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ね ん

2084年

コロナのあと

はなし つく ひと た ばた みつ え

お 話 を作 った人 :田 畑 サンドーム光 恵

はなし つく て つだ ひと にし お さ ち こ

お 話 を作 るのを手 伝 ってくれた人 :西 尾佐知子

げんき

みなさん、元気でがんばりましょう!
こ とし ねん

今年は 2084年です。

しゅ と

ここはニュージーランドの首都のウエリントンです。

わたし いまだいがく ねんせい

私 は、なおみ・ジョーンズ。今大学2年生です。

きょう がつ にち わたし だい す たんじょう び

今日3月28日は、 私 の大好きなおばあちゃんのお誕 生 日です。

わたし な まえ

私 のおばあちゃんの名前は、ひろこ・ジョーンズです。

こ とし さい

今年で 88歳になります。

わか とき に ほん き

おばあちゃんは、若い時日本からニュージーランドに来ました。そし
じん わたし けっこん

て、ニュージーランド人( 私 のおじいちゃん)と結婚して、ずっとニ

ュージーランドに住んでいます。

きょう か ぞく たんじょう

今日はおばあちゃんのために、家族で誕 生 パーティをします。

わたし なに はや いえ き

私 は何もすることがなかったから、早くおばあちゃんの家に来まし

た。

たんじょう び

なおみ:「おばあちゃん、お誕 生 日おめでとう!」

はや

おばあちゃん:「あら、なおみ、早いのね。」

なおみ:「うん。」
ちゃ の

おばあちゃん:「じゃあ、ちょっとお茶でも飲みましょうか。」

わたし ちゃ

なおみ:「そうだね。 私 がお茶をいれてあげるわ。」

なおみ:「さあ、どうぞ、おばあちゃんの好きなオレンジ・ペコよ。」

おばあちゃん:「ああ、ありがとう。」

はい か き

なおみ:「あ、そうだ。クリームの入ったビスケットを買って来たの。
いっしょ た

一緒に食べよう!」

おばあちゃん:「このビスケット、すごくおいしいわね。」

は や に ほん な まえ か

なおみ:「うん、すごく流行ってるの。日本のビスケットよ。名前も可
わい い

愛いの。コロナって言うのよ。」
な まえ す

おばあちゃん:「コロナ。。。おばあちゃんは、その名前はあんまり好

きじゃないわ。」

なおみ:「えー、どうして。」

ねん い じょうまえ は や な まえ おな

おばあちゃん:「60年以 上 前に流行ったウイルスの名前と同じだか

ら。」

ねん い じょうまえ は や な まえ しんがた

なおみ:「60年以 上 前に流行ったウイルスの名前。。。ああ、新型コ

い なん

ロナって言われたやつでしょ。COVID何とか?」

おばあちゃん:「COVID-19 よ。」

とき はなし き がっこう なら

なおみ:「ねえ、おばあちゃん、その時の 話 を聞かせてよ。学校で習

し ひと

ったけど、あんまりよく知らないの。たくさんの人がそのウイ

ルスで死んじゃったんでしょ。」

はな

おばあちゃん:「そうね。じゃ、話してあげようか。」

い となり へ や い いっさつ も

そう言うと、おばあちゃんは 隣 の部屋に行って、一冊のノートを持

って来ました。

は や とき か

おばあちゃん:「このノートにね、COVID-19 の流行った時のことを書

いてあるの。」
しゃしん き ぬ

おばあちゃんのそのノートには、写真や、ポスターの切り抜きなんか
は か にっ き ちょう

が貼ってあって、あちこちにメモが書かれていた。ちょっと日記 帳 み

たいだった。

ねん がつ にち

おばあちゃん:「2020年の 3月26日に、ニュージーランドでは

はじ

Total Lockdown を始めたの。」

なおみ:「Total Lockdown って?」

じんみんな い しゃ い

おばあちゃん:「ニュージーランド人 皆 が、スーパーとお医者さん以

がい ところ い い いえ

外の 所 に行ってはいけないと言われたの。「ずっと家
なか い

の中にいなさい」、って言われたの。」

し ごと がっこう

なおみ:「仕事や学校は?」

し ごと がっこう い

おばあちゃん:「仕事も学校も行けなかったのよ。」

しん

なおみ:「えー、うそ。信じられない。」

しん

おばあちゃん:「うん、おばあちゃんも信じられなかった。おばあちゃ

けっこん

んは、ちょうどおじいちゃんと結婚したばかりだったか

こと がいこく

ら、ニュージーランドにいる事にしたけど、外国にも、

ほか まち い せい ふ き

他の町にも行ってはいけません、って政府が決めたの

よ。」

なおみ:「どうして?」

おばあちゃん:「うん、ニュージーランドでは、COVID-19 にかかった

ひと にん こ とき

人が 100人を超えた時に、Total Lockdown をしよう

き さいしょ ねん がつ

って決めたのよ。最初、COVID-19 は、2020年の 1月

