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4 April
2015 No.616 April
ミロシュ
10 特 集
ジュリアン・ブリーム・ロング インタビュー
37 第 2 特集 指頭奏法のススメ
CONCERT PHOTO REPORT 70 Etude Pub ~ギター・ベーシック・レパートリー
完全攻略〔新連載〕 (坂場圭介)
18 コンサート・フォトレポート 72 アンサンブルで聴く巨匠の名技〔新連載〕
ミロシュ (朝川 博)
フリーバーズ・ギターデュオ 74 a tempo 日記 (渡辺和彦)
〔61〕
岩永善信 76 セゴビアとパキータ〔49〕
西垣正信 (A. エスカンデ/訳:坪川真理子)
大萩康司 80 ロンドン便り〔64〕
(ワシリー・サバ/訳:関塚亮司)
宮下祥子〔ゲスト〕グレブ・ニキテン(Vn) 82 レパートリー充実講座〔241〕(亀井貴幸)
DUO-TRUSSARDIO & ウグムント・ヨハンネッソン 12 の練習曲②(ヴィラ=ロボス)
松尾俊介 88 あなたの街の~ギター教室紹介〔新連載〕
REPORT INFORMATION
42 アシエール・デ・ベニート工房訪問記 58 新刊案内
49 第 1 回ジャカルタ国際 60 外盤案内
ギターフェスティバル 2014 62 新譜案内
54 中国・四川省/山東省ギター講習会 89 めもらんだむ
90 今月の見どころ聴きどころ
INTERVIEW 92 イベント & コンサートガイド
96 コンクール・インフォメーション
36 Jiro's Bar ~濱田滋郎対談〔25〕
智内威雄( 左 手 の ピ ア ニ ス ト)
46 フアン・アントニオ・コレア・マリン ENSEMBLE
86 アンサンブルの広場
READING / ESSAY / LECTURE
32 愛器を語る[73] SCORE
安藤初代(グレッグ・スモールマン)
113 今月の楽譜解説
40 ポインツ・オブ・ギターテクニック[13]
114 アンダンテとメヌエット Op.39 より(コスト)
デュオ・メリス
118 ポル・ケ? Op.28(マンホン)
63 オールド・ポップス・コレクション〔13〕
122 小犬のエチュード (佐藤正美)
夜がくる~サントリー CM 曲“人間みな兄弟”
124 ひこうき雲(荒井由実~小関佳宏)※二重奏
(たしまみちを)
( 小 林 亜 星)
67 ポピュラー・ヒット・レパートリー〔25〕 ●表紙
(小関佳宏)
春一番(穂口雄右)
ジュリアン・ブリーム
●写真
テレーズ・ワシリー・サバ
英国誌『クラシカル・ギター・マガジン』
の創刊号表紙を飾ったのは、同国を代表す
るギタリスト、ジュリアン・ブリームであっ
た。同誌は 2015 年から米国に移籍すること
となったが、英国版最終号の表紙には再びブ
リームが登場、ワシリー・サバ氏によるロン
グ・インタビューが掲載された。
御年 82 歳の大巨匠は、残念ながら今はギ
ターを弾いていないそうだが、サバ氏が撮影
した右写真からもわかるように、今なお矍鑠
として瀟洒な装いである。
古楽器・古楽との関わり、ブリテン、ヘン
ツェ、マルタンら 20 世紀ギター音楽の重要
作品を残した作曲家について、ヴィラ=ロボ
ス、セゴビアについて等々、話題は多岐に
わたり、非常に興味深い会話が交わされた。
その貴重な一問一答をサバ氏の御厚意によ © Thérèse Wassily Saba
り完訳でお届けする。
テレーズ・ワシリー・サバ Thérèse Wassily Saba
シドニー出身ロンドン在住。シドニー大学で音楽学を専攻する傍ら、シドニー音楽院にてクラシックギターを学ぶ。1991 年からイギリスのクラシックギター専門誌『Classical
Guitar Magazine』にて編集・執筆を務める。その他、
『International Record Review』、
『HMV Choice』、ドイツの『Akustik Gitarre』、アメリカの『Guitar Player』、日本の『現
代ギター』など各国の音楽雑誌にて執筆。また、アラビア語、ペルシャ語、スペイン語での書籍編集、スペイン語から英語への翻訳を行なう。
く楽器を手に取ったのは、そのチャンネル4の撮影がきっ
●『ギターラ!』の制作と古楽・古楽器について――――
かけだったということですか?
――『クラシカル・ギター・マガジン』がイギリスからア B:そう。それから、4 コースのルネッサンスギターも作っ
メリカに移籍することになり、今回が英国版の最終号とな たんだ。もしこの映像の制作が 20 年早かったら、16 ~ 17
ります(2014 年 12 月号)。第一号は 1982 年 9 月~ 10 世紀の音楽を弾くのにモダンギターを使っても問題なかっ
月に発刊され、その時の表紙をあなたが飾りました。もう たと思う。しかし 1982 年ともなると、時代的にそれでは
32 年前のことになりますね。当時あなたはどんな活動を 済まなかったんだね。そんなことをしたら批判の嵐が待ち
されていましたか? 確かウィグモア・ホールでのリサイ 受けていただろうし、しかもその批判はある意味正しいん
タル・シリーズをされていましたよね? だ。ここ 30 年間は、歴史的に適正な楽器を使っていこう
ブリーム(以下 B):そうだね。それから“チャンネル 4” というムーブメントが主流だからね。私が思うに、この流
註)
での収録の準備をしていた。『ギターラ!』というフィ れは本当に素晴らしいものだし、音楽史的な側面から見て
ルムで、スペインのギターの歴史に関するものだったん 大きな変化だったんじゃないかな。
だ。1980 年から 1984 年まで 4 年間をかけて準備したから、 ――あなたのように完成された演奏家にとっては、すごく
1982 年頃と言えばちょうどその準備の真最中だったことに 大変なことだったんじゃないですか。つまり……。
なるね。選曲をしたり、調べものをしたり、バロックギター、 B:別の分野に身を投じるということが、だよね !? 確か
ルネッサンスギター、ビウエラなどを練習したり。そして、 にそうだった。
とにかく演奏するすべての曲をしっかりと仕上げるのに追 ――とても勇気がいることだったでしょうね!
