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大気汚染学会誌 第13巻 第6号 1978

三 点 比 較 式 臭 袋 に よ る臭 気 の 測 定(1)
― 発 生 源 に お け る 測 定―

A new method for measuring odors by triangle odor bag method (I)

Measurement at the source

岩 崎 好 陽 ・福 島 悠 ・中 浦 久 雄
Yoshiharu IWASAKI•EHisashi FUKUSHIMA•EHisao NAKAURA

矢 島 恒 広 ・石 黒 辰 吉
Tsunehiro YAJIMA•ETatsukichi ISHIGURO

ABSTRACT

In Japan the A. S. T. M. syringe method has been widely used as a means of measuring odor

concentration. This method, however, has several disadvantages, such as adsorption of odors on the

syringe surface and small capacity of syringe.

Thus, in order to eliminate the disadvantages in the method, the syringe was replaced by th

plastic bag (the volume is 3 liters), and the preconceived idea of the panel was removed by adopting

the triangle method.

The volumetric error of the bag was at most several percent as a result of our experiments, and

the diffusion rate of sample gas in the bag was less than 1 minute.

Measured results of this method were 410•`1,700 odor concentration at the printing (gravure) ,

31,000 at the fishmeal plant, 97•`310 at the boiler (city gas, kerosene), 4,100 at the boiler (heavy

oil C) and so no. The results were in approximate agreement with the damaged condition.

メー タ法4),無 臭 室 法5,6),オ ル フ ァク トメー タ法7・8)など


1.  緒 言
が あ るが,そ の 中 で も注 射 器 法 が 悪 臭 公 害 の現 場 測 定 に
に お い の 測 定 方 法 に は,そ の に お い を 構 成 して い る成 は 向い てお り,日 本 で も注射 器 法 に よる測 定 例 が 多 い 。
分 に 着 目 し,ガ ス ク ロ マ トグ ラ フ等 で 分 析 して そ の濃 度 しか し,こ の 方 法 は 再 現性 の よい値 が 得 られ に くい た
(ppm)で 評 価 す る機 器 測 定 法 と,人 間 の 嗅 覚 に よ り測定 め,目 安 を 得 るた め に は 有効 で あ る が,規 制 を と もな う
す る官 能 試 験 法 とが あ る。 行 政 的 な方 法 と し ては 不 向 き と され て い た。 筆 者 らは こ
また 後 者 に おけ るに おい の数 量 化 の方 法 に も,臭 気 強 れ らの問 題 点 を 解 決 した 新 しい 測 定 方法 を確 立す るた め
度 表 示,認 容 性 表 示 お よび 臭 気 濃 度 表 示 で求 め る方 法 が 多年 検 討 を 重 ね9∼12),こ のた び ほ ぼ 完 成 した の で,三 点
あ る1)。 そ の中 で も,そ の に おい を 清 浄 な 空 気 で うす め, 比 較 式 臭 袋 法 と して こ こに 報 告 す る。 な お,こ こで は発

無 臭 に な るま で に要 した希 釈 の倍 数 を もっ て表 わ す 臭 気 生 源(主 に排 出 口)に お け るに お い の 測 定 方 法 に つ い て

濃 度表 示 法 が,他 の表 示 方 法 に比 べ,客 観 的 評 価 が 得 ら 述 べ る。
れ や す く,日 本 を は じめ ア メ リカ等 に お い て も広 く使 わ
2.  実 験
れ て きた2)。
こ の臭 気 濃 度 を 求 め る方 法 に は,注 射 器 法3),セ ント 2.1  官 能 試 験 法 改 良 に 関 す る 基 本 的考 え方

東京都公害研究所:東 京都千代 田区有楽町2-7-1 The Tokyo Metropolitan Research Institute for Environmetal Protection: 2-7-1

Yurakucho, Chiyoda-ku, Tokyo.

