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[scene.

113]

1. ひたぎ - デートをします。
2. 暦 - はい? えっと……あれ?
3. ひたぎ
思考
- ふむ。あーん。
4. 暦 - 何、このシチュエーション……!
5. 漫画とかでよく見るラブラブな恋人同士のラブラブイベントの
6. 一つとしてよく知られているけど、なんだこれ、全然嬉しくない、
7. 嫌っていうか、むしろ普通に怖い!
8. ひたぎ - どうしたの? 阿良々木くん。あーん、てば。
9. 暦 - あ、あーん。
10. ひたぎ - えい。
11. ふ、ふふふ。ふふふ……あはは。はは。
12. 暦 - ……お前の笑顔が見れて僕はとても嬉しいよ。
13. ひたぎ - 阿良々木くん、ほっぺたにご飯粒がついてるわよ。
14. 暦 - お前がつけたんだ。
15. ひたぎ - とってあげる。
16. はい、とれた。
17. さて、デートをします
18. 違うわね。こうじゃないわ。デートを……
19. 暦 - ……?
20. ひたぎ - デートをして……いただけませんか?
21. デートをし……したらどうな……です……
22. 何よ? 嫌なの、阿良々木くん?
23. 暦 - いや、嫌じゃないけど……
24. ひたぎ - そう。では私とデートをしなさい、阿良々木くん。
25. 暦 - 最終的に、そう落ち着くか……
26. ひたぎ - 何か文句……いえ、何か質問はある?
27. 暦 - ありません……
28. ひたぎ - そう。それじゃ、
29. 私は放課後、適当に口実を作って先に帰って用意しておくから。
30. 思考 阿良々木くんは文化祭の準備を終わり次第、私の家まで来て頂戴。
31. 暦 - よしやああああ!
32. こうして今日、六月十三日は恋人と初めてのデートをした。
33. 僕にとって記念すべき日になるはずだった、のだが……
34. 暦 - この前で千石や羽川と話し込みすぎたわ。
35. ちょっと遅かったかな?
36. ひたぎ - 思ったより早かったわね。
37. まあ、いいわ。じゃあ行くわよ。ついてらっしゃい。
38 暦 - …………………………
39. ひたぎ - どうしたの、阿良々木くん?
40. 随分と無口じゃないの?
41. 暦 - あのな……お前、今の状況、わかってんのか?
42. ひたぎ - わからないわね。今とはいつ。状況とはどんな漢字を書くのかしら?
43. 暦 - そんなところからわかってねえのかよ!
思考
44. 暦 - 初デートに彼女の父親が同伴って……
45. 拷問みたいなデートは……何の記念は、これ?
46. ひたぎ - 阿良々木くん。
47. 初めてのデートだから緊張するのはもっともだけれど、
48. でも、そんなことじゃ、持たないわよ。夜は長いのだから。
49. 暦 - ああ……
思考
50. 暦 - 僕は今初めてのデートだから緊張しているわけじゃない……!
51. ひたぎ - ねえ阿良々木くん。私のこと、好き?
52. 暦 - …………!
53. ひたぎ - 答えてよ。私のこと、好き?
54. 何よ。答えてくれないの?
55. 阿良々木くん、まさか私のこと、好きじゃないのかしら?
56. 暦 - す、好きです……
57. ひたぎ - そう。私も好きよ。阿良々木くんのこと。
58. 暦 - どうも……ありがとう。
59. ひたぎ - いえいえ。
60. 阿良々木くん、本当に静かね。とても口数が少ないわ。
61. いつもはもっとお喋りしてくれるのに、今日は機嫌が悪いのかしら?
62. 暦 - 機嫌がどうとかじゃなくてな……
63. ひたぎ - ああ。頭が悪いのね
64. 暦 - 混乱に乗じて言いたいだけのことを言ったな!
65. ひたぎ - 阿良々木くんは突っ込みだけはいつだって腕白なのね。いいわ。
66. じゃあ親切にも、私から話を振ってあげます。
67. 阿良々木くんはそれに応えてくれればいいわ。
68. 私のどういうところが好き?
