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身体知研究の潮流 –身体知の解明に向けて– 117

✞ 
✝ 特集論文 ✆

身体知研究の潮流 –身体知の解明に向けて–
Research Trend of Physical Skill Science –Towards Elucidation of
Physical Skill–

古川 康一 慶應義塾大学 大学院 政策・メディア研究科


Koichi Furukawa Graduate School of Media and Governance, Keio University
furukawa@sfc.keio.ac.jp, http://bruch.sfc.keio.ac.jp/

植野 研 慶応義塾大学 SFC 研究所


Ken Ueno Keio Research Institute at SFC
ueno@sfc.keio.ac.jp

尾崎 知伸 慶應義塾大学 大学院 政策・メディア研究科


Tomonobu Ozaki Graduate School of Media and Governance, Keio University
tozaki@sfc.keio.ac.jp

神里 志穂子 琉球大学 工学部


Shihoko Kamisato Faculty of Engineering, University of the Ryukyus
shiho@eva.ie.u-ryukyu.ac.jp

川本 竜史 慶應義塾大学 総合政策学部
Ryuji Kawamoto Faculty of Policy Management, Keio University
ryu@sfc.keio.ac.jp

渋谷 恒司 龍谷大学理工学部
Koji Shibuya Faculty of Science and Technology, Ryukoku University
koji@rins.ryukoku.ac.jp

白鳥 成彦 慶應義塾大学 大学院 政策・メディア研究科


Naruhiko Shiratori Graduate School of Media and Governance, Keio University
naru@sfc.keio.ac.jp

諏訪 正樹 中京大学情報科学部
Masaki Suwa School of Computer and Cognitive Sciences, Chukyo University
suwa@sccs.chukyo-u.ac.jp

曽我 真人 和歌山大学 システム工学部
Masato Soga Faculty of systems Engineering, Wakayama University
soga@sys.wakayama-u.ac.jp

瀧 寛和 (同 上)
Hirokazu Taki taki@sys.wakayama-u.ac.jp

藤波 努 北陸先端科学技大学院大学 知識科学研究科
Tsutomu Fujinami School of Knowledge Science, Japan Advanced Institute of Science and Technology
fuji@jaist.ac.jp

堀 聡 ものつくり大学
Satoshi Hori Monotsukuri Institute of Technologists
hori@iot.ac.jp

本村 陽一 産業技術総合研究所デジタルヒューマン研究センター/JST CREST
Yoichi Motomura AIST DHRC/JST CREST
y.motomura@aist.go.jp
森田 想平 慶應義塾大学 SFC 研究所
Souhei Morita Keio Research Institute at SFC
souhei@sfc.keio.ac.jp

keywords: physical skill, elucidation, physical model, data mining, individual difference

Summary
Physical skills and language skills are both fundamental intelligent abilities of human being. In this
paper, we focus our attention to such sophisticated physical skills as playing sports and playing instruments
and introduce research activities aiming at elucidating and verbalizing them. This research area has been
launched recently. We introduce approaches from physical modeling, measurements and data analysis, cog-
nitive science and human interface. We also discuss such issues as skill acquisition and its support systems.
Furthermore, we consider a fundamental issue of individual differences occurring in every application of skill
elucidation. Finally we introduce several attempts of skill elucidation in the fields of dancing, manufacturing,
playing string instruments, sports science and medical care.
118 人工知能学会論文誌 20 巻 2 号 SP-A(2005 年)

1. は じ め に 習を要する.それらの区別を単に高度な技と表現しただ
けで身体知を的確に定義できるとは思われないが,ここ
近未来 AI チャレンジセッション「身体知の解明に向 では,これ以上の深入りは避ける.身体知の特徴は,そ
けて」は,2003 年度からスタートし,今年度は 18 件も の暗黙性である.身体知を獲得したとしても,その技が
の応募があった.当セッションは,大会の最終日に,一 どのようにして達成できるのかを言葉では容易に説明で
日かけて開催された.本論文は,そこでの発表に基づい きない.我々の研究テーマは,そこに光を当てて,身体
て,身体知の解明に向けた潮流を紹介したい. 知を解明することである.
身体知は,言語知とともに,ヒトが有する高度な知的 身体知の研究は,これまで,スポーツ科学の分野で精
能力である.また,その起源は,種の生存を目的として, 力的な研究が展開されてきた.水泳,スキーのジャンプ,
数億年の進化の過程を経て,発展させてきたものである. 野球,槍投げ,卓球,テニスなど,多くの種目について,
身体知の研究は,倒立振り子やエアホッケーなどの技を 様々な研究がなされてきた.そこでの研究アプローチは,
見まね学習などの手法によって獲得し,それをシミュレー 力学モデルの構築,および実験データの統計的解析の 2
ションプログラムやロボットで実現することを主眼とす 点に集約される.力学モデルには,運動量の保存,角運
る研究の流れと,ヒトがスポーツやダンス,演奏などで 動量の保存などの力学的な条件の考察,身体の各部分の
発揮する技のコツを抽出することを主眼とするもう一つ 質量や各軸回りの慣性モーメントの推定,与えられた外
の研究の流れとがあるが,その両者とも,このような持っ 力の元での関節トルクの計算などが含まれている.実験
て生まれた身体能力に深く依存している.ここでは,と データの解析では,重回帰,相関,仮説検定などが使わ
くに身体知の解明に焦点を当てて,後者の,ヒトによる れている.
高度な身体知の抽出を取り上げる. 一方,最近になって,人工知能の研究分野でも身体知
身体知の研究はスポーツ科学などでは積極的に推進さ の研究が徐々に進められている.そこでは,楽器の演奏
れているが,情報科学,あるいは人工知能からのアプロー や舞踊などの,美しさが求められるパフォーマンスアー
チは新しい.本論文では,ヒトによる高度な身体知に関 トがターゲットとされてきた.そこでの目的は,より正
する様々な研究アプローチを紹介するとともに,広範な 確で滑らかな動きの追求である.また,弦楽器の演奏で
応用分野についても概観したい.以下に,本論文の構成 は,雑音のない美しい音を出すための工夫である.それ
を示す.2 章では,身体知研究の概観を与える.3 章か らは,スポーツサイエンスにおける,強さや速さを求め
ら 6 章では,身体知研究のアプローチのうち,力学モデ るのと,幾分異なっている.また,アプローチとしては,
ル,計測・データ解析,認知科学,およびヒューマンイ データ解析に最近の時系列データマイニング手法を用い
ンターフェースの設計からの接近について紹介する.7 たり,不確実性を扱うためにベイジアン・ネットワーク
章では,身体知の習得を取り上げる.8 章では,身体知 によるモデル化を行ったりしているのが特徴である.
研究にとって不可欠な,個人差の問題について考察する. さらに,計測制御の分野では,ものづくりの視点から
また,9 章では,舞踊,ものづくり,弦楽器の演奏,ス の身体知研究が進められている.それらには,ものづく
ポーツ科学,医療の各分野を取り上げて,そこでの身体 り作業にみられる熟練工のスキルの伝承,あるいは作業
知の解明に向けての取り組みを紹介する. の安全性の観点からの研究などがある.また,ヒューマ
ンインタフェイスの設計の観点では,ただ単に使い易い
2. 身体知研究の概観 だけでなく,使いこなす技術の習得の容易さまでも含め
た考察がなされている.
はじめに,身体知の定義を試みる.我々は,身体知を 身体知の解明にとって避けて通れないのが,個人差の
言語知と対比して用いるが,その意味は,
「訓練によって 問題である.身体を用いたスキルは,身体的な差異が強
身体が覚えた高度な技」としよう.身体知の獲得は,
「言 く影響し,最善の方法が唯一つ存在するとは限らない.こ
語知」と同様,高度な知的活動の結果である.
「身体知」 のため,特定の被験者による実験結果をただちに一般化
はとくに感覚・運動系,脳神経系,および筋骨格系が関 出来ない,ということになる.このことは,身体知の解
与している.訓練は,それらを総動員して行われ,その 明の研究を著しく困難にしている.この問題に対する解
結果として,技が体に身に着く.もちろん,そのような は得られているとは言えないが,後述するように,確率
技は,動物が訓練の結果できるようになるさまざまな曲 的な扱いが注目を浴びている.
芸の延長である.その境界線を引くことは困難であるが,
我々は課題の困難さを尺度として自然に区別をしている 3. 力学モデルからの接近
ように思われる.たとえば,自転車に乗れるようになる
には練習が必要であるが,誰でもが数日間練習すれば乗 力学モデルを使うことの妥当性は,運動が力学に支配
れるようになる.ところが,楽器の演奏やスポーツでは, されているからである.各種の身体運動に対して,それ
課題ははるかに困難であり,技の習得には年単位での練 らの力学モデルを構築することが,ここでの重要な課題
身体知研究の潮流 –身体知の解明に向けて– 119