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従 来 広 く行 なわ れ て き た注 射 器 法 の欠 点 は以 下 の とお 間 の 感 覚量 は あ る濃 度 範 囲 に おい て臭 気 濃 度 の対 数 に 比
りで あ る。 例 す る といわ れ て い る。 こ の オ ー ダ表 示 法 は 騒 音 に お け
(1) 注 射 器 の容 量 が 少 ない 。 るホ ン表 示 法 と 同様 の対 応 を 示 す もの であ る。
(2) 注 射 器 のす り合 わ せ へ の臭 気 の吸 着 が 無 視 で きな また パ ネ ル の選 定 につ い ては,特 に 嗅 力 のす ぐれ て い
い。 る人 とか,あ るい は平 均 的 な人 を 集 め る とい うの で は な
(3) 高倍 率 の希 釈 試 料 を作 る際 に手 間が か か る。 く,ア ムー ア の考 え 方13)にも とず い て,嗅 覚 異 常 者 を 除
(4) に お い を か ぐ とき,押 し込 む 感 じが あ り,か ぎに い た 嗅 覚正 常 者 を採 用 した 。
くい。
(5) パ ネ ル の先 入観 が結 果 に影 響 して しま う。 2.2  測 定 器 材
これ らの 問題 点 を解 決 す るた め に本 法 では100mlの 注 (1)  試料 採 取 用 器 材
射 器 の代 りに容 量3lの プ ラ ス テ ック ス製 の袋 を 用 い た 。 a. 試 料採 取 用 ポ ン プ

希 釈 試 料 は 無臭 空 気 で満 た した この臭 袋 に,直 接 検 体 試 ダイ ヤ フ ラム ポ ン プ  4l/min


料(原 臭)を 希 釈 倍数 に応 じて一 定 量 注 入 す る こ とに よ b.  試 料採 取 用 バ ッグ
って作 られ る。 この よ うに臭 袋 に代 え る こ とに よっ て上 ポ リエ ス テ ル製 バ ッグお よび ポ リフ ッ化 ビニル
記(1)(2)(3)の
欠 点 は解 決 され た 。 さ らに,こ の臭 袋 に 鼻 あ 製 バ ッグ  7∼20l
てを あ て,自 分 の呼 吸 に よ り袋 内 の空 気 を か ぐこ とに よ (2)  官 能 試 験 用 器 材
って,押 し込 む 感 じの あ った 不 自然 さを 取 り除 い た 。 a. 無 臭 空 気 送 入 用 ポ ン プ
また 上 記(5)の問 題 点 につ い ては,原 臭 を 一 定 量 注 入 し ダ イ ヤ フ ラ ム ポ ン プ  30l/min
た 臭 袋(付 臭 臭 袋)以 外 に,無 臭 空 気 のみ で満 た した 臭 b.  注射 器
袋2袋 を 加 え,計3袋 の臭 袋 を パ ネ ルに 渡 し,に お い の 5∼200mlの ものは ガ ラ ス製 シ リン ジ
あ る1袋 を 選 びだ させ そ とい う トラ イ ア ン グル テス トを 1ml以 下 はPSガ ス シ リン ジ
採 用 し客 観 性 を 高 めた 。 c. 臭 袋
また 臭 気 濃 度 を 求 め る パ ネ ル テ ス トは 下 降 法 に よ り行 ガ ラ ス管(外 径12mm,長 さ6cm)を 取 り付 け た
な った。 す なわ ち この方 法 は,パ ネ ルが 十 分 に そ の に お もの で,容 積3lの ポ リエ ス テル 製 あ るい は ポ
いが わ か る濃 度(希 釈 倍 数)か らテ ス トを 始 め,判 定 が リフ ッ化 ビニル 製 の もの,(Fig.2参 照)袋 に
正 解 で あれ ば 徐 々に約3倍 ず つ 希 釈 率 を 上 げ,不 正 解 に は1∼3の 番 号 が 記 入 され た ラ ベル が 付 け られ
な るま で続 け る。 下 降法 を採 用 した 理 由は,パ ネル が そ て い る。
の に お い の特 徴 をつ か み や す い こ と,お よび 上 昇 法 に お d. 鼻 あ て
け る偶 然 的正 解 の危 険 性 を避 け るた め で あ る。 また,テ 硬 質 塩 化 ビニ ル製 の も の で,臭 袋 の ガ ラ ス管 に
ス トを行 な う各希 釈 倍 数 の 間隔 を約3倍 ず つ と した 理 由 接 続 し,鼻 を お お う構造 に な っ てい る。(Fig.
は 人 間 の嗅 覚 の差 の検 出 限 界 を考 慮 した こと,お よび 希 2参 照)
釈 試 料 作 製 上 の容 易 性 のた め で あ る。
つ ぎ に 各 パ ネ ル の 閾値 濃 度 の決 め方 につ い ては,従 来
2.3  試 料採 取
は に お い の わ か る最 大 の希 釈 倍 数 を もっ て閾 値 と決 め て 試 料 の採 取 は官 能 試 験 を 実 施 す る前 日に 行 な った 。 試
い る 例 が 多 い が,本 法 で は正 解 で あ る最 大 の希 釈 倍 数 と
料採 取 量 は7∼20lで,採 取 時 間 は1∼3分 で あ る。 な
不 正 解 の希 釈 倍 数 の 中 間 の値 を もっ て閾 値 と決 め た 。
さ らに結 果 の求 め方 に おい て,本 法 は パ ネル 全 員 の 閾