われていた頃だよ。 B:そうだね。ただし私はリュートを以前から弾いていた
――それ以前にバロックギターを弾こうと思ったことはな からね。古楽にはもともと親しんでいたんだ。批判にも慣
かったんですか? れっこだったし、だから結局は、そんなには勇敢ではなかっ
B:なかったよ。 たのかも。
――ということは、あなたがバロックギターを研究するべ ――それぞれの楽器を弾くためのテクニックはどのように
註):イギリスの公共テレビ局
10 Gendai Guitar
18 Gendai Guitar
愛器を語る
安藤初代
◆
グレッグ・スモールマン
(1992)
Hatsuyo Ando
6歳より中村登世子氏に師事。古賀音楽学院卒業後、阿部保夫氏に師事。1961 年マリア・ルイサ・アニードの来日公
演セレモニーに於いて、日本若手女子代表として出演。1962 年 1stリサイタル開催と共に安藤ギター教室を主宰、以降コ
ンサートや様々な楽器とのコラボレーションを行なう。スペインの名ギタリスト&ピアニスト、クエンカ兄弟、マリアエステル・グ
スマンを招聘してのコンサート(共演)を開催。2004 年・2008 年・2012 年スペインにて国際ギターコンクールの審査員
を務めると共にアンダルシア各地にてリサイタルを行なう。2014 年 6 月、アンダルシアのビルビル城にて「日本・スペイン国
交 400 年記念コンサート」を催す。日本ギタリスト協会会員、フォルマール・ギタリスタス代表、ブリランテ・デ・ラ・ギター
ラ講師、安藤ギター教室主宰。 写真:木田新一
24 Gendai Guitar
デュオ・メリス
Duo Melis
世界最高峰の呼び声が高い、スサーナ・プリエト(スペイン)と アレクシス・ムズラキス(ギリシア)によるギターデュオ。ギリシ
ア・ボロスの国際ギターフェスティバルで 1999 年にデュオ・メリスとしてデビューし、世界各地でリサイタルを開催。欧米の数多
くの国際ギターフェスティバルが彼らのコンサートとマスタークラスをシリーズ化している。フレッヘン国際ギターデュオ・コンクー
ル(ドイツ)、第 21 回マウロ・ジュリアーニ国際ギターデュオ・コンクール(イタリア)、モンテリマール・ギターデュオ・コンクー
ル(フランス)、パリ国際ギターデュオ・コンクール(フランス)で優勝、ライプチヒ室内楽コンクール(ドイツ)でデュオ / アン
サンブル賞を獲得、ガエターノ・ジネッティ国際室内楽コンクールではレコーディング賞を獲得し彼らのファースト CD が作成され
た。オーケストラとの協演も多く、そのレパートリーはバロックから現代音楽までと幅広い。フランス・ストラスブール国立音楽院
で教鞭を執り、日本からも松田 弦、近藤史明、徳永真一郎、上野芽実、小暮浩史らが彼らの教えを受けている。
2015 年 2 月 12 日 GG サロン/通訳:樋浦靖晃(ギタリスト)/写真:宮島折恵/取材・構成:渡辺弘文、安藤政利(編集部)
32 Gendai Guitar
指頭奏法のススメ∼その歴史と実践∼
竹内太郎 Taro Takeuchi
アーリーギター/リュート演奏家。立教大学、ギルドホール音楽院でナイジェル・ノースに学ぶ。アーリーギターのレコーディングには『フォリアス!』
『ギターの世紀』 『アフェットーソ』などがある。2015 年 4 月には、浜松市楽器博物館の所蔵楽器を用いたアルバム『可愛いナンシー』がリリースされる。
http://tarolute.crane.gr.jp/
◆はじめに ◆歴史
筆者はクラシックギター畑出身で、大学卒業の頃から リュートやバロックギターには指頭奏法のイメージが
リュートとバロックギターなど古楽器をメインに演奏し 強いと思うが、歴史的には必ずしもそうではない。爪の
てきた。最近は 18 世紀後半から 19 世紀初めの楽器:イ 使用に関しての多くの言及があり図像も残されている。
ングリッシュギター、ハープリュート、19 世紀ギターな アーチリュートやテオルボ、バロックギターはおおむね
どを弾く仕事も多い。1900 年前後のトーレス、ハウザー 爪で弾かれていたらしい。17 ∼ 18 世紀の図像からはっ
I世のウィーンモデルなどを弾くこともあり、プライ きりと爪が確認できるものを挙げる(図 1、2)。
ベートではモダンギターも楽しんでいる。いずれの楽器 ダウランドが弾いていたルネサンスリュート、ヴァイ
も基本的に指頭弾きだ。 スが使っていたバロックリュートなどは通常指頭で弾か
本項では指頭奏法の歴史を簡単に記し、筆者自身の個 れた。右手の形がよく分かる図像を挙げる。どちらもブ
人的な体験をもとにクラシックギターにおける指頭奏法 リッジ近くに小指を置き、手首はやや上がり指先で弦を
の実践について述べたいと思う。 捉えている(図 3、4)。
図 3:ルネサンスリュートのタッチ
17 世紀初頭のイタリア人画家カラヴァッジョ
の絵画より。
Gendai Guitar 37