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生物の基礎Ⅱ(B)②

P129

ある種の生物において,細胞の運命は,卵割中に獲得した
卵細胞質の分配の程度に依存する(モザイク的)。このような
細胞は,他の細胞とは独立して分化し,発生する。

軟体動物,被嚢類,線形動物,昆虫

発生の大部分はモザイク様式であるが,ある程度の相互作用
的決定もみられる。

誘導的相互作用が細胞運命を決定する機構をもつ生物
について学んでみよう。

P129 P129

動物細胞層

動物細胞層

ウニの卵割は4細胞になるまでは動植物軸に沿って起きる(経卵割)。
したがって,いずれの割球も動物半球と植物半球の細胞質をもつ。

P129 図6・23
P129

(A)ウニ卵の各半分(卵
片)が動物極および植
物極細胞質を含むよ
うに経線で分割する
と,小さいが正常に
見える幼生が発生し
た。
(B)ウニ卵を動物極と植
物極に分け,それぞ
れの半分を精子で受
精させると,動物極
を含む半分は繊毛を
もった永久胞胚を,
植物極の半分は広
がった腸をもつプル
テウス幼生をつくっ
た。

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生物の基礎Ⅱ(B)②

図6・23 図6・24
P129 P129
(A) (B)
(A)動物極の4つの割球
を植物極から分離
し,半分をそれぞ
れ発生させると,
動物極細胞は繊毛
をもった永久胞胚
を形成し,植物極
細胞は広がった腸
をもつ幼生をつく
る。
(B)8細胞期胚をそれぞ
れの半分が動物極
細胞と植物極細胞
を含むように分け
ると,小さいが正
常に見える幼生が
発生する。

図6・25
P131

(A)初期胞胚期の予定神経外胚葉
を,別の同じ時期の胚の予定
表域に移植すると,細胞運命
が変わって表皮になる。
(B)発生が進んだ後期嚢胚期の胚
しかし,同様の実験を縦方向に,ただし第1卵割面に垂直
に(将来の背側と腹側領域を分離する様に)結紮すると, の予定神経域を同じ時期の予
全く異なった結果が得られた。 定表皮域に移植しても,細胞
運命はもはや変わらない。

||
分化の道筋が最終的に制限されて,他のタイプの細胞には
分化できなくなった状態

図6・26 図6・27
P131 P132

結果

予定外胚葉と予定内胚葉を組み
合わせると,筋肉,脊索,間充織
② ① などの中胚葉組織ができた。

結論
中胚葉は二種類の細胞間の
相互作用によって作られる。

・ (Nieuwkoop, 1965)

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生物の基礎Ⅱ(B)②

P132

中胚葉誘導は,動物半球にある細胞の性質をより植物極側
(内胚葉側)の性質をもつようにする現象

FGFファミリーに属する因子(1987年)
(分子量13,000のペプチド)
Fibroblast Growth Factor

TGF-βファミリーに属する因子
(分子量24,000のペプチド)
Transforming Growth Factor
中胚葉誘導
内胚葉誘導← ←注目
注目すべき現象
すべき現象
動物極細胞を植物極の各割球と結合させた。再構築後の誘導の結果は右表
に示してある。最も背側にある植物極細胞のD1割球が動物極細胞を誘導し 現在: Vg1,nodal(ノダール)など
て背側中胚葉を形成させる能力が高い。

P132

胚のある部域が別の部域に影響
を及ぼして,その発生運命を変
える現象

そのような活性をもつ部域

アニマルキャップを処理するアクチビンの濃度が低いと表皮や腹
側の中胚葉が,高いと筋肉や脊索などの背側の中胚葉が形成さ
れるようになる。

図6・28 図6・29
P132 P133

(A) 粘着器と口器
(A)初期嚢胚の原口背唇部を,別の初期嚢胚
の正常なら腹側表皮になる部位に移植し
た。
(B)組織が陥入して第2次原腸を形成し,次 (B)粘着器,鼻,眼
いで第2の胚軸を形成した。
(C)新しい神経管,脊索,および体節には移
植組織(赤色)と宿主組織の両方が認め (C) 耳胞(聴覚器)
られた。
(D)最終的には,宿主にくっついて第二の胚
(D) 胴の背側と尾の中胚葉
(二次胚)が形成された。
の形成を誘導

嚢胚形成を完了した胚の原腸蓋を初期
嚢胚の胞胚腔に移植する(赤色で示す) 。
(Spemann & Mangold, 1924) Otto Mangold, 1933