値 を 平 均 す る の で は な く,閾 値 の上 下2名 の 値 を 除 き,
中 間 の4名 の値 を 平 均 した 。 そ の主 な 理 由 は,嗅 覚正 常
者 で あ って もテ ス ト当 日に 体 調 を くず し てい る者 が お り,
パ ネ ル と して加 わ る可 能 性 が あ る こ と,ま た パ ネ ル が解

答 の番 号 を 間違 え て記 入 して しま うこ とな どに よ る異 常
値 が 測 定 結 果 に影 響 を 与 え る こ とを 避 け るた め で あ る。
つ ぎ に今 ま で官 能 試 験 法 に おい て,一 般 的 に 使 わ れ て

きた 臭 気 濃 度 表 示 に対 して,新 た に そ の対 数 値 を も と と
した オ ー ダ表 示 法10)を導 入 した 理 由は,人 間 の 感 覚量 に

近 づ け た尺 度 に した い た め であ る。 す なわ ち 一 般 的 に 人 Fig. 1. Sampling

(247) 35
お試 料 の採 取 は 比 較 的 に お い を強 く発 生 させ る操 業 状 態 袋 とあ わ せ パ ネ ル に 渡 す。
の と きを選 ん で実 施 した。Fig.1に 採 取 方 法 を 図示 す る。 (4)  パ ネ ル は 臭 袋 の ガ ラス管 に鼻 あ てを 付 け,に お
試 料採 取 に あ た って は,採 取 用 バ ッ グの 中 で1∼2度 試 い を か ぎ(Fig.2参 照),に お い の あ ると感 じる袋 の番 号

料 を交 換 して か ら行 な った 。 また 汚 泥 焼却 炉 な ど排 ガ ス を 回 答 用 紙 に 記 入 す る。

中 の 水 分 が 多 い 場 合 に は,排 気 筒 とポ ン プの 間 に凝 縮 水 (5)  パ ネル の 解 答 が正 解 の場 合 は順 次 約3倍 ず つ 希


トラ ップを 設 け,で き るだ け 採 取 用 バ ッ グの 中 に凝 縮 水 釈 倍 数 を 上 げ て同 様 の テス トを行 な い,解 答 が 不 正 解 に
が 入 り込 む こ とを 避 け た 。 な った 希 釈 倍 数 でそ の パ ネ ル の テ ス トは終 了す る。

