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【転生パロ】生まれ変わっても貴方にだけは会いたくなかった
【転生パロ】生まれ変わっても貴方にだけは会いたくなかった
巨人最終掃討作戦の日、それは奇しくも初代リヴァイ班員の命日だった。 グンタ、エルド、オルオ、ペトラが亡くなった後も何度か精鋭を揃えリヴァイ班を結成したが 最終的には誰ひとり生き残る事はなかった。結局この数年はリヴァイとエレンふたりだけで行 動していた。 そんな班員達の墓を古城近くに建てた。といっても遺品や遺骨は全て家族に渡しているので土 の中には何もない。ただ十字の木がたてられそこに調査兵団の緑の外套を掛けて花が添えてあ るだけの、本当に形だけの墓だった。 作戦前日エレンが新しい花を持っていくとそこにはリヴァイがいた。偶に花を手向けにきてい るのは知ってはいたが実際に目にするのは初めてだった。 そこからポツポツと他愛ない話をしていく。ただエレンがひとりで喋っていただけなのだが、 そんな会話の中でエレンは3つリヴァイと約束した。ひとつは翌日の作戦でお互い必ず生き残 るというもの、これは果たす事が出来た。
しかし残りの2つは果たす事が出来なさそうだ。
外の世界はとても広かった。先なんてとてもじゃないが見えなくて、進んでも進んでも道は広 がっていた。
緩やかにしかし確実に時が流れた、遥か未来。エレンはまたこの世に生を受けた、以前の生の 記憶を伴って。
人は輪廻転生するという。色んな宗教の教えになっているようだが簡単に言えば死んであの世 に還った霊魂が、この世に何度も生まれ変わってくることらしい。
「アルミンはやっぱりものしりだ」 「そんなことないよ。でもまたエレンにあえてよかった」
家の近くの幼稚園で嘗ての幼馴染みと再会したのもその輪廻転生によるものなのか、よく分か らないがただただエレンは嬉しかった。アルミンにも所謂前世の記憶がありふたりが顔を合わ せた瞬間号泣して先生を困らせたのはついこの間の話だ。 それからそれが当たり前のようにふたりでよく遊んだ、前世でもそうだったように。 幼稚園にミカサはいなかった。まだ幼い自分達に探す手立てはなく時間だけが過ぎた。 小学校へ入学する時、ミカサに会えた。 ミカサはエレンとアルミンに気付くと泣きながら飛び付いてきた。どうやらミカサにも記憶が あるらしい、ミカサの温もりを感じながらそんな事を考えたがすぐに再会の喜びの感情に掻き 消されエレンも少し涙した。 それからはやはり三人で過ごすようになった。生まれ変わってもミカサに勝てないのは悔しか った、アルミンの知識の深さに感心した、どうしようもなく平和な日常がただ愛しかった。
中学生になるとまた懐かしい顔触れと出会えた。 驚く事に同級生の半数近くが前世で同期であった104期生だった。 皆が皆前世の記憶がある訳ではなかったが取り分け仲の良かったと言うべきか、ただ縁が濃か ったと言うべきか、そんな仲間には記憶があった。 サシャはやはり食い気が凄かった、食べ物に困らない時代で彼女が困っているのは小遣いが食 欲に間に合わない事だった。 マルコは変わらず優しい心を持っていた、かと思えば人を纏める事が出来る優秀な人間だった。 クリスタは昔と変わらない女神の様な微笑みを湛えて、それでも強く自分の意志を持っていた。 コニーも変わらず人の意見に流されやすいが、人の弱さや優しさに敏感で手を差し伸べる事が 出来た。 ユミルは人と一歩距離を置いていたが、偶にその線を自ら飛び越え自分の本心をぶつけに来て くれた。 ジャンは相変わらずエレンに対してのみ喧嘩腰だった、でも八つ当たりの言葉の中にも真っ直 ぐな言葉や正論がしっかりとあった。 アニ、ライナー、ベルトルトはいなかった。前世では遺恨を残していたがまた会って話がした かったのにと残念に思った。 それからは自然そいつらと一緒に何かする事が増えた。 サ シャとコニーが馬鹿やって同じように転生したキース元教官に惨い罰を与えられたり、クリ スタの隠し撮り写真を売り捌いていた写真部にユミル筆頭で皆で乗り 込んだり、同じチームで 試合していた筈のジャンと喧嘩になって仲間なのに互いからボールを奪いあったり、それを見 ていたミカサにため息をつかれたり、深夜 の学校のプールに忍びこもうとしてマルコやアルミ
「そういえばもう調査兵団に入ってる頃だよな」 誰からともなくその話は始まった。 エレンがピクリと反応したのに気付くものはおらずそのまま会話は進んでいく。 「今思えば皆よくあの調査兵団に入ったよな」 「あの時はただそうするしかないって思ったから」 「サシャとコニーは泣いてたよな」 「泣いてねぇよ!あれは、その、鼻水が目から出ただけだ!」 「そうです!鼻水です!」 「それならクリスタも泣いてたよ」 「ユミルはなんで言うの、もう!」 「ミカサは平然としてたよね」 「エレンが調査兵団に入ると言った時から覚悟は出来ていた」
