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創世記

概要
1章
天地創造(1,2節)
地球を整える6日間(3‐31節)
1日目: 光,昼と夜(3‐5節)
2日目: 空間(6‐8節)
3日目: 乾いた所と草木(9‐13節)
4日目: 天にある光体(14‐19節)
5日目: 魚と鳥(20‐23節)
6日目: 陸上の動物と人間(24‐31節)
2章
神は7日目に休んでいる(1‐3節)
エホバ神は天と地を造った方(4節)
エデンの園と男女(5‐25節)
人が土で形作られる(7節)
知識の木の実は食べてはならない(15‐17節)
女性が創造される(18‐25節)
3章
人の罪の始まり(1‐13節)
最初のうそ(4,5節)
反逆者たちに対するエホバの裁き(14‐24節)
女の子孫についての予告(15節)
エデンからの追放(23,24節)
4章
カインとアベル(1‐16節)
カインの子孫(17‐24節)
セツと息子エノシュ(25,26節)
5章
アダムからノアまで(1‐32節)
アダムに息子や娘が生まれる(4節)
エノクは神と共に歩んだ(21‐24節)
6章
神の子たちが地上の女性たちを妻にする(1‐3節)
ネフィリムが生まれる(4節)
エホバは人々の悪を見て悲しむ(5‐8節)
ノアは箱船を造るよう命じられる(9‐16節)
神は洪水が来ることを告げる(17‐22節)
7章
箱船に入る(1‐10節)
地球規模の洪水(11‐24節)
8章
洪水の水が引く(1‐14節)
ハトを放つ(8‐12節)
箱船から出る(15‐19節)
地球に関する神の約束(20‐22節)
9章
全人類への指示(1‐7節)
血に関する律法(4‐6節)
虹の契約(8‐17節)
ノアの子孫についての預言(18‐29節)
10章
国民の一覧(1‐32節)
ヤペテの子孫(2‐5節)
ハムの子孫(6‐20節)
エホバに敵対するニムロデ(8‐12節)
セムの子孫(21‐31節)
11章
バベルの塔(1‐4節)
エホバは言語を混乱させる(5‐9節)
セムからアブラムまで(10‐32節)
テラの家族(27節)
アブラムはウルを出る(31節)
12章
アブラムはハランを出てカナンに行く(1‐9節)
アブラムへの神の約束(7節)
エジプトでのアブラムとサライ(10‐20節)
13章
アブラムはカナンに戻る(1‐4節)
アブラムとロトは別れる(5‐13節)
アブラムへの神の約束が再び述べられる(14‐18節)
14章
アブラムはロトを救い出す(1‐16節)
メルキゼデクはアブラムを祝福する(17‐24節)
15章
アブラムとの神の契約(1‐21節)
400年間苦しむことが予告される(13節)
アブラムへの神の約束が再び述べられる(18‐21節)
16章
ハガルとイシュマエル(1‐16節)
17章
アブラハムは多くの国の人々の父祖となる(1‐8節)
アブラムの名前がアブラハムになる(5節)
割礼の契約(9‐14節)
サライの名前がサラになる(15‐17節)
イサクの誕生が約束される(18‐27節)
18章
3人の天使がアブラハムの所に来る(1‐8節)
男の子ができるという約束を聞いてサラは笑う(9‐15節)
アブラハムはソドムのために懇願する(16‐33節)
19章
天使たちがロトを訪ねる(1‐11節)
ロトの一家は逃げるようにと言われる(12‐22節)
ソドムとゴモラが滅ぼされる(23‐29節)
ロトの妻が塩の柱になる(26節)
ロトと娘たち(30‐38節)
モアブとアンモンの起源(37,38節)
20章
アビメレクのもとからサラが助け出される(1‐18節)
21章
イサクの誕生(1‐7節)
イシュマエルがイサクをからかう(8,9節)
ハガルとイシュマエルが送り出される(10‐21節)
アブラハムとアビメレクとの契約(22‐34節)
22章
アブラハムはイサクを捧げるよう命じられる(1‐19節)
アブラハムの子孫による祝福(15‐18節)
リベカの家族(20‐24節)
23章
サラの死と葬られた場所(1‐20節)
24章
イサクのために妻を探す(1‐58節)
リベカはイサクの所に行く(59‐67節)
25章
アブラハムは再婚する(1‐6節)
アブラハムの死(7‐11節)
イシュマエルの子たち(12‐18節)
ヤコブとエサウの誕生(19‐26節)
エサウは長男の権利を売る(27‐34節)
26章
イサクとリベカはゲラルに住む(1‐11節)
神はイサクにも約束を伝える(3‐5節)
井戸を巡る争い(12‐25節)
イサクとアビメレクとの契約(26‐33節)
エサウはヘト人2人を妻とする(34,35節)
27章
イサクはヤコブのために祝福を願い求める(1‐29節)
エサウはイサクに懇願するが,悔い改めてはいない(30‐40節)
エサウはヤコブに恨みを抱く(41‐46節)
28章
イサクはヤコブをパダン・アラムに行かせる(1‐9節)
ヤコブがベテルで見た夢(10‐22節)
神はヤコブにも約束を伝える(13‐15節)
29章
ヤコブはラケルと出会う(1‐14節)
ヤコブはラケルを愛するようになる(15‐20節)
ヤコブはレアとラケルと結婚する(21‐29節)
ヤコブとレアの間に生まれた4人の男の子: ルベン,シメオン,レビ,ユダ(30‐35節)
30章
ビルハはダンとナフタリを産む(1‐8節)
ジルパはガドとアシェルを産む(9‐13節)
レアはイッサカルとゼブルンを産む(14‐21節)
ラケルはヨセフを産む(22‐24節)
ヤコブの家畜が増える(25‐43節)
31章
ヤコブはカナンに向けてひそかに出発する(1‐18節)
ラバンはヤコブに追い付く(19‐35節)
ヤコブとラバンとの契約(36‐55節)
32章
ヤコブは天使たちに出会う(1,2節)
ヤコブはエサウに会う準備をする(3‐23節)
ヤコブは天使と取っ組み合いをする(24‐32節)
ヤコブの名前がイスラエルになる(28節)
33章
ヤコブはエサウと会う(1‐16節)
ヤコブはシェケムに行く(17‐20節)
34章
ディナが犯される(1‐12節)
ヤコブの息子たちによる策略(13‐31節)
35章
ヤコブは外国の神々の偶像を処分する(1‐4節)
ヤコブは再びベテルに行く(5‐15節)
ベニヤミンの誕生とラケルの死(16‐20節)
イスラエルの12人の息子(21‐26節)
イサクの死(27‐29節)
36章
エサウの子孫(1‐30節)
エドムの王と首長(31‐43節)
37章
ヨセフが見た夢(1‐11節)
ヨセフと嫉妬した兄弟たち(12‐24節)
ヨセフは売られて奴隷となる(25‐36節)
38章
ユダとタマル(1‐30節)
39章
ポテパルの家でのヨセフ(1‐6節)
ヨセフはポテパルの妻の誘いを拒む(7‐20節)
牢獄でのヨセフ(21‐23節)
40章
ヨセフは囚人たちの夢の意味を解き明かす(1‐19節)
「神が解き明かしてくださる」(8節)
ファラオの誕生日に催された宴(20‐23節)
41章
ヨセフはファラオの夢の意味を解き明かす(1‐36節)
ファラオはヨセフを高い地位に就ける(37‐46節前半)
ヨセフは食糧を管理する(46後半‐57節)
42章
ヨセフの兄たちがエジプトに行く(1‐4節)
ヨセフは兄たちと会い,兄たちを試す(5‐25節)
兄たちはヤコブの所に戻る(26‐38節)
43章
ヨセフの兄たちは,ベニヤミンと一緒に再びエジプトに行く(1‐14節)
ヨセフは再び兄たちと会う(15‐23節)
ヨセフは兄弟たちと食事をする(24‐34節)
44章
ヨセフの銀の杯がベニヤミンの袋から見つかる(1‐17節)
ユダはベニヤミンのために懇願する(18‐34節)
45章
ヨセフは正体を明かす(1‐15節)
ヨセフの兄弟たちはヤコブを迎えに戻る(16‐28節)
46章
ヤコブと家の人たちはエジプトに移住する(1‐7節)
エジプトに移住した人たちの名前(8‐27節)
ヨセフはゴシェンでヤコブを迎える(28‐34節)
47章
ヤコブはファラオに会う(1‐12節)
ヨセフの賢い管理(13‐26節)
イスラエルはゴシェンに定住する(27‐31節)
48章
ヤコブはヨセフの2人の息子のために祝福を願い求める(1‐12節)
エフライムはより大きな祝福を受ける(13‐22節)
49章
ヤコブの臨終の預言(1‐28節)
ユダからシロが出る(10節)
葬る場所についてのヤコブの指示(29‐32節)
ヤコブの死(33節)
50章
ヨセフはカナンでヤコブを葬る(1‐14節)
ヨセフは,許していることを確信させる(15‐21節)
ヨセフの晩年と死(22‐26節)
自分の骨についてのヨセフの指示(25節)
  1 章
  1 初めに,神は天と地を創造した。
  2 地は荒れていて何もなかった。深い水の上に闇があった。神が送り出す力が水の上を動いていた。
  3 神は言った。「光よ,輝け」。すると光が輝いた。 4 神が光を見ると,それは良かった。そして神は
光と闇を分けた。 5 神は光を昼と呼び,闇を夜と呼んだ。こうして,晩になり朝になり,1日目が過ぎた。
  6 神は言った。「水の間に空間が生じよ。水と水とが分かれよ」。 7 それから神は空間を造り,空間の
下の水と上の水とに分けた。そのようになった。 8 神はその空間を天と呼んだ。こうして,晩になり朝になり,
2日目が過ぎた。
  9 神は言った。「天の下の水は1つの場所に集まり,乾いた所が現れよ」。するとそのようになった。
10 神は乾いた所を陸と呼び,集まった水を海と呼んだ。神が見ると,それは良かった。 11 神は言った。
「陸は,さまざまな種類の草木と果樹を芽生えさせよ。草木は種を,果樹は種のある果実を付ける」。すると
そのようになった。 12 陸は,さまざまな種類の草木と果樹を生み出した。草木は種を,果樹は種のある果実
を付けた。神が見ると,それは良かった。 13 こうして,晩になり朝になり,3日目が過ぎた。
  14 神は言った。「昼と夜が分かれるよう,天に光体が現れよ。それらは,季節,日,年を示すしるしとな
る。 15 天にある光体として地上を照らす」。するとそのようになった。 16 神は2つの大きな光体を造った。
大きい方には昼を見守らせ,小さい方には夜を見守らせた。神は星も造った。 17 こうして神はそれらを天に
置いて,地上を照らさせ, 18 昼と夜を見守らせ,光と闇を分けさせた。神が見ると,それは良かった。 19
こうして,晩になり朝になり,4日目が過ぎた。
  20 神は言った。「水は生き物でいっぱいになれ。飛ぶ生き物が大地の上方を,空を飛ぶようになれ」。
21 それから神は,さまざまな種類の,海の大きな生き物や水の中を群がって動く生き物を創造した。さまざま
な種類の,羽のある飛ぶ生き物も創造した。神が見ると,それは良かった。 22 そこで神はそれらを祝福して
言った。「子を生み,増えて,海の水の中でいっぱいになれ。飛ぶ生き物は,地上で増えよ」。 23 こうして,
晩になり朝になり,5日目が過ぎた。
  24 神は言った。「陸に,さまざまな種類の生き物が現れよ。さまざまな種類の家畜と野生動物と地面を動
く生き物である」。するとそのようになった。 25 神は,さまざまな種類の野生動物,さまざまな種類の家畜,
地面を動くさまざまな種類の生き物を造った。神が見ると,それは良かった。
  26 神は言った。「私たちに似た者として人を造ろう。そして人に,海の魚,空を飛ぶ生き物,家畜,地面
を動くあらゆる生き物を治めさせ,地球を世話させよう」。 27 それから神は人を自分に似た者,神に似た者
として創造した。男性と女性を創造した。 28 神は2人を祝福し,こう言った。「子を生み,増えて,地上全
体に広がり,地球を管理しなさい。また,海の魚,空を飛ぶ生き物,地上を動くあらゆる生き物を治めなさ
い」。
  29 神は言った。「私は,地上にある,種を付ける全ての草木と,種のある果実を付ける全ての木を,あな
たたちに食物として与える。 30 また,地上のあらゆる野生動物と,空を飛ぶあらゆる生き物と,地上を動く
あらゆる生き物に,緑の草木全てを食物として与える」。そしてそのようになった。
  31 その後,神は造った全てのものを見た。それは非常に良かった。こうして,晩になり朝になり,6日目
が過ぎた。
  2 章
  1 こうして,天と地と全てのものは完成した。 2 神は7日目になる前に,それまで行ってきた仕事を完
了し,7日目に,その仕事をやめて休み始めた。 3 それから神は7日目を祝福し,その日を神聖なものとした。
あらゆるものを目的通りに創造することを終えて,神はその日,休んでいるのである。
  4 これが,天と地が創造された時の記録,エホバ神が地と天を造った日に起きたことである。
  5 地上に草木はなく,まだ何も生えていなかった。エホバ神は地上に雨を降らせておらず,地面を耕す人
もいなかったからである。 6 ただ,霧が地表から立ち上って地面を潤していた。
  7 エホバ神は地面の土で人を形作り,その鼻に息を吹き込んで命を与えた。すると生きた人になった。 8
さらにエホバ神は東方のエデンに庭園を造り,自分が形作った人をそこに置いた。 9 エホバ神は,食べられる
実を付けるさまざまな美しい木が地面から生えるようにし,庭園の真ん中に命の木を生えさせた。また,善悪
の知識の木を生えさせた。
  10 エデンから1本の川が流れ出ていた。川は庭園を潤し,そこから分かれて4本の川になっていた。 11
第1の川の名はピションという。金を産出するハビラの全体を巡る川である。 12 その地方の金は良質であり,
そこはブデリウム樹脂やしまめのうも産出する。 13 第2の川の名はギホンという。クシュの全体を巡る川で
ある。 14 第3の川の名はチグリスという。アッシリアの東を流れる川である。第4の川はユーフラテスであ
る。
  15 エホバ神は人をエデンの園に住ませた。そこを耕させ,管理させるためだった。 16 エホバ神は人に
こう命じた。「庭園の全ての木の実を満足するまで食べてよい。 17 しかし,善悪の知識の木の実は,食べて
はならない。それを食べた日にあなたは必ず死ぬからである」。
  18 その後,エホバ神は言った。「人が独りのままでいるのは良くない。彼を補って助ける人を造ろう」。
19 さて,地面からさまざまな野生動物と空を飛ぶ生き物を形作ったエホバ神は,生き物たちを人の所に連れて
きて,人がそれぞれを何と呼ぶかを知ろうとした。そして,人が呼んだ名がその生き物の名前になった。 20
人はあらゆる家畜と空を飛ぶ生き物と野生動物に名前を付けたが,人には補って助けてくれる人がいなかった。
21 そこでエホバ神は人を深く眠らせた。そして眠っている間にあばら骨を1本取り,その箇所を閉じた。
22 それからエホバ神は,人から取ったあばら骨で女性を造り,女性を人の所に連れてきた。
  23 すると人は言った。
  「これこそ私の骨の骨,
  私の肉の肉。
  これは女と呼ばれる。
  男から取られたから」。
  24 それで,男は父と母から離れて妻にしっかり付き,2人は一体となるのである。 25 人とその妻は2
人とも裸だったが,恥ずかしいとは思わなかった。
  3 章
  1 さて,エホバ神が造った野生動物の中で蛇が最も用心深かった。蛇が女に言った。「あなたたちは庭園
の全ての木の実を食べてはならない,と神が言ったのは本当ですか」。 2 女は蛇に言った。「私たちは庭園の
木の実を食べてよいのです。 3 でも,庭園の真ん中にある木の実について,神は,『食べてはならない。触れ
てもならない。食べたり触れたりするなら死ぬ』と言いました」。 4 蛇は女に言った。「あなたたちは決して
死にません。 5 その木の実を食べた日に,目が開かれ,あなたたちが神のようになって善悪を知るようになる
ことを神は知っているのです」。
  6 そこで女がその木を見ると,おいしそうな実が付いていて,魅力的な美しい木に見えた。それで女はそ
の木の実を取って食べ始めた。その後,一緒にいた時に夫にも渡した。夫もそれを食べ始めた。 7 すると,2
人の目は開かれ,自分たちが裸であることに気付いた。それで,イチジクの葉をつなぎ合わせて腰を覆う物を
作った。
  8 その後,そよ風が吹く頃,庭園の中を歩くエホバ神の声が聞こえた。人とその妻は,エホバ神に見つか
らないよう庭園の木々の中に隠れた。 9 エホバ神は人に何度も呼び掛けて,「どこにいるのか」と言った。
10 ついに人は言った。「庭園の中であなたの声が聞こえましたが,裸だったので怖くなって隠れました」。
11 神は言った。「裸であると誰から言われたのか。食べてはならないと命じた木の実を食べたのか」。 12
人は言った。「あなたが私に下さった女,その女がくれたので食べました」。 13 そこでエホバ神は女に言っ
た。「あなたがしたのは,いったいどういうことか」。女は答えた。「蛇が私をだましたのです。それで食べ
ました」。
  14 それからエホバ神は蛇に言った。「あなたはこうしたことを行ったので,全ての家畜と野生動物の中で
卑しいものとなる。あなたは腹ばいになって動き,生涯ずっと土を食べる。 15 そして私は,あなたと女の間,
またあなたの子孫と女の子孫の間に敵意を置く。彼はあなたの頭を砕き,あなたは彼のかかとに傷を負わせ
る」。
  16 女にはこう言った。「私はあなたの妊娠中の苦痛を大きくする。あなたは苦しみながら子供を産む。あ
なたは夫との親密さを求め,夫はあなたを支配することになる」。
  17 アダムにはこう言った。「あなたが妻の言ったことに従い,『食べてはならない』と私が命じた木の実
を食べたので,あなたのせいで地面は災いを被った。それであなたは,地面から食物を得るために生涯ずっと
苦労する。 18 地面にはいばらとアザミが生え,あなたは野の草木を食べなければならない。 19 あなたは額
に汗して食物を得,やがて地面に戻る。そこから取られたからだ。あなたは土なので土に戻るのである」。
  20 その後,アダムは妻をエバと名付けた。彼女は生きる人全ての母となるからだった。 21 エホバ神は,
アダムと妻のために皮の長い服を作り,2人に着せた。 22 それからエホバ神は言った。「人は私たちのよう
に善悪を知るようになった。人が命の木からも実を取って食べて永遠に生きるということのないために,―」。
23 エホバ神は人をエデンの園から出し,地面を耕させた。その地面から人は取られた。 24 こうして神は人
を追い出し,ケルブたちと,回転し続ける炎の剣とをエデンの園の東に配置して,命の木への道を守らせた。
  4 章
  1 さて,アダムは妻エバと関係を持ち,エバは妊娠した。エバはカインを産み,「私はエホバの助けで男
の子を産んだ」と言った。 2 その後,エバは再び子を産んだ。カインの弟アベルである。
  アベルは羊飼いとなり,カインは耕作人となった。 3 しばらく後のこと,カインは土地から得た産物の幾
らかを,エホバに捧げるために持ってきた。 4 一方,アベルは羊の初子の何匹かを脂肪部分を含めて持ってき
た。エホバはアベルとその捧げ物を好意的に見たが, 5 カインとその捧げ物は好意的には見なかった。すると
カインは激しく怒り,ふさぎ込んだ。 6 それでエホバはカインに言った。「どうしてそんなに怒って,ふさぎ
込んでいるのか。 7 善いことを行うようになれば,好意を得られるのではないか。しかし,善いことを行うよ
うにならなければ,戸口で待ち構えている罪があなたを捕らえようとする。あなたはそれを押しとどめるだろ
うか」。
  8 その後カインは弟アベルに,「野原に行こう」と言った。そして2人で野原にいる時に,弟に襲い掛か
って殺した。 9 エホバはカインに言った。「あなたの弟アベルはどこにいるのか」。カインは言った。「知り
ません。私は弟の見張り番なのでしょうか」。 10 神は言った。「あなたは何をしたのか。聞きなさい! あな
たの弟の血が地面から私に向かって叫んでいる。 11 地面はあなたが殺した弟の血を飲み込んだ。今,あなた
は災いを被り,この土地から追放される。 12 あなたは地面を耕しても,産物を思うように得られない。地上
をさまよい,放浪する」。 13 カインはエホバに言った。「私の過ちに対する処罰はあまりにも重くて,耐え
られません。 14 今日,私はあなたによってこの土地から追い出されます。あなたに見守られることはもうあ
りません。私は地上をさまよい,放浪し,誰かに見つかったなら必ず殺されるでしょう」。 15 エホバはカイ
ンに言った。「そうであれば,カインを殺す人は7倍の復讐を受けることにしよう」。
  それでエホバはカインのために1つのしるしを作り,カインが誰かに見つけられても打ち殺されることが
ないようにした。 16 こうしてカインはエホバの前から離れ,エデンの東方,逃亡の地に住み着いた。
  17 その後,カインは妻と関係を持ち,妻は妊娠してエノクを産んだ。カインは町の建設に取り掛かり,そ
の町に息子の名を付けてエノクと呼んだ。 18 エノクにはイラドが生まれた。イラドにはメフヤエルが生まれ,
メフヤエルにはメトシャエルが生まれ,メトシャエルにはレメクが生まれた。
  19 レメクは2人の女性と結婚した。1人目はアダといい,2人目はチラといった。 20 アダはヤバルを
産んだ。ヤバルは,家畜を飼う天幕生活を最初に始めた人だった。 21 ヤバルの兄弟はユバルといった。ユバ
ルは,たて琴と笛の演奏を最初に始めた人だった。 22 一方,チラはトバル・カインを産んだ。トバル・カイン
は,銅と鉄のさまざまな道具を作る鍛冶屋だった。彼の姉妹はナアマといった。 23 さて,レメクは妻のアダ
とチラに次の詩を作って聞かせた。
  「レメクの妻たち,私の声を聞け。
  私の言葉に耳を傾けよ。
  私は人を殺した。私を傷つけたからだ。
  若者を殺した。私を殴ったからだ。
  24 カインを殺すと7倍の復讐を受けるなら,
  レメクについては77倍」。
  25 アダムは再び妻と関係を持ち,妻は男の子を産んだ。彼女はその子をセツと名付けた。彼女が言うには,
「カインがアベルを殺したので,神は代わりに別の子孫を与えてくださった」からだった。 26 セツにも息子
が生まれ,セツはその子をエノシュと名付けた。その頃,人々はエホバの名を呼び始めた。
  5 章
  1 これがアダムの系譜である。神はアダムを創造した日に,アダムを神に似た者として造った。 2 神は
男性と女性を創造した。その日,神は彼らを祝福して人と名付けた。
  3 アダムが130歳の時,息子が生まれた。アダムによく似た子だった。アダムはその子をセツと名付け
た。 4 アダムは,セツが生まれてから,さらに800年生きた。ほかにも息子や娘たちが生まれた。 5 アダ
ムは930年の生涯を送り,死んだ。
  6 セツが105歳の時,エノシュが生まれた。 7 セツは,エノシュが生まれてから,さらに807年生
きた。ほかにも息子や娘たちが生まれた。 8 セツは912年の生涯を送り,死んだ。
  9 エノシュが90歳の時,ケナンが生まれた。 10 エノシュは,ケナンが生まれてから,さらに815年
生きた。ほかにも息子や娘たちが生まれた。 11 エノシュは905年の生涯を送り,死んだ。
  12 ケナンが70歳の時,マハラレルが生まれた。 13 ケナンは,マハラレルが生まれてから,さらに8
40年生きた。ほかにも息子や娘たちが生まれた。 14 ケナンは910年の生涯を送り,死んだ。
  15 マハラレルが65歳の時,ヤレドが生まれた。 16 マハラレルは,ヤレドが生まれてから,さらに8
30年生きた。ほかにも息子や娘たちが生まれた。 17 マハラレルは895年の生涯を送り,死んだ。
  18 ヤレドが162歳の時,エノクが生まれた。 19 ヤレドは,エノクが生まれてから,さらに800年
生きた。ほかにも息子や娘たちが生まれた。 20 ヤレドは962年の生涯を送り,死んだ。
  21 エノクが65歳の時,メトセラが生まれた。 22 エノクは,メトセラが生まれてから,さらに300
年,真の神と共に歩み続けた。ほかにも息子や娘たちが生まれた。 23 エノクは365年の生涯を送った。
24 エノクは真の神と共に歩み続けた後,いなくなった。神が彼を取ったからである。
  25 メトセラが187歳の時,レメクが生まれた。 26 メトセラは,レメクが生まれてから,さらに78
2年生きた。ほかにも息子や娘たちが生まれた。 27 メトセラは969年の生涯を送り,死んだ。
  28 レメクが182歳の時,息子が生まれた。 29 レメクはその子をノアと名付け,こう言った。「エホ
バが地面に災いを下したので私たちは苦労しながら働いているが,この子がそれから解放してくれるのだ」。
30 レメクは,ノアが生まれてから,さらに595年生きた。ほかにも息子や娘たちが生まれた。 31 レメク
は777年の生涯を送り,死んだ。
  32 ノアが500歳になってから,セム,ハム,ヤペテが生まれた。
  6 章
  1 さて,人が地上に増え始め,娘たちが生まれると, 2 真の神の子たちは,人の娘たちが美しいことに
気付くようになった。そして気に入った女性たちを妻にしていった。 3 エホバは言った。「私がいつまでも人
を大目に見ることはない。人は罪深いからだ。それで,人が生きるのはあと120年である」。
  4 その頃,またその後にも,地上にネフィリムがいた。真の神の子たちが人の娘たちと関係を持ち,生ま
れた子たちである。ネフィリムは,古代の人々の中でよく知られた,力の強い者たちだった。
  5 そのため,エホバは,地上の人々がひどく邪悪で,考え方全てが常に悪いのを見た。 6 エホバは,地
上に人を造ったことを嘆き,悲しんだ。 7 それでエホバは言った。「私が創造した人を地上から滅ぼそう。家
畜や空を飛ぶ生き物や地面を動く生き物も。私はこれらのものを造ったことを嘆いているからだ」。 8 しかし,
ノアはエホバからの好意を得ていた。
  9 以下はノアについての記録である。
  ノアは正しい人で,当時の人々とは異なり,非の打ちどころがない人だった。ノアは真の神と共に歩んだ。
10 やがてノアに3人の子,セム,ハム,ヤペテが生まれた。 11 一方,地上は,真の神から見て堕落してい
て,暴力があふれていた。 12 神が地上を見ると,堕落していたのである。人々は皆,非常に悪い生き方をし
ていた。
  13 神はノアに言った。「私は全ての人を滅ぼすことにした。彼らのせいで地上に暴力があふれているから
だ。私は彼らを滅ぼして地上を荒廃させる。 14 樹脂の多い木で箱船を造りなさい。箱船の中には部屋を造り,
箱船の内側と外側をタールで塗りなさい。 15 箱船は次のように造る。長さは134メートル,幅は22メー
トル,高さは13メートル。 16 上から45センチの所に採光窓を作る。箱船の側面に入り口を付け,1階,
2階,3階を造る。
  17 私は地上に洪水を起こして,息をする生き物全てを天の下から滅ぼそうとしている。地上の全てのもの
は息絶えることになる。 18 私はあなたと契約を結ぶ。あなたは,息子たち,妻,息子たちの妻と一緒に箱船
に入らなければならない。 19 そして,あらゆる種類の生き物を2匹ずつ箱船の中に入れなさい。生き物を保
護するため,雄と雌を入れるのである。 20 さまざまな種類の飛ぶ生き物,さまざまな種類の家畜,地面を動
くさまざまな種類の生き物が2匹ずつ,あなたのいる箱船に入り,保護される。 21 また,あらゆる種類の食
