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(昭和53年5月 日本 造 船 学 会 春 季 講 演 会 に お い て講 演)

浮 遊 式 海 洋 構 造 物 の 設 計 シ ス テ ムに つ い て

正員 秋 田 好 雄* 正員 岸 康 太 郎**
正員 田 代 新 吉* 正員 杉 村 泰**
正員 吉 識 恒 夫**

On the Program System for Design and Analysis of Offshore Structures

by Yoshio Akita, Member Yasutaro Kishi , Member


Shinkichi Tashiro, Member Yasushi Sugimura , Member
Tsuneo Yoshiki, Member

Summary
Various types of offshore structures including drilling rigs , platforms, etc. have been built.
These days, they are requested to have better working performance in severer state of sea
and weather, and as a recent trend, they are becoming larger in size and more complex .
However, they appeared just several decades ago, and the data to design them is not ac-
cumulated so much as general ships. These structures are to be designed under the rational
and synthetic estimation of behaviors in sea, and the safety is also to be confirmed experi-
mentally or analytically.
For that purpose, the authors have developed the total system of computer program for
design and analysis for floating offshore structures. The system made it possible to realize
the rational and consistent evaluation on the behaviors and the safety of them .
This system consists of an integrated group of individual programs which includes hydro-
static calculation, tank capacity calculation, trim and stability calculation for intact and da-
maged condition, analysis on the oscilating motion of the structures among regular waves
and wave force calculation, the statistical analysis on each response of the structures among
irregular waves, etc.
Furthermore, this system can be used individually or successively according to the needs
in every stage of design or analysis.
In this paper, outline of this system is presented with examples of calculation using this
system for the existing semi-submersible catamaran drilling rig , from which the reasonable
results were gained.

解 析 を行 な う必 要 が あ る。
1 緒 言
この よ うな 背景 の も とに,浮 遊 式 海 洋構 造 物 の波 浪 中
従 来,石 油 掘 削 リグに 代 表 され る数 多 くの 浮遊 式 海 洋 に お け る運 動 お よび 強 度 解 析 を 行 な う設 計 シ ス テ ムが,
構 造 物 が 建 造 され て きた が,近 年,こ れ らの操 業 海 域 は, これ ま でい くつ か 発 表 され て い るが1)∼6),著者 ら は,浮
水 深 が 一段 と深 く,海 象 条 件 も厳 しい海 域 へ と移 行 しつ 遊 式 海 洋 構 造 物 の様 式 の 多 様 性 を 考 え,こ れ ら構 造 物 の
っ あ り,こ れ に 伴 い 構 造 物 の様 式 は ます ます 大 型 化,複 安 全 性 を 含 め た 総 合 的 な 評 価 の 可 能 な 設 計 シ ス テ ムを 目
雑 化 の傾 向に あ る。 的 と して,任 意 の 形 状 を 有 す る浮 遊 構 造 物 の 安 定 性 能,
この よ うな 海 洋構 造物 の設 計 に おい て は,従 来 の 船 舶 運 動 お よび 強 度 計 算 を 一 貫 して 行 え る プ ロ グ ラ ム シ ス テ
に見 られ る よ うな厖 大 な 実績 の蓄 積 が ない た め,実 験 ま ムの 開発 を 進 め て きた 。 最近,そ の 大 要 が 完 成 し,計 算
た は理 論 に よ り,上 述 の よ うな厳 しい 環 境 条 件 に お け る 結 果 の 妥 当 性 の 検 討 も行 な っ た の で,二,三 の計算例 と
構 造物 の挙 動 を解 明 し,そ の結 果 に つ い て,総 合 的 な 評 と もに,以 下 に 報 告 す る。
価 に基 づ い て設 計 を行 ない,ま た,安 全 性 確 認 の た め の
* (財)日 本 海 事協 会 2 シ ステ ム の概 要
** 三 井 造 船(株)
本 シス テ ムは,Fig.1に 示 す よ うに,大 別 して 次 の4
276 日本 造 船 学 会 論 文 集 第143号

が,ま た上 述 の よ うに必 要 な デ ー タを デ ータ フ ァイ ルを

介 して 受 け 渡す こ とに よ り,一 貫 して 使 用 す る こ と も可
能 で あ る。
次 に,各 モ ジ ュー ルに つ い て,そ の 概 要 を述 べ る。

2.1 安 定 性 能 計 算 モ ジ ュ ー ル(モ ジ ュー ル1)


この モ ジ ュー ル で は,排 水 量 等 計 算,クロ ス カ ー ブ計

算,区 画 容 積 計算,ト リム ・復 原 性 計 算 を 行 な う。Fig.


2に 概 略 フ ロー チ ャー トを示 す。

海 洋 構 造 物 の構 造 様式 は,多 種 多 様 で あ り,今 後 どの
よ うな 様式 の 構 造 物 が 出現 す るか 予 測 で きな い の で,こ
の モ ジ ュー ル で は,対 象 とす る構 造 物 を で きる だ け広 い

範 囲 の もの を 含 め る よ うにす るた め,構 造 物 をロ ワ ーハ
ル,カ ラ ム,ブ レー シ ング な ど の構 造 要 素 に 分解 し,お

の お の に つ い て排 水 量,浮 心,水 線 面 積 な どを 求 め て合

計 す る方 法 を 採 っ て い る。 しか し,構 造 物 は 必 ず し も上
記 の よ うに 分解 す る必 要 は な く,ユ ーザ ーが 任 意 に入 力
Fig. 1 浮 遊 式 海 洋 構 造 物 設 計 シ ス テ ム構 成 図 で き,ま た,そ の 横 断面 形 状 も任 意 に 入 力 で きる の で,