ちゅうごく だいりゅうこう ちゅうごく ひと

に 中 国で大 流 行したの。たくさんの 中 国の人がウイ

し ひと

ルスにかかって、死んだ人もたくさんいたの。」

なおみ:「えー。」
がつ がつ

おばあちゃん:「でも、2月、3月になって、イタリアやスペイン、イ

りゅうこう

ギリス、ドイツ、そしてアメリカでもどんどん 流 行が

ひろ いちにち にん い

広がっちゃって。イタリアなんかは、一日に 700人以

じょう ひと し たいへん

上 の人が死んじゃって、大変だった。」

なおみ:「こわ~い。」

ひと み

おばあちゃん:「そうね。ニュージーランドの人もそれをニュースで見

こわ

ていて、このウイルスがとても怖いものだっていうのは

し なか

知っていたから、ニュージーランドの中でウイルスにか

ひと にん い じょう とき はや

かった人が 100人以 上 になった時、「早くウイルスに

か せい ふ

勝たなきゃいけない」から、政府が Total Lockdown を

するって決めたのよ。」

なおみ:「ふ~~~ん。。。」

おばあちゃん:「なおみには、ピンと来ないかな。COVID-19 はね、す

ごくうつりやすいウイルスだったのよ。だから、とにか

ひと ひと あ たいせつ

く、人と人が会わないことがとても大切だったの。」
み せい

おばあちゃん:「ほら、このポスターを見てごらんなさい。これは、政

ふ つく て あら いち

府が作った COVID-19 のポスターよ。手を洗うのが一

ばんたいせつ い こう か

番大切だと言われたわ。「マスクは効果がありませ

せい ふ い

ん。」と政府が言っていたけど、おばあちゃんはマスク

みせ い

がほしかったの。それで、たくさんのお店に行ったけ

ど、どこにも売っていなかったわ。」
なおみ:「どうして?」

おばあちゃん:「みんながパニックになって、マスクやせっけんや、パ

かんづめ すこ たくさん か

ン、パスタ、缶詰なんかを少しでも沢山買おうってスー

やっきょく お か に ほん ご か

パーや薬 局 に押し掛けたの。日本語では「買いだめ」

って言うのよ。おばあちゃんは、のんびりしてるから、

か もの い おそ

買い物に行くのがちょっと遅かったのね。ははは。」

たいへん

なおみ:「大変だったんだ。」

な いちばんこま

おばあちゃん:「そうそう、トイレットペーパーが無くて一番困った

おな はや

な。ハンドサニタイザーも、マスクと同じくらい早くに

みせ

お店からなくなったわ。」

そうぞう

なおみ:「なんか、想像できないなあ。」

おばあちゃん:「ほら、こっちを見て。これはね、スーパーのオンライ

じ かんひょう ぜん ぶ

ン・デリバリーの時間 表 。全部いっぱいでしょ。」
なおみ:「ほんとだ。」

じ ぶん い そと い

おばあちゃん:「自分でもスーパーに行けるんだけど、なるべく外に行

かない方がいいって言われてたのよ。どうしてもオンラ

とき

イン・ショッピングができない時はね、おじいちゃんが

い か もの

マスクをして、スーパーに行ってくれたの。買い物は

か ぞく なか ひと り い

家族の中で一人だけしか行けなかったから。」
きび

なおみ:「すごくルールが厳しいね。」

ちい

おばあちゃん:「それだけじゃないわよ。小さなコンビニだったら、お

みせ なか いっかい ひと り きゃく はい

店の中には、一回に一人のお 客 さんしか入れなかった

ほか ひと そと となり ひと い じょう

の。だから、他の人は外で 隣 の人から 2 メートル以 上

はな なら みせ はい ま

離れて並んで、お店に入れるまで待ってたの。そうそ

しゃしん み

う、この写真を見て。おばあちゃんのアパートから、イ

ひと み

ンドの人がやってるスーパーが見えたんだけど、そのス

はい じゅんばん ま ひと しゃしん

ーパーに入る 順 番 を待っている人たちの写真よ。」
たいへん

なおみ:「すっごい、大変だ。」

いえ なか ひと あ

おばあちゃん:「そうよ。とにかく家の中にいて、人に会わない!それ

だい じ

がとても大事なことだったのよ。そうしたら、ウイルス

ひろ じん

が広がらないからね。で、ニュージーランド人は、

まも おも

Lockdown のルールをよく守ってたと思うわよ。ほら、

しゃしん となり みち

こっちの写真は、ニュージーランド TV の 隣 の道。

ふ つう こ とき だれ

普通は混んでるのに、この時は誰もいないでしょ。」

いえ なか

なおみ:「でも、ずっと家の中にいたら、ストレスがたまらなかっ

た?」

ちい こ ども たいへん

おばあちゃん:「小さい子供がいるおうちは大変だったでしょうね。お

せん

じいちゃんとおばあちゃんは、オンラインでズンバの先

せい あ おど み

生のライブに合わせて踊ったり、ヨガのビデオを見て

えい が み きょう

ヨガをしたりしたの。映画もたくさん見たわ。「今日は

Movie Night にしよう!」って決めて、デザートやポッ