となる.著者の一人は,楽器の演奏の研究を通して,いろ の安定性は,困難な問題であることが知られている.た
いろな力学モデルを考察してきたが,その研究を通して, とえば,外科手術での筋肉の協調動作が,安定した動き
身体知にとって重要と思われる力学モデルには,(1) 振り を作り出すのに重要な役割を果たしていることが予想さ
子運動,(2) 回転運動,(3) 引き付け・押し出し運動,お れるが,そのパターンは,明らかにされていない.この
よび (4) 鞭運動の 4 つがあることを見てきた [古川 04a] . ような問題に対しては,筋力を含めた見まね学習のアプ
身体知の解明に力学モデルを利用する利点は,モデルの ローチが適しているとの報告もある.
汎用性である.すなわち,各モデルは,類似の動きをす 力学モデルは,素朴物理,あるいは定性物理の考えを
る多くの運動に対する共通モデルを与える.たとえば回 用いると,身体知の言語化につながる.力学モデルの数
転運動での慣性モーメントの変化による回転速度の調整 式自身を知っても,それをトレーニングに役立てること
は,フィギュアスケート,飛び込み,体操などに応用で は出来ないが,その式が示す大まかな傾向を知ることに
きるばかりでなく,チェロの運弓動作における移弦の速 よって,トレーニングの指針として役立てることが出来
度の調節にも利用できる. る.たとえば,振り子長は,支点から重心までの距離の
しかし,実際には様々な理由でモデルが厳密には当て 平方根に比例するということを知っていて,かつ,質点
はまらない.たとえば,チェロの運弓動作を剛体振り子 の振り子運動で長さが 0.25m のときにその周期が約 1 秒
でモデル化することを考えると,テンポの違いによって, になることを知っていれば,チェロで速度が 2 倍になっ
肩,肘,手首のそれぞれを支点とする振り子運動によっ たときに,振り子長は約 0.06m に調節しなければならな
てモデル化できると考えられる.しかしながら,たとえ いことが分かる.
ば肩の支点を考えると,それは胴体につながっており,肩 一方,ロボット工学への応用を考えると,定性物理の
関節は摩擦がゼロではない.また,腕全体を剛体とみな ような近似解ではなく,ロボットを制御するための厳密
してよいかも問題となる.さらに,肘を支点と考えると, 解を必要とする.この相違も,
「ヒトの身体知の言語化」
肘関節の制約から,その運動方向が肩,肘,手首を含む と「ロボットによる技の実現」の両アプローチの違いを
平面内に限られ,もし運動方向がその平面からずれると, 反映している.
肘を支点とした振り子運動によるモデル化は,実際の運
動に適合しない.このように,力学モデルを考える際に 4. 計測・データ解析からの接近
は,そのモデルの妥当性の検証が不可欠である.
力学モデルから,身体知に関する重要なヒントを抽出 身体知研究では多くの場合,モーションキャプチャリ
できる可能性がある.それらを列挙すると, ングシステムや加速度センサなど,種々の計測機器を通
(1) インピーダンスの重要性 じて時系列的にデータの獲得が行われる.得られた時系
(2) 協調動作の指針 (回転運動,鞭運動) 列データは,フィルタリングや時間軸上での平滑化など,
(3) 制約条件 (拮抗筋による運動妨害) 必要な前処理を施された後,実際の解析へとまわされる.
(4) ダイナミクスの理解 (振り子運動,鞭運動,非線 解析方法としては,フーリエ解析などに代表される信号
形振動論) 処理的な手法や統計的な手法の他に,近年では機械学習
(5) 運動の安定性 やデータマイニング的なアプローチが適用されることも
などである.(1) インピーダンスの重要性は,スポーツ ある.以下では,身体知研究における,機械学習やデー
科学の分野で強調されている.また,インピーダンスを タマイニングの適用可能性について概観する.
調節するためのトレーニングについての研究報告もなさ 機械学習による身体知 (スキル) のモデル化の代表的な
れている.インピーダンスの重要性は,電気回路との類 「行動のクローン化」(behavioral cloning)
研究として,
推から容易に考えられるが,実際にそのレベルまで厳密 が挙げられる [Sammut 92, Šuc 00, Isaac 03].この研究
な考察はなされていない.(2) 協調動作については,そ の目的は,熟練者の行動データからその行動を真似るプ
れがスキルの源泉であることが,昔から主張されている ログラムを帰納学習することであり,これまでに,航空
[Bernstein 67].(3) 制約条件は,(1) および (2) に関連 機やバイクの運転,クレーンの操作などがターゲットと
しているが,上腕二頭筋と三頭筋を同時に強く活性化す して取り上げられている.この研究では,決定木などの
るとそれが肘を固めることにつながり,円滑な運動の妨 手法が用いられることも多く,そのため,セグメンテー
げになる.また,背筋と上腕筋が共同で腕の振り子運動 ションと離散化による入力データの記号化が必要とされ
を起動する場合,これらの筋肉の使い方によっては,こ る場合も多い.一方,離散化を適用せず,数値属性だけ
のような運動の妨害が起こる.実際に,細かい技巧的な で表される事例から直接定性木 (qualitative trees) を導
運動の妨げとなるのは,この制約条件違反が大多数では 出するアルゴリズムも提案されている [Šuc 00, Šuc 01].
ないかと考えられる.(4) ダイナミクスの理解は,動き 定性木とは,直感的には定性推論で利用される定性方程
全体の理解に欠かすことが出来ない.とくに,タイミン 式 (定性関数制約) を葉に持つ決定木であり,各説明変数
グや速度の変化に対して,その根拠を与える.(5) 運動 の値の範囲,すなわち種々の状況下における目的変数の
120 人工知能学会論文誌 20 巻 2 号 SP-A(2005 年)