69. 暦 - 好きじゃないところははっきりしてるよ!
70. くそう……本気で楽しみにしてたのに……
71. 夢が叶ったくらいの気持ちでいたのに……!
72. ひたぎ - 夢だなんて、大袈裟な。
73. 知っている? 阿良々木くん。人に儚いと書いて……
74. あれ、なんだったかしら?
75. 暦 - 多分僕だな……
76. おい戦場ヶ原……お前、本当にどういうつもりなんだよ?
77. ひたぎ - 戦場ヶ原?
78. それは私のことを指しているのかしら。
79. それとも、お父さんのことを指しているのかしら?
80. お父さん。阿良々木くんが呼んでいるわよ。
81. 暦 - ひたぎさん! 僕が呼んだのはひたぎさんです!
82. ひたぎ - 何かしら。阿良々木くん?
思考
83. 暦 - お前は呼ばないのな。別にいいけどさ。
84. 暦 - で、ひたぎさん。改めて訊くけど……聞かせてもらうけれど。
85. お前、どういうつもりなんだよ。何を企んでいるんだ?
86. ひたぎ - 何も企んでなんていないわよ。
87. そんなことより阿良々木くん。
88. 黒岩涙香という高名な推理作家がいるんだけれど、
89. この人の名前、分解すると『黒い』『悪い』『子』になるのよ。
90. これってわざとやってるんだと思う?
91. 暦 - どうでもいいよそんな話題! 黒い子も悪い子もお前のことだ!
92. ひたぎ - 親の前で酷いことを言うわね。
93. 暦 - うっ……!
94. ひたぎ - お父さん。あなたの娘は黒い子で悪い子らしいわ。
95. あら。また静かになっちゃったわね。少しいじめ過ぎたかしら?
96. 阿良々木くんって反応がいいから、
97. ついつい凹ましたくなっちゃうのよ。
98. 暦 - その台詞に何より凹むよ……
99. お前は、僕のどういうところが好きなんだ?
100. ひたぎ - 優しいところ。可愛いところ。
101. 私が困っているときにはいつだって
102. 助けに駆けつけてくれる王子様みたいなところ。
103. 暦 - 僕が悪かった!
104. ひたぎ - そういえば、ゴミ……いえ、阿良々木くん。
105. 暦 - 今お前、自分の彼氏をゴミと言いかけたか?
106. ひたぎ - 何を言っているの、いわれのない言いがかりはやめて頂戴。
107. そんなことより阿良々木くん、この前の実力テスト、どうだったの?
108. 暦 - あん?
109. ひたぎ - ほら、私が、私の家で、二人きりで、昼となく夜となく、
110.
思考 散々面倒見てあげたじゃない。
111. 暦 - 何故わざわざそんな言い方をする……。
112. ひたぎ - で、どうだったの?
113. 暦 - うん、思ってた以上の点が取れたよ。
114. 元々得意教科であったはずの数学ですら、
115. いつもより伸びてたくらいだった。
116. お前のお陰だ、ありがとう、戦場ヶ原
117. ひたぎ - お父さん、
118. 阿良々木くんがお父さんにお礼を言っているみたいなのだけれど、
119. 聞いてあげてくれないかしら?
120. 暦 - ありがとうひたぎさん!
121. ひたぎ - 本当は答え合わせは、
122. 試験が終わった直後にやるのがいいのだけれどね。
123. まあ、今の阿良々木くんにそこまで求めるのは酷よね……
124. でも、それなりの点数が取れているじゃない。
125. 自分で教鞭をとっておいてなんだけれど、ちょっと意外だわ。
126. 暦 - 意外か?
127. ひたぎ - ええ。阿良々木くんにしては面白くもなんともないオチね。
128. 暦 - 僕は笑いを
129. 取りたくてお前に勉強を教えてもらったわけじゃねえんだよ!
