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(57)【要約】
【課題】組み換え微生物において油、燃料、油脂化学品、及び他の化合物を生成する方法
及び組成物を提供すること。
【解決手段】本発明は、油を生み出す微生物、及びこのような微生物を低コストで育てる
方法を含む。例えば、リパーゼ、ショ糖トランスポーター、ショ糖インベルターゼ、フル
クトキナーゼ、多糖分解酵素、ケトアシル−ACPシンターゼ酵素、脂肪酸アシル−AC
Pチオエステラーゼ、脂肪酸アシル−CoA/アルデヒド還元酵素、脂肪酸アシル−Co
A還元酵素、脂肪族アルデヒド還元酵素、脂肪酸ヒドロキシラーゼ、デサチュラーゼ酵素
、脂肪族アルデヒドデカルボニラーゼ、及び/又はアシルキャリアータンパク質をコード
する外来遺伝子を含む微細藻類細胞は、再生可能ディーゼル、バイオディーゼル、及び再 10
生可能ジェット燃料などの輸送燃料、並びに機能液、界面活性剤、石鹸及び潤滑剤などの
油脂化学品を製造するのに有用である。
【選択図】なし
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【特許請求の範囲】
【請求項1】
 本願図面に記載の発明。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連する出願の相互参照
 本出願は、米国特許法第119条(e)に基づき、2011年2月2日に出願した米国
仮出願第61/438,969号、2011年4月18日に出願した米国仮出願第61/
476,691号、2011年5月10日に出願した米国仮出願第61/484,458 10
号、2011年10月18日に出願した米国仮出願第61/548,616号の利益を請
求する。これらの出願は、それぞれ、あらゆる目的のために内容全体が参照により組み込
まれる。
【0002】
配列表の参照
 本明細書は、発明を実施するための形態の末尾に示されるとおり、配列表を含んでいる

【0003】
 本発明は、微生物から作られる、油、燃料、油脂化学品の生成に関する。特定的には、
本開示は、油を生み出す微細藻類、脂質、脂肪酸エステル、脂肪酸、アルデヒド、アルコ 20
ール、アルカンといった有用な化合物を産生するために微生物を育てる方法、並びに、上
述の微生物の遺伝子を組み換えて、微細藻類による油の産生効率を高め、産生される油の
種類及び組成物を変える方法に関する。
【背景技術】
【0004】
 化石燃料は、有機材料が地下に埋まった地質堆積物のうち、燃焼性のものを指す一般的
な用語であり、腐敗した植物及び動物から作られ、地殻の熱及び圧力に何億年もさらされ
ることによって、未精製油、石炭、天然ガス又は重油に変換されたものである。化石燃料
は、限りある再生不可能な資源である。世界経済によってエネルギーの必要性が増してい
るが、炭化水素のコストも重くのしかかってきている。エネルギー以外でも、プラスチッ 30
ク及び化学薬品の製造業者を含む多くの産業には、製造プロセスの原料としての炭化水素
の供給力が大きく関与している。現行の供給源に代わる費用効率のよい代替法があれば、
エネルギー及びこれらの原材料の費用が高騰するのを緩和することができるだろう。
【0005】
 特許文献1は、油を生成するために微細藻類を育てる方法及び材料を記載しており、特
に、微細藻類Chlorella protothecoidesが生成する油から、デ
ィーゼル燃料を生成することを例として挙げている。燃料用、化学用、食品用、および他
の利用のための生成するための改良法、特に、色素を含まずに、鎖長が短く、飽和度の高
い油を高収率及び高効率で製造する方法が依然として必要とされている。本発明は、この
要求を満たすものである。 40
【0006】
 ポリウレタンは、カルバメート(ウレタン)結合を含む化合物である。典型的には、ポ
リウレタンは有機単位のポリマーである。ポリマーは、イソシアネート部分(C(O)N
−R1−NC(O))を含む第1の有機単位と、ヒドロキシル基(HO−R2−OH)を
含む第2の有機単位との反応により調製される。ポリウレタンは、−[C(O)NH−R
1−NHC(O)−O−R2−O]m−として表され、式中、添え字mは、ポリマー中に
含まれる単量体の数を表す数字である。R1とR2とは同じであっても又は異なってもよ
く、しかしながら典型的には異なる。ポリウレタンは、可撓性及び剛性の両方の材料を含
めてさまざまな用途に用いられる。ポリウレタンは、靴、自動車、航空機、套管、ガスケ
ット、接着剤、カーペット、スパンデックス繊維、エレクトロニクス用の筐体などに使用 50
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されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第2008/151149号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
 本発明の例示的な実施形態は、改変されたグリセロ脂質プロフィールを生成する油産生
細胞及びその細胞から生成される生成物を提供する。油産生細胞(oleagninou 10
s cell)の例としては、II型脂質生合成経路を有する微生物細胞が挙げられる。
また、実施形態は天然油も特徴とし、これはそのような細胞を使用して得ることができる
天然油である。実施形態は、脂肪酸アシル−ACPチオエステラーゼなどのタンパク質を
コードする外来遺伝子を発現する組み換え細胞を含む。また、本発明は、そのような細胞
から、バイオディーゼル、再生可能ディーゼル及びジェット燃料などの燃料、食用油及び
化学薬品を含む、脂質及び油をベースとする生成物を製造する方法も提供する。
【0009】
 第1の態様において、本発明は、少なくとも3%がC8:0である脂質プロフィールを
有する微細藻類細胞を提供する。ある場合では、脂質プロフィールは、少なくとも12%
のC8:0である。ある実施形態では、細胞は組み換え細胞である。ある場合では、組み 20
換え細胞は、鎖長がC8の脂肪酸アシル−ACP基質に対して加水分解活性を有するアシ
ル−ACPチオエステラーゼタンパク質をコードする外来遺伝子を含む。ある実施形態で
は、外来遺伝子はCuphea palustrisのアシル−ACPチオエステラーゼ
をコードする。ある場合では、細胞はPrototheca細胞である。ある場合では、
細胞は、表1に特定される微細藻類から選択される微細藻類の属又は種の細胞である。
【0010】
 第2の態様において、本発明は、少なくとも4%がC10:0である脂質プロフィール
を有する微細藻類細胞を提供する。ある場合では、脂質プロフィールは少なくとも18%
のC10:0である。ある場合では、脂質プロフィールは少なくとも20%のC10:0
である。ある場合では、微細藻類細胞の脂質含有量はC12:0をさらに含む。ある場合 30
では、C10:0のC12:0に対する比は少なくとも3:1である。ある場合では、微
細藻類細胞の脂質含有量はC14:0をさらに含む。ある場合では、C10:0のC14
:0に対する比は少なくとも10:1である。ある実施形態では、細胞は組み換え細胞で
ある。ある場合では、組み換え細胞は、鎖長がC10の脂肪酸アシル−ACP基質に対し
て加水分解活性を有する脂肪酸アシル−ACPチオエステラーゼタンパク質をコードする
外来遺伝子を含む。ある実施形態では、外来遺伝子は、Cuphea hookeria
na及びUlmus americanaからなる群から選択される種に由来する脂肪酸
アシル−ACPチオエステラーゼタンパク質をコードする。ある実施形態では、脂肪酸ア
シル−ACPチオエステラーゼタンパク質は、Cuphea hookeriana及び
Ulmus americanaからなる群から選択される種に由来する。ある場合では 40
、脂肪酸アシル−ACPチオエステラーゼ遺伝子は、鎖長がC10の脂肪酸アシル−AC
P基質に対して加水分解活性を有するCuphea hookeriana及びUlmu
s americanaに由来する脂肪酸アシル−ACPチオエステラーゼ遺伝子からな
る群から選択される。
【0011】
 ある場合では、細胞はPrototheca細胞である。ある実施形態では、細胞は、
表1に特定される微細藻類から選択される微細藻類の属又は種の細胞である。
【0012】
 第3の態様において、本発明は、少なくとも13%がC12:0である脂質プロフィー
ルを有する微細藻類細胞を提供する。ある場合では、細胞は組み換え細胞である。ある実 50
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施形態では、組み換え細胞は、鎖長がC12の脂肪酸アシル−ACP基質に対して加水分
解活性を有する脂肪酸アシル−ACPチオエステラーゼタンパク質をコードする外来遺伝
子を含む。ある実施形態では、脂肪酸アシル−ACPチオエステラーゼタンパク質は、U
mbellularia californica及びCinnamomum camp
horaからなる群から選択される種に由来する。ある場合では、脂肪酸アシル−ACP
チオエステラーゼ遺伝子は、鎖長がC12の脂肪酸アシル−ACP基質に対して加水分解
活性を有するUmbellularia californica及びCinnamom
um camphoraに由来する脂肪酸アシル−ACPチオエステラーゼ遺伝子からな
る群から選択される。ある実施形態では、細胞はPrototheca細胞である。
【0013】 10
 第4の態様において、本発明は、少なくとも10%がC14:0である脂質プロフィー
ルを有する微細藻類細胞を提供する。ある場合では、脂質プロフィールは、少なくとも3
5%のC14:0である。ある場合では、微細藻類細胞の脂質含有量はC12:0をさら
に含む。ある場合では、C14:0のC12:0に対する比は少なくとも3:1である。
ある場合では、細胞は組み換え細胞である。ある実施形態では、組み換え細胞は、鎖長が
C14の脂肪酸アシル−ACP基質に対して加水分解活性を有する脂肪酸アシル−ACP
チオエステラーゼタンパク質をコードする外来遺伝子を含む。ある実施形態では、脂肪酸
アシル−ACPチオエステラーゼタンパク質は、Cinnamomum camphor
a及びUlmus americanaからなる群から選択される種に由来する。ある場
合では、脂肪酸アシル−ACPチオエステラーゼ遺伝子は、鎖長がC14の脂肪酸アシル 20
−ACP基質に対して加水分解活性を有するCinnamomum camphora及
びUlmus americana脂肪酸アシル−ACPチオエステラーゼ遺伝子からな
る群から選択される。ある場合では、細胞はPrototheca細胞である。ある実施
形態では、細胞は、表1に特定される微細藻類から選択される微細藻類の属又は種の細胞
である。
【0014】
 第5の態様において、本発明は、少なくとも15%がC16:0である脂質プロフィー
ルを有する微細藻類細胞を提供する。ある場合では、脂質プロフィールは、少なくとも3
9%のC16:0である。ある場合では、脂質プロフィールは、少なくとも67%のC1
6:0である。ある場合では、細胞は組み換え細胞である。ある実施形態では、組み換え 30
細胞は、鎖長がC16の脂肪酸アシル−ACP基質に対して加水分解活性を有する脂肪酸
アシル−ACPチオエステラーゼタンパク質をコードする外来遺伝子を含む。ある実施形
態では、脂肪酸アシル−ACPチオエステラーゼタンパク質は、Cuphea hook
eriana及びUlmus Americanaから選択される種に由来する。ある実
施形態では、組み換え細胞は、鎖長がC16の脂肪酸アシル−ACP基質に対して加水分
解活性を有するCuphea hookeriana及びUlmus american
aからなる群から選択される種に由来する脂肪酸アシル−ACPチオエステラーゼタンパ
ク質をコードする外来遺伝子を含む。ある場合では、細胞はPrototheca細胞で
ある。ある実施形態では、微細藻類細胞は、内在するデサチュラーゼ遺伝子をさらに含み
、ここで内在するデサチュラーゼ遺伝子は、不活性なデサチュラーゼ又は変異していない 40
デサチュラーゼと比べて活性が低いデサチュラーゼをコードするように変異されているか
、又は前記内在するデサチュラーゼが微細藻類細胞ゲノムから欠失されている。
【0015】
 第6の態様において、本発明は、少なくとも60%が飽和脂肪酸である脂質プロフィー
ルを有する微細藻類細胞を提供する。ある場合では微細藻類細胞は、少なくとも85%が
飽和脂肪酸である脂質プロフィールを有する。ある場合では、細胞は組み換え細胞である
。ある実施形態では、組み換え細胞は、鎖長がC10∼C16の脂肪酸アシル−ACP基
質に対して加水分解活性を有する脂肪酸アシル−ACPチオエステラーゼタンパク質をコ
ードする外来遺伝子を含む。ある場合では、細胞はPrototheca細胞である。
【0016】 50
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 第7の態様において、本発明は、少なくとも19%がC18:0である脂質プロフィー
ルを有する微細藻類細胞を提供する。ある場合では、脂質プロフィールは、少なくとも2
7%がC18:0である。ある場合では、細胞は組み換え細胞である。ある実施形態では
、組み換え細胞は、鎖長がC18の脂肪酸アシル−ACP基質に対して加水分解活性を有
する脂肪酸アシル−ACPチオエステラーゼタンパク質をコードする外来遺伝子を含む。
ある実施形態では、脂肪酸アシル−ACPチオエステラーゼタンパク質は、Brassi
ca napusから選択される種に由来する。ある実施形態では、組み換え細胞は、鎖
長がC16の脂肪酸アシル−ACP基質に対して加水分解活性を有するBrassica
 napusに由来する脂肪酸アシル−ACPチオエステラーゼタンパク質をコードする
外来遺伝子を含む。 10
【0017】
 第8の態様において、本発明は、Cuphea hookeriana、Umbell
ularia californica、Cinnamomun camphora、C
uphea palustris、Cuphea lanceolata、Iris g
ermanica、Myristica fragrans、Garcinia man
gostana、Elaeis guiniensis、Brassica napus
、Ricinus communis及びUlmus americanaからなる群に
由来する脂肪酸アシル−ACPチオエステラーゼタンパク質をコードする外来遺伝子を含
む微細藻類細胞を提供する。
【0018】 20
 第9の態様において、本発明は、発現構築物を含む微細藻類細胞を提供し、ここで発現
構築物は、内因性遺伝子が不活性な遺伝子産物、又は変異していない遺伝子産物と比べて
活性が低い遺伝子産物をコードするように変異されている、内因性遺伝子が微細藻類細胞
ゲノムから欠失されている、及びRNA誘導性機構を介する、からなる方法から選択され
て内因性遺伝子の発現を下方調節する。ある場合では、この方法は、RNAi、アンチセ
ンス及び/又はdsRNAなどのRNA誘導性機構である。ある場合では、内因性遺伝子
はデサチュラーゼ遺伝子である。ある実施形態では、デサチュラーゼ遺伝子はデルタ12
脂肪酸デサチュラーゼ遺伝子である。ある場合では、細胞はPrototheca細胞で
ある。
【0019】 30
 第10の態様において、本発明は、上記の態様のいずれかに記載されるとおりの微細藻
類細胞を提供し、ここで微細藻類細胞は、スタキオース、ラフィノース又はメリビオース
を炭素源として使用して育てられる。
【0020】
 第11の態様において、本発明は、2%以下の18:2である脂質プロフィールを有す
る微細藻類細胞を提供する。ある場合では、本発明は、7%以下の18:2である脂質プ
ロフィールを有する微細藻類細胞を提供する。
【0021】
 第12の態様において、本発明は、脂質を生産する方法を提供する。一実施形態では、
この方法は、(a)細胞が乾燥重量で少なくとも20%の脂質になるまで、上記に考察し 40
たような微細藻類細胞を育てることと;(b)水溶性バイオマス成分から脂質を分離する
こととを含む。
【0022】
 第13の態様において、本発明は、脂質を生産する別の方法を提供する。一実施形態で
は、この方法は、(a)2つの異なるアシル−ACPチオエステラーゼをコードする2つ
の異なる外来遺伝子を含む微細藻類細胞を育てることと、(b)水溶性バイオマス成分か
ら脂質を分離することとを含む。ある場合では、外来遺伝子の少なくとも1つは、表4に
特定されるチオエステラーゼからなる群から選択される脂肪酸アシル−ACPチオエステ
ラーゼをコードする。
【0023】 50
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 第14の態様において、本発明は、油をベースとする生成物を生産する方法を提供する
。一実施形態では、この方法は、(a)細胞が乾燥重量で少なくとも10%の脂質になる
まで、上記に考察したような微細藻類細胞を育てることと;(b)微細藻類細胞から脂質
を分離することと;(c)鹸化;メタセシス;酸加水分解;アルカリ加水分解;酵素加水
分解;触媒的加水分解;加圧熱水による加水分解;脂質がグリセロールと脂肪酸とに分解
する触媒的加水分解反応;脂肪族窒素化合物を生成するアミノ化反応;一塩基酸及び二塩
基酸を生成するオゾン分解反応;酵素による分解及び加圧による分解からなる群から選択
されるトリグリセリド分解反応;加水分解反応の後に続く縮合反応;水素化処理反応;水
素化処理反応及び水素化処理反応の前の、又は水素化処理反応と同時の脱酸素反応及び/
又は縮合反応;気体除去反応;水素化分解反応、水素化、水素化−水素化分解の連続反応 10
、水素化分解−水素化の連続反応、及び水素化−水素化分解反応の組み合わせからなる群
から選択される脱酸素反応;脱酸素反応の後の縮合反応;エステル化反応;インターエス
テル化反応;トランスエステル化反応;ヒドロキシル化反応;及びヒドロキシル化反応の
後の縮合反応からなる群から選択される少なくとも1つの化学反応に脂質を供することと
;(d)場合により、反応の生成物を他の成分から単離することとを含み、それにより油
をベースとする生成物が生成される。
【0024】
 ある場合では、油をベースとする生成物は、石鹸又は燃料生成物から選択される。ある
実施形態では、油をベースとする生成物は、バイオディーゼル、再生可能ディーゼル、及
びジェット燃料からなる群から選択される燃料生成物である。ある場合では、燃料生成物 20
は、(i)0.025∼0.3mcg/g、好ましくは0.05∼0.244mcg/g
の総カロチノイド;(ii)0.005mcg/g未満、好ましくは0.003mcg/
g未満のリコピン;(iii)0.005mcg/g未満、好ましくは0.003mcg
/g未満のβ−カロチン;(iv)0.025∼0.3mcg/g、好ましくは0.04
5∼0.268mcg/gのクロロフィルA;(v)35∼175mcg/g、好ましく
は38.3∼164mcg/gのγ−トコフェロール;(vi)0.25%未満のブラシ
カステロール、カンペステロール、スチグマステロール(stignasterol)、
又はβ−シトステロール;(vii)225∼350mcg/g、好ましくは249.6
∼325.3mcg/gの総トコトリエノール;(viii)0.0025∼0.05m
cg/g、好ましくは0.003∼0.039mcg/gのルテイン;又は(ix)50 30
∼300mcg/g、好ましくは60.8∼261.7mcg/gのトコフェロールのう
ち、1つ以上の属性を有しているバイオディーゼルである。ある場合では、燃料生成物は
、少なくとも20℃、40℃又は60℃のT10−T90を有する再生可能ディーゼルで
ある。ある場合では、燃料生成物は、HRJ−5及び/又はASTM仕様D1655を満
たすジェット燃料である。
【0025】
 第15の態様において、本発明は、(a)少なくとも1∼5%、好ましくは少なくとも
3%のC8:0、少なくとも2.5%、好ましくは少なくとも4%のC10:0、少なく
とも10%、好ましくは少なくとも13%のC12:0、少なくとも10%のC14:0
、及び/又は少なくとも60%の飽和脂肪酸という脂質プロフィールと、(b)(i)0 40
.025∼0.3mcg/g、好ましくは0.05∼0.244mcg/gの総カロチノ
イド;(ii)0.005mcg/g未満、好ましくは0.003mcg/g未満のリコ
ピン;(iii)0.005mcg/g未満、好ましくは0.003mcg/g未満のβ
−カロチン;(iv)0.025∼0.3mcg/g、好ましくは0.045∼0.26
8mcg/gのクロロフィルA;(v)35∼175mcg/g、好ましくは38.3∼
164mcg/gのγ−トコフェロール;(vi)0.25%未満のブラシカステロール
、カンペステロール、スチグマステロール(stignasterol)、又はβ−シト
ステロール;(vii)225∼350mcg/g、好ましくは249.6∼325.3
mcg/gの総トコトリエノール;(viii)0.0025∼0.05mcg/g、好
ましくは0.003∼0.039mcg/gのルテイン;又は(ix)50∼300mc 50
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g/g、好ましくは60.8∼261.7mcg/gのトコフェロールのうち、1つ以上
の属性とを含むトリグリセリド油脂を提供する。
【0026】
 第16の態様において、本発明は、少なくとも5:1のC8:C10脂肪酸比を有する
微細藻類から単離されるトリグリセリド油脂を提供する。ある実施形態では、トリグリセ
リド油脂は微細藻類細胞(例えば、Prototheca属の微細藻類細胞)から単離さ
れ、ここで微細藻類細胞は外来遺伝子を含む。関連する態様において、本発明は、飽和脂
肪酸が少なくとも60%である微細藻類から単離されるトリグリセリド油脂を提供する。
【0027】
 別の関連する態様において、本発明は、約2:1のC16:14脂肪酸比を有する脂質 10
プロフィールを有する微細藻類から単離されるトリグリセリド油脂を提供する。別の関連
する態様において、本発明は、微細藻類細胞から生成されるトリグリセリド油脂を提供し
、ここで微細藻類細胞は外来遺伝子を含む。ある場合では、微細藻類はProtothe
ca属の微細藻類である。
【0028】
 別の関連する態様において、本発明は、約3:1のC12:14脂肪酸比を有する脂質
プロフィールを有する微細藻類から単離されるトリグリセリド油脂を提供する。別の関連
する態様において、本発明は、微細藻類細胞から生成されるトリグリセリド油脂を提供し
、ここで微細藻類細胞は外来遺伝子を含む。ある場合では、微細藻類はProtothe
ca属の微細藻類である。 20
【0029】
 第17の態様において、本発明は、(a)1%未満の<C12脂肪酸;1%∼10%、
好ましくは2%∼7%のC14:0脂肪酸;20%∼35%、好ましくは23%∼30%
のC16:0脂肪酸;5%∼20%、好ましくは7%∼15%のC18:0脂肪酸;35
%∼60%、好ましくは40%∼55%のC18:1脂肪酸;及び1%∼20%、好まし
くは2%∼15%のC18:2脂肪酸という脂質プロフィールと;(b)(i)0.02
5∼0.3mcg/g、好ましくは0.05∼0.244mcg/gの総カロチノイド;
(ii)0.005mcg/g未満、好ましくは0.003mcg/g未満のリコピン;
(iii)0.005mcg/g未満、好ましくは0.003mcg/g未満のβ−カロ
チン;(iv)0.025∼0.3mcg/g、好ましくは0.045∼0.268mc 30
g/gのクロロフィルA;(v)35∼175mcg/g、好ましくは38.3∼164
mcg/gのγ−トコフェロール;(vi)0.25%未満のブラシカステロール、カン
ペステロール、スチグマステロール(stignasterol)、又はβ−シトステロ
ール;(vii)225∼350mcg/g、好ましくは249.6∼325.3mcg
/gの総トコトリエノール;(viii)0.0025∼0.05mcg/g、好ましく
は0.003∼0.039mcg/gのルテイン;又は(ix)50∼300mcg/g
、好ましくは60.8∼261.7mcg/gのトコフェロールのうち、1つ以上の属性
とを含むトリグリセリド油脂を提供する。
【0030】
 ある場合では、トリグリセリド油脂は、1つ以上の外来遺伝子を含む細菌から単離され 40
る。ある実施形態では、1つ以上の外来遺伝子は脂肪酸アシル−ACPチオエステラーゼ
をコードする。ある場合では、脂肪酸アシル−ACPチオエステラーゼは、鎖長がC14
の脂肪酸アシル−ACP基質に対して加水分解活性を有する。ある実施形態では、細菌は
発現構築物をさらに含み、ここで発現構築物は、内因性遺伝子が不活性な遺伝子産物、又
は変異していない遺伝子産物と比べて活性が低い遺伝子産物をコードするように変異され
ている、内因性遺伝子が微細藻類細胞ゲノムから欠失されている、及びRNA誘導性機構
を介する、からなる方法から選択されて内因性遺伝子の発現を下方調節する。ある実施形
態では、内因性遺伝子はデサチュラーゼをコードする。ある場合では、デサチュラーゼは
、ステアロイル−アシルキャリアータンパク質デサチュラーゼ(SAD)又は脂肪酸デサ
チュラーゼ(FAD)である。 50
(8) JP 2018-99138 A 2018.6.28

【0031】
 第18の態様において、本発明は、1%未満の<C12脂肪酸;2%∼7%のC14:
0脂肪酸;23%∼30%のC16:0脂肪酸;7%∼15%のC18:0脂肪酸;40
∼55%のC18:1脂肪酸;及び2∼15%のC18:2脂肪酸という脂質プロフィー
ルを含むトリグリセリド油脂を生成する方法を提供し、ここでトリグリセリド油脂は、1
つ以上の外来遺伝子を含む細菌から単離される。ある場合では、トリグリセリド油脂は、
3∼5%のC14:0;25∼27%のC16:0;10∼15%のC18:0;及び4
0∼45%のC18:1という脂質プロフィールを含む。ある実施形態では、1つ以上の
外来遺伝子は脂肪酸アシル−ACPチオエステラーゼをコードする。ある場合では、脂肪
酸アシル−ACPチオエステラーゼは、鎖長がC14の脂肪酸アシル−ACP基質に対し 10
て加水分解活性を有する。
【0032】
 第19の態様において、本発明は、リシノール酸を生成する微生物細胞を提供する。あ
る場合では、微生物細胞は微細藻類細胞である。ある場合では、微生物細胞及び微細藻類
細胞は、脂肪酸ヒドロキシラーゼをコードする外来遺伝子を含む。ある実施形態では、脂
肪酸ヒドロキシラーゼはオレイン酸12−ヒドロキシラーゼである。ある場合では、脂肪
酸ヒドロキシラーゼはRicinus communisに由来する。ある場合では、微
生物細胞は、Prototheca属、例えばPrototheca moriform
isの微生物細胞である。
【0033】 20
 第20の態様において、本発明は、α−ガラクトシダーゼをコードする外来遺伝子を含
む微細藻類細胞を提供する。ある場合では、α−ガラクトシダーゼをコードする外来遺伝
子を含む微細藻類細胞、ここでα−ガラクトシダーゼは分泌される。ある実施形態では、
α−ガラクトシダーゼをコードする外来遺伝子は、Saccharomyces、Asp
ergillus及びCyamopsisからなる群から選択される属に由来する。
【0034】
 第21の態様において、本発明は、脂質組成物を生成する方法を提供し、この方法は、
(a)従属栄養条件下、固定炭素源が存在する状態で微細藻類細胞を育てる工程であって
、微細藻類細胞が、α−ガラクトシダーゼをコードする外来遺伝子を含み、且つ固定炭素
源が、ラフィノース、スタキオース及びメリビオースからなる群から選択される工程と; 30
(b)脂質を非脂質成分から分離する工程とを含み;それにより脂質組成物を生成する。
ある場合では、微細藻類細胞はPrototheca属の微細藻類細胞である。
【0035】
 第22の態様において、本発明は、THIC酵素をコードする外来遺伝子を含む微細藻
類細胞を提供する。ある場合では、THIC酵素は、Coccomyxa、Arabid
opsis、及びSynechocystisからなる群から選択される属に由来する。
【0036】
 別の態様において、本発明は、THIC酵素をコードする外来遺伝子を発現させること
を含む、チアミンが存在しない状態で微細藻類細胞を育てる方法を提供する。ある場合で
は、THIC酵素は、Coccomyxa、Arabidopsis、及びSynech 40
ocystisからなる群から選択される属に由来する。
【0037】
 他の態様において、本発明は、本明細書に記載されるような微細藻類細胞を提供し、こ
こで前記微細藻類細胞は、ショ糖インベルターゼ、α−ガラクトシダーゼ、及びTHIC
酵素からなる群から選択される別の外来遺伝子をさらに含む。
【0038】
 この発明の別の態様は、微生物細胞から単離されるヒドロキシル化油脂を提供する。一
態様において、ヒドロキシル化油脂は微生物細胞から単離され、ここで微生物細胞は微細
藻類細胞(例えば、Prototheca属の微細藻類細胞)である。さらなる態様にお
いて、ヒドロキシル化油脂はPrototheca moriformis細胞から単離 50
(9) JP 2018-99138 A 2018.6.28

される。一実施形態では、ヒドロキシル化油脂はヒドロキシル化トリグリセリドである。
ヒドロキシル化トリグリセリドは、ヒマシ油と化学的に同様又は同一であってもよい。
【0039】
 本発明のさらなる態様はヒドロキシル化脂肪酸である。ヒドロキシル化脂肪酸の一実施
形態はリシノール酸である。
【0040】
 さらに別の態様において、微生物のヒドロキシル化油脂又はヒドロキシル化脂肪酸はさ
らにヒドロキシル化される。リシノール酸がヒドロキシル化されると、2個のヒドロキシ
ル基を含む脂肪酸が提供される。
【0041】 10
 本発明のさらに別の態様は、ヒドロキシル化油脂及び/又はヒドロキシル化脂肪酸を、
イソシアネート部分を含む化合物と反応させてポリウレタンを形成することにより調製さ
れる組成物を提供する。
【0042】
 本発明の別の態様は、少なくとも20%がC18:2である脂質プロフィールを有する
微細藻類細胞を提供する。ある場合では、微細藻類細胞は、少なくとも30%がC18:
2である脂質プロフィールを有する。ある場合では、微細藻類細胞は、少なくとも40%
がC18:2である脂質プロフィールを有する。ある場合では、微細藻類細胞は、少なく
とも50%がC18:2である脂質プロフィールを有する。
【0043】 20
 本発明の別の態様は、脂質を生産する方法を提供し、この方法は、(a)培地において
微細藻類細胞を育て、糖濃度をモニタリングすることと;(b)培地の糖濃度が約1g毎
リットル未満に達したら、その培地に、約2グラム毎時毎リットル∼約10グラム毎時毎
リットルの連続的な速度で約2∼約24時間にわたり第1の糖液を添加することと;(c
)培地に第2の糖液を添加して培地の糖濃度を約15∼約20グラム毎リットルに維持す
ることと;(d)微細藻類のバイオマスから脂質を単離することとを含む。ある場合では
、第1の糖液は、約4グラムのショ糖毎時毎リットル∼約6グラムのショ糖毎時毎リット
ルの速度で培地に添加される。ある場合では、第1の糖液は、約5.25グラムのショ糖
毎時毎リットルの速度で培地に添加される。ある場合では、糖はショ糖又はグルコースで
ある。 30
【0044】
 本発明の別の態様は、少なくとも10%がC18:3である脂質プロフィールを有する
微細藻類細胞を提供する。ある場合では、微細藻類細胞は、少なくとも20%がC18:
3である脂質プロフィールを有する。ある場合では、微細藻類細胞は、少なくとも30%
がC18:3である脂質プロフィールを有する。ある場合では、微細藻類細胞は、少なく
とも40%がC18:3である脂質プロフィールを有する。ある場合では、微細藻類細胞
は、少なくとも50%がC18:3である脂質プロフィールを有する。
【0045】
 本発明の別の態様は、リノール酸又はリノレン酸を含むトリグリセリドを生成する微生
物を提供し、ここで微生物は、β−ケトアシル−ACPシンターゼII(KAS II) 40
酵素をコードする組み換え核酸を含む。ある場合では、微生物は、ステアロイルACPデ
サチュラーゼ(SAD)酵素をコードする組み換え核酸をさらに含む。ある場合では、微
生物は、オレイン酸特異的チオエステラーゼ酵素をコードする組み換え核酸をさらに含む
。ある場合では、微生物は、脂肪酸デサチュラーゼ(FAD)酵素をコードする組み換え
核酸をさらに含む。ある場合では、微生物は、グリセロ脂質デサチュラーゼをコードする
組み換え核酸をさらに含む。
【0046】
 上記で考察される操作された微生物において、KAS II酵素は、配列番号175、
配列番号176、配列番号177、配列番号178及び配列番号179からなる群から選
択されるアミノ酸配列を含むことができる。ある場合では、SAD酵素は、配列番号17 50
(10) JP 2018-99138 A 2018.6.28

2、配列番号196、配列番号197、配列番号198、配列番号199、配列番号20
0、及び配列番号201からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むことができる。あ
る場合では、オレイン酸特異的チオエステラーゼ酵素は、配列番号195、配列番号20
2、配列番号203、配列番号204、配列番号205、及び配列番号206からなる群
から選択されるアミノ酸配列を含むことができる。ある場合では、FAD酵素は、配列番
号181、配列番号182、配列番号183、配列番号184及び配列番号185からな
る群から選択されるアミノ酸配列を含むことができる。ある場合では、FAD酵素は、配
列番号207、配列番号208、配列番号209、配列番号210、配列番号211、及
び配列番号212からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むΔ12 FAD酵素であ
る。ある場合では、FAD酵素は、配列番号213、配列番号214、配列番号215、 10
配列番号216、配列番号217、配列番号218、配列番号219、配列番号220、
及び配列番号221からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むΔ15 FAD酵素で
ある。ある場合では、グリセロ脂質デサチュラーゼは、ω−6脂肪酸デサチュラーゼ、ω
−3脂肪酸デサチュラーゼ、又はω−6オレイン酸デサチュラーゼである。
【0047】
 上記で考察される操作された微生物の任意のものが、ショ糖利用経路酵素をコードする
組み換え核酸をさらに含むことができる。ある場合では、ショ糖利用経路酵素はショ糖イ
ンベルターゼである。
【0048】
 上記で考察される操作された微生物の任意のものにおいて、微生物は、他の脂肪酸に対 20
するリノール酸又はリノレン酸の比率が増加するようにさらに操作されることができる。
【0049】
 上記で考察される操作された微生物の任意のものにおいて、微生物は、C18基質に対
して特異的又は選択的なチオエステラーゼを過剰発現するようにさらに操作されることが
できる。
【0050】
 上記で考察される操作された微生物の任意のものにおいて、微生物は、C8∼C16基
質に対して特異的又は選択的なチオエステラーゼの発現が低下するようにさらに操作され
ることができる。
【0051】 30
 上記で考察される操作された微生物の任意のものにおいて、微生物は微細藻類細胞であ
ってもよい。ある場合では、微細藻類細胞は、Prototheca属の微細藻類細胞で
ある。ある場合では、微細藻類細胞はPrototheca moriformis細胞
である。
【0052】
 本発明の別の態様は、上記で考察される操作された微生物の任意のものにより生成され
る油を提供する。
【0053】
 本発明の別の態様は、リノール酸又はリノレン酸を含むトリグリセリドを生成するよう
に組み換え核酸の1つ以上を微生物に導入することにより、上記で考察される操作された 40
微生物を生成する方法を提供する。
【0054】
 本発明の別の態様は、トリアシルグリセリドを含む天然油を生成する方法、又はその天
然油から生成される生成物を提供し、この方法は、(i)組み換え微生物の細胞であって
、(a)β−ケトアシル−ACPシンターゼI、β−ケトアシル−ACPシンターゼII
、ステアロイルACPデサチュラーゼ、脂肪酸デサチュラーゼ、又はアシル−ACPチオ
エステラーゼをコードする1つ以上の遺伝子によりコードされる酵素の発現を低下又は消
失させる働き(場合により細胞は、β−ケトアシル−ACPシンターゼI、β−ケトアシ
ル−ACPシンターゼII、ステアロイルACPデサチュラーゼ、又は脂肪酸デサチュラ
ーゼ、又はアシル−ACPチオエステラーゼをコードする遺伝子の2つの複製物の発現を 50
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低下又は消失させる働きをする組み換え核酸を含む);又は(b)活性なβ−ケトアシル
−ACPシンターゼI、β−ケトアシル−ACPシンターゼII、ステアロイルACPデ
サチュラーゼ、又は脂肪酸デサチュラーゼ、又はアシル−ACPチオエステラーゼをコー
ドする外来遺伝子の産物を発現する働き;又は(c)β−ケトアシル−ACPシンターゼ
I又はβ−ケトアシル−ACPシンターゼIIをコードする1つ以上の遺伝子によりコー
ドされる酵素の発現を低下又は消失させ、且つ活性なステアロイルACPデサチュラーゼ
、脂肪酸デサチュラーゼ、又はアシル−ACPチオエステラーゼをコードする外来遺伝子
の産物を発現する働き;又は(d)ステアロイルACPデサチュラーゼ又は脂肪酸デサチ
ュラーゼをコードする1つ以上の遺伝子によりコードされる酵素の発現を低下又は消失さ
せ、且つ活性なβ−ケトアシル−ACPシンターゼI、β−ケトアシル−ACPシンター 10
ゼII、又はアシル−ACPチオエステラーゼをコードする外来遺伝子の産物を発現する
働きをする組み換え核酸を含む細胞を育てることと;(ii)細胞から天然油を回収する
こととを含み、場合により天然油をさらに処理して食品、燃料、又は化学製品を作り出す
ことを含み、ここで天然油は、組み換え核酸によって変化した脂肪酸プロフィールを有す
る。
【0055】
 ある場合では、微生物はII型脂肪酸生合成経路により脂肪酸を合成する。ある場合で
は、微生物は微細藻類である。ある場合では、微細藻類は偏性従属栄養生物である。ある
場合では、微細藻類は、Prototheca又はChlorellaの種である。ある
場合では、微細藻類は、Prototheca wickerhamii、Protot 20
heca stagnora、Prototheca portoricensis、P
rototheca moriformis、又はPrototheca zopfii
である。ある場合では、微細藻類は、Chlorella kessleri、Chlo
rella luteoviridis、Chlorella protothecoi
des、又はChlorella vulgarisである。ある場合では、細胞は、活
性なショ糖インベルターゼを発現する組み換え細胞である。ある場合では、育てることは
、従属栄養で育てることである。ある場合では、脂肪酸デサチュラーゼは、ω−6脂肪酸
デサチュラーゼ、ω−3脂肪酸デサチュラーゼ、又はω−6オレイン酸デサチュラーゼ、
又はデルタ12脂肪酸デサチュラーゼのうちの1つ以上である。ある場合では、細胞は、
乾燥細胞重量で少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、又は50∼9 30
0%のトリグリセリドを含むように育てられる。ある場合では、油は、500、50、又
は5ppm未満の有色分子を含む。ある場合では、組み換え核酸は安定に組み込まれる。
ある場合では、組み換え核酸は、微生物の染色体に安定に組み込まれる。ある場合では、
細胞は少なくとも1つの選択可能なマーカーをさらに含む。
【0056】
 ある場合では、細胞は、酵素をコードする遺伝子の転写物を標的とするアンチセンス、
RNAi、又はdsRNAの発現によってその酵素の発現を低下又は消失させる働きをす
る組み換え核酸を含む。ある場合では、β−ケトアシル−ACPシンターゼI、β−ケト
アシル−ACPシンターゼII、ステアロイルACPデサチュラーゼ、又は脂肪酸デサチ
ュラーゼをコードする1つ以上の遺伝子によりコードされる酵素の発現の低下又は消失は 40
、1つ以上の遺伝子が、活性なβ−ケトアシル−ACPシンターゼI、β−ケトアシル−
ACPシンターゼII、ステアロイルACPデサチュラーゼ、又は脂肪酸デサチュラーゼ
、又はアシル−ACPチオエステラーゼをコードする1つ以上の遺伝子により分断又は置
換されることに起因する。ある場合では、組み換え細胞は、オレイン酸12−ヒドロキシ
ラーゼをコードする外来遺伝子をさらに含み、それによりリシノール酸を合成する。ある
場合では、組み換え細胞は、KASII遺伝子によりコードされるβ−ケトアシル−AC
PシンターゼIIの発現を低下又は消失させ、且つアシル−ACPチオエステラーゼをコ
ードする外来遺伝子の産物を発現する働きをする核酸を含む。ある場合では、細胞は、少
なくとも40、50、60、70、又は80%のC16脂肪酸を有することによって特徴
づけられる脂肪酸プロフィールを有する油を生成する。ある場合では、細胞は、少なくと 50
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も50∼75%のC16:0を有することによって特徴づけられる脂肪酸プロフィールを
有する油を生成する。ある場合では、細胞は、少なくとも20∼40%のC18:1を有
することによってさらに特徴づけられる脂肪酸プロフィールを有する油を生成する。ある
場合では、アシル−ACPチオエステラーゼをコードする外来遺伝子は、細胞の天然のア
シル−ACP−チオエステラーゼ(thioestearase)と比べてC8∼C16
脂肪酸アシル鎖の加水分解においてより高い活性を有する活性なアシル−ACPチオエス
テラーゼを生成する。ある場合では、アシル−ACPチオエステラーゼをコードする外来
遺伝子は、KASII遺伝子を分断する。ある場合では、組み換え細胞は、β−ケトアシ
ル−ACPシンターゼIをコードする1つ以上の遺伝子によりコードされる酵素の発現を
低下又は消失させる働きをする核酸を含む。 10
【0057】
 ある場合では、生成される油は、組み換え核酸の結果としてより短い平均脂肪酸鎖長に
よって特徴づけられる脂肪酸プロフィールを有する。ある場合では、組み換え細胞は、少
なくとも1つのFAD遺伝子によりコードされる脂肪酸デサチュラーゼ(destaur
ase)の発現を低下又は消失させ、且つ活性なステアロイルACPデサチュラーゼをコ
ードするステアロイル−ACPデサチュラーゼ外来遺伝子の産物を発現する働きをする核
酸を含む。ある場合では、核酸は、脂肪酸デサチュラーゼ遺伝子の複数の複製物によりコ
ードされる脂肪酸デサチュラーゼ(destaurase)の発現を低下又は消失させる
働きをする。ある場合では、ステアロイル−ACPデサチュラーゼ外来遺伝子は、脂肪酸
デサチュラーゼ遺伝子のコード領域内の遺伝子座に組み換えられる。ある場合では、生成 20
される油は、高オレイン酸を有する脂肪酸プロフィールを有する。ある場合では、オレイ
ン酸は、脂肪酸の少なくとも50、60、70、80、又は90%を構成する。ある場合
では、組み換え細胞は、活性なβ−ケトアシル−ACPシンターゼIIをコードするβ−
ケトアシル−ACPシンターゼII外来遺伝子の産物を発現する働きをする核酸を含む。
ある場合では、生成される油は、組み換え核酸の結果としてC18:1脂肪酸が増加し、
且つC16脂肪酸が低下した脂肪酸プロフィールによって特徴づけられる。ある場合では
、組み換え細胞は、ステアロイルACPデサチュラーゼをコードする1つ以上の遺伝子に
よりコードされる酵素の発現をRNA干渉によって低下又は消失させる働きをする核酸を
含む。ある場合では、生成される油は、C18:0脂肪酸の増加によって特徴づけられる
脂肪酸プロフィールを有する。ある場合では、生成される油は、少なくとも50、60、 30
70、80、又は90%のC18:0を有する脂肪酸プロフィールによって特徴づけられ
る。ある場合では、生成される油は、少なくとも50∼75%のC18:0を有する脂肪
酸プロフィールによって特徴づけられる。ある場合では、生成される油は、少なくとも2
0∼40%のC18:1を有する脂肪酸プロフィールによってさらに特徴づけられる。あ
る場合では、細胞は、β−ケトアシル−ACPシンターゼI、β−ケトアシル−ACPシ
ンターゼII、ステアロイルACPデサチュラーゼ、又は脂肪酸デサチュラーゼをコード
する遺伝子の2つの複製物の発現を低下又は消失させる働きをする組み換え核酸を含む。
ある場合では、この核酸は、活性なω−3脂肪酸デサチュラーゼ及び/又はω−6オレイ
ン酸デサチュラーゼをコードする脂肪酸デサチュラーゼ外来遺伝子の産物を発現する働き
をする。ある場合では、生成される油は、高レベルのリノール酸、リノレン酸、又はその 40
両方によって特徴づけられる脂肪酸プロフィールを有する。ある場合では、油の脂肪酸プ
ロフィールは、少なくとも10、20、30、40、又は50%のリノール酸、リノレン
酸、又はその両方を有することによって特徴づけられる。ある場合では、油をさらに処理
することは、精製、漂白、脱臭、メタセシス、トランスエステル化、水素化、加水分解、
水素化、脱酸素、ハイドロクラッキング、異性化、ヒドロキシル化(hydrolxyl
ation)、インターエステル化、アミド化、スルホン化、及び硫化(sufuriz
ation)のうちの1つ以上を含む。ある場合では、油は、食用油、脂肪酸、脂肪族ア
ルコール、潤滑剤、石鹸、脂肪酸エステル、脂肪酸エトキシレート、脂肪族アミン、塩化
アルキル(akyl chloride)、脂肪族アルコールエトキシレート、脂肪族ア
ルコールスルフェート、脂肪酸アルカノールアミド、スルホン化油、硫化油、ディーゼル 50
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燃料、ジェット燃料、ガソリン、燃料ブレンドストック、燃料添加剤、潤滑油用添加剤、
又は塗料を作り出すように処理される。
【0058】
 本発明の別の態様は、上記で考察される方法により得られる天然油を提供する。
【0059】
 本発明の別の態様は、上記で考察される天然油から作られる生成物を提供する。ある場
合では、この生成物は、食用油、脂肪酸、脂肪族アルコール、潤滑剤、石鹸、脂肪酸エス
テル、脂肪酸エトキシレート、脂肪族アミン、塩化アルキル(akyl chlorid
e)、脂肪族アルコールエトキシレート、脂肪族アルコールスルフェート、脂肪酸アルカ
ノールアミド、スルホン化油、硫化油、ディーゼル燃料、ジェット燃料、ガソリン、燃料 10
ブレンドストック、燃料添加剤、化学添加物、又は塗料を含む。
【0060】
 本発明の別の態様は、組み換え細胞であって、(a)β−ケトアシル−ACPシンター
ゼI、β−ケトアシル−ACPシンターゼII、ステアロイルACPデサチュラーゼ、脂
肪酸デサチュラーゼ、又はアシル−ACPチオエステラーゼをコードする1つ以上の遺伝
子によりコードされる酵素の発現を低下又は消失させる働き(場合により細胞は、β−ケ
トアシル−ACPシンターゼI、β−ケトアシル−ACPシンターゼII、ステアロイル
ACPデサチュラーゼ、又は脂肪酸デサチュラーゼ、又はアシル−ACPチオエステラー
ゼをコードする遺伝子の2つの複製物の発現を低下又は消失させる働きをする組み換え核
酸を含む);又は(b)活性なβ−ケトアシル−ACPシンターゼI、β−ケトアシル− 20
ACPシンターゼII、ステアロイルACPデサチュラーゼ、又は脂肪酸デサチュラーゼ
、又はアシル−ACPチオエステラーゼをコードする外来遺伝子の産物を発現する働き;
又は(c)β−ケトアシル−ACPシンターゼI又はβ−ケトアシル−ACPシンターゼ
IIをコードする1つ以上の遺伝子によりコードされる酵素の発現を低下又は消失させ、
且つ活性なステアロイルACPデサチュラーゼ、脂肪酸デサチュラーゼ、又はアシル−A
CPチオエステラーゼをコードする外来遺伝子の産物を発現する働き;又は(d)ステア
ロイルACPデサチュラーゼ又は脂肪酸デサチュラーゼをコードする1つ以上の遺伝子に
よりコードされる酵素の発現を低下又は消失させ、且つ活性なβ−ケトアシル−ACPシ
ンターゼI、β−ケトアシル−ACPシンターゼII、又はアシル−ACPチオエステラ
ーゼをコードする外来遺伝子の産物を発現する働きをする組み換え核酸を含む組み換え細 30
胞を提供する。
【0061】
 ある場合では、微生物は、II型脂肪酸生合成経路によって脂肪酸を合成する。ある場
合では、微生物は微細藻類である。ある場合では、微細藻類は偏性従属栄養生物である。
ある場合では、微細藻類は、Prototheca又はChlorellaの種である。
ある場合では、微細藻類は、Prototheca wickerhamii、Prot
otheca stagnora、Prototheca portoricensis
、Prototheca moriformis、又はPrototheca zopf
iiである。ある場合では、微細藻類は、Chlorella kessleri、Ch
lorella luteoviridis、Chlorella protothec 40
oides、又はChlorella vulgarisである。ある場合では、細胞は
、活性なショ糖インベルターゼを発現する組み換え細胞である。ある場合では、細胞は、
従属栄養で成長することができる。ある場合では、脂肪酸デサチュラーゼは、ω−6脂肪
酸デサチュラーゼ、ω−3脂肪酸デサチュラーゼ、又はω−6オレイン酸デサチュラーゼ
、又はデルタ12脂肪酸デサチュラーゼのうちの1つ以上である。ある場合では、細胞は
、乾燥細胞重量で少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、又は50∼
90%のトリグリセリドを含むように育てられる能力を有する。ある場合では、組み換え
核酸は安定に組み込まれる。ある場合では、組み換え核酸は、微生物の染色体に安定に組
み込まれる。ある場合では、細胞は少なくとも1つの選択可能なマーカーをさらに含む。
ある場合では、細胞は、酵素をコードする遺伝子の転写物を標的とするアンチセンス、R 50
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NAi、又はdsRNAの発現によってその酵素の発現を低下又は消失させる働きをする
組み換え核酸を含む。ある場合では、β−ケトアシル−ACPシンターゼI、β−ケトア
シル−ACPシンターゼII、ステアロイルACPデサチュラーゼ、又は脂肪酸デサチュ
ラーゼをコードする1つ以上の遺伝子によりコードされる酵素の発現の低下又は消失は、
1つ以上の遺伝子が、活性なβ−ケトアシル−ACPシンターゼI、β−ケトアシル−A
CPシンターゼII、ステアロイルACPデサチュラーゼ、又は脂肪酸デサチュラーゼ、
又はアシル−ACPチオエステラーゼをコードする1つ以上の遺伝子により分断又は置換
されることに起因する。
【0062】
 ある場合では、組み換え細胞は、オレイン酸12−ヒドロキシラーゼをコードする外来 10
遺伝子をさらに含み、それによりリシノール酸を合成する。ある場合では、組み換え細胞
は、KASII遺伝子によりコードされるβ−ケトアシル−ACPシンターゼIIの発現
を低下又は消失させ、且つアシル−ACPチオエステラーゼをコードする外来遺伝子の産
物を発現する働きをする核酸を含む。ある場合では、細胞は、少なくとも40、50、6
0、70、又は80%のC16脂肪酸を有することによって特徴づけられる脂肪酸プロフ
ィールを有する油を生成する。ある場合では、細胞は、少なくとも50∼75%のC16
:0を有することによって特徴づけられる脂肪酸プロフィールを有する油を生成する。あ
る場合では、細胞は、少なくとも20∼40%のC18:1を有することによってさらに
特徴づけられる脂肪酸プロフィールを有する油を生成する。ある場合では、アシル−AC
Pチオエステラーゼをコードする外来遺伝子は、細胞の天然のアシル−ACP−チオエス 20
テラーゼ(thioestearase)と比べてC8∼C16脂肪酸アシル鎖の加水分
解においてより高い活性を有する活性なアシル−ACPチオエステラーゼを生成する。あ
る場合では、アシル−ACPチオエステラーゼをコードする外来遺伝子は、KASII遺
伝子を分断する。ある場合では、組み換え細胞は、β−ケトアシル−ACPシンターゼI
をコードする1つ以上の遺伝子によりコードされる酵素の発現を低下又は消失させる働き
をする核酸を含む。ある場合では、生成される油は、組み換え核酸の結果としてより短い
平均脂肪酸鎖長によって特徴づけられる脂肪酸プロフィールを有する。ある場合では、組
み換え細胞は、少なくとも1つのFAD遺伝子によりコードされる脂肪酸デサチュラーゼ
(destaurase)の発現を低下又は消失させ、且つ活性なステアロイルACPデ
サチュラーゼをコードするステアロイル−ACPデサチュラーゼ外来遺伝子の産物を発現 30
する働きをする核酸を含む。ある場合では、核酸は、脂肪酸デサチュラーゼ遺伝子の複数
の複製物によりコードされる脂肪酸デサチュラーゼ(destaurase)の発現を低
下又は消失させる働きをする。ある場合では、ステアロイル−ACPデサチュラーゼ外来
遺伝子は、脂肪酸デサチュラーゼ遺伝子のコード領域内の遺伝子座に組み換えられる。
【0063】
 ある場合では、生成される油は、高オレイン酸を有する脂肪酸プロフィールを有する。
ある場合では、オレイン酸は、脂肪酸の少なくとも50、60、70、80、又は90%
を構成する。ある場合では、組み換え細胞は、活性なβ−ケトアシル−ACPシンターゼ
IIをコードするβ−ケトアシル−ACPシンターゼII外来遺伝子の産物を発現する働
きをする核酸を含む。ある場合では、生成される油は、組み換え核酸の結果としてC18 40
:1脂肪酸が増加し、且つC16脂肪酸が低下した脂肪酸プロフィールによって特徴づけ
られる。ある場合では、組み換え細胞は、ステアロイルACPデサチュラーゼをコードす
る1つ以上の遺伝子によりコードされる酵素の発現をRNA干渉によって低下又は消失さ
せる働きをする核酸を含む。ある場合では、生成される油は、C18:0脂肪酸の増加に
よって特徴づけられる脂肪酸プロフィールを有する。ある場合では、生成される油は、少
なくとも50、60、70、80、又は90%のC18:0を有する脂肪酸プロフィール
によって特徴づけられる。ある場合では、生成される油は、少なくとも50∼75%のC
18:0を有する脂肪酸プロフィールによって特徴づけられる。ある場合では、生成され
る油は、少なくとも20∼40%のC18:1を有する脂肪酸プロフィールによってさら
に特徴づけられる。ある場合では、細胞は、β−ケトアシル−ACPシンターゼI、β− 50
(15) JP 2018-99138 A 2018.6.28

ケトアシル−ACPシンターゼII、ステアロイルACPデサチュラーゼ、又は脂肪酸デ
サチュラーゼをコードする遺伝子の2つの複製物の発現を低下又は消失させる働きをする
組み換え核酸を含む。ある場合では、核酸は、活性なω−3脂肪酸デサチュラーゼ及び/
又はω−6オレイン酸デサチュラーゼをコードする脂肪酸デサチュラーゼ外来遺伝子の産
物を発現する働きをする。ある場合では、生成される油は、高レベルのリノール酸、リノ
レン酸、又はその両方によって特徴づけられる脂肪酸プロフィールを有する。ある場合で
は、油の脂肪酸プロフィールは、少なくとも10、20、30、40、又は50%のリノ
ール酸、リノレン酸、又はその両方を有することによって特徴づけられる。
【0064】
 本発明の別の態様は、上述の細胞から生成される天然油又は油含有生成物を提供する。 10
【0065】
 本発明の別の態様は、リシノール酸を含むトリアシルグリセリドを含む天然油、又はそ
の天然油から生産される生成物を生成する方法を提供し、この方法は、組み換え微生物の
細胞あって、活性なオレイン酸12−ヒドロキシラーゼをコードする外来遺伝子の産物を
発現する働きをする組み換え核酸を含み、それによりリシノール酸を合成する細胞を育て
ることを含む。
【0066】
 ある場合では、微生物はII型脂肪酸生合成経路を有する。ある場合では、微生物は微
細藻類である。ある場合では、微細藻類は偏性従属栄養生物である。ある場合では、微細
藻類は、Protothecaの種である。ある場合では、微細藻類は、Prototh 20
eca wickerhamii、Prototheca stagnora、Prot
otheca portoricensis、Prototheca moriform
is、又はPrototheca zopfiiである。ある場合では、微細藻類は、C
hlorella kessleri、Chlorella luteoviridis
、Chlorella protothecoides、又はChlorella vu
lgarisである。ある場合では、細胞は、活性なショ糖インベルターゼを発現する組
み換え細胞である。ある場合では、育てることは、従属栄養で育てることである。ある場
合では、細胞は、活性なオレイン酸12−ヒドロキシラーゼをコードする外来遺伝子の産
物を発現する働きをする組み換え核酸が存在しないときに少なくとも40、50、60、
70、80、又は90%のオレイン酸を生成する。ある場合では、細胞は、オレイン酸1 30
2−ヒドロキシラーゼに対する基質レベルを高めるためオレイン酸生成を高める働きをす
る組み換え核酸をさらに含む。ある場合では、細胞は、(a)活性なステアロイルACP
デサチュラーゼをコードする外来遺伝子の産物を発現し、且つ脂肪酸デサチュラーゼをコ
ードする1つ以上の遺伝子によりコードされる酵素の発現を低下又は消失させる働き;又
は(b)活性なβ−ケトアシル−ACPシンターゼをコードする外来遺伝子の産物を発現
し、且つ活性なアシル−ACPチオエステラーゼをコードする外来遺伝子の産物を発現す
る働きをする組み換え核酸を含む。
【0067】
 本発明の別の態様は、上記で考察される方法のうちのいずれかにより生成される生成物
を提供する。 40
【0068】
 本発明の別の態様は、活性なオレイン酸12−ヒドロキシラーゼをコードする外来遺伝
子の産物を発現する働きをする組み換え核酸を含み、それによりリシノール酸を合成する
微生物細胞を提供する。
【0069】
 ある場合では、微生物はII型脂肪酸生合成経路を有する。ある場合では、微生物は微
細藻類である。ある場合では、微細藻類は偏性従属栄養生物である。ある場合では、微細
藻類は、Protothecaの種である。ある場合では、微細藻類は、Prototh
eca wickerhamii、Prototheca stagnora、Prot
otheca portoricensis、Prototheca moriform 50
(16) JP 2018-99138 A 2018.6.28

is、又はPrototheca zopfiiである。ある場合では、微細藻類は、C
hlorella kessleri、Chlorella luteoviridis
、Chlorella protothecoides、又はChlorella vu
lgarisである。ある場合では、細胞は、活性なショ糖インベルターゼを発現する組
み換え細胞である。ある場合では、細胞は従属栄養で成長することができる。ある場合で
は、細胞は、活性なオレイン酸12−ヒドロキシラーゼをコードする外来遺伝子の産物を
発現する働きをする組み換え核酸が存在しないときに少なくとも40、50、60、70
、80、又は90%のオレイン酸を生成する。ある場合では、細胞は、オレイン酸12−
ヒドロキシラーゼに対する基質レベルを高めるためオレイン酸生成を高める働きをする組
み換え核酸をさらに含む。ある場合では、細胞は、(a)活性なステアロイルACPデサ 10
チュラーゼをコードする外来遺伝子の産物を発現し、且つ脂肪酸デサチュラーゼをコード
する1つ以上の遺伝子によりコードされる酵素の発現を低下又は消失させる働き;又は(
b)活性なβ−ケトアシル−ACPシンターゼIをコードする外来遺伝子の産物を発現し
、且つ活性なアシル−ACPチオエステラーゼをコードする外来遺伝子の産物を発現する
働きをする組み換え核酸を含む。
【0070】
 本発明の別の態様は、上記に考察したような油を含む食品を提供する。
【0071】
 本発明のこれらの及び他の態様及び実施形態を、添付の図面(図面の簡単な説明はこの
すぐ後に続く)、以下の本発明の詳細な説明において説明し、及び以下の例において例証 20
する。上記で及び本出願全体にわたって考察される特徴のいずれも、本発明の種々の実施
形態に組み合わせることができる。
 したがって本発明は以下の項目を提供する:
(項目1)
 トリアシルグリセリドを含む天然油、又は上記天然油から生成される生成物を生成する
方法であって、
 組み換え微生物の細胞であって、
(a)β−ケトアシル−ACPシンターゼI、β−ケトアシル−ACPシンターゼII、
ステアロイルACPデサチュラーゼ、脂肪酸デサチュラーゼ、又はアシル−ACPチオエ
ステラーゼをコードする1つ以上の遺伝子によりコードされる酵素の発現を低下又は消失 30
させる働きであって、場合により上記細胞は、β−ケトアシル−ACPシンターゼI、β
−ケトアシル−ACPシンターゼII、ステアロイルACPデサチュラーゼ、又は脂肪酸
デサチュラーゼ、又はアシル−ACPチオエステラーゼをコードする遺伝子の2つの複製
物の発現を低下又は消失させる働きをする組み換え核酸を含む、働き;又は
(b)活性なβ−ケトアシル−ACPシンターゼI、β−ケトアシル−ACPシンターゼ
II、ステアロイルACPデサチュラーゼ、又は脂肪酸デサチュラーゼ、又はアシル−A
CPチオエステラーゼをコードする外来遺伝子の産物を発現する働き;又は
(c)β−ケトアシル−ACPシンターゼI又はβ−ケトアシル−ACPシンターゼII
をコードする1つ以上の遺伝子によりコードされる酵素の発現を低下又は消失させ、且つ
活性なステアロイルACPデサチュラーゼ、脂肪酸デサチュラーゼ、又はアシル−ACP 40
チオエステラーゼをコードする外来遺伝子の産物を発現する働き;又は
(d)ステアロイルACPデサチュラーゼ又は脂肪酸デサチュラーゼをコードする1つ以
上の遺伝子によりコードされる酵素の発現を低下又は消失させ、且つ活性なβ−ケトアシ
ル−ACPシンターゼI、β−ケトアシル−ACPシンターゼII、又はアシル−ACP
チオエステラーゼをコードする外来遺伝子の産物を発現する働き
をする組み換え核酸を含む細胞を育てることと;
 上記細胞から上記天然油を回収することとを含み、場合により上記天然油を処理して食
品、燃料、又は化学製品を作り出すことをさらに含む方法において、
 上記天然油が、上記組み換え核酸によって変化した脂肪酸プロフィールを有する、方法
。 50
(17) JP 2018-99138 A 2018.6.28

(項目2)
 上記微生物がII型脂肪酸生合成経路によって脂肪酸を合成する、項目1に記載の方法

(項目3)
 上記微生物が微細藻類である、項目2に記載の方法。
(項目4)
 上記微細藻類が偏性従属栄養生物である、項目3に記載の方法。
(項目5)
 上記微細藻類が、Prototheca又はChlorellaの種である、項目2に
記載の方法。 10
(項目6)
 上記微細藻類が、Prototheca wickerhamii、Protothe
ca stagnora、Prototheca portoricensis、Pro
totheca moriformis、又はPrototheca zopfiiであ
る、項目5に記載の方法。
(項目7)
 上記微細藻類が、Chlorella kessleri、Chlorella lu
teoviridis、Chlorella protothecoides、又はCh
lorella vulgarisである、項目2に記載の方法。
(項目8) 20
 上記細胞が、活性なショ糖インベルターゼを発現する組み換え細胞である、項目1∼7
のいずれか一項に記載の方法。
(項目9)
 上記育てることが、従属栄養で育てることである、項目1∼8のいずれか一項に記載の
方法。
(項目10)
 上記脂肪酸デサチュラーゼが、ω−6脂肪酸デサチュラーゼ、ω−3脂肪酸デサチュラ
ーゼ、又はω−6オレイン酸デサチュラーゼ、又はデルタ12脂肪酸デサチュラーゼのう
ちの1つ以上である、項目1∼9のいずれか一項に記載の方法。
(項目11) 30
 上記細胞が、乾燥細胞重量で少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%
、又は50∼90%のトリグリセリドを含むように育てられる、項目1∼10のいずれか
一項に記載の方法。
(項目12)
 上記油が、500、50、又は5ppm未満の有色分子を含む、項目1∼11のいずれ
か一項に記載の方法。
(項目13)
 上記組み換え核酸が安定に組み込まれる、項目1∼12のいずれか一項に記載の方法。
(項目14)
 上記組み換え核酸が、上記微生物の染色体に安定に組み込まれる、項目13に記載の方 40
法。
(項目15)
 少なくとも1つの選択可能なマーカーをさらに含む、項目14に記載の方法。
(項目16)
 上記細胞が、酵素をコードする遺伝子の転写物を標的とするアンチセンス、RNAi、
又はdsRNAの発現によって上記酵素の発現を低下又は消失させる働きをする組み換え
核酸を含む、項目1∼15のいずれか一項に記載の方法。
(項目17)
 β−ケトアシル−ACPシンターゼI、β−ケトアシル−ACPシンターゼII、ステ
アロイルACPデサチュラーゼ、又は脂肪酸デサチュラーゼをコードする1つ以上の遺伝 50
(18) JP 2018-99138 A 2018.6.28

子によりコードされる酵素の発現の上記低下又は消失が、活性なβ−ケトアシル−ACP
シンターゼI、β−ケトアシル−ACPシンターゼII、ステアロイルACPデサチュラ
ーゼ、又は脂肪酸デサチュラーゼ、又はアシル−ACPチオエステラーゼをコードする1
つ以上の遺伝子によって上記1つ以上の遺伝子が分断又は置換されることに起因する、項
目1∼16のいずれか一項に記載の方法。
(項目18)
 上記組み換え細胞が、オレイン酸12−ヒドロキシラーゼをコードする外来遺伝子をさ
らに含み、それによりリシノール酸を合成する、項目1∼17のいずれか一項に記載の方
法。
(項目19) 10
 上記組み換え細胞が、KASII遺伝子によりコードされるβ−ケトアシル−ACPシ
ンターゼIIの発現を低下又は消失させ、且つアシル−ACPチオエステラーゼをコード
する外来遺伝子の産物を発現する働きをする核酸を含む、項目1∼18のいずれか一項に
記載の方法。
(項目20)
 上記細胞が、少なくとも40、50、60、70、又は80%のC16脂肪酸を有する
ことによって特徴づけられる脂肪酸プロフィールを有する油を生成する、項目19に記載
の方法。
(項目21)
 上記細胞が、少なくとも50∼75%のC16:0を有することによって特徴づけられ 20
る脂肪酸プロフィールを有する油を生成する、項目20に記載の方法。
(項目22)
 上記細胞が、少なくとも20∼40%のC18:1を有することによってさらに特徴づ
けられる脂肪酸プロフィールを有する油を生成する、項目20又は21に記載の方法。
(項目23)
 上記アシル−ACPチオエステラーゼをコードする外来遺伝子が、上記細胞の天然のア
シル−ACP−チオエステラーゼ(thioestearase)と比べてC8∼C16
脂肪酸アシル鎖の加水分解においてより高い活性を有する活性なアシル−ACPチオエス
テラーゼを生成する、項目19∼22のいずれか一項に記載の方法。
(項目24) 30
 上記アシル−ACPチオエステラーゼをコードする外来遺伝子が、上記KASII遺伝
子を分断する、項目19∼23のいずれか一項に記載の方法。
(項目25)
 上記組み換え細胞が、β−ケトアシル−ACPシンターゼIをコードする1つ以上の遺
伝子によりコードされる酵素の発現を低下又は消失させる働きをする核酸を含む、項目1
∼18のいずれか一項に記載の方法。
(項目26)
 上記生成される油が、上記組み換え核酸の結果としてのより短い平均脂肪酸鎖長によっ
て特徴づけられる脂肪酸プロフィールを有する、項目25に記載の方法。
(項目27) 40
 上記組み換え細胞が、少なくとも1つのFAD遺伝子によりコードされる脂肪酸デサチ
ュラーゼ(destaurase)の発現を低下又は消失させ、且つ活性なステアロイル
ACPデサチュラーゼをコードするステアロイル−ACPデサチュラーゼ外来遺伝子の産
物を発現する働きをする核酸を含む、項目1∼18のいずれか一項に記載の方法。
(項目28)
 核酸が、脂肪酸デサチュラーゼ遺伝子の複数の複製物によりコードされる脂肪酸デサチ
ュラーゼ(destaurase)の発現を低下又は消失させる働きをする、項目27に
記載の方法。
(項目29)
 上記ステアロイル−ACPデサチュラーゼ外来遺伝子が、上記脂肪酸デサチュラーゼ遺 50
(19) JP 2018-99138 A 2018.6.28

伝子のコード領域内の遺伝子座に組み換えられる、項目27又は28に記載の方法。
(項目30)
 上記生成される油が、高オレイン酸を有する脂肪酸プロフィールを有する、項目27∼
29のいずれか一項に記載の方法。
(項目31)
 上記脂肪酸の少なくとも50、60、70、80、又は90%をオレイン酸が構成する
、項目30に記載の方法。
(項目32)
 上記組み換え細胞が、活性なβ−ケトアシル−ACPシンターゼIIをコードするβ−
ケトアシル−ACPシンターゼII外来遺伝子の産物を発現する働きをする核酸を含む、 10
項目1∼18のいずれか一項に記載の方法。
(項目33)
 上記生成される油が、上記組み換え核酸の結果としてC18:1脂肪酸が高まり、且つ
C16脂肪酸が低下した脂肪酸プロフィールによって特徴づけられ、項目1∼18のいず
れか一項に記載の方法、上記組み換え細胞が、ステアロイルACPデサチュラーゼをコー
ドする1つ以上の遺伝子によりコードされる酵素の発現をRNA干渉によって低下又は消
失させる働きをする核酸を含む、項目32に記載の方法。
(項目34)
 上記生成される油が、C18:0脂肪酸の増加によって特徴づけられる脂肪酸プロフィ
ールを有する、項目33に記載の方法。 20
(項目35)
 上記生成される油が、少なくとも50、60、70、80、又は90%のC18:0を
有する脂肪酸プロフィールによって特徴づけられる、項目34に記載の方法。
(項目36)
 上記生成される油が、少なくとも50∼75%のC18:0を有する脂肪酸プロフィー
ルによって特徴づけられる、項目35に記載の方法。
(項目37)
 上記生成される油が、少なくとも20∼40%のC18:1を有する脂肪酸プロフィー
ルによってさらに特徴づけられる、項目34∼36のいずれか一項に記載の方法。
(項目38) 30
 上記細胞が、β−ケトアシル−ACPシンターゼI、β−ケトアシル−ACPシンター
ゼII、ステアロイルACPデサチュラーゼ、又は脂肪酸デサチュラーゼをコードする遺
伝子の2つの複製物の発現を低下又は消失させる働きをする組み換え核酸を含む、項目1
∼18のいずれか一項に記載の方法。
(項目39)
 活性なω−3脂肪酸デサチュラーゼ及び/又はω−6オレイン酸デサチュラーゼをコー
ドする脂肪酸デサチュラーゼ外来遺伝子の産物を発現する働きをする、項目1∼18のい
ずれか一項に記載の方法。
(項目40)
 上記生成される油が、高レベルのリノール酸、リノレン酸、又はその両方によって特徴 40
づけられる脂肪酸プロフィールを有する、項目39に記載の方法。
(項目41)
 上記油の脂肪酸プロフィールが、少なくとも10、20、30、40、又は50%のリ
ノール酸、リノレン酸、又はその両方を有することによって特徴づけられる、項目35に
記載の方法。
(項目42)
 上記油をさらに処理することが、精製、漂白、脱臭、メタセシス、トランスエステル化
、水素化、加水分解、水素化、脱酸素、ハイドロクラッキング、異性化、ヒドロキシル化
(hydrolxylation)、インターエステル化、アミド化、スルホン化、及び
硫化(sufurization)のうちの1つ以上を含む、項目1∼41のいずれか一 50
(20) JP 2018-99138 A 2018.6.28

項に記載の方法。
(項目43)
 上記油が、食用油、脂肪酸、脂肪族アルコール、潤滑剤、石鹸、脂肪酸エステル、脂肪
酸エトキシレート、脂肪族アミン、塩化アルキル(akyl chloride)、脂肪
族アルコールエトキシレート、脂肪族アルコールスルフェート、脂肪酸アルカノールアミ
ド、スルホン化油、硫化油、ディーゼル燃料、ジェット燃料、ガソリン、燃料ブレンドス
トック、燃料添加剤、潤滑油用添加剤、又は塗料を作り出すために処理される、項目1∼
42のいずれか一項に記載の方法。
(項目44)
 項目1∼43のいずれか一項に記載の方法によって得られる天然油。 10
(項目45)
 項目44に記載の天然油から作られる生成物。
(項目46)
 食用油、脂肪酸、脂肪族アルコール、潤滑剤、石鹸、脂肪酸エステル、脂肪酸エトキシ
レート、脂肪族アミン、塩化アルキル(akyl chloride)、脂肪族アルコー
ルエトキシレート、脂肪族アルコールスルフェート、脂肪酸アルカノールアミド、スルホ
ン化油、硫化油、ディーゼル燃料、ジェット燃料、ガソリン、燃料ブレンドストック、燃
料添加剤、化学添加物、又は塗料を含む、項目45に記載の生成物。
(項目47)
 組み換え細胞であって、 20
(a)β−ケトアシル−ACPシンターゼI、β−ケトアシル−ACPシンターゼII、
ステアロイルACPデサチュラーゼ、脂肪酸デサチュラーゼ、又はアシル−ACPチオエ
ステラーゼをコードする1つ以上の遺伝子によりコードされる酵素の発現を低下又は消失
させる働きであって、場合により上記細胞は、β−ケトアシル−ACPシンターゼI、β
−ケトアシル−ACPシンターゼII、ステアロイルACPデサチュラーゼ、又は脂肪酸
デサチュラーゼ、又はアシル−ACPチオエステラーゼをコードする遺伝子の2つの複製
物の発現を低下又は消失させる働きをする組み換え核酸を含む働き;又は
(b)活性なβ−ケトアシル−ACPシンターゼI、β−ケトアシル−ACPシンターゼ
II、ステアロイルACPデサチュラーゼ、又は脂肪酸デサチュラーゼ、又はアシル−A
CPチオエステラーゼをコードする外来遺伝子の産物を発現する働き;又は 30
(c)β−ケトアシル−ACPシンターゼI又はβ−ケトアシル−ACPシンターゼII
をコードする1つ以上の遺伝子によりコードされる酵素の発現を低下又は消失させ、且つ
活性なステアロイルACPデサチュラーゼ、脂肪酸デサチュラーゼ、又はアシル−ACP
チオエステラーゼをコードする外来遺伝子の産物を発現する働き;又は
(d)ステアロイルACPデサチュラーゼ又は脂肪酸デサチュラーゼをコードする1つ以
上の遺伝子によりコードされる酵素の発現を低下又は消失させ、且つ活性なβ−ケトアシ
ル−ACPシンターゼI、β−ケトアシル−ACPシンターゼII、又はアシル−ACP
チオエステラーゼをコードする外来遺伝子の産物を発現する働き
をする組み換え核酸を含む、細胞。
(項目48) 40
 上記微生物がII型脂肪酸生合成経路によって脂肪酸を合成する、項目46に記載の細
胞。
(項目49)
 上記微生物が微細藻類である、項目48に記載の細胞。
(項目50)
 上記微細藻類が偏性従属栄養生物である、項目49に記載の細胞。
(項目51)
 上記微細藻類が、Prototheca又はChlorellaの種である、項目50
に記載の細胞。
(項目52) 50
(21) JP 2018-99138 A 2018.6.28

 上記微細藻類が、Prototheca wickerhamii、Protothe
ca stagnora、Prototheca portoricensis、Pro
totheca moriformis、又はPrototheca zopfiiであ
る、項目51に記載の細胞。
(項目53)
 上記微細藻類が、Chlorella kessleri、Chlorella lu
teoviridis、Chlorella protothecoides、又はCh
lorella vulgarisである、項目51に記載の細胞。
(項目54)
 活性なショ糖インベルターゼを発現する組み換え細胞である、項目46∼53のいずれ 10
か一項に記載の細胞。
(項目55)
 従属栄養で成長することができる、項目46∼54のいずれか一項に記載の細胞。
(項目56)
 上記脂肪酸デサチュラーゼが、ω−6脂肪酸デサチュラーゼ、ω−3脂肪酸デサチュラ
ーゼ、又はω−6オレイン酸デサチュラーゼ、又はデルタ12脂肪酸デサチュラーゼのう
ちの1つ以上である、項目46∼55のいずれか一項に記載の細胞。
(項目57)
 乾燥細胞重量で少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、又は50∼
90%のトリグリセリドを含むように育てられる能力を有する、項目46∼56のいずれ 20
か一項に記載の細胞。
(項目58)
 上記組み換え核酸が安定に組み込まれる、項目46∼57のいずれか一項に記載の細胞