物を集めて持ち込みなさい。あなたと動物たちがそれを食べる」。
  22 ノアは,全て神に命じられた通りにした。まさにその通りにした。
  7 章
  1 やがてエホバはノアに言った。「あなたとあなたの家族は皆,箱船に入りなさい。あなたがこの世代の
人々とは違って正しい人であることを私は知った。 2 あなたは,あらゆる清い動物を7匹ずつ,雄と雌を入れ
なければならない。あらゆる清くない動物は2匹ずつ,雄と雌を入れなければならない。 3 空を飛ぶ生き物も
7匹ずつ,雄と雌を入れなければならない。動物たちを保護して,子孫が地球全体に広がるようにするのだ。
4 私は,7日後から40日間ずっと,昼も夜も地上に雨を降らせ,私が造った生きているもの全てを地上から
滅ぼす」。 5 ノアは,エホバが命じたことを全て行った。
  6 地上に洪水が起きたのは,ノアが600歳の時だった。 7 ノアは洪水が起きる前に,息子たち,妻,
息子たちの妻と一緒に箱船に入った。 8 清い動物,清くない動物,飛ぶ生き物と地面を動くあらゆる生き物が
9 2匹ずつ,雄と雌がノアのいる箱船に入った。神がノアに命じた通りになったのである。 10 7日後,地上
に洪水が起きた。
  11 ノアが600歳だった年,第2の月の17日,空の泉から水が勢いよく流れ出し,天の水門が開いた。
12 そして40日間ずっと,昼も夜も地上に激しい雨が降った。 13 まさにその日,ノアは箱船に入った。息
子のセムとハムとヤペテ,ノアの妻,息子たちの妻3人も一緒だった。 14 さまざまな種類の野生動物,さま
ざまな種類の家畜,地面を動くさまざまな種類の生き物,さまざまな種類の飛ぶ生き物,あらゆる鳥や羽のあ
る生き物も入った。 15 息をするあらゆる生き物が2匹ずつ,ノアのいる箱船に入っていった。 16 あらゆる
種類の生き物の雄と雌が入り,神がノアに命じた通りになった。それからエホバは扉を閉めた。
  17 洪水は40日間続いた。水は増えていって箱船を押し上げるようになり,箱船は地表よりずっと高い所
に浮かんだ。 18 水はますます増えていって膨大な量になり,箱船は水の上を漂った。 19 水かさはどんどん
増し,地球全体の高い山々が水で覆い尽くされた。 20 水の高さは,山々のおよそ7メートル上にまで達した。
  21 そのため,地上を動いていた生き物は,飛ぶ生き物も,家畜も,野生動物も,無数の小さな生き物も,
人間も全て息絶えた。 22 息をする陸の生き物全てが死んだ。 23 こうして,神は地上の生きているもの全て
を滅ぼした。人,動物,地面を動く生き物,空を飛ぶ生き物が全て地上から滅びた。生き残ったのは,ノアと,
一緒に箱船の中にいた家族や生き物だけだった。 24 水は150日間,地表をすっかり覆っていた。
  8 章
  1 神は,箱船の中にいたノアと野生動物と家畜に目を留めた。そして地上に風を吹かせた。すると水が減
り始めた。 2 空の泉と天の水門はふさがれ,天からの雨はやんだ。 3 水は徐々に引いていった。150日が
たった頃には,水は少なくなっていた。 4 第7の月の17日,箱船はアララトの山地に止まった。 5 そして
第10の月になるまで水は減り続けた。第10の月の1日に山々の頂が現れた。
  6 40日後,ノアは,箱船に作っておいた窓を開けた。 7 そしてワタリガラスを放った。ワタリガラス
は,水が乾くまで外に飛んでいっては戻ってきた。
  8 やがてノアは,地表から水が引いたかどうかを確かめるため,ハトを放った。 9 ハトは,止まる所が
どこにもなかったので,ノアのいる箱船に戻ってきた。水がまだ地球全体を覆っていたのである。ノアは手を
出してハトを箱船の中に入れた。 10 ノアは7日待ってから,もう一度そのハトを箱船から放った。 11 ハト
は夕方ごろにノアの所に帰ってきた。ハトは取ったばかりのオリーブの葉をくわえていたので,ノアは,水が
引いたことを知った。 12 さらに7日待ってからそのハトを放つと,もう戻ってこなかった。
  13 ノアが601歳だった年,第1の月の1日,水はすでにはけていた。ノアが箱船の屋根の一部を外して
見てみると,地面は乾きつつあった。 14 第2の月の27日には,すっかり乾いていた。
  15 神はノアに言った。 16 「あなたの妻,息子たち,息子たちの妻と一緒に箱船から出なさい。 17 飛
ぶ生き物も,動物も,地面を動く生き物も,あらゆる種類の生き物全てを連れ出しなさい。生き物たちが子を
生み,増えて,地上に広がるようにするためである」。
  18 ノアは,息子たち,妻,息子たちの妻と一緒に外に出た。 19 あらゆる生き物,地面を動く生き物,
飛ぶ生き物,地上を動く生き物は,種類ごとに箱船から出た。 20 それからノアはエホバのために祭壇を作り,
清い動物と清い飛ぶ生き物の幾らかを祭壇に載せ,全焼の捧げ物にした。 21 エホバは心地よい香りを嗅ぎ始
めた。それでエホバは心の中でこう言った。「私は二度と,人がしたことを理由に地面に災いを下したりはし
ない。人の考え方は子供の時から悪いのである。私は二度と,今回のように全ての生きているものを滅ぼすこ
とはしない。 22 今後,地球から,種まきと収穫,寒さと暑さ,夏と冬,昼と夜がなくなることは決してな
い」。
  9 章
  1 それから神はノアとその息子たちを祝福し,こう言った。「子を生み,増えて,地上全体に広がりなさ
い。 2 地上のあらゆる生き物と空を飛ぶあらゆる生き物,地面を動くあらゆる生き物と海の全ての魚は,これ
からもあなたたちを恐れておびえる。生き物たちは今,あなたたちの手に委ねられる。 3 生きている動物はど
れも食物にしてよい。緑の草木と同じように,それら全てをあなたたちに与える。 4 ただし,血を含む肉を食
べてはならない。血は命だからである。 5 また私は,生き物が,人の命である血を流したなら,その生き物に
責任を問う。人が自分の兄弟の命を奪ったなら,その人に責任を問う。 6 人を殺して人の血を流す者は,人に
殺されて自分の血を流すことになる。私は自分に似た者として人を造ったからである。 7 あなたたちは,子を
生み,増えて,ますます多くなり,地上に広がりなさい」。
  8 次いで神はノアとその息子たちに言った。 9 「私は今,契約を結ぶ。私と,あなたたち,あなたたち
の子孫, 10 あなたたちと共にいる全ての生き物との契約である。鳥,動物,その他の生き物など,箱船から
出た生き物,地上のあらゆる生き物があなたたちと共にいる。 11 私は確かに,あなたたちと次の契約を結ぶ。
生きているもの全てが洪水で滅ぼされることは二度とない。地上が洪水で荒廃することは二度とない」。
  12 さらに神は言った。「私があなたたちやあらゆる生き物と結ぶ,将来の全世代のための契約のしるしと
して, 13 私は雲に虹を懸ける。私と地上で生きる全てのものとの契約のしるしである。 14 私が上空に雲を
作る時,虹が雲の中に現れる。 15 私は,あなたたちやあらゆる種類の生き物と結んだ契約を決して忘れない。
生きているもの全てが洪水で滅ぼされることは二度とない。 16 雲の中に虹ができると,私は必ずそれを見て,
私と地上のあらゆる種類の生き物との永遠の契約を思い出す」。
  17 神は再びノアに言った。「これは,私が地上の生きているもの全てと結ぶ契約のしるしである」。
  18 箱船から出たノアの息子たちはセム,ハム,ヤペテだった。ハムにはやがてカナンが生まれた。 19
この3人がノアの息子で,地上に広がっていった人々は皆,この3人の子孫である。
  20 さて,ノアは農業をして暮らし,ブドウ園を造った。 21 ある時,ノアはぶどう酒を飲んで酔い,天
幕の中で裸になっていた。 22 カナンの父ハムは父親の裸を見て,外にいた2人の兄弟にそのことを告げた。
23 そこでセムとヤペテは服を取り,自分たちの肩に掛けて後ろ向きに入っていき,裸の父親に掛けた。2人は
顔を背けながらそうしたので,父親の裸を見なかった。
  24 ぶどう酒で酔って寝ていたノアは目覚め,自分に対して一番下の子が行ったことについて知って, 25
こう言った。
  「カナンは災いを受けよ。
  兄弟たちの中で最も卑しい奴隷となれ」。
  26 続けてこう言った。
  「セムの神エホバが賛美されますように。
  カナンはセムの奴隷となれ。
  27 神がヤペテに広大な土地をお与えになりますように。
  ヤペテはセムの天幕に住むようになれ。
  カナンはヤペテの奴隷ともなれ」。
  28 ノアは洪水の後,350年生きた。 29 ノアは950年の生涯を送り,死んだ。
  10 章
  1 以下は,ノアの子,セム,ハム,ヤペテの系譜である。
  洪水の後,3人に子が生まれた。 2 ヤペテの子は,ゴメル,マゴグ,マダイ,ヤワン,トバル,メシェク,
ティラス。
  3 ゴメルの子は,アシュケナズ,リファト,トガルマ。
  4 ヤワンの子は,エリシャ,タルシシュ,キッテム,ドダニム。
  5 これらの人の子孫は島々に住み,言語や種族や国民ごとに各地に広がった。
  6 ハムの子は,クシュ,ミツライム,プト,カナン。
  7 クシュの子は,セバ,ハビラ,サブタ,ラアマ,サブテカ。
  ラアマの子は,シェバ,デダン。
  8 クシュにはニムロデも生まれた。ニムロデは,地上で力を振るった最初の人だった。 9 そしてエホバ
に敵対する強い狩人になった。そのため,「エホバに敵対する強い狩人ニムロデのようだ」という言い方があ
る。 10 ニムロデの王国は当初,シナル地方にあるバベル,エレク,アッカド,カルネを治めた。 11 ニムロ
デはその地方からアッシリアに行き,ニネベ,レホボト・イル,カラハを築いた。 12 また,ニネベとカラハ
の間にレセンを築いた。大きな町である。
  13 ミツライムの子は,ルディム,アナミム,レハビム,ナフトヒム, 14 パトルシム,カスルヒム(こ
の家系からフィリスティア人が出た),カフトリム。
  15 カナンの子は,長男シドン,ヘト, 16 およびエブス人,アモリ人,ギルガシ人, 17 ヒビ人,アル
キ人,シニ人, 18 アルワド人,ツェマル人,ハマト人である。やがてカナン人の種族は散らばった。 19 カ
ナン人の領土は,シドンから,ガザに近いゲラルまで,またラシャに近いソドム,ゴモラ,アドマ,ツェボイ
イムまでだった。 20 以上が,種族,言語,国民ごとに各地に住み着いたハムの子である。
  21 セムにも子ができた。セムはエベルの子全ての父祖であり,長男ヤペテの弟である。 22 セムの子は,
エラム,アシュル,アルパクシャド,ルド,アラム。
  23 アラムの子は,ウツ,フル,ゲテル,マシュ。
  24 アルパクシャドの子はシェラハで,シェラハの子はエベル。
  25 エベルには2人の子が生まれた。一方はペレグといった。彼の生涯中に地上の人々が分けられたからだ
った。ペレグの兄弟はヨクタンといった。
  26 ヨクタンの子は,アルモダド,シェレフ,ハツァルマベト,エラハ, 27 ハドラム,ウザル,ディク
ラ, 28 オバル,アビマエル,シェバ, 29 オフィル,ハビラ,ヨバブ。これらの人は皆,ヨクタンの子であ
る。
  30 彼らは,メシャから,東方の山地のセファルまでの地域に住んだ。
  31 以上が,種族,言語,国民ごとに各地に住み着いたセムの子である。
  32 これが,家系や国民ごとに挙げたノアの子の種族である。洪水後,これらの種族の子孫が各地に広がり,
さまざまな国民となった。
  11 章
  1 さて,地上の人々は皆,1つの言語,同じ言葉を話していた。 2 人々は東に移動すると,シナル地方
に谷あいの平原を見つけ,そこに住み始めた。 3 人々はこう話し合った。「焼いてれんがを作ろう」。それで
人々は石の代わりにれんがを,モルタルの代わりに歴青を使った。 4 そして言った。「町を造り,天にまで届
く塔を建てて,われわれの名をとどろかせよう。そうすれば,われわれが地上全体に散らされることはない」。
  5 その後エホバは,人々が建てた町と塔を見ようとして下っていった。 6 エホバは言った。「彼らは1
つの言語を話し,団結している。そして,このようなことをし始めた。今や彼らはしようと思ったことを何で
もできる。 7 さあ,私たちは下っていき,言語を混乱させ,彼らが互いの言語を理解できないようにしよう」。
8 こうしてエホバは人々をそこから地上全体に散らした。人々は次第に町の建設をやめていった。 9 そこは
バベルと名付けられた。エホバがその場所で地上の人々の言語を混乱させたからである。エホバは人々をそこ
から地上全体に散らした。
  10 以下はセムの系譜である。
  洪水の2年後,セムが100歳だった時,アルパクシャドが生まれた。 11 セムは,アルパクシャドが生
まれてから,さらに500年生きた。ほかにも息子や娘たちが生まれた。
  12 アルパクシャドが35歳の時,シェラハが生まれた。 13 アルパクシャドは,シェラハが生まれてか
ら,さらに403年生きた。ほかにも息子や娘たちが生まれた。
  14 シェラハが30歳の時,エベルが生まれた。 15 シェラハは,エベルが生まれてから,さらに403
年生きた。ほかにも息子や娘たちが生まれた。
  16 エベルが34歳の時,ペレグが生まれた。 17 エベルは,ペレグが生まれてから,さらに430年生
きた。ほかにも息子や娘たちが生まれた。
  18 ペレグが30歳の時,レウが生まれた。 19 ペレグは,レウが生まれてから,さらに209年生きた。
ほかにも息子や娘たちが生まれた。
  20 レウが32歳の時,セルグが生まれた。 21 レウは,セルグが生まれてから,さらに207年生きた。
ほかにも息子や娘たちが生まれた。
  22 セルグが30歳の時,ナホルが生まれた。 23 セルグは,ナホルが生まれてから,さらに200年生
きた。ほかにも息子や娘たちが生まれた。
  24 ナホルが29歳の時,テラが生まれた。 25 ナホルは,テラが生まれてから,さらに119年生きた。
ほかにも息子や娘たちが生まれた。
  26 テラが70歳になってから,アブラム,ナホル,ハランが生まれた。
  27 以下はテラについての記録である。
  テラにはアブラム,ナホル,ハランが生まれた。ハランにはロトが生まれた。 28 ハランは,出生地であ
るカルデア人の町ウルで死んだ。父テラがまだ生きている時だった。 29 アブラムとナホルはそれぞれ結婚し
た。アブラムの妻はサライといった。ナホルの妻はミルカといい,ハランの娘だった。ハランにはミルカとイ
スカという娘がいた。 30 サライは子供ができなかった。
  31 ある時,テラは,息子アブラムと,ハランの息子である孫ロトと,アブラムの妻である嫁サライを連れ,
カルデア人の町ウルを出てカナン地方に向かった。一行はやがてハランに着き,そこに住み始めた。 32 テラ
は205年生き,ハランで死んだ。
  12 章
  1 エホバはアブラムに言った。「あなたが住んでいる土地を出て,あなたの親族と父の家族から離れ,私
が示す土地に行きなさい。 2 私は,あなたから偉大な国民が生まれるようにし,あなたを祝福し,あなたの名
を偉大なものにしよう。あなたを通して人々は祝福を受ける。 3 私は,あなたに祝福があることを願い求める
人たちを祝福し,あなたに不幸があることを願い求める人に災いをもたらす。あなたによって地上の家族全て
が必ず祝福を受ける」。
  4 アブラムはエホバに言われた通りに旅立った。ロトも一緒だった。アブラムは,75歳の時にハランを
出た。 5 妻のサライ,おいのロト,蓄えてきた財産とハランで得た召し使いたちと共に,カナン地方に向かっ
た。カナン地方に入ると, 6 アブラムは進んでいき,シェケムの所,モレの大木林の近くに来た。当時,その
地方にはカナン人がいた。 7 エホバがアブラムに現れて,こう言った。「私はこの地方をあなたの子孫に与え
よう」。それでアブラムは,自分に現れたエホバのためにそこに祭壇を作った。 8 やがてアブラムはそこから
ベテルの東の山地に移動し,ベテルを西,アイを東にして天幕を張った。そしてエホバのためにそこに祭壇を
作り,エホバの名を呼んだ。 9 その後,アブラムは天幕を畳んでネゲブに向けて出発し,宿営を移動させなが
ら進んだ。
  10 さて,その地方で飢饉が起きた。飢饉は深刻だったので,アブラムは一時的に住む場所を求めてエジプ
トに向かった。 11 エジプトに入ろうとしていた時,アブラムは妻サライに言った。「ちょっと聞いてほしい。
あなたはとても美しい。 12 だから,あなたを見たエジプト人は,『この人はあの男の妻だ』と言い,私を殺
してあなたを生かしておくだろう。 13 それで,私の妹だと言ってくれないか。そうすれば,私は無事でいら
れる。あなたのおかげで,死なずに済むのだ」。
  14 アブラムがエジプトに入るとすぐ,エジプト人はサライを見て,非常に美しいと思った。 15 ファラ
オに仕える高官たちも彼女を見た。そしてファラオの前で彼女のことを褒めるようになった。そのため,サラ
イはファラオの家に招き入れられた。 16 ファラオはサライを気に入ったため,アブラムに良い待遇をし,羊,
牛,ロバ,男女の召し使い,ラクダを与えた。 17 そこでエホバは,アブラムの妻サライのことで,ファラオ
とその家の人たちに大きな災厄をもたらした。 18 それでファラオはアブラムを呼んで,こう言った。「何と
いうことをしてくれたのだ。彼女は自分の妻だ,とどうして私に言わなかったのか。 19 どうして,『妹で
す』などと言ったのか。彼女を私の妻にするところだった。さあ,あなたの妻を連れて,出ていきなさい!」
20 ファラオは家来たちに命じて,アブラムと妻,アブラムの全てのものを送り出させた。
  13 章
  1 アブラムは,妻と全てのものと共に,エジプトを出てネゲブに行った。ロトも一緒だった。 2 アブラ
ムは家畜と銀と金をたくさん持っていた。 3 アブラムはネゲブを出て,宿営を移動させながらベテルに向かっ
た。そして,ベテルとアイの間の,天幕を張ったことがある場所に着いた。 4 以前,祭壇を作った場所である。
そこでエホバの名を呼んだ。
  5 さて,アブラムと一緒に旅をしていたロトも,羊と牛と天幕を持っていた。 6 その一帯は,皆が生活
するには狭過ぎた。彼らの財産が増えたため,もう皆で一緒に住むことはできなくなっていたのである。 7 そ
のため,アブラムの家畜の世話係とロトの家畜の世話係との間に言い争いが起きた。(当時,カナン人とペリ
ジ人がその地方に住んでいた。) 8 アブラムはロトに言った。「聞いてください。私とあなた,また家畜の世
話係同士の間に言い争いがあるのはよくありません。私たちは兄弟なのですから。 9 どこでも好きな地域を選
んでください。別々に暮らしましょう。あなたが左に行くのであれば,私は右に行きます。あなたが右に行く
のであれば,私は左に行きます」。 10 ロトは目を上げ,ゾアルまでのヨルダン地域全体を見た。そこは水が
豊かで,エホバの園のようであり,エジプトのようでもあった。(エホバがソドムとゴモラを滅ぼす前のこと
だった。) 11 そこでロトはヨルダン地域全体を選び,宿営を東方に移動させた。こうして彼らは別れた。
12 アブラムはカナン地方に住み,ロトはヨルダン地域の町々の辺りに住んだ。やがてロトはソドムの近くに天
幕を張った。 13 ソドムの人たちは邪悪で,エホバに対して甚だしい罪を犯していた。
  14 ロトがアブラムと別れた後,エホバはアブラムに言った。「目を上げ,東と西,北と南をご覧なさい。
15 あなたが見ている土地全体を,私はあなたとあなたの子孫に与えよう。そこはずっとあなたたちのものにな
る。 16 私はあなたの子孫を大地の砂のように多くしよう。砂の粒を数え切ることができないように,あなた
の子孫も数え切れないほどになる。 17 さあ,その土地の至る所を巡りなさい。あなたにそれを与えるから
だ」。 18 それでアブラムは天幕生活を続けた。やがて,ヘブロンにあるマムレの大木林のそばに行き,そこ
に住んだ。そしてエホバのためにそこに祭壇を作った。
  14 章
  1 さて,アムラフェルがシナルの王,アルヨクがエラサルの王,ケドルラオメルがエラムの王,ティドア
ルがゴイムの王だった時代に, 2 それらの王が5人の王と戦った。ソドムの王ベラ,ゴモラの王ビルシャ,ア
ドマの王シヌアブ,ツェボイイムの王シェムエベル,ベラ(ゾアルとも呼ばれる)の王である。 3 王たちは,
シディムの谷つまり塩の海で,連合軍を組んだ。
  4 5人の王はかつて12年間ケドルラオメルに仕えたが,13年目に反逆した。 5 14年目に,ケドル
ラオメルとその味方をした王たちは進軍し,アシュテロト・カルナイムでレファイム人を,ハムでズジム人を,
シャベ・キルヤタイムでエミム人を打ち破り, 6 セイルの山にいるホリ人を攻めて,荒野に面したエル・パラ
ンで制圧した。 7 それから彼らは引き返してエン・ミシュパトつまりカデシュに着き,アマレク人の全領土を
征服し,ハザゾン・タマルに住んでいたアモリ人も打ち破った。
  8 今やソドムの王,ゴモラの王,アドマの王,ツェボイイムの王,ベラ(ゾアルとも呼ばれる)の王は進
軍し,シディムの谷で彼らに対して戦闘隊形を組んだ。 9 5人の王が,エラムの王ケドルラオメル,ゴイムの
王ティドアル,シナルの王アムラフェル,エラサルの王アルヨクという4人の王と相対したのである。 10 戦
いの結果,ソドムとゴモラの王たちは逃げようとしたが,歴青の穴に落ちた。シディムの谷には歴青の穴が至
る所にあったのである。一方,山地に逃れた人もいた。 11 その後,勝利した4人の王は,ソドムとゴモラの
財産や食料を全て奪っていった。 12 アブラムのおいロトとロトの財産も奪っていった。ロトはその時ソドム
に住んでいたのである。
  13 逃げ延びたある人がヘブライ人アブラムの所にやって来て,起きたことを話した。アブラムはその時,
アモリ人マムレの大木林のそばに住んでいた。マムレはエシュコルとアネルの兄弟で,アブラムは彼らと同盟
を結んでいた。 14 アブラムは,親族が捕虜にされたことを聞くと,彼の家で生まれて訓練された従者318
人を集め,ダンまで追い掛けた。 15 アブラムは夜に従者たちの部隊を分け,敵たちを攻めて打ち破った。そ
してダマスカスの北のホバまで敵たちを追っていった。 16 アブラムはあらゆるものを取り戻した。親族のロ
トとその財産,女性たちと他の人たちを取り戻した。
  17 アブラムがケドルラオメルとその味方をした王たちを打ち破り,戻ってくると,ソドムの王はシャベの
谷つまり王の谷まで出ていき,アブラムを迎えた。 18 また,サレムの王メルキゼデクはパンとぶどう酒を持
ってきた。メルキゼデクは至高の神に仕える祭司だった。
  19 メルキゼデクはアブラムを祝福し,こう言った。
  「至高の神,天地を造った方によって,
  アブラムが祝福されますように。
  20 神は,あなたを虐げた人たちをあなたの手に渡されました。
  至高の神が賛美されますように」。
  アブラムは,取り返した全ての物の10分の1をメルキゼデクに渡した。
  21 ソドムの王はアブラムに言った。「人は私に渡してください。物はあなたが取ってください」。 22
アブラムはソドムの王に言った。「私は,至高の神エホバ,天地を造った方の前で,手を挙げて誓います。 23
糸であれサンダルのひもであれ,あなたのものは何一つ受け取りません。そうすれば,あなたが,『私のおか
げでアブラムは裕福になったのだ』と言うことはないでしょう。 24 私の方は,若者たちがすでに食べた物以
外は何も要りません。私と一緒に行ってくれた人たち,アネル,エシュコル,マムレには,分け前を取らせて
あげてください」。
  15 章
  1 こうしたことの後,アブラムは幻の中で,次のようなエホバの言葉を聞いた。「アブラム,恐れてはい
けない。私はあなたの盾だ。あなたは非常に大きな報いを得る」。 2 アブラムは答えた。「主権者である主エ
ホバ,あなたは私に何を下さるのでしょうか。いまだに私には子供がおらず,私の家はダマスカスの人エリエ
ゼルが継ぐことになっています」。 3 アブラムはさらに言った。「あなたが私に子孫を与えてくださらなかっ
たので,私の家の者が跡を継ぐことになっています」。 4 エホバの答えはこうだった。「あなたの跡を継ぐの
はその人ではなく,あなたの実の子だ」。
  5 神はアブラムを外に連れていき,こう言った。「天を見上げ,星を数えてごらんなさい。もしも数える
ことができるのなら」。そして言った。「あなたの子孫も星のように多くなる」。 6 そこでアブラムはエホバ
に信仰を持った。神はそのことを正しいと見なした。 7 それからアブラムに言った。「私エホバは,この地方
を与えるためにあなたをカルデア人の町ウルから連れ出した」。 8 アブラムは言った。「主権者である主エホ
バ,私がこの地方を所有するとどうすれば確信できるでしょうか」。 9 神は答えた。「私のために,3歳の雌
牛,3歳の雌ヤギ,3歳の雄羊,ヤマバト,若いイエバトを持ってきなさい」。 10 それでアブラムはその全
てを持ってきて,それらを2つに切り裂き,それぞれを向かい合うように置いた。しかし鳥は切り裂かなかっ
た。 11 肉食の鳥が死骸の上に降りてきたので,アブラムは何度も追い払った。
  12 日が沈みかけた頃,アブラムは深い眠りに落ちた。そして恐ろしい暗闇に包まれた。 13 すると神は
アブラムに言った。「必ず,あなたの子孫は,よその国で外国人として暮らすことになる。そこの人々の奴隷
になり,400年間苦しむ。 14 しかし,私はあなたの子孫を奴隷にした国民を処罰する。そして,あなたの
子孫は多くの財産を持ってそこを出る。 15 あなた自身は,長生きした後,死の眠りに就き,父祖たちのよう
に葬られる。 16 あなたの子孫がここに戻ってくるのは,4代目になってからのことだ。アモリ人が処罰され
る時はまだ来ていないからだ」。
  17 日が沈み,辺りは真っ暗になった。すると煙の立つ炉が現れ,燃えるたいまつが,2つに切り裂かれた
動物の間を通った。 18 その日,エホバはアブラムと契約を結び,こう言った。「私はあなたの子孫に,エジ
プトの川から大河ユーフラテスまでの土地を与えよう。 19 ケニ人,ケナズ人,カドモニ人の土地, 20 ヘト
人,ペリジ人,レファイム人の土地, 21 アモリ人,カナン人,ギルガシ人,エブス人の土地である」。
  16 章
  1 さて,アブラムの妻サライは子供を一人も産んでいなかった。サライには,エジプト人の召し使いがい
た。名前はハガルといった。 2 そこでサライはアブラムにこう言った。「お願いがあります。エホバは,私が
子供を産まないようにしておられます。それで,私の召し使いと関係を持ってください。私は彼女によって子
供を持てるかもしれません」。アブラムはサライが言ったことを聞き入れた。 3 アブラムの妻サライは,エジ
プト人の召し使いハガルを連れていき,夫アブラムに妻として与えた。アブラムがカナン地方に住んで10年
がたった頃のことだった。 4 こうしてアブラムはハガルと関係を持ち,ハガルは妊娠した。ハガルは妊娠した
ことが分かると,女主人を見下すようになった。
  5 サライはアブラムに言った。「私が傷ついたのはあなたの責任です。召し使いをあなたに与えたのは私
