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類義語・対義語比較の卒論ひながた

平成〓年度卒業予定
執筆者 〓
指導教員 白岩 広行

1. 研究テーマ 類義語の分析は、適切な類義語のペアを
思いつきさえすれば、比較的スムーズに書け
開閉を意味する動詞の比較研究 るテーマです。
-「ひらく」「あける」を中心に- 日本語の「のむ」と英語の drink を比較し
てみたり、標準語の「ばか」と大阪方言の「あ
ほ」を比較したりなど、他言語・他方言間で比
較してもよいです。
2. 論文の構成
例)薬をのむ/*drink a medicine
第 1 章 はじめに ばかにする/*あほにする
第 2 章 先行研究
2.1 『日本国語大辞典』より
2.2 森田(1989)より
2.3 李(1999; 2000)より
2.4 本研究の目的
第 3 章 研究の方法 章や節は、自分の興味に応じて削ったり増やし
第 4 章 類義語としての「ひらく」「あける」 たりしてよいです。工夫してオリジナルな構成
にしてみましょう。
4.1 「ひらく」の基本的意味について
4.2 「あける」の基本的意味について
4.3 「ひらく」「あける」の共通点と相違点
第 5 章 漢字表記について―「開く」「拓く」と「開ける」「空ける」
5.1 「ひらく」の漢字表記について
5.2 「あける」の漢字表記について
第 6 章 対義語としての「ひらく」「あける」と「とじる」「しめる」
6.1 「とじる」の基本的意味について
6.2 「しめる」の基本的意味について
6.3 「ひらく」「あける」と「とじる」「しめる」の関係
第 7 章 おわりに

3.論文の概要 「はじめに」では端的な例を挙げて研究の目的
や論文の構成をわかりやすく述べます。

第 1 章 はじめに
日本語には、似たような意味を表す動詞として「ひらく」「あける」がある。「ひら
く」「あける」は、次のように同じ文脈で使うことができ、相互に置換が可能なことがあ

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る。

(1)窓を{ひらく/あける}。 (筆者の作例)

(1)の「ひらく」「あける」は閉じた状態の窓を「開放する」という意味で使われてお
り、このような場合には「ひらく」「あける」の両方の動詞がほぼ同じ意味で使われる。
一方、次のように「あける」「ひらく」のどちらか片方しか使うことが出来ない場合も
ある。

(2)魚を{ひらく/*あける}。 (筆者の作例)
(3)コップを{*ひらく/あける}。 (筆者の作例)

(2)は「魚の身を包丁で切り広げる」という意味で動詞「ひらく」が使われているが、
この「ひらく」は「あける」に置換することができない。(3)は~~~~~。
また、「ひらく」と「あける」の両方が使える文でも、どちらの動詞を使うかによって
意味の異なる場合がある。

(4)道を{ひらく/あける}。 (筆者の作例)

(4)で「ひらく」を使うと~~~~という意味が表されるが、「あける」を使うと~~
~~という意味が表される。
本稿では、このように類義語の関係にある動詞「ひらく」「あける」について具体的な
用例をもとにした分析をおこない、意味上の共通点と相違点を明らかにする。また、対義
語の「とじる」「しめる」についても分析をおこない、開閉に関する動詞の意味を全体的
に整理する。
以下、第 2 章では先行研究について、第 3 章では研究の方法について概説する。第 4 章
では、実際に「ひらく」と「あける」の比較をおこない、その意味を分析する。第 5 章で
は漢字表記に注目し、同じ「ひらく」「あける」でも、「開く」と「拓く」、あるいは
「開ける」と「空ける」の間に意味的な違いがないか考える。第 6 章では「ひらく」「あ
ける」の対義語「しめる」「とじる」をふくめた分析をおこない、開閉に関する動詞の意
味について体系的な整理をおこなう。最後に第 7 章で本稿の議論のまとめをおこなう。

第 2 章 先行研究
この章では、~~~~などの国語辞典の記述、および、森田( 1989)や李(1999;
2000)などの先行研究の記述をまとめる。先行研究によってすでに明らかなことを整理
したうえで、本研究で明らかにしたいことをまとめる。