(項目59)
 上記組み換え核酸が、上記微生物の染色体に安定に組み込まれる、項目58に記載の細
胞。
(項目60)
 少なくとも1つの選択可能なマーカーをさらに含む、項目59に記載の細胞。
(項目61) 30
 酵素をコードする遺伝子の転写物を標的とするアンチセンス、RNAi、又はdsRN
Aの発現によって上記酵素の発現を低下又は消失させる働きをする組み換え核酸を含む、
項目46∼60のいずれか一項に記載の細胞。
(項目62)
 β−ケトアシル−ACPシンターゼI、β−ケトアシル−ACPシンターゼII、ステ
アロイルACPデサチュラーゼ、又は脂肪酸デサチュラーゼをコードする1つ以上の遺伝
子によりコードされる酵素の発現の上記低下又は消失が、活性なβ−ケトアシル−ACP
シンターゼI、β−ケトアシル−ACPシンターゼII、ステアロイルACPデサチュラ
ーゼ、又は脂肪酸デサチュラーゼ、又はアシル−ACPチオエステラーゼをコードする1
つ以上の遺伝子によって上記1つ以上の遺伝子が分断又は置換されることに起因する、項 40
目46∼61のいずれか一項に記載の細胞。
(項目63)
 上記組み換え細胞が、オレイン酸12−ヒドロキシラーゼをコードする外来遺伝子をさ
らに含み、それによりリシノール酸を合成する、項目46∼62のいずれか一項に記載の
細胞。
(項目64)
 上記組み換え細胞が、KASII遺伝子によりコードされるβ−ケトアシル−ACPシ
ンターゼIIの発現を低下又は消失させ、且つアシル−ACPチオエステラーゼをコード
する外来遺伝子の産物を発現する働きをする核酸を含む、項目46∼62のいずれか一項
に記載の細胞。 50
(22) JP 2018-99138 A 2018.6.28

(項目65)
 少なくとも40、50、60、70、又は80%のC16脂肪酸を有することによって
特徴づけられる脂肪酸プロフィールを有する油を生成する、項目64に記載の細胞。
(項目66)
 少なくとも50∼75%のC16:0を有することによって特徴づけられる脂肪酸プロ
フィールを有する油を生成する、項目65に記載の細胞。
(項目67)
 少なくとも20∼40%のC18:1を有することによってさらに特徴づけられる脂肪
酸プロフィールを有する油を生成する、項目66に記載の細胞。
(項目68) 10
 上記アシル−ACPチオエステラーゼをコードする外来遺伝子が、上記細胞の天然のア
シル−ACP−チオエステラーゼ(thioestearase)と比べてC8∼C16
脂肪酸アシル鎖の加水分解においてより高い活性を有する活性なアシル−ACPチオエス
テラーゼを生成する、項目64又は65に記載の細胞。
(項目69)
 アシル−ACPチオエステラーゼをコードする外来遺伝子が、KASII遺伝子を分断
する、項目64∼66のいずれか一項に記載の細胞。
(項目70)
 上記組み換え細胞が、β−ケトアシル−ACPシンターゼIをコードする1つ以上の遺
伝子によりコードされる酵素の発現を低下又は消失させる働きをする核酸を含む、項目4 20
6∼62のいずれか一項に記載の細胞。
(項目71)
 上記生成される油が、上記組み換え核酸の結果としてのより短い平均脂肪酸鎖長によっ
て特徴づけられる脂肪酸プロフィールを有する、項目70に記載の細胞。
(項目72)
 上記組み換え細胞が、少なくとも1つのFAD遺伝子によりコードされる脂肪酸デサチ
ュラーゼ(destaurase)の発現を低下又は消失させ、且つ活性なステアロイル
ACPデサチュラーゼをコードするステアロイル−ACPデサチュラーゼ外来遺伝子の産
物を発現する働きをする核酸を含む、項目46∼62のいずれか一項に記載の細胞。
(項目73) 30
 核酸が、脂肪酸デサチュラーゼ遺伝子の複数の複製物によりコードされる脂肪酸デサチ
ュラーゼ(destaurase)の発現を低下又は消失させる働きをする、項目72に
記載の細胞。
(項目74)
 上記ステアロイル−ACPデサチュラーゼ外来遺伝子が、上記脂肪酸デサチュラーゼ遺
伝子のコード領域内の遺伝子座に組み換えられる、項目72又は73に記載の細胞。
(項目75)
 上記生成される油が、高オレイン酸を有する脂肪酸プロフィールを有する、項目72∼
74のいずれか一項に記載の細胞。
(項目76) 40
 上記脂肪酸の少なくとも50、60、70、80、又は90%をオレイン酸が構成する
、項目75に記載の細胞。
(項目77)
 上記組み換え細胞が、活性なβ−ケトアシル−ACPシンターゼIIをコードするβ−
ケトアシル−ACPシンターゼII外来遺伝子の産物を発現する働きをする核酸を含む、
項目46∼62のいずれか一項に記載の細胞。
(項目78)
 上記生成される油が、上記組み換え核酸の結果としてC18:1脂肪酸が高まり、且つ
C16脂肪酸が低下した脂肪酸プロフィールによって特徴づけられる、項目77に記載の
細胞。 50
(23) JP 2018-99138 A 2018.6.28

(項目79)
 上記組み換え細胞が、ステアロイルACPデサチュラーゼをコードする1つ以上の遺伝
子によりコードされる酵素の発現をRNA干渉によって低下又は消失させる働きをする核
酸を含む、項目46∼62のいずれか一項に記載の細胞。
(項目80)
 上記生成される油が、C18:0脂肪酸の増加によって特徴づけられる脂肪酸プロフィ
ールを有する、項目79に記載の細胞。
(項目81)
 上記生成される油が、少なくとも50、60、70、80、又は90%のC18:0を
有する脂肪酸プロフィールによって特徴づけられる、項目80に記載の細胞。 10
(項目82)
 上記生成される油が、少なくとも50∼75%のC18:0を有する脂肪酸プロフィー
ルによって特徴づけられる、項目80に記載の細胞。
(項目83)
 上記生成される油が、少なくとも20∼40%のC18:1を有する脂肪酸プロフィー
ルによってさらに特徴づけられる、項目79∼82のいずれか一項に記載の細胞。
(項目84)
 β−ケトアシル−ACPシンターゼI、β−ケトアシル−ACPシンターゼII、ステ
アロイルACPデサチュラーゼ、又は脂肪酸デサチュラーゼをコードする遺伝子の2つの
複製物の発現を低下又は消失させる働きをする組み換え核酸を含む、項目46∼62のい 20
ずれか一項に記載の細胞。
(項目85)
 活性なω−3脂肪酸デサチュラーゼ及び/又はω−6オレイン酸デサチュラーゼをコー
ドする脂肪酸デサチュラーゼ外来遺伝子の産物を発現する働きをする、項目46∼62の
いずれか一項に記載の細胞。
(項目86)
 上記生成される油が、高レベルのリノール酸、リノレン酸、又はその両方によって特徴
づけられる脂肪酸プロフィールを有する、項目85に記載の細胞。
(項目87)
 上記油の脂肪酸プロフィールが、少なくとも10、20、30、40、又は50%のリ 30
ノール酸、リノレン酸、又はその両方を有することによって特徴づけられる、項目86に
記載の細胞。
(項目88)
 項目46∼87のいずれか一項に記載の細胞から生成される天然油又は油含有生成物。
(項目89)
 リシノール酸を含むトリアシルグリセリドを含む天然油、又は上記天然油から生成され
る生成物を生成する方法であって、
 組み換え微生物の細胞を育てることを含み、上記細胞が、活性なオレイン酸12−ヒド
ロキシラーゼをコードする外来遺伝子の産物を発現する働きをする組み換え核酸を含み、
それにより上記リシノール酸を合成する、方法。 40
(項目90)
 上記微生物がII型脂肪酸生合成経路を有する、項目48に記載の方法。
(項目91)
 上記微生物が微細藻類である、項目90に記載の方法。
(項目92)
 上記微細藻類が偏性従属栄養生物である、項目91に記載の方法。
(項目93)
 上記微細藻類がProtothecaの種である、項目92に記載の方法。
(項目94)
 上記微細藻類が、Prototheca wickerhamii、Protothe 50
(24) JP 2018-99138 A 2018.6.28

ca stagnora、Prototheca portoricensis、Pro
totheca moriformis、又はPrototheca zopfiiであ
る、項目93に記載の方法。
(項目95)
 上記微細藻類が、Chlorella kessleri、Chlorella lu
teoviridis、Chlorella protothecoides、又はCh
lorella vulgarisである、項目91に記載の方法。
(項目96)
 上記細胞が、活性なショ糖インベルターゼを発現する組み換え細胞である、項目46∼
95のいずれか一項に記載の方法。 10
(項目97)
 上記育てることが、従属栄養で育てることである、項目46∼96のいずれか一項に記
載の方法。
(項目98)
 上記細胞が、活性なオレイン酸12−ヒドロキシラーゼをコードする外来遺伝子の産物
を発現する働きをする上記組み換え核酸が存在しないときに少なくとも40、50、60
、70、80、又は90%のオレイン酸を生成する、項目46∼98のいずれか一項に記
載の方法。
(項目99)
 上記オレイン酸12−ヒドロキシラーゼに対する基質レベルを高めるためオレイン酸生 20
成を高める働きをする組み換え核酸をさらに含む、項目89∼98 98のいずれか一項
に記載の方法。
(項目100)
 上記細胞が、
 (a)活性なステアロイルACPデサチュラーゼをコードする外来遺伝子の産物を発現
し、且つ脂肪酸デサチュラーゼをコードする1つ以上の遺伝子によりコードされる酵素の
発現を低下又は消失させる働き;又は
 (b)活性なβ−ケトアシル−ACPシンターゼIをコードする外来遺伝子の産物を発
現し、且つ活性なアシル−ACPチオエステラーゼをコードする外来遺伝子の産物を発現
する働き 30
をする組み換え核酸を含む、項目99に記載の方法。
(項目101)
 項目89∼100のいずれか一項に記載の方法に従って作られる生成物。
(項目102)
 活性なオレイン酸12−ヒドロキシラーゼをコードする外来遺伝子の産物を発現する働
きをする組み換え核酸を含み、それによりリシノール酸を合成する微生物細胞。
(項目103)
 上記微生物がII型脂肪酸生合成経路を有する、項目102に記載の細胞。
(項目104)
 上記微生物が微細藻類である、項目103に記載の細胞。 40
(項目105)
 上記微細藻類が偏性従属栄養生物である、項目104に記載の細胞。
(項目106)
 上記微細藻類がProtothecaの種である、項目105に記載の細胞。
(項目107)
 上記微細藻類が、Prototheca wickerhamii、Protothe
ca stagnora、Prototheca portoricensis、Pro
totheca moriformis、又はPrototheca zopfiiであ
る、項目106に記載の細胞。
(項目108) 50
(25) JP 2018-99138 A 2018.6.28

 上記微細藻類が、Chlorella kessleri、Chlorella lu
teoviridis、Chlorella protothecoides、又はCh
lorella vulgarisである、項目104に記載の細胞。
(項目109)
 活性なショ糖インベルターゼを発現する組み換え細胞である、項目102∼108のい
ずれか一項に記載の細胞。
(項目110)
 従属栄養で成長することができる、項目102∼109のいずれか一項に記載の細胞。
(項目111)
 活性なオレイン酸12−ヒドロキシラーゼをコードする外来遺伝子の産物を発現する働 10
きをする上記組み換え核酸が存在しないときに少なくとも40、50、60、70、80
、又は90%のオレイン酸を生成する、項目102∼109のいずれか一項に記載の細胞

(項目112)
 上記オレイン酸12−ヒドロキシラーゼに対する基質レベルを高めるためオレイン酸生
成を高める働きをする組み換え核酸をさらに含む、項目102∼111のいずれか一項に
記載の細胞。
(項目113)
 (a)活性なステアロイルACPデサチュラーゼをコードする外来遺伝子の産物を発現
し、且つ脂肪酸デサチュラーゼをコードする1つ以上の遺伝子によりコードされる酵素の 20
発現を低下又は消失させる働き;又は
 (b)活性なβ−ケトアシル−ACPシンターゼIをコードする外来遺伝子の産物を発
現し、且つ活性なアシル−ACPチオエステラーゼをコードする外来遺伝子の産物を発現
する働き
をする組み換え核酸を含む、項目112に記載の細胞。
(項目114)
 項目44に記載の油を含む食品。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】図1は、Protothecaトリグリセリド油脂から生成される再生可能なデ 30
ィーゼルのクロマトグラムを示す。
【図2】図2は、リシノール酸標準及び野生型対照と比較した代表的な陽性トランスジェ
ニッククローンのGC保持時間を示す。
【図3】図3は、実施例18で記載されるような、標的遺伝子破壊を有する、及び有しな
い、Prototheca moriformis FADc対立遺伝子のPstI制限
地図を示す。
【図4】図4は、実施例18で記載されるサザンブロットの結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0073】
本発明の詳細な説明 40
 本発明の例示的な実施形態は、改変されたグリセロ脂質プロフィールを生成する油産生
細胞、及びその細胞から生成される産物を特徴とする。油産生細胞(oleagnino
us cell)の例としては、II型脂質生合成経路を有する微生物細胞が挙げられる
。実施形態には、脂肪酸アシル−ACPチオエステラーゼ、脂肪酸デサチュラーゼ(de
staturase)、ケトアシルシンテターゼのようなタンパク質をコードする1つ以
上の外来遺伝子を発現し、且つ場合により、同様の活性を有するタンパク質をコードする
内因性遺伝子の1つ以上のノックダウンを有する組み換え細胞が含まれる。結果として、
いくつかの実施形態は、これまでには得ることのできなかった天然油を特徴とする。また
、本発明は、そのような細胞から、バイオディーゼル、再生可能ディーゼル及びジェット
燃料のような燃料、食用油及び化学薬品を含む、脂質及び油をベースとする生成物を製造 50
(26) JP 2018-99138 A 2018.6.28

する方法も提供する。
【0074】
 本発明の実施形態により作られる油は、他の用途の中でも、輸送燃料、油脂化学品、及
び/又は食品及び香粧品産業で使用することができる。例えば、脂質のトランスエステル
化によって、バイオディーゼルに有用な長鎖脂肪酸エステルを得ることができる。他の酵
素プロセス及び化学プロセスを、脂肪酸、アルデヒド、アルコール、アルカン、及びアル
ケンを生成するように調節することができる。いくつかの用途では、再生可能ディーゼル
、ジェット燃料、又は他の炭化水素化合物を生成する。また、本発明は、生産性を高め、
脂質収量を増やし、及び/又は、本明細書に記載される組成物を高い費用効率で生成する
ために、微細藻類を育てる方法も提供する。 10
【0075】
 本発明の実施形態は、トリアシルグリセリドを含む天然油を生成する方法、又はその天
然油から生成される生成物を生成する方法を提供する。天然油は非植物油又は非種子油で
あってよい。この方法は、組み換え微生物の細胞を育てて用途に応じた油;すなわち、細
胞中に組み換え核酸が存在することによって改変された脂肪酸プロフィールを有する油を
生成することを含む。次いで、その天然油をさらに処理して、食品、燃料、又は化学製品
を製造することができる。細胞中の組み換え核酸は、(a)β−ケトアシル−ACPシン
ターゼI、β−ケトアシル−ACPシンターゼII、ステアロイルACPデサチュラーゼ
、脂肪酸デサチュラーゼ、又はアシル−ACPチオエステラーゼをコードする1つ以上の
遺伝子によりコードされる酵素の発現を低下又は消失させる働きをする。場合により細胞 20
は、β−ケトアシル−ACPシンターゼI、β−ケトアシル−ACPシンターゼII、ス
テアロイルACPデサチュラーゼ、又は脂肪酸デサチュラーゼ、又はアシル−ACPチオ
エステラーゼをコードする遺伝子の2つの複製物(例えば、二倍体生物における2つの対
立遺伝子)の発現を低下又は消失させる働きをする組み換え核酸を含む;又は(b)活性
なβ−ケトアシル−ACPシンターゼI、β−ケトアシル−ACPシンターゼII、ステ
アロイルACPデサチュラーゼ、又は脂肪酸デサチュラーゼ、又はアシル−ACPチオエ
ステラーゼをコードする外来遺伝子の産物を発現する働きをする;又は(c)β−ケトア
シル−ACPシンターゼI又はβ−ケトアシル−ACPシンターゼIIをコードする1つ
以上の遺伝子によりコードされる酵素の発現を低下又は消失させ、且つ活性なステアロイ
ルACPデサチュラーゼ、脂肪酸デサチュラーゼ、又はアシル−ACPチオエステラーゼ 30
をコードする外来遺伝子の産物を発現する働きをする;又は(d)ステアロイルACPデ
サチュラーゼ又は脂肪酸デサチュラーゼをコードする1つ以上の遺伝子によりコードされ
る酵素の発現を低下又は消失させ、且つ活性なβ−ケトアシル−ACPシンターゼI、β
−ケトアシル−ACPシンターゼII、又はアシル−ACPチオエステラーゼをコードす
る外来遺伝子の産物を発現する働きをする。
【0076】
 1つ以上の脂肪酸デサチュラーゼ(desturase)をコードする組み換え核酸が
細胞中に存在する場合、核酸は、ω−6脂肪酸デサチュラーゼ、ω−3脂肪酸デサチュラ
ーゼ、又はω−6オレイン酸デサチュラーゼ、又はデルタ12脂肪酸デサチュラーゼのう
ちの1つ以上をコードし得る。 40
【0077】
 細胞が、酵素の発現を低下又は消失させる働きをする組み換え核酸を含む場合、これは
、酵素をコードする遺伝子の転写物を標的とするアンチセンス、RNAi、又はdsRN
Aの発現によって行われても、又は定方向突然変異、完全欠失、若しくは部分欠失を含む
他の適した手段により行われてもよい。従って、β−ケトアシル−ACPシンターゼI、
β−ケトアシル−ACPシンターゼII、ステアロイルACPデサチュラーゼ、又は脂肪
酸デサチュラーゼをコードする1つ以上の遺伝子によりコードされる酵素の発現の低下又
は栄養(alimentation)は、1つ以上の遺伝子を、活性なβ−ケトアシル−
ACPシンターゼI、β−ケトアシル−ACPシンターゼII、ステアロイルACPデサ
チュラーゼ、又は脂肪酸デサチュラーゼ、又はアシル−ACPチオエステラーゼをコード 50
(27) JP 2018-99138 A 2018.6.28

する1つ以上の遺伝子により分断又は置換することに起因し得る。
【0078】
 好ましくは、組み換え核酸は細胞に;例えば、細胞の染色体、又はエピソームに安定に
組み込まれる。安定に組み込まれた核酸を有する細胞の選択は、本明細書に記載するとお
り、ショ糖インベルターゼ、抗生物質耐性遺伝子、又はチアミン栄養要求相補体のような
選択可能なマーカーを用いることで促進され得る。
【0079】
 好ましくは、微生物は、II型脂肪酸生合成経路によって脂肪酸を合成する微生物であ
り得る。例えば、微生物は微細藻類であってもよく、しかしながら、また、通常はI型脂
肪酸生合成経路を有する微生物(例えば、油を生成する酵母)であって、それに遺伝子操 10
作技法を用いてII型の遺伝機構が導入されたものであってもよい。微生物は、従属栄養
生物、及び特定の実施形態では偏性従属栄養生物であってもよい。微細藻類が使用される
場合、微細藻類は、Prototheca又はChlorellaの種であってもよい。
例示的な種としては、Prototheca wickerhamii、Prototh
eca stagnora、Prototheca portoricensis、Pr
ototheca moriformis、Prototheca zopfii、Ch
lorella kessleri、Chlorella luteoviridis、
Chlorella protothecoides、及びChlorella vul
garisが挙げられる。サトウキビ汁及び本明細書に記載される他のもののようなショ
糖原材料の使用を可能にするため、組み換え細胞は、活性なショ糖インベルターゼを発現 20
するためショ糖インベルターゼ遺伝子を含む組み換え核酸を含むことができる。ショ糖イ
ンベルターゼは、微生物によって培地中に分泌され得る。
【0080】
 培養は従属栄養培養であってもよく;例えば、バイオリアクター内でグルコース又はシ
ョ糖のような固定炭素源を使用して実施することができる。培養は、細胞が乾燥細胞重量
で少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、又は50∼90%トリグリ
セリドに達するまで継続され得る。これは、以下に記載するとおり、制限窒素を用いた培
養を伴い得る。
【0081】
 細胞によって生成される油は、細胞から抽出され得る。ある実施形態では、この油は、 30
500、50、又は5ppm未満の有色分子を含む。場合により、油はその脂肪酸プロフ
ィールについて分析される;例えばLC−MSによる。また、油は、実施例19、表60
∼表63の油の特性のうちの1つ以上を有し得る。
【0082】
 特定の実施形態では、組み換え細胞は、KASII遺伝子によりコードされるβ−ケト
アシル−ACPシンターゼIIの発現を低下又は消失させ、且つアシル−ACPチオエス
テラーゼをコードする外来遺伝子の産物を発現する働きをする核酸を含む。結果として、
細胞は、少なくとも40、50、60、又は70%のC16脂肪酸(例えば、パルミチン
酸)を有することによって特徴づけられる脂肪酸プロフィールを有する油を生成する。従
って、油は、より短い鎖長の方にシフトした脂肪酸分布を有し得る。脂肪酸分布のシフト 40
は、平均脂肪酸長の減少又は(o9r)分布についての他の統計的特徴によって特徴づけ
ることができる。例えば、平均脂肪酸長を計算するには、トリグリセリドを構成している
検出可能な各脂肪酸の割合に脂肪酸中の炭素の数を乗じ、その積の合計を100で除す。
アシル−ACPチオエステラーゼをコードする外来遺伝子は、細胞の天然のアシル−AC
P−チオエステラーゼと比べてC8∼C16脂肪酸アシル鎖の加水分解において高い活性
を有する活性なアシル−ACPチオエステラーゼを生成し得る。アシル−ACPチオエス
テラーゼをコードする外来遺伝子は、KASII遺伝子を分断し得る。このように、アシ
ル−ACPチオエステラーゼの挿入はまた、β−ケトアシル−ACPシンターゼIIの発
現を一工程で消失させることができる。実施例15及び16を参照。
【0083】 50
(28) JP 2018-99138 A 2018.6.28

 別の特定の実施形態では、組み換え細胞は、β−ケトアシル−ACPシンターゼIをコ
ードする1つ以上の遺伝子によりコードされる酵素の発現を低下又は消失させる働きをす
る核酸を含む。結果として、生成される油は、組み換え核酸を有しない同等の細胞より短
い脂肪酸鎖長の分布によって特徴づけられる脂肪酸プロフィールを有する。これは、平均
脂肪酸鎖長の減少として表現され得る。組み換え細胞は、少なくとも1つのFAD遺伝子
によりコードされる脂肪酸デサチュラーゼ(destaurase)の発現を低下又は消
失させ、且つ活性なステアロイルACPデサチュラーゼをコードするステアロイル−AC
Pデサチュラーゼ外来遺伝子の産物を発現する働きをする核酸を含むことができる。場合
により、核酸は、脂肪酸デサチュラーゼ遺伝子の複数の複製物(例えば、対立遺伝子)に
よりコードされる脂肪酸デサチュラーゼ(destaurase)の発現を低下又は消失 10
させる働きをする。特定の実施形態では、ステアロイル−ACPデサチュラーゼ外来遺伝
子は、脂肪酸デサチュラーゼ遺伝子のコード領域内の遺伝子座に組み換えられる。結果と
して、生成される油は、この核酸を有しない同等の細胞により生成される油と比較して、
高濃度のオレイン酸を有することができる。オレイン酸は、脂肪酸プロフィールにおいて
脂肪酸の少なくとも50、60、70、80、又は90%を構成する。実施例10を参照

【0084】
 別の特定の実施形態では、組み換え細胞は、活性なβ−ケトアシル−ACPシンターゼ
IIをコードするβ−ケトアシル−ACPシンターゼII外来遺伝子の産物を発現する働
きをする核酸を含む。結果として、生成される油は、組み換え核酸の結果として18:1 20
脂肪酸が上昇し、且つC16脂肪酸が低下した脂肪酸プロフィールによって特徴づけられ
得る。実施例13を参照、ここではKASII遺伝子の過剰発現によってC18脂肪酸の
割合が非形質転換細胞における約68%から約84%に増加した。関連する実施形態では
、この増加は70%超、75∼85%、又は70∼90%である。
【0085】
 別の特定の実施形態では、組み換え細胞は、ステアロイルACPデサチュラーゼをコー
ドする1つ以上の遺伝子によりコードされる酵素の発現をRNA干渉によって低下又は消
失させる働きをする核酸を含む。結果として、生成される油は、18:0脂肪酸の増加に
よって特徴づけられる脂肪酸プロフィールを有することができる。18:0脂肪酸は、プ
ロフィールにおける脂肪酸の少なくとも50、60、70、80、又は90%であってよ 30
い。実施例12を参照。
【0086】
 別の特定の実施形態では、細胞は、β−ケトアシル−ACPシンターゼI、β−ケトア
シル−ACPシンターゼII、ステアロイルACPデサチュラーゼ、又は脂肪酸デサチュ
ラーゼをコードする遺伝子の2つの複製物(例えば2つの対立遺伝子)の発現を低下又は
消失させる働きをする組み換え核酸を含む。実施例14を参照、ここではPrototh
ecaにおいて内在するKASI対立遺伝子がノックアウトされた。結果として、内在す
るKASIの破壊により、約35%∼400%の総C14脂肪酸の割合の増加及び約30
∼50%のC16脂肪酸の割合の増加が認められた。
【0087】 40
 別の特定の実施形態では、細胞は、活性なω−3脂肪酸デサチュラーゼ及び/又はω−
6オレイン酸デサチュラーゼをコードする脂肪酸デサチュラーゼ外来遺伝子の産物を発現
する働きをする組み換え核酸を含む。結果として、高レベルのリノール酸、リノレン酸、
又はその両方が細胞によって生成され、及び細胞脂質の脂肪酸プロフィールに検出され得
る。例えば、細胞は、少なくとも10、20、30、40、又は50%のリノール酸、リ
ノレン酸、又はその両方を有し得る。例えば、実施例11のとおり、組み換えΔ15デサ
チュラーゼ酵素を発現させることができる。結果として、C18:3脂肪酸(すなわち、
リノレン酸)を約2∼17倍、又はそれ以上増加させることができる。
【0088】
 別の実施形態では、組み換え微生物の細胞が育てられる。細胞は、活性なオレイン酸1 50
(29) JP 2018-99138 A 2018.6.28

2−ヒドロキシラーゼをコードする外来遺伝子の産物を発現する働きをする組み換え核酸
を含み、それによりリシノール酸を合成する。この遺伝子は、前述の実施形態の任意のも
のに存在し得る。実施例7を参照。12−ヒドロキシラーゼに好ましい基質はオレイン酸
である。従って、好ましい実施形態では、オレイン酸生成を増加させる働きをする組み換
え核酸を細胞に含めることで、より高収率のリシノール酸を得ることができる。限定なし
に、細胞は、活性なステアロイルACPデサチュラーゼをコードする外来遺伝子の産物を
発現し、且つ脂肪酸デサチュラーゼをコードする1つ以上の遺伝子によりコードされる酵
素の発現を低下又は消失させる働き;又は活性なβ−ケトアシル−ACPシンターゼIを
コードする外来遺伝子の産物を発現し、且つ活性なアシル−ACPチオエステラーゼをコ
ードする外来遺伝子の産物を発現する働きをする組み換え核酸を含む。 10
【0089】
 本発明の任意の実施形態において、油は抽出され、さらに、精製、漂白、脱臭、メタセ
シス、トランスエステル化、水素化、加水分解、水素化、脱酸素、ハイドロクラッキング
、異性化、ヒドロキシル化、インターエステル化、アミド化、スルホン化、及び硫化(s
ufurization)の1つ以上によって処理され得る。油を処理することにより、
例えば、食用油、脂肪酸、脂肪族アルコール、潤滑剤、石鹸、脂肪酸エステル、脂肪酸エ
トキシレート、脂肪族アミン、塩化アルキル(akyl chloride)、脂肪族ア
ルコールエトキシレート、脂肪族アルコールスルフェート、脂肪酸アルカノールアミド、
スルホン化油、又は硫化油、ディーゼル、ジェット用ガソリン、又はブレンドストック又
は添加剤、潤滑剤、又はペンキが作り出され得る。 20
【0090】
 本明細書で言及する実施形態のいずれも、食品又は食用油として有用であり得る。全有
機体を食品中に組み込むことができる。有機体は、インタクトであっても、部分的に溶解
していても、ほとんど溶解していても、又は完全に溶解していてもよい。油産生有機体を
調製して食品に使用する方法は、国際公開第2011/150411号、国際公開第20
10/12093号、国際公開第2011130578号、及び国際公開第2011/1
30576号に教示されている。あるいは、有機体から抽出され、場合により精製された
油は、スプレッド、ソース、糖菓、及び冷凍糖菓などの加工食品中の食用油成分としての
使用を含め、食用油として使用することができる。特定の実施形態では、油産生細胞又は
食用油は、50∼70%のC18:0及び20∼40%の18:1(例えばオレイン酸) 30
を含む。別の特定の実施形態では、油産生細胞又は食用油は、50∼70%のC16:0
及び20∼40%の18:1(例えばオレイン酸)を含む。
【0091】
 読者が読みやすいように、本発明の詳細な説明をいくつかの章に分けている。第I章は
、本明細書で用いる用語の定義を記載している。第II章は、本発明の方法で有用な培養
条件を記載している。第III章は、遺伝子操作の方法及び材料を記載している。第IV
章は、ショ糖を利用することが可能となるように遺伝子操作することを記載している。第
V章は、脂質生合成を改変するための遺伝子操作を記載している。第VI章は、燃料及び
化学物質を製造する方法を記載している。第VII章は、本発明の実施例及び実施形態を
開示している。本発明の詳細な説明の後に、本発明の種々の態様及び実施形態を説明する 40
実施例が続く。
【0092】
I.定義
 他の意味であると定義されていない限り、本明細書で用いられる全ての技術用語及び化
学用語は、本発明が属する技術分野の当業者が一般的に理解している意味を有する。本明
細書で使用される場合、他の意味であると明記されていない限り、以下の用語は、それら
に属する以下の意味を有する。
【0093】
 「微細藻類内で活性」は、微細藻類内で機能を発揮する核酸を指す。例えば、トランス
ジェニック微細藻類に抗生物質耐性を付与するために、抗生物質耐性遺伝子を動かすため 50
(30) JP 2018-99138 A 2018.6.28

に用いられるプロモーターは、微細藻類内で活性である。
【0094】
 「面積百分率」は、サンプル中の全ての脂肪酸を、検出前に脂肪酸メチルエステル(F
AME)に変換し、FAME GC/FID検出法を用いて観察したピークの面積を指す
。例えば、炭素原子14個で、不飽和部のない脂肪酸(C14:0)について、分離した
ピークが、任意の他の脂肪酸、例えば、C14:1と比較すると観察される。それぞれの
種類のFAMEに対するピーク面積は、混合物中のその組成物における割合と正比例して
おり、サンプル中に存在する全ピークの合計に基づいて算出される(すなわち、[特定の
ピークの面積/測定した全ピークの合計面積]×100)。本発明の油及び細胞の脂質プ
ロフィールについて述べる場合、「C8∼C14が少なくとも4%」は、細胞中、又は抽 10
出したグリセロ脂質組成物中の総脂肪酸のうち、少なくとも4%が、炭素原子が8個、1
0個、12個又は14個の鎖長を有することを意味している。
【0095】
 「純培養」は、他の生物によって汚染されていない、微生物の培養物である。
【0096】
 「バイオディーゼル」は、ディーゼルエンジンの燃料として使用するのに適した、生物
によって生成された脂肪酸アルキルエステルである。
【0097】
 「バイオマス」は、細胞の成長及び/又は増殖によって生成する物質である。バイオマ
スは、細胞及び/又は細胞内成分、並びに、限定されないが、細胞によって分泌された化 20
合物のような細胞外物質を含有していてもよい。
【0098】
 「バイオリアクター」は、細胞を場合により懸濁物の状態で培養する、閉じられた筐体
又は部分的に閉じられた筐体である。
【0099】
 「セルロース系材料」は、セルロース及び場合によりヘミセルロースを含む生物学的材
料である。従ってこれは、グルコース及びキシロースなどの糖に消化可能であり、場合に
より、二糖類、オリゴ糖類、リグニン、フルフラール類のようなさらなる化合物及び他の
化合物を含み得る。セルロース系材料の供給源の非限定的な例としては、サトウキビの絞
りかす、テンサイパルプ、トウモロコシ茎葉、木片、おがくず及びスイッチグラスが挙げ 30
られる。
【0100】
 「共生培養」、及び「共生生育」及び「共生発酵」などのこの用語の変形は、同じバイ
オリアクター内で2種類以上の細胞を育てることを指す。2種類以上の細胞は、全てが微
細藻類のような微生物であってもよく、異なる細胞種と共に培養された微細藻類細胞であ
ってもよい。培養条件は、2種類以上の細胞の成長及び/又は増殖を進めるような条件で
あってもよく、又は、2種類以上の細胞のうち1種類、又は部分的な集合の成長及び/又
は繁殖を容易にしつつ、残りの細胞の成長を維持する条件であってもよい。
【0101】
 「有色分子」又は「着色性不純物」は、本明細書で使用される場合、抽出した油に色を 40
付与する任意の化合物を指す。「有色分子」又は「着色性不純物」には、例えば、クロロ
フィルa、クロロフィルb、リコピン、トコフェロール、カンペステロール、トコトリエ
ノール、及びカロチノイド、例えばβ−カロチン、ルテイン、ゼアキサンチン、アスタキ
サンチンが含まれる。これらの分子は、好ましくは微生物バイオマス又は抽出油中に50
0ppm以下、250ppm以下、100ppm以下、75ppm以下、又は25ppm
以下の濃度で存在する。他の実施形態では、微生物バイオマス又は抽出油中に存在するク
ロロフィルの量は、500mg/kg未満、100mg/kg未満、10mg/kg未満
、1mg/kg未満、0.5mg/kg未満、0.1mg/kg未満、0.05mg/k
g未満、又は0.01mg/kg未満である。
【0102】 50
(31) JP 2018-99138 A 2018.6.28

 「育てられた」、及びこの語句の別の言い方である「培養された」、「発酵された」は
、選択した条件及び/又は制御された条件を利用することによって、1つ以上の細胞の成
長(細胞の大きさ、細胞成分が増え、及び/又は細胞活性が高まる)及び/又は増殖(細
胞の数が増える)を意図的に進めることを指す。成長と増殖を組み合わせて、「繁殖」と
呼ぶ。選択した条件及び/又は制御された条件の例としては、十分に定義されている培地
(pH、イオン強度、炭素源のような既知の特徴を有する)、特定の温度、酸素圧、二酸
化炭素濃度、バイオリアクター内の成長を用いることが挙げられる。「育てること」は、
微生物の成長又は増殖が自然に起こること、又は人の介入なしに起こることを指さず、例
えば、微生物が地中で最終的に化石化し、未精製油を生成するような天然の成長は、育て
られたとは言わない。 10
【0103】
 「デサチュラーゼ」は、トリアシルグリセリド分子の脂肪酸鎖に二重結合(不飽和)を
組み込むことに関与する脂質合成経路の酵素を指す。例としては、限定されないが、ステ
アロイル−アシルキャリアータンパク質デサチュラーゼ(SAD)及び脂肪酸アシルデサ
チュラーゼとしても知られる脂肪酸デサチュラーゼ(FAD)が挙げられる。
【0104】
 「発現ベクター」又は「発現構築物」又は「プラスミド」又は「組み換えDNA構築物
」は、宿主細胞に核酸を導入するための媒体である。この核酸は、特定の核酸の転写及び
/又は翻訳を可能にする一連の特定の核酸エレメントを用いた、組み換え手段又は直接的
な化学合成によるなどの、人の介入によって生じたものであってよい。発現ベクターは、 20
プラスミド、ウイルス、又は核酸フラグメント、又は他の適した媒体の一部であってもよ
い。典型的には、発現ベクターは、プロモーターに動作可能に連結した、転写されるべき
核酸を含む。
【0105】
 「外来遺伝子」は、細胞に導入された(例えば形質転換/トランスフェクションにより
)、RNA及び/又はタンパク質の発現をコードする核酸であり、「トランス遺伝子」と
も呼ばれる。外来遺伝子を含む細胞は組み換え細胞と呼ぶことができ、そこに1つ又は複
数のさらなる外来遺伝子を導入することができる。外来遺伝子は、形質転換される細胞と
異なる種に由来していてもよく(つまり、異種)、同じ種に由来していてもよい(つまり
、同種)。従って、外来遺伝子は、この細胞のゲノムでは異なる位置にあるような同種遺 30
伝子を含んでいてもよく、内在する遺伝子複製物と比較して、異なる制御下にある同種遺
伝子を含んでいてもよい。外来遺伝子は、この細胞の2種類以上の複製物中に存在してい
てもよい。外来遺伝子は、ゲノム(核またはプラスチド)への挿入物として細胞中に維持
されてもよく、又はエピソーム分子として細胞中に維持されてもよい。
【0106】
 「外部から与えられた」は、細胞培養物の培地に与えられた分子を指す。
【0107】
 文脈によっては、「脂肪酸」は、遊離脂肪酸、脂肪酸塩、又はグリセロ脂質中の脂肪酸
アシル部分を意味するものとする。
【0108】 40
 「固定炭素源」は、培地中で、周囲温度及び周囲圧力で固体又は液体の形態として存在
し、培地で培養されている微生物が利用することが可能な、炭素を含有する分子、典型的
には有機分子である。従って、二酸化炭素は固定炭素源ではない。
【0109】
 「従属栄養性」は、それが培養条件に関連する場合、固定炭素源を利用又は代謝する間
に光が実質的に存在しない状態で培養することである。
【0110】
 「ホモジネート」は、物理的に破壊されたバイオマスである。
【0111】
 「水素:炭素比」は、原子単位であらわした、分子中の水素原子と炭素原子との比率で 50
(32) JP 2018-99138 A 2018.6.28

ある。この比率は、炭化水素分子中の炭素原子及び水素原子の数を述べるときに用いられ
得る。例えば、最も大きな比率を有する炭化水素は、メタンCH4である(4:1)。
【0112】
 「誘発性プロモーター」は、特定の刺激に応答し、動作可能に連結した遺伝子の転写に
介在するプロモーターである。そのようなプロモーターの例は、pH又は窒素レベルが変
化する条件下で誘導されるプロモーター配列であり得る。
【0113】
 「動作可能に連結した状態で」は、制御配列(典型的には、プロモーター)、連結した
配列(典型的には、タンパク質をコードする配列、コード配列とも呼ばれる)のような、
2個の核酸配列間の機能的な連結である。プロモーターは、遺伝子の転写に介在すること 10
ができる場合、外来遺伝子と動作可能に連結した状態である。
【0114】
 「脂質改変酵素」は、脂質の共有結合構造を変える、又は他の形で細胞における脂肪酸
プロフィールの改変をもたらす酵素を指す。脂質改変酵素の例としては、リパーゼ、脂肪
酸アシル−ACPチオエステラーゼ、脂肪酸アシル−CoA/アルデヒド還元酵素、脂肪
酸アシル−CoA還元酵素、脂肪族アルデヒド還元酵素、ステアロイルアシルキャリアー
タンパク質デサチュラーゼ(SAD)及び脂肪酸アシルデサチュラーゼ(destaur
ase)(FAD)を含むデサチュラーゼ、及び脂肪族アルデヒドデカルボニラーゼが挙
げられる。
【0115】 20
 「脂質経路に関連する酵素」は、脂質代謝、すなわち、脂質合成、改変又は変性におい
てなんらかの役割をはたす任意の酵素であり、脂質を化学的に改変するタンパク質、及び
キャリアータンパク質である。
【0116】
 「脂質プロフィール」又は「グリセロ脂質プロフィール」は、細胞又は細胞から得られ
た油における脂肪酸の鎖長及び/又は飽和パターンに関しての分布を指す。これに関連し
て、飽和パターンは、細胞のさまざまな脂肪酸における飽和酸対不飽和酸の尺度、又は二
重結合の位置の分布のより詳細な分析を含み得る。
【0117】
 「溶解」は、生物有機体の原形質膜、場合により、細胞壁を、多くは生物有機体の一体 30
性を失わせるような機械的な機構、化学的な機構、ウイルスによる機構、又は浸透力によ
る機構によって、細胞内成分を少なくともいくらか放出させるのに十分な程度まで破壊す
ることである。
【0118】
 「溶解すること」は、溶解のプロセスである。
【0119】
 「微細藻類」は、葉緑体又はプラスチドを含み、場合により、光合成を行うことができ
る微生物であるか、又は、光合成を行うことができる原核性微生物である。微細藻類には
、固定炭素源をエネルギーとして代謝することができない偏性光合成独立栄養生物と、単
に固定炭素源がないと生存することができない従属栄養生物とが存在する。微細藻類には 40
、細胞分裂の直後に、妹細胞から分離するChlamydomonasのような単細胞有
機体、2種類の別個の細胞型を有する単純な多細胞光合成細菌である、例えば、Volv
oxのような細菌が含まれる。微細藻類は、Chlorella、Dunaliella
、Protothecaのような細胞を含む。また、微細藻類には、Agmenellu
m、Anabaena、Pyrobotrysのような、細胞−細胞接着性を示す他の細
菌の有機体も含まれる。また、微細藻類には、特定のdinoflagellate a
lgae種、及びPrototheca属の種のような、光合成を行う能力が失われてい
る偏性従属栄養微生物も含まれる。
【0120】
 「中鎖」は、脂肪酸に関連して本明細書で使用される場合、C10∼C16脂肪酸を指 50
(33) JP 2018-99138 A 2018.6.28

す。これに関連して「短鎖」はC6∼C10脂肪酸を指し、一方「長鎖」はC17以上の
脂肪酸を指す。特に指示されない限り、これらの境界は正確に定義することを意図するも
のではない。
【0121】
 「天然油」は、有機体から得られる、主にトリグリセリドの油を意味するものとし、こ
こで油は、トリグリセリドの脂肪酸プロフィールを実質的に変化させるような別の天然油
若しくは合成油との混合、又は画分化を受けていない。ここで、用語「画分化」は、その
有機体から生じる、しかしながら完成されたプロフィールと比べて、その脂肪酸プロフィ
ールが変化する方法で、油から材料を取り出すことを意味する。天然油は、有機体から得
られる油を包含し、ここで油は、そのトリグリセリドプロフィールを実質的に変化させる 10
ことのない、精製、漂白及び/又は脱ガムを含めた処理を、最小限だけ受けている。また
、天然油は「非インターエステル化天然油」であってもよく、これは、その天然油が、脂
肪酸をそのアシル結合においてグリセロールに再分布させるプロセスを受けておらず、有
機体から回収されたときと本質的に同じ構造のままであることを意味する。
【0122】
 「自然に共発現する」は、2種類のタンパク質あるいは遺伝子に関する際、例えば、2
種類のタンパク質をコードする遺伝子が、共通の制御配列の制御下にあるため、又は、上
述の2種類のタンパク質をコードする遺伝子が、同じ刺激に応答して発現するため、その
タンパク質又は遺伝子が、これらが誘導される組織又は有機体で自然に共発現することを
意味する。 20
【0123】
 「浸透圧衝撃」は、浸透圧が突然下がることによって、細胞が溶液中で破裂することで
ある。浸透圧衝撃は、時に、誘発されてこのような細胞の細胞成分が溶液内に放出される

【0124】
 「多糖分解酵素」は、任意の多糖の加水分解又は糖化を触媒することができる任意の酵
素である。例えば、セルラーゼは、セルロースの加水分解を触媒する。
【0125】
 「多糖類」又は「グリカン」は、単糖類がグリコシド結合によって接続したもので構成
される炭水化物である。セルロースは、特定の植物細胞壁を構成する多糖である。セルロ 30
ースは、酵素によって解重合し、キシロース及びグルコースのような単糖類や、これより
大きな二糖類及びオリゴ糖を生成し得る。
【0126】
 「プロモーター」は、核酸の転写に関連する核酸制御配列である。本明細書で使用され
る場合、プロモーターは、転写開始部位の近くに、必要な核酸配列を含み、例えば、ポリ
メラーゼII型プロモーターの場合には、TATAエレメントを含む。また、プロモータ
ーは、場合により、遠位エンハンサーエレメント又はリプレッサーエレメントを含み、こ
れらは、転写開始部位から数千塩基対離れた位置にあってもよい。
【0127】
 「組み換え体」は、外来の核酸を導入するか、又は天然の核酸を変えることによって改 40
変された細胞、核酸、タンパク質又はベクターである。従って、例えば、組み換え細胞は
、この細胞の天然の(組み換えされていない)形態にはみられない遺伝子を発現すること
も、組み換えされていない細胞によって発現する遺伝子とは異なる天然遺伝子を発現する
こともできる。組み換え細胞には、限定なしに、細胞における活性な遺伝子産物のレベル
を低下させる突然変異、ノックアウト、アンチセンス、干渉RNA(RNAi)又はds
RNAなどの遺伝子産物又は抑制エレメントをコードする組み換え核酸が含まれ得る。「
組み換え核酸」は、例えば、in vitroで、一般的に核酸を操作することによって
元々作られている核酸が、ポリメラーゼ、リガーゼ、エクソヌクレアーゼ及びエンドヌク
レアーゼ、又はそれ以外のものを用いて、天然には通常みられない形態になっているよう
な核酸である。組み換え核酸は、例えば、動作可能に連結した状態にある2種類以上の核 50
(34) JP 2018-99138 A 2018.6.28

酸を配置することによって生成させてもよい。従って、天然では通常は接続していないD
NA分子を結合させることによってin vitroで生成した核酸又は発現ベクターの
単離物は、両方とも本発明の目的で組み換えであると考える。組み換え核酸が作られ、宿
主細胞又は有機体に導入されると、宿主細胞の細胞機構を用いてin vivoで複製し
得るが、このような核酸は、いったん組み換え状態で産生すると、その後に細胞内で複製
されたものであっても、本発明の目的で組み換えと考える。同様に、「組み換えタンパク
質」は、組み換え技術によって、すなわち、組み換え核酸の発現によって作られるタンパ
ク質である。
【0128】
 「再生可能なディーゼル」は、天然油から、たとえば脂質の水素化及び脱酸素によって 10
生成するアルカン混合物(例えば、C10:0、C12:0、C14:0、C16:0、
C18:0)である。
【0129】
 「糖化」は、バイオマス、通常はセルロース系バイオマス又はリグノセルロース系バイ
オマスを、グルコース及びキシロースのような単糖類に変換するプロセスである。「糖化
された」又は「解重合された」セルロース系材料又はバイオマスは、糖化によって単糖類
に変換されたセルロース系材料又はバイオマスを指す。
【0130】
 「フルフラール種」は、2−フランカルボキサアルデヒド、又は同じ基本構造の特徴を
保持した誘導体である。 20
【0131】
 本明細書の実施形態に従い組み換え株を作成するための株の形質転換との関連において
(及び必ずしも先行技術の考察との関連ではなく)、「安定な」又は「安定に組み込まれ
る」は、株の細胞によって少なくとも10世代にわたり組み換え核酸が維持されることを
意味するものとする。例えば、組み換え株が、選択圧の存在下で育てることを可能にする
選択可能なマーカーを有する場合、その組み換え核酸は、選択圧が存在しない状態で10
世代を育てた後に維持される。
【0132】
 「ショ糖利用遺伝子」は、発現すると、ショ糖をエネルギー源として利用する能力を補
助する遺伝子である。ショ糖利用遺伝子によってコードされるタンパク質は、本明細書で 30
は「ショ糖利用酵素」と呼ばれ、ショ糖トランスポーター、ショ糖インベルターゼ、グル
コキナーゼやフルクトキナーゼのようなヘキソキナーゼを含む。
【0133】
II.育てること
 本発明は、一般的には、微生物、特に、微細藻類のような、II型脂肪酸生合成経路を
有する油産生微生物を育ててトリグリセリドを生成することに関する。ある実施形態では
、微生物は偏性従属栄養生物である。微生物は、例えば下記に開示される遺伝子操作方法
に基づく、組み換え微生物(microorganim)であってもよい。読者が読みや
すいように、この章をいくつかの節に分けている。第1節は、微生物の種及び株について
記載している。第2節は、育てるのに有用なバイオリアクターについて記載している。第 40
3節は、育てるための培地について記載している。第4節は、本発明の例示的な育てる方
法に従って油を生成することについて記載している。
【0134】
1.微生物(microogansim)種及び微生物株
 以下に提示する例示的な実施形態は、多くの微生物に適用することができるが、Pro
tothecaが、脂質の生成に使用するのに好ましい微生物である。重要なことには、
Protothecaを例として本明細書に記載される遺伝子操作方法は、他の微生物(
例えば、Chlorella sorokiniana、Chlorella vulg
aris、Chlorella ellipsoidea、Chlorella kes
sleri、Dunaliella tertiolecta、Volvox cart 50
(35) JP 2018-99138 A 2018.6.28

eri、Haematococcus pluvialis、Closterium p
eracerosum−strigosum−littorale複合体、Dunali
ella viridis、Dunaliella salina、Gonium pe
ctorale、Phaeodactylum tricornutum、Chaeto
ceros、Cylindrotheca fusiformis、Amphidini
um sp.、Symbiodinium microadriacticum、Nan
nochloropsis、Cyclotella cryptica、Navicul
a saprophila、又はThalassiosira pseudonana)
に適用可能である。
【0135】 10
 Protothecaのような偏性従属栄養微細藻類から得られる脂質又は油は、一般
的に色素が少なく(例えば、クロロフィル及び特定のカロチノイド類が低い乃至検出不能
なレベル、例えば有色分子、着色性不純物、又はクロロフィルとカロチノイドとの合計濃
度が500、50又は5ppm未満)、いずれの場合にも他の微細藻類由来の脂質と比べ
て含有する色素がはるかに少ないものであり得る。さらに、本発明によって与えられる組
み換えPrototheca細胞を用い、他の微生物から脂質を産生する場合と比較して
、低コストで、高収率及び高効率で脂質を生成させることができる。本発明の方法で用い
る具体的なPrototheca株としては、が挙げられる。それに加え、この微細藻類
は、従属栄養性で成長し、Prototheca wickerhamii、Proto
theca stagnora(UTEX 327を含む)、Prototheca ポ 20
ートoricensis、Prototheca moriformis(UTEX株1
441、1435を含む)、Prototheca zopfiiとして遺伝子操作する
ことができる。Prototheca属の種は、偏性従属栄養生物である。
【0136】
 本発明の実施形態で用いるための微生物の選択に影響を及ぼす考慮事項としては、油、
燃料、及び油脂化学品を生成するのに適した脂質又は炭化水素の生成に加え、(1)細胞
重量を基準とした割合で脂質含有量が高いこと;(2)成長が容易であること;(3)遺
伝子操作が容易であること;及び(4)バイオマスの処理が容易であることが挙げられる
。特定の実施形態では、野生型の微生物又は遺伝子操作された微生物から、少なくとも4
0%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少 30
なくとも65%、又は少なくとも70%、又はそれ以上が脂質である細胞が得られる。他
の特定の実施形態では、野生型の微生物又は遺伝子操作された微生物から、40∼80%
又は50∼90%がトリグリセリドである細胞が得られる。好ましい有機体は、従属栄養
で(光がない状態の糖上で)成長する。
【0137】
 本発明の実施に使用することのできる藻類の例としては、限定されないが、以下の表1
に列挙される藻類が挙げられる。
【0138】
(36) JP 2018-99138 A 2018.6.28

【表1−1】

10

20

【0139】
(37) JP 2018-99138 A 2018.6.28

【表1−2】

10

20

30

40

【0140】
2.バイオリアクター
 微生物を、遺伝子操作を行うという目的で、及び炭化水素(例えば、脂質、脂肪酸、ア
ルデヒド、アルコール、アルカン)を生成するという目的で培養する。前者の種類の培養
では、小スケールで実施し、最初は、少なくとも、原料微生物が成長可能な条件下で実施
する。炭化水素を生成させるための培養は、通常は、バイオリアクター中、大スケールで
実施する(例えば、10,000リットル、40,000リットル、100,000リッ
トル、又はそれより大きなバイオリアクター)。Prototheca種を含む微細藻類 50
(38) JP 2018-99138 A 2018.6.28

は、典型的には、バイオリアクター内の液体培地にて、本発明の方法で培養する。典型的
には、バイオリアクターには光を入れない
【0141】
 バイオリアクター又は発酵槽を用い、生理学的周期の種々の段階を経て、微細藻類細胞
を培養する。バイオリアクターは、従属栄養を成長及び増殖させる方法で用いると、多く
の利点を与える。バイオマスを生成させるために、微細藻類を、好ましくは、液体中で、
一例として懸濁培養物中で、大量に発酵させる。鋼鉄製発酵槽のようなバイオリアクター
は、非常に大きな容積の培養物を収容する(種々の本発明の実施形態では、40,000
リットル以上の容量を有するバイオリアクターを用いる)。また、バイオリアクターによ
って、典型的には、温度、pH、酸素圧、二酸化炭素濃度のような培養条件を制御するこ 10
とができる。例えば、バイオリアクターは、典型的には、例えば、酸素又は窒素のような
気体成分を液体培養物にバブリングすることが可能な配管に接続したポートを用いて構築
することができる。また、培地のpH、微量元素が何であるか及びその濃度、他の培地構
成要素のような他の培養パラメーターは、バイオリアクターを用いて簡単に操作すること
ができる。
【0142】
 スピニングブレード、インペラー、揺動機構、撹拌棒、加圧気体を注入する手段のよう
なデバイスを備えるバイオリアクターを用い、培養物を混合することができる。混合は、
連続的であってもよく、断続的であってもよい。例えば、ある実施形態では、細胞が望ま
しい数に増えるまで細胞を繁殖させるために、気体及び培地を入れるのに乱流を用いる形 20
態は維持されない。
【0143】
 気体、固体、半固体、液体を、微細藻類を含むバイオリアクターチャンバーに入れるた
め、又は抽出するために、バイオリアクターポートを用いてもよい。多くのバイオリアク
ターは、2個以上のポートを備えているが(例えば、1つは培地を入れるため、他方はサ
ンプリングのため)、1種類の基質だけを1個のポートから入れたり、出したりする必要
はない。例えば、バイオリアクターに培地を流し、その後で、サンプリングしたり、ガス
を入れたり、ガスを出したり、又は他の目的のために1個のポートを使用してもよい。好
ましくは、培養物の純培養性を損なうことなく、サンプリングポートを繰り返し用いるこ
とができる。サンプリングポートは、サンプルの流れを止めるか、開始させるか、又は連 30
続的なサンプリング手段を与えるようなバルブ又は他のデバイスを備えるような構成であ
ってもよい。バイオリアクターは、典型的には、培養物を播種することができるような少
なくとも1個のポートを備えており、このようなポートを、培地又は気体を入れるような
他の目的で用いることもできる。
【0144】
 バイオリアクターポートによって、微細藻類の培養物の気体内容物を操作することがで
きる。説明のために、バイオリアクターの容積の一部分は、液体ではなく気体であっても
よく、バイオリアクターの気体注入口から、ポンプによって気体をバイオリアクターに入
れることができる。ポンプによってバイオリアクターへと有益に入れることが可能な気体
としては、空気、酸素、空気/CO2混合物、アルゴンのような希ガス、他の気体が挙げ 40
られる。バイオリアクターは、バイオリアクターにガスを入れる速度をユーザーが制御す
ることができるように取り付けられ得る。上述のとおり、バイオリアクターへの気体の流
れを増やすことによって、培養物の混合性を高めることができる。
【0145】
 気体の流れを増やすことは、培地の濁度にも影響を及ぼす。乱流は、バイオリアクター
に入った気体が培地表面でバブリングするように、水性培地の液量より低いところに気体
注入ポートを配置することによって起こすことができる。1種類以上の気体がポートを出
て行き、気体が外に逃げ、それにより、バイオリアクター中に圧力が蓄積されるのを防ぐ
。好ましくは、気体流出ポートは、バイオリアクターに微生物が入り込んで汚染されるこ
とを防ぐような「一方向」バルブにつながっている。 50
(39) JP 2018-99138 A 2018.6.28

【0146】
3.培地
 微生物の培地は、典型的には、固定窒素源、固定炭素源、微量元素、場合により、pH
を維持するためのバッファー、ホスフェート(典型的には、リン酸塩として与えられる)
のような成分を含有する。他の成分は、特に、海水微細藻類の場合には、塩化ナトリウム
のような塩を含んでいてもよい。窒素源としては、有機窒素源及び無機窒素源が挙げられ
、例えば、限定されないが、分子状窒素、硝酸エステル、硝酸塩、アンモニア(純水なも
の、又は塩形態、例えば、(NH4)2SO4及びNH4OH)、タンパク質、大豆ミー
ル、コーンスティープリカー、酵母抽出物が挙げられる。微量元素の例としては、例えば
、それぞれZnCl2、H3BO3、CoCl2・6H2O、CuCl2・2H2O、M 10
nCl2・4H2O、(NH4)6Mo7O24・4H2Oのような形態の亜鉛、ホウ素
、コバルト、銅、マンガン、モリブデンが挙げられる。
【0147】
 本発明の方法で有用な微生物は、世界中の種々の場所及び環境で発見されている。他の
種からの単離、及び得られる進化多様性の結果として、最適な成長、及び脂質及び/又は
炭化水素構成要素の最適な発生のための特定の成長培地は、予測することが困難な場合が
ある。ある場合では、特定の微生物株は、ある種の阻害成分が存在するか、又は、特定の
微生物株が必要とするある種の必須栄養分が必要量存在しないために、特定の成長培地上
で成長することができない場合がある。
【0148】 20
 固体及び液体の成長培地は、一般的に、さまざまな供給源から入手可能であり、さまざ
まな微生物株に適した特定の培地を調製する方法の説明は、例えば、オンラインでは、藻
類の培養物を収集するためのAustin、1 University Station
 A6700、Austin、Texas、78712−0183のテキサス大学によっ
て運営されているサイトhttp://www.utex.org/で見つけることがで
きる(UTEX)。例えば、種々の淡水培地及び塩水培地としては、PCT公開番号第2
008/151149号に記載されているものが挙げられ、この文献は、参照により組み
込まれる。
【0149】
 特定の例では、プロテオース培地は、純培養の培地に適しており、培地1リットル(p 30
H約6.8)は、プロテオースペプトン1gを、Bristol Medium 1リッ
トルに加えることによって調製することができる。Bristol mediumは、水
溶液中に、2.94mMのNaNO3、0.17mMのCaCl2・2H2O、0.3m
MのMgSO4・7H2O、0.43mM、1.29mMのKH2PO4、1.43mM
のNaClを含む。1.5%寒天培地の場合、寒天15gを上述の溶液1リットルに加え
ればよい。この溶液に蓋をし、オートクレーブにかけ、次いで、使用するまで冷蔵温度で
保存する。別の例は、Prototheca単離培地(PIM)であり、10g/Lのフ
タル酸水素カリウム(KHP)、0.9g/Lの水酸化ナトリウム、0.1g/Lの硫酸
マグネシウム、0.2g/Lのリン酸水素カリウム、0.3g/Lの塩化アンモニウム、
10g/Lのグルコース、0.001g/Lの塩酸チアミン、20g/Lの寒天、0.2 40
5g/Lの5−フルオロシトシンを含み、pH範囲が5.0∼5.2である(Pore、
1973、App.Microbiology、26:648−649を参照)。本発明
の方法と共に用いるのに適した他の培地は、上に特定したURLを閲覧することによって
、又はSAG、CCAP又はCCALAのような、微生物の培地を保有している他の機関
に助言を求めることによって、簡単に特定することができる。SAGは、ゲッティンゲン
大学(ドイツ、ゲッティンゲン)のCulture Collection of Al
gaeを指し、CCAPは、Scottish Association for Ma
rine Science(英国、スコットランド)によって管理されている藻及び原生
動物の培養株保存機関を指し、CCALAは、Institute of Botany
(トシェボニュ、チェコ共和国)の藻研究所の培養株保存機関を指す。さらに、米国特許 50
(40) JP 2018-99138 A 2018.6.28

第5,900,370号は、Prototheca種の従属栄養性発酵に適した培地の処
方及び条件について記載している。
【0150】
 油の生成について、固定炭素源の費用は、油生成を経済的なものにするには十分低くな
ければならないため、固定炭素源の選択が重要である。従って、適切な炭素源は、例えば
、アセテート、フロリドシド、フルクトース、ガラクトース、グルクロン酸、グルコース
、グリセロール、ラクトース、マンノース、N−アセチルグルコサミン、ラムノース、シ
ョ糖、及び/又はキシロースを含み得るが、これらの化合物を含有する原材料の選択は、
本発明の実施形態の方法の重要な態様である。本発明の方法で有用な適切な原材料として
は、例えば、黒液、トウモロコシデンプン、解重合されたセルロース系材料、乳清、糖液 10
、ジャガイモ、ソルガム、ショ糖、テンサイ、サトウキビ、イネ、小麦を挙げることがで
きる。また、炭素源は、混合物として、例えば、ショ糖と解重合されたテンサイパルプの
混合物として与えられてもよい。1つ以上の炭素源は、1つ以上の外から与えられた固体
炭素源の少なくとも約50μM、少なくとも約100μM、少なくとも約500μM、少
なくとも約5mM、少なくとも約50mM、少なくとも約500mMの濃度で供給されて
もよい。発酵用原材料として高濃縮の炭素源が好ましい。例えば、ある実施形態では、育
てる工程の前に少なくとも300g/L、少なくとも400g/L、少なくとも500g
/L、又は少なくとも600g/Lのグルコース濃度又はそれ以上のグルコース濃度であ
る原材料を加えて流加回分式で育てられ、ここでは細胞が成長して脂質を蓄積する間ずっ
と、細胞に高濃縮固定炭素源が供給される。他の実施形態では、育てる前に少なくとも5 20
00g/L、少なくとも600g/L、少なくとも700g/L、少なくとも800g/
Lのショ糖濃度又はそれ以上のショ糖を加えて流加回分式で育てられ、ここでは細胞が成
長して脂質を蓄積する間ずっと、細胞に高濃縮固定炭素源が供給される。ショ糖のような
高濃縮固定炭素源の非限定的な例としては、濃いサトウキビ汁、サトウキビ汁、テンサイ
汁及び糖液が挙げられる。本発明のための特に関心のある炭素源としては、セルロース(
解重合された形態で)、グリセロール、ショ糖、ソルガムが挙げられ、これらについては
、以下にさらに詳細に記載する。
【0151】
 本発明によれば、原材料として解重合されたセルロース系バイオマスを用い、微生物を
培養してもよい。セルロース系バイオマス(例えば、トウモロコシ茎葉のような茎葉)は 30
安価であり、入手が容易であるが、このような原材料は、酵母の成長を阻害することがわ
かっており、酵母は、セルロース系材料から生成した五炭糖(例えば、ヘミセルロースか
ら生成したキシロース)を用いることができない。対照的に、少なくともいくつかの微細
藻類は、処理したセルロース系材料を用いて成長することができる。セルロース系材料は
、一般的に、約40∼60%のセルロースと;約20∼40%のヘミセルロースと;10
∼30%のリグニンとを含む。
【0152】
 セルロース系材料としては、草及び木のエネルギー作物、及び農業用作物から得られた
残渣、すなわち、主要な食品又は繊維製品の分野から除去されなかった植物の一部、主に
茎及び葉が挙げられる。例としては、農業廃棄物、例えば、サトウキビの絞りかす、モミ 40
殻、トウモロコシ繊維(茎、葉、皮及び穂軸を含む)、麦わら、稲わら、テンサイパルプ
、シトラスパルプ、柑橘類の皮;森林の廃棄物、例えば、硬材及び軟材の間伐、伐採作業
から得られる硬材及び軟材の残渣;木材廃棄物、例えば、製材工場の廃棄物(木片、おが
くず)、パルプ工場の廃棄物;都市廃棄物、例えば、都市固形廃棄物の紙片、都会の廃材
、都市の伐採した草のような、都市の緑廃棄物;木材製造の廃棄物が挙げられる。さらな
るセルロース含有材料としては、スイッチグラス、ハイブリッドポプラ材、miscan
thus、テンサイ繊維、ソルガム繊維のような専用のセルロース含有作物が挙げられる
。このような材料から生成する五炭糖としては、キシロースが挙げられる。
【0153】
 細菌が上述の材料を含む糖類を利用することができる効率を高めるために、セルロース 50
(41) JP 2018-99138 A 2018.6.28

系材料を処理することができる。本発明の実施形態は、上述の材料を、細菌(例えば、微
細藻類及び油産生酵母)の従属栄養性培養物で用いるのに適しているように酸爆発させた
後、セルロース系材料を処理するための方法を提供する。上述のとおり、リグノセルロー
ス系バイオマスは、セルロース、β1,4結合したグルコース(六炭糖)の結晶性ポリマ
ー、ヘミセルロース、主にキシロース(五炭糖)で構成され、少量のマンノース、ガラク
トース、アラビノース、リグニンで構成されている、ゆるく会合したポリマー、シナピル
アルコール及びその誘導体で構成される複雑な芳香族ポリマー、α1,4結合したポリガ
ラクツロン酸の直鎖であるペクチンのような、種々の画分で構成されている。セルロース
及びヘミセルロースがポリマー構造であるため、これらの中に含まれる糖類(例えば、単
糖類のグルコース及びキシロース)は、多くの細菌によって有効に使用する(代謝する) 10
ことができるような形態ではない。このような細菌の場合、セルロース系バイオマスをさ
らに処理し、このポリマーを構成している単糖類を作成することは、セルロース系材料を
原材料(炭素源)として有効に利用するのに非常に役立つ場合がある。
【0154】
 セルロース又はセルロース系バイオマスに、「爆発」と呼ばれるプロセスを行い、この
プロセスで、バイオマスは、高温高圧で、希硫酸(又は他の酸)で処理される。このプロ
セスは、セルロース系及びヘミセルロース系の画分をグルコースモノマー及びキシロース
モノマーにする酵素加水分解を効率よく行うことができるようにバイオマスを調節する。
得られた単糖類は、セルロース系糖と呼ばれる。その後に、セルロース系糖が微生物に利
用され、種々の代謝物(例えば、脂質)を産生する。酸爆発工程によって、ヘミセルロー 20
ス画分が、構成成分である単糖類へと部分的に加水分解する。これらの糖類を、さらなる
処理によって、バイオマスから完全に遊離させることができる。ある実施形態では、さら
なる処理は、爆発した材料を熱水で洗浄することを含む熱水処理であり、これによって、
塩のような混入物質が除去される。この工程は、セルロース系エタノール発酵では、この
ようなプロセスで用いられる糖の濃度はもっと薄いため、必要ではない。他の実施形態で
は、さらなる処理は、さらなる酸処理である。さらに他の実施形態では、さらなる処理は
、爆発した材料の酵素加水分解である。また、これらの処理を任意の組み合わせで用いて
もよい。この種の処理は、遊離する糖の種類(例えば、五炭糖対六炭糖)、このプロセス
中で糖類が遊離する段階に影響を及ぼす場合がある。その結果、五炭糖又は六炭糖のどち
らかが主成分の異なる糖の流れを作成することができる。これらの五炭糖又は六炭糖を豊 30
富に含む流れは、異なる炭素利用能を有する特定の微生物用に向けることができる。
【0155】
 本発明の方法は、エタノール発酵で通常達成されるよりも高い細胞密度になるまで発酵
することを含み得る。従属栄養セルロース系の油を生成するための培養物の密度が高いた
め、固定炭素源(例えば、セルロース系から誘導される糖の流れ)は、好ましくは、濃縮
された形態である。解重合されたセルロース系材料のグルコース濃度は、好ましくは、育
てる工程の前に、少なくとも300g/L、少なくとも400g/L、少なくとも500
g/L、又は少なくとも600g/Lであり、場合により、細胞が成長し、脂質を蓄積す
る間ずっと、上述の物質を細胞に供給するような流加回分式で育てる。従って、リグノセ
ルロース系の油を生成している間、非常に高密度の細胞を生成し、維持するために、炭素 40
原材料を、非常に濃縮された形態で従属栄養培養物に運ぶことができる。しかし、油産生
微生物の基質ではなく、油産生微生物によって代謝されないような供給物流中の任意の成
分は、バイオリアクター中に蓄積し、その成分が、毒性であるか、又は望ましい最終産物
を生成するのを阻害する場合には、問題となり得るであろう。リグニン及びリグニンから
誘導される副産物、フルフラール類及びヒドロキシメチルフルフラール類のような炭水化
物から誘導される副産物、セルロース系材料の生成から誘導される塩(爆発プロセス及び
その次の中和プロセスの両方で)、さらに、代謝されていないペントース/ヘキソース糖
ですら、エタノール発酵では問題となり得る場合があり、これらの影響は、初期原材料中
のこれらの物質の濃度が高いプロセスでは、顕著に大きくなる。本明細書に記載されるリ
グノセルロース系の油を大量生成するのに用いることが可能な六炭糖について、300g 50
(42) JP 2018-99138 A 2018.6.28

/Lの範囲(又はそれ以上)の糖濃度を達成するために、これらの毒性のある物質の濃度
は、典型的には、セルロース系バイオマスのエタノール発酵中に存在する濃度の20倍よ
り高くなり得る。
【0156】
 セルロース系材料の爆発プロセスによる処理は、かなりの量の硫酸、熱、圧力を利用す
るため、炭水化物の副産物、つまり、フルフラール類及びヒドロキシメチルフルフラール
類が遊離する。フルフラール類及びヒドロキシメチルフルフラール類は、ヘミセルロース
の加水分解中に、キシロースを水和してフルフラール及び水にすることによって生成する
。本発明のある実施形態では、これらの副産物(例えば、フルフラール類及びヒドロキシ
メチルフルフラール類)は、バイオリアクターに入れる前に、糖化されたリグノセルロー 10
ス系材料から除去される。本発明の特定の実施形態では、炭水化物の副産物を除去するプ
ロセスは、爆発したセルロース系材料の熱水処理である。それに加え、本発明は、リグノ
セルロース系の油を生成するのに、フルフラール類又はヒドロキシメチルフルフラール類
のような化合物に耐え得る株を用いる方法を提供する。別の実施形態では、本発明は、発
酵培地中のフルフラール類に耐え得るだけでなく、リグノセルロース系の油を生成させて
いる間に、実際には、これらの副産物を代謝することができるような方法及び微生物も提
供する。
【0157】
 また、この爆発プロセスは、顕著な量の塩も生じる。例えば、爆発の典型的な条件によ
って、爆発したセルロース系バイオマスを、水:固形分(乾燥重量)を10:1の比率で 20
再び懸濁させた場合、5mS/cmを超える導電率が生じ得る。本発明の特定の実施形態
では、爆発したバイオマスを希釈したものに対し、酵素による糖化を行い、得られた上澄
みを、バイオリアクター中で使用するために最大25倍まで濃縮する。濃縮した糖の流れ
中の塩濃度(導電率で測定した場合)は、許容できないほど高い場合がある(最大1.5
M Na+に相当)。同様に、その後の酵素による糖化プロセスのために、爆発した物質
を中和すると、さらなる塩が生成する。本発明の実施形態は、上述のとおり得られる濃縮
したセルロース系糖の流れを、リグノセルロース系の油を生成するための従属栄養プロセ
スで使用することができるように、これらの塩を除去する方法を提供する。ある実施形態
では、これらの塩を除去する方法は、限定されないが、DOWEX Marathon 
MR3のような樹脂を用いた脱イオン化である。特定の実施形態では、樹脂を用いた脱イ 30
オン化工程は、糖の濃縮前に行うか、又は、糖化の前のバイオマスのpH調節及び熱水処
理の前に行うか、又はこれらの任意の組み合わせであってもよく、他の実施形態では、こ
の工程は、これらの1つ以上のプロセスの後に行う。他の実施形態では、爆発プロセス自
体を、塩が許容されない高濃度で生成するのを避けるように変更する。例えば、セルロー
ス系バイオマスを硫酸(又は他の酸)で爆発させるのに代わる代替法は、セルロース系バ
イオマスが酵素加水分解(糖化)を受けやすくなるような機械的なパルプ化である。さら
に他の実施形態では、高濃度の塩に耐性の天然微生物株、又は高濃度の塩に耐性を有する
ように遺伝子操作された株を用いる。
【0158】
 油産生細菌を用いて従属栄養性のリグノセルロース系油の生成で使用するための、爆発 40
したセルロース系バイオマスを調製するプロセスに好ましい実施形態は以下の通りである
。第1の工程は、爆発したセルロース系バイオマスを再懸濁させたもののpHを、5.0
∼5.3の範囲に調節した後、セルロース系バイオマスを3回洗浄することを含む。この
洗浄工程は、脱塩性及びイオン交換性の樹脂、逆浸透膜、熱水処理(上述のようなもの)
の使用、又は、脱イオン水に再懸濁させ、遠心分離するのを単に繰り返す、といった種々
の手段によって達成することができる。この洗浄工程によって、セルロース系の流れの導
電率が100∼300μS/cmになり、かなりの量のフルフラール類及びヒドロキシメ
チルフルフラール類が除去される。この洗浄工程からデカンテーションを行い、ヘミセル
ロース画分から遊離した五炭糖を濃縮するために残しておいてもよい。第2の工程は、洗
浄したセルロース系バイオマスを酵素によって糖化することを含む。好ましい実施形態で 50
(43) JP 2018-99138 A 2018.6.28

は、Accellerase(Genencor)を用いる。第3の工程は、糖化された
バイオマスを遠心分離するか、又はデカンテーションし、次いですすぐことによる、糖の
回収を含む。得られたバイオマス(固形分)は、エネルギー密度が高く、リグニンを豊富
に含む成分であり、これを燃料として使用してもよく、廃棄するために送ってもよい。遠
心分離/デカンテーション及びすすぎを行うプロセス中で回収された糖の流れを集める。
第4の工程は、透過物を回収しつつ、混入している固形物を除去する精密濾過を含む。第
5の工程は、濃縮工程を含み、この工程は、減圧エバポレーターを用いることによって達
成されてもよい。この工程は、場合により、P’2000(Sigma/Fluka)の
ような消泡剤の添加を含んでいてもよく、この作業は、得られる糖原料のタンパク質含有
量によっては、時に必要である。 10
【0159】
 本発明の方法の別の実施形態では、炭素源は、バイオディーゼルのトランスエステル化
から得られる、酸性化されたグリセロール及び酸性化されていないグリセロールを含むグ
リセロールである。一実施形態では、炭素源は、グリセロールと、少なくとも1つの他の
炭素源とを含んでいる。ある場合では、グリセロール及び少なくとも1つの他の固定炭素
源の全てが、発酵開始時に微生物に与えられる。ある場合では、グリセロール及び少なく
とも1つの他の固定炭素源が、微生物に対して所定の比率で同時に与えられる。ある場合
では、グリセロール及び少なくとも1つの他の固定炭素源が、発酵している間、所定の速
度で細菌に供給される。
【0160】 20
 ある種の微細藻類は、グルコースが存在する状態よりも、グリセロールが存在する状態
ですばやく細胞分裂を受ける(PCT公開番号第2008/151149号)。これらの
状況では、細胞に、細胞の密度をすばやく上げるためにグリセロールを供給し、次いで、
脂質の蓄積を高めるためにグルコースを供給するような二段階成長プロセスによって、脂
質が産生する効率を高めることができる。トランスエステル化プロセスのグリセロール副
産物を使用することによって、この物質が生成プロセスに戻されると、経済的に顕著な利
点を与えることができる。例えば、グリセロール及びグルコースの混合物のような他の供
給方法も同様に与えられる。また、このような混合物を供給することによって、同じ経済
的な利点が得られる。それに加え、本発明は、ショ糖のような代わりとなる糖をグリセロ
ールとの種々の組み合わせで微細藻類に供給する方法を提供する。 30
【0161】
 本発明の方法の別の実施形態では、炭素源は転化糖である。転化糖はショ糖と比較して
結晶化しにくく、従って、保存上の利点、及び微細藻類を含む微生物を従属栄養で育てる
場合に濃縮炭素源が必要となる流加回分発酵における利点を与え得る。一実施形態では、
炭素源は、好ましくは濃縮された形態の、場合により流加回分式で育てるものである育て
る工程の前に好ましくは少なくとも800g/リットル、少なくとも900g/リットル
、少なくとも1000g/リットル又は少なくとも1100g/リットルである転化糖で
ある。転化糖は、好ましくは濃縮された形態であり、細胞が成長して脂質を蓄積する間ず
っと細胞に供給される。
【0162】 40
 本発明の方法の別の実施形態では、炭素源は、ショ糖であり、ショ糖を含む複雑な原材
料、例えば、サトウキビの処理から得られる濃いサトウキビ汁を含む。従属栄養油を生成
するための培養物の密度は高いため、固定炭素源(例えば、ショ糖、グルコース等)は、
好ましくは濃縮された形態の、育てる工程の前に好ましくは少なくとも500g/リット
ル、少なくとも600g/リットル、少なくとも700g/リットル又は少なくとも80
0g/リットルである固定炭素源であり、育てる工程は、場合により、細胞が成長して脂
質を蓄積する間ずっと材料が細胞に供給される流加回分式で育てるものである。ある場合
では、炭素源は、好ましくは濃縮された形態の、場合により流加回分式で育てるものであ
る育てる工程の前に好ましくは少なくとも固形分60%又は約770g/リットル糖、少
なくとも固形分70%又は約925g/リットル糖、又は少なくとも固形分80%又は約 50
(44) JP 2018-99138 A 2018.6.28

