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解 説 (テ ー マ/や さ しい塗 料 物 性)
色 材,69〔5〕,327-342  (1996)

第9章  塗料 の選 択 と塗 装 工 程(そ の2)


―木 材 で は―

木 下 啓 吾*・ 坪 田 実**・ 池 本 栄 嗣*

表-1  木 材 の色 調(マ ンセ ル 表 色 系)1)


2.  木 材 素 材 で は

木 材 は 加 工 しや す い の で 小 さい物 で は 鉛 筆 か ら始 ま っ
て 家 具,建 具,造 作,楽 器,運 動 具,什 器,が ん 具 な ど

に至 り,そ の 用 途 は広 い 。

木 製 品 塗 装 と は,木 材 お よび 木 質 材 料 を 使 用 し加 工 さ

れ た 製 品 全 般 の 塗 装 で あ り,使 用 す る塗 料 を 木 工 用 塗 料
と い う。 したが って その 用 途 に よ るニ ー ズ,構 成 材 料 に

適 合 した塗 装 設 計 を必 要 とす る。

木 材 の種 類 は広 葉 樹 と針 葉 樹 に大 別 され る。 広 葉 樹 は
落 葉 樹 が 多 く,な ら,か ば,け や き,せ ん,た もな どが

あ り,比 較 的硬 く硬 材 と呼 ば れ る。
針 葉 樹 は常 緑 樹 が多 く,ま っ,す ぎ,ひ の き な どで 比

較 的 柔 らか で 軽 く軟材 と呼 ば れ る。広 葉 樹 は組 織 的 に は

道 管 と 木 繊 維 よ り な り,そ の 道 管 の 配 列 状 態 で 環 孔 材

(道 管 が 年 輪 に沿 って 環 状 に配 列)お よ び 散 孔 材(道 管
が 年 輪 内 に点 在)の もの が 多 い 。 用 途 は,家 具,建 築

船 舶,日 用 品,工 芸 品 と幅 広 くあ る。 針 葉 樹 は組 織 的 に
道 管 が な く仮 道 管 と呼 ばれ る細 胞 よ りな り,用 途 に は家

具 や 建 築 用 が あ る。

木 材 は そ の種 類 に よ り表-1の 特 有 な色 合 が あ る。図 一1
に樹 幹 の 構 造 を 示 す。 図 一2に 示 す 樹 幹 の 加 工 時 の 木 取

りの方 法 に よ り板 目,柾 目 と呼 ば れ る木 目(木 理)が で


きる。

ま た 成長 の 不 規 則 な 木材 を ひ き材 に した と き,表 面 に

は 図 一3に 示 す 杢 と呼 ば れ る特 有 な 模 様 が 現 れ る。 木 製

平 成8.4.9受 理
Introduction to Understand Physical Properties 01
Coatings (IX) Design for Coating System on Wood
(II)
Keigo KINOSHITA,Minoru TSUBOTAand Eiji IKEMOTO
*
長島特殊塗料㈱ 埼玉県八潮市南後谷123(〒340)
** 図-1  樹 幹 の 構 造2)
職 業 能 力 開発 大 学 校 神 奈川 県 相 模 原 市 橋 本 台4-1-1(〒229♪

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328 解 説 SHIKIZAI

さ ら に,塗 装 の 対 象 とな る木 材 に は,奇 数 枚 の単 板 を

そ れ ぞ れ の 木 理 方 向 に直 交 させ て 貼 り合 わ せ た 各種 合板

や ボ ー ド類 が あ る。 単 板 を 複 合 化 す る こ とで,木 材 の 異

方 性 が 解 消 され るが,合 板 表 面 に しみ 出 した 接 着剤 が 着

色 む らや 塗 料 の 付 着 不 良 の 原 因 にな る こ と もあ る。
2.1  木 材 素 材 の 特 異 性

木 製 品 塗 装 の見 地 か らみ た 木 材 の 特 異 性 を 図 ―4に ま

と め る。

(1>素材 の 表 面 が 平 坦 で な くポ ー ラ スで あ る。

木 材 の 表 面 に存 在 す る道 管 の 大 き さ と,そ の 相 互 の 距
離 は 表-2の よ うで あ る。 塗 装1回 塗 りで得 られ る 塗 膜

厚 は,せ い ぜ い15∼20μ,道 管 の深 さ は200∼250μ,こ


図-2  樹 幹 の 断 面2) れ を充 墳 し鏡 面 の仕 上 げを 得 る に は,必 然 的 に後 述 の 多

工 程 数 を 必 要 とす る。 なお,こ の 道 管 の 深 さを 生 か して
品 塗 装 は,こ れ らの木 理 を生 か した透 明塗 装 が 本 来 の姿 塗 装 仕 上 げ す る こ と もあ り,表 一3の よ うに 仕 上 げ の 種
で あ る。 類 が 大 別 で き る。

図-3  木 目 と 杢(も く)2)

図-4  木 素 材 類 の もつ特 異性

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色 材,69〔5〕  (1996) 第9章 塗料の選択 と塗装工程(そ の2) 329