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2.1 『日本国語大辞典』より
『日本国語大辞典 第二版』で「ひらく」の項を見ると、以下のようなことが書かれて
いる。 可能な範囲で多くの先行研究を見つけ、その内容をまとめます。先
(辞書の記述をまとめる) 行研究が少ない場合には辞書の記述などを丁寧にまとめましょう。
類語辞典はたくさんあるので参考にしてください。

2.2 森田(1989)より
日本語の基本的な語彙の意味をまとめた森田(1989)は、「あける」の意味について
以下のようにまとめている。
(森田(1989)の内容をまとめる)

2.3 李(1999; 2000)より


李(1999)は、日本語の動詞「ひらく」「あける」「ひろげる」について、以下のよ
うに述べている。
(李(1999)の内容をまとめる)
さらに、李(2000)は~~~~。 自分の研究で「新たに明らかにしたいこと」を整理
します。先行研究とは別のことを明らかにして、自
(李(2000)の内容をまとめる) 分だけの発見を展開しましょう。

2.4 本研究の目的
以上、森田(1989)では~~~~ということが明らかになっている。さらに、李
(1999; 2000)は~~~~ということを明らかにした。しかし、~~~~という点で今
後の課題が示されている。また、~~~~については、まだ先行研究で議論されていない 。
研究手法については、~~~~というアプローチの方法も考えられる。
そのため、本研究では主に以下の点を中心に、さらに分析をおこないたいと考える。
 ~~~~~~
 ~~~~~~
 ~~~~~~

第 3 章 研究の方法
森田(1989)は用例の出典を特に明記しておらず、おおむね作例をもとに分析をおこ
なったものと考えられる。それに対し、本研究ではコーパスなどの実際の用例をもとに分
析をおこないたい。使用する資料は次のとおりである。
 「現代日本語書き言葉均衡コーパス」(少納言)
国立国語研究所が開発し、インターネット上で公開している「現代日本語書き言
葉均衡コーパス」(少納言)から用例を収集した。web 上の URL は以下のとおり
である。

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http://www.kotonoha.gr.jp/shonagon/
「現代日本語書き言葉均衡コーパス」は、書籍、雑誌、新聞、○○、○○、‥‥
といったジャンルのコーパスをまとめたものだが、本研究では、特に○○のコーパ
スで、△△というキーワードで検索したところ、□□件の用例が~~~~。本稿で
は、このコーパスから得た用例は、その出典を明記したうえで(少)と示すことに
する。
 「用例.jp」
「用例.jp」はインターネット上の日本語用例検索サイトで、小説における用例を
検索することが可能である。「用例.jp」の URL は以下のとおりである。
http://yourei.jp/
本研究では、~~~~。本稿では、このコーパスから得た用例は、その出典を明
記したうえで(用)と示すことにする。

これらのコーパスから収集した○○例の用例を用例カードに書き写し、それを意味ごと
に分類しながら分析をおこなうことにした。
また、必要に応じて筆者の内省を用い、「ひらく」「あける」が相互に置換可能か、あ
るいは、「ひろげる」など別の動詞に置換可能か、「店が」「あわてて」など別の表現が
共起可能か、などといった文法テストをおこなう。

(5)股を{ひろげる/ひらく/*あける}。 (筆者の作例)
(6)店が{ひらく/*あける}。 (筆者の作例)
(7)あわてて道を{?ひらく/あける}。 (筆者の作例)

本稿では、筆者の内省で日本語として不適格と判断した例を「*」の記号で示し、不適格
とまではいかなくとも不自然と判断した例を「?」の記号で示した。
なお、「ひらきなおる」「あけはなつ」などの複合動詞の例まで分析対象にすると論が
複雑になるため、ひとまず複合動詞は分析の対象外とする。また、「開く」のように、漢
字表記の都合で「ひらく」なのか「あく」なのか判断できない例も分析の対象外とする。

これは研究方法の一例。「ひらきなおる」「あけはなつ」などの複合語の例を分析して章を増やし、論を充
実させてもよい。