ですが,彼女は妊娠したことが分かると,私を見下すようになりました。エホバが私とあなたを裁いてくださ
いますように」。 6 アブラムはサライに言った。「あなたの召し使いのことは,あなたが決めることができる。
あなたが良いと思う通りにしなさい」。それでサライはハガルを手厳しく扱い,ハガルは逃げていった。
  7 その後,エホバの天使が,荒野の泉,シュルへの道にある泉の所でハガルを見つけた。 8 そしてこう
言った。「サライの召し使いハガル,あなたはどこから来たのですか。どこへ行くのですか」。ハガルは言っ
た。「女主人サライのもとから逃げているところです」。 9 するとエホバの天使は言った。「女主人のもとに
帰って,謙遜になりなさい」。 10 それからエホバの天使は言った。「私はあなたの子孫を非常に多くし,数
え切れないほどにします」。 11 エホバの天使はさらに言った。「今あなたは妊娠していて,やがて男の子を
産みます。その子をイシュマエルと名付けなければなりません。エホバがあなたの苦悩について聞いたからで
す。 12 あなたの子は,野ロバのような人になります。彼は誰にでも敵対し,誰もが彼に敵対します。彼は兄
弟たちの向かい側に住みます」。
  13 ハガルは自分に語り掛けていた方エホバの名を呼び,「あなたは全てをご覧になる神です」と言った。
そして,「私を見ていてくださる方を,私はここで実際に見た」と言った。 14 それで,その井戸はベエル・
ラハイ・ロイと呼ばれた。(カデシュとベレドの間にある。) 15 ハガルは男の子を産み,アブラムはその子
をイシュマエルと名付けた。 16 ハガルがイシュマエルを産んだ時,アブラムは86歳だった。
  17 章
  1 アブラムが99歳の時,エホバはアブラムに現れて,こう言った。「私は全能の神である。私の道を歩
み,非の打ちどころがない人になりなさい。 2 私は,あなたとの契約を確かなものとし,あなたに非常に多く
の子孫を与える」。
  3 アブラムはひれ伏した。神は続けてアブラムに言った。 4 「私の契約はあなたとのものであり,あな
たは必ず,多くの国の人々の父祖となる。 5 あなたの名前はアブラムではなく,アブラハムとなる。私はあな
たを多くの国の人々の父祖とするからだ。 6 あなたの子孫を非常に多くし,あなたから幾つもの国民が生まれ
るようにする。あなたの子孫から王たちが出る。
  7 私は,あなたやあなたの後の世代の子孫との契約を守る。私があなたとあなたの子孫の神となるための
永遠の契約である。 8 私は,あなたとあなたの子孫に,あなたが外国人として住んでいる土地,つまりカナン
全土を与える。そこはずっとあなたたちのものになる。そして私はあなたの子孫の神となる」。
  9 神はアブラハムにさらに言った。「あなたも私の契約を守りなさい。あなたも,あなたの後の世代の子
孫もである。 10 私とあなたたちとの契約,あなたとあなたの子孫が守る契約は,次の通りである。男性は皆,
割礼を受けなければならない。 11 あなたたちは包皮に割礼を施さなければならず,それが私とあなたたちと
の契約のしるしとなる。 12 後の世代にわたり,男の子は皆,生後8日目に割礼を受けなければならない。家
で生まれた人も,外国人から買われた,あなたの子孫ではない人もである。 13 あなたの家で生まれた人,あ
なたに買われた人は皆,割礼を受けなければならない。あなたたちの体に関するこの契約は,ずっと続く契約
である。 14 自分の包皮に割礼を施さない男性は,民の中から除かれなければならない。その人は私の契約を
破ったからだ」。
  15 そして神はアブラハムに言った。「あなたの妻を,もうサライと呼んではいけない。彼女の名前はサラ
になるからだ。 16 私は彼女を祝福し,彼女によってあなたに男の子を与える。彼女を祝福し,彼女から幾つ
もの国民が生まれるようにしよう。彼女の子孫から王たちが出る」。 17 アブラハムはひれ伏した。そして笑
いだし,心の中でこう言った。「100歳の人に子供が生まれるだろうか。サラが,90歳にもなる女性が,
子供を産むだろうか」。
  18 アブラハムは真の神に言った。「どうか,イシュマエルを祝福してくださいますように」。 19 神は
言った。「あなたの妻サラは必ずあなたの子を産む。あなたはその子をイサクと名付けなければいけない。私
は,私の契約をその子との間で確かなものとする。その子の子孫にも及ぶ永遠の契約である。 20 とはいえイ
シュマエルに関しても,あなたの願いを聞き入れよう。彼を祝福し,彼の子孫がたくさん生まれ,非常に多く
なるようにしよう。彼から長が12人出て,偉大な国民が生まれる。 21 しかし,私の契約については,イサ
クとの間で確かなものとする。サラは来年の今ごろ出産する」。
  22 神は話し終えると,アブラハムの所から去った。 23 そこでアブラハムは,息子イシュマエル,自分
の家で生まれた人たち,買い取った人たちなど,アブラハムの家の男性全員を集めた。そしてその日のうちに,
神に言われた通り,それらの人たちの包皮に割礼を施した。 24 アブラハムは,包皮に割礼を受けた時,99
歳だった。 25 息子のイシュマエルは,包皮に割礼を受けた時,13歳だった。 26 まさにその日のうちに,
アブラハムも息子イシュマエルも割礼を受けた。 27 また,アブラハムの家の男性は皆,その家に生まれた人
も外国人から買われた人も,アブラハムと共に割礼を受けた。
  18 章
  1 その後,エホバはマムレの大木林のそばでアブラハムの前に現れた。昼の暑い頃,アブラハムが天幕の
入り口に座っていた時のことだった。 2 アブラハムが目を上げると,少し離れた所に3人の人が立っているの
が見えた。それでその人たちを迎えるために走っていき,ひれ伏した。 3 そしてこう言った。「エホバ,私が
もしあなたの好意を得ていましたら,どうか,私の前を通り過ぎないでください。 4 水を少し持ってきますの
で,皆さんの足を洗わせてください。そして木の下で休んでいってください。 5 せっかく来られたのです。パ
ンもお持ちしますので,召し上がって疲れを癒やし,旅をお続けください」。するとその人たちは言った。
「分かりました。そのようにしてください」。
  6 アブラハムは天幕にいるサラの所に急いで行って,こう言った。「上等の麦粉3杯分をこねて,パンを
作ってくれないか。急いでほしい」。 7 それからアブラハムは家畜の群れの所に走っていき,柔らかくて上質
の若い牛を選んで召し使いに渡し,調理に急いで取り掛からせた。 8 その後,バターとミルクと調理した肉を
持ってきて3人に出した。その人たちが食べている間は,そばの木の下で立っていた。
  9 彼らはアブラハムに言った。「あなたの妻サラはどこにいるのですか」。アブラハムは,「この天幕の
中におります」と答えた。 10 3人のうちの1人が言った。「来年の今ごろ,私は必ずあなたの所にまた来ま
す。あなたの妻サラには男の子が生まれます」。その時,天幕の入り口にいたサラは,後ろで聞いていた。 11
アブラハムとサラは非常に高齢で,サラはもう子供ができる年齢を過ぎていた。 12 そのためサラは心の中で
笑いだしてこう言った。「私はすっかり衰え,主人も年老いているのに,そんなにうれしいことがあるのかし
ら」。 13 するとエホバはアブラハムに言った。「サラが笑って,『年老いた私が本当に子供を産めるのだろ
うか』と言ったのはどうしてですか。 14 エホバにとって不可能なことなどあるでしょうか。来年の今ごろ,
私はあなたの所にまた来ます。サラには男の子が生まれます」。 15 しかしサラは,「私は笑っていませ
ん!」と言った。恐れていたのである。神は言った。「いいえ,あなたは笑いました」。
  16 3人は立ち上がって出発し,ソドムの方を見下ろした。アブラハムも,見送りのために一緒に歩いてい
た。 17 エホバは言った。「私は,行おうとしていることをアブラハムから隠しません。 18 アブラハムから
偉大な強い国民が必ず生まれ,アブラハムによって地上の全ての国民が祝福を受けます。 19 私はアブラハム
のことをよく知るようになりました。それは,アブラハムの命令によって,アブラハムの子孫やその家の人た
ちが正しく公正なことを行い,エホバの道を守るようにするためでした。そのようにして,エホバはアブラハ
ムに関して約束した事柄を実現させるのです」。
  20 そこでエホバは言った。「ソドムとゴモラの罪は極めて重く,彼らについての苦情の叫びはあまりにも
大きいです。 21 私は下っていって確かめます。私に届いた叫び通りのことが起きているかどうかを知りたい
のです」。
  22 ここで2人がその場を離れ,ソドムの方に向かった。しかしエホバはアブラハムの所に残った。 23
それでアブラハムは近づいてこう言った。「あなたは本当に,邪悪な人と一緒に正しい人も滅ぼされるのです
か。 24 もし町の中に正しい人が50人いるとしたらどうでしょうか。それでも滅ぼされますか。50人の正
しい人のためにその町を容赦することはされないのでしょうか。 25 邪悪な人と一緒に正しい人も滅ぼして,
正しい人と邪悪な人を同じ目に遭わせるようなことを,あなたがなさるはずはありません。あなたに限ってあ
り得ないことです。地上の人全てを裁く方は,正しいことを行われるのではありませんか」。 26 エホバは言
った。「ソドムの町に正しい人が50人いるなら,その人たちのために町全体を容赦しましょう」。 27 アブ
ラハムは再び言った。「エホバ,お願いです。土と灰にすぎない私ですが,申し上げさせてください。 28 も
し正しい人の数が50人に5人足りないとしたらどうでしょうか。5人足りないので町全体を滅ぼされます
か」。神は言った。「45人いるなら,滅ぼしません」。
  29 アブラハムはさらに言った。「もし40人だとしたらどうでしょうか」。神は答えた。「その40人の
ために,滅ぼすことはしません」。 30 アブラハムは続けた。「エホバ,どうか,お怒りにならずに聞いてく
ださい。もし30人しかいないとしたらどうでしょうか」。神は答えた。「30人いるなら,滅ぼしません」。
31 アブラハムはさらに続けた。「エホバ,お願いです。申し上げさせてください。もし20人しかいないと
したらどうでしょうか」。神は答えた。「その20人のために,滅ぼすことはしません」。 32 アブラハムは
言った。「エホバ,どうか,お怒りにならずにもう一度だけ聞いてください。もし10人しかいないとしたら
どうでしょうか」。神は答えた。「その10人のために,滅ぼすことはしません」。 33 エホバは話し終える
と去っていき,アブラハムは天幕に帰った。
  19 章
  1 さて,2人の天使は夕方にソドムに着いた。ロトはソドムの門の所に座っていた。2人を見掛けると,
立ち上がって迎え,ひれ伏した。 2 そしてこう言った。「どうぞ私の家に来て,ぜひ泊まっていってください。
足をお洗いします。朝になったら,早く起きて旅をお続けください」。2人は言った。「いいえ,結構です。
広場で夜を過ごすことにします」。 3 しかしロトがしきりに勧めたので,2人はロトと一緒に家に入った。ロ
トはごちそうを作り,無酵母パンを焼き,2人は食べた。
  4 彼らが床に就く前,町の男たちがやって来た。少年から老人までソドムの男たちが集団になって家を取
り囲んだのである。 5 男たちはロトに向かって叫び続け,こう言った。「今夜おまえの所に来た者たちはどこ
だ。彼らを渡せ。われわれは彼らと寝るのだ」。
  6 ロトは戸口から出て男たちの前に立ち,戸を閉めた。 7 そして言った。「私の兄弟たち,どうか悪い
ことはしないでください。 8 お願いです。私には,男性と関係を持ったことがない娘が2人います。2人を差
し出しますから,どうぞいいようにしてください。でも,あの方たちには何もしないでください。私の屋根の
下に来られた大切なお客さまなのです」。 9 すると男たちは言った。「どけ!」 そしてさらに言った。「こ
いつはここに住み着いたよそ者のくせに,われわれを裁こうとしている。あいつらよりおまえをひどい目に遭
わせてやろう」。男たちはロトに激しく詰め寄り,戸を押し破ろうとして迫った。 10 すると,家にいた客た
ちは手を差し出してロトを家の中に引き入れ,戸を閉めた。 11 そして,老若を問わず,戸口の前にいた男た
ちの目を見えなくした。そのため男たちは戸口を見つけようとして疲れ果てた。
  12 客たちはロトに言った。「ほかにあなたの親族はいますか。婿であれ息子であれ娘であれ,町にいるあ
なたの親族を皆,ここから連れ出しなさい! 13 私たちはこの場所を滅ぼそうとしています。ここの住民につ
いての苦情の大きな叫びがエホバに届いたので,エホバはこの町を滅ぼすために私たちを遣わされたのです」。
14 それでロトは出ていき,娘たちと結婚することになっていた婿たちに何度もこう言った。「急いで,ここ
から出なさい! エホバがこの町を滅ぼされます」。しかし,婿たちには,ロトが冗談を言っているようにしか
思えなかった。
  15 夜が明ける頃,天使たちはロトをせかして,こう言った。「急いで,妻と娘たち2人を連れて出なさい!
この町の過ちのためにあなたが除き去られることがあってはいけません」。 16 ロトがぐずぐずしていると,
その人たちはロトと妻と娘たちの手をつかみ,町の外に連れ出した。エホバがロトを思いやったのである。 17
町の外に連れ出すとすぐにそのうちの1人は言った。「生き延びるために逃げなさい! 後ろを振り返ってはい
けません。この地域のどこに立ち止まってもいけません。除き去られないよう,山地に逃げなさい!」
  18 ロトはその人たちに言った。「エホバ,お願いです。そこは無理です! 19 あなたは私を好意的に見
てくださり,大きな親切を示して命を助けてくださいました。ですが,山地には逃げられません。災難に遭っ
て死ぬのが怖いのです。 20 近くにあるあの町になら,逃げられます。ただの小さな町です。どうか,そこに
逃げさせていただけませんか。ただの小さな町です。そこに逃げれば,生き延びられます」。 21 すると1人
が言った。「いいでしょう。その願いを聞き入れます。あなたが言った町は滅ぼしません。 22 急いでそこに
逃げなさい! あなたがそこに着かないことには,私は何もできないからです」。こういう訳で,その町はゾア
ルと名付けられた。
  23 日が昇った頃,ロトはゾアルに着いた。 24 そこでエホバはソドムとゴモラに硫黄と火を降らせた。
エホバのもとから,天から硫黄と火が降ったのである。 25 こうしてその町々を滅ぼした。その地域全体を,
住民も植物も皆,滅ぼした。 26 一方,ロトの後ろにいた妻は振り返ったため,塩の柱になった。
  27 さて,アブラハムは朝早く起きて,以前エホバの前に立った場所に行った。 28 ソドムとゴモラとそ
の地域全体を見ると,恐ろしいことになっていた。窯から出るような濃い煙がその一帯から立ち上っていたの
である。 29 神はその地域の町を滅ぼした時,アブラハムのことを気に掛け,ロトをそこから助け出した。住
んでいた町から出られるようにしたのである。
  30 やがてロトは娘2人と一緒にゾアルから山地に行き,そこに住むようになった。ゾアルに住んでいるの
が怖くなったのである。3人は洞窟に住み始めた。 31 姉が妹に言った。「父は年老いていますし,この辺り
には,世のしきたりに従って私たちと関係を持つ男の人がいません。 32 父にぶどう酒を飲ませて父と寝て,
父の子孫が絶たれないようにしましょう」。
  33 その夜,彼女たちは父にぶどう酒をたくさん飲ませた。それから上の娘が父の所に行って父と寝た。ロ
トは娘が寝たことも起きたことも知らなかった。 34 次の日,姉は妹に言った。「私は昨夜,父と寝ました。
今夜もぶどう酒を飲ませましょう。その後,あなたが父の所に行って父と寝なさい。父の子孫が絶たれないよ
うにしましょう」。 35 その夜も,彼女たちは父にぶどう酒をたくさん飲ませた。それから下の娘が行って父
と寝た。ロトは娘が寝たことも起きたことも知らなかった。 36 こうしてロトの娘たちは父によって妊娠した。
37 やがて上の娘は男の子を産み,モアブと名付けた。その子が現在のモアブ人の父祖である。 38 下の娘も
男の子を産み,ベン・アミと名付けた。その子が現在のアンモン人の父祖である。
  20 章
  1 さて,アブラハムはネゲブ地方に宿営を移動させ,カデシュとシュルの間に住むようになった。ゲラル
に住んでいた時, 2 アブラハムは妻のサラのことを「私の妹です」と言っていた。そこでゲラルの王アビメレ
クはサラを連れてこさせた。 3 その後,神は夜に夢の中でアビメレクの所に来て,こう言った。「あなたが連
れてきた女性がもとで,あなたは死んだも同然である。彼女は結婚しており,別の男性のものだからだ」。 4
アビメレクはまだサラに近づいてはいなかったので,こう言った。「エホバ,あなたは無実の国民を殺される
のですか。 5 彼は私に,『あの人は妹です』と言ったではありませんか。彼女の方も,『あの人は兄です』と
言ったのではないでしょうか。私は何の悪気もありませんでした。悪いことをしているなどとは思っていなか
ったのです」。 6 真の神は夢の中でアビメレクに言った。「悪気がなかったことは知っていた。だからこそ私
は,あなたが私に対して罪を犯すことがないようにしていた。彼女に触れさせなかったのだ。 7 今すぐ,あの
男性の妻を返しなさい。彼は預言者なので,あなたのために祈願をしてくれて,あなたは生き続ける。しかし,
彼女を返さないなら,あなたもあなたの家の人たちも皆,必ず死ぬことになる」。
  8 アビメレクは朝早く起き,家来たち全員を呼んで,起きたことを全部話した。すると家来たちは非常に
恐れた。 9 それからアビメレクはアブラハムを呼んで,こう言った。「何ということをしてくれたのだ。私が
あなたにどんな悪いことをしたというので,あなたは私と私の王国をこんなにひどい目に遭わせたのか。あな
たがしたことは間違っている」。 10 アビメレクは続けて言った。「どういうつもりでこのようなことをした
のか」。 11 アブラハムは言った。「私はこう思ったのです。『ここの人たちには,神への畏れがない。だか
ら私は,妻を奪おうとする人たちに殺されるだろう』。 12 それに,彼女は実際に私の妹なのです。私の父の
娘であり,母が違うだけです。妹が私の妻になったのです。 13 それで,神に命じられて父の家族から離れ,
旅を始めた時,私は彼女にこう言いました。『どこへ行くとしても,私のことを「兄です」と言ってくれない
か。そうすることで,私への揺るぎない愛を示してほしい』」。
  14 アビメレクは,羊,牛,男女の召し使いを連れてきて,アブラハムに与え,妻サラを返した。 15 ア
ビメレクは言った。「私の土地から好きな場所を選び,そこに住みなさい」。 16 サラにはこう言った。「お
兄さんに銀1000枚を与えます。それは,あなたが潔白であることを,あなたと共にいる人たちだけでなく
全ての人に示す証拠です。あなたには非難されるようなところは何もありません」。 17 そこで,アブラハム
は真の神に祈願し始めた。すると,神はアビメレクとその妻と女奴隷たちを癒やし,その女性たちは子を産む
ようになった。 18 エホバは,アブラハムの妻サラのことで,アビメレクの家のどの女性にも子供ができない
ようにしていたのである。
  21 章
  1 エホバは以前に語った通り,サラに注意を向けた。エホバは約束していたことをサラのために行った。
2 それでサラは妊娠し,神が約束していた時に,老齢のアブラハムの子を産んだ。 3 アブラハムは,生まれ
た息子,サラが産んだ子をイサクと名付けた。 4 そして神に命じられた通り,生後8日目にイサクに割礼を施
した。 5 息子イサクが生まれた時,アブラハムは100歳だった。 6 その時サラは言った。「神は私に笑い
を与えてくださった。このことを聞いた人は皆,きっと私と一緒に笑う」。 7 続けてこう言った。「『サラは
必ず子供を育てるようになる』なんて,誰がアブラハムに言えただろう。それでも私は,年老いたあの人の子
を産んだ」。
  8 やがてその子は成長し,乳離れした。そこでアブラハムはイサクの乳離れの日に盛大な宴を催した。 9
ところでサラは,エジプト人ハガルの子,ハガルが産んだアブラハムの子が,イサクをからかっているのに気
付いていた。 10 それでサラはアブラハムに言った。「あの女奴隷とあの子を追い出してください! あの女奴
隷の子が,私の子イサクと一緒に相続人になることはないのですから」。 11 アブラハムにとって,自分の息
子についてサラに言われた事は,とても不愉快だった。 12 すると神はアブラハムに言った。「あの子とあな
たの女奴隷についてサラが言っている事を不愉快に思ってはいけない。彼女の願いを聞き入れなさい。あなた
の子孫と呼ばれる者はイサクから出るからだ。 13 私は,女奴隷の子からも国民が生まれるようにする。彼も
あなたの子孫だからだ」。
  14 それでアブラハムは朝早く起き,パンと,水を入れた革袋を用意し,ハガルに与えた。それらをハガル
の肩に掛け,子供と一緒に送り出した。ハガルは出ていき,ベエル・シェバの荒野をさまよった。 15 やがて
革袋の水はなくなり,ハガルは子供を茂みの中に置き去りにした。 16 そして弓を射れば届くほどの所まで離
れていき,1人で座り,「あの子が死ぬのは見たくない」と言った。こうしてハガルは離れた所に座り,声を
上げて泣きだした。
  17 神は子供の声を聞き,神の天使が天からハガルを呼んでこう言った。「ハガル,どうしたのですか。恐
れてはいけません。神はあそこにいるあなたの子供の声を聞きました。 18 立ち上がりなさい。あの子を起き
上がらせ,あなたの手で支えなさい。私は彼から偉大な国民が生まれるようにするからです」。 19 それから
神はハガルに井戸を見つけさせ,ハガルはそこに行って革袋に水をいっぱい入れ,息子に飲ませた。 20 そし
て神は,その子が成長する間,その子とずっと共にいた。彼は荒野に住み,弓を射る人となった。 21 彼はパ
ランの荒野に住み,母親は彼のためにエジプトから妻を迎えた。
  22 その頃,アビメレクと軍隊の長フィコルがアブラハムに言った。「あなたが何をする時も,神はあなた
と共にいます。 23 ですから今ここで,私と私の子孫を裏切ったりしないと,神に懸けて誓ってください。そ
して,私があなたに親切にしたように,あなたも,私と,あなたが住んできた土地の人とに親切にすることを
誓ってください」。 24 それでアブラハムは,「誓います」と言った。
  25 アブラハムは,アビメレクの家来たちに井戸を強引に奪われたことで,アビメレクに苦情を述べた。
26 アビメレクはこう答えた。「そんなことをした者がいるとは知りませんでした。あなたは私に話してくれま
せんでしたし,私も今日まで何も聞いていませんでした」。 27 そこでアブラハムは羊と牛を連れてきてアビ
メレクに与え,2人は契約を結んだ。 28 アブラハムが群れの中から雌の子羊7匹を取り分けると, 29 アビ
メレクはアブラハムに言った。「7匹の雌の子羊を取り分けたのはどうしてですか」。 30 アブラハムは言っ
た。「私がこの井戸を掘った証拠として,あなたは私からこの7匹の雌の子羊を受け取るのです」。 31 それ
で,その場所はベエル・シェバと呼ばれた。2人がそこで誓いを立てたからだった。 32 こうして彼らはベエ
ル・シェバで契約を結んだ。アビメレクは軍隊の長フィコルと共に,フィリスティア人の土地に帰っていった。
33 その後,アブラハムはベエル・シェバにギョリュウの木を植え,そこで永遠の神エホバの名を呼んだ。 34
そしてアブラハムはフィリスティア人の土地に長い間とどまった。
  22 章
  1 こうしたことの後,真の神はアブラハムを試した。神が,「アブラハム!」と言うと,アブラハムは,
「はい,ここにおります!」と答えた。 2 すると神は言った。「どうか,あなたの子,あなたが深く愛する一
人息子のイサクを連れてモリヤ地方に行き,私が指定する山の上で,彼を捧げ物として捧げてほしい」。
  3 それでアブラハムは朝早く起き,ロバにくらを置いて,従者2人と息子のイサクを呼んだ。全焼の捧げ
物に用いるまきを割り,それから出発して真の神が告げた場所に向かった。 4 3日目,アブラハムが目を上げ
ると,その場所が遠くに見えた。 5 アブラハムは従者たちに言った。「あなたたちはロバと一緒にここにいな
さい。この子と私は,あそこまで行って神を崇拝し,それから戻ってきます」。
  6 アブラハムは全焼の捧げ物に用いるまきを息子イサクに背負わせ,自分は火種と短刀を手に取った。そ
して2人は一緒に歩いていった。 7 やがてイサクが父アブラハムに,「お父さん」と言った。アブラハムが
「どうした,イサク」と答えると,イサクは言った。「火種とまきはありますが,全焼の捧げ物にする羊はど
こですか」。 8 アブラハムは言った。「神が捧げ物にする羊を与えてくださるだろう」。2人は引き続き一緒
に歩いた。
  9 ついに2人は真の神が告げた場所に着いた。アブラハムはそこに祭壇を作り,その上にまきを並べた。
それから息子イサクの手足を縛り,祭壇のまきの上に寝かせた。 10 そして短刀を手に取り,息子を殺そうと
した。 11 ところが,エホバの天使が天から,「アブラハム,アブラハム!」と呼び掛けた。アブラハムは,
「はい!」と答えた。 12 天使はこう言った。「少年を傷つけてはいけません。何もしてはなりません。今,
あなたが神を畏れていることがよく分かりました。あなたは自分の子,一人息子を私に与えることを拒みませ
んでした」。 13 アブラハムが目を上げて見ると,向こうに,角がやぶに引っ掛かって動けなくなっている雄
羊がいた。それでアブラハムは行って雄羊を捕まえ,息子の代わりに全焼の捧げ物として捧げた。 14 アブラ
ハムはその場所をエホバ・イルエと名付けた。そのため今も,「エホバの山で与えられる」という言い方がある。
  15 エホバの天使は再び天からアブラハムに呼び掛け, 16 こう言った。「エホバはこう宣言しています。
『私は,私に懸けて誓う。あなたがこのようにして,自分の子,一人息子を与えることを拒まなかったので,
17 私はあなたを必ず祝福し,あなたの子孫を必ず,天の星や海辺の砂のように多くしよう。あなたの子孫は敵
の町を攻略する。 18 あなたの子孫によって地上の全ての国民が祝福を受ける。あなたが私の言ったことに従
ったからである』」。
  19 アブラハムは従者たちの所に戻り,一行は出発してベエル・シェバに帰っていった。アブラハムは引き
続きベエル・シェバに住んだ。
  20 その後アブラハムに次のような知らせがあった。「あなたの兄弟ナホルの妻ミルカが子を産みました。
21 長男ウツ,次男ブズ,三男ケムエル(アラムの父), 22 ケセド,ハゾ,ピルダシュ,イドラフ,ベトエ
ルです」。 23 ベトエルにはリベカが生まれた。アブラハムの兄弟ナホルの妻ミルカはこの8人を産んだ。
24 レウマという,ナホルのそばめも子を産んだ。テバハ,ガハム,タハシュ,マアカである。
  23 章
  1 さて,サラは死んだ時,127歳だった。 2 サラはカナン地方のキルヤト・アルバ,つまりヘブロンで
