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94研 究論文 松 田他:初 層突合せ継手におけるHAZお よび溶 接金属で の低 温割れ発生条件

初層突合せ継手におけるHAZお よび溶接金属での
低温割れ発生条件についての検討
HY系 高張力鋼溶接金属の低温割れに関する基礎 的研究(第1報)

松 田福久,中 川博二,篠 崎賢二,実 松嘉浩

Criterion of Alternative Initiation of Cold Cracking in HAZ or Weld Metal


for Root Pass Welds of High Strength Steels
Cold Cracking Susceptibility in Weld Metal of HY-Steel (Part 1)

by Fukuhisa Matsuda, Hiroji Nakagawa, Kenji Shinozaki and Yoshihiro Sanematsu

In this study, the effects of applied stress, diffusible hydrogen content, hardnesses of HAZ and weld
metal on the crack initiation site were studied utilizing the small-sized TRC test for HT60, HT80, HY130
and 2,4Cr-1Mo steels in order to reveal the criterion under which cold cracking in root pass welding
occurred alternatively in HAZ or weld metal. The vickers hardness ranges in HAZ and weld metal were
290-390 and 360-410, respectively. The diffusible hydrogen contents range was 2-7 ml/100 g.
Consequently, in the diffusible hydrogen content range 2 to 4 ml/ 100 g, the cold cracking in weld
metal occurred under the higher hardness of weld metal, the higher applied stress and the higher diffusi-
ble hydrogen content in the weld metal hardness range about 315 to 370 and occurred only in the weld
metal in more than 370. Then, "critical stress vs. time diagram" which represented the change in the
critical stress in weld metal and HAZ \s. time laspe was proposed as the criterion considering the distri-
bution of diffusible hydrogen in weld zone. The tendencies of crack initiation in root pass welding as
mentioned above could be well explained by combining the progress of applied stress and "critical stress
vs. time diagram".

Key Words: Cold Cracking, High Strength Steel, Heat-affected Zone, Weld Metal, TRC Test

す るた め,低 温 割 れ の発 生 位 置 お よ び発 生 条 件 を 知 るに
1.緒 言
は,硬 さ,拡 散 性 水素 量 お よ び拘 束 応 力 な ど の個 々の効
一 般 に使 用 さ れ るHT80鋼 程 度 ま で の 高 張 力 鋼 の溶
果 よ り,溶 接 部 の水 素 濃 度 分 布,硬 さ,拘 束 応 力 の 負荷
接 部 で 発 生 す る低 温 割 れ は,主 と してHAZで 発 生 しや さ れ る時 期 およ び大 きさ な らび に低 温 割 れの 発 生 時 期 な
す い.こ の た め,母 材 の低 温 割 れ 感 受 性 の 検 討 が ど を総 合 的 に考慮 すべ き もの と考 え られ る.
重 要 で,従 来 よ りHAZの 低 温 割 れ 感 受 性 の研 究 が 多 く そ こで 本 報 告 で は,各 種 高 張 力 鋼 に 対 して 小 型TRC
な され て きた.と こ ろが,こ れ らの 鋼 材 よ り 強 度 レベ 試 験 を行 な い,低 温割 れ の発 生 位 置 を 支配 す る因 子 を 明
ル の 高 いHY130鋼 にお い て は,HAZよ り溶 接 金 属 で 確 に す る た め実 験 的 な検 討 を 行 な い,低 温 割 れの 発 生 条
の 低 温 温 割 れ が 問 題 と な る こ とが わ か った.低 温割 件 に 関す る定 性 的 な考 察 を加 え た.
れ が,HAZお よび 溶 接 金 属 の い ず れで 発 生 し易 いか と
2.使 用 材 料 お よ び 実験 方法
い う問題 は,低 温 割 れ 防 止 対策 上,重 要 な問 題 で あ り,
低 温割 れ の 発 生 位 置 を 支 配 す る 因子 を 明確 にす る こ とが 2.1使 用材料
望 ま れ る と こ ろで あ る. 割 れ発 生 条 侮 の一 般 則 を知 るた め鋼 材 と して は,市 販
この 点 に 関 す る系 統 的 な報 告 は少 な く,種 々の のHT60鋼,HT80鋼 お よび2種Cr-1Mo鋼 な らび に
材 料 で 断 片 的 に しか整 理 さ れて いな い.こ れ らを 総 合 す HY系 高 張 力 鋼 で あ るHY130鋼 を 用 い た.ま た,使 用
る と,溶 接 金 属 か らの 低 温割 れの 発 生 お よび 伝播 は,低 した被 覆 ア ー ク溶 接棒(以 後SMAW用 溶 接 棒 と記 す)
温 割 れ 感 受 性 の 支配 因 子 で あ る 組 織(硬 さで 代表), は,母 材 と 同一 強 度 レベ ル の市 販 のD5816,D8016,D
拡 散 性 水 素量 お よ び 拘 束応 力 に よ り,溶 接 金 属 の 硬 さ が T2416お よ び試 作 のE(130)Mで あ る.各 母 材 と
SMAW用 溶 接棒 を種 々組 合 せ,HAZと 溶 接 金 属 の硬
高 く,拡 散 性 水 素量 も多 く,し か も拘 束 応 力 が 高 くな れ
ば 起 こ り易 い よ うで あ る.し か しな が ら,溶 接 部 にお い さ の異 な る溶 接 部 を作 製 し,小 型TRC試 験を行 な っ
て は,時 間 の 経 過 に つ れ温 度 お よび 拡 散 性 水 素 量が 変 化 た.使 用 した母 材 お よ びSMAW用 溶 接 棒 の 溶 着金 属 の
化 学 組 成 をTable1に 示 す.
*原 稿 受 付 昭 和61年6月2日 昭 和57年 度 秋 季 全 国 大 会 で発 表 2.2小 型TRC試 験法
**正 員 大 阪 大 学 溶 接工 学 研 究 所Member
,Welding 低 温 割 れ 試 験方 法 と して 簡 便 で 解 析 の 容 易 な 小 型
Research Institute,Osaka University
***正 員 大 阪 大学工 学 部Member
TRC試 験 を行 な った.Fig.1は,試 験 片 形 状 お よ び寸 法
,Faculty of Engineering,
Osaka University を 示 した もの で あ る.開 先 形 状 は斜 めY形 と し,板 幅 は
****正 員 新 日本 製 鉄(株)ブ ラン ト事 業 部Member
,Plant&
35mmで あ り,板 恩 お よび 板 長 は特 に一 定 とは して い
Machinery Division,Nippon Steel Co .Ltd. な い が,:本 実 験 で は 板 厚31∼35mm,板 長150∼300