 例) ひらきなおる /*あけなおる
   *ひらきはなつ / あけはなつ→ ここから「ひらく」「あける」の意味の違いを分析!
ここに書いた「あける」の分析は、先行研究の記述を参考にしつつ、白岩が適当
に書いたものです。卒論では、他の語を対象にしたオリジナルな分析をしてくださ
い。用例は、なるべくたくさん挙げましょう。

第 4 章 類義語としての「ひらく」「あける」
本研究では、第 3 章で挙げた方法で、「ひらく」の用例を○○例、「あける」の用例を

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○○例収集した。この章では、これらの例をもとに「ひらく」「あける」の基本的な意味
について分析する。4.1 節で「ひらく」、4.2 節で「あける」の意味について分析したう
えで、4.3 節で「ひらく」「あける」の意味の共通点と相違点について整理する。

4.1 「ひらく」の基本的意味について
4.2 「あける」の基本的意味について

「ひらく」「あける」の用例を、それぞれ数百例ずつくらい集め、紙のカードに例を書き込んだうえで
分類を試みてください(エクセルで集計する手もありますが、紙のカードに書き込んだほうが圧倒的
にやりやすいです)。カードの書き方は次のとおりで、例文と出典を書き込みます。

外出から戻って来て居間の戸をあけると (「巻き鶏の照り煮焼き」の作り方)
内から、わっと驚きの声がした。 縮みを防ぐために皮目に穴をあける、

平岩弓枝『ちっちゃなかみさん』(用) 実著者不明『おせちと気軽なおもてなし』
(少)

トランプを並べるように用例カードを机の上に並べ、先行研究や辞書の記述なども参考に、似た意
味の用例どうしをグループ化します。

分析の結果、本研究では「あける」の細かな意味として次の 5 つを考えることにした。
以下、具体的な用例を挙げながら説明をおこなう。

(a)入れ物を開封する
「箱をあける」「缶詰をあける」のように、入れ物を開封するときに「あける」を使う
例が見られた。
用例を見ながら分類を工夫しましょう。例えば「口をあける」を( a)に分類
するとすれば、(a)の分類の説明は少し書き直す必要があるかもしれませ
(8)~~~~。 ん。あるいは、「口をあける」のために、まったく別の分類を作ってもよいか
もしれません。分類の基準としては、置換テストや共起テストも有効です。
(9)~~~~。 例えば、(a)(b)は「ひらく」に置換可能ですが、それ以外は「ひらく」に置
換できません。
(10)~~~~。
(11)~~~~。

(b)仕切りをなくす
「戸をあける」「窓をあける」「ふたをあける」のように、 2 つの空間の間にある仕切
りをなくすときに「あける」を使う例が見られた。

5
(12)外出から戻って来て居間の戸をあけると内から、わっと驚きの声がした。
平岩弓枝『ちっちゃなかみさん』(用)
(13)~~~~。

(c)入れ物を空にする
「コップをあける」のように、入れ物を空にする場合にも「あける」が使われる。入れ
物とはいえないが、「部屋をあける」のような例も部屋の中を空にするという意味なので 、
この分類に入れることにした。

(14)~~~~。
(15)~~~~。

「コップをあける」のように入れ物が「~を」で表されることもあるが、「(コップの)
ビールをあける」のように入れ物の中身が「~を」で表されることもある。

(16)~~~~。
(17)~~~~。

(d)空っぽの空間を作る
「穴をあける」「間隔をあける」のように、~~~~。

(18)(「巻き鶏の照り煮焼き」の作り方)
縮みを防ぐために皮目に穴をあける、
実著者不明『おせちと気軽なおもてなし』(少)
(19)~~~~。

(e)空いた時間を作る
「日曜日をあける」「午後をあける」のように~~~。

(20)~~~~。
(21)~~~~。

以上、本研究では「あける」の意味を 5 つに分けて分析した。この 5 つの意味に共通す


るものとして、本研究では「あける」の基本的な意味を次のように考える。

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(22)「あける」の基本的意味
「あける」は、その動作をすることによって何らかの空白を作ることを意味する。