つ の モ ジ ュー ル か ら構 成 さ れ て い る。 半 没 水 型 の 海 洋構 造 物 は も ち ろ ん,そ れ 以 外 の構 造物,

モ ジ ュー ル1は 任 意形 状 を 有 す る浮 遊 式 海 洋 構 造 物 に た とえ ば,一 般船 舶,バ ー ジ,フ ロ ー テ ィン グ ドッ クな

っ い て,ハ イ ドロス タ テ ィ ッ クテ ー ブル,タ ン ク容 量, ど,浮 遊 式 で あ れ ば どの よ うな様 式 の構 造 物 に つ い て も


計 算 す る こ とが で き る。 また,入 力 は 同 一 寸 法,形 状 の
損 傷 時 お よび 非 損 傷 時 に お け る ト リム,ス タ ビ リテ ィな
もの は,1個 の み 入 力す れ ば よ く,他 の 同 形 の もの の入
どの 計 算 を 行 な う部 分 で あ る。 この モ ジ ュ ー ルで は,複
力 は 省 略 で き るの で,半 没
雑 な 形 状 を 正 確 に しか も容 易 に イ ン プ ッ トで き る よ う考
水 型 海 洋 構 造 物 の よ うに 同
慮 され て お り,デ ー タの 追 加,削 除 機 能 な どデ ー タの 疎
一寸法 形 状 の 多 い も の で
密 度 に 弾 力 的 に 対 処 で き る よ うイ ン プ ッ トジ ェネ レー タ
は,入 力 作 業 量 を 減 少 で き
部 の 充 実 を 図 って い る。
モ ジュ ー ル 五は,規 則 波 中 に お け る構 造 物 の運 動,波 る よ うに な って い る。

浪 外 力 を 計 算 す る部 分 で,こ の モ ジ ュー ルへ の イ ン プ ッ 分 解 され た 各 構 造 要 素 の

トの 形 状 デ ー タ,重 量 デ ー タ等 は,単 独 に も イ ン プッ ト 横 断 面 形 状 は,断 面 内 の 点

で き るが,モ ジ ュー ル1か らア ウ トプ ッ トされ る運 動 計 列 を 直 線,円 弧,二 次 曲 線


で結 ん で任 意 の図 形 を 表 わ
算 用 予 備 デ ー タ フ ァイ ルか らも イ ン プ ッ トで き る よ う計
画 され て い る。 計 算 に必 要 な各 種 の構 造要 素 の流 体 力係 す,い わ ゆ る マ ップ方 式 で

数 は,あ らか じめ こ の モ ジ ュー ル 内 に 内 蔵 さ れ て い る 表 わ して い る。 もち ろん,

が,モ デ ル テ ス トな ど に よ り求 め た 流 体 力 係数 を直 接 イ 入 力を す べ て マ ップデ ー タ

ン プ ッ トす る こ とも で き る。 とし て 入 力 す る の で は な

モ ジ ュー ル 皿 は,三 次 元 骨 組 構 造 モ デ ル を用 い て,任 く,円 柱,角 柱 等 は,そ の

意 形 状 の海 洋 梅 造物 の静 水 中 お よび規 則 波 中 に お け る強 ま ま半 径,幅 等 を入 力 し,

度 解 析 を行 な う部 分 で あ る。 この モ ジュ ー ル で は,モ ジ ま た,一 般 船 舶 で は,オ フ

ュ ー ル 五 よ りア ウ トプ ッ トさ れ る 波 浪 外 力 を荷 重 条 件 と セ ッ トで も入 力す る こ とが

し て計 算 す る こ とが で き る が,ま た 単独 に イ ンプ ッ トさ で き るが,ゼ ネ レー タ ーに

れ る波 浪,潮 流,風,重 量 デ ー タ を用 い て 独 自に 荷重 を よ りマ ップ デ ー タ に変 換 し

ジ ェネ レー トす る こ とも で き る 。 て お り,計 算 はす べ て この

モ ジ ュー ルIV1は,海 洋 波 中 に お け る応 答 の 統 計 予 測 を マ ップ デ ー タ を用 い て行 な

行 な う部 分 で,モ ジ ュー ル 】1また は モ ジ ュ ール 皿で 計 算 っ て い る。

さ れ る各種 の 応 答 に つ い て,短 期 また は 長 期 の 予 測 計 算 この よ うに して マ ップ で

を 行 な うこ とが で き る。 表 わ さ れ た 任 意 図形 の 面
これ らの 各 モ ジ ュ ー ル は,単 独 の 使 用 も可 能 で あ る 積,図 心 な どを,面 積 分 の Fig. 2 フロ ー チ ャ ー ト
浮遊 式 海 洋 構 造 物 の設 計 シ ス テ ム につ い て 277

代 りに次 の方 法 で,図 形 の 外 周 に 沿 った 線積 分 を行 な う この モ ジ ュー ル で は,水 面 を構 造 物 固 定 の座 標 系 で表

こ とに よっ て求 め てい る。 わ され た 一 つ の平 面 と し て定 義 し て お り,い か な る傾 斜

す なわ ち,一 般 にx-v平 面 内 に あ る 任 意 図形 に つ い を も っ た水 面 も 自 由 に表 わ す こ とが で き る の で,上 記 の

