You are on page 1of 10

01 鋳 物 第 32 巻 第 2 号

UDC :7.647.126 5.147.126

5-5-5-58 合金 (
BC6) 溶湯の炉前試験法について T

雄谷重夫*本間梅夫料近藤 武山

Evaluation of “
Melt Quality" of 5
-5-8 Red Brass

By Shigeo UYA ,Umewo HONMA and Takeshi KONDO

Synopsi:
Rote and sih co lI eagus ni A. .F .S have sugetd eht erutcarf tset ot etamis melt ytilauq
fo 5-5-8 der sarb ,and a few msictirc si informed by some .srehtua The srehtua have alredy
shown elbaorp snoitaleroc betwen melt ytilauq and erutcarf aperncs fo ch l1i skcolb- ni eht
suoiverp srepa ,and osla detacidni 1c e
s0 spihsnoitaler betwen erutcarf scitsiretcarhc and amounts
fo devlosid seag ni eht meta .l
nI eht tnesrp work ,secneuifni fo gnitsac snoitdnoc on eht erutcarf aperncs era -eted
rimned ot enifed eht erutcarf gnitset secorp which w11i be .elbacilpa Fractue aperncs may
be elbitpecsu ot noitairav ni amounts fo devlosid gase ni eht me .t1 selhtrvN ,depths of -loc
umnar and yerg-ulb snretap which era eht most importan selbairv ni itse lIl g
nita eht melt ytilauq
era a任detc by a til 1t e contami fo harmfu lI elment such sa aluminum and nocilis ,and siht
seuac tcerocni noitmse fo eht melt .ytilauq A elpmis tset ot tced contamis fo alumlnum
and nocilis yb- means fo noitavresbo fo eht ecafrus aperncs fo tsac blocks si osla .debircsed
A elbarefrp way ni which eht melt ytilauq may be detaulv ni 1c udes noitavresb fo eht
secafrus fo tsac skcolb ot tced soitanmc and , fi eht melt si uncotaminated , erutcarf gnitset
ot detrmin amounts fo devlosid seag ni eht .tlem

するのに,その溶湯を鋳込んだ鋳物の密度や引張り性質
.1 まえがき
だけで溶湯の質を分類している.また T. .S 54 分科会
5-5-8 合金 (BC )6 の鋳巣は水素,水蒸気,亜硫
は溶湯の含有ガスだけを対象にしてその質を判定すると
酸ガスなどのガスが原因となり,また鋳物の機械的性質
はっきり限定している.
や耐圧性は合金中の微量のアノレミニウム,珪素によって
著者らは 5-5-8 合金の溶湯の質を丸棒試験片の破
とくに悪くなる.溶湯中のこれらのガスや不純物金属元
面,自由凝固面の状態,ひけその他の方法によって,定
素の有無を鋳造前に判定し,それらを除去して一定の良
量的に判定しようと試みたが,結局 Rote らの方法が現
質の溶湯をつくる必要がある.
状ではもっとも進んだ方法であり,この方法は信頼性が
従来から知られている普通青銅鋳物の溶湯の炉前試験
あると考えられることを前に報告した4 ・
5・)6 しかし著者
法としては,ガスの有無は自由凝固面の“ひけ"の深さ
らの初期の実験ではへ微量のアルミニウムや珪素を溶
や,一定の鋳物(丸棒など)の破面により,またア 1レ

湯中に添加すると破面特性が変化し,ある場合(たとえ
ニウムや珪素は溶解中に溶湯面に発生する酸化物や凝固
ば溶湯が酸化の傾向があるとき)には添加しないときよ
表面の状態によって判定する方法などがある.いずれの
りも良質であると判定されることがあり,判定が難しく
場合も基礎的な実験報告がなく非常に概念的である.こ
なる.また実際にアルミニウムや,珪素は,後述の機械
れを定量的に判定しようとしたのが Rote らの実験で
的性質についての実験や他の研究者の耐圧性についての
m ,普通青銅の炉前試験法として,もっともまとまった
1・
報告のように, BC6 の鋳物の品質を非常に悪くする.
実験報告である.
その結果後記のように溶湯の質をきめるには含有ガスの
Rote らは 5-5-8 合金の溶i
湯を一定条件で鋳込ん
判定と有害な不純物(アルミニワム,珪素など)の判定
だ特定の鋳物の破面状態と溶湯の質との関係を求め,炉
とのこつに大別して実験することにした.
前試験法を確立しようとした.英国の T. .S 54 fo eht
f 昭和 3 年 0
1 月第節目講演大会発表
Technial Counc iIの分科会 )3 はこの研究をそれほど高
* 早稲田大学鋳物研究所 林 同
く評価していない. Rote らの実験では溶湯の質を判定 榊* 北沢工業株式会社

