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生物学II

第6回講義資料

エッセンシャル・キャンベル(第6版)の第9章「遺伝様式」を予習しておいてください
遺伝学の基礎(メンデルの実験)
紫色の花をつけるエンドウマメと白い花をつけるエンドウマメ
を交配すると・・・
実際の結果
重要な用語と概念の確認
重要な用語と概念の確認

注:高校生物の教科書では,「優性」→「顕性」,「劣性」→「潜性」に変
更されている。
紫色の花をつけるエンドウマメと白い花をつけるエンドウマメ
を交配すると・・・
実際の結果

純系:全ての対立遺伝子についてホモ接
合である系統
‥現実的には相当に難しいので,着目
する形質に関わる対立遺伝子について
ホモ接合であることを指すこともある。
対立遺伝子の優劣
・遺伝学的な優性という用語には劣性の表現型に対して正
常という意味はない
・また,野生型の表現型が優性の対立遺伝子によって支配
されているとも限らない
分離の法則
独立の法則

個々の対立遺伝子の対は、配偶子形成過程で他の対立遺伝子の対と独立して分配される
染色体の挙動と遺伝
不完全優性
キンギョソウの花色の例
複対立遺伝子と共優性

対立遺伝子IAとIBは共優性
突然変異
遺伝暗号は縮重している

コドンの2塩基目

コ コ
ド ド
ン ン
の の
1 3
塩 塩
基 基
目 目

多くのアミノ酸には複数のコドンが対応する
遺伝暗号が翻訳される時の規則
5’-A A U G G U A G C U G G A G A C A U A G C G U A G A -3’
Met Val Ala Gly Asp Ile Ala 終止

1. mRNAの5’→3’方向に翻訳される

2. コドン同士の重なりもコドン間の隙間なく翻訳される
(となりあったコドンは隣接している)

3. 開始コドンによって決められる読み枠に従って翻訳される
この読み枠は「開いた読み枠(open reading frame:ORF)」と呼ばれ

→これにより,原則的に1種類のmRNAを翻訳してできるタンパク質
は1種類となる

→塩基配列が変わると,作られるタンパク質のアミノ酸の配列が変
わり,その結果として,機能が変わってしまうことがある
点突然変異(point mutation)によって,何が変わるのか?
5’-A A U G G U A G C U G G A G A C A U A G C G U A G A -3’
Met Val Ala Gly Asp Ile Ala 終止

・塩基の置換(トランジションとトランスバージョンの2種類)
→トランジション(transition):ピリミジン塩基からピリミジン塩基,プリン
塩基からプリン塩基への置換
→トランスバージョン(transversion):ピリミジン塩基からプリン塩基,
プリン塩基からピリミジン塩基への置換

・塩基の挿入

・塩基の欠失
塩基の置換
5’-A A U G G U A G C U G G A G A C A U A G C G U A G A -3’
Met Val Ala Gly Asp Ile Ala 終止

パターン①
5’-A A U G G A A G C U G G A G A C A U A G C G U A G A -3’
Met Glu Ala Gly Asp Ile Ala 終止

塩基の置換により,指定するアミノ酸が変化
→ミスセンス変異(missense mutation)

ミスセンス変異は,表現型に影響する場合と影響しない場合がある
影響する場合,影響しない場合はそれぞれどのような場合か?
塩基の置換

5’-A A U G G U A G C U G G A G A C A U A G C G U A G A -3’
Met Val Ala Gly Asp Ile Ala 終止

パターン②
5’-A A U G G U G G C U G G A G A C A U A G C G U A G A -3’
Met Val Ala Gly Asp Ile Ala 終止

塩基の置換があっても,指定するアミノ酸が変化しない場合がある
→同義置換(synonymous substitution)
(サイレント変異ともいう)

同義置換はほとんどの場合,表現型に影響しない
塩基の置換

5’-A A U G G U A G C U G G A G A C A U A G C G U A G A -3’
Met Val Ala Gly Asp Ile Ala 終止

パターン③
5’-A A U G G U A G C U U G A G A C A U A G C G U A G A -3’
Met Val Ala 終止
塩基の置換により,アミノ酸を指定するコドンが終止コドンに変化
→ナンセンス変異(nonsense mutation)

ナンセンス変異も,表現型に影響する場合と影響しない場合がある
影響する場合,影響しない場合はそれぞれどのような場合か?
塩基の欠失と挿入
5’-A A U G G U A G C U G G A G A C A U A G C G U A G A -3’
Met Val Ala Gly Asp Ile Ala 終止

パターン④ 1塩基の欠失

5’-A A U G G U G C U G G A G A C A U A G C G U A G A -3’
Met Val Leu Glu Thr 終止

パターン⑤ 1塩基の挿入

5’-A A U G G U A G C U G G A G A A C A U A G C G U A G -3’
Met Val Ala Gly Glu His Ser Val

塩基の欠失や挿入により,変化箇所より3’側の読み枠が変化
→フレームシフト変異(frameshift mutation)

フレームシフト変異も,表現型に影響する場合と影響しない場合がある
影響する場合,影響しない場合はそれぞれどのような場合か?
タンパク質の機能からみる3種類の突然変異

・機能欠損変異(loss-of-function mutation):
遺伝子の機能が低下したり,失われたりする変異で,通常は劣性
特に遺伝子の機能が完全に失われた機能欠損変異をヌル(無発現)
変異(null mutation)という

・機能獲得変異(gain-of-function mutation)
遺伝子の機能を高めたり,不適切な状況でも活性にする変異で,通
常は優性

・優性阻害変異(dominant-negative mutation)
遺伝子の機能を阻害する変異で,阻害が優性に現れるもの
変異した遺伝子産物が正常な遺伝子産物の機能を阻害するときに
みられる
機能欠損変異(loss-of-function mutation)の例
例えば,下のようなタンパク質を仮定する
(各○はアミノ酸を表し,機能に重要な領域を赤枠で示す )

N C

突然変異

N C
活性中心のミスセンス変異

N C
活性中心のナンセンス変異

N C
活性中心よりN末端側で生じたナンセンス変異
復習のポイント
エッセンシャル・キャンベル生物学(第6版)の第9章が今回の講義の中心部分です

・メンデル遺伝の概念の確認
(遺伝の基本原理と用語の理解)

・DNAに生じる突然変異の種類と現象との関連
(アミノ酸配列に及ぼす変化,対立遺伝子間の関係)

今日の講義の内容は,初学者だけでなく,多少生物
学をかじっただけの学生にもイメージしにくい部分で
す。実際の例を,これまで学んだ原理に基づいて組
み立てながらノートにまとめてみるとスッキリ理解で
きるでしょう。

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