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多様体の幾何学


原田恒司
九州大学大学院理学研究院物理学部門
(Dated: 平成 15 年 11 月 19 日)
九州大学理学部物理学科 3 年次向け講義「一般相対論」の講義のための多様体の微分幾何学のまとめ。
必要最小限のことを簡潔に列挙した。適当な参考書を見る事が必要。

CONTENTS えば、球面はひとつの曲面であるが、それは曲がっていな
い「平坦な」面である平面とはどう違うのだろうか。
I. 多様体と座標近傍系 1 平面や曲面の場合、我々はそれらが(「平坦な」)3 次
元空間の中に埋め込まれているのを外から眺めて曲がって
II. 接ベクトルとベクトル場 2 いるとか平坦であるとかわかるのだが、我々が住んでいる
A. 接ベクトル空間と接ベクトル 2 4 次元の時空の場合、それを埋め込むべき自然な高次元の
B. ベクトル場 4 空間はない。それゆえ、高次元の空間に埋め込むことなし
にその空間の性質を記述する言葉を持たなければならな
III. 微分形式 4 い。そのような言葉は、多様体の微分幾何学によって与え
られる。
IV. テンソル場 5 多様体とは、局所的には Rn と見なせるような空間1 の
ことである2 。このことをもう少し詳しく述べてみよう。
V. アファイン接続と曲率テンソル 6 「局所的には Rn と見なせる」とは、空間の任意の 1 点
p に対して、p を含む開集合 U があって、この開集合 か
VI. Riemann 多様体と Levi-Civita 接続 7 ら Rn の開集合 U 0 への同相写像3 ϕ
VII. Killing ベクトル場 8 ϕ : U → U0 (1.1)

があることを意味する。そうすると、点 p には n 個の実
今までは等価原理を議論の基礎に置き、Newton の万有 数 ϕ(p) = (x1 , x2 , · · · , xn ) が対応する。これを点 p の局
引力の法則を一般化することによって Einstein 方程式を
導いた。電磁気学との類似点に注目し、「場の理論」とし
ての一般相対性理論を展開してきた。
1 以下で単に「空間」という場合、Hausdorff 空間である位相空間を意
一方で、一般相対性理論が記述する重力は、我々の時空
味している。集合 X の部分集合族 O が次の 3 つの条件を満たすと
の「歪み」の結果であり、我々が採用する座標系に依存し
き、O を X の位相と呼び、X と O の対 (X, O) を位相空間という。
ない、幾何学的な性質の結果である。歴史的には Einstein
• X ∈ O かつ ∅ ∈ O
は重力理論と Riemann 幾何学の間の密接な関係に気づく
ことによって一般相対性理論を完成させることができた。 • U1 , U2 , · · · , Uk ∈ O ならば U1 ∩ U2 ∩ · · · ∩ Uk ∈ O
この観点からは、一般相対性理論はいわば多様体の力学 • 任意の集合族
∪ {Uλ }λ∈A について、Uλ ∈ O (∀λ ∈ A) ならば
であって、曲がった時空を記述する数学がその自然な言葉 λ∈A Uλ ∈ O

である。電磁気学との類似から導入した Riemann テンソ また、Hausdorff 空間とは、位相空間 (X, O) の任意の異なる 2 点 p、


q に対して、p を含む開集合 U と q を含む開集合 V であって、互い
ルも、時空の曲がり具合いを表す (座標系の選択に依存し
に交わらない (U ∩ V = ∅) であるものが存在するものをいう。
ない) 不変な概念と結び付いている。この章では、曲がっ 2 位相空間 M が次の 3 つの条件を満たすとき M を n 次元 C r 級微分
た時空の記述に必要な数学的概念を発展させ、今までに導 可能多様体と呼ぶ。
入してきたいろいろな量 (計量テンソル、アファイン接続、 1. M は Hausdorff 空間である。
共変微分、Riemann テンソルなど)の数学的な意味を明 2. M は n 次元の座標近傍によって被覆される。すなわち、M の
らかにしよう。ただし、数学的な厳密さは大きく犠牲にせ n 次元座標近傍からなる族 {(Uα , ϕα )}α∈A があって、
ざるを得ない。 ∪
M = Uα
α∈A

I. 多様体と座標近傍系 が成り立つ。
3. Uα ∩ Uβ 6= ∅ であるような任意の α, β ∈ A について、座標変換
「曲がった」空間というときに、我々が最も想像しやす ϕβ ◦ ϕ−1
α : ϕα (Uα ∩ Uβ ) → ϕβ (Uα ∩ Uβ )
いのは、2 次元の曲がった「空間」である曲面だろう。例
は C r 級である。(r は自然数または ∞)

3 (X, O)、(Y, O0 ) を位相空間とする。写像 f : X → Y が次の 2 つの


条件を満たすとき、f を同相写像と呼ぶ。
∗ koji1scp@mbox.nc.kyushu-u.ac.jp
• f : X → Y は全単射である。
• f : X → Y も f −1 : Y → X も連続写像である。
2