死んだ。アブラハムはサラの死を嘆き,泣いた。 3 やがてアブラハムは亡くなった妻の前から離れ,ヘトの子
孫たちに言った。 4 「私は皆さんにとって外国人であり,移住者です。亡くなった妻を葬るため,皆さんの土
地の一部を譲っていただけませんか」。 5 ヘトの子孫たちはアブラハムに答えた。 6 「お聞きください。私
たちは,あなたが神に選ばれた長であることを知っています。私たちの墓地の一番良い所に,亡くなった方を
葬ってください。私たちの中に,あなたに墓地を譲らない人などいません」。
  7 アブラハムは立ち上がり,その土地の人たち,ヘトの子孫たちにおじぎをし, 8 こう言った。「妻を
葬らせてくださるのでしたら,どうか私の願いを聞いてください。ツォハルの子エフロンと話して, 9 マクペ
ラの洞窟を私に売るように言っていただけませんか。その洞窟は彼のもので,彼の土地の端にあります。皆さ
んの立ち会いの下でその洞窟を売るよう,彼に勧めてください。十分な量の銀を彼に払います。洞窟を売って
いただければ,そこに妻を葬れます」。
  10 ヘト人エフロンはヘトの子孫たちと共に座っていた。エフロンは,ヘトの子孫たちが聞いている所で,
町の門を入ってくる人たちの前で,アブラハムに答えてこう言った。 11 「いいえ,お聞きください。その土
地と洞窟,どちらもお譲りします。私の同胞たちの立ち会いの下,あなたにお譲りします。奥さまを葬ってあ
げてください」。 12 アブラハムはその土地の人たちにおじぎをし, 13 人々が聞いている所でエフロンに言
った。「よろしければ,お聞きください。その土地に見合う十分な量の銀をあなたにお渡しします。受け取っ
てください。そうしてくだされば,妻をそこに葬ります」。
  14 エフロンはアブラハムに答えた。 15 「お聞きください。あの土地には銀4.6キロの価値があります
が,気になさらないでください。奥さまを葬ってあげてください」。 16 アブラハムはエフロンが言ったこと
を聞き入れた。そして,ヘトの子孫たちが聞いている所でエフロンが言った量の銀,4.6キロの銀を,商用の
重りで量って渡した。 17 こうして,マムレに面したマクペラにあるエフロンの土地(土地とその中の洞窟と
全樹木)の取引が成立し, 18 その土地は,ヘトの子孫たちの立ち会いの下,町の門を入ってくる人たちの前
で,アブラハムが買い取った土地となった。 19 その後アブラハムは,マムレに面したマクペラの土地の洞窟
に妻サラを葬った。マムレつまりヘブロンはカナン地方にある。 20 このようにして,土地とその中の洞窟が,
ヘトの子孫たちによって引き渡され,アブラハムが所有する墓地となった。
  24 章
  1 アブラハムは年を取り,高齢になった。それまでにエホバからあらゆる面で祝福されていた。 2 アブ
ラハムは,家の中の最年長で全所有物を管理していた従者に言った。「あなたの手を私のももの下に置いてく
ださい。 3 天の神であり地の神であるエホバに懸けて,私の言う通りにすると誓ってください。私の息子の妻
を,私の周りに住んでいるカナン人の娘の中から選んではなりません。 4 私の故郷,私の親族の所に行って,
息子イサクのために妻を連れてくるのです」。
  5 従者はアブラハムに言った。「もしその女性が私と一緒にここに来ることを望まないとしたら,どうい
たしましょうか。ご子息をあちらにお送りしたらよろしいでしょうか」。 6 アブラハムは言った。「あの子を
そこに連れていってはなりません。 7 天の神エホバは,父の家族と私の親族の土地から離れるよう私に命じ,
『この地方をあなたの子孫に与える』と私に誓われました。その方が,あなたを導く天使を遣わしてください
ます。あなたは必ず,そこからあの子のために妻を連れてきます。 8 しかし,もしその女性があなたと一緒に
来ることを望まない場合,あなたはこの誓いに縛られません。ですが,あの子をそこに連れていってはなりま
せん」。 9 そこで従者は手を主人アブラハムのももの下に置き,このことをアブラハムに誓った。
  10 従者は主人のラクダの中から10頭を集め,主人から預かったさまざまな贈り物を持って,出発した。
メソポタミアへ,ナホルの町へ出掛けていったのである。 11 やがて従者は,町の外にあった井戸のそばでラ
クダを座らせた。夕方ごろで,女性たちが水をくみに来る時間帯だった。 12 従者は祈った。「私の主人アブ
ラハムの神エホバ,どうか今日,物事がうまくいきますようお導きください。私の主人アブラハムに揺るぎな
い愛をお示しください。 13 私は今,井戸のそばに立っており,間もなく町の娘たちが水をくみにやって来ま
す。 14 私は,やって来た娘に,『水がめを下ろして,水を飲ませてくれませんか』と言おうと思います。そ
れに対し,『どうぞお飲みください。ラクダにも水を飲ませましょう』と答える人,その人こそ,あなたに仕
えるイサクのためにお選びになった女性でありますように。そのようにして,あなたが私の主人に揺るぎない
愛をお示しになったことを,私に確信させてください」。
  15 従者がまだ言い終えないうちに,リベカがやって来た。アブラハムの兄弟ナホルの妻ミルカの子ベトエ
ルの娘である。リベカは肩に水がめを載せていた。 16 とても美しい若い女性で,男性と関係を持ったことは
なかった。リベカは井戸に下りていき,水がめに水をくんで上ってきた。 17 従者はすぐに走り寄って,彼女
に言った。「かめの水を一口飲ませてくれませんか」。 18 リベカは,「どうぞお飲みください」と言い,す
ぐにかめを下ろして手で持ち,水をあげた。 19 従者が飲み終わると,リベカは言った。「ラクダにもあげま
しょう。ラクダが飲むのをやめるまで,水をくんできます」。 20 リベカはすぐにかめの水を水槽に注ぎ,水
をくむために井戸に走った。それを何度も繰り返し,全てのラクダのために水をくみ続けた。 21 その間ずっ
と,従者はとても驚きながら彼女を静かに見つめ,エホバがこの旅の目的を達成させてくださったかどうかを
考えていた。
  22 ラクダが飲み終えると,従者は彼女のために,重さ6グラムの金の鼻輪と,重さ110グラムの2つの
金の腕輪を取り出し, 23 こう言った。「教えてください。あなたはどなたの娘さんですか。お父さまの家に
は,私たちが泊まれる場所があるでしょうか」。 24 すると彼女は言った。「私は,ナホルとミルカの子ベト
エルの娘です」。 25 さらに言った。「うちには,わらも,たくさんの飼い葉もあり,お泊めできる場所もあ
ります」。 26 それで従者は身をかがめ,エホバの前にひれ伏して, 27 こう言った。「私の主人アブラハム
の神エホバが賛美されますように。神は,私の主人に揺るぎない愛を示し続け,私の主人を支え続けてくださ
いました。エホバは私を,主人の兄弟たちの家へと導いてくださいました」。
  28 リベカは走っていき,母と家の人たちに,あったことを話した。 29 リベカには,ラバンという兄が
いた。ラバンは,町の外の井戸のそばにいる従者の所に走っていった。 30 ラバンは,鼻輪と妹リベカの両手
の腕輪を見,「その人は私にこう言いました」と妹が言うのを聞いて,その人に会いに行ったのである。その
人はまだ井戸の所にいて,ラクダのそばに立っていた。 31 ラバンは言った。「エホバに祝福された方,どう
ぞおいでください。どうしてこんな外に立っておられるのですか。家を整え,ラクダのための場所も準備いた
しました」。 32 そこで従者は家の中に入り,彼はラクダの装具を外してわらと飼い葉を与え,従者と付き添
いの人たちの足を洗う水を用意した。 33 食べ物が出されると,従者は言った。「いただく前に,用件をお話
しさせてください」。ラバンは,「お話しください」と言った。
  34 従者は言った。「私はアブラハムの従者です。 35 エホバは私の主人を大いに祝福されました。羊と
牛,銀と金,男女の召し使い,ラクダとロバをお与えになりました。おかげで主人は非常に裕福になっていま
す。 36 また,主人の妻サラは,年老いてから子を産みました。主人は全財産をその子に与えようとしていま
す。 37 それで主人は次のように言い,私に誓いをさせました。『私の息子の妻を,私の周りに住んでいるカ
ナン人の娘の中から選んではなりません。 38 私の父の家族,私の家族の所に行って,息子のために妻を連れ
てくるのです』。 39 私は主人に言いました。『もしその女性が私と一緒に来ることを望まないとしたら,ど
ういたしましょうか』。 40 主人は言いました。『私はエホバの道を歩んできました。その方があなたのため
に天使を遣わして,必ず旅の目的を果たさせてくださいます。あなたは私の息子のために,私の家族,私の父
の家族から妻を連れてこなければなりません。 41 私の家族の所に行っても,娘を渡してもらえない場合には,
あなたはこの誓いに縛られません。私への誓いから自由になるのです』。
  42 今日,井戸の所に着いた時,私はこう祈りました。『私の主人アブラハムの神エホバ,あなたがもし,
この旅がうまくいくようにしてくださるのでしたら, 43 ぜひともこうなりますように。私は今,井戸のそば
に立っています。水をくみにやって来る娘に,「かめの水を少し飲ませてくれませんか」と言おうと思います。
44 それに対し,「どうぞお飲みください。ラクダのためにも水をくんできましょう」と言う人,その人こそ,
主人の息子のためにエホバがお選びになった女性でありますように』。
  45 私が心の中で言い終えないうちに,リベカが肩にかめを載せてやって来ました。彼女は井戸に下りてい
って,水をくみ始めました。私は,『飲ませてくれませんか』と言いました。 46 すると,彼女はすぐにかめ
を下ろし,『どうぞお飲みください。ラクダにもあげましょう』と言ったのです。私は飲み,彼女はラクダに
も水をやってくれました。 47 その後,『あなたはどなたの娘さんですか』と聞くと,彼女は,『ナホルとミ
ルカの子ベトエルの娘です』と答えました。それで私は,彼女の鼻に鼻輪を,両手に腕輪を着けて差し上げま
した。 48 そして身をかがめてエホバの前にひれ伏し,主人アブラハムの神エホバを賛美しました。主人の息
子のために,主人の兄弟の孫娘を連れて帰れるよう導いてくださったからです。 49 それで,もし皆さんが私
の主人に揺るぎない愛を示し,私の主人を支え続けてくださるなら,そうおっしゃってください。また,もし
そうでないなら,そうでないとおっしゃってください。それによって,どうするかを決めたいと思います」。
  50 ラバンとベトエルは答えた。「これはエホバが導いていることですので,私たちは,よいかどうかを言
うことなどできません。 51 リベカはここにいます。連れていって,エホバが言われた通り,あなたの主人の
ご子息の妻にしてください」。 52 この言葉を聞いて,アブラハムの従者はすぐにエホバの前にひれ伏した。
53 そして,銀や金の装飾品と衣装を取り出してリベカに与え,貴重な品々をリベカの兄と母に与えた。 54
その後,従者と付き添いの人たちは食べて飲み,そこに泊まった。
  従者は朝起きると,「主人の所に戻らせてください」と言った。 55 リベカの兄と母は言った。「せめて
10日,あの子と一緒にいさせてください。その後でしたら,行って構いません」。 56 従者は言った。「私
を引き留めないでください。エホバは旅の目的を果たさせてくださいました。主人の所に戻らせてください」。
57 それで彼らは言った。「あの子を呼んで,聞いてみましょう」。 58 彼らはリベカを呼び,「この方と一
緒に行きますか」と聞いた。リベカは,「はい。行きます」と答えた。
  59 そこで彼らは,リベカとその乳母,またアブラハムの従者と付き添いの人たちを送り出すことにした。
60 彼らはリベカのために祝福を願い,こう言った。「リベカ,あなたの子孫が幾千万にもなりますように。あ
なたの子孫が敵の町を攻略しますように」。 61 リベカと付き人の女性たちは立ち上がってラクダに乗り,従
者に付いていった。こうして従者はリベカを連れて帰っていった。
  62 さて,ネゲブ地方に住んでいるイサクは,ベエル・ラハイ・ロイの方から戻ってきた。 63 夕暮れ時,
イサクはいろいろなことを思い巡らしながら野原を歩いていた。目を上げると,ラクダの一隊が向かってくる
のが見えた。 64 リベカもイサクの姿を見て,すぐにラクダから下りた。 65 そして従者に尋ねた。「野原を
歩いてこちらに来る方はどなたですか」。従者は,「私の主人イサクです」と言った。それでリベカはベール
を深くかぶった。 66 従者は,自分がしてきたことを全てイサクに話した。 67 その後イサクはリベカを母サ
ラの天幕に連れていった。こうしてイサクはリベカを妻にした。イサクはリベカを愛するようになり,母を亡
くした悲しみは癒やされていった。
  25 章
  1 アブラハムは再び妻を迎えた。名前はケトラといった。 2 やがてアブラハムとケトラの間に,ジムラ
ン,ヨクシャン,メダン,ミディアン,イシュバク,シュアハが生まれた。
  3 ヨクシャンの子は,シェバ,デダン。
  デダンの子は,アシュリム,レトシム,レウミム。
  4 ミディアンの子は,エファ,エフェル,ハノク,アビダ,エルダア。
  これらの人は皆,ケトラの子である。
  5 アブラハムはやがて全財産をイサクに与えた。 6 そばめたちとの間にできた子たちには,贈り物を与
えた。そして自分がまだ生きているうちに,彼らを東へ,東方の地へ行かせ,息子イサクから離れさせた。 7
アブラハムの生涯は175年だった。 8 年老いたアブラハムは,充実した長い人生を送った後,息を引き取り,
先祖たちと共に横たわった。 9 息子のイサクとイシュマエルが,ヘト人ツォハルの子エフロンの土地にあるマ
クペラの洞窟にアブラハムを葬った。そこはマムレに面した所で, 10 その土地はアブラハムがヘトの子孫た
ちから買い取った土地だった。妻サラが葬られた場所に,アブラハムも葬られたのである。 11 神はアブラハ
ムの死後,息子イサクを祝福し続けた。イサクはベエル・ラハイ・ロイの近くに住んだ。
  12 以下は,アブラハムの子イシュマエルについての記録である。イシュマエルは,サラの召し使いだった
エジプト人ハガルとアブラハムの間に生まれた子だった。
  13 イシュマエルの子の名前は次の通りである。イシュマエルの長男ネバヨト,ケダル,アドベエル,ミブ
サム, 14 ミシュマ,ドマ,マサ, 15 ハダド,テマ,エトル,ナフィシュ,ケドマ。 16 これらの人がイ
シュマエルの子であり,各氏族の長12人である。彼らの居住地や宿営地もその名前で呼ばれる。 17 イシュ
マエルの生涯は137年だった。イシュマエルは息を引き取り,先祖たちと共に横たわった。 18 イシュマエ
ルの子たちは,エジプトに程近いシュルのそばのハビラからアッシリアまでの地域に広がって住んだ。それぞ
れが兄弟たちの近くに住んだのである。
  19 以下は,アブラハムの子イサクについての記録である。
  アブラハムにはイサクが生まれた。 20 イサクは40歳の時,リベカと結婚した。リベカはパダン・アラ
ムのアラム人ベトエルの娘で,アラム人ラバンの妹である。 21 イサクは妻のことでエホバに何度も懇願した。
子供ができなかったからである。エホバはイサクの願いを聞き入れ,妻リベカは妊娠した。 22 やがて胎内の
子たちが押し合うようになったため,リベカは言った。「こんな目に遭ってまで,どうして生き続けなければ
いけないの」。リベカはなぜこのようなことが起きるのか,エホバに尋ねた。 23 するとエホバは言った。
「2つの国民があなたの胎内にあり,2つの民があなたから生まれる。一方の国民がもう一方の国民より強く
なり,兄が弟に仕えることになる」。
  24 出産の時がやって来ると,胎内には確かに双子がいた。 25 先に出てきた子は,全身が赤く,毛でで
きた服を着ているかのようだった。それでその子はエサウと名付けられた。 26 次に弟が出てくると,その子
の手はエサウのかかとをつかんでいた。それでその子はヤコブと名付けられた。リベカがこの2人を産んだ時,
イサクは60歳だった。
  27 男の子たちは成長していった。エサウは腕のいい狩人になり,よく野原に出掛けた。ヤコブは非難され
るところがない人で,よく天幕で時間を過ごした。 28 イサクはエサウを愛していた。エサウが,食物となる
獲物を捕らえてくるからだった。一方,リベカはヤコブを愛していた。 29 ある時,ヤコブが煮込み料理を作
っていると,エサウが野原から疲れて帰ってきた。 30 エサウはヤコブに言った。「その赤いやつを少し食べ
させてくれないか。早くしてくれ。疲れているんだ」。それでエサウはエドムとも呼ばれるようになった。 31
ヤコブは言った。「ではまず,長男としての権利を売ってください!」 32 エサウは言った。「とにかく死に
そうなんだ。長男の権利なんて何のためになる」。 33 ヤコブは言った。「まず,誓ってください!」 すると
エサウはヤコブに誓い,長男としての権利をヤコブに売った。 34 ヤコブがレンズマメの煮込みとパンをあげ
ると,エサウは食べて飲み,その後立って出掛けていった。こうしてエサウは長男の権利を軽く見た。
  26 章
  1 さて,その地方で飢饉が起きた。アブラハムの時代に起きた1度目の飢饉とは別のものである。それで
イサクは,フィリスティア人の王アビメレクの所,ゲラルに行った。 2 エホバはイサクに現れてこう言った。
「エジプトに行ってはいけない。私が指定する土地に住みなさい。 3 この土地に外国人として住みなさい。そ
うすれば,私は引き続きあなたと共にいてあなたを祝福しよう。この地方一帯をあなたとあなたの子孫に与え
る。私はあなたの父アブラハムへの誓いを果たす。 4 『私はあなたの子孫を天の星のように多くし,あなたの
子孫にこの地方一帯を与えよう。あなたの子孫によって地上の全ての国民が祝福を受ける』という誓いである。
5 アブラハムが私の言ったことに従い,私の定めたこと,命令,法令,律法を守ったからである」。 6 それ
でイサクはゲラルに住み続けた。
  7 イサクは,そこの人たちから妻についてよく尋ねられ,「私の妹です」と言っていた。「妻です」と言
うのを恐れたのは,「ここの人たちはリベカを奪おうとして私を殺すかもしれない」と思ったからだった。リ
ベカは美しかったのである。 8 しばらく後のこと,フィリスティア人の王アビメレクが窓から外を眺めている
と,イサクが妻のリベカを抱き締めているのが見えた。 9 アビメレクは直ちにイサクを呼んで,こう言った。
「彼女はあなたの妻ではないか! どうして,『妹です』などと言ったのか」。イサクは言った。「彼女のこと
で,死ぬことにならないだろうかと不安になったのです」。 10 アビメレクは言った。「何ということをして
くれたのだ。民の1人があなたの妻と寝てもおかしくなかった。あなたのせいで,私たちは罪を犯すところだ
ったではないか」。 11 それからアビメレクは民の全てに,「この人とその妻に触れる者は必ず死刑にされ
る」と告げた。
  12 イサクはその土地で種をまいた。その年の収穫は,まいた物の百倍にもなった。エホバが祝福したから
だった。 13 イサクは裕福になり,その後も成功していき,非常に裕福になった。 14 幾つもの羊の群れと牛
の群れを持ち,大勢の召し使いを抱えるようになったのである。それでフィリスティア人は彼をねたむように
なった。
  15 フィリスティア人は,父アブラハムの時代に召し使いたちが掘った井戸全てに土を詰め,ふさいだ。
16 アビメレクはイサクに言った。「あなたは私たちよりはるかに強くなりました。私たちの所から出ていって
ください」。 17 それでイサクはそこから移動し,ゲラルの谷に宿営を張って住んだ。 18 イサクは,父アブ
ラハムの時代に掘られ,アブラハムの死後フィリスティア人にふさがれた井戸を掘り直した。そして,それぞ
れの井戸を,父が付けた名前で呼んだ。
  19 イサクの召し使いたちが谷で井戸を掘ると,きれいな水が出てきた。 20 するとゲラルの羊飼いたち
が,「その水はわれわれのものだ」と言って,イサクの羊飼いたちと言い争いを始めた。その井戸はエセクと
名付けられた。言い争いがあったからだった。 21 別の井戸を掘ると,それを巡ってまたも言い争いが起きた。
その井戸はシトナと名付けられた。 22 その後イサクはそこから移動して別の井戸を掘った。今度は言い争い
が起きなかった。その井戸はレホボトと名付けられた。イサクが言うには,「エホバが広い場所を与え,ここ
で子孫を増やせるようにしてくださったから」だった。
  23 やがてイサクはそこからベエル・シェバに行った。 24 その夜,エホバがイサクに現れて,こう言った。
「私はあなたの父アブラハムの神である。恐れてはいけない。私はあなたと共にいるからだ。私に仕えたアブ
ラハムのゆえに,あなたを祝福し,あなたの子孫を多くする」。 25 それでイサクはそこに祭壇を作ってエホ
バの名を呼んだ。イサクはそこに天幕を張り,召し使いたちは井戸を掘った。
  26 その後,アビメレクがゲラルからイサクの所にやって来た。相談役のアフザトと軍隊の長フィコルが一
緒だった。 27 イサクは彼らに言った。「あなた方は私を嫌って出ていかせたのに,どうして私の所に来たの
ですか」。 28 彼らは言った。「私たちは,エホバがあなたと共におられるのがはっきり分かりました。それ
でこう言おうということになりました。『私たちと誓いを交わし,私たちと契約を結んでください。 29 私た
ちがあなたに危害を加えなかったように,あなたも私たちに何も悪いことはしないと約束してください。私た
ちは,あなたによくしてあげて安全に出ていかせたのではないでしょうか。あなたはエホバに祝福された方で
す』」。 30 イサクはごちそうを用意し,彼らは食べて飲んだ。 31 翌朝,一同は早く起き,誓いの言葉を交
わした。彼らはイサクに送り出され,穏やかに去っていった。
  32 その日,召し使いたちがイサクの所に来て,掘った井戸について報告して言った。「水が出ました!」
33 それでその井戸はシブアと名付けられた。その町が今もベエル・シェバといわれているのは,そのためであ
る。
  34 エサウは40歳の時,ヘト人ベエリの娘ユディトと,ヘト人エロンの娘バセマトを妻とした。 35 こ
の女性たちはイサクとリベカを非常に悩ませた。
  27 章
  1 ある時,年老いて目がほとんど見えなくなっていたイサクは,上の息子エサウを呼び寄せ,「息子よ」
と言った。エサウは,「はい,ここにいます」と言った。 2 イサクは言った。「私は年を取った。いつ死ぬか
分からない。 3 だから今,矢筒と弓を持って野原に出掛け,獲物を捕ってきてくれないか。 4 そして私の好
きなおいしい料理を作って,持ってきてほしい。そうしたら,それを食べて,死ぬ前にあなたのために祝福を
願い求めよう」。
  5 イサクが息子エサウに話しているのを,リベカが聞いていた。そしてエサウは,獲物を捕ってくるため,
野原に出掛けた。 6 それでリベカは息子ヤコブに言った。「さっきお父さんが,兄さんのエサウにこう言って
いました。 7 『獲物を捕ってきて,おいしい料理を作ってほしい。そうしたら,それを食べて,死ぬ前に,あ
なたのために祝福をエホバに願い求めよう』。 8 それでヤコブ,よく聞いて,私の言う通りにしてください。
9 家畜の群れから最上の子ヤギを2匹連れてきてください。そうしたら,私がお父さん好みのおいしい料理を
作ります。 10 あなたはそれを持っていってお父さんに食べてもらうのです。そうすれば,亡くなる前にあな
たへの祝福を願ってくれるでしょう」。
  11 ヤコブは母リベカに言った。「でも,エサウ兄さんは毛深いのに私はそうではありません。 12 お父
さんが私に触ったらどうなるでしょう。私は,お父さんをからかったと思われてしまい,祝福どころか災いを
受けることになります」。 13 母はヤコブに言った。「その災いは私が代わりに受けましょう。私の言う通り
にして,子ヤギを連れてきなさい」。 14 そこでヤコブは子ヤギを母の所に連れてきて,母は父好みのおいし
い料理を作った。 15 その後リベカは,家にあったエサウの一番良い服を選び,ヤコブに着せた。 16 また,
子ヤギの毛皮をヤコブの両手と首筋の毛のない所とに当てた。 17 そして,作ったおいしい料理とパンを息子
ヤコブに渡した。
  18 ヤコブが父の所に入っていって,「お父さん」と言うと,父は言った。「おお,息子よ。エサウか。そ
れとも,ヤコブか」。 19 ヤコブは父に言った。「あなたの長男エサウです。言われた通りにしてきました。
体を起こして,私が捕ってきた物をどうぞ食べてください。そして私への祝福を願ってください」。 20 イサ
クは言った。「どうしてこんなに早く捕まえられたんだ」。ヤコブは答えた。「あなたの神エホバのおかげで
す」。 21 イサクはヤコブに言った。「こっちに来てくれないか。あなたに触って,本当に私の子エサウなの
かどうか確かめたい」。 22 ヤコブが近寄ると,父イサクは触ってからこう言った。「声はヤコブの声だが,
手はエサウの手だ」。 23 ヤコブの手が兄エサウの手のように毛深かったので,イサクは気付かなかった。そ
れでイサクはヤコブのために祝福を願い求めた。
  24 そしてイサクは言った。「本当に私の子エサウなのか」。ヤコブは,「そうです」と答えた。 25 イ
サクは言った。「捕ってきた物を持ってきなさい。食べた後,あなたのために祝福を願い求めよう」。ヤコブ
が食べ物を持っていくと,イサクは食べた。また,ぶどう酒を持っていくと,飲んだ。 26 その後,父イサク
は言った。「さあ,こっちに来て,私に口づけしなさい」。 27 ヤコブは近寄って口づけし,イサクはヤコブ
が着ていた服のにおいを嗅いだ。イサクはヤコブへの祝福を願って,こう言った。
  「ああ,わが子のにおいは,エホバが祝福された野原のにおいのようです。 28 真の神があなたに,天か
らの露と肥沃な土地,豊かな穀物と新しいぶどう酒を与えてくださいますように。 29 さまざまな人々があな
たに仕え,さまざまな国民があなたに頭を下げますように。あなたが兄弟たちの主人となり,あなたの母の子
たちがあなたに頭を下げますように。あなたに災いがあることを願い求める人が災いを被り,あなたに祝福が
あることを願い求める人が祝福を受けますように」。
  30 イサクがヤコブへの祝福を願い終え,ヤコブがイサクの所から立ち去ったちょうどその時,兄エサウが
狩りから戻ってきた。 31 エサウもおいしい料理を作って父の所に持っていき,こう言った。「お父さん,体
を起こして,私が捕ってきた物をどうぞ食べてください。そして私のために祝福を願い求めてください」。 32
そこで父イサクは言った。「あなたは誰なんだ」。エサウは言った。「あなたの息子,長男のエサウです」。
33 イサクはひどく身を震わせてこう言った。「では,さっき獲物を捕って持ってきたのは誰だったのだろう。
あなたが来る前に私はすでにそれを食べて,その人への祝福を願った。もうその人が祝福を受けることになっ
ているのだ」。
  34 その言葉を聞いて,エサウは悲痛な声で大きく叫び,父に言った。「私のため,この私のためにも祝福