1125g/リットル糖である、濃いサトウキビ汁の形態のショ糖である。濃縮された濃
いサトウキビ汁は、細胞が成長して脂質を蓄積する間ずっと細胞に供給される。
【0163】
 一実施形態では、培地は少なくとも1つのショ糖利用酵素をさらに含む。ある場合では
、ショ糖利用酵素はショ糖インベルターゼである。ショ糖インベルターゼ酵素は、微生物
集団により発現される外来ショ糖インベルターゼ遺伝子によりコードされる分泌可能な(
secrectable)ショ糖インベルターゼ酵素であってもよい。分泌可能なショ糖
インベルターゼは微生物によって培地に分泌され、それにより培地中のショ糖が、微生物
によって用いられるグルコース及びフルクトースに変換され得る。以下に記載するとおり
、ショ糖インベルターゼは組み換えであってもよく、それにより微生物に、成長又は油生 10
成のため固定炭素源として純粋な又は複合的なショ糖原材料を利用する能力を付与するこ
とができる。いくつかの状況では、以下の第IV章にさらに詳細に記載されるとおり、微
細藻類は、ショ糖トランスポーター、ショ糖インベルターゼ、ヘキソキナーゼ、グルコキ
ナーゼ、又はフルクトキナーゼのようなショ糖利用酵素を発現するように遺伝子操作され
ている。
【0164】
 ショ糖を含有する複雑な原材料としては、サトウキビの処理から得られる廃棄糖液が挙
げられ、サトウキビ処理の価値の低い上述の廃棄生成物によって、炭化水素及び他の油の
生成において、顕著に費用を節約することができる。本発明の方法で有用な、ショ糖を含
有する別の複雑な原材料は、ソルガムであり、ソルガムシロップ及び純粋なソルガムを含 20
む。ソルガムシロップは、甘いソルガムの茎の汁から生成する。ソルガムシロップの糖プ
ロフィールは、主に、グルコース(デキストロース)、フルクトース、ショ糖からなる。
【0165】
4.油の生成
 本発明の方法に従って油を生成する場合、例えば、光が培養物にあたらないような、き
わめて大きな(40,000リットル以上の)発酵槽の場合のように、細胞を暗い場所で
培養することが好ましい。従属栄養種は、固定炭素源を含有する培地内で、光が存在しな
い状態で、油を生成するように成長し、増殖する。このような成長は、従属栄養性の成長
として知られている。
【0166】 30
 一例として、脂質を生成する微細藻類細胞の播種物質が培地に入れられ、細胞が増殖し
始めるまでに遅延期間(遅延期)が存在する。遅延期間の後、増殖速度は徐々に上がって
いき、対数期すなわち指数増殖期に入る。次いで、指数増殖期の後、窒素のような栄養物
が少なくなったり、毒性基質が増えたり、菌体数感知機構のために増殖が遅くなる。この
ように増殖が遅くなった後、増殖が止まり、細胞は、細胞に与えられている特定の環境に
依存して、静止期又は安定成長状態に入る。脂質を豊富に含むバイオマスを得るために、
培養物は、典型的には、指数増殖期が終わった後に良好に収穫され、指数増殖期は、窒素
又は別の鍵となる栄養物(炭素以外のもの)を枯渇させることによって初期に終わらせて
もよく、細胞は、過剰に存在する炭素源を脂質、特にトリグリセリド(triglcye
ride)に変換する。培養条件のパラメーターは、油の合計生成量、生成する脂質種の 40
組み合わせ、及び/又は特定の油の生成を最適にするように操作することができる
【0167】
 本明細書に開示されている細胞による脂質の生成は、対数期の間に行ってもよく、細胞
分裂しない状態で、脂質を生成し続けるように、栄養物を供給するか、又は栄養物がまだ
利用可能であるような静止期を含め、log期の後に行ってもよい。
【0168】
 好ましくは、本明細書に記載されている条件及び/又は当該技術分野で公知の条件を用
いて成長させた微生物は、乾燥細胞重量で少なくとも約20∼30%、30∼40%、4
0∼50%、50∼60%、60∼70%、又は80∼90%のトリグリセリドを含む。
プロセスの条件は、特定の用途に適した脂質の収量を高めるように、及び/又は、生産費 50
(45) JP 2018-99138 A 2018.6.28

用を減らすように調節することができる。例えば、特定の実施形態では、微細藻類を、グ
ルコースのような固定炭素エネルギーを過剰量与えつつ、制限濃度の1つ以上の栄養物、
例えば、窒素、リン又は硫黄が存在する状態で培養する。窒素の制限により、窒素が過剰
に与えられる培地での微生物脂質収率と比べて、微生物脂質収率(乾燥細胞重量1gあた
りに生成される脂質量の尺度)が増加する傾向がある。特定の実施形態では、脂質収量の
増加は、少なくとも約10%、約50%、約100%、約200%、又は約500%であ
る。全培養期間の一部又は全期間にわたって、制限量の栄養物が存在する状態で細菌を培
養してもよい。特定の実施形態では、栄養物の濃度は、全培養期間の間に、制限濃度及び
非制限濃度を少なくとも2回繰り返す。過剰量の炭素を与えつつ、窒素量を制限するか、
又はまったく窒素を含まない状態で、時間を延長させて培養を続けることによって、細胞 10
の脂質含有量を増やすことができる。
【0169】
 別の実施形態では、脂質経路に関連する酵素(例えば、補酵素または脂肪酸合成酵素の
補欠分子族)のための1つ以上の補因子が存在する状態で、脂質を産生する細菌(例えば
、微細藻類)を培養することによって、脂質収量を増やす。一般的に、補因子の濃度は、
補因子が存在しない状態での微生物脂質収量よりも、微生物脂質(例えば、脂肪酸)の量
を増やすのに十分な濃度である。特定の実施形態では、補因子をコードする外来遺伝子を
含む細菌(例えば、微細藻類)を培養物に含むことによって、培養物に補因子を与える。
又は、補因子の合成に関与するタンパク質をコードする外来遺伝子を含有する細菌(例え
ば、微細藻類)を含むことによって、培養物に補因子を与えてもよい。特定の実施形態で 20
は、適切な 補因子は、ビオチンまたはパントテン酸化合物のような、脂質経路に関連す
る酵素に必要な任意のビタミンを含む。本発明で使用するのに適した補因子をコードする
遺伝子、又はこのような補因子の合成に関与する遺伝子は、十分に知られており、上述の
ような構築物及び技術を用い、細菌(例えば、微細藻類)に導入することができる。
【0170】
 本明細書に記載されているバイオリアクター、培養条件、従属栄養性成長及び増殖方法
の特定の例を任意の適切な様式で組み合わせ、微生物の成長効率、及び脂質及び/又はタ
ンパク質の生成効率を高めることができる。
【0171】
 乾燥重量で、高い割合の油/脂質が蓄積した微細藻類のバイオマスは、異なる培養方法 30
を用いて作成されており、この方法は、当該技術分野で知られている(PCT公開番号第
2008/151149号)。本明細書に記載されている培養方法で作成され、本発明で
有用な微細藻類のバイオマスは、乾燥重量で、少なくとも10%の微細藻類の油を含む。
ある実施形態では、微細藻類のバイオマスは、乾燥重量で、微細藻類の油を少なくとも2
5%、50%、60%、70%または少なくとも80%含む。ある実施形態では、微細藻
類のバイオマスは、乾燥重量で、微細藻類の油を10∼90%、25∼75%、40∼7
5%、75∼85%又は50∼70%含む。
【0172】
 本明細書に記載されているバイオマスの微細藻類の油、又は本発明の方法及び組成物で
使用するために、バイオマスから抽出された微細藻類の油は、1つ以上の別個の脂肪酸エ 40
ステル側鎖を有するグリセロ脂質を含む。グリセロ脂質は、1個、2個又は3個の脂肪酸
分子でエステル化されたグリセロール分子から成り、脂肪酸分子は、長さはさまざまであ
ってもよく、種々の飽和度を有していてもよい。脂肪酸分子(及び微細藻類の油)の長さ
及び飽和度の特徴によって、以下の第IV章にさらに詳細に記載されるとおり、培養条件
又は脂質経路の操作によって、本発明の微細藻類の油中の脂肪酸分子の性質又は比率を改
変するように操作することができる。特性及び比率の詳細な改変には、鎖長プロフィール
、飽和プロフィールの変化、及び脂肪酸のヒドロキシル化のような、微生物トリグリセリ
ドの脂肪酸分布の変化が含まれる。そのように生成された油は天然油を含み得る。代わり
に、微生物油の特定のブレンドは、2種類以上の微細藻類に由来するバイオマス又は藻の
油を混合することによって、1種類の藻の中で調製されてもよく、又は、本発明の藻の油 50
(46) JP 2018-99138 A 2018.6.28

と、大豆、菜種、キャノーラ、パーム、パーム核、ココナツ、トウモロコシ、野菜くず、
ナンキンハゼ、オリーブ、ヒマワリ、綿実、鶏脂、牛脂、豚脂、微細藻類、大型藻類、ク
フェア、亜麻、ピーナッツ、上質のホワイトグリース、ラード、カメリナ・サティバ、カ
ラシの種子、カシューナッツ、オーツ麦、ハウチワマメ、ケナフ、キンセンカ、麻、コー
ヒー、亜麻仁(亜麻)、ヘーゼルナッツ、ユーホルビア、カボチャの種、コリアンダー、
ツバキ、ゴマ、ベニバナ、イネ、アブラギリ、ココア、コプラ、ケシ(pium pop
py)、トウゴマの実、ピーカン、ホホバ、ジャトロファ、マカダミア、ブラジルナッツ
、アボカド、石油、又は上述のいずれかの油の留分のような他の供給源に由来する油とを
ブレンドすることによって調製されてもよい。
【0173】 10
 油の組成、すなわち、グリセロ脂質の脂肪酸構成要素の性質及び比率も、少なくとも2
種類の別個の微生物に由来するバイオマス又は油を混ぜあわせることによって操作するこ
とができる。ある実施形態では、少なくとも2種類の別個の微細藻類は、異なるグリセロ
脂質プロフィールを有している。この別個の種類の微細藻類を、好ましくは、それぞれの
油を生成するような従属栄養条件下で、本明細書に記載されるとおり一緒に培養してもよ
く、又は別個に培養してもよい。異なる種類の微細藻類は、細胞のグリセロ脂質の構成成
分である別個の脂肪酸を異なる割合で含有していてもよい。
【0174】
 一般的に、Prototheca株は、鎖長がC8∼C14の脂肪酸をほとんど含まな
いか、まったく含まない。例えば、Prototheca moriformis(UT 20
EX 1435)、Prototheca krugani(UTEX 329)、Pr
ototheca stagnora(UTEX 1442)、Prototheca 
zopfii(UTEX 1438)は、C8脂肪酸をまったく含まず(又は検出可能な
量含まず)、C10脂肪酸を0∼0.01%、C12脂肪酸を0.03∼2.1%、C1
4脂肪酸を1.0∼1.7%含んでいる。
【0175】
 ある場合では、鎖長がC8又はC8∼10の脂肪酸アシル−ACP基質に対する活性を
有する脂肪酸アシル−ACPチオエステラーゼをコードするトランス遺伝子を含む微生物
株は、鎖長C8の脂肪酸を少なくとも1.5%、少なくとも3.0%,少なくとも10%
、少なくとも12%以上有している。別の状況では、鎖長がC10の脂肪酸アシル−AC 30
P基質に対する活性を有する脂肪酸アシル−ACPチオエステラーゼをコードするトラン
ス遺伝子を含む微生物株は、鎖長C10の脂肪酸を少なくとも5.0%、少なくとも10
.0%、少なくとも24%、少なくとも29%以上有している。別の状況では、鎖長がC
12の脂肪酸アシル−ACP基質に対する活性を有する脂肪酸アシル−ACPチオエステ
ラーゼをコードするトランス遺伝子を含む微生物株は、鎖長C12の脂肪酸を少なくとも
5%、少なくとも15%、少なくとも34%、少なくとも50%以上有している。他の場
合では、鎖長がC14の脂肪酸アシル−ACP基質に対する活性を有する脂肪酸アシル−
ACPチオエステラーゼをコードするトランス遺伝子を含む微生物株は、鎖長C14の脂
肪酸を少なくとも2.0%、少なくとも7%、少なくとも10%、少なくとも15%、少
なくとも30%、少なくとも43%以上有している。他の場合では、鎖長がC16の脂肪 40
酸アシル−ACP基質に対する活性を有する脂肪酸アシル−ACPチオエステラーゼをコ
ードするトランス遺伝子を含む微生物株は、鎖長C16の脂肪酸を少なくとも30%、少
なくとも40%、少なくとも66%以上有している。さらに他の場合では、鎖長がC18
の、特にC18:0についての脂肪酸アシル−ACP基質に対する活性を有する脂肪酸ア
シル−ACPチオエステラーゼをコードするトランス遺伝子を含む微生物株は、少なくと
も5%、少なくとも10%、少なくとも26%、少なくとも40%又はそれ以上のC18
:0脂肪酸濃度を有している。これらの例のいずれにおいても、細菌はProtothe
caのような微細藻類であってよい。
【0176】
 非限定的な例では、鎖長がC8の脂肪酸アシル−ACP基質に対する活性を有する脂肪 50
(47) JP 2018-99138 A 2018.6.28

酸アシル−ACPチオエステラーゼをコードするトランス遺伝子を含む微生物株は、鎖長
C8の脂肪酸を1∼20%、好ましくは1.8∼13%有している。他の非限定的な例で
は、鎖長がC10の脂肪酸アシル−ACP基質に対する活性を有する脂肪酸アシル−AC
Pチオエステラーゼをコードするトランス遺伝子を含む微生物株は、鎖長C10の脂肪酸
を1∼40%、好ましくは1.91∼30%有している。他の非限定的な例では、鎖長が
C12の脂肪酸アシル−ACP基質に対する活性を有する脂肪酸アシル−ACPチオエス
テラーゼをコードするトランス遺伝子を含む微生物株は、鎖長C12の脂肪酸を10∼6
0%、好ましくは13.55∼55%有している。他の非限定的な例では、鎖長がC14
の脂肪酸アシル−ACP基質に対する活性を有する脂肪酸アシル−ACPチオエステラー
ゼをコードするトランス遺伝子を含む微生物株は、鎖長C14の脂肪酸を1∼50%、好 10
ましくは2.59∼43.27%有している。他の非限定的な例では、さまざまな炭素鎖
長さの脂肪酸アシル−ACP基質に対する広い特異性を有する脂肪酸アシル−ACPチオ
エステラーゼをコードするトランス遺伝子を含む微生物株は、鎖長C16の脂肪酸を最大
70%有している。他の場合では、鎖長がC16の脂肪酸アシル−ACP基質に対する活
性を有する脂肪酸アシル−ACPチオエステラーゼをコードするトランス遺伝子を含む微
生物株は、鎖長C16の脂肪酸を最大75%、好ましくは最大67.42%有している。
ある場合では、鎖長C8∼C14の脂肪酸アシル−ACP基質に対する活性を有する脂肪
酸アシル−ACPチオエステラーゼをコードするトランス遺伝子を含む微生物株は、(C
8∼C14)脂肪酸を1∼790%、又は約2∼80%有している。ある場合では、鎖長
C12∼C14の脂肪酸アシル−ACP基質に対する活性を有する脂肪酸アシル−ACP 20
チオエステラーゼをコードするトランス遺伝子を含む微生物株は、C12∼C14脂肪酸
を少なくとも50%又は60%有している。ある場合では、トランスジェニック微生物株
を、外来遺伝子を保持する一定で高い選択圧下に保つことが、特定の鎖長の望ましい脂肪
酸が増えるため、有益である。高レベルの外来遺伝子の保持はまた、本明細書に開示され
る相同組み換えベクター及び方法を用いて細胞の核染色体に外来遺伝子を挿入することに
よっても実現することができる。核染色体に組み込まれた外来遺伝子を含む組み換え細胞
は、本発明の目的である。これらの例のいずれにおいても、細菌はPrototheca
のような微細藻類であってよい。
【0177】
 場合により、微生物油はまた、微細藻類が産生した、又は培地から微細藻類の油に組み 30
込まれた他の構成要素を含んでいてもよい。これらの他の構成要素は、微細藻類を培養す
るために用いられる培養条件、微細藻類の種、バイオマスから微細藻類の油を回収するの
に用いられる抽出方法、及び微細藻類の油組成に影響を与え得る他の要因に基づいて、さ
まざまな量で存在し得る。このような構成要素の非限定的な例としては、0.025∼0
.3mcg/油g、好ましくは0.05∼0.244mcg/油gの量で存在するカロチ
ノイド;0.025∼0.3mcg/油g、好ましくは0.045∼0.268mcg/
油gの量で存在するクロロフィル;0.03mcg/油g未満、好ましくは0.025μ
g/油g未満の総クロロフィル;35∼175mcg/油g、好ましくは38.3∼16
4mcg/油gの量で存在するγ−トコフェロール;50∼300mcg/油g、好まし
くは60.8∼261.7mcg/油gの量で存在する総トコフェロール;0.5%未満 40
、好ましくは0.25%未満、ブラシカステロール、カンペステロール、スチグマステロ
ール、又はβ−シトステロール;300mcg/油g未満の総トコトリエノール;及び2
25∼350mcg/油g、好ましくは249.6∼325.3mcg/油gの量で存在
する総トコトリエノールが挙げられる。
【0178】
 他の構成要素としては、限定なしに、リン脂質、トコフェロール、トコトリエノール、
カロチノイド(例えば、α−カロチン、β−カロチン、リコピンなど)、キサントフィル
(例えば、ルテイン、ゼアキサンチン、α−クリプトキサンチン及びβ−クリプトキサン
チン(crytoxanthin))、及びさまざまな有機又は無機化合物を挙げること
ができる。ある場合では、Prototheca種から抽出した油は、油1gあたり0. 50
(48) JP 2018-99138 A 2018.6.28

001∼0.05μg、好ましくは0.003∼0.039μgのルテイン、油1gあた
り0.005μg未満、好ましくは0.003μg未満のリコピン;及び油1gあたり0
.005μg未満、好ましくは0.003μg未満のβ−カロチンを含む。
【0179】
III.遺伝子操作方法及び材料
 本発明は、本発明の方法で有用なPrototheca細胞及び組み換え宿主細胞、限
定されないが、組み換えPrototheca moriformis、Prototh
eca zopfii、Prototheca krugani、Prototheca
 stagnora宿主細胞を遺伝的に改変する方法及び材料を提供する。読者が読みや
すいように、これらの方法及び材料の記載をいくつかの節に分けている。第1節では、形 10
質転換方法について記載している。第2節では、相同組み換えを用いた遺伝子操作方法に
ついて記載している。第3節では、発現ベクター及び成分について記載している。
【0180】
1.操作方法−形質転換
 細胞を、例えば、微粒子銃、エレクトロポレーション(Maruyama et al
.(2004)、Biotechnology Techniques 8:821−8
26)、ガラスビーズによる形質転換、及び炭化ケイ素ウィスカーによる形質転換のよう
な任意の適切な技術によって形質転換することができる。使用可能な別の方法は、プロト
プラストを作成し、CaCl2及びポリエチレングリコール(PEG)を用い、組み換え
DNAを微細藻類細胞に導入することを含む(Kim et al.(2002)、Ma 20
r.Biotechnol.4:63−73、この論文は、Chorella elli
psoideaを形質転換するために、この方法を用いることを報告している)。微細藻
類の共形質転換を利用し、2種類の別個のベクター分子を細胞に同時に導入することがで
きる(例えば、Protist 2004 Dec;155(4):381−93)。
【0181】
 微粒子銃による方法(例えば、Sanford、Trends In Biotech
.(1988)6:299 302、米国特許第4,945,050号;エレクトロポレ
ーション(Fromm et al.、Proc. Nat’l.Acad.Sci.(
USA)(1985)82:5824 5828);レーザービーム、マイクロインジェ
クション、又はDNAを微細藻類に導入することが可能な任意の他の方法の使用を、Pr 30
ototheca細胞を形質転換するために用いることができる。
【0182】
2.操作方法−相同組み換え
 相同組み換えは、相補的DNA配列を整列させ、相同領域の置き換えを可能にすること
である。標的となるゲノム配列(「テンプレート」)と同種の配列を含むトランスジェニ
ックDNA(「ドナー」)を有機体に導入し、次いで、対応するゲノム同種配列の部位に
あるゲノムで組み換えが起こる。
【0183】
 宿主又は有機体で相同組み換えを行う能力は、分子の遺伝子レベルで行うことができ、
用途に応じた油を産生することができる油産生細菌の生成に有用であるといった多くの実 40
用的意義がある。相同組み換えは、それ自体の本来の性質により、正確な遺伝子標的事象
であり、従って、同じ標的配列を用いて作られたほとんどのトランスジェニック系は、表
現型の観点では本質的に同一であり、それほど多くの形質転換事象をスクリーニングする
必要はない。また、相同組み換えは、遺伝子が宿主の染色体に挿入される事象を標的とし
ており、これにより、遺伝子の選択が存在しない状態であっても、優れた遺伝子安定性が
得られる可能性がある。染色体上の遺伝子座が異なることは、異種プロモーター/UTR
に由来するものであっても、遺伝子発現に影響を与えると考えられるため、相同組み換え
は、よく知られていないゲノム環境にある遺伝子座を検索し、これらの環境が遺伝子発現
に与える影響を評価する方法になり得る。
【0184】 50
(49) JP 2018-99138 A 2018.6.28

 相同組み換えを用いる特に有用な遺伝子操作アプローチは、プロモーター/UTRのよ
うな選択特異的な宿主制御エレメントが、非常に特異的な様式で異種遺伝子を発現させる
ことである。例えば、選択マーカーをコードする異種遺伝子でデサチュラーゼ遺伝子/遺
伝子ファミリーを切断又はノックアウトすると、宿主細胞で生成される飽和脂肪酸の全体
的な割合が増加することが予想され得る。実施例6は、Prototheca mori
formisにおいて生じさせたそのようなデサチュラーゼ遺伝子の切断又はノックアウ
トの相同組み換え標的構築物及び実施例について記載している。内因性遺伝子の発現を低
下させる別のアプローチは、限定されないがRNAiアプローチ又はアンチセンスアプロ
ーチ、並びにdsRNAアプローチを含め、遺伝子発現のRNA誘導性の下方調節又はサ
イレンシングを用いることである。アンチセンスアプローチ、RNAiアプローチ、ds 10
RNAアプローチは当該技術分野で周知されており、発現構築物の導入を含み、その発現
構築物がmRNAとして発現すると、ヘアピンRNA又はアンチセンスの向きに転写され
得る標的遺伝子の一部を含む発現構築物の形成がもたらされ得る。3つアプローチはいず
れも、標的遺伝子の発現の低下が生じ得る。実施例6はまた、内在するProtothe
ca moriformisデルタ12デサチュラーゼ遺伝子(FADc)のRNAi及
びアンチセンスアプローチによる下方調節の発現構築物及び実施例について記載している

【0185】
 相同組み換えが、正確な遺伝子標的事象であるため、十分なフランキング領域が特定さ
れていれば、目的の遺伝子又は領域の中にある任意のヌクレオチドを正確に改変するため 20
に用いることができる。従って、相同組み換えは、RNA及び/又はタンパク質の遺伝子
発現に影響を及ぼす制御配列を改変する手段として用いることもできる。また、相同組み
換えは、基質特異性、親和性及びKmのような酵素活性を改変する試みにおいて、タンパ
ク質コード領域を改変するために用いることもでき、これにより、宿主細胞の代謝に望ま
しい変化を起こすことができる。相同組み換えは、遺伝子標的化、遺伝子変換、遺伝子欠
失、遺伝子重複、遺伝子反転を生じるようにホストゲノムを操作し、プロモーター、エン
ハンサー、3’UTRのような遺伝子発現制御エレメントを交換するための強力な手段を
与える。
【0186】
 相同組み換えは、内在する宿主細胞ゲノム内にある目的の遺伝子又は領域を「標的とす 30
る」ために、内在する配列の一部を含む標的構築物を用いることによって行うことができ
る。このような標的配列は、目的の遺伝子又は領域の5’末端に位置していてもよく、目
的の遺伝子/領域の3’末端に位置していてもよく、目的の遺伝子/領域に隣接していて
もよい。このような標的構築物を、さらなるベクター骨格を有する超らせん構造のプラス
ミドDNAとして、ベクター骨格を有さないPCR産物として、又は線状分子として宿主
細胞内で形質転換してもよい。ある場合では、まず、制限酵素を用いて、トランスジェニ
ックDNA(ドナーDNA)内にある同種配列にさらすことが有益な場合がある。この工
程によって、組み換え効率が増し、望ましくない事象の発生を減らすことができる。組み
換え効率を高める他の方法としては、処理されるゲノム配列に対して同種の線状末端を含
有する形質転換されたトランスジェニックDNAを作成するためにPCRを用いることが 40
挙げられる。
【0187】
 非限定的な例示の目的のために、相同組み換えに有用なドナーDNA配列の領域は、P
rototheca moriformisにおけるDNAのKE858領域を含む。K
E858は1.3kbのゲノムフラグメントであり、タンパク質のトランスファーRNA
(tRNA)ファミリーと相同性を共有するタンパク質のコード領域の一部を包含する。
サザンブロットから、KE858配列がPrototheca moriformis(
UTEX 1435)ゲノムに単一配列で存在することが示されている。この領域及び相
同組み換えの標的化にこの領域を使用する実施例が、PCT出願番号第PCT/US20
09/066142号に記載されている。有用なドナーDNAの別の領域は、ここで「6 50
(50) JP 2018-99138 A 2018.6.28

S」と呼ばれるゲノム配列である(配列番号82、配列番号84のドナー配列)。6S配
列は6S rRNA配列ではないことに留意されたい。Prototheca mori
fomisの相同組み換えにおけるこの配列の使用については、以下の実施例に記載して
いる。
【0188】
3.ベクター及びベクター成分
 本発明に従う微生物を形質転換するためのベクターは、本明細書の開示を考慮して、当
業者には有名な既知の技術によって調製することができる。ベクターは、典型的には、1
つ以上の遺伝子を含有しており、それぞれの遺伝子は、望ましい生成物(遺伝子産物)を
発現するようにコードしており、この遺伝子発現を制御し、組み換え細胞内の特定の位置 10
に向かうように遺伝子産物を標的化するような1つ以上の制御配列に動作可能に連結して
いる。読者の助けとなるように、この章をいくつかの節に分けている。A節は、制御配列
、典型的には、ベクター上に含まれている制御配列、及び本発明によって提供される新規
制御配列について記載している。B節は、遺伝子、典型的には、ベクターに含まれる遺伝
子、及び新規コドン最適化方法、及び本発明によって提供される方法によって調製される
遺伝子について記載している。
【0189】
A.制御配列
 制御配列は、コード配列の発現を制御するか、又は遺伝子産物を、細胞内又は細胞外の
特定の位置に向かわせる核酸である。発現を制御する制御配列としては、例えば、コード 20
配列の転写を制御するプロモーター、コード配列の転写を止めるターミネーターが挙げら
れる。別の制御配列は、コード配列の末端に位置する3’非翻訳配列であり、ポリアデニ
ル化シグナルをコードする。遺伝子産物を特定の位置に向かわせる制御配列としては、シ
グナルペプチドをコードする配列が挙げられ、この配列は、細胞内又は細胞外の特定の位
置に、この配列が結合したタンパク質を向かわせる。
【0190】
 従って、微細藻類において外来遺伝子を発現するような例示的なベクターの設計は、望
ましい遺伝子産物(例えば、選択可能なマーカー、脂質経路改変酵素、又はショ糖利用酵
素)のためのコード配列を、微細藻類内で活性なプロモーターと動作可能に連結した状態
で含む。又は、ベクターが、目的のコード配列と動作可能に連結した状態でプロモーター 30
を含まない場合、コード配列を、ベクターの組み込み位置で内在するプロモーターに動作
可能に連結するように、細胞内で形質転換してもよい。プロモーターを用いずに形質転換
する方法は、微細藻類でうまく働くことがわかっている(例えば、Plant Jour
nal 14:4、(1998)、pp.441−447)。
【0191】
 多くのプロモーターは、微細藻類内で活性であり、形質転換される藻に内在するプロモ
ーター、形質転換される藻に内在しないプロモーター(すなわち、他の藻に由来するプロ
モーター、高等植物に由来するプロモーター、特定の植物ウイルス又は藻ウイルスに由来
するプロモーター)を含む。微細藻類内で活性な、具体的な外来のプロモーター及び/又
は内在するプロモーター(微細藻類中で機能する抗生物質耐性のある遺伝子)は、PCT 40
公開番号第2008/151149号及びこの明細書に引用されている参考文献に記載さ
れている)。
【0192】
 外来遺伝子を発現させるために用いられるプロモーターは、その外来遺伝子に天然で連
結しているプロモーターであってもよく、又は、異種プロモーターであってもよい。ある
種のプロモーターは、1つより多い微細藻類において活性である。他のプロモーターは、
種に特異的である。具体的なプロモーターとしては、以下の実施例で用いられる、Chl
amydomonas reinhardtiiに由来するβ−チューブリンのようなプ
ロモーター、カリフラワーモザイクウイルス(CMV)及びクロレラウイルスのような、
微細藻類の複数の種の中で活性であることが示されているウイルスプロモーターが挙げら 50
(51) JP 2018-99138 A 2018.6.28

れる(例えば、Plant Cell Rep.2005 Mar;23(10−11)
:727−35;J Microbiol.2005 Aug;43(4):361−5
;Mar Biotechnol(NY).2002 Jan;4(1):63−73)
。Prototheca内で外来遺伝子を発現させるのに適切な別のプロモーターは、C
hlorella sorokinianaグルタミン酸脱水素酵素プロモーター/5’
UTRである。場合により、これらの配列のうち、プロモーターを含有し、少なくとも1
0、20、30、40、50、又は60ヌクレオチド、又はそれ以上が使用される。Pr
ototheca内で外来遺伝子を発現させるのに有用な代表的なプロモーターは、本明
細書の配列表に列挙されており、例えば、Chlorella HUP1遺伝子のプロモ
ーター(配列番号1)、Chlorella ellipsoidea硝酸還元酵素プロ 10
モーター(配列番号2)がある。Chlorellaウイルスプロモーターを、Prot
otheca内で遺伝子を発現させるために用いることもでき、例えば、米国特許第6,
395,965号の配列番号1∼7が挙げられる。Prototheca内で活性なさら
なるプロモーターは、例えば、Biochem Biophys Res Commun
.1994 Oct 14;204(1):187−94;Plant Mol Bio
l.1994 Oct;26(1):85−93;Virology.2004 Aug
 15;326(1):150−9;及び、Virology.2004 Jan 5;
318(1):214−23に見いだすことができる。他の有用なプロモーターについて
は、以下の実施例に詳細に記載している。
【0193】 20
 プロモーターは、一般的に、構成的であるか、又は誘発性であると特徴づけることがで
きる。構成的プロモーターは、一般的に、いつでも(又は、細胞周期の特定の時期に)同
じレベルで活性であるか、又は発現を起こすように機能する。誘発性プロモーターは、こ
れとは異なり、刺激に応答したときのみ、活性である(又は不活性化する)か、又は顕著
に上方調節されるか、又は下方調節される。どちらの種類のプロモーターも、本発明の方
法での用途がある。本発明で有用な誘発性プロモーターとしては、例えば、外から与えら
れる低分子(例えば、配列番号1の場合には、グルコース)、温度(熱いか、又は冷たい
)、培地中の窒素不足などの刺激に応答して、動作可能に連結した遺伝子の転写に介在す
るプロモーターが挙げられる。適切なプロモーターは、本質的にサイレント遺伝子である
遺伝子の転写を活性化させることができるか、又は、低濃度で転写されるような動作可能 30
に連結した遺伝子の転写を上方調節し、好ましくは、かなり上方調節することができる。
以下の実施例は、Prototheca細胞において有用なさらなる誘導性プロモーター
について記載している。
【0194】
 停止領域の制御配列の包含は任意であり、利用される場合には、停止領域は比較的置き
換え可能であるため、その選択は、主に簡便なものである。停止領域は、転写開始領域(
プロモーター)に由来するものであってもよく、目的のDNA配列に由来するものであっ
てもよく、又は、別の供給源から得られるものであってもよい。例えば、Chen an
d Orozco、Nucleic Acids Res.(1988)16:8411
。 40
【0195】
 また、本発明は、目的の遺伝子産物を特定の細胞区画、例えば、葉緑体、プラスチド、
ミトコンドリア、又は小胞体に誘導するための組み換え遺伝子及びそれを含むベクター並
びに対照配列も提供する。さらに、本発明の実施形態は、タンパク質の細胞外分泌をもた
らす組み換え遺伝子及びそれを含むベクター並びに対照配列を含む。
【0196】
 Protothecaの核ゲノム内で発現するタンパク質は、プラスチド標的シグナル
を用い、プラスチドを標的としてもよい。Chlorellaに内在するプラスチド標的
配列は知られており、例えば、プラスチドを標的とするタンパク質をコードする、Chl
orella核ゲノム内の遺伝子、例えば、GenBank寄託番号AY646197及 50
(52) JP 2018-99138 A 2018.6.28

びAF499684が挙げられ、一実施形態では、このような制御配列は、Protot
hecaプラスチドでタンパク質を発現させることを標的とするために、本発明のベクタ
ー内で使用される。
【0197】
 以下の実施例は、宿主細胞の正しい区画に異種タンパク質を向かわせるために、プラス
チド標的配列を使用することを記載している。cDNAライブラリーは、Prototh
eca moriformis細胞及びChlorella protothecodi
es細胞を用いて作られ、PCT出願米国特許出願公開第2009/066142号明細
書に記載されている。
【0198】 10
 本発明の別の実施形態では、Prototheca内でのポリペプチドの発現は、小胞
体を標的としている。発現ベクター内の適切な保持シグナル又は選別シグナルによって、
タンパク質が確実に小胞体(ER)に保持され、ゴルジ体の下流には行かない。例えば、
Wageningen UR−Plant Research Internation
alのIMPACTベクター1.3ベクターは、よく知られているKDEL保持シグナル
又は選別シグナルを含んでいる。このベクターを用い、ERを保持することは、発現レベ
ルが5倍以上に高まることが報告されているという点で、実益がある。この現象の主な理
由は、ERが、細胞質に存在するプロテアーゼより低い濃度のプロテアーゼを含んでいる
か、及び/又は、細胞質に存在するプロテアーゼとは異なる、発現したタンパク質の翻訳
後の分解に関与するプロテアーゼを含んでいるからだと思われる。緑色微細藻類内で機能 20
するER保持シグナルが知られている。例えば、Proc Natl Acad Sci
 USA.2005 Apr 26;102(17):6225−30を参照。
【0199】
 本発明の別の実施形態では、ポリペプチドは、細胞から出て、培地に分泌することを標
的としている。本発明の方法に従ってPrototheca内で使用することが可能な、
Chlorella内で活性なシグナルの分泌については、Hawkins et al
.、Current Microbiology Vol.38(1999)、pp.3
35−341を参照。
【0200】
B.遺伝子及びコドンの最適化 30
 典型的には、遺伝子は、プロモーターと、コード配列と、停止制御配列とを含む。組み
換えDNA技術によって組み立てられる場合、遺伝子は、発現カセットと呼ばれることも
あり、組み換え遺伝子を宿主細胞に導入するために使用されるベクターに簡便に挿入する
ために、制限配列に隣接していてもよい。発現カセットは、ゲノム由来のDNA配列、又
は相同組み換えにいよって発現カセットをゲノムに安定に組み込みやすくすることを標的
とした他の核酸に隣接していてもよい。又は、ベクター及びその発現カセットは、組み込
まれないままであってもよく、(例えば、この場合には、ベクターは、典型的には、異種
ベクターDNAを複製するために与えることができるような、複製起源を含んでいてもよ
い。
【0201】 40
 ベクター上に存在する共通の遺伝子は、タンパク質をコードする遺伝子であり、この発
現によって、このタンパク質を含有する組み換え細胞が、このタンパク質を発現しない細
胞と分化する。このような遺伝子、及びその対応する遺伝子産物は、選択可能なマーカー
または選択的マーカーと呼ばれる。任意のさまざまな選択可能なマーカーが、Proto
thecaを形質転換するのに有用なトランス遺伝子構築物中で用いられてもよい。適切
な選択可能なマーカーの例としては、G418耐性遺伝子、硝酸還元酵素遺伝子(Daw
son et al.(1997)、Current Microbiology 35
:356−362を参照)、ハイグロマイシンホスホトランスフェラーゼ遺伝子(HPT
;Kim et al.(2002)、Mar. Biotechnol.4:63−7
3を参照)、ネオマイシンホスホトランスフェラーゼ遺伝子、フレオマイシン対する耐性 50
(53) JP 2018-99138 A 2018.6.28

を付与するble遺伝子(Huang et al.(2007)、Appl.Micr
obiol.Biotechnol.72:197−205)が挙げられる。微細藻類の
抗生物質に対する感度を決める方法はよく知られている。例えば、Mol Gen Ge
net.1996年10月16日;252(5):572−9、本明細書に記載されるよ
うなショ糖インベルターゼ、及び同様に本明細書に記載されるチアミン栄養要求相補体。
【0202】
 抗生物質ベースでない他の選択可能なマーカーもまた、Prototheca種を含め
た、一般に微細藻類の形質転換に有用なトランス遺伝子構築物に用いることができる。こ
れまで微細藻類が利用できなかった特定の炭素源の利用能を付与する遺伝子もまた、選択
可能なマーカーとして使用することができる。例示として、Prototheca mo 10
riformis株は、ショ糖上では、たとえ成長したとしても、典型的には生育が悪い
。ショ糖インベルターゼ遺伝子を含む構築物を使用すると、炭素基質としてショ糖で成長
する陽性形質転換体の能力を付与することができる。他の選択可能なマーカーとともに、
選択可能なマーカーとしてショ糖利用を用いることについてのさらなる詳細は、以下の第
IV章で考察する。
【0203】
 本発明の目的のために、本発明の組み換え宿主細胞を調製するために用いられる発現ベ
クターは、遺伝子のひとつが選択可能なマーカーである場合、少なくとも2個、多くは3
個の遺伝子を含んでいるだろう。例えば、本発明の遺伝子改変されたProtothec
aは、選択可能なマーカーに加え、例えば、ショ糖インベルターゼ遺伝子又はアシルAC 20
P−チオエステラーゼ遺伝子のような1つ以上の外来遺伝子を含む本発明のベクターで形
質転換させることによって作られてもよい。1個又は全部の遺伝子が、誘発性プロモータ
ーを用いて発現してもよく、これにより、これらの遺伝子が発現する相対的なタイミング
を制御し、脂質収量及び脂肪酸エステルへの変換を高めることができる。2種以上の外来
遺伝子の発現は、同じ誘発性プロモーターで制御されていてもよく、異なる誘発性(又は
構成的)プロモーターで制御されていてもよい。後者の状況では、第1の外来遺伝子の発
現は、第1の期間に誘発されてもよく(この間に、第2の外来遺伝子の発現が誘発されて
もよく、誘発されなくてもよく)、第2の外来遺伝子の発現は、第2の期間に誘発されて
もよい(この間に、第1の外来遺伝子の発現が誘発されてもよく、誘発されなくてもよい
)。 30
【0204】
 他の実施形態では、2種以上の外来遺伝子(任意の選択可能なマーカーに加えて)は、
脂肪族アシル−ACPチオエステラーゼ及び脂肪酸アシル−CoA/アルデヒド還元酵素
、アルコール産物を与えるこれらの組み合わせ作用である。さらに、限定されないが、ア
ルデヒドを生成するための脂肪族アシル−ACPチオエステラーゼ及び脂肪酸アシル−C
oA還元酵素のような他の外来遺伝子の組み合わせも提供される。一実施形態では、ベク
ターは、アルカンを生成するための、脂肪族アシル−ACPチオエステラーゼ、脂肪酸ア
シル−CoA還元酵素、脂肪族アルデヒドデカルボニラーゼの組み合わせを与える。これ
らのそれぞれの実施形態では、1つ以上の外来遺伝子が、誘発性プロモーターを用いて発
現してもよい。 40
【0205】
 2種以上の外来遺伝子を発現する、他の代表的な本発明のベクターとしては、ショ糖ト
ランスポーター及びショ糖インベルターゼ酵素の両方をコードするベクター、選択可能な
マーカーと、分泌されたショ糖インベルターゼとの両方をコードするベクターが挙げられ
る。いずれかの種類のベクターで形質転換された組み換えProtothecaは、サト
ウキビ(サトウキビから誘導される糖類)を炭素源として使用する能力が操作されている
ため、低い製造コストで脂質を産生する。上述の2種類の外来遺伝子の挿入は、定方向変
異誘発法及び/又はランダム変異導入法によって多糖生合成を乱すことと組み合わせるこ
とができ、脂質産生へと進む炭素の流れが大きくなる方向に進む。個々に、及び組み合わ
せて、栄養転換、脂質の産生を変えるような操作、外来の酵素を用いた処理によって、微 50
(54) JP 2018-99138 A 2018.6.28

生物が産生する脂質の組成が変わる。この変化によって、産生する脂質の量、他の脂質に
対する的な1つ以上の炭化水素種の相対量、及び/又は微生物が産生する脂質種の種類を
変えることができる。例えば、微細藻類を、TAG(トリアシルグリセリド)の量及び/
又は割合を増やすように操作することができる。
【0206】
 組み換えタンパク質の最適な発現のために、形質転換されるべき宿主細胞で優先的に用
いられるコドンを用いてmRNAを生成するコード配列を利用することが有益である。従
って、トランス遺伝子の適切な発現は、トランス遺伝子のコドンの使用が、トランス遺伝
子を発現する有機体の特定のコドンの偏りと適合していることが必要な場合がある。この
影響の元になる正確な機構は多くあるが、利用可能なアミノアシル化されたtRNAプー 10
ルと、細胞内で合成されるタンパク質との適切なバランス、この要求を満たす場合に、ト
ランスジェニックメッセンジャーRNA(mRNA)をもっと効果的な翻訳との組み合わ
せを含む。トランス遺伝子内のコドンの使用が最適化されていない場合、利用可能なtR
NAプールは、異種mRNAの効率的な翻訳を可能にするのに十分ではなく、その結果、
リボソームが失速し、停止し、トランスジェニックmRNAが不安定になる場合がある。
【0207】
 本発明は、Prototheca内で組み換えタンパク質が首尾よく発現するのに有用
な、コドンが最適化された核酸を提供する。Prototheca種内のコドンの使用を
、Prototheca moriformisから単離されたcDNA配列を研究する
ことによって分析した。この分析から、24,000を超えるコドンを調べ、以下の表2 20
に結果を示している。
【0208】
(55) JP 2018-99138 A 2018.6.28

【表2】

10

20

30

40

【0209】
 他の実施形態では、組み換えベクター内の遺伝子は、Prototheca株以外の微
細藻類株に関して言うと、コドンが最適化されている。例えば、微細藻類内で発現させる
ために遺伝子を記録する方法は、米国特許第7,135,290号に記載されている。コ
ドンの最適化に関するさらなる情報は、例えば、GenBankのコドン利用に関するデ
ータベースが利用可能である。 50
(56) JP 2018-99138 A 2018.6.28

【0210】
 コドンが最適化された遺伝子を有する実施形態に関連して、最適化遺伝子は、好ましく
は、最適化される遺伝子の遺伝子産物の発現が少なくとも10%、及びより好ましくは少
なくとも20、40、60、80、100、又は200%増加するように最適化される。
【0211】
 本発明の方法及び材料によって、外来遺伝子をProtothecaに導入することが
可能な場合、ショ糖の利用及び脂質経路の改変に関する遺伝子は、以下の章で記載すると
おり、特に興味深い。
【0212】
IV.選択可能なマーカー 10
1.ショ糖の利用
 一実施形態では、本発明の組み換え細胞は、1つ以上の外来のショ糖利用遺伝子をさら
に含む。種々の実施形態では、1つ以上の遺伝子は、フルクトキナーゼ、グルコキナーゼ
、ヘキソキナーゼ、ショ糖インベルターゼ、ショ糖トランスポーターからなる群から選択
される1つ以上のタンパク質をコードする。例えば、ショ糖トランスポーター及びショ糖
インベルターゼの発現によって、Protothecaは、ショ糖を培地から細胞に移動
させ、ショ糖を加水分解し、グルコース及びフルクトースを得ることができる。場合によ
り、フルクトキナーゼは、内在するヘキソキナーゼ活性が、フルクトースの最大リン酸化
には不十分であるような状況でも同様に発現することができる。適切なショ糖トランスポ
ーター典枝は、Genbank寄託番号CAD91334、CAB92307、CAA5 20
3390である。適切なフルクトキナーゼの例は、寄託番号P26984、P26420
、CAA43322である。
【0213】
 一実施形態では、本発明は、ショ糖インベルターゼを分泌する宿主細胞を提供する。シ
ョ糖インベルターゼの分泌は、ショ糖を細胞に移動させることが可能なトランスポーター
を発現する必要性をなくす。というのは、分泌されたインベルターゼが、ショ糖分子をグ
ルコース分子及びフルクトース分子に変換するのを触媒し、これらの分子が運ばれ、本発
明によって提供される最近によって利用されるからである。例えば、分泌シグナル(例え
ば、配列番号4(酵母に由来する)、配列番号5(高等植物に由来する)、配列番号6(
真核性のコンセンサス分泌シグナルなど)、配列番号7(高等植物及び真核性のコンセン 30
サスに由来するシグナル配列の組み合わせ)を用いたショ糖インベルターゼ(例えば、配
列番号3)の発現によって、インベルターゼ活性が細胞外で発生する。このようなタンパ
ク質の発現は、本明細書に開示されている遺伝子操作方法によって可能となるが、それに
よって細胞外グルコースをエネルギー源としてすでに利用可能な細胞が、ショ糖を細胞外
エネルギー源として利用することができる。
【0214】
 ショ糖を含有する培地中でインベルターゼを発現するPrototheca種は、油を
生成するのに好ましい微細藻類の種である。この完全に活性なタンパク質の発現及び細胞
外標的化によって、得られた宿主細胞がショ糖で成長することが可能となる一方、対応す
る非形質転換細胞はショ糖上では成長できない。従って、本発明の実施形態は、インベル 40
ターゼ活性及びショ糖の加水分解によって評価される場合にインベルターゼ遺伝子が発現
するようにそのゲノムに組み込まれた、コドンが最適化されたインベルターゼ遺伝子、例
えば、限定されないが酵母インベルターゼ遺伝子を含む組み換え微細藻類(Protot
hecaを含む)細胞を提供する。インベルターゼ遺伝子は、組み換え細胞がショ糖で成
長することができる一方、対応する非形質転換細胞が成長できないため、組み換え細胞に
おける選択可能なマーカーとして有用である;及びインベルターゼを藻類の分子遺伝学用
の強力な選択可能なマーカーとして使用して組み換え宿主細胞を選択する方法を提供する

【0215】
 Prototheca内でショ糖インベルターゼを首尾よく発現することも、異種(組 50
(57) JP 2018-99138 A 2018.6.28

み換え)タンパク質を、藻の細胞内で発現させることができ、細胞から外に出し、完全に
活性で機能的な形態で培地に首尾よく移すことができるという点で、本発明の別の態様を
示している。従って、本発明の実施形態は、微細藻類内でさまざまで多様なタンパク質を
発現させ、これらのタンパク質を宿主細胞の外で集める方法及び試薬を提供する。このよ
うなタンパク質としては、例えば、工業用酵素、例えば、リパーゼ、プロテアーゼ、セル
ラーゼ、ペクチナーゼ、アミラーゼ、エステラーゼ、酸化還元酵素、トランスフェラーゼ
、ラクターゼ、異性化酵素、インベルターゼ、及び治療用タンパク質、例えば、成長因子
、サイトカイン、2個の軽鎖と2個の重鎖を含む全長抗体、Fab、scFv(一本鎖可
変フラグメント)、camellid型抗体、抗体フラグメント、抗体フラグメント融合
物、抗体−受容体重合物、インスリン、インターフェロン、インスリン様成長因子が挙げ 10
られる。
【0216】
 Prototheca内でショ糖インベルターゼを首尾よく発現させることも、Pro
totheca内でタンパク質を分泌させるために、藻の中で真菌トランジットペプチド
を使用するための方法及び試薬を提供し、あるペプチドを機能させるかどうかを決定する
方法及び試薬、また、Prototheca細胞内でトランジットペプチドとして機能さ
せる能力を提供するという点で、本発明の別の態様を示している。本発明の方法及び試薬
を、タンパク質を細胞の外側に首尾よく移動させることができ、酵母インベルターゼがこ
れらの方法で大きな有用性を有するような他のトランジットペプチドを同定するためのツ
ール及びプラットフォームとして用いることができる。この例で示されているとおり、内 20
在する酵母インベルターゼトランジットペプチドの除去、及び宿主である藻に内在するか
、又は他の供給源(真核性、原核性、ウイルス)に由来する他のトランジットペプチドに
よる置き換えによって、任意の目的のペプチドが、細胞から出て行くタンパク質を導くト
ランジットペプチドとして機能させることが可能かどうかを特定することができる。
【0217】
 適切なショ糖インベルターゼの例としては、Genbank寄託番号CAB95010
、NP_012104、CAA06839で特定されるものが挙げられる。適切なインベ
ルターゼの非限定的な例を以下の表3に列挙している。それぞれの列挙したインベルター
ゼのアミノ酸配列は、以下の配列表に含まれている。ある場合では、本発明の方法及びベ
クターで使用するのに適した外来のショ糖利用遺伝子は、表3から選択されるショ糖イン 30
ベルターゼとのアミノ酸同一性が少なくとも40%、50%、60%、75%、又は90
%、又はそれ以上であるショ糖インベルターゼをコードする。
【0218】
(58) JP 2018-99138 A 2018.6.28

【表3】

10

20

【0219】
 Protothecaによって、インベルターゼを培地に分泌させると、細胞は、純粋
な試薬グレードのグルコースを用いても成長するため、サトウキビの処理から得た廃棄糖 30
液を用いても同様に細胞を成長させることができる。サトウキビ処理の価値の低い廃棄産
物を用いることによって、脂質及び他の油の生成において、費用を顕著に節約することが
できる。従って、本発明は、Prototheca微生物の集合を含む微生物の培養物を
提供し、この培養物は、(i)ショ糖と、(ii)ショ糖インベルターゼ酵素とを含む。
種々の実施形態では、培養物中のショ糖は、ソルガム、テンサイ、サトウキビ、糖液、又
は解重合されたセルロース系材料に由来するものである(場合により、リグニンを含んで
いてもよい)。別の態様では、本発明の方法及び試薬は、組み換え微細藻類または他の微
生物が利用可能な原材料の数及び種類を顕著に増やす。ここに例示した細菌は、ショ糖を
利用することができるように変えられているが、セルロース系のような原材料を、セルラ
ーゼ、ペクチナーゼ、異性化酵素などを分泌する能力を有する本発明の操作された宿主細 40
菌が利用することができるように、本発明の方法及び試薬を適用してもよく、その結果、
酵素反応の分解産物に単純に耐え得るというだけではなく、宿主が炭素源として利用する
。これの例については、以下に、及び分泌可能なα−ガラクトシダーゼを発現するように
操作された、それにより農業廃液流に見られる2つのオリゴ糖であるラフィノース及びス
タキオースに含まれるものなどの、オリゴ糖類のα−ガラクトシル結合の加水分解能を付
与する微生物の実施例に記載している。
【0220】
2.α−ガラクトシダーゼの発現
 上述のような、ショ糖インベルターゼの発現は、(二糖類ショ糖のフルクトース分子と
グルコース分子との間のα結合を加水分解する酵素を介して)ショ糖を炭素源としてより 50
(59) JP 2018-99138 A 2018.6.28

効率的に利用するPrototheca細胞の能力を付与するが、オリゴ糖類における他
の種類のα結合を加水分解する他の酵素の発現は、Prototheca細胞に他の炭素
源の利用能を付与し得る。これらの酵素の発現(及びそれにより得られる、Protot
heca及び他の微細藻類細胞が通常は利用することができない炭素源の利用能)は、そ
うした炭素源で成長可能な陽性クローンの選択を可能にすることによるこれらのトランス
ジェニックPrototheca細胞についての選択可能なマーカーとして用いることが
できる。
【0221】
 ある実施形態では、本発明の組み換えPrototheca細胞は、多糖分解酵素をコ
ードする1つ以上の外来遺伝子をさらに含む。種々の実施形態では、多糖分解酵素をコー 10
ドする1つ以上の遺伝子は、分泌型α−ガラクトシダーゼをコードする遺伝子である。P
rototheca細胞における外来性の分泌型α−ガラクトシダーゼの発現は、そのよ
うな形質転換株が、ガラクトースとグルコースとの単糖単位間のα結合のような、D−ガ
ラクトシル結合を含む糖(炭素源)で成長する能力を付与する。外来性の分泌型α−ガラ
クトシダーゼを発現するPrototheca株は、メリビオース(α−D−ガラクトー
ス−グルコースから構成される二糖)などの二糖類の利用能を有し得る。
【0222】
 ラフィノース(α結合したガラクトース−グルコース−フルクトースから構成される三
糖)及びスタキオース(2つのα結合したD−ガラクトース単位と、それに続くα結合し
たグルコース及びフルクトースとから構成される四糖)などの糖は、テンサイパルプ(ラ 20
フィノース)及び大豆ミール(スタキオース)などの農業廃液流中に大きい比率で存在す
る。このような農業残渣は、利用能を有する微生物(Protothecaを含む)によ
って油に変換するための重要な未利用炭素源に相当する。
【0223】
 Prototheca株は、ラフィノース及びスタキオースなどのオリゴ糖類を有意な
量で利用することができず、又は全く利用することができない。ラフィノース及びスタキ
オースの場合、ショ糖インベルターゼ(上述のような)を発現するトランスジェニック株
が、ショ糖のα−ガラクトシル誘導体におけるフルクトースとグルコースとの間のα結合
の加水分解能を有するが、しかしながらショ糖インベルターゼはそのような糖の残りのα
結合を切断せず、得られる二糖は利用可能でないため、オリゴ糖の他の部分は利用されな 30
いままである。別の実施形態では、本発明の組み換えPrototheca細胞は、ショ
糖インベルターゼをコードする外来遺伝子とα−ガラクトシダーゼをコードする外来遺伝
子との両方を含む。従って、ショ糖インベルターゼとα−ガラクトシダーゼとの両方を発
現する株は、ラフィノース及びスタキオースなどのオリゴ糖類を完全に加水分解する能力
を有し、構成単量体を消費することが可能となる。さらに、α−ガラクトシダーゼコード
遺伝子は、形質転換についての選択可能なマーカーとして使用することができる。外来性
のα−ガラクトシダーゼ遺伝子を含むクローンは、メリビオースで成長する能力を有し得
る。Prototheca株での使用に適したα−ガラクトシダーゼ遺伝子の例としては
、Saccharomyces carlbergensis由来のMEL1遺伝子、A
spergilus niger由来のAglC遺伝子が挙げられる。興味深いことに、 40
遺伝子がPrototheca株における好ましいコドン使用に従い最適化されたとして
も、全てのα−ガラクトシダーゼ遺伝子がPrototheca種において機能するわけ
ではないことが分かっている。以下の実施例は、コドンが最適化されたS.carlbe
rgensis由来のMEL1遺伝子及びA.niger由来のAglC遺伝子で形質転
換したときにはあるが、高等植物のCyamopsis tetragonobola(
グアー豆)由来のα−ガラクトシダーゼコード遺伝子で形質転換したときにはない、トラ
ンスジェニックPrototheca細胞がメリビオースで成長する能力を示している。
【0224】
3.チアミン栄養要求相補体
 Prototheca moriformisを含むPrototheca株は、チア 50
(60) JP 2018-99138 A 2018.6.28

ミン栄養要求性であることが知られており(例えば、Ciferri,O.(1956)
Nature,v.178,pp.1475−1476を参照)、すなわちこれらの株は
、成長するために栄養培地中にチアミンを必要とする。チアミン栄養要求性は、チアミン
生合成経路における酵素の突然変異又は発現の欠如の結果であり得る。このとき、チアミ
ン生合成経路における欠損した1つ又は複数の酵素を発現する相補的トランスジェニック
株は、チアミンの添加なしに生育することができ、従って栄養培地の費用を抑えるととも
に、得られる微細藻類バイオマスを動物用飼料としての使用により望ましいものにするこ
とができる。トランスジェニック遺伝子がチアミン不含のプレート/培地での成長能を付
与するため、チアミン生合成経路酵素の相補体はまた、選択可能なマーカーとして使用す
ることができる。 10
【0225】
 ある実施形態では、本発明の組み換えPrototheca細胞は、チアミン生合成経
路酵素をコードする1つ以上の外来遺伝子をさらに含む。別の実施形態では、本発明の組
み換えPrototheca細胞は、藻類、植物又はシアノバクテリアの供給源由来のヒ
ドロキシメチルピリミジンリン酸シンターゼをコードする外来遺伝子を含む。さらに他の
実施形態では、ヒドロキシメチルピリミジンリン酸シンターゼは、THIC遺伝子により
コードされる。さらに他の実施形態では、THIC遺伝子のCoccomyxa C−1
69 THIC、Arabidopsis thaliana THIC、又はSyne
chocystis sp.PCC 6803 thiC。以下の実施例は、回復したチ
アミン原栄養性を有するPrototheca moriformis UTEX 14 20
35の操作について詳細に記載する。
【0226】
V.脂質経路の操作
 ショ糖を含有する原材料のような原材料を微細藻類または他の微生物が利用する能力を
変えることに加え、本発明は、産生する脂質の性質及び/又は割合を変えるように改変さ
れた組み換え微細藻類または他の微生物も提供する。上述の経路は、さらに、又は上述の
ことに変えて、脂質の酵素処理によって産生する種々の脂質分子及び脂肪酸経路の中間体
の性質及び/又は割合を変えるように改変されてもよい。種々の実施形態では、本発明の
組み換えPrototheca細胞は、形質転換されていない対応する細胞と比較して、
単位容積あたり及び/又は単位時間あたりの脂質収量が最適化されており、炭素鎖長(例 30
えば、再生可能なディーゼルを生成するための、又は、脂質原材料を必要とする産業的な
化学用途のための)を有しており、二重結合の数および/または位置が減っているか増え
ており、場合によりゼロになっており、脂肪酸のヒドロキシル化、および特定の脂質種又
は個々の脂質の集合について、水素:炭素比が大きくなっている。
【0227】
 特定の実施形態では、脂肪酸の合成に対し、代謝における分岐点を制御するような1つ
以上の鍵となる酵素を上方調節するか、又は下方調節し、脂質の産生を高める。上方調節
は、例えば、転写を増やす強力なプロモーターエレメント及び/又はエンハンサーエレメ
ントを用い、例えば、目的の酵素をコードする遺伝子が発現するような発現構築物を用い
て細胞を形質転換することによって達成することができる。このような構築物は、形質転 40
換体を選択することができるような選択可能なマーカーを含んでいてもよく、それにより
、遺伝子の管理、および構築物が増幅され、コードされた酵素の発現量が増える可能性が
ある。本発明の方法に従って上方調節するのに適した酵素の例としては、ピルビン酸をア
セチル−CoAに変換する役割を担うピルビン酸脱水素酵素(例えば、微細藻類由来のも
の、Genbank寄託番号NP_415392;AAA53047;Q1XDM1;C
AF05587を含む)が挙げられる。ピルビン酸脱水素酵素を上方調節すると、アセチ
ル−CoAの産生量が増え、それによって脂肪酸の合成量が増える。アセチル−CoAカ
ルボキシラーゼは、脂肪酸合成の最初の工程を触媒する。従って、この酵素を上方調節す
ると、脂肪酸の産生量を増やすことができる(例えば、微細藻類由来のもの、Genba
nk寄託番号BAA94752;AAA75528;AAA81471;YP_5370 50
(61) JP 2018-99138 A 2018.6.28

52;YP_536879;NP_045833;BAA57908を含む)。また、脂
肪酸合成中に、アシル鎖を成長させるアシルキャリアータンパク質(ACP)を上方調節
することによって、脂肪酸産生量を増やすこともできる(例えば、微細藻類由来のもの、
Genbank寄託番号A0T0F8;P51280;NP_849041;YP_87
4433を含む)。グリセロール−3−ホスフェートアシルトランスフェラーゼは、脂肪
酸合成の律速工程を触媒する。この酵素を上方調節すると、脂肪酸の産生量を増やすこと
ができる(例えば、微細藻類由来のもの、Genbank寄託番号AAA74319;A
AA33122;AAA37647;P44857;ABO94442を含む)。
【0228】
 遺伝子の上方調節及び/又は下方調節は、脂肪酸の生合成経路に関する遺伝子の発現を 10
制御する包括的な制御因子に適用することができる。従って、脂肪酸合成の1つ以上の包
括的な制御因子を、適切な場合に上方調節するか、又は下方調節し、それぞれ、複数の脂
肪酸合成遺伝子の発現を阻害するか、又は高め、最終的に、脂質の産生量を増やすことが
できる。例としては、ステロール制御エレメント結合タンパク質(SREBP)、例えば
、SREBP−1a及びSREBP−1c(例えば、Genbank寄託番号NP_03
5610及びQ9WTN3を参照)。
【0229】
 また、本発明は、例えば、脂肪酸アシル−ACPチオエステラーゼ(表4を参照)、脂
肪酸アシル−CoA/アルデヒド還元酵素(表6を参照)、脂肪酸アシル−CoA還元酵
素(表7を参照)、脂肪族アルデヒドデカルボニラーゼ(表8を参照)、脂肪族アルデヒ 20
ド還元酵素、デサチュラーゼ(例えばステアロイル−ACPデサチュラーゼ及び脂肪酸ア
シルデサチュラーゼ及びスクアレンシンターゼ(GenBank寄託番号AF20579
1を参照)などの脂質改変酵素をコードする1つ以上の外来遺伝子を含むように改変され
た組み換えPrototheca細胞も提供する。脂肪酸アシル−ACPチオエステラー
ゼは、典型的には脂質を直接化学的に改変することはないが、本発明の実施形態における
操作により、細胞の脂肪酸プロフィールを、特に鎖長及び二重結合分布の点で変化させる
ことができる。ある実施形態では、脂肪酸アシル−ACPチオエステラーゼをコードする
遺伝子及び自然に共発現するアシルキャリアータンパク質が、Prototheca又は
他の微細藻類細胞若しくは微生物細胞に、場合により他の脂質改変酵素をコードする1つ
以上の遺伝子とともに形質転換される。他の実施形態では、ACPと脂肪酸アシル−AC 30
Pチオエステラーゼとは互いに親和性を有してもよく、これは、それらが特定の組織又は
有機体で自然に共発現するか否かに関係なく、その2つが本発明の微生物及び方法で同時
に使用されるとき利点を与える。従って、本発明の実施形態は、これらの酵素の自然に共
発現する対、並びにACPから特定長さの炭素鎖の切断を促進するよう互いに作用し合う
親和性を共有する対の両方を包含する。
【0230】
 さらに他の実施形態では、デサチュラーゼをコードする外来遺伝子を、脂質の飽和度を
変える他の脂質改変酵素をコードする1つ以上の遺伝子とともに、微細藻類または他の微
生物細胞内で形質転換する。他の実施形態では、内在するデサチュラーゼ遺伝子は、微細
藻類細胞又は他の微生物の細胞において(例えば、遺伝子のさらなる複製物を導入するこ 40
とにより)過剰発現する。ステアロイル−ACPデサチュラーゼ(例えば、Genban
k寄託番号AAF15308;ABM45911;AAY86086)は、例えば、ステ
アロイル−ACPからオレイル−ACPへの変換を触媒する。この遺伝子を上方調節する
と、細胞が産生する一価飽和脂肪酸の比率を増やす事ができ、一方、下方調節すると、一
価不飽和物の比率を減らすことができる。例示を目的として、ステアロイル−ACPデサ
チュラーゼ(SAD)は、C18:0前駆体からのC18:1脂肪酸の合成に関与する。
デサチュラーゼの別のファミリーは、デルタ12脂肪酸デサチュラーゼ(Δ12 FAD
)を含めた脂肪酸アシルデサチュラーゼ(FAD)である。これらのデサチュラーゼはま
た、脂質飽和に関する改変ももたらす。例示を目的として、デルタ12脂肪酸デサチュラ
ーゼは、C18:1前駆体からのC18:2脂肪酸の合成に関与する。同様に、例えば、 50
(62) JP 2018-99138 A 2018.6.28

ω−6脂肪酸デサチュラーゼ、ω−3脂肪酸デサチュラーゼ、又はω−6−オレイン酸デ
サチュラーゼのような1つ以上のグリセロ脂質デサチュラーゼの発現によって、飽和脂肪
酸に対する不飽和脂肪酸の比率を変えるように制御することができる。ある実施形態では
、デサチュラーゼは、望ましい炭素鎖長によって選択することができ、デサチュラーゼは
、特定の炭素鎖を有する基質、又は特定の範囲内にある炭素長を有する基質の中で、位置
特異的に改変させることができる。別の実施形態では、望ましい脂肪酸プロフィールが一
価不飽和物(C16:1及び/又はC18:1など)の増加である場合、SADの過剰発
現又は異種SADの発現を、脂肪酸アシルデサチュラーゼ(FAD)又は別のデサチュラ
ーゼ遺伝子のサイレンシング又は不活性化(例えば、内在するデサチュラーゼ遺伝子の突
然変異、RNAi、アンチセンス、又はノックアウトなどによる)と組み合わせることが 10
できる。
【0231】
 他の実施形態では、微細藻類細胞又は他の微生物の細胞が変異型の内在するデサチュラ
ーゼ遺伝子を有するように改変されており、ここでは突然変異により遺伝子又はデサチュ
ラーゼ酵素が不活性になる。ある場合では、変異型の内在するデサチュラーゼ遺伝子は脂
肪酸デサチュラーゼ(FAD)である。他の場合では、変異型の内在するデサチュラーゼ
遺伝子はステアロイルアシルキャリアータンパク質デサチュラーゼ(SAD)である。以
下の実施例6は、Protothecaにおけるステアロイル−ACPデサチュラーゼ及
びデルタ12脂肪酸デサチュラーゼの標的化した切断又はノックアウトについて記載して
いる。実施例6はまた、RNAi又はアンチセンス構築物を使用した内在するデサチュラ 20
ーゼ遺伝子の発現の低下についても記載している。
【0232】
 ある場合では、望ましい脂質プロフィールを生じさせるトランスジェニック細胞(tr
angenic cell)を得るため、遺伝子操作技法の1つ以上を組み合わせること
が有益な場合がある。一実施形態では、微細藻類細胞又は他の微生物の細胞は、変異型の
内在するデサチュラーゼ遺伝子及び1つ以上の外来遺伝子を含む。非限定的な例では、変
異型の内在するデサチュラーゼ遺伝子を含む微細藻類細胞又は他の微生物の細胞はまた、
外来性の脂肪酸アシル−ACPチオエステラーゼ遺伝子及び/又はショ糖インベルターゼ
遺伝子も発現することができる。以下の実施例6は、内在するSADの標的化した切断又
はノックアウトを含み、また、Cinnamomum camphora C14選択的 30
チオエステラーゼ及びショ糖インベルターゼを発現するトランスジェニックProtot
heca細胞について記載している。この場合、トランスジェニックProtothec
a細胞は、獣脂に見られる脂質プロフィールと非常に近い脂質プロフィールを生じる。獣
脂は、典型的にはレンダリングされた牛脂又は羊脂から得られ、室温で固体であり、食品
、香粧品、及び化学品産業においてさまざまな用途に利用される。獣脂の脂肪酸プロフィ
ールは、4%のC14:0;26%のC16:0;3%のC16:1;14%のC18:
0;41%のC18:1;3%のC18:2;及び1%のC18:3である。以下の実施
例6に示すとおり、内在するSADの標的化された切断又はノックアウトを含み、且つC
.camphora C14選択的チオエステラーゼを発現するトランスジェニックPr
ototheca細胞のクローンは、1%未満のC12及びより短い炭素鎖長の脂肪酸; 40
2.74%∼6.13%のC14:0;23.07%∼25.69%のC16:0;7.
02%∼11.08%のC18:0;42.03%∼51.21%のC18:1;及び9
.37%∼13.45%のC18:2(面積パーセントで表される)の脂質プロフィール
を有する。ある場合では、トランスジェニックPrototheca細胞は、3∼5%の
C14:0;25∼27%のC16:0;10∼15%のC18:0;及び40∼45%
のC18:1の脂質プロフィールを有する。
【0233】
 特定の実施形態では、本発明の細菌を、アシル−ACPチオエステラーゼ、アシル−C
oA/アルデヒド還元酵素、脂肪酸アシル−CoA還元酵素、脂肪族アルデヒド還元酵素
、脂肪族アルデヒドデカルボニラーゼ、又は自然に共発現するアシルキャリアータンパク 50
(63) JP 2018-99138 A 2018.6.28

質から選択される1つ以上の外来遺伝子を発現するように遺伝子操作する。適切な発現方
法は、リパーゼ遺伝子の発現に関して上に記載されており、他の方法の中で、特に、誘発
的発現及び区画化された発現が挙げられる。脂肪族アシル−ACPチオエステラーゼは、
脂質合成中に、アシルキャリアータンパク質(ACP)から脂肪酸を開裂させる。さらな
る酵素処理によって、開裂した脂肪酸と補酵素とが組み合わさって、アシル−CoA分子
が得られる。このアシル−CoAは、脂肪酸アシル−CoA還元酵素が酵素活性を発揮し
てアルデヒドを生じるための基質であり、脂肪酸アシル−CoA/アルデヒド還元酵素が
酵素活性を発揮してアルコールを生じるための基質である。上述のとおり特定した、脂肪
酸アシル−CoA還元酵素の作用によって産生するアルデヒドは、さらに、脂肪族アルデ
ヒド還元酵素が酵素活性を発揮してアルコールを生じるための基質であるか、又は、脂肪 10
族アルデヒドデカルボニラーゼが酵素活性を発揮してアルカン又はアルケンを生じるため
の基質である。
【0234】
 ある実施形態では、本明細書に記載の方法によって生成する脂肪酸、グリセロ脂質、又
は対応する一級アルコール、アルデヒド、アルカン又はアルケンは、8個、10個、12
個、又は14個の炭素原子を含む。ディーゼル、バイオディーゼル、再生可能なディーゼ
ル又はジェット燃料を生成するために好ましい脂肪酸、又は工業用途のための、対応する
一級アルコール、アルデヒド、アルカン及びアルケンは、8∼14個の炭素原子を含む。
特定の実施形態では、上述の脂肪酸、及び他の対応する炭化水素分子は、飽和であり(炭
素−炭素二重結合又は三重結合を含まない);一価飽和であり(二重結合が1個);多価 20
不飽和であり(2種以上の二重結合);直鎖であるか(環状ではない)、又は分枝鎖であ
る。燃料生成の場合、飽和度が高い方が好ましい。
【0235】
 すぐ上に記載されている酵素は、特定の数の炭素原子を含む基質の加水分解に対し、優
先的な特異性を有する。例えば、脂肪族アシル−ACPチオエステラーゼは、炭素原子を
12個含む脂肪酸をACPから優先的に開裂させ得る。ある実施形態では、ACP及び長
さ特異的なチオエステラーゼは、組み合わせると特に有用なような、お互いに対する親和
性を有する場合がある(例えば、外来のACP及びチオエステラーゼ遺伝子は、これらが
誘導される特定の組織又は有機体で自然に共発現する場合がある)。従って、種々の実施
形態では、本発明の組み換えPrototheca細胞は、酵素活性(例えば、ACPか 30
らの脂肪酸開裂、アシル−CoAをアルデヒド又はアルコールに還元すること、又は、ア
ルデヒドからアルカンへの変換)を、基質に含まれる炭素原子の数によって特異的に触媒
するようなタンパク質をコードする外来遺伝子を含んでいてもよい。この酵素の特異性は
、種々の実施形態では、炭素原子を8∼34個、好ましくは、8∼18個、より好ましく
は、8∼14個有する基質に対する特異性であり得る。好ましい特異性は、炭素原子が少
ない、すなわち12個から、多い、すなわち18個含む基質に対する特異性である。
【0236】
 本発明の細菌及び方法とともに用いるのに適した他の脂肪族アシル−ACPチオエステ
ラーゼとしては、限定されないが、表4に列挙されたものが挙げられる。
【0237】 40
(64) JP 2018-99138 A 2018.6.28

【表4】

10

20

30

40

【0238】
 以下の実施例は、Prototheca種のCuphea hookeriana、U
mbellularia californica、Cinnamomun camph 50
(65) JP 2018-99138 A 2018.6.28

ora、Cuphea palustris、Cuphea lanceolata、I
ris germanica、Myristica fragrans、Garcini
a mangostana、Elaeis guiniensis、Brassica 
napus、Ricinus communis及びUlmus americanaに
由来する異種脂肪酸アシル−ACPチオエステラーゼを首尾よく標的化し、発現させるこ
とについて記載している。さらに、これらの異種脂肪酸アシル−ACPチオエステラーゼ
を発現する宿主細胞では脂肪酸プロフィールが変わることが確認された。これらの実施例
に示されるとおり、Protothecaにおけるこれらの異種チオエステラーゼの発現
により、いくつかの種子作物の油をブレンドしたとしても現時点では市販の種子作物から
は入手できない、真に独特の脂肪酸プロフィールを有する油/脂質を産生することが可能 10
なトランスジェニック微細藻類が生成される。表5は、一般的な市販の種子油の脂肪酸プ
ロフィールを示す。以下の市販の種子油のデータは全て、US Pharmacopei
as Food and Chemicals Codes,7th Ed.2010−
2011から編集した。獣脂データは、National Research Coun
cil:Fat Content and Composition of Anima
l Products(1976)による。
【0239】
【表5】

