You are on page 1of 5

ロッククライミング調査について

① はじめに
・ クライミング調査は危険を伴う業務である。
・ 危険を予測し回避する(ロープを扱う技術に高度に熟練する、もしくは調査
ルートを見極める)ことでリスクを小さくすることはできるが、業務対象区
域には予測不可能な危険(調査範囲外からの落石、大規模崩壊など)が存在
することがある。
・ また、使用器具に関して、ウェビング類の劣化や金属部品の微細亀裂など、目
視では確認が困難な変状・劣化が発生し破断する可能性がある。
・ 万一事故が発生した場合、場所がら、命にかかわる重大な事故につながる可
能性が高い。
・ したがって、完全な安全を求める人はクライミング調査に携わるべきではな

(人頭大の落石が手にあたり指の骨を骨折したこともある。軽自動車大の岩
が 2m 離れたところを落下していったこともある。土石流が火花を散らしな
がら目の前 10m を流れ下ったこともある)。
・ クライミング調査で使用する技術を Single rope techiniques、略して SRT
という。
・ SRT については別冊「Single Rope Techniques in Japan 2」を教本とし、
SRT 実践時にはこれに準じて作業を行う。
・ これはロープ 1 本で岩壁、竪穴など空中を鉛直方向に移動する技術である。
・ SRT は既に確立した技術であり、技術自体は正しく実践すれば安全である。
・ しかしながら、クライミング調査で作業の対象となる現場には落石や崩壊な
ど、ロープテクニックとは別の危険要素が数多くあることを忘れてはいけな
い。
・ 自分の技術と比較して危険と判断するときはいつでもやめてよい(雨{崩壊
は間隙水圧上昇時に発生することが多い}、浮石地帯、支点の強度不足、なん
となくいやな予感がするなど)。
・ その時は現場リーダーに自分はそれ以上作業しないことをはっきりと申し
出ること。
・ 現場作業を行うかどうかの判断は必ず自分自身ですること!!
・ ささいなミスや細かな要因が死に直結する場所での作業であることを忘れ
ずに!
・ 「業務命令だからやらなくてはいけない」は危険!
・ 現場全体の業務延期、もしくは中止の判断は現場のリーダーが行う。
② クライミング調査時に予想される主な事故要因と対策
・ 落石
@自然落石(風、動物)→不安定度の高い浮石・転石の下には入らない。落
ちそうなものは降りるときにかたっぱしから、落
としながら降りる。現場によって石を落とすこと
ができない場合は、調査ルートを変更、手も足も出
なかったら調査を中止する。
@自分のロープが落石を誘発→ライン取りを工夫し、ロープが浮石に接触し
ないようにリギングする。落とせるものは
落としていく。
@他者が落石→上下作業厳禁。相棒の下方に立ち入らない。無線でクライマ
ー同士の位置関係を緊密に連絡し把握する。部外
者の岩壁肩への立ち入りを禁止。

@自分の落とした落石が他者にあたる→上下作業厳禁。相棒の上方に立ち入
らない。無線でクライマー同士
の位置関係を緊密に連絡し把握
する。部外者の岩壁尻への立ち
入りを禁止。
・ロープ切断  
@ロープの損傷、劣化→作業前にロープチェックを行う。保管、洗浄などメン
テナンスを確実に。
@エッジ(岩角など)とのこすれによる切断→リビレイ、ディビエーション
プロテクターなどの中間セット
で回避する。SRT に熟練するま
では太めのロープを使用する
(10㎜以上)。
・支点脱落
   @支点(アンカー)の脱落→支点の選定を確実に。
仮加重テストを忘れずに行う。
                     必ず複数点から支点を取る(バ
ックアップもしくはシェアードアンカー)。

・滑落
@滑落→ピッチヘッドアプローチを確実に。早めにロープを使い始める。
各人の身体能力に応じて、斜面内でも少しでも危ないと感じたら迷
わず
ロープを使うこと。
下降中以外は必ず 2 点以上からビレイをとっている状態を保つこと。
下降開始、登高終了時のセルフビレイを確実に。
      

③ ロープ類(ハーネス、スリングなど)禁止事項
・ 踏むな!!
・ 酸→電池、バッテリーの染みだし液に要注意! ロープとバッテリーを同梱
して運            搬するな。
・ 紫外線→日のあたるところに保管するな!
・ 熱→タバコの火。速く降りすぎると下降器の熱でロープが溶ける(2 m/s 以
上)。
・ 経年劣化→全く使用しなくても製造から 3 年で強度は半分に減少する。
         使用頻度と傷み具合にもよるが、3 年で全廃棄が望ましい。
・ 泥、砂汚れ→汚れたまま使用すると、微小な鉱物粒子が繊維を傷め、寿命が短
く                  
なる。汚れたら洗おう。
・ 溶剤→ロープは石油製品なので溶剤の種類によっては溶ける可能性あり。
       要注意。

