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応 用 力 学 論 文 集 Vol. 5, pp.

827-836 (2002年8月) 土木学会

鋼 橋 の損傷 同定にお ける音響 モニ タ リングの適用 に関す る基礎 的研 究


Fundamental Study on Applicability of Sound Monitoring for Damage Identification on Steel Bridges

小 幡 卓 司*,植 田 康 平**,宮 森 保 紀***,林 川 俊 郎****,佐 藤 浩 一*****


Takashi Obata, Kouhei Ueda, Yasunori Miyamori, Toshiro Hayashikawa and Koichi Sato

* 工 博,北 海 道 大 学 大 学 院 助 手,工 学研 究 科 社 会 基 盤 工 学 専 攻 (〒060-8628札 幌 市 北 区 北13条 西8丁 目)


**
工修,鹿 島 建 設 株 式 会 社,関 東 支 店 土 木 設 計 課 (〒163-1029東 京 都 新 宿 区 西 新 宿3-7-1)
***
工 修,北 海 道 大 学 大 学 院博 士 後 期 課 程,工 学研 究 科 社 会 基 盤 工 学 専 攻 (〒060-8628札 幌 市 北 区 北13条 西8丁 目)
**** 工 博,北 海 道 大 学 大 学 院 助 教 授,工 学研 究 科 社 会 基 盤 工 学 専 攻 (〒060-8628札 幌 市 北 区 北13条 西8丁 目)
***** 工 博,北 海 道 大 学 大 学 院教 授,工 学研 究 科 社 会 基 盤 工 学 専 攻 (〒060-8628札 幌 市 北 区 北13条 西8丁 目)

Recent years, evaluation method in maintenance inspection of infrastructureshas become important


problem in all over the world as well as Japan. The well-knownmethod of health monitoring of structures is
used by hammering sound data and so on. However, it is necessary for expert inspector or expert system to
judge and evaluate structural damage from sound data. The purpose of this study is to propose a method of
damage identification on steel bridge structures from higher frequencies vibration component such as sound
monitoring data. The sound data is measured by hammering on bridge model with bolt-jointed lateral bracing,
and analyses are performed by using Fourier spectrum, sound spectrogram, and fractal dimension. The
possibility of applicationfor identifyingbridge damage is discussedby these results.
Key Words:damage identification, sound monitoringdata, sound spectrogram, fractal

1. まえが き 確 立 す る こ と が極 め て 重 要 で あ る と考 え られ る。
近 年 に お け る 各 種 セ ン サ ー 、 信 号 処 理 ・伝 送 お よ び
わ が 国で は 、第 二次 世 界 大戦 後 の国 土 の復 興 とそ の 通 信 に 関 す る技 術 の 著 しい 進 歩 に 伴 っ て 、 モ ニ タ リ ン
後 の 高度経 済成 長 にお いて 、新幹 線 、高速 道路 、港湾 、 グ システ ムは 、遠 隔計 測 、モ バ イル 計測 、無 人計 測 等
空港 を始 め とす る非 常 に多数 の社会 基盤 施 設 が建 設 さ に よ る省 力 化 、 低 コ ス ト化 が 導 入 され つ つ あ り、 従 来
れ て きた。 中で も道路 橋 をは じめ とす る橋梁構 造物 は、 よ り も容 易 か つ 高 精 度 に 必 要 と され る デ ー タ を 収 集 す
年 々増加 す る 自動 車保 有 台 数や 貨物 輸 送 車 の大型 化 に る こ とが 可 能 に な っ て き た2)。 し か しな が ら、振 動 等 の
よる交 通活 荷 重 が設 計 時 の予測 をは るか に超 過 してい モ ニ タ リ ン グ に よ っ て 収 集 され た デ ー タ か ら、 例 え ば
る場 合 も少 な くな く、 また 、 メ ンテ ナ ンス その ものが 損 傷 に よ る構 造 物 の 変 化 の 状 態 を簡 便 に 同 定 す る よ う
十分 行 われ てい ない 現状 か ら、近 い将 来構 造 物 の老 朽 な 手 法 は 十 分 に 確 立 され て い な い 。 こ の よ うな 観 点 か
化 が深 刻 な社 会 問題 とな るで あ ろ うこ とが指 摘 され て ら 、 土 木 構 造 物 の み な らず 、 建 築 ・機 械 工 学 の 分 野 に
い る1)。従 来 は、25∼35年 程度 の期 間 で新橋 へ の架 け お い て も 、 振動 等 の モ ニ タ リン グ に 基 づ い た 損 傷 同 定
替 え を行 う場 合 も見 受 け られ た が、 近年 の我 が国 にお 手 法 が 盛 ん に研 究 され て い る3),4)。こ の 、 振 動 測 定 結 果
け る経 済 状態 、 旧橋 取 り壊 しに よ る産業 廃棄 物 の処 理 か ら構 造 物 の 損 傷 を 同 定 し よ う とす る 発 想 は 、 固 有 振
に関す る環境 へ の配 慮 、 あ るい は 一般 の経 済活 動 に対 動 数 あ る い は 減 衰 定 数 の 変 化 か ら損 傷 に 伴 う剛 性 低 下
す る影 響 等 を考 慮す る と、今 後 は維 持管 理 を強 化 し、 を捉 え る と言 っ た 観 点 か ら、 比 較 的 古 くか ら提 案 され
必 要 に応 じて補 修 を行 うこ とに よ り、既 存橋 梁 の長 寿 て い る が3∼9)、低 次 の 固 有 振 動 数 を対 象 と し た 場 合 に お
命 化 を 目指す こ とが非 常 に重 要 な課 題 に な るもの と考 い て は、 例 えば格 子 桁 にお い て 固有振 動 数 、減 衰 定数
え られ る。 これ らを考 慮 すれ ば 、対 象 とな る橋 梁 の損 は桁 剛 性 が10∼20%以 上 低 下 し な い と、有 意 な 結 果 と し
傷 度 あ るい は健 全 度 に対 す る現 状把 握 が極 めて重 要視 て 現 れ な い こ と も報 告 され て い る9)。鋼 橋 の 初 期 的 な 損
され るで あ ろ うこ とは 自明 と考 え られ るが、構 造 物 の 傷 を 例 に 考 え れ ば 、 そ の 主 な 発 生 箇 所 は ほ と ん どが ガ
維 持 管理 のた めの調 査 ・点検 に基づ く工学 的評 価 ・判 セ ッ トプ レー ト、 垂 直 補 剛 材 等 の い わ ゆ る2次 部 材 の
定 の現状 は、 専 ら専 門技 術者 の判 断 に委 ね られ る場 合 溶 接 部 に 発 生 す る場 合 が 多 い 。 よ っ て 、 仮 に こ の よ う
が ほ とん どで あ る。 この よ うな橋梁 点 検 に携 わ る技術 な 部 材 に か な り大 き な 損 傷 が 生 じ た 場 合 で も 、 構 造 物
者 は、 一般 に豊富 な知 識 や経 験 、 高度 な熟 練 を要 求 さ 全 体 と して の 剛 性 低 下 は 微 小 で あ る た め 、 一 般 に 卓 越
れ るが 、我 が 国 にお い ては この よ うな技術 者養 成 のた しや す い 低 次 の 固 有 振 動 数 に は ほ とん ど影 響 を及 ぼ さ
め の教 育 シ ステ ム等 も整 備 され て い ない た め、今 後 急 ず 、 測定 が比較 的 困難 な高振 動 数 帯 に変化 が生 じる可
激 に高 ま る維 持管 理 の た めの人 的 ニー ズに対 応す る こ 能 性 が 大 き い こ とが 容 易 に 理 解 で き る 。 一 方 、 構 造 物
とは、極 め て困難 で ある と判 断せ ざる を得 ない。 よっ や 機械 部 品の健 全 度検 査 にお いて 、ハ ンマー 等 に よ る
て 、前 述 の よ うな熟 練技 術 者 の不 足 、 あ るいは 人件 費 打 音 を利 用 し た 方 法 は 、 古 く は 蒸 気 機 関 車 の 動 輪 や 、
の 高騰 等 の 問題等 を考慮 す る と、橋梁 の損傷 度 ・健 全 近 年 で は トン ネ ル の コ ン ク リー トの 検 査 ま で 広 く応 用
度診 断 に際 して 、何 らか のモ ニ タ リング システ ム を構 され て い る こ と が 知 られ て い る 。 こ の 方 法 は 、 打 撃 に
築 し、測 定 か ら診 断 まで一 貫 して行 え る手 法 を早期 に よ っ て 励 起 され る振 動 数 範 囲 に着 目す れ ば 、概 ね500Hz