20

30

40

【0240】
 例として、これらの一般的な種子油のなかにC8又はC10脂肪酸を高量で含有するも 50
(66) JP 2018-99138 A 2018.6.28

のは一つもなく、ココナツ油及びパーム核油が最大の供給源であるが、いずれも約1:1
の比(C8:C10脂肪酸)を有する。実施例に示されるとおり、Cuphea pal
ustris C:8選択的チオエステラーゼで形質転換したProtothecaは、
12%を超えるC8脂肪酸濃度を達成できたばかりでなく、またC8:C10脂肪酸の比
が約5:1であった。脂肪酸濃度を変化させることは、さまざまな商業的用途に応じた脂
肪酸プロフィールを含む油の生成に有用である。さらに、種々の脂肪酸鎖長の間の比の変
化は、別途コストのかかる化学的プロセス(エステル化、蒸留、画分化、及び再エステル
化など)を受けていない油では商業的に得ることのできなかったものである。別の例とし
て、ヤシ油は、最高のC16:0脂肪酸(32∼47%)を含有する油であるが、ヤシ油
にはC14:0脂肪酸がほとんどない。U.americanaチオエステラーゼを含む 10
Protothecaは、約33∼38%のC16:0脂肪酸及び約10∼16%のC1
4:0脂肪酸(約2:1のC16:0対C14:0比)を達成した。16:0脂肪酸が高
い種子油は通常はそれほど多くの14:0脂肪酸を含まないため、商業的レベルで既存の
油をブレンドすることによっては、この脂肪酸プロフィールは商業的には非実際的であっ
た。
【0241】
 以下の実施例はまた、1つのクローンで少なくとも2つの脂肪酸アシル−ACPチオエ
ステラーゼを首尾よく標的化し、発現させることについても記載している。これらのクロ
ーンでは脂肪酸プロフィールが変わることが確認され、1つのクローン内でどの2つのチ
オエステラーゼを共発現させるかに応じて、脂肪酸プロフィールがさまざまな形で影響を 20
受けた。例として、上記の表5から、ココナツ油及びパーム核油の両方が約3:1のC1
2:C14比を有する。以下の実施例で記載するとおり、2つの異種チオエステラーゼ遺
伝子を含むPrototheca形質転換体は、約5:1の比のC12:C14脂肪酸濃
度を生じることが可能であった。この種のC12:C14脂肪酸比は、商業的には(すな
わち、種子油をブレンドすることによるのは)非実際的なものであった。
【0242】
 トランスジェニック微細藻類により生成される油の別の新規の態様は、脂肪酸の飽和度
である。現時点ではヤシ油が最大の飽和油供給源であり、全体の飽和対不飽和が52%∼
48%である。以下の実施例に示すとおり、U.americana及びC.camph
oraに由来する異種チオエステラーゼを含むProtothecaは、それが生成する 30
油中の60%超の総飽和物濃度を達成した。同様に以下の実施例に示すとおり、U.am
ericanaに由来する異種チオエステラーゼを含むProtothecaは、それが
生成する油中の86%超の総飽和物濃度を達成した。
【0243】
 本発明の細菌及び方法とともに用いるのに適した脂肪酸アシル−CoA/アルデヒド還
元酵素としては、限定されないが、表6に列挙したものが挙げられる。
【0244】
(67) JP 2018-99138 A 2018.6.28

【表6】

10

【0245】
 本発明の細菌及び方法とともに用いるのに適した脂肪酸アシル−CoA還元酵素として 20
は、限定されないが、表7に列挙したものが挙げられる。
【0246】
【表7】

30

【0247】
 本発明の細菌及び方法とともに用いるのに適した脂肪族アルデヒドデカルボニラーゼと
しては、限定されないが、表8に列挙したものが挙げられる。
【0248】
【表8】

40

【0249】
 自然に共発現する脂肪族アシル−ACPチオエステラーゼ及びアシルキャリアータンパ
ク質の組み合わせは、本発明の細菌及び方法とともに用いるのに適している。
【0250】
 炭化水素改変酵素又は脂質改変酵素のさらなる例としては、以下のいずれかの米国特許 50
(68) JP 2018-99138 A 2018.6.28

に含まれるか、以下のいずれかの米国特許で参照されているか、又は以下のいずれかの米
国特許に含まれるか又は参照されている核酸配列によってコードされるアミノ酸配列が挙
げられる:第6,610,527号;第6,451,576号;第6,429,014号
;第6,342,380号;第6,265,639号;第6,194,185号;第6,
114,160号;第6,083,731号;第6,043,072号;第5,994,
114号;第5,891,697号;第5,871,988号;第6,265,639号
、さらに、以下のGenBank寄託番号で記載されているもの:AAO18435;Z
P_00513891;Q38710;AAK60613;AAK60610;AAK6
0611;NP_113747;CAB75874;AAK60612;AAF2020
1;BAA11024;AF205791;CAA03710。 10
【0251】
 脂質生合成経路の他の酵素もまた、本発明の微生物及び方法での使用に適している。例
えば、ケトアシル−ACPシンターゼ(Kas)酵素は、脂質生合成経路において上記に
列挙した酵素の一部とともに働く。Kas酵素にはさまざまなクラスが存在する:Kas
 Iは、成長し続けるアシルACP鎖とマロニル−ACPとの間の逐次的な縮合工程に関
与する。KAS IIは典型的には、C16:0−ACPからマロニル−ACPを組み込
むC18:0−ACPに至らせる最終的な縮合工程に関与する。従って、主にC16∼C
18:0脂肪酸を合成する高等植物及び一部の微細藻類の種/株(及びその不飽和誘導体
)では、KAS II酵素は、FatA遺伝子の産物(アシル−ACPチオエステラーゼ
)と相互作用する。 20
【0252】
 アシル−ACPは、脂肪酸生合成の間にACPから成長する脂肪酸鎖を遊離し、及びこ
れはほとんどの植物種でFatA遺伝子ファミリーのメンバーによって行われ、FatA
遺伝子ファミリーの役割は、C16:0からC18:0への工程で伸長を終結させること
である。より短鎖の脂肪酸を合成する種(Cuphea、Elaeis、Myristi
ca、又はUmbellulariaなど)では、FatB遺伝子によりコードされるア
シル−ACPチオエステラーゼのさまざまな群がこの終結工程を行う。KAS II酵素
とアシル−ACPチオエステラーゼとの間の相互作用は、脂肪酸鎖伸長の正しい終結に重
要である。結果として、より短鎖の脂質生合成が可能なFatB遺伝子が進化した高等植
物種(及び微細藻類種)では、Kas IV遺伝子と称されるさらなるKas遺伝子クラ 30
スの対応する共進化が存在する。Kas IV遺伝子は、特定の脂肪酸サイズ範囲、4∼
14炭素長の鎖長伸長に関与する。
【0253】
 本発明の細菌及び方法とともに用いるのに適した他の酵素としては、表4、6∼8に列
挙したタンパク質の1つとのアミノ酸同一性が少なくとも70%であり、対応する望まし
い酵素活性(例えば、アシルキャリアータンパク質からの脂肪酸の開裂、アシル−CoA
からアルデヒド又はアルコールへの還元、又はアルデヒドからアルカンへの変換)を示す
ものが挙げられる。さらなる実施形態では、酵素活性は、上述の望ましい配列の1つとの
同一性が少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約
90%、少なくとも約95%、又は少なくとも約99%の配列に存在し、これらは全て、 40
完全に記載されているかのように、参照により組み込まれる。
【0254】
 発現させるべき外来遺伝子の望ましい組み合わせを選択することによって、細菌が生成
する産物を用途に応じて調節することができ、次いで、この産物を水系バイオマスから抽
出してもよい。例えば、細菌は、(i)脂肪族アシル−ACPチオエステラーゼをコード
する外来遺伝子と;場合により、(ii)自然に共発現するアシルキャリアータンパク質
、又は脂肪族アシル−ACPチオエステラーゼとの親和性を有する(又はその逆の)それ
以外のアシルキャリアータンパク質と;場合により、(iii)脂肪酸アシル−CoA/
アルデヒド還元酵素又は脂肪酸アシル−CoA還元酵素をコードする外来遺伝子と;場合
により、(iv)脂肪族アルデヒド還元酵素又は脂肪族アルデヒドデカルボニラーゼをコ 50
(69) JP 2018-99138 A 2018.6.28

ードする外来遺伝子とのうちの1つ以上を含んでいてもよい。この細菌はまた、外来性の
ステアロイル(stearoil)ACPデサチュラーゼ(desturase)、脂肪
酸デサチュラーゼ(destaurase)、β−ケトアシル−ACPシンターゼI(例
えばKASI遺伝子によりコードされるようなもの)、β−ケトアシル−ACPシンター
ゼII(例えばKASII遺伝子によりコードされるようなもの)、又はオレイン酸−1
2ヒドロキシラーゼの1つ以上も含むことができる。細菌は、本明細書に記載の培養条件
で、ACPに結合した脂肪酸を合成し、脂肪族アシル−ACPチオエステラーゼは、AC
Pから脂肪酸を開裂させることを触媒し、さらなる酵素処理によって脂肪酸アシル−Co
A分子を与える。存在する場合、脂肪酸アシル−CoA/アルデヒド還元酵素は、アシル
−CoAからアルコールへの還元を触媒する。同様に、脂肪酸アシル−CoA還元酵素が 10
存在する場合、この酵素は、アシル−CoAからアルデヒドへの還元を触媒する。脂肪酸
アシル−CoA還元酵素をコードする外来遺伝子が存在し、発現してアルデヒド産物を与
えるような実施形態では、第3の外来遺伝子によってコードされる脂肪族アルデヒド還元
酵素が、アルデヒドからアルコールへの還元を触媒する。同様に、脂肪族アルデヒドデカ
ルボニラーゼが存在する場合、この触媒は、アルデヒドからアルカン又はアルケンへの変
換を触媒する。
【0255】
 別の実施形態では、細菌は、(i)脂肪酸アシル−ACPチオエステラーゼをコードす
る外来遺伝子;(ii)場合により、自然に共発現するアシルキャリアータンパク質、又
は脂肪酸アシル−ACPチオエステラーゼに対して親和性を有するアシルキャリアータン 20
パク質;(iii)変異型の内在するデサチュラーゼ遺伝子、ここでは、標的化したRN
Ai、アンチセンス又はdsRNA構築物のようなデサチュラーゼノックアウト又はデサ
チュラーゼ(desturase)抑制エレメントのように、この突然変異によってデサ
チュラーゼ遺伝子又はデサチュラーゼタンパク質が不活性となる;(iv)内在するステ
アロイルアシルキャリアータンパク質デサチュラーゼの過剰発現又は異種SADの発現;
及び(v)前述の任意の組み合わせを含むことができる。
【0256】
 このような酵素をコードする遺伝子、たとえば脂肪酸アシルACPチオエステラーゼな
どは、Chlorella protothecoidesのような、顕著な量の脂質産
生を示すことがすでに知られている細胞から得ることができる。脂質産生の役割を担うこ 30
とがすでに知られている遺伝子、例えば、二重結合を飽和させる酵素をコードする遺伝子
は、レシピエント細胞内で個々に形質転換されてもよい。しかし、本発明を実施するため
に、どの遺伝子が必要となるかといった推測的仮定を行う必要はない。微細藻類において
脂質産生を変える(向上させる)ことが可能な遺伝子を特定する方法は、PCT公開番号
第2008/151149号に記載されている。
【0257】
 従って、本発明は、同じ種の野生型細胞と比較して、異なるレベルで脂質経路に関連す
る酵素を発現するように遺伝子操作されたPrototheca細胞を提供する。ある場
合では、遺伝子操作された細胞は、野生型細胞と同じ条件で成長させた場合に、野生型細
胞と比べて脂質を多く産生する。ある場合では、上述の細胞は、野生型細胞よりも高いレ 40
ベルまたはより低いレベルで脂質経路に関連する酵素を発現するように遺伝子操作されて
いるか、及び/又は、野生型細胞よりも高いレベルで脂質経路に関連する酵素を発現する
ように選択される。ある場合では、脂質経路に関連する酵素は、ピルビン酸脱水素酵素、
アセチル−CoAカルボキシラーゼ、アシルキャリアータンパク質、グリセロール−3 
ホスフェートアシルトランスフェラーゼからなる群から選択される。ある場合では、上述
の細胞は、野生型細胞よりも低いレベルで脂質経路に関連する酵素を発現するように遺伝
子操作されているか、及び/又は、野生型細胞よりも低いレベルで脂質経路に関連する酵
素を発現するように選択される。細胞が、脂質経路に関連する酵素を低いレベルで発現す
る少なくとも1つの実施形態では、脂質経路に関連する酵素は、クエン酸シンターゼを含
む。 50
(70) JP 2018-99138 A 2018.6.28

【0258】
 ある実施形態では、上述の細胞は、野生型細胞と比べ、異なるレベルで脂肪酸合成の包
括的な制御因子を発現するように遺伝子操作されているか、及び/又は、異なるレベルで
脂肪酸合成の包括的な制御因子を発現するように選択され、それにより、複数の脂肪酸合
成遺伝子の発現レベルは、野生型細胞と比べて変化している。ある場合では、脂質経路に
関連する酵素は、脂肪酸を改変する酵素を含む。ある場合では、脂質経路に関連する酵素
は、ステアロイル−ACPデサチュラーゼ、グリセロ脂質デサチュラーゼから選択される
。ある場合では、細胞は、より低レベルの脂質経路酵素を発現するように、又は特定の脂
質経路酵素を全く発現しないように遺伝子操作され、及び/又は選択されている(すなわ
ち、ここでは脂質経路酵素がRNAi法又はアンチセンス法を用いてノックアウトされて 10
いるか、外来遺伝子に置き換えられているか、又は発現が低減されている)。別の実施形
態では、脂質経路酵素は、限定されないがステアロイル−ACPデサチュラーゼ又は脂肪
酸デサチュラーゼ(FAD)を含めた、デサチュラーゼ遺伝子の異種発現である。実施例
6は、Prototheca moriformisの遺伝的背景におけるOlea e
uropaeaに由来する異種ステアロイル−ACPの発現について記載している。
【0259】
 他の実施形態では、本発明は、1つ以上の外来遺伝子を含む油産生細菌に関し、ここで
外来遺伝子は、脂肪酸アシル−ACPチオエステラーゼ、脂肪酸アシル−CoA還元酵素
、脂肪族アルデヒド還元酵素、脂肪酸アシル−CoA/アルデヒド還元酵素、脂肪族アル
デヒドデカルボニラーゼ、デサチュラーゼ、及びアシルキャリアータンパク質からなる群 20
から選択される1つ又は複数のタンパク質をコードする。別の実施形態では、内在するデ
サチュラーゼ遺伝子は、上記の外来遺伝子の1つ以上を含む細菌において過剰発現する。
一実施形態では、外来遺伝子は、プロモーターに動作可能に連結した状態であり、刺激に
応答して、誘発的であるか、又は抑制的である。ある場合では、刺激は、外から与えられ
る低分子、熱さ、冷たさ、培地中の窒素が制限されていること、又は窒素がないことから
なる群から選択される。ある場合では、外来遺伝子は、細胞内のある区画で発現する。あ
る実施形態では、細胞内の区画は、葉緑体、プラスチド、ミトコンドリアからなる群から
選択される。ある実施形態では、細菌は、Prototheca moriformis
、Prototheca krugani、Prototheca stagnora、
又はPrototheca zopfiiである。 30
【0260】
 一実施形態では、外来遺伝子は、脂肪酸アシル−ACPチオエステラーゼをコードする
。ある場合では、外来遺伝子によってコードされるチオエステラーゼは、アシルキャリア
ータンパク質(ACP)から、炭素が8∼18の脂肪酸が開裂することを触媒する。ある
場合では、外来遺伝子によってコードされるチオエステラーゼは、ACPから、炭素が1
0∼14の脂肪酸が開裂することを触媒する。一実施形態では、外来遺伝子によってコー
ドされるチオエステラーゼは、ACPから、炭素が12の脂肪酸が開裂することを触媒す
る。
【0261】
 一実施形態では、外来遺伝子は、脂肪酸アシル−CoA/アルデヒド還元酵素をコード 40
する。ある場合では、外来遺伝子によってコードされる還元酵素は、炭素が8∼18の脂
肪酸アシル−CoAを、対応する一級アルコールへと還元することを触媒する。ある場合
では、外来遺伝子によってコードされる還元酵素は、炭素が10∼14の脂肪酸アシル−
CoAを、対応する一級アルコールへと還元することを触媒する。一実施形態では、外来
遺伝子によってコードされる還元酵素は、炭素が12の脂肪酸アシル−CoAをドデカノ
ールへと還元することを触媒する。
【0262】
 また、本発明は、2個の外来遺伝子を含有する組み換えPrototheca細胞また
は他の細胞も提供しており、第1の外来遺伝子は、脂肪族アシル−ACPチオエステラー
ゼをコードし、第2の外来遺伝子は、脂肪酸アシル−CoA還元酵素、脂肪酸アシル−C 50
(71) JP 2018-99138 A 2018.6.28

oA/アルデヒド還元酵素、アシルキャリアータンパク質からなる群から選択されるタン
パク質をコードする。ある場合では、この2個の外来遺伝子は、それぞれプロモーターに
動作可能に連結した状態であり、刺激に応答して誘発的である。ある場合では、それぞれ
のプロモーターは、培地中の窒素が制限されているか、又は窒素がないといった同じ刺激
に応答して誘発的である。培地中の制限されているか、又は窒素がまったくないことによ
って、Prototheca種のようなある種の微生物では油の産生が刺激され、油をよ
り高いレベルで産生のを誘発する引き金として用いることができる。本明細書に開示され
ている遺伝子操作方法と組み合わせて用いる場合、脂質量は、細胞乾燥重量の割合として
、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なく
とも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、または75%∼ 10
90%のような高いレベルまで引き上げられ得;本明細書に開示されている方法は、この
ようなレベルの脂質を有する細胞を提供し、ここで、脂質は、C8∼C14が少なくとも
4%であり、C8が少なくとも0.3%であり、C10が少なくとも2%であり、C12
が少なくとも2%であり、C14が少なくとも2%である。ある実施形態では、細胞は、
細胞乾燥重量によって25%を超える脂質を有しており、C8∼C14が少なくとも10
%、C8∼C14が少なくとも20%、C8∼C14が少なくとも30%、C8∼C14
が10∼30%、C8∼C14が20∼30%の脂質を含む。
【0263】
 本明細書に開示されている新しい油は、ヤシ油、パーム核油、ココナツ油のような中鎖
脂肪酸が多い他の天然に存在する油とは明らかに異なっている。例えば、カロチノイドの 20
ような混入物質の濃度は、ヤシ油やパーム核油において、本発明の油におけるよりもはる
かに高い。パーム油及びパーム核油は、特に、本発明の油よりも、α−カロチン、β−カ
ロチン、リコピンを非常に多く含んでいる。それに加え、パーム油及びパーム核油では、
20種類を超える異なるカロチノイドが見つかっているが、一方、実施例からは、本発明
の油は、含有するカロチノイド種の種類が非常に少なく、濃度も非常に低いことが示され
ている。それに加え、トコトリエノールのようなビタミンE化合物の濃度は、パーム油、
パーム核油、ココナツ油では、本発明の油と比べてかなり大きい。
【0264】
 一実施形態では、第1の外来遺伝子によってコードされるチオエステラーゼは、ACP
から、炭素が8∼18の脂肪酸が開裂することを触媒する。ある実施形態では、第2の外 30
来遺伝子は、脂肪酸アシル−CoA/アルデヒド還元酵素をコードし、この酵素は、炭素
が8∼18の脂肪酸アシル−CoAを、対応する一級アルコールへと還元するのを触媒す
る。ある場合では、第1の外来遺伝子によってコードされるチオエステラーゼは、ACP
から、炭素が10∼14の脂肪酸が開裂することを触媒し、第2の外来遺伝子によってコ
ードされる還元酵素は、炭素が10∼14の脂肪酸アシル−CoAを、対応する一級アル
コールへと還元するのを触媒し、ここで、チオエステラーゼと還元酵素は、同じ炭素鎖長
に作用する。一実施形態では、第1の外来遺伝子によってコードされるチオエステラーゼ
は、ACPから、炭素が12の脂肪酸が開裂することを触媒し、第2の外来遺伝子によっ
てコードされる還元酵素は、炭素が12の脂肪酸アシル−CoAをドデカノールへと還元
することを触媒する。ある実施形態では、第2の外来遺伝子は、脂肪酸アシル−CoA還 40
元酵素をコードし、この酵素は、炭素が8∼18の脂肪酸アシル−CoAを、対応するア
ルデヒドへと還元することを触媒する。ある実施形態では、第2の外来遺伝子は、脂肪族
アシル−ACPチオエステラーゼ内で必然的に一緒に発現するアシルキャリアータンパク
質をコードする。
【0265】
 ある実施形態では、第2の外来遺伝子は、脂肪酸アシル−CoA還元酵素をコードし、
細菌は、脂肪族アルデヒドデカルボニラーゼをコードする第3の外来遺伝子をさらに含む
。ある場合では、第1の外来遺伝子によってコードされるチオエステラーゼは、ACPか
ら、炭素が8∼18の脂肪酸が開裂することを触媒し、第2の外来遺伝子によってコード
される還元酵素は、炭素が8∼18の脂肪酸アシル−CoAを、対応する一級アルデヒド 50
(72) JP 2018-99138 A 2018.6.28

へと還元するのを触媒し、第3の外来遺伝子によってコードされるデカルボニラーゼは、
炭素が8∼18の脂肪族アルデヒドから対応するアルカンへの変換を触媒し、ここで、チ
オエステラーゼ、還元酵素、デカルボニラーゼは、同じ炭素鎖長に作用する。
【0266】
 ある実施形態では、第2の外来遺伝子は、アシルキャリアータンパク質をコードし、細
菌は、脂肪酸アシル−CoA還元酵素、脂肪酸アシル−CoA/アルデヒド還元酵素から
なる群から選択されるタンパク質をコードする第3の外来遺伝子をさらに含む。ある場合
では、第3の外来遺伝子は、脂肪酸アシル−CoA還元酵素をコードし、細菌は、脂肪族
アルデヒドデカルボニラーゼをコードする第4の外来遺伝子をさらに含む。
【0267】 10
 また、本発明は、培地中で、組み換えPrototheca細胞の集合を培養すること
を含む、アルコールを生成する方法を提供し、ここで、細胞は、(i)脂肪族アシル−A
CPチオエステラーゼをコードする第1の外来遺伝子と、(ii)脂肪酸アシル−CoA
/アルデヒド還元酵素をコードする第2の外来遺伝子とを含み、細胞は、アシルキャリア
ータンパク質(ACP)に結合した脂肪酸を合成し、脂肪族アシル−ACPチオエステラ
ーゼは、ACPから脂肪酸が開裂するのを触媒し、さらなる処理によって脂肪酸アシル−
CoAが得られ、脂肪酸アシル−CoA/アルデヒド還元酵素は、アシル−CoAからア
ルコールへの還元を触媒する。
【0268】
 また、本発明は、Prototheca細胞内で脂質分子を生成する方法を提供する。 20
一実施形態では、この方法は、培地中でPrototheca細胞の集合を培養すること
を含み、ここで、この細胞は、(i)脂肪族アシル−ACPチオエステラーゼをコードす
る第1の外来遺伝子と、(ii)脂肪酸アシル−CoA還元酵素をコードする第2の外来
遺伝子とを含み、細菌は、アシルキャリアータンパク質(ACP)に結合した脂肪酸を合
成し、脂肪族アシル−ACPチオエステラーゼは、ACPから脂肪酸が開裂するのを触媒
し、さらなる処理によって脂肪酸アシル−CoAが得られ、脂肪酸アシル−CoA還元酵
素は、アシル−CoAからアルデヒドへの還元を触媒する。
【0269】
 また、本発明は、Prototheca細胞内で、特定の炭素鎖長を有する脂肪酸分子
を生成する方法を提供する。一実施形態では、この方法は、培地中でProtothec 30
a細胞の集合を培養することを含み、ここで、この細胞は、脂肪族アシル−ACPチオエ
ステラーゼをコードする外来遺伝子を含み、特定の炭素鎖長、例えば、炭素原子が8個、
10個、12個、又は14個の炭素鎖長に対して特異的であるか、これらの鎖長を好む活
性を有しており、細菌は、アシルキャリアータンパク質(ACP)に結合した脂肪酸を合
成し、チオエステラーゼは、脂肪酸が特定の炭素鎖長を有するように合成された場合には
、ACPから、その脂肪酸を開裂することを触媒する。
【0270】
 上述の種々の実施形態では、Prototheca細胞は、脂質経路酵素又は遺伝子産
物の発現を抑制するRNA干渉エレメントのような抑制エレメントをコードする少なくと
も1つの外来遺伝子を含むことができる。ある場合では、脂質経路に関連する酵素は、ス 40
テアロイル−ACPデサチュラーゼ、グリセロ脂質デサチュラーゼ、ピルビン酸脱水素酵
素、アセチル−CoAカルボキシラーゼ、アシルキャリアータンパク質、グリセロール−
3 ホスフェートアシルトランスフェラーゼからなる群から選択される。他の場合では、
Prototheca細胞は、脂肪族アシル−ACPチオエステラーゼ、脂肪酸アシル−
CoA/アルデヒド還元酵素、脂肪酸アシル−CoA還元酵素、脂肪族アルデヒド還元酵
素、脂肪族アルデヒドデカルボニラーゼ、及び/又はアシルキャリアータンパク質からな
る群から選択される脂質改変酵素を含有する。
【0271】
 また、本発明は、ヒドロキシル化脂肪酸を産生するヒドロキシラーゼをコードする異種
遺伝子を含む微生物細胞も提供する。微生物細胞はII型脂肪酸合成経路を含み得る。例 50
(73) JP 2018-99138 A 2018.6.28

えば、微生物細胞は微細藻類細胞であってもよい。ある実施形態では、微細藻類細胞は、
上記の表1に列挙される微細藻類細胞から選択される。他の実施形態では、微細藻類細胞
はPrototheca属の微細藻類細胞である。さらに他の実施形態では、微細藻類細
胞はPrototheca moriformisである。ヒドロキシラーゼは、ヒドロ
キシル基(−OH)を基質に加える酵素である。脂肪酸ヒドロキシラーゼは、一部の高等
植物に見られる天然に存在する酵素である。高等植物に見られる天然に存在するヒドロキ
シラーゼの非限定的な例は、Ricinus communisに由来するオレイン酸1
2−ヒドロキシラーゼであり、これはリシノール酸の産生に関与する。実施例7は、Pr
ototheca細胞におけるヒドロキシラーゼの異種発現、具体的には、Protot
heca moriformis細胞におけるRicinus communisオレイ 10
ン酸12−ヒドロキシラーゼ(hydroxlase)の発現の例を記載している。
【0272】
VI.燃料及び化学物質の生成
 本発明の方法に従って燃料を生成する場合、本発明の細胞が産生する細胞を収穫するか
、又は任意の好都合な方法によって、それ以外の方法で集める。全細胞の抽出によって脂
質を単離することができる。まず、細胞を破壊し、次いで、例えば、上述のような遠心分
離を用いることによって、細胞内の脂質及び細胞膜/細胞壁に関連する脂質、及び細胞外
の炭化水素を細胞塊から分けることができる。微生物中で生成する細胞内脂質を、ある実
施形態では、微生物の細胞を溶解させた後に抽出する。抽出したら、脂質をさらに精製し
、油、燃料又は油脂化学品を作り出す。 20
【0273】
 培養が終了したら、微生物を発酵ブロスから分離することができる。場合により、分離
は、遠心分離によって行い、濃縮ペーストを作成する。遠心分離によって、微生物に由来
するかなりの量の細胞内の水が除去されず、この工程は乾燥工程ではない。次いで、バイ
オマスを場合により、洗浄溶液(例えば、脱イオン水)を用いて洗浄し、発酵ブロス及び
発酵片を取り除く。場合により、洗浄した微生物バイオマスを乾燥させ(乾燥機で乾燥さ
せる、凍結乾燥させる、など)、その後に細胞を破壊してもよい。又は、発酵が完全に終
わっている場合には、細胞を発酵ブロスの一部又は全部と分離することなく溶解させても
よい。例えば、細胞を溶解させたときに、細胞と細胞外の液体とのv:v比が1:1未満
であってもよい。 30
【0274】
 脂質を含有する微生物を溶解し、溶解物を作成してもよい。本明細書で詳細に記載する
ように、微生物を溶解する工程(細胞溶解とも呼ばれる)は、熱による溶解、塩基を加え
ること、酸を加えること、プロテアーゼのような酵素、アミラーゼのような多糖分解酵素
を用いること、超音波を用いること、機械的な溶解、浸透圧衝撃を用いること、溶解性ウ
イルスに感染させること、及び/又は1つ以上の溶解遺伝子の発現を含む、任意の簡便な
手段によって行うことができる。溶解を行い、微生物によって産生された細胞内分子を放
出させる。微生物を溶解させるための、これらのそれぞれの方法を単独の方法として用い
てもよく、同時又は連続して、組み合わせとして用いてもよい。細胞の破壊度は、顕微鏡
分析によって観察することができる。本明細書に記載した1つ以上の方法を用い、典型的 40
には、70%を超える細胞の破壊が観察される。好ましくは、細胞の破壊は、80%を超
えており、より好ましくは、90%を超えており、最も好ましくは、約100%である。
【0275】
 特定の実施形態では、成長した後に微生物を溶解させ、例えば、抽出又はさらなる処理
のために、細胞内の脂質及び/又は炭化水素がさらされる程度を増やす。リパーゼ発現(
例えば、誘発性プロモーターによる)又は細胞溶解のタイミングは、脂質及び/又は炭水
化物の収量を最適化するように調節することができる。以下に、いくつかの溶解技術を記
載している。これらの技術を個々に用いてもよく、組み合わせて用いてもよい。
【0276】
 本発明の一実施形態では、微生物を溶解する工程は、微生物を含有する細胞懸濁物を加 50
(74) JP 2018-99138 A 2018.6.28

熱することを含む。この実施形態では、微生物を含む発酵ブロス(又は、発酵ブロスから
単離した微生物の懸濁物)を、微生物、すなわち、微生物の細胞壁及び細胞膜が分解する
か、又は破壊するまで加熱する。典型的には、かけられる温度は、少なくとも50℃であ
る。もっと効率よく細胞を溶解させるために、もっと高い温度、例えば、少なくとも30
℃、少なくとも60℃、少なくとも70℃、少なくとも80℃、少なくとも90℃、少な
くとも100℃、少なくとも110℃、少なくとも120℃、少なくとも130℃、又は
それ以上の温度を使用する。熱処理によって細胞を溶解することは、微生物を沸騰させる
ことによって行ってもよい。又は、熱処理(沸騰させない)をオートクレーブ中で行って
もよい。熱処理された溶解物を、さらなる処理のために冷却してもよい。また、細胞の破
壊は、蒸気による処理によって、すなわち、加圧した蒸気を加えることによって行っても 10
よい。細胞を破壊するための微細藻類の蒸気処理は、例えば、米国特許第6,750,0
48号に記載されている。ある実施形態では、蒸気処理は、蒸気を発酵槽に吹き込み、ブ
ロスを所望の温度に約90分未満、好ましくは約60分未満、より好ましくは約30分未
満維持することによって行ってもよい。
【0277】
 本発明の別の実施形態では、微生物を溶解する工程は、微生物を含有する細胞懸濁物に
塩基を加えることを含む。塩基は、少なくとも、使用した微生物の水系タンパク質化合物
の一部分を加水分解するのに十分なほど強いことが必要である。タンパク質を溶解するの
に有用な塩基は、化学分野で知られている。本発明の方法で有用な、例示的な塩基として
は、限定されないが、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウムの水酸化物、炭酸塩 20
、炭酸水素塩、及びこれらの混合物が挙げられる。好ましい塩基はKOHである。細胞を
破壊するための微細藻類の塩基処理は、例えば、米国特許第6,750,048号に記載
されている。
【0278】
 本発明の別の実施形態では、微生物を溶解する工程は、微生物を含有する細胞懸濁物に
酸を加えることを含む。酸による溶解は、10∼500mNの濃度、又は好ましくは、4
0∼160nMの濃度の酸を用いて行うことができる。酸による溶解は、好ましくは、室
温より高い温度(例えば、40∼160℃、好ましくは、50∼130℃の温度)で行わ
れる。中程度の温度(例えば、室温∼100℃、特に、室温∼65℃)の場合、酸による
処理は、有益には、音波処理又は他の細胞破壊方法と組み合わせてもよい。 30
【0279】
 本発明の別の実施形態では、微生物を溶解する工程は、酵素を用いることによって微生
物を溶解することを含む。微生物を溶解するのに好ましい酵素は、プロテアーゼ、及びヘ
ミセルラーゼのような多糖分解酵素(例えば、Aspergillus nigerに由
来するヘミセルラーゼ;Sigma Aldrich、セントルイス、モントリオール;
#H2125)、ペクチナーゼ(例えば、Rhizopus sp.に由来するペクチナ
ーゼ;Sigma Aldrich、セントルイス、モントリオール;#P2401)、
Mannaway 4.0L(Novozymes)、セルラーゼ(例えば、Trich
oderma virideに由来するセルロース;Sigma Aldrich、セン
トルイス、モントリオール;#C9422)、ドリセラーゼ(例えば、Basidiom 40
ycetes sp.に由来するドリセラーゼ;Sigma Aldrich、セントル
イス、モントリオール;#D9515)である。
【0280】
 本発明の他の実施形態では、溶解は、例えば、多糖分解酵素のようなセルラーゼ、場合
により、Chlorella又はChlorellaウイルスに由来するもの、又は、プ
ロテアーゼ、例えば、Streptomyces griseusプロテアーゼ、キモト
リプシン、プロテイナーゼK、Degradation of Polylactide
 by Commercial Proteases、Oda Yet al.、Jou
rnal of Polymers and the Environment、第8巻
、Number 1、2000年1月、pp.29−32(4)、Alcalase 2 50
(75) JP 2018-99138 A 2018.6.28

.4 FG(Novozymes)、に列挙されているプロテアーゼ、Flavourz
yme 100L(Novozymes)のような酵素によって行われる。先に示したプ
ロテアーゼ及び多糖分解酵素の任意の組み合わせを含む、プロテアーゼと多糖分解酵素の
任意の組み合わせを用いてもよい。
【0281】
 別の実施形態では、溶解は、連続圧搾機を用いて行うことができる。このプロセスでは
、バイオマスに、高圧状態で、スクリュー型デバイスを用いて力を加え、細胞を溶解させ
、細胞内脂質を放出させ、細胞内のタンパク質及び繊維(及び他の成分)と分離させる。
【0282】
 本発明の別の実施形態では、微生物を溶解する工程は、超音波を用いて、すなわち、音 10
波処理によって行われる。従って、高周波数の音を用いて細胞を溶解させることができる
。音は、電子的に発生させ、適切に濃縮した細胞懸濁物に対し、金属片を介して伝搬させ
てもよい。この音波処理(又は超音波処理)は、細胞懸濁物中に空洞を作り出すことに基
づいて、細胞の一体性を破壊する。
【0283】
 本発明の別の実施形態では、微生物を溶解する工程は、機械的な溶解によって行われる
。細胞は、機械的に溶解されてもよく、場合により、炭化水素(例えば、脂質)を集めや
すいように均質化してもよい。例えば、加圧による破壊を利用し、細胞を含有するスラリ
ーを制水型オリフィス弁にポンプで圧送してもよい。高圧(1500barまで)をかけ
、その後、出口ノズルを通して瞬間的に拡散させてもよい。細胞の破壊は、弁での衝撃、 20
オリフィス内での大きな液体剪断力、放出による急な圧力低下といった3種類の異なる機
構によって行われ、これにより、細胞が爆発する。この方法によって、細胞内の分子が放
出される。又は、ボールミルを用いてもよい。ボールミルの場合、ビーズのような小さな
研磨粒子を含む懸濁物中で細胞を撹拌する。細胞は、剪断力、ビーズ間で研磨されること
、ビーズと衝突することによって破壊される。ビーズは、細胞を破壊して、細胞内容物を
放出させる。また、細胞は、細胞を破壊するためのブレンド(例えば、例として高速ブレ
ンダー又はWaringブレンダー)を用いるか、フレンチプレスを用いるか、又は細胞
壁が弱い場合には、遠心分離を用い、剪断力によって破壊されてもよい。
【0284】
 本発明の別の実施形態では、微生物を溶解する工程は、浸透圧衝撃を与えることによっ 30
て行われる。
【0285】
 本発明の別の実施形態では、微生物を溶解する工程は、微生物を溶解性ウイルスに感染
させることを含む。本発明で用いるのに微生物を溶解するのに適したさまざまなウイルス
が知られており、特定の微生物に特定の溶解性ウイルスを選択し、使用することは、当業
者の知識の範囲内である。例えば、paramecium bursaria chlo
rellaウイルス(PBCV−1)は、特定の単細胞性の、真核性のクロレラに似た緑
色の藻の中で複製し、溶解させる、大きな20面体のプラークを形成する二本鎖DNAウ
イルスのグループ(Phycodnaviridae科、クロロウイルス属)の原型であ
る。従って、培養物を任意の適切なクロレラウイルスに感染させることによって、任意の 40
感染しやすい微細藻類を溶解させることができる。Chlorella種を、クロレラウ
イルスを用いて感染させる方法は知られている。例えば、Adv.Virus Res.
2006;66:293−336;Virology、1999年4月25日;257(
1):15−23;Virology、2004年1月5日;318(1):214−2
3;Nucleic Acids Symp.Ser.2000;(44):161−2
;J.Virol.2006年3月;80(5):2437−44;Annu.Rev.
Microbiol.1999;53:447−94を参照。
【0286】
 本発明の別の実施形態では、微生物を溶解する工程は、自己消化を含む。この実施形態
では、本発明の微生物を、微生物を溶解する溶解性タンパク質を生成するように遺伝子操 50
(76) JP 2018-99138 A 2018.6.28

作する。この溶解遺伝子を、誘発性プロモーターを用いて発現させ、まず、細胞は、発酵
槽内で望ましい密度まで成長し、その後、プロモーターの誘発によって、細胞を溶解させ
る溶解遺伝子が発現する。一実施形態では、溶解遺伝子は、多糖分解酵素をコードしてい
る。特定の他の実施形態では、溶解遺伝子は、溶解性ウイルスに由来する遺伝子である。
従って、例えば、Chlorellaウイルスに由来する溶解遺伝子を、藻の細胞中で発
現させてもよい。Virology 260、308−315(1999);FEMS 
Microbiology Letters 180(1999)45−53;Viro
logy 263、376−387(1999);Virology 230、361−
368(1997)を参照。溶解遺伝子の発現は、好ましくは、誘発性プロモーター、例
えば、低分子、光、熱及び他の刺激の存在のような刺激によって誘発される、微細藻類内 10
で活性なプロモーターを用いてなされる。
【0287】
 上述の方法によって生成した細胞溶解物から脂質を分離するための種々の方法が利用可
能である。例えば、脂質及び脂質誘導体、例えば、脂肪族アルデヒド、脂肪族アルコール
、アルカンのような炭化水素を、疎水性溶媒、例えば、ヘキサンで抽出してもよい(Fr
enz et al.1989、Enzyme Microb.Technol.、11
:717を参照)。また、脂質及び脂質誘導体を、液化によって抽出してもよく(例えば
、Sawayama et al.1999、Biomass and Bioener
gy 17:33−39、及びInoue et al.1993、Biomass B
ioenergy 6(4):269−274を参照);油の液化によって抽出してもよ 20
く(例えば Minowa et al.1995、Fuel 74(12):1735
−1738を参照);超臨界CO2抽出によって抽出してもよい(例えば、Mendes
 et al.2003、Inorganica Chimica Acta 356:
328−334を参照)。Miao及びWuは、Chlorella protothe
ocoidesの培養物から、微細藻類の脂質を回収するプロトコルを記載しており、こ
のプロトコルでは、細胞を遠心分離処理によって集め、蒸留水で洗浄し、凍結乾燥によっ
て乾燥させた。得られた細胞粉末を乳鉢で細かく粉砕し、次いで、n−ヘキサンで抽出し
た。Miao及びWu、Biosource Technology(2006)97:
841−846。
【0288】 30
 従って、本発明の微生物によって生成した脂質、脂質誘導体、炭化水素を、有機溶媒を
用いた抽出によって回収することができる。ある場合では、好ましい有機溶媒は、ヘキサ
ンである。典型的には、事前に溶解物成分を分離させることなく、溶解物に有機溶媒を直
接加える。一実施形態では、上述の1つ以上の方法によって生成した溶解物を、脂質及び
/又は炭化水素成分が有機溶媒と溶液を形成するのに十分な時間、有機溶媒と接触させる
。ある場合では、溶液をその後にさらに精製し、特定の望ましい脂質成分又は炭化水素成
分を回収する。ヘキサンによる抽出方法は、当該技術分野でよく知られている。
【0289】
 本明細書に記載されるとおり、細胞によって産生される脂質及び脂質誘導体、例えば、
脂肪族アルデヒド、脂肪族アルコール、アルカンのような炭化水素を、上述のとおり、リ 40
パーゼのような1つ以上の酵素を用いて改変してもよい。炭化水素が、細胞の外の環境に
存在する場合、1つ以上の酵素を、この酵素が炭化水素を改変しするか、又は炭化水素前
駆体からの合成を完結させるような条件下で、この環境に加えてもよい。又は、炭化水素
を、細胞材料から部分的又は完全に単離してから、酵素のような1つ以上の触媒を加えて
もよい。このような触媒は、外から加えられ、触媒の活性は、細胞の外で生じるか、又は
in vitroで生じる。
【0290】
 従って、in vivoで細胞によって産生されるか、又は、in vitroで酵素
によって改変される脂質及び炭化水素は、本明細書に記載されるとおり、従来の手段によ
ってさらに処理されてもよい。処理は、「クラッキング」して、炭化水素分子を小さくし 50
(77) JP 2018-99138 A 2018.6.28

、水素:炭素比を大きくすることを含んでいてもよい。触媒によるクラッキング方法及び
熱によるクラッキング方法は、炭化水素及びトリグリセリド油脂の処理において通常用い
られる。触媒による方法は、固体酸触媒のような触媒の使用を含む。触媒は、シリカ−ア
ルミナ又はゼオライトであってもよく、この触媒により、炭素−炭素結合が不均衡又は非
対称に破壊され、カルボカチオンとヒドリドアニオンが生じる。これらの反応性中間体は
、次いで、転移するか、又は別の炭化水素にヒドリドが移動する。このように、この反応
によって、中間体が再生し、自己連鎖的な機構を生じ得る。また、炭化水素を処理し、炭
化水素中の炭素−炭素二重結合又は三重結合を減らしてもよく、場合によりゼロにしても
よい。また、炭化水素を処理し、炭化水素中の環又は環状構造を除去するか、又は取り除
いてもよい。また、水素:炭素比が大きくなるように、炭化水素を処理してもよい。この 10
処理は、水素添加(「水素化」)及び/又は炭化水素を小さな炭化水素にする「クラッキ
ング」を含んでいてもよい。
【0291】
 熱による方法は、炭化水素を小さくするために、高温及び高圧の使用を含む。約800
℃の高温及び約700kPaの高圧を用いてもよい。これらの条件によって「軽質」のも
のが発生し、軽質との用語は、水素を多く含む炭化水素分子を指すために用いられ(光量
子束によって区別する場合)、また、縮合により、水素が相対的に失われた、重い炭化水
素分子によっても生成する。この方法によって、均衡、又は対称的に破壊され、アルケン
を生じ、このアルケンは、場合により、上述のとおり酵素によって飽和になってもよい。
【0292】 20
 触媒による方法及び熱による方法は、植物において、炭化水素の処理及び油の精製を行
うのに標準的な方法である。従って、本明細書に記載されるような細胞が産生した炭化水
素を集め、従来の手段によって処理するか、又は精製することができる。微細藻類が産生
した炭化水素のハイドロクラッキングに関する論文は、Hillen et al.(B
iotechnology and Bioengineering、Vol.XXIV
:193−205(1982))を参照。代替的な実施形態では、画分を、有機化合物、
熱及び/又は無機化合物のような別の触媒で処理する。バイオディーゼル内の脂質を処理
する場合、本章の以下に記載されているトランスエステル化プロセスを使用する。
【0293】
 本発明の方法によって生成する炭化水素は、さまざまな工業用途で有用である。例えば 30
、ほぼあらゆる種類の洗浄剤及び洗浄調製物で用いられるイオン系界面活性剤である直鎖
アルキルベンゼンスルホネート(LAS)の生成は、一般的に、炭素原子が10∼14の
鎖を含む炭化水素を利用する。例えば、米国特許第6,946,430号;第5,506
,201号;第6,692,730号;第6,268,517号;第6,020,509
号;第6,140,302号;第5,080,848号;第5,567,359号を参照
。例えば、米国特許第5,942,479号;第6,086,903号;第5,833,
999号;第6,468,955号;第6,407,044号に記載されるとおり、界面
活性剤、例えば、LASを、パーソナルケア組成物及び洗浄剤で用いてもよい。
【0294】
 再生可能な生物由来の出発物質を、化石燃料から誘導される出発物質と置き換えて利用 40
可能であり、その使用が望ましいために、バイオディーゼル、再生可能なディーゼル、ジ
ェット燃料といった燃料に、生物由来の炭化水素成分を用いることに関心が高まっている
。生物由来の材料から炭化水素成分を生成する方法が緊急に必要とされている。本発明は
、本明細書に記載の方法によって生成した脂質を生物由来の原料として用い、バイオディ
ーゼル、再生可能なディーゼル、ジェット燃料を生成するような、バイオディーゼル、再
生可能なディーゼル、ジェット燃料を生成する方法を提供することによって、この要求を
満たす。
【0295】
 従来のディーゼル燃料は、パラフィン系炭化水素を豊富に含む石油留分である。これら
の沸点範囲は、370°F∼780°F(約188°C∼約416°C)と広範囲であり 50
(78) JP 2018-99138 A 2018.6.28

、ディーゼルエンジン車のような圧縮点火エンジンでの燃焼に適している。Americ
an Society of Testing and Materials(ASTM
)は、例えば、セタン価、曇り点、引火点、粘度、アニリン点、硫黄含有量、含水量、灰
分、銅板腐食、炭素残渣のような他の燃料特性の許容範囲とともに、沸点範囲に従って、
ディーゼルのグレードを確立している。技術的には、バイオマス、又は適切なASTM仕
様を満たすそれ以外のものから誘導される任意の炭化水素留分を、ディーゼル燃料(AS
TM D975)、ジェット燃料(ASTM D1655)、又は脂肪酸メチルエステル
である場合にはバイオディーゼル(ASTM D6751)と定義できる。
【0296】
 抽出の後、本明細書に記載されているような微生物バイオマスから回収した脂質成分及 10
び/又は炭化水素成分を、化学処理し、ディーゼル車及びジェットエンジン用の燃料を製
造することができる。
【0297】
 バイオディーゼルは、生成物の原材料に依存して、金色から濃い褐色までの色をした液
体である。実質的に水には混和せず、高い沸点を有し、蒸気圧が低い。バイオディーゼル
は、ディーゼルエンジン車で使用するために、ディーゼルと等価な処理した燃料を指す。
バイオディーゼルは、生分解性であり、毒性がない。従来のディーゼル燃料に比べて、バ
イオディーゼルのさらなる利点は、エンジンの摩耗が少ないことである。典型的には、バ
イオディーゼルは、C14∼C18のアルキルエステルを含む。種々のプロセスによって
、バイオマス又は脂質が生成し、本明細書に記載されるとおり、単離してディーゼル燃料 20
にする。バイオディーゼルを生成する好ましい方法は、本明細書に記載されるような脂質
のトランスエステル化である。バイオディーゼルで用いるのに好ましいアルキルエステル
は、メチルエステル又はエチルエステルである。
【0298】
 本明細書に記載の方法によって生成するバイオディーゼルは、単独で用いてもよく、ほ
とんどのディーゼルエンジン車における任意の濃度で、従来のディーゼル燃料とブレンド
してもよい。従来のディーゼル燃料(石油ディーゼル)とブレンドする場合、バイオディ
ーゼルは、約0.1%∼約99.9%存在してもよい。世界のほとんどで、燃料混合物中
のバイオディーゼルの量を述べるために、「B」ファクターとして知られるシステムを用
いる。例えば、20%のバイオディーゼルを含む燃料は、B20というラベルが付けられ 30
る。純粋なバイオディーゼルは、B100と呼ばれる。
【0299】
 また、バイオディーゼルを、家庭用ボイラ及び商業用ボイラの加熱燃料として用いても
よい。既存の灯油式ボイラは、ゴム部材を備える可能性があり、バイオディーゼルで動か
すために改造する必要がある。改造プロセスは、通常は、比較的単純なものであり、バイ
オディーゼルが強い溶媒であるため、ゴム部材を合成部材と交換することを含む。バイオ
ディーゼルの溶媒力が強いため、バイオディーゼルを燃やすと、ボイラの効率は上がるだ
ろう。バイオディーゼルを、純粋な超低硫黄ディーゼル(ULSD)燃料の潤滑性を向上
させるために、ディーゼル配合物の添加剤として用いてもよく、バイオディーゼルは硫黄
を含有しないため、有益である。バイオディーゼルは、石油系ディーゼルよりも良好な溶 40
媒であり、石油系ディーゼルで走っていた車両の燃料ラインに残る残留分の沈殿を分解す
るために用いてもよい。
【0300】
 バイオディーゼルは、油を豊富に含むバイオマスに含まれるトリグリセリドのトランス
エステル化によって生成することができる。従って、本発明の別の態様では、バイオディ
ーゼルを生成する方法が提供されている。好ましい実施形態では、バイオディーゼルを生
成する方法は、(a)本明細書に開示されている方法を用い、脂質を含有する微生物を育
てる工程と、(b)脂質を含有する微生物を溶解させ、溶解物を生成する工程と、(c)
溶解した微生物から脂質を単離する工程と、(d)脂質組成物をトランスエステル化する
工程とを含み、これによってバイオディーゼルが生成する。微生物を成長させ、微生物を 50
(79) JP 2018-99138 A 2018.6.28

溶解させ、溶解物を生成し、有機溶媒を含む培地中、溶解物を処理し、不均一な混合物を
生成し、処理した溶解物を脂質組成物に分離する方法は、上に記載されており、バイオデ
ィーゼルを生成する方法でも用いることができる。
【0301】
 バイオディーゼルの脂質プロフィールは、通常は、原材料である油の脂質プロフィール
と非常によく似ている。本発明の方法及び組成物によって与えられる他の油をトランスエ
ステル化し、(a)C8∼C14が少なくとも4%であり;(b)C8が少なくとも0.
3%であり;(c)C10が少なくとも2%であり;(d)C12が少なくとも2%であ
り;(3)C8∼C14が少なくとも30%である脂質プロフィールを有するバイオディ
ーゼルを得ることができる。 10
【0302】
 脂質組成物をトランスエステル化し、バイオディーゼルとして有用な長鎖脂肪酸エステ
ルを得ることができる。好ましいトランスエステル化反応について、以下に概略を説明し
ており、塩基触媒によるトランスエステル化と、組み換えリパーゼを用いたトランスエス
テル化を含む。塩基触媒によるトランスエステル化プロセスでは、トリアシルグリセリド
を、アルカリ触媒、典型的には、水酸化カリウム存在下、メタノール又はエタノールのよ
うなアルコールと反応させる。この反応から、メチルエステル又はエチルエステルと、副
生成物としてグリセリン(グリセロール)とが生成する。
【0303】
 動物性油及び植物性油は、典型的には、遊離脂肪酸と三価アルコールであるグリセロー 20
ルとのエステルであるトリグリセリドから作られる。トランスエステル化において、トリ
アシルグリセリド(TAG)中のグリセロールを、メタノール又はエタノールのような短
鎖アルコールと交換する。典型的な反応スキームは、以下のとおりである。
【化1】

30

【0304】
 この反応では、アルコールを塩基で脱プロトン化し、もっと強い求核試薬にする。一般
的に、エタノール又はメタノールを大過剰に用いる(最大50倍まで)。通常は、この反
応は、非常にゆっくりと進むか、まったく進まないであろう。反応をもっとすばやく進め
るために、熱とともに、酸又は塩基を用いてもよい。トランスエステル化反応によって酸
又は塩基は消費されず、従って、これらは反応剤ではなく、触媒である。ほとんど全ての
バイオディーゼルは、低い温度及び低い圧力のみを必要とし、変換収率が98%を超える
ため、塩基触媒による技術を用いて生成されている(但し、出発原料の油は、水分量が低 40
く、遊離脂肪酸の量が少ないことを条件とする)。
【0305】
 また、トランスエステル化は、塩基の代わりに、リパーゼのような酵素を用いて上述の
とおり行われる。リパーゼによって触媒されるトランスエステル化は、例えば、TAGと
低級アルコールとのモル比が、1:1より大きく、好ましくは約3:1の比率で、室温∼
80℃の温度で行われて得る。トランスエステル化で用いるのに適したリパーゼとしては
、限定されないが、表9に列挙されるものが挙げられる。トランスエステル化に有用なリ
パーゼの他の例は、例えば、米国特許第4,798,793号;第4,940,845号
、第5,156,963号;第5,342,768号;第5,776,741号、WO8
9/01032号に見いだされる。このようなリパーゼとしては、限定されないが、Rh 50
(80) JP 2018-99138 A 2018.6.28

izopus、Aspergillus、Candida、Mucor、Pseudom
onas、Rhizomucor、Candida、Humicolaの微生物によって
産生されるリパーゼ及び膵臓リパーゼが挙げられる。
【0306】
【表9】

10

20
【0307】
 バイオディーゼルに適した脂肪酸エステルを生成するために、リパーゼを用いることの
課題の1つは、リパーゼの価格が、強塩基プロセスで用いる水酸化ナトリウム(NaOH
)の価格よりもかなり高いことである。この課題は、リサイクル可能な固定化されたリパ
ーゼを用いることによって対処される。しかし、固定化されたリパーゼの活性は、生成費
用の観点で、リパーゼによるプロセスが、強塩基プロセスと匹敵するようになるような最
低限のサイクル数リサイクルした後にも維持されていなければならない。固定化されたリ
パーゼは、典型的には、トランスエステル化で用いられる低級アルコールによって毒化さ
れやすい。米国特許第6,398,707号(Wu et al.に対し、2002年6
月4日発行)は、固定化されたリパーゼを高める方法、及び活性が低下した、固定化され 30
たリパーゼを再生する方法を記載している。いくつかの適切な方法は、固定化されたリパ
ーゼを、炭素原子数が3個未満のアルコールに所定時間、好ましくは、0.5∼48時間
、より好ましくは、0.5∼1.5時間浸すことを含む。また、いくつかの適切な方法は
、不活性化した、固定化されたリパーゼを、炭素原子が3個を超えないアルコールで洗浄
し、次いで、この不活性化した、固定化されたリパーゼを、植物油に0.5∼48時間浸
すことを含む。
【0308】
 特定の実施形態では、組み換えリパーゼを、リパーゼが作用して脂質を産生する同じ微
生物中で発現する。適切な組み換えリパーゼとしては、上の表9に列挙されているもの、
及び/又は上の表9に列挙されているGenbank寄託番号を有するもの、又は、上の 40
表9に列挙されているリパーゼの1つとのアミノ酸同一性が少なくとも70%であり、リ
パーゼ活性を示すポリペプチドが挙げられる。さらなる実施形態では、酵素活性は、上に
記載した配列の1つとの同一性が少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも
約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、又は少なくとも約99%の配列に
存在し、これらは全て、完全に記載されているかのように参照により組み込まれる。リパ
ーゼ及び選択可能なマーカーをコードするDNAは、好ましくは、コドンが最適化された
cDNAである。微細藻類において発現させるための遺伝子を書き換える方法は、米国特
許第7,135,290号に記載されている。
【0309】
 バイオディーゼルに関する一般的な国際標準は、EN 14214である。ASTM  50
(81) JP 2018-99138 A 2018.6.28

D6751は、米国及びカナダで参照されている最も一般的なバイオディーゼル標準であ
る。ドイツは、DIN EN 14214を使用しており、英国は、BS EN 142
14の順守が必要である。上述の製品がこれらの標準を満たしているか否かを決定するた
めの基本的な工業用試験としては、典型的には、ガスクロマトグラフィー、HPLCなど
が挙げられる。上述の品質表寿を満たすバイオディーゼルは、非常に毒性が低く、毒性の
評価(LD50)は、50mL/kgより大きい。
【0310】
 ASTM標準を満たすバイオディーゼルは、毒性が低くなければならないが、堆積物と
して溶液から結晶化し、及び/又は沈殿し、沈む傾向のある混入物質が存在している場合
がある。堆積物の生成は、バイオディーゼルが低い温度で使用される場合、特に問題であ 10
る。堆積物又は沈殿は、燃料の流れを減らし、燃料ラインを詰まらせ、フィルターを詰ま
らせるなどの問題を引き起こす場合がある。もっと品質の高い製品を製造するために、バ
イオディーゼル中の上述の混入物質及び堆積物を除去することに特に対処するプロセスが
、当該技術分野でよく知られている。このようなプロセスの例としては、限定されないが
、リン脂質及び遊離脂肪酸のような混入物質を除去するための、油の前処理(例えば、ガ
ム状物質の除去、苛性ソーダによる精製、シリカ吸着剤による濾過)及び冷却状態での濾
過が挙げられる。冷却状態での濾過は、生成した後のバイオディーゼル中に存在する任意
の粒状物及び堆積物を除去するために特に開発されたプロセスである。このプロセスは、
バイオディーゼルを冷却し、低い温度で燃料を用いる場合に生成するかもしれない任意の
堆積物又は沈殿を濾別する。このようなプロセスは、当該技術分野でよく知られており、 20
米国特許公開第2007−0175091号に記載されている。適切な方法は、バイオデ
ィーゼルを約38℃より低い温度まで冷却し、不純物及び混入物質をバイオディーゼル液
体中、粒状物として析出させる。次いで、この冷却したバイオディーゼル材料に、珪藻土
又は他の濾過材料を加えてスラリーを作成し、次いで、これを葉状圧力フィルター又は他
の種類のフィルターで濾過し、粒状物を除去する。次いで、濾過したバイオディーゼルを
、最終的なバイオディーゼル製品が得られるように、研磨フィルターに通し、残った任意
の堆積物及び珪藻土を除去する。
【0311】
 実施例9は、Prototheca moriformisに由来するトリグリセリド
油脂を用いた、バイオディーゼルの生成について記載している。実施例9で生成したバイ 30
オディーゼルのASTM D6751 A1法による、Cold Soak Filte
rabilityは、容積300mlで120秒であった。この試験は、B100 30
0mlを濾過し、40°F(約4.5°C)で16時間冷却し、室温まで加温し、減圧下
、ステンレス鋼の支持材を取り付けた0.7マイクロメートルガラス繊維を用いて濾過す
る。本発明の油を、トランスエステル化し、冷状態浸漬時間が、120秒未満、100秒
未満、90秒未満のバイオディーゼルを得ることができる。
【0312】
 バイオディーゼルが、特定の冷温で使用される場合、次のプロセスを用いてもよい。こ
のようなプロセスは、脱ろう及び画分化を含む。両プロセスは、曇り点(バイオディーゼ
ルが結晶化し始める温度)を下げることによって、冷状態での流動性を高め、冬の燃料の 40
性能を高める。バイオディーゼルを脱ろうするために、いくつかのアプローチが存在する
。アプローチのひとつは、バイオディーゼルと、石油ディーゼルとをブレンドすることで
ある。別のアプローチは、バイオディーゼルの曇り点を下げることが可能な添加剤を使用
することである。別のアプローチは、添加剤中で混合し、飽和物質を結晶化させ、次いで
結晶を濾別することによって、飽和メチルエステルを無差別に除去することである。画分
化は、メチルエステルを個々の成分又は画分に選択的に分離し、これにより、特定のメチ
ルエステルを除去するか、又は含むようにすることができる。画分化方法は、尿素による
画分化、溶媒による画分化、熱による蒸留が挙げられる。
【0313】
 本発明の方法によって提供される別の価値の高い燃料は、再生可能なディーゼルであり 50
(82) JP 2018-99138 A 2018.6.28

、C10:0、C12:0、C14:0、C16:0及びC18:0のようなアルカンを
含み、従って、バイオディーゼルとは区別することができる。高品質の再生可能なディー
ゼルは、ASTM D975の標準に適合している。本発明の方法によって生成する脂質
は、再生可能なディーゼルを製造する原材料として役立たせることができる。従って、本
発明の別の態様では、再生可能なディーゼルを製造する方法が提供される。再生可能なデ
ィーゼルは、熱水で処理すること(熱水処理);水素化処理;間接的な液化といった、少
なくとも3種類のプロセスで製造することができる。これらのプロセスによって、エステ
ルではない留分が得られる。これらのプロセスの間、本明細書に記載されるとおり生成し
、単離されたトリアシルグリセリドを、アルカンへと変換する。
【0314】 10
 一実施形態では、再生可能なディーゼルを生成する方法は、(a)脂質を含有する微生
物を本明細書に開示されている方法を用いて育てることと、(b)微生物を溶解させ、溶
解物を生成する工程と、(c)溶解した微生物から脂質を単離する工程と、(d)脂質を
脱酸素し、熱水処理してアルカンを生成することとを含み、これによって再生可能なディ
ーゼルが得られる。再生可能なディーゼルを製造するのに適した脂質は、ヘキサンのよう
な有機溶媒を用い、微生物バイオマスから抽出することによって、又は米国特許第5,9
28,696号に記載されるような他の方法によって得ることができる。いくつかの適切
な方法は、機械的に加圧し、遠心分離処理することを含んでいてもよい。
【0315】
 いくつかの方法では、まず、微生物脂質を、熱処理と組み合わせてクラッキングし、そ 20
れぞれ、炭素鎖長を短くし、二重結合を飽和させる。次いで、この物質を異性化し、これ
も熱水処理と組み合わせる。次いで、ナフサ画分を蒸留によって除去し、次いで、さらに
蒸留し、ASTM D975の標準を満たすように、ディーゼル燃料中の望ましい成分を
蒸気にし、蒸留しつつ、D975の標準を満たすのに望ましいものよりも重い成分は残す
。トリグリセリド油脂を含む油を化学的に改変する熱水処理方法、ハイドロクラッキング
方法、脱酸素方法、異性化方法は、当該技術分野でよく知られている。例えば、Euro
pean patent applications EP1741768(A1);E
P1741767(A1);EP1682466(A1);EP1640437(A1)
;EP1681337(A1);EP1795576(A1);米国特許第7,238,
277号;第6,630,066号;第6,596,155号;第6,977,322号 30
;第7,041,866号;第6,217,746号;第5,885,440号;第6,
881,873号を参照。
【0316】
 再生可能なディーゼルを生成する方法の一実施形態では、脂質を処理してアルカンを得
ることは、脂質組成物の熱水処理によって行われる。熱水処理において、典型的には、バ
イオマスを、高温高圧下、水中で反応させて、油と残留する固体を生成させる。変換温度
は、典型的には、300°F∼660°F(約149°C∼約349°C)であり、圧力
は、水が主に液体のままであるのに十分な圧力であり、100∼170標準大気圧(at
m)である。反応時間は、15∼30分程度である。反応が終了した後、有機物を水から
分離する。それにより、ディーゼルに適した留分が得られる。 40
【0317】
 再生可能なディーゼルを製造するいくつかの方法では、トリグリセリドを処理する第1
の工程は、二重結合を飽和させる水素化処理であり、次いで、水素及び触媒存在下、高温
で脱酸素させる。いくつかの方法では、水素化及び脱酸素は、同じ反応中に起こる。他の
方法では、水素化の前に脱酸素が起こる。次いで、場合により、これも水素及び触媒が存
在する条件で、異性化を行う。ナフサ成分は、好ましくは、蒸留によって除去される。例
えば、米国特許第5,475,160号(hydrogenation of trig
lycerides);第5,091,116号(deoxygenation,hyd
rogenation and gas removal);第6,391,815号(
hydrogenation);第5,888,947号(isomerization 50
(83) JP 2018-99138 A 2018.6.28

)を参照。
【0318】
 トリグリセリドを水素化するのに適した方法のひとつは、銅、亜鉛、マグネシウム、ラ
ンタニウムの塩の水溶液と、アルカリ金属、又は好ましくは、炭酸アンモニウムの別の溶
液とを調製することを含む。この2種類の溶液を、約20℃∼約85℃の温度まで加熱し
、触媒を生成させるために、沈殿容器のpHが5.5∼7.5に維持されるように、沈殿
容器に秤量しながら一緒に加える。沈殿容器にさらなる水を最初に入れておいてもよく、
又は、塩溶液及び沈殿溶液と同時に入れてもよい。得られた沈殿を十分に洗浄し、乾燥さ
せ、約300℃で焼結し、約100℃∼約400℃の範囲の温度で、水素で活性化する。
次いで、容器中、1つ以上のトリグリセリドを接触させ、上述の触媒存在下、水素と反応 10
させてもよい。この反応槽は、トリクルベッド反応槽、固定床気体−固体反応槽、充填気
泡反応槽、連続撹拌型タンク反応槽、スラリー相反応槽、又は当該技術分野で既知の任意
の他の適切な反応槽であってもよい。このプロセスは、バッチ式で行ってもよく、連続的
な様式で行ってもよい。反応温度は、典型的には、約170℃∼約250℃の範囲であり
、一方、反応圧力は、典型的には、約300psig∼約2000psigの範囲内にあ
る。さらに、本発明のプロセスにおいて、水素とトリグリセリドとのモル比は、典型的に
は、約20:1∼約700:1の範囲にある。このプロセスは、典型的には、約0.1h
r−1∼約5hr−1の範囲の重量空間速度(WHSV)で行われる。当業者は、反応に
必要な時間は、使用する温度、水素とトリグリセリドとのモル比、水素の分圧によってさ
まざまであることを認識するだろう。このような水素化プロセスで生成する生成物は、脂 20
肪族アルコール、グリセロール、微量のパラフィン及び未反応のトリグリセリドを含む。
これらの生成物を、典型的には、例えば、蒸留、抽出、濾過、結晶化などの従来の手段に
よって分離する。
【0319】
 石油精製業者は、水素化処理を利用し、原料を水素で処理することによって不純物を除
去する。水素化処理による変換温度は、典型的には、300°F∼700°F(約149
°C∼約371°C)である。圧力は、典型的には、40∼100atmである。反応時
間は、典型的には、10∼60分程度である。固体触媒を利用し、特定の反応速度を上げ
、特定の生成物の選択性を上げ、水素の消費量を最適化する。
【0320】 30
 油を脱酸素するのに適した方法は、油を約350°F∼約550°F(約177°C∼
約288°C)の範囲の温度まで加熱することと、少なくとも大気圧よりも高い圧力で、
少なくとも5分間、加熱した油を窒素と連続的に接触させることとを含む。
【0321】
 異性化に適した方法は、アルカリ異性化、及び当該技術分野で既知の他の油異性化を含
む。
【0322】
 熱水処理及び水素化処理によって、最終的に、トリグリセリド供給物の分子量が低下す
る。トリグリセリド分子は、水素化処理条件で、プロパン分子と、3種類のこれより重い
炭化水素分子、典型的には、C8∼C18の範囲の炭化水素分子の4種類の炭化水素へと 40
還元される。
【0323】
 従って、一実施形態では、本発明の脂質組成物で行われる1つ以上の化学反応の生成物
は、ASTM D975の再生可能なディーゼルを有するアルカン混合物である。微生物
による炭化水素の産生は、Metzger et al.Appl Microbiol
 Biotechnol(2005)66:486−496及びA Look Back
 at the U.S. Department of Energy’s Aqua
tic Species Program:Biodiesel from Algae
、NREL/TP−580−24190、John Sheehan、Terri Du
nahay、John Benemann and Paul Roessler(19 50
(84) JP 2018-99138 A 2018.6.28

98)にまとめられている。
【0324】
 ディーゼル燃料の蒸留特性は、T10−T90(それぞれ、容積で10%及び90%が
留出した温度)の観点で記載される。再生可能なディーゼルは、Prototheca 
moriformisトリグリセリド油脂から作られ、実施例9に記載されている。実施
例9で作られた物質のT10−T90は、57.9℃であった。本明細書に開示されてい
る油の水素化処理、異性化、他の共有結合の改変、及び、本明細書に開示されている蒸留
及び画分化(例えば、冷状態での濾過)を利用し、本明細書に開示されている方法に従っ
て作られるトリグリセリド油脂を用い、他のT10−T90範囲、例えば、20℃、25
℃、30℃、35℃、40℃、45℃、50℃、60℃、65℃の再生可能なディーゼル 10
組成物を生成することができる。
【0325】
 実施例9で作られる材料のT10は、242.1℃であった。本明細書に開示されてい
る油の方法水素化処理、異性化、他の共有結合の改変、及び、本明細書に開示されている
蒸留及び画分化(例えば、冷状態での濾過)を利用し、他のT10値、例えば、T10が
180∼295、190∼270、210∼250、225∼245、少なくとも290
の再生可能なディーゼル組成物を生成してもよい。
【0326】
 実施例9で作られる材料のT90は、300℃であった。本明細書に開示されている油
の方法水素化処理、異性化、他の共有結合の改変、及び、本明細書に開示されている蒸留 20
及び画分化(例えば、冷状態での濾過)を利用し、他のT90値、例えば、T90が28
0∼380、290∼360、300∼350、310∼340、少なくとも290の再
生可能なディーゼル組成物を生成してもよい。
【0327】
 実施例9で作られる材料の最終沸点(FBP)は、300℃であった。本明細書に開示
されている油の方法は、水素化処理、異性化、他の共有結合の改変、及び、本明細書に開
示されている蒸留及び画分化(例えば、冷状態での濾過)を利用し、他のFBP値、例え
ば、FBPが290∼400、300∼385、310∼370、315∼360、少な
くとも300の再生可能なディーゼル組成物を生成してもよい。
【0328】 30
 本発明の方法及び組成物によって提供される他の油に、水素化処理、異性化、他の共有
結合の改変を組み合わせて行ってもよく、(a)C8∼C14が少なくとも4%であり、
;(b)C8が少なくとも0.3%;(c)C10が少なくとも2%;(d)C12が少
なくとも2%;(3)C8∼C14が少なくとも30%の脂質プロフィールを有する油を
含む。
【0329】
 従来の超低硫黄ディーゼルは、2工程プロセスによって、バイオマスの任意の形態から
製造してもよい。第1に、バイオマスを、水素及び一酸化炭素を豊富に含む気体状混合物
である合成ガスに変換する。次いで、この合成ガスを、触媒によって液体に変換する。典
型的には、液体の生成は、Fischer−Tropsch(FT)合成を用いて行われ 40
る。この技術は、石炭、天然ガス、重油に応用される。従って、再生可能なディーゼルを
製造する方法のさらに別の好ましい実施形態では、脂質組成物を処理し、アルカンを得る
ことは、脂質組成物を間接的に液状化することによって行われる。
【0330】
 また、本発明は、ジェット燃料を生成する方法を提供する。ジェット燃料は、透明から
麦わら色である。最も一般的な燃料は、航空機A−1と分類される、鉛を含んでいない/
パラフィン油系の燃料であり、国際的な標準化された一連の仕様を満たすように製造され
る。ジェット燃料は、多種類の異なる炭化水素の混合物であり、おそらく、数千種類以上
が含まれているだろう。これらの物質の大きさの範囲(分子量又は炭素数)は、例えば、
凍結点又は発煙点のような生成物の要求によって制限される。ケロシン(Keroson 50
(85) JP 2018-99138 A 2018.6.28

e)型の航空機燃料(Jet A及びJet A−1を含む)は、炭素数が約8∼16の
炭素分布を有する。ワイドカット型又はナフサ型の航空機燃料(Jet Bを含む)は、
典型的には、炭素数が約5∼15の炭素分布を有する。
【0331】
 両方の航空機燃料(Jet A及びJet B)は、多くの添加剤を含み得る。有用な
添加剤としては、限定されないが、酸化防止剤、帯電防止剤、腐食阻害剤、燃料計凍結阻
害(FSII)剤が挙げられる。酸化防止剤は、ガム化を防ぎ、通常は、アルキル化フェ
ノール系のものであり、例えば、AO−30、AO−31又はAO−37である。帯電防
止剤は、静電気を発散させ、火花を防ぐ。ジノニルナフチルスルホン酸(DINNSA)
を活性な成分として含むStadis 450は、一例である。腐食阻害剤、例えば、D 10
CI−4Aは、民間用燃料及び軍事用燃料に用いられ、DCI−6Aは、軍事用燃料に用
いられる。FSII剤としては、例えば、Di−EGMEが挙げられる。
【0332】
 本発明の一実施形態では、ジェット燃料は、藻の燃料と、既存のジェット燃料とをブレ
ンドすることによって作られる。本発明の方法によって生成した脂質を、原材料として使
い、ジェット燃料を製造する。従って、本発明の別の態様では、ジェット燃料を生成する
方法が提供される。これとともに、本発明の方法によって生成される脂質からジェット燃
料を製造する、流体触媒クラッキング(FCC)及び水素化脱酸素(HDO)の2つの方
法が提供される。
【0333】 20
 流体触媒クラッキング(FCC)は、重い未精製画分から、オレフィン、特にプロプレ
ンを製造するのに用いられる方法のひとつである。本発明の方法によって生成した脂質を
、オレフィンへと変換することができる。このプロセスは、生成した脂質をFCCゾーン
に流すことと、ジェット燃料として有用な、オレフィンを含む生成物流を集めることとを
含む。生成した脂質を、クラッキング条件で、クラッキング触媒と接触させ、ジェット燃
料として有用なオレフィン及び炭化水素を含む生成物流を得る。
【0334】
 一実施形態では、ジェット燃料を生成する方法は、(a)脂質を含有する微生物を、本
明細書に開示されている方法を用いて育てることと、(b)微生物を溶解させ、溶解物を
生成する工程と、(c)溶解した微生物から脂質を単離する工程と、(d)脂質組成物を 30
処理することとを含み、それによって、ジェット燃料が作られる。ジェット燃料を生成す
る方法の一実施形態では、脂質組成物は、流体触媒クラッキングゾーンへと流れてもよく
、一実施形態では、脂質組成物と、クラッキング触媒とをクラッキング条件で接触させ、
C2∼C5オレフィンを含む生成物流を得てもよい。
【0335】
 この方法の特定の実施形態では、脂質組成物に存在し得る任意の混入物質を除去するこ
とが望ましい場合がある。従って、脂質組成物を、流体触媒クラッキングゾーンに流す前
に、脂質組成物を前処理する。前処理は、脂質組成物と、イオン交換樹脂とを接触させる
ことを含み得る。イオン交換樹脂は、AmberlystTM−15のような酸性イオン
交換樹脂であり、脂質組成物が上向又は下向に流れる、反応槽中の床として用いてもよい 40
。他の前処理は、脂質組成物を、硫酸、酢酸、硝酸又は塩酸のような酸と接触させること
による、穏和な酸洗浄を含んでいてもよい。接触は、通常は、周囲温度及び周囲圧力で、
希釈酸溶液を用いて行われる。
【0336】
 脂質組成物は、場合により前処理されており、これをFCCゾーンに流し、このゾーン
で、炭化水素系成分をクラッキングしてオレフィンにする。触媒クラッキングは、反応ゾ
ーンで、脂質組成物を、細かく分割した粒状物質で構成される触媒と接触させることによ
って行われる。反応は、ハイドロクラッキングとは対照的な触媒クラッキングであり、水
素を加えない状態で行われるか、又は水素を消費する状態で行われる。クラッキング反応
が進むにつれて、かなりの量のコークスが触媒上に蓄積する。再生ゾーンで、触媒から高 50
(86) JP 2018-99138 A 2018.6.28

