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JP 2004-300101 A 2004.10.

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(57) 【 要 約 】
【課題】抗ウィルス剤の有用な合成中間体であるN−(2−アミノ−4,6−ジクロロピ
リミジン−5−イル)ホルムアミド〔化合物(IV)〕を簡便かつ工業的に有利に製造で
きる方法を提供すること。
【解決手段】化合物(II)をジカルボン酸(III)と反応させる工程およびpH3.
5∼4.5で反応させる工程を含む、N−(2−アミノ−4,6−ジクロロピリミジン−
5−イル)ホルムアミド〔化合物(IV)〕の製造方法。
【化1】

  10





(式中、Xは、結合または置換されてもよい2価の低級炭化水素基を示し、R およびR

は、同一または異なって、置換されてもよい低級アルキル基、置換されてもよい低級シ
クロアルキル基、置換されてもよいアリール基または置換されてもよいアラルキル基を示
1 2
すか、あるいはR およびR が結合する窒素原子と一緒になって、置換されてもよい脂 20
(2) JP 2004-300101 A 2004.10.28

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(II):
【化1】





  10


1 2
(式中、R およびR は、同一または異なって、置換されてもよい低級アルキル基、置
換されてもよい低級シクロアルキル基、置換されてもよいアリール基または置換されても
1 2
よいアラルキル基を示すか、あるいはR およびR が結合する窒素原子と一緒になって
、置換されてもよい脂肪族ヘテロ環を形成してもよい。)で表される化合物を、式(II
I):
【化2】

  20




(式中、Xは、結合または置換されてもよい2価の低級炭化水素基を示す。)で表される
ジカルボン酸と反応させる工程を含む、式(IV):
【化3】


  30



で表される化合物またはその塩の製造方法。
【請求項2】
さらに、請求項1記載の工程の後、pH3.5∼4.5で反応させる工程を含む、請求項
1記載の製造方法。
【請求項3】
ジカルボン酸が、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、フタル酸、
テレフタル酸、リンゴ酸、マレイン酸およびフマル酸から選ばれる少なくとも一つである 40
、請求項1または2記載の製造方法。
【請求項4】
さらに、式(I):
【化4】





  50
(3) JP 2004-300101 A 2004.10.28

1 2
で表される化合物若しくはその塩またはそれらの水和物を、式(V):R R NCHO
1 2
(V)(式中、R およびR は前記と同義を示す。)で表される化合物および塩素化剤
と反応させ、式(II):
【化5】





  10



1 2
(式中、R およびR は前記と同義を示す。)で表される化合物を製造する工程を含む
、請求項1∼3のいずれかに記載の製造方法。
【請求項5】
式(VI):
【化6】

  20






(式中、nは1または2を示し、R は水素原子、Na、KまたはNH4 を示す。)で表
される、N−(2−アミノ−4,6−ジクロロピリミジン−5−イル)ホルムアミド・シ
ュウ酸塩。
【発明の詳細な説明】
【0001】 30
【発明の属する技術分野】
本発明は、抗ウィルス剤の合成中間体として有用な、クロロピリミジン誘導体の製造方法
に関する。
【0002】
【従来の技術】
式(VII):
【0003】
【化7】

  40







【0004】
で表される化合物〔以下、化合物(VII)ともいう〕に代表される一連のプリンヌクレ
オシド誘導体は、抗ウィルス剤として有用であることが知られている(非特許文献1参照 50
(4) JP 2004-300101 A 2004.10.28

)。これらプリンヌクレオシド誘導体の有用な合成中間体として、下式(IV):
【0005】
【化8】






【0006】 10
で表されるN−(2−アミノ−4,6−ジクロロピリミジン−5−イル)ホルムアミド〔
以下、化合物(IV)ともいう〕が知られている(特許文献1および2参照)。
【0007】
化合物(IV)の製造方法として、特許文献1では、下式(II)で表される化合物〔以
下、化合物(II)ともいう〕を塩酸と反応させ、下式(VIII)で表される化合物〔
以下、化合物(VIII)ともいう〕を製造した後、これをリン酸と反応させ、化合物(
IV)を製造する方法が開示されている。
【0008】
【化9】
  20