定性的な挙動 (増減) をモデル化したものと言える. 例えば,ジャズセッションやオーケストラの演奏者は,他


系列データマイニング [Roddick 02] や時系列データマ の演奏家と間合いを合わせて演奏する点で環境に埋込ま
イニング [Keogh 02] など,近年のデータマイニング研 れている.野球の試合で,野手は打球だけに反応するの
究の成果は,身体知研究に対しても直接適用できるもの ではない.投手が投げる前から,投手,打者,野手の各々
も多い.その典型的な例の一つが系列データを対象とし の動きが互いに影響を及ぼし,野手は,環境に間合いを
た頻出パターンの発見であろう.単純な頻出パターンは, 合わせることで,自分のどこに打球が飛んでくるかを予
一種の基本的な単位を与えてくれる.また,多次元系列 測し身体を反応させる.身体知研究が目指すものは,身
を対象とした頻出パターンの発見や系列間の従属性・依 体知を獲得せんとする認知主体が拠り所にできる理論の
存関係の発見は,身体各部の協調動作関係の解析などに 構築である.身体知は演奏家や野球選手の身体(認知)
適用できると考えられる.さらに,< 属性, 値 > 対+系 に閉じた系で扱うべきではない.身体と環境の間にやり
列データからの頻出パタンの発見は,系列データとして とりされる情報に探求のメスを入れなくてはならない.
は表しにくい被験者の特徴やその場の状況などを考慮に 認知主体である身体と環境のインタラクションには,行
入れた解析などに有効であると考えられる. 為,知覚,思考の三つのモードがある.行為とそれに伴
以上のように,系列データマイニングにおける種々の手 う環境の変化は,多分に客観的観測可能である.スポー
法は,身体知研究における一つの重要なツールとして考え ツ選手の身体動作(関節や重要ポイントの位置移動)の
ることができるが,その一方で,機械学習の場合と同様, 科学的計測がその代表例である.それに対して,認知主
セグメンテーションや離散化が必要とされる.これに対し, 体が知覚していること,思考したことを客観的に観測す
時系列データマイニングでは,時系列データを直接対象 るのは不可能に近い.近年の状況認知の考え方(例えば,
とし,分類やクラスタリング,異常値の検出などを行うこ [Clancey 97])によれば,行為・知覚・思考は互いに他
とが可能である.また Dynamic Time Warping(DTW) の形成に影響を与える(互いにカップリングしている).
のような,非線形な伸縮を伴う要素間の整列化による時 例えば,ある概念を思考した影響で或る知覚が形成され
系列間の類似度計算手法を用いることで,位相のずれな る.認知カップリングは,身体と環境の間にやりとりさ
どを考慮したマッチング等も可能となると考えられる.さ れる情報を客観的に観測することの限界を示唆する.認
らに,モチーフの発見 [Chiu 03] に代表されるような特 知主体の知覚や思考をデータとして得る方法は,認知主
徴的なパターンの発見は,それ自体に意味があるのに加 体の言語化をおいて他にない.
え,離散化やセグメンテーションにも適用できると考え 身体が環境内で何を知覚し何を考えたかを自分で言語
られる. 化する行為を,我々はメタ認知と呼ぶ [諏訪 04a] .メタ
ここまで簡単に機械学習やデータマイニング手法の身 認知で言語化された情報の特徴を論じよう.第一に,主
体知研究への適用可能性を概観してきたが,これらの手 観的なデータである.従来の科学で重要視されてきた客
法の多くは,データのみをその解析の対象としている.一 観性は保証されない.第二に,局所視野に基づくデータ
方身体知研究では,身体上の制約や,力学などの物理的な である.環境に埋込まれた認知主体は,全体系で生じて
法則などが,スキルに大きな影響を与えると考えるので, いる現象のすべてを観察できない [郡司 97].例えば,野
データとこれらのモデルとを切り離して考えることは必 球の試合で,打者は,投手と捕手で交わされる情報の一
ずしも適切ではない.したがって,これらのモデル,すな 部しか知覚できないし,自分の身体の動きさえもすべて
わち背景知識を扱う枠組みが必要となる.そのような枠組 意識できるわけではない.これらの特徴は,科学的世界
みとして,現在,帰納論理プログラミング [古川 02a] や 観に立てば,データとしての信頼性や再現性を低下させ
(ダイナミック) ベイジアンネットワーク [Friedman 98], る好ましからぬ特徴である.しかし,身体知研究が求め
確率論理プログラミング [De Raedt 03] などの研究が進 るものは,局所視野しか持たぬ認知主体が,客観的な環
められている.今後はこれらの研究成果の利用も積極的 境観察や主観的な知覚・思考を通して,環境とのより良
に行われていくと考えられる. い整合状態を獲得するための「行為者の理論」[郡司 97]
の構築である.認知主体が主観的に局所視野に基づいて
5. 認知科学からの接近 形成した情報が,如何に動的に身体知獲得に関わるかを
探求することが必須である.客観的観測データが必要な
この節では,身体知獲得を認知科学的視点から論じ, いと主張するのではない.従来あまり扱われることのな
身体知研究の布石とする.近年,認知科学では,環境に かった主観的局所視野的情報と客観的観測データの両面
埋め込まれた認知という考え方が主流である.
「埋込まれ から身体知獲得プロセスを探求するべきだと主張するも
ている」とは,認知主体としての身体が環境と共創的に のである.
進化する関係を有し,身体/環境が一つの系を構成する メタ認知は,局所視野で主観的に認知する主体が身体
ことを意味する.身体が変化し環境に働きかけることで 知を動的に獲得することを実現する方法論を提供する.
環境も変化し,環境の変化が身体の変化に影響を及ぼす. 自分の認知を言語化することが環境と認知の関わりに関
身体知研究の潮流 –身体知の解明に向けて– 121

して新たな発見を促すという現象が例証され始めている. 重要な点が見過ごされていた訳である.それは,人の習
プロ野球選手のイチローは,身体がどのように打ってい 熟である.携帯電話のボタンやキーボードによる文字入
るかを説明する意識的努力が現在の自分を作って来たと 力は,いちいち思考して操作しているわけでなく,指が
いう趣旨の弁を残している [諏訪 04b].歌を歌うという 覚えていることでスムーズに行える.人間工学的に操作
行為において,自分の身体を語ることが熟達現象に密接 しやすいという発想でなく,多少操作しにくくても,技
に結びつくことも示されている [諏訪 04a, 諏訪 04c]. 能を獲得できる範囲にあれば,操作の習熟としての身体
メタ認知は,二つのフェーズからなるべきだと我々は 知の習得時間のみが問題となる.
考える.環境を体感するフェーズと,体感した(と主観的 ヒューマンインターフェースは,キーボードやマウス
に思うこと)を言語化するフェーズである.言語化フェー などの入力装置や CRT・TFT 液晶ディスプレイなどの
ズでは,本来言語化しにくい類いの(自分の身体および 出力装置だけではない.車のハンドルやアクセルなどの
環境に関する)知覚を敢えて言語化する努力が重要であ 機器のインターフェースもある.また,バーチャルリアリ
ると考える.前者は,環境に身体を没入させる意識で, ティで利用される触感覚などを含む五感のインターフェー
認知と環境に生じていることを体感する行為である.生 スも含まれる.特に,ユビキタス環境では,あらゆる道
態学的心理学の言葉で言えば,環境と身体の新しい関係 具がインターフェイスになる.タンジブル・ビット [石井
(アフォーダンス)を発見する行為 [佐々木 00, 後藤 04] 04] は,日常の道具 (引き出し,コップなど) をヒューマ
である.守備の巧い野手は,決して打者を凝視せず,打 ンインターフェースとする研究を行っている.人が道具
者と投手の間の空間にわざとぼかした焦点を置くと言わ を使いこなすには,その道具の操作に習熟する必要があ
れている.加藤 [加藤 02] は打撃における周辺視の重要 る.長い棒状の工具 (金槌・ペンチ・ピンセットなど) の
性を論じた.我々は,焦点をぼかすこと,及び周辺視は, 操作を考えると,腕が伸びた状態や指が伸びた状態とな
環境を認知主体に対峙するものとして二元分離的に見な る,つまり,腕や指の長さに関するパラメータが変わっ
い(環境に身体を没入させる)ための方策であると解釈 た状態での身体の制御が必要となる.また,感覚を道具
する.しかし,その一方で,言語化は,即ち,環境の客 の先端部で感じる仕組みをも身につけているとの報告が
体視を意味する [井筒 91].客体視して言語化することで, ある [山本 02].これは,道具と身体を一体化した上での
認知は環境認識を得る.しかし環境認識が目的ではない. 新しい身体 (拡張身体性) の構築と拡張身体の制御を習熟
ある認識を得た身体が,続く体感フェーズで更に新たな した身体知と言える.
ことを感じ取る基盤を提供することが,言語化の目的で ユビキタス環境でのヒューマンインターフェースは,身
ある.新しいことを体感できれば,次のフェーズで言語 体知を考慮して設計されるべきものである.身体知の獲
化できること(環境認識)も増える,もしくは進化する. 得しやすいインターフェースの設計のためには,
「身体知
このように言語化と体感の共促進構造により認識を進化 獲得メカニズムの解明」「身体知が獲得できる限界の解
させることが,身体と環境が整合する状態を動的に創り 明」「身体知獲得メカニズムを利用した道具型インター
だす,つまり身体知を獲得させると考える. フェースの開発」が必要である.身体知獲得メカニズム
メタ認知は,客観的観測データとの併用で更に強力な が分かれば,身体知が獲得されやすい道具の形や機能を
方法論になり得る.例えば,体感フェーズで客観的に測 インターフェースに持ち込める.また,獲得限界が分か
定できる身体生理データを認知主体に提示すれば,認知 れば,いつまでも使いにくいインターフェースを排除で
主体の体感と客観的データの関係そのものが言語化の対 きる.これらの身体知獲得の知見を反映した習熟しやす
象になる.それは言語化と体感の共促進を更に強める原 いインターフェースの設計法も生まれてくる.楽器やス
動力になる. ポーツの道具 (ハンマー投げのハンマーなど) の身体知獲
メタ認知の方法論は,現象を構成的に生み出すことを 得の方法もインターフェースに活用できる.さらに,義
通して身体知の理解に貢献する. 手や義足などの操作が習熟しやすい補助具への応用も期
待できる.
6. ヒューマンインターフェースからの接近
7. 身 体 知 の 習 得
従来のヒューマンインターフェースの基本的な設計方
法は,そのインターフェースに不慣れな利用者を想定し 7・1 身体知習得の問題点
て,使いやすいインターフェースを目指してきた.特に, 数学,物理,英文法など,学習対象を記号で記述可能
近年は,万民を対象にしたユニバーサルインターフェー な記号知識の学習と比較して,身体知の習得は,学習対
スが望まれている.しかし,かならずしも,使いやすいイ 象の記号表現が困難であり,外界とのインタラクション
ンターフェースが普及するとは限らない.たとえば,携 が学習の本質であるなどの特徴を備えている.記号知識
帯電話の日本語入力は,ボタン操作の量も多く,使いや 学習支援の ITS(Intelligent Tutoring System) では,学
すいとは言えない.ヒューマンインターフェース設計の 習者の個人差とは,学習対象についての学習履歴と理解
122 人工知能学会論文誌 20 巻 2 号 SP-A(2005 年)

