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Perreault (2018)Essentials of Marketing より

9. クワイエット・ナイト・モーテル

トリスタンは、自信が経営しているクワイエット・ナイト・モーテルの経営方法を少し変
えるべきか、それともデイズインやホリデイインのような全米ビジネスホテルチェーンに
参加すべきかを決めかねている。現在の経営では赤字なので、すぐに決断しなければならな
い。しかし、どちらのチェーンに加盟するにしても、新たな設備投資を含めたかなりの変更
が必要になる。

トリスタンは、産業機械の大手メーカーで生産本部長として成功した後、2 年前に完成し
たばかりの 60 室のビジネスホテルを購入した。彼は、生産本部長としての仕事よりも過酷
ではない、面白い仕事を探していた。クワイエット・ナイト・モーテルは、急速に拡大する
リゾート地に近い非常に小さな町の端にあり、高速道路から約 1.5km 離れている。観光地
から16キロのところにあり、そこは全国的にフランチャイズ展開されているフルサービ
スのリゾート用ビジネスホテルがあるところで、この地は休暇に適している。この場所には、
ベストウエスタン、ラマダイン、ヒルトンイン 1のほか、家族経営でサービス限定の低価格
型ビジネスホテルや趣のあるベッド&ブレックファスト 2などがある。クワイエット・ナイ
ト・モーテルの近くにある高速道路は、いくつかの大都市圏に挟まれたリゾート地であるた
め、交通量が非常に多い。高速道路からの分岐点周辺は開発されていない。高速道路に沿っ
た観光地の唯一の宣伝は、分岐点付近にある 2 つの大きな看板だ。この看板には、この地域
の一般的な名前があり、そこまで西に16キロとだけ書かれている。この看板は観光地の観
光局が管理している。また、州の交通局が、この分岐点の近くにガソリンや食料、宿泊施設
があることを記号で示した小さな看板を管理している。トリスタンは、自分の敷地内にある
2 つの看板以外、クワイエット・ナイト・モーテルの宣伝看板を持っていない。リゾート地
に向かう人々が自分のモーテルを偶然、見つけてくれるのを頼りにしているのだ。
当初、トリスタンは自分がクワイエット・ナイト・モーテルを購入したことにとても満足
していた。彼は旅行好きで、いろいろなホテルやビジネスホテルに泊まった経験があるので、
旅行者が求めるものについて明確な考えを持っていたのだ。比較的シンプルでモダンな部
屋に、快適なベッド、標準的な風呂設備、無料のケーブルテレビがあれば、ほとんどのお客
様に受け入れられるだろうと考えていた。また、プールなどの収益につながらない設備は必
要ないと考えていた。また、レストランは経営上の大きな問題になると考えていた。しかし、

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ベストウエスタン、ラマダイン、ヒルトンインは全米有数のビジネスホテルチェーン。
2
ベッドアンドブレックファストとは、民宿のような家族経営で行われている低価格の宿
泊所。宿泊と朝食の提供ということが名前の由来である。
多くのお客さまから「朝食に便利な施設がない」というご意見をいただいたので、トリスタ
ンは受付の隣の部屋で、コーヒー、ジュース、ロールケーキなどのコンチネンタルブレック
ファスト 3を無料で提供した。
最初の 2 年間は、トリスタンと彼の妻が受付とオフィス業務、そして経営全般を担当し
ていたこともあり、かなり順調に進んだ。最初の 1 年間は、稼働率が 55%前後で安定し始
めた。しかし、業界全体から見て、レストランのないビジネスホテルの平均値 68%を大き
く下回っていた。操業開始から 2 年が経過した時点で、トリスタンは稼働率が平均を下回
っていることに不安を覚えた。そこで彼は、独立性を保ちつつ、稼働率と収益性の両方を向
上させる方法を模索することにした。
トリスタンは、フルサービスのリゾートビジネスホテルとの直接的な競争を避けたかっ
た。彼は、看板やパンフレットで価格訴求を強調し、フルサービスのリゾートモーテルが抱
える「不必要な経費」をすべて回避できたことを誇りに思っていた。その結果、トリスタン
は、フルサービスのホテルよりも約 40%、リゾート地の最安値のビジネスホテルと同等の
非常に控えめな価格で宿泊を提供することができた。クワイエット・ナイト・モーテルに宿
泊 さ れ た お 客 様 か ら は 、「 非 常 に 満 足 し て い る 」 と の 声 を い た だ い て い る 。 ま た 、
TripAdvisor.com や Hotels.com などのオンラインレビューでは、数は多くないものの、お
おむね好意的な評価を得ていた。しかし彼は、車で駐車場に入ってきて、周囲を見回したも
のの宿泊まで至らない人が多いように思えて困っていた。
トリスタンが特に興味を持ったのは、地域の観光局が最近行った調査の結果だった。この
調査では、地域の観光客について次のような情報が得られた。
1.この地域を訪れる観光客の 68%は、子供のいない若いカップルや年配の夫婦である。
2.旅行者の 40%は 60 日以上前に休暇の計画を立て、部屋を予約する。
3.訪問者の 66 パーセントは、同じ場所で 3 日以上滞在する
4.78%の人が、宿泊施設を選ぶ際に娯楽施設を重視すると回答した
5.訪問者の 13%は、年間 27,000 ドル未満の世帯収入があった
6.訪問者の 38%は、この地域を初めて訪れたと答えた。