表-2  木 材 の道 管 の大 き さ と 目 と 目の 距 離3) 保 っ よ うに な る。 この と きの木 材 の含 水 率 を平 衡 含 水 率


と い い,わ が 国 で は 平 均14∼16%で あ る。 た と え ば

ウ ォー ル ナ ッ ト材 は 関係 湿 度 が10か ら90%に な る にっ

れ て 木 目お よび 木 目直 角方 向 と も約2.5%膨 張 す る。
こ の場 合 の ウ ォー ル ナ ッ ト材 の 含 水 率 は6%か ら17

%に 変 化 す る。 植 木3)は 表 ―4に示 す 各 種 材 料 の 線 膨 張

係 数 を 引 用 して,木 材 塗 装 の わ れ に つ い て次 の よ うに述
べ て い る。

(2)素材 の色 が不 均 一 で あ る 。 ラ ッカ ー塗 膜 の 線 膨 張 係 数 は,木 目直角 方 向 の最 大 値

同一 樹 種 材 で も心 材 は濃 色,辺 材 は淡 色 で入 りま じ り の それ と比 較 して 約2倍 大 き く,温 度 の 上 昇 で わ れ るの

不 均 一 で あ る。 素材 の 色 む らを漂 白 お よ び 素地 着 色 に よ で な く,低 温 で わ れ る。 冷 却 に よ って 発 生 す る塗 膜 の 収

り均 一・
化 す る必要 が あ る。 縮 応 力 が 抗 張 力 を 容 易 に上 回 る と考 え られ る。 そ して,

(3)木材 は 大 き く収 縮 と膨 張 を く りか え す 。 そ の冷 却 速 度 が 大 き い ほ ど塗 膜 はわ れ や す い 。

木 材 を 大 気 中 に放 置 して お く と,大 気 中 の 温度 と関係 (4)木材 の な か に は,素 材 中 に塗 膜 の 付 着 性,乾 燥 性 を

湿 度 に対 応 して 木 材 中 の 水 分 が 出 入 り しな い 平 衡 状 態 を 阻害 す る成 分 を含 む ものが あ る。

表-3  木 工 塗 装 で の 塗 膜 形 成 の 形 状 に よ る分類

尚,ニ ー ズ に よ って 艶 消 し,半 艶 消 し,光 沢 仕 上 げ が あ る。

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330 解 説 SHIKIZAI

表-4  室 温 に お け る 線 膨 張 係 数 ×10―64) リエ ス テ ル樹 脂 お よ び紫 外 線 硬 化 形 塗 料 な ど は,硬 化 障

害 と付 着 不 良 を発 生 す る。 ク ス ノ キ材 中 の樟 脳 分 は,ポ

リウ レタ ン樹 脂 塗 料 の橋 カ ケ反 応 を促 進 させ 局 部 的 に反

応 が進 み,塗 膜 のハ ヂ キ や付 着 不 良 を生 じや す い。 した
が って これ らの塗 装 に は,あ らか じめ ポ リウ レタ ン樹 脂

塗 料 系 で ヤ ニ止 め効 果 の大 き く設 計 さ れ た ヤ ニ止 め シ ー
ラ ー を 使 用 して,こ れ らの 障 害 成 分 を 止 め る必 要 が あ

る。

2.2  木工 用 塗料 の塗 装

(1)木工 用 塗 料 に必 要 な条 件

公 約 数 的 に ま とめ る と図 一5のよ うで あ る。
そ の 素材 の特 異 性 か ら,塗 料 は漂 白 か ら仕 上 げ まで の

セ ッ トを必 要 とす る 。 ま た工 程 数 が 多 い た め,塗 料 は速

乾 性 で あ り,1回 塗 り毎 に得 られ る塗 膜 厚 が よ り多 い塗

装 効 率 の よ い こ とが望 ま しい。 他 の素 材 の塗 装 に少 な い

塗 膜 の 研 摩 工 程 お よ び 磨 き仕 上 げ工 程 を 必 要 と す るの
で,こ れ らの性 質 を加 味 した塗 膜 設 計 を要 す る。 塗 装 で
の研 摩 お よ び磨 き仕 上 げ に必 要 な工 賃 も製 品 価 格 に加 算

さ れ な けれ ば な らな い。 参 考 まで に木 製 品 価 格 に 占 め る
塗 料 代 を表 一5に,塗 料 の使 用 量 を表-6に 示 す 。
松 材 な ど は,松 ヤ ニ(ロ ジ ン)を 含 み,こ れ は塗 膜 を (2)木製 品 塗 装 の基 本 的 な工 程
透 過 しや す く,い っ ま で も部分 的 に塗 膜 表 面 が ベ トっ く 鏡 面 仕 上 げ の場 合 の基 本 的 工 程 を図-6に 示 す 。
こ とが あ る。 塗 装 工 程 に 必 要 な 塗 料 お よ び補 助 材 料 を 表 一7に 記
コ クタ ン,ロ ー ズ ウ ッ ド,シ タ ンな ど は,タ ンニ ン分 す。
を多 く含 み,特 に ラ ジカ ル反 応 に よ り硬 化 す る不 飽 和 ポ 木 製 品 塗 装 に 使 用 さ れ る塗 料 類 は表 一8の よ うな 種 類

図-5  木 工 用 塗 料 の 必要 な条 件

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色 材,69〔5〕  (1996) 第9童 塗 料 の撰 択 と塗 装 工程(そ の2) 331

表-5  木 工 製 品 価 格 に 占 め る塗 料 代 (a) (b) (c)

(d) (e)

表-6  塗 料 の 使 用 料 と価 格 図-7  塗 膜 の応 カ ー ひず み 曲 線 の 種 類5)