上で(a)~(e)と分類した例のうち、(a)「入れ物を開封する」では、入れ物の封
の部分に空白を作り、中身が取り出せるようにすることが表されている。( b)「仕切り
をなくす」では、仕切りの部分が空白になり、2 つに隔てられていた空間がつながること
が表されている。(c)「入れ物を空にする」では、入れ物の中が空白になったことが表
される。(d)「空っぽの空間を作る」では空間的な、(e)「空いた時間を作る」では時
間的な、空白を生み出すことが表される。
このように、(a)~(e)の例に共通する「あける」の意味をまとめると「その動作を
することによって何らかの空白が生まれる」ということになる。そのため、本研究では、
(20)のように「あける」の基本的意味を分析した。

4.3 「ひらく」「あける」の共通点と相違点
「ひらく」「あける」の基本的意味をあらためて示すと次のようになる。

(23)「ひらく」の基本的意味
「ひらく」は、その動作をすることによって、密着していたものを左右や上下に離れ
させることを意味する。
(24)「あける」の基本的意味
「あける」は、その動作をすることによって、何らかの空白を作ることを意味する。

「窓を{ひらく/あける}」のような場合、密着していた窓枠と窓が離れるという意味
で「ひらく」を使うこともできるし、窓による仕切りの部分を空白にするという意味で
「あける」を使うこともできる。

(25)窓を{ひらく/あける}。 (筆者の
作例)

一方、「魚をひらく」のような場合、密着していた魚の身が離れ離れになるために「ひ
らく」は使えるが、それで空白の部分が生まれるわけではないため「魚をあける」とは言
えない。また、「コップをあける」の場合、コップの中身が空白になるので「あける」は
使えるが、密着していたものが離れることにはならないので「コップをひらく」とは言え
ない。

(26)魚を{ひらく/*あける}。 (筆者の作例)

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(27)コップを{*ひらく/あける}。 (筆者の作例)

「道を{ひらく/あける}」の場合、「道をひらく」だと、密集して生えている木や草を
左右に切り分けて新たな道を作るという意味になる。「道をあける」だと、道をふさいで
いる車や荷物をどかして空白の空間を作るということになる。したがって、「ひらく」と
「あける」のどちらの動詞も使うことができるが、意味はまったく異なる文になる。車や
荷物は即座にどかすことができるが、新しく道を作るのには時間がかかるので、「あわて
て」という表現は「道をひらく」とは共起しにくい。

(28)道を{ひらく/あける}。 (筆者の
作例)
(29)あわてて道を{?ひらく/あける}。 (筆者の作例)

4.1 節で示した「ひらく」の○種類の意味のうち、~~は「あける」に置換可能だが、
~~は置換ができない。

(30)~~~~。
(31)~~~~。
(32)~~~~。

4.2 節で(a)~(e)として示した「あける」の 5 種類の例のうち、(a)(b)は「ひ


らく」に置換可能だが、(c)(d)(e)は置換ができない。(a)(b)は密着状態に
あった入れ物の封や仕切りを離れさせるという読みができるのに対し、( c)(d)(e)
では、そのような読みが成り立たないためである。

(33)箱を{ひらく/あける}。 (筆者の作例)【(a)入れ物を開
封する】
(34)窓を{ひらく/あける}。 (筆者の作例)【(b)仕切りをな
くす】
(35)コップを{*ひらく/あける}。 (筆者の作例)【(c)入れ物を空にする】
(36)穴を{*ひらく/あける}。 (筆 者の 作例 ) 【 ( d) 空っ ぽの 空間 を作
る】
(37)日曜日を{*ひらく/あける}。 (筆者の作例)【(e)空いた時間を作る】

第 4 章の分析だけでも十分ですが、興味があれば漢字表記について考えてもよいでしょう。なお、第
5 章の分析は白岩が適当に書いたもので、実際の分析はおこなっていません。

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第 5 章 漢字表記について―「開く」「拓く」と「開ける」「空ける」
第 4 章では「ひらく」「あける」の意味について分析したが、どのような漢字で表記す
