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明治学院共通科目

MGHIS203歴史学3/D1263歴史学3

第4回 総力戦の時代(2)

担当: 栄桓(ちょん・よんふぁん)

秋学期・横浜キャンパス(オンライン)
火曜3時限/木曜3時限
前回の課題
l リアクションペーパー課題
(1)第一次世界大戦はなぜ「完全に勝つか負けるかしかない戦争」(p.83)になってしまった
のだろうか。テキストと講義を参考に整理すること。(400-600字)
(2)本日の講義への質問・要望を記しなさい。(字数指定無し。但し必ず記すこと)

l 期限
l 火曜クラス・4月30日(土)9時00分
l 木曜クラス・4月25日(月)9時00分

l リーディング・アサインメント
l EH『20世紀の歴史(上)』「総力戦の時代」
l RA3-1 小野塚知二「第一次世界大戦原因論」、金澤周作監修、藤井崇他編『論点・西洋史
学』ミネルヴァ書房、2020年、p.246-247

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課題(1)
エリック・ホブズボームは、この著書『短い20世紀』の中で第一次世界大戦は「完全に勝つか負
けるかしかない戦争」になってしまったと述べている。
なぜこのような戦争になってしっまたのかをホブズボームは、「以前の戦争はふつう、特定の決
まった目的があって開始された。第一次世界大戦はこれらと違って、目的が限定されないまま始まっ
た。」(p.83)と述べている。今までの南北戦争や、クリミア戦争などは大規模な戦争でありなが
ら目的があったのに対して、第一次世界大戦は明確な目的は無く、無制限の争いという特徴をもって
いた。帝国主義と帝国主義主義者最盛期であったドイツと英、仏のというヨーロッパ中心の世界で、
当時の「大国」だった国の抵抗は損なわれなかった。開戦後、両サイド共に理論上は間違いなく妥協
出来た「戦争の目的」を作った。しかし実際に重視された目的は、第二次世界大戦では「無条件降
伏」とよばれるような完全な勝利とされてしまったのだった。
この目的は自滅的なもので、総力戦と象徴されるように負けた国は革命を避けられず、勝った国は
破産し、物理的に疲弊した。また、第一次世界大戦に徴兵され、参加した兵士は戦争を憎んで終戦し
たことから戦後戦闘行為に参加しなかった者に対して、優越感をいだく極右を構成してしまった。ま
た一方では、ヴェルサイユ条約の様々な課題や、戦後の世界経済の危機による破綻の問題を残してし
まった。

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課題(2)
l 非常に初歩的な質問で申し訳ないのですが、第一次世界大戦のきっかけはセルビア人青年が
オーストリア皇位継承者夫妻を暗殺したサライェヴォ事件だと中学や高校で習いました。し
かし、終戦後のヴェルサイユ条約では主にドイツが多額の賠償金や植民地喪失のような重い
ペナルティを課されていたイメージがあります。そもそもの発端であるセルビアやオースト
リアの影が薄いような気がするのですがそれは何故なのでしょうか。

l 生き残った兵士たちの中には精神病になる者がいた一方でなぜこのように「戦いを生き延び
た私たち」のような意識が生まれたのでしょうか?精神病になる兵士と誇りに思っている兵
士両者が混在しているのでしょうか?隊の中での序列や役割などが関係しているのでしょう
か?

l 授業内で第一次世界大戦での生き残りの一部が後に極右政治を後押しすることになったとの
指摘があった。その反対に、左翼的思想を掲げ、反ファシズムを訴えた大戦の生存者はいた
のか、または彼らが当時どの様な行動を起こしていたのか気になった。

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課題(2)
l P71「オーストラリア人とニュージーランド人はエーゲ海の半島で国民とし
ての意識をつくりあげ∼」についての詳細を知りたい。

l 民族自決という信条はの文(86)の意味が理解できません。どのような意味な
のでしょうか。

l レポートを書いていくうえで、自分の意見は持ちますが、それがあっている
のかわからず自信がありません。どのように正解に近くなるレポートを書け
るようになれますか?