作 業性 な ど,そ れ ぞ れ の特 徴 を生 か した ポ リウ レタ ン樹

脂 塗料 を下 塗 り と中塗 りに,ラ ッカ ー系 塗 料 を 上 塗 りに
した塗 装 系 は木 製 品塗 装 で の代 表 的 な併 用 工 程 で あ る。

そ れ ぞ れ の塗 料 の もっ長 所 短 所 を お たが い に カバ ー し合

う,リ ー チ ング ア ウ ト効 果 を発 揮 す る もので あ る。
表 一7に 示 した 各 工 程 で 必 要 と な る 塗 料 類 は,ビ ヒク
ル の異 な る多 くの塗 料 系(表 一8)で 設計 され て い る。

しか しな が ら,そ の ニ ー ズ に応 じて そ の工 程 数 は表 一9
の よ うに 臨機 応 変型 で あ る。

2.3  木 工 用 塗料 の設 計 ポ イ ン ト

既 述 した よ うに,木 製 品 の塗 装 は多 層 系 を必 要 とす る
こ とか ら,ま ず 速乾 性 で あ り,短 時 間 の塗 装 間 隔 で塗 り

重 ね が で き る こ と と,工 程 上 必 要 な研 摩 お よ び磨 き仕 上

げ の 容 易 な 塗 料 が 必 要 で あ る。 した が って塗 料 系 お よ び
塗 膜 は この 方 向 で 選 択 され ま た設 計 さ れ る ○

硝 化 綿 を ビ ヒ クル とす る ラ ッカ ー 系 塗 料 は,表-8に
示 す 木 工 用 塗 料 の 中 で も最 も古 くか ら使 用 され て お り,

現 在 も根 強 い 人 気 が あ る。 そ の 理 由 は他 塗 料 で は 真似 の
で きな い速 乾 性 と,そ の 配 合 設計 に よ りす ぐれ た研 摩 性

と磨 き仕 上 げ性 に応 じられ るか らで あ る。1回 塗 りに よ

る膜 厚 不 足 は,ハ イ ソ リッ ド化 や ホ ッ トス プ レー お よ び
エ ア レス ス プ レーな どの 塗 装 方 法 に よ り大 き く改善 され

て い る。
こ こで 塗 膜 物 性 の 基 本 に も ど って み よ う。 塗 膜 の 応 力
∼ ひ ず み 曲 線 は 図 一7の よ う に分 類 され そ の 曲 線 の 囲 む

図-6  木 工 塗 装 で基 本 的 に覚 え て お くべ き工 程 面 積 は破 壊 エ ネ ル ギ ー と い い,塗 膜 の 粘 り強 さを 表 す 尺
度 と な る。 これ らの 曲 線 に よ って 示 され る塗 膜 の 性 状 を

が あ り,そ れ ぞ れ 特徴 が あ る。 ニ ー ズ に 応 じて使 い わ け 表 一10に ま と め る○

られ る。 た とえ ば,ポ リウ レタ ン樹 脂 塗 料 は,肉 持 ち と 筆 者 ら は,配 合 組 成 を 一 連 に 変 え た 硝 化 綿(NC)

耐久 性 に す ぐれ,ラ ッカ ー 系 塗 料 は速 乾性 で,磨 き仕 上 ラ ッカ ー塗 膜 にっ いて 応 力 ∼ ひず み 性 を 測 定 した 。

げ性 が 抜 群 で あ る。 塗 装 系 の 外 観,経 時 変化 の安 全 性, 図 一8は,硝 化 綿 一 可 塑 剤(ジ オ クチ ル フ タ レー ト

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332 解 説 SHIKIZAI

表-7 木工塗装工程に必要な塗料および補助材料

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色 材,69〔5〕  (1996) 第9章 塗料 の選択 と塗装工程(そ の2) 333

表-8 木工用塗料類 の公約数 的な特長

図-8  硝 化 綿 一 可 塑 剤(DOP)系 塗膜 の応カ ーひ 図-9  硝 化 綿 一 短 油 性 ひ ま し油 変 性 アル キ ド系 の 応


ずみ曲線 力 ― ひ ず み 曲線

DOP)系 。 図-10は,硝 化 綿 一 ロ ジ ン変 性 マ レイ ン酸 樹 脂(硬 質

図-9は,硝 化 綿 一 短 油 性 ひ ま し油 変 性 ア ル キ ド樹 脂 樹 脂)-DOP系 。

系。 に つ いて の 結 果 で あ る。 測 定 条 件 は,温 度230C,湿 度

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334 解 説 SHIKIZAI

表-9  木 工 塗 装 の ニ ー ズ に よ る工 程 の種 類

60±5%,引 張 り速 度 は10%ひ ず み/分 で あ る。 せ る方 向 に 急 激 に移 行 さ せ 図 一7(b)の 形 と な る 。樹 脂

可 塑 剤 は短 油 性 ア ル キ ド樹 脂 に比 較 して可 塑 化 効 率 が 濃 度 が30%以 上 に な る と測 定 が 困難 に な る程 脆 弱 な 塗
よ く,ヤ ング 率 が低 く伸 び の大 きい塗 膜 とな る。 硬 質 樹 膜 を あ た え る。これ らの応 力 ∼ ひ ず み 曲線 の 結 果 を 表-11,
脂 で あ る ロ ジ ン変 性 マ レイ ン酸 樹 脂 は,塗 膜 を脆 弱 化 さ 表-12お よ び表 一13に ま とめ る。