( 61 )
85- 合金 (BC )6 溶湯の炉前試験法について 101

この報告では最初にこの破面による試験方法の鋳造条 の破面で溶湯の質を判定した.この破面(第 2 図)には


件を再実験し Rote らの場合と比較検討し,これによ 下部の冷金に接した面から上部に向って柱状晶,青灰色
って決定された鋳造条件で,組成や吸収ガス量の変化し 部およびモトル郊を生じる.そして一定範囲内の条件で
た溶湯と破面状態との関係を求めた.つぎにアルミニウ 鋳込むと,破面状態と溶湯の質との間には密接な関係が
ム,珪素,マンガンと機械的性質との関係をもとめ,さ あると云っている.それは鋳物をこのようにして一方向
らに著者らの独自の方法によるアルミニウム,珪素,マ から冷却させると,ガスの含有量が多くなるに従って,
ンガンを判定する方法を実験した. 冷金に近い部分に,ガスによる鋳巣を生じはじめ,モト
なお,この研究での良い溶湯とは前報引と同様に有害 ノレ部の範囲が広くなるからである e そして Rote は溶湯
ガスおよびその他の不純物を含まず,もし鋳型砂および iil に 50mm
の質を 3 つに分類し,高級な溶湯では破 以
堰の配置が適正で、あるならば,鋳込んだときよい鋳物の 上の青灰色部と 19mm 以上の柱状晶が生じ,事|張り強
できる溶湯であり,したがって溶湯の質はよい鋳物をつ さ .62 .1 kg/mm 2
以上,伸び 0
3 第以上,密度 8. 以上
くる程度を示すものであると規定した. であり,中級の溶湯では柱状晶,育灰色部の長さがやや
短かくなれまた破面がやや粗く,赤味がかり,引張り
.2 チル試験片の鋳造条件 2
強さ .42 6~26.1 kg/mm ,伸び%03<'"'52 ,密度 56.8
Rote らは 5
-8 合金の溶湯を,第 1 図のように鋳 -8.8 であり,低級な溶湯でははっきりした青灰色部お
鉄の冷金の上においた中子用油砂型に鋳造し,その鋳物 よび柱状晶がほとんどあらわれず,粗い破面になる.ま
たチル試験片のマクロ組識は破面の状態と密接な関係が
あり,溶湯の質の判定にはチノレ試験片の破面による方法
が信頼性があると云っている.
英国の非鉄合金鋳物の溶湯の品質管理り方法を研究す
る委員会 .T( .S 54 委員会)では Rote らの破面試験法
を再実験した結果.この破面試 j験法では高級な溶湯と低
.1 冷金(鋳鉄) 32x132x320(mm) 級な溶湯との差は判るが,中級の溶湯の分類が困難で,
.2 チノレ試験片鋳型 76xlOx248 他の試験法(ひけ与破面など見よる他の判定方法〕に較
.3 チJレ試験片 76x20x152
べてとくにすぐれた方法とば断定できないと結論してい
.4 堰 ( 2 本) 10φx12
るわ.
.5 湯溜り鋳型 76x lO Ox160
.6 湯 溜 40x64x100 著者らの実験では前述のように溶湯の質の炉前試験法
.7 流 出 溝 3x3x48 として Rote らのチノレ試験片の破面による判定方法,自
第 i図 チノレ試験片鋳型の形状 (A 型) 由凝固面の状態,ひけによる判定方法,丸棒試験片の破
iii 悟邑 面による判定方法等を検討した結果, Rote の方法は信
破薗
頼性があると考え,これを採用し,まずその鋳造条件を

モト )lg~
求め,つぎに独自の方法で種々の溶湯を作り,それと破
j( 雪庇官と褐邑
面特性,密度,強度等との関係を求めた.チル試験片鋳
と町 J毘令)
型の形状は第 1 図のごとくで,鋳型は乾燥した中子用ア
マニ泊砂型であり,冷金は鋳鉄である.溶湯は湯溜りよ
り2 本の孔(1 0mm) を通って一定速度で鋳型へ入1),
それがみたされると流出溝 (3mmx3mm) から流れだ

