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裁き人の書

概要
1章
ユダ族とシメオン族による征服(1‐20節)
エブス人はエルサレムに住み続ける(21節)
ヨセフの子孫はベテルを取得する(22‐26節)
カナン人は完全には追い払われない(27‐36節)
2章
エホバの天使からの警告(1‐5節)
ヨシュアの死(6‐10節)
裁き人が立てられ,イスラエルを救う(11‐23節)
3章
エホバはイスラエルを試す(1‐6節)
最初の裁き人オテニエル(7‐11節)
裁き人エフドが太ったエグロン王を殺す(12‐30節)
裁き人シャムガル(31節)
4章
カナンの王ヤビンがイスラエルを虐げる(1‐3節)
女預言者デボラと裁き人バラク(4‐16節)
ヤエルが軍隊の長シセラを殺す(17‐24節)
5章
デボラとバラクの勝利の歌(1‐31節)
星がシセラと戦う(20節)
キションの激流が襲い掛かる(21節)
エホバを愛する人たちは太陽のよう(31節)
6章
ミディアンがイスラエルを虐げる(1‐10節)
天使が裁き人ギデオンを力づける(11‐24節)
ギデオンはバアルの祭壇を取り壊す(25‐32節)
神の聖なる力がギデオンに働く(33‐35節)
羊毛で試す(36‐40節)
7章
ギデオンと300人(1‐8節)
ギデオンの軍隊はミディアンを打ち破る(9‐25節)
「エホバの剣,ギデオンの剣!」(20節)
ミディアンの陣営は混乱する(21,22節)
8章
エフライム族はギデオンに文句を言う(1‐3節)
ミディアンの王たちは追撃され,殺される(4‐21節)
ギデオンは王になることを拒む(22‐27節)
ギデオンの生涯(28‐35節)
9章
アビメレクがシェケムで王になる(1‐6節)
ヨタムの例え話(7‐21節)
アビメレクのひどい支配(22‐33節)
アビメレクはシェケムを攻撃する(34‐49節)
アビメレクは女性に傷を負わされ,死ぬ(50‐57節)
10章
裁き人トラ,ヤイル(1‐5節)
イスラエルは反逆し,悔い改める(6‐16節)
アンモン人がイスラエルを脅かす(17,18節)
11章
裁き人エフタは追い払われるが,後に指導者にされる(1‐11節)
エフタはアンモン人と論じ合う(12‐28節)
エフタの誓約と娘(29‐40節)
娘は独身を保つ(38‐40節)
12章
エフライム族との争い(1‐7節)
シボレトと言えるかどうか(6節)
裁き人イブツァン,エロン,アブドン(8‐15節)
13章
天使がマノアと妻の所を訪れる(1‐23節)
サムソンの誕生(24,25節)
14章
裁き人サムソンはフィリスティア人の妻を求める(1‐4節)
サムソンはエホバの聖なる力によってライオンを殺す(5‐9節)
サムソンは結婚式で謎を掛ける(10‐19節)
サムソンの妻は別の男性に与えられる(20節)
15章
フィリスティア人に対するサムソンの復讐(1‐20節)
16章
ガザでのサムソン(1‐3節)
サムソンとデリラ(4‐22節)
サムソンの復讐と死(23‐31節)
17章
ミカの偶像と祭司(1‐13節)
18章
ダン族は土地を探す(1‐31節)
ミカの偶像と祭司が奪われる(14‐20節)
ライシュは攻略され,ダンと改名される(27‐29節)
ダンでの偶像崇拝(30,31節)
19章
ギベアでのベニヤミン族の性犯罪(1‐30節)
20章
ベニヤミン族に対する戦い(1‐48節)
21章
ベニヤミンは部族として存続する(1‐25節)
  1 章
  1 ヨシュアの死後,イスラエル人はエホバに尋ねた。「私たちのうち誰が最初に行ってカナン人と戦えば
よいでしょうか」。 2 エホバは答えた。「ユダ族が行く。さあ,私はその土地をユダ族に与える」。 3 ユダ
族は兄弟であるシメオン族に言った。「私たちに割り当てられた領地に一緒に来て,カナン人と戦ってくださ
い。私たちも皆さんに割り当てられた領地に一緒に行きます」。シメオン族はユダ族と一緒に行った。
  4 ユダ族が行くと,エホバがカナン人とペリジ人を彼らの手に渡し,彼らはベゼクで1万人を打ち破った。
5 ベゼクでアドニ・ベゼクを見つけて戦い,カナン人とペリジ人を打ち破った。 6 アドニ・ベゼクが逃げると,
追撃して捕らえ,彼の両手両足の親指を切り取った。 7 アドニ・ベゼクは言った。「私に両手両足の親指を切
り取られた70人の王が,私の食卓から落ちた食べ物を拾っていた。神は,私がした通りのことを私にしたの
だ」。その後,アドニ・ベゼクはエルサレムに連れていかれ,そこで死んだ。
  8 さらに,ユダの人たちはエルサレムと戦ってその都市を攻略した。剣で討ち,火を放った。 9 その後,
山地やネゲブやシェフェラに住むカナン人と戦うために出掛けた。 10 ユダの人たちはヘブロンに住むカナン
人との戦いに向かい(ヘブロンの以前の名前はキルヤト・アルバだった),シェシャイとアヒマンとタルマイを
討った。
  11 ユダの人たちはそこからデビルの住民との戦いに向かった。(デビルの以前の名前はキルヤト・セフェ
ルだった。) 12 カレブは言った。「キルヤト・セフェルを討って攻略した人に,私の娘アクサを妻として与
えよう」。 13 カレブの弟ケナズの子オテニエルがその町を攻略し,カレブは娘アクサを妻として与えた。
14 アクサは夫の家に行く時に,父カレブに畑を求めるよう夫を促した。そしてロバから下りると,カレブが言
った。「何か欲しいのか」。 15 アクサは言った。「お祝いの贈り物を下さい。南の1つの土地を下さいまし
たが,グロト・マイムも下さい」。カレブは上グロトと下グロトを与えた。
  16 モーセのしゅうとだったケニ人の子孫が,ユダの人々と共にヤシの木の町からユダの荒野,アラドの南
に来て,そこの人々と共に住むようになった。 17 ユダ族は兄弟であるシメオン族と共にさらに進軍し,ツェ
ファトに住むカナン人を攻めて,そこを滅ぼし尽くした。その町はホルマと名付けられた。 18 ユダ族は,ガ
ザとその領地,アシュケロンとその領地,エクロンとその領地を攻略した。 19 エホバが共にいて,ユダ族は
山地を取得した。しかし,平原の住民は追い払えなかった。住民は車輪に鉄の刃が付いた戦車を持っていたか
らである。 20 カレブは,モーセの約束通りヘブロンを与えられると,アナクの子たち3人をそこから追い払
った。
  21 しかし,ベニヤミン族はエルサレムに住むエブス人を追い払わなかった。それでエブス人は今もベニヤ
ミン族と一緒にエルサレムに住んでいる。
  22 一方,ヨセフの子孫はベテルを攻めに行った。エホバは彼らと共にいた。 23 ヨセフの子孫はベテル
(以前の名前はルズ)を偵察していた。 24 偵察者たちは町から出ていく男性を見掛け,こう言った。「どう
か町に入る道を教えてください。私たちもあなたに親切にしますから」。 25 男性は町に入る道を教え,彼ら
は町を剣で討ったが,男性とその家族全員は解放した。 26 男性はヘト人の土地に行って町を築き,ルズと名
付けた。それが今日まで町の名前である。
  27 マナセ族は,ベト・シェアンと周辺の町,タアナクと周辺の町,ドルの住民と周辺の町,イブレアムの
住民と周辺の町,メギドの住民と周辺の町は取得しなかった。カナン人がこの土地にずっと住み続けた。 28
イスラエルは強くなると,カナン人を強制労働に服させたが,完全には追い払わなかった。
  29 エフライム族もゲゼルに住むカナン人を追い払わなかった。カナン人がゲゼルで彼らの間に住み続けた。
  30 ゼブルン族はキトロンの住民とナハロルの住民を追い払わなかった。カナン人が彼らの間に住み続け,
強制労働に服した。
  31 アシェル族は,アコの住民とシドンの住民と,アフラブ,アクジブ,ヘルバ,アフィク,レホブの住民
を追い払わなかった。 32 アシェル族は,その土地に住むカナン人の間に住み続けた。彼らを追い払わなかっ
たからである。
  33 ナフタリ族は,ベト・シェメシュの住民とベト・アナトの住民を追い払わず,その土地に住むカナン人
の間に住み続けた。ベト・シェメシュとベト・アナトの住民は強制労働に服した。
  34 アモリ人はダン族を山地に押し込め,平原に下りてこさせなかった。 35 そして,ヘレス山,アヤロ
ン,シャアルビムにずっと住み続けていた。しかし,ヨセフの子孫の力が強くなると,アモリ人は重労働を強
いられた。 36 アモリ人の領地は,アクラビムの上り坂からで,セラから上方だった。
  2 章
  1 エホバの天使がギルガルからボキムに上ってきてこう言った。「私はあなたたちをエジプトから連れ出
して,父祖たちに誓った土地に入らせ,こう言いました。『私はあなたたちとの契約を決して破らない。 2 あ
なたたちも,この土地の住民と契約を結んではならない。彼らの祭壇を打ち壊すべきである』。それなのに,
あなたたちは私の声に従いませんでした。どうしてですか。 3 それで私もこう言いました。『私は彼らをあな
たたちの前から追い払わない。あなたたちにとって彼らはわなとなり,彼らの神々は誘惑となる』」。
  4 エホバの天使がこの言葉をイスラエル人全員に話すと,民は声を上げて泣き始めた。 5 そしてその場
所をボキムと名付け,そこでエホバに犠牲を捧げた。
  6 ヨシュアが民を送り出すと,イスラエル人はそれぞれ自分の土地を取得しに行った。 7 民は,ヨシュ
アがいた間ずっと,またヨシュアの後も,イスラエルのためのエホバの偉大な行い全てを見た長老たちがいた
間ずっと,エホバに仕え続けた。 8 ヌンの子でエホバに仕えたヨシュアは110歳で死んだ。 9 ヨシュアは
彼の領地のティムナト・ヘレスに葬られた。それはエフライムの山地,ガアシュ山の北にある。 10 その世代
の人々は皆死んで先祖たちと共に横たわり,その後,エホバを知らず,イスラエルのためにその方が行ったこ
とも知らない別の世代が出てきた。
  11 イスラエル人はエホバから見て悪いことを行い,バアルに仕えた。 12 こうして父たちの神エホバ,
エジプトから連れ出してくださった方を捨てた。ほかの神々,周囲の民の神々に従い,それらにひれ伏してエ
ホバを怒らせた。 13 エホバを捨てて,バアルやアシュトレテの像を崇拝した。 14 エホバはイスラエルに対
して怒りに燃え,彼らを略奪者たちに渡して,略奪されるままにした。神がイスラエルを周囲の敵に引き渡し
たため,彼らはもう敵に対抗できなかった。 15 彼らがどこに行っても,エホバの手が彼らに及び,災難をも
たらした。エホバが言った通り,エホバが誓った通りであり,彼らは窮地に陥った。 16 エホバは裁き人たち
を立て,その人たちがイスラエルを略奪者から救うのだった。
  17 ところが,イスラエルは裁き人たちの言うことも聞かず,ほかの神々を崇拝するという不忠実なことを
して,それらにひれ伏した。彼らは父祖たちが歩んだ道からすぐにそれた。父祖たちはエホバのおきてに従っ