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色 材,69〔5〕  (1996) 第9章 塗料 の選択 と塗装工程(そ の2) 335

表 一10 塗 膜 の 性 状 と応 カ ー ひ ず み 特性 の 関係5)

研 ぎ落 と され る 。 そ の 際,サ ン ドペ ー パ ー と の 摩 擦 に
よ って 表 面 温 度 が 上 昇 す る。 この 場 合 サ ン ジ ン グ シー

ラ ー の塗 膜 の研 ぎか す が サ ン ドペ ーパ ーの 研 摩 面 につ ま

り,い わ ゆ る ガ ム イ ングの 現 象 を 起 こす とそ の 研 摩 効 率
が 悪 くな る と同 時 に塗 面 に傷 をっ け不 良 の 原 因 とな る。

中塗 り塗 料 で あ る サ ンジ ング シ ー ラ ー は,こ の 現 象 を 絶
対 に発 生 しな い た め に,サ ン ドペ ーパ ーで 容 易 に研 ぎ落

とさ れ,ま た熱 軟 化 が 少 な い よ う設 計 され る。 具 体 的 に
サ ン ジ ング シー ラ ー は,研 摩 助 剤 と して 塗 膜 中 に亜 鉛 石

鹸(ジ ン ク ス テ ア レー ト)を 約10%含 有す る。またバ

イ ンダ ー は,軟 化 点100∼130○Cの 硬 質 で あ る ロ ジ ン変

性 マ レイ ン酸 樹 脂 を使 用 した系 が 多 く,重 量 配 合 比 で 硝
化 綿:ロ ジ ン変 性 マ レイ ン酸 樹 脂:可 塑 剤 が100:(70
図-10  硝 化 綿 一 ロ ジ ン変 性 マ レイ ン酸 樹 脂(硬 質
∼100):(30∼40)の 組 成 よ り な る。 塗 膜 の 応 力 ∼ ひ ず
樹 脂)の 応 カ ー ひ ず み 曲 線
み 性 は 表 一13のM30∼40に 近 似 して 塗 膜 の 破 壊 伸 び

実 際 の 木 製 品 の 塗 装 工 程 で 中 塗 り に使 用 され るサ ン ジ (%)は 小 さ く,抗 張力 も小 さ い。

ン グ シ ー ラ ー は,木 材 の 凹 み で あ る木 目を 平 坦 に埋 め る 木 工 用 上 塗 り ク リヤ ー も,鏡 面 仕 上 げで は 耐 水 ペ ー

役 割 りが あ り,目 止 あ と共 に鏡 面 仕 上 げ に は 重 要 で あ パ ー に よ る水 研 ぎ作 業 性 が 重 要 で あ り,最 終 工 程 の コ ン

る。 パ ウ ン ド磨 き仕 上 げ で研 磨 工 程 で っ い たペ ーパ ー 目が 平

中塗 りの 工 程 で 平 坦 な木 材 表 面 を 得 る たあ にサ ン ジ ン 坦 に か っ 容 易 に 削 り と られ る性 質 を必 要 とす る。 ま た ク

グ シ ー ラ ーの 塗 膜 はベ ル トサ ンダ ー な ど に よ り空 研 ぎで リヤ ー 塗 膜 は耐 久性 も必 要 で あ る。 一般 に そ の組 成 は,

表 一11 硝 化 綿 ラ ッカ ー 塗 膜 の 応 カ ー ひ ず み性 に 及 ぼ す可 塑 剤DOP濃 度の影響

引 張 り速 度:10%ひ ず み/分
9R℃/65+5%RH  一に て 測 宗

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336 解 説 SHIKIZAI

表 ―12硝 化 綿 ラ ッカ ー塗 膜 の応 力 ― ひず み性 に及 ぼす アル キ ド樹 脂 濃 度 の 影 響

*ベ ッ コ ゾー ル1308:油 長44%ひ ま し油 変 性 ア ル キ ド樹 脂(大 日本 イ ンキ化 学 工

業㈱ 製)
引 張 り速度:10%ひ ず み/分
23QC/65±5%R.Hに て測定

表 一13 硝 化 綿 ラ ッカ ー 塗 膜 の 応 力 ― ひ ず み性 に 及 ぼ す ロ ジ ン変性 マ レイ ン酸 樹 脂 濃 度 の
影響

*ス ーパ ーベ ッカサ イ ト1111(大 日本 イ ンキ 化 学 工 業 ㈱製)

重 量 配 合 比 で 硝 化綿:短 油 性 ア ル キ ド樹 脂:ロ ジ ン変 性
マ レイ ン酸 樹 脂:可 塑 剤 が100:(50∼60):(50∼40):

(30∼40)で あ る。 応 カ ー ひ ず み 性 は 図 一7(c)に 属 し

硬 くて 強 い 。

金 属 用 ラ ッカ ー は,重 量 配 合比 で硝 化 綿:短 油 性 ア ル
キ ド樹 脂:可 塑 剤 が100:(100∼200):(15∼30)な る

組 成 が ―般 的 で あ る。 ま た こ こに 基本 的 な硝 化 綿 ∼ 可 塑

剤 お よ び 短 油 性 ア ル キ ド樹 脂 よ りな る ク リヤ ー塗 膜 に っ
い て の 動 的 粘 弾 性 の 温度 依 存性 を 図-11に 示 す 。