【0009】
1 2
(式中、R およびR は、同一または異なって、置換されてもよい低級アルキル基、置
換されてもよい低級シクロアルキル基、置換されてもよいアリール基または置換されても
1 2
よいアラルキル基を示すか、あるいはR およびR が結合する窒素原子と一緒になって 30
、置換されてもよい脂肪族ヘテロ環を形成してもよい。)
しかしながら、この方法では、リン酸を使用しており、リン酸廃液の処理が必要になるな
ど、後処理が煩雑となり、また、一旦化合物(VIII)を単離しており、工程数が長く
なるという問題がある。
【0010】
また、特許文献2では、化合物(VIII)をプロピオン酸のような脂肪族カルボン酸と
反応させて、化合物(IV)を合成する方法が開示されている。しかしながら、脂肪族カ
ルボン酸を化合物(VIII)に対して多量に使用しているためコスト高になり、何れの
方法においても工業的に有利な方法とはいえなかった。
【0011】 40
【特許文献1】
特表平9−508412号公報
【特許文献2】
特開平7−300466号公報
【非特許文献1】
Nucleosides, Nucleotides & Nucleic Acids
,(米国),2000年,第19巻(1&2),p.297−327
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、その目的は、抗ウィルス剤 50
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の有用な合成中間体であるN−(2−アミノ−4,6−ジクロロピリミジン−5−イル)
ホルムアミド〔化合物(IV)〕を簡便かつ工業的に有利に製造できる方法を提供するこ
とである。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意研究を行った。その結果、本発明を完成する
に至った。すなわち、本発明は以下のとおりである。
【0014】
(1)化合物(II)を、式(III):
【0015】 10
【化10】





【0016】
(式中、Xは、結合または置換されてもよい2価の低級炭化水素基を示す。)で表される
ジカルボン酸〔以下、ジカルボン酸(III)ともいう〕と反応させる工程〔以下、工程
(b)ともいう〕を含む、化合物(IV)またはその塩の製造方法。 20
(2)さらに、工程(b)の後、pH3.5∼4.5で反応させる工程〔以下、工程(c
)ともいう〕を含む、上記(1)記載の製造方法。
(3)ジカルボン酸(III)が、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピ
ン酸、フタル酸、テレフタル酸、リンゴ酸、マレイン酸およびフマル酸から選ばれる少な
くとも一つである、上記(1)または(2)記載の製造方法。
(4)さらに、式(I):
【0017】
【化11】

  30




【0018】
で表される化合物若しくはその塩またはそれらの水和物〔以下、化合物(I)ともいう〕
1 2 1 2
を、式(V):R R NCHO(V)(式中、R およびR は前記と同義を示す。)
で表される化合物〔以下、化合物(V)ともいう〕および塩素化剤と反応させ、化合物(
II)を製造する工程〔以下、工程(a)ともいう〕を含む、上記(1)∼(3)のいず
れかに記載の製造方法。 40
(5)式(VI):
【0019】
【化12】