たが,彼らはそうしなかった。 18 エホバがイスラエルのために裁き人を立てると,エホバは裁き人と共にい
て,裁き人がいる間ずっと,彼らを敵から救い出すのだった。エホバは,圧迫する人や虐げる人たちのために
彼らがうめくのを哀れに思ったからである。
  19 しかし,裁き人が死ぬと,イスラエルは再び父たちよりさらに堕落してほかの神々に従い,仕え,ひれ
伏すのだった。自分たちの行いと頑固な振る舞いをやめなかった。 20 エホバはイスラエルに対して怒りに燃
え,こう言った。「この国民は私が父祖たちに命じた契約を破り,私に従わなかったので, 21 私は,ヨシュ
アの死後に残ったどの国民も,イスラエルの前から追い払わない。 22 イスラエルがエホバの道を歩んで父た
ちのようにその道を守るかどうか,試すためである」。 23 こうしてエホバはそれらの国民が残るままにした。
すぐに追い払わず,ヨシュアの手に渡さなかった。
  3 章
  1 カナンで戦いをしたことがないイスラエルの全ての人を試すために,エホバによって残るままにされた
国民は,以下の通りである。 2 (これは,イスラエル人の後の世代,以前に戦いを経験したことがない人たち
に,経験させるためだった。) 3 フィリスティア人の領主5人,全てのカナン人,シドン人,ヒビ人。ヒビ人
はバアル・ヘルモン山からレボ・ハマトまでのレバノン山一帯に住んでいた。 4 イスラエルはこれらの国民に
よって,エホバがモーセを通して父たちに与えたおきてに従うかどうかを試された。 5 イスラエル人は,カナ
ン人,ヘト人,アモリ人,ペリジ人,ヒビ人,エブス人の間に住んだ。 6 そして,彼らの娘を妻として迎え,
自分たちの娘を彼らの息子に与え,彼らの神々に仕え始めた。
  7 イスラエル人はエホバから見て悪いことを行い,自分たちの神エホバを忘れて,バアルや聖木を崇拝す
るようになった。 8 エホバはイスラエルに対して怒りに燃え,彼らをメソポタミアの王クシャン・リシュアタ
イムに引き渡した。イスラエル人はクシャン・リシュアタイムに8年仕えた。 9 イスラエル人がエホバに助け
を求めると,エホバはイスラエル人を救うために救出者を立てた。カレブの弟ケナズの子オテニエルである。
10 彼はエホバの聖なる力を受け,イスラエルの裁き人となった。オテニエルが戦いに出ると,エホバはメソポ
タミアの王クシャン・リシュアタイムを彼の手に渡し,彼はクシャン・リシュアタイムに打ち勝った。 11 その
後,この土地は40年間平穏だった。やがてケナズの子オテニエルは死んだ。
  12 イスラエル人は再び,エホバから見て悪いことを行うようになった。エホバはモアブの王エグロンをイ
スラエルに対して優勢にならせた。イスラエルがエホバから見て悪いことを行ったからである。 13 エグロン
はアンモン人とアマレク人も引き入れてイスラエルを共に攻め,ヤシの木の町を攻め落とした。 14 イスラエ
ル人はモアブの王エグロンに18年仕えた。 15 イスラエル人がエホバに助けを求めたので,エホバは彼らの
ために救出者を立てた。ゲラの子エフドである。ベニヤミン族の人で,左利きだった。やがてイスラエル人は
貢ぎ物をエフドに託してモアブの王エグロンに届けた。 16 エフドは自分のために長さ40センチの両刃の剣
を作り,服の下の右ももにくくり付けた。 17 エフドはモアブの王エグロンに貢ぎ物を差し出した。エグロン
は非常に太っていた。
  18 エフドは貢ぎ物を差し出し終えると,貢ぎ物を運んできた人たちを帰らせた。 19 しかし,彼自身は
ギルガルの彫刻像の所まで来ると引き返し,こう言った。「王よ,内密にお伝えしたいことがございます」。
王は「ちょっと待て!」と言った。すると,そばにいた人は皆立ち去った。 20 エフドは,涼しい屋上の部屋
に1人で座っている王に近づき,こう言った。「神からの言葉がございます」。王は王座から立ち上がった。
21 その時,エフドは左手で右ももの剣を抜き,王の腹に突き刺した。 22 刃も持ち手も入っていき,脂肪が
刃にすっかりかぶさった。腹から剣を抜かなかったからである。そして汚物が出てきた。 23 エフドは出入り
口を通って外に出た。屋上の部屋の扉は閉め,鍵を掛けた。 24 エフドが去った後,家来たちが戻ってきて,
屋上の部屋の扉に鍵が掛かっていると分かり,こう言った。「涼しい奥の部屋で用を足しておられるのだろ
う」。 25 そしてずっと待っていたが,やがてそわそわし始めた。それでも主人が屋上の部屋の扉を開けない
ので,鍵を使って扉を開けると,主人が床に倒れて死んでいた。
  26 エフドは,彼らがぐずぐずしている間に逃げ,彫刻像のそばを通ってセイラに逃げ延びた。 27 そこ
に着くと,エフライムの山地で角笛を鳴らした。イスラエル人は彼に率いられて山地から下りていった。 28
エフドは言った。「付いてきなさい。エホバは敵のモアブ人を皆さんの手に渡してくださいました」。イスラ
エル人は付いていき,モアブ人が逃げられないようにヨルダン川の渡り場を占拠し,誰にも渡らせなかった。
29 その時,イスラエル人はモアブ人の強い勇士,約1万人を討った。逃げられた人は一人もいなかった。 30
その日,モアブは制圧されてイスラエルの手に落ちた。この土地は80年間平穏だった。
  31 エフドの後にアナトの子シャムガルが現れ,牛を追う突き棒でフィリスティア人600人を討った。彼
もイスラエルを救った。
  4 章
  1 エフドが死んだ後,イスラエル人は再び,エホバから見て悪いことを行った。 2 エホバは彼らをカナ
ンの王ヤビンに引き渡した。ヤビンはハツォルで治めていた。彼の軍隊の長はシセラで,ハロシェト・ハ・ゴイ
ムに住んでいた。 3 イスラエル人は助けを求めてエホバに叫んだ。ヤビンは車輪に鉄の刃が付いた戦車900
両を持ち,イスラエル人を20年間ひどく虐げたからである。
  4 その頃,ラピドトの妻である女預言者デボラがイスラエルを裁いていた。 5 彼女は,エフライムの山
地,ラマとベテルの間にあるデボラのヤシの木の下に座っていた。イスラエル人は裁きを求めて彼女の所に上
ってくるのだった。 6 デボラはアビノアムの子バラクをケデシュ・ナフタリから呼び寄せ,こう言った。「イ
スラエルの神エホバは命じました。『さあ,タボル山に進軍しなさい。ナフタリとゼブルンから1万人を連れ
ていくように。 7 私は,ヤビンの軍隊の長シセラ,彼の戦車と部隊をあなたの所に,キションの川に連れてき
て,あなたを勝たせる』」。
  8 バラクはデボラに言った。「あなたが一緒に行ってくださるなら,私も行きます。一緒に行ってくださ
らないなら,行きません」。 9 デボラは言った。「私は必ず一緒に行きます。ただし,今回の戦いによってあ
なたがたたえられることはありません。エホバはシセラを,ある女性の手に渡すからです」。デボラは立って,
バラクと一緒にケデシュに行った。 10 バラクはゼブルンとナフタリをケデシュに呼び,1万人が彼の後に従
った。デボラも一緒だった。
  11 ところで,ケニ人ヘベルは,モーセのしゅうとホバブの子孫であるケニ人たちから離れて,ツァアナニ
ムの大木の近くに天幕を張っていた。それはケデシュにある。
  12 アビノアムの子バラクがタボル山に登ったことがシセラに伝えられた。 13 シセラは直ちに,全ての
戦車,車輪に鉄の刃が付いた戦車900両と,自分と共にいる全ての部隊を集め,ハロシェト・ハ・ゴイムから
キションの川に向かった。 14 デボラはバラクに言った。「立ち上がりなさい。今日は,エホバがあなたをシ
セラに勝たせる日です。エホバがあなたの前を進むのではありませんか」。バラクは1万人を率いてタボル山
を下った。 15 エホバは,シセラと彼の戦車と軍隊全てをバラクの剣の前で混乱に陥れた。ついにシセラは兵
車から降り,自分の足で逃げた。 16 バラクは戦車と軍隊をハロシェト・ハ・ゴイムまで追撃した。シセラの全
軍は剣によって倒れ,一人も残らなかった。
  17 しかしシセラは逃げて,ケニ人ヘベルの妻ヤエルの天幕に行った。ハツォルの王ヤビンとケニ人ヘベル
の家は友好関係にあったからである。 18 ヤエルは出てきてシセラを迎え,こう言った。「お入りください。
どうぞこちらです。心配なさらないでください」。シセラは天幕に入り,ヤエルは彼に毛布を掛けた。 19 シ
セラは言った。「水を少しくれないか。喉が渇いた」。ヤエルはミルクが入った革袋を開けて飲ませ,その後,
彼に毛布を掛け直した。 20 シセラは言った。「天幕の入り口に立ち,『ここに男がいるか』と誰かに尋ねら
れたら,『いない』と言ってくれ」。
  21 ヘベルの妻ヤエルは,天幕の杭と木づちを手に取った。そして,疲れてぐっすり眠っているシセラに忍
び足で近づき,杭を彼のこめかみに突き刺して地面に打ち込んだ。こうしてシセラは死んだ。
  22 バラクがシセラを追ってやって来ると,ヤエルは迎えに出て,こう言った。「おいでください。捜して
いる人をご覧に入れましょう」。バラクが彼女と一緒に入ると,シセラはこめかみに杭を刺されて死んでいた。
  23 神はその日,カナンの王ヤビンをイスラエル人の前に屈服させた。 24 イスラエル人はカナンの王ヤ
ビンを圧倒していき,やがてヤビンを殺した。
  5 章
  1 その日,デボラはアビノアムの子バラクと一緒にこの歌を歌った。
  2 「髪を縛っていないイスラエルの戦士のゆえに,
  志願した民のゆえに,
  エホバを賛美せよ。
  3 王たち,聞け。支配者たち,耳を傾けよ。
  私はエホバに向かって歌う。
  イスラエルの神エホバを賛美して歌う。
  4 エホバ,あなたがセイルから出て,
  エドムの領土から進み出られた時,
  地面は揺れ,天は水を注ぎ,
  雲が水を注ぎ出した。
  5 山々はエホバの顔の前で溶け,
  シナイもイスラエルの神エホバの顔の前で溶けた。
  6 アナトの子シャムガルの日に,
  ヤエルの日に,街道には人けがなく,
  旅人たちは裏道を通った。
  7 イスラエルに村人がいなくなった。
  彼らがいなくなり,ついに私,デボラは立ち上がった。
  イスラエルで母として立ち上がった。
  8 民は新しい神々を選んだ。
  その時,町の門の中で戦いがあった。
  イスラエルの4万人の中には
  盾も小やりも見えなかった。
  9 私の心はイスラエルの司令官たちと共にある。
  民と共に志願して行った人たちである。
  エホバを賛美せよ。
  10 栗毛のロバに乗る者たち,
  上等なじゅうたんに座る者たち,
  道を歩く者たち,
  考えよ!
  11 水くみ場で水を配る者たちの声が聞こえた。
  そこで語っていたのは,エホバの正しい行い,
  イスラエルの村人たちの正しい行い。
  その時,エホバの民は町の門に下っていった。
  12 目を覚ませ,目を覚ませ,デボラ。
  目を覚ませ,目を覚ませ,歌を歌え!
  立ち上がれ,バラク。捕虜たちを連れていけ,アビノアムの子よ!