「そろそろ団長達にも会うのかな?」
「団長か。前は見ただけで話した事はないからな」 「俺も少し話した位だったぞ?」 「ミケさんやハンジさんとは結構話したんですけど」 「ハンジさんか…」 「…強烈だったよね」 「強烈といえばリヴァイ兵長だろ?」 ガタンっ 何事だと思い皆音の発生源を見れば、ミカサが椅子を倒し立ち上がっていた。 「あのチビの名前を出さないで」 「っだから、兵長のことそんな風に言うのやめろって、言ってるだろ」 エレンは絞り出すように言葉を口にした。昔と変わらないミカサのリヴァイへの蔑称につい昔 の癖で諫める口調になってしまう。 皆ミカサの剣幕に圧倒され何かを感じとったのか話題は近々控えているテストの話へと変わり エレンは内心ほっと息をついた。
朝ミカサやアルミンと登校して教室の前で別れ、エレンが教室へ入ると珍しくコニーが既に席 に着いていた。 「おはよ、珍しいなこんなに早く来るなんて」 「はよ。いやー?実はキース先生の課題出てた事忘れててさ」 鈍い鈍いと周りから散々言われているエレンであったが流石にコニーが何を望んでいるのか察 してしまう。 「…見せねーぞ」 「そこをなんとか!」 「後でジャンに見せて貰えばいいだろ…」 「あいつ大会近くて朝練ギリギリまでするからそれから借りると間に合わないんだよ!」 「、ハァ…分かったよ。そのかわりジュースな」 「おう!さんきゅ!」 そう言ってエレンがノートを差し出すとコニーは意気揚々と写し始めた。 「丸写しはやめろよ、バレるから」 「分かってるって……あ!」 「なんだよいきなり大きな声出して…」 「そういえば、昨日学校の帰りにミケさんとハンジさんに会った」 「……は、」 コニーのその言葉に一瞬思考も動作も全て停止する。コニーはそんなエレンに気付く事なくノ ートに目をやりながらペンを動かし、口も動かしながら器用に全ての作業を進めていく。 「ミケさんが臭いで俺だって分かったんだと、あの鼻どうなってんだろうな。ふたり共記憶あ ってさ、周りの人間も前の面子がほぼ揃ってるらしいぞ」 俺達と一緒だよな、コニーはカラカラと笑っているがエレンはそうだなと乾いた笑いしか出な かった。
コニーがハンジ達に会ったという駅に近付かない様にしていたが、そこまで気を回す必要はな
いのかもしれないと自嘲した。 ハンジやミケがコニーの連絡先を聞かなかったのは今世では関わるつもりはないという意思の 表れなのだろう。 (それにハンジさんやミケさんが居ても、兵長がいるとは限らないし…) もしかしたら生まれてない可能性もあるしどこか別の遠い場所で記憶もなく育っているかもし れない。それならそれでいいじゃないか、どのみち自分には合わせる顔なんてないのだから。 考えれば考える程胸の空虚感はますます広がり、エレンは無意識に胸を掴み首を傾げる。 「エレンどうかしたの?」 「いや、悪い。少し考え事してた」 これこっちでいいのか?と黒いファイルを振りながらアルミンに問えばそこの棚で大丈夫と返 ってくる。 アルミンから頼まれてた資料室の手伝いの最中に少し思考に耽りすぎた。いかんいかんと頭を 振り手際よく本やファイルを棚に戻していく。 窓からは心地良い風が吹いており、カーテンが靡く。下校中の生徒の喧騒も一緒に舞い込んで 不思議に思う。 「何か煩くないか?」 「そういえば、そうだね……あれ?」 「どうした?」 喧騒の原因を確める為に窓から外を見るアルミンが一点をただ見つめる。 「あの人、って…」 「…アルミン?」 固まるアルミンにいよいよ堪らなくなり名を呼びながらエレンも同じ窓から外を見る。
「…まさか、そんな…」
てその場から去った。お世辞にも人相がいいとは言えないリヴァイなのできっと怯えられてい るのだろう。 (不機嫌そうな顔、変わらない…) 遠巻きに見ている生徒がざわついている中、彼に近寄るひとりの女生徒がいた。その女生徒の 後ろ姿に既視感を覚えながらもリヴァイと二、三やり取りをしたあとふたりして校舎に向かっ て歩を進めた。 「クリスタか?…………っ!アルミン、悪い!俺帰る!!」 「ちょっと、エレン!」 アルミンが何度も自分の名前を叫んでいたようだったが今はそれに応える時間すら惜しかった。 これはエレンの憶測でしかないがもしかしたらリヴァイは自分に会いに来たのでは、そう考え が至ると自然体は動き出す。
リヴァイから逃げる為に。
それにしてもハンジやミケからコニーの事を聞いたに違いないが 、でもなんであの人がこんな所にいるのか。
(…兵長、俺は)
「生まれ変わっても、貴方にだけは…会いたくなかったっ!」