図 中 皿お よびIVよ り金 属 用 ラ ッカ ーの 塗 膜 のTgは50
∼700Cに あ り,木 工 用 ラ ッカ ー のTgよ り低 い。 ま た

金 属 用 ラ ッ カ ー の 応 力 ∼ ひ ず み 曲 線 は図 一9のA-60に

近 似 す る。
熱 硬 化 性 の 木 工 用 塗 料 と して,ポ リ ウ レタ ン樹 脂 塗 料

系 が 多 用 化 され て い る。 ポ リ ウ レタ ン樹 脂 系 の塗 料 は,
U皿Lノ
ノ凡 、)ノ ポ リエ ス テ ル ま た はア ク リル ポ リオ ー ル に含 ま れ る水 酸

図-11  各 系 ク リヤ ー 塗 膜 のEノ とtanσ の 温 度 依 存 基(-OH)と,硬 化 剤 と して の ポ リイ ソ シア ネ ー ト化

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色 材,69〔5〕(1996) 第9章 塗料の選択 と塗装工程(そ の2) 337

表 一14 代 表 的 なイ ソ シア ネ ー トプ レポ リマ ー(硬 化剤)の 基 本 構 造

(A)

(B)

(C)

塗 料 の 乾 燥 時 間 や 塗 膜 の機 械 的性 質 に及 ぼす ポ リオ ー
ル お よび 硬 化剤 の 種類 の 影響 は大 きい 。本 稿 で は硬 化 剤

の 及 ぼ す 基 本 的 な 塗 膜 物性 へ の影 響 に言 及 す る。硬 化 剤

で あ る ポ リイ ソ シ ア ネ ー ト化 合 物 は表-14に 示 す 種 類 が

あ る。 同一 の ア ク リル ポ リオ ー ル(水 酸 基 価75)と4

種 の ポ リイ ソ シア ネ ー トを そ れ ぞ れ 当量 配 合 した 。塗 膜
を50。C/0%R.Hで7日 間保 持 し,硬 化 剤 の ∼NCO

の ほ とん どが ポ リオ ー ル 中 の 一〇Hと 反 応 して ウ レタ ン

結 合 に 変 化 す る ま で 乾 燥 させ た。 選 択 した 硬 化 剤 は,
図 一12  2液 型 ポ リウ レタ ン樹 脂 塗 膜 のE'∼ 温 度 曲
TMPタ イ プ(3価 の アル コ ー ル と ジイ ソ シ アネ ー トと
線 に及 ぼ す 硬 化 剤(イ ソ シ ア ネ ー トプ レ ポ
リマ ー)の 種 類 の 影 響 が ウ レ タ ン結 合 した もの)と ヌ レー ト環 タ イ プ で あ り,
囲TMP:ト リメチ ロ ール プ ロパ ン 両 タ イ プ に そ れ ぞ れ 脂 肪 族 のHMDI(ヘ キサメチ レン
HMDI:OCN―(CH2う ―4NCO
ジ イ ソ シア ネ ー ト)と 芳 香 族 のTDI(ト リレンジイソ

シア ネ ー ト)を 付加 した もの で あ る。塗 膜 の動 的粘 弾 性

の 測 定 結 果 を 図 一12,図 一13に示 す 。

合 物 中 の イ ソ シ ア ネ ー ト基(∼NCO)と が化学反 応 し ヌ レー ト環 タ イ プ の 硬 化 剤 を 用 い た塗 膜 の ほ う が,

て ウ レタ ン結 合(∼NHCOO)を 生 成 し,橋 か け塗 膜 に TMPタ イ プを 用 い た塗 膜 よ り橋 か け 密 度 は大 き くな る

な る。 が,両 タ イ プ と も塗 膜 の 橋 か け密 度 に及 ぼ すHMDIと

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338 解 説 SHIKIZAI

図-15  不 飽 和 ポ リエ ス テ ル 樹 脂 塗 料 の フ ロ ー コー
ター によ る リア ク シ ョンプ ライ マ ー 方 式 で の
塗装系
図-13  2液 型 ポ リウ レタ ン樹 脂 塗 膜 のtanδ ∼ 温 度
曲線

高 い 塗 膜 のTgを あ た え る 硬 化 剤 と して,芳 香族
(TDI)が 多 用 化 され いて る。
2.4  木 製 品 の 塗 装 工 程 例

す で に そ の基 本 工 程 を 述 べ たが,こ こで 具 体 的 な 工 程
例 を示 す 。表-15は 強 靱 な 耐 久 性 の あ る ポ リ ウ レ タ ン樹

脂 塗 料 系 サ ン ジ ン グ シー ラ ー(ラ ッカ ー 系 サ ン ジ ン グ
シー ラ ー の塗 膜 は脆 弱 で あ り,研 摩 後 厚 膜 の状 態 に残 す

と経 時 的 に 必 ず ワ レを 発 生 す る)を 中 塗 り と して 使 用

し,上 塗 り と して速 乾 性,作 業 性,磨 き仕 上 げ性 にす ぐ

れ た硝 化 綿 ラ ッカ ー 系 ク リヤ ー を通 用 した併 用 塗 装 例 で

現在 広 く普 及 して い る もの で あ る 。
表 一16は,オ ー プ ンボ ア ー仕 上 げ の 工 程 例 で あ る。 こ
図 一14  2液 型 ポ リウ レ タ ン樹 脂 塗 膜 の 応 力 ∼ ひ ず
の 仕上 げ で は,道 管 を 完全 に埋 め ず仕 上 げ るた め に木 肌
み 曲 線 に及 ぼ す 硬 化 剤 の 種 類(TMPア ダ
ク ト)の 影 響 部 分 と木 理部 分 とに コ ン トラ ス トを っ け,そ の木 理 を 強