  13 その時,残っていた人たちは高貴な人たちのもとに来た。
  エホバの民は私のもとに来て,勇士たちを攻めた。
  14 エフライム族から来た人たちが谷にいた。
  ベニヤミンよ,彼らはあなたの後に従っている。あなたの兵士たちと共にいる。
  マキルから司令官たちが下り,
  ゼブルンから徴兵のつえを持つ人たちが下った。
  15 イッサカルの高官たちはデボラと共におり,
  イッサカルと同じようにバラクも共にいた。
  バラクは谷あいの平原に向かった。
  ルベンの人たちの間では,激しい心の葛藤があった。
  16 なぜあなたは2つの荷物の間に座り,
  群れのための笛の音を聞いていたのか。
  ルベンの人たちには,激しい心の葛藤があった。
  17 ギレアデはヨルダン川の向こうにとどまっていた。
  ダンはなぜ船の近くにいたのか。
  アシェルは海辺で何もせずに座り,
  港のそばにとどまっていた。
  18 ゼブルンの民は命を懸けた。
  ナフタリも,高い所で。
  19 王たちが来て戦った。
  その時,カナンの王たちは戦った。
  メギドの流れのそばのタアナクで。
  銀の戦利品は得られなかった。
  20 星が天から戦い,
  その軌道からシセラと戦った。
  21 キションの激流が彼らを流し去った。
  昔からの激流,キションの激流が。
  私は強力な者たちを踏みつけた。
  22 その時,雄馬はひづめを踏み鳴らし,
  猛烈な勢いで走った。
  23 『メロズは災いを受けよ』とエホバの天使は言った。
  『そうだ,その住民は災いを受けよ。
  エホバを助けに来なかったからだ。
  エホバの戦いに勇士たちと共に加勢しなかった』。
  24 ケニ人ヘベルの妻ヤエルは女性のうち最も祝福された人。
  天幕に住む女性のうち最も祝福された人。
  25 シセラは水を求め,彼女はミルクを与えた。
  見事な大鉢で凝乳を差し出した。
  26 彼女は手を天幕の杭に,
  右手を職人用の木づちに伸ばした。
  シセラを打ち,頭を砕いた。
  こめかみを打ちたたき,刺し通した。
  27 彼は彼女の足の間に崩れ落ち,倒れて動かなかった。
  彼女の足の間に崩れ落ち,倒れた。
  崩れ落ちた所,そこで息絶えた。
  28 女性が窓から外を見た。
  シセラの母が格子越しに見つめた。
  『どうして息子の兵車はまだ戻らないのか。
  どうして馬のひづめの音がまだ聞こえてこないのか』。
  29 貴婦人のうち特に賢い人たちが答える。
  彼女も自分に言い聞かせる。
  30 『手に入れた戦利品を分配しているに違いない。
  娘を1人,2人,戦士全員に。
  戦利品の染め物をシセラに,戦利品の染め物を。
  刺しゅうが施された服,染め物を1枚,2枚,
  略奪をした者たちの首に』。
  31 エホバ,このように,あなたの敵は皆滅びますように。
  あなたを愛する人たちは,輝き昇る太陽のようになりますように」。
  この土地は40年間平穏だった。
  6 章
  1 イスラエル人は再び,エホバから見て悪いことを行った。それでエホバは彼らを7年間ミディアンの手
に渡した。 2 ミディアンはイスラエルを支配した。それでイスラエル人は,山の中や洞窟や簡単には行けない
所に隠れ場を作った。 3 イスラエルが種をまくと,ミディアンとアマレクと東方の人々が攻めてくるのだった。
4 彼らはイスラエルに対して陣営を敷き,遠くガザまで土地の産物を損ない,イスラエルが食べる物や,羊や
牛やロバを全く残さなかった。 5 彼らは家畜を連れ,天幕も持ってきた。バッタのように数が多く,彼らも彼
らのラクダも数えられなかった。彼らはその土地に入ってきて,そこを荒らした。 6 イスラエルはミディアン
のためにひどく衰退した。イスラエル人はエホバに助けを求めた。
  7 イスラエル人がミディアンからの救出をエホバに求めると, 8 エホバはイスラエル人に1人の預言者
を遣わし,その人はこう言った。「イスラエルの神エホバはこう言っています。『私はあなたたちを,奴隷と
なっていた土地エジプトから連れてきた。 9 あなたたちをエジプトから,また虐げる全ての人から救い出し,
彼らを追い払って,彼らの土地をあなたたちに与えた。 10 私は言った。「私はあなたたちの神エホバである。
あなたたちはアモリ人の土地に住んでいるが,彼らの神々を畏れてはならない」。しかし,あなたたちは私に
従わなかった』」。
  11 その後,エホバの天使が来て,オフラの大木の下に座った。それはアビ・エゼルの子孫ヨアシュのもの
だった。ヨアシュの子ギデオンは,ミディアン人に見つからないようにブドウ搾り場の中で小麦を打って脱穀
していた。 12 エホバの天使が現れてこう言った。「勇士よ,エホバはあなたと共にいます」。 13 ギデオン
は言った。「失礼ですが,もしエホバが私たちと共にいるなら,どうしてこのようなことが私たちに起きてい
るのでしょうか。父たちが『エホバは私たちをエジプトから連れ出してくださったではないか』と言って話し
てくれた全ての驚くべき行いは,今どこにあるでしょうか。エホバは私たちを見捨て,ミディアンの手に渡し
ました」。 14 エホバはギデオンの方を向いてこう言った。「出掛けていき,あなたの力を用いてイスラエル
をミディアンから救いなさい。私があなたを遣わすのではありませんか」。 15 ギデオンは答えた。「失礼で
すが,エホバ,私はどうやってイスラエルを救うのでしょうか。私の氏族はマナセの中で一番小さく,私は父
の家の中で最も取るに足りない者です」。 16 しかしエホバは言った。「私があなたと共にいるので,あなた
は1人の人を討つかのようにミディアンを討ちます」。
  17 ギデオンは言った。「もし今私があなたの好意を得ているのでしたら,私と話しているのがあなただと
いうしるしを見せてください。 18 私が捧げ物を持って戻り,あなたの前に置くまで,どうかここにいてくだ
さい」。天使は言った。「あなたが戻ってくるまでここにいます」。 19 ギデオンは行って,子ヤギを1匹用
意し,麦粉22リットルで無酵母パンを作った。肉は籠に,煮汁は鍋に入れて持っていき,大木の下にいる天
使に出した。
  20 真の神の天使は言った。「肉と無酵母パンをその大岩の上に置き,煮汁を注ぎなさい」。ギデオンはそ
の通りにした。 21 エホバの天使は,持っていたつえの先を肉と無酵母パンに当てた。すると,その岩から火
が上がって肉と無酵母パンを焼き尽くし,エホバの天使は目の前から消えた。 22 ギデオンは,それがエホバ
の天使だったことを悟った。
  直ちにギデオンは言った。「ああ,主権者である主エホバ,私はエホバの天使を面と向かって見てしまい
ました」。 23 しかしエホバは言った。「安心しなさい。恐れなくてよい。あなたは死ぬことはない」。 24
ギデオンはそこにエホバのための祭壇を作った。それは今日までエホバ・シャロムと呼ばれており,アビ・エゼ
ルの子孫の町オフラにある。
  25 その夜,エホバはギデオンに言った。「あなたの父の若い雄牛,7歳になる第2の若い雄牛を取りなさ
い。そして,あなたの父のものであるバアルの祭壇を取り壊し,そばにある聖木を切り倒すように。 26 この
安全な場所の一番高い所に石を並べてあなたの神エホバのための祭壇を作ってから,切り倒した聖木をまきに
して第2の若い雄牛を全焼の捧げ物として捧げなさい」。 27 ギデオンは召し使いを10人連れていき,エホ
バから告げられた通りにした。しかし,父の家の人たちや町の人たちを恐れて日中には行わず,夜中に行った。
  28 翌朝,町の人たちが早く起きると,バアルの祭壇は打ち壊され,その脇の聖木は切り倒され,第2の若
い雄牛は新たに作られた祭壇で捧げられていた。 29 人々は,「誰がこんなことをしたのか」と互いに言い,
調べた結果,「ヨアシュの子ギデオンがしたのだ」と言った。 30 町の人たちはヨアシュに言った。「息子を
連れてこい。彼は死に値する。バアルの祭壇を打ち壊し,そばの聖木も切り倒したからだ」。 31 ヨアシュは
詰め寄る全ての人にこう言った。「皆さんがバアルを弁護するのですか。バアルを救うのですか。バアルを弁
護する人はこの朝にも死刑にされるべきです。もしバアルが神なら,祭壇を打ち壊されたのですから,バアル
自身に弁護させたらいいでしょう」。 32 ヨアシュはその日ギデオンのことをエルバアルと呼び,「バアル自
身に弁護させたらいい。自分の祭壇を打ち壊されたのだから」と言った。
  33 ミディアンとアマレクと東方の人々が連合を組んだ。そして川を渡ってエズレルの谷に来て,陣営を張
った。 34 エホバの聖なる力がギデオンに働き,彼が角笛を鳴らすと,アビ・エゼルの子孫がギデオンの下に
集結した。 35 ギデオンはマナセ全域に使者を送り,その人々も彼の下に集結した。アシェルとゼブルンとナ
フタリにも使者を送ると,その人々もギデオンに会いに来た。
  36 ギデオンは真の神に言った。「約束なさった通り私によってイスラエルを救われるのでしたら, 37
今,1匹分の羊毛を脱穀場に広げておきますので,教えてください。もし羊毛だけに露が降りて周りの地面が
全て乾いているなら,あなたは約束通り私によってイスラエルを救われるのです」。 38 するとその通りにな
った。次の日早く起きて,露にぬれた羊毛を絞ると,大鉢が水でいっぱいになるほどだった。 39 それでもギ
デオンは真の神に言った。「私に対して怒りを燃やされませんように。もう一度だけお願いします。どうか,
もう一度だけこの羊毛で試させてください。どうか地面全体に露が生じ,この羊毛だけが乾いているようにし
てください」。 40 その夜,神はその通りにした。羊毛だけが乾いていて,地面全体に露が降りていた。
  7 章
  1 エルバアルつまりギデオンと,共にいた人々は皆,早く起きて,ハロドの泉の所に陣営を敷いた。ミデ
ィアンの陣営はその北,谷あいの平原にあるモレの丘にあった。 2 エホバはギデオンに言った。「あなたと共
にいる人々は多過ぎるので,私はあなたたちをミディアンに勝たせることはしない。イスラエルは私に向かっ
て自慢し,『自分の力で勝ったのだ』と言いかねない。 3 さあ,皆の前で,『怖がって震えている人は家に帰
ってもよい』と言いなさい」。ギデオンは人々を試した。すると2万2000人が家に帰り,1万人が残った。
  4 エホバはさらにギデオンに言った。「まだ多過ぎる。人々を水辺に行かせなさい。私がそこで彼らを試
すためだ。私があなたに『この人はあなたと共に行く』と言ったら,その人はあなたと共に行くが,『この人
はあなたと一緒に行かない』と言ったら,一緒には行かない」。 5 それでギデオンは人々を水辺に連れていっ
た。
  エホバはギデオンに言った。「犬が水を飲む時のように警戒しながら水を飲む人全員を,膝を突いてかが
んで飲む人と別にしなさい」。 6 手で水を口に持っていって飲んだ人は300人で,残りの人は膝を突いてか
がんで飲んだ。
  7 エホバはギデオンに言った。「手から飲んだ300人によって私はあなたたちを救い,あなたをミディ
アンに勝たせる。他の人々は皆,家に帰らせなさい」。 8 300人が人々から食糧と角笛を受け取った後,ギ
デオンはイスラエルの人たちを皆家に帰らせ,300人だけとどまらせた。ミディアンの陣営は,下に広がる
谷あいの平原にあった。
  9 その夜のこと,エホバはギデオンに言った。「起きて,敵の陣営を攻めなさい。私はそれをあなたの手
に渡した。 10 しかし,攻めるのが怖ければ,従者プラと一緒にその陣営に下っていくように。 11 彼らが話
していることを聞きなさい。そうすれば,陣営を攻める勇気が出る」。そこでギデオンと従者プラは陣営の端
の方に下っていった。
  12 ミディアンとアマレクと東方の人々はバッタの大群のように谷あいの平原を覆っていた。ラクダは数限
りなく,海辺の砂のように多かった。 13 ギデオンが近づくと,1人の男性が夢について仲間に話していた。
こう言った。「こんな夢を見た。丸い大麦パンが転がりながらミディアンの陣営に入ってきた。そして天幕に
激しくぶつかったので,天幕がつぶれた。いや,ひっくり返ってぺしゃんこになったんだ」。 14 仲間は言っ
た。「それは,ヨアシュの子,イスラエル人ギデオンの剣に違いない。神はミディアンと全陣営を彼の手に渡
したんだ」。
  15 ギデオンは夢とその解釈を聞くと,すぐにひれ伏して神を崇拝した。その後,イスラエルの陣営に戻っ
