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3D CADの基礎知識3

スケッチとは

もくじ
1. スケッチとは …2
2. スケッチ面とスケッチ形状 …2
3. 寸法拘束・幾何拘束 …4
4. 既存形状の投影 …6

株式会社イプロス
Tech Note 編集部
前回は、ソリッド CAD 特有の概念であるフィーチャーを紹介しました。
今回は、フィーチャーの作成に不可欠な 2D 作図機能、スケッチについ
て解説します。スケッチは、フィーチャーと同様に、ソリッド CAD 独特
の機能です。2D CAD に慣れている人は、先入観にとらわれないように
気を付けてください。

1. スケッチとは
スケッチの最も重要な役割は、スケッチ型フィーチャーの作成に必要な
2D 断面形状の作図です。また、スイープフィーチャーのパスなど、ワ
イヤーとしても利用します。ただし、スケッチの作図は、2D CAD の作
図とは役割と仕組みが大きく異なります。

ソリッド CAD における通常の作業対象は、フィーチャーです。そこでは


1 つのスケッチを、1 つの要素として扱います。線分や円などの 2D 要
素は直接扱えません。ソリッド CAD では、スケッチの作図は、スケッチ
モードと呼ばれるスケッチ専用の作業環境で行います。このため、
スケッ
チの作業を行うには、スケッチモードに入る、またはスケッチモードか
ら抜けるといった操作が必要です。CAD 操作に慣れないうちは、この
仕組みを意識しながら、混乱のないように作業してください。

2. スケッチ面とスケッチ形状
・スケッチ面
3D 空間で 2D のスケッチを作図するには、3D 空間内で、どの平面上
に作図するかを指定する必要があります。
これがスケッチ面です。
例えば、
スケッチから立体を押し出す押出フィーチャーでは、スケッチは立体の
基準の面となるので、最初のフィーチャーのスケッチ面によって、3D 座
標の中での部品の向きが決まります(図 1)

3D CAD の基礎知識 3:スケッチとは 2

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図1:スケッチ面と部 Z Z Z

品の向き
y y y

x x x

形状図面 xy 平面にスケッチ yz 平面にスケッチ zx 平面にスケッチ

慣れない設計者は、スケッチ面を指定する際、直感や操作性で選んで
しまいがちです。フィーチャーの形状の機能や役割を考え、基準として
ふさわしい面を指定する必要があります。図 2 の形状図面を例に、考
えてみましょう。この場合、20mm の寸法(円柱の高さ)に機能的な意
味があるとします。モデル上面をスケッチ面にすると、押出距離の計算
が必要になります(図 2 の中央)
。これに対し、基準平面(またはモデ
ル底面)をスケッチ面にすると、図面寸法のままモデリングができます
(図 2 の右)

図2:スケッチ面の取 10mm 20mm


り方 上面に 押出 押出
スケッチ
20

基準面(底面)
にスケッチ

形状図面 モデル上面にスケッチ 基準平面にスケッチ

なお、スケッチ面として記録されるのは指定先の平面です。指定先の平
面の位置が変更されると、スケッチ面も追従します。また、スケッチ面
を別の平面に変更することも可能です。

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・スケッチ形状
スケッチの線を作図するコマンドは2D CADと大差ありません。線分、
円・
円弧、トリム、面取り・フィレットなどの作図・編集機能を使用します。
ただし、ソリッド作成のためのスケッチ形状は断面形状です。閉じた領
域を持つ形状であることが必要条件です(図 3 の左)
。複数の領域があ
るものや、交差やはみ出した形状は、断面形状として不適切です
(図 3 の中央、右)
。なお、CAD 製品によっては、複数領域や交差した
線がある形状も、閉じた領域として認識します。しかし、特に理由のな
い限り、原則に従い作図するのがよいでしょう。

図3:スケッチ形状の 閉じた領域(材料側)
はみ出し
要件

領域の外側
(空間側)
交差

閉じた領域 複数の領域(NG) 交差・はみ出し(NG)