状態の差であり,これを克服するために,システム内に, 演奏を対象に上達過程を調査した.実験では,二人の初
学習者の理解状態を表す動的モデル (学習者モデル) を設 心者を対象として一週間に渡ってコーチ付き練習とモー
けている.身体知の習得では,(1) 学習者の技能に関する ションキャプチャ装置による動作測定を繰り返した.そ
知識の有無や理解状態の個人差,(2) 身体サイズ,身体構 の結果,身体各部の同期の度合いは,実験開始当初は低
造,筋力などの個人差にともなう身体知の個人差,の 2 く,三日目に高くなり,その後五日目に低下するという
つが考えられる.(1) は記号知識学習支援と同様の方法 現象が見られた.
で対処できると考えられるが,(2) については,身体知 サンバリズムの演奏技能を習得するには約半年を要す
の習得に特有の個人差である.これには,個人の身体サ るので,一週間の実験では習得までの全過程を明らかに
イズ,身体構造,筋力に応じた最適な学習方法をプラニ したとはいえないが,短期間の練習でも学習者の身体動
ングでき,身体知の差を克服できるシステムの構築が研 作が変化すること,またその変化を数値的に分析できる
究課題である. ことを明らかにした点に意義がある.
また,身体知の習得を支援する手段にも様々な問題が
存在する.身体知の習得を支援する手段として,教授者 7・3 身体知の習得支援
が実演して見せるほか,動作の要点を文章化したマニュ 技能の習得では,ある程度,動作の形ができてきたと
アル,さらにテキストと動画や写真などを組み合わせた ころで,リズムを聞かせると効果的と考えられる.学習
マルチメディア教材などが利用されている.これらの方 者は自分の体が作り出すリズムを聞くことによって,動
法は視覚情報や言葉による表現を通した教授といえるが, 作の適切なタイミングを把握できるはずである.角度感
技能習得を支援するには十分ではない. 覚や力の入れ方に関わる制御変数は,タイミング情報を
視覚によって得られる情報は,全体の姿勢や特定部位 もとに学習者自身が調整できると予想される.
の角度など静的な情報が主であり,身体各部がどのよう 恒次ら [恒次 04] は,この仮説を検証するため,サン
に連係して動いているのか,速度や角速度までを正確に バリズムの演奏技能を習得する過程を支援するシステム
把握することは難しい.また,ひとつの動作には多くの を開発している.試作システムは,学習者の動作をモー
筋肉と関節が関与しており,それらの連係は複雑なので ションキャプチャ装置で測定し,ステップのタイミング
言葉では表現しにくい. をバスドラムの音でリアルタイムにフィードバックする
視覚と言語だけでは技能を伝えきれないため,結局の というものである.しかし,試用した結果,足の動作を
ところ学習者は訓練を通して体で覚えるほかない.しか フィードバックするだけでは不十分であると予期された.
し,人間の体性感覚では身体各部位の角度を同時に,か シェイカーによるリズム演奏は全身で行われるため,
つ正確に把握することは困難である.また,ひとつの動 動作の特徴を把握するには足の動作だけでは不十分であ
作は多くの筋肉の出力の重ね合わせであり,関節によっ り,全身の動作をモニターする必要がある.また,技能
てフィルターもかかるため,力の入れ方をつかみにくい. 習得を支援するには,正しい動作ができた時に合図を出
角度感覚と力の入れ方の問題に加えて,脳の指令が筋 し,その時の感触を覚え込ませる必要があるが,現時点
肉に伝わるまでに 0.1 秒程度の遅れがあることも問題を ではまだ正しい動作を検出できないため,学習者に技能
難しくしている.情報伝達の遅れを考慮すると,人間は 向上の手がかりを与えることができない.身体動作に関
動作を予測制御していると考えられる.そのため,学習 する今後の研究の発展が望まれる.
者は動作の正確なタイミングを知る必要があるが,視覚
と言語はタイミングの教授に適していない. 7・4 身体知の誤り診断
最後に,身体知の誤り診断について,話題を技能一般に
7・2 身体知の習得プロセス 広げて考察しよう.絵画描画,書道,陶芸などのように,
藤波ら [藤波 04] は技能習得におけるタイミング情報の 道具を使って作品など成果物を生成する技能では,成果
重要性に着目し,シェイカーによるサンバリズムの演奏 物のみが診断の対象になりやすい.また,多くのスポー
を研究している.リズム演奏は,楽器演奏としては容易 ツのように,成果物を生成しない技能では,学習者の動
なものと思われがちであるが,
「リズム音痴」という表現 作のみが,診断の対象になりやすい.しかし,実際には,
があることからもわかるように,リズム感を習得し,正 成果物や動作と並んで,認識や,認識と動作の対応付け
確に表現するには修練を要する. も診断の対象にすべきである.
山本ら [Yamamoto 04] は,シェイカーを使ったサン たとえば,和歌山大学のデッサン学習支援システム [高
バ演奏を分析し,心地良いグルーブ感が得られる時,全 木 03] は,絵画教師の代わりに,システムがデッサンを
身の動作はほぼ同期しているものの,同期していない部 初心者に教えるシステムである.これまでのところ,診
分もあること,またリズムにうまくのれていない時の方 断対象は,成果物,すなわち描き終わったデッサン画を
がむしろ同期が強いことを明らかにした. 診断対象としている.しかしながら,成果物に誤りがあ
上村ら [上村 04] は,シェイカーによるサンバリズムの (ア)動作の未熟さ,(イ) 対象の認
る場合,その原因は,
身体知研究の潮流 –身体知の解明に向けて– 123