130. ひたぎ - てっきり、『あんなに勉強したけれど、
131. いつもよりむしろ点数は悪かったです』的な展開になる
132. と期待していたのに、ある意味がっかりだわ。
133. 暦 - そんな展開を求める方がよっぽど酷だ!
134. ひたぎ - あらそう。
135. でも、本当に大したものだわ。褒めてあげる。
136. その調子なら、阿良々木くん、
137. もっと上を目指せるかもしれないわよ。
138. 暦 - 上を――ね?
139. ひたぎ - 阿良々木くんさえよければだけれど、
140. これからも、私がお勉強、教えてあげてもいいのよ。
141. 暦 - それは――願ってもない話だな。
142. ひたぎ - あらそう。
143. じゃあこれからは毎日、私の家でお勉強ね。
144. 暦 - ま、毎日っ!?
145. 頭のいい奴は、やっぱそれくらい勉強してるもんなんだなあって。
146. ひたぎ - いえ?
147. そんなの、阿良々木くん向けのプログラムに決まってるじゃないの。
148. 頭のいい人間は勉強する前から頭がいいのよ。
149. 暦 - でも、羽川は、毎日のように勉強してるみたいだからな。
150. ひたぎ - 羽川さんがしている『勉強』は、
151. 阿良々木くん、私達がいうところの『勉強』とは、
152. 残念ながらランクが違うのよ。
153. 羽川さんは、本物よ。私達とは世界が違う。
154. 暦 - ……ふうん。
155. けど、羽川だって常に満点ばかり取れるわけじゃないだろ?
156. いや、まあ、大抵は満点ばかりみたいだけど……
157. ひたぎ - 羽川さんが満点を取れない場合、
158. それは試験問題の方が出来損ないなのよ。
159. ……ただ、どうなのかしらね。
160. それって、どれくらいのプレッシャーになるのかと思うと……
161. あまり素直に羨ましいとは言えないわね。
162. 暦 - プレッシャーか……?
163. ひたぎ - あるいは、ストレス。
164. 暦 - ストレスね。
165. ひたぎ - そんな本物に及びもつかない、底辺を這い蹲る阿良々木くんは、
166. こつこつと努力に努力を重ねるしかないのよ。
167. だから、これからは毎日、私の家でお勉強ね。
168. 暦 - ああ……そうさせてもらうよ。
169. ひたぎ - たまになら、神原の家でもいいわね。
170. 暦 - 何故ここで神原が出てくる?
171. ひたぎ - あの子とも少しは遊んでやらなくちゃいけないのよ。
172. そういう約束をしたから。
173. 阿良々木くんだって、神原とは遊びたいって思うでしょう?

174. 暦 - そりゃな。面白い奴だし。
175. そうだ、神原のことなんだけど……
176. ひたぎ - 神原がどうかしたの?
177. 暦 - あいつはどうしてあんなにエロいんだ?
178. ひたぎ - エロい? 神原が?
179. 暦 - 違うってのか?
180. あの忍野ですら、この間話したときに、
181. 神原のことは
182. スポーツキャラじゃなくてエロキャラだと認識していたぞ。
183. ひた - そうかしら。それは男性側の視点から見るからそう映るんじゃない?
184. あの子はただ、自分に正直なだけよ。
185. 暦 - そうなのか……
186. ひたぎ - 私としては、
187. 私の可愛い後輩がエロいなどという偏見に見舞われているのを、
188. 看過できないわね。
189. 暦 - 看過できなきゃどうするんだよ?
190. ひたぎ - どうするかって? 阿良々木くんの中の判断基準、
191. 価値基準を揺るがせておくのよ。
192. そうすれば神原のことなんて、
193. むしろ純粋無垢な女の子に見えてくるわ。
194. ――××××
195. 暦 - …………!
196. ひたぎ - ××××を××××に××××するから××
197. ――××で××××――×××に××――
198. 暦 - う……うう! や、やめ――
199. ひたぎ - はむ。
200. といった感じでどうかしら、阿良々木くん?
201. 暦 - もう好きにしてくれ……ひたぎさん。

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