を願い求めてください。お父さん!」 35 イサクは言った。「やって来たのはあなたの弟だ。あなたのための
祝福を自分のものにしようともくろんだのだ」。 36 エサウは言った。「さすがヤコブと呼ばれるだけのこと
はあります。私から2度も奪い取るとは。私の長男の権利を奪い,今度は私のための祝福を奪ったのです」。
さらに言った。「私のためには,祝福を願い求めてくださらないのですか」。 37 イサクは答えた。「私はす
でに,彼をあなたの主人とし,彼の兄弟全てを彼の召し使いとし,穀物と新しいぶどう酒を彼に与えた。そう
した今,何かあなたにしてあげられることがあるだろうか」。
  38 エサウは父に言った。「お父さん,あなたが願い求める祝福はもうほかにないのですか。私のため,こ
の私のためにも祝福を願い求めてください。お父さん!」 エサウは声を上げて泣きだした。 39 父イサクはエ
サウに答えた。
  「あなたは,肥沃な土地から離れた所,天からの露がない所に住む。 40 あなたは剣を振るって生き,兄
弟に仕えることになる。しかし,やがて不満を募らせ,束縛を振りほどく」。
  41 父がヤコブのために祝福を願い求めたので,エサウはヤコブに恨みを抱き,心の中でこう言い続けた。
「父の死は近い。喪の期間が終わったら,弟ヤコブを殺してやる」。 42 エサウのこの考えを知ったリベカは,
すぐに人を遣わしてヤコブを呼び,こう言った。「兄さんのエサウがあなたを殺して復讐しようとたくらんで
います。 43 今すぐ,私の言う通りにしなさい。ハランにいる私の兄ラバンの所に逃げなさい。 44 そして,
あなたの兄さんの怒りが収まるまでしばらくそこにとどまるのです。 45 あなたに対する兄さんの怒りが静ま
って,あなたのしたことを忘れたら,私は人を遣わしてあなたを呼び戻します。あなたたち2人を同じ日に失
いたくはありません」。
  46 その後,リベカはイサクにこう言い続けた。「ヘト人の娘たちのせいで,生きているのがつらくて仕方
ありません。もしヤコブもこの辺りの娘たちのようなヘト人の娘を妻にしたら,私はもう生きていけません」。
  28 章
  1 それでイサクはヤコブを呼び,ヤコブのために祝福を願い,こう命じた。「カナン地方の娘たちの中か
ら妻を選んではいけない。 2 パダン・アラムへ,あなたのおじいさんベトエルの家族の所へ行き,そこで妻を
選びなさい。あなたの伯父さんラバンの娘たちの中から選ぶのだ。 3 全能の神があなたを祝福し,多くの子孫
を与えてくださる。あなたから必ず,幾つもの民が生まれる。 4 神は,アブラハムに約束した祝福をあなたと
あなたの子孫に与えてくださる。あなたがこれまで外国人として住んできた土地,神がアブラハムに授けた土
地はあなたのものになる」。
  5 こうしてイサクはヤコブを送り出し,ヤコブはパダン・アラムへ,ラバンの所へ向けて出発した。ラバン
はアラム人ベトエルの子で,ヤコブとエサウの母リベカの兄である。
  6 エサウは,イサクがヤコブのために祝福を願い,妻を選ばせるためヤコブをパダン・アラムに行かせたこ
とを知った。また,祝福を願った時,イサクが「カナン地方の娘たちの中から妻を選んではいけない」と命じ
たことや, 7 ヤコブが父と母に従ってパダン・アラムに向かったことを知った。 8 こうしてエサウは,父イ
サクがカナン地方の娘たちのことを良く思っていないことを悟った。 9 それで,すでに妻たちがいたものの,
イシュマエルの所に行ってマハラトを妻とした。マハラトはアブラハムの子イシュマエルの娘で,ネバヨトの
姉妹だった。
  10 ヤコブはベエル・シェバを出て,ハランに向かって進んでいった。 11 やがてある場所に来た時,日が
沈んだので,そこで夜を過ごすことにした。そこにあった石の1つを取って頭の下に置き,横になった。 12
ヤコブは夢を見た。地面から上方に階段が伸びていて,天にまで達していた。そこを神の天使たちが上り下り
していた。 13 上にエホバがいて,こう言った。
  「私は,あなたの父祖アブラハムの神,イサクの神エホバである。あなたが今横になっている土地を,あ
なたとあなたの子孫に与える。 14 あなたの子孫は必ず大地の砂のように多くなり,東西南北に広がっていく。
あなたとあなたの子孫によって地上の家族全てが必ず祝福を受ける。 15 私はあなたと共にいる。あなたがど
こに行くとしてもあなたを守り,この地方に連れ戻す。私はあなたから離れず,あなたへの約束を必ず果た
す」。
  16 ヤコブは目を覚まし,こう言った。「エホバは確かにここにおられる。私は知らなかった」。 17 ヤ
コブは畏れを抱き,さらに言った。「ここは何と厳粛な場所なのだろう。まさに神の家だ。天の門がここにあ
るのだ」。 18 ヤコブは朝早く起き,頭の下に置いていた石を取り,それを記念碑として立てててっぺんに油
を注いだ。 19 そして,その場所をベテルと名付けた。それまで町はルズと呼ばれていた。
  20 ヤコブは誓約をして,こう言った。「もし神がずっと私と共にいて,旅の間私を守り,パンと服を与え
てくださり, 21 私が無事に父の家に戻ったなら,エホバが確かに私の神となってくださったことになります。
22 私が記念碑として立てたこの石は神の家となります。私は必ず,あなたが下さる全ての物の10分の1を
あなたに捧げます」。
  29 章
  1 その後ヤコブは旅を続け,東方の人たちがいる地方に向かった。 2 やがて野原に井戸があるのが見え,
そばで羊の3つの群れが休んでいた。その井戸は,羊の群れに水をやるためによく使われていたのである。井
戸の口には大きな石が置いてあった。 3 全部の群れがそこに集まると,羊飼いたちは井戸の口から石を転がし
てどけ,羊に水をやり,それから石を元に戻すのだった。
  4 ヤコブは羊飼いたちに言った。「私の兄弟たち,皆さんはどこから来たのですか」。彼らは言った。
「ハランから来ました」。 5 ヤコブが,「ナホルの孫のラバンを知っていますか」と尋ねると,彼らは,「知
っています」と答えた。 6 「彼は元気にしていますか」とヤコブが聞くと,彼らは言った。「元気にしていま
す。ちょうど彼の娘ラケルが,羊を連れてもうすぐやって来ます」。 7 ヤコブは言った。「まだ真昼です。群
れを戻す時間ではありません。羊に水をやって,草を食べさせに行ったらどうですか」。 8 彼らは言った。
「全部の群れが集まって,井戸の口から石がどけられるまでは,羊に水をやってはいけないことになっていま
す」。
  9 ヤコブがまだその人たちと話しているうちに,ラケルが父の羊を連れてやって来た。ラケルは羊飼いだ
ったのである。 10 ヤコブは,伯父ラバンの娘ラケルとラバンの羊とを見ると,すぐに近づいていき,井戸の
口から石を転がしてどけ,ラバンの羊に水をやった。 11 それからラケルに口づけし,声を上げて泣いた。
12 そして,自分がラケルの父の親族であり,リベカの子であることをラケルに話した。ラケルは走っていき,
あったことを父に話した。
  13 ラバンは妹の子ヤコブのことを聞くと,すぐに走っていき,ヤコブを迎えた。そして抱擁して口づけし,
家に連れてきた。ヤコブは起きたことを全てラバンに話した。 14 ラバンはヤコブに言った。「あなたは確か
に私の肉親です」。それでヤコブはそこに丸1カ月滞在した。
  15 ラバンはヤコブに言った。「親族だからといってただで働いてもらうわけにはいきません。報酬は何が
いいか,言ってください」。 16 ラバンには娘が2人いた。姉はレア,妹はラケルといった。 17 レアは目に
輝きがなかったのに対し,ラケルはとても魅力的な美しい女性だった。 18 ヤコブはラケルを愛するようにな
っていたので,こう答えた。「あなたの下の娘ラケルのため,私は喜んであなたに7年仕えます」。 19 ラバ
ンは言った。「あの子をほかの男性と一緒にならせるより,あなたと一緒にならせる方がいいと思います。こ
のままここに住みなさい」。 20 こうしてヤコブはラケルのために7年間働いたが,ラケルを愛していたので,
ほんの数日のように思えた。
  21 ヤコブはラバンに言った。「約束の期間が終わりましたので,彼女と一緒にならせてください。彼女と
関係を持たせてください」。 22 そこでラバンは地元の人たち皆を集めて宴を催した。 23 ところがその晩,
ラバンは娘のレアをヤコブの所に連れていき,ヤコブがレアと関係を持つようにした。 24 ラバンはさらに,
自分の召し使いの女性ジルパをレアの召し使いにした。 25 翌朝,ヤコブが見ると,そこにいたのはレアだっ
た。それでヤコブはラバンに言った。「何ということをしたのですか。私はラケルのために,あなたに仕えた
のではなかったでしょうか。どうして私をだましたのですか」。 26 ラバンは言った。「ここの習慣では,下
の娘を長女より先に嫁にやることはしません。 27 祝いの週をあの子と一緒に過ごしなさい。その後,下の子
も妻にすることができます。ただし,その代わりもう7年働いてもらいます」。 28 ヤコブは言われた通り,
祝いの週をレアと一緒に過ごした。その後,ラバンはラケルも妻としてヤコブに与えた。 29 ラバンはさらに,
自分の召し使いの女性ビルハをラケルの召し使いにした。
  30 こうしてヤコブはラケルとも関係を持った。ヤコブはラケルをレアよりも愛した。そしてラバンにもう
7年仕えた。 31 エホバはレアが愛されていないのを見て,レアに子供ができるようにした。一方,ラケルは
子供ができなかった。 32 レアは妊娠して男の子を産み,ルベンと名付けた。「エホバが私の悩みを知ってく
ださった。これからは夫に愛してもらえる」と彼女は言った。 33 レアは再び妊娠して男の子を産み,こう言
った。「エホバは聞いてくださった。私が愛されていなかったので,この子も与えてくださった」。それで彼
女はその子をシメオンと名付けた。 34 レアはまたも妊娠して男の子を産み,こう言った。「私は夫と今度こ
そ結ばれる。私はあの人の子を3人も産んだのだから」。それでその子はレビと名付けられた。 35 レアはも
う一度妊娠して男の子を産み,こう言った。「今,私はエホバを賛美しよう」。それで彼女はその子をユダと
名付けた。その後,レアは子を産まなくなった。
  30 章
  1 ラケルは,自分がヤコブの子を一人も産んでいないので,姉に嫉妬するようになり,ヤコブにこう言い
だした。「私にも子供を持たせてください。そうでないと,私は死んだも同然です」。 2 するとヤコブはひど
く怒り,ラケルに言った。「私が神だとでもいうのか。あなたに子供ができないようにしているのは神なの
だ」。 3 ラケルは言った。「私の女奴隷ビルハがいます。彼女と関係を持ってください。そうすれば,彼女が
私のために子を産み,彼女によって私も子供を持てます」。 4 そうしてラケルは召し使いビルハをヤコブに妻
として与え,ヤコブはビルハと関係を持った。 5 ビルハは妊娠して男の子を産んだ。 6 その時ラケルは言っ
た。「神は私のことを裁き,私の声を聞いてくださった。私に男の子を下さった」。それで彼女はその子をダ
ンと名付けた。 7 ラケルの召し使いビルハは再び妊娠し,2人目の男の子を産んだ。 8 その時ラケルは言っ
た。「私は姉と激しい闘いをした。そしてついに勝った!」 それで彼女はその子をナフタリと名付けた。
  9 レアは,子を産まなくなっていたので,自分の召し使いジルパをヤコブに妻として与えた。 10 やがて
レアの召し使いジルパは男の子を産んだ。 11 その時レアは,「私は恵まれている!」と言った。それで彼女
はその子をガドと名付けた。 12 その後,レアの召し使いジルパは2人目の男の子を産んだ。 13 その時レア
は言った。「私は幸せ! 女たちはきっと私のことを幸せな人と呼ぶ」。それで彼女はその子をアシェルと名付
けた。
  14 さて,小麦の収穫の時期に,ルベンは野原を歩いていてコイナスを見つけ,母レアの所に持ってきた。
するとラケルがレアに言った。「あなたの子が持ってきたコイナスを少しもらえませんか」。 15 レアは言っ
た。「私の夫を取っただけではまだ足りないのですか。今度は私の子のコイナスまで取ろうとするのですか」。
ラケルは言った。「分かりました。では,あなたの子のコイナスをもらう代わりに,今夜はあなたがあの人と
寝ていいです」。
  16 夕方,ヤコブが野原から戻ってきた時,レアは迎えに出てこう言った。「あなたは私と関係を持つこと
になっています。そのために私は息子のコイナスを支払ったのです」。そこでその夜,ヤコブはレアと寝た。
17 神はレアの願いを聞き入れ,レアは妊娠して,5人目の男の子を産んだ。 18 その時レアは言った。「私
の召し使いを夫に差し出したので,神は報酬を下さった」。それで彼女はその子をイッサカルと名付けた。 19
レアはまた妊娠し,6人目の男の子を産んだ。 20 その時レアは言った。「神は素晴らしい贈り物を下さった。
これで夫は私のことを受け入れてくれる。あの人の子を6人も産んだのだから」。それで彼女はその子をゼブ
ルンと名付けた。 21 その後,彼女は女の子を産み,ディナと名付けた。
  22 ついに神はラケルのことを思い起こした。神は彼女の願いを聞き入れ,子供ができるようにした。 23
ラケルは妊娠して男の子を産んだ。その時ラケルは言った。「神は私の恥辱を取り去ってくださった!」 24
それで彼女はその子をヨセフと名付け,「エホバは私に息子を加えてくださった」と言った。
  25 ラケルがヨセフを産むと,すぐにヤコブはラバンに言った。「家族の所,私の故郷に戻らせてください。
26 私の妻と子供を私の自由にさせてください。そのために私はあなたに仕えてきました。行かせてください。
あなたのためにどれだけ働いてきたか,よくご存じのはずです」。 27 ラバンは言った。「もし私のことを気
に入ってくれているのでしたら,行かないでください。私は,あなたのおかげでエホバから祝福されていると
いうしるしを,幾つも見たのです」。 28 さらに言った。「あなたが望む報酬を言ってください。それを払い
ます」。 29 ヤコブは言った。「私があなたにどれほど仕え,私の世話によってあなたの家畜がどうなったか
を,ご存じのはずです。 30 私が来る前,あなたの家畜はわずかでしたが,今は増えて多くなっています。私
が来てから,エホバはあなたを祝福してこられたのです。いつになったら私は自分の家族のためのことを行え
るのでしょうか」。
  31 ラバンは言った。「あなたに何をあげたらいいでしょうか」。ヤコブは言った。「何かを頂くには及び
ません。ただ,もし次のようにしてくださるなら,今後もあなたの家畜を世話して見守りましょう。 32 今日,
あなたの家畜の群れ全部を見て回ります。あなたは群れの中から,ぶちとまだらの羊,焦げ茶色の若い雄羊,
まだらとぶちの雌ヤギを別にしてください。これからは,そういうものを私の報酬にしてください。 33 今後,
あなたが私の報酬をいつ見に来られても,私が正直であることがはっきりするはずです。もし,ぶちでもまだ
らでもない雌ヤギや,焦げ茶色でない若い雄羊が私の所にいたとしたら,それは盗んだものということになり
ます」。
  34 ラバンは言った。「いいでしょう! あなたが言う通りにしましょう」。 35 ラバンはその日,しまと
まだらの雄ヤギ,ぶちとまだらの雌ヤギ,白い所のあるもの,焦げ茶色の若い雄羊を別にし,自分の息子たち
に渡して世話をさせた。 36 そして,自分とヤコブとの間に,歩いて3日かかるほどの距離を置いた。ヤコブ
は,ラバンの残りの家畜を世話するようになった。
  37 ヤコブは,エゴノキとアーモンドとスズカケノキの枝を切り取り,所々皮をむいて木の白い部分が出る
ようにした。 38 それから,皮をむいたそれらの棒を,家畜が水を飲みに来る水路と水槽の中に置いた。発情
した家畜が水を飲みに来た時,棒を見るようにしたのである。
  39 すると家畜は棒の前で交尾し,しまやぶちやまだらのものを産んでいった。 40 ヤコブは若い雄羊を
取り分け,しまのものや焦げ茶色のものとほかの家畜とを向かい合わせた。そして自分の家畜を別にし,ラバ
ンの家畜と交ざらないようにした。 41 強壮な家畜が発情すると,ヤコブは家畜が来る水路の中に棒を置き,
棒の前で家畜が交尾するようにした。 42 しかし,家畜がひ弱だと,棒を置くことはしなかった。それでひ弱
な家畜はいつもラバンのものになり,強壮な家畜はヤコブのものになった。
  43 ヤコブはとても裕福になり,多くの家畜の群れ,男女の召し使い,ラクダやロバを持つようになった。
  31 章
  1 やがてヤコブは,ラバンの息子たちが次のように言っているのを聞いた。「ヤコブは父のものを全部取
った。父のものからあれほど多くの財を築いた」。 2 またヤコブは,ラバンの顔色を見て,自分に対する態度
が以前とは違うと感じていた。 3 ついにエホバはヤコブに言った。「あなたの父祖たちの土地に,あなたの親
族の所に帰りなさい。これからも私はあなたと共にいる」。 4 そこでヤコブはラケルとレアを,自分の家畜の
群れがいる野原に呼び寄せた。 5 そして2人に言った。
  「私に対するあなたたちのお父さんの態度は変わってしまいました。でも私の父の神は私と共にいてくだ
さいました。 6 よく知っていると思いますが,私は力を尽くしてお父さんに仕えてきました。 7 それなのに
あの人は私をだまそうとして,報酬を10回も変えました。それでも私は,神のおかげで損害を受けることは
ありませんでした。 8 あの人が『ぶちのものを報酬にする』と言えば,群れ全体がぶちのものを産み,『しま
のものを報酬にする』と言えば,群れ全体がしまのものを産みました。 9 そのようにして神はお父さんの家畜
を取り上げて,私に与えてこられました。 10 家畜が発情する頃,私は夢で,交尾している雄ヤギがしまやぶ
ちや斑点のものであるのを見ました。 11 そして夢の中で,真の神の天使が『ヤコブ!』と言ったので,私は
『はい』と答えました。 12 天使はこう続けました。『ご覧なさい。交尾している雄ヤギはどれも,しまやぶ
ちや斑点のものです。私は,ラバンがあなたに対してしていることを全て見てきました。 13 私は,ベテルで
あなたに現れた真の神です。あなたはそこで記念碑に油を注ぎ,私に誓約しました。さあ,この地方から出て,
生まれ故郷に帰りなさい』」。
  14 ラケルとレアは言った。「父の家には,私たちがもらえる財産はもう何もありません。 15 父は私た
ちを売り,そのお金を使い果たしたのですから,父は私たちをよそ者のように見ているのではないでしょうか。
16 神が父から取り上げた富は全部,私たちと子供たちのものです。ですから,全て神から言われた通りにし
てください」。
  17 そこでヤコブは子供と妻たちをラクダに乗せた。 18 そして,パダン・アラムで増やした全ての家畜や
財産と共に,カナン地方の父イサクの所に向けて出発した。
  19 ラバンの方は,羊の毛を刈りに行っていた。ラケルはその間に,父のものであるテラフィム像を盗み出
していた。 20 ヤコブは,去ろうとしていることをアラム人ラバンに言わず,ひそかに出ていった。 21 そし
て家族と全所有物と共に,逃げていって川を渡った。それからギレアデの山地に向かった。 22 3日目になっ
て,ラバンはヤコブが逃げたことを聞いた。 23 そこでラバンは自分の兄弟たちを連れて後を追っていった。
7日目に,ギレアデの山地でヤコブに追い付いた。 24 その夜,神は夢の中でアラム人ラバンの所に来て,こ
う言った。「ヤコブを困らせるようなことは言わないよう,気を付けなさい」。
  25 ヤコブはギレアデの山地に天幕を張り,ラバンと兄弟たちもその山地に宿営を張っていた。ラバンはヤ
コブの所に行き, 26 こう言った。「何ということをしてくれたのですか。どうして私に黙って,娘たちを捕
虜のようにして連れ去ったのですか。 27 どうして何も言わずにこっそり逃げていったのですか。言ってくれ
れば,タンバリンとたて琴に合わせて歌って,あなたを快く送り出したのに。 28 あなたは,私の孫や娘たち
に口づけさえさせてくれませんでした。あなたは愚かなことをしました。 29 私はあなたたちに害を加えるこ
ともできますが,昨夜あなたたちの父祖の神からこう言われました。『ヤコブを困らせるようなことは言わな
いよう,気を付けなさい』。 30 あなたは父の家に帰ることを願って出ていきました。それなのに,どうして
私の神を盗んだのですか」。
  31 ヤコブはラバンに答えた。「あなたが娘たちを私から力ずくで奪うのではないかと思い,恐れたのです。
32 あなたの神を持っている人をあなたが見つけたなら,その人はもう生きてはいられません。兄弟たちの前
で私の持ち物を調べ,あなたの物があれば取ってください」。ヤコブは,ラケルがラバンの神を盗んでいたこ
とを知らなかったのである。 33 ラバンは,ヤコブの天幕,レアの天幕,女奴隷2人の天幕に入ったが,見つ
けられなかった。ラバンはレアの天幕を出てからラケルの天幕に入った。 34 一方,ラケルは前もってテラフ
ィム像を取り,ラクダに掛ける女性用のくら籠の中に入れておき,その上に座っていた。それで,ラバンが天
幕中を捜し回っても見つからなかった。 35 その時ラケルは父に言った。「お怒りにならないでください。私
は月のものが来ているため,お父さまの前に立つことができないのです」。ラバンは注意深く捜したが,テラ
フィム像は見つからなかった。
  36 それでヤコブは怒ってラバンを責めるようになり,ラバンにこう言った。「私にどんな過ちがあるので
すか。私がどんな罪を犯したというので,私の後を激しく追ってきたのですか。 37 あなたは私の持ち物を全
部調べました。あなたの家の物が何かありましたか。それをここに,私の兄弟たちとあなたの兄弟たちの前に
出してください。あなたと私のどちらが正しいのかを決めてもらいましょう。 38 私があなたの所で過ごして
きたこの20年の間,あなたの羊とヤギが流産したことはありませんでした。私があなたの群れの雄羊を食べ
たこともありません。 39 私は,野獣に引き裂かれた家畜をあなたの所に持っていくことはせず,自分でその
損失を負いました。家畜が昼に盗まれても夜に盗まれても,あなたは私に弁償を求めました。 40 私は,昼の
暑さと夜の寒さに苦しめられ,眠ることさえできませんでした。 41 私はあなたの所で20年間過ごしてきま
した。あなたの2人の娘のために14年,あなたの家畜のために6年働いたのです。しかも,あなたは報酬を
10回も変えました。 42 もし私の父祖の神,アブラハムの神でイサクが畏れる方が,私の側にいてくださら
なかったなら,あなたは私に何も持たせずに去らせたでしょう。神は,私の苦悩と苦労を見て,昨夜あなたを
戒められました」。
  43 ラバンはヤコブに答えた。「娘は私の娘,子供は私の子供,家畜は私の家畜です。あなたが見ているも
のは全部,私と私の娘たちのものです。娘と娘が産んだ子供に対して,私は悪いことを行えるでしょうか。 44
さあ,あなたと私の間で契約を結びましょう。それがあなたと私の間の証人となります」。 45 そこでヤコブ
は石を1つ取り,記念碑として立てた。 46 それから兄弟たちに,「石を拾ってきてください!」と言った。
兄弟たちは石を拾い,積んで山にした。そして一同はその山の所で食事をした。 47 ラバンはその山をエガル
・サハドタと呼び,ヤコブはガルエドと呼んだ。
  48 ラバンは言った。「今日,この石の山は,私とあなたの間の証人です」。それでその山はガルエドと名
付けられた。 49 また,見張り台とも呼ばれた。ラバンがこう言ったからである。「私たちが離れている時も,
エホバがあなたと私を見守っていてくださいますように。 50 もしあなたが私の娘たちをむごく扱ったり,娘
たちのほかに妻を迎えたりするなら,たとえ人が見ていなくても,あなたと私の証人である神は見ています。
そのことを忘れないでください」。 51 ラバンはさらにヤコブに言った。「ここに石の山と,私があなたとの
間に立てた記念碑があります。 52 この石の山は証人であり,記念碑も証人です。私はこの石の山を越えてあ
なたに害を加えることはなく,あなたもこの石の山と記念碑を越えて私に害を加えることはありません。 53
アブラハムの神,ナホルの神,彼らの父の神が,私たちを裁かれますように」。それでヤコブは,父イサクが
畏れる方に懸けて誓った。
  54 その後ヤコブは山で犠牲を捧げ,パンを食べるよう兄弟たちを招いた。それで彼らは食べ,山で夜を過
ごした。 55 ラバンは朝早く起きて自分の孫や娘たちに口づけし,彼らのために祝福を願い求めた。それから
自分の家へ帰っていった。
  32 章
  1 ヤコブは旅を続け,やがて神の天使たちに出会った。 2 天使たちを見ると,ヤコブは「ここは神の宿
営だ!」と言った。それでその場所をマハナイムと名付けた。
  3 その後ヤコブは,セイル地方,エドムの領土にいる兄エサウの所へ前もって使者たちを遣わすことにし
た。 4 ヤコブは彼らにこう命じた。「エサウにこう伝えなさい。『ヤコブはこのように申しております。「私
はこれまでラバンの所にずっと住んできて, 5 牛,ロバ,羊,男女の召し使いを持つようになりました。その
ことをお知らせして,お兄さまの好意を得たいと思っています」』」。
  6 やがて使者たちはヤコブの所に戻ってきて,こう言った。「お兄さまのエサウに会いました。あなたに
会おうとしてこちらに向かっています。400人の人たちが一緒です」。 7 ヤコブは非常に怖くなり,不安に
なった。それで,共にいる人たち,羊,牛,ラクダを2つの宿営に分けた。 8 そしてこう言った。「1つの宿
営がエサウに攻撃されても,もう1つの宿営は助かるだろう」。
  9 それからヤコブはこう祈った。「私の父祖アブラハムの神,父イサクの神,エホバ,あなたは私に,
『あなたの土地に,あなたの親族の所に帰りなさい。あなたに良いことがあるようにする』と言っておられま
す。 10 あなたは私のような者に揺るぎない愛を示し,支え続けてくださいました。私がヨルダン川を渡った
時にはつえしか持っていませんでしたが,今では宿営が2つになりました。 11 お願いです。兄エサウの手か
ら私を救い出してください。彼がやって来て私も女性や子供たちも襲うのではないか,と恐れています。 12
あなたは,『私は必ずあなたに良いことがあるようにする。あなたの子孫を,数え切れない海の砂のように多
くする』と言われました」。
  13 ヤコブはそこで夜を過ごした。そして,自分の家畜の中から兄エサウへの贈り物を選んだ。 14 雌ヤ
ギ200匹,雄ヤギ20匹,雌羊200匹,雄羊20匹, 15 子に乳を飲ませているラクダ30頭,雌牛40
頭,雄牛10頭,雌ロバ20頭,雄ロバ10頭である。
  16 ヤコブはそれらを群れごとに召し使いたちに託し,こう言った。「私より先に渡りなさい。群れと群れ
との間に距離を置きなさい」。 17 さらに,先頭の人にこう命じた。「私の兄エサウがあなたと会い,『主人
は誰か,あなたはどこへ行くのか,前を行く家畜は誰のものか』と尋ねてきたなら, 18 こう言いなさい。
『主人はヤコブでございます。これはエサウ様への贈り物です。ヤコブも後から参ります』」。 19 ヤコブは