て,こう言った。「起きなさい。エホバはミディアンの陣営をあなたたちの手に渡しました」。 16 そして3
00人を3つの部隊に分け,全員に角笛と大がめを与えた。大がめにはたいまつを入れた。 17 ギデオンは言
った。「私を見て,同じことを行いなさい。私が陣営の端に行った時に,私がする通りにするのです。 18 私
が,一緒にいる人全てと共に角笛を吹いたら,あなたたちも陣営の周囲で角笛を吹き,『エホバのため,ギデ
オンのため!』と叫びなさい」。
  19 ギデオンは自分と一緒にいた100人と共に陣営の端まで来た。真ん中の夜警時が始まり,見張りは持
ち場に就いたばかりだった。ギデオンたちは角笛を吹き,持っていた大きな水がめを打ち砕いた。 20 3つの
部隊が角笛を吹き,大がめを砕いた。たいまつを左手に持ち,右手にある角笛を吹き,「エホバの剣,ギデオ
ンの剣!」と叫んだ。 21 その間ずっとそれぞれは陣営の周囲で自分の場所に立っていたが,陣営にいる人た
ちは皆走りだし,逃げながら叫んでいた。 22 300人が角笛を吹き続けると,エホバは陣営の至る所で互い
に向かって剣を振るわせた。軍勢はベト・シタまで,さらにツェレラ,またタバトに近いアベル・メホラの外れ
にまで逃げていった。
  23 イスラエルの人たちがナフタリ,アシェル,マナセ全域から呼び集められ,ミディアンを追撃した。
24 ギデオンはエフライムの山地全域に使者を送ってこう言った。「下っていってミディアンを攻め,ベト・バ
ラとヨルダン川の渡り場を占拠してください」。エフライムの全ての兵士が集結し,ベト・バラとヨルダン川の
渡り場を占拠した。 25 さらにミディアンの2人の高官オレブとゼエブを捕らえて,オレブをオレブの岩の上
で殺し,ゼエブをゼエブのブドウ搾り場で殺した。そしてミディアンを引き続き追撃し,オレブとゼエブの首
をヨルダン地方にいたギデオンの所に届けた。
  8 章
  1 エフライムの人たちはギデオンに言った。「一体どういうつもりだ。ミディアンと戦う時に,なぜわれ
われを呼ばなかったんだ」。そしてひどく文句を言った。 2 ギデオンは言った。「皆さんがしたことに比べれ
ば私は大したことはしていません。エフライムのブドウの収穫の残りは,アビ・エゼルの収穫に勝っているでは
ありませんか。 3 神はミディアンの高官オレブとゼエブを皆さんの手に渡しました。皆さんがしたことに比べ
れば私は大したことはしていません」。ギデオンがこう話すと,エフライムの人たちの気持ちは治まった。
  4 ギデオンはヨルダン川まで来て,それを渡った。ギデオンと300人は疲れていたが,追撃を続けた。
5 ギデオンはスコトの人たちに言った。「私に従っている人たちに,どうかパンを下さい。彼らは疲れていて,
私たちはミディアンの王ゼバハとツァルムナを追撃しているのです」。 6 ところがスコトの高官たちは言った。
「ゼバハとツァルムナを捕らえたとでもいうのか。どうしてあなたの軍隊にパンを与えなければならないの
か」。 7 ギデオンは言った。「では,エホバがゼバハとツァルムナを私の手に渡してくださる時,私は荒野の
いばらであなたたちを打ちたたきます」。 8 そこからペヌエルに上っていき,同じことを頼んだが,ペヌエル
の人たちもスコトの人たちと同じように答えた。 9 ギデオンはペヌエルの人たちにもこう言った。「無事に戻
ってくる時,この塔を打ち壊します」。
  10 ゼバハとツァルムナはカルコルにいて,約1万5000人の軍隊も一緒だった。これは東方の人々の全
軍のうち残った人たちで,剣を帯びた人がすでに12万人倒れていた。 11 ギデオンは,ノバハとヨグベハの
東,天幕に住む人々の道を上っていき,陣営が油断しているところを攻撃した。 12 ミディアンの2人の王ゼ
バハとツァルムナが逃げると,ギデオンは追跡して2人を捕らえ,陣営全体を混乱に陥れた。
  13 ヨアシュの子ギデオンは,ヘレスに上る山道を通って戦いから戻った。 14 その途中,スコトの1人
の若者を捕らえて問いただした。その若者はスコトの高官と長老たち77人の名前を書き出した。 15 ギデオ
ンはスコトの人たちの所に行ってこう言った。「あなたたちは私をあざけり,『ゼバハとツァルムナを捕らえ
たとでもいうのか。どうしてあなたの疲れ切った男たちにパンを与えなければならないのか』と言いましたが,
そのゼバハとツァルムナがここにいます」。 16 それから町の長老たちを連れていき,荒野のいばらでスコト
の人たちに思い知らせた。 17 またペヌエルの塔を打ち壊し,町の人たちを殺した。
  18 ギデオンはゼバハとツァルムナに尋ねた。「タボルで殺したのはどんな人たちだったのか」。2人は言
った。「あなたと似ていて,皆,王の子のような感じだった」。 19 ギデオンは言った。「それは私の兄弟た
ち,私の母の子たちだ。生きている神エホバに懸けて誓う。あなたたちがその者たちを生かしておいたなら,
私もあなたたちを殺さなくてよかっただろう」。 20 そして長男エテルに言った。「さあ,この2人を殺しな
さい」。しかし,エテルは剣を抜かなかった。まだ若者で,怖かったのである。 21 ゼバハとツァルムナは言
った。「おまえが殺せ。男だったら力を見せてみろ」。そこでギデオンはゼバハとツァルムナを殺し,彼らの
ラクダの首にあった三日月形の飾りを取った。
  22 その後,イスラエルの人たちはギデオンに言った。「あなたが,あなたの子と孫が,私たちを治めてく
ださい。あなたは私たちをミディアンから救ったからです」。 23 しかしギデオンは言った。「私は皆さんを
治めませんし,私の子もそうしません。エホバが皆さんを治めるのです」。 24 さらにこう言った。「1つだ
けお願いがあります。それぞれ,戦利品の中から鼻輪を私に下さい」。(敵たちはイシュマエル人で,金の鼻
輪を着けていたのである。) 25 人々は,「もちろん差し上げます」と答え,長い服を1枚広げて,それぞれ
が戦利品の中から鼻輪を投げ入れた。 26 ギデオンが求めた金の鼻輪は全部で重さが19キロになった。その
ほかに,三日月形の飾り,ペンダント,ミディアンの王たちが着ていた紫の羊毛の服,ラクダに付いていた首
飾りがあった。
  27 ギデオンはその金でエフォドを作り,自分の町オフラに展示した。イスラエル全体は,そこでエフォド
を崇拝するという不忠実なことをした。それはギデオンと家の人たちにとってわなとなった。
  28 ミディアンはイスラエル人に制圧され,二度と挑んでこなかった。ギデオンの時代,この土地は40年
間平穏だった。
  29 ヨアシュの子エルバアルは自分の家に戻り,そこに住んだ。
  30 ギデオンには息子が70人生まれた。多くの妻がいたからである。 31 シェケムにいた彼のそばめも
男の子を産み,彼はその子をアビメレクと名付けた。 32 ヨアシュの子ギデオンは長生きした後,アビ・エゼ
ルの子孫の町オフラにある父ヨアシュの墓に葬られた。
  33 ギデオンが死ぬとすぐ,イスラエル人は再びバアルを崇拝するという不忠実なことをし,バアル・ベリ
トを自分たちの神とした。 34 イスラエル人は,周囲の全ての敵から救い出してくださった自分たちの神エホ
バを思い出さなかった。 35 エルバアルつまりギデオンがイスラエルのために行った全ての良いことを忘れ,
彼の家の人たちに揺るぎない愛を示さなかった。
  9 章
  1 やがてエルバアルの子アビメレクは,シェケムにいる自分の母の兄弟たちの所に行き,彼らと母方の祖
父の家族全員にこう言った。 2 「どうかシェケムの指導者全員に尋ねてください。『エルバアルの70人の息
子全員に治められるのと,1人に治められるのと,皆さんにとってどちらが良いでしょうか。忘れないでくだ
さい。私は皆さんの肉親です』」。
  3 アビメレクの母の兄弟たちは,彼に代わってシェケムの指導者全員にそのことを伝えた。彼らはアビメ
レクに従おうという気持ちになった。「彼はわれわれの兄弟だ」と言ったのである。 4 そしてバアル・ベリト
の家から銀70枚を彼に与えた。アビメレクはその銀でならず者たちを雇い,引き連れた。 5 その後,オフラ
にある父の家に行き,自分の兄弟たち,エルバアルの息子たち70人を1つの石の上で殺した。エルバアルの
一番下の息子ヨタムだけは,隠れていたので生き残った。
  6 シェケムの指導者全員とベト・ミロの全ての人は集まり,大木のすぐ近く,シェケムの柱の近くで,アビ
メレクを王にした。
  7 ヨタムは,そのことを知らされると,すぐに出掛けてゲリジム山の山頂に立ち,大声でこう言った。
「シェケムの指導者たち,私の話すことを聞きなさい。そうすれば,神もあなたたちの話すことを聞きます。
  8 ある時,木々が自分たちの王を立てて油を注ぐために出掛けていきました。そしてオリーブの木に,
『私たちを治めてください』と言いました。 9 しかしオリーブの木は言いました。『私は神と人に栄光をもた
らす油を生み出すのをやめて,他の木々の上で枝を揺らすために行かないといけないのですか』。 10 木々は
イチジクの木に言いました。『来て,私たちを治めてください』。 11 ところがイチジクの木は言いました。
『私は甘くておいしい実を生み出すのをやめて,他の木々の上で枝を揺らすために行かないといけないのです
か』。 12 木々はブドウの木に,『来て,私たちを治めてください』と言いました。 13 ブドウの木は答えま
した。『私は神と人が喜ぶ新しいぶどう酒を生み出すのをやめて,他の木々の上で枝を揺らすために行かない
といけないのですか』。 14 最後に全ての木はノイバラに言いました。『来て,私たちを治めてください』。
15 ノイバラは木々に言いました。『あなたたちが本当に私に油を注いで王にするというなら,来て私の陰に避
難せよ。でも,そうでないなら,このノイバラから火が出て,レバノンの杉も焼き尽くす』。
  16 皆さんがアビメレクを王にしたのは誠意ある立派なことでしょうか。皆さんは,エルバアルとその家の
人たちに良いことをしましたか。彼の働きに報いたでしょうか。 17 私の父は皆さんをミディアンから救うた
めに命懸けで戦いました。 18 それなのに,皆さんは今日,私の父の家の人たちに敵対して父の息子70人を
1つの石の上で殺し,女奴隷の子アビメレクを,自分たちの兄弟というだけの理由で,シェケムの指導者たち
の王にしました。 19 皆さんがエルバアルとその家の人たちに今日行ったのが誠意ある立派なことであるなら,
アビメレクのことを喜びなさい。彼も皆さんのことを喜ぶでしょう。 20 でも,そうでないなら,アビメレク
から火が出てシェケムの指導者たちとベト・ミロを焼き尽くし,シェケムの指導者たちとベト・ミロからも火が
出てアビメレクを焼き尽くしますように」。
  21 ヨタムは逃げてベエルに行き,兄アビメレクを恐れてそこに住んだ。
  22 アビメレクはイスラエルを3年治めたが, 23 神はアビメレクとシェケムの指導者たちの間に敵意を
生じさせ,シェケムの指導者たちはアビメレクを裏切った。 24 これは,エルバアルの70人の息子に対する
残虐行為の復讐がなされるため,彼らを殺した兄弟アビメレクとそれを手助けしたシェケムの指導者たちに流
血の責任を取らせるためだった。 25 シェケムの指導者たちは山々の頂上にアビメレクを待ち伏せする者たち
を配置し,その者たちは,そばを通行する全ての人の物を強奪した。やがてそのことがアビメレクに伝えられ
た。
  26 エベドの子ガアルとその兄弟たちがシェケムにやって来た。シェケムの指導者たちはガアルを信用した。
27 シェケムの人々は出ていってブドウ園のブドウを集め,それを踏んでぶどう酒を造り,祭りを行った。そ
の後,自分たちの神の家に入って飲み食いし,アビメレクに災いがあるよう願い求めた。 28 エベドの子ガア
ルは言った。「アビメレクが何者で,シェケムが何者だというので,われわれは仕えるべきなのか。彼はエル
バアルの子で,ゼブルは彼の事務官ではないか。シェケムの父ハモルの子たちに仕えなさい。どうしてアビメ
レクに仕えるべきなのか。 29 もしこの民が私の指揮下にあったなら,私はアビメレクを退陣させるのだが」。
ガアルはアビメレクに対して,「軍隊を増強して出てこい」と言った。
  30 町の高官ゼブルはエベドの子ガアルの言葉を聞き,怒りに燃えた。 31 そして,ひそかにアビメレク
に使者を送ってこう言った。「申し上げます。エベドの子ガアルとその兄弟たちが今シェケムにいて,町の
