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JP 2013-230142 A 2013.11.

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(57)【要約】 【課題】安全で簡便な方法で、発酵阻害物質を除去し、効率良く有機酸を製造する方法を 提供することにある。 【解決手段】下記工程(a)∼(d)を含む有機酸の製造方法。 (a):下記計算式(1)で示されるセルロースI型結晶化度が30%を超えるセルロー スを含有するリグノセルロース系バイオマスを粉砕し、当該セルロースI型結晶化度を0 ∼30%に低減する工程     結晶化度(%)=〔(Ic−Ia)/Ic〕×100    (1) 〔Icは、X線回折における格子面(002)(格子面間隔=22.4nm)の回折強度 、及びIaは、アモルファス部(格子面間隔=27.3nm)の回折強度を示す〕 (b):(a)工程で得られる粉砕物を水で洗浄する工程 (c):(b)工程で得られる固形物を、加水分解酵素を用いて糖化物を得る工程 (d):(c)工程で得られる糖化物を糸状菌で発酵させて有機酸を得る工程 【選択図】なし 10

(2) 【特許請求の範囲】 【請求項1】  下記工程(a)∼(d)を含む有機酸の製造方法。

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(a):下記計算式(1)で示されるセルロースI型結晶化度が30%を超えるセルロー スを含有するリグノセルロース系バイオマスを粉砕し、当該セルロースI型結晶化度を0 ∼30%に低減する工程     結晶化度(%)=〔(Ic−Ia)/Ic〕×100    (1) 〔Icは、X線回折における格子面(002)(格子面間隔=22.4nm)の回折強度 、及びIaは、アモルファス部(格子面間隔=27.3nm)の回折強度を示す〕 (b):(a)工程で得られる粉砕物を水で洗浄する工程 (c):(b)工程で得られる固形物を加水分解酵素により加水分解して糖化物を得る工 程 (d):(c)工程で得られる糖化物を糸状菌で発酵させて有機酸を得る工程 【請求項2】  (a)工程が、竪型ローラーミル、容器駆動媒体ミル、媒体攪拌式ミル及び圧密せん断 ミルから選ばれる粉砕機を用いて行なわれる請求項1記載の有機酸の製造方法。 【請求項3】  容器駆動媒体ミルが、ロッド又はボールを充填した振動ミルである請求項2記載の有機 酸の製造方法。 【請求項4】  (a)工程でアルカリを添加する請求項1∼3の何れか1項に記載の有機酸の製造方法 。 【請求項5】  アルカリの使用量が、リグノセルロース系バイオマス100質量部に対して1∼50質 量部である請求項4に記載の有機酸の製造方法。 【請求項6】  アルカリが、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウ ム又は水酸化カルシウムである請求項4又は5に記載の有機酸の製造方法。 【請求項7】  (b)工程において、粉砕物の水溶性成分残存率が0.5以下になるまで水で洗浄する 請求項1∼6のいずれか1項に記載の有機酸の製造方法。 【請求項8】  水が、さらに水溶性溶媒を含有する、請求項1∼7のいずれかの有機酸の製造方法。 【請求項9】  (b)工程において、(a)工程で得られる粉砕物と水からなる分散液の温度が0∼1 00℃である請求項1∼8のいずれか1項に記載の有機酸の製造方法。 【請求項10】  加水分解酵素がセルラーゼである請求項1∼9の何れか1項に記載の有機酸の製造方法 。 【請求項11】  セルラーゼが、トリコデルマ リーゼ(Trichoderma reesei)由来 のセルラーゼである請求項10記載の有機酸の製造方法。 【請求項12】  有機酸が、乳酸又はフマル酸である請求項1∼11の何れか1項に記載の有機酸の製造 方法。 【請求項13】  糸状菌が、リゾプス属(Rhizopus)に属する微生物である請求項1∼12の何 れか1項に記載の有機酸の製造方法。 【発明の詳細な説明】 【技術分野】 50 40 30 20 10

(3) 【0001】  本発明は、バイオマスからの有機酸の製造方法に関する。 【背景技術】 【0002】

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 バイオマスから燃料や化学品の原料を生産しようとする、バイオリファイナリーの研究 ・開発が注目を集めている。しかし、工業化されているバイオリファイナリーでは、主に トウモロコシやサトウキビなどの穀物に含まれるデンプン質または糖質を原料とするため 、食糧の供給への影響が懸念されている。そこで、サトウキビバガスやイナワラ等の植物 の非可食部に含まれるリグノセルロース系バイオマスが原料として注目され始めている。 【0003】  リグノセルロース系バイオマスは主に植物の葉や茎に含まれており、セルロースにリグ ニン及びヘミセルロースが強固に結合する構造を有する。そのため加水分解反応の効率が 著しく低く、加水分解は、化学的には強アルカリまたは強酸を用いて行う必要がある。  環境負荷の大きい強酸または強アルカリの使用を回避する方法として、リグノセルロー ス系バイオマスを粉砕後、加水分解酵素で加水分解する方法が知られている。しかし得ら れた糖液を原料として、有用物を発酵生産する場合、変換率の低下やラグタイムの発生等 の阻害が起きるためその回避策が望まれている。その原因の一つとして、多糖類とエステ ルを形成している酢酸等の有機酸が知られている(例えば、特許文献1参照)。 【0004】  特許文献1は、バイオマスを、アンモニアを含有する水溶液と接触させて固液分離し、 酢酸等の阻害要因を分離し、残存固形物をその後の工程に使用するエタノール等のバイオ マス生産物の製造方法を開示している。特許文献2は、バイオマスを糖化した後、膜ろ過 により低分子の発酵阻害物質を除去する方法を開示している。また特許文献3は、糸状菌 を菌体集合体のペレットとして培養し、乳酸を生産する方法を開示している。この方法で は、発酵後、菌体と培地の分離が容易である旨を記載している。 【先行技術文献】 【特許文献】 【0005】 【特許文献1】特表2010−536376号公報 【特許文献2】国際公開第2010/067785号パンフレット 【特許文献3】特開平6−253871号公報 【発明の概要】 【発明が解決しようとする課題】 【0006】  しかしながら、特許文献1の方法では、危険なアンモニアを必要とするだけでなく、有 機酸を目的とした場合、発酵後の有機酸の収量も十分ではない。特許文献2では、発酵阻 害物質の分離に膜ろ過を必要とし、生産性が低い。さらに特許文献3では、発酵阻害物質 を除去することについての記載は全くない。 【0007】  バイオマス生産物として有機酸を工業的に大量生産するためには、安全で、簡便な方法 で発酵阻害物質を除去する必要がある。  従って、本発明は、安全で簡便な手段で、発酵阻害物質を除去し、効率良く有機酸を製 造する方法を提供することに関する。 【課題を解決するための手段】 【0008】  そこで本発明者は、セルロース系バイオマスを酵素で加水分解し、次いで発酵を行う選 択的な有機酸の製造法について検討してきたところ、セルロース系バイオマスを酵素加水 分解に付す前の粉砕工程でセルロース結晶化度を30%以下に低減するまで強力に粉砕す れば、その後のセルロースの加水分解が効率的に進行することを見出した。ところが、加 水分解後の糖化物を発酵して有機酸の生産を行ったところ、有機酸の選択性が低く、多量 50 40 30 20 10

(4) のアルコールが副生してしまうことが判明した。

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 そこで発酵工程の有機酸の選択性を向上させるべく種々検討した結果、前記粉砕工程で セルロースの結晶化度を低下させると糖化反応は効率が向上するが、発酵工程の有機酸選 択率は、高くなく、この特殊な粉砕工程の後に粉砕物を水で洗浄する工程を加えれば、全 く意外にも有機酸の選択性が飛躍的に向上することを見出した。 【0009】  すなわち、本発明は、下記工程(a)∼(d)を含む有機酸の製造方法を提供するもの である。 (a):下記計算式(1)で示されるセルロースI型結晶化度が30%を超えるセルロー スを含有するリグノセルロース系バイオマスを粉砕し、当該セルロースI型結晶化度を0 ∼30%に低減する工程     結晶化度(%)=〔(Ic−Ia)/Ic〕×100    (1) 〔Icは、X線回折における格子面(002)(格子面間隔=22.4nm)の回折強度 、及びIaは、アモルファス部(格子面間隔=27.3nm)の回折強度を示す〕 (b):(a)工程で得られる粉砕物を水で洗浄する工程 (c):(b)工程で得られる固形物を加水分解酵素により加水分解して糖化物を得る工 程 (d):(c)工程で得られる糖化物を糸状菌で発酵させて有機酸を得る工程 【発明の効果】 【0010】  本発明によれば、リグノセルロース系バイオマス由来の糖液から糸状菌を用いて、高い 変換率、変換速度で安全、かつ簡便に有機酸を得ることができる。 【発明を実施するための形態】 【0011】  本発明は、リグノセルロース系バイオマスを原料として有機酸を製造する方法であり、 次の(a)工程∼(d)工程を含む。 (a):下記計算式(1)で示されるセルロースI型結晶化度が30%を超えるセルロー スを含有するリグノセルロース系バイオマスを粉砕し、当該セルロースI型結晶化度を0 ∼30%に低減する工程     結晶化度(%)=〔(Ic−Ia)/Ic〕×100    (1) 〔Icは、X線回折における格子面(002)(格子面間隔=22.4nm)の回折強度 、及びIaは、アモルファス部(格子面間隔=27.3nm)の回折強度を示す〕 (b):(a)工程で得られた粉砕物を水で洗浄する工程 (c):(b)工程で得られた固形物を加水分解酵素により加水分解して糖化物を得る工 程 (d):(c)工程で得られる糖化物を糸状菌で発酵させて有機酸を得る工程 【0012】 <原料のリグノセルロース系バイオマス>  本発明において、「リグノセルロース系バイオマス」とは、セルロース、ヘミセルロー ス、及びリグニンを主成分とするバイオマスを意味する。リグノセルロース系バイオマス としては、上記成分を主成分として含むバイオマスであれば特に制限なく用いることがで きる。具体例としては、イナワラ、籾殻、麦わら、バガス、ヤシ殻、コーンコブ、雑草、 木材、空果房等のパーム残渣並びにそれらから製造されたパルプ、及び紙などが挙げられ る。さらに、食品産業、建築業、家庭から排出される廃棄物なども含まれうる。  本発明に用いられるリグノセルロース系バイオマスは、セルロース含有量が20質量% 以上、好ましくは40質量%以上、より好ましくは60質量%以上のものである。本発明 におけるセルロース含有量は、リグノセルロース系バイオマスから水を差し引いた残余の 成分中のセルロース量及びヘミセルロース量の合計量を意味する。  市販のパルプの場合、セルロース含有量は、一般には75∼99質量%であり、他の成 分はリグニン等を含む。また、市販のシート状パルプのセルロースI型結晶化度は、通常 50 40 30 20 10