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溶 接学 会 論 文 集 第5巻(1987)第1号95

Table 1 Chemical compositions of base metals and deposited metals used

∼385ま で 変 化 した .
2.3低 温 割 れ 発 生 温 度 と 位 置の 検討
低 温 割 れ の発 生 温 度 と位 置 を 知 るた め,HT60鋼 およ
びHTl30鋼 を 用 い,小 型TRC試 験 に よ り以 下 の よ う
な実 験 を 行 な った.す な わ ち,試 験 ビ ー ドを 溶 接 後,
ビ ー ド中央 部 のHAZの ボ ン ド近 傍 部 の温 度 が300℃ に
冷 却 した 時 点 で,40mm/minの 引 張 速 度 で一 定 負 荷 を
か け,ボ ン ド近 傍 の 温 度 が250∼100℃ の 範 囲 の任 意 の 温
度 に冷 却 した 時 点 で40mm/minの 速 度 で 除荷 した.な
お,除 荷 温 度 を20∼30℃ 間 隔で 選 ん だ.試 験 後,試 片
を 溶 接 線 に直 角 に1mm厚 で 切 断 し得 られ た 約25断 面
に つ い て,光 学 顕 微 鏡(倍 率1.00ま た は400倍)で 割 れ
の発 生 位 置 を 調 べ た.
拡 散 性水 素 量 お よ び負 荷 応 力 の 影 響 を み る た め,HY
130鋼 で は負 荷 応 力 を,392,540お よ び784MPa,HT
60鋼 で は540MPaと し,拡 散 性 水 素量 は,HY130鋼
Fig. 1 Specimen configuration of the small-sized で は1.0お よ び2.7ml/100g,HT60鋼 で は5.2お よ び
TRC test 19..5ml/100gと した.

3.フ ラ ク トグ ラ フ ィに よ る 低 温 割 れ
Table 2 Vickers hardness in weld metal and HAZ
発 生位置の検討
低 温割 れ の 発 生位 置 を知 る ため,小 型TRC試 験後 の
破 断面 か ら フ ラ ク トグ ラ フ ィ的手 法 を 用 い割 れの 発 生 位
置 を類 推 した.
各材 料 に お け る割 れ 破面 の ミク ロ形 態 は,IGIVC,CDWC,
QCHお よ びDWの4種 類 の 破 面形 態 に分 類 す る こ とが
で きた.す な わ ち,IGWCと は,溶 接 金 属中 の 粒 界 破 面,
CDWは 溶 接 金 属中 の 擬 へ き開 破面 とデ ィ ンプ ル 破 面 の
混 合 破 面,ま たDWは 溶 接 金属 中 のデ ィ ンプ ル 破 面 で あ
る.QCHはHAZの 擬へ き開破 面 で あ る.IGWC,CD
mmで あ った.試 験 溶 接 に は被 覆 ア ー ク溶 接法(SMAW WCお よびQCHは,そ の 破 面形 態 の特 徴 か ら,水 素 め影 響
と記 す)を 用 い,溶 接条 件 は,170A,25V,150mm/ を 受 け た 破 面 形 態と 考 え られ た.こ の よ うな4種 類 の破
minと し,予 熱 は行 な って い な い.荷 重 は,溶 接 終了 後 面 形 態 は,既 報 のTRC試 験で 認 め られ た 破面 形 態 と
ビ ー ド長中 央 部 のHAZの ボ ン ド近 傍 部 の 温 度 が 約150 同 様 で あ った.
℃ に 冷 却 した 時点 か ら2mm/minの 引 張 速 度 で 負荷 し 一 方 ,小 型TRC試 験 の 割 れ破 面 の マ ク ロ形 態 を その
始 め,一 定 荷 重 に保 持 した.な お,一 部 割 れ 破面 形 態 に 破 断 形 式 か らModeI∼IVま で の4種 類 に 分 類 し た.
及 ぽ す荷 重 負 荷 温 度 の影 響 を み るた め,荷 重 負荷 温度 を Fig.2に 分類 した 破面 形 態 の全 景 とそ の模 式 図の 典 型 例
約20お よ び300℃ と した試 験 も行 な った.溶 接 ア ー クの を 示 す.図 中,IGWC領 域 を そ の存 在 位 置 の違 いで,そ れ
始 端 お よ び終 端 部 は,タ ブ板 で 除 外 した.ま た,溶 接 部 ぞ れ(IGWC)Pお よび(IGWC0iと して 区 別 した .(IGWC)P
の 拡 散 性水 素量 は,SMAW用 溶 接 棒 を再 乾 燥(温 度: 領 域 は,Modelお よ び1の み に認 め られ,割 れ 破 面 上
150,350お よび400℃)し た り水 浸 す るな ど して 変 化 させ QCH領 域 の上 部 に位 置 して い る.こ の ため,(IGWC)p領
た.拡 散 性 水 素 量 は,ガ ス ク ロ法 で 測 定 した結 果,溶 着 域 は,.QCH領 域 と して 発 生 した 割 れ が伝 播 す る途 中 に
金 属100g当 た りで約2∼19ml/100gま で 変 化 して い 現 わ れ た もの と考 え られ る.ま た,ModeIに お いて は,
た.Table2に 種 々の 母材 とSMAW用 溶 接 棒 との 組 合 QCH領 域 はルー ト部 の ビー ド長 手 方 向 に一 様 に拡 が っ
せ にお け るHAZの 最 高 硬 さ と溶 接 金属 の平 均 硬 さを 示 て い る.こ の こ とか ら, .ModeIで は,明 らか にHAZか
した 。HAZの 最 高 硬 さは,360∼410,溶 接 金 属 で は240 ら割 れ が 発 生 した もの と考 え られ る.