温でコークスを燃焼させることによって、触媒は再生する。コークスを含有する触媒は、
本明細書では「コークス化触媒」と呼ばれ、反応ゾーンから再生ゾーンへと連続的に移動
し、再生し、再生ゾーンから、本質的にコークスを含まない再生された触媒に置き換わる
。種々の気体流によって触媒粒子を流動化すると、反応ゾーンと再生ゾーンとの間を触媒
が移動することができる。炭化水素をクラッキングする方法、例えば、流動化した触媒流
の中で本明細書に記載の脂質組成物の炭化水素をクラッキングし、反応ゾーンと再生ゾー
ンとの間を触媒が移動し、再生槽でコークスを燃焼させる方法は、FCCプロセスの分野
で当業者には周知である。例示的なFCC用途、及びC2∼C5オレフィンを得るために
、脂質組成物をクラッキングするのに有用な触媒は、米国特許第6,538,169号、
第7,288,685号に記載されており、これらの文献は、内容全体が参照により組み 10
込まれる。
【0337】
 適切なFCC触媒は、一般的に、少なくとも2つの成分を含み、この2つの成分は、同
じマトリックス上にあってもよく、同じマトリックス上になくてもよい。ある実施形態で
は、2つの成分は、両方とも、反応容器全体を循環していてもよい。第1の成分は、一般
的に、流動化した触媒クラッキングの分野で用いられる、よく知られている任意の触媒、
例えば、活性アモルファスクレイ型触媒及び/又は高い活性を有する結晶性分子ふるいを
含んでいる。分子ふるい触媒は、望ましい生成物に対する選択性がかなり向上しているた
め、アモルファス触媒よりも好ましい場合がある。いくつかの好ましい実施形態では、ゼ
オライトを、FCCプロセスの分子ふるいとして用いてもよい。好ましくは、第1の触媒 20
成分は、大きな孔のゼオライト、例えば、Y型ゼオライト、活性アルミナ材料、シリカ又
はアルミナのいずれかを含むバインダー材料、カオリンのような不活性フィラーを含んで
いる。
【0338】
 一実施形態では、本発明の脂質組成物のクラッキングは、FCCゾーンのライザー部分
、又はリフト部分で起こる。脂質組成物は、ノズルによってライザー部分に導入され、そ
の結果、脂質組成物がすばやく蒸気になる。触媒を接触させる前に、脂質組成物は、一般
的には、約149℃∼約316℃(300°F∼600°F)の温度を有しているであろ
う。この触媒は、ブレンド容器からライザー部分に流れ、この部分で、約2秒又はそれよ
り短い時間、脂質組成物と接触する。 30
【0339】
 ブレンドされた触媒及び反応した脂質組成物の蒸気は、出口を通って、ライザー上部か
ら排出され、オレフィンを含むクラッキングした生成物の蒸気流の中で分離し、かなりの
量のコークスで覆われた、一般的に「コークス触媒」と呼ばれる触媒粒子を集める。望ま
しい生成物が望ましくない他の生成物にさらに変換されるのを促進するおそれがある、脂
質組成物と触媒とが接触している時間を最小限にする試みにおいて、旋回アームの配置の
ような、セパレーターの配置を利用し、生成物流からコークス化触媒をすばやく離すこと
ができる。セパレーター、例えば、旋回アームセパレーターは、チャンバの下側部分に位
置するストリッピングゾーンを備えるチャンバの上側部分に位置している。旋回アームの
配置から離れた触媒は、ストリッピングゾーンに落ちる。軽質オレフィン及びいくつかの 40
触媒を含む、クラッキングした炭化水素を含むクラッキングした生成物の蒸気流は、サイ
クロンとつながった管を通ってチャンバを出る。サイクロンは、生成物の蒸気流から、残
留する触媒粒子を除去し、粒子の濃度を非常に低いレベルまで下げる。次いで、生成物の
蒸気流は、分離容器の上側を出る。サイクロンによって分離された触媒は、分離容器に戻
り、次いで、ストリッピングゾーンに戻る。ストリッピングゾーンは、蒸気と向流で接触
させることによって、触媒表面から吸着した炭化水素を除去する。
【0340】
 炭化水素の分圧は、低い状態で軽質オレフィンを生成しやすくするように働く。従って
、ライザーの圧力は、約172∼約241kPa(25∼35psia)に設定し、炭化
水素の分圧は約35∼172kPa(5∼25psia)に設定し、好ましい炭化水素の 50
(87) JP 2018-99138 A 2018.6.28

分圧は、約69∼138kPa(10∼20psia)である。このように比較的低い炭
化水素の分圧は、希釈剤が脂質組成物の10∼55wt%、好ましくは、約15wt%に
なる程度まで、蒸気を希釈剤として用いることによって達成される。同等な炭化水素分圧
を達成するために、乾燥ガスのような他の希釈剤を用いてもよい。
【0341】
 ライザー出口でのクラッキングした蒸気の温度は、約510℃∼621℃(950°F
∼1150°F)であろう。しかし、ライザー出口の温度が566℃(1050°F)よ
り高いと、もっと気体は乾燥し、もっとオレフィンが増える。一方、ライザー出口の温度
が566℃(1050°F)より低いと、エチレン及びプロピレンが減る。従って、約5
66℃∼約630℃の好ましい温度で、約138kPa∼約240kPa(20∼35p 10
sia)の好ましい圧力で、FCCプロセスを行うことが好ましい。このプロセスの別の
条件は、脂質組成物に対する触媒の比率であり、この比率は、約5∼約20、好ましくは
、約10∼約15の間で異なる。
【0342】
 ジェット燃料を生成する方法の一実施形態では、脂質組成物は、FCC反応槽のリフト
部分に導入される。リフト部分での温度は、非常に熱く、約700℃(1292°F)∼
約760℃(1400°F)の範囲であり、脂質組成物に対する触媒の比率は、約100
∼約150であろう。脂質組成物をリフト部分に導入すると、かなりの量のプロピレン及
びエチレンを生成するであろうことが予測される。
【0343】 20
 本明細書で記載されるとおり生成した脂質組成物及び脂質を用い、ジェット燃料を生成
する方法の別の実施形態では、脂質組成物又は脂質の構造は、水素化脱酸素(HDO)と
呼ばれるプロセスによって破壊される。HDOは、水素を用いて酸素を除去することを意
味し、つまり、この材料の構造を破壊しつつ、酸素を除去することを意味する。オレフィ
ン系二重結合を水素化し、任意の硫黄化合物及び窒素化合物を除去する。硫黄の除去は、
水素化脱硫黄(HDS)と呼ばれる。原材料(脂質組成物又は脂質)の前処理及び純度は
、触媒の寿命に関わる。
【0344】
 一般的に、HDO/HDS工程において、水素を、供給原料(脂質組成物又は脂質)と
混合し、この混合物を、並流として、単一成分又は二成分の供給原料として触媒床に流す 30
。HDO/MDS工程の後、生成物の画分を分離し、別個の異性化反応槽に流す。生物学
的出発物質のための異性化反応槽は、並流反応槽として文献に記載されている(FI 1
00 248)。
【0345】
 供給される炭化水素、例えば、本明細書の脂質組成物又は脂質を水素化することによっ
て燃料を生成するプロセスは、脂質組成物又は脂質を、第1の水素化ゾーンを通って水素
ガスとともに並流として流すことによって行われ、その後に、水素ガスを、炭化水素流出
物に対して向流で第2の水素化ゾーンに流すことによって、炭化水素流出物を第2の水素
化ゾーンでさらに水素化する。C2∼C5オレフィンを生成するために、脂質組成物をク
ラッキングするのに有用な、例示的なHDO用途及び触媒は、米国特許第7,232,9 40
35号に記載されており、内容全体が参照により組み込まれる。
【0346】
 典型的には、水素化脱酸素工程において、本明細書の脂質組成物又は脂質のような生物
学的成分の構造は分解され、酸素化合物、窒素化合物、リン化合物、硫黄化合物、軽質炭
化水素が気体として除去され、オレフィン性結合は水素化される。このプロセスの第2の
工程、すなわち、いわゆる異性化工程では、炭化水素鎖を分岐させ、低温でパラフィンの
性能を向上させるために、異性化が起こる。
【0347】
 クラッキングプロセスの第1の工程、すなわち、HDO工程では、水素ガス及び水素化
されるべき本明細書の脂質組成物又は脂質は、HDO触媒床系に向かって並流又は向流で 50
(88) JP 2018-99138 A 2018.6.28

流れ、この触媒床系は、1つ以上の触媒床、好ましくは、1∼3個の触媒床を有する。H
DO工程は、典型的には、並流の様式で操作される。2種以上の触媒床を含むHDO触媒
床系の場合には、床のうち1つ以上を、向流の原理を用いて操作してもよい。HDO工程
では、圧力は、20∼150barを変動し、好ましくは、50∼100barを変動し
、温度は、200∼500℃で変動し、好ましくは、300∼400℃の範囲で変動する
。HDO工程では、周期律表のVII族及び/又はVIB族の金属を含む既知の水素化触
媒を用いてもよい。好ましくは、水素化触媒は、担持されたPd、Pt、Ni、NiMo
又はCoMoの触媒であり、担持体は、アルミナ及び/又はシリカである。典型的には、
NiMo/Al2O3触媒及びCoMo/Al2O3触媒を用いる。
【0348】 10
 HDO工程の前に、本明細書の脂質組成物又は脂質を、場合により、穏和な条件下で前
水素化することにより処理し、二重結合の副作用を避けることができる。このような前水
素化は、前水素化触媒存在下、温度が50∼400℃、水素圧が1∼200bar、好ま
しくは、150∼250℃の温度で、水素圧が10∼100barで行われる。触媒は、
周期律表のVIII族及び/又はVIB族の金属を含んでいてもよい。好ましくは、前水
素化触媒は、担持されたPd、Pt、Ni、NiMo又はCoMoの触媒であり、担持体
は、アルミナ及び/又はシリカである。
【0349】
 HDO工程からの水素を含む気体の流れを冷却し、次いで、一酸化炭素、二酸化炭素、
窒素化合物、リン化合物、硫黄化合物、気体状軽質炭化水素及び他の不純物をここから除 20
去する。圧縮した後、精製された水素又はリサイクルされた水素を第1の触媒床に戻すか
、及び/又は、触媒床の間に戻し、抜き取られた気体の流れを構成する。圧縮された液体
から水が取り除かれる。この液体を第1の触媒又は触媒床の間に流す。
【0350】
 HDO工程の後、生成物に対し、異性化工程を行う。このプロセスにとって、炭化水素
を異性化触媒と接触させる前に、可能な限り完全に不純物が除去されることが重要である
。異性化工程は、場合により、ストリッピング工程を含んでおり、HDO工程の反応生成
物を、水蒸気又は軽質炭化水素、窒素又は水のような適切な気体を用いてストリッピング
することによって精製してもよい。この場合によって行われるストリッピング工程は、異
性化触媒の上流にあるユニットで、向流様式で行われ、気体及び液体が互いに接触するか 30
、又は向流の原理を利用する別個のストリッピングユニット中、実際の異性化反応槽の前
に行われる。
【0351】
ストリッピング工程の後、水素ガス及び本明細書の水素化された脂質組成物又は脂質と、
場合により、n−パラフィン混合物は、1個又は複数個の触媒床を含む反応異性化ユニッ
トを通る。異性化工程の触媒床は、並流又は向流の様式で操作されてもよい。
【0352】
 このプロセスについて、異性化工程に向流の原理が適用されることが重要である。異性
化工程では、このことは、場合により行われるストリッピング工程、又は異性化反応工程
、又はこの両方の工程を向流の様式で行うことによってなされる。異性化工程では、圧力 40
は、20∼150bar、好ましくは、20∼100barの範囲で変動し、温度は、2
00∼500℃、好ましくは、300∼400℃である。異性化工程では、当該技術分野
で知られている異性化触媒を用いてもよい。適切な異性化触媒は、分子ふるい及び/又は
VII属の金属及び/又はキャリアを含んでいる。好ましくは、異性化触媒は、SAPO
−11又はSAPO41又はZSM−22又はZSM−23又はフェライト、Pt、Pd
又はNi、Al2O3又はSiO2を含む。典型的な異性化触媒は、例えば、Pt/SA
PO−11/Al2O3、Pt/ZSM−22/Al2O3、Pt/ZSM−23/Al
2O3、Pt/SAPO−11/SiO2である。異性化工程及びHDO工程は、同じ加
圧容器で行われてもよく、別個の加圧容器で行われてもよい。場合により行われる前水素
化は、HDO工程及び異性化工程と加圧容器で行われてもよく、別個の加圧容器で行われ 50
(89) JP 2018-99138 A 2018.6.28

てもよい。
【0353】
 従って、一実施形態では、1つ以上の化学反応の生成物は、HRJ−5を含むアルカン
混合物である。別の実施形態では、1つ以上の化学反応の生成物は、ASTM D165
5ジェット燃料を含むアルカン混合物である。ある実施形態では、ASTM 1655ジ
ェット燃料の仕様に適合する組成物は、硫黄含有量が10ppm未満である。他の実施形
態では、ASTM 1655ジェット燃料の仕様に適合する組成物は、蒸留曲線のT10
値が、205℃未満である。別の実施形態では、ASTM 1655ジェット燃料の仕様
に適合する組成物は、最終沸点(FBP)が300℃未満である。別の実施形態では、A
STM 1655ジェット燃料の仕様に適合する組成物は、引火点が少なくとも38℃で 10
ある。別の実施形態では、ASTM 1655ジェット燃料の仕様に適合する組成物は、
密度が775K/M3∼840K/M3である。さらに別の実施形態では、ASTM 1
655ジェット燃料の仕様に適合する組成物は、凍結点が−47℃未満である。別の実施
形態では、ASTM 1655ジェット燃料の仕様に適合する組成物は、正味の燃焼熱が
、少なくとも42.8MJ/Kである。別の実施形態では、ASTM 1655ジェット
燃料の仕様に適合する組成物は、水素含有量が、少なくとも13.4質量%である。別の
実施形態では、ASTM 1655ジェット燃料の仕様に適合する組成物は、定量重量分
析JFTOTで、260℃で試験した場合、熱安定性を有し、Hg3mm未満である。別
の実施形態では、ASTM 1655ジェット燃料の仕様に適合する組成物は、存在する
ガム状物が7mg/dl未満である。 20
【0354】
 従って、本発明は、微細藻類の脂質を化学的に改変し、種々の工業用途及び他の用途で
有用な生成物を得る種々の方法を開示している。本明細書に開示されている方法によって
精製する油を改変するプロセスの例としては、限定されないが、油の加水分解、油の水素
化処理、油のエステル化が挙げられる。微細藻類脂質の他の化学的な改変としては、限定
なしに、エポキシ化、酸化、加水分解、硫酸化、スルホン化、エトキシ化、プロポキシル
化、アミド化、及び鹸化が挙げられる。微細藻類の油の改変によって、望ましい機能のた
めに選択された誘導体の油脂化学品へとさらに改変することが可能な、基本的な油脂化学
品が得られる。燃料生成プロセスについて上述のと類似した様式で、これらの化学的な改
変を、本明細書に記載されている微生物の培養物から生成した油に対して行ってもよい。 30
基本的な油脂化学品の例としては、限定されないが、石鹸、脂肪酸、脂肪酸エステル、脂
肪族アルコール、脂肪族窒素化合物、脂肪酸メチルエステル、及びグリセロールが挙げら
れる。誘導体の油脂化学品の例としては、限定されないが、脂肪族ニトリル、エステル、
ダイマー酸、四級アンモニウムカチオン、界面活性剤、脂肪族アルカノールアミド、脂肪
族アルコールサルフェート、樹脂、乳化剤、脂肪族アルコール、オレフィン、掘削泥、ポ
リオール、ポリウレタン、ポリアクリレート、ゴム、ロウソク、化粧品、金属石鹸、石鹸
、α−スルホン酸化メチルエステル、脂肪族アルコールサルフェート、脂肪族アルコール
エトキシレート、脂肪族アルコールエーテルサルフェート、イミダゾリン、界面活性剤、
デタージェント、エステル、四級アンモニウムカチオン、オゾン分解生成物、脂肪族アミ
ン、脂肪族アルカノールアミド、エトキシサルフェート、モノグリセリド、ジグリセリド 40
、トリグリセリド(中鎖トリグリセリドを含む)、潤滑剤、油圧作動液、グリース、誘電
性流体、離型剤、金属加工液、熱媒液、他の機能液、工業用化学物質(例えば、クリーナ
ー、繊維加工助剤、可塑剤、安定剤、添加剤)、表面塗料、塗料及びラッカー、電気配線
絶縁材、及び高級アルカンが挙げられる。
【0355】
 本発明の方法によって生成するグリセロ脂質に由来する脂肪酸構成要素を加水分解する
ことによって、他の有用な化学物質を生成するように誘導体化することが可能な遊離脂肪
酸が得られる。加水分解は、水及び触媒の存在下で起こり、触媒は、酸であっても、塩基
であってもよい。以下に報告されているように、放出された遊離脂肪酸を誘導体化して、
種々の生成物を得ることができる。米国特許第5,304,664号(Highly s 50
(90) JP 2018-99138 A 2018.6.28

ulfated fatty acids);第7,262,158号(Cleansi
ng compositions);第7,115,173号(Fabric soft
ener compositions);第6,342,208号(Emulsions
 for treating skin);第7,264,886号(Water re
pellant compositions);第6,924,333号(Paint 
additives);第6,596,768号(Lipid−enriched ru
minant feedstock);第6,380,410号(Surfactant
s for detergents and cleaners)。
【0356】
 加水分解に関し、本発明の一実施形態では、トリグリセリド油脂を、場合により、まず 10
、水又は水酸化ナトリウムのような液体培地中で加水分解し、グリセロール及び石鹸を得
る。種々の適切なトリグリセリド加水分解方法が存在し、限定されないが、鹸化、酸加水
分解、アルカリ加水分解、酵素加水分解(本明細書で、分解とも呼ばれる)、加圧熱水を
用いた加水分解が挙げられる。当業者は、油脂化学品を生成するためにトリグリセリド油
脂を加水分解する必要はないことを理解するだろう。むしろ、油を、他の既知のプロセス
によって、望ましい油脂化学品に直接変換してもよい。例えば、トリグリセリド油脂を、
エステル化によって、メチルエステル脂肪酸に直接変換してもよい。
【0357】
 ある実施形態では、本明細書に開示されている方法によって生成した油の触媒的加水分
解は、油をグリセロールと脂肪酸とに分解することによって起こる。上述のとおり、脂肪 20
酸を、誘導体の油脂化学品を得るためのいくつかの他の改変によって、さらに処理しても
よい。例えば、一実施形態では、脂肪酸は、アミノ化反応を受け、脂肪族窒素化合物を生
成してもよい。別の実施形態では、脂肪酸は、オゾン分解を受け、一塩基酸及び二塩基酸
を生成してもよい。
【0358】
 他の実施形態では、加水分解は、本明細書で生成した油の分解によって起こり、油脂化
学品を生成してもよい。いくつかの本発明の好ましい実施形態では、トリグリセリド油脂
を分解してから、他のプロセスを行ってもよい。当業者は、限定されないが、酵素分解及
び加圧分解を含む多くの適切なトリグリセリド分解方法が存在することを認識しているで
あろう。 30
【0359】
 一般的に、酵素による油分解方法は、酵素リパーゼを、水/油混合物に作用する生体触
媒として使用する。次いで、酵素分解によって、油又は脂肪を、それぞれグリセロールと
遊離脂肪酸とに分解する。次いで、グリセロールは、水相に移動し、一方、有機相には、
遊離脂肪酸が豊富に含まれる。
【0360】
 酵素分解反応は、一般的に、有機相と水相との間の相の境界で起こり、酵素は、相の境
界にしか存在しない。相の境界に来たトリグリセリドが、分解反応に寄与するか、又は分
解反応に参加する。反応が進むにつれて、脂肪酸の占有密度又は濃度が、遊離脂肪酸と比
較すると、まだグリセリドと化学的に結合しており、相の境界での占有密度又は濃度が低 40
くなり、その結果、反応が遅くなる。特定の実施形態では、酵素分解を室温で行ってもよ
い。当業者は、所望な脂肪酸へと分解するのに適切な条件を知っているであろう。
【0361】
 例として、反応速度は、界面の境界面が増えることによって速くすることができる。反
応が終了したら、遊離脂肪酸を、有機相から酵素を含まずに分離し、まだグリセリドと化
学的に結合した脂肪酸を含む残渣を、再び再び供給するか、又はリサイクルし、分解させ
るべき新しい油又は脂肪と混合する。この様式で、リサイクルされたグリセリドについて
、次いで、さらなる酵素分解プロセスを行う。ある実施形態では、遊離脂肪酸を、このよ
うな様式で部分的に分解した油又は脂肪から抽出する。この様式で、化学的に結合してい
る脂肪酸(トリグリセリド)が、分解プロセスに戻されるか、又は再び供給される場合、 50
(91) JP 2018-99138 A 2018.6.28

酵素の消費を顕著に減らすことができる。
【0362】
 分解度は、測定した酸価を、所与の油又は脂肪からコンピューターで割り出すことが可
能な理論的に可能な酸価で割った比率として決定される。好ましくは、酸価は、標準的な
一般的な方法による滴定手段によって測定される。又は、グリセロール水相の密度は、分
解度の測定値として測ることができる。
【0363】
 一実施形態では、本明細書に記載されているような分解プロセスは、生成した油のアル
カリ精製プロセスから得られる、いわゆる石鹸ストックに含まれるモノグリセリド、ジグ
リセリド、トリグリセリドを分解するのにも適している。このように、石鹸ストックは、 10
それより前に天然の油が脂肪酸へと鹸化されることなく、定量的に変換することができる
。この目的で、石鹸に化学的に結合している脂肪酸は、好ましくは、酸を加えることによ
って、分解の前に放出される。特定の実施形態では、分解プロセスのために、水及び酵素
に加えて、緩衝溶液を用いる。
【0364】
 一実施形態では、本発明の方法に従って生成した油に対し、加水分解方法として鹸化を
行うことができる。動物性油及び植物性油は、典型的には、遊離脂肪酸と三価アルコール
であるグリセロールとのエステルであるトリグリセリド(TAG)から作られる。アルカ
リ加水分解反応において、TAG中のグリセロールが除去され、ナトリウム又はカリウム
のようなアルカリ金属と会合し、脂肪酸塩を生成することができる、3個のカルボン酸ア 20
ニオンが残る。このスキームで、カルボン酸の構成要素が、グリセロール部分から開裂し
、ヒドロキシル基によって置き換えられる。この反応で用いられる塩基(例えば、KOH
)の量は、望ましい鹸化度によって決定される。目的が、例えば、TAG組成物に元も存
在している油をいくらか含んでいる石鹸を生成することである場合、TAGの全てを脂肪
酸に変換するのには十分でない塩基の量が、反応混合物に入れられる。通常は、この反応
は水溶液中で行われ、ゆっくりと進むが、熱を加えて反応を速め得る。脂肪酸塩の沈殿は
、例えば、水溶性のアルカリ金属ハロゲン化物(例えば、NaCl又はKCl)のような
塩を反応混合物に加えることによって促進され得る。好ましくは、塩基は、NaOH又は
KOHのようなアルカリ金属の水酸化物である。又は、例えば、トリエタノールアミン及
びアミノメチルプロパノールを含め、アルカノールアミンのような他の塩基を反応スキー 30
ムで用いてもよい。ある場合では、これらの代替法は、透明な石鹸製品を作るのに好まし
い場合がある。一実施形態では、鹸化に供される脂質組成物は、本明細書に記載されると
おり生成された獣脂の模倣物(すなわち、獣脂の組成と同様の脂質組成物)、又は獣脂の
模倣物の別のトリグリセリド油脂とのブレンドである。
【0365】
 いくつかの方法では、化学的な改変の第1の工程は、二重結合を飽和させるための水素
化処理であってもよく、次いで、水素及び触媒が存在する条件下、高温で脱酸素を行う。
他の方法では、水素化及び脱酸素は、同じ反応で行ってもよい。さらに他の方法では、脱
酸素は、水素化の前に行う。次いで、場合により、異性化を行ってもよく、これも水素及
び触媒の存在下で行ってもよい。最後に、所望の場合、気体及びナフサ成分を除去するこ 40
とができる。例えば、米国特許第5,475,160号(hydrogenation 
of triglycerides);第5,091,116号(deoxygenat
ion,hydrogenation and gas removal);第6,39
1,815号(hydrogenation);第5,888,947号(isomer
ization)を参照。
【0366】
 本発明のある実施形態では、トリグリセリド油脂を、部分的に脱酸素するか、又は完全
に脱酸素する。脱酸素反応によって、限定されないが、脂肪酸、脂肪族アルコール、ポリ
オール、ケトン、アルデヒドのような所望な生成物が得られる。一般的に、いかなる特定
の理論によっても限定されないが、脱酸素反応は、限定されないが、水素化分解、水素化 50
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、連続的な水素化−水素化分解、連続的な水素化分解−水素化、水素化−水素化分解反応
の組み合わせを含む種々の異なる反応経路の組み合わせを含んでおり、その結果、脂肪酸
又は脂肪酸エステルから酸素が少なくとも部分的に除去され、脂肪族アルコールのような
反応生成物が生成し、さらなるプロセスによって、この生成物を所望な化学物質へと簡単
に変換することができる。例えば、一実施形態では、脂肪族アルコールを、FCC反応に
よってオレフィンへと変換してもよく、縮合反応によって高級アルカンへと変換してもよ
い。
【0367】
 このような化学的な改変のひとつは水素化であり、水素化は、グリセロ脂質又は遊離脂
肪酸の脂肪酸構成要素中にある二重結合に水素を添加することである。水素化プロセスに 10
よって、液体の油が、特定の用途ではさらに適切な場合がある半固体又は固体の脂肪へと
変換される。
【0368】
 本明細書に記載の方法によって生成する油の水素化は、米国特許第7,288,278
号(Food additives or medicaments);第5,346,
724号(Lubrication products);第5,475,160号(F
atty alcohols);第5,091,116号(Edible oils);
第6,808,737号(Structural fats for margarin
e and spreads);第5,298,637号(Reduced−calor
ie fat substitutes);第6,391,815号(Hydrogen 20
ation catalyst and sulfur adsorbent);第5,
233,099号及び第5,233,100号(Fatty alcohols);第4
,584,139号(Hydrogenation catalysts);第6,05
7,375号(Foam suppressing agents);第7,118,7
73号(Edible emulsion spreads)に報告されているとおり、
本明細書で提供している1つ以上の方法及び/又は材料と組み合わせて行うことができる

【0369】
 当業者は、種々のプロセスを用いて炭水物を水素化してもよいことを認識するだろう。
適切な方法のひとつは、炭水化物を、水素化反応槽中で、水素化生成物を得るのに十分な 30
条件で、水素又は適切な気体と混合した水素及び触媒と接触させることを含む。水素化触
媒は、一般的に、Cu、Re、Ni、Fe、Co、Ru、Pd、Rh、Pt、Os、Ir
、及びこれらの合金又は任意の組み合わせを、単独で、又は、W、Mo、Au、Ag、C
r、Zn、Mn、Sn、B、P、Bi、及びこれらの合金又は任意の組み合わせのような
プロモーターとともに含んでいてもよい。他の有効な水素化触媒材料としては、レニウム
で改変された、担持されたニッケル又はルテニウムが挙げられる。一実施形態では、水素
化触媒も、触媒の望ましい機能性に依存して、任意の担持体を含んでいてもよい。水素化
触媒を、当業者に既知の方法によって調製してもよい。
【0370】
 ある実施形態では、水素化触媒は、担持されたVIII属の金属触媒、金属スポンジ材 40
料(例えば、スポンジニッケル触媒)を含んでいる。ラネーニッケルは、本発明で用いる
のに適した、活性化されたスポンジニッケルの一例である。他の実施形態では、本発明の
水素化反応は、ニッケル−レニウム触媒又はタングステンによって改変されたニッケル触
媒を含む触媒を用いて行われる。本発明の水素化反応に適切な触媒の一例は、炭素に担持
されたニッケル−レニウム触媒である。
【0371】
 一実施形態では、適切なラネーニッケル触媒を、適切な等重量のニッケル及びアルミニ
ウムの合金を、アルカリ水溶液、例えば、約25重量%の水酸化ナトリウムを含むアルカ
リ水溶液で処理することによって調製し得る。アルミニウムを、アルカリ水溶液によって
選択的に溶解し、ほとんどがニッケルで、少量のアルミニウムを含むスポンジ型の材料を 50
(93) JP 2018-99138 A 2018.6.28

得る。最初の合金は、生成したスポンジニッケル触媒に約1∼2重量%が残るような量で
、プロモーター金属(すなわち、モリブデン又はクロム)を含んでいる。別の実施形態で
は、水素化触媒は、ニトロシル硝酸ルテニウム(III)、塩化ルテニウム(III)の
水溶液を用い、適切な支持材料に含浸させて調製する。次いで、この溶液を乾燥させ、含
水量が約1重量%未満の固体を得る。次いで、回転式のボール型炉で、水素を流しつつ、
300℃(焼成しない)∼400℃(焼成する)で4時間かけて、この固体を大気圧で還
元してもよい。冷却し、触媒を窒素で不活性化した後、窒素中、5容積%の酸素を触媒に
2時間流す。
【0372】
 特定の実施形態では、記載されている触媒は、触媒担持体を含む。触媒担持体は、触媒 10
を安定化し、担持する。使用される触媒担持体の種類は、選択した触媒及び反応条件に依
存する。本発明に適した担持体としては、限定されないが、炭素、シリカ、シリカ−アル
ミナ、ジルコニア、チタニア、セリア、バナジア、窒化物、窒化ホウ素、ヘテロポリ酸、
ヒドロキシアパタイト、酸化亜鉛、クロミア、ゼオライト、カーボンナノチューブ、炭素
フラーレン、及びこれらの任意の組み合わせが挙げられる。
【0373】
 本発明で用いられる触媒は、当業者に既知の従来の方法を用いて調製することができる
。適切な方法としては、限定されないが、初期湿潤法、蒸発させ、含浸させる方法、化学
蒸着法、洗浄−コーティング、マグネトロンスパッタリング技術などが挙げられる。
【0374】 20
 水素化反応を行う際の条件は、出発物質及び望ましい生成物の種類によって変わるだろ
う。当業者は、本開示の利益とともに、適切な反応条件を認識しているであろう。一般的
に、水素化反応は、80℃∼250℃の温度で行われ、好ましくは、90℃∼200℃、
最も好ましくは、100℃∼150℃の温度で行われる。ある実施形態では、水素化反応
は、500KPa∼14000KPaの圧力で行われる。
【0375】
 本発明の水素化分解反応で用いられる水素としては、外から加えられる水素、リサイク
ルした水素、系中で生成した水素、及びこれらの任意の組み合わせが挙げられる。本明細
書で使用される場合、用語「外から加えられる水素」は、バイオマス反応自体に由来する
水素ではなく、別の供給源からシステムに加えられた水素を指す。 30
【0376】
 本発明のある実施形態では、出発物質の炭水化物を、小さな分子に変換することが望ま
しく、この小さな分子は、望ましい高級炭化水素へと簡単に変換されるだろう。この変換
の適切な方法のひとつは、水素化分解反応によるものである。炭水化物の水素化分解を行
う種々のプロセスが知られている。適切な方法のひとつは、水素化分解反応槽中で、小さ
な分子又はポリオールを含む反応生成物を得るのに十分な条件で、水素又は適切な気体と
混合した水素及び水素化分解触媒と接触させることを含む。本明細書では、用語「小さな
分子又はポリオール」は、小さな分子量を有する任意の分子を含み、出発の炭水化物より
も炭素原子又は酸素原子の数が少ないものを含み得る。一実施形態では、この反応生成物
は、ポリオール及びアルコールを含む小さな分子を含む。当業者は、水素化分解反応を行 40
うのに適切な方法を選択することができるであろう。
【0377】
 ある実施形態では、5炭糖及び/又は6炭糖又は糖アルコールを、水素化分解触媒を用
い、プロピレングリコール、エチレングリコール、グリセロールに変換してもよい。水素
化分解触媒としては、Cr、Mo、W、Re、Mn、Cu、Cd、Fe、Co、Ni、P
t、Pd、Rh、Ru、Ir、Os及びこれらの合金又は任意の組み合わせを、単独で、
又は、Au、Ag、Cr、Zn、Mn、Sn、Bi、B、O、及びこれらの合金又は任意
の組み合わせのようなプロモーターとともに含んでいてもよい。また、水素化分解触媒は
、遷移金属(例えば、クロム、モリブデン、タングステン、レニウム、マンガン、銅、カ
ドミウム)又はVIII族の金属(例えば、鉄、コバルト、ニッケル、白金、パラジウム 50
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、ロジウム、ルテニウム、イリジウム、オスミウム)を含む炭素系パイロポリマー触媒を
含んでいてもよい。特定の実施形態では、水素化分解触媒は、上述の金属を、アルカリ土
類金属酸化物と組み合わせたもの、又は、触媒活性のある担持体に接着したものを含んで
いてもよい。特定の実施形態では、水素化分解反応で記載されている触媒は、水素化反応
について上に記載したような触媒担持体を含んでいてもよい。
【0378】
 水素化分解反応を行う際の条件は、出発物質及び望ましい生成物の種類によって変わる
だろう。当業者は、本開示の利益とともに、この反応を行うのに適切な反応条件を認識し
ているであろう。一般的に、水素化分解反応は、110℃∼300℃の温度で行われ、好
ましくは、170℃∼220℃、最も好ましくは、200℃∼225℃の温度で行われる 10
。ある実施形態では、水素化分解反応は、塩基性条件で行われ、好ましくは、pHが8∼
13、さらにより好ましくは、pHが10∼12の条件で行われる。ある実施形態では、
水素化分解反応は、60KPa∼16500KPaの範囲の圧力で、好ましくは、170
0KPa∼14000KPa、さらにより好ましくは、4800KPa∼11000KP
aの圧力で行われる。
【0379】
 本発明の水素化分解反応で用いられる水素としては、外から加えられる水素、リサイク
ルした水素、系中で生成した水素、及びこれらの任意の組み合わせが挙げられる。
【0380】
 ある実施形態では、上述の反応生成物を、縮合反応槽中、縮合反応によって高級な炭化 20
水素へと変換されてもよい。このような実施形態では、反応生成物の縮合は、高級な炭化
水素を生成することが可能な触媒が存在する条件で行われる。理論によって限定されるこ
とを意図していないが、高級な炭化水素の生成は、炭素−炭素結合、又は炭素−酸素結合
の生成を含む、段階的な付加反応によって進むと考えられる。得られた反応生成物は、以
下にさらに詳細に記載されるとおり、これらの部分を含む任意の数の化合物を含んでいる

【0381】
 特定の実施形態では、適切な縮合触媒としては、酸触媒、塩基触媒、又は酸/塩基触媒
が挙げられる。本明細書で使用される場合、用語「酸/塩基触媒」は、酸と塩基の両方の
機能を有する触媒を指す。ある実施形態では、縮合触媒としては、限定されないが、ゼオ 30
ライト、カーバイド、窒化物、ジルコニア、アルミナ、シリカ、アルミノシリケート、ホ
スフェート、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化バナジウム、酸化ランタン、酸化イットリウム
、酸化スカンジウム、酸化マグネシウム、酸化セリウム、酸化バリウム、酸化カルシウム
、水酸化物、ヘテロポリ酸、無機酸、酸で改変された樹脂、塩基で改変された樹脂、及び
これらの任意の組み合わせが挙げられる。ある実施形態では、縮合触媒としては、改変剤
も含まれる。適切な改変剤としては、La、Y、Sc、P、B、Bi、Li、Na、K、
Rb、Cs、Mg、Ca、Sr、Ba、及びこれらの任意の組み合わせが挙げられる。あ
る実施形態では、縮合触媒は、金属を含んでいてもよい。適切な金属としては、Cu、A
g、Au、Pt、Ni、Fe、Co、Ru、Zn、Cd、Ga、In、Rh、Pd、Ir
、Re、Mn、Cr、Mo、W、Sn、Os、合金、及びこれらの組み合わせが挙げられ 40
る。
【0382】
 特定の実施形態では、縮合反応で記載されている触媒は、水素化反応について上に記載
した触媒担持体を含んでいてもよい。特定の実施形態では、縮合触媒は、自立型である。
本明細書で使用される場合、用語「自立型」は、触媒が、担持体として機能する別の材料
を必要としないことを意味する。他の実施形態では、縮合触媒を、触媒を担持するのに適
した別個の担持体と組み合わせて使用する。一実施形態では、縮合触媒担持体は、シリカ
である。
【0383】
 縮合反応が起こる条件は、出発物質及び望ましい生成物の種類によって変わるだろう。 50
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当業者は、本開示の利益とともに、この反応を行うのに適切な反応条件を認識しているで
あろう。ある実施形態では、縮合反応は、提示されている反応の熱力学が好ましくなるよ
うな温度で行われる。縮合反応の温度は、出発物質の特定のポリオール又はアルコールに
よって変わるだろう。ある実施形態では、縮合反応の温度は、80℃∼500℃の範囲で
あり、好ましくは、125℃∼450℃、最も好ましくは、125℃∼250℃の範囲で
ある。ある実施形態では、縮合反応は、0Kpa∼9000KPaの範囲の圧力で行われ
、好ましくは、0KPa∼7000KPa、さらにより好ましくは、0KPa∼5000
KPaの範囲の圧力で行われる。
【0384】
 本発明で得られる高級なアルカンとしては、限定されないが、炭素原子が4∼30個の 10
分枝鎖又は直鎖のアルカン、炭素原子が4∼30個の分枝鎖又は直鎖のアルケン、炭素原
子が5∼30個のシクロアルカン、炭素原子が5∼30個のシクロアルケン、アリール、
縮合アリール、アルコール、ケトンが挙げられる。適切なアルカンとしては、限定されな
いが、ブタン、ペンタン、ペンテン、2−メチルブタン、ヘキサン、ヘキセン、2−メチ
ルペンタン、3−メチルペンタン、2,2,−ジメチルブタン、2,3−ジメチルブタン
、ヘプタン、ヘプテン、オクタン、オクテン、2,2,4−トリメチルペンタン、2,3
−ジメチルヘキサン、2,3,4−トリメチルペンタン、2,3−ジメチルペンタン、ノ
ナン、ノネン、デカン、デセン、ウンデカン、ウンデセン、ドデカン、ドデセン、トリデ
カン、トリデセン、テトラデカン、テトラデセン、ペンタデカン、ペンタデセン、ノニル
デカン、ノニルデセン、エイコサン、エイコセン、ウンエイコサン、ウンエイコセン、ド 20
エイコサン、ドエイコセン、トリエイコサン、トリエイコセン、テトラエイコサン、テト
ラエイコセン、及びこれらの異性体が挙げられる。これらの生成物のいくつかは、燃料と
して用いるのに適し得る。
【0385】
 ある実施形態では、シクロアルカン及びシクロアルケンは置換されていない。他の実施
形態では、シクロアルカン及びシクロアルケンは、一置換されている。さらに他の実施形
態では、シクロアルカン及びシクロアルケンは、多置換されている。置換されたシクロア
ルカン及びシクロアルケンを含む実施形態では、置換された基としては、限定されないが
、炭素原子が1∼12個の分枝鎖又は直鎖のアルキル、炭素原子が1∼12個の分枝鎖又
は直鎖のアルキレン、フェニル、及びこれらの任意の組み合わせが挙げられる。適切なシ 30
クロアルカン及びシクロアルケンとしては、限定されないが、シクロペンタン、シクロペ
ンテン、シクロヘキサン、シクロヘキセン、メチル−シクロペンタン、メチル−シクロペ
ンテン、エチル−シクロペンタン、エチル−シクロペンテン、エチル−シクロヘキサン、
エチル−シクロヘキセン、及びこれらの異性体、及び任意のこれらの組み合わせが挙げら
れる。
【0386】
 ある実施形態では、生成したアリールは、置換されていない。別の実施形態では、生成
したアリールは、一置換されている。置換アリールを含む実施形態では、置換された基と
しては、限定されないが、炭素原子が1∼12個の分枝鎖又は直鎖のアルキル、炭素原子
が1∼12個の分枝鎖又は直鎖のアルキレン、フェニル、及び任意のこれらの組み合わせ 40
が挙げられる。本発明に適したアリールとしては、限定されないが、ベンゼン、トルエン
、キシレン、エチルベンゼン、パラキシレン、メタキシレン、及び任意のこれらの組み合
わせが挙げられる。
【0387】
 本発明で生成したアルコールは、炭素原子を4∼30個有している。ある実施形態では
、アルコールは環状である。他の実施形態では、アルコールは、分岐している。別の実施
形態では、アルコールは、直鎖である。本発明に適したアルコールとしては、限定されな
いが、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、ノナノ
ール、デカノール、ウンデカノール、ドデカノール、トリデカノール、テトラデカノール
、ペンタデカノール、ヘキサデカノール、ヘプチルデカノール、オクチルデカノール、ノ 50
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ニルデカノール、エイコサノール、ウンエイコサノール、ドエイコサノール、トリエイコ
サノール、テトラエイコサノール、及びこれらの異性体が挙げられる。
【0388】
 本明細書で生成するケトンは、炭素原子を4∼30個有している。一実施形態では、ケ
トンは環状である。別の実施形態では、ケトンは、分岐している。別の実施形態では、ケ
トンは、直鎖である。本発明に適したケトンとしては、限定されないが、ブタノン、ペン
タノン、ヘキサノン、ヘプタノン、オクタノン、ノナノン、デカノン、ウンデカノン、ド
デカノン、トリデカノン、テトラデカノン、ペンタデカノン、ヘキサデカノン、ヘプチル
デカノン、オクチルデカノン、ノニルデカノン、エイコサノン、ウンエイコサノン、ドエ
イコサノン、トリエイコサノン、テトラエイコサノン、及びこれらの異性体が挙げられる 10

【0389】
 別のこのような化学的な改変は、インターエステル化である。天然で生成するグリセロ
脂質は、脂肪酸の構成要素が均一に分布していない。油に関しては、インターエステル化
は、異なるグリセロ脂質の2個のエステル間のアシル基が交換することを指す。インター
エステル化のプロセスは、グリセロ脂質の混合物の脂肪酸構成要素を、分布パターンを改
変するように再配置することができるという機構を与える。インターエステル化は、よく
知られている化学プロセスであり、一般的には、アルカリ金属又はアルカリ金属アルキレ
ート(例えば、ナトリウムメトキシド)のような触媒存在下、油混合物を所定時間(例え
ば、30分)加熱すること(約200℃まで)を含む。このプロセスを用い、油混合物の 20
脂肪酸構成要素の分布パターンをランダム化することができ、又は、望ましい分布パター
ンを作成するようにすることができる。このような脂質の化学的な改変方法は、本明細書
に与えられている材料、例えば、細胞乾燥重量の割合で、脂質として少なくとも20%含
む微生物バイオマスで行うことができる。
【0390】
 脂肪酸の特定の分布パターンを求める、方向性を持ったインターエステル化は、油混合
物を、融解が起こり得るいくつかのTAGの融点よりも低い温度に維持することによって
行うことができる。これにより、これらのTAGが選択的に結晶化し、それらが結晶化す
る際に、反応混合物から効果的に除去される。このプロセスを、例えば、油中のほとんど
の脂肪酸が沈殿するまで行ってもよい。方向性を持ったインターエステル化を、例えば、 30
長鎖脂肪酸を、これよりも鎖が短い対応する脂肪酸と置き換えることによって、カロリー
含有量が低い生成物を得るために使用してもよい。また、方向性を持ったインターエステ
ル化を用い、望ましくないtrans異性体を生じてしまう可能性がある水素化を行うこ
となく、所望の融解特性を有しており、食品添加物又は製品(例えば、マーガリン)中で
求められている構造的特徴を有するような脂肪混合物を含む生成物を得ることができる。
【0391】
 本明細書で記載されている方法によって生成する油のインターエステル化は、1つ以上
の方法及び/又は材料、又は米国特許第6,080,853号(Nondigestib
le fat substituted);第4,288,378号(Peanut b
utter stabilizer);第5,391,383号(Edible spr 40
ay oil);第6,022,577号(Edible fats for food
 products);第5,434,278号(Edible fats for f
ood products);第5,268,192号(Low calorie nu
t products);第5,258,197号(Reduce calorie e
dible compositions);第4,335,156号(Edible f
at product);第7,288,278号(Food additives o
r medicaments);第7,115,760号(Fractionation
 process);第6,808,737号(Structural fats);第
5,888,947号(Engine lubricants);第5,686,131
号(Edible oil mixtures);第4,603,188号(Curab 50
(97) JP 2018-99138 A 2018.6.28

le urethane compositions)で報告されているとおり、生成物
を生成するための1つ以上の方法及び材料と組み合わせて行うことができる。
【0392】
 一実施形態では、本発明によれば、上に記載されているとおり、油をトランスエステル
化した後に、米国第6,465,642号で報告されているとおり、ポリオールポリオー
ルを用いてトランスエステル化した生成物の反応を行う。このようなエステル化及び分離
プロセスは、石鹸存在下、低級アルキルエステルとポリオールとを反応させる工程と;生
成物の混合物から、残った石鹸を除去する工程と;生成物の混合物を水で洗浄し、乾燥さ
せ、不純物を取り除く工程と;生成物の混合物を精製のために漂白する工程と;生成物の
混合物中のポリオール脂肪酸ポリエステルから、未反応の低級アルキルエステルの少なく 10
とも一部分を分離する工程と;未反応の低級アルキルエステルを分離させたものをリサイ
クルする工程とを含んでいてもよい。
【0393】
 また、トランスエステル化は、米国特許第6,278,006号に報告されているとお
り、短鎖脂肪酸エステルを有する微生物バイオマスを用いて行ってもよい。一般的に、ト
ランスエステル化は、適切な触媒存在下、短鎖脂肪酸エステルを、油に加え、この混合物
を加熱することによって行われてもよい。ある実施形態では、油は、反応混合物の約5重
量%∼約90重量%含まれる。ある実施形態では、短鎖脂肪酸エステルは、反応混合物の
約10重量%∼約50重量%含まれていてもよい。触媒の非限定的な例としては、塩基触
媒、ナトリウムメトキシド、硫酸及び酸性クレイのような無機酸、メタンスルホン酸、ベ 20
ンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸のような有機酸、Amberlyst 15のよ
うな酸性樹脂を含む酸触媒が挙げられる。ナトリウム及びマグネシウムのような金属、金
属ヒドリドも有用な触媒である。
【0394】
 別のこのような化学的な改変は、ヒドロキシル化であり、二重結合に水を付加し、飽和
状態にし、ヒドロキシル部分を組み込むことを含む。ヒドロキシル化プロセスは、グリセ
ロ脂質の1つ以上の脂肪酸構成要素をヒドロキシ脂肪酸に変換する機構を与える。ヒドロ
キシル化は、例えば、米国特許第5,576,027号に報告されている方法によって行
うことができる。ヒマシ油及びその誘導体を含むヒドロキシル化脂肪酸は、食品添加物、
界面活性剤、色素湿潤剤、消泡剤、撥水添加剤、可塑剤、香粧品用乳化剤及び/又は消臭 30
剤、及びエレクトロニクス、医薬、塗料、インク、接着剤、滑沢剤のような、いくつかの
工業用途での成分として有用である。グリセリドのヒドロキシル化をどのように行うかの
一例を以下に示す。脂肪を、好ましくは、ヘプタンと組み合わせて約30∼50℃の温度
まで加熱し、この温度に30分以上維持してもよく;次いで、この混合物に酢酸を加えた
後、硫酸水溶液を加え、次いで、過酸化水素水溶液を1時間かけて混合物に少量ずつ加え
てもよく;過酸化水素水溶液を加えた後、温度を少なくとも約60℃まで上げ、少なくと
も6時間撹拌してもよく;撹拌した後、この混合物を静置し、反応によって生成した下側
の水層を除去しつつ、反応によって生成した上側のヘプタン層を約60℃の温度を有する
熱水で洗浄してもよく;次いで、洗浄したヘプタン層を水酸化カリウム水溶液でpHが約
5∼7になるまで中和し、次いで、減圧下で蒸留によって除去してもよく;次いで、反応 40
生成物を減圧下、100℃で乾燥させ、乾燥した生成物を、減圧条件下、蒸気で消臭し、
珪藻土を用いて約50℃∼60℃で濾過してもよい。
【0395】
 本明細書に記載されている微生物油のヒドロキシル化を、1つ以上の方法及び/又は材
料と組み合わせて行ってもよく、米国特許第6,590,113号(Oil−based
 coatings and ink);第4,049,724号(Hydroxyla
tion process);第6,113,971号(Olive oil butt
er);第4,992,189号(Lubricants and lube addi
tives);第5,576,027号(Hydroxylated milk);第6
,869,597号(Cosmetics)で報告されているとおり、生成物を生成する 50
(98) JP 2018-99138 A 2018.6.28

ための1つ以上の方法及び材料と組み合わせて行ってもよい。リシノール酸のヒドロキシ
ル化によりポリオールがもたらされる。
【0396】
 ヒドロキシル化されたグリセロ脂質をエストライドに変換することができる。エストラ
イドは、ヒドロキシル化された脂肪酸構成要素が、別の脂肪酸分子でエステル化されたグ
リセロ脂質からなる。ヒドロキシル化されたグリセロ脂質をエストライドに変換すること
は、Isbell et al.、JAOCS 71(2):169−174(1994
)に記載されるとおり、グリセロ脂質及び脂肪酸の混合物を加熱し、この混合物を鉱物酸
と接触させることによって行うことができる。エストライドは、米国特許第7,196,
124号(エラストマー材料および床仕上げ材);第5,458,795号(高温度での 10
用途のための濃化油);第5,451,332号(工業用途のための液体);第5,42
7,704号(燃料添加剤);第5,380,894号(潤滑油、グリース、可塑剤、印
刷インク)で報告されているものに限定されないが、種々の用途で有用である。
【0397】
 別のこのような化学的な改変は、オレフィンメタセシスである。オレフィンメタセシス
では、触媒がアルケン(オレフィン)のアルキリデン炭素を与え、その各々が種々のアル
キリジン炭素と組み合わさることによって新しいアルケンを形成する。オレフィンメタセ
シス反応は、エテノリシスによるアルケンでの不飽和脂肪酸アルキル鎖の切断、セルフメ
タセシスによるアルケン結合を介した脂肪酸の架橋、及び誘導体化アルケンとのクロスメ
タセシスによる脂肪酸に対する新規官能基の組み込みなどのプロセスの機構を提供する。 20
【0398】
 トランスエステル化及び水素化などの他の反応と併せて、オレフィンメタセシスは不飽
和グリセロ脂質を多様な最終生成物に変えることができる。このような生成物としては、
ワックス用のグリセロ脂質オリゴマー;潤滑剤用の短鎖グリセロ脂質;化学品及びポリマ
ー用のホモ及びヘテロ二官能性アルキル鎖;バイオ燃料用の短鎖エステル;及びジェット
燃料用の短鎖炭化水素が挙げられる。オレフィンメタセシスはトリアシルグリセロール及
び脂肪酸誘導体上で、米国特許第7,119,216号、米国特許出願公開第2010/
0160506号、及び米国特許出願公開第2010/0145086号に報告される触
媒及び方法を用いて行うことができる。
【0399】 30
 バイオ油のオレフィンメタセシスは、一般的に、Ru触媒の溶液を、他のアルケンの存
在下(クロスメタセシス)又は非存在下(セルフメタセシス)において不活性条件下約1
0∼250ppmの負荷で不飽和脂肪酸エステルに添加することを含む。反応を典型的に
は数時間乃至数日間進行させると、最終的にある分布のアルケン生成物が得られる。オレ
フィンメタセシスが脂肪酸誘導体上でどのように行われ得るかについての一例は、以下の
とおりである:トルエン中の第1世代グラブス触媒(ジクロロ[2(1−メチルエトキシ
−α−O)フェニル]メチレン−α−C](トリシクロヘキシルホスフィン)の溶液が、
222ppmの触媒負荷で、脱気及び乾燥したオレイン酸メチルが入った容器に加えられ
得る。次いで容器が約60psigのエチレンガスで加圧され、約30℃以下に3時間維
持されてもよく、それにより約50%収率のメチル9−デセノエートが生成され得る。 40
【0400】
 本明細書に記載される方法により生成される油のオレフィンメタセシスは、方法及び/
又は材料の1つ以上と併せて、又は、PCT出願番号第PCT/US07/081427
号(α−オレフィン脂肪酸)及び米国特許出願第12/281,938号(石油クリーム
)、同第12/281,931号(ペイントボール弾カプセル)、同第12/653,7
42号(可塑剤及び潤滑剤)、同第12/422,096号(二官能性有機化合物)、及
び同第11/795,052号(ろうそく用ワックス)に報告されるとおり、生成物を生
成するため、実施することができる。
【0401】
 微生物油で行うことが可能な他の化学反応としては、米国特許第6,051,539号 50
(99) JP 2018-99138 A 2018.6.28

で報告されているとおり、トリアシルグリセロールと、シクロプロパン化剤と反応させ、
流動性及び/又は酸化安定性を高めること;米国特許第6,770,104号で報告され
ているとおり、トリアシルグリセロールからワックスを製造すること;「The eff
ect of fatty acid composition on the acr
ylation kinetics of epoxidized triacylgl
ycerols」、Journal of the American Oil Che
mists’ Society、79:1、59−63(2001)及びFree Ra
dical Biology and Medicine、37:1、104−114(
2004)に報告されているとおり、トリアシルグリセロールをエポキシ化することが挙
げられる。 10
【0402】
 上述のような燃料及び化学製品のために、油を生み出す微生物バイオマスを作成すると
、脱脂したバイオマス食料が生成される。脱脂した食料は、藻の油を調製したときの副産
物であり、例えば、反すう動物、鳥類、ブタ、水産養殖のような農場動物用の動物の餌と
して有用である。得られた食料は、油含有量が減ってはいるが、高品質のタンパク質、炭
水化物、繊維、灰分、残留油、及び動物の餌に適した他の栄養物はいまだ含まれている。
油分離プロセスによって細胞は大部分が溶解しているため、脱脂した食料は、このような
動物によって簡単に消化される。脱脂した食料を、場合により、例えば、動物の餌の中で
、穀物のような他の成分と組み合わせてもよい。脱脂した食料は、均一な粉末であるため
、押出機、エクスパンダー又は市販されている別の種類の機械を用いてペレットへと圧縮 20
することができる。
【0403】
 ヒマシ油は、トウゴマの実から単離される、天然に存在する油である。ヒマシ油を加水
分解するとリシノール酸が得られる。トウゴマの実は多量のリシンを含むため、トウゴマ
の実からのヒマシ油の生成は難しい。リシンは極めて危険な毒であり、化学兵器禁止条約
(Chemical Weapons Convention)のschedule 1
化合物に収載されている。従ってトウゴマの実からのヒマシ油の生成においては、多大な
注意を払わなければならない。微細藻類細胞から単離されるヒドロキシル化油脂が、本発
明の実施形態によって提供される。このようにして、リシノール酸を生成することができ
る。一実施形態では、ヒドロキシル化油脂はヒドロキシル化トリグリセリドである。本発 30
明のヒドロキシル化トリグリセリドはヒマシ油と化学的に類似したものであり得る。実施
例7に示すとおり、本発明はヒドロキシル化された微生物油を提供する。実施例7の油か
ら、GC/MSにより分析するとき、本発明者らがリシノール酸(12−ヒドロキシ−9
−cis−オクタデセン酸)を生成したことが示された。
【0404】
 本発明の実施形態における脂肪酸は、ヒドロキシル化脂肪酸である。ヒドロキシル化脂
肪酸の一実施形態はリシノール酸である。
【0405】
 微生物のヒドロキシル化油脂又はヒドロキシル化脂肪酸は、さらにヒドロキシル化され
てもよい。リシノール酸がさらにヒドロキシル化される場合、2個のヒドロキシル基を含 40
有する脂肪酸、ポリオールが提供される。
【0406】
 本発明は、ポリオール(例えば、ヒドロキシル化油脂及び/又はヒドロキシル化脂肪酸
)を、イソシアネート部分を含む化合物と反応させることにより調製される組成物を提供
する。ヒマシ油及びイソシアネートを使用するポリウレタンが生成されている。ポリウレ
タンは現在の我々が使用する生成物の至る所に見られる。ポリウレタンは、自動車、玩具
、運動器具、家電、靴、マットレス、クッション、接着剤、建設資材などに見られる。現
在、ヒマシ油で作られたポリウレタンが、BASF、伊藤製油(Itoh Oil)など
から市販されている。ヒドロキシル化された大豆油で作られたポリウレタンは、Carg
ill、Dow、Bayerなどから市販されている。 50
(100) JP 2018-99138 A 2018.6.28

【0407】
 ある実施形態では、微生物細胞により生成されるリシノール酸は、当該技術分野におい
て公知の方法により、リシノール酸エステル、リシノール酸アミド、ポリウレタン、ポリ
ウレタンフォーム、又はポリウレタン部分を含む油脂化学製品にさらに加工することがで
きる。例えば、米国特許第6194475号、同第4266617号、同第640366
4号、及び同第4058492号、及び米国特許出願公開第20100227151号明
細書を参照のこと。
【0408】
 本発明について上に詳細に説明し、以下の実施例で例示するが、これらは説明のために
与えられたものであり、特許請求の範囲に書かれた発明を限定するために与えられている 10
のではない。
【実施例】
【0409】
 (VII.実施例)
 (実施例1:Protothecaを培養する方法)
 細胞乾燥重量で高い割合の油を得るようにPrototheca株を育てた。凍結保存
した細胞を室温で解凍し、細胞500μlを、2%グルコースを含む培地4.5ml(4
.2g/L K2HPO4、3.1g/L NaH2PO4、0.24g/L MgSO
4・7H2O、0.25g/L クエン酸一水和物、0.025g/L CaCl2 2
H2O、2g/L 酵母抽出物)に入れ、6ウェルプレートで撹拌しつつ(200rpm 20
)、28℃で7日間成長させた。細胞乾燥重量は、あらかじめ秤量しておいたエッペンド
ルフ管中、培養物1mlを14,000rpmで5分間遠心分離することによって決定し
た。培養物の上澄みを棄て、得られた細胞ペレットを脱イオン水1mlで洗浄した。培養
物を再び遠心分離処理し、上澄みを棄て、細胞ペレットを凍結するまで−80℃に置いた
。次いで、サンプルを24時間凍結乾燥し、細胞乾燥重量を算出した。培養物中の総脂質
を決定するために、培養物3mlを取り出し、Ankomシステム(Ankom Inc
.、Macedon、NY)を用い、製造業者のプロトコルに従って分析した。サンプル
を、Amkom XT10抽出機を用い、製造業者のプロトコルに従って、溶媒抽出した
。酸によって加水分解して乾燥させたサンプルと、溶媒抽出して乾燥させたサンプルとの
質量差として、総脂質を決定した。細胞乾燥重量での油の割合を測定した値を表10に示 30
す。
【0410】
【表10】

40
【0411】
 Prototheca属の複数の株に由来する微細藻類サンプルの遺伝子型を解析した
。藻類のバイオマスからゲノムDNAを以下のように単離した。液体培養物から、細胞(
約200mg)を14,000×gで5分間遠心分離処理した。次いで、細胞を滅菌蒸留
水に再び懸濁させ、14,000×gで5分間遠心分離処理し、上澄みを棄てた。このバ
イオマスに、直径約2mmの1個のガラスビーズを加え、この管を−80℃で少なくとも
15分間置いた。サンプルを取り出し、研磨バッファー(1% Sarkosyl、0.
25M ショ糖、50mM NaCl、20mM EDTA、100mM Tris−H
Cl、pH 8.0、RNase A 0.5ug/μl)150μlを加えた。ペレッ
トを短時間ボルテックスすることによって再び懸濁させた後、5M NaCl 40μl 50
(101) JP 2018-99138 A 2018.6.28

を加えた。サンプルを簡単にボルテックスした後、5% CTAB(セチルトリメチルア
ンモニウムブロミド)66μlを加え、最後に短時間ボルテックスした。次いで、サンプ
ルを65℃で10分間インキュベートした後、14,000×gで10分間遠心分離処理
した。新しい管に上澄みを移し、フェノール:クロロホルム:イソアミルアルコール 1
2:12:1 300μlで1回抽出し、次いで、14,000×gで5分間遠心分離処
理した。0.7体積部のイソプロパノール(約190μl)を含む新たな管に、得られた
水相を移し、ひっくり返すことによって混合し、室温で30分間インキュベートするか、
又は4℃で一晩インキュベートした。14,000×gで10分間遠心分離処理すること
によってDNAを回収した。次いで、得られたペレットを70%エタノールで2回洗浄し
た後、100%エタノールで最後に洗浄した。ペレットを室温で20∼30分風乾した後 10
、10mM TrisCl、1mM EDTA(pH8.0)50μlで再び懸濁させた

【0412】
 上述のとおり調製した藻の全DNA5μlを、これを10mM Tris、pH8.0
で1:50に希釈した。最終容積が20μlのPCR反応を以下のとおり設定した。2×
iProof HFマスターミックス(BIO−RAD)10μlを、0.4μlのプラ
イマーSZ02613(10mMストック濃度の5’−TGTTGAAGAATGAGC
CGGCGAC−3’(配列番号9))に加えた。このプライマー配列は、Gen Ba
nk寄託番号L43357の位置567∼588であり、高等植物及び藻のプラスチドゲ
ノムにおいて高度に保存されている。次いで、これに0.4μlのプライマーSZ026 20
15(10mMストック濃度の5’−CAGTGAGCTATTACGCACTC−3’
(配列番号10))を加えた。このプライマー配列は、Gen Bank寄託番号L43
357の位置1112∼1093と相補性であり、高等植物及び藻のプラスチドゲノムに
おいて高度に保存されている。次いで、希釈した全DNA5μl及びdH2O 3.2μ
lを加えた。PCR反応を以下のとおり行った。98℃、45秒;98℃、8秒;53℃
、12秒;72℃、20秒を35サイクル繰り返した後、72℃で1分、25℃で保持。
PCR産物を精製するために、各反応物に10mM Tris、pH8.0 20μlを
加えた後、フェノール:クロロホルム:イソアミルアルコール 12:12:1 40μ
lで抽出し、ボルテックスし、14,000×gで5分間遠心分離処理した。PCR反応
物をS−400カラム(GE Healthcare)に入れ、3,000×gで2分間 30
遠心分離処理した。次いで、精製したPCR産物を、PCR8/GW/TOPOへとTO
POクローン化し、LB/Specプレートで陽性クローンを選択した。精製したプラス
ミドDNAについて、M13の順プライマー及び逆プライマーを用い、両方向で配列を決
定した。23S rRNA DNAの配列が決定された全部で12種類のPrototh
eca株を選択し、これらの配列を、配列表に列挙している。株及び配列表の番号のまと
めは、以下にある。UTEX 1435(配列番号15)配列との全体的な違いについて
、配列を分析した。最も違う配列として、2対があらわれた(UTEX 329/UTE
X 1533及びUTEX 329/UTEX 1440)。これら両者の場合で、ペア
ワイズアラインメントから、一対の配列同一性が75.0%であった。UTEX 143
5の配列同一性の割合も、以下に示している。 40
【0413】
(102) JP 2018-99138 A 2018.6.28

【表10A】

10

【0414】
 上に列挙した株の部分集合から得られた脂質サンプルについて、HPLCを用いて脂質
プロフィールを分析した。結果を以下の表11に示す。あるいは、実施例11の手順の概
要を用いて脂質プロフィールを決定した。
【0415】
【表11】 20

30
【0416】
 Prototheca moriformis UTEX 1435から抽出した油(
溶媒抽出によるか、又は連続圧搾機を用いる)について、カロチノイド、クロロフィル、
トコフェロール、他のステロール及びトコトリエノールを分析した。結果を以下の表12
にまとめる。
【0417】
(103) JP 2018-99138 A 2018.6.28

【表12】

10

20

30

【0418】
 4つの別個のロットからの、Prototheca moriformisから抽出し
た油を、標準的な植物油の処理方法を用いて精製し、漂白した。簡潔に言えば、Prot 40
otheca moriformisから抽出した未精製油を水平デカンターで透明にし
、ここで油から固形分を分離した。次いで透明にした油をクエン酸及び水とともにタンク
に移し、約24時間静置しておいた。24時間後、タンク内の混合物が2つの別個の層を
形成した。下層は水及びガムから構成され、次いでガムをデカンテーションにより除去し
てから、その脱ガム油を漂白タンクに移した。次いで油を別の一添加量のクエン酸ととも
に加熱した。次いで漂白クレイを漂白タンクに加え、混合物を真空下でさらに加熱するこ
とで、存在した水を全て蒸発させた。次いで混合物を葉状濾過器でポンピングすることで
、漂白クレイを除去した。次いで濾過した油を最終的な5μm仕上げフィルターに通し、
次いで、回収して、使用時まで保存した。次いで精製及び漂白した(RB)油について、
カロチノイド、クロロフィル、ステロール、トコトリエノール及びトコフェロールを分析 50
(104) JP 2018-99138 A 2018.6.28

した。これらの分析の結果を以下の表13にまとめる。「Nd」は、検出されなかったこ
とを示し、検出感度は以下に掲載する:
検出感度
カロチノイド(mcg/g)nd=<0.003mcg/g
クロロフィル(mcg/g)nd=<0.03mcg/g
ステロール(%)nd=0.25%
トコフェロール(mcg/g);nd=3mcg/g
【0419】
【表13】
10

20

30

40

【0420】 50
(105) JP 2018-99138 A 2018.6.28

 また、Prototheca moriformis油の同じ4つのロットについて、
微量元素を分析した。結果を以下の表14にまとめる。
【0421】
【表14】

10

20

30

40

【0422】
実施例2:微粒子銃によってProtothecaを形質転換する一般的な方法 50
(106) JP 2018-99138 A 2018.6.28

 Seashell製の金マイクロキャリア550ナノメートルを製造業者のプロトコル
に従って調製した。プラスミド(20μg)を、結合バッファー50μl及びS550d
金担体60μl(30mg)と混合し、氷中、1分間インキュベートした。沈殿バッファ
ー(100μl)を加え、この混合物を氷中でさらに1分間インキュベートした。ボルテ
ックスした後、DNAでコーティングされた粒子を、エッペンドルフ5415C微量遠心
器で10,000rpmで10秒間回転させることによって、ペレット状にした。この金
ペレットを冷たい100%エタノール500μlで1回洗浄し、微量遠心器で軽く回転さ
せることによってペレット状にし、氷冷したエタノール50μlで再び懸濁させた。軽く
(1∼2秒)音波処理した後、10μlのDNAコーティングされた粒子を、すぐにキャ
リア膜に移した。 10
【0423】
 Prototheca株を、2%グルコースを含むプロテオース培地(2g/L 酵母
エキス、2.94mM NaNO3、0.17mM CaCl2・2H2O、0.3mM
 MgSO4・7H2O、0.4mM K2HPO4、1.28mM KH2PO4、0
.43mM NaCl)中、旋回シェーカー上に置いて、細胞密度が2×106細胞/m
lになるまで成長させた。この細胞を収穫し、滅菌蒸留水で1回洗浄し、培地50μlに
再び懸濁させた。非選択的なプロテオース培地プレートの中央の1/3に1×107細胞
を広げた。この細胞を、PDS−1000/He Biolistic Particl
e Deliveryシステム(Bio−Rad)で撃った。破裂ディスク(1350p
si)を用い、上述のプレートを、スクリーン/マクロキャリアの集合体から6cm下に 20
置く。細胞を25℃で12∼24時間回復させた。回復したら、ゴム製スパチュラで細胞
をプレートから掻き取り、培地100μlと混合し、適切に選別した抗生物質を含むプレ
ートに広げた。25℃でインキュベーションして7∼10日経過後、形質転換された細胞
を示すコロニーがプレート上にあるのが目視で確認された。コロニーを取り出し、2回目
の選択のために選択的な(抗生物質あるいは炭素源のいずれか)寒天プレートにスポット
として乗せた。
【0424】
実施例3:Protothecaにおけるさまざまなチオエステラーゼの発現
 Prototheca種において異種チオエステラーゼ遺伝子を発現させる方法及び効
果については、以前、本明細書によって参照により組み込まれるPCT出願番号第PCT 30
/US2009/066142号で記載されている。高等植物種に由来する他のチオエス
テラーゼ遺伝子/遺伝子産物の効果については、さらなる研究がなされた。それらのチオ
エステラーゼとしては、以下の高等植物に由来するチオエステラーゼが挙げられる:
【0425】
(107) JP 2018-99138 A 2018.6.28

【表14A】

10

20

【0426】
 いずれの場合にも、上記のチオエステラーゼ構築物の各々は、微粒子銃照射を用いてP
rototheca moriformis(UTEX 1435)に形質転換した。P
CT出願番号第PCT/US2009/066142号に開示されるような相同組み換え
を含む他の形質転換方法もまた、目的の遺伝子の異種発現に適し得る。上記のチオエステ
ラーゼ構築物の各々によるPrototheca moriformis(UTEX 1 30
435)の形質転換は、実施例2に記載される方法を用いて実施した。構築物の各々はN
eoR遺伝子を含み、100μg/mlのG418を使用して陽性クローンの選択を行っ
た。コード領域は全て、Prototheca moriformis UTEX 14
35(表2を参照)核遺伝子に固有のコドンの偏りを反映するようにコドンを最適化した
。使用した構築物についてのアミノ酸配列及びcDNA配列の両方を、配列アイデンティ
ティの表に列挙する。特記されない限り、高等植物チオエステラーゼの各々のトランジッ
トペプチドは、Prototheca moriformisデルタ12脂肪酸デサチュ
ラーゼ(配列番号48)又はChlorella protothecoidesステア
ロイルACPデサチュラーゼ(配列番号49)に由来する藻類コドン最適化トランジット
ペプチドに置き換えた。チオエステラーゼ構築物は全て、Chlamydomanas  40
reinhardtii β−チューブリンプロモーター/5’UTRによって駆動した
。選択された陽性クローンの成長及び脂質生成を、野生型(非形質転換)Prototh
eca moriformis(UTEX 1435)と比較した。野生型及び選択され
た陽性クローンを、2%グルコースG418プレートで成長させた。各構築物の選択され
た陽性クローンに関する脂質プロフィール分析を、以下の表15にまとめている(面積%
で表されている)。
【0427】
(108) JP 2018-99138 A 2018.6.28

【表15】

10

20

【0428】
 結果は、発現したチオエステラーゼの全てが脂肪酸プロフィールに何らかの程度影響を
及ぼしたことを示している。「総飽和」の行を見ると、飽和度は、U.californ
ica、C.camphora、及び最も顕著には、U.americanaを含め、い
くつかのチオエステラーゼの発現によって大きい影響を受けた。これらの総飽和度の変化
は、高等植物に由来するチオエステラーゼの異種発現が影響を及ぼすのが一見したところ
単に脂質鎖長のみでない可能性がある点で予想外であった;それはまた、微細藻類によっ
て生じる脂質プロフィールの他の属性、すなわち脂肪酸の飽和度にも影響を及ぼし得る。
【0429】 30
 C.palustris C8チオエステラーゼ、C.hookerianaチオエス
テラーゼ、U.californica及びC.camphoraチオエステラーゼで形
質転換した選択クローンを、さまざまな量のG418(25mg/L∼50mg/L)及
びさまざまな温度(22℃∼25℃)でさらに成長させ、これらのクローンの脂質プロフ
ィールを決定した。表16は、各チオエステラーゼを含む代表的なクローンの脂質プロフ
ィール(面積%)をまとめている。U.americanaチオエステラーゼを含む第2
の構築物を構築し、上述の微粒子銃法を用いてPrototheca moriform
is(UTEX 1435)に形質転換した。この第2の構築物を相同組み換えによって
細胞に導入した。Prototheca種における相同組み換えの方法は、以前にPCT
出願番号第PCT/US2009/66142号に記載されている。使用した相同DNA 40
は、Prototheca moriformis UTEX 1435の6SゲノムD
NA配列に由来した(配列番号92及び配列番号84で示されるドナー配列)。選択剤は
、C.reinhardtii βチューブリンプロモーターにより駆動されるS.ce
reveisiaeに由来するコドンが最適化されたsuc2遺伝子を使用した、ショ糖
で成長する能力であった。天然U.americanaトランジットペプチドは、Chl
orella protothecoides(UTEX 250)ステアロイルACP
デサチュラーゼトランジットペプチドに置き換えた。この構築物のcDNAは、配列表に
配列番号50として掲載する。2%ショ糖プレート上で陽性クローンの選択を実施し、脂
質プロフィール決定用の得られた培養物もまた、2%ショ糖を含有する培地で成長させた
。相同組み換えした異種U.americanaチオエステラーゼを含むこのProto 50
(109) JP 2018-99138 A 2018.6.28

theca moriformis株の代表的な脂質プロフィールを表16にまとめてい
る。
【0430】
【表16】

10

【0431】 20
 上述のクローンと同様に、異種チオエステラーゼ遺伝子を含む全ての形質転換体が何ら
かの程度影響を受けた脂肪酸プロフィールを示し、野生型(非形質転換)Prototh
eca moriformisと比較したとき全飽和脂肪酸割合もまた変化した。総飽和
の増加については、相同組み換えによって導入されたU.americanaチオエステ
ラーゼを含むPrototheca moriformisが最大であった。
【0432】
 さらに、外来性のC.hookeriana、C.camphora、U.calif
ornica又はU.americanaチオエステラーゼを含むトランスジェニックク
ローンについて、新規脂質プロフィールを評価した。C.hookerianaチオエス
テラーゼを含むクローンは、2%グルコース、25mg/mlのG418、22℃で生育 30
させたとき、以下の脂質プロフィール:5.10%のC8:0;18.28%のC10:
0;0.41%のC12:0;1.76%のC14:0;16.31%のC16:0;1
.40%のC18:0;40.49%のC18:1;及び13.16%のC18:2を実
現した。C.camphoraチオエステラーゼを含むクローン(外来性ショ糖インベル
ターゼもまた含む)は、2%ショ糖、25℃で生育させたとき、以下の脂質プロフィール
:0.04%のC10:0;6.01%のC12:0;35.98%のC14:0;19
.42のC16:0;1.48%のC18:0;25.44%のC18:1;及び9.3
4%のC18:2を実現した。U.calfornicaチオエステラーゼを含むクロー
ンは、2%グルコース、25∼100mg/mlのG418、22℃で生育させたとき、
以下の脂質プロフィール:0%のC8:0;0.11%のC10:0;34.01%のC 40
12:0;5.75%のC14:0;14.02%のC16:0;1.10%のC18:
0;28.93%のC18:1;及び13.01%のC18:2を実現した。U.ame
ricanaチオエステラーゼを含むクローンは、2%グルコース、28℃で生育させた
とき、以下の脂質プロフィール:1.54%のC10:0;0.43%のC12:0;7
.56%のC14:0;39.45%のC16:0;2.49%のC18:0;38.4
9%のC18:1;及び7.88%のC18:2を実現した。
【0433】
 高等植物に由来するさらなるチオエステラーゼもまたPrototheca mori
formis UTEX 1435の遺伝的背景に導入した。そのコドンが最適化された
cDNA配列及びアミノ酸配列は、上記に特定する配列表に列挙される。これらのさらな 50
(110) JP 2018-99138 A 2018.6.28