また,2番目の人,3番目の人,家畜の群れの後を行く人全てにこう命じた。「あなたたちも,エサウに会っ
たなら同じことを話しなさい。 20 そして,『ヤコブは後から参ります』と言いなさい」。ヤコブは,「贈り
物を先に送ってなだめれば,私と会った時に優しく迎えてくれるかもしれない」と思ったのである。 21 召し
使いたちは贈り物を持って先に渡っていった。一方ヤコブは宿営で夜を過ごした。
  22 その夜,ヤコブは起きて,妻2人と召し使いの女性2人と息子11人を連れ,ヤボクの浅瀬を渡った。
23 家族を川の向こうに連れていき,ほかの持ち物全てを運んだのである。
  24 その後ヤコブは1人残った。すると,ある人が現れてヤコブと取っ組み合いを始め,それは夜明けまで
続いた。 25 その人は優位に立てなかったので,ヤコブの股関節に触れた。そのため,組み合っている最中に
その股関節が外れた。 26 その人は言った。「もう行きます。夜が明けますから」。ヤコブは言った。「私を
祝福してくださるまでは放しません」。 27 それでその人は,「あなたの名前は何ですか」と言った。ヤコブ
は答えた。「ヤコブです」。 28 その人は言った。「あなたの名前はもうヤコブではなく,イスラエルとなり
ます。あなたは神と,また人と闘って優位に立ったからです」。 29 ヤコブは尋ねた。「あなたのお名前を教
えてくださいませんか」。しかしその人は,「どうして私の名前を聞くのですか」と答えた。そうしてヤコブ
を祝福した。 30 ヤコブはその場所をペニエルと名付けた。彼が言うには,「神と顔を合わせたのに,まだ生
きている」からだった。
  31 ペヌエルを過ぎると,日が昇った。ヤコブは股関節を傷めていたので,足を引きずっていた。 32 こ
のような訳で,イスラエルの子孫は今も,動物の股関節にある筋を食べない。取っ組み合いをした人がヤコブ
の股関節に触れたからである。
  33 章
  1 ヤコブが目を上げると,エサウが400人の人たちと一緒に来るのが見えた。そこでヤコブは,レアと
ラケルと召し使いの女性2人に,それぞれの子供たちを託した。 2 前方に召し使いの女性たちとその子供たち
を,その後ろにレアとその子供たちを,その後ろにラケルとヨセフを配置した。 3 そしてヤコブ自身は先頭に
立って進み,自分の兄に近づくまでに7回ひれ伏した。
  4 するとエサウはヤコブに走り寄り,抱き締めて口づけした。2人は泣きだした。 5 エサウは女性や子
供たちの方を見ると,こう言った。「あなたと一緒にいるこの人たちは誰ですか」。ヤコブは言った。「神が
私に授けてくださった子供たちでございます」。 6 その時,召し使いの女性たちが子供たちと一緒に前に出て
きて,ひれ伏した。 7 そして,レアも子供たちと一緒に前に出てきて,ひれ伏した。それから,ヨセフがラケ
ルと一緒に前に出てきて,ひれ伏した。
  8 エサウは言った。「どうして私の所に,人と家畜の群れを来させたのですか」。ヤコブは答えた。「お
兄さまの好意を得たいと思ったからです」。 9 エサウは言った。「弟よ,私は非常にたくさんの物を持ってい
ます。だから,あなたの物はそのままにしておきなさい」。 10 ヤコブは言った。「いいえ,お願いです。も
し私のことを良く思ってくださっているのでしたら,あなたの顔を見るために持ってきたこの贈り物を,私の
手からぜひ受け取ってください。あなたの顔を見た時,神の顔を見ているようでした。私のことを喜んで迎え
てくださったからです。 11 心を込めた贈り物をお持ちしました。どうか受け取ってください。神が恵みを与
えてくださり,私は必要な物を全て持っています」。ヤコブがしきりに勧めたので,エサウは贈り物を受け取
った。
  12 その後エサウは言った。「さあ出発しましょう。私があなたの先を行きます」。 13 ヤコブは言った。
「お気付きのことと思いますが,子供たちは体力がなく,私が世話している羊や牛は子に乳を飲ませています。
1日であってもあまり速く進むと,群れは死に絶えてしまうことでしょう。 14 どうぞ,お兄さま,ぜひ先に
進んでいってください。私の方は,家畜と子供たちに合わせてゆっくり旅を続け,セイルのお兄さまの所に参
ります」。 15 エサウは言った。「よければ,私と一緒にいる何人かをあなたの所に残しましょう」。ヤコブ
は言った。「そうしていただくには及びません。お兄さまの好意を得られるだけで十分です」。 16 それでエ
サウはその日,セイルに向けて帰っていった。
  17 ヤコブはスコトに行き,自分の家と家畜小屋を造った。それでヤコブはその場所をスコトと名付けた。
  18 パダン・アラムから旅をしてきたヤコブは,カナン地方のシェケムという町に無事に着いた。そしてそ
の町の近くに宿営を張った。 19 ヤコブは,シェケムの父ハモルの子たちに100枚のお金を払い,天幕を張
った土地の一画を取得した。 20 そしてそこに祭壇を作った。ヤコブはその祭壇を「神はイスラエルの神であ
る」と呼んだ。
  34 章
  1 ヤコブとレアの間に生まれた娘ディナは,地元の娘たちと一緒にいようとしてよく出掛けていった。 2
ある時,地元の長であるヒビ人ハモルの子シェケムがディナを見掛け,つかまえて犯した。 3 シェケムはディ
ナに心を引かれるようになった。若いディナを好きになり,優しく語り掛けた。 4 やがてシェケムは父ハモル
に言った。「この女性が私の妻になるよう取り計らってください」。
  5 ヤコブは,娘ディナがシェケムに汚されたことを聞いた。その時,息子たちは家畜の群れと一緒に野原
に出ていたので,ヤコブは息子たちが帰ってくるまで黙っていた。 6 シェケムの父ハモルが,ヤコブと話そう
としてやって来た。 7 ところが,ヤコブの息子たちが起きたことを聞き,野原からすぐに戻ってきた。彼らは
不快に思い,憤慨していた。シェケムがヤコブの娘と寝てイスラエルを辱めたからである。それはしてはなら
ないことだった。
  8 ハモルは彼らに言った。「私の息子シェケムが,お嬢さんを慕っています。息子の妻にさせてください
ませんか。 9 私たちと結婚による同盟を結んでください。私たちが皆さんの娘を迎え,皆さんが私たちの娘を
迎えるのです。 10 そうすれば,皆さんは私たちと一緒に住めますし,土地を自由に使っていただけます。そ
こに住んで商売をし,定住なさってください」。 11 それからシェケムがディナの父と兄たちに言った。「ど
うか私の願いを聞いてください。ご希望の物があれば,何でも差し上げます。 12 どうぞ高額の花嫁料と贈り
物をお申し付けください。言ってくだされば,何でも喜んで差し上げます。ぜひとも娘さんと一緒にならせて
ください」。
  13 ヤコブの息子たちは,妹ディナをシェケムに汚されたことで,シェケムと父のハモルをわなに掛けよう
として答え, 14 こう言った。「割礼を受けていない男性に妹を渡すようなことはとてもできません。そんな
ことをするのは恥ずべきことです。 15 ただし,皆さんが私たちと同じように男性全員に割礼を施すというの
なら,承諾しましょう。 16 そして,私たちは皆さんに娘を与え,皆さんの娘を迎えます。皆さんと一緒に住
み,1つの民となります。 17 しかし,皆さんが私たちの言うことを聞かず,割礼を受けないのであれば,妹
を連れて立ち去ります」。
  18 ハモルも息子のシェケムも,彼らの提案を良いと思った。 19 シェケムはヤコブの娘をとても気に入
っていたので,すぐに提案通りにすることにした。シェケムは父の家の中で最も重んじられていた。
  20 ハモルと息子のシェケムは町の門の所に行き,町の人々に言った。 21 「あの人たちは私たちに友好
的です。この土地に住ませ,ここで商売をさせてあげませんか。住ませるのに十分な広い土地があります。私
たちは彼らの娘を妻として迎え,私たちの娘を彼らに与えることができます。 22 彼らは,私たちの男性全員
が彼らと同じように割礼を受けるのなら,私たちと一緒に住んで1つの民になると言っています。 23 そうな
れば,彼らの所有物,財産,家畜全ては私たちのものになるのではないでしょうか。彼らの言う通りにして,
一緒に住んでもらいましょう」。 24 町の門に集まる人たちは皆,ハモルとシェケムの言葉を聞き入れ,男性
の全員,町の門に集まる人全員が割礼を受けた。
  25 ところが,3日目のこと,その人たちがまだ痛みに苦しんでいる頃,ヤコブの2人の息子でディナの兄
であるシメオンとレビは,それぞれ剣を取って町に入った。町の人々は何の警戒もしておらず,2人は男たち
を皆殺しにした。 26 2人はハモルと息子のシェケムも剣で殺した。それからディナをシェケムの家から連れ
出し,そこを離れた。 27 ヤコブのほかの息子たちも,殺された人たちの所にやって来て,町の物を略奪した。
妹を汚されたからである。 28 羊,牛,ロバ,町や野原にあった物を全て奪った。 29 人々の所有物を全て奪
い,小さな子供や妻たちを皆捕らえ,家々にあった物を残らず強奪した。
  30 その後ヤコブはシメオンとレビに言った。「大変なことをしてくれたものだ。あなたたちのせいで,私
は,この地方に住むカナン人やペリジ人から憎まれてしまった。私の方は人数が少ない。彼らはきっと束にな
って私を攻め,私と家族を滅ぼしてしまうだろう」。 31 2人は言った。「妹が娼婦のように扱われてもいい
のですか」。
  35 章
  1 その後,神はヤコブに言った。「立ってベテルに行き,そこに住みなさい。そして,あなたが兄エサウ
から逃げていた時にあなたに現れた真の神のため,そこに祭壇を作りなさい」。
  2 そこでヤコブは,家の人たちや共にいる人全てに言った。「外国の神々の偶像をあなたたちの中から除
き,身を清め,服を着替えなさい。 3 立ってベテルに行きましょう。私はそこで真の神のために祭壇を作りま
す。神は,私が苦しい時に答えてくださり,私がどこに行く時も共にいてくださったのです」。 4 それで彼ら
は,持っていた外国の神々の偶像全部と,付けていた耳飾りをヤコブに渡した。ヤコブは,シェケムのそばに
あった大木の下にそれらを埋めた。
  5 旅の道中,神が周辺の町を恐怖に陥れたため,ヤコブの息子たちが人々に追跡されることはなかった。
6 ヤコブの一行はやがて,カナン地方のルズつまりベテルに着いた。 7 ヤコブはそこに祭壇を作り,その場
所をエル・ベテルと呼んだ。以前,彼が兄から逃げていた時,そこで真の神が彼に姿を見せたからだった。 8
その後リベカの乳母デボラが死に,ベテルの麓にある巨木の下に葬られた。それでその木はアッロン・バクトと
名付けられた。
  9 神は再び,パダン・アラムから帰る途中のヤコブに現れ,ヤコブを祝福した。 10 神は彼に言った。
「あなたの名前はヤコブだが,もうヤコブではなくなる。イスラエルがあなたの名前になる」。こうして神は
彼をイスラエルと呼ぶようになった。 11 神はさらに言った。「私は全能の神である。子を生んで,増えなさ
い。あなたから幾つもの国民,多くの国民が生まれ,あなたの子孫から王たちが出る。 12 私がアブラハムと
イサクに与えた土地をあなたに与える。そしてその土地をあなたの子孫に与える」。 13 それから神は,彼と
話した場所を離れ,昇っていった。
  14 ヤコブは神と話した場所に記念碑を立てた。それは石の記念碑で,ヤコブはそれに飲み物の捧げ物を注
ぎ,油も注いだ。 15 そして,神と話したその場所をその後もベテルと呼んだ。
  16 それから一行はベテルを出発した。エフラトまでまだ距離がある場所で,ラケルが産気づいて出産し始
めたが,ひどい難産だった。 17 彼女が苦しんでいると,助産婦が彼女に言った。「頑張ってください。今度
も男の子です」。 18 ラケルは息を引き取ろうとする時,その子をベン・オニと名付けた。しかし父はその子
をベニヤミンと呼んだ。 19 こうしてラケルは死に,エフラトつまりベツレヘムに向かう道のそばで葬られた。
20 ヤコブはラケルの墓の上に大きな石を置いた。それが,今もあるラケルの墓の石である。
  21 その後イスラエルはそこを出発し,エデルの塔を少し過ぎた辺りで天幕を張った。 22 イスラエルが
そこに滞在していた時,ルベンは父のそばめビルハの所に行ってビルハと寝た。イスラエルはそのことについ
て聞いた。
  ヤコブの息子は12人だった。 23 レアとの間にできた子は,ヤコブの長男ルベン,シメオン,レビ,ユ
ダ,イッサカル,ゼブルン。 24 ラケルとの間にできた子は,ヨセフとベニヤミン。 25 ラケルの召し使いビ
ルハとの間にできた子は,ダンとナフタリ。 26 レアの召し使いジルパとの間にできた子は,ガドとアシェル。
これらの人たちが,パダン・アラムで生まれた,ヤコブの息子である。
  27 ついにヤコブは,マムレにいる父イサクの所に着いた。そこは,キルヤト・アルバつまりヘブロンにあ
り,アブラハムもイサクも外国人として住んでいた場所である。 28 イサクは180歳まで生きた。 29 イサ
クは息を引き取り,先祖たちと共に横たわった。充実した長い人生だった。息子のエサウとヤコブが葬った。
  36 章
  1 以下は,エサウつまりエドムについての記録である。
  2 エサウはカナン地方の娘たちを妻とした。ヘト人エロンの娘アダ,ヒビ人ツィベオンの孫娘でアナの娘
であるオホリバマ, 3 イシュマエルの娘でネバヨトの姉妹のバセマトである。
  4 エサウとアダの間にはエリパズが生まれ,バセマトはレウエルを産んだ。
  5 オホリバマは,エウシュ,ヤラム,コラを産んだ。
  これらの人が,カナン地方で生まれた,エサウの子である。 6 エサウはやがて,妻と息子と娘たち,家の
人たち,家畜とほかの動物,カナン地方で蓄えた財産と共に,弟ヤコブの所から離れ,別の土地に向かった。
7 それぞれの所有物が増えたために一緒に住むのが難しくなり,家畜もいるため,住んでいた土地は狭過ぎた
のである。 8 こうしてエサウはセイルの山地に住むようになった。エサウとはエドムのことである。
  9 以下は,セイルの山地に住むエドム人の父エサウの系譜である。
  10 エサウの子の名前は次の通りである。エサウの妻アダの子エリパズ,エサウの妻バセマトの子レウエル。
  11 エリパズの子は,テマン,オマル,ツェフォ,ガタム,ケナズ。 12 ティムナがエサウの子エリパズ
のそばめとなり,やがてエリパズとティムナの間にアマレクが生まれた。これらの人が,エサウの妻アダの子
である。
  13 レウエルの子は,ナハト,ゼラハ,シャマ,ミザ。これらの人が,エサウの妻バセマトの子だった。
  14 エサウの妻オホリバマが産んだ子は,エウシュ,ヤラム,コラ。オホリバマはツィベオンの孫娘でアナ
の娘である。
  15 エサウの子の首長たちは次の通りである。エサウの長男エリパズの子は,テマン首長,オマル首長,ツ
ェフォ首長,ケナズ首長, 16 コラ首長,ガタム首長,アマレク首長。これらの人が,エドム地方のエリパズ
から出た首長で,アダの子である。
  17 エサウの子レウエルの子は,ナハト首長,ゼラハ首長,シャマ首長,ミザ首長。これらの人が,エドム
地方のレウエルから出た首長で,エサウの妻バセマトの子である。
  18 エサウの妻オホリバマの子は,エウシュ首長,ヤラム首長,コラ首長。これらの人が,アナの娘でエサ
ウの妻であるオホリバマから出た首長である。
  19 以上が,エサウつまりエドムの子の首長である。
  20 以下は,地元の住民,ホリ人セイルの子である。ロタン,ショバル,ツィベオン,アナ, 21 ディシ
ョン,エツェル,ディシャン。これらの人が,エドム地方にいる,セイルの子でホリ人の首長である。
  22 ロタンの子は,ホリ,ヘマム。ロタンの姉妹はティムナ。
  23 ショバルの子は,アルワン,マナハト,エバル,シェフォ,オナム。
  24 ツィベオンの子は,アヤ,アナ。アナは,父ツィベオンのロバの番をしていた時に荒野で温泉を見つけ
た。
  25 アナの子は,ディション,娘オホリバマ。
  26 ディションの子は,ヘムダン,エシュバン,イトラン,ケラン。
  27 エツェルの子は,ビルハン,ザアワン,アカン。
  28 ディシャンの子は,ウツ,アラン。
  29 ホリ人の首長たちは,ロタン首長,ショバル首長,ツィベオン首長,アナ首長, 30 ディション首長,
エツェル首長,ディシャン首長。これらの人が,セイル地方のホリ人の首長である。
  31 以下は,イスラエル人を治める王がまだいない時に,エドム地方で治めた王たちである。 32 ベオル
の子ベラがエドムで治めた。町の名前はディヌハバといった。 33 ベラが死ぬと,ボツラの人ゼラハの子ヨバ
ブが代わって治めた。 34 ヨバブが死ぬと,テマン人の土地から出たフシャムが代わって治めた。 35 フシャ
ムが死ぬと,モアブの領土でミディアン人を打ち破った,ベダドの子ハダドが代わって治めた。町の名前はア
ビトといった。 36 ハダドが死ぬと,マスレカの人サムラが代わって治めた。 37 サムラが死ぬと,川のそば
のレホボトの人シャウルが代わって治めた。 38 シャウルが死ぬと,アクボルの子バアル・ハナンが代わって
治めた。 39 アクボルの子バアル・ハナンが死ぬと,ハダルが代わって治めた。町の名前はパウといった。妻
はメヘタブエルといい,マトレドの娘でメザハブの孫娘である。
  40 エサウから出た首長たちの名前は次の通りである。氏族や居住地もその名前で呼ばれる。ティムナ首長,
アルワ首長,エテト首長, 41 オホリバマ首長,エラ首長,ピノン首長, 42 ケナズ首長,テマン首長,ミブ
ツァル首長, 43 マグディエル首長,イラム首長。これらが,エドムの首長および領地内の各居住地である。
エドム人の父エサウの子は,以上の通りである。
  37 章
  1 ヤコブは,父が外国人として住んだカナン地方にずっと住んでいた。
  2 以下はヤコブの家族についての記録である。
  ヨセフは17歳の時,家畜の群れの番をしていた。兄弟たちも一緒だった。父の妻ビルハとジルパの子た
ちである。ヨセフは,彼らの悪い行いについて父に伝えた。 3 イスラエルは,ほかのどの息子よりもヨセフを
愛した。高齢になってできた子だったからである。イスラエルはヨセフのために特別な長い服を作らせた。 4
兄弟たちは自分たちよりヨセフの方が父に愛されているのを知って,ヨセフを憎むようになり,ヨセフと穏や
かに話すことができなかった。
  5 ある時,ヨセフは夢を見て,それについて兄弟たちに話した。すると兄弟たちはますます憎しみを募ら
せた。 6 ヨセフはこう言ったのである。「私が見た夢について聞いてください。 7 私たちが畑の真ん中で作
物の束を作っていると,私の束が起き上がって真っすぐに立ちました。そしてみんなの束が私の束の周りに来
て,ひれ伏しました」。 8 兄弟たちは言った。「おまえは俺たちの王になって支配するというのか」。こうし
て彼らは,ヨセフが見た夢と言った事柄のために,ヨセフをますます憎んだ。
  9 その後ヨセフは別の夢を見,それについても兄弟たちに話した。「また夢を見ました。今度は,太陽と
月と11の星が私にひれ伏していました」。 10 ヨセフは,兄弟たちだけでなく父にも話した。すると父はヨ
セフを叱って,こう言った。「あなたが見たその夢はどういうことなんだ。私とお母さんと兄弟たちがあなた
のそばに行ってひれ伏すのか」。 11 兄弟たちはヨセフに嫉妬したが,父はヨセフが言ったことを心に留めた。
  12 さて,兄弟たちは,父の羊の群れをシェケムの近くの牧草地に連れていった。 13 少ししてから,イ
スラエルはヨセフに言った。「あなたの兄弟たちはシェケムの近くで群れの番をしている。そこに使いに行っ
てくれないか」。ヨセフは言った。「分かりました」。 14 それでイスラエルは言った。「では,行って,兄
弟たちが無事かどうかを見てきてほしい。そして群れの様子も教えてもらいたい」。そうしてヨセフをヘブロ
ンの谷から送り出した。ヨセフはシェケムに向かった。 15 ヨセフが野原をさまよっていると,ある人に出会
った。その人はヨセフに尋ねた。「何を捜しているのですか」。 16 ヨセフは言った。「兄弟たちを捜してい
ます。どこで群れの番をしているか,ご存じですか」。 17 その人は言った。「あの人たちなら,ここから引
き揚げていきました。『ドタンに行こう』と言っていましたよ」。それでヨセフは兄弟たちの後を追っていき,
ドタンで見つけた。
  18 兄弟たちは遠くにヨセフを見掛けた。ヨセフがまだ近くに来ないうちに,彼らはヨセフを殺そうとたく
らみ始めた。 19 こう言い合った。「見ろ,あの夢見る方がやって来るぞ。 20 さあ,あいつを殺してどこか
の貯水穴に投げ込んでやろう。どう猛な野獣に食い殺されたと言えばいい。あいつの夢がどうなるか,見てや
ろうじゃないか」。 21 ルベンはこれを聞き,ヨセフを助けようとして,「命を奪うのはやめよう」と言った。
22 ルベンはさらに言った。「殺してはいけない。荒野のこの貯水穴に投げ落とすといい。でも危害を加えて
はいけない」。ヨセフを助け出して父の所に帰らせようとしていたのである。
  23 ヨセフがそばまで来ると,兄弟たちはすぐにヨセフが着ていた特製の長い服を剥ぎ取った。 24 そし
て彼をつかんで,貯水穴の中に投げ落とした。その穴は空で,中に水はなかった。
  25 兄弟たちはそれから食事のために腰を下ろした。目を上げると,ギレアデからやって来るイシュマエル
人の商人の一団が見えた。ラダナムゴム,バルサム,樹脂の多い樹皮をラクダに載せて,エジプトに行く途中
だった。 26 ユダが兄弟たちに言った。「弟を殺してそれを隠したところで何の得にもならない。 27 あいつ
をあのイシュマエル人に売ろうじゃないか。殺すのはやめておこう。俺たちの兄弟,肉親なんだから」。兄弟
たちは同意した。 28 イシュマエル人の商人たちがそばを通り掛かると,兄弟たちはヨセフを穴から引き上げ,
銀20枚でイシュマエル人に売った。その人たちはヨセフをエジプトに連れていった。
  29 その後ルベンが穴の所に戻ってみると,中にヨセフはいなかった。ルベンは自分の衣服を引き裂いた。
30 そして兄弟たちの所に戻り,こう叫んだ。「あの子がいなくなっている! ああ,私はいったいどうしたら
いいのか」。
  31 兄弟たちはヨセフの長い服を取り,雄ヤギを殺して,その血の中にその服を浸した。 32 そして,そ
の特製の長い服を父の所に送り,こう伝えさせた。「私たちはこれを見つけました。あなたの子の服かどうか,
調べてください」。 33 父は調べて,叫んだ。「あの子の服だ! どう猛な野獣に襲われたのだ! ヨセフはき
っと切り裂かれたのだ!」 34 ヤコブは自分の衣服を引き裂き,腰に粗布を巻き,息子のことで何日も嘆き悲
しんだ。 35 息子や娘たちは皆,何度もヤコブを慰めようとしたが,ヤコブは聞こうとせず,こう言うのだっ
た。「あの子のことを嘆きながら,私は墓に入ろう」。こうして父はヨセフのことで泣き続けた。
  36 一方,イシュマエル人たちはエジプトで,ヨセフをファラオの廷臣で護衛官の長であるポテパルに売っ
た。
  38 章
  1 その頃,ユダは兄弟たちから離れて,アドラムの人ヒラの近くに天幕を張った。 2 ユダはそこで,カ
ナン人シュアの娘と出会った。ユダは彼女を妻とし,関係を持った。 3 彼女は妊娠し,男の子を産んだ。ユダ
はその子をエルと名付けた。 4 彼女は再び妊娠して男の子を産み,オナンと名付けた。 5 彼女はさらに男の
子を産んで,シェラと名付けた。彼女がその子を産んだ時,ユダはアクジブにいた。
  6 やがてユダは長男エルのために妻を迎えた。名前はタマルといった。 7 しかし,長男エルはエホバに
とって不快なことをしていたため,エホバは彼を死に至らせた。 8 それでユダはオナンに言った。「兄さんの
妻と関係を持って義兄弟結婚をし,兄さんのために子孫を残しなさい」。 9 オナンは,子孫が生まれても自分
のものにはならないことを知っていた。それで兄の妻と関係を持つ時は精液を地面に流して,兄に子孫ができ
ないようにしていた。 10 彼がしたことはエホバから見て悪いことだった。そのため神は彼も死に至らせた。
11 ユダは嫁のタマルに言った。「息子のシェラが大人になるまでは,父親の家でやもめとして暮らしなさい」。
ユダは,「あの子も上の子たちのように死んでしまうかもしれない」と思ったのである。タマルは父の家に行
き,そこで暮らした。
  12 しばらく後,シュアの娘であるユダの妻が死んだ。喪の期間が終わってから,ユダは羊の毛を刈る人た
ちがいるティムナに行った。アドラムの人である友人ヒラも一緒だった。 13 ある人がタマルに告げた。「あ
なたのしゅうとが羊の毛を刈りにティムナに向かっています」。 14 そこでタマルはやもめの服を脱ぎ,ベー
ルをかぶってショールを巻き,エナイムの入り口の所に座った。エナイムはティムナに行く途中にある。彼女
は,シェラが大人になったのに,自分が妻として迎えられていないのを知っていた。
  15 ユダは彼女を見掛け,すぐに娼婦だと思った。彼女が顔を覆っていたからである。 16 それで道端に
いた彼女に近づき,「あなたと関係を持たせてくれませんか」と言った。息子の妻だと分からなかったのであ
る。彼女は言った。「私と関係を持つために,何を下さいますか」。 17 ユダは言った。「群れの中から子ヤ
ギを送りましょう」。彼女は言った。「それを受け取るまで,何か保証になる物を頂いておけますか」。 18
ユダは言った。「どんな物がいいですか」。彼女は言った。「あなたの印章付きの指輪とひも,お持ちのつえ
を下さい」。それでユダはそれらを渡して彼女と関係を持った。こうして彼女はユダによって妊娠した。 19
その後,タマルは立ってそこを去り,ショールを外して,やもめの服を着た。
  20 ユダは,保証として渡した物を女性から取り戻すため,子ヤギをアドラムの人である友人に託して行か
せた。ところが,その人はどうしても女性を見つけられなかった。 21 それで地元の人たちに,「エナイムの
道端にいたあの神殿娼婦はどこにいますか」と尋ねた。しかし彼らは,「ここに神殿娼婦がいたことはありま
せん」と言った。 22 彼はユダの所に戻ってきて,言った。「女性は見つかりませんでした。しかも,地元の
人たちは,『ここに神殿娼婦がいたことはない』と言っていました」。 23 ユダは言った。「あれはあの人に
あげたことにしましょう。これ以上捜すと,私たちの恥をさらすことになってしまいます。とにかく,この子
ヤギを届けようとしましたが,見つけられなかったのです」。
  24 3カ月ほど後のこと,ある人がユダにこう告げた。「あなたの息子の妻タマルは娼婦のようなことをし
て,しかも妊娠しています」。ユダは言った。「彼女を連れ出して,焼いてしまいなさい」。 25 連れ出され
る時,タマルは人に頼んで,しゅうとに次のように伝えさせた。「これらの物の持ち主によって私は妊娠しま
した」。また,「この印章付きの指輪,ひも,つえが誰の物か,お調べください」とも伝えさせた。 26 ユダ
は調べて,こう言った。「彼女の方が正しい。彼女を息子のシェラの妻にしなかった私が悪いのだ」。その後
ユダがタマルと関係を持つことはなかった。
  27 やがてタマルが出産する時が来た。胎内には双子がいた。 28 出産の時,一方の子が手を出したので,