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96研 究 論文 松 田 他:初 層 突 合 せ 継 手 にお け るHAZお よ び 溶 接 金 属 で の低 温 割 れ発 生 条件

Fig. 2 Classification of fracture mode in the small-sized TRC test

一 方,(IGWC),領 域 は,ModeIIIお よ びIVの み に認 め ら


れ,QCH領 域 か ら独 立 して い る.特 に,ModeIVに おい
て は,QCg領 域 は全 く認 め られ な い こ とか ら,溶 接 金
属 か ら割 れ が 発 生 した もの と考 え られ る.ModeIIIで は,
ル ー ト部 にわ ず か にQCR領 域 が 認 め られ る た め,割 れ
発 生 位 置 がHAZか そ れ と も溶 接 金 属 か が 判 別 し 難 い
が,QCH領 域 に 比 して(IGw)i領 域 がか な り広 い こ と
か ら,溶 接 金 属 か ら割 れ が 発 生 した もの と考 え られ る.
ModeIIに お い て は,IGwは,(IGWC)pか(IG)iか は判
別 し難 く,さ らにQcR領 域 はModeIの よ うに ル ー ト
部 の ビー ド長 手 方 向に 一 様 に拡 が って い な い.し た が っ
て,ModeIIで は 割 れ はHAZま た は 溶接 金 属 の い ず れ
か か ら発 生 した もの と推 察 され る.こ の よ うな 分 類 をす
Fig. 3 Relation between applied stress and frac-
れ ば,溶 接 金 属 か ら割 れ が発 生 す る傾 向 は,ModeIか
ture time
らNに な るに つ れ て 大 き くな る も の と考 え られ た.
4.低 温 割 れ の 発 生 位 置 に及 ぼす 金 属 割 れ(○,□ 印)と して 区 別 した(〓 お よび 口 印
諸因子の影響 は,負 荷 中 に 破 断 し破 面 形態 は○ お よび 「]印 と 同 一 で

前 述 した 破 面 分 類 方 法 に よ る各試 料 の割 れ発 生 位 置 と あっ た.☆ 印 は,溶 接 後10日 間放 置 した 後,引 張 り破 断

負 荷 応 力,拡 散 性 水 素 量 お よび 硬 さの 関 係 を検 討 した. させ た もの で,破 面 は 完 全 な 延性 破 面 で あ った.× 印


4.1負 荷 応 力,拡 散 性 水 素 量 お よ び 硬 さの 影響 は,溶 接 後48時 間 以 内 に 破断 しなか った継 手 で あ る).
Fig.3はHT80鋼 につ いて 小 型TRC試 験を行 なっ 図 よ り高 応 力 ま た は 拡 散性 水 素量 が 多 い場 合 に 溶 接 金
た 結 果 を 負荷 応 力 と破 断 時 間 との 関 係 で ま とめ,こ れ に 属 で割 れ が 発 生 し易 い こ とが わ か る.す な わ ち,溶 接 金
破 面 形 式 を示 した も ので あ る.割 れ 発 生 位 置 の 観 点 か 属 での 割 れは,高 負 荷 応 力 で短 破 断 時 間 に起 こ り易 い と
ら,ModeIはHAZ割 れ(● 印),ModeIIはHAZま も言 え る.こ の こ と は,応 力 が 負 荷 され た場 合,ま ず 最
た は 溶 接 金 属 割 れ(〓.印),ModeIIIお よ びIVは 溶 接 初 に溶 接 金属 か ら割 れ が 発 生 し易 い が,も しこの と き溶