るチオエステラーゼには、Myristica fragransに由来する広い特異性
のチオエステラーゼ(C14:0∼C18:0)、Garcinia mangosta
naに由来するC16:0選択的チオエステラーゼ、Cuphea hookerian
aに由来するC16:0選択的チオエステラーゼ、Elaeis guiniensis
に由来するC16:0選択的チオエステラーゼ、Brassica napusに由来す
るC18:0選択的チオエステラーゼ、及びRicinus communisに由来す
るC18:1選択的チオエステラーゼが含まれる。発現構築物の詳細及び上記のトランス
遺伝子/形質転換の各々から得られたトランスジェニッククローンについては、以下に記
載している。
【0434】 10
 Myristica fragransに由来する広い特異性のチオエステラーゼ(C
14:0∼C18:0)のチオエステラーゼを、上述の方法を用いてProtothec
a moriformis UTEX 1435の遺伝的背景に導入した。2つの異なる
発現構築物を試験し、各々が異なるプラスチド標的配列を含んだ。いずれの構築物におい
ても、選択可能なマーカーとしてS.cerevisiaeショ糖インベルターゼ遺伝子
suc2を利用し、陽性形質転換体に、ショ糖を唯一の炭素源とするプレートで成長する
能力を付与した。両方の発現構築物pSZ1318及びpSZ1317が、核ゲノムに組
み込むための6Sゲノム領域に対する5’(配列番号82)及び3’(配列番号84)相
同組み換え標的配列(構築物に隣接する)と、C.reinhardtii β−チュー
ブリンプロモーター/5’UTR及びChlorella vulgaris硝酸還元酵 20
素3’UTRの制御下にあるS.cerevisiae suc2ショ糖インベルターゼ
コード領域とを含んだ。このS.cerevisiae suc2発現カセットは、配列
番号159として列挙される。pSZ1318は、Prototheca morifo
rmis Amt03プロモーター(配列番号89)及びC.vulgaris硝酸還元
酵素3’UTRの制御下にある、Prototheca moriformisデルタ1
2 FAD(配列番号48)に由来するトランジットペプチドによって天然のトランジッ
トペプチドが置き換えられたM.fragransチオエステラーゼコード領域を含んだ
。Prototheca moriformisデルタ12 FADに由来するトランジ
ットペプチドを含む、コドンが最適化されたM.fragransチオエステラーゼは、
配列番号145として列挙される。pSZ1317は、Prototheca mori 30
formis Amt03プロモーター(配列番号89)及びC.vulgaris硝酸
還元酵素3’UTRの制御下にある、Chlorella protothecoide
sステアロイルACPデサチュラーゼ(配列番号49)に由来するトランジットペプチド
によって天然のトランジットペプチドが置き換えられたM.fragransコード領域
を含んだ。C.protothecoidesステアロイルACPデサチュラーゼに由来
するトランジットペプチドを含む、コドンが最適化されたM.fragransチオエス
テラーゼは、配列番号158として列挙される。両方の発現構築物pSZ1318及びp
SZ1317をPrototheca細胞に形質転換し、選択は、ショ糖が唯一の炭素源
であるプレート上で行った。各形質転換から陽性クローンを選択し、ショ糖を唯一の炭素
源とする培地において脂質生成のため窒素制限条件下で成長させた。上述の直接的なトラ 40
ンスエステル化法を用いて、選択された陽性クローンの一部の脂質プロフィールを決定し
た。表17にまとめている。
【0435】
(111) JP 2018-99138 A 2018.6.28

【表17】

10

【0436】 20
 Myristica fragransチオエステラーゼトランス遺伝子を含む陽性ク
ローンは、脂質プロフィールの変化を示した。しかしながら、上記にまとめた結果からは
、予想外の結果が示された;高等植物では、Myristica fragransチオ
エステラーゼはC16:0脂肪酸アシル−ACPに対して有意な活性を示すが(Voel
ker et al.,1997)、Prototheca細胞では、Myristic
a fragransチオエステラーゼの影響はC14:0>C18:0>C16:0に
対して段階的であるように見え、C16:0だけではなく、より広範囲にわたる。
【0437】
 Garcinia mangostanaに由来するC16:0選択的チオエステラー
ゼを、Prototheca moriformis UTEX 1435の遺伝的背景 30
に導入した。そのコドンが最適化されたcDNA配列及びアミノ酸配列は、上記に特定す
る配列表に列挙される。発現構築物は、核ゲノムに組み込むための6Sゲノム領域に対す
る5’(配列番号82)及び3’(配列番号84)相同組み換え標的配列(構築物に隣接
する)と、C.reinhardtii β−チューブリンプロモーター/5’UTR及
びChlorella vulgaris硝酸還元酵素3’UTRの制御下にあるS.c
erevisiae suc2ショ糖インベルターゼコード領域とを含んだ。このS.c
erevisiae suc2発現カセットは配列番号159として列挙され、選択マー
カーとして機能した。G.manogstanaコード領域は、Prototheca 
moriformis Amt03プロモーター/5’UTR(配列番号89)及びC.
vulgaris硝酸還元酵素3’UTRの制御下にあった。また、G.manogst 40
ana天然トランジットペプチドが、C.protothecoidesステアロイルデ
サチュラーゼ(配列番号49)に由来するトランジットペプチドによって置き換えられた
。その置き換えられたトランジットペプチドを含むチオエステラーゼのcDNA配列は、
配列番号147として列挙される。Garcinia mangostana発現カセッ
トの全体をpSZ1452と命名し、Prototheca moriformisの遺
伝的背景に形質転換した。ショ糖を唯一の炭素源とするプレートで陽性クローンをスクリ
ーニングした。陽性クローンの一部を選択し、脂質生成条件下で成長させ、上述のような
直接的なトランスエステル化方法を用いて脂質プロフィールを決定した。選択されたクロ
ーンの脂質プロフィールを以下の表18にまとめている。
【0438】 50
(112) JP 2018-99138 A 2018.6.28

【表18】

10

【0439】
 結果は、G.mangostanaチオエステラーゼトランス遺伝子を含む形質転換体
が、C16:0脂肪酸濃度に大きい影響を及ぼし、それより程度は少ないが、C14:0
及びC18:0脂肪酸濃度にも影響を及ぼし、野生型と比較してC18:1脂肪酸濃度の
激減を伴ったことを示している。
【0440】
 Cuphea hookerianaに由来するC16:0選択的チオエステラーゼを 20
、Prototheca moriformis UTEX 1435の遺伝的背景に導
入した。2つの発現構築物を作成し、pSZ1417と命名される1つは、天然Cuph
ea hookeriana C16選択的チオエステラーゼトランジットペプチド配列
を含み、pSZ1462と命名される2つ目は、その天然トランジットペプチド配列を、
C.protothecoidesステアロイル−ACPデサチュラーゼ(配列番号49
)に由来するトランジットペプチドに置き換えた。天然トランジットペプチドを含むC.
hookerianaチオエステラーゼのコード配列は、配列番号149として列挙され
、置き換えられたトランジットペプチドを含むC.hookerianaチオエステラー
ゼのコード配列は、配列番号160として列挙される。両方の発現構築物とも、核ゲノム
に組み込むための6Sゲノム領域に対する5’(配列番号82)及び3’(配列番号84 30
)相同組み換え標的配列(構築物に隣接する)と、C.reinhardtii β−チ
ューブリンプロモーター/5’UTR及びChlorella vulgaris硝酸還
元酵素3’UTRの制御下にあるS.cerevisiae suc2ショ糖インベルタ
ーゼコード領域とを含んだ。このS.cerevisiae suc2発現カセットは配
列番号159として列挙され、選択マーカーとして機能した。いずれの構築物においても
、C.hookerianaコード領域は、Prototheca moriformi
s Amt03プロモーター/5’UTR(配列番号89)及びC.vulgaris硝
酸還元酵素3’UTRの制御下にあった。両方の構築物をPrototheca mor
iformisの遺伝的背景に形質転換し、ショ糖を唯一の炭素源とするプレートで陽性
クローンをスクリーニングした。陽性クローンの一部を選択し、脂質生成条件下で成長さ 40
せ、上述のような直接的なトランスエステル化方法を用いて脂質プロフィールを決定した
。選択されたクローンの脂質プロフィールを以下の表19にまとめている。
【0441】
(113) JP 2018-99138 A 2018.6.28

【表19】

10

20
【0442】
 結果は、Cuphea hookeriana C16:0選択的チオエステラーゼ構
築物のいずれを含む形質転換体も、C16:0脂肪酸濃度に大きい影響を及ぼし、それよ
り程度は少ないがC14:0脂肪酸濃度にも影響を及ぼし、野生型と比較してC18:1
脂肪酸濃度の激減を伴ったことを示している。2つの構築物におけるトランジットペプチ
ドの違いが、pSZ1417形質転換体と比較したpSZ1462形質転換体におけるC
16:0脂肪酸濃度の増加を説明し得る。
【0443】
 E.guiniensisパルミトイル−ACPチオエステラーゼ及びE.guini
ensisパルミトイル−ACPチオエステラーゼPATEとそれぞれ命名されるGen 30
bank寄託番号AAD422220.2(配列番号152)及びABD83939(配
列番号162)のアミノ酸配列に対応する、Elaeis guiniensis(アフ
リカアブラヤシ)に由来する2つのC16:0選択的チオエステラーゼを、Protot
heca moriformis UTEX 1435の遺伝的背景に導入した。コドン
が最適化されたcDNA配列及びアミノ酸配列は、上記に特定する配列表に列挙される。
2つのチオエステラーゼは互いに高度なアミノ酸同一性を有し(94%超)、しかしなが
らアフリカアブラヤシ植物におけるそれぞれの役割は未だ明らかではない。E.guin
iensisパルミトイル−ACPチオエステラーゼをコードする構築物をpSZ143
7と命名し、E.guiniensisパルミトイル−ACPチオエステラーゼPATE
をコードする構築物をpSZ1436と命名した。両方の発現構築物とも、核ゲノムに組 40
み込むための6Sゲノム領域に対する5’(配列番号82)及び3’(配列番号84)相
同組み換え標的配列(構築物に隣接する)と、C.reinhardtii β−チュー
ブリンプロモーター/5’UTR及びChlorella vulgaris硝酸還元酵
素3’UTRの制御下にあるS.cerevisiae suc2ショ糖インベルターゼ
コード領域とを含んだ。このS.cerevisiae suc2発現カセットは配列番
号159として列挙され、選択マーカーとして機能した。いずれの構築物においても、E
.guiniensisチオエステラーゼコード領域は、Prototheca mor
iformis Amt03プロモーター/5’UTR(配列番号89)及びC.vul
garis硝酸還元酵素3’UTRの制御下にあった。両方の構築物ともPrototh
eca moriformisの遺伝的背景に形質転換し、ショ糖を唯一の炭素源とする 50
(114) JP 2018-99138 A 2018.6.28

プレートで陽性クローンをスクリーニングした。陽性クローンの一部を選択し、脂質生成
条件下で成長させ、上述のような直接的なトランスエステル化方法を用いて脂質プロフィ
ールを決定した。選択されたクローンの脂質プロフィールを以下の表20にまとめている

【0444】
【表20】

10

20

30
【0445】
 pSZ1437によりコードされるE.guiniensis C16:0選択的チオ
エステラーゼはC16:0脂肪酸濃度に対して大きい影響を有し、それより程度は少ない
がC14:0脂肪酸濃度にも影響を有し、野生型と比較したときC18:1脂肪酸濃度が
激減した。意外にも、pSZ1436によりコードされるこのE.guiniensis
 C16:0選択的チオエステラーゼPATEは、pSZ1436によりコードされるチ
オエステラーゼとの高度なアミノ酸同一性にもかかわらず、C16:0又はC14:0脂
肪酸濃度に関して比較的活性が低かった。
【0446】
 Brassica napusに由来するC18:0選択的チオエステラーゼを、Pr 40
ototheca moriformis UTEX 1435の遺伝的背景に導入した
。そのコドンが最適化されたcDNA配列及びアミノ酸配列は、上記に特定する配列表に
列挙される。発現構築物は、核ゲノムに組み込むための6Sゲノム領域に対する5’(配
列番号82)及び3’(配列番号84)相同組み換え標的配列(構築物に隣接する)と、
C.reinhardtii β−チューブリンプロモーター/5’UTR及びChlo
rella vulgaris硝酸還元酵素3’UTRの制御下にあるS.cerevi
siae suc2ショ糖インベルターゼコード領域とを含んだ。このS.cerevi
siae suc2発現カセットは、配列番号159として列挙され、選択マーカーとし
て機能した。B.napusコード領域は、Prototheca moriformi
s Amt03プロモーター/5’UTR(配列番号89)及びC.vulgaris硝 50
(115) JP 2018-99138 A 2018.6.28

酸還元酵素3’UTRの制御下にあった。Brassica napus発現カセットの
全体をpSZ1358と命名し、Prototheca moriformisの遺伝的
背景に形質転換した。ショ糖を唯一の炭素源とするプレートで陽性クローンをスクリーニ
ングした。陽性クローンの一部を選択し、脂質生成条件下で成長させ、上述のような直接
的なトランスエステル化方法を用いて脂質プロフィールを決定した。選択されたクローン
の脂質プロフィールを以下の表21にまとめている。
【0447】
【表21】

10

【0448】
 結果は、Brassica napus C18:0選択的チオエステラーゼトランス
遺伝子を含む形質転換体が、C18:0脂肪酸濃度に大きい影響を及ぼし、それより程度 20
は少ないがC16:0脂肪酸濃度にも影響を及ぼし、野生型と比較してC18:1脂肪酸
濃度の激減を伴ったことを示している。
【0449】
 Ricinus communisに由来する脂肪酸アシル−ACPチオエステラーゼ
を、Prototheca moriformis UTEX 1435の遺伝的背景に
導入した。そのコドンが最適化されたcDNA配列及びアミノ酸配列は、上記に特定する
配列表に列挙される。発現構築物は、核ゲノムに組み込むための6Sゲノム領域に対する
5’(配列番号82)及び3’(配列番号84)相同組み換え標的配列(構築物に隣接す
る)と、C.reinhardtii β−チューブリンプロモーター/5’UTR及び
Chlorella vulgaris硝酸還元酵素3’UTRの制御下にあるS.ce 30
revisiae suc2ショ糖インベルターゼコード領域とを含んだ。このS.ce
revisiae suc2発現カセットは配列番号159として列挙され、選択マーカ
ーとして機能した。R.communisコード領域は、Prototheca mor
iformis Amt03プロモーター/5’UTR(配列番号89)及びC.vul
garis硝酸還元酵素3’UTRの制御下にあった。また、Ricinus comm
unis天然トランジットペプチドを、C.protothecoidesステアロイル
デサチュラーゼ(配列番号49)に由来するトランジットペプチドによって置き換えた。
その置き換えられたトランジットペプチドを含むチオエステラーゼのcDNA配列は、配
列番号155として列挙される。Ricinus communis発現カセットの全体
をpSZ1375と命名し、Prototheca moriformisの遺伝的背景 40
に形質転換した。ショ糖を唯一の炭素源とするプレートで陽性クローンをスクリーニング
した。陽性クローンの一部を選択し、脂質生成条件下で成長させ、上述のような直接的な
トランスエステル化方法を用いて脂質プロフィールを決定した。選択されたクローンの脂
質プロフィールを以下の表22にまとめている。
【0450】
(116) JP 2018-99138 A 2018.6.28

【表22】

10

【0451】
 結果は、Ricinus communisチオエステラーゼトランス遺伝子を含む形
質転換体がC16:0脂肪酸のレベルに影響を及ぼし、それより程度は少ないがC18:
0脂肪酸濃度にも影響を及ぼしたことを示している。また、同時に、野生型レベルと比較
したときのC18:1脂肪酸濃度の増加も起きた。
【0452】
実施例4:複数の外来性異種チオエステラーゼ遺伝子によるProtothecaの形質 20
転換
 微細藻類株Prototheca moriformis(UTEX 1435)を、
上記に開示する方法を用いて、単一のクローンで複数のチオエステラーゼを発現するよう
に形質転換した。単一のクローンで複数のチオエステラーゼが発現することにより、微細
藻類は、任意の単一のチオエステラーゼが単独で発現するときに産生されるものと全く異
なる脂肪酸プロフィールを有する油を生成することが可能となる(前述の実施例で示した
とおり)。最初に、Prototheca moriformis(UTEX 1435
)を、S.cerevisiaeに由来するショ糖インベルターゼ遺伝子suc2ととも
に(選択は、ショ糖で成長する能力であった)、Cinnamomum camphor
aチオエステラーゼ(C14選択的チオエステラーゼ)により相同組み換えを用いて形質 30
転換した。この相同組み換え構築物に使用したDNAは、上記の第III章に記載される
とおりの、Prototheca moriformisゲノムDNAのKE858領域
に由来する。この構築物の関連する一部は、配列表に配列番号51として列挙される。シ
ョ糖含有プレートで陽性クローンをスクリーニングした。次いで、抗生物質G418に対
する耐性並びにさらなるチオエステラーゼ:(1)Cuphea hookeriana
に由来するチオエステラーゼ遺伝子(C8∼10選択的)、配列番号52;(2)Umb
ellularia californicaに由来するチオエステラーゼ遺伝子(C1
2選択的)、配列番号53;又はUlmus americanaに由来するチオエステ
ラーゼ(広い;C10∼C16選択的)、配列番号54を各々がコードする3つのカセッ
トのうちの1つで陽性クローンを再び形質転換した。配列表には、各構築物の関連する部 40
分の配列が含まれる。双方のチオエステラーゼ遺伝子を発現するクローンを、50μg/
mlのG418を含むショ糖含有培地でスクリーニングした。陽性クローンを選択して成
長させ、脂質プロフィールを評価した。表23は、代表的な陽性クローンの脂質プロフィ
ール(面積%で表されている)をまとめている。
【0453】
(117) JP 2018-99138 A 2018.6.28

【表23】

10

【0454】
 さらに、C.camphoraチオエステラーゼとU.californicaチオエ 20
ステラーゼとを有する二重チオエステラーゼクローンを、22℃の50mg/L G41
8を含む2%ショ糖含有培地で成長させた。このような成長条件下でこの株から得られた
脂肪酸プロフィールは、C8:0(0);C10:0(0.10);C12:0(31.
03);C14:0(7.47);C16:0(15.20);C18:0(0.90)
;C18:1(30.60);C18:2(12.44);及びC18:3α(1.38
)で、総飽和が54.7であった。
【0455】
 C.camphoraチオエステラーゼ(thioestease)を含有する2つの
相同組み換え構築物を有する二重チオエステラーゼクローン(一方は6S領域を標的とし
、他方はKE858領域を標的とする)を作製した。陽性の代表的なクローンは、0%  30
C8:0;0.06% C10:0;5.91% C12:0;43.27% C14:
0;19.63% C16:0;0.87% C18:0;13.96% C18:1;
及び13.78% C18:2、総飽和が69.74%の脂肪酸プロフィールを有した。
このクローンは、49%を超えるC12∼C14濃度を有した。これは、野生型細胞のC
12∼C14濃度の37倍超である。
【0456】
 上記のデータは、複数のチオエステラーゼが微細藻類において首尾よく共発現し得るこ
とを示している。複数のチオエステラーゼが共発現することにより、野生型株と大きく異
なるばかりでなく、個々のチオエステラーゼのいずれか一つの発現によって得られる脂肪
酸プロフィールとも大きく異なる、改変された脂肪酸プロフィールがもたらされる。鎖長 40
特異性が重複する複数のチオエステラーゼの発現により、それらの特異的脂肪酸の累積的
増加がもたらされ得る。
【0457】
 Prototheca moriformisにおける異種チオエステラーゼの(単独
での、あるいは組み合わせでの)発現は、宿主株における脂肪酸/脂質プロフィールを変
化させるのみならず、現在さまざまな種子作物から利用可能な油(表5)と比較したとき
、こうしたプロフィールは、現在利用可能な他のシステムには見出すことのできない真に
独特の油のプロフィールである。トランスジェニック株は、非形質転換野生型株と大きな
差異を示すのみならず、表5に示される市販の油のいずれとも顕著に異なるプロフィール
を有する。例として、ココナツ油及びパーム核油のいずれも、5.5∼17%の範囲のC 50
(118) JP 2018-99138 A 2018.6.28

8∼C10脂肪酸濃度を有する。C.palustris C8選択的チオエステラーゼ
又はC.hookeriana C10選択的チオエステラーゼを発現するトランスジェ
ニック株は、それぞれ3.66∼8.65%の範囲を蓄積する。これらのC8∼C10脂
肪酸濃度はココナツ油及びパーム核油と同程度であるが、しかしながら、トランスジェニ
ック藻類株は著しく高いC12:0脂肪酸を欠いており、且つ極度に高いC16:0(コ
コナツ油又はパーム核油におけるそれぞれ11∼16%と比べて、トランスジェニックで
は23%)及び/又は18:1を有する(ココナツ油又はパーム核油におけるそれぞれ8
∼19%と比べて、トランスジェニックでは50∼57%)。
【0458】
 Cuphea wrightiiチオエステラーゼの発現によるUTEX1435株に 10
おけるラウリン酸塩及びミリスチン酸塩を豊富に含む油の生成:Cuphea wrig
htiiの種子は、25%超のC10:0脂肪酸及び65%超のC12:0脂肪酸を含有
する油を蓄積することが示されている。2つのFatBチオエステラーゼ、CwFatB
1(Gen Bank寄託番号U56103)及びCwFatB2(Gen Bank寄
託番号U56104)が、Cuphea wrightiiからクローン化されており(
Leonard et al,,Plant Mol.Biol.34(4):669−
79(1997)で記載されるとおり)、及びArabidopsis thalian
aで発現されている(Leonard et al,Plant J.13(5):62
1−8(1998)で記載されるとおり)。CwFatB1及びCwFatB2を発現す
るA.thalianaトランスジェニック系の脂肪酸プロフィールは、最大16%∼2 20
5%のC12:0脂肪酸種の増加を示す(Leonard et al,1998、前出
)。ここで本発明者らは、UTEX1435株においてCuphea wrightii
チオエステラーゼのCwFatB1及びCwFatB2を発現させることによりラウリン
酸塩及びミリスチン酸塩を豊富に含む油を生成する能力を実証する。ここに記載する例で
は、CwFatB1及びCwFatB2を発現するトランスジェニック株を、先述の形質
転換方法を用いて生成した。
【0459】
 CwFatB1及びCwFatB2のアミノ酸配列を以下に示し、予測される葉緑体標
的配列には下線を引いている。これらの一次アミノ酸配列を使用して、形質転換構築物に
対応する遺伝子を合成した。2つの遺伝子のヌクレオチド配列は、先述のとおりその好ま 30
しいコドン使用を利用するUTEX 1435株における発現に最適化した。
【化2】

40
(119) JP 2018-99138 A 2018.6.28

【化3】

10

【0460】
 C.wrightiiチオエステラーゼによるUTEX1435の形質転換:この例で
は、UTEX 1435株をレシピエント株として使用し、そこに、C.wrighti
i FatB1及びFatB2チオエステラーゼを発現するカセットを導入した。これら
の形質転換構築物は、ショ糖での選択を可能にするカセット(Saccharomyce
s cerevesiae suc2遺伝子)をチオエステラーゼとともに含む。細胞を
、先述のとおり微粒子銃を使用して形質転換した。細胞は、2%ショ糖を含有する培地に
直接形質転換した。チオエステラーゼの発現がC.reinhardtii B−チュー
ブリンプロモーター又は内在するUTEX 1435 Amt3プロモーターのいずれか 20
によって駆動されるような形質転換構築物を作製した。
【0461】
 別種のチオエステラーゼカセットを作製し、ここでは天然の高等植物トランジットペプ
チドを藻類トランジットペプチドに置き換えた。これらの構築物に使用したトランジット
ペプチドは、以下のとおり命名した:TP1は、UTEX250に由来するステアロイル
ACPデサチュラーゼ用のトランジットペプチドをコードする;TP2は、UTEX 1
435に由来するステアロイルACPデサチュラーゼ用のトランジットペプチドをコード
する;TP3は、UTEX 1435に由来するデルタ12脂肪酸デサチュラーゼのトラ
ンジットペプチドをコードする;及びTP4は、UTEX 1435に由来するイソペン
テニルジホスフェートシンターゼのトランジットペプチドをコードする。この例で使用し 30
た構築物は、以下の表24に列挙される。
【0462】
【表24】

40

【0463】
 suc2及びC.wrightii FatB1チオエステラーゼを発現する形質転換 50
(120) JP 2018-99138 A 2018.6.28

DNA(構築物1):構築物1と命名される形質転換構築物6S−CrbTub_suc
2_nr::CrbTub_CwFatB1_nr−6Sの配列を以下に示す。関連する
制限部位を小文字、太字且つ下線で示し、5’−3’にそれぞれSapI、KpnI、A
scI、MfeI、BamHI、EcoRI、SpeI、AscI、XhoI、SacI
及びSapIである。SapI部位が形質転換DNAの5’末端及び3’末端を区切る。
構築物の5’及び3’フランクの下線の配列は、相同組み換えによる形質転換DNAの標
的化した組み込みを可能にするUTEX1435由来のゲノムDNAを表す(6S領域)
。5’から3’方向に進んで、S.cerevisiae suc2遺伝子(ショ糖加水
分解活性をコードし、それによりショ糖上での株の成長を可能にする)の発現を駆動する
C.reinhardtii B−チューブリンプロモーターを、小文字の囲い文字テキ 10
ストで示す。suc2のイニシエーターATG及びターミネーターTGAを、大文字、太
字のイタリックにより示し、一方コード領域を小文字のイタリックで示す。Chlore
lla vulgaris硝酸還元酵素3’UTRを小文字の太字テキストにより示し、
その後にスペーサー領域が続く。C.wrightii TE(CwFatB1)の発現
を駆動するC.reinhardtii B−チューブリンプロモーターを、囲い文字の
テキストにより示す。チオエステラーゼ(CwFatB1)のイニシエーターATG及び
ターミネーターTGAを、大文字、太字のイタリックテキストで示し、一方、残りのコー
ド領域を小文字のイタリックで示す。チオエステラーゼの予想されるプラスチド標的配列
が、配列中、イニシエーターATGとAscI部位との間にある。C.vulgaris
硝酸還元酵素3’UTRを太字テキストにより示す。 20
構築物1:
【化4】

30
(121) JP 2018-99138 A 2018.6.28

【化5】

10

20

30

40
(122) JP 2018-99138 A 2018.6.28

【化6】

10

【0464】
 suc2及びC.wrightii FatB2チオエステラーゼを発現する形質転換
DNA(構築物2):小文字で太字且つ下線で示されるSpeI及びAscI制限部位を
利用して、構築物1のCwFatB1遺伝子をコドン最適化CwFatB2遺伝子に置き 20
換えることにより、構築物2と命名される形質転換構築物6S−CrbTub_suc2
_nr::CrbTub_CwFatB2_nr−6Sを作成した。チオエステラーゼ(
CwFatB2)のイニシエーターATG及びターミネーターTGAを、大文字、太字の
イタリックテキストで示し、一方、残りのコード領域を小文字のイタリックで示す。チオ
エステラーゼの予想されるプラスチド標的配列が、配列中、イニシエーターATGとAs
cI部位との間にある。
構築物2(一部):
【化7】

30

40

【0465】
 suc2及びamt3プロモーターにより駆動されるC.wrightii FatB
1及びFatB2チオエステラーゼを発現する形質転換DNA(構築物3及び4):構築
物1及び構築物2のチオエステラーゼを駆動するCrbTubプロモーターを、以下に小
文字で太字且つ下線で示されるEcoRI及びSpeI制限酵素フラグメントとしてのU
TEX1435に由来するAmt3プロモーターに置き換えることにより、構築物3と命 50
(123) JP 2018-99138 A 2018.6.28

名される形質転換構築物6S−CrbTub_suc2_nr::Amt3_CwFat
B1_nr−6S、及び構築物4と命名される6S−CrbTub_suc2_nr::
Amt3_CwFatB2_nr−6Sを作成した。Amt3プロモーター領域を、小文
字の囲い文字のテキストにより示す。
構築物3及び構築物4(一部):
【化8】

10

20

【0466】
 藻類トランジットペプチドの制御下においてC.wrightii FatB1チオエ
ステラーゼを発現する形質転換DNA:構築物1のCwFatB1の天然トランジットペ
プチドを、以下で、小文字、太字且つ下線で示されるSpeI及びAscI制限酵素フラ
グメントとして示される、対応する藻類トランジットペプチドに置き換えることにより、
構築物5と命名される形質転換構築物6S−CrbTub_suc2_nr::CrbT
ub_TP1−CwFatB1_nr−6S;構築物6と命名される構築物6S−Crb 30
Tub_suc2_nr::CrbTub_TP2−CwFatB1_nr−6S;構築
物7と命名される構築物6S−CrbTub_suc2_nr::CrbTub_TP3
−CwFatB1_nr−6S、及び構築物8と命名される構築物6S−CrbTub_
suc2_nr::CrbTub_TP4−CwFatB1_nr−6Sを作成した。得
られた藻類トランジットペプチド配列は、以下の配列中、イニシエーターATGとAsc
I部位との間にある。
構築物5∼12(一部):
(124) JP 2018-99138 A 2018.6.28

【化9】

10

【0467】
 藻類トランジットペプチドの制御下においてC.wrightii FatB2チオエ
ステラーゼを発現する形質転換DNA:構築物2のCwFatB2の天然トランジットペ
プチドを、上記で、小文字、太字且つ下線で示されるSpeI及びAscI制限酵素フラ
グメントとして示される、対応する藻類トランジットペプチドに置き換えることにより、
構築物9と命名される形質転換構築物6S−CrbTub_suc2_nr::CrbT 20
ub_TP1−CwFatB2_nr−6S;構築物10と命名される構築物6S−Cr
bTub_suc2_nr::CrbTub_TP2−CwFatB2_nr−6S;構
築物11と命名される構築物6S−CrbTub_suc2_nr::CrbTub_T
P3−CwFatB2_nr−6S、及び構築物12と命名される構築物6S−CrbT
ub_suc2_nr::CrbTub_TP4−CwFatB2_nr−6Sを作成し
た。藻類トランジットペプチド配列は、上記の配列中、イニシエーターATGとAscI
部位との間にある。
【0468】
 Cuphea wrightiiチオエステラーゼを発現する株から得られる脂肪酸プ
ロフィール:上述の構築物によって形質転換した株を、先述のような油の生成を可能にす 30
る条件下で成長させた。野生型UTEX 1435をグルコースで成長させた一方、UT
EX 1435の形質転換により作成した全てのトランスジェニック系をショ糖で成長さ
せた。試験した各構築物について、4つの形質転換体の脂肪酸プロフィールに対する影響
を分析した。トランスジェニック株の脂肪酸プロフィールは、以下の表25∼表28に示
される。
【0469】
 CwFatB1及びCwFatB2を発現するA.thalianaのトランスジェニ
ック系(表25)は、C14:0及びC12:0脂肪酸の蓄積とともに、C16:0脂肪
酸の蓄積に対して大きい影響を示す(Leonard et al,1998、前出より
)。 40
【0470】
 表26から分かるとおり、天然の高等植物トランジットペプチドを含むCwFatB1
を発現するトランスジェニックUTEX 1435系統(構築物1及び構築物3)は、主
にC14:0脂肪酸の蓄積に対する影響、及びそれより程度は少ないがC12:0脂肪酸
の蓄積に対する影響を示した。天然の高等植物トランジットペプチドを含むCwFatB
2を発現するトランスジェニックUTEX1435系統(構築物2及び構築物4)は、C
12:0及びC14:0脂肪酸の蓄積に対して大きい影響を示し、C12:0に対する影
響がC14:0に対する影響より高かった。2つのプロモーターCrbTub(構築物1
及び構築物2)とAmt3(構築物3及び構築物4)との間の比較から、Amt3プロモ
ーターにより駆動されるとき、CwFatB1及びCwFatB2を発現するトランスジ 50
(125) JP 2018-99138 A 2018.6.28

ェニック系がC10:0、C12:0、C14:0及びC16:0脂肪酸に対して著しく
高い影響を示すことが実証される。
【0471】
 CwFatB1チオエステラーゼの発現が4つの異なる藻類葉緑体標的配列により駆動
される場合のトランスジェニック系(構築物5、6、7、及び8)の分析は、藻類トラン
ジットペプチドが、いずれも、天然の高等植物トランジットペプチドと比べてより効率的
にチオエステラーゼをプラスチドに標的化させることを示している(構築物5∼8、表2
7におけるC12:0及びC14:0濃度を、構築物1、表26のものと比較のこと)。
これらのトランスジェニック系をさらに分析すると、4つの藻類トランジットペプチドの
うち、TP2(UTEX1435ステアロイルACPデサチュラーゼ葉緑体標的配列)及 10
びTP3(UTEX 1435デルタ12脂肪酸デサチュラーゼ葉緑体標的配列)はC1
2:0及びC14:0の蓄積に対してより大きい影響を示すことが明らかとなる。これら
の2つのトランジットペプチド(TP1及びTP2)は、UTEX 1435においてC
wFatB1をプラスチドに標的化させるためにより優れているように思われる。
【0472】
 CwFatB2チオエステラーゼの発現が4つの異なる藻類葉緑体標的配列(構築物9
、10、11、及び12)により駆動される場合のトランスジェニック系の分析から、C
12:0及びC14:0脂肪酸に対するより大きい影響で分かるとおり(構築物9を構築
物2と比較のこと)、これらの藻類トランジットペプチドのうち1つのみ、すなわちTP
−1のみが天然の高等植物トランジットペプチドより優れた効果をもたらすことが分かる 20

【0473】
 UTEX 1435で発現したときのこれらのC.wrightiiチオエステラーゼ
の影響は、Arabidopsisで発現したときの影響と大きく異なる。CwFatB
1及びCwFatB2を発現するA.thalianaのトランスジェニック系(表25
)は、C14:0及びC12:0脂肪酸の蓄積とともに、C16:0脂肪酸の蓄積に対す
る大きい影響を示す。しかしながら、UTEX 1435で発現したCwFatB1及び
CwFatB2が示すC16:0脂肪酸に対する影響の程度は異なる。CwFatB1を
発現する全てのUTEX 1435トランスジェニック系及びCwFatB2を発現する
一部(構築物10、11、12)におけるC12:C14比は、このチオエステラーゼを 30
発現するA.thalianaトランスジェニック系と同様である(表29)。しかしな
がら、UTEX 1435トランスジェニック系は、A.thalianaトランスジェ
ニック系と比べて著しく低いC14:C16比を示す(表29)。構築物2、4、9で作
成されたUTEX 1435トランスジェニック系におけるC12:C14比及びC14
:C16比は、同じチオエステラーゼを発現するA.thalianaトランスジェニッ
ク系と大きく異なる(表29)。従って、UTEX 1435でのCwFatB1及びC
wFatB2の発現は、同じチオエステラーゼを発現するArabidopsisのトラ
ンスジェニック系でもたらされた油プロフィールと大きく異なる油プロフィールをもたら
した。これらのUTEX 1435トランスジェニック系における油プロフィールはまた
、野生型UTEX 1435におけるものとも明確に異なる。 40
【0474】
 最後に、この実施例で記載されるトランスジェニック系により生成される改変油はまた
、Umbellularia californicaに由来するC12:0特異的チオ
エステラーゼを発現するトランスジェニックUTEX 1435系統(先述される)で作
成されるラウリン酸塩を豊富に含む油とも大きく異なる。
【0475】
 まとめると、これらのデータは、ことを示している:(1)UTEX 1435におけ
るCuphea wrightiiチオエステラーゼの発現が脂肪酸プロフィールに対し
て大きい影響を有し、固有の油を生じさせる;(2)UTEX 1435株におけるCw
FatB1チオエステラーゼの発現が、ミリスチン酸塩が豊富な油の産生をもたらす;( 50
(126) JP 2018-99138 A 2018.6.28

3)UTEX 1435におけるCwFatB2チオエステラーゼ(thioestea
se)の発現が、ラウリン酸塩及びミリスチン酸塩の両方が豊富な油の産生をもたらす;
及び(4)藻類におけるCwFatB1及びFatB2の発現が、生成される中鎖脂肪酸
の絶対濃度の点でも、及びその互いの相対比の点でも、モデル高等植物系統で生じるプロ
フィールとは全く異なるプロフィールを生じる。
【0476】
【表25】

10

【0477】
【表26】
20

30

【0478】
(127) JP 2018-99138 A 2018.6.28

【表27】

10

【0479】 20
【表28】

30

【0480】 40
(128) JP 2018-99138 A 2018.6.28

【表29】

10

20
【0481】
実施例5:内在する窒素依存性Protothecaプロモーターの同定
A.内在する窒素依存性プロモーターの同定及び特徴付け
 Prototheca moriformis(UTEX 1435)から、標準的な
技術を用いてcDNAライブラリーを作成した。Prototheca morifor
mis細胞を、窒素が枯渇した条件下で48時間成長させた。次いで、5%の播種物質(
v/v)を低窒素環境に移し、細胞を24時間ごとに7日間採集した。培養して約24時
間後、培地への窒素の供給を完全に絶った。集めたサンプルを、ドライアイス及びイソプ
ロパノールですぐに凍結させた。次いで、凍結した細胞ペレットサンプルから全RNAを
単離し、各サンプルの一部をRT−PCR試験のために残しておいた。サンプルから採集 30
した全RNAの残りに、polyA選択を行った。それぞれの条件から、等モル量のpo
lyAで選択したRNAを保存しておき、ベクターpcDNA3.0(Invitrog
en)でcDNAを作成するために使用した。このようにして得られた保存しておいたc
DNAライブラリーから、ほぼ1200種類のクローンを無作為に取り出し、両方の鎖に
ついて塩基配列を決定した。これらの1200個の配列の中から、ほぼ68種類の異なる
cDNAを選択し、リアルタイムRT−PCR試験で使用するためのcDNA特異的なプ
ライマーを設計するのに使用した。
【0482】
 保存容器に入れておいた細胞ペレットサンプルから単離したRNAを、上述のとおり作
成したcDNA特異的なプライマーセットを用い、リアルタイムRT−PCT試験で基質 40
として使用した。この保存しておいたRNAをcDNAに変換し、68個の遺伝子特異的
なプライマーセットそれぞれについて、RT−PCRの基質として使用した。閾値サイク
ル数、つまりCT数を用い、68種のcDNAそれぞれについて、時間経過にともなって
集めたそれぞれのRNAサンプル内の相対的な転写産物量を示した。窒素が豊富にある状
態と、窒素が枯渇している状態との間で、顕著な増加を示す(3倍以上)cDNAを、窒
素の枯渇によって発現を上方調節する有望な遺伝子としてフラグ付けした。本明細書で記
載しているとおり、窒素の枯渇/制限は、油産生微生物が脂質産生する際の既知の誘発因
子である。
【0483】
 窒素の枯渇/制限の間、発現が上方調節されるような、cDNAから得た推定プロモー 50
(129) JP 2018-99138 A 2018.6.28

ター/5’UTR配列を同定するために、窒素が枯渇した状態で成長させたProtot
heca moriformis(UTEX 1435)から全DNAを単離し、次いで
、454 sequencing technology(Roche)を用い、塩基配
列を決定した。上のRT−PCR結果によって、上方調節されるとフラグ化されたcDN
Aを、454 genomic sequencing readsから生じる、アセン
ブリしたコンティグに対し、BLASTを用いて比較した。cDNAの5’末端を特定の
コンティグに対してマッピングし、可能な場合、5’フランキングDNAの500bpを
超える部分を使用し、プロモーター/UTRを推定した。次いで、プロモーター/5’U
TRの存在を確認し、ゲノムDNAのPCR増幅を用いてクローン化した。個々のcDN
A 5’末端を用い、3’プライマーを設計し、454コンティグアセンブリの5’末端 10
を使用し、5’遺伝子特異的なプライマーを設計した。
【0484】
 第1のスクリーニングとして、推定プロモーターの1つである、Aat2(アンモニウ
ムトランスポーター、配列番号63)から単離した5’UTR/プロモーターを、C.s
orokinanaグルタミン酸脱水素酵素プロモーターの代わりに、Chlorell
a protothecoidesステアロイルACPデサチュラーゼトランジットペプ
チドを用い、Cinnamomum camphora C14チオエステラーゼ構築物
内でクローン化した。この構築物を、配列番号81として列挙している。この推定プロモ
ーターを試験するために、チオエステラーゼ構築物をPrototheca morif
ormis細胞内で形質転換し、上述の方法を用い、低/無窒素状態でC14/C12脂 20
肪酸の増加についてスクリーニングすることによって、実際のプロモーター活性を確かめ
た。cDNA/ゲノムスクリーニングから単離した推定窒素制御プロモーターを、同じ方
法を用いて同様に試験することができる。
【0485】
 cDNA/ゲノムスクリーニングから単離した他の推定窒素制御プロモーター/5’U
TRは、以下のものであった。
【0486】
【表29A】

30

40

【0487】
 何倍増加したかは、低窒素培地で24時間培養した後の、cDNA産出量が何倍増えた 50
(130) JP 2018-99138 A 2018.6.28

かを指す。
【0488】
 これらの推定プロモーター/5’UTRの潜在的な調節能力についてさらに洞察を得る
ため、配列のうち8つをさらなる試験用に選択した:(1)FatB/A;(2)Sul
fRed亜硫酸還元酵素;(3)SugT糖トランスポーター;(4)Amt02−アン
モニウムトランスポーター02;(5)Aat01−アミノ酸トランスポーター01;(
6)Aat03−アミノ酸トランスポーター03;(7)Aat04−アミノ酸トランス
ポーター04;及び(8)Aat05−アミノ酸トランスポーター05。さまざまな時間
点でPrototheca moriformis細胞から単離したRNAに対し、Il
luminaシーケンシングリードを利用する高分解能トランスクリプトーム解析を行っ 10
た:T0(種);種からの播種後20時間;32時間;48時間;62時間;及び114
時間。T0(種)における培地は窒素が枯渇しており、一方、20時間経った時点又はそ
れ以降は、培地はほとんど乃至全く窒素を含まなかった。次いで、時間点の各々から単離
されたRNAから生じるアセンブリした転写物コンティグを、8つの先に特定した転写物
の各々を用いて独立してBLASTにかけた。結果を以下の表30にまとめる。
【0489】
【表30】

20

30

【0490】
 上にまとめた結果から、転写物のいくつかは時間の経過に伴う蓄積の増加を示し、しか
しながら興味深いことに、亜硫酸塩還元酵素mRNAは、時間の経過に伴いmRNA蓄積
の明らかな減少を示す。 40
【0491】
 天然トランジットペプチドが取り去られてChlorella prototheco
ides(UTEX 250)ステアロイルACPデサチュラーゼに由来するトランジッ
トペプチドに置き換えられた、C.camphoraチオエステラーゼコード領域の上流
に、8つの推定プロモーター/5’UTR領域をクローン化した。各推定プロモーター/
5’UTR領域構築物を、6Sゲノム配列のDNAを使用した相同組み換えによってPr
ototheca moriformis UTEX 1435に導入した。また、構築
物内には、ショ糖含有培地/プレート上での陽性クローンの選択用のS.cerevis
iaeに由来するsuc2ショ糖インベルターゼ遺伝子も含まれた。Aat01について
の構築物の関連する部分のcDNA配列は、配列表に配列番号67として列挙される。他 50
(131) JP 2018-99138 A 2018.6.28

の構築物についても同じ骨格を使用し、変化する要素は推定プロモーター/5’UTR配
列のみであった。さらなる対照トランスジェニック株を作成し、ここではC.reinh
ardtii β−チューブリンプロモーターを使用してC.camphoraチオエス
テラーゼ遺伝子の発現を駆動した。このプロモーターは、目的の遺伝子の構成的発現を駆
動し、従って試験されるさまざまな推定N調節プロモーター/5’UTRにより駆動され
るとき、同じチオエステラーゼメッセージの発現を比べて計測するのに有用な対照を提供
することが分かっている。
【0492】
 トランスジェニッククローンを作成した後、3つの別個の実験を実施した。最初の2つ
の実験は、RT−PCRによる安定成長状態のチオエステラーゼmRNAレベル、脂肪酸 10
プロフィール及び培養上澄み中のアンモニア濃度を計測することにより、8つ全ての推定
プロモーターの潜在的な窒素調節可能性を評価する。クローンは最初、窒素を豊富に含む
種培地(1g/L硝酸アンモニウム−15mM窒素(アンモニアとして)、4g/L酵母
エキス)で振とうしながら(200rpm)28℃で24∼48時間成長させ、その時点
で20OD単位(A750)を使用して50mlの低窒素培地(0.2g/L硫酸アンモ
ニウム−3mM窒素(アンモニアとして)、0.2g/L酵母エキス)に播種した。細胞
のサンプルを24時間毎に6日間にわたり採取し、サンプルはまた、低窒素条件への切り
換え直前にも収集した。次いで、各サンプルからの細胞の一部を用いて、Trizol試
薬を使用した全RNA抽出を(製造業者の示す方法に従い)行った。アンモニアアッセイ
から、低窒素培地において24時間後に上澄み中のアンモニア濃度が検出限界(約100 20
μM)未満に降下したことが明らかとなった。
【0493】
 リアルタイムRT−PCRについては、全てのRNAレベルを、各時間点についてPr
ototheca moriformis(UTEX 1435)で発現させた内部対照
RNAのレベルに対して正規化した。cd189と命名される内部対照RNAは、N−ア
セチルオルニチンアミノトランスフェラーゼをコードするARG9遺伝子の産物である。
これらの実験でリアルタイムRT−PCRに使用されるプライマーセットは、以下であっ
た:
【0494】
【表30A】 30

【0495】 40
 各時間点からの形質転換体の各々の脂質プロフィールもまた作成し、RT−PCR結果
と比較した。アンモニアレベル、RT−PCR結果及びC12∼C14脂肪酸濃度の変化
に基づくと、アミノ酸トランスポーター01(Aat−01)配列、アミノ酸トランスポ
ーター04(Aat−04)配列、及びアンモニウムトランスポーター02(Amt−0
2)配列が機能的な窒素調節性プロモーター/5’UTRを確かに含むと結論付けられた

【0496】
 このRT−PCR結果から、Aat−01は、対照(C.reinhardtii β
チューブリンプロモーター)より最大で4倍高い安定成長状態のC.camphoraチ
オエステラーゼmRNAレベルを駆動する能力を示した。また、mRNAレベルは窒素制 50
(132) JP 2018-99138 A 2018.6.28

限及びC12∼C14脂肪酸濃度の著しい増加とも相関を有した。これらの結果から、A
at−01プロモーターに関連する5’UTRが、脂質生合成下でのタンパク質合成の駆
動において対照のC.reinhardtiiプロモーターより高効率である可能性が高
いことが示される。Aat−01プロモーターと同様に、Aat−04プロモーターは、
C.reinhardtii対照プロモーターより最大5倍高いmRNA蓄積を駆動する
ことができた。しかしながら、Aat−04プロモーター構築物によって生じたC12∼
C14脂肪酸濃度に影響を及ぼす能力は、中程度に過ぎなかった。これらのデータは、A
at−04プロモーターは窒素の枯渇により明らかに調節可能であるが、プロモーターに
関連するUTRは、翻訳エンハンサーとしては不十分にしか機能しない可能性が高いこと
を示している。最後に、Amt−02プロモーターは、対照プロモーターより最大3倍高 10
いmRNA蓄積を駆動することができた点で、Aat−01プロモーターと同様であった
。mRNAレベルもまた窒素制限及びC12∼C14脂肪酸濃度の著しい増加と相関を有
した。まとめると、これらのプロモーターの3つ全てが、窒素により調節されることが示
された。
【0497】
B.アンモニウムトランスポーター3(amt03)プロモーターのさらなる特徴付け及
びさまざまなチオエステラーゼの発現
 上述のような、アンモニウムトランスポーター02及び03(amt02及びamt0
3)と命名される部分cDNAを同定した。これらの2つの部分cDNAとともに、アン
モニウムトランスポーター01(amt01)と命名される第3の部分cDNAもまた同 20
定した。部分cDNAと推定上の翻訳されたアミノ酸配列とのアラインメントを比較した
。結果は、amt01が3つの配列のなかでより遠い関係にあり、一方でamt02とa
mt03とは単一のアミノ酸が異なるに過ぎないことを示している。
【0498】
 最初はインシリコで、Roche 454ゲノムDNAアセンブリ及び上述のようなI
lluminaトランスクリプトームアセンブリに対して部分cDNA配列をBLAST
にかけることにより、プロモーター/5’UTRを作成した。amt01、amt02、
及びamt03をコードするcDNAと同一性を示す転写物コンティグが同定されたが、
しかしながらこの転写物コンティグは3つ全てによって共有される配列を含んだため、コ
ンティグについて3つのmRNAの間を区別することはできなかった。Roche 45 30
4ゲノムDNAアセンブリはamt02及びamt03 cDNA配列にヒットを与え、
N末端タンパク質配列を含んでいた。PCRを実施して5’フランキング領域をクローン
化した。クローンamt02及びamt03プロモーター/UTRの検証に使用したPC
Rプライマーは以下のものであった:
Amt03順方向:5’−GGAGGAATTCGGCCGACAGGACGCGCGT
CA−3’(配列番号85)

Amt03逆方向:5’−GGAGACTAGTGGCTGCGACCGGCCTGTG
−3’(配列番号86)
40
Amt02順方向:5’−GGAGGAATTCTCACCAGCGGACAAAGCA
CCG−3’(配列番号87)

Amt02逆方向:5’−GGAGACTAGTGGCTGCGACCGGCCTCTG
G−3’(配列番号88)

いずれの場合にも、5’及び3’プライマーは、これらのプロモーター/5’UTR領域
の機能性を検証するための発現ベクターへの予想されるクローニングに有用な制限部位を
含んだ。
【0499】 50
(133) JP 2018-99138 A 2018.6.28

 この組み合わされたインシリコ及びPCRベースの方法によりクローン化されたDNA
と、amt02(配列番号61)及びamt03(配列番号60)をコードする元のcD
NAとの間のペアワイズアラインメントを実施した。これらのアラインメントの結果から
、元のcDNAとクローン化したゲノム配列との間の著しい差異が示され、アンモニウム
トランスポーターが多様な遺伝子ファミリーを表す可能性が高いことが示された。さらに
、amt03についての組み合わされた方法に基づくプロモーター/5’UTRクローン
は元のamt03配列と異なったが、一方、amt02配列は同じであった。Amt03
プロモーター/UTR配列(配列番号89)を特徴付けるさらなる実験を行い、以下に記
載した。
【0500】 10
 この推定プロモーター/UTR配列をクローン化して4つの異なるチオエステラーゼの
発現を駆動することにより、上記で同定されたamt03プロモーター/UTR配列(配
列番号89)を試験した。発現カセットは、ゲノムの6S遺伝子座の上流及び下流の相同
組み換え配列を含んだ(それぞれ配列番号82及び84)。カセットはまた、ショ糖含有
培地での陽性クローンの選択を可能にするS.cerevisiae SUC2ショ糖イ
ンベルターゼcDNAも含んだ。ショ糖インベルターゼの発現は、C.reinhard
tii βチューブリンプロモーターにより駆動され、C.vulgaris硝酸還元酵
素3’UTRも同様に含んだ。次いで、amt03プロモーター/UTR配列がショ糖イ
ンベルターゼカセットの下流にクローン化され、後に、4つのチオエステラーゼ遺伝子:
(1)C.camphoraに由来するC14チオエステラーゼ;(2)U.calif 20
ornica由来のC12チオエステラーゼ;(3)U.americana由来のC1
0∼C16チオエステラーゼ;又は(4)C.hookerianaに由来するC10チ
オエステラーゼのうちの1つに由来するインフレームのチオエステラーゼcDNA配列が
続き、またC.vulgaris硝酸還元酵素3’UTRが含まれた。C14 C.ca
mphoraチオエステラーゼ、C12 U.californicaチオエステラーゼ
、及びC10∼C16 U.americanaは全て、Chlorella prot
othecoidesステアロイルACPデサチュラーゼに由来するトランジットペプチ
ドを含んだ。C10 C.hookerianaチオエステラーゼはProtothec
a moriformisデルタ12脂肪酸デサチュラーゼ(FAD)に由来するトラン
ジットペプチドを含んだ。いずれの場合にも、配列は、Prototheca mori 30
formisにおける発現に対してコドンを最適化した。前述のチオエステラーゼ構築物
に対する配列は、配列表に記載される:
【0501】
【表30B】

40

【0502】
 上記の実施例2に記載したとおりの微粒子銃による形質転換方法によって、野生型Pr
ototheca moriformis細胞にトランスジェニック系を作成し、ショ糖
を含有するプレート/培地上で選択を行った。次いで、その脂肪酸プロフィールが変化し
た程度について、陽性の系統をスクリーニングした。次いで、上述の4つの構築物の各々
による形質転換から得られたものである4つの系統を、さらなる分析に供した。系統76
はC.camphora C14チオエステラーゼを発現し、系統37はU.calif 50
(134) JP 2018-99138 A 2018.6.28

ornica C12チオエステラーゼを発現し、系統60はU.americana 
C10∼C16チオエステラーゼを発現し、及び系統56はC.hookeriana 
C10チオエステラーゼを発現した。各系統を、ショ糖を唯一の炭素源として含む培地に
おいて48時間成長させ、14時間、24時間、36時間及び48時間(種培養)で細胞
のサンプルを取り出して、脂肪酸メチルエステルに直接トランスエステル化し、続いてG
C−FID(上述)によって分析することにより脂肪酸プロフィールを決定し、全RNA
を単離した。48時間の終了時、これらの細胞を用いて、pH5.0(クエン酸緩衝化、
0.05Mの最終濃度)又はpH7.0(HEPES緩衝化、0.1Mの最終濃度)のい
ずれかに維持し、ゼロか、又は低い窒素濃度で(ショ糖を唯一の炭素源として含む)、培
養物を播種した。培養物サンプルを12時間、24時間、72時間及び108時間(脂質 10
生成)で取り出して、脂肪酸プロフィールを決定し、全RNAを単離した。これらの培養
物のアンモニアアッセイから、低窒素培地で24時間後、アンモニア濃度が検出限界(約
100μM)未満に降下したことが明らかとなった。
【0503】
 上記で収集した時間点の各々からの全RNAに対して、チオエステラーゼのmRNAレ
ベルに関するリアルタイムRT−PCRアッセイを実施し、全てのmRNAレベルを内部
対照RNA(cd189)のレベルに対して正規化した。リアルタイムPCRで使用した
プライマーセットは、以下の表31に示される:
【0504】
【表31】 20

30

【0505】
 種培養期の時間点の各々における脂肪酸プロフィールからの結果は、チオエステラーゼ
からの影響がほとんどないことを示した。脂質生成期が始まると、脂肪酸プロフィールは
大きい影響を受け、その増加は、pH5.0で維持した培養物と比較して、pH7.0で
維持した培養物についてはるかに劇的であった。pH7.0とpH5.0との間の標的脂
肪酸蓄積の差の程度は、試験したチオエステラーゼ毎に異なったが、全体的な効果は同じ 40
であった:pH5.0で成長させた細胞は、大幅に低いレベルの、しかし対照の野生型細
胞と比べると多い標的脂肪酸の蓄積を示した。
【0506】
 これらの同じサンプルから単離したRNAの分析は、脂肪酸プロフィールデータと極め
て良好に相関し、すなわちチオエステラーゼの各々について安定成長状態のmRNAレベ
ルに対する培養pHの明らかな影響があった。脂肪酸蓄積データとmRNAデータとを合
わせて考えると、amt03プロモーター/UTRにより駆動されるチオエステラーゼ遺
伝子発現のpH調節は、転写、mRNA安定性又はその双方のいずれかのレベルで明らか
に媒介された。さらに、安定成長状態レベルのU.californica mRNAは
、安定成長状態レベルのC.hookeriana mRNAと比較したとき4対数低か 50
(135) JP 2018-99138 A 2018.6.28

ったことが認められた。この観察は、個々のmRNA配列が発現の制御において役割を果
たし得るという仮説と一致している。これらのデータは、トランスポーターのamt03
ファミリーによるPrototheca moriformisにおけるアンモニウムの
取り込みがpHと直接結び付けられることを意味している。
【0507】
 U.americana C10∼C16チオエステラーゼの発現を駆動する構築物a
mt03プロモーター/UTRによるPrototheca moriformis細胞
の形質転換から作成した12個の系統に対し、さらなる脂肪酸プロフィール分析を実施し
た。上述の系統60は、以下の分析の一部であった。以下の表32は、野生型対照ととも
に分析した12個の系統のうちの3個の脂質プロフィールを示す。 10
【0508】
【表32】

20

【0509】
 上記の表に示されるとおり、総飽和の濃度は野生型の濃度に対して劇的に増加し、系統
40の場合には野生型と比較して2.6倍超であった(分析した12個の系統の総飽和は
約63%∼86%超の範囲であった)。さらに、U.americanaチオエステラー
ゼは、これらの濃度で発現したとき、不飽和物、特にC18:1及びC18:2(系統4
0及び44を参照)の濃度を劇的に低下させ、ここで系統44では、C18:1濃度が野
生型と比較して8倍超低下している。また、U.americanaチオエステラーゼ(
amt03プロモーターにより駆動される)は中鎖脂肪酸の濃度を大幅に増加させた。系 30
統44は、野生型株に見られる濃度の約42倍高い56%超のC10:0∼C14:0濃
度を示し、及び57%超のC8:0∼C14:0濃度を示す。U.americanaチ
オエステラーゼの発現を駆動するAmt03プロモーターの構築物で形質転換したさらな
る株は、以下の代表的な脂質プロフィールを有した:0.23% C8:0;9.64%
 C10:0;2.62% C12:0;31.52% C14:0;37.63% C
16:0;5.34% C18:0;7.05% C18:1;及び5.03% C18
:2、総飽和率86.98%。
【0510】
 C.hookeriana C10チオエステラーゼ(配列番号94)の発現を駆動す
る構築物amt03プロモーター/UTR(配列番号89)によるPrototheca 40
 moriformis細胞の形質転換から生じたさらなる脂質プロフィール。この構築
物を発現する陽性クローンを選択し、pH7.0条件で成長させた。陽性クローンの代表
的な脂質プロフィールは以下であった:9.87% C8:0;23.97% C10:
0;0.46% C12:0;1.24% C14:0;10.24% C16:0;2
.45% C18:0;42.81% C18:1;及び7.32% C18:2。この
クローンは33.84のC8∼C10率を有した。
【0511】
 まとめると、データから、amt03プロモーター/UTR、及びそれと同様の他のプ
ロモーターを緊密に調節されるプロモーターとして使用できることが示唆され、特に潜在
的に毒性の化合物を発現させるのに有用であり得るとともに、遺伝子発現の厳密な実施が 50
(136) JP 2018-99138 A 2018.6.28

要求される。Prototheca moriformisは幅広い(少なくともpH5
.0∼7.0の)pHレジーム下で成長可能なことから、この有機体はamt03プロモ
ーター/UTRなどの調節エレメントと組み合わせることで特に有用となる。さらに、上
記の脂質プロフィールデータは、遺伝子発現を駆動するamt03プロモーター/UTR
の印象的な能力を示している。
【0512】
実施例6:微細藻類Prototheca moriformisにおける飽和脂肪酸濃
度の改変
A.遺伝子ノックアウトアプローチによるステアロイルACPデサチュラーゼ及びデルタ
12脂肪酸デサチュラーゼ発現の低下 10
 Prototheca moriformis(UTEX 1435)からのゲノムD
NAのcDNA、Illumiaトランスクリプトーム及びRoche 454シーケン
シング(squencing)に基づくバイオインフォマティクスベースのアプローチを
使用したゲノムスクリーンの一部として、脂肪酸不飽和化に関わる2つの特定の遺伝子群
:ステアロイルACPデサチュラーゼ(SAD)及びデルタ12脂肪酸デサチュラーゼ(
Δ12 FAD)を同定した。ステアロイルACPデサチュラーゼ酵素は脂質合成経路の
一部であり、脂肪酸アシル鎖に二重結合を導入する働きをし、例えばC18:0脂肪酸か
らC18:1脂肪酸を合成する。デルタ12脂肪酸デサチュラーゼもまた脂質合成経路の
一部であり、既に不飽和の脂肪酸に二重結合を導入する働きをし、例えばC18:1脂肪
酸からC18:2脂肪酸を合成する。バイオインフォマティクスを試みるなかで同定され 20
た2つの脂肪酸デサチュラーゼ遺伝子クラスに基づくプローブを使用したサザンブロット
分析から、デサチュラーゼ遺伝子クラスの各々は複数のファミリーメンバーで構成されて
いる可能性があることが示された。さらにステアロイルACPデサチュラーゼをコードす
る遺伝子は、2つの別個のファミリーに分けられた。これらの結果に基づき、デサチュラ
ーゼ酵素の各ファミリー内でより高度に保存されたコード領域を標的とすることにより、
潜在的に複数の遺伝子ファミリーメンバーを破壊するように、3つの遺伝子破壊構築物を
設計した。
【0513】
 3つの相同組み換え標的構築物は、以下を使用して設計した:(1)デルタ12脂肪酸
デサチュラーゼ(d12FAD)ファミリーメンバーのコード配列の高度に保存された部 30
分、及び(2)SADの2つの別個のファミリーの各々(各々が各ファミリーに由来する
コード配列の保存領域を含む)を標的とする2つの構築物。この戦略によれば、相同組み
換えによって標的遺伝子のフランキング領域を標的とし得る古典的な遺伝子置換戦略では
なく、選択可能なマーカー遺伝子(ショ糖の加水分解能力を付与するS.cerevis
iaeに由来するsuc2ショ糖インベルターゼカセット)が、これらの高度に保存され
たコード領域(複数のファミリーメンバーを標的とする)に組み込まれ得る。
【0514】
 上述の方法を用いて全ての構築物を微粒子銃形質転換により細胞に導入し、構築物は細
胞に撃ち込む前に線状化した。ショ糖含有プレート/培地で形質転換体を選択し、上述の
方法を用いて脂質プロフィールの変化を評価した。3つの標的構築物の各々の関連する配 40
列を以下に列挙する。
【0515】
(137) JP 2018-99138 A 2018.6.28

【表32A】

10

【0516】
 構築物の各々を含む形質転換からの代表的な陽性クローンを取り出し、それらのクロー
ンの脂質プロフィールを決定して(面積%で表されている)、以下の表33にまとめた。
【0517】
【表33】

20

30

【0518】
 構築物の各々が望ましい脂肪酸クラスに対して計測可能な影響を有し、且つ3つ全ての
場合においてC18:0濃度が、特に2つのSADノックアウトで、著しく上昇した。S
ADノックアウトからの複数のクローンのさらなる比較から、SAD2Bノックアウト系
統が、SAD2Aノックアウト系統で観察されるC18:1脂肪酸濃度と比べて、C18
:1脂肪酸の大幅な減少を有したことが示された。
【0519】 40
 さらなるΔ12脂肪酸デサチュラーゼ(FAD)ノックアウトを、上述の方法を用いて
Prototheca moriformisの背景に作成した。Δ12FADの潜在的
な相同性を同定するため、以下のプライマーを使用することにより推定FADをコードす
るゲノム領域を増幅した:
【0520】
【表33A】

50
(138) JP 2018-99138 A 2018.6.28

【0521】
 上記のプライマーを使用してPrototheca moriformisゲノムDN
Aのゲノム増幅から得られた配列は、高度な類似性を有したが、Protothecaの
Δ12FADに複数の遺伝子又は対立遺伝子が存在することが示された。
【0522】
 この結果に基づき、1つ以上のΔ12FAD遺伝子を不活性化するための2つの遺伝子
破壊構築物を設計した。この戦略によれば、古典的な遺伝子置換戦略を用いるのではなく
、高度に保存されたコード領域にショ糖インベルターゼ(S.cerevisiaeに由
来するsuc2)カセットを組み込み、それにより選択可能なマーカーとしてショ糖を加
水分解する能力を付与し得る。pSZ1124と命名される第1の構築物は、5’及び3 10
’ゲノム標的配列と、それに隣接するS.cerevisiae suc2遺伝子の発現
を駆動するC.reinhardtii β−チューブリンプロモーター、及びChlo
rella vulgaris硝酸還元酵素3’UTRを含んだ(S.cerevisi
ae suc2カセット)。pSZ1125と命名される第2の構築物は、5’及び3’
ゲノム標的配列と、それに隣接するS.cerevisiae suc2遺伝子の発現を
駆動するC.reinhardtii β−チューブリンプロモーター、及びChlor
ella vulgaris硝酸還元酵素3’UTRを含んだ。構築物の関連する配列を
配列表に列挙する:
【0523】
【表33B】 20

【0524】
 pSZ1124及びpSZ1125を、それぞれPrototheca morifo
rmisの背景に導入し、ショ糖を加水分解する能力に基づき陽性クローンを選択した。 30
表34は、pSZ1124及びpSZ1125標的ベクターが利用された2つのトランス
ジェニック系で得られた脂質プロフィール(面積%、上述の方法を用いて生成した)をま
とめている。
【0525】
【表34】

40

【0526】
 FAD2B(pSZ1124)構築物を含むトランスジェニックは、極めて興味深い予
想外の脂質プロフィール結果をもたらし、すなわち低下が予想され得たC18:2濃度が
約1面積%しか低下しなかった。しかしながら、C18:1脂肪酸濃度は、ほぼ、大幅に
低下したC16:0濃度のみを代償にして、大幅に増加した。FAD2C(pSZ112
5)構築物を含むトランスジェニックもまた、脂質プロフィールの変化をもたらした:C
18:2の濃度は、C18:1濃度の対応する増加を伴い大幅に低下する。
【0527】 50
(139) JP 2018-99138 A 2018.6.28

牛脂模倣物
 上述のとおり上記のSAD2Bノックアウト実験から作成した1つの陽性クローンを、
C14選択的脂肪酸アシル−ACPチオエステラーゼ遺伝子をさらに導入するための背景
として用いるため選択した。C.camphora C14選択的チオエステラーゼを導
入する構築物は、6Sゲノム領域に対する標的配列(相同組み換えによる形質転換DNA
の標的化した組み込みを可能にする)を含み、及びこの発現構築物は、Chlorell
a vulgaris硝酸還元酵素3’UTRを伴うneoR遺伝子の発現を駆動するC
.reinhardtii β−チューブリンプロモーターを含み、その後に、第2のC
hlorella vulgaris硝酸還元酵素3’UTRを伴うChlorella
 protothecoidesステアロイルACPデサチュラーゼトランジットペプチ 10
ドを含むコドンが最適化されたC.camphoraチオエステラーゼの発現を駆動する
第2のC.reinhardtii β−チューブリンプロモーター(promter)
が続いた。5’ 6Sゲノムドナー配列は配列番号82に列挙され;3’ 6Sゲノムド
ナー配列は配列番号84に列挙され;及びC.camphoraチオエステラーゼに関連
する発現構築物は配列番号83に列挙される。
【0528】
 上述のとおり微粒子銃法を用いて形質転換を行い、2%ショ糖を含有するプレート上で
細胞を24時間回復させた。この時間の後、細胞を再び懸濁させ、選択のため2%ショ糖
及び50μg/mlのG418を含有するプレートに再び播種した。脂質生成及び脂質プ
ロフィール用に、生成された陽性クローンのうち9個のクローンを選択した。9個のトラ 20
ンスジェニッククローン(SAD2BがKOされている、及びC.camphora C
14選択的チオエステラーゼを発現する)を上述のとおり培養し、脂質プロフィールにつ
いて分析した。結果を以下の表35にまとめる。以下の表35には獣脂についての脂質プ
ロフィールも含まれる(National Research Council 197
6:Fat Content and Composition of Animal 
Product)。
【0529】
(140) JP 2018-99138 A 2018.6.28

【表35】

10

20

30

【0530】
 表35で分かるとおり、トランスジェニック系の脂質プロフィールは獣脂の脂質プロフ
ィールと非常によく似ている。まとめて考えると、このデータは、獣脂の脂質プロフィー
ルと同様の油を生成するトランスジェニック藻類株を生じさせるために、特定のトランス
ジェニック背景、この場合SAD2BノックアウトをC14選択的チオエステラーゼ(C
.camphoraに由来する)と組み合わせることの有用性を示している。
【0531】
B.Prototheca細胞においてデルタ12デサチュラーゼ遺伝子(FADc)を
下方調節するためのRNAiアプローチ 40
 RNAiによってFADc(デルタ12デサチュラーゼ遺伝子)遺伝子発現を下方調節
するベクターを、Prototheca moriformis UTEX 1435の
遺伝的背景に導入した。Saccharomyces cerevisiae suc2
ショ糖インベルターゼ遺伝子を選択可能なマーカーとして利用し、ショ糖を唯一の炭素源
として成長する能力を陽性クローンに付与した。第1のタイプの構築物は、FADcコー
ド領域の第1エクソンがシスでその第1のイントロンに連結し、それに逆方向の第1エク
ソンの反復単位が続く部分を利用した。このタイプの構築物は、理論的には、mRNAと
して発現するときヘアピンRNAの形成をもたらす。この第1のタイプの構築物を2つ作
成し、1つはpSZ1468と称される、Prototheca moriformis
 Amt03プロモーター(配列番号89)により駆動されるものであり、及び第2の構 50
(141) JP 2018-99138 A 2018.6.28

築物は、pSZ 1469と称される、Chlamydomomas reinhard
tii β−チューブリンプロモーター(promter)(配列番号114)により駆
動されるものであった。第2のタイプの構築物は、pSZ1470と称されるProto
theca moriformis Amt03プロモーター(配列番号89)により駆
動されるか、或いはpSZ 1471と称されるChlamydomomas rein
hardtii β−チューブリンプロモーター(promter)(配列番号114)
により駆動されるアンチセンス方向の大型のFADcエクソン2を利用した。4つの構築
物は全て、S.cerevisiae suc2ショ糖インベルターゼカセット(配列番
号159)と、核ゲノムに組み込むための6Sゲノム領域に対する5’(配列番号82)
及び3’(配列番号84)相同組み換え標的配列(構築物に隣接する)とを有した。各R 10
NAi構築物のFADc部分の配列は、各構築物の関連する部分とともに、以下のとおり
配列表に列挙される:
【0532】
【表35A】

20

【0533】
 4つの構築物の各々をPrototheca moriformisの背景に形質転換
し、ショ糖の唯一の炭素源とするプレートを使用して陽性クローンをスクリーニングした
。各形質転換から陽性クローンを取り出し、pSZ1468、pSZ1469、pSZ1 30
470及びpSZ1471に含まれるヘアピン及びアンチセンスカセットの脂肪酸プロフ
ィールに対する影響を決定する一部を選択した。各形質転換から選択されたクローンを脂
質生成条件下で成長させ、上述のような直接的なトランスエステル化方法を用いて脂質プ
ロフィールを決定した。形質転換の各々からの代表的な脂質プロフィールを、以下の表3
6にまとめる。野生型1及び2細胞は、陰性対照として形質転換体の各々とともに実行し
た非形質転換Prototheca moriformis細胞であった。
【0534】
(142) JP 2018-99138 A 2018.6.28

【表36】

10

20

30

【0535】
 上記にまとめた結果から、ヘアピン構築物pSZ1468及びpSZ1469が特定の
予想された表現型、すなわちそれぞれ野生型1及び野生型2と比較したときC18:2脂
肪酸濃度の低下及びC18:1脂肪酸濃度の上昇を示したことが示された。アンチセンス
構築物pSZ1470及びpSZ1471は、C18:2脂肪酸濃度の低下をもたらさな 40
かったが、代わりにそれぞれ野生型1及び野生型2と比較したときの僅かな増加、及びC
16:0脂肪酸濃度の僅かな低下を示した。
【0536】
C.外来性ステアロイル−ACPデサチュラーゼの発現
 Olea europaeaステアロイル−ACPデサチュラーゼ(GenBank寄
託番号AAB67840.1)を、Prototheca moriformis UT
EX1435の遺伝的背景に導入した。この発現構築物は、核ゲノムに組み込むための6
Sゲノム領域に対する5’(配列番号82)及び3’(配列番号84)相同組み換え標的
配列(構築物に隣接する)と、C.reinhardtii β−チューブリンプロモー
ター/5’UTR及びChlorella vulgaris硝酸還元酵素3’UTRの 50
(143) JP 2018-99138 A 2018.6.28

制御下にあるS.cerevisiae suc2ショ糖インベルターゼコード領域とを
含んだ。このS.cerevisiae suc2発現カセットは配列番号159として
列挙され、選択マーカーとして機能した。Olea europaeaステアロイル−A
CPデサチュラーゼコード領域は、Prototheca moriformis Am
t03プロモーター/5’UTR(配列番号89)及びC.vulgaris硝酸還元酵
素3’UTRの制御下にあり、天然トランジットペプチドがChlorella pro
tothecoidesステアロイル−ACPデサチュラーゼトランジットペプチド(配
列番号49)によって置き換えられた。コドンが最適化されたcDNA配列及びアミノ酸
配列(置き換えられたトランジットペプチドを含む)は、配列表にそれぞれ配列番号17
1及び配列番号172として列挙される。O.europaea SAD発現カセットの 10
全体をpSZ1377と命名し、Prototheca moriformisの遺伝的
背景に形質転換した。ショ糖を唯一の炭素源とするプレートで陽性クローンをスクリーニ
ングした。陽性クローンの一部を選択し、脂質生成条件下で成長させ、上述のような直接
的なトランスエステル化方法を用いて脂質プロフィールを決定した。選択されたクローン
の脂質プロフィールを以下の表37にまとめている。
【0537】
【表37】

20

【0538】 30
 上記にまとめた結果は、異種デサチュラーゼ、この場合Olea europaeaに
由来するステアロイル−ACPデサチュラーゼの導入が、より高濃度のC18:1脂肪酸
及びそれに伴うC18:0及びC16:0脂肪酸濃度の低下をもたらし得ることを示して
いる。
【0539】
実施例7:ヒドロキシル化脂肪酸を生成するためのProtothecaの操作
 Ricinus communisオレイン酸12−ヒドロキシラーゼ(Rc12hy
dro)(GenBank寄託番号AAC49010.1)を、Prototheca 
moriformis UTEX1435の遺伝的背景に導入した。この発現構築物は、
核ゲノムに組み込むための6Sゲノム領域に対する5’(配列番号82)及び3’(配列 40
番号84)相同組み換え標的配列(構築物に隣接する)と、C.reinhardtii
 β−チューブリンプロモーター/5’UTR及びChlorella vulgari
s硝酸還元酵素3’UTRの制御下にあるS.cerevisiae suc2ショ糖イ
ンベルターゼコード領域とを含んだ。このS.cerevisiae suc2発現カセ
ットは配列番号159として列挙され、選択マーカーとして機能した。Ricinus 
communisオレイン酸12−ヒドロキシラーゼコード領域は、Protothec
a moriformis Amt03プロモーター/5’UTR(配列番号89)及び
C.vulgaris硝酸還元酵素3’UTRの制御下にあった。コドンが最適化された
cDNA配列及びアミノ酸配列は、配列表にそれぞれ配列番号173及び配列番号174
として列挙される。Rc12hydro発現カセットの全体をpSZ1419と命名し、 50
(144) JP 2018-99138 A 2018.6.28