(5) 60%以上である。

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 これらのリグノセルロース系バイオマスに含まれるセルロースのセルロースI型結晶化 度は30%を超えるものである。 【0013】  また、本発明に用いられるリグノセルロース系バイオマスの水分量は、次の(a)粉砕 工程によりセルロースのセルロースI型結晶化度を容易に低下させることができ、その後 の糖化物及び有機酸の生産を効率よく行うことできる観点から、20質量%以下が好まし く、15質量%以下がより好ましく、10質量%以下が更に好ましい。 【0014】 <(a)粉砕工程>  本発明においては、前記のリグノセルロース系バイオマスを粉砕し、リグノセルロース 系バイオマスに含まれるセルロースのセルロースI型結晶化度(「結晶化度」ともいう) を0∼30%に低減する。 【0015】 〔セルロースI型結晶化度〕  本発明において調製される非晶化セルロースは、セルロースI型結晶化度を30%以下 に低下させたものである。セルロースI型結晶化度は、X線回折法による回折強度値から Segal法により算出したもので、下記計算式(1)により定義される。   セルロースI型結晶化度(%)=〔(Ic−Ia)/Ic〕×100  (1) 〔Icは、X線回折における格子面(002面)(格子面間隔=22.4nm)の回折強 度、Iaは、アモルファス部(格子面間隔=27.3nm)の回折強度を示す〕  結晶化度が30%以下であれば、セルロースの化学反応性が向上し、(c)工程の加水 分解が進行しやすくなる。この観点から、粉砕物の結晶化度としては、25%以下が好ま しく、20%以下がより好ましく、10%以下がより好ましく、分析でセルロースI型結 晶が検出されない0%が更に好ましい。なお、計算式(1)で定義されたセルロースI型 結晶化度では計算上マイナスの値になる場合があるが、マイナスの値の場合のセルロース I型結晶化度は0%とする。  ここで、セルロースI型結晶化度とは、セルロースの結晶領域量の全量に対する割合の ことである。また、セルロースI型とは、天然セルロースの結晶形のことである。セルロ ースI型結晶化度は、セルロースの物理的、化学的性質とも関係し、その値が小さいほど 、セルロースの結晶性が低く、非結晶部分が多い。そのため、本発明者の考察によれば、 セルロースI型結晶化度を低下させることで、セルロースの伸び、柔軟性、水や溶媒に対 する溶解性、化学反応性は上昇すると共に、次工程(b)によりリグノセルロース系バイ オマスから発酵阻害物質が除去されやすくなると考えられている。 【0016】  このようにリグノセルロース系バイオマスに含まれるセルロースのセルロースI型結晶 化度を低下させるには、公知の粉砕機を用いて行うことができる。用いられる粉砕機に特 に制限はなく、セルロース原料を小粒子径化することができる装置であればよい。  粉砕機の具体例としては、高圧圧縮ロールミルや、ロール回転ミルなどのロールミル、 リングローラーミル、ローラーレースミル又はボールレースミルなどの竪型ローラーミル 、転動ボールミル、振動ボールミル、振動ロッドミル、振動チューブミル、遊星ボールミ ル又は遠心流動化ミルなどの容器駆動媒体ミル、塔式粉砕機、攪拌槽式ミル、流通槽式ミ ル又はアニュラー式ミルなどの媒体攪拌式ミル、高速遠心ローラーミルやオングミルなど の圧密せん断ミル、乳鉢、石臼、マスコロイダー、フレットミル、エッジランナーミル、 ナイフミル、ピンミル、カッターミルなどが挙げられる。これらの中では、リグノセルロ ース系バイオマスの粉砕効率及び生産性の向上の観点から、容器駆動式媒体ミル又は媒体 攪拌式ミルが好ましく、容器駆動式媒体ミルがより好ましく、振動ボールミル、振動ロッ ドミル又は振動チューブミルなどの振動ミルが更に好ましく、振動ロッドミルが更に好ま しい。 【0017】 50 40 30 20 10

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 本発明の好ましい振動ロッドミルは、円柱形の空間を有し、該円柱形の空間の中心軸が 略水平になるように配置され、かつ、該中心軸に対し略垂直な面内方向に振動可能に保持 された容器(A)と、該円柱形の空間の中心軸と略平行になるようにかつ振動可能に配置 された1又は2本以上の棒状媒体であるロッド(B)とを備える。また、振動ボールミル は、1又は2個以上の球状媒体であるボール(C)を備える。 【0018】  ロッド(B)又はボール(C)の材質としては、特に制限はなく、例えば、鉄、ステン レス、アルミナ、ジルコニア、炭化珪素、チッ化珪素、ガラス等が挙げられる。  ロッド(B)又はボール(C)の外径としては、好ましくは0.5∼200mm、より 好ましくは1∼100mm、更に好ましくは5∼50mmの範囲である。  また、ロッド(B)としては、断面が四角形、六角形等の多角形、円形、楕円形等のも のを用いることができる。  ロッド(B)の長さとしては、粉砕機の容器の長さよりも短いものであれば特に限定さ れない。ロッド(B)の大きさが上記の範囲であれば、所望の粉砕力が得られるとともに 、ロッド(B)のかけら等が混入して粉末セルロースが汚染されることなく効率的にセル ロースを非晶化させることができる。 【0019】  ロッド(B)又はボール(C)の充填率は、振動ミルの機種により好適な範囲が異なる が、好ましくは10∼97体積%、より好ましくは15∼95体積%の範囲である。充填 率がこの範囲内であれば、セルロースとロッド又はボールとの接触頻度が向上するととも に、媒体の動きを妨げずに、粉砕効率を向上させることができる。ここで充填率とは、容 器(A)内部の円柱形の空間の容積に対するロッド(B)又はボール(C)の見かけの体 積をいう。 【0020】  本発明で用いられる振動ロッドミルとしては、中央化工機株式会社製の振動ミル、株式 会社吉田製作所製の小型振動ロッドミル1045型、ドイツのフリッチュ社製の振動カッ プミルP−9型、日陶科学株式会社製の小型振動ミルNB−O型等を用いることができる 。  また、振動ボールミルとしては、振動ロッドミルと同様の装置、例えば中央化工機株式 会社製の振動ミルなどを用いることができる。処理方法としては、バッチ式、連続式のど ちらでもよい。  粉砕処理がバッチ処理の場合、媒体をスムーズに振動させる観点から、容器(A)内部 の円柱形の空間に充填された被粉砕原料の体積が、当該空間の体積からロッド(B)又は ボール(C)の体積を除いた容積(以下、粉砕容器内実体積と呼ぶ)の99体積%以下で あることが好ましく、95体積%以下であることがより好ましく、90体積%以下である ことが更に好ましく、80体積%以下であることが更に好ましい。  一方、被粉砕原料が少ないと、粉砕に関係のない容器(A)及びロッド(B)又はボー ル(C)、並びにロッド(B)又はボール(C)同士の衝突が増え、粉砕効率が低下する 。よって粉砕効率を向上させる観点から、充填された被粉砕原料の体積は、容器内実体積 の1体積%以上であることが好ましく、2体積%以上であることがより好ましく、3体積 %以上であることが更に好ましい。  ここで、容器(A)内部の円柱形の空間に充填された被粉砕原料の体積とは、充填され た被粉砕原料の重量を、該原料の見かけ比重で除して得られた体積を意味する。  粉砕処理が連続処理である場合には、被粉砕原料の容器(A)内部の円柱形の空間の滞 留量の好ましい様態は、粉砕処理がバッチ処理である場合の「被粉砕原料の充填量」を「 被粉砕原料の、容器(A)内部の円柱形の空間の滞留量」に、「充填された被粉砕原料の 体積」を「容器(A)内部の円柱形の空間に滞留している被粉砕原料の体積」に読み替え ることを除き、同様である。  粉砕処理時の容器(A)の振動数、振幅は特に限定されないが、振動数と振幅を増加さ せることで、容器(A)及びロッド(B)又はボール(C)に与えられる加速度を大きく 50 40 30 20 10