調 す るた め,シ ー ラ ー で着 色後 に ワイ ピ ング ス テ イ ンで
TDIと の 差 異 は認 め られ な か っ た。 一 方 塗 膜 のTgに 道 管 部 を 着 色 す る。
は,ヌ レー ト環,TMPタ イ プ に よ る差 よ り も脂 肪 族 と 図 一15は,不 飽 和 ポ リエ ス テ ル樹 脂 塗 料 の フ ロ ー コ ー
芳 香 族(HMDIとTDI)と の 差 の 方 が 大 き く反 映 す ター 塗 装 によ る リア ク シ ョンプ ラ イ マ ー方 式 で の塗 装 系

る。TDIの よ うな フ ェ ニ ル 核 か らな る硬 化 剤 を 用 い る で あ る。 不 飽 和 ポ リエ ス テ ル 樹脂 塗料 は,そ の硬 化 機 構
と,セ グ メ ン トの 熱運 動 が 束縛 されTgが 上 昇 す る。 脂 が ラ ジ カル 反 応 によ る もの で あ り,塗 装 時 に促 進剤 と し

肪 族 のHMDI系 の 塗 膜 は セ グメ ン トの 熱 運 動 が 容 易 と て ナ フテ ン酸 コバ ル ト,硬 化 剤 と して 有 機 過酸 化物 が 混

な る の で 図 一14に 示 す 応 力 ∼ ひず み 曲線 か ら明 らか な よ 合 さ れ る 。 配 合 後 の ポ ッ トラ イ フ は10∼30分 間で あ り
うにTDI塗 膜 に比 べ て じん 性 にす ぐれ て い る。 そ の 配 合 量 が 増 す につ れ て 短 縮 され,そ の 発 熱 量 も著 し
ヌ レー ト環 にTDIを 結合 した 塗 膜 のtanδ ∼ 温 度 曲 線 く上 昇 す る。 この よ う な条 件 下 で は,量 産 にお け る ライ
に は,140。C,180○C付 近 にtanδ ピー ク が そ れ ぞ れ 認 ン塗 装 は不 可 能 で あ る。

め られ た 。 お そ ら く橋 か け反 応 に よ って生 じた分 子 鎖 の 形 状 が 平 らな 素 材 に つ い て は,表 一17に 示 す フ ロ ー

運動 性 束 縛 の 範 囲 が他 の塗 膜 に 比 べ て広 くな って お り, コ ー タ ー方 式 が 適 用 され る。 塗 装 され た2層 の 界 面 か ら

よ り複雑 な 橋 か け 構造 に な って い る と考 え られ る 。 ラ ジ カ ル反 応 に よ り塗 装 系 は硬 化 す る。

木 工 用 ポ リ ウ レタ ン樹 脂 塗 料 で は,そ の速 乾 性,研 摩 促 進 剤 お よ び硬 化 剤 を それ ぞれ 単 独 に配 合 され た 不 飽

性 な どか ら,塗 膜 の 経 時 的 な黄 変性 の傾 向 は あ る もの の 和 ポ リエ ス テ ル樹 脂 塗 料 の ポ ッ トラ イ フ は長 く塗 装 作 業

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色 材,69〔5〕  (1996) 第9章  塗料の選択 と塗装工程(そ の2) 339

表 一15 ポ リウ レタ ン樹 脂 塗 料 下 地 ― ラ ッカ ー 仕上 げ工 程 表
素 材:ラ ワ ン材

備 考(1>  半 ツ ヤ又 は ツ ヤ消 し仕 上 げの 場 合 に は,工 程9に そ れ ぞ れ の 光 沢 の ク リヤ ー ラ ッカ ー を塗 装 し,10の 工 程


は必 要 と しな い。
(2〉 それ ぞれ の ニ ーズ に応 じて,工 程 が 簡 略 化 され る場 合 が 多 い 。
(3) 中塗 りを 厚 膜 に残 す と経 時 的 な 塗 膜 割 れ の 原 因 とな るの で,研 ぎに 注 意 。
そ の 他,乾 燥 油 系 の チ ー クオ イル 仕 上 げ もあ る。

に支 障 を生 じさ せ な い極 め て合 理 的 な方 法 で あ る 。 料 の種 類,塗 装 系 お よ び塗 装 条 件,塗 装 環 境,木 素 材 の

形 状 が平 らで な く複 雑 な もの に は,ス プ レー塗 り用 の 状 態 な ど に関 連 して 塗 装 欠 陥 が 発 生 す る○ 正 確 に そ の 原

リア ク シ ョ ンプ ラ イ マ ー方 式 が確 立 さ れ て い る 。 因 を知 る こ とが 困 難 な場 合 が 多 い。 以 下 に 述 べ る欠 陥 は

ま た,2液 性 用 ス プ レー ガ ンを使 用す る こ と もあ る 。 木 材 の 含 水 率 が 適 正 な8∼13%の 範囲 にあ ることを前

2.5  木 製 品 の 塗装 に生 じや す い欠 陥 提 にす る。

木 製 品 の塗 装 欠 陥 を生 じさ せ る要 因 は非 常 に多 い○ 塗

47
340 解 説 SHIKIZAI

表 ―16  ポ リ ウ レ タ ン,ア ク リル ラ ッ カ ー 併 用 に よ る オ ー プ ン ボ ア ー 仕 上 げ3)