2.4  パ ネ ル 2.6  結 果 の求 め 方

(1)  パ ネル の 人 数 (1)  以 下 の よ うに 各 パ ネ ル ご との 閾値 を 常 用 対 数 と
パ ネル は 次 の ス ク リー ニ ン グ テ ス トに 合 格 した 者 の 中 して求 め る。 パ ネルAを 例 に す る と,
か ら6名 を 選 ん だ 。

(2)  パ ネ ル ス ク リー ニ ン グ テ ス ト
Xa: パ ネルAの 閾 値(常 用 対 数)
イ ソ吉 草 酸(C5H10O2),ス カ トー ル(C9H9N),メ チルシ
a1: パ ネ ルAの 解 答 が 「正解 」 で あ る最
ク ロペ ン テ ノ ロ ン(C6H8O2)の3物 質 に つ い て,そ れ ぞ れ
大の希釈倍数
を 無 臭 の流 動 パ ラ フ ィン(ニ ュ ジ ョール)に 溶 か し,濃
a2: パ ネ ルAの 解 答 が 「
不正解 」である
度(w/w)10-4.5, 10-5.0,10-4.5の 液 体 を つ く り,こ れ を ス
ク リー ニ ン グ用 基 準 臭 液 と し て用 い た 。 テ ス ト方 法 は に 希釈倍数

お い 紙 の先 端 約1cmに 上 記 の基 準 臭 液 を 浸 し,被 験 者 に (2)  (1)で 求 め た 各 パ ネル の 閾値 の最 大 の値 と最 小


の値 を除 き,そ の他 の値 を 平 均 した もの を パ ネ ル全 体 の
か が せ た 。 こ の と き テ ス トは5-2法 で 行 な った 。 この
結 果,5本 の うち,に お い を 付 け た2本 の 番 号 を正 し く 閾 値 とす る。
(3)  (2)で 求 め た 値 を 以 下 の 式 に よ り変 換 し,臭 気
解 答 した 場 合 を 正 解 と し,3基 準 臭 液 と も正 解 で あ る者
を パ ネル と し て採 用 した 。 濃 度 を求 め る
y=10x
X:  パ ネル 全 体 の 閾値(常 用 対 数)
2.5  三 点 比 較 式 臭 袋 法 の 手 順
Y:  臭 気 濃 度
採 取 した 試 料 の臭 気 濃 度 は 以 下 の手 順 に よ り求 め た 。

(1)  無 臭 空 気 送 入 用 ポ ン プを 用 い て,ほ とん ど袋 が (4)次 の式 に よ り臭 気 濃 度 を 変 換 し,新 しい尺 度 で あ

い っぱ い に な る ま で,無 臭 空 気 を 臭 袋 に 満 た し,シ リコ る オ ー ダ表 示 法 を 導 入 す る。 な お単 位 は オ ー ダで あ る。

ン ゴム栓 で と め る。 こ の と きあ らか じめ 袋 に 残 存 して い Z=10log Y=10X

た 空 気 は 無 臭 空 気 で十 分 に 置 換 す る。 Z:  オ ー ダ

(2)  こ の臭 袋 に 所 定 の希 釈 倍 数 に な る よ うに,注 射
3.  精 度 お よ び 測 定 結 果
器 を 用 い て原 臭 を 一 定 量 採 取 用 バ ッグ よ り採 取 し,ラ ベ
ル 上 か ら注 入 す る。 3.1  臭 袋 の容 量 誤 差

(3)  無 臭 空 気 のみ で満 た した2袋 に は,注 射 針 の み 本法 に お い て は袋 を ほ ぼ い っぱ い に 無 臭 空 気 で 満 た し


た と きに約3lの 大 き さに な る よ うに 臭 袋 の大 き さを 規
で ラ ベ ル の上 か ら穴 を あけ,(2)で 作 製 した 付 臭 臭 袋1
定 して い る が(縦25cm× 横25cm),臭 袋 の容 量 誤差 は

