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So Katagiri
The Open University of Japan
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平成 27 年 12 月 26 日
概 要
コンパクトな半単純リー代数について簡潔に説明する。
1 物理学における連続的対称性
物理学において対称性は最も重要な概念の一つである。この対称性は数学
的には群という概念で記述される。対称性には対称的な操作もとで保存する
量がありこれを保存量という。対称性には離散的なものと連続的なパラメー
タを伴うものがある。この連続的な対称性が数学的にはリー群 (連続群) とい
う概念で記述される。
例として、運動における対称性と回転対称性というものがある。この数学
的対応物がリー群 SO(3) である。そして、ネーターの定理より回転対称性に
対する保存量として角運動量が求まる。この数学的対応物がリー代数 so(3) で
ある。また、電磁場は電弱相互作用等のゲージ理論は位相の対称性から U (1)
や SU (2), SU (3) と関係し、統一場理論と密接に関係する。以上のリー群はコ
ンパクトなものであるが、特殊相対論のローレンツ変換は SO(3, 1) といった
ノンコンパクトなものと関係する。また、リー群の等質空間はブラックホール
周りの時空等の曲がった空間上の理論で重要である。このように連続的対称
性は特に高エネルギーの物理分野では理論の鍵となるものであり、本レポー
トではそのリー代数と既約表現について解説したい。
2 交換子
交換子と呼ばれる行列の交換関係を用いる。
[A, B] ≡ AB − BA
ライプニッツ則
∗ So.Katagiri@gmail.com
1
[AB, C] = A[B, C] + [A, C]B
ヤコビ恒等式
3 生成・消滅演算子
リー代数の表現の構成には生成・消滅演算子の理論を理解するのが近道で
ある。よってこれを簡単に解説する。真空に生成演算子をかけていくことで
表現が構成できる。
[a, a† ] = 1
[a, a] = [a† , a† ] = 0
3.1 数演算子
N ≡ a† a
[N, a† ] = a†
[N, a] = −a
3.2 真空状態
a|0⟩ = 0
a† |0⟩
N a† |0⟩ = a† |0⟩
2
N a|n⟩ = (n − 1)a|n⟩
4 角運動量 SU (2)
リー代数の最も簡単で身近な例として角運動量を表す SU (2) のリー代数を
解説する。生成消滅演算子との違いは表現が有限で止まることである。
[Ji , Jj ] = iϵijk Jk
J± ≡ J1 ± iJ2
[J3 , J± ] = ±J±
[J+ , J− ] = J3
カシミール演算子
1
J 2 = J1 + J2 + J3 = (J+ J− + J− J+ ) + J32
2
[J 2 , Ji ] = 0
J3 |j, m⟩ = m|j, m⟩
J+ |j, m⟩ = xm |j, m + 1⟩
m = −j ∼ +j
3
5 リー代数
一般のリー代数は構造定数 fabc で特徴づけられる。
[Xa , Xb ] = ifabc Xc
今、リー代数はコンパクトな半単純リー代数を考えると、fabc は添字につ
いて反対称にとれる。
6 カルタン部分代数
角運動量の J3 の部分の役割を担うのがカルタン部分代数である。リー代
数の
[Xa , Xb ] = ifabc Xc
を組み替えて、カルタン部分代数を作る。
[Hi , Hj ] = 0
i = 1 ∼ r は階数
[Hi , Eα ] = αi Eα
αi はルートと呼ばれる。
Eα† = E−α
[Eα , Eα† ] = αi Hi
Nα,β は ifα,βα+β
このような組み換えをカルタン-ワイル基底と呼ぶ。
4
7 表現
表現についてブラケット表記を用いて説明する。
⟨i| 7→ ⟨i|e−iθa Xa
パラメータ θa を微小変化させた差分をとると、それぞれ
O′ = eiθa Xa Oe−iθa Xa
O 7→ O + θa [Xa , O]
8 随伴表現
表現空間が X 自身である表現を随伴表現と呼ぶ。リー代数の構造を忠実 1
に表現する表現である。
|Xa ⟩
= |ifabc Xc ⟩
= |[Xa , Xb ]⟩