Prototheca moriformisの遺伝的背景に形質転換した。ショ糖を唯
一の炭素源とするプレートで陽性クローンをスクリーニングした。陽性クローンの一部を
選択し、脂質生成条件下で成長させ、R.communisオレイン酸12−ヒドロキシ
ラーゼの生成物、すなわちリシノール酸についてGC/MS方法を用いてスクリーニング
した。
【0540】
 陽性Rc12hydroトランスジェニックで生成された任意のリシノール酸を検出す
るために用いられるGC/MS方法は、以下のとおりであった。陽性クローンのサンプル
及び野生型対照を乾燥させ、次いで、メタノール−トルエン10:1(v/v)中4.5
H2SO4、2.2mLで懸濁させた。次いで断続的な音波処理及びボルテックスを伴い 10
ながら混合物を70∼75℃で3.5時間加熱した。室温に冷却した後、2mLの6%K
2CO3(aq)及び2mLのヘプタンを添加し、次いで、混合物を激しくボルテックス
し、900rpmで2分間遠心分離処理することにより層の分離物を回収した。上側の層
を取り出し、窒素流で濃縮乾固した。得られた油に500μLの乾燥ピリジン及び500
μLのBSTFA/1%TMCS(Thermo Scientific)を添加した。
得られた溶液を70∼75℃で1.5時間加熱し、次いで、窒素流で濃縮乾固した。次い
で、残渣を2mLのヘプタンに再び懸濁させ、再び濃縮した。サンプルを2mLのヘプタ
ンで再び懸濁させ、Thermo Trace GC Ultra/DSQIIシステム
においてEIモードで、リシノール酸メチルのいずれかTMSの基準ピーク(m/z18
7)の選択的イオンモニタリングを使用して、GC/MSにより分析した。Restek 20
 Rxi−5Sil MSカラム(0.25mmID、30m長さ、0.5μm膜厚)に
おいて、ヘリウムをキャリアーガスとして1mL/分の流量で使用して、脂肪酸メチルエ
ステルを分離した。カラムの初期温度は130℃に4分間保ち、続いて240℃の最終温
度まで4℃/分で上昇させた。上述のとおり処理したリシノール酸の標準サンプルと保持
時間及びフルスキャン質量スペクトルを比較することにより、サンプル中のリシノール酸
の存在を確認した。図2は、リシノール酸標準及び野生型対照と比較した代表的な陽性ト
ランスジェニッククローンのGC保持時間を示す。陽性トランスジェニッククローンはR
T:33.22/33.23に導き出せる(derivable)ピークを有し、それは
リシノール酸標準における同様のピークに対応したことから、トランスジェニッククロー
ン及び陽性対照の双方に導き出せるリシノール酸の存在が示された。野生型対照サンプル 30
にこのピークは全くなかった。
【0541】
実施例8:代替的な選択可能マーカーによるProtothecaの操作
A.Prototheca moriformisにおける分泌可能なα−ガラクトシダ
ーゼの発現
 Prototheca種において異種ショ糖インベルターゼ遺伝子を発現する方法及び
効果は、以前、本明細書によって参照により組み込まれるPCT出願番号第PCT/US
2009/66142号で記載されている。本実施例では、他の異種多糖分解酵素の発現
について調べた。α−ガラクトシダーゼをコードする以下の外来遺伝子のうちの一つを含
むPrototheca moriformis UTEX 1435によりメリビオー 40
ス(α−D−gal−glu)で成長する能力を試験した:Saccharomyces
 carlbergensisに由来するMEL1遺伝子(NCBI寄託番号P0482
4に対応するアミノ酸配列)、Aspergillus nigerに由来するAglC
遺伝子(NCBI寄託番号Q9UUZ4に対応するアミノ酸配列)、及び高等植物Cya
mopsis tetragobobola(グアー豆)に由来するα−ガラクトシダー
ゼ(NCBI寄託番号P14749に対応するアミノ酸配列)。上記の寄託番号及び対応
するアミノ酸配列は、本明細書により参照によって組み込まれる。いずれの場合にも、遺
伝子は、Prototheca moriformisにおける好ましいコドン使用によ
り最適化した。発現カセットの関連する部分は、配列表番号とともに以下に列挙される。
全ての発現カセットは、安定なゲノム組み込みのための5’及び3’Clp相同組み換え 50
(145) JP 2018-99138 A 2018.6.28

標的配列、Chlamydomonas reinhardtii TUB2プロモータ
ー/5’UTR、及びChlorella vulgaris硝酸還元酵素3’UTRを
使用した。
【0542】
【表37A】

10

20

【0543】
 Prototheca moriformis細胞を、S.carlbergensi
s MEL1、A.niger AlgC、又はC.tetragonobola α−
ガラクトシダーゼ遺伝子を含む3つの発現カセットの各々により、上記の実施例2で記載
されるような微粒子銃による形質転換方法を用いて形質転換した。2%メリビオースを唯 30
一の炭素源として含むプレートを使用して、陽性クローンをスクリーニングした。C.t
etragonobola発現カセット形質転換体については、プレート上にコロニーは
出現しなかった。S.carlbergensis MEL1形質転換体及びA.nig
er AlgC形質転換体を含むプレートから陽性クローンを取り出した。C.vulg
aris 3’UTRの一部分を標的とするプライマー及び3’Clp相同組み換え標的
配列によるPCRを用いて、形質転換DNAの組み込みを確認した。
5’プライマー C.vulgaris 3’UTR:下流Clp配列(配列番号123

ACTGCAATGCTGATGCACGGGA 
3’プライマー C.vulgaris 3’UTR:下流Clp配列(配列番号124 40

TCCAGGTCCTTTTCGCACT
【0544】
 陰性対照として、非形質転換Prototheca moriformis細胞に由来
するゲノムDNAもまたこのプライマーセットで増幅した。野生型細胞に由来するゲノム
DNAからの産物の増幅はなかった。
【0545】
 S.carlbergensis MEL1形質転換体及びA.niger AlgC
形質転換体の各々からの(PCRにより確認されるような)いくつかの陽性クローンを、
液体培地中メリビオースを唯一の炭素源として成長するそれらの能力について試験した。 50
(146) JP 2018-99138 A 2018.6.28

これらの選択されたクローンを、メリビオースを唯一の炭素源として上記の実施例1に記
載される条件及び基本的な培地で3日間成長させた。いずれかのα−ガラクトシダーゼを
コードする遺伝子を含む全てのクローンが、この時間中に強く成長し、一方で非形質転換
野生型株及びSaccharomyces cerevisiae SUC2ショ糖イン
ベルターゼを発現するPrototheca moriformisは、双方ともメリビ
オース培地で成長が不良であった。これらの結果から、α−ガラクトシダーゼをコードす
る遺伝子を、形質転換の選択可能なマーカーとして使用できることが示唆される。また、
これらのデータは、S.carlbergensis MEL1(配列番号109)又は
A.niger AlgC(配列番号117)に存在する天然のシグナルペプチドが、タ
ンパク質をPrototheca moriformis細胞おけるペリプラズムに標的 10
化させるのに有用であることを示している。
【0546】
B.Protothecaにおけるチアミン栄養要求性のTHIC遺伝子相補体
 外来性THIC遺伝子の発現を使用して、Prototheca moriformi
s細胞のチアミン原栄養性を調べた。植物及び藻類のチアミン生合成は、典型的にはプラ
スチドで行われ、従ってその生成に関わる、核によりコードされるほとんどのタンパク質
が、効率的にプラスチドを標的化する必要がある。Prototheca morifo
rmis細胞のDNA配列決定及びトランスクリプトーム配列決定から、チアミン生合成
酵素をコードする遺伝子は、THICを除き全てゲノムに存在することが明らかになった
。チアミン栄養要求性に関与する損傷を生化学的レベルで精査するため、5つの異なるレ 20
ジーム下でPrototheca moriformis細胞の成長を調べた:(1)2
μMの塩酸チアミンの存在下;(2)チアミンなし;(3)チアミンなし、但し2μMの
ヒドロキシエチルチアゾール(THZ)を含む;(4)チアミンなし、但し2μMの2−
メチル−4−アミノ−5−(アミノメチル)ピリミジン(PYR)を含む;及び(5)チ
アミンなし、但し2μMのTHZ及び2μMのPYRを含む。これらの5つの異なる条件
下における成長実験の結果から、Prototheca moriformis細胞はデ
ノボ合成可能であるが、PYR前駆体が与えられる場合に生成することができるのはピロ
リン酸チアミン(TPP)のみであることが示された。この結果は、Protothec
a moriformisのチアミン栄養要求性が、THIC酵素による変換触媒である
、アミノイミダゾールリボヌクレオチドからのヒドロキシメチルピリミジンホスファート 30
(HMP−P)の合成能力がないことに起因するという仮説に一致している。
【0547】
 Prototheca moriformis細胞を、上記の実施例2に記載される微
粒子銃による形質転換方法、Coccomyxa C−169 THIC(JGIタンパ
ク質ID 30481に対応するアミノ酸配列、本明細書によって参照により組み込まれ
る)の発現、及び選択マーカーとしてのS.cerevisiae SUC2ショ糖イン
ベルターゼを用いて形質転換した。この発現構築物は、Coccomyxa C−169
 THICに由来する天然トランジットペプチド配列、ゲノムDNAの6S領域に対する
上流及び下流の相同組み換え標的配列、C.reinhardtii TUB2プロモー
ター/5’UTR領域(配列番号104)、及びChlorella vulgaris 40
硝酸還元酵素3’UTR(配列番号115)を含んだ。S.cerevisiae SU
C2の発現もまたC.reinhardtii TUB2プロモーター/5’UTR領域
(配列番号114)により駆動され、Chlorella vulgaris硝酸還元酵
素3’UTR(配列番号115)を含んだ。遺伝子は、Prototheca mori
formisにおける好ましいコドン使用により最適化した。関連する発現カセット配列
を配列表に列挙し、以下に詳細に記載する:
【0548】
(147) JP 2018-99138 A 2018.6.28

【表37B】

10

【0549】
 チアミンを含まず、且つショ糖を唯一の炭素源として含むプレートで、陽性クローンの
選択を実施した。Coccomyxa C−169 THIC遺伝子内で結合する5’プ
ライマーと、6S遺伝子座における形質転換DNAの下流にアニーリングする3’プライ
マーとによるPCRを用いて、陽性クローンを確認した。また、PCRで確認した陽性ク
ローンは、サザンブロットアッセイを用いても確認した。
【0550】 20
 野生型Prototheca moriformis細胞のチアミン栄養要求性を観察
するため、最初に目的の細胞の内部的なチアミン貯蔵を枯渇させる必要があった。チアミ
ン不含培地での成長を試験するため、最初に2μMチアミンを含有する培地で細胞を静止
期まで成長させ、次いで細胞をチアミン不含培地に約0.05の750nm光学密度(O
D750)に希釈した。次いで、希釈した細胞をチアミン不含培地で再び静止期まで成長
させた(約2∼3日)。これらのチアミン枯渇細胞を使用して、チアミン不含培地に成長
試験用の培養物を播種した。野生型細胞は、グルコースを炭素源として含有する培地(チ
アミン不含又は含有)で成長させ、天然トランジットペプチドCoccomyxa C−
169 THIC構築物を含む陽性クローンは、ショ糖を唯一の炭素源として含有する培
地で成長させた。成長は、750nmの吸光度をモニタリングすることによって計測した 30
。この成長実験の結果から、チアミン不含培地における野生型細胞と比較して、トランス
遺伝子を発現する株のチアミン不含培地における実質的に大きい成長が示された。しかし
ながら、これらの形質転換体は、チアミン含有培地では野生型細胞の成長率及び細胞密度
に達することはなかった。また、チアミン不含培地における形質転換体クローンの成長量
と、組み込まれたCoccomyxa酵素の複製物数との間には、強い相関があった(す
なわち、トランス遺伝子の複製物数が多いほど、チアミン不含培地での細胞の成長がより
良好である)。
【0551】
 Coccomyxa THIC、Arabidopsis thaliana THI
C遺伝子、及びSynechocystis sp.PCC 6803 THIC遺伝子 40
を含む発現構築物を使用して、さらなる形質転換体を作成した。Coccomyxa及び
A.thalianaのTHIC遺伝子の場合、天然トランジットペプチド配列を、Ch
lorella protothecoidesステアロイル−ACPデサチュラーゼ(
SAD)遺伝子に由来するトランジットペプチド配列に置き換えた。Synechocy
stis sp.はシアノバクテリアであり、thiCタンパク質は天然トランジットペ
プチド配列を含まない。Synechocystis sp thiC構築物では、Ch
lorella protothecoides SAD遺伝子に由来するトランジット
ペプチド配列を、Synechocystis sp.thiCのN末端に融合した。い
ずれの場合にも、配列は、Prototheca moriformisにおける発現用
にコドンを最適化した。前述の構築物の3つ全てが、ゲノムの6S領域に対する上流及び 50
(148) JP 2018-99138 A 2018.6.28

下流の相同組み換え標的配列(配列番号82及び84)、Chlorella prot
othecoidesアクチンプロモーター/5’UTR、及びChlorella p
rotothecoides EF1A遺伝子3’UTRを含んだ。3つの構築物全てが
、C.reinhardtii TUB2プロモーター/5’UTR(配列番号114)
により駆動されるneoR遺伝子を含み、及びG418による選択性を付与するC.vu
lgaris 3’UTR(配列番号115)を含んだ。A.thaliana THI
Cのアミノ酸配列はNCBI寄託番号NP_180524に対応し、及びSynecho
cystis sp.thiCのアミノ酸配列はNCBI寄託番号NP_442586に
対応した(双方の配列とも、本明細書によって参照により組み込まれる)。関連する発現
カセット配列を配列表に列挙し、以下に詳細に記載する: 10
【0552】
【表37C】

20

【0553】
 G418を含有するプレートで陽性クローンをスクリーニングし、各形質転換から、P 30
CRによる検証用にいくつかのクローンを取り出した。Coccomyxa C−169
(C.protothecoidesトランジットペプチドを含む)、A.thalia
na及びSynechocystis sp.PCC 6803 THIC遺伝子を含む
形質転換DNA構築物のそれぞれの、ゲノムの6S遺伝子座への組み込みを、以下のプラ
イマーによるPCR分析を用いて確認した:
5’THIC Coccomyxa確認用プライマー配列(配列番号141)
ACGTCGCGACCCATGCTTCC
3’THIC確認用プライマー配列(配列番号142)
GGGTGATCGCCTACAAGA
5’THIC A.thaliana確認用プライマー配列(配列番号143) 40
GCGTCATCGCCTACAAGA
5’thiC Synechocystis sp.確認用プライマー配列(配列番号1
44)
CGATGCTGTGCTACGTGA
【0554】
 チアミン枯渇細胞に対する成長実験(上述のような)を、G418を含有する培地にお
いて異なる構築物の各々の形質転換体から選択して確認した陽性クローンを使用して実施
した。全ての形質転換体がチアミン不含培地で成長可能であった(ロバスト性の程度は様
々であった)。チアミン不含培地での形質転換体の成長をチアミン含有培地における野生
型細胞と比較することにより、チアミン不含培地での成長を支持するその能力に関して以 50
(149) JP 2018-99138 A 2018.6.28

下の順位が示された:(1)A.thaliana形質転換体;(2)Coccomyx
a C−169(C.protothecoidesトランジットペプチドを含む)形質
転換体;及び(3)Synechocystis sp.形質転換体。これらの結果から
、A.thaliana THICの単一配列はPrototheca morifor
mis細胞のチアミン栄養要求性を補うことができるが、チアミンが存在しない状態で速
い成長を可能にするには、Coccomyxa C−169(天然トランジットペプチド
配列又はC.protothecoidesに由来するトランジットペプチド配列のいず
れかを含む)及びSynechocystis sp.THICの複数の複製物が必要で
あったことが示唆される。異なる供給源からの異なるTHICの結果のばらつきを考慮す
ると、任意の特定のTHIC遺伝子がPrototheca種に存在する損傷を完全に補 10
う能力は予想し得ない。
【0555】
 3つのTHICアミノ酸配列のアラインメントを実施した。Coccomyxa及びA
.thalianaに由来するTHICと比較したSynechocystis sp.
に由来するthiCには高い配列保存が存在するが(アミノ酸レベルで41%の同一性)
、シアノバクテリアタンパク質は、藻類及び植物タンパク質で十分に保存されているN末
端のドメインを欠いている。ドメインが欠けている(及びおそらく構造的差異をもたらす
)にもかかわらず、Synechocystis sp.thiCを発現する構築物は、
少なくとも部分的に、Prototheca moriformis細胞のチアミン原栄
養性を回復することができた。 20
【0556】
実施例9:燃料生成
A.連続圧搾機及び圧縮助剤を用いた、微細藻類に由来する油を抽出
 ドラム乾燥機を用い、DCWで38%の油を含む微細藻類バイオマスを乾燥させ、得ら
れた含水量は5∼5.5%であった。バイオマスをFrench L250プレスに供給
した。バイオマス30.4kg(67lbs.)をプレスに供給したが、油は回収されな
かった。同じ乾燥させた微生物バイオマスに、種々の割合のスイッチグラスを圧縮助剤と
して組み合わせ、プレスに供給した。乾燥微生物バイオマス及び20%w/w スイッチ
グラスを組み合わせることによって、最終的には最も良好な油回収率が得られた。次いで
、圧縮したケーキをヘキサンで抽出し、スイッチグラスが20%の条件で、最終収率は、 30
61.6%の利用可能な油(重量によって算出)の総量であった。細胞乾燥重量の50%
を超える油を有するバイオマスは、油を放出させるために、スイッチグラスのような圧縮
助剤を使う必要はなかった。
【0557】
B.Protothecaの油に由来するバイオディーゼルの生成
 上に記載した方法に従って生成した、Prototheca moriformis 
UTEX 1435から得た脱ガム油に、トランスエステル化を行い、脂肪酸メチルエス
テルを得た。結果を以下表38に示す。
【0558】
 油の脂質プロフィールは、以下のとおりであった。 40
C10:0 0.02
C12:0 0.06
C14:0 1.81
C14.1 0.07
C16:0 24.53
C16:1 1.22
C18:0 2.34
C18:1 59.21
C18:2 8.91
C18:3 0.28 50
(150) JP 2018-99138 A 2018.6.28

C20:0 0.23
C20:1 0.10
C20:1 0.08
C21:0 0.02
C22:0 0.06
C24:0 0.10
【0559】
【表38−1】

10

20

30

40

【0560】
(151) JP 2018-99138 A 2018.6.28

【表38−2】

10

20

【0561】
 バイオディーゼルの脂質プロフィールは、原材料油の脂質プロフィールと非常に似てい
た。本発明の方法及び組成物によって与えられる他の油を、トランスエステル化し、(a
)C8∼C14が少なくとも4%であり;(b)C8が少なくとも0.3%であり;(c
)C10が少なくとも2%であり;(d)C12が少なくとも2%であり;(3)C8∼ 30
C14が少なくとも30%であるといった脂質プロフィールを有するバイオディーゼルを
得ることができる。
【0562】
 生成したバイオディーゼルのASTM D6751 A1法による冷状態浸漬時の濾過
性は、容積300mlで120秒であった。この試験は、B100 300mlを濾過し
、40°F(約4.5°C)まで16時間かけて冷やし、室温まで加温し、ステンレス鋼
の支持板がついた0.7マイクロメートルガラス繊維フィルターを用い、減圧下で濾過す
ることを含む。本発明の油を、トランスエステル化し、冷状態浸漬時間が120秒未満、
100秒未満、90秒未満のバイオディーゼルを作成することができる。
【0563】 40
C.再生可能なディーゼルの生成
 上に記載の方法に従って生成した、Prototheca moriformis U
TEX 1435に由来する脱ガム油は、上記実施例でバイオディーゼルを製造するため
に使用した油と同じ脂質プロフィールを有しており、この油をトランスエステル化し、再
生可能なディーゼルを生成させてもよい。
【0564】
 まず、上述の油を水素化処理し、酸素とグリセロール骨格を取り除き、n−パラフィン
を得た。次いで、n−パラフィンをクラッキングし、異性化した。この物質のクロマトグ
ラムを図1に示している。次いで、この物質を冷状態で濾過し、約5%のC18材料を除
去した。冷状態で濾過した後、材料全容積から引火点のために抜き取り、引火点、AST 50
(152) JP 2018-99138 A 2018.6.28

M D−86の蒸留分布、曇り点、粘度を評価した。引火点は63℃であり;粘度は2.
86cSt(センチストークス)であり;曇り点は4℃であった。ASTM D86の蒸
留値を表39に示している。
【0565】
【表39】

10

20

【0566】
 生成した物質のT10−T90は、57.9℃であった。本明細書に開示されている油
の水素化処理、異性化、及び他の共有結合改変方法、及び本明細書に開示されている蒸留
及び分別の方法(例えば、冷却濾過)を使用し、本明細書に開示されている方法に従って
生成したトリグリセリド油脂を用いて、他のT10−T90範囲、例えば、20、25、
30、35、40、45、50、60、65℃を有する再生可能なディーゼル組成物を作
成することができる。
【0567】 30
 生成した物質のT10は、242.1℃であった。本明細書に開示されている油の水素
化処理、異性化、及び他の共有結合改変方法、及び本明細書に開示されている蒸留及び分
別の方法(例えば、冷却濾過)を利用し、他のT10値、例えば、T10が180∼29
5、190∼270、210∼250、225∼245、少なくとも290の再生可能な
ディーゼル組成物を作成することができる。
【0568】
 生成した物質のT90は、300℃であった。本明細書に開示されている油の水素化処
理、異性化、及び他の共有結合改変方法、及び本明細書に開示されている蒸留及び分別の
方法(例えば、冷却濾過)を利用し、他のT90値、例えば、T90が280∼380、
290∼360、300∼350、310∼340、少なくとも290の再生可能なディ 40
ーゼル組成物を作成することができる。
【0569】
 生成した物質のFBPは、300℃であった。本明細書に開示されている油の水素化処
理、異性化、及び他の共有結合改変方法、及び本明細書に開示されている蒸留及び分別の
方法(例えば、冷却濾過)を利用し、他のFBP値、例えば、FBPが290∼400、
300∼385、310∼370、315∼360、少なくとも300の再生可能なディ
ーゼル組成物を作成することができる。
【0570】
 本発明の方法及び組成物によって得られる他の油を、(a)C8∼C14が少なくとも
4%であり;(b)C8が少なくとも0.3%であり;(c)C10が少なくとも2%で 50
(153) JP 2018-99138 A 2018.6.28

あり;(d)C12が少なくとも2%であり;(3)C8∼C14が少なくとも30%で
あるといった脂質プロフィールを有する脂肪酸プロフィールとともに、水素化処理、異性
化、及び他の共有結合改変を組み合わせて行うことができる。
【0571】
 本発明を、特定の実施形態と関連させて記載してきたが、さらなる改変ができることは
理解されるであろう。本明細書は、本発明の原理に一般的に従い、本発明のいかなる変更
、応用又は適応をも包含することを意図しており、それらは、本発明が属する技術分野の
範囲内にある知られているあるいは慣例の実践範囲内で行われ、また本明細書に記載する
本質的な特徴に適用できるような、本開示からの逸脱を含む。
【0572】 10
実施例10:C18:2及びC18:3グリセロ脂質を生成するための微生物の操作
 藻類及び植物における脂質の合成は、プラスチドのピルビン酸デヒドロゲナーゼ複合体
を介したグルコース又は他の炭素源からアセチルCoAへの変換から始まる。次いで、重
炭酸塩を基質として利用するアセチルCoAカルボキシラーゼ(ACCase)が、3−
C化合物のマロニルCoAを生成する。β−ケトアシル−ACP(アシルキャリアータン
パク質)シンターゼIII(KAS III)が、次いでマロニルCoAとアセチルCo
Aとの間の最初の縮合反応を触媒して4−C化合物を生成する。C16:0を通じた連続
する2−C付加は、KAS Iにより触媒される。C18:0までの最終的な2−C伸長
は、KAS IIにより触媒される。チオエステラーゼ(TE)は伸長を終結させてアシ
ル−ACPを切り離す。可溶性酵素ステアロイルACPデサチュラーゼ(SAD)は、C 20
18:0−ACP基質に対する活性を有してΔ9位に二重結合を形成し、その結果、オレ
イン酸−ACPを生じる。得られたC18:1脂肪酸は、オレイン酸TE又は広い特異性
のTEのいずれかの働きを介してACPから遊離される。
【0573】
 全ての脂肪酸は、プラスチドにおいてACPから遊離するとERに輸送され、そこで脂
質(TAG)生合成が起きる。おおまかに言えば、高等植物のERにおける脂質生合成に
は2つの経路があるが、しかしながら2つの経路の基質はおそらくある程度共通している
。脂肪酸アシルCoA独立経路は、極めて選択的な基質特異性を呈し得るアシルリゾホス
ファチジルコリンアシルトランスフェラーゼを用いてホスファチジルコリン(P−コリン
)部分間で脂肪酸アシル基を運び、最終的にそれらをジアシルグリセロール(DAG)に 30
運ぶ。酵素ジアシルグリセロールアシルトランスフェラーゼ(DGAT)が脂肪酸アシル
基のアシルCoA基質からDAGへの最終的な転移を担い、最終的なトリアシルグリセロ
ールがもたらされる。他方で、脂肪酸アシルCoA依存経路は脂肪酸アシル基を、脂肪酸
アシルCoAを基質として用いて、グリセロール−3−リン酸、リゾホスファチジン酸(
LPA)及びDAGへと、それぞれ、グリセロールリン酸アシルトランスフェラーゼ(G
PAT)、リゾホスファチジン酸アシルトランスフェラーゼ(LPAAT)及びDGAT
の働きによって運ぶ。
【0574】
 C18:2及びC18:3を含むTAGを合成するように微生物を操作するために有用
な酵素としては、β−ケトアシル−ACPシンターゼII(KAS II)、ステアロイ 40
ルACPデサチュラーゼ(SAD)、オレイン酸特異的チオエステラーゼを含むチオエス
テラーゼ、脂肪酸デサチュラーゼ(desaturate)(FAD)、及びグリセロ脂
質デサチュラーゼ、例えば、ω−6脂肪酸デサチュラーゼ、ω−3脂肪酸デサチュラーゼ
、又はω−6−オレイン酸デサチュラーゼが挙げられる。これらの種々の酵素が単独で、
又は組み合わさって微生物において過剰発現することで、C18:2若しくはC18:3
脂肪酸又はTAG生成が増加し得る。KAS II酵素活性の発現の増加は、パルミテー
ト(C16:0)からステアリン酸塩(C18:0)以上への炭素蓄積を後押しする。い
くつかの候補KAS II酵素のアミノ酸配列を以下の表40に示す。開示されるKAS
 II配列は、高レベルのオレイン酸、リノール酸又はリノレン酸脂肪酸を特に生成する
高等植物種に由来する。当業者は、限定なしに、Jatropha curcas(Ge 50
(154) JP 2018-99138 A 2018.6.28

nBank寄託番号ABJ90469.2)、Glycine max(GenBank
寄託番号AAW88762.1)、Elaeis oleifera(GenBank寄
託番号ACQ41833.1)、Arabidopsis thaliana(GenB
ank寄託番号AAL91174)、Vitis vinifera(GenBank寄
託番号CBI27767)、及びGossypium hirsutum(GenBan
k寄託番号ADK23940.1)を含むKAS IIの他の遺伝子を同定することが可
能であろう。
【0575】
【表40】
10

20

【0576】
 高レベルのリノール酸及びリノレン酸脂肪酸を生成するための高レベルのステアリン酸
塩からオレイン酸(C18:1)への変換は、微生物が1つ以上の脂質経路酵素を過剰発
現することにより実現される。不飽和物濃度を上昇させるのに有用性を有する2つのさら
なる酵素活性は、ステアロイルACPデサチュラーゼ(SAD)及びオレイン酸特異的チ
オエステラーゼである。これらの酵素の一方又は両方の働きを介した高レベルのステアリ
ン酸塩(C18:0)からオレイン酸への変換は、初めにリノール酸及びリノレン酸脂肪
酸の形成について達成される。
【0577】 30
 オレイン酸濃度を上昇させるための過剰発現に有用な例示的SAD酵素のアミノ酸配列
は、表41に参照される。さらに、P.moriformisに由来する内在するSAD
(配列番号180)もまた、C18:1濃度を増加させるのに効果的である。開示される
SAD配列は、高濃度のオレイン酸、リノール酸又はリノレン酸脂肪酸を特に生成する高
等植物種に由来する。当業者は、SADについて他の遺伝子を同定することが可能であろ
う。
【0578】
(155) JP 2018-99138 A 2018.6.28

【表41】

10

【0579】
 SAD酵素は、C18:0−ACP基質に対する活性を有してΔ9位に炭素−炭素二重
結合を形成し、その結果、オレイン酸−ACPを生じる。生じたC18:1脂肪酸は、オ
レイン酸TE又は広い特異性のTEのいずれかの働きを介してACPから遊離される。本
発明者らは、本明細書の例のなかで、Olea europaeaステアロイル−ACP
デサチュラーゼ(寄託番号AAB67840.1;配列番号172)又はCartham 20
us tinctoriu ACPチオエステラーゼ(寄託番号AAA33019.1;
配列番号195)の過剰発現により、C18:1脂肪酸の蓄積の増加がもたらされること
を示している。オレイン酸脂肪酸を増加させるのに有用な例示的オレイン酸チオエステラ
ーゼのアミノ酸配列は、表42に参照される。当業者は、オレイン酸チオエステラーゼに
ついて他の遺伝子を同定することが可能であろう。
【0580】
【表42】

30

40
【0581】
 脂肪酸デサチュラーゼ(desaturate)は、微生物におけるリノール酸及びリ
ノレン酸脂肪酸の蓄積を増加させるのに有用性を有する別の酵素である。特に、2つの酵
素活性FAD2及びFAD3が、微生物におけるリノール酸及びリノレン酸脂肪酸の蓄積
の増加をもたらす。例示的なFAD2及びFAD3酵素のアミノ酸配列を以下の表43に
示す。
【0582】
(156) JP 2018-99138 A 2018.6.28

【表43】

10

【0583】
 表43に列挙される酵素に加え、例示的なΔ12 FAD酵素のアミノ酸配列が、表4
4に列挙される。微生物での過剰発現に適した他のΔ12 FAD酵素が、表45に参照
される。不飽和脂肪酸及びTAGのレベルを増加させるのに有用な例示的なΔ15 FA
D及び他の酵素のアミノ酸配列が、表46に列挙される。さらなるグリセロ脂質デサチュ
ラーゼ酵素が、表47に提供される。 20
【0584】
【表44】

30

【0585】
(157) JP 2018-99138 A 2018.6.28

【表45】

10

20

30

【0586】
(158) JP 2018-99138 A 2018.6.28

【表46】

10

20

【0587】
【表47】

30

40

【0588】
 本明細書に開示されるアミノ酸配列は、本明細書に開示される方法を用いて微生物で発
現される。コード配列は、その微生物での発現に最適化され得る。例えば、P.mori
formisでの発現について、本明細書の表2に開示されるとおりの好ましいコドン使
用が利用される。
【0589】
実施例11:リノレン酸不飽和脂肪酸及びグリセロ脂質の生成を増加させるための微生物 50
(159) JP 2018-99138 A 2018.6.28

の操作 実施例10で記載されるとおり、Δ15デサチュラーゼ酵素は、C18:2(リ
ノール酸)脂肪酸又は脂肪酸アシル分子の15位での二重結合の形成を触媒し、それによ
りC18:3(リノレン酸)脂肪酸又は脂肪酸アシル分子を生じる。リノレン酸不飽和脂
肪酸を豊富に含む油を生成するBrassica napus(Bn)、Camelin
a sativa(Cs)、及びLinum usitatissimumを含む特定の
高等植物種は、微生物で発現して脂肪酸プロフィールに影響を及ぼすことができるΔ15
デサチュラーゼをコードする遺伝子の供給源である。この例は、Δ15デサチュラーゼ酵
素をコードするポリヌクレオチドを用いた微生物の操作について記載し、ここでは形質転
換微生物の脂肪酸プロフィールが、リノレン酸を豊富に含むものとなった。
【0590】 10
 Protheca moriformis UTEX 1435、株Aの古典的に変異
を誘発した(より多量の油生成のための)誘導体を、個々に、実施例2に詳細に記載され
る微粒子銃による形質転換方法によって、表49に列挙されるプラスミド構築物の各々で
形質転換した。各構築物は、核ゲノムに組み込むための6Sゲノム領域に対する5’(配
列番号82)及び3’(配列番号84)相同組み換え標的配列(構築物に隣接する)と、
C.reinhardtii β−チューブリンプロモーター/5’UTR及びChlo
rella vulgaris硝酸還元酵素3’UTRの制御下にあるS.cerevi
siae suc2ショ糖インベルターゼコード領域とを含んだ。このS.cerevi
siae suc2発現カセットは配列番号159として列挙され、ショ糖インベルター
ゼ遺伝子が選択マーカーとして機能した。全てのタンパク質コード領域は、表2に従うP 20
rototheca moriformis UTEX 1435核遺伝子に固有のコド
ンの偏りを反映するようにコドンを最適化した。Brassica napus(Bn 
FAD3、GenBank寄託番号AAA32994)、Camelina sativ
a FAD−7、及びLinum usitatissimum(Lu FAD3A及び
Lu FAD3B、GenBank寄託番号ABA02172及びABA02173)に
由来するデサチュラーゼ遺伝子のコード領域は、各々、Prototheca mori
formis Amt03プロモーター/5’UTR(配列番号89)及びC.vulg
aris硝酸還元酵素3’UTRの制御下にあった。FLAG(登録商標)エピトープ配
列が、組み換えデサチュラーゼ遺伝子配列のN末端細胞質ループにコードされた。
【0591】 30
【表49】

40

【0592】
 構築物pSZ2124、pSZ2125、pSZ2126、及びpSZ2127の各々
を、個々に株Aに形質転換した。ショ糖を唯一の炭素源として含有する寒天プレートで、
一次形質転換体を選択した。個々の形質転換体をクローン精製し、実施例1に開示される
ものと同様の、脂質生成に適した条件下、pH7.0で成長させた。脂質サンプルは、各
形質転換体から得たバイオマスを乾燥させたものから調製した。それぞれの乾燥バイオマ
ス20∼40mgをMeOH中5% H2SO4 2mLに再び懸濁させ、適切な量の適 50
(160) JP 2018-99138 A 2018.6.28

した内部標準(C19:0)を含む200ulのトルエンを加えた。この混合物を軽く超
音波処理してバイオマスを分散させ、次いで、70∼75℃で3.5時間加熱した。ヘプ
タン2mLを加え、脂肪酸メチルエステルを抽出した後、6% K2CO3(aq)2m
Lを加え、酸を中和した。混合物を激しく撹拌し、標準的なFAME GC/FID(脂
肪酸メチルエステルガスクロマトグラフィー炎イオン化検出)方法を用いたガスクロマト
グラフィー分析のために、上側の層の一部を、Na2SO4(無水)の入ったバイアルに
移した。脂肪酸プロフィールを、標準的な脂肪酸メチルエステルガスクロマトグラフィー
炎イオン化(FAME GC/FID)検出方法を用いて分析した。pSZ2124、p
SZ2125、pSZ2126及びpSZ2127の株A形質転換から生じる一組の代表
的なクローンから得られた脂肪酸プロフィール(総脂肪酸の面積%として表される)は、 10
表50に示される。比較のため、非形質転換株A対照細胞から得られた脂質の脂肪酸プロ
フィールが、表50にさらに示される。
【0593】
【表50】

20

30

【0594】 40
 非形質転換Prototheca moriformis(UTEX 1435)株A
株は、1%未満のC18:3脂肪酸を含む脂肪酸プロフィールを呈する。対照的に、高等
植物の脂肪酸デサチュラーゼ酵素を発現する株Aの脂肪酸プロフィールは、C18:3脂
肪酸の組成の増加を示し、増加は約2∼17倍の範囲であった。Linum usita
tissimumのFAD3A若しくはFAD3B又はBrassica napusの
FAD3遺伝子産物を発現する操作された株は、C18:3の増加程度が最大を示した(
表50)。総C18不飽和物に対する18:3の比率は、非形質転換株において約1%で
あり、及び形質転換株において約2%∼17%の範囲であった。総C18:0に対する1
8:2の比率は、非形質転換株(untrasnformed strain)において
約12∼13%であり、及び形質転換株において約1%∼15%の範囲で、FAD3A形 50
(161) JP 2018-99138 A 2018.6.28

質転換体が最も低いレベルであった。これらのデータから、操作された微生物の脂肪酸プ
ロフィールを変化させるための、特に、微生物細胞において18:3脂肪酸の濃度を増加
させることにおける、Δ15デサチュラーゼ脂肪酸デサチュラーゼ酵素の外来性発現を可
能にするポリヌクレオチドの有用性及び有効性が示される。
【0595】
実施例12:ヘアピンRNAアプローチによってステアリン酸及びステアリン酸塩の生成
を増加させるための微生物の操作
 ステアロイルACPデサチュラーゼ(SAD)酵素は脂質合成経路の一部である。この
酵素は、脂肪酸アシル鎖に二重結合を導入する働きをする。例えば、SAD酵素は、C1
8:0脂肪酸(ステアリン酸)からのC18:1脂肪酸の合成を触媒する。実施例6に示 10
すとおり、標的遺伝子破壊によるPrototheca moriformisのSAD
2対立遺伝子の分断により、操作された微生物の脂肪酸プロフィールにおけるC18:0
脂肪酸濃度の計測可能な増加が生じた。本実施例は、SAD2の発現を下方調節するヘア
ピンRNAをコードするポリヌクレオチドの使用による微生物の操作について記載し、こ
こでこの形質転換微生物の脂肪酸プロフィールは、飽和C18:0脂肪酸を豊富に含むも
のとなった。
【0596】
 表51に列挙される4つの構築物pSZ2139∼pSZ2142を、Prototh
eca moriformis SAD2遺伝子産物の発現を減弱させるように設計した
。各構築物は、ステム長さが180∼240塩基対のサイズ範囲の、Protothec 20
a moriformis SAD2 mRNA転写物に対して標的化されたヘアピンR
NAをコードする異なる核酸配列、並びに核ゲノムに組み込むための6Sゲノム領域に対
する5’(配列番号82)及び3’(配列番号84)相同組み換え標的配列(構築物に隣
接する)、及びC.reinhardtii β−チューブリンプロモーター/5’UT
R及びChlorella vulgaris硝酸還元酵素3’UTRの制御下にあるS
.cerevisiae suc2ショ糖インベルターゼコード領域を含んだ。このS.
cerevisiae suc2発現カセットは配列番号159として列挙され、選択マ
ーカーとして機能した。各構築物のSAD2 RNAヘアピンをコードするポリヌクレオ
チド配列は、C.reinhardtii β−チューブリンプロモーター/5’UTR
及びC.vulgaris硝酸還元酵素3’UTRの制御下にあった。 30
【0597】
【表51】

40

【0598】
 Protheca moriformis UTEX 1435、株Aの古典的に変異
を誘発した(より多量の油生成のための)誘導体を、個々に、実施例2に詳細に記載され
る微粒子銃による形質転換方法によって、表51に列挙されるプラスミド構築物で形質転
換した。ショ糖を唯一の炭素源として含有する寒天プレートで、一次形質転換体を選択し 50
(162) JP 2018-99138 A 2018.6.28

、クローン精製し、標準的な脂質生成条件下で成長させた。実施例11で記載されるよう
な直接的なトランスエステル化法を用いて、脂肪酸プロフィールを決定した。pSZ21
39、pSZ2140、pSZ2141、及びpSZ2142による株Aの形質転換から
生じる一組の代表的なクローンから得られた脂肪酸プロフィール(総脂肪酸の面積%とし
て表される)は、以下の表52に示される。比較のため、非形質転換株A対照細胞から得
られた脂質の脂肪酸プロフィールを、表52にさらに提供する。
【0599】
【表52】

10

20

30

【0600】
 表52に示されるデータは、宿主生物のC18:0及びC18:1脂肪酸プロフィール
に対するSAD2ヘアピンRNA構築物の発現の明らかな影響を示している。SAD2ヘ
アピンRNA構築物を含む株A形質転換体の脂肪酸プロフィールは、飽和C18:0脂肪 40
酸の割合の増加と、それに伴う不飽和C18:1脂肪酸の減少を示した。非形質転換株の
脂肪酸プロフィールは約3%のC18:0を含む。形質転換株の脂肪酸プロフィールは、
3%超∼約27%のC18:0を含む。総C18不飽和物に対するC18:0の比率は、
非形質転換株において約4%であり、形質転換株において約5%∼69%の範囲であった
。これらのデータは、操作された宿主微生物における飽和脂肪酸の割合を変化させるため
の、特に、微生物細胞においてC18:0脂肪酸の濃度を増加させ、C18:1脂肪酸を
減少させることにおける、Prototheca moriformisでのポリヌクレ
オチドSAD RNAヘアピン構築物の発現及び使用の成功を示している。
【0601】
実施例13:β−ケトアシル−ACPシンターゼII遺伝子の過剰発現による微細藻類の 50
(163) JP 2018-99138 A 2018.6.28

脂肪酸プロフィールの改変
 β−ケトアシル−ACPシンターゼII(KASII)は、脂肪酸生合成においてC1
6:0−ACPからC18:0−ACPへの2炭素伸長を触媒する。KASII遺伝子が
発現する結果として宿主細胞の脂肪酸プロフィールが影響を受け得るかどうかを評価する
ため、プラスミド構築物を作製した。KASII遺伝子配列の供給源は、Prothec
a moriformis UTEX 1435から、又は高等植物(Glycine 
max GenBank寄託番号AAW88763、Helianthus annus
 GenBank寄託番号ABI18155、及びRicinus communis 
GenBank寄託番号AAA33872)から選択した。
【0602】 10
 Protheca moriformis UTEX 1435、株Aの古典的に変異
を誘発した(より多量の油生成のための)誘導体を、個々に、実施例2の方法を用いて、
以下の表53のプラスミド構築物のうちの1つで形質転換した。各構築物は、核ゲノムに
組み込むための6Sゲノム領域に対する5’(配列番号82)及び3’(配列番号84)
相同組み換え標的配列(構築物に隣接する)と、C.reinhardtii β−チュ
ーブリンプロモーター/5’UTR及びChlorella vulgaris硝酸還元
酵素3’UTRの制御下にあるS.cerevisiae suc2ショ糖インベルター
ゼコード領域とを含んだ。このS.cerevisiae suc2発現カセットは配列
番号29として列挙され、選択マーカーとして機能した。各構築物について、KASII
コード領域は、Prototheca moriformis Amt03プロモーター 20
/5’UTR(配列番号37)及びC.vulgaris硝酸還元酵素3’UTRの制御
下にあった。各KASII酵素の天然トランジットペプチドは、Chlorella p
rotothecoidesステアロイル−ACPデサチュラーゼトランジットペプチド
(配列番号54)に置き換えられた。全てのタンパク質コード領域は、表2に従うPro
totheca moriformis UTEX 1435核遺伝子に固有のコドンの
偏りを反映するようにコドンを最適化した。
【0603】
【表53】

30

40

【0604】
 構築物6S::β−Tub:suc2:nr::Amt03:S106SAD:PmK
ASII:nr::6Sにおける関連する制限部位を小文字、太字且つ下線で示し、5’
−3’にそれぞれBspQ 1、Kpn I、Xba I、Mfe I、BamH I、
EcoR I、Spe I、Asc I、Cla I、Sac I、BspQ Iである
。BspQI部位が形質転換DNAの5’末端及び3’末端を区切る。太字で小文字の配 50
(164) JP 2018-99138 A 2018.6.28

列は、相同組み換えによる6S遺伝子座での標的化した組み込みを可能にする株A由来の
ゲノムDNAを表す。5’から3’方向に進んで、酵母ショ糖インベルターゼ遺伝子(株
Aがショ糖を代謝する能力を付与する)の発現を駆動するC.reinhardtii 
β−チューブリンプロモーターを、囲い文字のテキストにより示す。インベルターゼのイ
ニシエーターATG及びターミネーターTGAを、大文字、太字のイタリックにより示し
、一方、コード領域を小文字のイタリックで示す。Chlorella vulgari
s硝酸還元酵素3’UTRを小文字の下線テキストにより示し、その後に、囲い文字のイ
タリックテキストにより示されるP.moriformisの内在するAmt03プロモ
ーターが続く。PmKASIIのイニシエーターATG及びターミネーターTGAコドン
を、大文字、太字のイタリックにより示し、一方、残りの遺伝子を太字のイタリックによ 10
り示す。Chlorella protothecoides S106ステアロイル−
ACPデサチュラーゼトランジットペプチドが、イニシエーターATGとAsc I部位
との間にある。C.vulgaris硝酸還元酵素3’UTRはここでも小文字の下線テ
キストにより示し、その後に、太字の小文字テキストにより示される株A 6Sゲノム領
域が続く。構築物6S::β−tub:suc2:nr::Amt03:S106SAD
:PmKASII:nr::6Sの関連するヌクレオチド配列は、配列表に配列番号23
4として提供される。Chlorella protothecoides S106ス
テアロイル−ACPデサチュラーゼトランジットペプチドを含むPmKASIIのコドン
が最適化された配列は、配列表に配列番号235として提供される。配列番号236は配
列番号235のタンパク質翻訳を提供する。 20
【化10】

30

40
(165) JP 2018-99138 A 2018.6.28

【化11】

10

20

30

40
(166) JP 2018-99138 A 2018.6.28

【化12】

【0605】
 各プラスミド構築物を株Aに個々に形質転換した後、ショ糖を唯一の炭素源として含む
寒天プレートで、陽性クローンを選択した。先述の実施例にあるとおり、一次形質転換体
をクローン精製し、標準的な脂質生成条件下、pH7で成長させ、各形質転換体から得ら 10
れたバイオマスを乾燥したものから、脂質サンプルを調製した。実施例11で記載される
ような直接的なトランスエステル化法を用いて、脂肪酸プロフィールを決定した。株Aの
形質転換から生じる一組の代表的なクローンから得られた脂肪酸プロフィール(総脂肪酸
の面積%として表される) 非形質転換株A対照と比較したときの、いくつかの陽性形質
転換体の脂肪酸プロフィール(面積%として表される)を、以下の表54に各プラスミド
構築物についてまとめている。
【0606】
【表54】

20

30

40

【0607】
 pSZ2041を使用して、表2に示されるコドン頻度を使用してさらにコドンを最適 50
(167) JP 2018-99138 A 2018.6.28

化したPrototheca moriformis(UTEX 1435)KASII
遺伝子を過剰発現させると、C16:0鎖長の明らかな減少と、それに伴うC18:1長
さの脂肪酸の増加が観察された。β−チューブリンプロモーターにより駆動されるPro
totheca moriformis(UTEX 1435)KASII遺伝子を発現
する構築物を形質転換すると、同様の脂肪酸プロフィールの変化が観察された。
【0608】
 これらの結果は、コドンを最適化したPrototheca脂質生合成遺伝子の外来性
の過剰発現により、遺伝子操作された微細藻類の脂肪酸プロフィールを変えることができ
ることを示している。特に、KASII遺伝子の過剰発現は、C18脂肪酸の割合を、非
形質転換細胞における約68%から約84%に増加させることができる。 10
【0609】
実施例14:KASI対立遺伝子の標的化したノックアウトによる、操作されたProt
othecaにおける中鎖脂肪酸濃度の改変
 β−ケトアシル−ACPシンターゼI(KASI)は、脂肪酸生合成において、C4:
0、C6:0、C8:0、C10:0、C12:0、及びC14:0脂肪酸アシル−AC
P分子の2炭素伸長を触媒する。本実施例では、KASI遺伝子座を標的化して破壊した
ときの宿主細胞の脂肪酸プロフィールに対する影響を評価するため、ノックアウトプラス
ミド構築物pSZ2014を作製した。
【0610】
 Protheca moriformis UTEX 1435、株Aの古典的に変異 20
を誘発した(より多量の油生成のための)誘導体を、実施例2で記載される微粒子銃によ
る形質転換方法を用いて、pSZ2014構築物で形質転換した。pSZ2014は、C
.reinhardtii β−チューブリンプロモーター及びChlorella v
ulgaris硝酸還元酵素3’UTRの制御下にあるS.cerevisiae su
c2 インベルターゼ発現カセットを含み、両側に、Prototheca morif
iormisゲノムのKASI遺伝子座に組み込むため構築物を標的化するためのKAS
I遺伝子特異的相同性領域が隣接した。このS.cerevisiae suc2発現カ
セットは配列番号159として列挙され、選択マーカーとして機能した。核ゲノム組み込
みのためKASI遺伝子座に標的化する領域に関連する配列は以下に示され、配列番号2
38及び配列番号239に列挙される。小文字、太字且つ下線で示されるpSZ2014 30
における関連する制限部位は、5’−3’にそれぞれBspQ 1、Kpn I、Asc
I、Xho I、Sac I、BspQ Iであり、以下の配列に示される。BspQI
部位が形質転換DNAの5’末端及び3’末端を区切る。太字で小文字の配列は、相同組
み換えによるKASI遺伝子座での標的化した組み込みを可能にする株A由来のゲノムD
NAを表す。5’から3’方向に進んで、コドンが最適化された酵母ショ糖インベルター
ゼ遺伝子(株Aがショ糖を代謝する能力を付与する)の発現を駆動するC.reinha
rdtii b−チューブリンプロモーターを、囲い文字のテキストにより示す。suc
2インベルターゼのイニシエーターATGコドン及びターミネーターTGAコドンを、大
文字、太字のイタリックにより示し、一方、コード領域を小文字のイタリックで示す。C
hlorella vulgaris硝酸還元酵素3’UTRを小文字の下線テキストに 40
より示す。pSZ2014の形質転換配列を以下に示し、配列番号237として列挙され
る。
(168) JP 2018-99138 A 2018.6.28

【化13】

10

20

30

40

【0611】
 プラスミド構築物pSZ2014を株Aに形質転換した後、ショ糖を唯一の炭素源とし
て含むプレートで、陽性クローンを選択した。一次形質転換体をクローン精製し、標準的
な脂質生成条件下で成長させた。脂質サンプルは、各形質転換体から得られたバイオマス
を乾燥したものから調製した。実施例11で記載されるような直接的なトランスエステル
化法を用いて、脂肪酸プロフィールを決定した。非形質転換株A対照と比較した、いくつ
かの陽性形質転換体の脂肪酸プロフィール(総脂肪酸の面積%として表される)を、以下 50
(169) JP 2018-99138 A 2018.6.28

の表55にまとめている。
【0612】
【表55】

10

【0613】
 上記の表55に示されるとおり、KASI対立遺伝子を標的化して分断すると、形質転
換微生物の脂肪酸プロフィールが影響を受けた。pSZ2014形質転換ベクターを含む 20
株Aの脂肪酸プロフィールは、C14:0及びC16:0脂肪酸の組成の増加と、それに
伴うC18:1脂肪酸の減少を示した。全ての形質転換体(transformanti
s)でC18:0脂肪酸が減少した。一部の形質転換では、KASI対立遺伝子の分断に
より、非形質転換株A有機体の脂肪酸プロフィールと比べて低下した割合のC18:2脂
肪酸を含む脂肪酸プロフィールがさらに生じた。
【0614】
 従って、本発明者らは、内在するKASIの破壊により、総C14脂肪酸の割合を約3
5%∼400%、及びC16脂肪酸の割合を約30∼50%増加させた。
【0615】
 これらのデータは、宿主細菌の脂肪酸プロフィールを変えるための、内在するKASI 30
対立遺伝子の標的遺伝子分断の有用性を示している。
【0616】
実施例15:遺伝子改変アプローチを組み合わせることによるProtothecaの脂
肪酸プロフィールの改変
 本実施例では、KASII対立遺伝子をノックアウトし、同時に、中鎖脂肪酸の加水分
解に選択性を示す外来性チオエステラーゼを過剰発現させる遺伝子改変の組み合わせが、
微生物において宿主生物の脂肪酸プロフィールを変えることを示す。
【0617】
 Prototheca moriformis(UTEX 1435)、株Cの古典的
に変異を誘発した(より多量の油生成のための)株を、実施例2に詳細に記載される微粒 40
子銃による形質転換方法によって、最初にプラスミド構築物pSZ1283で形質転換し
た。pSZ1283(配列番号258)は、先にPCT出願番号第PCT/US2011
/038463号及び第PCT/US2011/038463号に記載があり、Cuph
ea wrightii FATB2(CwTE2)チオエステラーゼのコード配列、核
ゲノムに組み込むための6Sゲノム領域に対する5’(配列番号82)及び3’(配列番
号84)相同組み換え標的配列(構築物に隣接する)、並びにC.reinhardti
i β−チューブリンプロモーター/5’UTR及びChlorella vulgar
is硝酸還元酵素3’UTRの制御下にあるS.cerevisiae suc2ショ糖
インベルターゼコード領域を含む。このS.cerevisiae suc2発現カセッ
トは配列番号159として列挙され、選択マーカーとして機能した。CwTE2コード配 50
(170) JP 2018-99138 A 2018.6.28

列は、Prototheca moriformis Amt03プロモーター/5’U
TR(配列番号89)及びC.vulgaris硝酸還元酵素3’UTR(配列番号32
)の制御下にあった。CwTE2及びsuc2のタンパク質コード領域は、表2に従うP
rototheca moriformis UTEX 1435核遺伝子に固有のコド
ンの偏りを反映するようにコドンを最適化した。
【0618】
 pSZ1283を株Cに形質転換した後、ショ糖を唯一の炭素源として含む寒天プレー
トで、陽性クローンを選択した。次いで、一次形質転換体をクローン精製し、さらなる遺
伝子改変用に単一の形質転換体、株Bを選択した。この遺伝子操作された株をプラスミド
構築物pSZ2110(配列番号240)で形質転換して、KASII対立遺伝子1の遺 10
伝子座を分断した。KASII‘5::CrbTub:NeoR:nr::KASII−
‘3と書かれるpSZ2110は、G418耐性を付与するネオマイシン耐性(NeoR
)発現カセットを含み、これはC.reinhardtii β−チューブリンプロモー
ター及びChlorella vulgaris硝酸還元酵素3’UTRの制御下にあり
、Prototheca morifiormisゲノムのKASII遺伝子座への組み
込みのため構築物を標的化するためのKASII遺伝子特異的相同性領域が隣接した。p
SZ2110構築物における関連する制限部位は、5’−3’に、BspQ 1、Kpn
I、XbaI、MfeI、BamHI、EcoRI、SpeI、XhoI、Sac I、
及びBspQIであり、小文字、太字、且つ下線の書式で示される。BspQI部位が形
質転換DNAの5’末端及び3’末端を区切る。形質転換構築物の5’末端及び3’末端 20
の太字で小文字の配列は、相同組み換えによるKASII対立遺伝子1遺伝子座に対する
組み込みを標的化するUTEX 1435由来のゲノムDNAを表す。C.reinha
rdtii β−チューブリンは、小文字、囲い文字で示す。NeoRのイニシエーター
ATG及びターミネーターTGAは大文字のイタリックにより示し、一方、コード領域は
小文字のイタリックで示す。
【0619】
 3’UTRは、小文字の下線を引いたテキストにより示す。
(171) JP 2018-99138 A 2018.6.28

【化14】

10

20

30

【0620】
 株BをpSZ2110で形質転換した後、G418を含有する選択的寒天プレートで、
陽性クローンを選択した。次いで、一次形質転換体をクローン精製し、炭素源としてのシ 40
ョ糖上で、標準的な脂質生成条件下、pH5.0及びpH7.0の両方で成長させた。脂
質サンプルは、実施例11で記載されるとおり各形質転換体から得られたバイオマスを乾
燥したものから調製した。5つの陽性形質転換体(T1∼T5)の脂肪酸プロフィール(
総脂肪酸の面積%として表される)、唯一の炭素源としてのショ糖上で成長させた株B(
U1)のプロフィール、及び唯一の炭素源としてのグルコース上で成長させた非形質転換
UTEX 1435(U1)のプロフィールを、以下の表56に示す。
【0621】
(172) JP 2018-99138 A 2018.6.28

【表56】

10

20

【0622】
 表56に示されるとおり、Prototheca moriformis(UTEX 
1435)株BにおけるCwTE2の発現の影響は、形質転換微生物の脂肪酸プロフィー
ルの顕著な変化である。CwTE2を発現する、且つAmt03プロモーターからのCw
TE2の発現を促進するためpH7.0で培養された株B株の脂肪酸プロフィールは、非 30
形質転換UTEX 1435の脂肪酸プロフィールと比べて、C10:0、C12:0、
及びC14:0脂肪酸の組成の増加と、それに伴うC16:0及びC18:1脂肪酸の組
成の減少を示した。続いて、C16:0からC18:0脂肪酸への2炭素伸長を触媒する
酵素をコードするKASII対立遺伝子が分断されるように株Bを改変すると、pH5.
0で成長させたときに新しく操作した株の脂質プロフィールに存在するC16:0脂肪酸
の増加と、それに伴うC18:1脂肪酸の減少が生じた。pH5.0での形質転換体の増
殖は、この培地のpHがAmt03プロモーターの活性に最適ではないことから、改変さ
れた脂肪酸プロフィールに対するチオエステラーゼの寄与とは別のKASII対立遺伝子
ノックアウトの影響を説明する。pH7.0で脂質を生成し、それによりCwTE2が発
現した後、pSZ2011形質転換体は、UTEX 1435株のプロフィールと比べて 40
C10:0、C12:0、及びC14:0脂肪酸の組成が増加し、それに伴いC16:0
及びC18:1脂肪酸の組成が減少した脂肪酸プロフィールを示した。一部のpSZ20
11形質転換体は、pH7.0で培養されたとき、pH7.0で培養したその親株である
株Bの脂肪酸プロフィールと比べてC16:0脂肪酸が豊富になり、それでもなおC18
:1脂肪酸の組成がさらに減少した脂肪酸プロフィールを示した。
【0623】
 これらのデータは、宿主生物の脂肪酸プロフィールに影響を及ぼすための複数の遺伝子
改変の有用性を示している。さらに、この実施例は、内在するKASII対立遺伝子の遺
伝子分断を標的化することにより宿主細菌の脂肪酸プロフィールを変化させるための、こ
の組み換えポリヌクレオチドの使用を示している。 50
(173) JP 2018-99138 A 2018.6.28

【0624】
実施例16:遺伝子改変アプローチを組み合わせることによるProtothecaのパ
ルミチン酸組成の改変
 本実施例では、KASII対立遺伝子をノックアウトし、同時に、C14及びC16脂
肪酸の加水分解に対して選択的特異性を示す外来性チオエステラーゼを過剰発現させる遺
伝子改変の組み合わせが、微生物において宿主生物の脂肪酸プロフィールを変化させるこ
とを示す。
【0625】
 Prototheca moriformis(UTEX 1435)、株Aの古典的
に変異を誘発した(より多量の油生成のための)株を、実施例2に詳細に記載される微粒 10
子銃による形質転換方法により、プラスミド構築物pSZ2004で形質転換した。KA
SII_5’_btub−SUC2−nr_2X_Amt03−Ch16TE2−nr_
KASII_3’と書かれるpSZ2004は、Cuphea hookeriana脂
肪酸アシル−ACPチオエステラーゼ(Ch16TE2、GenBank #Q3951
3)のコード配列、核ゲノムのKASII遺伝子座で標的化して組み込むための5’及び
3’相同組み換え標的配列(構築物に隣接する)、並びにC.reinhardtii 
β−チューブリンプロモーター/5’UTR及びChlorella vulgaris
硝酸還元酵素3’UTRの制御下にあるS.cerevisiae suc2ショ糖イン
ベルターゼコード領域を含んだ。Ch16TE2は、C14及びC16脂肪酸に対して選
択的特異性を示すチオエステラーゼである。このS.cerevisiae suc2発 20
現カセットは配列番号159として列挙され、選択マーカーとして機能した。Ch16T
Eコード配列は、タンデムリピートのPrototheca moriformis A
mt03プロモーター/5’UTR(配列番号89)、及びC.vulgaris硝酸還
元酵素3’UTRの制御下にあった。Ch16TE及びsuc2のタンパク質コード領域
は、表2に従うPrototheca moriformis UTEX 1435核遺
伝子に固有のコドンの偏りを反映するようにコドンを最適化した。pSZ2004は、配
列表に配列番号250として示される。
【0626】
 pSZ2004による形質転換後、ショ糖を唯一の炭素源として含有するプレートで、
一次形質転換体を選択した。個々の形質転換体をクローン精製し、実施例1に開示される 30
条件と同様に、標準的な脂質生成条件下、pH7.0で成長させた。実施例11で記載さ
れるような標準的な脂肪酸メチルエステルガスクロマトグラフィー炎イオン化(FAME
 GC/FID)検出方法を用いて、脂肪酸プロフィールを分析した。形質転換ベクター
pSZ2004の形質転換から生じる代表的なクローンから得られた脂肪酸プロフィール
(総脂肪酸の面積%として表される)は、表57に示される。グルコースを唯一の炭素源
として含む脂質生成条件下で成長させた非形質転換株から得られた脂質の脂肪酸プロフィ
ールを、表57にさらに示す。
【0627】
(174) JP 2018-99138 A 2018.6.28

【表57】

10

【0628】
 上記の表57に示されるとおり、選択可能なマーカー及びC14/C16選択的チオエ
ステラーゼを発現させるための発現カセットによるKASII対立遺伝子の標的化した分
断は、形質転換微生物の脂肪酸プロフィールに影響を及ぼした。pSZ2004形質転換
ベクターを含む株の脂肪酸プロフィールは、C14:0及びC16:0脂肪酸の組成の増
加と、それに伴うC18:0及びC18:1脂肪酸の減少を示した。非形質転換Prot 20
otheca moriformis(UTEX 1435)株は、約27%のC16脂
肪酸及び約58%のC18:1脂肪酸を含む脂肪酸プロフィールを示した。対照的に、C
uphea hookeriana脂肪酸アシル−ACPチオエステラーゼ及び選択可能
なマーカーの発現が可能なカセットによりKASII遺伝子座が破壊された株の脂肪酸プ
ロフィールは、約70%のC16脂肪酸及び約14%の脂肪酸を含んだ。C16:0の濃
度は2.5倍超増加した。これらのデータは、外来遺伝子の過剰発現及び内因性遺伝子の
除去の遺伝子改変を組み合わせることで、宿主生物における脂肪酸プロフィールを変化さ
せ得ることを示している。
【0629】
 比較として、ショ糖インベルターゼ遺伝子の発現が可能なカセットによりKASII遺 30
伝子座が破壊された株の脂肪酸プロフィールは、約35%のC16脂肪酸及び約50%の
C18:1脂肪酸を有する株をもたらした。
【0630】
 これらのデータは、操作された微生物の脂肪酸プロフィールを変化させるための、特に
、C14及びC16脂肪酸の濃度を増加させることと同時に、前記ポリヌクレオチドでK
ASII対立遺伝子が標的化して破壊されて、微生物細胞におけるC18:0及びC18
:1脂肪酸の減少が生じることにおける、チオエステラーゼ酵素の外来性発現を可能にす
るポリヌクレオチドの有用性及び有効性を示している。
【0631】
実施例17:リノール酸不飽和脂肪酸及びグリセロ脂質を生成するための微生物の操作 40
 特定のΔ12脂肪酸デサチュラーゼ酵素は、C18:1脂肪酸又は脂肪酸アシル分子に
おける二重結合の形成を触媒することができ、それによりC18:2(リノール酸)脂肪
酸又は脂肪酸アシル分子を生じ得る。Gossypium hirsutum、Cart
hamus ticntorius、Glycine max、Helianthus 
annus、及びZea maysを含めた、リノール酸不飽和脂肪酸を豊富に含む油を
生成する特定の植物種は、脂肪酸プロフィールに影響を及ぼすように微生物で発現させる
ことができるΔ12デサチュラーゼをコードする遺伝子の供給源である。本実施例は、微
生物を操作するためのΔ12デサチュラーゼ酵素をコードするポリヌクレオチドの使用に
ついて記載し、ここでは形質転換微生物の脂肪酸プロフィールが、リノール酸を豊富に含
むものとなった。 50
(175) JP 2018-99138 A 2018.6.28

【0632】
 Protheca moriformis UTEX 1435、株Aの古典的に変異
を誘発した(より多量の油生成のための)誘導体を、実施例2に詳細に記載される微粒子
銃による形質転換方法によって、以下の表58に列挙されるプラスミド構築物のうちの1
つで形質転換した。各構築物は、核ゲノムに組み込むための6Sゲノム領域に対する5’
(配列番号82)及び3’(配列番号84)相同組み換え標的配列(構築物に隣接する)
と、C.reinhardtii β−チューブリンプロモーター/5’UTR及びCh
lorella vulgaris硝酸還元酵素3’UTRの制御下にあるS.cere
visiae suc2ショ糖インベルターゼコード領域とを含んだ。このS.cere
visiae suc2発現カセットは配列番号159として列挙され、選択マーカーと 10
して機能した。全てのタンパク質コード領域は、表2に従いPrototheca mo
riformis UTEX 1435に固有のコドンの偏りを反映するようにコドンを
最適化した。Gossypium hirsutum(Gh、GenBank寄託番号C
AA71199)、Carthamus ticntorius(Ct GenBank
寄託番号ADM48789)、Glycine max(Gm、GenBank寄託番号
BAD89862)、Helianthus annus(Ha、GenBank寄託番
号AAL68983)、及びZea mays(Zm、GenBank寄託番号ABF5
0053)に由来するデサチュラーゼ遺伝子のコード領域は、各々、Protothec
a moriformis Amt03プロモーター/5’UTR(配列番号89)及び
C.vulgaris硝酸還元酵素3’UTRの制御下にあった。 20
【0633】
【表58】

30

【0634】
 表58に列挙される構築物の各々を、個々に株Aに形質転換した。ショ糖を唯一の炭素
源として含有するプレートで、一次形質転換体を選択した。個々の形質転換体をクローン
精製し、実施例1に開示される条件と同様に、標準的な脂質生成条件下、pH7.0で成
長させた。実施例11で記載される標準的な脂肪酸メチルエステルガスクロマトグラフィ
ー炎イオン化(FAME GC/FID)検出方法を用いて、脂肪酸プロフィールを分析
した。表58の対応する株Aの形質転換から生じる一組の代表的なクローンから得られた 40
脂肪酸プロフィールが、表59に示される。比較のため、非形質転換株A対照細胞から得
られた脂質の脂肪酸プロフィールを、表59にさらに示す。
【0635】
(176) JP 2018-99138 A 2018.6.28

【表59】

10

20

30

【0636】
 非形質転換Prototheca moriformis(UTEX 1435)株は 40
、8.5%未満のC18:2脂肪酸を含む脂肪酸プロフィールを示す。表59に示される
とおり、高等植物の脂肪酸デサチュラーゼ酵素を発現する株A株の脂質プロフィールは、
C18:2脂肪酸の増加を示した。総C18不飽和脂肪酸は約64%から約67∼72%
に増加した。同様に、全てを合わせたC18不飽和脂肪酸(C18:1、C18:2及び
C18:3)に対する全C18多価不飽和脂肪酸(C18:2及びC18:3)の比は、
14%未満から19%超に増加した。これらのデータは、操作された微生物の脂肪酸プロ
フィールを変化させるための、Δ12デサチュラーゼ脂肪酸デサチュラーゼ酵素の外来性
発現を可能にするポリヌクレオチドの有用性及び有効性を示している。
【0637】
実施例18:脂肪酸デサチュラーゼの複数の対立遺伝子破壊による操作された微生物の脂 50
(177) JP 2018-99138 A 2018.6.28

肪酸濃度の改変
 本実施例は、選択可能なマーカーと外来性SAD酵素をコードする配列とを含む形質転
換カセットでPrototheca moriformisのFADc遺伝子座を破壊し
て微生物を操作するための形質転換ベクターの使用について記載し、ここでは形質転換微
生物の脂肪酸プロフィールが変化した。
【0638】
 Protheca moriformis(UTEX 1435)、株Cの古典的に変
異を誘発した(より多量の油生成のための)誘導体を、実施例2に詳細に記載される微粒
子銃による形質転換方法によって、形質転換構築物pSZ1499(配列番号246)で
形質転換した。pSZ1499は、Protheca moriformis UTEX 10
 1435での発現にコドンが最適化された、Olea europaeaステアロイル
−ACPデサチュラーゼ遺伝子のヌクレオチド配列を含んだ。pSZ1499発現構築物
は、核ゲノムに組み込むためのFADcゲノム領域に対する5’(配列番号247)及び
3’(配列番号248)相同組み換え標的配列(構築物に隣接する)と、C.reinh
ardtii β−チューブリンプロモーター/5’UTR及びChlorella v
ulgaris硝酸還元酵素3’UTRの制御下にあるS.cerevisiae SU
C2ショ糖インベルターゼコード領域とを含んだ。このS.cerevisiae su
c2発現カセットは配列番号159として列挙され、選択マーカーとして機能した。Ol
ea europaeaステアロイル−ACPデサチュラーゼコード領域は、Proto
theca moriformis Amt03プロモーター/5’UTR(配列番号8 20
9)及びC.vulgaris硝酸還元酵素3’UTRの制御下にあり、且つ天然トラン
ジットペプチドが、Chlorella protothecoidesステアロイル−
ACPデサチュラーゼトランジットペプチド(配列番号49)に置き換えられた。O.e
uropaea SAD発現カセット全体をpSZ1499と命名し、これはFADc5
’_btub−Suc2−nr_amt03−S106SAD−OeSAD−nr−FA
Dc3’と書くことができる。
【0639】
 ショ糖を唯一の炭素源として含有するプレートで、一次形質転換体を選択した。個々の
形質転換体をクローン精製し、実施例1に開示される条件と同様に、標準的な脂質生成条
件下、pH7.0で成長させた。実施例11で記載されるような標準的な脂肪酸メチルエ 30
ステルガスクロマトグラフィー炎イオン化(FAME GC/FID)検出方法を用いて
、脂肪酸プロフィールを分析した。形質転換ベクターの形質転換から生じる一組の代表的
なクローンから得られた脂肪酸プロフィールが、表60に示される。グルコースを唯一の
炭素源として含む脂質生成条件下(pH5.0)で成長させた非形質転換株C株から得ら
れた脂質の脂肪酸プロフィールを、表60にさらに示す。
【0640】
(178) JP 2018-99138 A 2018.6.28

【表60】

10

【0641】 20
 表60に示されるとおり、pSZ1499による株Cの形質転換は、形質転換微生物の
脂肪酸プロフィールに影響を及ぼす。非形質転換Prototheca morifor
mis(UTEX 1435)株C株は、60%未満のC18:1脂肪酸及び7%超のC
18:2脂肪酸を含む脂肪酸プロフィールを示す。対照的に、pSZ1499で形質転換
した株C株は、C18:1脂肪酸の組成の増加及びそれに伴うC18:0及びC18:2
脂肪酸の減少を有する脂肪酸プロフィールを示した。C18:2脂肪酸は、pSZ149
9で形質転換した株Cの脂肪酸プロフィールには検出されなかった。pSZ1499形質
転換体に検出可能なC18:2脂肪酸が存在しないことから、複数のFADcゲノム遺伝
子座に組み込むための相同組み換え標的配列を有するpSZ1499による形質転換が、
FAD活性を消失させたことが示された。 30
【0642】
 サザンブロット分析を実施し、複数のFADc対立遺伝子がpSZ1499形質転換ベ
クターによって分断されたことを確認した。標準的な分子生物学的方法を用いて株C及び
pSZ1499形質転換体からゲノムDNAを抽出した。各サンプルからのDNAは、制
限酵素PstIで消化した後、0.8%アガロースゲル上で泳がせた。このゲルからのD
NAをナイロン+膜(Amersham)に移し、次にそれを、FADc 3’領域に対
応するP32標識ポリヌクレオチドプローブとハイブリダイズした。図3は、pSZ14
99形質転換カセットのマップ、Prototheca moriformis(UTE
X 1435)の2つの配列決定したFADc対立遺伝子、及びpSZ1499形質転換
ベクターにより破壊された対立遺伝子の予想サイズを示す。FADc対立遺伝子1はPs 40
tI制限部位を含み、一方、FADc対立遺伝子2はそれを含まない。SADカセットの
組み込みにより、破壊されたFADc対立遺伝子にPstI制限部位が導入され、その結
果、どの対立遺伝子が破壊されたかに関係なく、約6kbフラグメントがサザンで解像さ
れ得る。図4は、サザンブロット分析の結果を示す。双方の形質転換体で、約6kbでの
ハイブリダイゼーションバンドが検出される。分断されていない対立遺伝子を示すもので
あり得る、それより短いハイブリダイゼーションバンドは、検出されなかった。これらの
結果は、いずれのFADc対立遺伝子もpSZ1499により破壊されたことを示してい
る。
【0643】
 SAD発現カセットでFADc脂肪酸デサチュラーゼの双方の対立遺伝子を除去すると 50
(179) JP 2018-99138 A 2018.6.28

、約74%のC18:1を含む脂肪酸プロフィールが生じる。まとめると、これらのデー
タは、操作された微生物の脂肪酸プロフィールを変化させるための、FAD対立遺伝子の
ノックアウトを、ステアロイル−ACPデサチュラーゼ酵素の外来性発現と同時に可能に
するポリヌクレオチドの有用性及び有効性を示している。
【0644】
実施例19:操作された微生物から生成される加工油の特徴付け
 Prototheca moriformis(UTEX 1435)を形質転換ベク
ターpSZ1500(配列番号251)で形質転換する方法及び効果は、先にPCT出願
番号第PCT/US2011/038463号及び第PCT/US2011/03846
3号に記載されている。 10
【0645】
 Protheca moriformis(UTEX 1435)、株Cの古典的に変
異を誘発した(より多量の油生成のための)誘導体を、実施例2に詳細に記載される微粒
子銃による形質転換方法によって、形質転換構築物pSZ1500で形質転換した。ショ
糖を唯一の炭素源として含有する寒天プレートで一次形質転換体を選択し、クローン精製
し、分析のために、単一の操作された系統、株Dを選択した。株Dを本明細書に記載され
るとおり成長させた。次いで、標準方法を用いて、生じたバイオマスからの油のヘキサン
抽出を行い、得られたトリグリセリド油脂が残留ヘキサンを含まないことを決定した。連
続圧搾機を用いた微細藻類からの油の他の抽出方法が、PCT出願番号第PCT/US2
010/31108号に記載され、本明細書によって参照により組み込まれる。 20
【0646】
 次いで、株Dのバイオマスから抽出した油を、公知の植物油処理方法を用いて精製し、
漂白し、脱臭した。これらの手順により油サンプルRBD469が生じ、これを、米国油
脂化学協会(American Oil Chemists’ Society)、米国
材料試験協会(American Society for Testing and 
Materials)、及び国際標準化機構(International Organ
ization for Standardization)によって定義される方法に
より、いくつかの分析的試験プロトコルに供した。これらの分析の結果を、以下の表60
にまとめている。
【0647】 30
(180) JP 2018-99138 A 2018.6.28

【表60A】

10

20

【0648】
 Prototheca moriformis株D RBD469油の同じロットを、
AOCS方法によって微量元素含有量、固形脂肪含有量、及びロビボンド色について分析 30
した。それらの分析の結果は、以下の表61、表62、及び表63に示す。
【0649】
(181) JP 2018-99138 A 2018.6.28

【表61】

10

20

30
【0650】
【表62】

40

【0651】
【表63】

50
(182) JP 2018-99138 A 2018.6.28

【0652】
 RBD469油をトランスエステル化に供し、脂肪酸メチルエステル(FAME)を生
成した。RBD469の得られた脂肪酸メチルエステルプロフィールは、表64に示され
る:
【0653】
【表64】

10

20

【0654】
実施例20:改変された脂肪酸プロフィールを有する操作された微細藻類 30
 上述のとおり、異種遺伝子の組み込みによるPrototheca種の特定の内在する
脂質経路酵素のノックアウト又はノックダウンにより、操作された細菌の脂肪酸プロフィ
ールを変化させることができる。本実施例では、宿主細胞の脂質プロフィールが、内在す
る脂肪酸アシル−ACPチオエステラーゼ遺伝子FATA1をノックアウト又はノックダ
ウンする結果として影響を受け得るかどうかを評価するため、プラスミド構築物を作製し
た。
【0655】
A.内在するPrototheca moriformisチオエステラーゼ遺伝子のノ
ックアウトによる脂質プロフィールの改変
 Protheca moriformis UTEX 1435、株Aの古典的に変異 40
を誘発した(より多量の油生成のための)誘導体を、実施例2の方法を用いて、以下の表
65のプラスミド構築物のうちの1つで形質転換した。各構築物は、核ゲノムに組み込ん
で内在するFATA1遺伝子を分断するための領域と、C.reinhardtii β
−チューブリンプロモーター/5’UTR及びChlorella vulgaris硝
酸還元酵素3’UTRの制御下にあるS.cerevisiae suc2ショ糖インベ
ルターゼコード領域とを含んだ。このS.cerevisiae suc2発現カセット
は配列番号159として列挙され、選択マーカーとして機能した。全てのタンパク質コー
ド領域は、表2に従うPrototheca moriformis UTEX 143
5核遺伝子に固有のコドンの偏りを反映するようにコドンを最適化した。核ゲノムの組み
込みに使用したFATA1遺伝子の標的領域に関連する配列を、以下に示す。 50
(183) JP 2018-99138 A 2018.6.28