識の未熟さ,(ウ) 認識と動作の対応付けの誤り,の三つ 造を取ると考えられる身体知の問題領域において,集団


が考えられる. 全体に共通する平均構造と個人差の両方をうまく表現す
デッサンの技能習得の場合,(ア) は,たとえば,描画 る枠組みとして活用することが期待できる.
時の腕の動かし方の未熟さであり,(イ) は,モチーフの 例えば,ある制御対象 (出力変数:Y ) に対して,入力
詳細をよく観察していないことであり,(ウ) は,三次元 変数 (X) が関係している時,個人差が年齢 (Age) によ
のモチーフと二次元のデッサン画の関係 (たとえば透視 るということがわかれば,これはベイジアンネットでは,
投影の原理) をよく理解していないということがあげら P (Y | X, Age) という条件付確率としてその細かい影響
れよう.また,成果物を生成しない技能であっても、た の仕方がわからなくても,とにかくモデル化することは
とえば、テニスの技能習得では,
(ア)は,ラケットのス できる.Y に対して,X や Age がどのように影響する
ウィングフォームの未熟さであり,
(イ)は,ボールの軌 かはこの条件付確率 P (Y | X, Age) を規定する条件付確
跡を良く見ていないことであり,
(ウ)は,ボールの軌跡 率表の中で定義され,この中では非線形性,非正規性を
に対する適切なラケットの角度を理解していないという 持つ不確実な関係が原理的には表現できる.さらにこう
ことがあげられる. した変数間の関係を何段にも拡張することで,個人差の
このように,(ア)∼(ウ) は技能習得時に見られる誤り 中に潜む複雑な依存関係をモデル化することが原理的に
に共通する原因カテゴリーである.これらの原因を同定 は可能になる.
し,より適切なアドバイスを提示できるシステムの開発 このような個人差を確率的にモデル化したもっとも簡単
が課題である.しかし,一般に,成果物や動作軌跡には, な例を挙げる.子どもの発達行動については,大規模な統
(ア)∼(ウ) の結果が重ね合わさって表れるので,原因の 計調査により,月齢と各種の行動の関係がデンバー II と
判別が難しい.判別技術の開発は,技能習得支援システ いう発達検査シートという形でまとめられている (図 1).
ム共通の大きな研究課題である. これは同じ月齢の子どものうち,何%の子どもがその行動
もし,この判別技術が開発できたと仮定すると,原因 をとることができるかという確率モデル P (Action|Age)
に応じたアドバイスの提示が可能になる.原因が(ア)の として利用できる知識であり,これを月齢からとりえる
場合には,動作の修正に,身体に直接フィードバックす 行動を予測するベイジアンネットの条件付パラメータと
る力覚提示が有効であろう.これには,介護ロボットな して用いることができる (図 2).
どで開発されている身体サポート技術などが応用できる
と考えられる.また,原因が(イ)の場合には,アイカメ
ラなどの視線追跡技術を併用して,認識修正を促すアド
バイス提示法が有効であろう.さらに,原因が(ウ)な
ら,これらの技術に加え,認識と動作の対応付けを,現
象や対象の物理的原理や,身体の原理に基づいて論理的
に説明するアドバイスが有効になると考えられる.今後
の研究が期待される.

8. 個人差のモデル化
図 1 子どもの発達行動データベース:DENVER-II
個人差を持つ集団のモデル化の一つの常套手段は統計
的なアプローチである.個々のサンプルの集合としての
性質はそのサンプルの頻度分布における統計量 (平均や
分散など) として表せる.もし,ヒトに関するモデルを統
計的に求めようとすると,その全体に共通する性質はこ
うしたサンプル集合 (母集団) における平均的なパラメー
タとして表され,個々のサンプルの性質 (個人差) はこの
平均的なパラメータからのずれとして表現される.多数
の変数からなる複雑な問題領域での,こうした平均構造
と分散構造に注目したモデリング技術として共分散構造
分析と呼ばれるグラフィカルモデルがある.これは基本
図 2 子どもの発達行動モデル (つかまり立ち)
的には線形性,正規性を仮定した連続変数についての確
率モデルである.これに対して,非線形性,非正規性を
持つ離散確率変数に対するグラフィカルモデルとしてベ この月齢のみを説明変数とするモデルからの逸脱が見
イジアンネットワークがある.これを,非常に複雑な構 られた場合に,より尤度,情報量基準などが高くなるよ
124 人工知能学会論文誌 20 巻 2 号 SP-A(2005 年)

うな説明変数を探索することで月齢以外の個人差を規定 究 [神里 04] は,そのような研究の端緒となるものであ


するためのパラメータをモデルに加えることができる. る.そこでは,観察者の印象における踊りの分類をもと
次に演奏スキルにおける個人差をタイプ別にクラスタ に「上手」と判断された舞踊動作の運動計測を行い,多変
リングすることを考える.この時,各クラスターごとに, 量自己回帰モデルを用いて,その関連性を明らかにする
身体的な特徴が異なっており,これが演奏スタイルの違 ことを試みている.ヒトの上肢は,自由度が多く関節動
いをもたらしているとしよう.実際,体格的な差異,姿 作の組み合わせによって無数に動きを生み出すことがで
勢の取り方により演奏スタイルの差異が見られる.姿勢 き,また,複雑な動きを生成することが可能である.舞踊
の取り方による差異の例は,重心を回転軸に載せている 時の腕の動きにも様々な印象を生み出す自由度の組み合
か,いないかの違いとして表れ,重心が回転軸から 10cm わせが存在していると考えられる.運動の計測には,磁
離れると,慣性モーメントが 2 倍以上違ってくる.そう 気式モーションキャプチャシステムを用いて,肩関節屈
すると,胴体のねじりを振り子運動と考えると,その周 曲−伸展,肩関節内転−外転,肘関節屈曲−伸展,手首
期がその平方根,すなわち 1.4 倍ほど遅くなる. 関節屈曲−伸展,手首関節内転−外転,手首関節回内−
こうした現象についての確率的なモデル化を考えるこ 回外の 6 自由度に対し,3 次元時系列計測を行い,舞踊時
ともできる.各クラスターごとの身体的特徴を Z として, の各自由度間の関連性について検討を行なっている.上
スキルを特徴づける運動パラメータ (回転軸と重心の差 手と評価された舞踊動作の上肢関節時系列角度変化では,
など) を目的変数 Y , 速度やピッチなどの説明変数を X 肘関節の屈曲−伸展の影響が少なく,手首関節の回内−
として,P (Y |X) よりも,P (Y |X, Z) の方が観測した統 回外の動きに関しては,上手と評価された舞踊動作の方
計データへの適合度が高ければ,Z が個人差を良くモデ がどの関節に対しても影響を与えていることが明らかに
ル化していることになり,この Z により演奏者をクラス なった.
タ化すればよい.このような Z を計算機により探索的に 運動特性の抽出に関しては,巧みさや個性の部分動作
抽出することでより適切なスキルのモデル化に AI 技術 抽出とその定量化を行い,演者の表現の違いを熟達者と
が貢献できるかも知れない. 初心者で比較検討すること [吉村 01] や動作特徴を周波
数解析により抽出し,コンピュータグラフィクスを用い
9. 応 用 て特定の印象を与える動作合成法の提案 [新垣 02] がさ
れている.
9・1 舞 踊 舞踊動作を用いた身体知研究では,膨大なデータより
舞踊における美しさや上手さの評価は,ヒトの感性に 重要部分の抽出を行い,人間の感性と運動特性との関連
よって判断されている.美しい舞踊動作や上手な舞踊動 性を検討し,熟練者の巧みさを定量的に把握することで
作の評価を明らかにする研究では,感性情報を用い,踊 新しい知見を得る方法論となっている.
り手に対する観察者の印象から踊りの印象構造を探るこ
とを目的とした研究や踊りの印象と身体運動との関連性 9・2 も の づ く り
を調べるための研究がなされている.たとえば,多変量 §1 陶 芸
解析による舞踊の印象構造は,陽気さ,重量感,力強さ 伝統工芸のひとつである陶芸には多くの手作業がある.
といった 3 因子から 8 因子であると報告されている [金 素材となる陶土を練って材質を整え,ろくろを使って成
城 91, 頭川 95].舞踊は,観察者の知識や経験による主 形し,その後いくつもの工程を経て作品が出来上がる.
観的な印象が大きく影響してくるため,主観的な印象評 陶土を練る工程のひとつに「菊練り」と呼ばれる作業が
価による研究は,重要なものであるといえる.この点に あり,習得には 5 年から 7 年を要する.阿部らは菊練り
ついては,神里ら [Kamisato 04] は,知識差による印象 の動作を解析し,熟練者と中級者の違いを明らかにした
構造の比較を行っている.また,物理的な運動計測の面 [Abe 03, 阿部 03].
でも振りの特徴部分抽出とその定量化や特定の印象を与 熟練者と初心者を比較すると,熟練者は腰が安定し,手
える動作合成なども興味深い研究対象であるといえる. の動きに強い周期性が見られたが,初心者の場合,周期
舞踊動作において「躍動感」や「美しさ」を表現する 性はあまり強くなく,腰もぶれていることがわかった.ま
ためには,上肢の滑らかな動き,多くの自由度の組み合 た,時系列データを比較すると,初心者は上体を前に倒す
わせが重要であることは容易に考えることができるが, 勢いだけで陶土をこねるが,熟練者は位相差を利用して,
どのような身体情報が観察者のどのような印象に関連す 上体を戻すときにも陶土を練っていることがわかった.
るのか明らかにはされていない.さらに,このような運 従来,運動能力の獲得はばらばらに動いていた身体各
動特性を作り出す上肢関節の組み合わせや関節動作の関 部の動作を徐々にひとつの動作にまとめあげていく過程,
連性に関しては,これまで,ほとんど検討されなかった. すなわち協調構造の確立として捉えられていたが [Hakan
主観的な印象によって分類された舞踊動作の上肢関節の 85],菊練り熟練者は異なった位相の動作を組み合わせ
相互関連性を明らかにすることを目的とした神里らの研 て協調構造を生み出していることが観察された.山本ら
身体知研究の潮流 –身体知の解明に向けて– 125