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第二次世界大戦の原因と結果(Ⅱ)

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第二次世界大戦の原因
l 第二次世界大戦の原因
「第二次世界大戦はなぜ起きたのか?これに関する歴史学的文献は、第一次世界大戦の原因
に関するものと比べられないくらい少ない。それにははっきりとした理由がある。歴史を真
剣に学んでいれば、ごくまれな例外をのぞき、ドイツと日本、そして(両国より躊躇してい
た)イタリアが攻撃を仕掛けたことに疑義を挟む余地はないからだ。」(94)

l 戦後処理と世界秩序の不安定化
l ドイツ:敗戦国であり、あらゆる政党のヴェルサイユ条約批判。ワイマール共和国の不
安定性。「もし正真正銘の革命がドイツで起きていれば、国際社会にとってドイツはそ
れほど厄介な問題にはならなかったかもしれない」(95) e.g.ロシア、トルコ
l イタリアと日本:「勝者の側であったにもかかわらず、不満を抱いた」(95)

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年表:WW1とイタリア
ユーゴスラヴィアと
WW1勃発 墺・独と休戦 ラパッロ条約調印
イタリアは中立

1914.7 1918.1 1920.11

1915.5 1919.9.10

伊、墺に宣戦布告 墺と講和条約調印
*独には16.8 (サン=ジェルマン条約)

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WW1とイタリア・日本
l イタリアの場合
l WW1とイタリア
三国同盟側であったが中途より協商国側で参戦
アルプス、アドリア海、エーゲ海に面した地域に
およぶ領土獲得にもかわらず、不満が残る。
l 「骨抜きにされた勝利」(ダンヌンツィオ)
フィウメ問題

l 日本の場合
l ロシアの退場によるアジア唯一の覇権国化
「帝国主義列強の白人が認める以上に極東における
分け前をもらってしかるべきだと、何の疑いもなく
感じていた。さらに日本は、近代的な産業経済に必
要な天然資源が実質的になにもない国の脆弱性(中
略)を痛いほどわかっていた。 」(96)

出典:Hermann Kinder, Werner Hilgemann, The Penguin Atlas of World History vol.2 : From the French Revolution to the Present (Penguin Reference
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Books), Penguin Books, 2004
年表:WW1と日本
日本、独に宣戦布告 中国、独等に宣戦 朝鮮で三一運動
中国で五四運動
山東省に出兵 孫文ら広州で軍政府
パリ講和会議、日本の
中国は局外中立 樹立 山東省利権を承認

1914 1917 1919

1915 1918

対華21か条要求 シベリア出兵
中国で反日運動 米騒動

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WW1とイタリア・日本
l 第一次世界大戦後のアジア
l パリ講和会議
山東省の旧ドイツ権益と対華二
十一か条要求をめぐる日中対立
旧ドイツ領南洋諸島は日本の委任
統治領へ
l 「民族自決」の高まり
朝鮮の三一独立運動
中国の五四運動 →条約調印拒否
l ワシントン会議
l 東アジアにおける反帝国主義運動

出典:西川正雄・南塚信吾『世界の歴史ビジュアル版18 帝国主義の時代』講談社、1986年
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年表・第二次世界大戦への道

日本の満州侵略
日本の中国侵略 独、墺併合
「満州国」建国
国際連盟脱退(33) (日中全面戦争) ズテーテン地方割譲

1931-33 1937- 1938

1935-37 1936-39

伊のエチオピア侵略 スペイン内戦
国際連盟脱退(37) 独・伊軍、フランコ
を支援
第二次世界大戦の原因
l 「起きたこと」と「起きなかったこと」
l 起きたこと(96)
1931年 日本の満州侵略
1935年 イタリアのエチオピア侵略
1936年 スペイン内戦へのドイツ、イタリアの介入
1938年 ドイツのオーストリア侵略
チェコスロヴァキアへのドイツの部分的な割譲
1939年 ドイツによるチェコスロヴァキアの占領。
ポーランドへの攻撃
l 起きなかったこと(97)
国際連盟が日本やイタリアに効果的な対抗手段をとる
英仏がドイツのヴェルサイユ条約破棄に対応する
スペイン内戦へのドイツ・イタリアの介入に反対する
チェコスロヴァキアをめぐる脅しに屈しない
ソ連がヒトラーに反対し続ける