  50
(6) JP 2004-300101 A 2004.10.28

【0020】

(式中、nは1または2を示し、R は水素原子、Na、KまたはNH4 を示す。)で表
される、N−(2−アミノ−4,6−ジクロロピリミジン−5−イル)ホルムアミド・シ
ュウ酸塩。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
まず、本明細書で使用している各記号の定義を行う。
本発明におけるアルキルにおいて、語頭(例えば、イソ、ネオ、sec−、tert−な
ど)を付していない限り直鎖状であり、例えば単にプロピルとあれば、直鎖状のプロピル 10
のことである。
【0022】
1 2
R およびR で示される「置換されてもよい低級アルキル基」の「低級アルキル基」と
しては、炭素数1∼8の直鎖状または分枝鎖状のアルキル、例えば、メチル、エチル、プ
ロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペン
チル、イソペンチル、sec−ペンチル、tert−ペンチル、ネオペンチル、ヘキシル
、ヘプチル、オクチル等が挙げられ、好ましくはメチルまたはエチル等が挙げられる。
【0023】
1 2
R およびR で示される「置換されてもよい低級シクロアルキル基」の「低級シクロア
ルキル基」としては、炭素数3∼8のシクロアルキル、例えばシクロプロピル、シクロブ 20
チル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル等が挙げられ
、好ましくはシクロペンチル、シクロヘキシル等が挙げられる。
【0024】
1 2
R およびR で示される「置換されてもよいアリール基」の「アリール基」としては、
例えばフェニル、1−ナフチル、2−ナフチル等が挙げられ、好ましくはフェニル等が挙
げられる。
【0025】
1 2
R およびR で示される「置換されてもよいアラルキル基」の「アラルキル基」として
は、アルキル部分が上記で定義された「低級アルキル基」であり、アリール部分が上記で
例示された「アリール基」であるアラルキル基が挙げられ、例えばベンジル、1−フェネ 30
チル、2−フェネチル、3−フェニルプロピル、1−ナフチルメチル等が挙げられ、好ま
しくはベンジル等が挙げられる。
【0026】
1 2
R およびR が結合する窒素原子と一緒になって形成してもよい「脂肪族ヘテロ環」と
しては、例えば炭素原子以外に酸素原子、硫黄原子および窒素原子から選ばれるヘテロ原
子を1∼2個含む5または6員の脂肪族ヘテロ環、例えばピロリジン、ピペリジン、モル
ホリン、チオモルホリン、ピペラジン等が挙げられ、好ましくはピペリジン等が挙げられ
る。
【0027】
上記の「低級アルキル基」、「低級シクロアルキル基」、「アリール基」、「アラルキル 40
基」および「脂肪族ヘテロ環」に置換してもよい置換基としては、例えば低級アルキル基
(上記で定義されたものと同様のものが例示される。但し、低級アルキル基の置換とはな
らない。)、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)等
が挙げられ、好ましくはメチル、エチル、塩素原子等が挙げられる。該置換基の数は特に
限定はなく、1∼3個が好ましく、同一または異なっていてもよい。
【0028】
1 2
R およびR の好ましい例としては、メチル、エチル、フェニル、ベンジル、ピペリジ
ン等が挙げられ、特にメチルが好ましい。
【0029】
Xで示される「置換されてもよい2価の低級炭化水素基」の「2価の低級炭化水素基」と 50
(7) JP 2004-300101 A 2004.10.28

しては、例えば直鎖状または分枝鎖状の炭素数1∼8のアルカンから任意の2個の水素原
子を除いて形成される基、直鎖状または分枝鎖状の炭素数2∼8のアルケンから任意の2
個の水素原子を除いて形成される基、炭素数6∼10のアレーンから任意の2個の水素原
子を除いて形成される基等が挙げられる。
【0030】
上記「直鎖状または分枝鎖状の炭素数1∼8のアルカンから任意の2個の水素原子を除い
て形成される基」としては、例えばメチレン基、エチレン基、メチルメチレン基、トリメ
チレン基、メチルエチレン基、エチルメチレン基、テトラメチレン基、1−メチル−トリ
メチレン基、2−メチル−トリメチレン基、エチルエチレン基、プロピルメチレン基、イ
ソプロピルメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、ヘプタメチレン基、オク 10
タメチレン基等が挙げられ、好ましくはメチレン基、エチレン基等が挙げられる。
【0031】
上記「直鎖または分枝鎖状の炭素数2∼8のアルケンから任意の2個の水素原子を除いて
形成される基」としては、例えば、−CH=CH−、−CH2 −CH=CH−、−CH=
C(Me)−、−(CH2 )2 −CH=CH−、−CH2 −CH=CH−CH2 −、−C
H(Me)−CH=CH−、−CH2 −C(Me)=CH−、−CH2 −CH=C(Me
)−、−CH=C(Et)−、−C(Me)=C(Me)−、−(CH2 )3 −CH=C
H−、−CH2 −CH=CH−(CH2 )2 −、−(CH2 )4 −CH=CH−、−(C
H2 )5 −CH=CH−、−(CH2 )6 −CH=CH−(式中、2重結合はシスまたは
トランスを含む)で表される基等が挙げられ、好ましくは、−CH=CH−で表される基 20
等が挙げられる。
【0032】
上記「炭素数6∼10のアレーンから任意の2個の水素原子を除いて形成される基」とし
ては、例えばp−フェニレン基、m−フェニレン基、o−フェニレン基、1,2−ナフチ
レン基、1,3−ナフチレン基、2,3−ナフチレン基等が挙げられ、好ましくはp−フ
ェニレン基、o−フェニレン基等が挙げられる。
【0033】
上記「2価の低級炭化水素基」に置換してもよい置換基としては、水酸基、低級アルキル
基(上記で定義されたものと同様のものが例示される。)、ハロゲン原子(例えば、フッ
素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)等が挙げられ、好ましくはメチル、水酸基、 30
塩素原子等が挙げられる。該置換基の数は特に限定はなく、1∼3個が好ましく、同一ま
たは異なっていてもよい。
【0034】
「置換されてもよい2価の低級炭化水素基」の好ましい例としては、例えばメチレン基、
エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、o−フェニレン基、p−フェニレン基
、−CH=CH−、−CH−C(OH)−等が挙げられ、好ましくは、メチレン基等挙げ
られる。
【0035】
Xの好ましい例としては、結合、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチ
レン基、o−フェニレン基、p−フェニレン基、−CH=CH−、−CH−C(OH)− 40
等が挙げられ、特に結合が好ましい。
【0036】
化合物(IV)は、塩の形態であってもよい。化合物(IV)の塩としては、例えば、鉱
酸類(例えば、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸等)、有機酸類(例えば、酢酸、プロピオン酸
、メタンスルホン酸、4−トルエンスルホン酸、ジカルボン酸(III)(例、シュウ酸
、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、フタル酸、テレフタル酸、リンゴ酸、
マレイン酸、フマル酸等)等との塩が挙げられる。好ましい化合物(IV)の塩としては
、ジカルボン酸(III)との塩が挙げられ、特に式(VI):
【0037】
【化13】 50
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【0038】
(式中、各記号は前記と同義を示す。)で表される、N−(2−アミノ−4,6−ジクロ
ロピリミジン−5−イル)ホルムアミド・シュウ酸塩が好ましい。 10
本発明の製造方法は、以下のスキームに示される。
【0039】
【化14】