所座標という。この U と ϕ の対 (U, ϕ) を n 次元座標近 があって、



n M= Uα (1.5)
R U’ α∈A

が成り立つとする。S を座標近傍系と呼ぶ。多様体は正し
くは座標近傍系を与えて決まるもので、正確には (M, S)
ϕ と書くべきものである。
多様体の定義は、多様体を覆っている座標近傍系の取り
方によるので、同じ幾何学的な対象に対して、異なった座
標近傍系を用いると、異なった多様体となり不便である。
X そこで座標近傍系の同値性を定義する必要がある。n 次元
多様体 M の 2 つの n 次元座標近傍系 S = {(Uα , ϕα )}α∈A
と T = {(Vβ , ψβ )}β∈B が同値であるとは、S と T の和集
U 合 S ∪ T がまた M 上の座標近傍系になることであると
定義する。このことは結局、Uα ∩ Vβ 6= ∅ である Uα ∈ S
と Vβ ∈ T に対する座標変換も (何回でも) 微分可能であ
ることを意味している。そして、2 つの同値な座標近傍系
FIG. 1. 座標近傍
S と T に対して、(M, S) と (M, T ) とは同一の多様体で
あると考える。このようにして、いろいろな (同値な) 座
傍といい、ϕ を U 上の局所座標系という。 標近傍系に対して、その選択に依存しない幾何学的対象と
多様体上に 2 つの座標近傍 (U, ϕ) と (V, ψ) が交わ しての多様体の概念を得ることができた。
っている場合に、共通部分 U ∩ V に属する点 p の 多様体上の関数とは、多様体の各点に対して、実数を対
位置は 2 組の局所座標で表される。(U, ϕ) に関する局 応させる写像である。多様体上の関数 f の微分可能性は、
所座標が (x1 , x2 , · · · , xn )、(V, ψ) に関する局所座標が 座標近傍系 S に属する任意の座標近傍 (Uα , ϕα ) に対して
(y 1 , y 2 , · · · , y n ) であるとき、これらの間の関係、すなわ
ち座標変換を考えよう。 f ◦ ϕ−1 0
α : Uα → R (1.6)
n
R の微分可能性 (つまり f ◦ϕ−1
α を省略して f (x , x , · · · , x )
1 2 n
U’ と書いたとき、この多変数関数の微分可能性) によって定
ϕ
義される。そして、関数の微分可能性は (同値な) 座標近
傍系の選び方によらないことを示すことができる。多様体
M 上のなめらかな関数全体の集合を F(M ) で表す。
M
ψ ϕ −1
U
n II. 接ベクトルとベクトル場
V R
V’
A. 接ベクトル空間と接ベクトル

ψ n 次元多様体 M の 1 点 p を固定し、p を通るなめらか


な曲線 c を考えよう。すなわち、− < t <  の範囲にあ
るパラメタ t を用いて c : (−, ) → M を考えることにす
る。また、c(0) = p であるとする。いま、c の ‘速度ベク
FIG. 2. 座標近傍 トル’ の概念を局所座標系の取り方によらないように定義
する方法を考えよう。
点 p の開近傍 U で定義された任意のなめらかな関数 f
ϕ(p) = (x1 , x2 , · · · , xn ), ψ(p) = (y 1 , y 2 , · · · , y n ) (1.2) を考える。この時、合成関数 f (c(t)) を考えると、これは
t (− < t < ) を変数とするなめらかな関数になる。そし
であるから、 て重要なことは、この合成関数は局所座標系によらないと
( ) いうことである。そして、f (c(t)) の微分係数
(y 1 , y 2 , · · · , y n ) = ψ ϕ−1 (x1 , x2 , · · · , xn ) (1.3)

df (c(t))
のように表される事に注意。つまり合成写像 ψ ◦ ϕ−1 は (2.1)
ϕ(U ∩ V ) から ψ(U ∩ V ) への同相写像で、局所座標 dt t=0
(x1 , x2 , · · · , xn ) と (y 1 , y 2 , · · · , y n ) の間の関係を与える
もまた局所座標系に無関係に f と c だけによって決まっ
座標変換である。我々が考察する多様体では、このような
ている。
写像が何回でも微分可能であると仮定する。
関数 f にこの微分係数を対応させる対応
多様体 M の各点に対して n 次元座標近傍が存在する。

すなわち、座標近傍の集まり df (c(t))
f 7→ (2.2)
S = {(Uα , ϕα )}α∈A (1.4) dt t=0
3

のことを c に沿う (t = 0 における) 方向微分と呼び、記 いを与えるだけである。実際、点 p のまわりで定義され


号 vc で表すことにする。 た任意のなめらかな関数 f に対して

df (c(t)) ∂f ∂ x̄ν ∂f
vc (f ) = (2.3) (p) = (p) ν (p) (µ = 1, · · · , n) (2.7)
dt t=0 ∂xµ ∂xµ ∂ x̄