1 可換な部分を覗いて
5
Xa |Xb ⟩ = |[Xa , Xb ]⟩
1
⟨Xa |Xb ⟩ = trXa Xb
λ
= −trfacd fbdc
= gab
gab をキリング計量と呼ぶ。
1 d
= if trXa Xd = ifbcd gad
λ bc
= ifbca
Hi |Hj ⟩ = 0
生成消滅演算子的な関係になる。
ブラ側
6
⟨Eα |Eα† = ⟨Hi |αi
内積
1
⟨Hi |Hj ⟩ = tr(Hi Hj ) = δij
λ
1
⟨Eα |Eβ ⟩ = tr(Eα† Eβ ) = δαβ
λ
9 ルートの順序
次のような順序でルートの大きさを決める。左側からみて最初の0でない
数で比較する。
(α1 , α2 , α3 )
正のルート
1 1
( , √ , 0)
2 2 3
(0, 1, 0)
1
(0, 0, )
2
以下が負のルート
(0, −1, 0)
(−2, 1, 0)
9.1 単純ルート
正のルートのうち2つの正ルートに分解できないものを単純ルートという。
これは真空的状態的なものに相当する。
7
10 漸化式
以下の議論で重要になる漸化式を導いておく。
一方で
= |N−α,β |2 − |Nα,β |2
また、
N−α,β = ⟨−α + β|E−α |Eβ ⟩ = ⟨Eβ |Eα |E−α+β ⟩∗
∗
= Nα,−α+β
なので、まとめると漸化式
|Nα,−α+β |2 − |Nα,β |2 = α · β
ができる。
10.1 漸化式を解く
漸化式を足し合わせることによって関係式を導く。そこからルート間の角
度に制限がつくことを理解する。
···
|Nα,β−α |2 − |Nα,β |2 = α · β
|Nα·β−2α |2 − |Nα,β−α |2 = α · (β − α)
8
|Nα·β−3α |2 − |Nα,β−2α |2 = α · (β − 2α)
···
足し合わせると
( )
p(p + 1) q(q + 1)
|Nα,β−(q+1)α | − |Nα,β+pα | = α · ((p + q + 1)β +
2 2
− α)
2 2
ここで、ルートは有限個しかないとするとし、Nα,β−(l+1)α = 0,Nα,β+pα = 0
とする。
1
(p + q + 1)α · β + (p + q + 1)(p − q)α2 = 0
2
2α · β
= −(p − q)
α2
ここで α∨ はコルート
αi
α∨i = 2
(αi , αi )
を用いれば、適当な整数 m で
(α∨ , β) = m
が成立する。同様な議論を α, β を交代して議論し
(β ∨ , α) = m′
よって
4(α · β)2
mm′ = (α∨ , β)(β ∨ , α) = = 4 cos θαβ
α2 β 2
以上から、α, β のなす角度は mm′ = 0, 1, 2, 3, 4 の時であり、それぞれ
π
θαβ = , mm′ = 0
2
π 2π
θαβ = , , mm′ = 1
3 3
π 3π
θαβ = , , mm′ = 2
4 4
9
π 5π
θαβ = , , mm′ = 3
6 6
θαβ = 0, π, mm′ = 4
10.2 単純ルートの場合
単純ルートに制限するとさらに角度が制限される。
ここで、β が単純ルートの場合に何回か Eα をかけていくことを考える。単
純ルートなので
E−α |β⟩ = 0
よって、p = 0 であることがわかったので
(α∨ , β) ≤ −q
よって、単純ルート間の角度は
π 3
θαβ = ∼ π
2 2
となるので、前節の議論より、単純ルート間の角度は
π 2π 3π 5π
θαβ = , , ,
2 3 4 6
となる。
11 ディンキン図
2π
単純根に対し丸 (頂点と呼ぶ) を描く。単純根同士の角度が 3 のときは一
本の線、 3π
4 のときは二本の線、 5π
6 のときは三本の線を引く。 π
2 のときはひ
かない。単純根の長さが違うときは長い方から短いほうに矢印を描く。ルー
トの情報はディンキン図から再現できる。
12 カルタン行列
Cij ≡ (α∨i , αj )
カルタン行列からディンキン図は作れる。これを以下で具体的に見る。
10
12.1 SU (3) (A2 )
( )
2 −1
カルタン行列は
−1 2
非対角成分を計算すると
2α1 · α2
= −1
α2 · α2
2α2 · α1
= −1
α1 · α1
1