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以 上 の 高 次 振 動 を 対 象 と した 方 法 と考 え る こ と が 可 能
で あ り、起 振 力 そ の も の に は 若 干 の 問 題 は あ る も の の 、
打 撃 方 法 を 工 夫 す る こ とに よ っ て 、 あ る程 度 簡 便 に 前
述 の2次 部 材 の 損 傷 に よ る影 響 を 把 握 す る こ と も で き
得 る と推 定 され る。 した が っ て 、 こ の よ うな 高 次 の 振
動応 答 か らの損 傷 同定 が 可能 となれ ば 、モ ニ タ リン グ
デ ー タ の 維 持 管 理 へ の 適 用 が 容 易 に 実 現 で き る可 能 性
写 真-1 実験 供試 体
を 有 す る も の と考 え られ る。 ま た 、 将 来 的 に は ス マ ー
表-1 実験供 試体 諸元
トモ ニ タ リン グ に よ る 検 知 機 能 、 判 断 機 能 、 お よ び 制
御 機 能 を全 て 備 え た イ ン テ リ ジ ェ ン トブ リ ッ ジ の 出 現
も 予 想 さ れ て お り、 こ の よ うな 橋 梁 シ ス テ ム 構 築 へ の
基 礎 技 術 と して も 、 簡 便 に 利 用 で き 得 る ヘ ル ス モ ニ タ
リ ン グ 手 法 は 重 要 で あ ろ う。
以 上 を踏 ま え て 、 本 研 究 で は鋼 橋 の 損 傷 同 定 あ る い
は 健 全 度 診 断 に用 い る た め に 、 比 較 的 高 周 波 数 帯 域 の
局 部 振 動 を 対 象 と した 音 響 モ ニ タ リン グ な らび に デ ー
タ 解 析 手 法 に つ い て 検 討 を行 い 、 これ らの 適 用 の 可 能
性 等 に 関 して 考 察 を 加 え る こ とを 目的 とす る10∼15)。具
体 的 に は 、 ま ず 鋼 橋 の 主 桁 と横 構 を 模 した 実 験 供 試 体
を 作 成 し 、 仮 想 的 な 損 傷 ・健 全 状 態 を 設 定 して 、 打 撃
に よ っ て 供 試 体 の 内 部 を伝 わ る 音 響 デ ー タ を 収 集 した 。
(a) 平面 図
次 に 、 得 られ た デ ー タ の サ ウ ン ドス ペ ク トロ グ ラ ム を
算 出 して周 波数 特性 を把握 し、そ の結 果 を時 系列 の画
像 デ ー タ と し て 記 録 して 、 フ ラ ク タ ル 次 元 解 析 を 行 っ
た 。 これ らの サ ウ ン ドス ペ ク トロ グ ラ ム あ る い は パ ラ
メ ー タ と して の フ ラ ク タル 次 元 に つ い て 、 健 全 ・損 傷
状 態 に 関 して 比 較 検 討 を行 い 、 鋼 橋 の 損 傷 同 定 あ る い
は健 全 度診 断 にお け る音響 モ ニ タ リングデ ー タお よび (b) 側面図

そ の解 析 手法 適 用 の可 能性 、 有効 性 等 につ い て考 察 を 図-1 実験 供試 体概 略 図
試 みた 。 したが っ て、本 研 究 は これ らの結 果 を報 告す
るもの であ る。

2. 実 験供 試 体 およ び実験 手法

本 研 究 で 用 い た 実 験 供 試 体 は 、 写 真-1に 示 す よ うな
支 間 長2.5m、 幅 員0.4mの 橋 梁 構 造 物 の 主 桁 と横 桁 お よ
写 真-2 測 定 用 マ イ ク 写 真-3 加 振 装 置
び 横 構 に よ っ て 構 成 され る部 分 模 型 を 想 定 して 製 作 さ
表-2 実 験供 試体 の損 傷設 定
れ た も の で あ る 。 一 般 のI桁 を用 い た 鋼 橋 で は 、 鉛 直
方 向 の 剛 性 が 水 平 方 向 よ りも 卓 越 す る た め 、 これ を表
現 す る た め に 主 桁 な らび に 横 桁 に 相 当 す る 部 材 に は 強
軸 を鉛 直 方 向 に配 置 し た 平 鋼 を使 用 し、横 構 に は φ9の
丸 鋼 を 用 い る こ と と した 。 本 供 試 体 を構 成 す る 部 材 の
諸 元 を 表-1に 示 す 。 こ の 実 験 供 試 体 の 両 端 は 固 定 支 持
され て お り、 床 面 か ら供 試 体 に 伝 達 す る 音 を 遮 断 す る
た め の 緩 衝 材 が そ れ ぞ れ の 支 点 部 に配 置 さ れ て い る 。
図-1(a),(b)は本 研 究 で 用 い た 供 試 体 の 概 略 図 と各 測 点 で 橋 梁 構 造 物 へ の 適 用 を考 慮 して 、 マ イ ク 側 に 外 乱 の 影
あ る。 響 を 可 能 な 限 り排 除 す る 対 策 を 施 し て 実 施 す る こ と と
測 定 に 際 して は 、 供 試 体 の 加 振 点 上(図-1の ☆ で示 した 。す な わ ち 、マ イ ク 本 体 を20cm角 の 発 泡 ス チ ロー
され た 部 分)1.0mに 設 置 した フ ッ ク に 、 硬 質 ゴ ム 製 の ル 立 方 体 に 埋 め 込 み 、 供 試 体 とマ イ ク の 接 触 面 は 、 同
球 体 を 吊 り下 げ 、水 平 に10cm離 れ た 位 置 か ら振 り子 運 様 に 発 泡 ス チ ロー ル に 埋 め 込 ま れ た 鋼 材 片 を 介 し て 行
動 に よ っ て 打 撃 を加 え 、 供 試 体 の5点 の 測 点 に設 置 さ う よ うな 形 と な っ て い る。 写 真-2に 、 本 研 究 で 用 い た
れ た 測 定 用 マ イ ク か ら計 測 デ ー タ を 直 接 パ ソ コ ン に デ 測 定 用 マ イ ク を 、 写 真-3に 加 振 装 置 を示 す 。
ジ タ ル 録 音 す る 。 収 録 の 際 の デ ー タ フ ォ ー マ ッ トは 、 仮 想 的 な健 全 ・損 傷 状 態 の 設 定 に 関 し て は 、 横 構端
16bitモ ノ ラル と し、 サ ン プ リン グ 周 波 数 は44.1kHzを 部 の 接 合 部 に お け る 高 カ ボ ル トの 拘 束 力 を 変 化 させ る
適 用 した10),12),14)。
使 用 した マ イ ク は 、 周 波 数 帯:30Hz こ と に よ り、 全 て の ボ ル トが 締 結 され て い る場 合 を健
∼16000Hz 、 イ ン ピー ダ ン ス:2Ω 、 感 度:-62±2dB、 無 全 状 態 と し、 所 定 の ボ ル トを 弛 緩 す る こ と に よ っ て 各
志 向 性 の 安 価 で 一 般 的 な も の で あ る。 通 常 、 こ の 種 の 種 の 損 傷 状 態 を設 定 す る 手 法 を 用 い た 。 表-2に 、 本 研
実験 は 無響 室 等 で行 われ るが 、今 回 の実 験 で は実 際 の 究 で 設 定 した 損 傷 状 態 と弛 緩 させ た ボ ル トの 位 置 関 係