f と g を点 p の開近傍で定義されたなめらかな関数で が成り立つので
あるとするとき、vc は次の性質を満足している。 ( ) ( )
∂ ∂ x̄ν ∂
(f ) = (p) (f ) (µ = 1, · · · , n)
1. p の十分小さな開近傍上で f = g であるとすると ∂xµ p ∂xµ ∂ x̄ν p
vc (f ) = vc (g) である。 (2.8)
であり、これは
2. a と b を実数とするとき vc (af + bg) = avc (f ) +
( ) ( )
bvc (g) である。 ∂ ∂ x̄ν ∂
= (p) (µ = 1, · · · , n) (2.9)
3. f g を f と g の積であるとすると vc (f g) = ∂xµ p ∂xµ ∂ x̄ν p
vc (f )g(p) + f (p)vc (g) である。 ( ) ( ) ( )
∂ ∂ ∂
を意味する。この式は , , · · · ,
また、曲線に沿う方向微分を抽象化して、上の 3 つの性質 ∂ x̄1 p ∂ x̄2 p ∂ x̄n p
を満足する対応 ( ) ( ) ( )
∂ ∂ ∂
が 1
, 2
,··· , の張るベクトル空間
v : f 7→ v(f ) (2.4) ∂x p ∂x p ∂xn p
に属していることを示している。この新しい基底で表した
を点 p における (形式的な) 方向微分と呼ぶ。 ときの接ベクトル v を
p を含む座標近傍 (U ; x1 , x2 , · · · , xn ) をひとつ固定した ( )
とき、p のまわりで定義されたなめらかな関数 f に、p に µ ∂
v = v̄ (2.10)
おける xµ(方向の偏微分係数 ∂f (p)/∂xµ ∈ R を対応させ ∂ x̄µ p
)

る操作を と書く。 と書くと、
∂xµ p
( ) ∂ x̄ν
∂ ∂f v̄ ν = v(x̄ν ) = v µ (p) (ν = 1, · · · , n) (2.11)
:f →
7 (p) (2.5) ∂xµ
∂xµ p ∂xµ
となる。
この操作も上の 3 つの性質を満足している。 c に沿う方向微分の話に戻ろう。c(t) および f を局所座
点 p におけるすべての方向微分の集合を考えると、 標で表して
それは局所座標系に依らない R 上のベクトル空間を
d
定義
( する。こ
) ( のベ ) クトル空間の ( ) n 個の基底 として、 vc (f ) = f (x (t), · · · , x (t))
1 n
∂ ∂ ∂ dt t=0
, ,··· , を選ぶことができる4 。
∂x1 p ∂x2 p ∂xn p dxµ ∂f
= (0) µ (p) (2.12)
この n 個のベクトルの張る n 次元ベクトル空間を、点 p dt ∂x
における M の接ベクトル空間と呼び Tp (M ) という記号 と表すことができるので、
で表す。Tp (M ) に属するベクトルを点 p における M の
( )
接ベクトルと呼ぶ。点 p における M の接ベクトルは dxµ ∂
vc = (0) (2.13)
( ) dt ∂xµ p

v = vµ (2.6)
∂xµ p のように基底ベクトルで展開した表式を得る。成分および
( ) ( ) ( ) 基底は局所座標系に依存するが、vc 自身は依存しないこ
∂ ∂ ∂ とに注意。それゆえ、
と , ,··· , の線形結合で表され
∂x1 p ∂x2 p ∂xn p
ることに注意。ただしここで µ についての和の記号を省 dc
= vc (2.14)
略した。v µ = v(xµ ) (µ = 1, 2, · · · , n) を v の成分という。 dt t=0
点 p のまわりで別の局所座標系 (x̄1 , x̄2 , · · · , x̄n ) を選ん
でも、同じ接ベクトル空間 Tp (M ) を与える。局所座標系 と書くことにしよう。
の選び方は、接ベクトル空間の基底ベクトルの選び方の違 f ◦ c(t) = f (c(t)) は (−, ) → R という「曲線」を表
すから、R 上の点 f (p) における接ベクトル空間 Tf (p) (R)
の接ベクトルを与える。接ベクトル空間 Tp (M ) の任意の
接ベクトル v は曲線 c を適当に選ぶことによって得られ
4 これら n 個のベクトルが 1 次独立であることは、関数 f として る。それゆえ任意の v ∈ Tp (M ) に対して対応する c を用
xµ (µ = 1, 2, · · · , n) を考えればわかる。 いた f ◦ c は Tf (p) (R) の接ベクトルを与える。このよう
にして関数 f は Tp (M ) から Tf (p) (R) への写像を与える。
4

実は Tf (p) (R) は 1 次元のベクトル空間で、その元は R 自 が成り立つ。


身と同一視することができる。この線形写像を (df )p と書 X ∈ X(M )、f ∈ F(M ) に対して、対応
き、関数の微分と呼ぶ。
p 7→ Xp (f ) ∈ R (2.23)
(df )p : Tp (M ) → R (2.15)
は M 上の関数を与える。この関数を Xf で表す5 。すな
R 上に (局所) 座標系 y をとると わち、
( )
d(f ◦ c) ∂ (Xf )(p) = Xp (f ) (2.24)
= a (2.16)
dt t=0 ∂y f (p)
座標近傍 (U ; x1 , · · · , xn ) 上で X を (2.19) のように表
のように表されるはずである。この a を R の元と同一視 すと、
する。一方、 ∂f
Xf |U = ξ µ (2.25)
df (c(t)) ∂f ∂xµ
= v(f ) = v µ µ (p) (2.17)
dt t=0 ∂x X, Y ∈ X(M ) に対して X と Y の括弧積 [X, Y ] とは
f ∈ F(M ) とするとき
であるから、(df )p は
[X, Y ]f = X(Y f ) − Y (Xf ) (2.26)
∂f µ
(df )p (v) = a = v (p) = v(f ) (2.18)
∂xµ で定義される M 上のなめらかなベクトル場 [X, Y ] をい
う。座標近傍 (U ×1 , · · · , xn ) 上で
となる。
∂ ∂
X = ξµ , Y = ηµ (2.27)
∂xµ ∂xν
B. ベクトル場
のように局所座標表示されるとき、[X, Y ] は U 上で
多様体 M の各点 p に、p における接ベクトル Xp ∈ ( )
Tp (M ) が一つづつ対応しているとき、その対応 X = ∂η ν ∂ξ ν ∂
[X, Y ] = ξ µ µ − η µ µ (2.28)
{Xp }p∈M のことを M 上のベクトル場という。特別な場 ∂x ∂x ∂xµ
合として、M ( の座標近傍
) (U ; x1 , x2 , · · · , xn ) の各点 p に
∂ という局所座標表示を持つ。
接ベクトル を対応させて作られる U 上のベク 以上から明らかなように、我々が反変ベクトルとして導
∂xµ p
入したものはベクトル場の局所座標に関する成分である。