  20









  30
【0040】
(式中、各記号は前記と同義を示す。)
すなわち、本発明の製造方法は、化合物(I)を化合物(V)及び塩素化剤と反応させ、
化合物(II)を製造する工程(a);化合物(II)をジカルボン酸(III)と反応
させる工程(b);または、工程(b)の後、pH3.5∼4.5で反応させる工程(c
)の一部または全部を含む、化合物(IV)の製造方法である。以下、工程(a)∼(c
)について説明する。
【0041】
1.工程(a)
工程(a)は、例えば、溶媒中、化合物(I)を化合物(V)及び塩素化剤と反応させる 40
ことによって化合物(II)を製造する方法である。
【0042】
工程(a)において、試薬の添加の順序は特に限定はなく、例えば、溶媒中に予め仕込ん
だ化合物(I)と塩素化剤との混合物に、化合物(V)を添加する;溶媒中に予め仕込ん
だ化合物(I)と化合物(V)との混合物に、塩素化剤を添加する;または、溶媒中で化
合物(V)と塩素化剤を反応させ、ビルスマイヤー試薬を調整後、溶媒中に仕込んだ化合
物(I)に添加する等でもよい。
【0043】
工程(a)に使用される化合物(V)としては、ホルムアミド類であれば、特に限定はな
く、例えばN,N−ジメチルホルムアミド、N−メチル−N−フェニルホルムアミド、N 50
(9) JP 2004-300101 A 2004.10.28