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を示 す 。 こ こ で 、 高 力 ボ ル トの 拘 束 状 態 に つ い て 述 べ 量 マ ト リ ッ ク ス 双 方 の 作 成 に あ た っ て は 、 そ れ ら節 点
る と、ま ず 剛 結 状 態 は9.8kNmの トル ク を 導 入 した 状 態 の 拘 束 条 件 を解 析 上 表 現 が 可 能 とな る よ うな 工 夫 を 要
で あ り、 ヒ ン ジ結 合 と は 、 一 度 完 全 に ボ ル トを 弛 緩 さ した11)。
せ た 後 、 測 定 中 に ボ ル ト 自身 の が た っ き が 生 じな い よ 具 体 的 に は 、 剛 性 マ トリ ッ ク スKを 例 と して 説 明 を
う、 手 で 締 め 付 け られ る範 囲 で 若 干 の トル ク を 導 入 し 加 え る と 、 ま ず 節 点 自 由 度 に 関 して 、 梁 部 材 要 素 に 対
た も の で あ る 。 な お 、 健 全 状 態 に お い て 導 入 トル ク を して 右 手 座 標 系 に 準 じて 、x、y、z軸 を配 し、1節 点 当
9.8kNmに 設 定 した 理 由 と して 、 横 構 側 の 接 合 部 に4 た りの 自由度 は それ ぞれ の 軸 にお け るせ ん断 力 、 曲げ
mmの 添 接 板 を溶 接 し て い る た め 、こ れ が 変 形 し な い ほ モ ー メ ン トに加 え て 、 そ りね じ り を考 慮 し た 合 計7自
ぼ最 大 の トル ク と して 上 記 の 値 を 用 い て い る 。 固 有 振 由 度 とす る こ と と した。 こ こで 、F、xを 荷 重 、 変 位 ベ
動解 析 にお いて は 、格 点部 を剛結 と した場合 の 結果 と ク トル 、Kを 剛 性 マ ト リ ッ ク ス と した 場 合 の 一 般 的 な
実 験 値 は 良 く一 致 して い る こ と か ら 、 こ れ を 健 全 状 態 剛 性 方 程 式 は 、F=Kxで 与 え られ 、 こ の 際 に 仮 想 的 な 損
と仮 定 す る こ と とし た 。 ま た 完 全 解 放 と は 、 さ らに 損 傷 に よ り荷 重 が 伝 達 され な い 項 を 端 とお い て 並 べ 替 え
傷 が 進 ん だ 状 態 を想 定 し て 、 上 述 の が た つ き も 許 し た を行 え ば 、 以 下 の 式 が 得 られ る。
形 で 完 全 に ボ ル トを 弛 緩 させ た 状 態 を 意 味 す る 。 前 に
も 述 べ た と お り、 一 般 に 構 造 物 の 損 傷 は 、 例 え ば横 構 (4)
や 横 桁 と主 桁 の 格 点 部 ・添 接 部 等 か ら発 生 す る 場 合 が
こ こでfc、xcは 仮 想 的 な損 傷 の 影 響 を受 け な い 項 を表 し
多 い と考 え られ 、 た と え こ の よ う な格 点 部 に お い て ボ
て い る 。 式(4)を 展 開 す る と 、 式(5),(6)が 得 られ る 。
ル トの 抜 け 落 ち や そ れ に 相 当 す る よ うな 疲 労 亀 裂 が 生
じ、 部 分 的 に は 比 較 的 大 き い と 思 わ れ る損 傷 を 受 け た (5)
場 合 で も 、 構 造 物 全 体 の 剛 性 へ の 影 響 は 小 さ い と判 断 (6)
で き る。 よ っ て 、 上 述 の よ うな 損 傷 を受 け た 構 造 物 で 式(6)よ り、x0は 以 下 の よ うに表 され る。
は 、 構 造 物 の 全 体 振 動 の よ うな 低 次 の 振 動 モ ー ドお よ (7)
び 固 有振 動 数 は ほ とん ど変化 しない が 、損 傷 が生 じて 式(7)を 式(5)に 代 入 して 整 理 す る と、
い る 部 分 に 着 目 した 局 部 振 動 特 性 あ る い は 音 響 特 性 は 、
(8)
健 全 時 に 比 較 して 有 意 な 変 化 が 捉 え られ る 可 能 性 が 高
と な り、 これ を マ トリ ッ ク ス 表 示 す る と、
い と推 定 さ れ る 。 こ の こ と か ら、 本 研 究 に お け る 損 傷
の 付 加 方 法 に 言 及 す る と 、 ボ ル ト締 結 部 の 拘 束 条 件 を
(9)
変 化 させ る こ と に よ っ て 構 造 物 の 微 少 な 剛 性 低 下 を表
現 し、 各 損 傷 状 態 に 応 じた モ ニ タ リ ン グデ ー タ の 測 定 とな る。式(9)に 関 して 再 度 並 べ 替 え を行 う こ とに よ り、
を 行 う こ と と した 。 な お 、 供 試 体 自体 に ク ラ ッ ク あ る 任 意 の 節 点 に お い て 各 自 由 度 の 拘 束 条 件 を 変 化 させ る
い は 溶 接 剥 離 等 の 損 傷 を 与 え る よ うな 手 法 を用 い る こ こ と が 可 能 に な る。 ま た 、 質 量 マ ト リ ッ ク ス に つ い て
と も 不 可 能 で は な い が 、 実 験 の 再 現 性 を考 慮 す る と 、 も 同 様 の 操 作 を行 う こ と と した 。
ボ ル トを 弛 緩 して 仮 想 的 に 損 傷 状 態 を設 定 す る方 が 、 こ の 際 の 実 験 お よ び 解 析 ケ ー ス は 、 図-1の ボ ル トA
比較 的 高 い精度 で 実現 で きる可 能性 を有す るた め に以 お よびBを 対 称 に 変 化 させ る こ と と し、 健 全 状 態 、 横
上 の よ うな 手 法 を用 い て い る。 構 に 対 して 各 々 外 側 の ボ ル トを ヒ ン ジ 結 合 と した 場 合 、
こ こ で 、 ボ ル ト弛 緩 に 伴 う仮 想 的 な 損 傷 の 程 度 を確 内 側 ボ ル トの み を ヒ ン ジ 結 合 と し た も の 、 す べ て の ボ
認 す るた め、音 響 デ ー タの測 定 に先 立 ち予備 的 な減 衰 ル トを ヒ ン ジ 結 合 と し た場 合 の4状 態 につ いて検 討 を
自 由 振 動 実 験 な らび に 固 有 振 動 解 析 を 実 施 した 。 損 傷 加 え た 。 着 目す る モ ー ドは 、 ボ ル トの 剛 結 度 の 変 化 に
の 程 度 は 、 解 析 的 に は ボ ル ト位 置 に 相 当す る格 点 部 の よ っ て 最 も影 響 が 生 じや す い と 考 え ら れ る 、 横 構 が 単
剛 結 度 の 評 価 に よ っ て 行 な っ て い る。 こ の 剛 結 度 とは 、 独 で 振 動 す るモ ー ドに 関 して 検 討 を加 え て い る。
格 点 の 回 転 拘 束 を 考 慮 す るパ ラ メ ー タ で 、1の 場 合 は 剛 図-2(a),(b)に解 析 モ デ ル とボ ル ト部 の拡 大 図 を 、 表-3に
結 、0の 場 合 は ヒ ン ジ 結 合 を意 味 す る。 実 験 結 果 と解 析 結 果 の 比 較 、 な らび に解 析 で 得 られ た
次 に 、 本 研 究 で 用 い た 固 有 振 動 解 析 に 関 して 述 べ る 各 ボ ル トの 剛 結 度 を 示 す 。 な お 、 解 析 に お け る剛 結 度
と、 一 般 に 多 自 由 度 系 の 構 造 物 の 減 衰 自 由 振 動 に 関 す の 決 定 方 法 は 、 実 験 で の ボ ル トの 状 態 に 応 じた 固 有 振
る運 動 方 程 式 は 以 下 の 式 に よっ て 表 す こ とが で き る 。 動 数 と一 致 す る よ うに解 析 モ デ ル の ボ ル ト部 の 剛 結 度
(1)
こ こ で 、xは 変 位 ベ ク トル 、M、C、Kは それ ぞれ 質 量、
減 衰 、 剛 性 マ ト リ ッ ク ス で あ る。
こ の 式(1)に お い て 、 減 衰 項 を 無 視 した 場 合 の 変 位 ベ
ク トルxが 固 有 円振 動 数 ωで 調 和 振 動 す る と仮 定 す る
と、 一 般 解 は そ の と き の 振 動 モ ー ドをXと して 、 (a) 全 体 図
(2)
で 示 され る。以 上 よ り、次 の 振 動 方 程 式 が 与 え られ る 。

(3)
本 研 究 にお いて は 、主桁 と横 構 の部 材 間 の拘 束条 件
を剛 結 あ るい は ヒンジ結 合 に変 化 させ る こ とに よ り健 (b) 横 構 取 付 部
全お よび損 傷 状態 を仮定 して い る こ とか ら、剛性 ・質
図-2 解 析 モ デ ル

―829―
表-3 損 傷度 の検討

を 調 整 して 検 討 を行 な っ た も の で あ る。 ま た 、 表-3等
に お い て 本 来 は ボ ル トが 用 い られ て い な い 節 点4お よ
び25も 剛 結 度 の 検 討 の 対 象 と し て い る が 、 これ は 節 点
4お よ び29で 構 成 され る要 素 な らび に 節 点37と25で (a) 健 全 状 態 (b) 損 傷 大
構 成 され る 要 素 は 主 桁 の ガ セ ッ トプ レー トを表 現 す る 図-3 モ ー ド図(横 構 振 動 モ ー ド)
た め に 主 桁 剛 性 の10倍 の 剛 域 を設 定 して お り、 これ と
実 剛 性 の 差 異 を あ る程 度 考 慮 す る た め 、 これ ら の 節 点
に お い て も 剛 結 度 の 調 整 を行 うこ と と し た 。表-3か ら、
ま ず 健 全 状 態 と外 側 の ボ ル トを ヒ ン ジ 結 合 に し た 場 合
では 、実 験 で は横構 の固 定 間距離 が変化 しない た め振
動 数 の 変 化 は 認 め られ な か っ た 。 こ の ケ ー ス は 、 解 析
に お い て も横 構 結 合 部 外 側 の 格 点 の 剛 結 度 を60%程 度
以 下 に 設 定 し な い と 固 有 振 動 数 は ほ と ん ど変 化 が 見 ら
れ な い こ とが 確 認 され た。 な お 、表-3のNo.2に 示 した (a) case1(健 全 状 態)
結 果 は 、 参 考 の た め 剛 結 度 を60%に 設 定 した 際 の も の
で あ る 。 ま た 、 損 傷 が 大 き く な る に した が い 、 固 有 振
動 数 が 若 干 高 くな る傾 向 を 有 す る こ と が 認 め られ る が 、
こ の 現 象 は 各 ボ ル ト部 の 剛 結 度 が 不 均 一 とな っ た 場 合
に 発 生 す る こ とが 解 析 に よ っ て 確 か め られ た 。 す な わ
ち 、 横 構 と 主 桁 の 断 面 力 の 伝 達 が 各 ボ ル ト接 合 部 で 差
異 が 生 じ る と、 健 全 状 態 の よ うな 横 構 単 独 の モ ー ドと
は な らず 、 主 桁 部 も連 成 して 振 動 す る よ うな モ ー ド形
状 に 変 化 す る こ と か ら、 この よ うな 傾 向 が 現 れ る も の
(b) case6(損 傷 状 態)
と考 え られ る 。こ の 際 の モ ー ド図 の 一 例 と し て 、図-3(a),
図-4 音 響 波形
(b)に健 全 状 態 と損 傷 大 の 場 合 の モ ー ド図 の 比 較 を示 す 。
さ ら に 、 解 析 に よ っ て 得 られ た 格 点 の 剛 結 度 か ら、 具
体 的 な 損 傷 の 程 度 に 関 し て 考 察 を加 え る と 、 解 析 結 果
に 基 づ い た 個 々 の ボ ル トの 剛 結 度 は ば らつ き が あ り一
概 に評価 す る こ とは困難 で あ るもの の 、剛 結度 の 平均
値 に 着 目す れ ば 、損 傷 小 ∼ 大 の 状 態 で お よ そ85%,60%,
40%に 低 下 し て い る こ とが わ か る。これ らの 結 果 を 比 較
す れ ば 、 各 々 の 損 傷 設 定 に お い て 平 均 的 に は約20%程
度 の 剛 結 度 の 変 化 が 見 られ る た め 、 今 回 の 音 響 モ ニ タ
リ ン グ 実 験 に お け る仮 想 的 な 損 傷 の 与 え 方 に 関 し て も 、 (a) case1(健 全 状 態)