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生物の基礎Ⅱ(B)②

P134 図6・30
P134

(A)神経管の前方で,前脳の一
部が両側に向かって袋状にせ
り出し,眼胞になる。
(B)眼胞は外胚葉と接し,これ
を誘導して将来水晶体(レン
ズ)に分化する水晶体板(レン
ズプラコード)を形成させる。
(C)水晶体板は逆に眼胞を誘導
して陥入させ,二重の壁から
なる眼杯を形成させる。
(D)眼杯は接している水晶体板
をくびり取って,これが水晶
体になる。これが,残った外
胚葉に接し,この部分が角膜
になる。
(E)眼杯はさらにくぼみ,外側
が色素上皮層,内側が網膜と
なる。

P134 P134

シグナル
シグナル伝達 伝達分子
細胞間コミュニケーション
細胞認識と接着
細胞外基質と細胞運動 細胞膜を通過 細胞膜を通過
できる できない

=細胞内で情報を伝達する仕組み a. ステロイド b. イノシトール c. チロシン


TGF-b
d. TGF-
ホルモン受容体 脂質 キナーゼ

transforming growth factor


形質転換増殖因子 ・

P135 P134
図7・22
P155

1.内分泌細胞で分泌されたステロイドホ
ルモンは標的細胞に運ばれる。
2.ステロイドホルモンは小分子量で,脂
溶性なので細胞膜を自由に通過できる。
3.ステロイドホルモンは細胞質を通過して
核に到達する。
4.核内で生じたホルモン-受容体複合体
は,特異的なDNA配列に結合する。
5.その結果,特異的な遺伝子が活性化し,
mRNAが転写される。 サイクリック AMP (cAMP )
6.合成された特異的なタンパク質がホル
タンパク質キナーゼを活性化して,種々のタンパク質をリン酸化する。
モンとしての反応を誘起する。
イノシトール 1,4,5-トリスリン酸 ( IP3 )
ステロイドホルモン受容体=ホルモン結合領域+DNA結合領域+ 細胞内のCa2+濃度を上昇させる。Ca依存性の酵素群が活性化する。
転写活性化領域

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生物の基礎Ⅱ(B)②

活性型 教科書
アデニール・シクラーゼ になし

①シグナル分子はGタンパク質
に働きかけ,アデニール・シク
ラーゼを活性化してcAMPを合
成させる。
②合成されたcAMPがキナーゼ
1.内分泌細胞によって分泌されたホルモン(図中H)は血流により標的細胞に運ばれる。
2.ペプチド・ホルモンは標的細胞の受容体(R)に結合する。 (PKA)を活性化する。
3.ホルモン受容体複合体は,細胞内にあるアデニール・シクラーゼを活性化し,ATPを
cAMPへ変換する。
4.cAMPはタンパク質キナーゼを活性化する。
5.それにより特定のタンパク質がリン酸化される。
6.標的細胞の活性に変化が生じる。

図6・32 図6・31
P135 P134

Caイオンが第2メッセンジャー

受容体タンパク質の細胞外領域にEGFが結合すると,
シグナルが受容体に結合すると,Gタンパク質はGTPと結合し, チロシンキナーゼが活性化され,これにより特定の
ホスホリパーゼCを活性化する。これにより,IP3とDGが産生され, タンパク質がリン酸化される。
貯蔵Caが放出される。DGはCキナーゼを活性化する。

図6・33
P136

カルシウム calcium と接着 adhere に


ちなみ,その発見者である竹市雅俊ら
により命名

Bone Morphogenetic Protein


骨形成タンパク質

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生物の基礎Ⅱ(B)②

図6・34
P136
(A)中胚葉細胞は表皮
細胞の内側に接着
する。
(B)中胚葉細胞は内胚
葉細胞の内側に移
動する。
(C)表皮細胞は表面に,
内胚葉細胞はその
内部に,中胚葉細
胞はこの両胚葉の
間に配置する。
(D)表皮細胞は表面に,
神経板細胞は内側
に神経管のような
カドヘリンは,細胞膜を貫通する膜タンパク質である。向
構造をつくった。 かい合う細胞の間でカドヘリン分子同士が結合することに
(E)外側に表皮,中心 より,細胞と細胞を接着させている。カドヘリンの細胞質
部に神経組織,両
者間に中胚葉性の
側にはp120カテニンとβカテニンが直接結合し,後者には
体節と間充織様の αカテニンが結合して,さらにαカテニンはアクチンフィ
構造をつくった。 ラメントと結び付いている。

Epithelium=上皮
Basal Lamina=基底層
Collagen=コラーゲン

同じ種類のカドヘリン同士が特異的に結合する。

図6・35 図6・36
P137 P138

アルギニン-グリシン-アスパラギン酸
(アミノ酸の1文字記号ではRGD)

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