柱状晶 す.このとき鋳込みを止め,湯溜りに溶湯が残らないよ
子 J~ 層 うにし,また湯溜りをすぐ除去する.これは湯溜りの下
千LJ bド名古 7------mm
ム ー 拘5¥
」 面がチル試験片の上部に接して,その部分の冷却が早く
cD ー 柱t# 晶の長さ
DS6 ー青灰色部の長 3 なり,チル試験片の冷却条件を変えることをさけるため
Dc ー柱状品の長さ である.湯溜りの鋳型により溶湯の上部が先きに冷却す
DBG ー育灰色部の長さ ると, そのために内部の不健全部は冷金の近くに移動
第 2図 一般的なチノレ試験片の破面 し,よい溶湯でも悪い溶湯であるとして判定を誤る.破

( 71 )
201 鋳 物 第 32 巻 第 2 号

面は第 2 図のごとくで,柱状晶,青灰色部までは健全部 06

定良町町一出 Q唱)芋認に〕崎両給自民世
であり,それより上は不健全部である.そして青灰色は

。。
鉛の入った普通青銅の健全部にあらわれる色である.こ

凋引凶寸内
の破面特性と各鋳造条件との関係を求めた.溶解は1t
のスクレナ炉,合金は BC6 である.

/L
( 1 ) 鋳型の種類と破面特性
生型,油砂型等の鋳型の種類によって,鋳物の凝固す
るときの冷却条件やガスの鋳物に影響する程度がちが 。
。 日 旧 051 002
う.そのため破面特性は鋳型の種類によって同ーの溶湯 冷金目予担温度 .OC
でも違った結果になると考えられる.第 3 図は鋳型の種 第 4図 冷金の予熱温度と破面特性
類と青灰色部および柱状晶の長さとの関係、で,鋳込温
る.また冷金の使用回数が多くなると,冷金の熱伝導度
度,鋳込速度の変化に対して,アマニ泊砂型およびコバ
の変化や表面の亀裂の影響により冷却条件が変るので,
ーノレ砂型では青灰色部の長さの変化が少なく,安定した
適当な時期に取替えねばならない. Rote らは,黒鉛の
結果がえられる.柱状晶の長さは後述のように青灰色部
塗型を使用しているが著者らの実験では塗型は冷却条件
の長さより鋳込温度,鋳込速度の影響をうけやすいの
を変えるので塗布しない.
で,青灰色部を判定の主な対象にした方がよい. ( 3 ) 鋳込温度と破面特性
第 5 図は鋳込温度と破面特性との関係である.青灰色
部は鋳込温度 041 0
C 以下では急に短かくなり, 1180-
021 0
C では大体一定の長さになる.柱状品部は鋳込温
度 071 0
C 以下では短かくなり, 021 0
C 附近では一定
である. Rote らは 1095-1205 0
C の範囲がよいといっ
ているが,この実験から鋳込温度は 180-120 0
C が適
当である.
一ぷ斗一以
p~二泊中子~~'型ユ /H~Y型オージ〉砂型 "区' 06
鋳型的種類

左……鋳込温度 091 0
C ,鋳込時間 3 秒 品04
o
右 … " 051 C,グ 01 秒 斗〈


第 3 図 鋳型の種類と青灰色部および柱状晶の 己
~ 02
長さと関係 話
屯J
Rote らは鋳型砂(油砂についてのみ実験している) 躍
は影響しないといっているが,この実験結果からは一定
の鋳型,すなわちアマニ油砂型および、コパール砂型が適

0211 0411 0611 0811 0021 0221 0421 0621
鋳込温度, CO
第 5 図 鋳込温度と彼面特性
していることが半Ijった.この場合,砂は一定のものを使
用した. ( 4 ) 鋳込速度と破面特性
( 2) 冷金の予熱温度と破面特性 鋳込温度により破面特性が変ると考えられるので,湯
柱状晶,青灰色部の長さは冷金の温度が低いときは長 溜りの鋳込み口を一本にし, その直径を 4mm-20mm
く,高いときは短かくなると考えられる.第 4 図は青灰 まで変化した.第 6 図はその破面特性で鋳込速度がおそ
色部,柱状晶の長さと冷金の予熱温度との関係で,冷金 いときは青灰色部,柱状品ともに短かくなる.これは鋳
の温度が高くなるに従って青灰色部,柱状晶の長さは短 込速度がはやければよいという Rote の実験と同じよう
かくなり,とくに柱状品の長さには大きく影響する. な結果がえられた.すなわち鋳込口の径は 1 本の場合
Rote の実験では冷金の予熱温度は 073 0
C まではほと 14mm 以上,鋳込時聞は約 3 秒以内がよい.
んど影響がないといっているが,われわれの実験では常 ( 5 ) 鋳込後水冷までの時間と破面特性
温から 10C までである.常温の場合は水分が附着し 炉前試験は短時間で判定できるものでなけねばなら
ない程度に予熱して“ふかれ"ないようにする必要があ ぬ.そのため試片を一定温度以下から急冷する必要があ