トル場を と表す。これらは U 上の n 個の標準的な この章で展開している座標近傍の選び方によらない考え
∂xµ 方からすると、そのような幾何学的な対象はベクトル場で
ベクトル場となる。多様体 M 上のなめらかなベクトル場
全体の集合を X(M ) で表す。 あって、その成分ではない。
ベクトル場 X を U 上に限って考えたものを X|U と表
すことにすると、
III. 微分形式

X|U = ξ µ (2.19)
∂xµ R 上の n 次元ベクトル空間 V から R への線形写像 ω

のように表される。ここで ξ µ は U 上の関数である。 ω:V →R (3.1)


(U ; x1 , x2 , · · · , xn ) と (V, x̄1 , x̄2 , · · · , x̄n ) を多様体 M
の U ∩ V 6= ∅ である 2 つの座標近傍とするとき、U ∩ V を V 上の 1 次形式という。そして、V 上の 1 次形式全体
∂ のなす集合を V ∗ と書くことにすると、V ∗ もまた R 上
上には 2 つの標準的なベクトル場 (µ = 1, · · · , n) と
∂xµ のベクトル空間である。V ∗ を V の双対ベクトル空間と
∂ いう。
(µ = 1, · · · , n) がある。(2.9) から V ∩ U 上で
∂ x̄µ V の基底 ei (i = 1, · · · , n) を選ぶと、ei の双対基底
ω i (i = 1, · · · , n) を
∂ ∂ x̄ν ∂
= (µ = 1, · · · , n) (2.20)
∂xµ ∂xµ ∂ x̄ν ω i (ej ) = δji (3.2)
が成り立つ。ベクトル場 X が U 上と V 上でそれぞれ

∂ ∂
X|U = ξ µ , X|V = η µ (2.21) 5 ベクトル場 X に関数 f をかけて作られるベクトル場 f X と M 上の
∂xµ ∂ x̄µ
関数 Xf とを区別せよ。
と表されるとき、U ∩ V 上で

∂ x̄ν
ην = ξµ (2.22)
∂xµ
5

によって定義することができる。V の任意のベクトル v IV. テンソル場



V を R 上の n 次元ベクトル空間とするとき、V 上の
v = v i ei (3.3) k 次形式とは V の k 個の直積から R への写像
と表すと、ω i (v) = v i が成り立つ。これらのことを接ベク ω : V × ··· × V → R (4.1)
トル空間に適用しよう。 | {z }
k
n 次元多様体 M の任意の点 p における接ベクトル空
間 Tp (M ) の双対空間 Tp∗ (M ) を余接ベクトル空間という。 であって ω(X1 , · · · , Xk ) が各 Xi に関して線形であるよ
M の各点 p に Tp∗ (M ) の元 ωp をひとつずつ対応させる対 うなものをいう。V 上の K 次形式全体のなす集合を
応 ω = {ωp }p∈M のことを M 上の 1 次微分形式と呼ぶ。
関数の微分 ⊗
k
V∗ (4.2)
(df )p : Tp (M ) → R (3.4)

1
は 1 次形式であり、余接ベクトル空間 TP∗ (M ) の元であ という記号で表す。特に V ∗ = V ∗ は双対空間である。
る。M の各点 p に (df )p ∈ Tp∗ (M ) を対応させる対応

k
{(df )p }p∈M は M 上の 1 次微分形式である。これを df と M の各点 p に Tp∗ (M ) の元 ωp を一つづつ対応指
表す。特に せる対応 ω = {ωp }p∈M のことを M 上の k 次共変テンソ
( ) ル場と呼ぶ。
∂ ∂f
df = (3.5) M 上の座標近傍 (U ; x1 , · · · , xn ) をとり、M 上の k 次
∂xµ ∂xµ
共変テンソル場 ω を U 上で局所座標表示することを考
えよう。U の各点 p において (dxµ )p (µ = 1, · · · , n) は
(U ; x1 , · · · , xn ) を多様体 M の座標近傍とするとき、
x , · · · , xn は開集合 U 上のなめらかな関数と考えられ
1 Tp∗ (M ) の基底であった。同様に
るから、n 個の 1 次微分形式 dxµ (µ = 1, · · · , n) が得
(dxµ1 )p ⊗ (dxµ2 )p ⊗ · · · ⊗ (dxµk )p (µ1 , · · · , µk = 1, · · · , n)
) U の各点 p において (dx )p (µ = 1, · · · , n) は
µ
られる。
( (4.3)