人々をあなたに逆らわせようとしています。 32 ですから,配下の人たちと共に夜のうちに来て,野原で待機
していてください。 33 そして,朝日が昇ったらすぐに起き上がって町を攻めてください。ガアルと民が向か
って出てきたら,彼を倒すために何でもしてください」。
  34 アビメレクと配下の人々は皆,夜のうちに行動を起こし,4部隊に分かれてシェケムの外で待機した。
35 エベドの子ガアルが出てきて町の門の入り口に立つと,アビメレクと配下の人々は待機していた場所から立
ち上がった。 36 ガアルはその人々を見て,ゼブルに言った。「見てください,山々の頂上から人々が下りて
きます」。しかしゼブルは言った。「山の影が人々のように見えるのです」。
  37 その後ガアルは言った。「見てください,人々が大地の中央から下りてきます。1つの部隊はメオネニ
ムの大木の所を通ってきます」。 38 ゼブルは答えた。「『アビメレクが何者だというので,われわれは仕え
るべきなのか』と豪語していませんでしたか。これはあなたが退けた人々ではありませんか。さあ,出ていっ
て戦いなさい」。
  39 ガアルはシェケムの指導者たちの先頭に立って出ていき,アビメレクと戦った。 40 ガアルはアビメ
レクに追い掛けられて逃げた。大勢の人が殺され,町の門の入り口の所にまで及んだ。
  41 アビメレクは引き続きアルマに住み,ゼブルはガアルとその兄弟たちをシェケムから追い出した。 42
次の日も人々が町から出ていき,そのことがアビメレクに告げられた。 43 アビメレクは配下の人々を連れて
いって3部隊に分け,野原で待機した。町から人々が出てくるのを見ると,その人たちを攻撃して討った。 44
アビメレクと彼と共にいた部隊は突撃して町の門の入り口を占拠し,2つの部隊は野原にいる全ての人を攻撃
して討った。 45 アビメレクは一日中その町に対して戦い,攻略した。その中にいた人々を殺し,その町を打
ち壊して塩をまいた。
  46 シェケムの塔の指導者は皆,そのことを聞くと,すぐにエル・ベリトの家の円天井広間に行った。 47
シェケムの塔の指導者が皆集まっていることがアビメレクに伝えられると, 48 アビメレクと配下の人々は皆
ツァルモン山に登った。アビメレクはおのを手に取り,木の枝を1本切り落として肩に載せ,人々に言った。
「私がしたことを見たか。急いで同じようにしなさい!」 49 皆は枝を切り落として,アビメレクの後に従っ
た。そして枝を円天井広間の周りに立て掛けて火を放った。シェケムの塔の人々,約1000人の男女が皆死
んだ。
  50 アビメレクはテベツに行き,テベツに対して陣営を敷いて占領した。 51 町の真ん中に強固な塔があ
り,全ての男女,町の全ての指導者がそこに逃げ込んで立てこもり,塔の屋上に上った。 52 アビメレクはそ
の塔まで行って攻撃し,塔の入り口に近づいて火を放とうとした。 53 その時,ある女性がひき臼の石をアビ
メレクの頭の上に落とし,頭蓋骨を砕いた。 54 アビメレクは武器を持つ従者を急いで呼び,こう言った。
「剣を抜いて,私を殺せ。『女に殺された』と言われたくない」。従者はアビメレクを刺し通し,彼は死んだ。
  55 イスラエルの人たちは,アビメレクが死んだのを見ると,皆,家に帰った。 56 こうして神は,兄弟
70人を殺すという,父親に対するアビメレクの悪事に報いた。 57 神はシェケムの人たちの全ての悪事にも
報い,エルバアルの子ヨタムが述べた災いが彼らに降り掛かった。
  10 章
  1 アビメレクの後,イッサカル族の人で,ドドの子プアの子トラが,イスラエルを救うために立ち上がっ
た。トラはエフライムの山地のシャミルに住んでいた。 2 イスラエルを23年間裁いた後,死んでシャミルに
葬られた。
  3 トラの後,ギレアデの人ヤイルが立ち上がり,イスラエルを22年間裁いた。 4 ヤイルには30人の
息子がいて,彼らは30頭のロバに乗り,30の町を持っていた。それらは今日までハボト・ヤイルと呼ばれて
おり,ギレアデ地方にある。 5 その後ヤイルは死んでカモンに葬られた。
  6 イスラエル人は再びエホバから見て悪いことを行い,バアル,アシュトレテの像,アラムの神々,シド
ンの神々,モアブの神々,アンモン人の神々,フィリスティア人の神々を崇拝するようになった。エホバを捨
て,その方に仕えなかった。 7 エホバはイスラエルに対して怒りに燃え,彼らをフィリスティア人やアンモン
人に引き渡した。 8 その人たちはその年にイスラエル人を痛めつけ,ひどく虐げた。ヨルダン川の東側,ギレ
アデにあるアモリ人の土地にいるイスラエル人全てを18年間虐げた。 9 アンモン人はヨルダン川を渡ってユ
ダやベニヤミンやエフライムとも戦った。イスラエルは非常に苦しめられた。 10 イスラエル人はエホバに助
けを求めて,こう言った。「私たちはあなたに罪を犯しました。私たちの神であるあなたを捨てて,バアルに
仕えました」。
  11 しかしエホバはイスラエル人に言った。「私はあなたたちをエジプトから,アモリ人,アンモン人,フ
ィリスティア人から救い出したではないか。 12 シドン人,アマレク,ミディアンからも救い出した。あなた
たちが彼らに圧迫され,私に向かって叫んだ時に,救い出した。 13 それなのに,あなたたちは私を捨てて他
の神々に仕えた。だから私は二度とあなたたちを救わない。 14 自分たちが選んだ神々の所に行って,助けを
求めよ。苦難の時には彼らに救ってもらうがよい」。 15 イスラエル人はエホバに言った。「私たちは罪を犯
しました。何でも良いと思われることを私たちになさってください。ただ,どうか今日,私たちを救ってくだ
さい」。 16 そして自分たちの中から外国の神々を除き去って,エホバに仕えた。そのためイスラエルの苦し
みは神にとって耐え難いものとなった。
  17 やがてアンモン人は集結し,ギレアデに陣営を敷いた。イスラエル人も集合し,ミツパに陣営を敷いた。
18 ギレアデの民と高官たちはこう言い合った。「先頭に立ってアンモン人と戦うのは誰か。その人がギレア
デの全住民の長になるのだ」。
  11 章
  1 ギレアデの人エフタは強い戦士だった。娼婦の子で,父親はギレアデという人だった。 2 ギレアデの
妻も息子たちを産んだ。息子たちは大きくなると,エフタを追い出し,こう言った。「あなたは別の女性の子
だから,私たちの父の家にあなたが相続する物は何もない」。 3 エフタは兄弟たちのもとを去り,トブに住む
ようになった。することのない男たちがエフタの仲間になり,彼の後に従った。
  4 しばらくして,アンモン人はイスラエルと戦った。 5 アンモン人がイスラエルと戦うようになると,
ギレアデの長老たちはエフタをトブから連れ戻すためにすぐに出掛けた。 6 そしてエフタに言った。「来て,
私たちの司令官になってください。アンモン人と戦うのです」。 7 しかしエフタはギレアデの長老たちに言っ
た。「皆さんが私を憎んで父の家から追い出したのではありませんか。どうしていまさら私の所に来るのです
か。自分たちが苦難に遭った時になって」。 8 長老たちは言った。「だからこそ今あなたのもとに戻ったので
す。私たちと一緒に行ってアンモン人と戦ってくださるなら,あなたはギレアデの全住民の指導者になりま
す」。 9 エフタは言った。「皆さんがアンモン人と戦うために私を連れ戻し,エホバが彼らを打ち破ってくだ
さるなら,私は皆さんの指導者になります」。 10 長老たちは言った。「私たちがあなたの言った通りにしな
いなら,エホバが私たちの間の証人となりますように」。 11 エフタはギレアデの長老たちと一緒に行き,民
は彼を指導者また司令官とした。エフタはミツパで,自分の言葉全てをエホバの前で繰り返した。
  12 エフタはアンモン人の王に使者を送って,こう言った。「どうして私に敵対して私の土地に攻めてきた
のですか」。 13 アンモン人の王はエフタの使者に言った。「イスラエルはエジプトから上ってきた時,私の
土地を,アルノンの谷からヤボクの谷まで,またヨルダン川までを取ったからだ。今,それをおとなしく返す
ように」。 14 しかしエフタはアンモン人の王に使者を送って, 15 こう言った。
  「エフタはこう申しております。『イスラエルはモアブ人の土地とアンモン人の土地を取ったのではあり
ません。 16 イスラエルはエジプトから上ってきた時,荒野を歩いて紅海まで行き,カデシュに来ました。
17 その時イスラエルはエドムの王に使者を送って,「どうかあなたの土地を通らせてください」と言いました
が,エドムの王は聞き入れませんでした。モアブの王にも使者を遣わしましたが,彼は応じませんでした。そ
れでイスラエルはカデシュにとどまっていました。 18 荒野を歩いた時はエドムの土地とモアブの土地を迂回
して進み,モアブの土地の東を通ってアルノンの地域に宿営しました。アルノンの谷がモアブの境界だったの
で,モアブの境界内には入りませんでした。
  19 その後イスラエルは,ヘシュボンの王,アモリ人の王シホンに使者を送って,こう言いました。「どう
か目的地に行くためにあなたの土地を通らせてください」。 20 しかしシホンは,領土を通ろうとするイスラ
エルを信用せず,兵士全てを集めてヤハツに陣営を敷き,イスラエルと戦いました。 21 イスラエルの神エホ
バがシホンと彼の兵士全てをイスラエルの手に渡したので,イスラエルは彼らを打ち破り,その土地に住むア
モリ人の全ての土地を取得しました。 22 こうしてアモリ人の全領土を,アルノンの谷からヤボクの谷まで,
また荒野からヨルダン川までを取得しました。
  23 イスラエルの神エホバがアモリ人をご自分の民イスラエルの前から追い払ったのに,今,あなた方はイ
スラエルを追い払おうとするのですか。 24 あなたの神ケモシュが与えるものは何でも,あなたは所有するの
ではありませんか。私たちの神エホバが私たちの前から追い払った全ての者の土地を,私たちは所有するので
す。 25 あなたは,モアブの王でチッポルの子であるバラクに勝っているのでしょうか。彼がイスラエルと争
ったり戦ったりしたことがありましたか。 26 イスラエルはヘシュボンと周辺の町,アロエルと周辺の町,ア
ルノンの谷の川岸に近い全ての町に300年も住んでいたのに,どうしてその間に取り返そうとしなかったの
ですか。 27 私はあなたに罪を犯してはいません。私を攻撃するのは間違っています。裁く方エホバが今日,
イスラエルの民とアンモンの民を裁かれますように』」。
  28 しかし,アンモン人の王はエフタからの言葉を聞き入れなかった。
  29 エフタはエホバの聖なる力を受け,ギレアデとマナセを通ってギレアデのミツペに行き,ギレアデのミ
ツペからアンモン人の所に向かった。
  30 エフタはエホバに誓約してこう言った。「私をアンモン人に勝たせてくださるなら, 31 私がアンモ
ン人のもとから無事に戻った時に,私の家の戸口から誰が迎えに出てきても,その者はエホバのものになりま
す。私はその者を全焼の捧げ物としてお捧げします」。
  32 エフタは行ってアンモン人と戦い,エホバはエフタを勝たせた。 33 エフタは彼らを討ち,アロエル
から遠くミニトまで,20の町で,さらにアベル・ケラミムまで非常に大勢を殺した。こうしてアンモン人はイ
スラエル人に制圧された。
  34 エフタがミツパの自分の家に戻ると,何と,娘がタンバリンを鳴らして踊りながら迎えに出てきた。彼
女はたった1人の子で,ほかに息子も娘もいなかった。 35 エフタは娘を目にし,衣服を引き裂いてこう言っ
た。「ああ,何ということをしてくれたのだ。私はおまえを追い出さなければならない。エホバに約束した以
上,取り消すことはできない」。
  36 娘は言った。「お父さま,エホバに約束されたのでしたら,その通りに私になさってください。エホバ
は敵のアンモン人に復讐してくださったのですから」。 37 さらに父親に言った。「お願いがあります。2カ
月間山に行って,友達と一緒に泣くことをお許しください。私が結婚することはないからです」。
  38 エフタは,「行きなさい」と言って,娘が2カ月間行くことを許した。娘は友達と一緒に山に行き,結
婚しないことについて泣いた。 39 2カ月たって娘は父のもとに帰り,その後エフタは娘に関する誓約を果た
した。娘が男性と関係を持つことはなかった。イスラエルで次のことが慣例となった。 40 毎年,イスラエル
の若い女性たちは出掛けていき,年に4日ギレアデの人エフタの娘を褒めるのだった。
  12 章