当 然 考 え られ る。 そ のた め10名 の人 が 各 々12袋 の 無臭 臭
袋 を 作 製 した とき の袋 の容 量 のば らつ きを 調 べ た 結 果 が
Table 1で あ る。 実 験 方 法 は 無 臭 臭 袋 を 満 た した臭 袋 の
シ リコ ン栓 に 注 射 針 を通 し,ダ イ ヤ フ ラ ム ポ ン プで 袋 中

の 空 気 を 引 き抜 き,湿 式 ガ ス メー タ で定 量 した 。

規 定 の採 取量3,000mlに 対 す る各 調 製 者 の採 取 誤 差 は,
10名 の うち7名 は12袋 全 部 が ±150ml(3,000mlに 対し
て5%)の 範 囲 内 とな った。 残 りの3名 に つ い ては,12

袋 の うち1袋 の み が この範 囲 か らはず れ た(+170ml,+

Fig. 2. Method for smelling 152ml,-219ml)。 また 各調 製 者 間 に おけ る採 取 量 の変


A: odor bag. B: nose cone, 動 に つ い て は,平 均 値 の最 大 の者 は3,108ml訳3,000ml

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Table 1. Fluctuation of volume of odor bag

に 対 し誤 差+3.6%),最 小 の 者 は2,929ml(同 様 に-2.4 臭 気 を用 い て測 定 す る方 法 とが 考 え られ るが,現 場 測定


%)で あ り,各 調 製 者 間 の平 均 値 の標 準 偏差 は66mlと な に適 応 で き るか ど うか を 調 べ る こ とが 目的 で あ る の で,
った 。 こ の種 の官 能 試 験 法 に お け る許 容 誤差 に つ い て は こ こでは 後 者 の方 法 で行 な った 。 実 験 方 法 は 同一 試 料 を

筆 者 らは 最 大10%程 度 と考 え てい るが,こ の結 果 か らは 用 い て,試 料 採 取 後1日,2日,3日,8日,21日 経過


各 個 人 内 の誤 差 に つ い て も,ま た 各 個 人 間 に お け る変 動 した 後 にそ れ ぞ れ 臭 気 濃 度 を 測 定 した 。 パ ネ ル 人 数 は6
に つ い て も,満 足 で き る も の であ る。 名 で 各 テ ス ト日と も同 一 のパ ネル を 用 い た 。 また テ ス ト
に用 い た臭 気 は,魚 腸 骨 処 理 工 場 に お け る乾 燥 排 気 臭,
3.2  臭 袋 内で の臭 気 の 拡 散 性 チ ョ コ レー ト工 場 の室 内 臭 気,下 水 処 理 場 に お け る汚 泥

付 臭 臭 袋 を 作 製 す る と きは,臭 袋 に ラベ ル の 上 か ら原 焼 却 臭 お よび グ ラ ビア印 刷 に お け る乾 燥 排 気 臭 で あ った。

臭 を 注 入 す るが,こ の と き注 入 され た 原 臭 が 袋 内 で十 分 測 定 結 果 をFig.4に 示す。測定誤差を考慮に入れて考え


に 拡 散 し てい るか ど うか は 重 要 な 問 題 で あ る。 そ の た め ると,試 料 の臭 気 濃 度 は 採 取 後1週 間 程 度 は ほ とん ど変

次 の方 法 で検 討 を 行 な った 。 実 験 方 法 は 臭 袋 に 無 臭 空 気 って い な い ことが わ か る。

を 満 た し,臭 袋 の ほぼ 中 央 に あ る ラ ベル 上 か ら,試 料 を
注 入 し(3mの,注 入 後 一 定 時 間 後 に 臭 袋 の 隅(角 よ り袋 3.4  精 度 にお よぼ す パ ネ ル の 影 響
の中 央 に 向 い約2cmの 場 所)よ り注 射 器 に よ り袋 中 の 空 パ ネ ル の選 定 方 法 お よび パ ネル の 人 数 の 問 題 は 得 られ