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溶 接 学 会 論 文集 第5巻(1987)第1号97

接 金 属 で 割 れ が 発 生 しな か った 場合 に は,時 間の 経 過 後 破 面 形 態 に 及ぼ す荷 重 負 荷 温 度 の 影 響 につ い て 検 討 し
にHAZで 割 れ が 発 生 す る よ うに な る もの と考 え ら れ た.Fig.50は 割 れ 破 面 の 全 景 とそ の模 式 図 を示 した もの
る.前 者 の 溶 接 金 属 で の 割 れ 発 生 の場 合,そ の位 置 は柱 で あ る.負 荷 温 度 を300℃ と した 場 合,破 面形 態 は典 型
状晶 の会 合 部 が 多 か っ た,こ の た め溶 接金 属 で の割 れ 的 なModeIVに な って い た.一 方,負 荷 温 度 を20℃ と し
発生 に も負 荷 応 力,拡 散 性 水 素 量 お よ び溶 接 金属 の 硬 さ た 場 合,破 面形 態 は典 型 的 なModcIと な って い た.こ
が 関係 す る もの と考 え られ る.そ こで,小 型TRC試 験 れ よ り,負 荷 時期 を高 温 か ら低 温 に変 化 させ る こ とに よ
で の割 れ破 面 形 態 を 負 荷 応 力 と溶 接 金 属 との硬 さ で整 理 り割 れ 発生 位置 は,溶 接 金 属 か らHAZに 移 行 す る こと
した.拡 散 性 水 素 量 が2∼4ml/100gの 場 合 の 結果を が 明 らか に な った.こ れ は,負 荷 温 度 が 高 い 場 合 に は,
Fig.4に 示 す .溶 接 金属 の硬 さ が約375以 上 で は,割 れ は 未 だ 溶 接 金 属 中 に残 留 して い る拡 散 性 水 素 量 が 多 く,負
負 荷 応 力 に無 関 係 に常 に 溶 接 金 属 か ら発生 して い る.一 荷 温度 が 低 い 場合 に は,拡 散 性 水 素 は母 材 側 へ 拡 散 し,
方,硬 さ が約315以 下 で は 割 れ が発 生 しな い.硬 さ が約 HAZの ボ ン ド近傍 に集 積 した り,大 気 中 へ逃 散 す る た
315∼375の 範 囲 で は,割 れ の 発 生位 置 は負 荷 応 力 お よび め と考 え られ る.
硬 さ に依 存 して い る.ま た,拡 散 性 水 素 量 が4∼7ml/ この こ とか ら,割 れ の 発 生 条 件 を 検 討 す る場 合,単 に
100g
と多 くな る と,こ の負 荷 応 力 に依 存 す る硬 さ範 囲 溶 接 時 に 投 入 さ れ た拡 散 性 水 素 量 の み な らず,拡 散 性 水
は約270∼360と な り,そ の 間 の 溶接 金 属 で の割 れ 発 生 限 素 量 の 溶 接 部で の 分布 状 態 も重 要 な 因 子 で あ る こ と が わ
界 応 力 も低 応 力 側 へ 移 行 した.す な わ ち,高 水 素 レベル か る.
で は,溶 接 金 属 で の 割 れ発 生 領 域 は,よ り低 応 力,低 硬
5.低 温割れ発生温度の検討
さ レベル に移 行 して い る こ とが わ か った.
4.2荷 重 負 荷温 度 の 影 響 低 温 割 れ の発 生 条 件 を考 え る上 で,割 れ 発生 の上 限温
Fig.3の 結 果 よ り,同 一 材 料 に お いて,負 荷 温 度 が違 度 を 明 確 に して お くこ とが重 要 で あ る.従 来 よ り割 れ発
生 温 度 に 関 す る検 討 が な され て い るが,実 際の
え ば割 れ 発 生 位 置 に も違 い が 生 じる こ とが予 想 さ れ る.
溶 接 部 に お け る割 れ発 生 温 度 に関 して 検 討 した例 は少 な
そ こで,HY130鋼 に対 し,予 熱温 度85℃ で,負 荷 温 度
い.そ こで,初 層 突 合 せ 継 手 の 場 合 の 割 れ発 生 温 度 につ
を300℃ お よび20℃ と し小 型TRC試 験 を 行 な い,割 れ
い て 検 討 を 加 え た.
Fig.6は,HY130鋼 につ い て 割 れ発 生 位 置 お よ び温
度 を 調べ た もの で あ り,こ の 結 果 を 負荷 応 力 と除荷 温 度
との 関係 で ま と め た もの で あ る.拡 散 性 水 素量 が2.7ml
/1009で は,負 荷 応 力540お よび780MPaに お いて 割 れ
は 約170℃ 付 近 で 発 生 す る こ とが わ か る.こ の割 れ 発 生
温 度 は,負 荷 応 力 が540MPaよ り低 くな る とや や 低 温
側 に移 行 して い る.拡 散 性 水 素 量 が1ml./100gに 減 少
した 場合 も割 れ発 生 温 度 は約170℃ 近 傍 で あ り,拡 散 性
水 素量 の多 少 に は ほ とん ど影 饗 され て い な い.ま た,い
ず れ の拡 散 性 水 素 量 にお いて も割 れ 発生 温度 近 傍 で の 割
れ は,溶 接 金 属 で 発 生 して お り,HAZで の 割 れ は,さ
らに低 温 側 で発 生 して いた.
6.初 層突 合せ 溶 接 部 の 低 温 割 れ 発 生 条 件
Fig. 4 Effect of diffusible hydrogen content, ap-
以上 の 実 験 で 得 られ た 割 れ 発 生 傾 向 を よ り明確 にす る
plied stress and hardness of weld metal on
the tendency of crack initiation た め,拡 散 性 水 素 量 の 分 布,溶 接 部 の硬 さ お よ び拘 束 応
力 を考 慮 し,TRC試 験 の場 合 につ いて 低 温 割 れ 発 生 条
件 に 関す る考 察 を 行 な った.
一般 に
,溶 接 入 熱,板 厚 お よ び 開先 形 状 な ど を一 定 と