具体 的 な格 点 の 剛結 度 そ の もの には若 干 の相 違 は あ る
も の の 、 固 有 振 動 実 験 と 同様 に 、 そ の 損 傷 度 は ほ ぼ 線
形 に変 化 す る も の と考 え られ る。
本 研 究 で は 、 ま ず 実 験 供 試 体 の 状 態 を表-2のcasel
お よ びcase6に 設 定 して 予備 実 験 を 実 施 し、本 研 究 で 用
い る測 定 シス テ ムの性 能 確認 あ るい は適 用性 等 に 関 し
て 検 討 を 加 え る た め 、 デ ー タ の 収 録 を 行 っ た 。 測 点1
に お け る波 形 お よ び フー リエ ス ペ ク トル を 算 出 し た 結
果 が 、 図-4(a),(b)ならび に 図-5(a),(b)であ る。 な お 、 図-4 (b) case6(損 傷 状 態)
の 縦 軸 は 、測 定 さ れ たwavフ ァイ ル が16bitフ ォ ー マ ッ 図-5 フ ー リエ ス ペ ク トル
トで あ る た め 、 そ の 最 大 値(-32768∼32767)を1と し 方 が 若 干 大 き な もの と な っ て い る こ と が わ か る。 ま た
て 無 次 元 化 した も の で あ り、 図-5は こ の 無 次 元 化 され 図-5(a),(b)のフ ー リエ ス ペ ク トル に 着 目す る と 、 健 全 時
た 波 形 に 対 して フ ー リエ ス ペ ク トル の 計 算 を 行 っ た も と損 傷 時 に お い て 、例 え ば500Hz以 下 の周波 数領 域 で、
の で あ る。 case6の 主 な 応 答 成 分 はcase1よ り も 小 さ く な る、 あ る
ま ず 図-4(a),(b)の波 形 に 関 して 、 双 方 と も 打 音 後 す み い は 消 滅 す る等 の 有 意 な 変 化 を 捉 え られ る こ と が 判 明
や か に 減 衰 して い る が 、 そ の 程 度 はcase1よ りcase6の した 。 さ ら に 、 体 感 的 な 音 響 特 性 か ら も 、 あ る程 度 正

―830―
確 に そ の 変 化 を表 現 して い る も の と思 われ る。
以 上 よ り、 測 定 され た 実 験 デ ー タ の 音 響 特 性 等 の 相
違 が 、 供 試 体 の 仮 想 的 な 損 傷 の 状 態 に 応 じて 明 確 に 現
れ て い る も の と 判 断 で き 、 本 研 究 の よ うな 、 通 常 の マ
イ ク を 用 い た 音 響 測 定 シ ス テ ム を用 い る こ と に よ っ て
も 、 有 効 な モ ニ タ リ ン グ デ ー タ を得 る こ と が 可 能 で あ
る と考 え られ る。

3. 解析 理論

3.1 サ ウ ン ドス ペ ク トロ グ ラ ム
一 般 に 、 サ ウ ン ドス ペ ク トロ グ ラ ム と は 、 図-6に 示
図-6 サ ウ ン ドス ペ ク トロ グ ラ ム
す よ う な音 響 ス ペ ク トル の 時 間 的 な 変 化 を 図 形 の 濃 淡
よ っ て 視 覚 的 に 判 断 で き る よ うに 表 示 し た も の で あ り、 元 に拡 張 す れ ば 、 よ り詳 細 な 音 響 特 性 が 把 握 で き る と
色 の 濃 い 部 分 が ス ペ ク トル 成 分 の 大 き い 部 分 を示 して 考 え られ る。 よ っ て 、健 全 時 お よび 損 傷 時 の 音 響 モ ニ
い る16)。 す な わ ち 、 サ ウ ン ドス ペ ク トロ グ ラ ム は 音 響 タ リ ン グ デ ー タ か ら得 ら れ た フ ラ ク タル 次 元 を 比 較 す
振 動 波 形 の ラ ン ニ ン グ ス ペ ク トル を 求 め て 、 そ の 強 度 る こ と に よ り、 損 傷 の程 度 に応 じた フ ラ ク タル 次 元 の
を 色 の 濃 淡 で 表 した も の で あ る 。 通 常 、 これ は声 紋 分 定 量 的 な 差 異 が 把 握 で き る 可 能 性 を 有 す る も の と推 定
析 等 に 多 く用 い られ て い る が 、 上 述 の よ うに ス ペ ク ト され る。 具 体 的 に は 、 対 象 の 構 造 物 の 健 全 ・損 傷 状 態
ル の 時間 的変化 を極 め て容 易 に捉 え る こ とがで き るた の 定 性 的 判 断 は 、 波 形 ・サ ウ ン ドス ペ ク トロ グ ラ ム 等
め 、 構 造 物 の 損 傷 に よ る ス ペ ク トル の 変 化 の 検 討 に も の 比 較 に よ っ て あ る 程 度 可 能 で あ る こ とは 、 前 述 の 予
適 用 が 可 能 と考 え られ る 。 計 算 方 法 は 、 デ ジ タル 音 響 備 実 験 の 結 果 か ら も 十 分 に 予 想 され る。 しか しな が ら、
信 号 に 対 して 適 当 な デ ー タ 点 数 に分 割 し て 窓 関 数 を 適 詳 細 な 損 傷 位 置 同 定 あ る い は 損 傷 度 ・健 全 度 の 評 価 の
用 し 、 離 散 時 間 フ ー リエ 変 換 を行 っ て これ を 表 示 す る た め に は 何 らか の 定 量 的 パ ラ メ ー タ の 導 入 が 不 可 欠 で
も の で あ る 。 時 間 の 分 割 は 、 任 意 に 設 定 す る こ とが 可 あ る。 こ の た め 、 そ れ ぞ れ の 測 定 デ ー タに 対 して 健 全
能 で あ る が 、 フ ー リエ 変 換 を 行 うデ ー タ 長 の 半 分 程 度 時 お よび 損 傷 時 の フ ラ ク タ ル 次 元 を 求 め る こ とに よ り、
に設 定 す る の が 一 般 的 で あ る 。 本 研 究 で は 、 フ ー リエ 測 定 され た 音 響 デ ー タ の 周 波 数 特 性 等 の 情 報 を 個 々 の
変 換 を行 うデ ー タ長 を2048個(約0.046秒)、 時間間 隔 ス カ ラ ー 量 で 得 る こ とが で き る た め 、 こ れ ら の 比 較 ・
をお よそ0.023秒 に設 定 し、窓 関 数 に はKaiserウ ィ ン ド 検 討 か らあ る 程 度 の 定 量 的 評 価 を 行 え る 可 能 性 を 有 す
を適 用 して 計 算 を行 っ た17)。 な お 、 ス ペ ク トル と色 調 る と考 え られ る。 した が っ て 、 打 音 実 験 に よ っ て 、 構
の 関係 に つ い て はRGBの 色 度 で 表 現 され 、ス ペ ク トル 造 物 の 損 傷 に 起 因 す る と考 え られ る 異 常 音 が 測 定 デ ー
が 最 大 の 場 合(本 研 究 の 解 析 条 件 で は 絶 対 値 で 約8.0)、 タ に 含 ま れ た 場 合 、 健 全 時 と比 較 して フ ラ ク タ ル 次 元
赤(R)の255、 最 小 の 際(ス ペ ク トル が ほ ぼ0)の ときは に 有 意 な 数 値 的 差 違 が 与 え られ る 、 あ る い は 損 傷 の 程
青(B)の255で 表 さ れ る。 度 に 応 じた 何 ら か の 傾 向 を 有 す る 可 能 性 が 高 い も の と
推 定 され る。
3.2 フ ラ ク タル 次 元 フ ラ ク タ ル 次 元 の 算 出 に 際 して は 、 写 真 等 の 画 像 デ
ー タ に高 い適 用性 を有す るボ ックス カ ウンテ ィ ング法
自然 界 の さ ま ざ ま な 現 象 を 数 学 的 に 捉 え る 手 法 と し
て 、 フ ラ ク タル の概 念 を適 用 す る こ と が 有 効 な 手 法 の を採 用 して 解 析 を 行 っ た18),20)。こ の 方 法 は 、 ま ず 画 像
一 つ で あ る こ とが 知 られ て い る
。 フ ラク タル とは、一 デ ー タ に 対 して 正 方 形 の 被 覆 を 細 分 化 して 有 意 な 図 形
見 して 規 則 性 を 有 す る と は 思 え な い ラ ン ダ ム な パ タ ー パ タ ー ン の 乗 っ て い る被 覆 の 個 数 を 数 え る。 被 覆 の 大
ン に 対 して 、 自 己相 似 性 あ る い は ス ケ ー ル 不 変 性 と 呼 き さ を 変 化 させ た 場 合 の 上 記 の 個 数 を 両対 数 グ ラ フ に
ば れ る概 念 を 導 入 して 、 比 較 的 単 純 な 入 れ 子 構 造 な い プ ロ ッ ト し、 そ の 傾 き か ら フ ラ ク タ ル 次 元 を 得 る も の
しは 拡 大 縮 小 に 関 す る 規 則 性 に 関 して 統 一 的 な 記 述 を で ある。
試 み た も の で あ る18)。 そ の 定 量 的 尺 度 と して は 、 フ ラ こ こで 、 図 形Xが1辺dの 正 方 形N(d)個 で 覆 わ れ て
ク タ ル 次 元 を 用 い て 対 象 と な る 図 形 の 複 雑 さ等 を検 討 い る と し、あ る 定 数 秘 お よび 正 の 定 数 μに お い て 、任 意
す る の が 一 般 的 で あ る。 時 系 列 デ ー タ に 対 す る フ ラ ク の1辺 に対 し正 方 形 の 個 数N(d)を 測 定 す る と 、N(d)
タル 次 元 の応 用 は 、例 え ば 音 響 デ ー タ に お け る1/fノ イ とdk0切の 間 に 比 例 関 係 、
ズ19)の よ うな 形 で 周 波 数 毎 の応 答 特 性 を表 現 し、 評 価
(10)
に用 い る こ とが 可 能 で あ る こ とが 知 られ て い る。
が あれ ば 、 式(10)の 自然 対 数 を と る こ と に よ り、
そ こで 本 研 究 で は 、 上 述 の サ ウ ン ドス ペ ク トロ グ ラ
ム か ら、 時 間 、 振 動 数 お よ び ス ペ ク トル の 情 報 を 持 つ (11)
3次 元 的 な デ ー タ に 対 して 直 接 フ ラ ク タ ル 次 元 を 求 め と な り 、logN(d)とlogdの 関係 は 、
る こ と に よ り、 そ の 変 化 を捉 え て 損 傷 に よ る 影 響 の 評
(12)
価 を試 み る。 す なわ ち、 楽器 等 の音 響 特性 を表現 す る の よ うな 直 線 の 式 で 示 され る。1辺 の 長 さdと そ の 正 方
際 に しば し ば 用 い られ る 、 フ ー リエ ス ペ ク トル 等 に 基
形 の 個 数N(d)を 測 定 した とき 、logN(d)とlogdの 関 係 と
づ い た応 答 量 と振 動 数 の2次 元 平 面 か ら求 め られ る フ
の 間 に 、傾 き-k0の 直 線 の 関係 を 有 して いれ ば 、k0は 図
ラ ク タル 次 元 で あ る1/fノ イ ズ に 対 し て 、上 述 の サ ウ ン
形Xの 正 方 形 の 細 分 に よ る フ ラ ク タ ル 次 元 と定 義 で き
ドス ペ ク トロ グ ラ ム を 用 い て 時 間 軸 を加 え た 形 で3次 る。