て,次 式 が成 立 す る。 方 法 に よ り,構 造 物 の排 水 量,浮 心,水 線 面 積 等 を計 算


す る こ とに よ り,任 意 の方 向 に傾 斜 した場 合 の排 水 量 計
(1)
算 や,ト リム,ヒ ー ル の み で な く任 意 の方 向 の軸 につ い
て ク ロス カ ー ブ の計 算,ス タ ピ リテ ィカ ー ブ の計 算 を 容
(2)
易 に行 な う こ とが で き る。
た だ し, ま た,一 般 に構 造 物 が複 雑 に な れ ば,ス タ ビ リテ ィ計
∫∫Dは 領即 内(境 界c上 も含めて)の
面積分 算 に お い て,通 常 の繰 り返 し法 で は 平衡 状 態 が 求 ま らな
い 場 合 が あ る。 これ は 平 衡 状態 の近 傍 に お い て構 造 物 の
か ま境界Cに 沿つた線積分 ナッ クル 部 分 の よ うな 特異 点 が あ る た め,繰 り返 し計 算
本 モ ジュ ー ルで は,(2)式 を 使 うこ と とし,積 分 変 数
に よ って も収 束 しな い場 合 や,繰 り返 し計 算 の 初期 条 件
を 境 界Cに 沿 っ て測 った 長 さsに 変 換す る。境 界Cの 接
の 与 え 方 に よ り解 が 求 ま らな い場 合 な どで あ る。 この モ
線 の 傾 きを θ とす る と,dx=ds・COSθ とな る か ら次 の
ジ ュ ール で は,こ れ を 避 け るた め 構 造 物 が 種 々の 姿 勢 を
式 を 得 る。
と った 場 合 に つ い て 重 心 と浮 心 の 鉛 直 距 離 に 排 水 量 を 乗
(3) じた 値(重 心 が 上 に あ る場 合 を 正 とす る。 そ の 構 造物 の

この式 を用 い て任 意 図 形 の 面 積,モ ー メン トな ど を求 め 持 つ 一 種 の位 置 エ ネ ル ギ ーで あ る)を 計 算 して お き,こ


の 値 が 極 小 か つ 最 小 とな る姿 勢 を も って 平 衡 状 態 と して
る.す なわ ち 面測 は面 積 分 で 表 わ す と∫∫dxdyと な
い る。こ の 方 法 に よれ ば,最 初 に 位 置 エ ネ ル ギ ーを 計 算
り,こ れ を,(3)式 左 辺 と比 較 す る と,f/y と な した 姿 勢 の粗 密 に よ り,若 干 の誤 差 が 入 っ て くる こ とは

る。よ って,」=野 と表 現 す る こ とが で き る か ら,面 積 避 け 得 ない が,使 用 上 充 分 な精 度 で,必 ず 平 衡 状 態 が 求


ま る利 点 が あ る。
は,A=-∫cycosθdsで 表 わ され る。同 様 に,x軸,
ま た,最 近 の傾 向 とし て,ス タ ビ リテ ィ計 算 に お い て
V軸 に 関 す る一 次 モ ー メン ト,二 次 モ ー メ ン トお よび 相
は,よ り厳 密 な計 算 を要 求 す る傾 向に あ り,こ の モ ジ ュ
乗 モ ー メ ン トは,そ れ ぞれ 次 式 で 表 わ され る。
ー ル で も平 衡 状 態 を求 め る場 合,残 存 復 原 力 を計 算 す る
(4) 場 合 に,区 画 内 の遊 動 水 に よる重 心 移 動 を考 慮 した り,
残 存復 原 力 計 算 を 任 意 の軸 に つ い て,い わ ゆ る トリム ブ
(5) リー の計 算 が で きる よ うに し て い る。

な お,風 圧 モ ー メ ン トに つ い て も,任 意 の 姿勢 に お け
(6)
る風 圧 モ ー メ ン トを 計 算 で き る よ うに 計 画 中 で あ る。

(7) 2.2 運 動 応 答 お よび 波 浪 外 力 計 算 モ ジ ュ ー ル(モ ジ


ュー ルII)
(8) 船 体 運 動 論 の 分 野 で は,微 小 振 幅 の 線 形 理 論 に よ って
これ らの 式 に よ り,マ ップデ ー タの 点 列 の 間 が直 線,円 規 鋼 波 中 の 応 答 関 数 を 求 め,次 に スペ ク トル 解 析 を 行 な

弧 また は 二 次 曲線 の いず れ で あ るか に よ り,積 分 区 間 を っ て不 規 則 波 中 の応 答 を 推 定 す る,い わ ゆ る線 形 応 答 解

分 け て 積 分 を行 な う。 析 の手 法 が 広 く用 い られ て い る が8),海 洋 構造 物 の 運 動

こ の よ うに して,分 解 され た 構 造 要 素 の 各 横断 面 の水 に関 す る最 近 の研 究 に よ る と7),9)∼12),同
様 の 手 法 は,海

線下 の面 積,図 心 な どを求 め,こ れ を 長 さ方 向 に積 分 し 洋 構 造物 に 対 し て も実 用 上 十 分 に有 効 であ る と考 え られ

て排 水 容 積,浮 心 な どを求 め てい る。 長 さ方 向 に積 分す る。 本 モ ジ ュー ル に おい て用 い てい る計 算 方 法 も,上 述

る とき,構 造 要 素 が 水面 を 斜 めに 貫 通 して い る場 合 は, の 手法 に従 っ た も の で あ り,次 の よ うな仮 定 の も とに 構

そ の ま ま,入 力 され た 横 断面 につ い て 積 分 した の で は, 造物 の運 動 を取 り扱 っ て い る。

計 算 の精 度 が 良 くな い の で,水 面 を 貫 通 す る位 置 を 求 め (a) 構 造物 は 剛体 とし,運 動 は定 常 か つ 微 小 振 幅 と