気 を 抜 き取 り(1ml),ガ ス ク ロマ トグ ラ フに よ り定 量 し る結 果 の精 度 に大 き な影 響 を 与 え る。 パ ネル の 人 選 に つ
た 。 実 験 に 用 い た 各 物 質 の臭 袋 中 で の 濃 度 はCH4約70 い て は ス ク リー ニ ン グ テ ス トを 実 施 してい るた め,嗅 覚

ppm, CH3SSCH3約0.4PPm, C6H4CH3約7ppm, CH3 異 常 者 の影 響 はか な り除 か れ てい る。 しか し2.4(2)に


COC2H5約4ppmで あ る。 述 べ た ス ク リー ニ ン グ テ ス トで全 ての 異 常 者 が 除 か れ る
Fig.3は 注入 後 の経 過 時 間 に対 す る拡 散 の程 度 を 示 し と期 待 す る こ とは 困難 で あ り,ま た テ ス ト当 日に 体 調 を
て い る。 す なわ ち縦 軸 は袋 内 で均 一 に 拡 散 され た と きの くず して い る者 も存 在 す る ことを 考 慮 し て,本 法 で は 結
濃 度 に対 す る,隅 よ り採 取 され た 試 料 の濃 度 の割 合 を 示 果 の 求 め 方 に お い て,上 下 を 除 い て平 均 す る方 法 を 採 用
して い る。 この 図か ら もわ か る とお り,各 物 質 と も1分 した。 そ の た め嗅 覚 異 常 者 の影 響 は ほ とん ど除 か れ てい

以 内 で ほぼ 均 一 に な って い る。 る と考 え て よい。
パ ネ ル の人 数 につ い ては,数 を 多 くす れ ば 当 然 な が ら

3.3  試 料 採 取 用バ ッゲ 内で の試 料 の 安 定 性 得 られ る結 果 は変 動 が 小 さ くな り再 現 性 が 高 ま る。 しか
採 取 用 バ ッグ 内 で の試 料 の安 定 性 の問 題 は 官 能 試 験 に し反 面,官 能 試 験 法 に お け る手 間 が か か り,適 当 な 数 で
お い ては 重 要 であ る。 安 定 性 に つ い ての 調 査 方 法 と して 決 め な くて は な らない 。 そ こ でパ ネル 人 数 と得 られ る結
は 代 表 的 悪 臭 成 分 を 用 い て実 験 す る方 法 と実 際 の 現場 の

Fig. 3. Diffusion rate of chemicals in odor bag Fig.4. Stability of odors in sampling bag

(249)37
Table 2. Measured results by syringe method and triangle odor bag method

Table 3. Results of concentration tests at the source

果 の信 頼 度 に つ い て検 討 した 。 上 下 カ ッ トを せ ず に 平均 実 際 の発 生 源 に お い て,上 記2の 方法 に よ り測 定 した

した 場 合 に つ い て は,そ の 信 頼 度 は す で に 求 め られ て お 結 果 をTable 3に 示 す 。 この表 か ら もわ か る とお り,

り12),母 平均 値 の ±10%の 幅 の 中 に パ ネ ル4名 の とき は 印刷 関 係 に つ い ては,グ ラ ビア 印刷 よ り もオ フセ ッ ト印

87%,5名 の と きは91%,6名 の と きは94%の 信頼 度 で 刷 の方 が 濃 度 は 高 く,実 際 の 苦 情 の 実 態 と も対 応 して い

結 果 が 得 られ る こ とが わ か って い る。 パ ネ ル6名 で上 下 る。 また 金 属 印刷 に つ い ては 使 用 す るイ ンキ に よ り,臭

カ ッ トを した 場 合 は,正 規 乱 数表 に よ り具体 的 に個 々の 気 の発 生 程 度 が 異 な って い た 。 また,印 刷 関係 の調 査 対