−ホルミルピペリジン等が挙げられ、N,N−ジメチルホルムアミドが好ましい。
【0044】
工程(a)に使用される塩素化剤としては、特に限定はなく、例えば、オキシ塩化リン、
塩化チオニル、塩化スルフリル、三塩化リン、五塩化リン等が挙げられ、好ましくはオキ
シ塩化リン等が挙げられる。
【0045】
工程(a)において、塩素化剤の使用量は、化合物(I)1モルに対して2モル∼10モ
ルが好ましく、4モル∼5.5モルがより好ましい。塩素化剤の使用量がこの範囲より少
ないと反応効率が低下する傾向があり、この範囲を越えて使用しても更なる効果は少なく
経済的に不利となる傾向があるため好ましくない。 10
【0046】
工程(a)において、化合物(V)の使用量は、化合物(I)1モルに対して2モル∼1
0モルが好ましく、2モル∼5モルがより好ましい。化合物(V)の使用量がこの範囲よ
り少ないと、反応効率が低下する傾向があり、この範囲を越えて使用しても、更なる効果
は少なく経済的に不利となる傾向があるため好ましくない。
【0047】
工程(a)に使用される溶媒としては、当該反応を阻害しないものであればよく、例えば
テトラヒドロフラン(THF)、1,4−ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン等のエ
ーテル類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;ヘプタン、ヘキサン、
オクタン等の脂肪族炭化水素類等、ジクロロメタン、クロロホルム、モノクロロベンゼン 20
、ジクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素類を単独または混合して使用することができ
る。混合溶媒とする場合には、任意の割合で混合すればよい。
【0048】
溶媒の使用量としては、化合物(I)1kgに対して通常1L∼20Lであり、より好ま
しくは5L∼10Lである。
工程(a)の反応温度は、通常50℃∼120℃、好ましくは80℃∼100℃の範囲で
行われる。反応時間は、用いられる試薬や反応温度にも依存するが、通常5時間∼15時
間で終了する。
【0049】
工程(a)で製造される化合物(II)は、常法によって単離、精製することができる。 30
例えば反応液を水にあけた後、必要により中和し、分液後、有機層を洗浄、減圧濃縮する
ことによって、化合物(II)を単離することができる。単離後、例えばシリカゲルカラ
ムクロマトグラフィーまたは再結晶等に付して精製することもできる。また、化合物(I
I)は精製することなく用いることもできる。
【0050】
工程(a)の原料である化合物(I)は、公知の方法、例えば、上記特許文献2記載の方
法の方法に従って製造したものを用いることができ、また市販のものを用いることもでき
る。
【0051】
2.工程(b)および工程(c) 40
工程(b)および工程(c)は、例えば、溶媒中、化合物(II)をジカルボン酸(II
I)と反応させ〔工程(b)〕、その後、pH3.5∼4.5で反応させる〔工程(c)
〕ことによって化合物(IV)を製造する方法である。
【0052】
工程(b)および工程(c)を組み合わせることにより、化合物(II)を簡便かつ効率
的に化合物(IV)に導くことができるという利点がある。その理由として、本発明者等
は以下のように考えている。
【0053】
本発明者等は鋭意研究した結果、化合物(II)のピリミジン環の2位の式(IX):−
1 2 1 2
N=CHNR R (IX)(式中、R およびR は前記と同義を示す。)で表される 50
(10) JP 2004-300101 A 2004.10.28

置換基〔以下、置換基(IX)ともいう〕のアミノ基への脱保護反応と5位の置換基(I
X)のホルミルアミノ基への脱保護反応の至適pHに相違があるという結論に達した。
【0054】
すなわち、化合物(II)とジカルボン酸(III)との反応におけるpH(pH2以下
)では、2位の置換基(IX)の脱保護は速やかに進行するが、5位の置換基(IX)の
脱保護はほとんど進行せず、反応条件を過激にするとピリミジン環のクロル基の加水分解
等が進行し、化合物(IV)はほとんど得られない。
一方、上記反応で、最初から塩基を添加することによりpH3.5∼4.5に調整すると
5位の置換基(IX)の脱保護は進行するようになるが、2位の置換基(IX)の脱保護
が上記の場合(pH2以下)に比べ遅くなるため、副生成物が多くなって化合物(IV) 10
の収率が悪くなる。
【0055】
したがって、本発明の方法では下記反応スキームに示すように、工程(b)において、化
合物(II)は2位の置換基(IX)の脱保護によって化合物(VIII)に速やかに移
行し、その後工程(c)において、pHを調整することにより、5位の置換基(IX)の
脱保護反応が進行し、化合物(IV)を高収率で製造することができると考えられる。
【0056】
【化15】

  20









  30




【0057】
(式中、各記号は前記と同義を示す。)
工程(b)に使用されるジカルボン酸(III)としては、特に限定はなく、例えばシュ
ウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、フタル酸、テレフタル酸、リンゴ
酸、マレイン酸、フマル酸等が挙げられる。なかでも、副生成物がより抑制され、収率が
良好であるため、シュウ酸が好ましい。 40
このようなジカルボン酸(III)を用いた場合、化合物(II)の2位の置換基(IX
)の脱保護に至適なpH(pH2以下)とすることができ、また廃液処理等の後処理も簡
便に行えるため、工業的に有利であるという利点がある。
【0058】
工程(b)において、ジカルボン酸(III)の使用量は、化合物(II)1モルに対し
て1モル∼4モルが好ましく、2モル∼3モルがより好ましい。この範囲の使用量で、ピ
リミジン環の2位の置換基(IX)の脱保護に至適なpH(pH2以下)に調整すること
ができるため、カルボン酸の使用量の低減を図ることができ、経済的に有利であるという
利点がある。
【0059】 50
(11) JP 2004-300101 A 2004.10.28