Fig. 5 Effect of loading temperature on fractured Fig. 6 Detection of the crack initiation tempera-
surface in the small-sized TRC test ture by the small-sized TRC test

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98研 究 論文 松 田 他:初 層 突 合 せ 継 手 にお け るHAZお よ び 溶 接 金 属 で の低 温 割 れ 発 生 条 件

Fig. 7 Change in hydrogen concentration in weld


metal center and HAZ after welding

した 場合,溶 接 金 属 お よ びHAZの 硬 さは 母 材 お よび 溶
接 材 料 の 組 合せ に よ って 決定 さ れ,溶 接 部 に 負 荷 され る
拘 束 応 力 は,ル ー ト部 の 形 状 が決 まれ ば ほぼ 決 定 さ れ Fig. 8 Relation between hydrogen concentration
る.す な わ ち,硬 さお よ び拘 束 応 力 は時 間 に 無 関 係 で あ and critical stress of crack initiation
る.し か し,拡 散 性 水 素 量 は,時 間の 経 過 につ れ て 変 化
す るた め,割 れ 発 生 条 件 を 考 え る場 合,拡 散 性 水 素 量 の
時 間 依 存 性 を 考 慮 す る必 要 が あ る.
瞬 間線 熱 源 を 想 定 す るな らば,藤 井 ら の1次 元 水 素
拡 散 モデ ル か ら求 め た 溶 接 部 の水 素 濃 度 分 布 式 よ り,溶
接 金 属 お よびHAZの 割 れ 発生 位置 に お け る拡 散 性 水 素
量 の 時 間 変 化 は,Fig.7に 示 した よ うにな る もの と考 え
られ る.す な わ ち,溶 接 金 属 の拡 散 性 水 素 量 は,溶 接 直
後 に は最 大 値 を 示 し,そ の 後冷 却 と と も に単 調 減 少 し,
HAZの 拡 散 性水 素 量 は,溶 接 直 後 に は ほぼ0に 近 く,
溶 接 部 の 冷 却 と と も に次 第 に増 加 し,極 大 値 を 示 し,そ
の 後 母 材 へ の 拡 散 や 一 部 大 気 中へ 逃 散 す るた め 次 第 に減
少 す る もの と考 え られ る.Fig.7に お いて,tlは 水素脆
化 を 引 き起 こす 上 限 温 度(Ti)ま で 冷 却 した 時 点 の 時 間
を 示 して お り,Fig.6で 得 られ た結 果 で は,HY130鋼
でTlは 約170℃ で あ った.ま た,本 実 験 で 用 い た 溶 接
入 熱(1.7kJ/mm)の 条 件 で は,t,は 約60秒 で あ った. Fig. 9 Critical stress vs. time diagram
1次 元 水 素 拡 散 モ デ ル に よる著 者 らの 試 算 で は,HAZ
の 拡 散 性 水 素 量 が 最 大 とな る時 期 は,約50分 であ り η 界 応 力 を 示 して い る.工 学 的 に は,RRC試 験 と イ ンプ
よ り長 時 間 側 とな って い た.ま た,HAZの 拡散性水素 ラ ン ト試 験 とのLCSの 比 は,割 れ発 生 部 の応 力 集中 の
は 応 力 誘 起 拡 散 に よ り,応 力集 中部 に集 積 し,応 力 集 中 比 に等 しい こ とが 報 告 さ れて お り,定 性 的 には,Fig.
部 で は一 時 的 に 拡 散 性 水 素 量 が最 大 とな る時 期 が あ る. 8の 縦 軸 に は1(,を 乗 じた 限界 応 力 を採 用 して も よい と
百 合 岡 お よび 佐 藤 らの計 算 で は,応 力 誘 起 拡 散 に よ 考 え られ る.
り最 大 の 拡 散 性 水 素 量 にな る時期 は,溶 接 後 約100分 経 Fig.7お よび8を 組合 せ る こ と によ り,Fig.9に 示す
過 した 頃 で あ った.し た が って,割 れ の 発 生 時 期 が 溶 接 よ うな溶 接 金 属 お よ びHAZの 割 れ 発 生 限 界 応力(そ れ
後100℃ 程 度 に 冷 却 す るま でで あ る こ とを 考 慮 す れ ば, ぞ れ σcωwお
よ び σ,ハと略記 す る)の 時 間変 化 曲 線 を 描
この 温 度 付 近 で の 割 れ 発 生 条件 を考 え る上 で,溶 接 部 の く こ とがで き る(こ の 図を 以 下"時 間 一 限界 応 力 線 図"
拡 散 性 水 素 量 の 分 布 を 考 え る場 合,応 力 誘 起 拡 散 は無 視 と呼 ぶ),σcω お よ び σchゐ
は,tl以 後 で の み意 味 を 持 っ
で き る もの と考 え られ る. て い る.σcω は 時 間 の経 過 と と もに単 調 に増 加 し,ash
低 温 割 れ に お いて は,下 部 限 界応 力(LCS)が 存 在 はa,以 後 ま ず 減少 し,極 小値 を と った 後次 第 に増 加 し
し,こ のLCSは 拡 散 性 水 素量 お よ び硬 さの 増 加 に とも て い く.こ の図中 にTRC試 験 に お け る負荷 応 力 お よ び
な い減 少 す る こ とは よ く知 られ て い る.し た が って,あ 拘 束 応 力 の履 歴 を書 くこ とに よ り,以 下 に示 す要 領 で,
る水 素濃 度 に対 して 割 れ 発 生 部 に お け る割 れ 発 生 限界 応 HAZお よ び 溶接 金 属 の い ず れ か ら割 れ が 発生 す る の か
力 も定 性 的 に は,Fig..8に 示 す よ うに,拡 散 性 水 素 量 に を 知 るこ とがで き る.
よ り一 義 的 に決 定 さ れ る もの と考 え られ る,こ の 図 に お 図 にお い て,t=tlの 場合 の σcωお よびσchを それ ぞ れ
い て は,応 力集 中係 数 の異 な る2箇 所 の 間 の 限界 応 力 を (σcω
の,お よ び(σch),と し,σchの 極 小 値 を(σch)のmin.
比 較 す る た め,縦 軸 に は応 力 集中 係 数(Kt)を 乗 じた 限 と して い る.本 実 験 の よ うにHAZの 硬 さは あ ま り変 化