3. 寸法拘束・幾何拘束
スケッチでは、正確な大きさで線を作成する必要はありません。作成後
の線に寸法拘束と幾何拘束を与えると、それらを CAD が計算し、正し
い線の位置と大きさに変化します。寸法拘束は、スケッチで作成する寸
法です。寸法数値は変数として記憶され、変数の値を変更すると形状
に反映されます(図 4 の上)
。寸法拘束と呼ばれるのはこのためです。
一方、幾何拘束は、線の姿勢を定義します(図 4 の下)

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図4:寸法拘束と幾何 20 に変更 形状が追従

拘束 30 20

20

20
寸法拘束

垂直拘束を付加 垂直

水平

水平拘束を付加

幾何拘束

図 5 に、代表的な幾何拘束を示します。幾何拘束の多くは、線と線の
相対的な関係を設定します。なお、水平・垂直は、単独の線に設定を
与えます。

図5:代表的な幾何拘 垂直


水平

水平・垂直 平行 直角 直線上

正接 対称線
対称 対称
中点

同心 中点 正接 対称

寸法拘束と幾何拘束は、互いに補完し合い、形状の位置や大きさを決
めています。同じ役割を持つため、両者をまとめて、スケッチ拘束、ま
たは単に拘束と呼びます。なお、スケッチ内の全ての形状に適切な拘
束が与えられ、位置と大きさが確定している状態を、完全定義、また
は完全拘束と呼びます。スケッチは原則として完全定義にします。

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製図では、水平・垂直な線を暗黙に認識します。しかし、スケッチでは
拘束を与えなければなりません。図 6 の左は、製図規則に基づく図面
です。線が水平に描いてあれば、水平であると読み取ります。また、円
弧と直線が正接であることは、(R) の寸法によって読み取ります。これに
対して、図 6 の中央がスケッチに必要な拘束の例です。拘束によって、
線の姿勢と大きさのほか、CAD の原点とも位置決めしています。実際
の CAD 画面では、図 6 の右のように、拘束の種類に応じた記号が表
示されます。

図6:スケッチ拘束 (R) 拘束の記号

正接 正接

垂直
V
(原点と) V 15
15

15

中点
H

垂直
20 20 20
水平

形状図面 拘束の例 拘束の表示例

なお、拘束が過剰な場合は、CAD が計算できずにエラーとなります。
この場合、形状の位置が確定できていないので、エラーを解決する必
要があります。

4. 既存形状の投影
スケッチの作図において、ソリッド形状などの既存形状に位置合わせを
したい場面があります。例えば、図 7 の左の形状図面が示す寸法を
12mm にしたいとき、円を作図しているスケッチ面上にソリッドのエッ
ジ(投影元)はないため、エッジをスケッチ面上に投影して、寸法拘
束を作成します。

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図7:スケッチ面への
スケッチ形状
投影 12

12 投影形状

エッジ
(投影元)

形状図面 スケッチ面への投影

実際の CAD 操作では、自動で投影が行われる場合と、手動で行う場合


があり、それらは CAD 製品や作業の場面によって異なります。自動で
投影される作業場面の例としては、線分作成の始点・終点として指定す
るエッジ、拘束の作成時に指定するエッジなどがあります。一方、手動
で投影するのは、エッジをスケッチの形状線として利用する場合などが
挙げられます。

いずれにしても、ソリッドが 3D であるのに対し、スケッチは 2D です。


スケッチを理解するには、2D 線や 3D のエッジといった要素の違いや、
両者が同一平面上にないこと、すなわち奥行きの違いを意識するのが
いいでしょう。

いかがでしたか? 今回はスケッチについて解説しました。次回は、モ
デリングのコツを紹介します。お楽しみに!

3D CAD の基礎知識 3:スケッチとは 7

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3D CAD の基礎知識 3:
スケッチとは
初版 2019 年 1 月 25 日

著者: D2FORM 代表 榎本 実

発行元: 株式会社イプロス Tech Note編集部


E-mail:media@ipros.jp
URL:https://technote.ipros.jp/

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