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することができ、被粉砕原料の粉砕速度を高めることができる。  粉砕速度を高める観点から、容器(A)の振動数は、8Hz以上であることが好ましく 、10Hz以上であることがより好ましく、12Hz以上であることが更に好ましい。ま た、容器(A)の振幅は、5mm以上であることが好ましく、6mm以上であることがよ り好ましく、7mm以上であることが更に好ましい。  一方、装置負荷の観点から、容器(A)の振動数は40Hz以下であることが好ましく 、35Hz以下であることがより好ましく、30Hz以下であることが更に好ましい。ま た、容器(A)の振幅は、25mm以下であることが好ましく、20mm以下であること がより好ましく、18mm以下であることが更に好ましい。 【0021】  振動ロッドミル又は振動ボールミルの処理時間としては、振動ロッドミル又は振動ボー ルミルの種類、ロッド又はボールの種類、大きさ及び充填率等により一概に決定できない が、結晶化度を低下させる観点から、好ましくは0.01∼50hr、より好ましくは0 .05∼20hr、更に好ましくは0.1∼10hrである。処理温度は、特に制限はな いが、熱による劣化を防ぐ観点から、好ましくは5∼250℃、より好ましくは10∼2 00℃である。 【0022】  また、本工程では、セルロースI型結晶化度を低下させ、その後の糖化物及び有機酸の 生産を効率良く行うことができる観点から、アルカリを添加することが好ましい。好まし いアルカリとしては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナ トリウム、水酸化カルシウムが挙げられ、より好ましくは、水酸化ナトリウム、水酸化カ リウムであり、更に好ましくは水酸化ナトリウムである。  本工程で添加するアルカリの態様としては粉状、粒状、塊状、溶媒に溶解させた溶液、 又は溶媒に分散させた分散液が挙げられ、好ましくは粉状、粒状、又は塊状である。  アルカリの使用量は、セルロースI型結晶化度を低下させ、その後の糖化物及び有機酸 の生産を効率良く行うことができる観点から、リグノセルロース系バイオマス100質量 部に対して、好ましくは1∼50質量部であり、より好ましくは3∼30質量部であり、 更に好ましくは5∼10質量部である。 【0023】  上記の粉砕方法により、原料のリグノセルロース系バイオマスから、セルロースI型結 晶化度が30%以下の非晶化セルロースである粉砕物を効率よく得ることができ、振動ミ ル処理の際に、ミル内部に粉砕物が固着せずに、乾式にて処理することができる。  得られる粉砕物の平均粒径は、この粉砕物を(c)工程での原料として用いる際の化学 反応性及び取扱い性の観点から、好ましくは20∼150μm、より好ましくは25∼1 50μm、より好ましくは30∼100μmである。特に平均粒径が25μm以上であれ ば、非晶化セルロースを水等の液体と接触させたときに「ママコ」になることを抑えるこ とができる。  なお、粉砕物の平均粒径は、レーザー回折散乱法により体積基準に従って求められる平 均値をいう。 【0024】  また、本発明における振動ミル処理には、ロッド又はボールを充填した振動ミルでの粉 砕、非晶化をより効率的に行う観点から、嵩密度が100kg/m3以上のリグノセルロ ース系バイオマスを用いることが好ましく、120kg/m3以上がより好ましく、15 0kg/m3以上が更に好ましい。この嵩密度が100kg/m3以上であれば、原料のリ グノセルロース系バイオマスが適度な容積を有するために取扱い性が向上する。また、振 動ミルへの原料仕込み量を多くすることができるので、処理能力が向上する。一方、この 嵩密度の上限としては、取扱い性及び生産性の観点から、好ましくは500kg/m3以 下、より好ましくは400kg/m3以下、更に好ましくは350kg/m3以下である。 これらの観点から、この嵩密度としては、好ましくは100∼500kg/m3、より好 ましくは120∼400kg/m3、更に好ましくは150∼350kg/m3である。 50 40 30 20 10

(8) 【0025】

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 本発明では、振動ミルに供給するリグノセルロース系バイオマスを前処理することが好 ましい場合もある。そのような場合は、例えば、リグノセルロース系バイオマスを押出機 で処理することで、リグノセルロース系バイオマスの嵩密度を、前述の好ましい範囲にす ることができる。  リグノセルロース系バイオマスを押出機に投入する前には粗粉砕しておくことが好まし い。粗粉砕物の大きさとしては、好ましくは1∼50mm、より好ましくは1∼30mm である。1∼50mmに粗粉砕することにより、押出機処理を効率良く容易に行うことが でき、粉砕に要する負荷を軽減することができる。 【0026】 <(b)洗浄工程>  (b)洗浄工程では、(a)工程で得られた粉砕物を水で洗浄する。水は、水溶性溶媒 を含む水溶液、酸性水溶液、アルカリ水溶液であってもよい。  水溶性溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコ ール類;エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール等の多価アル コール類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;ポリエチレングリコール等のポ リエーテル類;超臨界二酸化炭素等が挙げられる。これらは単独で又は2種以上を組み合 わせて使用でき、溶媒を変えて繰り返し行うことも可能である。  なかでも、(d)工程で糸状菌の成長及び代謝を阻害する阻害要因を除去する観点、及 びその他の阻害要因を除去する観点から、水が好ましい。 【0027】  本工程で用いる水のpHは(d)工程で糸状菌の成長及び代謝を阻害する阻害要因を除 去する観点から、好ましくは4以上であり、より好ましくは6以上である。一方、安全性 の観点から好ましくは14以下、より好ましくは9以下、更に好ましくは8以下である。  本工程で用いる水のpHは、好ましくは4∼14であり、より好ましくは4∼9であり 、更に好ましくは6∼8である。  pHの調整には、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物;炭酸 ナトリウム、炭酸水素ナトリウム等の炭酸アルカリ、炭酸水素アルカリ;水酸化カルシウ ム等のアルカリ土類金属水酸化物;炭酸カルシウム等の炭酸アルカリ土類金属等の無機ア ルカリ;塩酸、リン酸、硝酸、硫酸等の無機酸、乳酸等の有機酸が好ましい。 【0028】  (b)工程の洗浄処理の程度は、水溶性成分残存率によって管理するのが好ましい。水 溶性成分残存率とは、洗浄工程後の粉砕物中の水溶性成分の質量を、洗浄工程前の粉砕物 中の水溶性成分の質量で割った値を云う。(a)工程で得られた粉砕物の洗浄は、当該水 溶性成分残存率が十分に小さくなるまで行うのが好ましい。  例えば、(a)工程で得られた粉砕物を回分式撹拌槽などで洗浄する方法では、回分式 撹拌槽などに入れた水中に粉砕物を分散し、分散液からろ過又は遠心分離により、ろ液又 は上清を分離し、固形分を得る。好ましくは、固形分を再び回分式撹拌槽などで水中に分 散し、上記の固液分離を行う操作を1∼n回繰り返す。各回で加えた水、及びろ液又は上 清の質量から下記式(2)により水溶性成分残存率を算出できる。  水溶性成分残存率 = (v1/w1)×(v2/(v1+w2))×・・・×(vn/(v
n-1+wn))  (2)

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20

30

40

 ここで、wnは洗浄n回目に添加した水の質量、vnは洗浄n回目の固液分離操作後の沈 殿画分に存在している液の質量である。vnは洗浄n回目の固液分離操作後によって除去 された液画分の質量をmnとすると、vn=vn-1+wn−mnとして計算される(ただしv0 =0)。 式(2)は、粉砕物中の水溶性成分が沈殿物への分配や吸着することなく全て水相に溶 解するという理想的な状態を仮定したときの洗浄効率を表している。本発明における阻害 物質のすべてが当てはまるとは限らないが、この値によって概ね制御される。  また、(a)工程で得られた粉砕物をフィルタープレス等で連続して洗浄する方法では 50

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、水中に粉砕物を分散し、分散液をろ過してフィルターに残った固形分へ水を供給する操 作を繰り返す。連続して洗浄する方法においては式(2)での計算が困難であるため、粉 砕物中に含まれる水溶性成分をトレーサー物質として下記式(2’)より水溶性成分残存 率を算出できる。この場合、水性成分が飽和溶解度や吸着、化学結合などにより完全に溶 解していない場合には不適切であるため、別途可溶性のトレーサー物質を添加することで 水溶性成分残存率を算出してもよい。水溶性成分の分析方法は、共存物質に影響を受けず 且つその水溶性成分の分析方法に適していればどんな方法でもよく、吸光度、液体クロマ トグラフィー、ガスクロマトグラフィー、電気伝導度などがあげられる。  水溶性成分残存率(連続して洗浄する場合) = 洗浄後のトレーサー物質質量/洗浄 後のトレーサー物質質量 (2’) 【0029】  本発明において、水溶性成分残存率は、(d)工程で糸状菌の成長及び代謝を阻害する 物質を除去し、有機酸の生産性を高める観点から、好ましくは0.5以下であり、より好 ましくは0.4以下であり、更に好ましくは0.2以下であり、更に好ましくは0.1以 下ある。一方、水溶性成分残存率は、水の使用量を抑制することによる環境負荷及び経済 的観点から、好ましくは0.001以上である。  また、水溶性成分残存率は、好ましくは0.001∼0.5であり、より好ましくは0 .001∼0.4であり、更に好ましくは0.001∼0.2であり、更に好ましくは0 .001∼0.1である。 【0030】  より好ましい水溶性成分残存率にするには、(a)工程で得られた粉砕物の固形分1質 量部に対し合計で1質量部以上の水で洗浄するのが好ましく、更に3質量部以上、更に5 質量部以上、更に10質量部以上の水で洗浄するのが好ましい。一方、環境負荷、及び経 済的観点から、(a)工程で得られた粉砕物の固形分1質量部に対し合計で100質量部 以下の水で洗浄するのが好ましく、更に50質量部以下、更に40質量部以下、更に30 質量部以下の水で洗浄するのが好ましい。  また、(b)洗浄工程では、(a)工程で得られた粉砕物の固形分1質量部に対し合計 で1∼100質量部、更に3∼50質量部、更に5∼40質量部、更に10∼30質量部 の水で洗浄するのが好ましい。 【0031】  本工程においては、(d)工程で糸状菌の成長及び代謝を阻害する物質を除去し、有機 酸の生産性を高める観点から、(a)工程で得られた粉砕物と水からなる分散液の温度は 、好ましくは0℃以上であり、より好ましくは10℃以上であり、更に好ましくは20℃ 以上である。また、エネルギー効率の観点から、好ましくは100℃以下であり、より好 ましくは90℃以下であり、更に好ましくは80℃以下である。  また、(a)工程で得られた粉砕物と水からなる分散液の温度は、好ましくは0∼10 0℃であり、より好ましくは10∼90℃であり、更に好ましくは20∼80℃である。 【0032】 <(c)加水分解酵素を用いて糖化物を得る工程>  (c)工程では、(b)工程で得られた固形物を加水分解酵素により加水分解して糖化 物を得る。  本発明において(c)工程に使用される加水分解酵素としては、セルロースやヘミセル ロースに対して加水分解活性を有する酵素であれば特に制限はない。例えば、市販のセル ラーゼ製剤やヘミセルラーゼ製剤、動物、植物、微生物由来のセルラーゼやヘミセルラー ゼを使用することができる。  セルラーゼとしては、例えば、Cellic Ctec、Cellic Ctec2、 Celluclast 1.5L(ノボザイムズ社)、Accellerase 100 0、Accellerase 1500、Accellerase DUET(ジェネン コア社)等のトリコデルマ リーゼ(Trichoderma reesei)由来のセ ルラーゼ、バチルス エスピー(Bacillus sp.)KSM−N145(FER 50 40 30 20 10