出典:『詳説世界史図録』第2版、山川出版社、2017年
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年表・第二次世界大戦
独ソ不可侵条約 独ソ戦開始 ドイツ降伏
独、ポーランド攻撃 日本、南部仏印進駐 国際連合憲章調印
英仏対独宣戦 真珠湾攻撃 日本降伏

1939 1941 1945

1940 1943

独、パリ占領 イタリア降伏
日本、北部仏印進駐 連合軍、カイロとテ
日独伊三国同盟 ヘランで会談
第二次世界大戦(1939-1945)

出典:Hermann Kinder, Werner Hilgemann, The Penguin Atlas of World History vol.2 : From the French Revolution to the Present (Penguin Reference Books), Penguin
Books, 2004、 『詳説世界史図録』第2版、山川出版社、2017年
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第二次世界大戦
l 戦争の展開と意図せざる結果
l 「実際に開戦となった時、それは侵略国が望んだようなものではなかった。また、なかには
侵略国が敵対するのを望まなかったにもかかわらず戦う羽目になった国もあった。」(97)
e.g.日本の対米開戦、ドイツの対英仏開戦
l ヒトラーの戦争目的
チェコスロヴァキアの解体に際して英国の介入はないと想定
ポーランドとの戦争に際しては西欧諸国との同時の戦争を避けようとする
l 独ソ戦の背景
1940年12月18日、対ソ戦争を決定。「ヒトラーの主張の核心は、イギリスの利害を決する
支柱を排除しなければならないという点にあった。「ロシア参戦の可能性が、イギリスを繋
ぎとめている」。「イギリスが争いを放棄するのは、この欧州大陸の最後の希望が打ち砕か
れた時だけだ」。自分は「イギリスが無分別」だとは思わない。戦争に勝つ見込みがないと
分かれば、彼らは戦いをやめるだろう。・・・」」(カーショー、372)

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戦争の世界化(1)
l ヨーロッパから中東・アフリカへ
l イギリスの臣民・従属国の間の「反帝国主義」(親
独の反英運動)。「南アフリカのボーア人のなかで
ヒトラーを支持する者は、拘束される可能性があっ
た。こうした人々は戦後再登場し、1948年に始ま
るアパルトヘイト体制を築いた。」(103)
e.g. ラシード・アリー、ヘンドリック・フェル
ヴェールト

出典:ENCYCLOPÆDIA BRITANNICA, https://www.britannica.com/biography/Hendrik-Frensch-Verwoerd


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戦争の世界化(2)
l ヨーロッパとアジアの戦争の連結
l ドイツ軍のフランス占領と日本のインドシナ占領
1940−41年 フランス占領により「帝国に含まれない地域が東南アジアに部分的に創出」
「フランスによって無力化されたインドシナ(*)を保護すると主張して進出した」
(103)*日本語版は「インドネシア」となっている(103)がインドシナの誤り
→ 米国の経済制裁 → 真珠湾攻撃
l 「日本が打ってでた けは危ういものであり、自殺行為であった。南方に帝国を築く唯一の
チャンスをいそぎ掴もうとしたのだろう。しかしそのためには、干渉する恐れのある唯一の
軍隊であるアメリカ海軍の動きを止めておく必要があると考えていたため、チャンスを掴む
ことはすなわち、軍隊も資源も圧倒的に日本を凌駕するアメリカをすぐに戦争に引きずりこ
むことをも意味した。そのような戦争に日本が勝てる道はなかった。」(104)
l 真珠湾攻撃と対英米蘭開戦(1941年12月)
ドイツの対米宣戦布告 → アメリカのヨーロッパ戦線参戦