( 81 )
5-8 合金 (BC )6 溶湯の炉前試験法について 301

E ト一一 190

ドー喧
日!00
063

s
lllm
意04 02

RJf/|

;<'-

毒02
忠J

側E

JO C2
、、、ぶミミミぶおぶミ※以¥ヨ
第 6 函鋳込口の径と破面特性
初予珪~~' 851 ,

^ 「冷金 t'ii l
t縛
桂砂粉 1 5 JUV
"¥) - LI :9( マ
コ i1
5ハ川u4
EE色村叫

第 8図 チル試験片鋳型 (B 型)
n H v n H u n H U AU
e唱拝梨・続出 MR眠
321

は,これを簡単にするために第 8 図のようなコパール型
(B 型)をつくり,このチル試験片とアマニ油型のチル
試験片との破面を比較した.なお,このコパール型の鋳
日ハHU

2 3 4 5 込時間は 3 秒以内とした.
.iK7 中孟での時閉,
鋳造後 s 溶解炉は tl のスクレナ炉,合金は BC6 (分析値,
鋳込温度 091 0
C .58 25%Cu ,5.92%Sn ,4.47%Zn ,4.35% Pb) である.
鋳込時間 3 秒
引張試験は S1J の B 号を乾燥鋳型で採取し 4 号試験片
第 7 図 鋳造後水冷までの時間と破面特性
に加工したものと, 4 号試験片の寸法のものが鋳造のま
る.第 7 図は鋳込後水冷までの時間と破面特性との関係 まで採取できるようにして, B 号と同様な方案で生型鋳
である.鋳込後 1-6 分で水冷および自然放冷して比較 造したものとの 2 種類で試験した.密度試験片は 02
した結果,柱状品,青灰色部の長さは変化しないが,水 mmφx20mm で乾燥砂型に鋳込んだ.鋳込温度は 0421
冷までの時間があまり短いと試験片にクラックが入りや
すい.鋳込後 3 分以上経過したときに水冷するとよい. 07.8
包~
Rote らは1. 5 分以上が適当だといっている. ~56&

以上の実験結果をまとめるとつぎのごとくである. E: E
)i アマニ泊又はコパールを使用した鋳型が適当であ
逗 04
る.
草03
)ii 冷金の温度は常温から 10C までがよい.常温
事02
で使用する場合,予熱により冷金の表面に附着した水分 ~ 01

によるふかれを防止する. 03
) 1
)iii 鋳込温度は 081 0
-120 0
C が適当である.青灰 b
色部の長さは柱状品ほど,温度に対して敏感でない.判 ぷ02


定の対象には青灰色部を重視した方がよい.
)vi 鋳込時間は約 3 秒以内がよい.
v) 鋳込後水冷までの時間は 3 分以上がよい.
3
00

)3()4()5( の実験結果から,同一溶湯は鋳込条件を
JF.baz

)iv
2

一定範囲内にたもっと,同一破面がえられ,再現性があ
る.
)iv Rote らの現定した条件は,範囲が広すぎて,判
01
定の誤差が多い.
以上の結論を利用して鋳込温度,破面特性,密度,機
械的性質の関係を同時に同一溶湯から求めてみた. 第 9 図 破面特性と密度,引張り強さ,鋳込
さらに今迄使用したチノレ試験片用アマニ泊型 (A 型) 温度との関係