か えい が

プコーンをオンライン・ショッピングで買って、映画を

見たりしたの。」

たの

なおみ:「わ、それは楽しそう!」

いろいろ く ふう そと で が まん

おばあちゃん:「うん、色々工夫したら、外に出られないことを我慢

こわ おも じ ぶん

できたわ。でもね、みんな怖かったと思うわよ。「自分

おも

がウイルスにかかったらどうしよう」って思っていたん

じゃないかしら。」

こわ

なおみ:「おばあちゃんも怖かったの。」

こわ じ ぶん びょう き

おばあちゃん:「もちろん怖かったわよ。「もし自分が 病 気になって

おじいちゃんにうつしちゃったらどうしよう」、ってい

かんが

つも 考 えてた。おじいちゃんは、スポーツマンだった

ぜんそく びょう き ぜんそく ひと

けど、喘息の 病 気があったから。喘息の人はね、

とき びょう き ほか ひと わる

COVID-19 にかかった時に 病 気が他の人より悪くなる

って言われてたから。」

なおみ:「そうなんだ。」

じ ぶん

おばあちゃん:「それとね、自分が COVID-19 にかかったら、いじめ

しんぱい

られるんじゃないかなって心配だった。」
なおみ:「どういうこと?」

ふた り め

おばあちゃん:「うん。ニュージーランドで 2 人目かな、COVID-19

おんな ひと か ぞく

にかかった 女 の人と家族がね、オンラインですごくい

き じ

じめられたのよ。これがその記事よ。」

びょう き ひと

なおみ:「 病 気になってる人に、ひどいね、それ。」
ちゅうごく ひと う

おばあちゃん:「それに、 中 国の人がいやがらせを受けたりもしたっ

はなし き

て 話 も聞いたわね。」

か じんしゅ さ べつ たいへん とき

なおみ:「買いだめとか、ネットいじめとか、人種差別とか、大変な時

なのに、みんなひどいよね。」

たいへん とき だれ ひと だれ じ

おばあちゃん:「そうね。大変な時だから、誰がりっぱな人で、誰が自

ぶんかっ て ひと い しゃ

分勝手な人かはっきりわかったのよ。お医者さんとか、

かん ご し ひと

看護師さん、おまわりさん、スーパーの人たちは、ウイ

たす

ルスにかかるかもしれないのに、みんなを助けるために

いっしょうけんめいはたら い しゃ

一 生 懸命 働 いてくれてた。イタリアのお医者さんたち

つく どう が み まいにち

が作った動画を見たんだけど、毎日ゴーグルをして

かんじゃ たす め まわ

COVID-19 の患者さんを助けてるから、目の周りにゴー

あと ほんとう

グルの跡がくっきりとついているのよ。本当に、すごい

おも

なあと思ったわ。」

わたし たいへん とき ほか ひと たす にんげん

なおみ:「そうか。 私 も大変な時に、他の人を助ける人間になりたい

な。」

ひと

おばあちゃん:「そうね。おばあちゃんも、なおみにはそんな人になっ
とき

てほしいな。それからね、おばあちゃんね、その時とっ

き じ み だい

てもいい記事を見つけたのよ。それは、イスラエルの大

がく せんせい か き じ せん

学のハラリっていう先生が書いた記事だったの。その先

せい か あらし す

生ね、こう書いてたの。「そう、 嵐 はきっと過ぎてい

にんげん い のこ わたし おお い

きます。人間は生き残ります。 私 たちの多くがまだ生

あらし あと せ かい ちが

きているでしょう。でも、 嵐 の後の世界は違うものに

か わたし

なっているでしょう。」って書いてたの。それで、 私

ぜったいにんげん ま

は「絶対人間は COVID-19 に負けない。だから、

あと かんが

COVID-19 の後のことをしっかり 考 えて、Lockdown

の き おも

も乗り切らなきゃいけないんだ!」って思ったの。」

せんせい い とお にんげん か

なおみ:「その先生の言う通りになったね。人間は COVID-19 に勝っ

たんだよね。でも、どうやって勝ったの、おばあちゃん。」

おばあちゃん:「それはね、」

(おしまい。1937語)

Comments from Mitsue Tabata-Sandom: At the time of writing this story (March 31, 2020),
NZ is in the Total Lockdown to combat the wide-spreading COVID-19 infection. The whole
experience is surreal. The article by highly revered Prof. Yuval Noah Harari mentioned
above can be found: https://www.ft.com/content/19d90308-6858-11ea-a3c9-1fe6fedcca75

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