  1 エフライムの人たちが集結し,ツァフォンに渡ってきて,エフタに言った。「アンモン人との戦いに一
緒に行くようわれわれを誘わなかったのはどうしてか。おまえの家をおまえも一緒に焼き払ってやる」。 2 し
かしエフタは言った。「私は私の民と共にアンモン人と激しく争いました。あなた方に助けを求めましたが,
彼らから救ってはくれませんでした。 3 あなた方が救ってくれないと分かって,命懸けでアンモン人に向かっ
ていくことにしました。そしてエホバが勝たせてくださったのです。どうして今日,私と戦おうとするのです
か」。
  4 エフタはギレアデの全ての人を集めてエフライムと戦った。エフライム族は,「ギレアデの者ども,お
まえたちはエフライムとマナセの中で,エフライムからの逃亡者にすぎない」と言っていたが,ギレアデの人
たちはエフライムを打ち破った。 5 ギレアデはエフライムより先にヨルダン川の渡り場を占拠した。エフライ
ムの人たちが逃げようとし,「渡らせてくれ」と言うと,ギレアデの人々は一人一人に,「エフライムの人
か」と尋ねた。その人が「違う」と言うと, 6 「シボレトと言ってみなさい」と言った。その人が正しく発音
できず,「スィボレト」と言うと,その人を捕らえてヨルダン川の渡り場で殺した。この時エフライム族の4
万2000人が倒れた。
  7 ギレアデの人エフタはイスラエルを6年間裁いた後,死んでギレアデの自分の町に葬られた。
  8 エフタの後,ベツレヘムの人イブツァンがイスラエルを裁いた。 9 イブツァンには30人の息子と3
0人の娘がいた。娘たちを氏族外の男性に嫁がせ,30人の女性を迎えて息子たちと結婚させた。彼はイスラ
エルを7年間裁いた。 10 イブツァンは死んで,ベツレヘムに葬られた。
  11 イブツァンの後,ゼブルン族のエロンがイスラエルを10年間裁いた。 12 ゼブルン族のエロンは死
んで,ゼブルンの領地のアヤロンに葬られた。
  13 エロンの後,ピルアトンの人ヒレルの子アブドンがイスラエルを裁いた。 14 アブドンには40人の
息子と30人の孫がいて,70頭のロバに乗っていた。彼はイスラエルを8年間裁いた。 15 ピルアトンの人
ヒレルの子アブドンは死んで,エフライムの領地,アマレク人の山にあるピルアトンに葬られた。
  13 章
  1 イスラエル人は再びエホバから見て悪いことを行うようになった。エホバは彼らを40年間フィリステ
ィア人の手に渡した。
  2 その頃,ツォルアの人で,ダン族のマノアという男性がいた。妻は子供ができなかった。 3 やがてエ
ホバの天使がその女性の前に現れてこう言った。「あなたは子供ができませんでしたが,妊娠して男の子を産
みます。 4 それで注意してぶどう酒などの酒を飲まないようにし,汚れたものを食べないようにしなさい。 5
あなたは妊娠して男の子を産みます。その子の頭にかみそりを当ててはなりません。生まれた時から神のナジ
ルとなるからです。彼は先頭に立ってイスラエルをフィリスティア人から救います」。
  6 女性は夫の所に行ってこう伝えた。「真の神に仕える人が私の所に来ました。真の神の天使のような姿
だったので,圧倒されてしまいました。どこから来たかを私は尋ねず,その方も名乗りませんでした。 7 その
方はこう言いました。『あなたは妊娠して男の子を産みます。それで,ぶどう酒などの酒を飲まないようにし,
汚れたものを食べないようにしなさい。その子は生まれた時から死ぬ日まで神のナジルとなるからです』」。
  8 マノアはエホバに懇願した。「お願いがあります,エホバ。どうか,先ほどの真の神に仕える人をもう
一度遣わしてください。生まれてくる子をどう育てたらよいかを教えていただきたいのです」。 9 真の神はマ
ノアの願いを聞き入れ,真の神の天使が再びマノアの妻の所にやって来た。野原に座っている時で,夫は一緒
ではなかった。 10 妻はすぐに夫の所に走っていき,「先日の方が来ています」と告げた。
  11 マノアは立って妻と一緒に行き,その人の所に来て,こう言った。「あなたが妻に話をしてくださった
方でしょうか」。彼は,「そうです」と言った。 12 マノアは言った。「あなたのお言葉がその通りになりま
すように。その子はどんな生活をし,どんな仕事をするのでしょうか」。 13 エホバの天使はマノアに言った。
「あなたの妻は,私が伝えた物を全て避けるべきです。 14 ブドウの木にできる物を食べてはならず,ぶどう
酒などの酒を飲んではなりません。汚れたものを食べないようにしなさい。私が命じたこと全てを彼女に守ら
せなさい」。
  15 マノアはエホバの天使に言った。「どうぞここにいてください。子ヤギを調理いたしましょう」。 16
しかしエホバの天使はマノアに言った。「ここにいるとしても,あなたが準備する物を食べません。でも,エ
ホバに全焼の捧げ物を捧げたいなら,そうしてください」。マノアは,それがエホバの天使だとは知らなかっ
た。 17 マノアはエホバの天使に言った。「お名前を教えてください。お言葉がその通りになる時,あなたを
たたえるためです」。 18 しかしエホバの天使は言った。「どうして私の名前を尋ねるのですか。それは驚く
べき名前です」。
  19 マノアは子ヤギと穀物の捧げ物を持ってきて,岩の上でエホバに捧げた。マノアと妻が見ていると,神
は驚くべきことを行った。 20 祭壇から炎が天の方に上がると,エホバの天使が,マノアと妻が見ている中,
その炎の中を上っていった。直ちに2人は地面にひれ伏した。 21 その時マノアは,それがエホバの天使だと
悟った。エホバの天使はマノアと妻に二度と現れなかった。 22 マノアは妻に言った。「私たちは神を見てし
まった。きっと死んでしまう」。 23 しかし妻は言った。「エホバが私たちを殺すつもりなら,私たちから全
焼の捧げ物と穀物の捧げ物を受け入れなかったはずです。こうしたことを見せたり,あのようなことを告げた
りもしなかったでしょう」。
  24 その後,マノアの妻は男の子を産み,サムソンと名付けた。男の子は成長し,エホバはその子を祝福し
続けた。 25 やがて,ツォルアとエシュタオルの間のマハネ・ダンで,エホバの聖なる力がサムソンに働くよ
うになった。
  14 章
  1 サムソンはティムナに下っていき,ティムナで,あるフィリスティア人女性を見た。 2 そして上って
いって,自分の両親にこう話した。「ティムナで,あるフィリスティア人の女性が目に留まりました。彼女を
私の妻として迎えてください」。 3 両親は言った。「親族や私たちの民の中から女性が見つけられないのか。
無割礼のフィリスティア人の中から妻を迎えなければならないのか」。サムソンは父に言った。「彼女を迎え
てください。私にふさわしい女性なのです」。 4 両親は,このことがエホバから出ていることが分からなかっ
た。彼はフィリスティア人と戦う機会をうかがっていたのである。その頃フィリスティア人はイスラエルを支
配していた。
  5 サムソンは両親と共にティムナに下っていった。彼がティムナのブドウ園まで来ると,突然,ライオン
がほえながら向かってきた。 6 サムソンはエホバの聖なる力を受けて,子ヤギを2つに引き裂くかのようにラ
イオンを素手で2つに引き裂いた。しかし,自分がした事を父や母に話さなかった。 7 そして下っていって,
その女性と話した。サムソンから見て,彼女は依然ふさわしい人だった。
  8 その後,サムソンが彼女を連れてこようとしてそこに戻る時に,脇に寄ってあのライオンの死骸を見る
と,その中に蜜蜂の群れがいて,蜜があった。 9 サムソンは蜜を手にかき集め,歩きながら食べた。両親の所
に戻って2人にも分けたが,ライオンの死骸から蜜をかき集めたことは話さなかった。
  10 サムソンの父はその女性の所に下っていき,サムソンはそこで宴会を開いた。若者たちはよくそうして
いたのである。 11 人々は彼を見ると,30人の花婿付添人を連れてきて,付き添わせた。 12 サムソンは彼
らに言った。「どうか謎を掛けさせてください。もしこの7日間の宴会の間に解いて答えられたら,30枚の
亜麻の下着と30着の衣装を差し上げます。 13 でも,答えられなかったら,皆さんが30枚の亜麻の下着と
30着の衣装を下さらなければなりません」。彼らは言った。「謎を掛けてもらおう。聞こうじゃないか」。
14 サムソンは言った。
  「食べる者から食べ物が出,
  強い者から甘い物が出た」。
  彼らは3日間この謎が解けなかった。 15 4日目に,彼らはサムソンの妻に言った。「夫をだまして,あ
の謎の答えを聞いてきてくれ。さもないと,おまえもおまえの父親の家族も火で焼いてやる。われわれの持ち
物を取るためにここに招いたのか」。 16 サムソンの妻は彼に泣き付いてこう言った。「あなたは私が嫌いな
のね。愛しているわけないわ。私の民に謎を掛けておいて,私に答えを教えてくれないんだもの」。サムソン
は言った。「何でだ,両親にも話していない。あなたに話すべきだろうか」。 17 しかし,7日間の宴会が続
く間,彼女はずっと泣き付いていた。サムソンは,しきりにせがまれたため,ついに7日目に謎の答えを教え,
彼女はそれを自分の民に伝えた。 18 町の人たちは7日目,日が沈む前にサムソンに言った。
  「蜜より甘い物があるだろうか。
  ライオンより強い者がいるだろうか」。
  サムソンは答えた。
  「私の若い雌牛で耕さなかったなら,
  あなた方は私の謎を解けなかった」。
  19 サムソンはエホバの聖なる力を受けて,アシュケロンに下っていってそこの人たちを30人討ち,彼ら
の着ていた物を取って,謎に答えた人たちに衣装を与えた。そして憤ったまま父の家に戻った。
  20 サムソンの妻は,花婿付添人として付き添っていた1人に与えられた。
  15 章
  1 しばらくして,小麦の収穫の時期に,サムソンは子ヤギを持って妻を訪ねた。そして,「寝室にいる妻
の所に行きたい」と言ったが,彼女の父親はそれを許さなかった。 2 父親は言った。「あなたがあの子を嫌い
になったと思ったので,花婿付添人に与えました。妹の方が美しいではないですか。どうぞ妹を代わりに妻に
してください」。 3 サムソンは言った。「私がフィリスティア人に害を加えても,今回は責められないはずで
す」。
  4 サムソンは出掛けていってキツネを300匹捕まえた。たいまつを用意し,キツネの尾と尾が向き合う
ようにさせ,2つの尾を縛り合わせてたいまつを1本ずつ取り付けた。 5 その後たいまつに火を付けて,キツ
ネをフィリスティア人の刈ってない穀物畑に放った。穀物の束から刈り取っていない穀物まで全ての物と,ブ
ドウ園とオリーブ畑に火を放った。
  6 フィリスティア人は「誰がこんなことをしたのか」と尋ね,こう告げられた。「サムソンだ。ティムナ
の人が娘婿サムソンの妻を取って花婿付添人に与えたからだ」。そこでフィリスティア人は出掛けていき,彼
女と彼女の父親を火で焼いた。 7 サムソンは言った。「そういうことをするなら,私はあなたたちに必ず復讐
する」。 8 そして彼らを次々に討ち,大勢を殺した。その後,エタムの大岩の洞窟に行ってそこに住んだ。
  9 後に,フィリスティア人が来て,ユダの中に宿営を張り,レヒをうろつき回った。 10 ユダの人たちが,
「どうして私たちを攻めに来たのですか」と言うと,こう答えた。「サムソンを捕まえに来た。あの男がわれ
われにした通りにしてやるのだ」。 11 ユダの人たち3000人がエタムの大岩の洞窟に行って,サムソンに
言った。「フィリスティア人が私たちを支配していることを知らないのですか。それなのに,どうしてこんな
ことをしてくれたのですか」。サムソンは言った。「彼らにされた通りに彼らにしたのです」。 12 ユダの人
たちは言った。「あなたを捕まえてフィリスティア人に引き渡すために来ました」。サムソンは言った。「私
を襲わない,と誓ってください」。 13 人々は言った。「私たちはあなたを縛って引き渡すだけで,殺したり
はしません」。
  人々はサムソンを2本の新しい縄で縛って大岩から連れていった。 14 サムソンがレヒまで来ると,彼を
見たフィリスティア人は,勝ち誇ったように叫んだ。その時エホバの聖なる力がサムソンに働き,両腕にあっ
た縄は火で焦げた亜麻糸のようになり,彼の手から縄が外れた。 15 サムソンは,死んだばかりの雄ロバの顎
骨を見つけ,手を伸ばしてつかみ,その顎骨で1000人を討った。 16 サムソンは言った。
  「ロバの顎骨で,1山,2山!