表 一17 不 飽 和 ポ リエ ス テ ル樹 脂 塗 料 の リア ク シ ョ ンプ ラ イ マ ー方 式 に よ る塗 装 工 程

48
色 材,69〔5〕  (1996) 第9章 塗料 の選択 と塗装工程(そ の2) 341

(1)乾燥 不 良 れ た場 合 。

乾 燥 不 良 と は塗 装 後,一 定 時 間 経 過 して も塗 膜 が 乾 か 対 策:

ず ベ トっ く状 態 を い う。 そ の 原 因 と対 策 は次 の通 り。 (工) 
透 明性 の よ い体 質 顔 料 を 目止 あ 剤 中 に使 用 し,そ

原 因: の拭 取 りを 十 分 に行 うこ と。

(1) 特 に塗 り替 え の場 合,そ の塗 面 に ワ ッ クス,油 な (2) 中塗 り塗 膜 を 厚 膜 と して 残 さな い よ うに,十 分 に

ど が付 着 して い た と き。 研 ぎ落 とす こ と。
(3) 素 材 内 に ラ ジカ ル反 応 に よ り硬 化 す る不 飽 和 ポ リ (3) 中塗 り着 色 塗 料 に は,透 明 性 の よ い 着 色 顔 料 を 使
エ ス テ ル樹 脂 塗 料 お よ び紫 外 線 硬 化 型 塗 料 の反 応 を 用 す る こ と。

阻害 す る タ ンニ ン,ロ ジ ンな ど を含 む場 合 。 (4旧 ヤセ

対 策: 塗 装 仕 上 げ後,経 時 的 に道 管 部 分 を 主 体 に くぼ み を 生
(工) 
塗 り替 え の場 合 の塗 面 の付 着 物 を アル コ ール な ど じ,平 坦 性 が 悪 くな る。 以 下 に,そ の 原 因 を挙 げ る。

で 拭 い,よ く研 摩 す る。 原 因:
(2) ポ リウ レタ ン樹 脂 塗 料 系 の ヤニ 止 め シ ー ラで 下 塗 (工) 
目止 め 剤 の 道 管 部 へ の 充 境度 合 い が不 十 分 で あ っ

り して,反 応 阻害 物 の ブ リー ドを止 あ る。 た場合。

(2>付着 不 良 (2) 目止 め 剤 成 分 の 収 縮 が大 きい場 合 。

この 欠 陥 に は木 素 材 と塗 膜 の 付 着 不 良 お よ び塗 装 多 層 (3ノ 
塗 装 系 の 総 合 膜厚 が不 十 分 な場 合 。

膜 間 の 付 着 不 良 の2つ の 現 象 が あ る。 以 下 に,こ の 原 因 (4) 各 工 程 で の 乾 燥 が不 十 分 で 時 間 が経 過 す る に つ れ

と対 策 を 挙 げ る。 て,そ の 塗 膜 中 の残 留 溶剤 が大 気 中 に揮 散 して い く

原 因: 場合。

(I) 素 材 との 付 着 不 良 は,目 止 め 剤 の 組 成 に よ る もの (5)ピンホ ー ル

お よ び その 拭 取 り不 良 に よ る もの が あ る。 目止 め 剤 仕 上 り塗 膜 表 面 に 針 で突 い た よ うな小 さ な穴 や,と こ
の 構 成 成 分 中の 体 質 顔 料 の 吸 油 量 が 大 き く次 工 程 の ろ ど ころ に 比 較 的大 きな 穴 が あ る状 態 で,外 観 不 良 とな

ウ ッ ドシ ー ラ ー 塗 液 が 木 素 材 ま で 浸 透 で き な い 場 る。 以 下 に,こ の 原 因 と対 策 を挙 げ る。

合。 原 因:

(2) 木 製 品 塗 装 の 多 層 系 で と くに生 じや す い欠 陥 は, (1) 塗 装 粘度 が希 釈 不 足 で高 す ぎ た場 合 。

硝 化 綿 ラ ッカ ー系 の 中塗 りサ ンジ ン グ シ ー ラー と上 (2) 気 温 が 高 く塗 膜 の表 面 が急 速 に乾 燥 す る場 合 。

塗 り ク リヤ ー との 塗 膜 間 の 付 着 不 良 で あ る。 と くに (3) 1回 塗 りの塗 膜厚 が厚 す ぎ た場 合 。

そ の 原 因 は,上 塗 り塗 膜 の 分 子 凝 集 力 が 大 き くて サ (4) 塗 装 間 隔 が短 す ぎた場 合 。

ン ジ ング シ ー ラ ーの それ が 小 さ い こ と に よ る。 (豆) 
不 十 分 な 目止 あ で,道 管 部 に 空 げ きの あ った 場

対 策: 合。

(1) 目止 め 剤 中 の 体 質 顔 料 の 選 択 と十 分 な 拭 取 り。 対 策:

(2) 上 塗 り塗 料 中の 樹 脂 成 分 の 選 択 に よ る分 子 凝 集 力 (1) 適正 な 塗料 粘 度 に希 釈 す る こ と。
の調整。 (≧) 
適 正 な 塗 り間 隔 を守 る こ と。