と思われる.音楽における感性を代表する要素としては,
「明るい」「暗い」などの音色が挙げられる.この音色と
運動のパラメータである弓速・弓圧などとの関係が,人
間の動作分析や,アンケート調査を通して調べられてい
る [渋谷 00, 渋谷 04].今後,身体能力と感性の両方につ
いて,演奏者の技能獲得の学習過程も含めた検討が必要
であろう.
図 3 加速度センサによる Reach 動作の検出 弦楽器演奏におけるもう一つの大きな問題として,ス
キルの個性が挙げられる.身体的な個人差や身体自由度
の冗長性に端を発するベルンシュタイン問題 [Bernstein
[Yamamoto 04] は,熟練者の身体動作に見られるこの特
67] に加え,楽器の使い方にも冗長性があるため,楽器
徴を分化という概念で説明することを提唱している.
演奏において個性は顕著である.また,熟練度によって
§ 2 行動からの技能・知識獲得 楽器の扱い方が変化していくため,熟練度が深まるにつ
ものづくりの現場では,技能の有無が品質・生産性に大 れて個性も大きく成長すると考えられる.個性を考慮し
きく影響する [小池 01].熟練技能は,単なる手先の器用 たうえで,どのように身体を制御して演奏しているかを
さではなく,身体的訓練を通して獲得した問題解決力で 客観的に評価する方法があれば,個人にあった器楽演奏
あり,総合的な判断力である [生田 01].しかし,技能は 教育に役立つと考えられる.しかしながら,音楽演奏に
言語で伝えることが難しい身体化された知識であり,そ おいて動作のレベルで個性を分析した例は少なく,[伊藤
の蓄積・再利用には身体知のアプローチが有効である. 00] などに指揮者の個性分析などが散見されるが,弦楽
ものづくりの身体知獲得の試みとして,堀らによる行 器においてはほとんど皆無である.チェロ演奏演奏動作
動から保守技能・知識を獲得する手法に関する研究 [堀 において,個人差をセンサから直接計測して定量化する
04] がある.堀らは,管理工学の動作研究に着目し,IC 加 試み [植野 04] は始まったばかりであり,ベイジアンネッ
速度センサを用いて動作が計測可能であることを示した. トによる演奏個性のモデル化 [古川 02b] などの検討が今
図 3 に示すように,手足に加速度 IC を装着し,重力 後の方向性として考えられる.
加速度を測定する.このデータより手足の方向,すなわ
ち姿勢・動作がわかる.本手法で,8人の学生に産業用 9・4 ス ポ ー ツ 科 学
ロボットシステム始動作業を実行してもらい,この作業 アテネオリンピックにおける日本選手の活躍からも推
に含まれるスイッチ操作の動作全てを検出できた.効率 し量られるように,近年におけるスポーツ科学の発展は
的な動作・作業手順は,知恵と工夫の結果である.そこ 目覚しい.しかしながら,従来のスポーツ科学研究の多
で,熟練技能者の動作を計測することにより,彼らの持 くが,
「より強く,より高く,より速く」といった量的最
つ技能 (身体知) を獲得することができる.今後,作業者 大値の追求を主眼としており,
「ワザ」や「コツ」などの
の動作を記録し再利用するシステム,知識を抽出する技 慣用句で表現される,一流スポーツ選手の優れた技能=
術の研究開発が進むと思われる. スキルの解明は,現状で十分に達成されているとは言い
難い.
9・3 弦 楽 器 の 演 奏 従来,スポーツ科学におけるバイオメカニクスを中心
弦楽器は,その演奏動作の精緻さゆえ,身体知の研究 としたスキル研究は,動きの記述を主目的とする運動学,
対象として非常に興味深い.具体的な対象としては,バイ 動きの動力源(すなわち筋力)の定量を主目的とする運
オリンとチェロの運弓動作を対象としたものが多い.弦 動力学のいずれかあるいは併用によってなされてきた [深
楽器の運弓動作では,弓の位置,姿勢,速度に加え,弓 代 00].また,スキルの検討方法としては,熟練者と非熟
圧を制御する必要がある.このため,演奏者は指と腕を 練者間での統計的比較が主流であったが,こうした手法
巧みに協調させ,演奏を実現している.この協調動作の によるスキル研究の将来性は,頭打ちといった感が否め
方策を解明することが,身体知の解明につながると考え ない.こうした現状の中で,従来のバイオメカニクス的
られる.このため,様々なアプローチにより基本的な運 手法に,発見科学とも呼ばれるデータマイニングや AI を
弓動作の分析が試みられてきた.主に関節角度・トルク 応用することは,スポーツにおけるスキル解明のブレー
や,筋電図の分析が行われており,運弓時の各関節の役 クスルーとなり得る.
割分担や,各筋の活動度合いなどの知見が得られている 例えば,サッカーにおけるインサイドキックを取り上
[古川 04b, 渋谷 95].楽器演奏における身体知を考える げると,モーションキャプチャによるキックモーション
上で,もう一つ欠かせない要素として感性が挙げられる. の 3 次元運動学的解析に,データマイニング的手法を応
演奏者は,自分の感性によりどのような音を生成すべき 用した研究が行われている [川本 04a] .そこでは,下肢
かを感じ,自分の望む音を生成することを第一に考える の運動学的データによるキック精度の重回帰分析や,熟
126 人工知能学会論文誌 20 巻 2 号 SP-A(2005 年)