て積 分 の精 度 を 上 げ る よ うに し てい る。 す る。
水 線面 も,各 横 断 面 と水 面 との交 点 を 用 い て マ ッ プデ (b) 構 成 部材 間 の 流体 力学 的 相 互 干渉 は,無 視 で き
ータ で表 わ す こ とに よ り,水 線面 積 や浮 面 心 を 求 め て い る もの とす る。

る。 (c) 係 留 力 は 線 形 な ば ね で 近 似 で き る もの とす る.
278 日本 造 船 学 会 論 文 集 第143号

運 動 方 程 式(9)式 の各 流 体 力 係 数
を求 め るた め に,本 モ ジ ュー ルで は,
いわ ゆ る ス トリッ プ法 を用 い てい る。

す な わ ち,構 造 物 を 構成 す る 各 部 材
を,そ の軸 方 向 に ス ト リップ分 割 し,
各 ス トリ ップに 働 く2次 元流 体 力を 求
め,こ れ を 部 材 の 長 さ方 向 に積 分 し,
さ らに 構 造 物 の重 心 に つ い て の力 また
はモ ー メ ン トに変 換す る こ とに よ って
三 次 元 流 体 力 と して近 似 す る。 なお,

Fig. 4 運動応 ス トリ ップ法 で は,部 材 の軸 方 向 の流

答計算におけ 体 力 は計 算 で きな い の で,本 プ ロ グ ラ
る部 材 座 標 系 ム で は,こ れ を 別 途 計 算 して い る。

い ま,構 造物 が波 浪 中 で6自 由 度 の 運 動 を して い る と

き,部 材 に働 く流 体 力を 考 え る。 簡 単 の た め構 造 物 の前
進 速 度 は0と す る。Fig.4の よ うな 部 材 を 取 り出 し,部
材 座 標 系o'-x'y'z'を 図 の よ うに と る と,部 材 の任 意 断
面 に 働 く流体 力 は,V',2,軸 方 向 の 力 と,x'軸 まわ り
の モ ー メ ン トに分 け られ る。v,方 向 に 働 く流体 力Fy'
は,
Fig. 3 運 動 応 答 計 算 に お け る座 標 系

(d) 流 体 力 は 次 の もの を 考 え る。
(i) 線形流体力 運 動 の 加 速 度,速 度 に 比 例 す る力 (10)
(radiation force),入 射 波 に も とず く力(Froude- と表 わ す こ とが で き る。 こ こで α,bは 断 面 の 付加 質 量 お
Kriloff force),入 射 波 の 反 射 に よ る力(diffrac- よび 造波 減 衰 係 数,v,,ψ,は 断 面 のv'方 向 変 位 お よびx
tion force),静 的復原力 軸 ま わ りの 回転 で あ り,π は断 面 代 表 点 に お け る波 粒 子

(ii)非 線 形 流 体 力(後 述 の よ うに 等 価 線 形 化 され く のv,方 向 軌 道 速 度 で あ る 。 ま たCDは 抗 力 係 数,Kyyは

り返 し計 算 に よ り近 似 さ れ る),波 粒 子 と構 造 物 断 面 形 状 に 依 存 す る係数,fy'はFroude-Kriloff force


の相 対 速 度 の 自乗 に 比 例 す る力 で あ る。

以 上 の よ うな仮 定 の も とに,Fig.3に 示す座標系に よ (10)式 右 辺 の最 初 の4項 はradiation forceを,第


っ て構 造 物 の運 動 方 程 式 を 記 述 す る と,次 式 の よ うに な 5,6項 はdiffraction forceを,第7項 は 粘性 減 衰 力 を

る。 表わす。

(10)式 は,任 意 の 部 材 断 面 に 働 く流 体 力 の 一般 的 な
表 現 で あ るが,実 際 に は部 材 の形 状,寸 法 に よ り(10)
(9) 式 の い くつ か の 成 分 は 無 視 し うる オ ー ダ ーの 力 とな る場
こ こ で,Xj は 構 造 物 重 心 の 各 方 向 変 位 で,j=1,2,…
合 が あ る。 そ こで 本 モ ジ ュー ル で は,ロ ワ ーハ ル の よ う
6は そ れ ぞ れx(surge),V(sway),z(heave),ρ(roll) に 大 き な断 面 を 有 す る部 材 と,カ ラ ム,ブ レー シ ング の
θ(pitch),ψ(yaw)に 対 応 す る 。 以 下,
よ うに 比 較 的 小 さな 断面 を有 す る部 材 とを 区 別 し,適 宜
Mj: 構 造 物 の 質 量,慣 性 モーメン ト
(10)式 の 簡 略 化 を 行 な って い る。 ロ ワ ー ハ ル の場 合,
Ajk:付 加 質 量,付 加慣性モ ーメン ト (10)式 の流 体 力 成 分 す べ て を考 慮 し,付 加 質 量,造 波
βjk:造 波減衰係数 減 衰 係 数 に つ い て は,断 面 の形 状,没 水 深 度(浮 上 し て
Cjk:係 留 力 を 含 む 復 原 力,モ ーメン ト い る場 合 も含 む),動 揺 周期 な ど の パ ラ メ ー タ の 値 を用
Djk:粘 性減衰係数 い て,プ ロ グ ラ ム内 蔵 の 流体 力係 数 テ ー ブル か らの補 間
Fj:各 方 向 の 粘 性 を 考 え な い 波 強 制 力,モ ー メン ト に よ り求 め て い る。 この 流体 力係 数 テ ーブ ル は,あ らか
Vj:各 方 向 の 粘 性 に 基 づ く波 強 制 力,モ ー メ ン トで じめ 上 記 パ ラ メ ー タの 広 い範 囲 にわ た って,特 異 点分 布
あ る 。Djk お よ びVjは,後 述 の よ うに く り返 し 計 算 に 法 に よ る プ ロ グ ラ ム14)を用 い て作 成 され た もの で あ る。
よっ て近 似 され る。 カ ラ ム,ブ レー シ ン グの場 合,造 波 減 衰 力 を 無 視 す る
浮 遊 式 海 洋 構 造 物 の 設 計 シ ステ ムに つ い て 279