助産婦はすぐに緋色の糸を取ってその手にくくり付け,「先に出たのはこの子」と言った。 29 その子が手を
引っ込めると,もう一方の子が出てきた。それで助産婦は叫んだ。「何でこんな裂け目を作るようなことをす
るの!」 そのためその子はペレツと名付けられた。 30 それから,手に緋色の糸を付けた子が出てきた。その
子はゼラハと名付けられた。
  39 章
  1 イシュマエル人はヨセフをエジプトに連れてきた。ヨセフは,ファラオの廷臣で護衛官の長であるエジ
プト人ポテパルに買い取られた。 2 それでもエホバがヨセフと共にいた。そのためヨセフは成功を収め,エジ
プト人の主人の家での務めを与えられた。 3 主人は,エホバがヨセフと共にいて,エホバがヨセフのすること
全てを成功させている,と感じた。
  4 ヨセフはその後も主人に気に入られ,主人のそばで仕えることになった。主人はヨセフに家の管理を任
せ,自分のもの全てを委ねた。 5 その時から,エホバはヨセフのゆえにそのエジプト人の家を祝福し続けた。
家でも戸外でも,主人のもの全てにエホバの祝福があった。 6 主人は,持っているあらゆるものをヨセフに任
せたので,自分が食べる物のことだけを考えていればよかった。しかもヨセフは,りりしい顔立ちの,たくま
しい人になっていた。
  7 こうしたことの後,主人の妻がヨセフに目を留め,「私と寝て」と言うようになった。 8 しかしヨセ
フは拒み,主人の妻に言った。「ご主人さまは,家の中のことを私に任せ,全く心配しておられません。全て
のものを私に委ねてくださっています。 9 この家に私の上に立つ人はいません。ご主人さまが私に下さらない
ものはありません。でもあなたは別です。奥さまだからです。そのような非常に悪いことをして,神に対して
罪を犯すことなど,どうしてできるでしょうか」。
  10 彼女は毎日言い寄ったが,ヨセフは彼女のそばで横になることも一緒に居続けることも決してなかった。
11 ある日のこと,ヨセフは仕事のため家に入った。その時,家の中には召し使いが誰もいなかった。 12 す
ると彼女はヨセフの服をつかんで,「私と寝て!」と言った。ヨセフは,服を残したまま外に逃げた。 13 彼
女は,ヨセフが服を残したまま外に逃げていったのを見ると, 14 叫んで家の人たちを呼び,こう言った。
「主人があんなヘブライ人の男を連れてくるなんて。あの男は私たちを笑いものにしようとしているのよ。入
ってきて私と寝ようとしたから,大声で叫んだの。 15 叫び声を聞いたら,服を残したまますぐ逃げていった
わ」。 16 そうして彼女は,主人が家に戻ってくるまで,ヨセフの服をそばに置いておいた。
  17 彼女は主人に同じことを話した。「あなたが連れてきたあのヘブライ人の召し使いが,私の所に入って
きて,私を笑いものにしようとしたのよ。 18 でも,私が大声で叫んだから,服を残したまますぐ逃げていっ
たわ」。 19 主人は,妻が「あなたの召し使いにこんなことをされた」と話すのを聞いて,怒りに燃えた。
20 それで主人はヨセフを捕らえて牢獄に入れた。そこは王が囚人たちを収容しておく所で,ヨセフはその牢獄
にずっと入れられた。
  21 それでも,エホバが引き続きヨセフと共にいて,揺るぎない愛を示したので,ヨセフは牢獄の長に気に
入られるようになった。 22 長は,牢獄内の囚人全員をヨセフに監督させた。囚人たちが行うことは全てヨセ
フが指示した。 23 ヨセフに任せておけば,牢獄の長は安心だった。エホバがヨセフと共にいて,エホバがヨ
セフのすること全てを成功させていたからである。
  40 章
  1 こうしたことの後,エジプトの王の献酌人の長と料理人の長が,主人である王に対して罪を犯した。 2
ファラオはその2人の家来に対して憤り, 3 2人を護衛官の長の家にある牢獄に入れた。ヨセフが入れられて
いる所である。 4 護衛官の長はヨセフに,2人の世話をするよう命じた。こうして2人は牢獄にしばらくいた。
  5 エジプトの王の献酌人と料理人は牢獄の中で,同じ夜に別の夢を見た。それぞれの夢には意味が込めら
れていた。 6 翌朝,ヨセフが来てみると,2人は元気がない様子だった。 7 それでヨセフは尋ねた。「今日
はどうして沈んだ顔をしているのですか」。 8 彼らは言った。「夢を見たのですが,意味を解き明かしてくれ
る人がいないのです」。ヨセフは言った。「神が解き明かしてくださるのではないでしょうか。どんな夢か,
私に話してください」。
  9 献酌人の長が,見た夢についてヨセフに話した。「夢の中で,私の前にブドウの木がありました。 10
そのブドウの木には3本のつるがあり,新芽も出ていました。花が咲き,ブドウの房が熟しました。 11 私は
そのブドウを取り,持っていたファラオの杯に搾って入れました。そして杯をファラオに手渡しました」。 12
ヨセフは言った。「その夢の意味はこうです。3本のつるは3日のことです。 13 3日後,ファラオはあなた
をここから出し,元の立場に戻します。献酌人として,以前と同じようにファラオに杯を渡すことになります。
14 それで,その通りになったら,私のことを必ず思い出してください。そして揺るぎない愛を私に示し,私
のことをファラオに話して,ここから出られるようにしてください。 15 私はヘブライ人の土地から無理やり
連れてこられたのです。ここでも,投獄されるようなことは何もしていません」。
  16 ヨセフが言った夢の意味が好ましいものだったので,料理人の長はヨセフに言った。「私も夢を見まし
た。私の頭の上に,白いパンが入った3つの籠が載っていました。 17 一番上の籠に,ファラオのために焼い
たいろいろな物が入っていましたが,鳥たちがそれらを食べていました」。 18 ヨセフは答えた。「その夢の
意味はこうです。3つの籠は3日のことです。 19 3日後,ファラオは,首をはねてあなたを杭に掛けます。
そして鳥があなたの肉を食べます」。
  20 3日後はファラオの誕生日だった。ファラオは家来たち全員を招いて宴を催し,家来たちの前に献酌人
の長と料理人の長を連れてこさせた。 21 そして献酌人の長を元の職務に戻した。彼は引き続きファラオに杯
を手渡すことになった。 22 一方,料理人の長は杭に掛けられ,ヨセフが言った通りになった。 23 しかし,
献酌人の長はヨセフのことを思い出さず,忘れてしまった。
  41 章
  1 丸2年がたった頃,ファラオは夢を見た。夢の中で,ファラオはナイル川の近くに立っていた。 2 す
るとその川から,肉付きの良い美しい7頭の雌牛が上がってきて,川のそばで草を食べた。 3 その後,痩せ細
った醜い7頭の雌牛がナイル川から上がってきて,川岸にいる肉付きの良い雌牛の横に立った。 4 それから,
痩せ細った醜い雌牛が,肉付きの良い美しい7頭の雌牛を食い尽くしていった。ここでファラオは目が覚めた。
  5 ファラオは再び眠り,別の夢を見た。穀物の1本の茎から,実の詰まった立派な穂が7つ出ていた。 6
その後,東からの熱風で干からびた細い穂が7つ出てきた。 7 それから,その細い穂が,実の詰まった7つの
立派な穂をのみ込んでいった。ここでファラオは目が覚め,夢だと気付いた。
  8 朝になり,胸騒ぎがしたファラオは,人を使ってエジプト中の魔術師と賢者を呼び集めた。そして,見
た夢について話した。しかし,誰一人として,ファラオに夢の意味を解き明かすことはできなかった。
  9 そこで献酌人の長がファラオに話した。「ここに,私の罪を打ち明けます。 10 ファラオは,家来のこ
とでお怒りになりました。私と料理人の長のことです。それで私たちは,護衛官の長の家にある牢獄に入れら
れました。 11 その後,同じ夜に私たちはそれぞれ夢を見ました。どちらも意味が込められた夢でした。 12
そこには,護衛官の長の召し使いであるヘブライ人の若者がいました。夢について彼に話すと,それぞれの意
味を解き明かしてくれました。 13 そして彼が言った通りになりました。私は元の立場に戻り,もう1人は杭
に掛けられました」。
  14 ファラオは,ヨセフを牢獄からすぐに連れてこさせた。ヨセフは毛をそって服を着替え,ファラオの所
に入った。 15 ファラオはヨセフに言った。「私は夢を見たのだが,その意味を解き明かせる人がいない。聞
くところによると,おまえは夢を聞いて意味を解き明かせるそうだな」。 16 ヨセフはファラオに答えた。
「私ではありません。神がファラオの繁栄についてお告げになります」。
  17 ファラオはヨセフに話した。「夢の中で,私はナイル川の岸に立っていた。 18 するとナイル川から,
肉付きの良い美しい7頭の雌牛が上がってきて,川のそばで草を食べ始めた。 19 その後,貧弱で痩せ細った,
みすぼらしい7頭の雌牛が上がってきた。エジプト中で,あれほどみすぼらしい雌牛はこれまで見たことがな
い。 20 それから,その痩せこけたみすぼらしい雌牛が,肉付きの良い初めの7頭の雌牛を食い尽くした。
21 全部を平らげたにもかかわらず,見た目からはそうとは全く分からなかった。元のまま,みすぼらしかった
からだ。そこで私は目が覚めた。
  22 そして,また夢を見た。穀物の1本の茎から,実の詰まった立派な穂が7つ出ていた。 23 その後,
東からの熱風で干からび,しなびた細い穂が7つ出てきた。 24 それから,その細い穂が7つの立派な穂をの
み込んでいった。私は魔術師たちにこのことを話したが,誰も意味を説明できなかった」。
  25 するとヨセフはファラオに言った。「ファラオがご覧になった夢は,どちらにも同じ意味があります。
真の神が,行おうとしていることをファラオにお告げになったのです。 26 7頭の立派な雌牛は7年のことで
す。7つの立派な穂も7年のことです。2つの夢には同じ意味があります。 27 後から上がってきた,痩せこ
けたみすぼらしい7頭の雌牛は7年のことで,東からの熱風で干からびた,空の7つの穂は7年の飢饉のこと
です。 28 私がファラオに申し上げた通り,真の神が,行おうとしていることをファラオにお示しになったの
です。
  29 これから7年の間,エジプト中で大豊作になります。 30 しかし,その後の7年は必ず飢饉になりま
す。大豊作のことは忘れ去られ,飢饉がエジプトを襲います。 31 以前の豊作を思い出せないほどの非常に厳
しい飢饉です。 32 ファラオが夢を2度ご覧になったのは,真の神がこのことをしっかりお定めになったから
です。真の神は速やかに事を運ばれます。
  33 それで今すぐ,思慮深くて賢い人をお探しになり,その人にエジプト全土を管理させるのがよいかと思
います。 34 そして,ぜひとも監督たちを任命なさってください。7年の豊作の間,エジプトの収穫量の5分
の1を集めるためです。 35 これから来る豊年の間,監督たちに穀物を集めさせ,町々で確実に備蓄させてく
ださい。それらの穀物は,ファラオの権限の下に置かれます。 36 その穀物があれば,エジプトで生じる7年
の飢饉の間,食糧を供給でき,国は滅亡せずに済むでしょう」。
  37 ファラオと家来たち皆は,この提案を良いと思った。 38 ファラオは家来たちに言った。「神の力が
働いているこのような人がほかにいるだろうか」。 39 そしてヨセフに言った。「神がこうしたこと全てをあ
なたに知らせたのだから,あなたほど思慮深くて賢い人はいない。 40 あなたに私の家を管理させよう。私の
民は皆,あなたに服従することになる。王である私だけがあなたの上に立つ」。 41 ファラオはさらに言った。
「ここに,私はあなたをエジプト全土の管理官とする」。 42 そうしてファラオは認印指輪を自分の指から外
してヨセフの指にはめ,ヨセフに上等の亜麻布の服を着せ,金の首飾りを掛けさせた。 43 それから,自分が
持つ2番目に良い兵車に乗らせた。ヨセフの前を行く人たちは「アブレーク!」と叫ぶのだった。こうしてフ
ァラオはヨセフをエジプト全土の管理官にした。
  44 ファラオはヨセフに言った。「ファラオは私だが,あなたの認可なしでは,エジプト全土の誰であれ,
何一つ行えない」。 45 その後ファラオはヨセフに,ザフナテ・パネアという名前を与え,オンの祭司ポティ
フェラの娘アセナトを妻として与えた。こうしてヨセフはエジプト全土を監督することになった。 46 エジプ
トの王ファラオの前に立った時,30歳だった。
  ヨセフはファラオの前から出て,エジプト全土を回った。 47 7年の豊作の間,収穫は非常に多かった。
48 ヨセフは7年間,エジプト全土で穀物を集め,町々に備蓄した。周囲の畑で取れた穀物を各町に保管したの
である。 49 ヨセフは,膨大な量の穀物を備蓄していった。それは海の砂のように多くなり,量り切れなくな
ったので,やがて量られることはなくなった。
  50 飢饉の年が来る前に,ヨセフに息子が2人生まれた。オンの祭司ポティフェラの娘アセナトが産んだの
である。 51 ヨセフは長男をマナセと名付けた。ヨセフが言うには,「神が,私の苦労と父の家族のことを全
て忘れさせてくださった」からだった。 52 そして2人目の子をエフライムと名付けた。ヨセフが言うには,
「神が,私の苦難の土地で子供たちが生まれるようにしてくださった」からだった。
  53 エジプトで続いた7年間の豊作は終わり, 54 ヨセフが言った通り,7年間の飢饉が始まった。飢饉
はあらゆる国を襲ったものの,エジプト全土には食糧があった。 55 しかし,やがてエジプト各地で人々が飢
饉に苦しむようになり,ファラオにパンを求めて叫び声を上げた。ファラオはエジプト人全てに言った。「ヨ
セフの所に行って指示に従いなさい」。 56 地上全域で飢饉が続いた。飢饉はエジプトでも猛威を振るったた
め,ヨセフは町々にあった全ての穀物倉庫を開け,エジプト人に売り始めた。 57 他のあらゆる国の人々も,
ヨセフから穀物を買うためにエジプトにやって来た。飢饉は地上全域で猛威を振るっていたのである。
  42 章
  1 さて,ヤコブはエジプトに穀物があることを知り,息子たちに言った。「どうして何もせずに顔を見合
わせているのか」。 2 さらに言った。「エジプトには穀物があるそうだ。エジプトに行って穀物を買ってきな
さい。そうすれば,私たちは飢え死にしないで済む」。 3 そこでヨセフの兄たち10人が,穀物を買うために
エジプトに向かった。 4 ヤコブは,ヨセフの弟ベニヤミンは一緒に行かせなかった。ヤコブが言うには,「あ
の子にもしものことがあったらいけない」からだった。
  5 イスラエルの息子たちは,食糧を買いに行くほかの人たちと共にエジプトに行った。飢饉はカナン地方
にまで広がっていたのである。 6 ヨセフがエジプトを治めていた。あらゆる国の人々に穀物を売っているのも
彼だった。ヨセフの兄たちもやって来て,身をかがめてヨセフにひれ伏した。 7 兄たちを見た時,ヨセフはす
ぐに気付いたが,自分のことは明かさなかった。そして彼らに厳しい口調で言った。「どこから来たのか」。
彼らは言った。「カナン地方から食糧を買いに参りました」。
  8 このように,ヨセフは兄たちだと気付いたが,兄たちはヨセフだと気付かなかった。 9 ヨセフはすぐ
に,兄たちについて見た夢のことを思い出した。それから彼らに言った。「スパイだな! この国の弱みを探ろ
うとしてやって来たんだろう!」 10 彼らは言った。「いいえ,ご主人さま,私どもは食糧を買うために参り
ました。 11 私どもは皆兄弟で,正直な人間です。スパイなどではございません」。 12 ヨセフは言った。
「いや,この国の弱みを探ろうとしてやって来たのだ!」 13 彼らは言った。「私どもはカナン地方にいる父
の息子で,12人兄弟です。一番下の弟は今父の所におり,あとの1人はもうおりません」。
  14 ヨセフは言った。「それだ。言った通りだ。やはり,スパイだな。 15 あなたたちを試そう。私はフ
ァラオに懸けて誓う。一番下の弟がここに来ない限り,あなたたちをここから出すことはしない。 16 誰か1
人が行って弟を連れてきなさい。それまではあなたたちを捕らえておく。そうすれば,あなたたちが言ってい
ることが真実なのかどうかが分かるだろう。もし真実でなければ,確かにスパイだ」。 17 ヨセフはこうして
彼らを3日間拘禁した。
  18 3日目にヨセフは彼らに言った。「私は神を畏れている。だから,私の言う通りにして,生き続けなさ
い。 19 あなたたちが正直な人間なら,今拘禁されている家に誰か1人が残り,ほかの人は行ってよい。飢饉
に苦しむ家族のために穀物を持っていきなさい。 20 それから,一番下の弟を連れてきなさい。そのようにし
て,あなたたちの言ったことが信用できると分かれば,あなたたちが死ぬことはない」。彼らはその通りにす
ることにした。
  21 彼らはこう言い合った。「これはきっと,弟にしたことの罰だ。彼はすがり付いてきたのに,私たちは
苦しむ様子を見ながら無視した。だからこんな苦しい目に遭うのだ」。 22 ルベンが言った。「『あの子を傷
つけてはいけない』と私は言ったではないか。それなのに,あなたたちは聞かなかった。だから今,彼の血の
代価を求められているのだ」。 23 ヨセフが聞いて理解していることを,彼らは知らなかった。間には通訳が
いたからである。 24 ヨセフはその場を離れ,泣いた。そして戻ってから再び話し,シメオンを選んで彼らが
見ている所で縛った。 25 それからヨセフは命令を出して,彼らの袋に穀物をいっぱいに入れさせた。また,
彼らのお金を各人の袋に戻させ,旅に必要な食べ物も渡させた。これらはその通りに行われた。
  26 こうして彼らは穀物をロバに積んで出発した。 27 宿で,ロバに飼い葉をやろうとして1人が自分の
袋を開けた。すると,袋の口の所にお金が入っていた。 28 彼は兄弟たちに言った。「私のお金が戻ってきて
いる。袋の中に入っているのだ!」 それで彼らは動揺し,おびえながら顔を見合わせて言った。「神はどうし
てこんな罰をお与えになるのだろう」。
  29 カナン地方の父ヤコブの所に着くと,起きたことを全部話した。 30 「あの国の主人は厳しい口調で
話し,私たちのことを国の偵察に来たスパイだと非難しました。 31 それで私たちは言いました。『私たちは
正直な人間です。スパイではありません。 32 私たちは同じ父の息子で,12人兄弟です。1人はもういませ
んが,一番下の弟は今,カナン地方の父の所にいます』。 33 ところが,国の主人は言いました。『あなたた
ちが正直かどうか,確かめることにしよう。1人を私のもとに残し,飢饉に苦しむ家族のために穀物を持って
いきなさい。 34 それから,一番下の弟を連れてきなさい。そのようにして,あなたたちがスパイではなく正
直であることが分かれば,ここに残った兄弟を返そう。そして,この国で取引することを許可しよう』」。
  35 その後,彼らは自分の袋の中身を出していった。すると各人のお金の包みが入っていた。彼らも父も,
お金の包みを見て怖くなった。 36 父ヤコブが声を上げた。「あなたたちは,私から次々と奪っていく! ヨセ
フはもういない。シメオンももういない。その上ベニヤミンまで連れていこうとするとは。私はどうしてこん
な目に遭わなくてはいけないのだ!」 37 ルベンが父に言った。「もし私がベニヤミンを連れて帰らないなら,
私の2人の息子の命を取って構いません。彼を私に任せてください。必ず連れて帰ります」。 38 父は譲らず,
こう言った。「私の子をあなたたちと一緒に行かせはしない。あの子の兄は死に,あの子だけが残っているの
だ。道中であの子にもしものことがあれば,白髪の私はあなたたちのせいで悲しみながら墓に入ることにな
る」。
  43 章
  1 その地方の飢饉は,依然として深刻だった。 2 そのため,エジプトから持ち帰った穀物を皆で食べ尽
くすと,父は息子たちに言った。「もう一度行って,食糧を少し買ってきなさい」。 3 するとユダが言った。
「あの人から,『弟と一緒に来ない限り,二度と私の顔を見てはならない』とはっきり告げられました。 4 弟
と一緒に行かせてくださるのでしたら,あなたのために食糧を買いに行きます。 5 ですが,一緒に行かせてく
ださらないのでしたら,行きません。あの人に,『弟と一緒に来ない限り,二度と私の顔を見てはならない』
と言われたのです」。 6 イスラエルは尋ねた。「どうして私をこんな目に遭わせるのか。なぜほかに弟がいる
と言ったのか」。 7 息子たちは答えた。「あの人が,『父親はまだ生きているか。ほかに兄弟がいるか』と言
って,私たちや家族のことについて聞いてくるので,本当のことを話したのです。まさか,『弟を連れてこ
い』と言われるなどとは思ってもみませんでした」。
  8 それからユダが父イスラエルに言った。「弟を私と一緒に行かせてください。私たちもあなたも私たち
の子供たちも飢え死にしないよう,どうか行かせてください。 9 弟のことは私が保証します。私が責任を負い
ます。もし弟を連れて帰らず,あなたにお返ししないようなことがあれば,私は一生あなたに対する罪を負い
ます。 10 私たちがちゅうちょしていなければ,これまでに2度は行ってこられたでしょう」。
  11 父イスラエルは息子たちに言った。「そういうことなら,こうしなさい。この地方のよりすぐりの特産
品を袋に入れ,その人への贈り物として持っていきなさい。バルサムと蜜を少し,ラダナムゴム,樹脂の多い
樹皮,ピスタチオ,アーモンドなどだ。 12 また,2倍のお金を持っていき,袋の口の所に入っていたお金は
返しなさい。きっと何かの間違いだったのだろう。 13 弟を連れて,もう一度その人の所に行きなさい。 14
その人が情けを掛け,あなたたちの兄弟とベニヤミンを返してくれるよう,全能の神が導いてくださいますよ
うに。しかし,もしこの私が子供を失わなければならないのであれば,それを受け入れるしかない」。
  15 そこで兄弟たちは贈り物と2倍のお金を持ち,ベニヤミンを連れて出発した。そしてエジプトに行き,
再びヨセフの前に立った。 16 ベニヤミンが一緒にいるのを見て,ヨセフはすぐに家の管理人に言った。「こ
の人たちを家に連れていき,肉を準備して調理し,昼にこの人たちが私と一緒に食事できるようにしなさい」。
17 管理人は直ちにヨセフの言う通りにし,一行をヨセフの家に連れていった。 18 しかし,ヨセフの家に連
れてこられた兄弟たちは怖くなり,こう言った。「あの時,袋に入っていたお金のことで,ここに連れてこら
れたんだ。きっとひどい目に遭わされて,奴隷にされ,ロバも奪われるだろう」。
  19 それで彼らはヨセフの家の管理人に近づき,家の入り口で話し掛けた。 20 「すみません。私たちは
確かに,以前も食糧を買いに来ました。 21 ところが,宿に着いてそれぞれの袋を開けていくと,なぜか,各
人のお金が袋の口の所に入っていました。そっくりそのまま入っていたのです。それで,それをお返ししたい
と思っています。 22 食糧を買うために,さらにお金を持ってきています。誰がお金を袋に入れたのか,私た
ちは知りません」。 23 管理人は言った。「大丈夫です。心配要りません。皆さんの神,皆さんのお父さまの
神が,袋に宝をお入れになったのです。皆さんのお金は受け取っています」。その後,彼はシメオンを兄弟た
ちの所に連れてきた。
  24 管理人は一行をヨセフの家に入れ,水を持ってきて足を洗えるようにし,ロバに飼い葉をやった。 25
兄弟たちは,昼に来るヨセフのために贈り物を用意した。そこで一緒に食事をすると聞いていたのである。 26
ヨセフが家の中に入ると,彼らは持ってきた贈り物をヨセフに差し出し,ひれ伏した。 27 その後ヨセフは,
元気かどうかを彼らに尋ねた。「あなたたちが話していた高齢の父親は元気でいますか。今も生きています
か」。 28 彼らは,「私どもの父は元気で,今も生きております」と言った。そして身をかがめ,ひれ伏した。
  29 ヨセフは目を上げて,自分の母の子である弟ベニヤミンを見ると,「この人が,あなたたちが言ってい
た一番下の弟ですか」と言った。そしてベニヤミンに,「神があなたを祝福してくださいますように」と言っ
た。 30 ヨセフは急いでその場を離れた。弟への思いが込み上げてきたのである。泣く場所を探し,私室に入
って涙を流した。 31 ヨセフは顔を洗い,落ち着きを取り戻して出ていった。そして,「食事を出しなさい」
と言った。 32 ヨセフ,兄弟たち,共にいるエジプト人に別々に食事が出された。エジプト人はヘブライ人と
一緒に食事をすることができなかったからである。そうすることはエジプト人にとって忌まわしいことなので
ある。
  33 兄弟たちはヨセフの前に,長男としての権利を持つ長男から一番下の弟まで,年齢順に座らされた。そ
れで兄弟たちは驚いて顔を見合わせるのだった。 34 ヨセフは,自分の食卓からそれぞれの分を運ばせ,ベニ
ヤミンの分をほかの人たちの5倍にした。こうして一同は,ヨセフと共に十分に食べて飲んだ。
  44 章
  1 その後,ヨセフは家の管理人に命じた。「あの人たちの袋に,持っていけるだけの食糧をいっぱいに入
れ,各人のお金をそれぞれの袋の口の所に入れておきなさい。 2 そして一番年下の人の袋の口には,穀物の代
金と一緒に,私の銀の杯を必ず入れておきなさい」。管理人はヨセフの指示通りにした。
  3 朝,明るくなってから,一行は見送られ,ロバを連れて出発した。 4 一行がまだ町から遠く離れてい
ない時に,ヨセフは家の管理人に言った。「今すぐ,あの人たちの後を追いなさい。追い付いたなら,こう言
いなさい。『あなたたちはどうして,恩をあだで返すようなことをしたのか。 5 あの杯は,私の主人が飲む時
や将来を占う時に使うものではないか。あなたたちは悪いことをした』」。
  6 管理人は一行に追い付き,言われたことを話した。 7 彼らは言った。「どうしてそのようなことをお
っしゃるのでしょうか。私どもはそんなことをするなど考えもしません。 8 袋の口の所に入っていたお金をお
返しするため,カナン地方から持ってきたではありませんか。それなのに,あなたのご主人さまの家から銀や
金を盗み出すことなどあり得るでしょうか。 9 私たちの中に,それを持っている者が見つかったなら,その者
は死なせ,ほかの者はご主人さまの奴隷にしてください」。 10 管理人は言った。「いいでしょう。しかし,
持っていた人が奴隷となります。ほかの人は無罪です」。 11 そこで彼らは各自すぐに袋を地面に下ろし,中
を開けた。 12 管理人は注意深く捜した。一番年上の人から始め,最後は一番年下の人だった。するとベニヤ
ミンの袋の中に杯が見つかった。
  13 それで彼らは自分の衣服を引き裂いた。荷物を再びロバに載せ,町に引き返した。 14 ユダと兄弟た
ちがヨセフの家に入ると,ヨセフはまだそこにいた。彼らはヨセフの前でひれ伏した。 15 ヨセフは言った。
「あなたたちがしたこのことは,いったいどういうことなのか。私のような者は正確に将来を占えるというこ
とを知らなかったのか」。 16 ユダが答えた。「ご主人さまに何を申し上げられるでしょう。何をお話しでき
るでしょう。どうやって私たちの無実を証明できるでしょう。真の神は,私たちの過ちを見つけられました。
これから私たちはご主人さまの奴隷です。私たちも杯を持っていた者もです」。 17 ヨセフは言った。「そう