cos2 θ12 =
4
2
θ12 = π
3
|α1 | = |α2 |
√ 2
|α1 | = 2|α |
12.3 G2
( )
2 −3
カルタン行列は
1 2
5
θ12 = π
6
1
|α1 | = √ |α2 |
3
11
12.4 一般のコンパクトな半単純リー代数のカルタン行列
1. 成分はすべて整数
2. 対角成分は 2
3. 非対角成分は0以下
4. aij = 0 ⇔ aji = 0
2(ai ,aj ) δ
5. = 2(ai , aj ) × (ai ij
(ai ,aj ) ,ai ) とかける。つまり、正定値対称行列かける
正定値対角行列の積にかける。
12.5 ディンキン図の分類
古典型 A,B,C,D と例外型 E,F,G がある。
13 一般の表現
Hi |µ, D⟩ = µi |µ, D⟩
Eα |µ, D⟩ = Nα,µ |µ + α, D⟩
Eα(i) |µ, D⟩ = 0
となる µ である。
最高の重みから E−α をかけて状態をつくる。
2α(i) · µ
= − (p − q)
α(i)2
12
において、最も高い重みであることから p = 0 となる。
2α(i) · µ
=q
α(i)2
これは q 回まで E−α(i) が作用できることを意味する。
q を mi と書いて
2α(i) · µ
= mi
α(i)2
をディンキン・インデックスと呼ぶ。コルートで書き直すと
(α∨(i) , µ) = mi
[m1 , m2 , · · · , mm ]
13.2 一般の状態
∑
Ĥi E−αk1 E−αk2 · · · |µ, D⟩ = µi − αkj E−αk1 E−αk2 · · · |µ, D⟩
j
より、一般の状態は
µ′i = µi − αkj
より、
2(α(i) , µ′ ) ∑
(i)2
= mi − Cikj
α j
14 基本表現
mi の一つだけが 1 で他が 0 であるような表現を基本表現と呼ぶ。例えば
i = 1 なら
[1, 0, . . . , 0]
13
を満たしている。任意のウェイトは基本の重みより
∑
µ= mi µ(i)
で作れる。
15 SU (3) の基本表現
SU (3) の標準的な基底は
0 1 0
1
T1 = 1 0 0
2
0 0 0
0 −i 0
1
T2 = i 0 0
2
0 0 0
1 0 0
1
T3 = 0 −1 0
2
0 0 0
0 0 1
1
T4 = 0 0 0
2
1 0 0
0 0 −i
1
T5 = 0 0 0
2
i 0 0
0 0 0
1
T6 = 0 0 1
2
0 1 0
0 0 0
1
T7 = 0 0 −i
2
0 i 0
1 0 0
1
T8 = √ 0 1 0
2 3
0 0 −2
1
T r(Ta Tb ) = δab
2
14
SU (3) のカルタン部分代数として (T3 , T8 ) を取ることにする。
SU (3) のカルタン行列は
( )
2 −1
−1 2
単純ルートは √
1 1 3
α =( , )
2 2
√
1 3
α = ( ,−
2
)
2 2
基本表現として
[1, 0]
を考える。
2α(1) · µ
=1
α(1)2
2α(2) · µ
=0
α(2)2
より、最高ウェイトは
( √ )
1 3
2 µ1 + µ2 = 1
2 2
( √ )
1 3
2 µ1 − µ2 = 0
2 2
を解いて ( )
1
µHW = 2
1
= µ(1)
√
2 3
2α(i) ·µ
とディンキン・インデックスが求まる。ウェイトは同様に α(i)2
= 1 より
( )
0
µ=
√1
3
15
と求まる。ウェイトは
( )
− 12
µ= = −µ(2)
− 2√1
3
の3つの状態が得られたので3次元表現であることがわかる。
[0] (0)
1
[−1] (− )
2
のようになり、[1], [−1] は ± 12 という SU (2) の2次元、[0] は 0 という 1 次
元表現で状態が書けているのでこれを
3=2⊕1
15.2 複素表現
表現 D の生成子 T に対する交換関係は −T ∗ としても同じ交換関係を満た
す。この表現を D の複素共役な表現 D̄ と呼ぶ。
T と −T ∗ で固有値が正反対であり、µ が T のウェイトであるなら、−µ が
−T ∗ の重みになる。この表現を 3̄ となる。
16
15.3 随伴表現
ウェイトがルートになる表現となる。
16 ヤング図
略
17