と ともに,断 面 の 回転 運 動 との 連 成 を 無視 して,

(11)
の形 で 流 体 力 を計 算 す る。.fy'とayyuは 同位 相 か逆 位

相 の関 係 に な る の で,ま とめ て

(11つ

の よ うに 書 く こ とも で き る。(11,)式 の右 辺 第2項,第

3項 は,土 木工 学 に お け るMorisonの 式 の 質 量 力 項,
抗 力項 に そ れ ぞ れ 相 当す る。
さ て,(10)式 ま た は(11),(11')式 の粘 性 減 衰 力 の
項 は非 線 形 な の で,こ れ を 文 献13)お よび15)に 示 され
て い る 田才 の 方 法 に 従 って 次 の よ うに等 価 線 形 化 す る。

す なわ ち
(12)
と お い て,

(13)
(13)式 右 辺 の第1項 は 波 強 制 力 と し て,第2項 は粘
Fig. 5 運 動 応 答 計 算(モ ジ ュ ー ル 皿)フ ロー
性減 衰 力 と して,そ れ ぞ れ 運 動 方 程式(9)式 の右 辺 お
チ ヤー ト
よび左 辺 に 付 加 され る。こ こでUは 未知 数 で あ る運 動

変 位 を 含 ん で い る の で,(9)式 を く り返 し解 く こ と に 統 計 処 理 モ ジ ュー ル(モ ジ ュー ルIV)用 に フ ァイ ル され

よ り近 似 され る。 る。

以 上,V'方 向 の 流 体 力 に つ い て述 べ た が,z',ψ'方 2.3 構 造 解 析 モ ジ ュー ル(モ ジ ュ ー ルIII)

向 の流 体 力 も同様 の方 法 で計 算 され る。ま た ・ 簡 単 の た モ ジ ュー ルIIIは,主 と して構 造 解 析 を 行 な う部 分 で あ

め構 造 物 の前 進 速 度 を0と した が,前 進 速 度 を 有 す る場 る。そ の 全 体 の フ ロー チ ャー トをFig.6に 示す。

合 は,本 モ ジ ュ ール で は,官 ワー ハ ルに つ い て 通 常 の 船 本 モ ジ ュー ル で は,対 象 とす る構 造 物 を 立 体 骨 組 構 造

舶 に応 用 され て い る前 進 速 度 影 響 を 考 慮 して い る8). に モ デ ル 化 して解 析 を 行 な う。こ れ は,板 構 造 に モ デ ル

次 に,本 モ ジ ュー ル の概 略 フロ ー チ ャ ー トをFig・5 化 す る と,計 算 時 間 が か か り,多 数 の 荷 重 条 件 を 扱 う の

に示 す 。 本 モ ジ ュー ル の主 要 な イ ン プ ッ ト項 目は,平 衡 に 不 適 当 で あ る こ と と,全 体 の 大 まか な 挙 動 を 把 握 す る

状 態 に おけ る諸 量(排 水 量,GMな ど),各 部 材 の 配 置, に は,骨 組 構 造 解 析 で 十 分 で あ るた め で あ る。 詳 細 な 応

各 部材 の断 面 形 状(ル イ ス フ ォー ム,円,楕 円,矩 形 な 力 分 布 を 知 りた い 場 合 に は,本 モ ジ ュ ー ル の計 算 結 果 を

どが 考慮 可),各 部 材 に 分 布 す る重 量,規 則 波 の定 義(波 境 界 条 件 と して,ズ ー ミン グな ど の方 法 に よ り詳 細 に 計

周 期,入 射 方 向,波 高)な どで あ る。 この ほか オ プ シ ョ 算 す る こ とが で き る。


ン と して,自 由動 揺 実 験 な どで 推定 され た固 有 周 期,減 一 般 に 浮 遊 式 海 洋 構 造 物 は,比 較 的 少 ない 自 由度 の骨

衰 係 数 や,強 制 動 揺 実 験 な どで 得 られ る流 体 力 係 数 を イ 組 構 造 に モ デ ル化 で き るた め,本 モ ジ ュ ー ルで は,最 大


ン プ ッ トす る こ とに よ り,実 験 デ ー タ を計 算 に 反 映 させ 自 由度 数,最 大 部 材 数を そ れ ぞ れ2,000,600と した 。
る こ とも 可能 で あ る。 そ の代 わ りに,ス パ ンポ イ ン トの係 数 処 理 を 行 ない,部
また,本 モ ジ ュ ー ルの 主 要 な ア ウ トプ ッ トは,重 量 分 材 の長 さ方 向 の 内力,応 力 分 布 を 最 大13点 まで 計 算 す
布 デ ータ よ り計 算 され た 重 量,重 心位 置,慣 動 半 径,係 る機 能 を 持 た せ る こ とに よ り,従 来 の汎 用 プロ グ ラ ム よ

数 テ ーブ ル よ り補 間 され た 各 部材 断面 の流 体 力 係 数,6 り節 点 数 を 節 約 で き る よ うに し て い る。 また,連 立 方 程

自由 度 運 動応 答,任 意 点 の 波 面 に対 す る相 対 運 動,任 意 式 の解 法 とし て は,ウ ェーブ フ ロ ン ト法 を採 用 した が,