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M P−19727)株由来のセルラーゼ、バチルス エスピー(Bacillus s p.)KSM−N252(FERM P−17474)株由来のセルラーゼ、バチルス  エスピー(Bacillus sp.)KSM−N115(FERM P−19726) 株由来のセルラーゼ、バチルス エスピー(Bacillus sp.)KSM−N44 0(FERM P−19728)株由来のセルラーゼ、バチルス エスピー(Bacil lus sp.)KSM−N659(FERM P−19730)株由来のセルラーゼ、 トリコデルマ ビリデ(Trichoderma viride)、アスペルギルス ア クレアタス(Aspergillus acleatus)、クロストリジウム サーモ セラム(Clostridium thermocellum)、クロストリジウム ス テルコラリウム(Clostridium stercorarium)、クロストリジ ウム ジョスイ(Clostridium josui)、セルロモナス フィミ(Ce llulomonas fimi)、アクレモニウム セルロリティクス(Acremo nium celluloriticus)、イルペックス ラクテウス(Irpex  lacteus)、アスペルギルス ニガー(Aspergillus niger)、 フミコーラ インソレンス(Humicola insolens)由来のセルラーゼ混 合物、パイロコッカス ホリコシ(Pyrococcus horikoshii)由来 の耐熱性セルラーゼ等が挙げられる。  これらのなかで、効率良く糖を得ることができる点から、トリコデルマ リーゼ(Tr ichoderma reesei)由来のセルラーゼ、トリコデルマ ビリデ(Tri choderma viride)由来のセルラーゼ、フミコーラ インソレンス(Hu micola insolens)由来のセルラーゼが好ましく、トリコデルマ リーゼ (Trichoderma reesei)由来のセルラーゼがより好ましく、Cell ic Ctec、Cellic Ctec2(ノボザイムズ社)、Accelleras e DUET(ジェネンコア社)、TP−60(明治製菓株式会社)、あるいはウルトラ フロL(ノボザイムズ社)が更に好ましい。 【0033】  また、ヘミセルラーゼとしては、例えば、バチルス エスピー(Bacillus s p.)KSM−N546(FERM P−19729)株由来のキシナラーゼ、アスペル ギルス ニガー(Aspergillus niger)、トリコデルマ ビリデ(Tr ichoderma viride)、フミコーラ インソレンス(Humicola  insolens)、又はバチルス アルカロフィルス(Bacillus alcal opHilus)由来のキシラナーゼ、サーモマイセス(Thermomyces)、オ ウレオバシジウム(Aureobasidium)、ストレプトマイセス(Strept omyces)、クロストリジウム(Clostridium)、サーモトガ(Ther motoga)、サーモアスクス(Thermoascus)、カルドセラム(Cald ocellum)、又はサーモモノスポラ(Thermomonospora)属由来の キシラナーゼ等が挙げられる。  また、上記のセルラーゼ混合物中に含まれるヘミセルラーゼ活性を持つ酵素を利用する こともできる。 【0034】  加水分解酵素は、単独で用いることもできるが、更に効率的な糖の製造にはこれら酵素 を組み合わせて用いることが効果的である。また、これらの酵素に対してβ−グルコシダ ーゼ等の特定のセルラーゼ成分を更に添加することによって糖製造の効率を向上させるこ ともできる。添加するβ−グルコシダーゼの例としてはアスペルギルス ニガー(Asp ergillus niger)由来の酵素(例えば、ノボザイムズ社製ノボザイム18 8やメガザイム社製β−グルコシダーゼ)やトリコデルマ リーゼ(Trichoder ma reesei)由来の酵素、ペニシリウム エメルソニイ(Penicilliu m emersonii)由来の酵素等が挙げられる。 【0035】  (c)工程は、まず、(b)工程で得られた固形物を水性媒体に懸濁して懸濁液を調製 50 40 30 20 10

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する。水性媒体は加水分解酵素が失活しない範囲においては特に制限はないが、水、緩衝 液、酸性水溶液、又はアルカリ性水溶液を用いることが好ましい。 【0036】  (c)工程の反応条件は、使用する酵素の特性に合わせて選択することが可能であるが 、糖化物及び有機酸の生産性の観点から、基質濃度が5∼200(g/L)の基質懸濁液 に対して、加水分解酵素を、好ましくは0.01∼10体積%相当、更に0.1∼2体積 %相当となるように添加するのが好ましい。  また、pHは、2∼10、更にpH3∼7、更に4∼6が好ましい。  また、反応温度は、好ましくは10∼90℃、より好ましくは20∼70℃、更に好ま しくは40∼60℃である。また、反応時間は、30分∼7日間、好ましくは0.5∼5 日間である。 【0037】  加水分解反応終了後の糖化物は、糖化物中の不溶物を適宜ろ過してもよいし、そのまま の状態で次の工程(d)に供しても構わない。 【0038】  工程(c)によって製造される糖化物に含まれる単糖の質量(以下、「全糖量」とも称 する)は、有機酸の収率向上の観点から、加水分解反応に供した洗浄後のリグノセルロー ス系バイオマスの粉砕物の全質量に対して、好ましくは10∼90質量%であり、より好 ましくは、20∼80質量%であり、更に好ましくは、30∼70質量%である。  単糖としては、例えば、グルコース、フルクトース、マンノース、ガラクトース、キシ ロース、アラビノース等が挙げられる。 【0039】 <(d)糖化物を発酵させて有機酸を得る工程>  (d)工程では、(c)工程で得られた糖化物を糸状菌で発酵させる。  (d)工程で用いる培地は、(c)工程で製造された糖化物を含む。  培地は、一般的には、炭素源、窒素源、および無機塩を含むが、(c)工程で製造され た糖化物中に培養に必要なこれらの栄養源が十分に含まれている場合には、適宜濃度を調 節した上記糖化物のみを用いることもできるし、必要によって、糖化物のほかに栄養源を 添加することによって培地を調製してもよい。 【0040】  本工程では、上記培地に、有機酸を産生し得る糸状菌を添加し、培養することによって 有機酸を生産する。本発明に係る有機酸は、酸性基としてカルボキシル基を有する化合物 である。このような有機酸としては、例えば、乳酸、フマル酸、イタコン酸、リンゴ酸、 ピルビン酸、酒石酸、コハク酸、マレイン酸、グルタル酸、レブリン酸、プロピオン酸、 グルコン酸、アスコルビン酸、クエン酸、コウジ酸、ジピコリン酸、及びアコニット酸が 挙げられる。このうち、乳酸、フマル酸が好ましい。  上記有機酸はこれらを産生しうる糸状菌を培養することによって製造されうる。これら の糸状菌としては、リゾプス属(Rhizopus)に属する微生物が挙げられる。具体 的には、L−乳酸やフマル酸を多量に生産する観点からリゾプス・オリザエ(Rhizo pus oryzae)、リゾプス・デレマー(Rhizopus delemar)が 好ましい。 【0041】  培養温度は、好ましくは20∼40℃、より好ましくは30∼37℃である。また、培 地のpHは、菌体の生育や、有機酸の生産性の観点から、好ましくは2∼7であり、より 好ましくは4∼6である。pH制御は、水酸化カルシウム、水酸化ナトリウム、炭酸カル シウム、アンモニア、硫酸や塩酸などを用いて行うことが好ましい。 【0042】  培養方法は、嫌気的条件および好気的条件のいずれかの培養方法を適宜採用することが できる。培養に用いる培養槽は、従来公知のものを適宜採用することができる。具体的に は、通気撹拌型培養槽、気泡塔型培養槽、流動床培養槽、及び充填床培養槽などが挙げら 50 40 30 20 10

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れる。有機酸の生産速度の向上のためには、通気撹拌型培養槽、気泡塔型培養槽、及び流 動床培養槽が好ましい。  また、発酵後の培地からの有機酸の分離が容易で、かつ連続的な生産が可能であるとの 観点から、糸状菌はペレット(菌糸塊)を形成させて培養することが好ましい。 ペレット状の糸状菌の培養方法は、公知の方法を採用することができるが、例えば、糸状 菌の胞子を液体培地に植菌後、胞子を発芽させて菌糸とし、その菌糸から菌体を形成させ ペレット化させる。培養後、糸状菌ペレットは、培養液と共に培養槽から抜き出して、培 地からろ別、遠心分離等の操作により分離回収し(d)工程に使用することができる。ま た、培養槽に糸状菌ペレットを残し、同一培養槽で(d)工程を行うことも可能である。 【0043】  当該培養によれば通常、有機酸以外にアルコールが副生する。しかし、本発明によれば (a)工程と(b)工程を組み合わせることにより、有機酸が選択的に得られ、副生アル コール量が低減する。 【0044】  (d)工程の後、当該(d)工程で得られた生成物を原料としてエステルを製造し、得 られたエステルを蒸留する工程を行ってもよい。当該蒸留工程により、(d)工程で得ら れた生成物から、有機酸以外の物を除去することができる。 【0045】  (d)工程で得られる有機酸とアルコールの質量比(有機酸/アルコール)は、有機酸 の収量の観点から、好ましくは1.3以上であり、より好ましくは2.0以上であり、更 に好ましくは3.0以上であり、更に好ましくは4.0以上である。 【0046】  上述した実施形態に関し、本発明はさらに以下の製造方法を開示する。 【0047】 <1>下記工程(a)∼(d)を含む有機酸の製造方法。 (a):下記計算式(1)で示されるセルロースI型結晶化度が30%を超えるセルロー スを含有するリグノセルロース系バイオマスを粉砕し、当該セルロースI型結晶化度を0 ∼30%に低減する工程     結晶化度(%)=〔(Ic−Ia)/Ic〕×100    (1) 〔Icは、X線回折における格子面(002)(格子面間隔=22.4nm)の回折強度 、及びIaは、アモルファス部(格子面間隔=27.3nm)の回折強度を示す〕 (b):(a)工程で得られる粉砕物を水で洗浄する工程 (c):(b)工程で得られる固形物を、加水分解酵素により加水分解して糖化物を得る 工程 (d):(c)工程で得られる糖化物を糸状菌で発酵させて有機酸を得る工程 【0048】 <2>リグノセルロース系バイオマスのセルロース含有量が、好ましくは20質量%以上 、より好ましくは40質量%以上、更に好ましくは60質量%以上である<1>に記載の 有機酸の製造方法。 <3>(a)工程が、好ましくは竪型ローラーミル、容器駆動媒体ミル、媒体攪拌式ミル 及び圧密せん断ミルから選ばれる粉砕機、より好ましくは容器駆動媒体ミル又は媒体攪拌 式ミル、更に好ましくは容器駆動媒体ミル、更に好ましくはロッド又はボールを充填した 振動ミルを用いて行なわれる前記<1>又は<2>に記載の有機酸の製造方法。 <4>(a)工程でアルカリを添加する前記<1>∼<3>のいずれかの有機酸の製造方 法。 <5>アルカリの使用量が、好ましくはリグノセルロース系バイオマス100質量部に対 して1∼50質量部、より好ましくは3∼30質量部、更に好ましくは5∼10質量部で ある前記<4>に記載の有機酸の製造方法。 <6>アルカリが、好ましくは水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭 酸水素ナトリウム又は水酸化カルシウム、より好ましくは水酸化ナトリウム又は水酸化カ 50 40 30 20 10