するつもりはない。杯を持っていた人だけが私の奴隷となる。ほかの人には何もしない。父親の所に帰りなさ
い」。
  18 ユダはヨセフに近づいて,言った。「お願いです,ご主人さま。どうか,ご主人さまに一言申し上げさ
せてください。どうかお怒りになりませんように。ご主人さまはファラオのように力のある方です。 19 ご主
人さまは私たちに,『父親や弟がいるか』とお尋ねになりました。 20 それで私たちは,『年老いた父と,父
が高齢になってから生まれた一番下の弟がおります。同じ母を持つ唯一の兄が死んだため,その弟だけが残さ
れていて,父はその子を愛しております』とご主人さまに申し上げました。 21 その後ご主人さまは,『その
者を連れてきて,私がこの目で確かめられるようにしなさい』とおっしゃいました。 22 私たちは,『あの弟
が父のもとを離れることはできません。もし離れるようなことがあれば,父はきっと死んでしまいます』とご
主人さまに申し上げました。 23 するとご主人さまは,『一番下の弟が一緒に来ない限り,二度と私の顔を見
ることはできない』とおっしゃいました。
  24 それで,私たちは父の所に行って,ご主人さまの言葉を伝えたのです。 25 やがて父は,『もう一度
行って,食糧を少し買ってきなさい』と言いました。 26 私たちは言いました。『行くことはできません。一
番下の弟が一緒なら行きます。一緒でなければ,あの方の顔を見ることはできないのです』。 27 父は言いま
した。『あなたたちもよく知っている通り,私の妻が産んだ子は2人だけだった。 28 それなのに,1人は私
のもとからいなくなった。私は,「あの子はきっと切り裂かれたのだ!」と言った。以来ずっと,あの子を見
ていない。 29 この子まで私の前から連れていかれ,この子にもしものことがあれば,白髪の私はあなたたち
のせいで苦しみながら墓に入ることになる』。
  30 それで,もしこの弟を連れずに父の所に戻るなら,父は弟を自分のことのように愛していますので,
31 弟がいないのを見てすぐに死んでしまうでしょう。白髪の父は私たちのせいで悲しみながら墓に入ることに
なるのです。 32 私は父に,弟については私が責任を負うと申し出,『もし弟を連れて帰らなければ,私は一
生,父に対する罪を負います』と言いました。 33 ですから,どうか,弟の代わりに私がご主人さまの奴隷と
して残り,弟は兄たちと一緒に帰れるようにしていただけないでしょうか。 34 弟を連れずに父の所に帰るこ
となど,どうしてできるでしょうか。父が苦しむ姿は見るに堪えません」。
  45 章
  1 ついにヨセフは,召し使いたちの前で気持ちを抑えていることができなくなり,こう言った。「全員,
席を外しなさい」。そして自分と兄弟たちだけになってから,ヨセフは自分のことを明かした。
  2 ヨセフは声を上げて泣きだした。エジプト人たちにも聞こえるほどで,ファラオの家の人たちもそれを
聞いた。 3 ヨセフは兄弟たちに言った。「私はヨセフです。父はまだ生きていますか」。しかし,兄弟たちは
気が動転し,何も答えられなかった。 4 ヨセフは言った。「どうぞ,そばに来てください」。彼らはそばに寄
った。
  ヨセフは言った。「私は弟のヨセフです。皆さんは私をエジプトに売りました。 5 しかし今は,私を売っ
たことで心を痛めたり,互いに責め合ったりはしないでください。皆さんが生き続けられるよう,神が私を先
に遣わしたのです。 6 飢饉になって今は2年目ですが,耕すことも収穫することもない年があと5年あります。
7 神は私を先に遣わし,皆さんが生き延びて地上に子孫を残せるよう,大きな救いの手を差し伸べました。 8
ですから,私がここに来るようにしたのは皆さんではなく,真の神です。私をファラオの主席顧問官,ファラ
オの家全体の主人,エジプト全土を治める者とするために,そうなさったのです。
  9 急いで私の父の所に戻り,こう言ってください。『あなたの子ヨセフがこのように言いました。「神は
私をエジプト全土の主人としました。私の所に来てください。すぐに来てください。 10 そして,ぜひゴシェ
ン地方に住んでください。そうすれば,あなたも,息子や孫も,羊や牛も,あなたの全てのものも,私の近く
で暮らせます。 11 そこであなたに食糧を供給します。そうしないと,あなたと家族,あなたの全てのものは
困窮してしまうでしょう。飢饉はあと5年続くからです」』。 12 今,皆さんも弟ベニヤミンも自分の目で見
ている通り,確かに私ヨセフが話しています。 13 ですから,エジプトでの私のあらゆる栄光と,皆さんが見
たこと全てを,父に話してください。急いで父を連れてきてください」。
  14 それからヨセフは弟ベニヤミンを抱いて泣き,ベニヤミンもヨセフに腕を回して泣いた。 15 ヨセフ
は兄弟たち皆に口づけし,抱いて泣いた。その後,兄弟たちはヨセフと語り合った。
  16 「ヨセフの兄弟たちが来た!」という知らせがファラオの家に届き,ファラオと家来たちは喜んだ。
17 ファラオはヨセフに言った。「兄弟たちにこう言いなさい。『家畜に荷物を積んでカナン地方に行き, 18
父と家の人たちを連れて私の所に来なさい。エジプトの良い物を与えよう。この土地で取れる最高の物を食べ
なさい』。 19 そしてこう告げなさい。『子や妻のために,エジプトから牛車を持っていきなさい。その1つ
に父を乗せてここに来なさい。 20 家財道具のことは心配要らない。エジプト全土の最高の品々を与える』」。
  21 イスラエルの息子たちはその通りにし,ヨセフはファラオの命令通り牛車と道中の食べ物を与えた。
22 また,それぞれに着替えを渡し,ベニヤミンには銀300枚と着替え5着を渡した。 23 父には,エジプ
トの良い物を載せたロバ10頭と,父の道中のための穀物とパンと他の食べ物を積んだ雌ロバ10頭を贈った。
24 こうしてヨセフは兄弟たちを送り出した。出発の時,ヨセフは兄弟たちに,「途中でいがみ合ったりしな
いでください」と言った。
  25 彼らはエジプトをたって,カナン地方に入り,父ヤコブの所に着いた。 26 そしてヤコブに報告した。
「ヨセフは生きています! しかも,エジプト全土を治める者になっています」。ヤコブの心は反応しなかった。
彼らの言うことを信じなかったのである。 27 しかし父ヤコブは,ヨセフの言ったことを彼らから全部聞き,
自分のためにヨセフが用意してくれたという牛車を見て,生気を取り戻していった。 28 イスラエルは言った。
「そうか。よく分かった。私の子ヨセフは生きているのだ! 死ぬ前に,あの子に会いに行こう」。
  46 章
  1 イスラエルは,家族と全てのものと共に出発した。ベエル・シェバに着くと,父イサクの神に犠牲を捧げ
た。 2 神は夜に幻の中でイスラエルに話し掛け,「ヤコブ,ヤコブ!」と言った。イスラエルは,「はい!」
と答えた。 3 神は言った。「私は真の神,あなたの父の神である。エジプトに行くことを恐れてはいけない。
私はそこであなたから偉大な国民が生まれるようにする。 4 私があなたと共にエジプトに行き,私があなたを
そこから連れ戻す。また,あなたの目はヨセフの手で閉じられる」。
  5 その後ヤコブはベエル・シェバを出発した。イスラエルの息子たちは,ファラオがヤコブのために用意し
た牛車に,父と子供たちと妻たちを乗せていった。 6 カナン地方で増やした家畜や財産も持っていった。こう
してヤコブは家族全員と一緒にエジプトに入った。 7 息子や娘や孫など,家族全員をエジプトに連れてきたの
である。
  8 以下が,エジプトに入ったイスラエルの子孫,つまりヤコブの子孫の名前である。ヤコブの長男はルベ
ン。
  9 ルベンの子は,ハノク,パル,ヘツロン,カルミ。
  10 シメオンの子は,エムエル,ヤミン,オハド,ヤキン,ツォハル,そしてカナン人女性の子シャウル。
  11 レビの子は,ゲルション,コハト,メラリ。
  12 ユダの子は,エル,オナン,シェラ,ペレツ,ゼラハ。しかしエルとオナンはカナン地方で死んだ。
  ペレツの子は,ヘツロン,ハムル。
  13 イッサカルの子は,トラ,プワ,ヨブ,シムロン。
  14 ゼブルンの子は,セレド,エロン,ヤフレエル。
  15 ここまでが,パダン・アラムでヤコブとレアの間に生まれた子である。ほかに娘ディナもいた。全部で
33人である。
  16 ガドの子は,ツィフヨン,ハギ,シュニ,エツボン,エリ,アロディ,アルエリ。
  17 アシェルの子は,イムナ,イシュワ,イシュビ,ベリア。そして娘のセラハ。
  ベリアの子は,ヘベル,マルキエル。
  18 ここまでが,ラバンが娘レアに与えた召し使いジルパとヤコブの間に生まれた子である。全部で16人
である。
  19 ヤコブの妻ラケルの子は,ヨセフ,ベニヤミン。
  20 ヨセフにはエジプトでマナセとエフライムが生まれた。オンの祭司ポティフェラの娘アセナトが産んだ
子たちである。
  21 ベニヤミンの子は,ベラ,ベケル,アシュベル,ゲラ,ナアマン,エヒ,ロシュ,ムピム,フピム,ア
ルデ。
  22 ここまでが,ヤコブとラケルの間に生まれた子である。全部で14人である。
  23 ダンの子はフシム。
  24 ナフタリの子は,ヤフツェエル,グニ,イエツェル,シレム。
  25 ここまでが,ラバンが娘ラケルに与えた召し使いビルハとヤコブの間に生まれた子である。全部で7人
である。
  26 エジプトに入ったヤコブの子孫は,妻たちを別にすると,全部で66人だった。 27 エジプトで生ま
れた,ヨセフの子は2人だった。それで,エジプトに入ったヤコブの家族は全部で70人である。
  28 ヤコブはユダを先に遣わして,ゴシェンに向かっていることをヨセフに伝えさせた。一行がゴシェン地
方に入ると, 29 ヨセフは自分の兵車を用意させ,父イスラエルを迎えるためにゴシェンに行った。再会する
と,ヨセフはすぐに父を抱き締めてしばらく泣いた。 30 イスラエルはヨセフに言った。「私はもういつ死ん
でもいい。あなたが生きていて,顔を見ることができたのだから」。
  31 ヨセフは,兄弟たちと父の家の人たちに言った。「ファラオのもとに行って,こう報告します。『カナ
ン地方にいた私の兄弟たちと父の家の人たちがやって来ました。 32 彼らは羊飼いで,家畜を飼っています。
羊や牛など全てのものを連れてきました』。 33 皆さんがファラオに呼ばれて,『職業は何か』と聞かれたら,
34 必ずこう言ってください。『私どもは,若い時からずっと家畜を飼ってきました。父祖たちもそうです』。
そうすれば,ゴシェン地方に住めるでしょう。エジプト人は羊飼いをひどく嫌っているのです」。
  47 章
  1 ヨセフはファラオのもとに行って報告した。「私の父と兄弟たちが,羊や牛など全てのものを連れてカ
ナン地方からやって来ました。今,ゴシェン地方にいます」。 2 ヨセフは兄弟の中から5人を選び,ファラオ
のもとに連れていった。
  3 ファラオは兄弟たちに,「職業は何か」と言った。彼らは,「私どもは羊飼いでございます。父祖たち
もそうでした」と答えた。 4 そしてファラオに言った。「私どもは外国人として住まわせていただきたいと思
い,やって参りました。カナン地方は飢饉が厳しく,家畜のための牧草がありません。どうかゴシェン地方に
住まわせていただけないでしょうか」。 5 ファラオはヨセフに言った。「あなたの父親と兄弟たちはあなたの
所に来た。 6 エジプトの全土はあなたに任されている。父親と兄弟たちを最も良い地域に住ませなさい。ゴシ
ェン地方でも構わない。そして,もし彼らの中に有能な人がいれば,私の家畜を世話させなさい」。
  7 それからヨセフは父ヤコブをファラオのもとに連れてきた。ヤコブはファラオに,祝福を祈る言葉を述
べた。 8 ファラオはヤコブに,「何歳になるのか」と尋ねた。 9 ヤコブは言った。「各地を転々としながら
130年生きてきました。短い,苦難の人生でした。父祖たちが各地を転々としながら生きた年月には及びま
せん」。 10 ヤコブはファラオに祝福を祈る言葉を述べて,出ていった。
  11 こうしてヨセフは,ファラオの命令通り,父と兄弟たちをエジプトに住ませ,最も良い地域であるラメ
セスにある土地を与えた。 12 そして父と兄弟たちと父の家全体に,子供の数に応じて食糧を供給し続けた。
  13 さて,飢饉は非常に厳しく,全土から食糧がなくなった。エジプトでもカナン地方でも飢饉のために
人々は弱り果てた。 14 ヨセフは人々に穀物を売って,エジプトとカナン地方の全てのお金を集めてファラオ
の家に納めていった。 15 やがてエジプトとカナン地方のお金は尽き,エジプト人は皆ヨセフの所に来てこう
言うようになった。「食糧を下さい! お金がなくなったというだけで,どうして私たちはあなたの前で死なな
ければいけないのでしょうか」。 16 ヨセフは言った。「お金がなくなったのであれば,家畜を渡しなさい。
そうすれば,引き換えに食糧をあげましょう」。 17 それで人々は家畜をヨセフの所に連れてくるようになっ
た。ヨセフは,馬,羊,牛,ロバと引き換えに食糧を与えていった。その年の間ずっと家畜と引き換えに食糧
を供給した。
  18 その年が終わり,次の年になると,人々はまたヨセフの所に来てこう言った。「ご主人さまにありのま
まを申し上げます。お金も家畜もご主人さまにお渡ししてしまいました。私たちの体と土地以外,お渡しでき
る物は何も残っていません。 19 どうしてあなたの前で私たちが死に,土地が荒廃してよいでしょうか。私た
ちと土地を買い,代価として食糧を与えてください。私たちはファラオの奴隷になり,土地もファラオのもの
になります。そして種を与えてください。そうすれば,私たちは死なずに生き延びることができ,土地も荒廃
せずに済みます」。 20 それでヨセフはエジプト人の全ての土地をファラオのために買い取った。飢饉は非常
に厳しく,エジプト人たちが自分の畑を売ったからである。こうして土地はファラオのものになった。
  21 ヨセフはまた,エジプトの領土中で,人々を町に移動させた。 22 ただ祭司の土地は買い取らなかっ
た。祭司はファラオから食糧を配給されており,それを食べて生活できたので土地を売らなかったのである。
23 ヨセフは人々に言った。「今日,皆さんと皆さんの土地をファラオのために買い取りました。種を渡します。
土地にまきなさい。 24 収穫したなら,5分の1をファラオに納めなさい。5分の4は皆さんの分です。畑に
まく種や,皆さんと家の人たちと子供たちの食物としなさい」。 25 人々は言った。「ご主人さま,あなたは
命を救ってくださいました。認めていただけるなら,私たちはファラオの奴隷になります」。 26 それでヨセ
フは,エジプトの土地について,5分の1はファラオのものであると定めた。これは今も有効である。ファラ
オのものにならなかったのは,祭司の土地だけだった。
  27 イスラエルはエジプトのゴシェン地方に住み続け,一族はそこに定住し,子を生んで非常に多くなった。
28 ヤコブはエジプトで17年生きた。ヤコブの生涯は147年だった。
  29 イスラエルは死が近いことが分かると,息子ヨセフを呼んで言った。「私のことを思ってくれているな
ら,私のももの下に手を置き,私に揺るぎない愛を示して支え続けると誓ってくれないか。私をエジプトに葬
らないでほしい。 30 私が死んだら,ぜひ私をエジプトから運び出し,父祖たちの墓に葬ってほしい」。ヨセ
フは言った。「その通りにします」。 31 イスラエルは言った。「誓ってくれないか」。それでヨセフは誓っ
た。イスラエルはベッドの枕の所で頭を下げた。
  48 章
  1 こうしたことの後,ヨセフに,「お父さまは弱ってきています」という知らせがあった。そこでヨセフ
は2人の息子,マナセとエフライムを連れていった。 2 ヤコブは,「あなたの子ヨセフが来ました」という知
らせを受けた。イスラエルは力を振り絞ってベッドの上で体を起こした。 3 ヤコブはヨセフに言った。
  「カナン地方のルズで,全能の神が私に現れて祝福してくださった。 4 神はこう言われた。『私はあなた
に子が生まれて増えるようにし,あなたから幾つもの民が生じるようにする。私はあなたの子孫にこの地方を
与え,そこはずっとあなたの子孫のものになる』。 5 私がエジプトのあなたの所に来る前にエジプトであなた
に生まれた2人の息子は,私のものだ。エフライムとマナセは,ルベンやシメオンと同じように,私のものに
なる。 6 しかし,彼らの後にあなたに生まれる子はあなたのものだ。その子たちは兄弟たちの相続地に住み,
兄弟たちの名前で呼ばれる。 7 私についていえば,パダンからの道中,カナン地方でのこと,ラケルが私のそ
ばで死んだ。エフラトまでまだかなり距離がある場所だった。それで彼女をそこ,エフラトつまりベツレヘム
に向かう道のそばで葬った」。
  8 イスラエルはヨセフの息子たちを見て,言った。「そこにいるのは誰なのか」。 9 ヨセフは父に言っ
た。「ここで神から授かった私の息子たちです」。イスラエルは言った。「こちらに連れてきなさい。その子
たちのために祝福を願い求めよう」。 10 イスラエルは年のせいで目がほとんど見えなくなっていた。それで
ヨセフが2人をすぐ近くに連れていくと,イスラエルは口づけして2人を抱き締めた。 11 イスラエルはヨセ
フに言った。「あなたの顔さえ見られるとは思っていなかったのに,神はあなたの子供たちまで見させてくだ
さった」。 12 ヨセフは2人をイスラエルの膝元から離れさせ,ひれ伏した。
  13 それからヨセフは,右手でエフライムをイスラエルの左側に,左手でマナセをイスラエルの右側に行か
せ,2人をイスラエルに近寄らせた。 14 ところが,イスラエルは右手を出して,下の子のエフライムの頭に
置き,左手をマナセの頭に置いた。マナセが長男だったのに,あえてそのように手を置いた。 15 そしてヨセ
フのために祝福を願い求めた。
  「私の父祖アブラハムとイサクが従った真の神,
  今日まで生涯にわたって私の牧者となってくださった真の神,
  16 天使によってあらゆる苦難から立ち直らせてくださった方よ,この子たちを祝福してください。
  この子たちによって,私の名前や私の父祖アブラハムとイサクの名前が知られますように。
  この子たちの子孫が地上で多くなりますように」。
  17 ヨセフは,父が右手をずっとエフライムの頭に置いているのを見て,快く思わず,父の手を持ってエフ
ライムの頭からマナセの頭に移そうとした。 18 ヨセフは父に言った。「そうではありません,お父さん。こ
ちらが長男です。この子の頭に右手を置いてください」。 19 しかし父はかたくなに拒んで言った。「分かっ
ている,ヨセフ。分かっている。その子も1つの民となり,偉大な者となる。だが,弟はその子より偉大な者
となり,弟の子孫は幾つもの国ができるほど多くなる」。 20 そしてその日,2人のためにさらに祝福を願い
求めた。
  「イスラエルの民が互いのために祝福を願う時,あなたのことに触れて,こう言いますように。
  『神があなたを,エフライムやマナセのようにされますように』」。
  こうして父はあくまでエフライムをマナセよりも先に挙げた。
  21 イスラエルはヨセフに言った。「私はもうすぐ死ぬ。しかし神は,これからも必ずあなたたちと共にい
て,父祖たちの土地に帰らせてくださる。 22 私はあなたに,兄弟たちより1地域多く土地を与える。私がア
モリ人から剣と弓によって取得した土地だ」。
  49 章
  1 ヤコブは息子たちを呼んで,言った。「みんな集まりなさい。最後の日々にあなたたちに起きる事柄を
話そう。 2 ヤコブの息子たち,集まって聞きなさい。父イスラエルの言葉に耳を傾けなさい。
  3 ルベン,あなたは私の長男,私の活力,私の生殖力が初めに生み出したもの。秀でた威厳と秀でた力が
あった。 4 だが,荒れ狂う水のように奔放なため,秀でることはない。父のベッドに上がったからだ。あの時,
あなたは私のベッドを汚した。そこに上がったのだ。
  5 シメオンとレビは兄弟。武器を用いて暴力を振るう。 6 私が彼らの仲間になることがありませんよう
に。私が彼らの集いに加わりませんように。彼らは怒りに任せて人を殺し,雄牛の膝のけんを切って楽しんだ
からだ。 7 彼らのひどい怒りと激しい憤りは,災いを受けよ。彼らをヤコブの中に追い散らし,イスラエルの
中に散らそう。
  8 ユダ,兄弟たちはあなたを称賛する。あなたの手は敵の首を押さえる。あなたの父の子たちはあなたの
前でひれ伏す。 9 ユダはライオンの子。ユダ,あなたは必ず獲物の所から立ち上がる。ライオンのように身を
かがめ,身を伸ばした。ライオンを誰があえて起こすだろうか。 10 王笏はユダから離れず,司令官のつえも
足の間から離れない。ついにシロが来て,あらゆる民が彼に従う。 11 彼はロバをブドウの木に,子ロバを立
派なブドウの木につなぎ,衣服をぶどう酒で,服をブドウの果汁で洗う。 12 彼の目はぶどう酒によって赤く,
彼の歯はミルクによって白い。
  13 ゼブルンは海辺に,船が止まる岸辺に住む。遠い側はシドンの方に向く。
  14 イッサカルは骨太なロバ,2つの荷物の間で身を伏せる。 15 彼にとって,休み場は良く,土地は好
ましい。彼は肩を下げて重い荷を担い,強制労働に服する。
  16 ダンはイスラエルの1部族として民を裁く。 17 ダンは道端の蛇,道沿いの角蛇となれ。馬のかかと
をかんで乗り手を後ろへ落とすのだ。 18 エホバ,私はあなたからの救いを待つ。
  19 ガドは略奪隊に襲われる。だが,彼らのかかとに襲い掛かる。
  20 アシェルのパンは豊かになる。彼は王にふさわしい食事を出す。
  21 ナフタリはすらりとした雌鹿。優美な言葉を話す。
  22 ヨセフは実を結ぶ木の枝,泉のそばで実を結ぶ木の枝。その木の枝は塀を越えて伸びる。 23 だが,
弓を射る人たちが彼を攻めて狙い撃ち,敵意を抱き続けた。 24 それでも彼の弓は準備が整っており,彼の手
は常に力強くしなやかだった。それは,ヤコブの強力な者の手,イスラエルの石である牧者による。 25 ヨセ
フは父の神から出る者。神はあなたを助ける。ヨセフは全能者と共にいる。神はあなたを祝福する。上は天か
らの祝福,下は深みからの祝福,そして乳房と母胎の祝福。 26 あなたの父の祝福は永続する山の祝福に勝り,
永久にある丘の恩恵に勝る。祝福はヨセフの頭に,兄弟たちの中から選び出された者の頭のてっぺんにとどま
る。
  27 ベニヤミンはオオカミのようにかみ裂く。朝には獲物を食い,晩には奪った物を分ける」。
  28 イスラエルの12部族がこれらの人から生まれた。父は彼らのために祝福を願い求めた時に以上の事柄
を語った。一人一人にふさわしい祝福だった。
  29 その後ヤコブは彼らに命じた。「私は先祖たちと共に横たわろうとしている。ヘト人エフロンの土地に
ある洞窟に,父祖たちと一緒に葬ってほしい。 30 カナン地方のマムレに面したマクペラの土地にある洞窟だ。
アブラハムはその土地をヘト人エフロンから買い取って墓地にした。 31 そこにはアブラハムと妻のサラが葬
られ,イサクと妻のリベカも葬られた。私もそこにレアを葬った。 32 その土地とそこにある洞窟はヘトの子
孫たちから買い取ったものだ」。
  33 ヤコブは息子たちに指示を与え終えた。そしてベッドの上に足を戻して,息を引き取り,先祖たちと共
に横たわった。
  50 章
  1 ヨセフは父の上に泣き崩れ,口づけした。 2 その後ヨセフは召し使いや医者たちに,父の遺体の防腐
処置を命じた。医者たちはイスラエルに防腐処置を施した。 3 丸40日を費やした。防腐処置にはそれだけの
日数をかけるのである。エジプト人は彼のために70日間涙を流した。
  4 ヨセフは父の喪の期間が終わると,ファラオの廷臣たちに言った。「もし私のことを好意的に見てくれ
ているのでしたら,ファラオにこう伝えてください。 5 『父は,「私はもうすぐ死ぬ。私がカナン地方で掘り
抜いた墓に葬ってほしい」と言って,私に誓わせました。それで,父を葬りに行かせてください。済んだら戻
ってきます』」。 6 ファラオは答えた。「行って,あなたの父親が誓わせた通りに葬ってきなさい」。
  7 ヨセフは父を葬るために出掛けた。ファラオの全ての家来,宮廷の長老たち,エジプトの全ての長老た
ちも共に行った。 8 ヨセフの家の全ての人,兄弟たち,父の家の人たちも一緒だった。小さな子供たちと羊や
牛はゴシェン地方に残した。 9 兵車や騎手たちも共に行き,一行は非常に大勢になった。 10 そうして一行
は,ヨルダン地方のアタドの脱穀場に来た。彼らはそこで盛大で厳粛な葬儀を行った。ヨセフの父のための葬
儀は7日間続いた。 11 地元のカナン人は,アタドの脱穀場での葬儀を見て,「エジプト人の盛大な葬儀だ」
と言った。そのため,ヨルダン地方にあるその場所は,アベル・ミツライムと名付けられた。
  12 ヤコブの息子たちは,父に指示された通りにした。 13 ヤコブをカナン地方に運び,マムレに面した
マクペラの土地にある洞窟に葬ったのである。アブラハムがヘト人エフロンから買い取って墓地にした場所で
ある。 14 ヨセフは父を葬り終えると,兄弟たちや,葬るために一緒に行った全ての人とエジプトに帰った。
  15 父が死ぬと,ヨセフの兄弟たちは言った。「ヨセフは私たちに恨みを抱いていて,彼にした悪いことの
仕返しをしてくるかもしれない」。 16 それで兄弟たちはヨセフに次の言葉を伝えた。「父は死ぬ前にこう命
じました。 17 『ヨセフにこう伝えなさい。「私からのお願いだ。兄弟たちの違反とあなたに害を加えた罪を
許してやってほしい」』。それで,あなたの父の神に仕える者たちの違反をどうか許してください」。ヨセフ
はそれを聞くと,涙を流した。 18 兄弟たちもやって来て,ヨセフの前でひれ伏し,こう言った。「この通り,
私たちはあなたの奴隷です」。 19 ヨセフは言った。「恐れないでください。私が神だとでもいうのでしょう
か。 20 皆さんは私に対して悪いことをたくらみましたが,神はそれを良いことにつなげて,多くの人が生き
延びられるようにしようと考えました。そして今,実際にそうなさっています。 21 ですから恐れないでくだ
さい。私はこれからも皆さんと小さな子供たちに食物を供給します」。このようにヨセフは兄弟たちを安心さ
せ,優しく話した。
  22 ヨセフと父の家の人たちはその後もエジプトに住んだ。ヨセフは110年生きた。 23 ヨセフはエフ
ライムの3代目の子孫を見た。また,マナセの子マキルの子たちも見た。ヨセフはその子たちを自分の子のよ
うにかわいがった。 24 やがてヨセフは兄弟たちに言った。「私はもうすぐ死にます。しかし神は皆さんに必
ず注意を向け,皆さんをここから,アブラハムとイサクとヤコブに誓った地方に必ず連れていってくださいま
す」。 25 それからイスラエルの子孫に次のように言い,誓わせた。「神は皆さんに必ず注意を向けてくださ
います。ぜひとも私の骨をここから運び出してください」。 26 ヨセフは110歳で死に,エジプトで防腐処
置を施されてひつぎに入れられた。

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