工程(b)に使用される溶媒としては、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、
イソプロパノール、tert−ブタノール等のアルコール類、水など;およびこれらの混
合溶媒が挙げられ、水、メタノールと水の混合溶媒またはエタノールと水の混合溶媒が好
ましい。混合溶媒とする場合には、任意の割合で混合すればよい。
【0060】
溶媒の使用量としては、化合物(II)1kgに対して通常3L∼30Lであり、より好
ましくは5L∼15Lである。
工程(b)の反応温度は、通常30℃∼70℃、好ましくは40℃∼60℃の範囲で行わ
れる。反応時間は、用いられる試薬や反応温度にも依存するが、通常0.5時間∼2時間
で終了する。 10
【0061】
工程(b)で製造される化合物(VIII)は、常法(例えば、工程(a)で例示された
単離、精製方法)によって単離、精製することができるが、工程数の短縮のため、通常工
程(b)の反応混合物のpHを直接調整することにより、そのまま工程(c)を行う。
【0062】
工程(c)における反応中のpHの範囲としては、pH3.5∼pH4.5が好ましく、
pH3.8∼pH4.2がより好ましい。工程(c)における反応中のpHが、pH3.
5より低いと5位の置換基(IX)の脱保護反応が進行しにくくなると共に、ピリミジン
環に存在するクロル基が加水分解される等の副反応がおこりやすくなり収率が低下する傾
向があるため好ましくない。またpH4.5を越える場合、ピリミジン環に存在するクロ 20
1 2
ル基が、脱保護反応で副生するR R NH(式中、各記号は前記と同義を示す)で表さ
れるアミンとの置換反応等の副反応が進行しやすくなり収率が低下する傾向があるため好
ましくない。
【0063】
工程(c)における反応中のpHの調整は、例えば、適量の塩基を添加することにより行
うことができる。そのような塩基としては、例えば炭酸アンモニウム、アンモニア水、炭
酸水素アンモニウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、水酸化ナト
リウム、水酸化カリウム等が挙げられ、良好な収率が得られることから、炭酸アンモニウ
ムまたはアンモニア水が好ましい。
【0064】 30
工程(c)における溶媒およびその好ましい使用量は、工程(b)と同様である。
工程(c)の反応温度は、通常50℃∼100℃、好ましくは70℃∼90℃の範囲で行
われる。反応時間は、用いられる試薬や反応温度にも依存するが、通常5時間∼10時間
で終了する。
【0065】
工程(b)および工程(c)で製造される化合物(IV)は、常法(例えば、工程(a)
で例示された単離、精製方法)によって単離、精製することができ、特に限定はないが、
以下の方法によって行うことが好ましい。
すなわち、反応終了後、必要により冷却することによって析出する沈殿をろ過し、水等で
洗浄することにより、沈殿物を得ることができる。該沈殿物は、化合物(IV)とジカル 40
ボン酸(III)の塩として同定される。
次いで、該沈殿物をアルカリ性水溶液(例えば、炭酸カリウム水溶液、炭酸ナトリウム水
溶液、炭酸アンモニウム水溶液等)に懸濁させ、攪拌後、ろ過、洗浄することにより、化
合物(IV)を単離、精製することができる。
【0066】
工程(b)および工程(c)の原料である化合物(II)は、例えば、上記工程(a)の
方法に従って製造したものを用いることができ、このとき、工程(a)において製造され
る化合物(II)の抽出溶媒の溶液を工程(b)および工程(c)に付すことにより、工
程(a)∼(c)をワンポット反応で行ってもよい。
【0067】 50
(12) JP 2004-300101 A 2004.10.28

化合物(IV)は、例えば上記非特許文献1記載の方法に従って、抗ウィルス剤として有
用な化合物(VII)に誘導することができる。
【0068】
【実施例】
以下、本発明について、実施例を挙げてさらに具体的に説明する。本発明はこれらにより
何ら限定されるものではない。
【0069】
実施例1
4,6−ジクロロ−2,5−ビス[[(ジメチルアミノ)メチレン]アミノ]ピリミジン
の製造 10
2,5−ジアミノ−4,6−ジヒドロキシピリミジン塩酸塩水和物(10.00g,50
.9mmol)、トルエン(50mL)、オキシ塩化リン(39.10g,255.0m
mol)を混合し、70℃まで昇温した。N,N−ジメチルホルムアミド(18.63g
,255.0mmol)を40分かけて滴下し、混合物を100℃で7時間撹拌した。冷
却後、水酸化ナトリウム水溶液によりpHを7に調整した後、分液した。水層をトルエン
(50mL)で抽出し、有機層を合わせた後、減圧濃縮した。得られた結晶をヘプタンで
懸濁し、濾過した。得られた結晶を70℃、減圧下で乾燥し、表題化合物を得た。(収率
 90.0%)
【0070】