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リウム、更に好ましくは水酸化ナトリウムである前記<4>又は<5>に記載の有機酸の 製造方法。 <7>(a)工程の粉砕後のセルロースI型結晶化度が、好ましくは25%以下、より好 ましくは20%以下、更に好ましくは10%以下、更に好ましくは0%である前記<1> ∼<6>のいずれかの有機酸の製造方法。 <8>(b)工程において、粉砕物の水溶性成分残存率が、好ましくは0.5以下、より 好ましくは0.4以下、更に好ましくは0.2以下、更に好ましくは0.1以下になるま で水で洗浄する前記<1>∼<7>のいずれかの有機酸の製造方法。 <9>(b)工程において、粉砕物の水溶性成分残存率が、好ましくは0.001以上に なるまで水で洗浄する前記<1>∼<8>のいずれかの有機酸の製造方法。 <10>(b)工程において、粉砕物の水溶性成分残存率が、好ましくは0.001∼0 .5、より好ましくは0.001∼0.4、更に好ましくは0.001∼0.2、更に好 ましくは0.001∼0.1になるまで水で洗浄する前記<1>∼<7>のいずれかの有 機酸の製造方法。 <11>(b)工程において、(a)工程で得られる粉砕物の固形分1質量部に対し合計 で、好ましくは1質量部以上、より好ましくは3質量部以上、更に好ましくは5質量部以 上、更に好ましくは10質量部以上の水で洗浄する、前記<1>∼<10>のいずれかの 有機酸の製造方法。 <12>(b)工程において、(a)工程で得られる粉砕物の固形分1質量部に対し合計 で、好ましくは100質量部以下、より好ましくは50質量部以下、更に好ましくは40 質量部以下、更に好ましくは30質量部以下の水で洗浄する、前記<1>∼<11>のい ずれかの有機酸の製造方法。 <13>(b)工程の洗浄処理において、(a)工程で得られる粉砕物の固形分1質量部 に対し合計で、好ましくは1∼100質量部、より好ましくは3∼50質量部、更に好ま しくは5∼40質量部、更に好ましくは10∼30質量部の水で洗浄する、前記<1>∼ <10>のいずれかの有機酸の製造方法。 <14>(b)工程において、(a)工程で得られる粉砕物と水からなる分散液の温度が 、好ましくは0℃以上であり、より好ましくは10℃以上であり、更に好ましくは20℃ 以上である、前記<1>∼<13>のいずれかの有機酸の製造方法。 <15>(b)工程において、(a)工程で得られる粉砕物と水からなる分散液の温度が 好ましくは100℃以下であり、より好ましくは90℃以下であり、更に好ましくは80 ℃以下である、前記<1>∼<14>のいずれかの有機酸の製造方法。 <16>(b)工程において、(a)工程で得られる粉砕物と水からなる分散液の温度が 好ましくは0∼100℃であり、より好ましくは10∼90℃であり、更に好ましくは2 0∼80℃である、前記<1>∼<13>のいずれかの有機酸の製造方法。 <17>水が、好ましくは水、水溶性溶媒を含む水溶液、酸性水溶液又はアルカリ水溶液 であり、より好ましくは水又は水溶性溶媒を含む水溶液であり、更に好ましくは水である 、前記<1>∼<16>のいずれかの有機酸の製造方法。 <18>(c)工程の加水分解酵素がセルラーゼである前記<1>∼<17>のいずれか の有機酸の製造方法。 <19>(c)工程のセルラーゼが、好ましくはトリコデルマ リーゼ(Trichod erma reesei)由来のセルラーゼ、バチルス エスピー(Bacillus  sp.)KSM−N145(FERM P−19727)株由来のセルラーゼ、バチルス  エスピー(Bacillus sp.)KSM−N252(FERM P−17474 )株由来のセルラーゼ、バチルス エスピー(Bacillus sp.)KSM−N1 15(FERM P−19726)株由来のセルラーゼ、バチルス エスピー(Baci llus sp.)KSM−N440(FERM P−19728)株由来のセルラーゼ 、バチルス エスピー(Bacillus sp.)KSM−N659(FERM P− 19730)株由来のセルラーゼ、トリコデルマ ビリデ(Trichoderma v iride)、アスペルギルス アクレアタス(Aspergillus acleat 50 40 30 20 10

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us)、クロストリジウム サーモセラム(Clostridium thermoce llum)、クロストリジウム ステルコラリウム(Clostridium ster corarium)、クロストリジウム ジョスイ(Clostridium josu i)、セルロモナス フィミ(Cellulomonas fimi)、アクレモニウム  セルロリティクス(Acremonium celluloriticus)、イルペ ックス ラクテウス(Irpex lacteus)、アスペルギルス ニガー(Asp ergillus niger)、フミコーラ インソレンス(Humicola in solens)由来のセルラーゼ混合物、又はパイロコッカス ホリコシ(Pyroco ccus horikoshii)由来の耐熱性セルラーゼであり、より好ましくはトリ コデルマ リーゼ(Trichoderma reesei)由来のセルラーゼ、トリコ デルマ ビリデ(Trichoderma viride)由来のセルラーゼ、又はフミ コーラ インソレンス(Humicola insolens)由来のセルラーゼであり 、更に好ましくはトリコデルマ リーゼ(Trichoderma reesei)由来 のセルラーゼである前記<18>の有機酸の製造方法。 <20>有機酸が、好ましくは乳酸、フマル酸、イタコン酸、リンゴ酸、ピルビン酸、酒 石酸、コハク酸、マレイン酸、グルタル酸、レブリン酸、プロピオン酸、グルコン酸、ア スコルビン酸、クエン酸、コウジ酸、ジピコリン酸又はアコニット酸であり、より好まし くは乳酸又はフマル酸である、前記<1>∼<19>のいずれかの有機酸の製造方法。 <21>糸状菌が、好ましくはリゾプス属(Rhizopus)に属する微生物であり、 より好ましくはリゾプス・オリザエ(Rhizopus oryzae)又はリゾプス・ デレマー(Rhizopus delemar)であり、更に好ましくはリゾプス・オリ ザエ(Rhizopus oryzae)である、前記<1>∼<20>のいずれかの有 機酸の製造方法。 【実施例】 【0049】 <分析方法> [結晶化度の算出]  株式会社リガク製の「Rigaku RINT 2500VC X−RAY diff ractometer」を用いて以下の条件で測定し、上記計算式(1)に基づいてセル ロースI型結晶化度を算出した。   測定条件は、X線源:Cu/Kα−radiation(波長λ=0.154056 nm),管電圧:40kv,管電流:120mA,測定範囲:2θ=5∼45°で測定し た。測定用サンプルは面積320mm2×厚さ1mmのペレットを圧縮し作製した。X線 のスキャンスピードは10°/minで測定した。   Icはとしては2θ=22.6°での回折強度、Iaとしては2θ=18.5°での回 折強度を用いた。 【0050】 [高速液体クロマトグラフ(HPLC)による各種成分の測定]  発酵液を0.0085N硫酸水溶液で適宜希釈し、孔径が0.22μmのセルロースア セテート製メンブレンフィルター(ADVANTEC社製)を用いて濾過を行い、HPL C分析用サンプルとした。HPLCの分析条件は、カラム:ICSep  ICE−IO N−300、溶離液:0.0085N  硫酸、0.4mL/min、検出法:RI(H ITACHI、L−2490)、カラム温度:40℃、注入液量:20μL、保持時間: 40分であった。この分析系における各成分の保持時間は、グルコース:16分、キシロ ース:17分、乳酸:23分、フマル酸:27分、エタノール:34分であった。 【0051】 [水分量の測定]  水分量の測定は、電子式水分計(MOISTUREBALANCE MOC−120H (島津製作所社製))を使用した。上記水分計に試料を設置して測定を開始し、設定温度 である120℃に昇温して、その後120℃で保持した。30秒間における試料の質量変 50 40 30 20 10

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化が0.05%未満になった時を測定終了時とした。測定開始時から測定終了時までの質 量減少率を水分量とした。 【0052】 [水溶性成分残存率の算出]  粉砕物の洗浄を1∼3回行い、上記計算式(2)に基づいて水溶性成分残存率を算出し た。 【0053】 <ペレット化糸状菌の調製> [胞子懸濁液の調製]  菌株は独立行政法人 製品評価技術基盤機構(NITE)より入手した糸状菌R.or yzae NBRC5384を使用した。糸状菌は、試験管内に形成させた斜面状寒天培 地(Difco Potato Dextrose Agar、Becton, Dic kinson and Company)上に菌体を画線/塗布し、室温にて静置培養し 、定期的に継代を行った。菌体使用時には菌体増殖した試験管に10mLの滅菌蒸留水を 添加後、タッチミキサにて4分間撹拌することで胞子を回収し、さらに無菌の蒸留水を添 加して希釈することで1×106spores/mLに調整したものを胞子懸濁液とした 。 【0054】 [糸状菌のペレット化]  ペレット化糸状菌の調製は以下の2段階の培養にて行った。  1段目の培養は、60mLのPDB培地(Difco Potato Dextros e Broth、Becton,Dickinson and Company)を仕込 んだ200mL容バッフル付き三角フラスコを滅菌し、前述の方法で調製した胞子懸濁液 を1×104個−胞子/mLとなるように植菌して27℃,100r/m(PRECI社 、PRXYg−98R)の培養条件にて3日間行った。  2段目の培養は、ペレット形成培地(グルコース(試薬)10質量%、硫酸マグネシウ ム7水和物0.025質量%、硫酸亜鉛7水和物0.009質量%、硫酸アンモニウム0 .1質量%、リン酸二水素カリウム0.06質量%)100mLを仕込んだ500mL容 三角フラスコを滅菌し、5.0gの炭酸カルシウム、並びに1段目の培養液4mLを植菌 して27℃、170r/m(PRECI社、PRXYg−98R)の培養条件にて1.5 日間行った。 【0055】 [ペレットの回収]  上記で得られた糸状菌ペレット培養液を、ガーゼにてろ液のドリップが落ち着くまで1 分程度ろ過し、ウエット状態の糸状菌ペレットを得た。得られたペレットは速やかに発酵 性の評価に供した。 【0056】 <発酵性の評価> [培養方法]  リグノセルロース系バイオマスの酵素糖化液100mL、並びに各種微量成分(硫酸マ グネシウム7水和物0.025質量%、硫酸亜鉛7水和物0.009質量%、硫酸アンモ ニウム0.1質量%、リン酸二水素カリウム0.06質量%、炭酸カルシウム5.0質量 %:いずれも終濃度として)を滅菌済の500mL容三角フラスコに添加し、続いて<ペ レット化糸状菌の調製>で調製した糸状菌ペレット12.5g(ウエット状態)を添加し た。その直後に培養0時間目のサンプリングを行った後、35℃、170r/m(PRE CI社、PRXYg−98R)の培養条件にて培養を行った。48時間目に再度サンプリ ングを行った。 【0057】 [評価方法]  0時間目、及び48時間目の分析値から、(1)糖から乳酸への変換率(P[%])、 50 40 30 20 10