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溶接 学 会 論文 集 第5巻(1987)第1号99

せ ず,溶 接 金 属 の 硬 さ が 大 き く変 化 す る 場 合,こ の図は る.図中 に は,TRC試 験 にお け る負 荷 応力 σ1,σ2,σ3


σcω 曲 線 の 動 く範 囲,い い か え る と(σcω)lの 範 囲 に お よ び σ4を 示 して お り,割 れ はt≧t,で 発 生 す る.
よ っ て 三 つ の 場 合 に 区 別 す る こ と が で き る .す な わ ち, Fig.10(a)は,溶 接 金 属 の 硬 さが非 常 に高 い場 合(CaseI)
(σcω)tの<(σch)min.の 場 合(CaseI),(σch)min.<(σcω)の を 想 定 して い る.Fig.10(a)で σ1が 負 荷 さ れ た場 合,
<(σch)t,の 場 合(CaseII)お よ び(σcωt>(σch)tの 場 σ1は σω お よび σchに比 して 低 く,時 間が 経 過 して も
合(CaseIII)で あ る.Fig.10(a),(b)お よ び(c)は,そ れぞ これ らを 越 え る こ とは な い た め,割 れ は発生 しな い.σ2
れ の 場 合 の"時 間 一 限 界 応 力 線 図Aを 示 した もの で あ が 負 荷 さ れ た 場 合 には,σ2はt=tlで σcω
を越 えて い
るた め,t=tlで 溶 接 金 属 か ら割 れ が発 生 す る.σ3が 負
荷 され た 場 合,σ3はt=tlで σcωお よび σchの い ず
れ よ り も大 きい が,(σ3-σcωの と(σ3-σch)と の比 較
で は,1=tlで(σ3-σcω)>(σ3-σch)の た め,t=tl,で
溶 接金 属 か ら割 れ が発 生 す る.し た が って,Fig.10(a)の
場 合 に は,割 れ は常 に溶 接 金 属 か ら発 生 す る.こ れ は,
HY130鋼 の溶 接 部 の 割 れ 発 生 傾 向 と よ く対 応 して い
る.な お,も し.σ'2のよ うに 時 間 がか な り経 過 した 後 負
荷 さ れた 場合(低 温で 負 荷),割 れ はHAZか ら発生 す
る.こ の よ うな 方 法 に よ り,Fig.5の 結 果 も よ く説 明 で
き る.
Fig.10(b)は,溶 接 金 属 の 硬 さがFig.10(a)に 比 べ や や
低 い場 合(CaseII)を 想 定 した もの で あ る.σcω はFig.
10(a)の 場 合 に比 して や や 高 くな り,σchはFig.10(a)の
場 合 と同 様 で あ る.図 よ り,σ1で は割 れは発 生 しな い
が,σ2で はt=tlで σ2>σchと な るた め,HAZで 割
れ が 発 生 す る.σ3で はt=tlに お いて 割 れ は,溶 接 金 属
か ら発 生 す る.す な わ ち,こ の 場 合 負 荷 応力 の増 加 と と
もに 割 れ 発 生 位 置 はHAZか ら溶 接 金 属 に変 化 す る こ と
にな る.こ れ は,Fig.3に 示 したHT80鋼 の 場 合の割
れ 傾 向 と よ く対応 して い る.
Fig.10(c)は,Fig.10(b)の 場 合 に比 して さ らに溶 接 金
属 の硬 さ が 低 い 場 合(CaseIII)で あ る.図 よ り,σ1で は
割 れ は発 生 しな い.σ2,σ3ま た は σ4が 負 荷 され た 場
合,上 述 した考 え方 か ら割 れ は す べてHAZか ら発 生 す
る こ とに な る.し た が って,Fig.10(c)は,HT50鋼 お
よ びHT60鋼 の 割 れ 傾 向 とよ く対 応 して い る.
Fig.11は,溶 接 金 属 の 硬 さ と負荷 応 力 で 整 理 し た 割
れ発 生 傾 向 を模 式 的 に示 した も ので あ る,Fig.10を 考
慮 す る と,Fig.11は,3領 域 に分 け る こ とがで き る .す