④ ロープ類(ハーネス、スリングなど)メンテナンス
・ 洗う際は中性洗剤を使い、やさしくたらいでもみ洗い(洗濯機禁止、体温以
上のお湯禁止)。
・ 泡が消えるまでよくすすぐ(何度か水を入れ替える)。
・ 柔軟材に浸す。
・ 陰干しにして乾燥(直射日光禁止)
・ 風通しのよい冷暗所に保管

⑤ ギア類(カラビナ、アッセンダーなど)禁止事項
・ 落下→2m 以上の高度から落下したギアは落下の衝撃で金属に微細な亀裂が
生            
じている可能性がある。迷わず即廃棄すること!!
・ 磨耗→ギア同士あるいはロープとの摩擦でギアは徐々に磨耗する。
       早めの買い替えをお勧めする。
・ 借りる、もらう→過去にどのように扱われたか分からないギアに命を預けま
す    
か?ひょっとしたら落としたカラビナかも・・・ 。
⑥ ギア類メンテナンス
・ お湯につけて、歯ブラシ、爪楊枝などで細部の泥砂をよく落とす。
・ よく振って水気を飛ばす
・ 日陰で乾燥
・ 可動部に樹脂・石油製品を侵さない潤滑剤をさす。

⑦ 覚えるノット
・ エイトノット(基本、ダブル下降時のロープジョイントに使用)
・ ダブルフィギュアエイトノット(アンカーへの接続、ロープエンドに使用)
・ ラビットノット(シェアードアンカーへの接続に使用)
・ ブーリン、もやい結び(アンカーへの接続に使用)
・ ブーリンオンアバイト(シェアードアンカーへの接続に使用)
・ アルパインバタフライ(クラシカル Y ビレイのセカンド以降のアンカーへ
の接続に使用)
・ ダブルフィッシャーマンズノット(ロープスリングの作成、ロープジョイン
ト時のバックアップノットに使用)
・ プルージック(緊急時のアッセンダーの代用、プロテクターのメインロープ
への接続、ATC 下降時の自己確保に使用)
・ テープベント、ウォーターノット(テープスリングの作成に使用)(ノット
部分がエッジに引っかかったまま荷重すると簡単にほどけてしまう要注意
ノット。使用時はノット部分がエッジに当たっていないかを厳しくチェック
すること。)
・ イタリアンヒッチ、半マストノット、ハーフグローブヒッチ(緊急時のディ
ッセンダーの代用、解除可能支点の作成に使用)
・ インクノット、マストノット、グローブヒッチ(仮固定に使用)
・ エイトノットによるロープジョイント(ロープジョイントに使用)

⑧ 服装
・現場就業中は必ず長袖長ズボンを着用すること(暑い時には袖をまくりあげ
て着用する。半そで短パンはダメ)。
・基本的にアンダーウェアは化繊素材のものを着用すること(寒冷時、発汗や
雨雪で濡れた際、綿素材の下着は体温を保存できない。低体温症により注意が散
漫になり、事故につながる)。
・例外的に温暖時の大量発汗時には体温降下の目的で綿素材をあわせて使用す
ることがある。
・雨天時にはカッパを着用する(ポンチョ禁止)。
・履物について、無雪期の岩壁・自然斜面ではスパイク付き地下足袋が、構造物
ではトレッキングシューズなど無スパイクの履物がおすすめ。
・積雪期には、スパイク付き長靴や積雪期用の登山靴を履くこと(凍傷になる
ぞ)。
・グローブは丈夫な素材の指先が出るタイプのものが望ましい(ノットの制作 、
筆記用具の使用のため)(積雪期には状況に応じて雪に対応したものを適宜使
用する)。
・長い髪の毛はストップに巻き込まれる危険があるため、就業中は束ねてスト
ップに干渉しないように収納しておくこと。
・ヘルメットは CE か UIAA を通ったものを使用すること(ドカヘル禁止)。

以上の記載について、熟読しました。
また、十分な説明を受けて納得いたしました。
今後は上記の記載内容に従って行動します。
 
        年  月  日

氏名

You might also like