( 91 )
104 鋳 物 第 23 巻 第 2 号


C ,021 0
C ,071 0
C ,051 0
C ,01 0
C である. ~40
溶湯は酸化溶解して脱酸したのち製品を鋳込んだもの
である.冷金は 5
7 0 C-80 0
C に予熟した入その結果を第
9 ,01 図に示す.これからつぎのことが明らかになった.
)i 鋳込温度(l l
OoC - 0421 0 C) が高くなると,乾 7
燥型鋳物の密度は低くなる傾向がある. -Pb ,%
)ii 破面試験は,コバール型,アマニ泊型いずれの場 第31 図 Pb 量と破面特性
合も青灰色部の長さが鋳込温度 071 0
C-1240 0
C で一定 た場合の破面特性である.錫,鉛,亜鉛は実験の添加範
となる.栓状晶の長さは青灰色部より鋳込温度の影響を 囲では青灰色部の長さは,ほとんど変化しない.柱状品
うけやすい.故に溶湯の判定には青灰色部を対象とする 部は青灰色部よりもやや変化しやすい傾向がある.青灰
方がよい.コパーノレ型のほうがアマニ油型よりも青灰色 部を判定の主対象とし,柱状晶を従とすれば錫,鉛,亜
部,柱状晶が長くなる. 鉛の組成のこの程度の変化による判定の差は少ない.
)iii 引張試験の結果は乾燥型鋳物では鋳込温度が高く ( 2) 燐量と破面特性
なると悪くなり,生型鋳物では鋳込温度が高くなると良 普通青銅中に燐が多く残留すると,凝固範囲が長くな
くなる. り,また炉や鋳型内の雰囲気などからガスを吸収しやす
)vi 破面試験片の鋳込温度は高め 021( 0
C) に,また いことなどで,破面特性が変化するのではないかと考え
]ISB 号乾燥鋳型の引張試験片は前者よりも低い鋳込温 られる.
度 051( 0
C) にしなければならない.この荷者を比較し コース炉で黒鉛ノレツボを使用して溶解した溶湯を窒素
てこの実験に使用した溶湯は良質のものと判定される. で充分脱ガスし,その溶湯へ燐を 0.09% 添加した.こ
なお Rote が高級な溶湯としているものの引張試験値と の溶湯を炉中で 120-1280 0
C で溶融保持すると,溶湯
の差は試験棒の採取方法,寸法が違うのでそのまま,比 中の燐量は酸化して減少する.その過程で鋳込んだチノレ
較することはできない. 試験片の破面と燐残留量との関係を第 41 図に示す5 人
燐添加碓円 J主将時|日 η
m.
.3 組成変化と被面特性 J 3 0 51
05 r5Z"e、
組成の変化によって破面特性の変ることが考えられる
ので錫,鉛,亜鉛,燐,について実験した. ~40 卜 1.0 '~ß よ
ー 交 dマ

、、

(1) 錫,鉛,亜鉛量と破面特性 唱 u 、
~30"151
溶解には 50kg のスクレナ炉を使用し錫,鉛,亜鉛
引同
は取鍋中に添加した.鋳込温度は 081 0
C である.第 11 , 証ドピ
t4f01
心 医OL
21 ,31 図は BC6 )5-5-8( に錫,鉛,亜鉛を添加し ÷



~04 三
01
U凪

~03
ur

。0L
00.1 .400 GOO 00.8
を02 l再 ,
らう
~

501 第41 図 残留燐量と柱状品および青灰色部の


-Sn ,% 長さとの関係(鋳込温度 021 0
C)
第11 図 Sn 量と破面特性
燐含有量が多いほど青灰色部および柱状晶は短かくな
り,気孔はまし,また結晶粒は細かくなる.残留燐量が
也区
多過ぎると BC6 の鋳物の欠陥は増加するといわれてい

書犯
喝U
陸ぎ るが,このことは破面からもわかる.この合金は一般に
を02 酸化雰囲気または酸化剤を使用して酸化溶解し,使用す
2毛
雲 10~4

る燐鍋(1 5%P) は 0.1-0.2% であるから,消耗量を考
えれば残留燐量は 0.02% 以下となる. 0.02% 以下の
第21 図 Zn 量と破面特性 適量の残留燐量では破面特性には影響が少ない.残留燐

( 20 )
5-5-5-58 合金 (BC )6 溶湯の炉前試験法について 501

量が多過ぎるとき粗悪な溶湯として判定され,実際にも
鋳物に不良が多い.

.4 ガス吸収と破面特性

ガスを吸収した粗悪な溶湯を作り,これを改善してゆ
く過程の破面状態を比較し,さらにそれを X 線で欠陥を
調べた.第 51 図はコークス炉で溶解した溶湯へ過剰
(0.6% )P に燐銅を添加したのち,水蒸気を吹込みガ
スを一度吸収させ,その後溶湯へ窒素吹込みで脱ガスし
た場合の各温度の破面状態である日.