(µ = 1, · · · , n) に対する双対基底になっている。 ⊗k
∂xµ p は Tp∗ (M ) の基底をなす。よって ωp はこの基底で展
( ) 開される。U の各点 p でこのように展開されるので、結
∂ 局 U 上で
(dxµ )p = δνµ (3.6)
∂xν p

n

ベクトル場と同様に、1 次微分形式に対しても、座標近 ω= αµ1 ···µk dxµ1 ⊗ · · · ⊗ dxµk (4.4)


傍 (U ; x1 , · · · , xn ) をとると µ1 ,··· ,µk =1

ω|U = αµ dxµ (3.7) のように表すことができる。


明らかに我々が共変テンソル場として導入したものはこ
のように表すことができる。 こで定義した共変テンソル場の局所座標における成分で
( ) ある。
∂ {1, 2, · · · , k} という k 個の文字の間の置換全体を k 文
ω = αµ (3.8)
∂xµ 字の置換群とよび Sk で表す。いま σ ∈ Sk とすると、
( )
であるから、df にたいして 1 2 ··· k
σ= (4.5)
σ(1) σ(2) · · · σ(k)
∂f
df = dxµ (3.9)
∂xµ のように表すことができる。{1, 2, · · · , k} の任意の 2 文字
の入れ替えを互換と呼び、符号 −1 を持つと定める。Sk
と書かれる。df を関数 f の全微分と呼ぶこともある。 の任意の元は何回かの互換を行ったものとして表すことが
異なる座標近傍 (V ; x̄1 , · · · , x̄n ) を用いると、 できるので、Sk の元 σ が奇数回の互換によって得られる
のなら符号 −1 を、偶数回の互換によって得られるのなら
ω|V = βµ dx̄µ (3.10) 符号 +1 を持つとする。このようにして、置換群の任意の
元に符号を一意的に定めることができる。σ の符号を (σ)
のように異なる双対基底を用いて表されるが、その成分の
で表す。
間には U ∩ V 上で
V 上の k 次形式 ω が対称 k 次形式であるとは
∂xµ ν ∀X1 , · · · , Xk ∈ V と ∀σ ∈ Sk について
dxµ = dx̄ (3.11)
∂ x̄ν
ω(Xσ(1) , · · · , Xσ(k) ) = ω(X1 , · · · , Xk ) (4.6)
から
が成り立つことをいう。多様体 M 上のテンソル場 ω =
∂xµ {ωp }p∈M が対称 k 次テンソル場であるとは、M の各点
βν = αµ ν (3.12)
∂ x̄
という関係がある。
今までのことから明らかなように、我々が共変ベクトル
として導入したものは、1 次微分形式の局所座標における
成分である。座標近傍のとりかたに依存しない幾何学的な
対象はむしろ 1 次微分形式である。
6

p において ωp が Tp (M ) 上の対称 k 次形式になっている 多様体 M 上の (r, s) 型テンソル場 T とは、多様体 M


ことである。 の各点 p に対して Tp (M ) 上の (r, s) テンソル Tp を対
V 上の k 次形式 ω が交代 k 次形式であるとは 応させる対応 T = {Tp }p∈M である。M 上の座標近傍
∀X1 , · · · , Xk ∈ V と ∀σ ∈ Sk について (U ; x1 , · · · , xn ) をとり T を U 上で局所座標表示すると、

ω(Xσ(1) , · · · , Xσ(k) ) = (σ)ω(X1 , · · · , Xk ) (4.7) ∑


n ∑
n
T = T µ1 ···µr ν1 ···νs
が成り立つことをいう。 µ1 ,··· ,µr =1 ν1 ,··· ,νr =1

V 上の交代 k 次形式全体のなす集合を ∂ ∂
× ⊗ · · · ⊗ µr ⊗ dxν1 ⊗ · · · ⊗ dxνs
∂xµ1 ∂x

K
(4.15)
V∗ (4.8)
のように表される。

1
という記号で表す。特に V ∗ = V ∗ は双対空間である。
V 上の k 個の 1 次形式 η1 , · · · , ηk ∈ V ∗ を任意にとる V. アファイン接続と曲率テンソル
とき
多様体 M 上の 2 つのベクトル場 X 、Y に対して、M
η1 ∧ η2 ∧ · · · ∧ ηk : V × V × · · · × V → R (4.9) 上のベクトル場 ∇X Y を対応させる写像 ∇ が次の3つの
条件を満足するとき、∇ を M 上のアファイン接続という。
という記号で表される V 上の交代 k 次形式が次の式で定
義される。 1. ∇X Y は X と Y について線形な写像である。

η1 ∧ · · · ∧ ηk (X1 , · · · , Xk ) 2. M 上の任意のなめらかな関数 f に対して ∇f X Y =


  f ∇X Y が成り立つ。
η1 (X1 ) η1 (X2 ) · · · η1 (Xk )
 η2 (X1 ) η2 (X2 ) · · · η2 (Xk ) 
  3. M 上の任意のなめらかな関数 f に対して ∇X (f Y ) =
= det  .. .. .. ..  (4.10)
 . . . .  (Xf )Y + f ∇X Y が成り立つ。
ηk (X1 ) ηk (X2 ) · · · ηk (Xk ) ∇X Y を Y の X による共変微分と呼ぶ。組 (M, ∇) をア
V 上の基底 ei (i = 1, · · · , n) に対応する V ∗ 上の双対 ファイン多様体と呼ぶ。
基底を ω i (i = 1, · · · , n) としたとき、 M 上の座標近傍 (U ; x1 , · · · , xn ) をとって、U 上でのベ