(3) 異 種 塗 料 の 組 み 合 せ の 事 前 検 討 と確 認 。 (3ハ 目止 め の 回 数 を ま して 十 分 に道 管 部 で 埋 め る こ

(3>木目の 不 鮮 明 と。

木 材 の 透 明 仕 上 げの 場 合,塗 料 や 塗 装 方 法 の 違 い で, (6)塗膜 わ れ

そ の 木 目が ぼ けて 不 透 明 感 に仕 上 が る こ とが あ る。 以 下 塗装 後塗 膜 に わ れ が発 生 す る欠 陥 を い う。 わ れ に は,

に,こ の 原 因 と対 策 を 挙 げ る。 表面 だ け の浅 わ れ と素地 に達 す る深 わ れ とが あ る。 以 下

原 因: に,そ の原 因 と対 策 を挙 げ る。

(1) 目止 め 剤 中 の 体 質 顔 料 の透 明 性 が 不 足 で あ った 原 因:

り,ま た そ の 拭 取 りが 不 十 分 で あ った 場 合 。 (エ) 
化 粧 合 板 表 面 の ツ キ板 のわ れ が 塗 膜 表 面 にお よぶ

(2) 中 塗 り塗 料 が 極 端 に厚 塗 りで あ った 場 合 。 もの,あ る い は サ ン ジ ング シ ー ラ ーの 厚 塗 りや,目

(3) 中 塗 り着 色 塗 料 中 に透 明 性 の 悪 い 着 色 剤 が 使 用 さ 止 め の不 足 部 分 の空 げ き の陥 没 に よ るわ れ の 伝 波 に

49
342 解 説 SHIKIZAI

よ る場 合 。 と も重 要 で あ る。

(2) 塗 膜 自体 の 伸 び が 極 め て 小 さ く,剛 直 な 塗 膜 と
ま と め
な っ て木 材 の収 縮,膨 張 に順 応 出来 な い場 合 。

対 策: 木 素 材 は,外 気 の 条 件 に よ り吸 湿,脱 湿 を 繰 り返 しそ

(!) 化 粧 合 板 ツ キ板 の わ れ を 防止 す る ホ リウ レタ ン樹 れ に と も な い膨 張 収 縮 が 起 こ り,ま さ に生 きて い る物体

脂 系 塗料 を シー ラ ー と して使 用 す る こと。 で あ る。 一 方,塗 膜 は固 い方 向 に設 計 され,と くにそ の

(2) 特 に ラ ッカ ー サ ン ジ ング シー ラ ー を 中塗 り と して 塗 装 系 の塗 膜 厚 が 大 き くな る につ れ て わ れ が 発 生 し易 く

使 用 した と き,よ く研 ぎ落 と して厚 膜 に残 さ な い こ な る。 特 に,硝 化 綿 ラ ッカ ーや 酸 硬 化 型 ア ミノ アル キ ド

と。 ホ リウ レ タ ン樹 脂 塗 料 の サ ン ジ ン グ シー ラ ー を 樹 脂 塗 料 は注 意 を要 す る。 一 方,め ざ ま しい発 展 を と げ

使 用 す る こ と。 て い る ポ リウ レタ ン樹 脂 塗 料 な ど は,塗 膜 強 度 が 強 くわ

(3) 木 材 の 含 水 率 を 適 正 で あ るか 確 認 す る こ と。 れ抵 抗 性 が す ぐれ て い る。

(4) 目止 め を 入 念 に行 う こ と。 今後 は,そ れ ぞ れ の特 長 を生 か した併 用 塗 装 系 に よ る


2.6  木 工 用 塗 料 の 試 験 塗 装 仕 上 げ が さ らに 多 く実 用化 さ れ て い くで あ ろ う。

木 工 用 塗 料 類 は,JISK5531,5533お よ び5534に ク
引 用 文 献
リヤ ー ラ ッ カ ー,ウ ッ ドシ ー ラ ー,お よ びサ ンジ ング

シー ラ ーが 規 格 化 され て い る○ ク リヤ ー ラ ッカ ー につ い 1)  大 越 誠:塗 装 工 学,31〔3〕(1996)p.117,表

て は,径10mmの 折 り曲げ に耐 え る ことが規 定 され 5,日 本塗装技術協会

る○ 2)  職 業 能 力 開 発 大 学 校,研 修 研 究 セ ン ター 編:塗 装

木 製 品 で生 じやす い欠 陥 の 中 で,特 に致 命 的 なの は, 法,雇 用 問 題 研 究 会(1986)

塗 装 系 の わ れ発 生 で あ る 。既 述 の よ うに木 工 用 塗 料 は剛 3)  植 木 憲 二,編 集 委 員 長 編:JIS使 い 方 シ リー ズ,

直 な 塗 膜 の傾 向 に設 計 さ れ る。 ま た木 材 の種 類,そ の表 塗 料 の 選 び方,使 い方,日 本 規 格 協 会(1995)

面 の 状 態,塗 装 系 の塗 膜 厚 に よ り,わ れ の発 生 が 左 右 さ 4)  植 木 憲 二:塗 料 物 性 入 門,理 工 出 版 社,p.174

れ る。 した が って 事前 に 実 際 に 塗装 さ れ た系 につ い て, (1967)

冷 熱 サ イ クル 試験 で,わ れ発 生 の確 認 を行 う こ とが も っ 5)  佐 藤 弘 三:概 説 塗 料 物 性 工 学,理 工 出 版 社(1973)

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