―831―
な お 、 波 形 あ る い は サ ウ ン ドス ペ ク トロ グ ラ ム 等 の 用 し た 供 試 体 に お け る仮 想 的 な 損 傷 との 関 係 に つ い て
基 本 的 な 音 響 解 析 に 際 して は 、 デ ー タ 解 析 ・制 御 系 設 比 較 検 討 を行 っ た 。 実 験 に お け る損 傷 状 態 の 設 定 は 、
計 グ ラ フ ィ カル 言 語MATLAB17)を 用 いて プ ログ ラム を 前 述 の 表-2に 示 す よ うに 、 横 構 を 拘 束 し た 健 全 状 態
作 成 し、 フ ラ ク タ ル 次 元 解 析 に 関 し て は 、 特 定 独 立 法 (case1)か ら、横 構 の ボ ル ト全 て を弛 緩 した 上 で 、若 干 の
人 畜 産 草 地 研 究 所 に て 開 発 され た フ ラ ク タル 解 析 シ ス トル ク を 導 入 し た 損 傷 状 態(case6)ま で につ い て 測 定 を
テ ムfor Windows95/98Ver3.2を 用 い て 、音 響 解 析 を一 貫 実 施 した 。
して 行 え る シ ス テ ム を構 築 し て 計 算 を 実 施 し た 。 具 体 実 験 結 果 の 一 例 と し て 、 図−7(a)∼(d)に測 点1に お け
的 な フ ラ ク タ ル 次 元 解 析 に 関 し て は 、 ま ず サ ウ ン ドス るcase1(健 全 時)、case3(損 傷 小)、case4(損 傷 中)
ペ ク トロ グ ラ ム を 画 像 デ ー タ と し て 取 り扱 い 、 横320 お よ びcase6(損 傷 大)の 場 合 の サ ウ ン ドス ペ ク トロ
ピク セ ル × 縦270ピ ク セ ル(解 析 時 間0.9secの 場 合)、 グ ラ ム を 示 す 。 これ ら画 像 の 色 調 を 比 較 す る と 、case1
24 bit True colorの ビ ッ トマ ッ プ フ ァ イ ル と して 保 存 す か らcase6と 損 傷 の 程 度 が 増 す につ れ て 、 概 ね250Hz
る。 こ の 画 像 デ ー タ を 、 色 度(RGB)で 分 解 し、応 答 の 振 以 上 に お け る 周 波 数 応 答 成 分 の 継 続 時 間 が 短 く な る傾
動 数 成 分 が 大 き い 赤 の 色 度 を 抽 出 して 白 黒 の2値 化 画 向 を 有 して い る こ とが 確 認 で き る が 、 主 た る 周 波 数 応
像 へ の 変 換 を行 う。 こ の2値 化 画 像 に対 し て 、128ピ ク 答 成 分 の 中 で 、 例 え ば700Hz付 近 の応 答 が 損 傷 の 増 大
セ ル か ら1ピ ク セ ル の8段 階 で 被 覆 を 変 化 させ て 有 意 に応 じて ス ペ ク トル の 強 度 、 継 続 時 間 と も顕 著 に 変 化
な ボ ッ ク ス を カ ウ ン ト し、 最 小2乗 法 に よ っ て フ ラ ク して い る こ と が わ か る。 図−5の フ ー リエ ス ペ ク トル に
タル 次 元 を 求 め る も の で あ る。 本 研 究 に お け る最 小2 お い て は 、 波 形 全 体 を 対 称 と して 含 ま れ る 振 動 数 成 分
乗 法 の 相 関 係 数 は お よ そ0.98∼1.0で あ り非 常 に 高 い 相 の 大 小 を 表 して い る の に 対 し、 サ ウ ン ドス ペ ク トロ グ
関 を 有 して い る こ とか ら 、解 析 で 得 られ た フ ラ ク タ ル ラム に おい て は時 間 の情報 も含 まれ るた め、加 振 直後
次 元 の 信 頼 性 は 比 較 的 高 い と考 え られ る 。な お 、2値 化 には 比較 的 大 きい成 分 を有す るが 、減衰 が 比較 的 大 き
画 像 に 変 換 す る 際 の 色 度 成 分 抽 出 は 、 サ ウ ン ドス ペ ク く、測 定 時 間 全 体 にお い て あ る 程 度 早 い 段 階 でSN比 以
トロ グ ラ ム の 解 析 条 件 が 同 一 の た め フ ラ ク タ ル 次 元 に 下 に な る よ うな 応 答 に 関 し て も 、 十 分 に把 握 す る こ と
は影 響 を 及 ぼ さな い が 、 画 像 デ ー タ の サ イ ズ は 解 析 時 が 可 能 で あ る と考 え られ る。 ま た 、お よ そ1500Hz 以 上
間 に応 じて 変 化 させ る 必 要 が あ る た め 、 上 述 の 解 析 時 の 周 波 数 帯 に 着 目す る と、case3お よ びcase4はcase1
間0.9secの 幅320ピ ク セ ル を基 準 と し、 解 析 時 間 に 応 と比 較 して 、 先 ほ ど と 同 様 の 傾 向 を有 して い る と考 え
じて 画 像 サ イ ズ を 変 化 させ て フ ラ ク タル 次 元 を 求 め る ら れ る が 、case6の 損 傷 が 極 め て 大 き い 場 合 に は 、
こ と と した 。 1500HZ以 上 の応 答 そ の も の が ほ と ん ど発 生 して い な い
こ と が 明 瞭 に 把 握 で き る。 従 来 か ら行 わ れ て い る 打 音
4. 実 験 結 果 とそ の 考 察 に よ る 損 傷 等 の 検 査 は 、 こ の よ う な音 響 的 変 化 を人 間
が 耳 で 聞 き 分 け る もの で あ る。 本 研 究 の 手 法 で は 、 作
4.1 サ ウ ン ドス ペ ク トログ ラ ム 業 者 が 実 際 に 音 を 聞 き 分 け る 必 要 は な く、 例 え ば 長 期
以 上 の よ うな 手 法 を 用 い て 、 本 研 究 で は 打 撃 実 験 か モ ニ タ リ ン グ シ ス テ ム 等 を 利 用 し た 自動 計 測 され た デ
ら得 られ た 測 定 デ ー タ に 対 し て 、 ま ず サ ウ ン ドス ペ ク ー タ に 対 して も 、 図−7の よ うな傾 向 は 容 易 に 検 討 す る
トロ グ ラ ム に よ っ て 周 波 数 特 性 を把 握 し、 本 研 究 で 使

(a) case1 (健 全 状 態) (b) case3 (損 傷 小)

(c) case4 (損 傷 中) (d) case6 (損 傷 大)