クトル場の標準的な基底 に対してアファイン接続は
{ω i1 ∧ · · · ∧ ω ik }i1 <···<ik (4.11) ∂xµ
∂ ∂

K ∧
K ∇ ∂ = Γλ µν λ (5.1)
∗ ∗ ∂xµ ∂xν ∂x
は V の基底になる。 V の次元は
( ) から Γλ µν を定義する。これは我々が以前導入したアファ
n n! イン接続である。むしろアファイン接続係数というべきも
= (4.12)
k k!(n − k)! のであることがわかる。U 上で
に等しい。 ∂ ∂
多様体 M 上のテンソル場 ω = {ωp }p∈M が交代 k 次テ X = ξµ , Y = ην (5.2)
∂xµ ∂xν
ンソル場であるとは、M の各点 p において ωp が Tp (M )
上の交代 k 次形式になっていることである。交代 k 次テ と表されるベクトル場 X 、Y に対して
ンソル場のことをふつう k 次微分形式という。 ( )
ν ∂
M 上の座標近傍 (U ; x1 , · · · , xn ) をとり、M 上の k 次 ∇X Y = ξ ∇ ∂µ η
µ

微分形式 ω を局所座標表示すると、
∂x ∂xν
( λ )
∑ = ξµ
∂η
+ Γ λ
η ν ∂
(5.3)
ω= αµ1 ···µk dxµ1 ∧ · · · ∧ dxµk (4.13) ∂x µ µν
∂xλ
µ1 <···<µk
のように表される。
と表される。
V を R 上の n 次元ベクトル空間、V ∗ をその双対空間 ∇µ ≡ ∇ ∂ (5.4)
∂xµ
とするとき、V 上の (r, s) 型テンソルとは r 個の V ∗ と
s 個 V との直積から R への写像 と省略して表すと、
( )
T : V ∗ × ··· × V ∗ ×V × ··· × V → R (4.14) ∂η λ ∂
| {z } | {z } ∇µ Y = + Γλ µν η ν (5.5)
r s ∂xµ ∂xλ

であって T (ω1 , · · · , ωr , X1 , · · · , Xs ) が各 ωi 、Xi に関し となり、その成分は我々が以前に導入した、反変ベクトル


て線形であるようなものをいう。 η ν の共変微分に等しい。
7

共変微分の幾何学的な意味は平行移動という概念と結び が成り立つことを要請する。そうするとたとえば k 次共
付いている。一般の多様体では、異なる 2 点におけるベク 変テンソル場 ω に対して共変微分 ∇X ω は
トルが互いに平行であるかどうかを決める一般的な方法は
ない。我々ができるのは、ある点におけるベクトルを、そ (∇X ω)(X1 , · · · , Xk )
の点を通る曲線に沿って平行移動することである。そして ∑
k

その「平行」が何を意味するのかを定義するのがアファイ = X (ω(X1 , · · · , Xk ))− ω(X1 , · · · , ∇X Xi , · · · , Xk )


ン接続である。 i=1
多様体 M 上の曲線 c : (a, b) → M に対して、既に見た (5.15)
ようにその各点 c(t) に接ベクトル
で与えられることがわかる。
dc アファイン接続 ∇ に対して捩率テンソル T ∇ と曲率テ
V ≡ (5.6) ンソル R∇ を
dt
が定義される。(少なくとも) この曲線に沿って定義された T ∇ (X, Y ) = ∇X Y − ∇Y X − [X, Y ] (5.16)
ベクトル場 X が任意の t ∈ (a, b) に対して R∇ (X, Y )Z = ∇X (∇Y Z) − ∇Y (∇X Z)
− ∇[X,Y ] Z (5.17)
∇V X = 0 (5.7)
を定義する。座標近傍 (U ; x1 , · · · , xn ) をとって
を満たすとき、X は c に沿って平行移動されたという。座
標近傍 (U ; x1 , · · · , xn ) 上で ∂ ∂ ∂
X = ξµ , Y = ηµ , Z = ζµ (5.18)
∂xµ ∂xν ∂xµ
∂µ
X=ξ (5.8)
∂xµ と局所座標表示すると、
と表されるならば、 ( ) ∂
T ∇ (X, Y ) = Γλ µν − Γλ νµ ξ µ η ν λ (5.19)
∂x
dc µ
dx (c(t)) ∂ ( λ
V = = (5.9) ∇ µ ν ∂Γ νσ ∂Γλ µσ
dt dt ∂xµ R (X, Y )Z = ξ η −
∂xµ ∂xν
)
と表されるから (5.7) は ∂
+Γλ µκ Γκ νσ − Γλ νκ Γκ µσ ζ σ λ
∂x
dξ λ (c(t)) dxµ (c(t)) ν
+ Γλ µν ξ =0 (5.10) (5.20)
dt dt
となる。捩率テンソルは接続係数の反対称部分を表し、曲
となる。 率テンソルは我々が以前導入した Riemann テンソルを係
もし曲線 c の方向微分 (接ベクトル) V が曲線 c 上の各 数に含んでいる。
点で