練者と非熟練者を分類する決定木構築が行われている. 10. お わ り に
この結果,正確なインサイドキックを遂行するためには,
インパクト面の角度の再現性を高めることが不可欠であ 本稿では,身体知の解明に向けた研究の潮流を,今年
り,この再現性向上には,従来指摘されているような下 度の人工知能学会全国大会近未来 AI チャレンジセッショ
肢遠位部での制御よりも,むしろ骨盤や股関節を中心と ン「身体知の解明」の投稿・発表者を中心としてまとめ
した体幹および下肢近部位での運動制御が重要であるこ た.本研究は始まったばかりであり,さらに関連分野が
とが示唆されている. 多岐に渡るので,個々のテーマについての個別のオリジ
ナルな研究の紹介をすることは出来なかった.それらは,
現状におけるスポーツ科学と AI の乖離は,反対に両者
各著者の論文を参照して欲しい.
の融合が,きわめて幅広くかつ新規性の高い研究領域を
身体知の解明は,人工知能の新たな研究領域として,今
生み出す可能性を示唆するものとも言える.例えば,上
後その重要性を増していくものと考えられる.その理由
記研究 [川本 04a] で行われたパフォーマンス(誤差)の
の第 1 は,時系列データマイニングなどの最新の人工知
定量に基づくモーションデータのマイニングという手法
能技術を必要としている点である.そのため,これらの
は,ゴルフのパッティング [川本 04b] や野球のピッチン
技術の発展にも,この新しい分野の研究開発が役立つで
グ,テニスのストロークなど様々なスポーツスキルへの
あろう.
応用が可能である.また,スポーツ動作とは一般に,経
理由の第 2 は,身体知そのものの性質から導き出せる,
時的に行われる多関節協調運動の総体であり,このスキ
より本質的なものである.身体知は,本稿の最初にも述
ルの解明には,時系列データマイニングが大きな貢献を
べたように,その源泉は哺乳類が出現して以来,数億年
果たすことが予想される.21 世紀には,幅の広いスポー
をかけて進化を積み重ねて得られた身体能力を基にして
ツ種目を対象として,進境著しいセンサー計測技術と最
いる.とくに,各種の反射メカニズムは,早い運動を正
新の AI 手法の応用によって,スポーツ選手のスキル解
確にこなすのに欠かすことの出来ないメカニズムを提供
明が急速に進展するであろう.
していると考えられている.これらの能力は,脳の部位
で言えば,むしろ小脳に位置していることが知られてい
る.一方,今日の認知科学が主にその考察の対象として
9・5 医 療 いる言語能力の獲得は,大脳の役割が大きい.もちろん,
これら二つの脳の連携も重要で,とくに高度なスキルの
医療の分野において,身体知を扱い,支援するアプリ 獲得にとって,その連携の役割は大きいことが知られて
ケーションとして,従来より MYCIN に代表されるエキ いる.身体知の解明は,その言語化と言い直すことも出
スパートシステムがあげられる.従来のエキスパートシ 来る.そのため,アプローチとしては,認知科学的なア
ステムでは,人間の状況判断を決定的なプロセスとして プローチが可能である.一方,到達運動などの基本的な
記述するルールベースのシステムが多く提案されてきた 身体知については,脳科学的なアプローチが大きな進展
[Castillo 97].しかし,人間の身体知的行為を含む医療 を見せている.この意味で,身体知の解明は,人工知能
判断は決定的なロジックのみでは表現できず,もっと不 的な手法を軸として,認知科学,脳科学を跨ぐ研究領域
確実で,曖昧なものである. に発展する可能性を秘めている.本論文が,多くの読者
の興味を引き付けて,そのような方向に進むことを期待
現在作成している麻酔ナビゲーションシステムは,麻
する.
酔活動における,不確実性を持った判断を表現するため
に,確率ベースのシステムとしてベイジアンネットワー
クを利用したエンジンを持ち,各レベルの麻酔医に応じ
♦ 参 考 文 献 ♦
た状況的学習を促進する.麻酔活動とは,予測,行為,結 [阿部 03] 阿部 真美子, 山本 知幸, 藤波 努: 技能修得における身
果,判断が連続して起こり,また1つの行為の結果が未 体動作のモーションキャプチャを用いた解析, 第 65 回情報処理
来の患者の状態を左右し,その患者の状態が次の麻酔行 学会全国大会予稿集, Vol.2, pp.351–352 (2003)
[Abe 03] Abe, M., Yamamoto, T., and Fujinami, T.: A Dy-
為,外科行為を決定する等,複数の行為次元と時間軸が namical Analysis of Kneading Using a Motion Capture De-
存在する振る舞いの結果として導かれる.このシステム vice, Proc. of Third International Workshop on Epigenetic
Robotics, pp.41–48 (2003)
では,この複雑な麻酔活動をベイジアンネットワークに [新垣 02] 新垣 武士, 星野 聖: 主観的印象の合成を目的とした
よりパターン化することで,身体知的行為である麻酔活 CG 舞踊動作の生成, 信学技報 (2002)
[Bernstein 67] Bernstein, N.: The co-ordination and regula-
動における不確実性を減少させる.そのため,麻酔医は
tion of movements. Pergamon Press, New York (1967)
麻酔活動におけるブレイクダウンを事前に防ぎ,一定の [Castillo 97] Castillo, E., Gutierrez, G. M., and Hadi, A. S.:
麻酔活動を維持しつづけることで,実践の状況の中で麻 Expert Systems and Probabilistic Network Models, Springer-
Verlag (1997)
酔のパターンを経験を通して取得できるシステムである [Chiu 03] Chiu, B., Keogh, E., and Lonardi, S.: Probabilistic
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[井筒 91] 井筒 俊彦: 意識と本質 –精神的東洋を索めて, 岩波文 予稿集 (2004)
庫 (1991) [植野 04] 植野 研: 定性モデリングによる演奏スキルデータの個
[上村 04] 上村 章浩, 藤波 努, 山本 知幸: モーションキャプチャ 人差比較解析, 第 18 回人工知能学会全国大会 (2004)
装置を用いたリズム演奏修得過程の分析, 第 18 回人工知能学会 [山本 02] 山本 慎也, 北澤 茂: 道具の先端における知覚, 脳の科
全国大会予稿集 (2004) 学, 24(1), pp.67–69 (2002)
[Kamisato 04] Shihoko Kamisato, Satoru Odo, Kiyoshi [Yamamoto 04] Yamamoto, T., and Fujinami, T.: Synchro-
Hoshino, Yoshino Ishikawa: Extraction of motion character- nisation and Differentiation: Two Stages of Coordinative
istics corresponding to sensitivity information using dance Structure, Proc. of Fourth International Workshop on Epi-
movement, JACIII, pp.168-180 (2004) genetic Robotics, pp.97–104 (2004)
[神里 04] 神里 志穂子, 山田 孝治, 玉城 史朗: 舞踊動作における [吉村 01] 吉村 ミツ, 酒井 由美子, 甲斐 民子, 吉村 功: 日本舞
感性情報と上肢運動の解析, 第 18 回人工知能学会全国大会予稿 踊の「振り」部分抽出とその特性の定量化の試み, 電子情報通
集 (2004) 信学会論文誌 (2001)
[加藤 02] 加藤 貴昭: スポーツにおける周辺視 –運動制御シス [頭川 95] 頭川 昭子: 舞踊のイメージ探求, 不昧堂出版 (1995)
テムに関する研究, 慶応義塾大学政策・メディア研究科博士論
文(平成14年度) (2002)
〔担当委員:阿部 明典〕
[川本 04a] 川本 竜史, 古川 康一: サッカーにおけるインサイド
キックスキルの解明, 第 18 回人工知能学会予稿集 (2004)
2004 年 10 月 1 日 受理
[川本 04b] 川本 竜史: ゴルフのパッティングスキルに関するバイ
オメカニクス的研究, 第 59 回日本体力医学会大会予稿集 (2004)
[Keogh 02] Keogh, E. and Kasetty, S.: On the Need for
Time Series Data Mining Benchmarks: A Survey and Em-
128 人工知能学会論文誌 20 巻 2 号 SP-A(2005 年)