~40ト2.0
,-;

毒珂ト1. 5
JI!< ゐ

医壬 l ‘
州区 l
.~砕

..正
:初
:1 01
6t- 1M->
国 m I~ 第 81 図 5-5-5-58 合金のアルミニウム,
¥|
OI!:! 卜50;--r 珪素,7'ンガンと破高特性
/
f

fo l'i 0
.5 アルミニウム,珪素およびマンガンの影響

普通青銅 (
BC2 ,BC3 ,BC6 ,BC7) には一般にアル
第 51 図 水蒸気吹込み後の窒素脱ガスが柱状晶 ミニウムラ珪素,およびマンガンは有害な不純物で,と
および青灰色部の長さに与える影響
くにアルミニウムおよび珪素は少量でも耐水圧性を害す
このときの鋳造条件はできるだけ一定にした.第 61 る(著者らはマンガンをそれほど有害な元素とは考えて
図はその破面に接近した断面から 3mm の板を切り出 いない).この少量のアルミニウムおよび珪素は破面に

, X 線透過した結果である.破面の青灰色部の長さと よって判定することが前述のように困難である.なぜな
X 線写真の健全部の長さとはほとんど一致し,モト lレ部 ら酸化した溶湯中にアルミニウムを添加すると,脱駿さ
に相当する部分には分散した欠陥がある.この結果から れて柱状晶および青灰色部は長くなる.また高級の溶湯
脱ガスの程度が破面によって判定されることがわかる. の場合,アルミニウムを添加すると栓状晶はむしろ長く

上 端→

チ lレ面→

窒素脱ガス時間 S O 30 06 021 042.

第61 図 水蒸気吹込み後窒素脱カw スしたチノレ試験片断面の X 線透過写真


(試片は破面::p 近接した部分から厚さ 3mm の板をとる)

( 12 )
601 鋳 物 第 32 巻 第 2 号

量の判定はできなかった.しかしそゐ際 2/' 番黒鉛yレ



ボに鋳込んだ試片の鋳肌および自由凝固面によって,ア
ルミニウムや珪素の有無が判定できることを見出した.
すなわちアルミニワム量が増すと鋳肌は暗赤色から黄金
色、銀白色に変化し, また含有しない健全な溶湯のと
きは,鋳肌に虫が喰ったような“あばた"ができるが,
アルミニウムの混入量が増すにしたがって, “あばた"
は減少する(第 02 図) .また自由凝固面では突起が少な
くなり,黒色部が黄金色に変化してゆく一.珪素がますに
したがって鋳肌の暗赤色が茶色を帯びた“ぶどう色"に
なり“あばた"が少なくなる(第 12 図) •
このような鋳肌の変化はアルミニウムや珪素の酸素に
対する親和力が鏑,錫,鉛,および亜鉛よりも大である


ω 10.0
lA ,
lS ,
Mn ~加 ,0/0 鋳
'(込

50.0
度 1 1日
)C'
ため,鋳造の際に選択酸化するものと考えられる.自由
凝固面ではアルミニウムと珪素の影響がはっきりわかる
第91 図 5-8 合金のアルミニウム, ような色臥すなわち黄金色や銀白色になるには相当量の
珪素,マンガンと破面特性 アルミニウムまたは珪素を含まねばならない.しかし黒
なり,青灰色部は短かくなる傾向がある.珪素の場合も 鉛ノレツボに接した鋳肌では酸素の供給量が少なく,アル
間様である.第 71 図はアルミニウムを添加した場合の ミニウムや珪素が他の金属元素より酸化しやすいので,
破面状態の一例である. 鋳肌には Alz0 3 や SiOz が他の酸化物にくらべて多く
いずれにしても,溶湯中にアノレミニウムや珪素が存在 なり,アノレミニウムや珪素を含んだときの特有の色があ
して,破面がある程度ょいと判定されても,製品は水圧 らわれ判定しやすくなる.この場合普通の砂型に鋳込む
洩れをおこし易く,製品の歩留りは悪く,低級な洛湯で と空気や水蒸気との接触が充分であり,鋳肌にアルミニ
ある.第 81 ,91 図は BC6 にアノレミニウム,珪素,マ ウムや珪素を含んだときの特有の色を生ぜず判定が難し
ンガンを添加した場合の破面特性と引張試験結果を示 くなる.また黒鉛ノレツボ試験片の鋳肌と内部を分光分析
す.アルミニウム,珪素によって青灰色部の長さは著し すると,鋳肌には内部に比較して数倍の量のアルミニウ
く減少するが,柱状晶はほとんど変化しない.アルミニ ムや珪素があり,鋳肌で判定しやすいことが判る.この
ウム,珪素によって機械的性質は著しく低下し青灰色部 ことからも,鋳肌に他の酸化物の生成をおさえるような
は減少する.マンガンは破面特性,機械的性質には余り 状態にすれば,アルミニウムや珪素の有無を判定しやす
影響しない.結局アルミニウム,珪素は 0.05% 程度の くなるものと考えられる.また鋳肌はアノレミニウムや珪
含有が判定できればよいと考えられる. 素を含むと“あばた"ができ難くなるのは,鋳込後すぐ
アルミニウムや珪素の酸化物が鋳肌面にできるためであ
.6 アルミニウム,珪素およびマンガンの炉前判定
ろう.マンガンはアルミニウムや珪素の判定できる量よ
方法 りはるかに多くの量でなければ判定できない(第 2 図).
上述の結果から普通青銅鋳物の炉前試験法はガスとア 第 02 ,12 ,22 図はアノレミニウム,珪素,マンガンを
ルミニウム,珪素などの不純物とは別々に判定すべきだ 単独に 0-0.1% まで添加した結果でこのことから,つ
と考える.すなわち溶湯中にアルミニウムおよび珪素が ぎのことがいえる.
士混入しているかどうかをさきに判定し,混入しているな (1) アルミニウム,珪素およびマンガンをそれぞれ
らば溶湯を処理してこれを除去し,その後チノレ試験片の 単独で 0.1%-0.1; ぢ添加した場合,鋳肌の色は変化
F 破面によって溶湯中のガスを判定して,高級な溶湯をつ し,虫喰状の“あばた"は次第に少なくなる.また自由
くり鋳造すべきである. 凝固面の突起が少なくなる.すなわちアノレミニウムが
著者らは溶湯のガス含有の程度を判定するため,溶湯 0.05% で黄色味をおび, 0.01% で黄金色, 0.05% で
を黒鉛ノレツボに鋳込み,その上部の“ひけ"や自由凝固 銀白色をおび,鋳肌の“あばた"は完全になくなる.珪
i面の状態により判定しようとしたが,この方法ではガス 素もまた同様である.この現象によりアルミニウムおよ