H−NMR(400MHz,DMSO−d6 ): δ8.45 (s, 1H), 7 20
.65(s, 1H), 3.12(s, 3H), 3.00(s, 3H),2.9
9(s,3H),2.95(s, 3H).
【0071】
実施例2
N−(2−アミノ−4,6−ジクロロ−ピリミジン−5−イル)ホルムアミドの製造
4,6−ジクロロ−2,5−ビス[[(ジメチルアミノ)メチレン]アミノ]ピリミジン
(1.50g,5.19mmol)と水(9.5g)、シュウ酸(1.40g,15.6
mmol)とを混合溶解し、55℃で1時間撹拌した。得られた溶液を室温まで冷却した
後、炭酸アンモニウムを加え、pHを4に調整、さらに80℃で8時間撹拌した。得られ
た混合物を冷却し、析出した沈殿物を濾過し、水で洗浄した。得られた固体を10%炭酸 30
カリウム水溶液(10.0g)に懸濁させ、30分間撹拌した。濾過後、水で洗浄し、得
られた結晶を70℃、減圧下で乾燥し、表題化合物を得た。(収率54.2%)
【0072】

H−NMR(400MHz, DMSO−d6 ):δ 9.78 および 9.44 
(s および d, J=11.4Hz, 計1H),8.22および 7.98 (s
 および d, J=11.4Hz, 計1H)、7.66 および 7.60 (双方
s, 計2H).
【0073】
実施例3∼8
pH調整のため添加するの塩基として、炭酸アンモニウムの代わりに他の塩基を用いたこ 40
と以外は、実施例2と同様に行い、N−(2−アミノ−4,6−ジクロロ−ピリミジン−
5−イル)ホルムアミドを製造した。使用した塩基と収率を表1に示す。
【0074】
【表1】
(13) JP 2004-300101 A 2004.10.28










  10



【0075】
実施例9
N−(2−アミノ−4,6−ジクロロ−ピリミジン−5−イル)ホルムアミドの製造(ワ
ンポット反応)
実施例1と同様の方法により抽出まで行い、4,6−ジクロロ−2,5−ビス[[(ジメ
チルアミノ)メチレン]アミノ]ピリミジンを含むトルエン溶液(8mL)を得、これに
、水(9.5g)、シュウ酸(1.40g,15.6mmol)を添加し、55℃で1時 20
間撹拌した。得られた溶液を室温まで冷却した後、有機層を分液除去し、水層に炭酸アン
モニウムを加え、pHを4に調整、さらに80℃で8時間撹拌した。得られた混合物を冷
却し、析出した沈殿物を濾過した。水で洗浄し、得られた固体を10%炭酸カリウム水溶
液(10.0g)に懸濁させ、30分間撹拌した。濾過後、水で洗浄し、得られた結晶を
70℃、減圧下で乾燥し、表題化合物を得た。(収率48.7%)
【0076】
【発明の効果】
本発明の製造方法は、リン酸等を用いる必要がないため、廃液処理等の後処理を簡便に行
うことができる。また、原料の化合物(I)(2,5−ジアミノ−4,6−ジヒドロキシ
ピリミジン)からワンポットで化合物(IV)まで製造しうるため、工程数を短縮するこ 30
とができる。
さらには、ジカルボン酸(III)を使用することにより、プロピオン酸のような脂肪族
カルボン酸を用いた場合より使用量の低減が図れるため、経済的に有利である。
このように本発明の製造方法は、抗ウィルス剤の合成中間体であるN−(2−アミノ−4
,6−ジクロロ−ピリミジン−5−イル)ホルムアミド〔化合物(IV)〕を工業的によ
り有利に製造し得る方法である。
(14) JP 2004-300101 A 2004.10.28

フロントページの続き

【要約の続き】
肪族ヘテロ環を形成してもよい。)
【選択図】  なし

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