図-7 サ ウ ン ドス ペ ク トロ グ ラ ム 計 算 結 果

― 832―
こ とが 可 能 で あ る と思 わ れ る 。 波 形 あ る い は 通 常 の フ は 、 サ ウ ン ドス ペ ク トロ グ ラ ム の 画 像 抽 出 の 時 系 列 範
ー リエ ス ペ ク トル で は 、 損 傷 に 伴 っ て 減 衰 特 性 や 周 波
囲 を0.2sec間 隔 で0.3secか ら0.9secま で の4ケ ー ス 実
数 応答 成 分 の変 化 をそれ ぞれ 個別 に捉 え る こ とは あ る 施 し 、 フ ラ ク タ ル 次 元 と解 析 範 囲 の 関 係 の 比 較 検 討 も
程 度 可 能 で あ る が 、 個 々 の 応 答 成 分 の 変 化 を 同 時 に把 合 わ せ て 行 うこ と と した 。 本 研 究 で 得 られ た フ ラ ク タ
握 して 、 総 合 的 な評 価 を加 え る こ とは か な りの 困 難 を ル 次 元 の 計 算 結 果 を 表−7に 、 ま た 、 画 像 抽 出 の 時 系 列
伴 う も の と推 定 さ れ る 。 サ ウ ン ドス ペ ク トロ グ ラ ム の 範 囲 に応 じた 、 測 点1に お け る 損 傷levelと フ ラ ク タル
利 用 に よ っ て 、 音 響 デ ー タ に 含 ま れ る周 波 数 応 答 成 分 次 元 な らび に 時 系 列 解 析 範 囲 の 関 係 を 図−8(a)∼(d)に示
の変化 や そ の減 衰 特性 、換 言 すれ ば 「 音 色 」、 「残 響 」 す 。 な お 、 図−8中 の 曲線 は 、 個 々 に得 られ た フ ラ ク タ
等 を非 常 に簡 便 に か つ 視 覚 的 に 判 断 で き る も の と考 え ル 次 元 に 対 し て 、 最 小2乗 法 に よ っ て 対 数 関 数 近 似 を
られ 、 特 別 な 専 門 知 識 も そ れ ほ ど要 求 され る こ とな く 行 っ て 表 示 し た も の で あ る 。 な お 、 図 中 に お い て損 傷
デ ー タ の 定 性 的 な 評 価 を 実 現 で き る で あ ろ う。 著 者 ら levelを 等 間 隔 に 配 置 して い る が 、2章 で ボ ル トの 弛 緩
の 従 来 の 研 究 に お い て も 、 サ ウ ン ドス ペ ク トロ グ ラ ム
表-4 損 傷 設 定(測 点1,3,5)
を 用 い る こ と に よ り、 そ の 色 調 か ら損 傷 時 に お け る 定
性 的 な 応 答 の 変 化 は 、 あ る程 度 把 握 で き る 結 果 が 得 ら
れ て お り10),12),14)、
本 研 究 におい て も同様 の傾 向が確認
され た 。 よ っ て 、 こ の よ うな 音 響 解 析 手 法 を適 用 す る
こ とに よ って 、鋼 橋 の損 傷 同定 あ るい は健 全度 診 断 等
を行 え る充 分 な 可 能 性 を 有 す る も の と思 われ る。

4. 2 フラ クタル 次元
以 上 の よ うに 、 サ ウ ン ドス ペ ク トロ グ ラ ム の 応 用 か 表-5 損 傷 設 定(測 点2)
ら損 傷 の 定 性 的 判 断 は あ る程 度 可 能 と 思 わ れ る が 、 損
傷 位 置 の 同定 を含 め た具 体 的な損 傷 度 あ るい は健 全度
診 断 を 行 うた め に は 、 何 ら か の 定 量 的 指 標 が 必 要 で あ
る 。 本 節 で は 、 表−2に お け る case1∼case6の 実 験 結 果
に対 して フ ラク タル次 元 を求 め、各 測 点 に対 す る損 傷
の 大 小 関 係(以 下 、 損 傷levelと 称 す)に 応 じ て整 理 し
た 上 で 、 フ ラ ク タ ル 次 元 と損 傷 の 大 小 関 係 に つ い て 考
察 を加 え る こ と とす る。 損 傷levelと は 、 供 試 体 の 添 接
表-6 損 傷 設 定(測 点4)
部 か ら離 れ た 測 点1,3,5は 、表−4の よ う に 実 験caseと 損
傷 の 大 小 関 係 は 一 致 す る が 、添 接 部 直 近 の 測 点2,4に お
い て は 近 接 す る ボ ル トの 拘 束 条 件 を 変 化 させ た 場 合 が 、
よ り大 き い 損 傷 を付 加 した もの と判 断 で き る。 そ こで 、
測 点2,4に 関 し て は 、表−5な らび に表−6の よ うに損 傷
levelを 再 度 設 定 し 、 フ ラ ク タ ル 次 元 との 対 応 関係 を 検
討 した 。 こ こ で 、 実 際 の フ ラ ク タル 次 元 解 析 に 際 して

表-7 フ ラク タル 次元 算定 結果

―833―
(a)0.3秒 間 (b)0.5秒 間

(c)0.7秒 間 (d)0.9秒 間

図-8フ ラ ク タ ル 次 元 とデ ー タ抽 出 時 間
状 態 と仮 想 的 な 損 傷 の 程 度 を 検 討 した 結 果 、 具 体 的 な られ 、 解 析 時 間 の 伸 延 に 伴 っ て フ ラ ク タ ル 次 元 は 小 さ
ボ ル ト1本 ご と の 剛 結 度 に は 若 干 の 相 違 は あ る も の の 、 く な り、 ま た 損 傷 時 の フ ラ ク タ ル 次 元 の 差 異 も 少 な く
構 造 物 全 体 の 平 均 的 な 損 傷 度 は ほ ぼ 線 形 に変 化 す る も な る も の と思 わ れ る 。 よ っ て 、 本 研 究 の よ うに サ ウ ン
の と考 え られ る た め 、本 研 究 で は 損 傷levelの 間 隔 を 均 ドス ペ ク トロ グ ラ ム か ら フ ラ ク タ ル 次 元 を算 出 す る場
等 に配置 す る こ と とした。 具 体的 な格 点 部 の平 均剛 結 合 に は 、 損 傷 の 有 無 に よ る 定 性 的 な 変 化 を 十 分 に検 討
度 は 、上 記 の 検 討 結 果 か ら、level1(健 全 状 態)で1.0、 し た 上 で 、 あ る程 度 短 い 範 囲 で 適 切 な デ ー タ 抽 出 時 間
Ievel6(損 傷 大)で0.4程 度 で あ る。 の 設 定 を行 う こ とが 必 要 で あ る。
図-8に 関 し て 考 察 を加 えれ ば 、 多 少 の ば らつ き は あ 次 に、各 測 点 にお け る フ ラク タル次 元 の変 化 につ い
る も の の 、 ど の デ ー タ抽 出 時 間 に お い て も各 損 傷level て検討 を加 え るた めに 、測 点毎 に フラ クタル 次 元 をプ
に 対 す る フ ラ ク タル 次 元 は 概 ね 減 少 傾 向 とな っ て お り、 ロ ッ ト した 結 果 を 図-9(a)∼(e)に 示 す 。 な お 、 図・9に お
損 傷 を 与 え た 場 合 は 、 どの 場 合 も健 全 状 態 よ り小 さ く け るデ ー タ の 抽 出 時 間 は 、 図-8に お い て フ ラ ク タル 次
な っ て い る こ とが わ か る。 こ の理 由 と し て 、 サ ウ ン ド 元 と損 傷 の程 度 の 関 係 が 、 最 も 明 確 に 判 断 で き る と思
ス ペ ク トロ グ ラ ム で 見 ら れ た よ うに 、 損 傷 が 増 大 す る わ れ る0.3秒 を用 い て い る 。
に したが い 、測 定デ ー タに含 まれ る周 波数 応答 成 分 の 測 点 ご と の 全 体 的 な 傾 向 は 、 い くっ か の 特 異 点 を 有
ス ペ ク トル の 強 度 、 継 続 時 間 と も減 少 し 、 中 に は ほ と す るケー ス が あ る ものの 、す べ て の測 点 にお い て フラ
ん ど発 生 し な く な る 応 答 成 分 も存 在 す る こ と が 確 認 さ ク タ ル 次 元 は 概 ね 減 少 傾 向 を 示 して い る こ と が わ か る 。
れ て い る。 こ の た め 、 損 傷 が 大 き い 場 合 は 、 健 全 時 に 特 に 、 損 傷 時 の フ ラ ク タル 次 元 は 健 全 時 に 比 し て 、 全
比 して ス ペ ク トロ グ ラ ム の 画 像 が 単 純 化 し、 そ れ に 伴 て の 測 点 お よびlevelで 小 さ くな る こ とが 判 明 した 。 よ
っ て 画 像 デ ー タ 自体 の 自 己 相 関 性 が 向 上 す る こ と か ら、 っ て 、 比 較 す べ き健 全 時 の デ ー タ が 存 在 す れ ば 、 損 傷
フ ラ ク タル 次 元 の 低 下 が 生 じた も の と考 え られ る。 度 の 定 量 的 評 価 に あ る程 度 応 用 で き る 可 能 性 を 有 す る
フ ラク タル 次元 を求 め る際 のデ ー タの 抽 出時 間 に 関 と考 え られ る。
して は 、 表 一7に お け る 比 較 か ら、 デ ー タ抽 出 時 間 が 長 こ こ で 、 図-9か ら測 点 毎 の フ ラ ク タ ル 次 元 と損 傷
く な る に つ れ て フ ラ ク タ ル 次 元 の 数 値 そ の もの が 全 体 levelの 関 係 に言 及 す る と、 ま ず 測 点1に お い て は 、 概
的 に 小 さ くな り、 ま た 抽 出 時 間 が 長 い 方 が 、 損 傷 時 に ね 損 傷levelの 大 小 関係 に 応 じた 形 で フ ラ ク タル 次 元 が
お け る フ ラ ク タ ル 次 元 の 低 下 が 生 じ な い よ うな 傾 向 が 、 変 化 して い る も の と思 わ れ る。 測 点1で は 、level2と
あ る程 度 有 意 な 差 と して 見 受 け られ る 。 これ は 、 デ ー level4を 比 較 して 、フ ラ ク タル 次 元 は増 大 す る結 果 が 得
タ抽 出 時 間 を 長 く設 定 す れ ば す る ほ ど、 供 試 体 か らの られ て い るが 、 こ れ は 図-1の 実 験 供 試 体 に お け る 高 力
有 意 な 音 響 信 号 が減 衰 した 後 の 、 い わ ば ノイ ズ を 中 心 ボ ル トAを 各 々 ヒ ン ジ結 合 ・完 全 開 放 した も の で あ る。
と し た 信 号 に 対 して 解 析 を行 う比 率 が 高 く な る た め 、 ボ ル トを 完 全 開 放 した 場 合 に は 、 加 振 した 際 に ボ ル ト
有 意 信 号 の 情 報 は抽 出 時 間 を 短 く した 場 合 に 比 べ て 相 自身 の が た つ き が 発 生 す る こ とが 予 想 され 、 仮 に そ れ
対 的 に 圧 縮 され た よ うな 形 とな る こ と が 、 原 因 の 一 つ が 音 響 デ ー タ に 含 ま れ る とサ ウ ン ドス ペ ク トロ グ ラ ム
で あ ろ う。 す な わ ち 、 音 響 デ ー タ に 損 傷 め 影 響 が 反 映 が 若 干 複 雑 化 し、 そ の 影 響 で フ ラ ク タル 次 元 も大 き く
され る 時 間 は 、 特 に 損 傷 が 増 大 す る 場 合 に お い て は 次 な る可 能 性 が あ る も の と思 わ れ る。level3とlevel5で は
第 に減 少 す るた め 、解析 時間 の伸 延 に伴 ってサ ウ ン ド こ の よ うな 現 象 は 生 じて い な い が 、 加 振 点 と損 傷 を 与
ス ペ ク トロ グ ラ ム の 画 像 の 変 化 量 も 少 な くな る と 考 え え た 位 置 お よ び 測 点 の 関 係 や 、 実 験 時 に お け る加 振 力