(2 )
第 10 図 BC6 のチノレ試験片の破面
(アマニ油砂型)
( 1 t スクレナ炉溶解・製品のた
めの溶湯を鋳込む)

試料1.oN S 2 S 1 S4
鋳込温度

C 01 051 071 021
柱状品 1 12 52 03 63
mm
青灰色部 1 04 54 14 4
mm
冷金温度 80 08 57
心C

2S IS 4S 3S 5S

第四図 BC6のAl 添加量とチノレ試験片の破面


(コバーノレ砂型,鋳込温度 081 C)C

竺iilP
-咋
Al 添 加 量 .O 1500 :~ .01 50
一2 -笠 -1-1':=1-1 一一
柱状晶
mm
451 39135133!36137135

青灰色部 05 1 54 1 42 1 04 1 93 1 73 1 53
mm
註:上部のモトノレ部(不健全部)は Al の
混入により青灰色中に点在する黄色
が多くなり,かっ青灰色と黄色の境
界がハツキワしたまだら状になる O

911 811 711 611 511 411 1'1 3


Mm
図(一
第一試

試 2
験的 F
添刊一
量ノ一
町出の込一 n
河鋳温一
幼一料

片引イ一
とレ一
の肌度一

い九ボ一



鋳一 N


u

14 24 34
4 54 64
第 21 図 BC6 のiS 添加量とノレツボ試験
片の鋳肌
試料 No.
iS 添 加 量 %

15 25 35
45 55 65

第 2 図 BC6 の Mn 添加量とノレツボ試
験片の鋳肌
試料 No.

16 26 36
46 56 66
第2
3 図 Al ,iS ,Mn を各 1 % 添加した BC6 溶湯を酸化溶解により
Al ,iS ,Mn を除去したときのノレツボ試験片の鋳肌
(チル試験片:コパール砂型, 180"C 鋳込,
ノレツボ試験片: 1 80"C 鋳込)

チノレ試験片破面 鋳 肌
試 料 No. Al% iS % Mn%
柱状品!青灰色部 色
宜1 m 立1立1

102 53 53 銀白色 な し 0.9 0.9 0.1


20 34 43
203 35 53
204 32 32
502 32 23
602
207
208 53 54 ↓ ↓ ↓
209 35 50 暗赤色 あ り .rT .rT 10.0
05( kg スタレナ炉溶解,酸化処理温度約 0
721 0
C) 102 20 302
402 502 602
702 802 902
5-8 合金 (BC )6 溶湯の炉前試験法について 701