∇V V = 0 (5.11) VI. RIEMANN 多様体と LEVI-CIVITA 接続


を満足するならば、曲線 c の各点で決まる接ベクトルは互
いに平行であることになる。これはそのような曲線 c が 多様体 M 上の 2 次の対称 (0, 2) テンソル場 g が M の各
「真っ直ぐ」であることを意味している。この条件を満た 点 p において正定値であるとき、g を M 上の Riemann
す曲線を測地線と呼ぶ。座標近傍 (U ; x1 , · · · , xn ) でこの 計量と呼ぶ。Riemann 計量は M の各点 p における接
条件を表すと、 ベクトル空間 Tp∗ (M ) に内積を与えるようなものである。
Riemann 計量 g が一つ与えられた多様体 (M, g) のこと
d2 xλ λ dxµ dxν を Riemann 多様体と呼ぶ。
+ Γ µν =0 (5.12)
dt2 dt dt Riemann 多様体 (M, g) 上の任意の 1 次微分形式 ω に
対して、M 上のベクトル場 ω ] が一意的に存在して、任
と書かれる。これは確かに我々が前に導入した測地線の方 意のベクトル Y に対して
程式である。
f ∈ F(M ) に対しては共変微分を ω(Y ) = g(ω ] , Y ) (6.1)

∇X f = X(f ) (5.13) が成り立つ。逆に任意のベクトル場 X に対して 1 次微分


形式 X [ が存在して、任意のベクトル場 Y に対して
と定義する。一般のテンソル場に対する共変微分は 2 つの
テンソル場の任意のテンソル積が Leibnitz 規則を満足す X [ (Y ) = g(X, Y ) (6.2)
ることを要請することによって定まる。すなわち T1 と T2
を (任意の型の) テンソル場であるとすると、 が成り立つ。局所座標表示をすると、このことは計量テン
ソルを用いて反変ベクトルと共変ベクトルを結び付けるこ
∇X (T1 ⊗ T2 ) = (∇X T1 ) ⊗ T2 + T1 ⊗ (∇X T2 ) (5.14) とができることを表している。
Riemann 多様体 (M, g) には次の 2 つの条件を満足す
る接続が一意的に存在する。この接続を Levi-Civita 接
続という。
8

1. ∀X ∈ X(M ) に対して によって決める6 。


一つ一つの実数 t に微分同相写像 ϕt : M → M が対応
∇X g = 0 (6.3) していて、次の4つの条件を満足するとき {ϕt }t∈R を M
の 1 パラメタ変換群と呼ぶ。
が成り立つ。
1. ϕ0 = idM
2. 捩率テンソルがゼロである。すなわち、∀X, Y ∈
X(M ) に対して 2. ϕt+s = ϕt ◦ ϕs
−1
∇X Y − ∇Y X = [X, Y ] (6.4) 3. ϕ−t = (ϕt )

が成り立つ。 4. (t, p) に ϕt (p) を対応させる写像 R × M → M は何


度でも微分可能である。
Levi-Civita 接続の接続係数は Christoffel 記号で与えら
れる。 多様体 M 上に 1 パラメタ変換群 {ϕt }t∈R があると、M
一般相対性理論では Levi-Civita 接続のみを考えるが、 上の任意の点 p に対し
拡張された重力理論では捩率テンソルがゼロでないような
d
ものもある。 ϕt (p) ∈ Tp (M ) (7.3)
ここで今まで展開してきた数学と、一般相対性理論との dt t=0
関係を述べる。多様体は局所的に Rn と見なせる空間であ
るが、一般相対性理論で現れる時空は局所的に Minkowski という接ベクトルを対応させることによって M 上のベク
時空と見なせる時空である。(これが等価原理によって要請 トル場 X を得ることができる。逆に完備な7 ベクトル場
される局所慣性系である。) また、一般相対性理論で現れる X があると、その積分曲線は 1 パラメタ変換群を与える
計量は正定値ではない。このような違いをはっきりさせる ことが知られている。
ときには、擬 Riemann 多様体と呼んで区別する。特に一 1 パラメタ変換群 {ϕt }t∈R が与えられると、ϕt (p) にお
般相対性理論で扱う計量テンソル場は符号数が (1, 3) であ ける接ベクトル Yϕt (p) を p における接ベクトル Yp と比
る内積を多様体の各点 p における接ベクトル空間 Tp (M ) べることができる。実際
に与えるので Lorentz 多様体と呼ばれるものである。一 ( )
((ϕ−t )∗ Y )p = (dϕ−t )ϕt (p) Yϕt (p) (7.4)
般相対性理論では、一般共変性原理により、座標系の選び
方に依らないテンソルの間の関係として物理法則を定式化
は、写像 ϕ−t によって移された、点 p における接ベクト
することを述べたが、実は「テンソル」と呼んでいたもの
ルである。1 パラメタ変換群 {ϕt }t∈R に対応するベクトル
はここで定式化した数学ではテンソル場の成分であって、
場を X とするとき、多様体 M の各点に
座標近傍系に依存しない仕方でテンソル場を定式化した。
また、一般にアファイン接続の概念はゼロでない捩率テ ((ϕ−t )∗ Y )p − Yp
ンソルをも許す広いものであるが、Riemann 多様体には (LX (Y ))p = lim (7.5)
Levi-Civita 接続という特別な接続が存在し、一般相対性 t→0 t
理論ではこの接続のみを考える。 を対応させる対応 LX (Y ) = {(LX (Y ))p }p∈M を Y の X
による Lie 微分と呼ぶ。座標近傍 (U ; x1 , · · · , xn ) におけ
る局所座標表示を
VII. KILLING ベクトル場
∂ ∂
この節では、時空の対称性についての数学的表現を求め X = ξµ , Y = ηµ (7.6)
∂xµ ∂xµ
よう。対称性というのは一般に何らかの変換を考えて、そ
の変換の下での不変性という形で表現される。我々は今ま
で多様体の数学を特定の座標系の取り方に依存しないよう
6 多様体 M から N へのなめらかな写像 ϕ に対して写像の微分 (dϕ)p :
に展開してきたので、それを用いることによって時空の対
称性を座標系に依存しない仕方で定義することができる。 Tp (M ) → Tq (N ) (q = ϕ(p)) は、p ∈ M 、q ∈ N のまわりの局所座
標系 (x1 , · · · , xn )、(y 1 , · · · , y n ) をとって
M 、N を n 次元多様体とする。写像 ϕ : M → N が
微分同相写像であるとは次の 2 つの条件が成り立つことを y ν = ϕν (x1 , · · · , xn ) (7.2)
いう。 と表すと、
(( ) ) ( )
1. ϕ : M → N は全単射である。 ∂ ∂ϕν ∂
(dϕ)p = (p)
∂xµ ∂xµ ∂y ν
2. ϕ : M → N と ϕ−1 : N → M がなめらかである (何
p q