―834―
の 微 妙 な 相 違 に よ り、 全 体 の 傾 向 と 多 少 異 な る 結 果 に
な っ た も の で あ ろ う。 次 に 、 損 傷 を 与 え た 点 近 傍 で 計
測 を 行 っ た 測 点2お よ び4に 関 して は 、 図-9(b)な らび
に(d)に 示 す よ うに 、 測 点1ほ ど で は な い も の の 、 損 傷
の 増 大 に 伴 う フ ラ ク タル 次 元 の 減 少 が あ る程 度 明 確 に
現 れ て い る こ と が 確 認 され た 。 こ れ は 、 測 点2,4の
両 者 と も損 傷 位 置 か ら極 め て 近 く、 測 定 位 置 の 反 対 側
に 損 傷 を 与 え た 場 合 で も 、 横 構 を 介 して 音 響 特 性 の 変
化 が 直 接 伝 達 され る た め 、他 の 測 点 よ り も損 傷level間
の 変化 の度 合 い が小 さ く、そ の影 響 が フ ラク タル 次元
(a) 測 点1
に あ る 程 度 明 確 に 現 れ た も の と考 え られ る。 な お 、 測
点2な らび に 測 点4のlevel2,3お よ びlevel4,5は 、 測 点
1のlevel2,4と 同 様 に ボ ル トを ヒ ン ジ 結 合 ・完 全 解 放 に
設 定 した も の で あ る 。 測 点2お よ び4に お い て は 、 程
度 の相 違 は あ る ものの完 全 解放 の場 合 がい ずれ も フラ
ク タル 次 元 は 大 き く な っ て お り、 測 点 近 傍 の 損 傷 に お
い て は 前 述 の ボ ル トの が た つ き が 比 較 的 大 き く結 果 に
反 映 され た も の と思 わ れ る 。 測 点3に 関 して は 、 加 振
点 、 損 傷 を 与 え る 点 お よ び 測 点 の 位 置 関 係 か ら考 察 す
れ ば、 この測点 は損 傷 を与 えた位 置 か らは比較 的遠 く、
損 傷 の 影 響 に よ っ て 伝 播 音 の減 衰 が 大 き くな っ た 場 合 (b) 測 点12
は 他 の 測 定 位 置 に 比 して 最 も 損 傷 の 影 響 を 捉 え に く い
地 点 で あ る。 そ の た め 、 図-9(c)の よ うに フ ラ ク タ ル 次
元 の 値 が 大 き くば らつ く結 果 に な っ た と推 定 され る。
ま た 、 測 点5に お い て は 、 フ ラ ク タ ル 次 元 の 減 少 傾 向
は認 め られ る が 、 そ の 値 は 損 傷 が 比 較 的 小 さいlevel2,4
に お い て 大 き な ば らつ き を 示 す 結 果 と な っ た 。 こ の 測
定 点 は 、 加 振 点 に 最 も近 い 位 置 に あ り、 構 造 物 内 の 音
の伝 達経 路 を考慮 す る と、損 傷 を加 えた地 点 を通 過 し
ない デー タが 主 に測 定 され る可 能性 が 非 常 に大 きい。
こ の こ とか ら 、 損 傷 の 程 度 の 大 き な 変 化 は 有 意 な 差 と
して 捉 え られ る が 、 微 小 な 変 化 を十 分 に 検 出 す る こ と (c) 測 点3
は 困難 で あ る と思 わ れ 、 し た が っ て 損 傷 の 増 大 に 伴 っ
て フ ラ ク タ ル 次 元 が 減 少 す る と言 っ た 傾 向 か ら は ず れ
た 損 傷levelが 存 在 した も の で あ ろ う。
以 上 の 結 果 か ら、 フ ラ ク タ ル 次 元 は 、 サ ウ ン ドス ペ
ク トロ グ ラ ム で 見 られ た 健 全 ・損 傷 時 に お け る 時 系 列
を 考 慮 した 周 波 数 応 答 特 性 の 定 性 的 な 変 化 を 、 よ り具
体 的 か つ 簡 便 に 表 現 し て い る も の と考 え られ 、 そ れ ぞ
れ の 損 傷 条 件 に 対 して 、 数 値 的 に あ る 程 度 有 意 な 差 違
が 生 じ て い る こ とか ら 、 対 象 とな る 構 造 物 の 損 傷 度 あ
る い は 健 全 度 の 定 量 的 な 評 価 ・検 討 に 適 用 す る こ とが
(d) 測 点4
で き る と考 え られ る。 さ ら に 、 損 傷 部 位 と加 振 点 お よ
び 測 定 点 等 の 位 置 関 係 と フ ラ ク タル 次 元 の 大 小 あ る い
は 変 化 率 の 増 減 は 、 ほ ぼ 整 合 性 を有 す る よ うな 結 果 と
な っ て お り、 損 傷 の 程 度 の み な ら ず 、 具 体 的 な 位 置 同
定 に も応 用 で き る 十 分 な 可 能 性 も 有 す る も の と 思 わ れ
る。

5. あ とが き

以 上 の よ うに 、 本 研 究 は 音 響 モ ニ タ リ ン グ デー タ を
用 い て 、 鋼 橋 の 損 傷 同 定 あ る い は健 全 度 診 断 を行 うた
め の デ ー タ 解 析 手 法 に 関 して 検 討 を 加 え た も の で あ る。 (e) 測 点5
具 体 的 に は 、 鋼 橋 の 主 桁 と横 構 を模 した 実 験 供 試 体 を 図-9 フ ラ ク タル 次 元 と損 傷 の 関 係
用 い て 打 撃 に よ る 音 響 モ ニ タ リ ン グ デ ー タ を 収 集 し、 サ ウ ン ドス ペ ク トロ グ ラ ム あ る い は パ ラ メ ー タ と して
サ ウ ン ドス ペ ク トロ グ ラ ム を 算 出 し て 周 波 数 特 性 を 把 の フ ラ ク タ ル 次 元 に つ い て 、 健 全 ・損 傷 状 態 に 関 して
握 した 上 で 、 フ ラ ク タル 次 元 解 析 を 行 っ た 。 こ れ ら の 比較 検討 を行 い 、損 傷 同定 お よび健 全 度診 断 へ の適 用