著 者 紹 介 諏訪 正樹
(正会員)
1989年, 東京大学大学院工学系研究科博士課程修了(工
古川 康一
(正会員) 学博士). 日立製作所基礎研究所にて, 推論学習の研究に
従事. 1994年より, スタンフォード大学 CSLI 研究所
1965 年東京大学工学部計数工学科卒業. 1967 年同大学院 にて客員研究員. 1997年退社. 同年シドニー大学建築
修士課程 (計数工学) 修了. 同年, 電気試験所入所. 1982 デザイン学科主任研究員. 2000年より中京大学情報科
年 (財) 新世代コンピュータ技術開発機構へ出向. 1992 年 学部メディア科学科助教授, 2004年より認知科学科教
慶應義塾大学環境情報学部教授, 1994 年より同大学大学 授. 熟達, 暗黙知, 感性, アフォーダンス, 創造性は, 相通
院政策・メディア研究科教授. 工学博士. この間 , 人工知 じる概念であるという認識の下, スポーツ, デザイン, 芸術
能言語, 論理プログラミング, 帰納論理プログラミング, 暗 などを例に感性開拓や自己表現の方法論を研究している.
黙知の言語化などの研究に従事. 情報処理学会, 日本ソフ
トウエア科学会, 日本認知科学会, バイオメカニズム学会,
各会員.
曽我 真人
(正会員)
1992 年大阪大学大学院基礎工学研究科物理系専攻情報工
学分野修了. 1992 年科学技術庁特別研究員 . 1993 年和
植野 研
(正会員)
歌山大学経済学部講師. 1997 年和歌山大学システム工学
1997 年慶應義塾大学 環境情報学部卒業. 1999 年同大学 部助教授. 博士(工学). インターネットの教育への応
大学院 政策・メディア研究科 修士課程修了. 2002 年同 用, 学習支援システム, 学習コンテンツ, ヒューマンインタ
大学 大学院 政策・メディア研究科 博士課程 認知・身体科 フェースなどの研究に従事. 情報処理学会, 電子情報通信
学プログラム 単位取得退学. 2002 年より(株)東芝 研 学会, 教育システム情報学会, 人間工学会, 各会員.
究開発センター 知識メディアラボラトリー 勤務 ならびに
慶應義塾大学SFC研究所上席訪問研究所員. 現在, 器楽
演奏における動作解析, 行動パターンマイニングに関する 瀧 寛和
(正会員)
研究開発に従事. 情報処理学会, 電子情報通信学会, 日本 1978 年大阪大学基礎工学部制御工学科卒業. 1980 年同大
ソフトウエア科学会, 運動学習研究会, 各会員. 学院物理系専攻前期課程修了. 同年, 三菱電機(株). 1986
年 (財) 新世代コンピュータ技術開発機構へ出向. 1990 年
尾崎 知伸
(正会員) 三菱電機(株)帰任. 1998 年より和歌山大学システム工
学部情報通信システム学科教授. 工学博士. 人工知能, 知
1996 年慶應義塾大学 総合政策学部卒業. 1998 年同大学 識工学, 知能ロボットなどの研究に従事 . IEEE, 情報処理
大学院 政策・メディア研究科 修士課程修了. 2001 年同 学会, 電子情報通信学会, 日本バーチャルリアリティ学会,
大学 大学院 政策・メディア研究科 博士課程単位取得退学. 農業情報学会, 各会員.
2002 年より 同大学 大学院 政策・メディア研究科 講師.
博士 (政策・メディア). 帰納論理プログラミング, データ
ベースからの知識発見に関する研究を行なっている. 藤波 努
(正会員)
1986 年早稲田大学第一文学部哲学科卒業. 同年,(株)
日立製作所システム開発研究所入社. 1995 年 Center
神里 志穂子 for Cognitive Science, University of Edinburgh
博士課程修了 . 1995 年 Institut fuer Maschinelle
1998 年琉球大学工学部情報工学科卒業. 1999 年同大学
工学部情報工学科研究生卒業. 2001 年同大学院理工学研
Spracheverarbeitung, Universitaet Stuttgart 研
究員. 1998 年より北陸先端科学技術大学院大学・知識科
究科博士前期課程修了. 2004 年同大学院理工学研究科総
合知能工学専攻博士後期課程終了. 工学博士. 同年,日本 学研究科助教授. Ph.D. (Science and Engineering).
学術振興会特別研究員に採用. 運動計測, 運動解析, 感性 この間, 知識工学, 自然言語意味論, 音声翻訳, 身体技能な
工学などの研究に従事. システム制御情報学会, 情報処理 どの研究に従事. 情報処理学会, 言語処理学会, 各会員.
学会, 感性工学会, 各会員.
堀 聡
(正会員)
川本 竜史 1982 年 3 月東京工業大学総合理工学研究科電子システム
1996 年慶應義塾大学環境情報学部環境情報学科卒業. 1998 専攻修士課程了. 同年 4 月三菱電機(株)入社, 同社生産
年東京大学院総合文化研究科生命環境科学系修士課程 (学 技術センター勤務. 1988 年 PURDUE 大電気工学科修
士課程了. 博士 (工学)(東京工業大学). 2001 年4月よ
術) 修了. 1999 年慶應義塾大学総合政策学部助手 2001
り ものつくり大学 製造技能工芸学科助教授. 知識工学,
年東京大学大学院総合文化研究科生命環境科学系博士課程
(学術)修了. 2001 年より慶應義塾大学総合政策学部専任 データベース, 確率・統計の保守・診断およびアフターサー
講師(有期)学術博士. この間, バイオメカニクスを中心 ビスへの応用に関する研究開発に従事 . 電子情報通信学会,
としたスポーツ科学研究に従事. J リーグクラブ育成組織 電気学会,IEEE(SM), 各会員.
のフィジカルアドバイザーも務める. 日本バイオメカニク
ス学会, 日本体力医学会, 日本体育学会, 日本フットボール学会, 各会員. 本村 陽一
(正会員)
1993 年電気通信大学大学院電子情報学専攻修士課程修了.
渋谷 恒司 同年通産省工業技術員電子技術総合研究所に入所 . 1999
1991 年早稲田大学理工学部機械工学科卒業. 1996 年同 年 アムステルダム大学 招聘研究員. 現在, 独立行政法人
大学院博士後期課程単位修得退学. 同年, 早稲田大学助手. 産業技術総合研究所デジタルヒューマン研究センター主任
1998 年博士 (工学 ). 同年龍谷大学理工学部助手, 2002 研究員. この間, 確率モデルの統計的学習・確率推論, 知的
年より同大学理工学部講師, この間, バイオリン演奏にお 情報システム, 人間の評価構造のモデル化, 行動理解など
けるスキルと感性に関する研究等に従事 . 日本機械学会, の研究に従事. 電子情報通信学会, 日本行動計量学会 , 日
バイオメカニズム学会, 日本ロボット学会, 計測自動制御 本神経回路学会, 日本認知科学会, 各会員.
学会, 日本人間工学会, 日本感性工学会, 等の各会員.
森田 想平
(正会員)
白鳥 成彦
(学生会員) 2002 年 3 月慶應義塾大学 環境情報学部卒業. 2004 年
1999 年千葉大学工学部工業意匠学科卒業. 2004 年慶應 4 月慶應義塾大学 大学院 政策・メディア研究科 修士課程
修了. 現在, 慶応義塾大学 SFC 研究所 所員. 時系列デー
義塾大学大学院 政策・メディア研究科修士課程修了. 現
在同大学 政策・メディア研究科 博士課程在学中. 麻酔ナ タマイニングに関する研究に従事している.
ビゲーションシステムに関する研究に従事. 情報処理学会
会員.

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