平 均 値 を 計 算 し,そ の標 準 偏 差 を 求 め る と0,396と な り, 象施 設 に は,活 性 炭 吸 着 装 置,直 燃 脱 臭 装 置等 が 付設 さ

上 下 カ ッ トを しな い と きの5名 の 場 合 の 値(0,399)に ほ れ て いた が,Table 3に は 脱 臭 装 置 前 の濃 度 を示 した。

ぼ 相 当 す る。 よ っ てパ ネル6名 で上 下 カ ッ トを した 場 合 魚 腸 骨 処 理 工 場 に お け る乾 燥 排 気 臭 に つ い て は 臭 気濃

は ±10%の 誤 差 範 囲 内 に91%の 信 頼 度 で結 果 が 得 られ る 度31,000と 非常 に高 い値 を 示 した 。 この業 種 に お け る

こ とに な る。 被 害範 囲 が非 常 に大 きい こ とを 考 慮 す れ ば,こ の 結 果 は
当 然 とい え る。

3.5  注 射 器 法 と 三 点 比較 式 臭 袋 法 と の比 較 汚 泥 焼却 炉 につ い ては,立 型 多 段 炉 に よ る測 定 結 果 で

注 射器 法 と三 点 比 較 式 臭袋 法 とに つ い て,同 一 の現 場 あ る。 立型 多段 炉 は ス ラ ッジ ケ ー キ の乾 燥 空 気 が 高 温 燃

の試 料 を 用 い て 測定 した結 果 をTable 2に 示 す 。 測 定 焼 部 を 通 らず に 直 接 排 出 され るた め,燃 焼 施 設 であ るに

に 用 い た 臭 気 は 金 属 印 刷 臭 と汚 泥 焼 却臭 で あ る。 な お注 もか か わ らず,比 較 的 高 い値 に な った と考 え られ る。

射 器 法 に つ い ては,三 点 比 較 式 臭 袋 法 と比 較 しや す い よ ボ イ ラに つ い て は,使 用 して い る燃 料 に よ り,排 ガ ス

うに,ト ラ イ ア ン グル テ ス トを 採 用 し,3倍 系 列 の下 降 の臭 気 濃 度 が 異 な る結 果 が 得 られ た。 す なわ ち都 市 ガ ス

法 で 実 施 した 。 こ の結 果,注 射 器 法 の デー タは2.1か ら お よび 灯 油 の場 合 が 最 も低 く,つ ぎ にA重 油,C重 油の

も予 想 され る とお り三 点 比 較 式 臭 袋 法 よ り低 い 値 とな っ 順 に な った 。 この 結 果 は 燃 焼 脱 臭 を行 な う際 の一 つ の参

た。 考 に な る で あ ろ う。 具 体 的 に は,た とえ ば燃 焼脱 臭 で臭
気濃 度1,000以 下 に す るに はC重 油 は 不 適 当 で あ る。
4.  三 点 比 較 式 臭 袋 法 に よ る 測 定 結 果 お よ び
ま たTable 3の なか で,冬 期 に 測 定 した 結 果 に つ い て
考察 は,夏 期 に お い て は さ らに 高 い 濃 度 が 予 想 され る。

38 (250)
士 に 深 く感 謝 い た し ます。
5.  ま と め

文 献
この 三 点 比 較 式 臭 袋 法 は 従 来 の 注 射 器 法 に比 べ,注 射

器 を 臭 袋 に 代 え,さ らに トライ ア ン グル テ ス トを 導 入 し, 1) 松 下 秀 鶴: 悪 臭 公 害 研 究会, 悪臭 公 害対 策 セ ミナ ー

官 能 試 験 法 に お け る客 観 性 を 高 め た と考 え られ る。 す な 講 演 集, 6-1, (1971)
わ ち 臭 袋 の 容 量 誤 差 はTable 1か ら もわ か る とお り,注 2) G. Leonardos: J. Air Poll. Control Assoc. 24,