Fig. 11 Crack initiation site determined by diffusi-


Fig. 10 Variation of critical stress of weld metal ble hydrogen content, applied stress and
and HAZ hardness of weld metal

99
100研 究論 文 松 田 他:初 層 突合 せ 継 手 に お け るHAZお よび溶 接金 属 で の 低 温 割 れ 発 生条 件

な わ ち,RegionIで は割 れ は常 に溶 接 金 属 か ら発 生 して (4)HY130鋼 のSMAWの 場 合,溶 接 金 属 の割 れ発


お り(Fig.10(a)(CaseI)yL対 応),RegionIIは,割 れが 生 温 度 は拡 散 性 水 素 量 に 関係 な く,ほ ぼ170℃ で あ っ た.
常 にHAZか ら発 生 す る 領 域 で あ る(Fig.10(c)(Case しか も,こ の 温 度 は,HAZの 割 れ 発 生 温 度 に 比 して 高
III
)に 対 応).RegionIIで は,割 れ発 生 位 置 がHAZお か った.
(5)"時 間 一 限 界応 力 線 図"を 作 成 し
よ び溶 接 金 属 の いず れ か で あ り,そ の境 界 は拡 散 性 水 素 ,低 温割 れ発 生
量,溶 接 金 属 の 硬 さお よび 負荷 応 力 に依 存 して 変 化 す る 条 件 を 考 察 し,、本実 験 結 果 な らび に従 来 か らの低 温 割 れ
領 域 で あ る(Fig.10(c)(CaseII)に 対 応).し た が って, 発 生 傾 向 を 定 性 的 に よ く説 明で き る こ とを 明 ら か に し
RegionIとIIの 境 界 は,(σcω)l=(σch)min.と な る場 た。
合,RegionIIとIIIの 境 界 は,(σcω)l=(σch),と な る場 合 謝 辞
に対 応 して い る こ とに な る.RegionII内 で は,HAZと 本 研究 の遂 行 に 熱心 に協 力 され た,大 阪 大学 工 学 部 学
溶 接 金 属 で の 割 れ 発生 領 域 の境 界 は図 の 実 線 の よ うに描 生 の 森 本 裕 君 に 感謝 します.ま た,材 料面 で 多大 の御 援
くこ と がで き る.Fig.10(b)よ り,拡 散 性 水 素 量 が 多 くな 助 を い た だ い た新 日鉄(株)プラ ン ト事 業 部戸 畑 製作 所 に対
れ ば,こ の実 線 の境 界 線 は,破 線 の よ う に低 応 力,低 硬 し厚 く御 礼 を 申 し上 げ ます.
さ方 向 に移 行 す る もの と考 え られ る.こ れ らの結 果 は,
参 考 文 献
Fig.4に よ く一 致 して お り.,"時 間 一 限 界応 力線 図"と
1) A. M. Rathbone et al. : Weldability of a High-
負 荷 応 力 また は 拘 束 応 力 との組 合 せ によ り定 性 的 に は, Toughness Alloy Plate Steel with a Minimum Yield
HAZお よび 溶 接 金属 の いず れか ら割 れ が発 生 す るか を Strength of 140 ksi, Weld. J., 43-12 (1964), 551s-563s
決 め る こ とが で き る. 2) J.H. Gross : The New Development of Steel Weld
ments, Weld. J., 47-6 (1968), 241s-270s
7.結 論 3) F. Matsuda et al. : Fractographic Investigation on Root
Crack in the TRC Test of HY-130 Steel, Trans. of
初 層 突 合 せ 継 手 に お け るル ー ト部 の 低 温 割 れ 発生 位 置
JWRI, 6-2 (1977), 59-73
を 明 らか にす るた め,HT60,HT80,HYI30お よ び
4) 木 原 他:高 張 力鋼 溶 接 部 のル ー ト割 れ に 関 す る研 究(第1報),本
2砥Gr-lMo鋼 に 対 し,種 々の 強度 レベル のSMAW用
誌,31-1(1962),53-64
溶 接 棒 を 用 い,小 型TRC試 験 を行 な い,割 れ発 生 位 置 5) W. P. Campbell : Experiences with HAZ Cold Cracking
に及 ぼす 負 荷 応 力,拡 散 性水 素 量 な らび にHAZお よび Tests on a C-Mn Structural Steel, Weld. J., 55-5
溶 接 金 属 の硬 さの 影 響 につ いて 検 討 を 行 な った.得 られ (1976), 135s-143s