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(2)糖からエタノールへの変換率(Q[%])、(3)生成される乳酸とエタノールの 比率(R[%])、(4)糖からフマル酸への変換率(P’[%])、の4項目を評価軸 とした。各項目の算出式を表1及び式(3)∼(6)に示す。 【0058】 【表1】

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【0059】   糖から乳酸への変換率       P[%]=(L48−L0)/(G0+X0)×100    (3)   糖からエタノールへの変換率       Q[%]=(E48−E0)/(G0+X0)×100    (4)   糖から生成する乳酸とエタノールの比率       R[%]=(L48−L0)/(E48−E0)×100  (5)  糖からフマル酸への変換率    P’[%]=(F48−F0)/(G0+X0)×100  (6) 【0060】 (実施例1∼5)  乾式粉砕サトウキビバガスの水洗の効果 〔バイオマスの乾燥処理〕  サトウキビバガスを80℃にて一晩乾燥させ、水分6質量%の乾燥サトウキビバガスを 得た。サトウキビバガスのセルロース含有量は38%、結晶化度は37%であった。 【0061】 〔(a)リグノセルロース系バイオマスを粉砕する工程〕 〔乾式粉砕処理〕  上記乾燥工程で得られた乾燥サトウキビバガスを振動ミル(中央化工機株式会社製、「 MB−1」、容器全容量3.58L)に50g投入し、ロッドとして、外径30mm、長 さ211mm、材質ステンレス、断面形状が円形のロッド13本を振動ミルに充填(充填 率58体積%)して、振幅8mm、円回転1200r/mの条件で、0.5時間処理を行 った。また、得られた粉砕物の温度は、処理に伴う発熱により、65℃であった。  処理終了後、振動ミル内の壁面や底部にパルプの固着物等はみられなかった。得られた 粉砕物を前記振動ミルから取り出した。粉砕物の結晶化度は6%であった。また、体積基 準の平均粒径は25μmであった。 【0062】 〔(b)粉砕物を洗浄する工程〕  実施例ごとに、粉砕物に対して1∼3回の洗浄操作を実施した。   洗浄1回目:粉砕された粉末50gに蒸留水(W1 単位:グラム)を加え、室温に て10分混合撹拌した。粉砕物と蒸留水からなる分散液の温度は室温であった。続いて遠 心分離(遠心分離機:HITACHI HIMAC CR22GIII、ローター:R9 A、7000r/m、5∼10分)にて固形物を沈降させた後上清(W2)を捨てた。   洗浄2回目:洗浄1回目で得られた沈殿画分に、洗浄1回目で捨てた上清と同重量( W2)の蒸留水を添加して再び混合撹拌した後に1回目と同条件にて遠心分離を行い、上 清(W3)を捨てた。   洗浄3回目:洗浄2回目で得られた沈殿画分に、洗浄2回目で捨てた上清と同重量( 50 40 30 20

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W3)の蒸留水を添加して再び混合撹拌した後に1回目と同条件にて遠心分離を行い、上 清(W4)を捨てた。  実施例1∼5におけるW1∼W4の値を表2示す。また、これらの値から算出された水溶 性成分残存率を表3に示す。 【0063】 【表2】

10

【0064】 〔(c)洗浄工程で得られた固形物を加水分解酵素により加水分解して糖化物を得る工程 〕  洗浄工程にて得られた沈殿画分(固形物)に総重量が250gとなるまで蒸留水を添加 した後、糖化酵素(Cellic Ctec2、ノボザイム社、2.5mL)を添加し、 50℃、150r/m(PRECI社、PRXYg−98R)にて4.5日間糖化反応を 行った。糖化反応終了液はろ紙(no.2、ADVANTEC社)と孔径0.22μmの メンブレンフィルタシステム(IWAKI、Cat no.8030−001)にてろ過 した。得られた液をHPLCにて分析を行った。得られた糖化物中のグルコースとキシロ ースの濃度の合計(G0+X0)を表3に示す。 【0065】 〔(d)糸状菌による糖化物の発酵工程〕  <発酵性の評価>で示した方法にて発酵性の評価を行った。結果を表3に示す。洗浄の 度合いを変化させることにより乳酸とエタノールの生産割合が大きく変化し、洗浄度合い が高いほど乳酸生産の増加が認められた。 【0066】 (比較例1)(b)洗浄工程を行わずに、乾式粉砕サトウキビバガスを酵素糖化して得ら れた糖含有液の発酵  (b)工程を行わない以外は、実施例1と同じ操作を行った。  (c)工程後、得られた液をHPLCにて分析を行った。得られた糖化物中のグルコー スとキシロースの濃度の合計(G0+X0)を表3に示す。  (d)工程後に得られた結果を表3に示す。実施例1に比べて、乳酸への変換率とエタ ノールへの変換率の合計が低く、Rは小さかった。 【0067】 (比較例2)  下記のようにサトウキビバガスのシュレッダー処理を行い、得られた破砕サトウキビバ ガスの水洗工程、及び水洗して得られたサトウキビバガスを乾燥する工程を行った。  次いで、サトウキビバガスに対して、実施例1∼5と同じく、(a)工程、(c)工程 、及び(d)工程を行った。なお、(a)工程後に(b)工程は行わなかった。 【0068】 〔シュレッダー処理工程〕  サトウキビバガスをシュレッダー(COMIX、クロスカットシュレッダーS330) にかけて破砕した。 〔水洗工程〕  前記シュレッダー処理工程で得られた破砕サトウキビバガスに対して合計3回の洗浄操 作を実施した。 50 40 30 20

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  洗浄1回目:サトウキビバガス50gに蒸留水500gを加え、室温にて10分混合 撹拌した。続いてガーゼを引いたヌッチェ上にてスラリーを吸引ろ過し、薬さじで押さえ ることにより285gの液体を分離し捨てた。   洗浄2回目:洗浄1回目で得られたケーク画分に、500gの蒸留水を添加して再び 混合撹拌した後に1回目と同条件にてろ過を行い、480gの液体を分離し捨てた。   洗浄3回目:洗浄2回目で得られたケーク画分に、500gの蒸留水を添加して再び 混合撹拌した後に1回目と同条件にてろ過分離を行い、480gの液体を分離し捨てた。  算出された水溶性成分残存率を表3に示す。 〔乾燥工程〕  上記水洗工程で得られたサトウキビバガスを80℃にて一晩乾燥させ、水分6質量%の 乾燥サトウキビバガスを得た。  (c)工程及び(d)工程で得られた結果を表3に示す。実施例1∼5に比べ、乳酸へ の変換率とエタノールへの変換率の合計が低く、エタノールの生産が高く、乳酸の生産が 低く、Rは小さかった。 【0069】 (実施例6) 乾式アルカリ混合粉砕サトウキビバガスの水洗の効果  (a)工程、(b)工程及び(c)工程を以下のように行った以外は実施例1∼5と同 じ操作を行った。 [(a)リグノセルロース系バイオマスを粉砕する工程] 〔乾式アルカリ混合粉砕処理〕  乾燥サトウキビバガス50gと水酸化ナトリウム(和光純薬工業社製)4.4gを振動 ミル(中央化工機株式会社製、「MB−1」、容器全容量3.58L)に50g投入し、 ロッドとして、外径30mm、長さ211mm、材質ステンレス、断面形状が円形のロッ ド13本を振動ミルに充填(充填率58体積%)して、振幅8mm、円回転1200r/ mの条件で、1時間処理を行った。処理終了後、得られた粉砕物を前記振動ミルから取り 出した。粉砕物の結晶化度は2%であった。また、体積基準の平均粒径は36μmであっ た。 【0070】 〔(b)粉砕物を洗浄する工程〕  得られた粉砕物に対し3回の洗浄操作を実施した。   洗浄1回目:粉砕された粉末60gに蒸留水540gを加え、室温にて10分混合撹 拌した。粉砕物と蒸留水からなる分散液の温度は室温であった。続いて遠心分離(遠心分 離機:HITACHI HIMAC CR22GIII、ローター:R9A、7000r /m、5∼10分)にて固形物を沈降させた後上清を360g捨てた。   洗浄2回目:洗浄1回目で得られた沈殿画分に500gの蒸留水を添加して再び混合 撹拌した後に1回目と同条件にて遠心分離を行い、上清を502g捨てた。   洗浄3回目:洗浄2回目で得られた沈殿画分に、500gの蒸留水を添加して再び混 合撹拌した後に1回目と同条件にて遠心分離を行い、上清を498g捨てた。算出された 水溶性成分残存率を表3に示す。 【0071】 [(c)洗浄工程で得られた固形物に加水分解酵素を用いて糖化物を得る工程]  洗浄工程にて得られたケークに蒸留水添加し合計で250g弱とし、塩酸にてpHを5 .0へ調整した後に総重量が250gになるように蒸留水を添加した。ついで糖化酵素( Cellic Ctec2、ノボザイム社、2.5mL)を添加し、50℃、100r/ m(PRECI社、PRXYg−98R)にて4日間糖化反応を行った。糖化反応終了液 はろ紙(no.2、ADVANTEC社)と孔径0.22μmのメンブレンフィルタシス テム(IWAKI、Cat no.8030−001)にてろ過し、無菌的な液を得た。 なお得られた液をHPLCにて分析を行った。得られた糖化物中のグルコースとキシロー スの濃度の合計(G0+X0)を表3に示す。  また、<発酵性の評価>で示した方法にて発酵性の評価を行った結果を表3に示す。 50 40 30 20 10