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第二次世界大戦の性格
l 第二次世界大戦の非妥協的性格
l WW2は「宗教戦争であり、近代的な言葉でいえば、両者が奉じるイデオロ
ギーの戦いであったのだ。また交戦国のほとんどにとり、この戦争が生存を
けた戦いであることは明らかだった。ポーランドとソ連の占領地域において、
またユダヤ人の運命(中略)からわかるように、ドイツの国家社会主義政権に
負けた場合の代償は、隷属と死であった。だからこそ、戦争は無制限に行われ
た。第二次世界大戦は全面戦争(mass war)から総力戦(total war)へとエス
カレートしていった。」(108)

l 戦争による損失
l 戦争による死はWW1の3∼5倍。ソ連、ポーランド、ユーゴスラヴィアの全人
口の10∼20%。ドイツ・イタリア・オーストリア・ハンガリー・日本・中国
の4∼6%
*ソ連の犠牲者:公式には700万∼1100万∼2000万∼5000万
l 「そもそも、物理的に直観でわかる現実を超えてしまう数字を、しっかり理解
することができるのだろうか。」(109)

出典:『詳説世界史図録』第2版、山川出版社、2017年
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総力戦の経済的影響(Ⅲ)

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総力戦の経済的影響(1)
l 20世紀の怪物=総力戦
l 総力戦には近代的な工業経済が不可欠。経済の大部分が非戦闘員によって管理されてい
なければ維持できない。*伝統的な農業経済では通年を通して動員できない。
「だからこそ、近代の全面戦争によって組合労働者の力は強化され、女性の家庭の外で
の雇用という革命が起きた。これは第一次世界大戦では一時的なものにとどまったが、
第二次世界大戦ではずっと続くことになった。」「20世紀の戦争は、戦闘中にそれまで
想像できなかったほど多くのものを使い、破壊したという意味で全面戦争(mass
wars)であった。」(111)
l 「全面戦争には大量生産が不可欠」「生産には組織と管理が必要」(112)
軍隊が「産業」、「経済活動の複合体」となる。「軍産複合体」の形成
戦費をどう賄うか? 財務省・大蔵省が戦争経済の最高司令官となる
財政だけでなく生産の管理・計画が必要

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総力戦の経済的影響(2)
l 第一世界大戦の経験から各国は何を学んだか
l 政府による経済の管理、物資・資源に関する計画
WW2開戦当初、経済への物理的な管理は独ソのみが可能。にもかかわらず英仏米のほうが管理をうま
く行う。
「したがって、奇妙なパラドクスが生じたことになる。つまり、各国政府が両大戦中に運営・計画した
戦争経済のなかで、また総力戦、つまりあらゆる戦争経済のなかで、合理的な官僚主義に基づいた組織
の伝統と理論をもつドイツより、西側の民主主義国家(中略)のほうがずっと優れていることが明らか
になったのだ。」
l 日本の場合
1915年 陸軍にWW1の研究を目的にした臨時軍事調査委員会設置 → 総力戦の調査研究
1927年 内閣に資源局設置
1934年 陸軍、『国防の本義と其強化の提唱』で総力戦構想を示す
1937年10月 企画庁と資源局を統合して内閣に企画院が設置
1938年4月 国家総動員法公布
→ 陸軍を中心に総力戦体制が構築

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総力戦の経済的影響(3)
l 総力戦と技術・生産力発展の関係
l 戦争に伴う技術進歩、テクノロジーの戦い。だが「戦争がなかったとしても、こうした革新
はおそらく加速度的に起きていたはずである。」「全体的にみて戦争がもたらしたのは、構
造の変化というより変化の加速化であった。」(117)。一方、戦争により労働人口減少、
生産資源の喪失。ヨーロッパの諸国にはマイナス。ソ連では完全にマイナス

l 総力戦とアメリカ経済
l 戦場から遠く離れているところから連合国に多くの武器を提供したこと、 生産の拡大をど
こよりも効率的に組織できる経済的能力があったことという利点。「おそらく、両大戦がも
たらした経済効果のうちもっとも長く続いたのは、「短い20世紀」を通じてアメリカ経済に
グローバルな優位性を与えたことである。」(118)
l 「(両大戦中の)アメリカと(とくに第二次世界大戦中の)ロシアが、戦争が経済に与えた
影響の両極端を表しているならば、他の国はこの両極端の間のどこかに位置している。全体
的には、カーブの曲がり方はアメリカよりロシアに近かった。」(119)

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総力戦の人的影響(Ⅳ)