  ロバの顎骨で,1000人を討った」。
  17 こう言い終えると,顎骨を投げ捨て,その場所をラマト・レヒと呼んだ。 18 サムソンは非常に喉が渇
き,エホバに呼び掛けてこう言った。「この大勝利を私に与えてくださったのはあなたです。それなのに今,
私は喉が渇いて死に,無割礼の者たちの手に落ちるのでしょうか」。 19 神がレヒにあるくぼ地を割って開け
ると,そこから水が出てきた。サムソンはそれを飲むと,元気を取り戻し,回復した。それでその場所をエン・
ハコレと名付けた。それは今もレヒにある。
  20 サムソンはフィリスティア人の時代にイスラエルを20年間裁いた。
  16 章
  1 ある時サムソンはガザに行き,そこで娼婦を見て彼女の所に入った。 2 ガザの人たちに,「サムソン
が来た」という知らせがあった。それで人々は周りを取り囲み,町の門の中で夜通し待ち伏せした。「夜が明
けたら彼を殺そう」と言って,一晩中静かにしていた。
  3 サムソンは真夜中まで横になっていたが,真夜中に起き上がり,町の門の扉と両脇の柱をつかんで,か
んぬきを付けたまま引き抜き,両肩に担いで,ヘブロンに面する山の頂上に運んだ。
  4 その後,サムソンはソレクの谷にいるデリラという女性を愛するようになった。 5 フィリスティア人
の領主たちは彼女の所に来て,こう言った。「彼をだまして,どうしてあんなに力があるのか,どうすれば彼
を取り押さえて縛り,身動きできないようにさせられるのかを探り出してくれ。そうすれば,それぞれが銀1
100枚を与えよう」。
  6 デリラはサムソンに言った。「ねえ,教えて。あなたにはどうしてそんなに力があるの。何で縛れば,
あなたは身動きできなくなるの」。 7 サムソンは言った。「まだ乾いていない新しい弓弦7本で縛ったら,私
も普通の人のように弱くなる」。 8 フィリスティア人の領主たちが,まだ乾いていない新しい弓弦7本を持っ
てきたので,彼女はそれでサムソンを縛った。 9 人々が奥の部屋に待機し,彼女は,「サムソン,フィリステ
ィア人が来たわ!」と叫んだ。すると,サムソンは弓弦を引きちぎった。火であぶられた亜麻糸がちぎれるか
のようだった。彼の力の秘密は知られなかった。
  10 デリラはサムソンに言った。「もう,私をからかって,うそをついたのね。今度こそ,何で縛ったらい
いか教えてちょうだい」。 11 サムソンは言った。「新品の縄でしっかり縛ったら,私も普通の人のように弱
くなる」。 12 デリラは新しい縄で彼を縛ってこう叫んだ。「サムソン,フィリスティア人が来たわ!」(そ
の間ずっと,人々が奥の部屋に待機していた。)すると,サムソンはそれを糸のように引きちぎって腕から落
とした。
  13 その後デリラはサムソンに言った。「これまでずっと私をからかって,うそをついたわね。何で縛った
らいいか教えなさい」。サムソンは言った。「7つに編んだ私の髪と織物用の糸を織り合わせたらいい」。 14
デリラはサムソンの髪を機織り道具で留め,「サムソン,フィリスティア人が来たわ!」と叫んだ。するとサ
ムソンは眠りから覚め,機織り道具と織物用の糸を引き抜いた。
  15 デリラは言った。「私に心を開いてくれないのに,『愛している』なんてよく言えるわね。3回も私を
からかって,どうしてそんなに力があるのか教えてくれないじゃない」。 16 デリラが毎日小言を言って,し
きりにせがんだため,サムソンは参ってしまった。 17 とうとうサムソンは全てを打ち明けた。「私の頭には
かみそりが当てられたことがない。私は生まれた時から神のナジルなのだ。もし髪の毛をそり落とされたら,
私は力を失って弱くなり,みんなのようになる」。
  18 デリラは,サムソンが全てを打ち明けたのを見て取り,すぐにフィリスティアの領主たちを呼び,こう
言った。「今度こそ来てください。あの人は全てを打ち明けました」。フィリスティアの領主たちはお金を持
って彼女の所に来た。 19 デリラは膝の上でサムソンを眠らせた。そして人を呼んで,7つに編んだ彼の髪を
そり落とさせた。その後,サムソンを制することができるようになった。サムソンは力を失っていったのであ
る。 20 デリラは叫んだ。「サムソン,フィリスティア人が来たわ!」 サムソンは眠りから覚めて,「これま
でのように出ていって振りほどこう」と言った。エホバが自分から離れたことを知らなかった。 21 フィリス
ティア人は彼を捕まえて両目をえぐり取り,ガザに連れていって銅の足かせ2つをはめた。サムソンは牢屋で
粉をひく者となった。 22 彼の髪の毛は,そり落とされた後また伸び始めた。
  23 フィリスティアの領主たちは,自分たちの神ダゴンに盛大に犠牲を捧げて祝うために集まった。こう言
っていた。「われわれの神が敵のサムソンを引き渡してくれた!」 24 民は自分たちの神の像を見ると,賛美
してこう言った。「われわれの神が敵を引き渡してくれた。われわれの土地を荒らして大勢を殺した者を」。
  25 人々はいい気分だったので,「サムソンを呼んで,笑いものにしよう」と言って,見せ物にするために
サムソンを牢屋から呼び出した。そして,柱の間に立たせた。 26 サムソンは手をつかんでいた少年にこう言
った。「この家を支える柱に触らせてくれないか。寄り掛かりたいんだ」。 27 (ところで,その家は男女で
いっぱいで,フィリスティアの領主たちは皆そこにいた。屋上にいる約3000人の男女がサムソンを見て,
笑いものにしていた。)
  28 サムソンはエホバに向かって叫んだ。「主権者である主エホバ,どうか私を思い出してください。どう
かもう一度だけ私を強くしてください,神よ。フィリスティア人に復讐させてください。私の2つの目のうち
1つ分だけでも」。
  29 サムソンは,その家を支える真ん中の2本の柱の間にしっかりと立ち,その一方に右手を,もう一方に
左手を押し付けた。 30 サムソンは,「フィリスティア人と共に死なせてください」と叫んだ。そして力いっ
ぱい押すと,家は領主とそこにいた全ての人の上に崩れ落ちた。サムソンが死ぬ時に殺した人は,生きている
間に殺した人より多かった。
  31 その後,サムソンの兄弟たちと父の家の全ての人が遺体を取りに来た。そして運んでいってツォルアと
エシュタオルの間にある父マノアの墓に葬った。サムソンはイスラエルを20年間裁いた。
  17 章
  1 エフライムの山地の人で,ミカという男性がいた。 2 ミカは母親に言った。「お母さんは,銀110
0枚を盗まれた時に,盗んだ人に災いがあるよう願い求めていましたね。実は,その銀は私が持っています。
取ったのは私です」。母親は言った。「エホバがわが子を祝福してくださいますように」。 3 ミカが銀110
0枚を返すと,母親は言った。「私は必ずこの銀をエホバにとって神聖なものとします。あなたが銀を使って
彫刻像と金属像を作るためです。さあ,これはあなたのものです」。
  4 ミカが銀を母親に返すと,母親は銀200枚を取って銀細工人に渡した。彫刻像と金属像が作られ,ミ
カの家に置かれた。 5 ミカは神々の家を持っていて,エフォドとテラフィム像を作り,息子の1人を自分のた
めに祭司として任命した。 6 その頃イスラエルに王はいなかった。各自が自分の正しいと思うことをしていた。
  7 ユダのベツレヘムの若者で,ユダの家族の男性がいた。レビ族の人で,しばらくそこに住んでいた。 8
この男性はどこか別の場所に住もうとしてユダのベツレヘムの町を出た。旅の途中でエフライムの山地に入り,
ミカの家まで来た。 9 ミカは言った。「どちらから来られたのですか」。その人は答えた。「私はレビ族の者
で,ユダのベツレヘムから来ました。住む場所を探しているところです」。 10 ミカは言った。「私の所に住
んで,私の助言者に,また祭司になってください。年に銀10枚と,衣服一式,食べる物を差し上げます」。
そこでレビ族の人は中に入った。 11 レビ族の若者はミカの所に住むことに同意し,彼の息子の1人のように
なった。 12 ミカはレビ族の人を自分のために祭司として任命し,その人はミカの家に住んだ。 13 ミカは言
った。「エホバは私に良くしてくださるに違いない。レビ族の人が私の祭司になったからだ」。
  18 章
  1 当時,イスラエルに王はいなかった。その頃ダン族は住む土地を探していた。その時まで,イスラエル
の諸部族の間で領地を十分に得ていなかったからである。
  2 ダン族は,土地を偵察して探らせるために有能な5人をツォルアとエシュタオルから送り出し,「行っ
て,土地を探ってきなさい」と言った。5人はエフライムの山地に入り,ミカの家の所まで来て,そこで夜を
過ごした。 3 ミカの家の近くにいる間に,レビ族の若者の声に気付いて,彼の所に立ち寄り,こう尋ねた。
「誰に連れてこられたのですか。こんな所で何をしているのですか。なぜここにとどまっているのですか」。
4 若者は答えた。「ミカがこれこれのことをして,私を彼の祭司として雇ってくれたのです」。 5 その人た
ちは,「私たちの旅がうまくいくかどうかを神に尋ねてください」と言った。 6 祭司は言った。「安心して行
きなさい。旅の間,エホバが共にいてくださいます」。
  7 5人は進んでいってライシュに来た。そして,そこの人々がシドン人のように自立して住んでいるのを
見た。人々は何の警戒もせずに平穏に暮らし,征服者の圧制に悩まされてもいなかった。シドン人たちからは
遠く離れ,他の人々との関わりも全くなかった。
  8 5人は,ツォルアとエシュタオルにいる兄弟たちの所に戻ると,「どうだったか」と聞かれた。 9 こ
う答えた。「攻め取りに行きましょう。非常に良い土地がありました。ためらう必要はありません。急いでそ
の土地を取得しに行きましょう。 10 そこに行くと,何の警戒もしていない人々がいます。しかも土地は広々
としています。神はそれを皆さんに与えてくださいました。どんな物にも事欠かない所です」。
  11 ダン族の武装した600人がツォルアとエシュタオルから出発した。 12 彼らは上っていって,ユダ
のキルヤト・エアリムの近くに宿営した。それで,キルヤト・エアリムの西にあるその場所は,今日までマハネ・
ダンと呼ばれている。 13 彼らはそこからエフライムの山地に進み,ミカの家の所まで来た。
  14 ライシュを偵察してきた5人が兄弟たちに言った。「これらの家にエフォドやテラフィム像,彫刻像,
金属像があるのを知っていましたか。どうしたらよいかを考えてください」。 15 彼らはそこに立ち寄り,5
人はミカの家のそばにあるレビ族の若者の家に行き,どうしているかを尋ねた。 16 その間ずっと,武装した
ダン族の600人は門の所に立っていた。 17 土地を偵察してきた5人は,彫刻像,エフォド,テラフィム像,
金属像を取ろうとして中に入った。(祭司は,武装した600人と門の所に立っていた。) 18 彼らがミカの
家に入って,彫刻像,エフォド,テラフィム像,金属像を取ると,祭司は言った。「何をしているのですか」。
19 彼らは言った。「静かにしなさい。手で口を押さえて一緒に来て,私たちの助言者に,また祭司になりな
さい。1人の人の家の祭司でいるのと,イスラエルの1氏族あるいは1部族の祭司になるのとでは,どちらが
良いでしょうか」。 20 祭司は納得し,エフォドとテラフィム像と彫刻像を持って人々に加わった。
  21 ダンの人々は向きを変え,子供と家畜と貴重品を先頭にして進んだ。 22 彼らがミカの家から少し離
れた頃,ミカの家の近所の人たちは集合し,やがて彼らに追い付いた。 23 ダンの人々に向かって叫ぶと,彼
らは振り返ってミカに言った。「どうしたのか。そんなに大勢で」。 24 ミカは言った。「あなたたちは,私
が作った神々を取り,祭司まで連れていきました。私には何も残っていません。『どうしたのか』などと,よ
く言えますね」。 25 ダンの人々は言った。「つべこべ言うな。さもないと,血の気の多い男たちが襲い掛か
って,おまえも家の者たちも死ぬことになるぞ」。 26 ダンの人々は進んでいき,ミカは彼らの方が強いのを
見て引き返し,家に戻った。
  27 ダンの人々は,ミカが作った物と彼の祭司を奪った後,ライシュに行った。そして,何の警戒もせずに
平穏に暮らしている人々を剣で討ち,町を火で焼いた。 28 ライシュを救う人はいなかった。そこはシドンか
らは遠く,ベト・レホブが所有する谷あいの平原にあり,他の人々との関わりも全くなかったからである。ダン
の人々は町を建て直してそこに住むようになった。 29 そして,その町を自分たちの父の名前にちなんでダン
と呼んだ。ダンはイスラエルの息子である。町の名前は以前ライシュだった。 30 その後ダンの人々はそこに
彫刻像を立てた。モーセの子ゲルショムの子孫ヨナタンとその子孫が,捕囚の時までダン族の祭司となった。
31 人々は,真の神の家がシロにあった間ずっと,ミカが作った彫刻像をそこに立てておいた。
  19 章
  1 イスラエルに王がいなかった時のこと,レビ族のある人がエフライムの山地の奥深くに住んでいて,ユ
ダのベツレヘムの女性をそばめとして迎えた。 2 ところが,そばめは彼に不忠実で,彼のもとを去ってユダの
ベツレヘムにある父親の家に行き,そこに4カ月とどまった。 3 夫は,戻るよう説得するために彼女の後を追
った。従者とロバ2頭が一緒だった。そばめは彼を父親の家に入らせた。父親は彼を見て,喜んで迎えた。 4
しゅうとは彼を3日間引き留めた。彼らは食べたり飲んだりし,彼はそこに泊まった。
  5 4日目,朝早く起きて出掛けようとすると,しゅうとは娘婿にこう言った。「体力が持つよう何か食べ
なさい。それから出掛けたらいい」。 6 そこで彼らは腰を下ろし,一緒に食べたり飲んだりした。その後,し
ゅうとは言った。「泊まってゆっくりしていきなさい」。 7 その人は立って出掛けようとしたが,しゅうとが
しきりに頼むので,もう1晩泊まった。
  8 5日目,娘婿が朝早く起きて出掛けようとすると,しゅうとは言った。「体力が持つように何か食べて
いきなさい」。彼らがぐずぐずしているうちに,昼が過ぎたが,2人とも食べ続けていた。 9 娘婿がそばめと
従者と共に立って出掛けようとすると,しゅうとは言った。「見なさい,間もなく夕方になる。泊まっていき
なさい。1日がもう終わろうとしている。ここに泊まってゆっくりしていきなさい。明日,旅のために早く起
きて家に向かったらいい」。 10 しかし,その人はもう1晩泊まりたいとは思わず,出発し,エブスつまりエ