点 の加 速 度,各 部 材 に 加 わ る動 的 荷 重(流 体 力,慣 性 力, これ は,統 計 処 理 を 行 な う場 合 の よ うな,多 数 の荷 重 条

係 留 力),各 部 材 に 加 わ る静 的 荷 重(自 重,浮 力)な ど 件 を 解 く場 合 を 考 慮 し て,計 算 時 間 の短 縮 を 意 図 した た


であ る。 この うち,運 動 応 答,静 的 お よび動 的 荷 重 分 布 め と,プ ログ ラ ム上 の取 り扱 い が 簡 単 で あ る こ とが そ の
は,後 続 の 強 度解 析 モ ジ ュ ー ル(モ ジ ュー ル 皿)お よび 理 由 で あ る。
280 日本 造 船 学 会 論 文 集 第143号

る た め,単 位 系 の 選 択,部 材 の形 状,寸 法 の イ ン プ ッ ト,

部 材 剛 性 の コ ピー,荷 重 条 件 の 重 ね 合 せ 等 の機 能 を もた
せ,ア ウ トプッ トは,な るべ く見 や す い よ うに,プ ロ ッ
タ に よる 図化 を はか り,全 体 構 造 チ ェ ッ ク用 透 視 図,任

意 断 面 内節 点,部 材 の変 位 図,内 力 図,応 力図 を 描 く こ


とが で き る よ うに な って い る。 この 際,内 力,応 力 は 多

種 類 あ る うち の任 意 の もの を 選 択 し,線 の種 類,色 で 区
別 が で き る よ うに した。ま た,予 測 計 算 に用 い る応 力 の
応 答 関 数 は,任 意 部 材 の任 意 断 面 に つ い て 出 力す る こ と
が で きる。

2.4 統 計 処 理 モ ジ ュ ー ル(モ ジ ュー ルIV)


先 行 す るモ ジ ュー ル に よ り出力 され る,構 造 物 の運 動
応 答 関 数,部 材 の応 力応 答 関数 等 を 読 み 込 ん で,そ れ ら
の 応 答 の 海 洋波 中 に お け る短 期 お よび 長 期 予 測 計算 を行
な うモ ジ ュ ール で あ る。

短 期 予 測 計 算 で は,ISSC(1964)波 浪 スペ ク トラムを
用 い,線 形 重 ね 合 せ に よ り応 答 ス ペ ク トラ ムを 計 算 す る
と と もに,応 答 の 極 大 値 の 確 率 分 布 をRayleigh分 布 と
仮 定 し て,期 待 値 の 計算 を行 な う。

長 期 予 測 計 算 で は,波 浪 統 計 資 料 と し てWaldenの
北 大 西 洋 デ ー タを 標 準 デ ー タ とし て用 い るが,構 造 物 の
Fig. 6 構 造 解 析 プ ロ グ ラ ム(モ ジ ュ ー ルIII) 操 業 海 域 の波 浪 統 計 資 料 が 存 在す れ ば,そ れ を イ ンプ ッ
フ ロー チ ャー ト トし て用 い る こ と も可 能 と して い る。

また,設 計 あ る い は解 析 で の,実 際 の利 用 の 仕方 を考
3 本 シス テ ム に よる 計算 例
慮 し て,本 モ ジ ュー ル で は,次 の2通 りの使 い方 を可 能
とし た。 本 シス テ ム をFig.7に 示 す 半 没 水式 双胴 型 石 油 掘 削
リグ(三 井 造 船 建 造 のAKER-H3)に 適 用 し て,安 定
す なわ ち,設 計 の初 期 の段 階 で は,最 適 な形 状,構 造
方 式 を求 め る た め に,く り返 し計 算 あ る い は シ リー ズ計
算 を行 な う こ とが 多 い こ とを 考慮 し,モ ジ ュー ル 皿単 独
の使 用 も 可能 と した 。 一方,あ る程 度設 計 が進 み,構 造

方 式 が定 ま っ た の ち,先 行 の モ ジュ ー ル IIよ り得 られ
る,運 動 を 考慮 した 動 的 荷 重 デ ータ を使 用 して,応 力 の

応 答 関 数 を 計 算 す る こ と も可 能 と した 。

本 モ ジ ュ ール を 単 独 に 使 用 す る場 合 の 主 な イ ン プ ッ ト
デ ー タは,節 点 座 標,支 持 条 件,部 材 を 構 成 す る節 点 番
号,部 材 の 形 状,寸 法 あ るい は 部 材 剛 性,部 材 の 風 圧 面
積,浮 力 面 積 そ の 他 の 構 造 デ ー タ と,自 重,潮 流 の 方 向
お よび 流 速 分 布,波 の 出 会 角,波 高,波 頂 位 置,風 の 方

向 お よび 風 速 分 布 そ の 他 の荷 重 デ ー タ とに 大 別 され る。
波 力,潮 流 力 な どは 上 記 の イ ン プ ッ トに よ り,Morison
の 式 を 用 い て プロ グ ラ ム 内 で ジ ェ ネ レー トす る。波 の理
論 式 と し て は,微 小 振 幅 波,Stokes3次 波,同 じ く5
次 波 のい ず れ か を 選 択 で き る。
モ ジ ュー ルIIで 計 算 され た動 的 荷 重 を用 い て計 算 す る

場 合 は,上 記 構 造 デ ー タ の ほか に,モ ジュ ー ルIIと の部


材 の対 応 づ け をす る構 造 デ ー タ が必 要 とな る。 Fig. 7 半 没水 式 双 胴 型 石 油 掘 削 リグ(AKER-H3)
こ のほ か,本 モ ジ ュー ルで は,イ ン プッ トを 容 易 に す の主要寸法
浮 遊 式 海 洋 構 造 物 の設 計 シ ス テ ムに つ い て 281