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総力戦の人的影響(1)
l 戦争の時代の人的影響と犠牲
l 「興味深いことに、第一次世界大戦の時のほうが第二次世界大戦よりも犠牲者数はずっ
と少なかったにもかかわらず、残した影響はずっと大きかった(ソ連は当然例外だた)。
その証拠に、第一次世界大戦の記念碑や戦没者への崇拝は突出している。第二次世界大
戦は「無名戦士」に捧げられた記念碑に相当するものは生み出さなかった。おそらく、
1000万人にのぼる死者がそこまで多くの犠牲を予期していなかった人びとに与えた衝撃
が、5400万人の犠牲者が大量虐殺としての戦争を経験済みの人々に与えた衝撃より残酷
だったからだろう。 」(119)
l 総動員体制(the totality of the war efforts)、際限なき戦争の画期性。「それがなけれ
ば、20世紀がどんどん残忍で非人間的な時代になっていったことは説明できない。」
(120)

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なぜ戦争の野蛮さが増したのか
l なぜ戦争の野蛮さが増したのか
l 戦争の奇妙な民主化
:民間人とその生命が戦略のターゲットとなる。「民主政治と同様民主的な戦争では、敵は
憎むにじゅうぶん値する存在、少なくとも卑劣な存在である必要があり、そのために悪魔か
鬼かのように扱われたため、対立全体が「人民と人民の戦争」になった。」(120-121)
「そして第二次世界大戦では、ヒトラー政権の性質と東ヨーロッパでのドイツ人(ナチスで
なかった頃の古いドイツ陸軍を含め)の行動は、相当な悪魔として見られても仕方のないも
のだった。」
l 戦争の非人格化
:「非人格化とはつまり、殺害や加害行為が、ボタンを押したりレバーを動かしたりという
遠隔地操作によってできるようになったことを意味する。内臓を銃剣でえぐったり、銃の照
準を合わせたりするには、犠牲者となる敵を見ざるをえないが、技術により犠牲者は不可視
にされたのだ。」(122)

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強制的排除と大規模殺害(2)
l 難民と「無国籍」stateless, apatride
l WW1とロシア革命による難民
「住民交換」:130万人のギリシャ人がトルコからギリシャへ送還、40万人のトルコ人がト
ルコへ、20万人のブルガリア人がブルガリアへ。
ロシア革命、ロシア内戦による難民:150万人∼200万人のロシア人が故郷を喪失
→ ナンセン・パスポートの誕生 1914∼1922年 400∼500万人の難民が発生
l WW2後の追放と難民
欧州:1945年5月 ヨーロッパには故郷を追われた人が4500万人、1300万人のドイツ人が
追放された
インドでは1947年の分離独立 200万人が殺害 1500万人の難民が発生
朝鮮では1950年の戦争で500万人が住む場所を追われる
イスラエルは1948年の建国で130万人のパレスチナ人が難民として登録 1960年現在で120
万のユダヤ人がイスラエルへ移住

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ギリシャ・トルコの住民交換
l ギリシャ・トルコ戦争と住民交換
l 1919年 WW1の戦勝国となったギリシャがトルコの内乱に乗じて西アナトリアに侵攻
するも、アタテュルクに率いられたトルコ軍が勝利。この過程でスミルナの虐殺が起こ
る。1922年、ギリシャは撤退。
l 1923年 トルコのギリシャ人とギリシャ
のトルコ人を強制的に交換する協定に調印
この結果、トルコ在住のギリシャ正教徒
120~30万人と、ギリシャ在住のムスリム
40~50万人が交換された。

出典:Hermann Kinder, Werner Hilgemann, The Penguin Atlas of World History vol.2 : From the French Revolution to the Present (Penguin Reference Books), Penguin
Books, 2004
28
無国籍者の急増とナンセン・パスポート
l 無国籍者の増加
l 戦争と革命・内戦による難民の発生に対し、戦後の諸国家は移入民を排除する国籍法を
起草する。この結果、膨大な数の「国家をもたない」人々=無国籍者が生み出される。

l ナンセン・パスポート
l 無国籍難民のために国際連盟が発行した身分証明書
北欧探検で知られるノルウェーのフリチョフ・ナン
センが難民高等弁務官として発案し、ソ連の内戦や
飢餓による難民を救済した。