考えた末、トリスタンは、より多くの顧客を獲得し、競争の激化から自社ビジネスホテル
を守るために、全米規模のビジネスホテルチェーンとの提携を真剣に検討し始めた。この地
域では、さらに多くのビジネスホテルが計画されているという噂が絶えなかったからだ。調
査を経て、彼は 2 つの全米チェーンの可能性に注目した。デイズインとホリデイインだ。ど
ちらも全米で約 2,000 軒のホテルを展開しているにもかかわらず、この地域には系列店が
なかったのである。

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コンチネンタルブレックファストとは、ホテルで提供されるパンやコーヒーなど簡単な
朝食のこと。
デイズインは、アトランタ 4を拠点とする低価格型の宿泊チェーンである。急速に成長し
ており、新しいフランチャイズ加盟店を積極的に受け入れている。デイズインの大きな利点
は、トリスタンが大きな資本投資を必要としないことだ。同社がターゲットとしているのは、
低価格のモーテルに関心のある人々、特に高齢者、軍人、学校のスポーツチーム、教育者、
ビジネス旅行者などである。一方、ホリデイイン社は、おそらくトリスタンが運営している
ホテルにプールの追加など、施設をアップグレードするように求めるだろう。新しい設備投
資の総額は、どれくらい派手にするかにもよるが、3000 万円から 5000 万円になるだろう。
しかし、設備を増強すればトリスタンはより高い料金を設定することができ、現在の 1 日
4500 円からから平均で 7500 円になるだろう。
これらの全国チェーン店を利用することの大きな利点は、中央予約システムと全国的な
名前である。両社とも、全国にフリーダイヤルの予約電話を設置しており、提携ビジネスホ
テルの予約の約 40%を占めている。また、両社ともウェブサイト(www. daysinn.com およ
び www.holidayinn.com)を提供しており、目的地、料金、アメニティ、品質評価、空室状
況などから特定のホテルを探すことができる。
この 2 つのチェーン店の大きな違いは、プロモーションの方法である。デイズインは、ホ
リデイインに比べて、テレビ広告や印刷広告をほとんど行っていない。その代わり、デイズ
インはセールスプロモーションを重視している。例えば、あるマーガリンのユーザーが、購
入証明シールをデイズインの無料宿泊券と交換するというキャンペーンを行ったことがあ
る。これにより、デイズインでは 1 万室を販売できた。また、デイズインでは 50 歳以上の
旅行者を対象とした「セプテンバーデイズクラブ」を運営しており、顧客は割引料金や季刊
旅行雑誌などの特典を受けることができる。
また、デイズインでは、ビジネスやレジャーで頻繁に旅行する方を対象としたロイヤルテ
ィクラブ 5「インセンティブ」などの会員制プログラムも用意しています。また、出張客象
としたプログラムとしては、2 つの企業向けの割引プログラムや新しいデイズ・ビジネス・
プレイス・ホテルなどがあります。また、ホリデイインもプライオリティ・クラブ・ワール
ドワイドという会員制プログラムを持っています。両社とも、予約サービスや全国的なプロ
モーションの費用として、宿泊総売上の 8%を徴収している。この金額は毎月支払われる。
さらに、フランチャイズ加盟者は、施設を維持し、必要に応じて修理や改善を行うことに同
意しなければならない。施設の維持管理を怠ると、加盟店から外されることになる。チェー
ン全体を監督し、加盟店がより効果的に運営できるようにするための一環として、定期的な
検査が行われる。

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アメリカ合衆国南部の都市。
5
ポイントカードのようなシステムによって顧客を維持する仕組み。

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