Table 1 排 水 量 等 計算 テ ー ブル

性 能,運 動 応 答 お よび 静水 中に お け る応 力 分 布 等 を計 算 Table 2 平 衡 状態 計 算 テ ー ブル

した が,そ の結 果 を 以下 に示 す。な お,モ ジ ュー ル 豆の


計 算 例 に おい て は,文 献7)に 掲 載 され て い る 半 没 水式
双 胴 型模 型 に 対 す る実 験 結 果 との 比 較 も示 す。
3.1 安 定 性 能計 算 結 果
Fig.7に 示 され た 半 没 水 式 双 胴 型 石 油 掘 削 リグ につ い

て,モ ジ ュー ル1で 計 算 した 結果 を 以下 に示 す 。
Table1は,排 水 量 等 の テ ー ブ ル で,各 喫 水 ご とに 排

水 量,浮 心 位 置,メ タセ ンタ ー半 径 な どが 出 力 され る。
この ほ か に 浸水 面 積,水 線 面 積,浮 面 心 位 置 や 入 力 され
た 仮 定重 心 に つ い て 毎 セ ンチ トリム/ヒ ー ル モ ー メ ン ト
な ど も出 力 され る。
Fig.8は,ク ロ スカ ーブ の 出 力結 果 を 図化 した も ので

あ る。
Table2は,ト リム計 算 に おい て求 ま った 平 衡 状 態 に

お け る水 面 の位 置,浮 心 位 置 やGOMな どで あ る。
Fig.9は2、1節 で 説 明 した よ うに水 面 を種 々変 化 させ

た 場合 の浮 心 と重 心 の 鉛 直 距離 か ら求 め た位 置 エ ネ ルギ
ー を 図示 した も ので,こ の 曲面 の底 に な る水 面 が平 衡 状

態 で あ る。

3.2 運 動 応答 計算 例
3.2.1 模 型 実 験 との比 較
文 献 の に 掲 載 され た半 没水 式 双胴 模 型 に つ い て,本
モ ジ ュー ル に よる計 算 結 果 と文 献7)の 実験 結 果 を 比 較
し た。実 験 お よび計 算 の対 象 と した 模型 は,Fig.10に

示 す よ うな,2ロ ワー ハ ル,8カ ラ ム を有 す る 半 没水 式
双 胴 型 で,ブ レー ジ ング は 有 して い な い。

比 較 結 果 をFig.11∼14に 示 す が,本 モ ジ ュー ル に よ
る計 算 値 は,実 験 値 と全 般 的 に 良好 な 一 致 を 示 し て い
Fig. 8 ク ロ ス カ ー ブ る.
282 日本 造 船 学 会 論 文 集 第143号

Fig. 12 半 潜 水 式 双 胴模 型 の左 右 揺 応 答(横 波)

Fig. 9 ポ テ ン シ ャ ル マ ッ プ

Fig. 13 半 潜 水 式 双 胴模 型 の上 下 揺 応 答(横 波)

Fig. 10 半没水式双胴型模型

Fig. 14 半 潜 水 式 双 胴 模 型 の縦 揺 応 答(縦 波)

3.2.2 AKER-H3に よる計 算 例


Fig.7に 示 し た半 没 水 式 双 胴 型 石 油 掘 削 リグAKER-
H3の normal operating condition (draft 70 ft.)に

お け る運 動 応 答 を計 算 した 。 必 要 な イ ン プッ トデ ー タ
は,モ ジ ュー ル1に て計 算 され た もの を使 用 し,慣 動 半

径 は,与 え られ た 重 量 分 布 か ら プロ グ ラ ム内 で計 算 した
も の を用 い た。 減 衰 力 と して は,ロ ワー ハ ル の造 波 減 衰
Fig. 11 半 潜 水 式 双 胴 模 型 の 横揺 応 答(横 波) お よび各 部 材 の 粘 性 減 衰(抗 力 係 数CD=1.0と 仮 定)
浮 遊 式 海 洋 構 造 物 の設 計 シ ス テ ムに つ い て 283

Fig. 15 Aker-H3の 横揺応答 Fig. 18 Aker-H3の 縦 揺応 答

Fig. 16 Aker-H3の 左右揺応答 Fig. 19 Aker-H3の 上下揺応 答

Fig. 17 Aker-H3の 船首揺応答 Fig. 20 Aker-H3の 前後揺応答


284 日本 造 船 学 会 論 文 集 第143号

を 考慮 し,構 造 物 は 係 留 され て い な い も の と して運 動 応
答 を計 算 し た。 そ の結 果 をFig.15∼20に 示す。
計 算 結 果 か らheave の 固有 周期 を推 定 す る と約25秒
とな るが,こ れ は,文 献1)の 計 算結 果 とほ ぼ一 致す る 。
同 調点 近 傍 の応 答 振 幅 は 粘 性 減 衰 力(CD係 数)の 与 え
方 に よっ て大 き く変 わ る もの で,同 調 点近 傍 に お け る構
造 物 の挙 動 を 正確 に 把 握 す る た め に は,CD係 数 の正 確
な推 定 が 必 要 で あ る。
3.3 構造強度計算例
モ ジ ュー ルI,IIと 同 様 にFig.7に 示 した半 没 水式