出典:The Nobel Prize, https://www.nobelprize.org/prizes/peace/1922/nansen/facts/(2020/5/20取得)


29
WW2後の追放と難民

出典:Hermann Kinder, Werner Hilgemann, The Penguin Atlas of World History vol.2 : From the French Revolution to the Present (Penguin Reference Books), Penguin
Books, 2004
30
強制的排除と大規模殺害(1)
l 「ジェノサイド」genocide
l ジェノサイド: genos(=人種・民族【ギリシャ語】)+cide(=殺す【ラテン語】)
ジェノサイドの罪:国民・民族・人種・宗教的な集団の全部又は一部を抹殺する罪。
ジェノサイド禁止条約(1948年)
e.g.トルコによるアルメニア人虐殺(約150万人)、ナチスによるユダヤ人殺害(約500
万人)
l 人道に反する罪:組織的又は大規模な攻撃の一環として行われる、民間人に対する、国
際人道法に対する重大な違反。トルコの少数民族アルメニア人虐殺に対して出された
英・仏・露共同宣言(1915年)が初出。ニュルンベルク条例により明確な法律用語とし
て用いられる。

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ヨーロッパにおけるユダヤ人「絶滅」政策

出典:Hermann Kinder, Werner Hilgemann, The Penguin Atlas of World History vol.2 : From the French Revolution to the Present (Penguin Reference Books), Penguin
32
Books, 2004
31年の戦争か、二つの世界大戦か
l 1914−1945年の戦争はなぜ「一つの戦争」として記憶されないか
l 「三十一年が一つの時代を成しているというのは、歴史家の観点でしかないから」。「この
時代を生きていた者」にとっては違う「戦間期」がある。
l 二つの大戦が類を見ない大虐殺だったため、次世代は悪夢のような光景に取り憑かれてし
まった。

l 二つの大戦の違い
l 戦後処理:WW1は何も解決しなかった。WW2は「黄金時代」を生み出した。戦争は第三世
界だけの話となった。ソ連を中心とした共産主義国家は欧米と経済成長を競えるかのようで
あった。旧敵国は世界経済に統合され、米ソの直接戦争もなかった。
l 革命:反戦平和の革命から、反帝国主義の革命へ
「二つの大戦と同様に、歴史家の視点からすると、単一のプロセスとして理解できる。それ
では、これについて考えてみることにしよう。」(128)

33
本日の課題と参考文献

34
リアクション・ペーパー課題
l リアクション・ペーパー
l 本書のいう戦争の「民主化」と「非人格化」とはなにか。テキストと講義及び資料を参
考に整理すること(400-600字)。
l 本日の講義に関する質問・要望を記すこと

l リーディング・アサインメント
l テキスト「第二章 世界革命」

l 提出期限
l 火曜クラス:4月30日(金)9時00分
l 木曜クラス:5月2日(日)9時00分

35
前回の課題
l リアクションペーパー課題
l 本書のいう戦争の「民主化」と「非人格化」とはなにか。テキストと講義及び資料を参考に整理するこ
と(400-600字)。
l 本日の講義に関する質問・要望を記すこと

l 期限
l 火曜クラス・5月7日(土)9時00分
l 木曜クラス・5月2日(月)9時00分

l リーディング・アサインメント
l EH『20世紀の歴史(上)』「世界革命」
l RA4-1:山澄亨「第二次世界大戦原因論」金澤周作監修、藤井崇他編『論点・西洋史学』ミネルヴァ書
房、2020年、p.246-247
l RA4-2:野村真理「二つの帝国崩壊と国籍問題」、藤原辰史編『第一次世界大戦を考える』共和国、
2016年

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参考文献
l イアン・カーショー(2016)(石田 勇治監修、福永 美和子訳)『ヒトラー(下)天罰
1936−1945』白水社

l ジョン・トーピー(2008)(歳川隆男監訳)『パスポートの誕生 監視・シティズンシッ
プ・国家』法政大学出版局

l マーク・マゾワー(2015) (中田瑞穂・網谷龍介訳) 『暗黒の大陸 ヨーロッパの20世


紀』未来社

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