射 器 自身 の もつ 目盛 誤差 程 度 とみ られ る。 また袋 内 で の 456 (1974)


拡 散 の 問 題 に つ い て は,各 物 質 と も注 入 後1分 以 内 で ほ 3) American Society for Testing Materials,
"Standard method for measurement of odor in
ぼ 均 一 に な っ てい る。 実 際 この 三 点 比 較 式 臭 袋 法 に お い
ては,試 料 注 入 後,パ ネル が に お い を か ぐまで の 時 間 は atmospheres (Dilution method)" designation D
最 低 で も1∼2分 程 度 であ るか ら,こ の 袋 中 で の拡 散 の 1391-57
問 題 は 得 られ る結 果 に は 影 響 しな い と思 わ れ る。 さ らに 4) N. A. Huey, et al.: J. Air Poll. Control Assoc.
試 料 採 取 用 バ ッグ内 で の試 料 の安 定 性 に つ い て も,試 料 10, 441 (1960)
採 取 後1∼2日 以 内 に官 能 試 験 を 行 な う限 りに お い て は, 5) 大 喜 多 敏 一, 重 田 芳 広: 微 量 ガ ス ・悪 臭 の 分 析, 講

Fig4か ら もわ か る と お り,ほ と ん ど問 題 は な い で あ ろ 談 社, (1972) 177∼181

う。 6) 東 京 都 公 害 研 究 所: 悪 臭 の 評 価, (1972) 28∼33

以 上 の よ うに三 点 比 較 式 臭 袋 法 は,ト ラ イ ア ン グル テ 7) J. S. Nader: Am. Ind. Hyg. Assoc. 19, 1 (1958)


ス トを 導 入 した だけ で な く,使 用 器 材 に よる誤 差 も少 な 8) A. Dravnieks, W. H. Prokop: J. Air Poll.
く,ま た この方 法 に よる測 定 例 か ら も被 害 の実 態 に 即 し Control Assoc. 25, 18 (1975)
た 結 果 が 得 られ て お り,悪 臭 の測 定 の一 方 法 と し て十 分 9) 岩 崎 好 陽 他: 大 気 汚染 研 究, (7) 168, (第13回 大 会 予

に使 用 し うる と考 え られ る。 稿 集) (1972)
官 能 試 験法 に よ る悪 臭 の評 価 方 法 は,悪 臭 防 止 法 に よ 10) 岩 崎 好 陽, 石 黒辰 吉, 小 山 功, 福 島 悠, 小 林 温 子,
り採 用 され て い る機 器 測定 法 に比 べ,あ ま り広 く行 なわ 大 平 俊 男: 東 京都 公 害研 究所 年 報, (4),78, (1973)
れ て い な い の が現 状 で あ る。 しか し低 濃 度 多 成 分 の混 合 11) 福 島 悠 他: 大 気 汚染 研 究, (9)453 (第15回 大 会 予
気体 で あ るに お い を,い くつ か の成 分 の み で評 価 す る方 稿 集) (1974)
法 に は お の ず か ら限 界 が あ り,そ の た め信 頼 で き る官 能 12) 岩 崎 好 陽 他: 大 気 汚染 研 究, (9) 450 (第15回 大 会 予
試 験法 の確 立 が強 く望 まれ て い る。 稿 集) (1974)
この三 点比 較 式臭 袋 法 は そ の意 味 で の1つ の新 しい 試 13) E.ア ムー ア: 勾 い-そ の分 子構 造, 恒 星 社 厚 生 閣
み で あ り,今 後 悪 臭 公 害 の 原 点 に か え って この種 の官 能 (1972) 120∼141
試 験 法 が広 く論議 され る こ とを期 待 した い。 (昭和53年4月27日 受 付)
終 りに 御校 閲 を賜 わ った 国 立 公 衆衛 生 院,松 下 秀 鶴 博

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