双 胴 型 石 油 掘 削 リグ の 完成 時 に行 な っ た 静 水 中 に お け る
応 力 計測 結 果 とモ ジ ュー ルIIIによる 計 算結 果 を 以 下 に示
す 。 計 測 は,昭 和51年7月 に三 井 造 船玉 野工 場 に て行 Fig. 23 Aker-H3横 断面 (column, vertical bra-
なわ れ た も の で あ り,両 舷 のロ ー ワー ハ ル にFig.21に cing お よび horizontal bracing)に おけ
る 応 答 計 測 値 と計 算 値 と の 比 較 例
示 す ご と くパ ラス ト水 を濃 排 水 す る こ とに よ り負 荷 し,

総 計125点 の歪 を計 測 し た。強 度 計 算 は2.3節 に述 べ た


ご と く,全 体 を三 次元 骨 組 に モ デ ル化 し行 な った。
Fig.22,23に 見 られ る ご と く,計 測 値 と計 算値 とは

比 較 的 良 く一 致 して い る。Fig.22,23に お け る応 力値
は,Fig.21に お け る荷 重 状 態BとAの 差 を 示 して い る。

4 結 論

本 シ ステ ムの 完成 に よ り浮 遊 式 海 洋 構 造物 の安 全 性 の
確 認 お よび 各種 解 析 が容 易 と な り,い わ ゆ る直 接 設 計 が
容 易 に 行 な え る よ うに な った 。 さ らに,本 シス テ ム は,
固 定 式 プ ラッ トフ ォー ム,双 胴 船,在 来 型 の 一 般船 舶 な
どに つ い て も適 用す る こ とが で き る。 また,海 洋構 造 物
の 操 業 中 の挙 動 ば か りで な く,建 造 途 中,ま た は操 業 地

まで の 曳 航 中 の 状態 に対 し て も解 析 が 可 能 で あ る。
Fig. 21 Aker-H3 実 機 歪 計 測 時 の負 荷 状 態 本 論 文 に示 した 計算 例 にみ られ る よ うに,本 シス テ ムに
よる 計 算 結果 は,実 験 値 と良 く一 致 して お り,そ の妥 当

性 が確 認 さ れ た。 今 後 は,本 シ ステ ムを 各 種 の計 算 例 に
つ い て適 用 し,使 いや す い シ ス テ ム とす る よ う努 め たい

と考 え て い る。

最 後 に,本 シス テ ム の 開発 に あた り,い ろい ろ とご指


導 い た だ い た 九 州 大学 応 用 力学 研 究 所 の田 才 教授 お よび
大 楠 助 教 授 に 厚 くお 礼 申 し上 げ る とと もに,本 シス テ ム
の 開 発 に 従 事 した 日本海 事 協 会 お よび 三 井 造船(株)の 関
係 者 に 感 謝 い た しま す。
な お,AKER-H3の 実 機 計 測 に際 し,協 力 い た だ い
た 三 井 造 船(株)玉 野 造 船 工 場 の関 係 者 に お 礼 申 し上 げ ま

す。

参 考 文 献

1) Pedersen B. et al. : Calculation of Long Term


Fig.22 Aker-H 3 horizontal bracing の応 答 計 Values for Motion and Structural Response of
測 値 と計 算 値 と の比 較 例 Mobil Drilling Rigs, OTC 1881.
浮 遊式 海 洋構 造 物 の設 計 シ ス テ ム に つ い て 285

2) Pincemin M. et al. : An Integrated Program 第82号,1973.


for Dynamic Structural Calculation of Mobile 9) J. P. Hooft : A Mathematical Method of Dete-
Offshore Clnits, OTC 2052. rmining Hydrodynamically Induced Force on
3) Opstal G. H. C. et al. : MOSAS, A Motion and a Semisubmersible SNAME, 1971.
Strength Analysis System for Semisubmersi- 10) H. Kim et al. : Motions of a Semisubmersible
ble Units and Floating Structures, OTC 2105. Drilling Platform in Head Seas, SNAME 1972.
4) 吉 田 宏 一 郎 ほ か:浮 遊式骨組 構 造 の周 期 応 答 解 11) 藤井 斉 ほ か:海 洋 構 造 物 に作 用 す る 流体 力 の推
析,造 船 学 会 論 文 集,第136号. 定,三 菱 重 工 技 報,Vol.7,No.1,1970.
5) 吉 田 宏 一 郎 ほ か:浮 遊 式 骨 組構 造 の周 期 応 答 解 12) 鄭 鎮 秀:Motions of Semi-Submersible Drill-
析,造 船 学 会 論 文 集,第138号(続 報). ing Rigs in Deep Water,大 韓 造 船 学 会 誌,Vol.
6) 佐竹 優 ほ か:半 没 水 式 海 洋 構 造 物 の 設 計 及 び建 11,No.2,1974.

造,三 菱 重 工 技 報,Vol.13,No.4(1976-7). 13) 田 才 福 造:波 浪 に 対 す る 浮 遊 構 造 物 の 動 的 応 答,


7) 田 才 福 造 ほ か:Semi-Submersible Catamaran 日本 造 船 学 会 第1回 海 洋 工 学 シ ン ポ ジ ウ ム,1974.
Hullの 規 則 波 中 の 運 動 に つ い て,西 部造船会会 14) 小 林 正 典 ほ か:非 対 称 断 面 を も つ 柱 状 体 に 働 く流
報,第40号,1970. 体 力,三 井 造 船 技 報,第87号,1974.
8) 小 林 正 典 ほ か:船 舶 の 耐 航 性 に 関 す る 理 論 計 算 プ 15) 田 才 福 造 ほ か:浮 遊 構 造 物 に 働 く流 体 力 と そ の 運
ロ グ ラ ム(そ の1理 論 計 算 式),三 井 造 船 技 報, 動 に つ い て(第2稿),未 発 表,昭 和46年.

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