ひ官素は約 0.05% で,マンガンは 0.01%-0.05% で


.7 結 論
判定できる. またその影響の程度はアルミニウムが強
く,珪素がほぼアルミニワムに近く,マンガンは弱い ( 1 ) チノレ試験片の鋳造条件はできるだけ一定にする
自由凝固面では上記の量の 01 倍以上多く添加しないと とその結果のばらつきは少く信頼性がある.とくに鋳込
判定できない. 温度に注意したほうがよい. Rote らの鋳造条件は範囲
( 2 ) アルミニウム,珪素,およびマンガンを混合し が広すぎて不正確な結果となる.
て添加し,それを酸化溶解により除去した場合もまた同 ( 2 ) 破面で溶湯の質を判定する方法は,アルミニウ
様の結果となる.アルミニウムの多いときほど鋳肌の変 ムや珪素が微量混入することによって,破面特性は著し
化が大きく,マンガンの影響は少ない. く変化し,判定が難しくなる.
( 3 ) これらの判定方法の鋳込温度,黒鉛ノレツボの予 ( 3 ) 不純物(アノレミニウム,珪素)は黒鉛ノレツボ試
熱温度の影響はつぎのようであった. 験片の鋳肌で,またガスは破面で判定すべきである.ア
o
)i ノレツボの予熱温度を 02 0
C ,02 C ,05 0
C 01 ルミニウム,珪素はルツボ、試験片により 0.05% 程度で

C と変化させると, 02 0
C のものが最もよく“あばた" 判定が可能である.
を生じ, 01 0
C では“あばた"が少なくなる.常温か ( 4 ) 以上の結果から溶湯の質を判定する炉前試験は
ら 02 0
C 位までが適当である. まずルツボ試験片でアルミニウムや珪素のないことを確
o o
)ii 鋳込温度を 051 0
C ,01 C ,051 C ,021 0
C めてのちに,破面で溶湯中のガスを判定するとよい.
と変化した結果,鋳込湿度が高いほど“あばた"を生じ そしてこの方法を採用することによって 5-5-8 合
やすい. 021 0
C が適当と考えられる. 金溶湯の質の管理ができる.さらにこの合金の溶湯中の
)iii 鋳込後離型までの時間は I分
, 2分
, 5分,自然放 ガスなどの不純物を分析することが困難なため,これら
冷に変化させ比較した. 1-2 分間では型から出すのは と溶湯の質との関連性を求めることは難しい現在著者
困難であり, 3-5 分間静置すれば鋳型から離れやすい. 等はガス分析などにかわってこの試験方法を利用するこ
色は早く離型することによってやや変るが,アルミニウ とにより,溶解の諸条件と溶湯の質との関係を簡単に,
ムや珪素の混入の特有の傾向はあらわれる. そして鋳物の良否に関連させて求めることができたか町.
)vi ノレツボ材質を電極用カーボ、ンにした場合“あばた" 著者らは銅合金分科会の椙山部会長はじめ委員各位の
は少ない.これは電極用カーボンと,黒鉛と粘土で作っ 御援助に感謝致します.
た黒鉛ルツボとの材質的な相違によるものと考えられ
文 献
る.
結局'/ 2 番の黒鉛ノレツボ(市販)を使用し,鋳込温度 )1 F.M.Baker ,C.Upthegrove and F.B Rote:
は 021
o
C ,lレツボ温度は常温から 02 0 C までが適当で .snarT A. .F .S ,75 1( )059 ,
.221
ある.なおルツボは使用前 021 0
C で一度焼いたものを )2 .R .D gnelhS ,.C Upthegrove and .F .B :etoR
使用する. .snarT A. .F S リ 95 )1591( ,.76
つぎにアルミニウム,珪素,マンガンを同時に添加し )3 niretnI troper fo Sub.Comite .T .S 54 fo
これを酸化精錬して除去したときの鋳肌を第 23 図に示 eht lacinhcet :licnuo The .tirB Foundry-
す.除去される過程と鋳肌の関係がよくわかる. man ,15 )8591( ,2 ,.19
なお,アルミニウムおよび珪素は微量添加しでも,そ )4 雄谷,本間:鋳物, 13 )9591( , 8 ,.96
の量を分析で求めることは非常に困難である.たとえ分 )5 雄谷,本間:鋳物, 13 )9591( ,01 ,.789
析されてもそれが合金中にどの程度アルミナまたは珪酸 )6 雄谷,本間:鋳物, 13 )9591( ,11 ,.3701
として存在するか固溶されているかは不明である.この )7 未発表
挙動についてはつぎの機会に報告する η.

( 32 )

You might also like