(19) 【0072】

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(比較例3) 乾式アルカリ混合粉砕サトウキビバガスを酵素糖化して得られた糖含有液 の発酵  (b)工程を行わない以外は、実施例6と同じ操作を行った。  (c)工程及び(d)工程で得られた結果を表3に示す。実施例6に比べ、乳酸への変 換率とエタノールへの変換率の合計が低く、エタノールの生産が高く、乳酸の生産が低く 、Rは小さかった。 【0073】 (比較例4) サトウキビバガスを水洗後、乾式アルカリ混合粉砕を行い酵素糖化して得 られた糖含有液の発酵  サトウキビバガスの水洗工程、及び水洗して得られたサトウキビバガスを乾燥する工程 を以下のように(a)工程の前に行った。  次いで、サトウキビバガスに対して、実施例6と同じく、(a)工程、(c)工程、及 び(d)工程を行った。なお、(a)工程後に(b)工程は行わなかった。 【0074】 〔水洗工程〕  (a)工程前のサトウキビバガスに対して合計3回の洗浄操作を実施した。  洗浄1回目:サトウキビバガス60gに蒸留水540gを加え、室温にて約10分混合 撹拌した。粉砕物と蒸留水からなる分散液の温度は室温であった。続いて遠心分離(遠心 分離機:HITACHI HIMAC CR22GIII、ローター:R9A、7000 r/m、5∼10分)にて固形物を沈降させた後ガーゼを通して上清203gを捨てた。   洗浄2回目:洗浄1回目で得られた沈殿画分とガーゼ上の固形物とに、540gの蒸 留水を添加して再び混合撹拌した後に1回目と同条件にて遠心分離を行い、ガーゼを通し て上清527gを捨てた。   洗浄3回目:洗浄2回目で得られた沈殿画分とガーゼ上の固形物とに、540gの蒸 留水を添加して再び混合撹拌した後に1回目と同条件にて遠心分離を行い、ガーゼを通し て上清527gを捨てた。算出された水溶性成分残存率を表3に示す。 〔乾燥工程〕  上記水洗工程で得られたサトウキビバガスを80℃にて一晩乾燥させ、水分6質量%の 乾燥サトウキビバガスを得た。  (c)工程及び(d)工程で得られた結果を表3に示す。実施例6に比べ、乳酸への変 換率とエタノールへの変換率の合計が低く、エタノールの生産が高く、乳酸の生産が低く 、Rは小さかった。 【0075】 (実施例7) 乾式粉砕EFB(パームの実を取った後の果房)に対する水洗の効果 〔バイオマスの乾燥処理〕  シュレッダー処理(COMIX、クロスカットシュレッダーS330)したEFBを8 0℃にて一晩乾燥させ、水分5質量%の乾燥EFBを得た。EFBのセルロース含有量は 36%、結晶化度は40%であった。 【0076】 〔(a)リグノセルロース系バイオマスを粉砕する工程〕 〔乾式粉砕処理〕  得られた乾燥EFBを振動ミル(中央化工機株式会社製、「MB−1」、容器全容量3 .58L)に50g投入し、ロッドとして、外径30mm、長さ211mm、材質ステン レス、断面形状が円形のロッド13本を振動ミルに充填(充填率58体積%)して、振幅 8mm、円回転1200r/mの条件で、1.0時間処理を行った。また、得られた粉砕 物の温度は、処理に伴う発熱により、70℃であった。  処理終了後、振動ミル内の壁面や底部にパルプの固着物等はみられなかった。得られた 粉砕物を前記振動ミルから取り出した。粉砕物の結晶化度は0%であった。また、体積基 準の平均粒径は20μmであった。 50 40 30 20 10

(20) 【0077】 〔(b)粉砕物を洗浄する工程〕  得られた粉砕物に対し3回の洗浄操作を実施した。

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  洗浄1回目:粉砕された粉末50gに蒸留水500gを加え、室温にて10分混合撹 拌した。粉砕物と蒸留水からなる分散液の温度は室温であった。続いて遠心分離(遠心分 離機:HITACHI HIMAC CR22GIII、ローター:R9A、7000r /m、5∼10分)にて固形物を沈降させた後上清365gを捨てた。   洗浄2回目:洗浄1回目で得られた沈殿画分に、洗浄1回目で捨てた上清と同重量( 365g)の蒸留水を添加して再び混合撹拌した後に1回目と同条件にて遠心分離を行い 、上清362gを捨てた。   洗浄3回目:洗浄2回目で得られた沈殿画分に、洗浄2回目で捨てた上清と同重量( 362g)の蒸留水を添加して再び混合撹拌した後に1回目と同条件にて遠心分離を行い 、上清361gを捨てた。  算出された水溶性成分残存率を表3に示す。 【0078】 〔(c)洗浄工程で得られた固形物に加水分解酵素を用いて糖化物を得る工程〕  洗浄処理にて得られた沈殿画分に総重量が280gとなるまで蒸留水を添加した後、糖 化酵素(Cellic Ctec2、ノボザイム社、2.5mL)を添加し、50℃、1 50r/m(PRECI社、PRXYg−98R)にて4.5日間糖化反応を行った。糖 化反応終了液はろ紙(no.2、ADVANTEC社)と孔径0.22μmのメンブレン フィルタシステム(IWAKI、Cat no.8030−001)にてろ過した。なお 得られた液をHPLCにて分析を行った。得られた糖化物中のグルコースとキシロースの 濃度の合計(G0+X0)を表3に示す。 【0079】 〔(d)糸状菌による糖化物の発酵工程〕  <発酵性の評価>で示した方法にて発酵性の評価を行った。結果を表3に示す。 【0080】 (比較例5)  (b)工程を行わない以外は、実施例7と同じ操作を行った。  (c)工程後、得られた液をHPLCにて分析を行った。得られた糖化物中のグルコー スとキシロースの濃度の合計(G0+X0)を表3に示す。  (d)工程後に得られた結果を表3に示す。実施例7に比べて、乳酸への変換率とエタ ノールへの変換率の合計が低く、Rは小さかった。 【0081】 (実施例8) 乾式粉砕イナワラに対する水洗の効果 〔バイオマスの乾燥処理〕  鋏で5cm長に切断したイナワラを80℃にて一晩乾燥させ、水分6質量%の乾燥イナ ワラを得た。イナワラのセルロース含有量は40%、結晶化度は54%であった。 【0082】 [(a)リグノセルロース系バイオマスを粉砕する工程] 〔乾式粉砕処理〕  上記乾燥工程で得られた乾燥イナワラを振動ミル(中央化工機株式会社製、「MB−1 」、容器全容量3.58L)に50g投入し、ロッドとして、外径30mm、長さ211 mm、材質ステンレス、断面形状が円形のロッド13本を振動ミルに充填(充填率58体 積%)して、振幅8mm、円回転1200r/mの条件で、0.5時間処理を行った。ま た、得られた粉砕物の温度は、処理に伴う発熱により、65℃であった。  処理終了後、振動ミル内の壁面や底部にパルプの固着物等はみられなかった。得られた 粉砕物を前記振動ミルから取り出した。粉砕物の結晶化度は7%であった。また、体積基 準の平均粒径は25μmであった。 【0083】 50 40 30 20 10

(21) 〔(b)粉砕物を洗浄する工程〕  得られた粉砕物に対し3回の洗浄操作を実施した。

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  洗浄1回目:粉砕された粉末50gに蒸留水500gを加え、室温にて10分混合撹 拌した。粉砕物と蒸留水からなる分散液の温度は室温であった。続いて遠心分離(遠心分 離機:HITACHI HIMAC CR22GIII、ローター:R9A、7000r /m、5∼10分)にて固形物を沈降させた後上清410gを捨てた。   洗浄2回目:洗浄1回目で得られた沈殿画分に、洗浄1回目で捨てた上清と同重量( 410g)の蒸留水を添加して再び混合撹拌した後に1回目と同条件にて遠心分離を行い 、上清406gを捨てた。   洗浄3回目:洗浄2回目で得られた沈殿画分に、洗浄2回目で捨てた上清と同重量( 406g)の蒸留水を添加して再び混合撹拌した後に1回目と同条件にて遠心分離を行い 、上清410gを捨てた。  算出された水溶性成分残存率表3に示す。 【0084】 〔(c)洗浄工程で得られた固形物に加水分解酵素を用いて糖化物を得る工程〕  実施例1∼5に記載の(c)工程と同じ操作を行った。なお得られた液をHPLCにて 分析を行った。得られた糖化物中のグルコースとキシロースの濃度の合計(G0+X0)を 表3に示す。 【0085】 〔(d)糸状菌による糖化物の発酵工程〕  <発酵性の評価>で示した方法にて発酵性の評価を行った。結果を表3に示す。 【0086】 (比較例6)  (b)工程を行わない以外は、実施例8と同じ操作を行った。  (c)工程後、得られた液をHPLCにて分析を行った。得られた糖化物中のグルコー スとキシロースの濃度の合計(G0+X0)を表3に示す。  (d)工程後に得られた結果を表3に示す。実施例8に比べて、乳酸への変換率とエタ ノールへの変換率の合計が低く、Rは小さかった。 【0087】  実施例1乃至5と比較例1の結果から、(a)工程後に(b)洗浄工程を行い、(c) 工程及び(d)工程を行うと糖の乳酸への変換率が高くなることが分かった。  実施例1乃至5と比較例2の結果から、(a)工程前ではなく、(a)工程後に(b) 洗浄工程を行うと糖の乳酸への変換率が高くなることが分かった。 【0088】 (実施例9) 乾式粉砕サトウキビバガスの水洗の効果(粉砕媒体の影響) 〔バイオマスの乾燥処理〕  サトウキビバガスを80℃にて一晩乾燥させ、水分5質量%の乾燥サトウキビバガスを 得た。サトウキビバガスのセルロース含有量は38%、結晶化度は37%であった。 【0089】 〔(a)リグノセルロース系バイオマスを粉砕する工程〕 〔乾式粉砕処理〕  上記乾燥工程で得られた乾燥サトウキビバガスを振動ミル(中央化工機株式会社製、「 MB−1」、容器全容量3.58L)に50g投入し、粉砕媒体として、外径10mm、 材質ステンレスの球15.4kgを振動ミルに充填(充填率58体積%)して、振幅8m m、円回転1200r/mの条件で、1.0時間処理を行った。  処理終了後、振動ミル内の壁面や底部にパルプの固着物等はみられなかった。得られた 粉砕物を前記振動ミルから取り出しした。粉砕物の結晶化度は0%であった。また、体積 基準の平均粒径は36μmであった。 【0090】 〔(b)粉砕物を洗浄する工程〕 50 40 30 20 10