るかについては特に考えなかった。しかし、書きことばの場合、「ひらく」「あける」の
漢字表記が問題になる。そこで、この章では「ひらく」について「開く」「拓く」、「あ
ける」について「開ける」「空ける」という漢字表記の違いが意味面とどのように関わっ
ているか考える。

5.1 「ひらく」の漢字表記について
5.2 「あける」の漢字表記について
4.2 節では「あける」の例を 5 つの細かな意味に分けて整理したが、それぞれの意味ご
とに、どのような表記がなされているか、収集した用例の数を整理すると次の表のように
なる。この表では、ひらがなの「あける」と漢字の「開ける」「空ける」を区別した。な
お、意味の面でどの分類にするか判断に迷った例は「未分類」としている。例えば、「店
をあける」はどの意味に分類するか迷ったため「未分類」とした。 この表の数字は白岩による創作で、
実際には調査していません。

表 1 「あける」の意味別・表記別の用例数
あける 開ける 空ける (具体例)
(a)入れ物を開封する 23 98 0 箱をあける
(b)仕切りをなくす 54 143 0 窓をあける
(c)入れ物を空にする 23 4 89 コップをあける
(d)空っぽの空間を作る 16 21 22 穴をあける
(e)空いた時間を作る 22 0 15 日曜日をあける
未分類 9 32 4
147 298 130

この表に示すとおり、「あける」には「開ける」「空ける」の 2 とおりの漢字表記があ
るが、(a)「入れ物を開封する」(b)「仕切りをなくす」の意味では必ず「開ける」と
いう漢字が使われている。

(38)地上からの階段を下り、準備中の掛け看板を無視してバーの扉を開ける。
垣根涼介『ヒートアイランド』(用)
(39)~~~~。
(40)~~~~。

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一方、(c)「~~~」(e)「~~~」の意味では、~~~~。

(41)~~~~。
(42)~~~~。

(d)の意味では、~~~~。
以上のことから、単に封や仕切りをなくすだけで中身を空にするわけでない場合には
「開ける」が使われやすいのに対し、入れ物などの中身を空にする場合には「空ける」が
使われやすいということがいえる。

第 6 章 対義語としての「ひらく」「あける」と「とじる」「しめる」
ここまで「ひらく」「あける」の意味を中心に議論を進めてきたが、「ひらく」「あけ
る」の対義語として「とじる」「しめる」がある。
(43)窓を{ひらく/あける}。 (筆者の
作例)
(44)窓を{とじる/しめる}。 (筆者の
作例)

この章では、「とじる」「しめる」の意味について分析をおこない、「ひらく」「あけ
る」との関係のなかでその意味を整理する。
「とじる」「しめる」のような対義語について同様に分析す
るのもよいです。本格的に分析してもよいし、作例で簡単
にまとめてもよいでしょう。
6.1 「とじる」の基本的意味について
6.2 「しめる」の基本的意味について
6.3 「ひらく」「あける」と「とじる」「しめる」の関係
以上の基本的意味から考えると、「とじる」は「ひらく」の対義語、「しめる」は「あ
ける」の対義語といえそうである。しかし、その対義関係がどのような場合にも成立する
わけではない。例えば、「ひらく」に対する「とじる」の場合には~~~~。

(45)~~~~。
(46)~~~~。

また、「あける」に対する「しめる」の場合、( b)「仕切りをなくす」の意味では
「しめる」が対義語になりうるが、それ以外の意味では対義関係が成り立たない。

(47)箱を{あける/*しめる}。 (筆者の作例)【(a)入れ物を開封する】
(48)窓を{あける/しめる}。 (筆者の作例)【(b)仕切りをな

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くす】
(49)コップを{あける/*しめる}。 (筆者の作例)【(c)入れ物を空にする】
(50)穴を{あける/*しめる}。 (筆 者の 作例 ) 【 ( d) 空っ ぽの 空間 を作
る】
(51)日曜日を{あける/*しめる}。 (筆者の作例)【(e)空いた時間を作る】

今回は分析の対象としなかったが、(d)の意味の対義語としては「ふさぐ」が相当しそ
