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 最近、ファンを感動させられる負け方についてよく考えるんです。もちろん勝つた

めに麻雀を打ってるんですけど、単純計算すると4回に1回しかトップを取れない。
負ける機会の方が圧倒的に多いゲームなわけです。負け方について考えることは
決して無駄じゃないと思うんですよ。
 きっかけは2016年の最強戦の決勝卓です。あの時はめちゃくちゃ気持ちが入っ
ていたんです。それで打ってるうちに勝ちたい気持ちや今ここで打ててることへの感
謝、いろんな思いがないまぜになった結果……泣いちゃったんです。その気になれ
ば涙を止められた気もするんですけど、あの場面では素直に自分の感情に従いた
かったんです。
 結局、近藤さんに負けちゃうんですけど試合が終わった後にたくさんのファンから
「感動しました」という言葉をいただいて──中には「多井さんの姿を見て私も泣い
ちゃいました」って人もいました──それで負けてもこんなに感動を与えることができ
るんだって気づかされたんです。
 とはいえ誰でも自分の感情を素直に出せばいいわけではありません。僕以外の
人が泣きながら打っても同じ感動にはならなかったと思います。体が小さいのに、
ちょっと背中を丸めて、卓にしがみつくように打つ僕のフォームって正直、美しくない
んですよ。でも、不器用で一生懸命やってる感じはものすごく伝わってくる。あの不
格好なフォームだからこそ、涙がファンの心に響いたんです。感動を与える負け方
は人それぞれ違うと思います。
 例えばイケメンの上に背筋のピンと伸びたフォームが美しい滝沢和典さんなんか
は僕のように感情を出すのは似合わない。どんな場面でもクールに淡々と打った
方が絶対に絵になると思います。それで勝負が終わった後、一人黙って卓を見つ
める。想像しただけでカッコ良くないですか。

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