度でも微分可能である)。 を満足する。
7 M の任意の点 p0 を初期値とする X の積分曲線の定義域が、プラス
また微分同相写像が存在するとき、M と N は微分同相で の方向にもマイナスの方向にもいくらでも延長できるとき、X を完備
なベクトル場という。
あるという。
微分同相写像 ϕ : M → N は M 上のベクトル場 X か
ら N 上のベクトル場 ϕ∗ X を

(ϕ∗ X)ϕ(p) = (dϕ)p (Xp ) , (∀p ∈ M ) (7.1)


9

とすると、 を満足する。すなわち ∀Y, Z ∈ X(M ) に対して

((ϕ−t )∗ Y )p X (g(Y, Z)) = g ([X, Y ], Z) + g (Y, [X, Z]) (7.15)


{( ) ( ) }
µ
∂η ∂ が成り立つ。局所座標表示では Killing ベクトル場
= (dϕ−t )ϕt (p) η µ + tξ ρ (p)
∂xρ ∂xµ ϕt (p)
( ) ( ) ∂
∂ϕν−t µ ρ ∂η
µ
∂ X = ξµ (7.16)
= (ϕ t (p)) η + tξ (p) ∂xµ
∂xµ ∂xρ ∂xν p
( ) ( ) ( ) は次の Killing 方程式
∂ξ ν ρ ∂η
µ

= δµ − t µ (p)
ν µ
η + tξ (p)
∂x ∂xρ ∂xν p ∇µ ξν + ∇ν ξµ = 0 (7.17)
( ν ν
)( )
∂η ∂ξ ∂
= η ν (p) + tξ µ µ (p) − tη µ µ (p) (7.7) を満足する。
∂x ∂x ∂xν p
時空がどのような Killing ベクトル場を持つかというこ
を得る。ただし t について 2 次以上の項は落とした。これ とが、座標系の選び方によらない時空の対称性についての
より 言説である。
( )( )
∂η ν ∂ξ ν ∂
(LX (Y ))p = ξ µ µ (p) − η µ µ (p)
∂x ∂x ∂xν p
= [X, Y ]p (7.8)
を得る。それゆえ

LX (Y ) = [X, Y ] (7.9)

である。
Lie 微分はベクトルばかりでなく、任意のテンソル場に
対して定義することができる。多様体 M 上の関数 f に
対して、

LX f = Xf (7.10)

と定義しよう。任意のテンソル場に対する Lie 微分は、Lie


微分が Leibnitz 規則を満足することを要請することによっ
て定まる。すなわち、 T1 と T2 を (任意の型の) テンソル
場であるとすると、

LX (T1 ⊗ T2 ) = (LX T1 ) ⊗ T2 + T1 ⊗ (LX T2 ) (7.11)

が成り立つことを要請する。そうするとたとえば k 次共
変テンソル場 ω に対して Lie 微分は

LX (ω)(Y1 , · · · , Yk )

k
= X (ω(Y1 , · · · , Yk )) − ω(X1 , · · · , [X, Yi ], · · · , Xk )
i=1
(7.12)
で与えられる。
微分同相写像 ϕ : M → M が Riemann 多様体 (M, g)
の等長変換であるとは、∀X, Y ∈ X(M ) に対して

g(ϕ∗ X, ϕ∗ Y ) = g(X, Y ) (7.13)

が成り立つことである。等長変換は Riemann 多様体の対


称性を特徴づけている。
1 パラメタ変換群 {ϕt }t∈R が Riemann 多様体 (M, g)
の等長変換であるとき、対応するベクトル場 X を Killing
ベクトル場と呼ぶ。Killing ベクトル場 X は

LX (g) = 0 (7.14)

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