ルサレムまで旅した。くらを置いたロバ2頭,そばめと従者が一緒だった。
  11 一行がエブスの近くに来た頃,日がかなり傾いてきたため,従者は主人に言った。「このエブス人の町
で1晩泊まった方がよろしいでしょうか」。 12 しかし主人は言った。「イスラエル人ではない外国人の町に
は立ち寄らない方がいい。ギベアまで行こう」。 13 さらにこう言った。「さあ,ギベアかラマまで行こう。
そのどちらかに泊まるのだ」。 14 一行は進んでいき,ベニヤミンの町ギベアに近づいた頃に日が沈み始めた。
  15 一行はそれ以上進まず,ギベアに泊まることにした。そして町に入って広場に腰を下ろしたが,家に連
れていって泊めようとする人は一人もいなかった。 16 やがて,その晩,ある老人が畑仕事から戻ってきた。
その人はエフライムの山地の人で,しばらくギベアに住んでいた。町の住民はベニヤミン族だった。 17 老人
は目を上げて,旅人が町の広場にいるのを見ると,こう言った。「どちらへ行かれるのですか。どこからおい
でになったのですか」。 18 彼は言った。「ユダのベツレヘムからエフライムの山地の奥深くに向かっていま
す。私はそこの者で,ユダのベツレヘムへ行ってきました。エホバの家に行くところですが,誰も自分の家に
迎えてくれないのです。 19 ロバのためのわらも飼い葉もあり,私とこの女性と従者のためのパンもぶどう酒
もあります。足りない物は何もありません」。 20 老人は言った。「あなたに平和がありますように! 必要な
物があれば私が面倒を見ます。広場で夜を過ごすのだけはおやめなさい」。 21 そして彼らを自分の家に連れ
ていき,ロバに餌を与えた。一行は足を洗って,食べたり飲んだりした。
  22 彼らがくつろいでいると,町のどうしようもない男たちが家を取り囲んで戸を激しくたたきながら,家
の持ち主である老人にこう言い続けた。「おまえの家に入った男を出せ。われわれはそいつと寝るのだ」。 23
家の持ち主は出ていって,こう言った。「いや,兄弟たち,悪いことはしないでくれ。お願いだ。あの人は私
の家の客だ。そのような恥ずべき行いをしてはいけない。 24 私の処女の娘とあの人のそばめがいる。2人を
出すから,どうしてもと言うなら彼女たちを辱めるがよい。しかし,あの人にそのような恥ずべき行いをする
ことは許されない」。
  25 それでも,男たちが耳を貸そうとしなかったので,旅人は自分のそばめをつかんで,彼らのもとに連れ
出した。男たちはその女性を犯して朝まで夜通し虐待し,夜明けに去らせた。 26 そばめは朝早くに戻ったが,
主人がいる家の入り口で倒れ,明るくなるまでそのままだった。 27 主人が朝起きて,旅を続けるために家の
戸を開けて外に出ると,その女性,自分のそばめが両手を敷居に掛けたまま家の入り口に倒れていた。 28
「起きなさい。さあ行こう」と言ったが,返事はなかった。その人は彼女をロバに乗せ,自分の家に向かった。
  29 その人は家に着くと,短刀を取り,そばめの遺体をつかんで12の部分に切り分け,イスラエルの各領
地に1つずつ送った。 30 それを見た人は皆こう言った。「このようなことは,イスラエル人がエジプトから
上ってきてから今日まで起きたことも見たこともない。この件をよく考え,話し合い,意見を述べなさい」。
  20 章
  1 そのため,ダンからベエル・シェバまで,またギレアデ地方から,全てのイスラエル人が出てきて,民全
体はミツパでエホバの前に結集した。 2 民すなわちイスラエル全部族の長たちは,神の民の会衆の中に立った。
剣を帯びた歩兵が40万人いた。
  3 ベニヤミン族は,イスラエルの人たちがミツパに来たことを聞いた。
  イスラエルの人たちは言った。「教えてほしい。どうしてこれほどひどい事件が起きたのか」。 4 殺害さ
れた女性の夫であるレビ族の人が答えた。「私はそばめと一緒に,1晩泊まるためにベニヤミンのギベアに行
きました。 5 ギベアの住民は私に向かって立ち上がり,夜,家を取り囲みました。私を殺すつもりでしたが,
代わりに私のそばめを犯し,彼女は死にました。 6 私はそばめの遺体をつかんで切り分け,イスラエルの各地
に送りました。イスラエルで非常に恥ずべき行いがなされたからです。 7 イスラエルの民の皆さん,どうすべ
きか考えを聞かせてください」。
  8 民全員が一斉に立ち上がって,こう言った。「私たちは誰も自分の天幕に行ったり家に戻ったりしない。
9 ギベアに対して次のようにする。くじを引いてそこを攻める。 10 イスラエルの全部族から,100人の
うち10人,1000人のうち100人,1万人のうち1000人を取って,軍隊のために食糧を集めさせ,
ベニヤミンのギベアに対して行動できるようにする。イスラエルでの彼らの恥ずべき行いのためだ」。 11 こ
うしてイスラエルの全ての人は同盟し,その町に対して結集した。
  12 イスラエルの諸部族は,ベニヤミン族全員に向けて使いを送り,こう言った。「皆さんの間で起きたこ
のひどい事件はどういうことですか。 13 さあ,ギベアのどうしようもない男たちを引き渡してください。そ
の者たちを殺してイスラエルから悪を除き去ります」。しかしベニヤミン族は,兄弟であるイスラエル人が言
うことを聞こうとしなかった。
  14 ベニヤミン族はイスラエルの人たちと戦うために町々からギベアに集まった。 15 その日,ベニヤミ
ン族はギベアの精鋭700人のほかに,剣を帯びた2万6000人を町々から招集した。 16 この軍隊には左
利きの精鋭700人がいた。皆,石投げ器で髪の毛1本を狙って外さない人たちだった。
  17 ベニヤミン以外のイスラエルの人たちは,剣を帯びた40万人を招集した。皆,経験を積んだ戦士だっ
た。 18 彼らは立ってベテルに上っていき,神に尋ねた。イスラエルの人々が,「私たちのうち誰が先頭に立
ってベニヤミン族と戦うべきでしょうか」と言うと,エホバは「ユダが先頭に立つ」と答えた。
  19 この後,イスラエル人は朝に立ち上がり,ギベアに対して陣営を張った。
  20 イスラエルの人たちはベニヤミンと戦うために出ていき,ギベアで彼らに対して戦闘隊形を組んだ。
21 ベニヤミン族はギベアから出てきて,その日,イスラエルの2万2000人を討った。 22 しかし,イス
ラエルの人たちの軍隊は勇気を示し,最初の日と同じ場所で再び戦闘隊形を組んだ。 23 イスラエル人は上っ
ていって夕方までエホバの前で泣き,エホバに尋ねた。「兄弟であるベニヤミンの人々との戦いに再び行くべ
きでしょうか」。エホバは「攻めに行きなさい」と言った。
  24 イスラエル人は2日目にベニヤミン族に近づいた。 25 ベニヤミン族は2日目もギベアから出てきて
迎え撃ち,イスラエル人をさらに1万8000人討った。皆,剣を帯びた人たちだった。 26 イスラエルの全
ての人はベテルに上っていき,そこで泣きながらエホバの前に座り,その日,夕方まで断食をして,全焼の捧
げ物と共食の捧げ物をエホバの前に捧げた。 27 それからイスラエルの人たちはエホバに尋ねた。当時はそこ
に真の神の契約の箱があったのである。 28 当時,アロンの子エレアザルの子であるピネハスがその前で奉仕
していた。人々が,「兄弟であるベニヤミンの人たちと戦うためにもう一度出ていくべきでしょうか。それと
もやめるべきでしょうか」と尋ねると,エホバはこう答えた。「行きなさい。明日,私はあなたたちを勝たせ
るからである」。 29 イスラエルはギベアの周囲に伏兵を配置した。
  30 イスラエル人は3日目にベニヤミン族に向かっていき,それまでと同じようにギベアに対して隊形を組
んだ。 31 ベニヤミン族は迎え撃とうと出てきて,町から引き離された。そして,それまでと同じように人々
を襲って殺し始めた。一方はベテルに他方はギベアに通じる街道でのことで,イスラエルの30人ほどの死体
が野原に残された。 32 ベニヤミン族は言った。「彼らは今までと同じようにわれわれの前で敗北していく
ぞ」。一方イスラエル人は言った。「退却し,彼らを町から引き離して街道におびき出そう」。 33 イスラエ
ルの全ての人は自分たちの場所から立ち上がってバアル・タマルで隊形を組み,伏兵のイスラエル人はギベア近
辺の潜んでいた場所から突撃した。 34 イスラエル全体の精鋭1万人がギベアの正面に進んで,激戦になった。
ベニヤミン族は,災難が迫っていることを知らなかった。
  35 エホバはベニヤミンをイスラエルの前で打ち破った。その日,イスラエル人はベニヤミンの2万510
0人を討った。皆,剣を帯びた人たちだった。
  36 ベニヤミン族は,イスラエルの人たちが退却するので彼らが敗北すると思った。しかし,イスラエルの
人たちはギベアに対して配置した伏兵を信頼して退却したのだった。 37 伏兵は素早く行動し,ギベアに突撃
した。それから散らばって町中の人々を剣で討った。
  38 イスラエルの人たちは,伏兵が町から煙で合図することに決めていた。
  39 イスラエル人が戦闘中に向きを変えると,ベニヤミンの人たちはイスラエルを襲い始め,30人ほどを
殺した。そして,「彼らは前回の戦闘の時と同じように今回もわれわれの前で敗北していくぞ」と言った。 40
合図の煙が町から上り始めた。ベニヤミンの人たちが振り返ると,町全体が火に包まれて炎が空に上っていく
のが見えた。 41 イスラエルの人たちは反撃を始めた。ベニヤミンの人たちは,災難が降り掛かってくるのを
見て,うろたえた。 42 そしてイスラエルの人たちの前から荒野の方に退却したが,戦闘は避けられなかった。
町々から出てきた人々も彼らを討つことに加わった。 43 イスラエル人はベニヤミン族を取り囲んで激しく迫
り,ギベアのすぐ前,その東側で打ち破った。 44 ベニヤミンの1万8000人が倒れた。皆,強い戦士だっ
た。
  45 ベニヤミンの人たちは向きを変えて荒野に逃げ,リモンの大岩に向かった。イスラエル人は街道で彼ら
のうち5000人を殺し,ギドオムまで追っていってさらに2000人を討った。 46 その日に倒れたベニヤ
ミンの人たちは合計2万5000人になった。剣を帯びた人たちで,皆,強い戦士だった。 47 600人は荒
野に退却してリモンの大岩に行き,リモンの大岩に4カ月いた。
  48 イスラエルの人たちはベニヤミン族に向かって引き返し,町にあるもの,人から家畜まで残っていたも
の全てを剣で討った。さらに,通り道の全ての町に火を放った。
  21 章
  1 イスラエルの人たちはミツパで,「私たちは誰も娘をベニヤミンの男性に妻として与えない」という誓
いを立てていた。 2 そのため,民はベテルに行き,そこで夕方まで真の神の前に座り,声を上げて激しく泣い
た。 3 こう言っていた。「イスラエルの神エホバ,なぜこのようなことがイスラエルで起きたのでしょうか。
なぜ1つの部族が今日イスラエルからなくならなければならないのでしょうか」。 4 次の日,民は早く起きて
そこに祭壇を作り,全焼の捧げ物と共食の捧げ物を捧げた。
  5 イスラエルの民は言った。「イスラエルの全部族の中で,上ってきてエホバの前に集まらなかったのは
誰か」。民は,ミツパに,エホバのもとに上ってこなかった人を必ず死刑にする,と固く誓っていた。 6 イス
ラエルの民は,兄弟であるベニヤミンに起きたことを悲しみ,こう言った。「今日1つの部族がイスラエルか
ら切り落とされた。 7 残った人たちが妻を持つためにどうしたらよいだろうか。私たちは,自分の娘を彼らに
妻として与えないとエホバに懸けて誓ったのだ」。
  8 民は言った。「イスラエルの部族の中で,ミツパに,エホバのもとに上ってこなかったのは誰か」。民
が集まる陣営にヤベシュ・ギレアデからは誰も来ていなかったことが分かった。 9 民を数えてみると,ヤベシ
ュ・ギレアデの住民はそこに一人もいなかった。 10 民は,最も強い人たち1万2000人をそこに遣わし,
こう命じた。「行って,ヤベシュ・ギレアデの住民を女性や子供も剣で討ちなさい。 11 こうすべきである。
全ての男性と,男性と性関係を持ったことのある全ての女性を滅ぼし尽くしなさい」。 12 ヤベシュ・ギレア
デの住民の中に,男性と性関係を持ったことのない400人の処女の娘が見つかり,カナン地方にあるシロの
宿営に連れてこられた。
  13 民全員は,リモンの大岩にいるベニヤミン族に人を遣わし,和平を呼び掛けた。 14 その時ベニヤミ
ン族は戻ってきた。民は,生かしておいたヤベシュ・ギレアデの女性たちを引き渡したが,人数が足りなかった。
15 民はベニヤミンに起きたことを悲しんだ。エホバがイスラエルの部族間に分裂を生じさせたからだった。
16 民の長老たちは言った。「残りの人たちが妻を持つためにどうしたらよいだろうか。ベニヤミンの女性は全
滅しているのだ」。 17 そしてこう言った。「1つの部族がイスラエルから消し去られることがないよう,ベ
ニヤミンの生き残った人たちが相続地を維持できるようにすべきだ。 18 だが,私たちが自分の娘の中から彼
らに妻を与えることは許されない。イスラエルの民は,『ベニヤミンに妻を与える人は災いを受ける』と誓っ
たからだ」。
  19 長老たちは言った。「そうだ,シロで毎年エホバの祭りがある。シロはベテルの北,ベテルからシェケ
ムに上る街道の東,レボナの南にある」。 20 そしてベニヤミンの人たちにこう命じた。「行って,ブドウ園
で待ち伏せしなさい。 21 シロの若い女性たちが出てきて輪になって踊る時,ブドウ園から出ていって,各自
その女性たちの中から妻を取り,ベニヤミンの土地に戻りなさい。 22 もし父親や兄弟たちが訴えてきたら,
私たちはこう言おう。『彼らを助けてやってほしい。私たちは戦争だけでは全員に妻を持たせてやれなかった
し,あなたたちは彼らに妻を与えれば罪を負うことになったのだ』」。
  23 ベニヤミンの人たちはその通りにし,踊っている女性たちの中から妻を各自さらっていった。その後,
自分たちの相続地に戻り,町を建て直してそこに住むようになった。
  24 イスラエル人はその時そこから散って,それぞれ自分の部族と家族のもとに戻った。そこから出ていっ
て,それぞれ自分の相続地に戻った。
  25 その頃イスラエルに王はいなかった。各自が自分の正しいと思うことをしていた。

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