6) 鈴 木 他:引 張 拘 束 割 れ試 験(TRC試 験)に よる 高 張 力 鋼 の ル ー ト
た結 果 を要 約 す る と次 の よ うにな る.
割 れ に お よ ぼ す外 的 拘 束 力 の影 響,本 誌,32-1(1963),44-55
(1)小 型TRC試 験 に お け る割 れ 発生 形 態 は,そ の割 7) 渡 辺 他:拘 束 状 態 に お け る溶 接 継 手 の割 れ 発 生 に つ い て,造 協論文
れ 破 面 の 特 徴 か ら,フ ラ ク トグ ラ フ ィ的 にModeI∼IV 集,113,136-145
まで の4種 類 に分 類 す る こ とがで き た.ModeIで は, 8) C. G. Interrante et al. : Delayed Cracking in Steel
Weldments, Weld. J., 43-4 (1964), 145s-160s
明 らか にHAZか ら先 に割 れが 発 生 した と推 定 さ れ る形
9) 稲 垣 他:ル ー ト割 れ と高 張 力鋼 溶 接 部組 織 の 関係 に つ い て,金 材 研
態 で あ る.ModeIIで は,HAZお よび溶接金属のいずれ
報 告,8-3(1965),23-36
か ら先 に割 れが 発生 した の か判 別 しに くい 形 態 で あ る.
10) 春 日井 他:溶 接 低 温 割 れ の破 面 観 察 に よ る 発 生伝 播 経 路 に つ い て,
ModeIIIで は,判 別 しに くい が,し いて いえ ば 溶 接 金 属 (本 会 講概,27(1980),242-243
か ら先 に割 れ が 発 生 した と推定 され る形 態 で あ る. 11) 伊藤 他:低 水 素 系 溶 着 金 属 の機 械 的 性 質 に対 す る炭 素 当量 の 算 出
ModeIIIは,HAZで の 割 れ は ま った く認 め られ ず,溶 接 第3報),本 誌,36-10(1967),52-58
12) 鈴 木 春 義 著:鋼 材 の溶 接割 れ(低 温 割 れ),溶 接 学 会 技 術資 料No
金 属 の み に お いて 割 れ が 発 生 した形 態 で あ る.
.1,1976年8月
(2)
(1)に示 した分 類 方 法 か ら,小 型TRC試 験 にお け
13) 篠 崎 他:HY-130超 高張 力 鋼 溶 接 部 のTRC割 れ 試 験 片 の フラ ク
る割 れ発 生 傾 向 を検 討 した 結果,溶 接 金 属 で 割 れ が 発 生 トグ ラ フ ィ,本 誌,47-8(1978),29-33
し易 い の は,比 較 的 高 応 力 で短 時 間破 断 の 場 合 で あ っ 14) K.Farrell et al.:Hydrogen Embrittlement of Ultra-
た.ま た,溶 接 金 属 で の 割 れ は,拡 散 性 水 素 量 が 多 く, High-Tensile Steel,J.1.S.L,202-12(1964),1002-1011
15) B.A.Graville et al.:Effect of Temperature and Strain
溶 接 金 属 が硬 い ほ ど容 易 とな った.
Rate on Hydrogen Embrittlement of Steel,Brit.Weld.
(3)本 実 験 範 囲内 の 鋼 種 にお いて,母 材 と溶 接 金 属 と
J.,14-6(1967),337-342
の 組合 せ に お け る割 れ 発 生 傾 向を 負 荷 応 力 と溶 接 金 属 の 16) 藤 井 他:1パ ス 溶接 部 に お け る水 素拡 散 挙 動 とル ー ト割 れ 防 止 条 件

硬 さ で整 理 した結 果,拡 散 性水 素量 が2∼4ml/100gの につ い て,溶 接 冶金 研 究 委員 会資 料,WM-668-77

範 囲 で は,硬 さ が約315以 下 で は常 にHAZか ら割 れ が 17) 百 合 岡 他:活 量 を 変 数 とす る物 質拡 散式 の検 討,本 誌,48-9(1979),


70-74
発 生 し,硬 さ が約375以 上 で は常 に溶 接 金 属 か ら 割 れ が
18) 佐藤 他:単 層 溶 接 部 の局 部集 積 水 素 濃 度 に お よぼ す溶 接 諸 条 件 の影
発 生 した..硬 さ が約315∼375で は,溶 接 金 属 の 割 れ は,
響,本 誌,48-7(1979),66-71
負 荷 応 力 が高 く,硬 さが 高 くなれ ば よ り発 生 し易 くな っ 19) 佐藤 他:RRC試 験 の限 界 拘 束 応 力 と イン プ ラ ント 験 の限 界 応 力
た.ま た,拡 散 性 水 素 量 が 多 くなれ ば よ り溶 接 金 属 に割 の関 係,本 誌,48-7(1979),82-86

れ が発 生 し易 くな る傾 向 が 認 め られ た.

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