うである。

最後の「おわりに」や「まとめ」では、その論文で述べたことを図や表、
(52)穴を{あける/ふさぐ}。 (筆者の作例)【(d)空っぽの空
箇条書きなどで短くまとめます。論文全体の要約のようになれば理想
間を作る】 的です。先行研究との比較もあるとよいでしょう。

第 7 章 おわりに
本稿では「ひらく」「あける」を中心に開閉に関する動詞の意味について分析をおこ
なった。本稿でとりあげた動詞の意味を簡単に整理すると次のようになる。
まず、「ひらく」には、~~~~。
また、「あける」には、( a)「入れ物を開封する」、( b)「仕切りをなくす」、
(c)「入れ物を空にする」、(d)「空っぽの空間を作る」、(e)「空いた時間を作
る」の 5 つの細かな意味がある。これをまとめると、「あける」の基本的な意味は次のよ
うになる。

(53)「あける」の基本的意味
「あける」は、その動作をすることによって、何らかの空白を作ることを意味する。

また、(a)(b)の意味では「ひらく」と置換可能なことが多く、漢字では「開ける」と
表記されることが多い。一方、(c)(e)の意味では「空ける」と表記されることが多い。
(b)の意味の対義語としては「しめる」、(d)の意味の対義語としては「ふさぐ」があ
る。
「あける」の 5 つの意味を中心に、類義語、対義語の関係、および漢字表記について簡
単にまとめると次の表のようになる。

表 2 「あける」の類義語・対義語と漢字表記
例 類義語 対義語 漢字表記
(a)入れ物を開封する 箱をあける ひらく 開ける
(b)仕切りをなくす 窓をあける ひらく しめる 開ける

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(c)入れ物を空にする コップをあける 空ける
(d)空っぽの空間を作る 穴をあける ふさぐ 開/空ける
(e)空いた時間を作る 日曜日をあける 空ける

先行研究の森田(1989)では~~~~ということが示されていたが、それに加えて、
本研究では~~~~ということが明らかになった。

ところで、今回の分析では、「店をあける」のように、どの意味にも分類できない例が
いくつかあった。これらの例をどのように解釈するかは今後の課題である。「店をあけ
る」は「店をひらく」と言い換えることが可能で、対義表現として「店をしめる」という
ことができる。したがって、「店をあける」は(b)「仕切りをなくす」の分類に近いと
思われるが、なぜ「仕切りをなくす」という意味が「店をあける=店をはじめる・開店す
る」という意味につながるのか、十分な説明を用意する必要があると考える。

今後の課題を書いてもよいです。単に課題とするだけでなく、その論文で明らかにした
成果をふまえ、課題解決の見通しを簡単に書いておくとかっこいいです。

【参考文献】
森田良行(1989)『基礎日本語辞典』角川学芸出版
李国英(1999)「対象的なむすびつき--「あける」「ひらく」「ひろげる」を中心に」
『研究会報告』20、大東文化大学日本語文法研究会
李国英(2000)「「あける、ひらく、ひろげる」を核とする単語の組み合わせ―中国語
との対応関係を踏まえて」『日本文学論集』24、大東文化大学大学院日本文学専攻院
生会

【辞書類】
小学館国語辞典編集部編(2000-2002)『日本国語大辞典 第 2 版』小学館
小学館辞典編集部(1994)『使い方の分かる類語例解辞典』小学館

【web サイト】
「現代日本語書き言葉均衡コーパス 少納言」
http://www.kotonoha.gr.jp/shonagon/
「日本語用例検索」
http://www.let.osaka-u.ac.jp/~tanomura/kwic/aozora/

参考文献のうち‥‥書籍は
著者名(刊行年)『書籍タイトル』出版社
書籍のなかに収録された単行論文は 12
著者名(刊行年)「論文タイトル」『書籍タイトル』、出版社
雑誌のなかに収録された単行論文は
著者名(刊行年)「論文タイトル」『雑誌タイトル』号数、出版主体(出版社や大学)
‥‥を明記します。
web サイトの場合には URL を明記しましょう。
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