(22)  得られた粉砕物に対し3回の洗浄操作を実施した。

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  洗浄1回目:粉砕された粉末50gに蒸留水500gを加え、室温にて10分混合撹 拌した。粉砕物と蒸留水からなる分散液の温度は室温であった。続いて遠心分離(遠心分 離機:HITACHI HIMAC CR22GIII、ローター:R9A、7000r /m、10分)にて固形物を沈降させた後上清373gを捨てた。   洗浄2回目:洗浄1回目で得られた沈殿画分に、洗浄1回目で捨てた上清と同重量( 373g)の蒸留水を添加して再び混合撹拌した後に1回目と同条件にて遠心分離を行い 、上清373gを捨てた。   洗浄3回目:洗浄2回目で得られた沈殿画分に、洗浄2回目で捨てた上清と同重量( 373g)の蒸留水を添加して再び混合撹拌した後に1回目と同条件にて遠心分離を行い 、上清372gを捨てた。  算出された水溶性成分残存率を表3に示す。 【0091】 〔(c)洗浄工程で得られた固形物に加水分解酵素を用いて糖化物を得る工程〕  洗浄工程にて得られた沈殿画分に総重量が250gとなるまで蒸留水を添加した後、糖 化酵素(Cellic Ctec2、ノボザイム社、2.5mL)を添加し、50℃、1 00r/m(PRECI社、PRXYg−98R)にて4.5日間糖化反応を行った。糖 化反応終了液はろ紙(no.2、ADVANTEC社)と孔径0.22μmのメンブレン フィルタシステム(IWAKI、Cat no.8030−001)にてろ過した。なお 得られた液をHPLCにて分析を行った。得られた糖化物中のグルコースとキシロースの 濃度の合計(G0+X0)を表3に示す。 【0092】 〔(d)糸状菌による糖化物の発酵工程〕  <発酵性の評価>で示した方法にて発酵性の評価を行った。結果を表3に示す。実施例 9の結果から、粉砕媒体がボールであっても(c)洗浄工程の導入により糖の乳酸への変 換率が高くなることが分かった。 【0093】 (実施例10) 乾式粉砕サトウキビバガスの水洗の効果(粉砕程度の影響) 〔バイオマスの乾燥処理〕  サトウキビバガスを80℃にて一晩乾燥させ、水分5質量%の乾燥サトウキビバガスを 得た。サトウキビバガスのセルロース含有量は38%、結晶化度は37%であった。 【0094】 [(a)リグノセルロース系バイオマスを粉砕する工程] 〔乾式粉砕処理〕  上記乾燥工程で得られた乾燥サトウキビバガスを振動ミル(中央化工機株式会社製、「 MB−1」、容器全容量3.58L)に50g投入し、粉砕媒体として、外径30mm、 長さ211mm、材質ステンレス、断面形状が円形のロッド13 本を振動ミルに充填( 充填率58体積%)して、振幅8mm、円回転1200r/mの条件で、0.17時間処 理を行った。  処理終了後、振動ミル内の壁面や底部にパルプの固着物等はみられなかった。得られた 粉砕物を前記振動ミルから取り出しした。粉砕物の結晶化度は21%であった。また、体 積基準の平均粒径は38μmであった。 【0095】 〔(b)粉砕物を洗浄する工程〕  得られた粉砕物に対し3回の洗浄操作を実施した。   洗浄1回目:粉砕された粉末50gに蒸留水500gを加え、室温にて10分混合撹 拌した。粉砕物と蒸留水からなる分散液の温度は室温であった。続いて遠心分離(遠心分 離機:HITACHI HIMAC CR22GIII、ローター:R9A、7000r /m、10分)にて固形物を沈降させた後上清380gを捨てた。   洗浄2回目:洗浄1回目で得られた沈殿画分に、洗浄1回目で捨てた上清と同重量( 50 40 30 20 10

(23)

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380g)の蒸留水を添加して再び混合撹拌した後に1回目と同条件にて遠心分離を行い 、上清379gを捨てた。   洗浄3回目:洗浄2回目で得られた沈殿画分に、洗浄2回目で捨てた上清と同重量( 379g)の蒸留水を添加して再び混合撹拌した後に1回目と同条件にて遠心分離を行い 、上清380gを捨てた。算出された水溶性成分残存率を表3に示す。 【0096】 〔(c)洗浄工程で得られた固形物に加水分解酵素を用いて糖化物を得る工程〕  洗浄工程にて得られた沈殿画分に総重量が250gとなるまで蒸留水を添加した後、糖 化酵素(Cellic Ctec2、ノボザイム社、2.5mL)を添加し、50℃、1 00r/m(PRECI社、PRXYg−98R)にて4.5日間糖化反応を行った。糖 化反応終了液はろ紙(no.2、ADVANTEC社)と孔径0.22μmのメンブレン フィルタシステム(IWAKI、Cat no.8030−001)にてろ過した。なお 得られた液をHPLCにて分析を行った。得られた糖化物中のグルコースとキシロースの 濃度の合計(G0+X0)を表3に示す。 【0097】 〔(d)糸状菌による糖化物の発酵工程〕  <発酵性の評価>で示した方法にて発酵性の評価を行った。結果を表3に示す。実施例 10の結果から、粉砕後の結晶化度が30%以下であれば糖の乳酸への変換率が高いこと が分かった。 【0098】 20 10

(24) 【表3】

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10

20

30

40

【0099】

50

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(実施例11) 乾式粉砕サトウキビバガスの水洗の効果(フマル酸生産への影響) 〔バイオマスの乾燥処理〕  サトウキビバガスを80℃にて一晩乾燥させ、水分6質量%の乾燥サトウキビバガスを 得た。サトウキビバガスのセルロース含有量は38%、結晶化度は37%であった。 【0100】 [(a)リグノセルロース系バイオマスを粉砕する工程] 〔乾式粉砕処理〕  上記乾燥工程で得られた乾燥サトウキビバガスを振動ミル(中央化工機株式会社製、「 MB−1」、容器全容量3.58L)に50g投入し、粉砕媒体として、外径30mm、 長さ211mm、材質ステンレス、断面形状が円形のロッド13 本を振動ミルに充填( 充填率58体積%)して、振幅8mm、円回転1200r/mの条件で、0.5時間処理 を行った。  処理終了後、振動ミル内の壁面や底部にパルプの固着物等はみられなかった。得られた 粉砕物を前記振動ミルから取り出しした。粉砕物の結晶化度は13%であった。また、体 積基準の平均粒径は25μmであった。 【0101】 〔(b)粉砕物を洗浄する工程〕  得られた粉砕物に対し3回の洗浄操作を実施した。   洗浄1回目:粉砕された粉末50gに蒸留水500gを加え、室温にて10分混合撹 拌した。粉砕物と蒸留水からなる分散液の温度は室温であった。続いて遠心分離(遠心分 離機:HITACHI HIMAC CR22GIII、ローター:R9A、7000r /m、10分)にて固形物を沈降させた後上清384gを捨てた。   洗浄2回目:洗浄1回目で得られた沈殿画分に、洗浄1回目で捨てた上清と同重量( 384g)の蒸留水を添加して再び混合撹拌した後に1回目と同条件にて遠心分離を行い 、上清384gを捨てた。   洗浄3回目:洗浄2回目で得られた沈殿画分に、洗浄2回目で捨てた上清と同重量( 384g)の蒸留水を添加して再び混合撹拌した後に1回目と同条件にて遠心分離を行い 、上清384gを捨てた。  算出された水溶性成分残存率を表4に示す。 【0102】 〔(c)洗浄工程で得られた固形物を加水分解酵素により加水分解して糖化物を得る工程 〕  洗浄工程にて得られた沈殿画分に総重量が250gとなるまで蒸留水を添加した後、糖 化酵素(Cellic Ctec2、ノボザイム社、2.5mL)を添加し、50℃、1 00r/m(PRECI社、PRXYg−98R)にて4.5日間糖化反応を行った。糖 化反応終了液はろ紙(no.2、ADVANTEC社)と孔径0.22μmのメンブレン フィルタシステム(IWAKI、Cat no.8030−001)にてろ過した。なお 得られた液をHPLCにて分析を行った。得られた糖化物中のグルコースとキシロースの 濃度の合計(G0+X0)を表4に示す。 【0103】 〔(d)糸状菌による糖化物の発酵工程〕  糸状菌としてR.oryzae NBRC4749株を用い、<ペレット化糸状菌の調 製>に示した方法にて糸状菌ペレットを調製した。また、糸状菌ペレットを20g(ウエ ット状態の重量)用いたこと、バイオマスの酵素糖化液量が80mLであったこと以外は <発酵性の評価>に示した方法にて発酵性の評価を行った。結果を表4に示す。  実施例11は比較例7に比べてフマル酸の生産性が高く、即ち洗浄を実施することによ りフマル酸の生産性向上が認められた。 【0104】 (比較例7)(b)洗浄工程を行わずに、乾式粉砕サトウキビバガスを酵素糖化して得ら れた糖含有液の発酵(フマル酸生産性への影響) 50 40 30 20 10

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 (b)工程を行わない以外は、実施例11と同じ操作を行った。  (c)工程後、得られた液をHPLCにて分析を行った。得られた糖化物中のグルコー スとキシロースの濃度の合計(G0+X0)を表4に示す。  また、実施例11と同じように発酵性の評価を行った結果を表4に示す。  比較例7は実施例11に比べてフマル酸の生産性が低かった。 【0105】 【表4】

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(27) フロントページの続き (72)発明者 小山 伸吾 和歌山県和歌山市湊1334  花王株式会社研究所内 (72)発明者 入江 裕 和歌山県和歌山市湊1334  花王株式会社研究所内 (72)発明者 野場 将宏 和歌山県和歌山市湊1334  花王株式会社研究所内 (72)発明者 浦川 大樹 和歌山県和歌山市湊1334  花王株式会社研究所内 Fターム(参考) 4B064 AD18 AD33 CA05

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