た めに 比視感 度 のみ で し,周 辺 部 で は 倍 率 の 色 収 差 が 問 題 と な る.こ れ に した

B(λ)を 代 表 して も,白 色MTFの 値 に は不 都 合 が表 わ が い,4.2で ωe=0° に お け るMTFに よ る評 価 例 を,

れ な い. 4.3で ωe=14° にお ける色 収 差 の評 価 例 に つ い て解 説

す る.
3. 色収差 の評価

L.S.Eの 計 算 は(4), (4)'で求 め られ る 全 瞳 領 域 で の 収 差

よ り,角 度 座 標 の 区 分 域 に 落 ち る 光 線 数 の ヒ ス トグ ラ ム

で 近 似 す る.こ れ をL(t,λ)と す る.こ こ にtは 角 度,

λは 波 長 で あ る.

E.S.F. E(t,λ)はL(t,λ)と エ ッ ジ 関 数 との 重 畳 積 Fig.3 8x21 Binocularlenssystem forthe exampleof the


分 と な る の で, afocalsystem.

4.2 MTFに よ る評 価
(5)
Fig. 3の 間 隔eを 調 整 し て,双 眼鏡 全 系 の近 軸視 度 量

が0Dptr.の 時 の 中 心 像(ωe=0°)のMTF(R-Dptr.(u))

と な る.(* は エ ッ ジ の 方 向 が 逆 の 場 合) をFig. 4に 示 す.図 よ り20∼30lines/degreeに おけるコ

E(t,λ)は,L(t,λ)と 比 較 し てt,λ の 両 変数 に対 ン トラ ス トは0.58Dptr.の 場 合 が 高 く,眼 光 学系 の視 度

して 十 分 滑 らか で あ り,以 下 の 数 値 積 分 の精 度 を 上 げ る 量 が,こ の 値 付 近 に 一 致 し た時 に,高 い コ ン トラ ス トが

の に,取 扱 い 上 有 利 で あ る. 知 覚 さ れ る と予 想 で き る.ま た像 の深 度 が 比較 的 浅 い こ

C.I.E. XYZ表 色 系 に よ る ス ペ ク トル 三 刺 激 値 をx と が わ か る.こ れ は眼 光学系 の視 度 の わず か な変 動 に よ

(λ),y(λ),z(λ)と す れ ば,三 刺激 値 は次 の よ うに計

算 さ れ る.

X(t)=∫E(t,λ)x(λ)dλ

Y(t)=∫E(t,λ)y(λ)dλ

Z(t)=∫E(t,λ)z(λ)dλ

これか ら色 度 図上 の座 標 は,

と な る.Y(t)は 角 度tに お け る 明 度 を 表 わ し,多 色

E.S.F.を 表 わ す. Fig. 4 MTF R-Dptr . (u) in case of ωe=0°


ア フ ォー カ ル系 の 評価(小 川 ・手 島 ・立原) 223 (25)
り,像 の 見 え方が微 妙 に変 化 する で あろ う こ とを示 して

い る.

4.3 色 収 差 の評 価

Fig. 3の レ ン ズ 構 成 図 の 斜 線 部 分 の 硝 材 を 変 化 させ て

(曲 率 半 径,レ ン ズ 厚 は 固 定)色 収 差 を故 意 に 変 化 した 状

態 を考 察 す る.硝 材 は 小 原 光 学 の ガ ラ ス 表 よ り次 の よ う

に 選 択 す る.す な わ ちd-lineの 性 能 を一 定 に保 ちつつ 色

収 差 の み を 変 化 させ る た め に,a) PSK02(ア ッ ベ 数vd Fig.6 Chromaticity


diagramsin thepolychromaticE.S.F.
=63.4) b) SK16(60 .3) c) SK10(57.0) d) SSK2 fortheglasses
a)PSKO2 and e) SSK9 usedinFig.5.

(53.2) e) SSK9(49.6)の よ うに 順 次 分 散 の 大 き な

も の を使 用 す る.こ れ ら の 硝 材 の 屈 折 率 は す べ て1.62前 で+はE.S.Eの ス テ ッ プ が 中 心 方 向 が 暗 視 野,周 辺方

後 で あ り,ア ッベ 数 は,順 次3∼4ず つ少 な くな って い 向 が 明 視 野 で あ り,× は 逆 ス テ ッ プ を表 わ す.+× とも

る. 4点 ず つ 各 々E.S.F.の 明 度 が0.80, 0.60, 0.40, 0.20

評 価 す る の は,接 眼 系 側 の角 度 が ωe=14° で ア ジムス と な る位 置 を表 わ す.

は メ リデ ィ オ ナ ル と す る.Fig. 5で は,上 記 硝 種 の変 更 実 際の評 価 の場 面 で は,MTFの み な らず,色 度 図 を


に よ るMTFの 違 い を表 わ す.Fig. 6で は,色 度 図の一 合 わせ て参 考 にす る必 要 が あ ると思 う.

例 と し て,a)とe)の 両 端 の 硝 種 の 例 で 示 す.色 度 図上
5. お わ り に

双 眼鏡 の よ うな観測 光学 系 をア フ ォー カル系 の代 表 と

考 えてMTFお よび 色収 差の 評価 方法 につ いて解 説 した.

この方 法 は,鮮 鋭 度 のみ に着 目 してい るの で,実 際の設

計 現 場 では,像 の歪 曲や 色 調,光 量 バ ラ ンス な どにつ い


て も合 わせ て考 慮 す る必要 が あ る.さ らに特殊 な使用 状

態 を考 える場 合 には,計 算 の みに よ る シ ミュ レー シ ョン

評 価 は危 険 で あ り,実 際 に試 作 してみ て性能 を確 認 す る


ことが 必要 な こ とは い うまで もない.

こ こ で 述 べ た 問 題 は,評 価 全 体 の 一 部 に す ぎ な い が,

実 務 的 に は 重 要 で あ り,色 度 図,E.S.E, L.S.F.,

Fig. 5 MTF R-Glass (u) for the selections of OHARA MTFの 各 々 の 関 係 を うま く利 用 す れ ば,充 分設 計へ の

optical glasses of the hatched lens in Fig. 3 in case of


寄 与 に 役 立 つ で あ ろ う と考 え て い る.
ωe=14°. a) PSKO2, b) SK16, c) SK10, d) SSK2,

and e) SSK9.

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