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の有 効性 等 につ いて考 察 を試 みた。 土 木 学 会, 2000.
ま ず 実 験 手 法 の 妥 当性 等 に 関 して は 、 本 研 究 の よ う 3) 近 藤 一 平, 濱 本 卓 司: 振 動 台 実 験 の ラ ン ダ ム応 答
な 通 常 の マ イ ク を用 い た 簡 便 な 音 響 測 定 シ ス テ ム を 用 デ ー タ を用 い た 多 層 構 造 物 の 損 傷 検 出, 日本 建 築
い る こ と に よ っ て も 、 損 傷 に伴 う周 波 数 応 答 特 性 の 変 学 会 構 造 系 論 文 集, 第473号, pp.67−74, 1995.
化 を 十 分 に 捉 え られ る こ とが 、 測 定 デ ー タ の 波 形 お よ 4) 長 峰 正 紀, 内 田浩: は り構 造 物 に お け る ク ラ ッ ク
び フ ー リエ ス ペ ク トル の 検 討 を 通 じ て 確 認 され た 。 よ の 位 置 と深 さ の 同 定, 北 海 道 大 学 工 学 部 研 究 報 告,
っ て 、 本 研 究 の 音 響 測 定 シ ス テ ム を用 い る こ と に よ っ 第179号, 1997.
て も 、 あ る 程 度 有 効 な モ ニ タ リ ン グデ ー タ を 得 る こ と 5) 加 藤 雅 史, 高 木 保 志, 島 田 静 雄: PC橋 梁 の破壊 に
が 可 能 で あ る と考 え られ る。 伴 う振 動 性 状 の 変 化 に 関 す る 実 験 的 研 究, 土木 学
次 に サ ウ ン ドス ペ ク トロ グ ラ ム の 解 析 結 果 か ら は 、 会 論 文 集 ,No. 341, pp. 113−118, 1984.
音 響 デ ー タ に含 ま れ る周 波 数 応 答 成 分 の 変 化 や そ の 減 6) Kato, M. and Shimada, S. : Vibration of PC Bridge
衰 特 性 、す な わ ち 、音 響 デ ー タ そ の も の の 「
音 色 」、「残 during Failure Process, Journal of Structural

響 」 等 を非 常 に簡 便 に かつ視 覚 的 に判 断 で き る もの と Engineering, ASCE, Vol.112, No7, pp1692- 1703, 1986

思 わ れ る。 従 来 の 打 音 に よ る損 傷 等 の 検 査 は 、 こ の よ 7) 山 崎 智 之, 三 上 修 一, 大 島 俊 之, 本 間 美 樹 治, 斎

うな 音 響 的 変 化 を 人 間 が 耳 で 聞 き 分 け る も の で あ る が 、 藤 孝 行: 老 朽RC橋 の 損 傷 付 加 振 動 実 験, 土 木 学 会
本 研 究 の手 法 で は、作 業者 が実 際 に音 を聞 き分 け る必 北 海 道 支 部 論 文 報 告 集, 第52号(A),
要 は な く、 例 え ば 長 期 モ ニ タ リ ン グ シ ス テ ム 等 を 利 用 pp.490−493,1996.
した デ ー タ に 対 して も、 特 別 な 専 門 知 識 を ほ と ん ど要 8) 宗 像 康 一, 三 好 敏 晴, 濱 本 卓 司: 2軸 偏 心 を 有 す る

求 され る こ と な くデ ー タ の 定 性 的 な 評 価 を 実 現 で き る 多 層 建 築 構 造 物 の 鉛 直 ・水 平2段 階 損 傷 検 出 ∼ そ の
2振 動 台 実 験 に よ る損 傷 検 出 の 検 証 ∼, 日本 建 築
で あ ろ う こ と が 判 明 した 。 よ っ て 、 こ の よ うな 音 響 解
析 手 法 を 適 用 す る こ と に よ っ て 、 従 来 よ り も容 易 に鋼 学 会 大 会 学 術 講 演 梗 概 集, pp.403- 404. 1998.
9) 西 村 昭, 藤 井 学, 宮 本 文 穂, 加 賀 山 泰 一: 橋梁 の
橋 の 損 傷 同 定 あ る い は 健 全 度 診 断 等 を行 え る も の と思
わ れ る。 損 傷 評 価 に お け る 力 学 挙 動 の 有 効 性, 土木 学会 論

フ ラ ク タル 次 元 と損 傷 の 程 度 の 関 係 は 、 ほ ぼ す べ て 文 集, No .380/I- 7, pp. 355- 526, 1987.


10) 小 幡 卓 司, 植 田康 平, 林 川 俊 郎, 佐 藤 浩 一: 鋼 橋
の 測 点 に お い て 、 多 少 の ば らつ き は あ る も の の 、 各 損
の 損 傷 同 定 に お け る音 響 モ ニ タ リ ン グ の 可 能 性 に
傷levelに 対 す る フ ラ ク タル 次 元 は概 ね 減 少 傾 向 と な る
こ と が 確 認 され た 。 した が っ て 、 フ ラ ク タ ル 次 元 を 用 関 す る一 考 察, 土 木 学 会 北 海 道 支 部 論 文 報 告 集,
い る こ と に よ り、 サ ウ ン ドス ペ ク トロ グ ラ ム で 見 られ 第56号( A) ,pp.196- 199, 2000.
11) 小 幡 卓 司, 林 川 俊 郎, 佐 藤 浩 一, 水 草 浩 一: 振動
た 周 波 数 応 答 特 性 の 定 性 的 な 変 化 を 、 よ り具 体 的 に 技
モ ニ タ リングデー タに基づ い た鋼橋 の損 傷 同定 に
術 者 が 判 断 しや す い 形 で 表 現 して い る も の と考 え られ 、
本 研 究 で 設 定 した 仮 想 的 な 損 傷 の 範 囲 で は 、 数 値 的 に 関 す る 基 礎 的 研 究, 構 造 工 学 論 文 集, Vol .46A,

あ る程 度 有 意 な 差 違 が 生 じて い る こ と か ら、 橋 梁 構 造 pp. 531- 538, 2000.


12) 小 幡 卓 司, 植 田康 平, 林 川 俊 郎, 佐 藤 浩 一: 鋼 橋
物 の 損 傷 度 ・健 全 度 の 定 量 的 な 評 価 等 に 適 用 で き る 十
の 損 傷 同 定 に お け る音 響 デ ー タ の 適 用 性 に 関 す る
分 な 可 能 性 を 有 す る も の と判 断 で き る。 さ ら に 、 損 傷 一考察
部 位 と加 振 点 あ る い は 測 定 点 等 の 位 置 関 係 と フ ラ ク タ , 鋼 構 造 年 次 論 文 報 告 集 ,第8巻,
ル 次元 の減 少 傾 向 の大 小 は、 ある程 度 の整 合性 を有す pp.611- 616, 2000.
13) 小 幡 卓 司, 植 田康 平, 林 川 俊 郎, 佐 藤 浩 一: 1/fノ
る よ うな 結 果 と な っ て お り、 損 傷 の 程 度 の み な らず 、
イ ズ の 分 析 に 基 づ い た 鋼 橋 の 損 傷 同 定 に 関 す る一
具 体 的 な 位 置 同 定 へ の 応 用 も 期 待 で き る も の と推 定 さ
考 察, 土 木 学 会 北 海 道 支 部 論 文 報 告 集, 第57号,
れ る。
pp. 104- 107, 2001.
問題 点 と して は、 サ ウン ドスペ ク トログラ ムか らフ
14) 小 幡 卓 司, 植 田 康 平, 林 川 俊 郎, 佐 藤 浩 一: 1/f
ラク タル次 元 を求 め る際 の画像 デ ー タ の抽 出範 囲 に よ
ノイ ズ 特 性 に 基 づ い た 鋼 橋 の 損 傷 同 定 に 関 す る研
っ て、得 られ るフ ラ クタル 次 元 の数値 そ の ものが若 干
究, 鋼 構 造 年 次 論 文 報 告 集, 第9巻, pp. 569- 574,
変 動 す る結 果 とな って お り、適 切 な範 囲 を設 定 す る何
2001.
らかの指 標 を導入 す る必 要 が あ る と思 われ る。 ま た 、 15) 植 田康 平, 小 幡 卓 司, 林 川 俊 郎, 佐 藤 浩 一, 宮 森
本 研 究 で は仮想 的 な損傷 をボル トの拘 束 状 態 を変化 さ
保 紀: 鋼 橋 の 損 傷 同 定 に お け る フ ラ ク タ ル 次 元 解
せ る こ とで与 え てい るが、 実構 造 物 にお ける損 傷 は溶
析 の 適 用 性 につ い て, 土 木 学 会 北 海 道 支 部 論 文 報
接 部 の クラッ ク や腐食 等 が複 合 して発 生 してい る場 合
告 集, 第58号, pp.32- 35 ,2002.
も多 い た め、 これ らの影 響 を考 慮 した上 で適 用 が 可能 16) 吉 井 貞 熈: デ ジ タル 音 声 処 理, 東 海 大 学 出 版 会,
で あるか検 討 を加 え る こ とが今後 の課 題 で あ る。 1985.
最 後 に、 フラ ク タル 次 元解 析 シス テ ムの使 用 に 関 し 17) The Math Wiorks Inc. : MATLAB Signal Processing
て ご許 可 頂 い た 、特 定独 立行 政 法 人農 業 技術 研 究機 構 Toolbox User's Guide, サイハ"ネットシステム株 式 会 社, 1999.
畜 産 草 地研 究 所 に対 して、 こ こに記 して感 謝 の意 を表 18) 石 村 貞 夫, 石 村 園 子: フ ラ ク タ ル 数 学, 東 京 図 書
す る次第 で あ る。 株 式 会 社, 1992.
19) 今 野 紀 雄: 図解 雑学 複 雑 系, ナ ツ メ 社, 1999.
【参 考 文 献 】 20) 松 下 貢: 医 学 ・生 物 学 に お け る フ ラ ク タ ル, 朝
1) 西 川 和 廣: 道 路 橋 の 寿 命 と 維 持 管 理, 土木 学会 論
倉 書 店, 1992.
文 集, No. 501/I-29, pp.1−10, 1994.
(2002年4月19日 受 付)
2) 土 木 学 会: 橋 梁 振 動 モ ニ タ リ ン グ の ガ イ ドラ イ ン,

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