【0656】
【表64A】

【0657】
【表65】
10

【0658】
 構築物FATA1−CrbTub_yInv_nr−FATA1(配列番号255)に
おける関連する制限部位を小文字、太字且つ下線で示し、5’−3’にそれぞれBspQ
 1、Kpn I、Asc I、Mfe I、Sac I、BspQ Iである。Bsp 20
QI部位が形質転換DNAの5’末端及び3’末端を区切る。太字で小文字の配列は、相
同組み換えによるFATA1遺伝子座での標的化した組み込みを可能にする株A由来のゲ
ノムDNAを表す。5’から3’方向に進んで、酵母ショ糖インベルターゼ遺伝子(株A
がショ糖を代謝する能力を付与する)の発現を駆動するC.reinhardtii β
−チューブリンプロモーターを、囲い文字のテキストにより示す。インベルターゼのイニ
シエーターATG及びターミネーターTGAを、大文字、太字のイタリックにより示し、
一方、コード領域を小文字のイタリックで示す。Chlorella vulgaris
硝酸還元酵素3’UTRを小文字の下線テキストにより示し、その後に、太字の小文字テ
キストにより示される株A FATA1ゲノム領域が続く。
【化15】 30

40
(184) JP 2018-99138 A 2018.6.28

【化16】

10

20

30

【0659】
 Cuphea wrightii ACP−チオエステラーゼ2(CwTE2)遺伝子
(寄託番号U56104)を株AのFATA1遺伝子座に導入するため、Prototh
eca moriformis Amt03プロモーター/5’UTR(配列番号89)
及びC.vulgaris硝酸還元酵素3’UTRの制御下でCwTE2遺伝子のタンパ
ク質コード領域を発現するよう構築物を生じさせた。株Aで発現させた構築物は、FAT
A1−CrbTub_yInv_nr::amt03_CwTE2_nr−FATA1( 40
配列番号256)と書くことができる。
【0660】
 構築物FATA1−CrbTub_yInv_nr::amt03_CwTE2_nr
−FATA1における関連する制限部位を小文字、太字且つ下線で示し、5’−3’にそ
れぞれBspQ 1、Kpn I、Asc I、Mfe I、BamH I、EcoR 
I、Spe I、Asc I、Pac I、Sac I、BspQ Iである。BspQ
I部位が形質転換DNAの5’末端及び3’末端を区切る。太字で小文字の配列は、相同
組み換えによるFATA1遺伝子座での標的化した組み込みを可能にする株A由来のゲノ
ムDNAを表す。5’から3’方向に進んで、酵母ショ糖インベルターゼ遺伝子(株Aが
ショ糖を代謝する能力を付与する)の発現を駆動するC.reinhardtii β− 50
(185) JP 2018-99138 A 2018.6.28

チューブリンプロモーターを、囲い文字のテキストにより示す。インベルターゼのイニシ
エーターATG及びターミネーターTGAを、大文字、太字のイタリックにより示し、一
方、コード領域を小文字のイタリックで示す。Chlorella vulgaris硝
酸還元酵素3’UTRを小文字の下線テキストにより示し、その後に囲い文字のイタリッ
クテキストにより示されるPrototheca moriformisの内在するAm
t03プロモーターが続く。C.wrightii ACP−チオエステラーゼのイニシ
エーターATG及びターミネーターTGAコドンを、大文字、太字のイタリックにより示
し、一方、残りのACP−チオエステラーゼコード領域を太字のイタリックにより示す。
C.vulgaris硝酸還元酵素3’UTRはここでも小文字の下線テキストにより示
し、その後に、太字の小文字テキストにより示される株A FATA1ゲノム領域が続く 10

【化17】

20
(186) JP 2018-99138 A 2018.6.28

【化18】

10

20

30

40
(187) JP 2018-99138 A 2018.6.28

【化19】

10

20

30

40
(188) JP 2018-99138 A 2018.6.28

【化20】

【0661】
 プラスミド構築物1又は2を株Aに個々に形質転換した後、ショ糖を唯一の炭素源とし
て含む寒天プレートで、陽性クローンを選択した。先述の実施例にあるとおり、一次形質
転換体をクローン精製し、標準的な脂質生成条件下、pH7で成長させ、各形質転換体か 10
ら得られたバイオマスを乾燥したものから、脂質サンプルを調製した。実施例11で記載
されるような直接的なトランスエステル化法を用いて、脂肪酸プロフィールを決定した。
非形質転換株A対照と比較したときの、構築物1による形質転換から生じる一組の代表的
なクローンから得られた脂肪酸プロフィール(総脂肪酸の面積%として表される)を、表
66に示す。非形質転換株A対照と比較したときの、構築物2による形質転換から生じる
一組の代表的なクローンから得られた脂肪酸プロフィール(総脂肪酸の面積%として表さ
れる)を、表67に示す。
【0662】
【表66】
20

30
【0663】
 表66に示される結果は、宿主の内在するFATA1対立遺伝子を除去すると、操作さ
れた微細藻類の脂肪酸プロフィールが変化することを示している。選択可能なマーカーを
内在するFATA1対立遺伝子に標的化させることによって形質転換細菌の脂肪酸プロフ
ィールに及ぶ影響は、C16:0脂肪酸の明らかな減少と、それに伴うC18:1脂肪酸
の増加である。
【0664】
(189) JP 2018-99138 A 2018.6.28

【表67】

10

20

【0665】
 選択可能なマーカーが単独で宿主のFATA1対立遺伝子を標的化することと一致して
、選択可能なマーカーを外来性チオエステラーゼと同時に組み込むと、操作された微細藻
類の脂肪酸プロフィールの変化が生じる。上記の表67に示されるとおり、外来性チオエ
ステラーゼ遺伝子がFATA1対立遺伝子を分断するように標的化すると、C16:0脂
肪酸生成の明らかな減少が生じる。FATA1遺伝子座でのCwTE2チオエステラーゼ 30
の発現もまた中鎖脂肪酸及びC18:1脂肪酸生成に影響し、その程度は、分析される形
質転換体に存在する外来性チオエステラーゼ活性のレベルに依存する。標的組み込み部位
で増幅されるトランス遺伝子の複製物の数とチオエステラーゼ濃度との間には、ウエスタ
ンブロッティングにより評価されるときの、脂肪酸プロフィール又は組み換えタンパク質
蓄積のいずれかに対する影響によって明らかなように、良好な一致がある。
【0666】
 CwTE2遺伝子が増幅を受けたトランスジェニック系は、C10:0∼C14:0脂
肪酸の著しい増加及び同時に起こるC18:1脂肪酸の減少を示す。対照的に、CwTE
2が増幅をほとんど又は全く受けなかった形質転換体は、外来性チオエステラーゼのより
低い発現と一致して、中鎖脂肪酸の僅かな増加及びそれよりはるかに大きい、C18:1 40
脂肪酸の増加に対する影響を生じた。
【0667】
 まとめると、これらのデータは、宿主の内在するFATA1対立遺伝子を標的化して破
壊すると、操作された微細藻類の脂質プロフィールが変化することを示している。これら
のデータは、操作された微生物細胞の脂肪酸プロフィールを変化させるための、特に、C
16脂肪酸の濃度を低下させ、及びC18:1脂肪酸の濃度を増加させることにおける、
FATA対立遺伝子の標的破壊を可能にするポリヌクレオチドの有用性及び有効性を示し
ている。これらのデータはさらに、操作された微生物細胞の脂肪酸プロフィールを変化さ
せるための、特に、C16脂肪酸の濃度を低下させることにおける、FATA対立遺伝子
の標的破壊を可能にすると同時に外来性チオエステラーゼを発現するポリヌクレオチドの 50
(190) JP 2018-99138 A 2018.6.28

有用性及び有効性を示している。
【0668】
B.内在するPrototheca moriformisチオエステラーゼ遺伝子のノ
ックダウンによる脂質プロフィールの改変
 RNAiによりPrototheca moriformis FATA1の遺伝子発
現を下方調節する構築物を、Prototheca moriformis UTEX 
1435株Aの遺伝的背景に導入した。Saccharomyces cerevisi
ae suc2ショ糖インベルターゼ遺伝子を、唯一の炭素源としてショ糖で成長する能
力を付与する選択可能なマーカーとして利用した。この構築物は、FatA1コード領域
の第1エクソンと、それに続く内在するイントロン、及び逆方向の第1エクソンの反復単 10
位を利用した。ヘアピン構築物を核ゲノムに組み込むため、それぞれ配列番号82及び8
4として列挙される6Sゲノム領域に対する5’及び3’相同組み換え標的配列(構築物
に隣接する)が含まれた。この構築物を、6S::β−Tub:suc2:nr::β−
tub:ヘアピンFatA:nr::6Sと命名する。
【0669】
 6S::β−Tub:suc2:nr::β−tub:ヘアピンFatA:nr::6
Sにおける関連する制限部位を小文字、太字且つ下線で示し、5’−3’にそれぞれBs
pQ 1、Kpn I、Mfe I、BamH I、EcoR I、Spe I、Xho
 I、Sac I、BspQ Iである。BspQI部位が形質転換DNAの5’末端及
び3’末端を区切る。太字で小文字の配列は、相同組み換えによる6s遺伝子座での標的 20
化した組み込みを可能にする株A由来のゲノムDNAを表す。5’から3’方向に進んで
、酵母ショ糖インベルターゼ遺伝子(株Aがショ糖を代謝する能力を付与する)の発現を
駆動するC.reinhardtii β−チューブリンプロモーターを、囲い文字のテ
キストにより示す。インベルターゼのイニシエーターATG及びターミネーターTGAを
、大文字、太字のイタリックにより示し、一方、コード領域を小文字のイタリックで示す
。Chlorella vulgaris硝酸還元酵素3’UTRを小文字の下線テキス
トにより示し、その後に、囲い文字のイタリックテキストにより示されるヘアピンFat
A1の発現を駆動する第2のC.reinhardtii β−チューブリンプロモータ
ーが続く。FatA1のイニシエーターATGコドンを、大文字、太字のイタリックによ
り示し、一方、FatA1コード領域の残りの第1エクソンを大文字により示す。Fat 30
A遺伝子のイントロンを下線の大文字として示し、下線、大文字、太字のイタリックで示
すリンカー領域を、FatA1イントロン/逆方向の第1エクソンジャンクションに設け
、これらのベクターにおけるRNAスプライシングを促進した。FatA1の反転した第
1エクソンは大文字により示す。C.vulgaris硝酸還元酵素3’UTRはここで
も小文字の下線テキストにより示し、その後に、太字の小文字テキストにより示される株
A 6Sゲノム領域が続く。このRNAi構築物のFATA部分の配列は、配列番号25
7として列挙される。
【化21】

40
(191) JP 2018-99138 A 2018.6.28

【化22】

10

20

30

40
(192) JP 2018-99138 A 2018.6.28

【化23】

10

20

30

40

【0670】
 6S::β−Tub:suc2:nr::β−tub:ヘアピンFatA:nr::6 50
(193) JP 2018-99138 A 2018.6.28

Sの発現によりヘアピンRNAが形成され、標的FatA遺伝子産物のサイレンシングが
もたらされる。この構築物6S::β−Tub:suc2:nr::β−tub:ヘアピ
ンFatA:nr::6Sを株Aに形質転換した後、ショ糖を唯一の炭素源として含む寒
天プレートで、陽性クローンを選択した。一次形質転換体をクローン精製し、標準的な脂
質生成条件下、pH5.0で成長させ、各形質転換体から得られたバイオマスを乾燥した
ものから、脂質サンプルを調製した。実施例11で記載されるような直接的なトランスエ
ステル化法を用いて、脂肪酸プロフィールを決定した。非形質転換株A対照と比較したと
きの、形質転換から生じる一組の代表的なクローンから得られた脂肪酸プロフィール(総
脂肪酸の面積%として表される)を、表68に示す。
【0671】 10
【表68】

20

【0672】
 表68に示されるデータは、宿主生物のC16及びC18:1の脂肪酸プロフィールに
対するFATAヘアピンRNA構築物の発現の明らかな影響を示している。FATAヘア
ピンRNA構築物を含む株A形質転換体の脂肪酸プロフィールは、C18:1脂肪酸の割
合の増加と、それに伴うC16脂肪酸の減少を示した。これらのデータは、操作された宿
主微生物の脂肪酸プロフィールを変えるための、特に、微生物細胞においてC18:1脂
肪酸の濃度を増加させ、及びC16脂肪酸を低下させることにおける、Protothe
ca moriformisでのポリヌクレオチドFATA RNAヘアピン構築物の発
現及び使用の成功を示している。 30
【0673】
実施例21:Chlorella sorokinianの操作
 Chlorella sorokinianにおける本発明に従う組み換え遺伝子の発
現は、本明細書で考察されるとおりDawsonらにより教示される方法及びベクターを
改良して達成することができる。簡潔に言えば、Dawson et al.,Curr
ent Microbiology Vol.35(1997)pp.356−362は
、プラスミドDNAによるChlorella sorokinianaの安定した核形
質転換を報告した。Dawsonは、微粒子ボンバードメントの形質転換方法を用いて、
完全なChlorella vulgaris硝酸還元酵素遺伝子(NR、GenBan
k寄託番号U39931)をコードするプラスミドpSV72−NRgを突然変異体Ch 40
lorella sorokinianaに導入した(NR突然変異体)。NR突然変異
体は、窒素供給源として硝酸塩を使用しない限り、成長することができない。硝酸還元酵
素が硝酸塩の亜硝酸塩への変換を触媒する。形質転換前には、Chlorella so
rokiniana NR突然変異体は、硝酸塩(NO3−)を唯一の窒素供給源として
含む培地で微小コロニー段階より先に成長することができなかった。NR突然変異体Ch
lorella sorokinianaにおけるChlorella vulgari
s NR遺伝子産物の発現を選択可能なマーカーとして使用して、硝酸塩代謝欠損をレス
キューした。pSV72−NRgプラスミドで形質転換すると、硝酸塩を唯一の炭素源と
して含む寒天プレートで微小コロニー段階より先に成長することが可能な、Chlore
lla vulgaris NR遺伝子産物を安定に発現するNR突然変異体Chlor 50
(194) JP 2018-99138 A 2018.6.28

ella sorokinianaが得られた。安定な形質転換体のDNAの評価はサザ
ン解析によって行われ、安定な形質転換体のRNAの評価はRNase保護によって行わ
れた。形質転換したChlorella sorokiniana(NR突然変異体)の
選択及び維持は、0.2g/L MgSO4、0.67g/L KH2PO4、3.5g
/L K2HPO4、1.0g/L Na3C6H5O7・H2O及び16.0g/L 
寒天、適切な窒素供給源(例えば、NO3−)、微量栄養物、及び炭素源を含む寒天プレ
ート(pH7.4)で行われた。Dawsonはまた、液体培地におけるChlorel
la sorokiniana及びChlorella sorokiniana NR
突然変異体の増殖も報告した。Dawsonは、Chlorella sorokini
ana NR突然変異体における異種遺伝子発現を可能にするのに、プラスミドpSV7 10
2−NRg並びにChlorella vulgaris硝酸還元酵素遺伝子のプロモー
ター及び3’UTR/ターミネーターが適していたことを報告した。Dawsonはまた
、Chlorella sorokiniana NR突然変異体において選択可能なマ
ーカーとして用いるのに、Chlorella vulgaris硝酸還元酵素遺伝子産
物の発現が適していたことも報告した。
【0674】
 本発明の実施形態では、選択可能なマーカーとして用いられるChlorella v
ulgaris硝酸還元酵素(CvNR)遺伝子産物をコードするヌクレオチド配列を含
むベクターpSV72−NRgが、脂質生合成経路発現カセット配列をさらに含むように
作製及び改変され、それにより形質転換ベクターを作り出す。脂質生合成経路発現カセッ 20
トは、表70から選択される1つ以上の脂質生合成経路タンパク質をコードし、各タンパ
ク質コード配列は、表69A∼表69Dに従うChlorella sorokinia
naの核遺伝子に固有のコドンの偏りを反映するように、Chlorella soro
kinianaにおける発現用にコドンが最適化される。表70の各脂質生合成経路タン
パク質について、コドンが最適化された遺伝子配列は、個々に、タンパク質コード配列の
上流でCvNRプロモーターに動作可能に連結し、及びタンパク質コード配列の3’領域
で、又は下流で、CvNR 3’UTR/ターミネーターに動作可能に連結することがで
きる。形質転換構築物は、形質転換ベクターを標的化してゲノムに組み込むためのChl
orella sorokinianaゲノムに対する相同性領域をさらに含み得る。相
同性領域は、内在する脂質生合成経路遺伝子の1つ以上のゲノム部位を破壊するように選 30
択され得る。形質転換ベクターによるChlorella sorokinianaの安
定な形質転換は、微粒子ボンバードメントを含む周知の形質転換技法又は他の公知の方法
により達成される。CvNR遺伝子産物の活性を選択可能なマーカーとして使用して、C
hlorella sorokiniana NR突然変異株の窒素同化(assimi
liation)欠損をレスキューし、形質転換ベクターを安定に発現するChlore
lla sorokiniana NR突然変異体を選択することができる。Chlor
ella sorokinianaの脂質生成に適した成長培地としては、限定されない
が、微量栄養物並びに適切な窒素及び炭素源を追加した、0.5g/L KH2PO4、
0.5g/L K2HPO4、0.25g/L MgSO4−7H2Oが挙げられる(P
atterson,Lipids Vol.5:7(1970),pp.597−600 40
)。Chlorella sorokiniana脂質の脂肪酸プロフィールの評価は、
本明細書に記載される標準的な脂質抽出及び分析方法により評価することができる。
【0675】
実施例22∼44:序論及び表
 以下の実施例22∼44は、本発明におけるさまざまな微生物の操作を記載する。微生
物の脂肪酸プロフィールを変化させるため、微生物を遺伝子改変することができ、ここで
は内在する又は外来性の脂質生合成経路酵素を発現させるか、過剰発現させるか、又は減
弱させる。細菌を遺伝子操作して脂肪酸の不飽和度に関するその脂肪酸プロフィールを変
化させ、脂肪酸鎖長を低下又は増加させる工程には、形質転換ベクター(例えばプラスミ
ド)の設計及び構築、1つ以上のベクターによる細菌の形質転換、形質転換された微生物 50
(195) JP 2018-99138 A 2018.6.28

(形質転換体)の選択、形質転換細菌の成長、及び操作された細菌によって生成される脂
質の脂肪酸プロフィールの分析が含まれる。
【0676】
 宿主生物の脂肪酸プロフィールを変化させるトランス遺伝子は、多数の真核微生物で発
現させることができる。Chlamydomonas reinhardtii、Chl
orella ellipsoidea、Chlorella saccarophil
a、Chlorella vulgaris、Chlorella kessleri、
Chlorella sorokiniana、Haematococcus pluv
ialis、Gonium pectorale、Volvox carteri、Du
naliella tertiolecta、Dunaliella viridis、 10
Dunaliella salina、Closterium peracerosum
−strigosum−littorale複合体、Nannochloropsis 
sp.、Thalassiosira pseudonana、Phaeodactyl
um tricornutum、Navicula saprophila、Cylin
drotheca fusiformis、Cyclotella cryptica、
Symbiodinium microadriacticum、Amphidiniu
m sp.、Chaetoceros sp.、Mortierella alpina
、及びYarrowia lipolyticaを含めた真核微生物におけるトランス遺
伝子の発現の例が、科学文献に見出され得る。これらの発現技法を本発明の教示と組み合
わせて、改変された脂肪酸プロフィールを有する操作された微生物を生成することができ 20
る。
【0677】
 宿主生物の脂肪酸プロフィールを変化させるトランス遺伝子はまた、多数の原核微生物
でも発現させることができる。Rhodococcus opacusを含めた油産生微
生物におけるトランス遺伝子の発現の例は、文献に見出すことができる。これらの発現技
法を本発明の教示と組み合わせて、改変された脂肪酸プロフィールを有する操作された微
生物を生成することができる。
【0678】
(196) JP 2018-99138 A 2018.6.28

【表69A−1】

10

20

30

【0679】
(197) JP 2018-99138 A 2018.6.28

【表69A−2】

10

20

30

【0680】
(198) JP 2018-99138 A 2018.6.28

【表69B−1】

10

【0681】
(199) JP 2018-99138 A 2018.6.28

【表69B−2】

10

20

30

40

【0682】
(200) JP 2018-99138 A 2018.6.28

【表69B−3】

10

【0683】
【表69C−1】

20

30

40

【0684】
(201) JP 2018-99138 A 2018.6.28

【表69C−2】

10

20

30

【0685】
【表69D−1】 40

【0686】
(202) JP 2018-99138 A 2018.6.28

【表69D−2】

10

20

30

40

【0687】
(203) JP 2018-99138 A 2018.6.28

【表69D−3】

10

20

【0688】
【表70−1】

30

40

【0689】
(204) JP 2018-99138 A 2018.6.28

【表70−2】

10

20

30

40

【0690】
(205) JP 2018-99138 A 2018.6.28

【表70−3】

10

20

30

【0691】
実施例22:Chlorella vulgarisの操作
 Chlorella vulgarisにおける本発明に従う組み換え遺伝子の発現は
、本明細書に考察されるとおりChow及びTungらにより教示される方法及びベクタ
ーを改良することによって達成することができる。簡潔に言えば、Chow and T 40
ung et al.,Plant Cell Reports,Volume 18(
1999),pp.778−780は、プラスミドDNAによるChlorella v
ulgarisの安定した核形質転換を報告した。Chow及びTungは、エレクトロ
ポレーションの形質転換方法を用いて、プラスミドpIG121−Hm(GenBank
寄託番号AB489142)をChlorella vulgarisに導入した。pI
G121−Hmのヌクレオチド配列は、GUSタンパク質コード配列の上流でCaMV 
35Sプロモーターに動作可能に連結され、且つGUSタンパク質コード配列の下流でノ
パリンシンターゼ(nos)遺伝子の3’UTR/ターミネーターにさらに動作可能に連
結された、β−グルクロニダーゼ(GUS)レポーター遺伝子産物をコードする配列を含
んだ。プラスミドpIG121−Hmの配列はさらにハイグロマイシンB抗生物質耐性カ 50
(206) JP 2018-99138 A 2018.6.28

セットを含んだ。このハイグロマイシンB抗生物質耐性カセットは、ハイグロマイシンホ
スホトランスフェラーゼ(hpt、GenBank寄託番号BAH24259)遺伝子産
物をコードする配列に動作可能に連結したCaMV 35Sプロモーターを含んだ。形質
転換前、Chlorella vulgarisは、50ug/mlのハイグロマイシン
Bを含む培地で増殖することができなかった。pIG121−Hmプラスミドで形質転換
すると、Chlorella vulgarisの形質転換体が得られ、これは50ug
/mlのハイグロマイシンB(hyrgromycin B)を含む培地で増殖した。C
hlorella vulgarisにおいてhpt遺伝子産物が発現することにより、
50ug/mlのハイグロマイシンB(hyrgromycin B)の存在下での形質
転換Chlorella vulgarisの増殖が可能となり、それによりChlor 10
ella vulgarisに用いられる選択可能なマーカーとしてのハイグロマイシン
B耐性カセットの有用性が確立された。GUSレポーター遺伝子の検出可能な活性から、
CaMV 35Sプロモーター及びnos 3’UTRが、Chlorella vul
garisにおける異種遺伝子発現を可能にするのに適していることが示された。安定な
形質転換体のゲノムDNAの評価は、サザン解析により行われた。形質転換したChlo
rella vulgarisの選択及び維持は、YA培地(寒天及び4g/L酵母エキ
ス)を含む寒天プレートで行われた。液体培地中でのChlorella vulgar
isの増殖は、Chow及びTungにより考察されるとおり実施された。YA培地以外
の培地中でのChlorella vulgarisの増殖については、記載がなされて
いる(例えば、Chader et al.,Revue des Energies  20
Renouvelabes,Volume 14(2011),pp.21−26及びI
llman et al.,Enzyme and Microbial Techno
logy,Vol.27(2000),pp.631−635を参照)。Chow及びT
ungは、プラスミドpIG121−Hm、CaMV 35Sプロモーター、及びAgr
obacterium tumefaciensノパリンシンターゼ遺伝子3’UTR/
ターミネーターが、Chlorella vulgarisにおける異種遺伝子発現を可
能にするのに適していることを報告した。さらに、Chow及びTungは、ハイグロマ
イシンB(hyromycin B)耐性カセットが、Chlorella vulga
risにおける選択可能なマーカーとして用いるのに適していたことを報告した。Chl
orella vulgarisにおける異種遺伝子発現を可能にするのに適したさらな 30
るプラスミド、プロモーター、3’UTR/ターミネーター、及び選択可能なマーカーに
ついては、Chader et al.,Revue des Energies Re
nouvelabes,Volume 14(2011),pp.21−26に考察がな
されている。
【0692】
 本発明の実施形態では、選択可能なマーカーとして用いられるハイグロマイシンB遺伝
子産物をコードするヌクレオチド配列を含むpIG121−Hmが、脂質生合成経路発現
カセット配列をさらに含むように作製及び改変され、それにより形質転換ベクターを作り
出す。脂質生合成経路発現カセットは、表70から選択される1つ以上の脂質生合成経路
タンパク質をコードし、各タンパク質コード配列は、表69A∼表69DのとおりのCh 40
lorella vulgarisの核遺伝子に固有のコドンの偏りを反映するように、
Chlorella vulgarisにおける発現用にコドンが最適化される。表70
の各脂質生合成経路タンパク質について、コドンが最適化された遺伝子配列は、個々に、
タンパク質コード配列の上流でCaMV 35Sプロモーターに動作可能に連結し、且つ
タンパク質コード配列の3’領域で、又は下流で、Agrobacterium tum
efaciensノパリンシンターゼ遺伝子3’UTR/ターミネーターに動作可能に連
結することができる。形質転換構築物は、形質転換ベクターを標的化してゲノムに組み込
むためのChlorella vulgarisゲノムに対する相同性領域をさらに含み
得る。相同性領域は、内在する脂質生合成経路遺伝子の1つ以上のゲノム部位を破壊する
ように選択され得る。形質転換ベクターによるChlorella vulgarisの 50
(207) JP 2018-99138 A 2018.6.28

安定な形質転換は、エレクトロポレーションを含む周知の形質転換技法又は他の公知の方
法により達成される。ハイグロマイシンB耐性遺伝子産物の活性をマーカーとして使用し
て、限定されないがハイグロマイシンを含む寒天培地で、形質転換ベクターにより形質転
換されたChlorella vulgarisを選択することができる。Chlore
lla vulgaris脂質生成に適した成長培地としては、限定されないが、微量金
属、及び場合により1.5g/L NaNO3を追加したBG11培地(0.04g/L
 KH2PO4、0.075g/L CaCl2、0.036g/L クエン酸、0.0
06g/L クエン酸鉄アンモニウム、1mg/L EDTA、及び0.02g/L N
a2CO3)が挙げられる。脂質生成のためChlorella vulgarisを培
養するのに適したさらなる培地としては、例えば、Watanabe培地(1.5g/L 10
 KNO3、1.25g/L KH2PO4、1.25gl−1 MgSO4・7H2O
、20mgl−1 FeSO4・7H2O(微量栄養物含有)を含む)、及びIllma
n et al.,Enzyme and Microbial Technology
,Vol.27(2000),pp.631−635により報告されるような低窒素培地
(203mg/l(NH4)2HPO4、2.236g/L KCl、2.465g/L
 MgSO4、1.361g/L KH2PO4及び10mg/L FeSO4)が挙げ
られる。Chlorella vulgaris脂質の脂肪酸プロフィールの評価は、本
明細書に記載される標準的な脂質抽出及び分析方法により評価することができる。
【0693】
実施例23:Chlorella ellipsoideaの操作 20
 Chlorella ellipsoideaにおける本発明に従う組み換え遺伝子の
発現は、本明細書に考察されるとおりChenらにより教示される方法及びベクターを改
良することによって達成することができる。簡潔に言えば、Chen et al.,C
urrent Genetics,Vol.39:5(2001),pp.365−37
0は、プラスミドDNAによるChlorella ellipsoideaの安定な形
質転換を報告した。Chenは、エレクトロポレーションの形質転換方法を用いてChl
orella ellipsoideaにプラスミドpBinUΩNP−1を導入した。
pBinUΩNP−1のヌクレオチド配列は、NP−1タンパク質コード領域の上流でZ
ea maysユビキチン(ubi1)遺伝子プロモーターに動作可能に連結され、且つ
NP−1タンパク質コード領域の下流でノパリンシンターゼ(nos)遺伝子の3’UT 30
R/ターミネーターに動作可能に連結された、好中球ペプチド−1(NP−1)ウサギ遺
伝子産物をコードする配列を含んだ。プラスミドpBinUΩNP−1の配列は、G41
8抗生物質耐性カセットをさらに含んだ。このG418抗生物質耐性カセットは、アミノ
グリコシド3’−ホスホトランスフェラーゼ(aph 3’)遺伝子産物をコードする配
列を含んだ。aph 3’遺伝子産物は、抗生物質G418に対する耐性を付与する。形
質転換前、Chlorella ellipsoideaは、30ug/mlのG418
を含む培地で増殖することができなかった。pBinUΩNP−1プラスミドで形質転換
すると、Chlorella ellipsoideaの形質転換体が得られ、これは、
30ug/mlのG418を含む選択培地で増殖した。Chlorella ellip
soideaにおけるaph 3’遺伝子産物の発現により、30ug/mlのG418 40
の存在下で形質転換Chlorella ellipsoideaの増殖が可能となり、
それによりChlorella ellipsoideaに用いられる選択可能なマーカ
ーとしてのG418抗生物質耐性カセットの有用性が確立された。NP−1遺伝子産物の
検出可能な活性から、ubi1プロモーター及びnos 3’UTRが、Chlorel
la ellipsoideaにおける異種遺伝子発現を可能にするのに適していること
が示された。安定な形質転換体のゲノムDNAの評価は、サザン解析により行われた。形
質転換したChlorella ellipsoideaの選択及び維持は、15ug/
mlのG418(液体培養用)又は30ug/mlのG418(1.8%寒天を含む固体
培養用)を含有するKnop培地(0.2g/L K2HPO4、0.2g/L MgS
O4・7H2O、0.12g/L KCl、及び10mg/L FeCl3を含む、pH 50
(208) JP 2018-99138 A 2018.6.28

6.0∼8.0、0.1%酵母エキス及び0.2%グルコースを追加)で行われた。Kn
op培地以外の培地中でのChlorella ellipsoideaの増殖について
は、記載がなされている(Cho et al.,Fisheries Science
,Vol.73:5(2007),pp.1050−1056、Jarvis and 
Brown,Current Genetics,Vol.19(1991),pp.3
17−321及びKim et al.,Marine Biotechnology,
Vol.4(2002),pp.63−73を参照)。Chlorella ellip
soideaにおける異種遺伝子発現を可能にするのに適したさらなるプラスミド、プロ
モーター、3’UTR/ターミネーター、及び選択可能なマーカーについては、報告がな
されている(Jarvis and Brown及びKim et al.,Marin 10
e Biotechnology,Vol.4(2002),pp.63−73を参照)
。Chenは、プラスミドpBinUΩNP−1、ubi1プロモーター、及びAgro
bacterium tumefaciensノパリンシンターゼ遺伝子3’UTR/タ
ーミネーターが、Chlorella ellipsoideaにおける外来遺伝子発現
を可能にするのに適していることを報告した。さらに、Chenは、pBinUΩNP−
1でコードされるG418耐性カセットが、Chlorella ellipsoide
aにおける選択可能なマーカーとして用いるのに適していたことを報告した。
【0694】
 本発明の実施形態では、G418に対する耐性を付与する選択可能なマーカーとして用
いられるaph 3’遺伝子産物をコードするヌクレオチド配列を含むベクターpBin 20
UΩNP−1が、脂質生合成経路発現カセット配列をさらに含むように作製及び改変され
、それにより形質転換ベクターを作り出す。脂質生合成経路発現カセットは、表70から
選択される1つ以上の脂質生合成経路タンパク質をコードし、各タンパク質コード配列は
、表69A∼表69DのとおりのChlorella ellipsoideaの核遺伝
子に固有のコドンの偏りを反映するように、Chlorella ellipsoide
aにおける発現用にコドンが最適化される。表70の各脂質生合成経路タンパク質につい
て、コドンが最適化された遺伝子配列は、個々に、タンパク質コード配列の上流でZea
 mays ubi1プロモーターに動作可能に連結し、且つタンパク質コード配列の3
’領域で、又は下流で、Agrobacterium tumefaciensノパリン
シンターゼ遺伝子3’UTR/ターミネーターに動作可能に連結することができる。形質 30
転換構築物は、形質転換ベクターを標的化してゲノムに組み込むためのChlorell
a ellipsoideaゲノムに対する相同性領域をさらに含み得る。相同性領域は
、内在する脂質生合成経路遺伝子の1つ以上のゲノム部位を破壊するように選択され得る
。形質転換ベクターによるChlorella ellipsoideaの安定な形質転
換は、エレクトロポレーションを含む周知の形質転換技法又は他の公知の方法により達成
される。aph 3’遺伝子産物の活性をマーカーとして使用して、限定されないがG4
18を含むKnop寒天培地で、形質転換ベクターにより形質転換されたChlorel
la ellipsoideaを選択することができる。Chlorella elli
psoideaの脂質生成に適した成長培地としては、限定されないが、Knop培地並
びにJarvis and Brown及びKimらにより報告される培地が挙げられる 40
。Chlorella ellipsoidea脂質の脂肪酸プロフィールの評価は、本
明細書に記載される標準的な脂質抽出及び分析方法により評価することができる。
【0695】
実施例24:Chlorella kessleriの操作
 Chlorella kessleriにおける本発明に従う組み換え遺伝子の発現は
、本明細書に考察されるとおりEl−Sheekhらにより教示される方法及びベクター
を改良することによって達成することができる。簡潔に言えば、El−Sheekh e
t al.,Biologia Plantarium,Vol.42:2(1999)
,pp.209−216は、プラスミドDNAによるChlorella kessle
riの安定な形質転換を報告した。El−Sheekhは、微粒子ボンバードメントの形 50
(209) JP 2018-99138 A 2018.6.28

質転換方法を用いて、Chlorella kessleriにプラスミドpBI121
(GenBank寄託番号AF485783)を導入した。プラスミドpBI121は、
カナマイシン/ネオマイシン抗生物質耐性カセットを含んだ。このカナマイシン/ネオマ
イシン抗生物質耐性カセットは、Agrobacterium tumefaciens
ノパリンシンターゼ(nos)遺伝子プロモーター、カナマイシン及びG418に対する
耐性のためのネオマイシンホスホトランスフェラーゼII(nptII)遺伝子産物(G
enBank寄託番号AAL92039)をコードする配列、及びAgrobacter
ium tumefaciensノパリンシンターゼ(nos)遺伝子の3’UTR/タ
ーミネーターを含んだ。pBI121はさらに、CaMV 35Sプロモーターに動作可
能に連結され、且つnos遺伝子の3’UTR/ターミネーターに動作可能に連結された 10
、β−グルクロニダーゼ(GUS)レポーター遺伝子産物をコードする配列を含んだ。形
質転換前、Chlorella kessleriは15ug/Lのカナマイシンを含む
培地で増殖することができなかった。pBI121プラスミドで形質転換すると、Chl
orella kessleriの形質転換体が得られ、これは、15mg/Lのカナマ
イシンを含む選択培地で増殖した。Chlorella kessleriにおけるnp
tII遺伝子産物の発現により、15mg/Lのカナマイシンの存在下での増殖が可能と
なり、それによりChlorella kessleriに用いられる選択可能なマーカ
ーとしてのカナマイシン/ネオマイシン抗生物質耐性カセットの有用性が確立された。G
US遺伝子産物の検出可能な活性から、CaMV 35Sプロモーター及びnos 3’
UTRが、Chlorella kessleriにおける異種遺伝子発現を可能にする 20
のに適していることが示された。安定な形質転換体のゲノムDNAの評価は、サザン解析
により行われた。El−Sheekhにより報告されるとおり、形質転換したChlor
ella kessleriの選択及び維持は、YEG培地(1%酵母エキス、1%グル
コース)及び15mg/Lカナマイシンを含む半流動寒天プレートで実施された。El−
Sheekhはまた、YEG液体培地中でのChlorella kessleriの増
殖も報告した。脂質生成のためChlorella kessleriを培養するのに適
したさらなる培地については、Sato et al.,BBA Molecular 
and Cell Biology of Lipids,Vol.1633(2003
),pp.27−34に開示される。El−Sheekhは、プラスミドpBI121、
CaMVプロモーター、及びノパリンシンターゼ遺伝子3’UTR/ターミネーターが、 30
Chlorella kessleriにおける異種遺伝子発現を可能にするのに適して
いることを報告した。さらに、El−Sheekhは、pBI121でコードされるカナ
マイシン/ネオマイシン耐性カセットが、Chlorella kessleriにおけ
る選択可能なマーカーとして用いるのに適していたことを報告した。
【0696】
 本発明の実施形態では、選択可能なマーカーとして用いられるカナマイシン/ネオマイ
シン耐性遺伝子産物をコードするヌクレオチド配列を含むベクターpBI121が、脂質
生合成経路発現カセット配列をさらに含むように作製及び改変され、それにより形質転換
ベクターを作り出す。脂質生合成経路発現カセットは、表70から選択される1つ以上の
脂質生合成経路タンパク質をコードし、各タンパク質コード配列は、表69A∼表69D 40
のとおりのChlorella kessleriの核遺伝子に固有のコドンの偏りを反
映するように、Chlorella kessleriにおける発現用にコドンが最適化
される。表70の各脂質生合成経路タンパク質について、コドンが最適化された遺伝子配
列は、個々に、タンパク質コード配列の上流でCaMV 35Sプロモーターに動作可能
に連結し、且つタンパク質コード配列の3’領域で、又は下流で、Agrobacter
ium tumefaciensノパリンシンターゼ遺伝子3’UTR/ターミネーター
に動作可能に連結することができる。形質転換構築物は、形質転換ベクターを標的化して
ゲノムに組み込むためのChlorella kessleriゲノムに対する相同性領
域をさらに含み得る。相同性領域は、内在する脂質生合成経路遺伝子の1つ以上のゲノム
部位を破壊するように選択され得る。形質転換ベクターによるChlorella ke 50
(210) JP 2018-99138 A 2018.6.28

ssleriの安定な形質転換は、微粒子ボンバードメントを含む周知の形質転換技法又
は他の公知の方法により達成される。nptII遺伝子産物の活性をマーカーとして使用
して、限定されないがカナマイシン又はネオマイシンを含むYEG寒天培地で、形質転換
ベクターにより形質転換されたChlorella kessleriを選択することが
できる。Chlorella kessleriの脂質生成に適した成長培地としては、
限定されないが、YEG培地、及びSatoらにより報告される培地が挙げられる。Ch
lorella kessleri脂質の脂肪酸プロフィールの評価は、本明細書に記載
される標準的な脂質抽出及び分析方法により評価することができる。
【0697】
実施例25:Dunaliella tertiolectaの操作 10
 Dunaliella tertiolectaにおける本発明に従う組み換え遺伝子
の発現は、本明細書に考察されるとおりWalkerらにより教示される方法及びベクタ
ーを改良することによって達成することができる。簡潔に言えば、Walker et 
al.,Journal of Applied Phycology,Vol.17(
2005),pp.363−368は、プラスミドDNAによるDunaliella 
tertiolectaの安定した核形質転換を報告した。Walkerは、エレクトロ
ポレーションの形質転換方法を用いて、Dunaliella tertiolecta
にプラスミドpDbleFLAG1.2を導入した。pDbleFLAG1.2は、Du
naliella tertiolectaリブロース−1,5−二リン酸カルボキシラ
ーゼ/オキシゲナーゼ小サブユニット遺伝子(rbcS1、GenBank寄託番号AY 20
530155)のプロモーター及び3’UTRに動作可能に連結した、抗生物質フレオマ
イシンに対する耐性のための、Streptoalloteichus hindust
anusブレオマイシン結合タンパク質(ble)をコードする配列を含む、ブレオマイ
シン抗生物質耐性カセットをコードする配列を含んだ。形質転換前、Dunaliell
a tertiolectaは、1mg/Lのフレオマイシンを含む培地で増殖すること
ができなかった。pDbleFLAG1.2プラスミドで形質転換すると、Dunali
ella tertiolectaの形質転換体が得られ、これは、1mg/Lのフレオ
マイシンを含む選択培地で増殖した。Dunaliella tertiolectaに
おけるble遺伝子産物の発現により、1mg/Lのフレオマイシンの存在下での増殖が
可能となり、それによりDunaliella tertiolectaに用いられる選 30
択可能なマーカーとしてのブレオマイシン抗生物質耐性カセットの有用性が確立された。
安定な形質転換体のゲノムDNAの評価は、サザン解析により行われた。Walkerに
より報告されるとおり、形質転換したDunaliella tertiolectaの
選択及び維持は、4.5g/LのNaCl及び1mg/Lのフレオマイシン(pheom
ycin)をさらに含むDunaliella培地(DM、Provasoli et 
al.,Archiv fur Mikrobiologie,Vol.25(1957
),pp.392−428により記載されるようなもの)で実施された。脂質生成のため
Dunaliella tertiolectaを培養するのに適したさらなる培地につ
いては、Takagi et al.,Journal of Bioscience 
and Bioengineering,Vol.101:3(2006),pp.22 40
3−226及びMassart and Hanston,Proceedings V
enice 2010,Third International Symposium
 on Energy from Biomass and Wasteに考察される。
Walkerは、プラスミドpDbleFLAG1.2並びにDunaliella t
ertiolectaリブロース−1,5−二リン酸カルボキシラーゼ/オキシゲナーゼ
小サブユニット遺伝子のプロモーター及び3’UTRが、Dunaliella ter
tiolectaにおける異種発現を可能にするのに適していることを報告した。さらに
、Walkerは、pDbleFLAG1.2でコードされるブレオマイシン耐性カセッ
トが、Dunaliella tertiolectaにおける選択可能なマーカーとし
て用いるのに適していたことを報告した。 50
(211) JP 2018-99138 A 2018.6.28

【0698】
 本発明の実施形態では、選択可能なマーカーとして用いられるble遺伝子産物をコー
ドするヌクレオチド配列を含むベクターpDbleFLAG1.2が、脂質生合成経路発
現カセット配列をさらに含むように作製及び改変され、それにより形質転換ベクターを作
り出す。脂質生合成経路発現カセットは、表70から選択される1つ以上の脂質生合成経
路タンパク質をコードし、各タンパク質コード配列は、表69A∼表69DのとおりのD
unaliella tertiolectaの核遺伝子に固有のコドンの偏りを反映す
るように、Dunaliella tertiolectaにおける発現用にコドンが最
適化される。表70の各脂質生合成経路タンパク質について、コドンが最適化された遺伝
子配列は、個々に、タンパク質コード配列の上流でrbcS1プロモーターに動作可能に 10
連結し、且つタンパク質コード配列の3’領域で、又は下流で、rbcS1 3’UTR
/ターミネーターに動作可能に連結することができる。形質転換構築物は、形質転換ベク
ターを標的化してゲノムに組み込むための、Dunaliella tertiolec
taゲノムに対する相同性領域をさらに含み得る。相同性領域は、内在する脂質生合成経
路遺伝子の1つ以上のゲノム部位を破壊するように選択され得る。形質転換ベクターによ
るDunaliella tertiolectaの安定な形質転換は、エレクトロポレ
ーションを含む周知の形質転換技法又は他の公知の方法により達成される。ble遺伝子
産物の活性をマーカーとして使用して、限定されないがフレオマイシン(pheomyc
in)を含むDM培地で、形質転換ベクターにより形質転換されたDunaliella
 tertiolectaを選択することができる。Dunaliella terti 20
olectaの脂質生成に適した成長培地としては、限定されないが、DM培地並びにT
akagiら及びMassart and Hanstonにより記載される培地が挙げ
られる。Dunaliella tertiolecta脂質の脂肪酸プロフィールの評
価は、本明細書に記載される標準的な脂質抽出及び分析方法により評価することができる

【0699】
実施例26:Volvox carteriの操作
 Volvox carteriにおける本発明に従う組み換え遺伝子の発現は、本明細
書に考察されるとおりHallman and Rappelらにより教示される方法及
びベクターを改良することによって達成することができる。簡潔に言えば、Hallma 30
n and Rappel et al.,The Plant Journal,Vo
lume 17(1999),pp.99−109は、プラスミドDNAによるVolv
ox carteriの安定した核形質転換を報告した。Hallman and Ra
ppelは、微粒子ボンバードメントの形質転換方法を用いて、Volvox cart
eriにpzeoEプラスミドを導入した。pzeoEプラスミドは、Volvox c
arteri β−チューブリン遺伝子(GenBank寄託番号L24547)のプロ
モーター及び3’UTRに動作可能に連結した、抗生物質ゼオシンに対する耐性のための
、Streptoalloteichus hindustanusブレオマイシン結合
タンパク質(ble)をコードする配列を含む、ブレオマイシン抗生物質耐性カセットを
コードする配列を含んだ。形質転換前、Volvox carteriは、1.5ug/ 40
mlのゼオシンを含む培地で増殖することができなかった。pzeoEプラスミドで形質
転換すると、Volvox carteriの形質転換体が得られ、これは、20ug/
ml超のゼオシンを含む選択培地で増殖した。Volvox carteriにおけるb
le遺伝子産物の発現により、20ug/mlのゼオシンの存在下での増殖が可能となり
、それによりVolvox carteriに用いられる選択可能なマーカーとしてのブ
レオマイシン抗生物質耐性カセットの有用性が確立された。安定な形質転換体のゲノムD
NAの評価は、サザン解析により行われた。Hallman and Rappelによ
り報告されるとおり、形質転換したVolvox carteriの選択及び維持は、1
mg/L フレオマイシン(pheomycin)を含有するVolvox培地(VM、
Provasoli and Pintner,The Ecology of Alg 50
(212) JP 2018-99138 A 2018.6.28

ae,Special Publication No.2(1959),Tyron,
C.A.and Hartman,R.T.,eds.,Pittsburgh:Uni
veristy of Pittsburgh,pp.88−96により記載されるよう
なもの)で実施された。脂質生成のためVolvox carteriを培養するのに適
した培地については、StarrによってStarr R,C,.Dev Biol S
uppl.,Vol.4(1970),pp.59−100にも考察されている。Hal
lman and Rappelは、プラスミドpzeoE並びにVolvox car
teri β−チューブリン遺伝子のプロモーター及び3’UTRが、Volvox c
arteriにおける異種発現を可能にするのに適していることを報告した。さらに、H
allman and Rappelは、pzeoEでコードされるブレオマイシン耐性 10
カセットが、Volvox carteriにおける選択可能なマーカーとして用いるの
に適していたことを報告した。Volvox carteriにおける異種遺伝子発現を
可能にするのに適した、且つVolvox carteriにおける選択マーカーとして
用いるのに適した、さらなるプラスミド、プロモーター、3’UTR/ターミネーター、
及び選択可能なマーカーについては、報告がなされている(例えば、Hallamann
 and Sumper,Proceedings of the National 
Academy of Sciences,Vol.91(1994),pp 1156
2−11566及びHallman and Wodniok,Plant Cell 
Reports,Volume 25(2006),pp.582−581を参照)。
【0700】 20
 本発明の実施形態では、選択可能なマーカーとして用いられるble遺伝子産物をコー
ドするヌクレオチド配列を含むベクターpzeoEが、脂質生合成経路発現カセット配列
をさらに含むように作製及び改変され、それにより形質転換ベクターを作り出す。脂質生
合成経路発現カセットは、表70から選択される1つ以上の脂質生合成経路タンパク質を
コードし、各タンパク質コード配列は、表69A∼表69DのとおりのVolvox c
arteriの核遺伝子に固有のコドンの偏りを反映するように、Volvox car
teriにおける発現用にコドンが最適化される。表70の各脂質生合成経路タンパク質
について、コドンが最適化された遺伝子配列は、個々に、タンパク質コード配列の上流で
Volvox carteri β−チューブリンプロモーターに動作可能に連結し、且
つタンパク質コード配列の3’領域で、又は下流で、Volvox carteri β 30
−チューブリン3’UTR/ターミネーターに動作可能することができる。形質転換構築
物は、形質転換ベクターを標的化してゲノムに組み込むための、Volvox cart
eriゲノムに対する相同性領域をさらに含み得る。相同性領域は、内在する脂質生合成
経路遺伝子の1つ以上のゲノム部位を破壊するように選択され得る。当業者は、Volv
ox carteriゲノムの配列内にあるそのような相同性領域を同定することができ
る(Prochnik et al.,Science,Vol.329:5988(2
010),pp223−226による文献中に参照される)。形質転換ベクターによるV
olvox carteriの安定な形質転換は、微粒子ボンバードメントを含む周知の
形質転換技法又は他の公知の方法により達成される。ble遺伝子産物の活性をマーカー
として使用して、限定されないがゼオシンを含むVM培地で、形質転換ベクターにより形 40
質転換されたVolvox carteriを選択することができる。Volvox c
arteriの脂質生成に適した成長培地としては、限定されないが、VM培地及びSt
arrにより考察される培地が挙げられる。Volvox carteri脂質の脂肪酸
プロフィールの評価は、本明細書に記載される標準的な脂質抽出及び分析方法により評価
することができる。
【0701】
実施例27:Haematococcus pluvialisの操作
 Haematococcus pluvialisにおける本発明に従う組み換え遺伝
子の発現は、本明細書に考察されるとおりSteinbrenner and Sand
mannらにより教示される方法及びベクターを改良することによって達成することがで 50
(213) JP 2018-99138 A 2018.6.28

きる。簡潔に言えば、Steinbrenner and Sandmann et a
l.,Applied and Environmental Microbiolog
y,Vol.72:12(2006),pp.7477−7484は、プラスミドDNA
によるHaematococcus pluvialisの安定した核形質転換を報告し
た。Steinbrennerは、微粒子ボンバードメントの形質転換方法を用いて、H
aematococcus pluvialisにプラスミドpPlat−pds−L5
04Rを導入した。プラスミドpPlat−pds−L504Rは、Haematoco
ccus pluvialisフィトエンデサチュラーゼ遺伝子(Pds、GenBan
k寄託番号AY781170)のプロモーター、タンパク質コード配列、及び3’UTR
を含むノルフルラゾン耐性カセットを含み、ここでPdsのタンパク質コード配列は、除 10
草剤ノルフルラゾンに対する耐性を付与する遺伝子産物(Pds−L504R)をコード
するように、504位で改変された(それによりロイシンがアルギニンに変更された)。
pPlat−pds−L504Rによる形質転換前、Haematococcus pl
uvialisは、5uMのノルフルラゾンを含む培地で増殖することができなかった。
pPlat−pds−L504Rプラスミドで形質転換すると、Haematococc
us pluvialisの形質転換体が得られ、これは、5uMのノルフルラゾンを含
む選択培地で増殖した。Haematococcus pluvialisにおけるPd
s−L504R遺伝子産物の発現により、5uMのノルフルラゾンの存在下での増殖が可
能となり、それによりHaematococcus pluvialisに用いられる選
択可能なマーカーとしてのノルフルラゾン除草剤耐性カセットの有用性が確立された。安 20
定な形質転換体のゲノムDNAの評価は、サザン解析により行われた。Steinbre
nnerにより報告されるとおり、形質転換したHaematococcus pluv
ialisの選択及び維持は、2.42g/L Tris−アセテート、及び5mMノル
フルラゾンを追加したOHA培地(OHM(0.41g/L KNO3、0.03g/L
 Na2HPO4、0.246g/L MgSO4・7H2O、0.11g/L CaC
l2・2H2O、2.62mg/L Fe(III)クエン酸塩×H2O、0.011m
g/L CoCl2・6H2O、0.012mg/L CuSO4・5H2O、0.07
5mg/L Cr2O3、0.98mg/L MnCl2・4H2O、0.12mg/L
 Na2MoO4×2H2O、0.005mg/L SeO2及び25mg/L ビオチ
ン、17.5mg/L チアミン、及び15mg/L ビタミンB12)を含む寒天プレ 30
ートで実施された。液体培地中でのHaematococcus pluvialisの
増殖は、Steinbrenner and Sandmannにより基本培地(Kob
ayashi et al.,Applied and Environmental 
Microbiology,Vol.59(1993),pp.867−873により記
載されるような基本培地)を使用して行われた。Steinbrenner and S
andmannは、pPlat−pds−L504Rプラスミド並びにHaematoc
occus pluvialisフィトエンデサチュラーゼ遺伝子のプロモーター及び3
’UTRが、Haematococcus pluvialisにおける異種発現を可能
にするのに適していることを報告した。さらに、Steinbrenner and S
andmannは、pPlat−pds−L504Rでコードされるノルフルラゾン耐性 40
カセットが、Haematococcus pluvialisにおける選択可能なマー
カーとして用いるのに適していたことを報告した。Haematococcus plu
vialisにおける異種遺伝子発現を可能にするのに適したさらなるプラスミド、プロ
モーター、3’UTR/ターミネーター、及び選択可能なマーカーについては、報告がな
されている(Kathiresan et al.,Journal of Phyco
logy,Vol.45(2009),pp 642−649を参照)。
【0702】
 本発明の実施形態では、選択可能なマーカーとして用いられるPds−L504R遺伝
子産物をコードするヌクレオチド配列を含むベクターpPlat−pds−L504Rが
、脂質生合成経路発現カセット配列をさらに含むように作製及び改変され、それにより形 50
(214) JP 2018-99138 A 2018.6.28

質転換ベクターを作り出す。脂質生合成経路発現カセットは、表70から選択される1つ
以上の脂質生合成経路タンパク質をコードし、各タンパク質コード配列は、表69A∼表
69DのとおりのHaematococcus pluvialisの核遺伝子に固有の
コドンの偏りを反映するように、Haematococcus pluvialisにお
ける発現用にコドンが最適化される。表70の各脂質生合成経路タンパク質について、コ
ドンが最適化された遺伝子配列は、個々に、タンパク質コード配列の上流でHaemat
ococcus pluvialis pds遺伝子プロモーターに動作可能に連結し、
且つタンパク質コード配列の3’領域で、又は下流で、Haematococcus p
luvialis pds遺伝子3’UTR/ターミネーターに動作可能に連結すること
ができる。形質転換構築物は、形質転換ベクターを標的化してゲノムに組み込むための、 10
Haematococcus pluvialisゲノムに対する相同性領域をさらに含
み得る。相同性領域は、内在する脂質生合成経路遺伝子の1つ以上のゲノム部位を破壊す
るように選択され得る。形質転換ベクターによるHaematococcus pluv
ialisの安定な形質転換は、微粒子ボンバードメントを含む周知の形質転換技法又は
他の公知の方法により達成される。Pds−L504R遺伝子産物の活性をマーカーとし
て使用して、限定されないがノルフルラゾンを含むOHA培地で、形質転換ベクターによ
り形質転換されたHaematococcus pluvialisを選択することがで
きる。Haematococcus pluvialisの脂質生成に適した成長培地と
しては、限定されないが、基本培地、並びにKobayashi et al.、Kat
hiresan et al、及びGong and Chen,Journal of 20
 Applied Phycology,Vol.9:5(1997),pp.437−
444により記載される培地が挙げられる。Haematococcus pluvia
lis脂質の脂肪酸プロフィールの評価は、本明細書に記載される標準的な脂質抽出及び
分析方法により評価することができる。
【0703】
実施例28:Closterium peracerosum−strigosum−l
ittorale複合体の操作
 Closterium peracerosum−strigosum−littor
ale複合体における本発明に従う組み換え遺伝子の発現は、本明細書に考察されるとお
りAbeらにより教示される方法及びベクターを改良することによって達成することがで 30
きる。簡潔に言えば、Abe et al.,Plant Cell Physiolo
gy,Vol.52:9(2011),pp.1676−1685は、プラスミドDNA
によるClosterium peracerosum−strigosum−litt
orale複合体の安定した核形質転換を報告した。Abeは、微粒子ボンバードメント
の形質転換方法を用いて、Closterium peracerosum−strig
osum−littorale複合体にプラスミドpSA106を導入した。プラスミド
pSA106は、Closterium peracerosum−strigosum
−littorale複合体クロロフィルa/b結合タンパク質遺伝子(CAB、Gen
Bank寄託番号AB363403)のプロモーター及び3’UTRに動作可能に連結し
たStreptoalloteichus hindustanusブレオマイシン結合 40
タンパク質遺伝子(ble、GenBank寄託番号CAA37050)をコードする配
列を含む、ブレオマイシン耐性カセットを含んだ。pSA106による形質転換前、Cl
osterium peracerosum−strigosum−littorale
複合体は、3ug/mlのフレオマイシンを含む培地で増殖することができなかった。p
SA106で形質転換すると、Closterium peracerosum−str
igosum−littorale複合体の形質転換体が得られ、これは、3ug/ml
のフレオマイシンを含む選択培地で増殖した。Closterium peracero
sum−strigosum−littorale複合体におけるble遺伝子産物の発
現により、3ug/mlのフレオマイシンの存在下での増殖が可能となり、それによりC
losterium peracerosum−strigosum−littoral 50
(215) JP 2018-99138 A 2018.6.28

e複合体に用いられる選択可能なマーカーとしてのブレオマイシン抗生物質耐性カセット
の有用性が確立された。安定な形質転換体のゲノムDNAの評価は、サザン解析により行
われた。Abeにより報告されるとおり、形質転換したClosterium pera
cerosum−strigosum−littorale複合体の選択及び維持は、初
めにC培地(0.1g/L KNO3、0.015g/L Ca(NO3)2・4H2O
、0.05g/L グリセロリン酸Na2、0.04g/L MgSO4・7H2O、0
.5g/L Tris(ヒドロキシルメチル)アミノメタン、微量ミネラル、ビオチン、
ビタミンB1及びB12)を含む上層寒天で実施された後、続いてフレオマイシンを追加
したC培地を含む寒天プレートに単離された。Abeにより報告されるとおり、液体培地
中でのClosterium peracerosum−strigosum−litt 10
orale複合体の増殖は、C培地で行われた。Closterium peracer
osum−strigosum−littorale複合体の増殖に適したさらなる液体
培地については、Sekimoto et al.,DNA Research,10:
4(2003),pp.147−153により考察されている。Abeは、pSA106
プラスミド並びにClosterium peracerosum−strigosum
−littorale複合体CAB遺伝子のプロモーター及び3’UTRが、Clost
erium peracerosum−strigosum−littorale複合体
における異種遺伝子発現を可能にするのに適していることを報告した。さらにAbeは、
pSA106でコードされるブレオマイシン耐性カセットが、Closterium p
eracerosum−strigosum−littorale複合体における選択可 20
能なマーカーとして用いるのに適していたことを報告した。Closterium pe
racerosum−strigosum−littorale複合体における異種遺伝
子発現を可能にするのに適したさらなるプラスミド、プロモーター、3’UTR/ターミ
ネーター、及び選択可能なマーカーについては、報告がなされている(Abe et a
l.,Plant Cell Physiology,Vol.49(2008),pp
.625−632を参照)。
【0704】
 本発明の実施形態では、選択可能なマーカーとして用いられるble遺伝子産物をコー
ドするヌクレオチド配列を含むベクターpSA106が、脂質生合成経路発現カセット配
列をさらに含むように作製及び改変され、それにより形質転換ベクターを作り出す。脂質 30
生合成経路発現カセットは、表70から選択される1つ以上の脂質生合成経路タンパク質
をコードし、各タンパク質コード配列は、表69A∼表69DのとおりのCloster
ium peracerosum−strigosum−littorale複合体の核
遺伝子に固有のコドンの偏りを反映するように、Closterium peracer
osum−strigosum−littorale複合体における発現用にコドンが最
適化される。表70の各脂質生合成経路タンパク質について、コドンが最適化された遺伝
子配列は、個々に、タンパク質コード配列の上流でClosterium perace
rosum−strigosum−littorale複合体CAB遺伝子プロモーター
に動作可能に連結し、且つタンパク質コード配列の3’領域で、又は下流で、Clost
erium peracerosum−strigosum−littorale複合体 40
CAB遺伝子3’UTR/ターミネーターに動作可能に連結することができる。形質転換
構築物は、形質転換ベクターを標的化してゲノムに組み込むための、Closteriu
m peracerosum−strigosum−littorale複合体ゲノムに
対する相同性領域をさらに含み得る。相同性領域は、内在する脂質生合成経路遺伝子の1
つ以上のゲノム部位を破壊するように選択され得る。形質転換ベクターによるClost
erium peracerosum−strigosum−littorale複合体
の安定な形質転換は、微粒子ボンバードメントを含む周知の形質転換技法又は他の公知の
方法により達成される。ble遺伝子産物の活性をマーカーとして使用して、限定されな
いがフレオマイシンを含むC培地で、形質転換ベクターにより形質転換されたClost
erium peracerosum−strigosum−littorale複合体 50
(216) JP 2018-99138 A 2018.6.28

を選択することができる。Closterium peracerosum−strig
osum−littorale複合体の脂質生成に適した成長培地としては、限定されな
いが、C培地並びにAbeら及びSekimotoらにより報告される培地が挙げられる
。Closterium peracerosum−strigosum−littor
ale複合体の脂質の脂肪酸プロフィールの評価は、本明細書に記載される標準的な脂質
抽出及び分析方法により評価することができる。
【0705】
実施例29:Dunaliella viridisの操作
 Dunaliella viridisにおける本発明に従う組み換え遺伝子の発現は
、本明細書に考察されるとおりSunらにより教示される方法及びベクターを改良するこ 10
とによって達成することができる。簡潔に言えば、Sun et al.,Gene,V
ol.377(2006),pp.140−149は、プラスミドDNAによるDuna
liella viridisの安定な形質転換を報告した。Sunらは、エレクトロポ
レーション(electoporation)の形質転換方法を用いて、突然変異体Du
naliella viridisに、完全なDunaliella viridis硝
酸還元酵素遺伝子をコードするプラスミドpDVNRを導入した(Dunaliella
 viridis NR突然変異体)。このNR突然変異体は、窒素供給源として硝酸塩
を使用しない限り、成長することができない。硝酸還元酵素は硝酸塩の亜硝酸塩への変換
を触媒する。形質転換前、Dunaliella viridis NR突然変異体は、
硝酸塩(NO3−)を唯一の窒素供給源として含む培地で増殖することができなかった。 20
NR突然変異体Dunaliella viridisにおけるDunaliella 
viridis NR遺伝子産物の発現を選択可能なマーカーとして使用して、硝酸塩代
謝欠損がレスキューされた。pDVNRプラスミドで形質転換すると、Dunaliel
la viridis NR遺伝子産物を安定に発現するNR突然変異体Dunalie
lla viridisが得られ、これは、硝酸塩を唯一の炭素源として含む寒天プレー
トで成長することができた。安定な形質転換体のDNAの評価は、サザン解析により行わ
れた。形質転換したDunaliella viridis(NR突然変異体)の選択及
び維持は、5mMのKNO3を含む寒天プレートで行われた。Sunらはまた、液体培地
におけるDunaliella viridis及びDunaliella virid
is NR突然変異体の増殖も報告した。Dunaliella viridisの増殖 30
に適したさらなる培地は、Gordillo et al.,Journal of A
pplied Phycology,Vol.10:2(1998),pp.135−1
44及びMoulton and Burford,Hydrobiologia,Vo
ls.204−205:1(1990),pp.401−408により報告される。Su
nらは、プラスミドpDVNR並びにDunaliella viridis硝酸還元酵
素遺伝子のプロモーター及び3’UTR/ターミネーターが、Dunaliella v
iridis NR突然変異体における異種発現を可能にするのに適していたことを報告
した。Sunらはまた、Dunaliella viridis硝酸還元酵素遺伝子産物
の発現が、Dunaliella viridis NR突然変異体における選択可能な
マーカーとして用いるのに適していたことも報告した。 40
【0706】
 本発明の実施形態では、選択可能なマーカーとして用いられるDunaliella 
viridis硝酸還元酵素(DvNR)遺伝子産物をコードするヌクレオチド配列を含
むベクターpDVNRが、脂質生合成経路発現カセット配列をさらに含むように作製及び
改変され、それにより形質転換ベクターを作り出す。脂質生合成経路発現カセットは、表
70から選択される1つ以上の脂質生合成経路タンパク質をコードし、各タンパク質コー
ド配列は、表69A∼表69DのとおりのDunaliella viridisの核遺
伝子に固有のコドンの偏りを反映するように、Dunaliella viridisに
おける発現用にコドンが最適化される。表70の各脂質生合成経路タンパク質について、
コドンが最適化された遺伝子配列は、個々に、タンパク質コード配列の上流でDvNRプ 50
(217) JP 2018-99138 A 2018.6.28

ロモーターに動作可能に連結し、且つタンパク質コード配列の3’領域で、又は下流で、
DvNR 3’UTR/ターミネーターに動作可能することができる。形質転換構築物は
、形質転換ベクターを標的化してゲノムに組み込むための、Dunaliella vi
ridisゲノムに対する相同性領域をさらに含み得る。相同性領域は、内在する脂質生
合成経路遺伝子の1つ以上のゲノム部位を破壊するように選択され得る。形質転換ベクタ
ーによるDunaliella viridis NR突然変異体の安定な形質転換は、
エレクトロポレーション(electorporation)を含む周知の形質転換技法
又は他の公知の方法により達成される。DvNR遺伝子産物の活性を選択可能なマーカー
として使用して、Dunaliella viridis NR突然変異株の窒素同化(
assimiliation)欠損をレスキューし、形質転換ベクターを安定に発現する 10
Dunaliella viridis NR突然変異体を選択することができる。Du
naliella viridisの脂質生成に適した成長培地としては、限定されない
が、Sun et al.、Moulton and Burford及びGordil
loらにより考察されるものが挙げられる。Dunaliella viridis脂質
の脂肪酸プロフィールの評価は、本明細書に記載される標準的な脂質抽出及び分析方法に
より評価することができる。
【0707】
実施例30:Dunaliella salinaの操作
 Dunaliella salinaにおける本発明に従う組み換え遺伝子の発現は、
本明細書に考察されるとおりGengらにより教示される方法及びベクターを改良するこ 20
とによって達成することができる。簡潔に言えば、Geng et al.,Journ
al of Applied Phycology,Vol.15(2003),pp.
451−456は、プラスミドDNAによるDunaliella salinaの安定
な形質転換を報告した。Gengらは、エレクトロポレーションの形質転換方法を用いて
、Dunaliella salinaにpUΩHBsAg−CATプラスミドを導入し
た。pUΩHBsAg−CATは、HBsAGタンパク質コード領域の上流でZea m
ays ubi1プロモーターに動作可能に連結し、且つHBsAGタンパク質コード領
域の下流でAgrobacterium tumefaciensノパリンシンターゼ遺
伝子(nos)の3’UTR/ターミネーターに動作可能に連結した、B型肝炎表面抗原
をコードする配列を含むB型肝炎表面抗原(HBsAG)発現カセットを含む。pUΩH 30
BsAg−CATは、シミアンウイルス40プロモーター及びエンハンサーに動作可能に
連結した、抗生物質クロラムフェニコールに対する耐性を付与する、クロラムフェニコー
ルアセチルトランスフェラーゼ(CAT)遺伝子産物をコードする配列を含む、クロラム
フェニコール耐性カセットをさらに含んだ。pUΩHBsAg−CATによる形質転換前
、Dunaliella salinaは、60mg/L クロラムフェニコールを含む
培地で増殖することができなかった。pUΩHBsAg−CATプラスミドで形質転換す
ると、Dunaliella salinaの形質転換体が得られ、これは、60mg/
L クロラムフェニコールを含む選択培地で増殖した。Dunaliella sali
naにおけるCAT遺伝子産物の発現により、60mg/L クロラムフェニコールの存
在下での増殖が可能となり、それによりDunaliella salinaに用いられ 40
る選択可能なマーカーとしてのクロラムフェニコール耐性カセットの有用性が確立された
。HBsAg遺伝子産物の検出可能な活性から、ubi1プロモーター及びnos 3’
UTR/ターミネーターが、Dunaliella salinaにおける遺伝子発現を
可能にするのに適していることが示された。安定な形質転換体のゲノムDNAの評価は、
サザン解析により行われた。Gengらは、形質転換したDunaliella sal
inaの選択及び維持が、60mg/L クロラムフェニコールを含有するJohnso
n培地(J1、Borowitzka and Borowitzka(eds),Mi
cro−algal Biotechnology.Cambridge Univer
sity Press,Cambridge,pp.460−461により記載される)
を含む寒天プレ−トで行われたことを報告した。Dunaliella salinaの 50
(218) JP 2018-99138 A 2018.6.28

液体増殖は、Gengらにより60mg/L クロラムフェニコールを含有するJ1培地
において行われた。J1培地以外の培地中でのDunaliella salinaの増
殖については、考察がなされている(Feng et al.,Mol.Bio.Rep
orts,Vol.36(2009),pp.1433−1439及びBorowitz
ka et al.,Hydrobiologia,Vols.116−117:1(1
984),pp.115−121を参照)。Dunaliella salinaにおけ
る異種遺伝子発現を可能にするのに適したさらなるプラスミド、プロモーター、3’UT
R/ターミネーター、及び選択可能なマーカーについては、Fengらにより報告がなさ
れている。Gengらは、プラスミドpUΩHBsAg−CAT、ubi1プロモーター
、及びAgrobacterium tumefaciensノパリンシンターゼ遺伝子 10
3’UTR/ターミネーターが、Dunaliella salinaにおける外来遺伝
子発現を可能にするのに適していることを報告した。さらに、Gengらは、pUΩHB
sAg−CATでコードされるCAT耐性カセットが、Dunaliella sali
naにおける選択可能なマーカーとして用いるのに適していたことを報告した。
【0708】
 本発明の実施形態では、選択可能なマーカーとして用いられるCAT遺伝子産物をコー
ドするヌクレオチド配列を含むベクターpUΩHBsAg−CATが、脂質生合成経路発
現カセット配列をさらに含むように作製及び改変され、それにより形質転換ベクターを作
り出す。脂質生合成経路発現カセットは、表70から選択される1つ以上の脂質生合成経
路タンパク質をコードし、各タンパク質コード配列は、表69A∼表69DのとおりのD 20
unaliella salinaの核遺伝子に固有のコドンの偏りを反映するように、
Dunaliella salinaにおける発現用にコドンが最適化される。表70の
各脂質生合成経路タンパク質について、コドンが最適化された遺伝子配列は、個々に、タ
ンパク質コード配列の上流でubi1プロモーターに動作可能に連結し、且つタンパク質
コード配列の3’領域で、又は下流で、Agrobacterium tumefaci
ensノパリンシンターゼ遺伝子3’UTR/ターミネーターに動作可能に連結すること
ができる。形質転換構築物は、形質転換ベクターを標的化してゲノムに組み込むための、
Dunaliella salinaゲノムに対する相同性領域をさらに含み得る。相同
性領域は、内在する脂質生合成経路遺伝子の1つ以上のゲノム部位を破壊するように選択
され得る。形質転換ベクターによるDunaliella salinaの安定な形質転 30
換は、エレクトロポレーションを含む周知の形質転換技法又は他の公知の方法により達成
される。CAT遺伝子産物の活性を選択可能なマーカーとして使用して、限定されないが
クロラムフェニコール(chrloramphenicol)を含むJ1培地で、形質転
換ベクターにより形質転換されたDunaliella salinaを選択することが
できる。Dunaliella salinaの脂質生成に適した成長培地としては、限
定されないが、J1培地並びにFengら及びBorowitzkaらにより記載される
培地が挙げられる。Dunaliella salina脂質の脂肪酸プロフィールの評
価は、本明細書に記載される標準的な脂質抽出及び分析方法により評価することができる

【0709】 40
実施例31:Gonium pectoralの操作
 Gonium pectoralにおける本発明に従う組み換え遺伝子の発現は、本明
細書に考察されるとおりLerche and Hallmanらにより教示される方法
及びベクターを改良することによって達成することができる。簡潔に言えば、Lerch
e and Hallman et al.,BMC Biotechnology,V
olume 9:64,2009は、プラスミドDNAによるGonium pecto
raleの安定した核形質転換を報告した。Lercheは、微粒子ボンバードメントの
形質転換方法を用いて、Gonium pectoraleにプラスミドpPmr3を導
入した。プラスミドpPmr3は、aphVIIIタンパク質コード領域の上流でVol
vox carteri hsp70A−rbcS3ハイブリッドプロモーターに動作可 50
(219) JP 2018-99138 A 2018.6.28

能に連結し、且つaphVIIIタンパク質コード領域の下流でVolvox cart
eri rbcS3遺伝子の3’UTR/ターミネーターに動作可能に連結した、抗生物
質パロモマイシンに対する耐性のためのStreptomyces rimosusのア
ミノグリコシド3’−ホスホトランスフェラーゼ(aphVIII)遺伝子産物(Gen
Bank寄託番号AAB03856)をコードする配列を含む、パロモマイシン耐性カセ
ットを含んだ。pPmr3による形質転換前、Gonium pectoraleは、0
.06ug/mlのパロモマイシンを含む培地で増殖することができなかった。pPmr
3で形質転換すると、Gonium pectoraleの形質転換体が得られ、これは
、0.75ug/mlを超えるパロモマイシンを含む選択培地で増殖した。Gonium
 pectoraleにおけるaphVIII遺伝子産物の発現により、0.75ug/ 10
mlを超えるパロモマイシンの存在下での増殖が可能となり、それによりGonium 
pectoraleに用いられる選択可能なマーカーとしてのパロモマイシン抗生物質耐
性カセットの有用性が確立された。安定な形質転換体のゲノムDNAの評価は、サザン解
析により行われた。Lerche and Hallmanは、形質転換したGoniu
m pectoraleの選択及び維持が、1.0ug/mlのパロモマイシンを含有す
る液体Jaworski培地(20mg/L Ca(NO3)2・4H2O、12.4m
g/L KH2PO4、50mg/L MgSO4・7H2O、15.9mg/L Na
HCO3、2.25mg/L EDTA−FeNa、2.25mg/L EDTA Na
2、2.48g/L H3BO3、1.39g/L MnCl2.4H2O、1mg/L
(NH4)6MO7O24.4H2O、0.04mg/L ビタミンB12、0.04m 20
g/L チアミンHCl、0.04mg/L ビオチン、80mg/L NaNO3、3
6mg/L Na4HPO4.12H2O)で行われたことを報告した。Gonium 
pectoraleにおける異種遺伝子発現を可能にするのに適したさらなるプラスミド
、プロモーター、3’UTR/ターミネーター、及び選択可能なマーカーについては、L
erche and Hallmanによりさらに考察される。Lerche and 
Hallmanは、プラスミドpPmr3、Volvox carteri hsp70
A−rbcS3ハイブリッドプロモーター、及びVolvox carteri rbc
S3遺伝子の3’UTR/ターミネーターが、Gonium pectoraleにおけ
る外来遺伝子発現を可能にするのに適していることを報告した。さらに、Lerche 
and Hallmanは、pPmr3でコードされるパロモマイシン耐性カセットが、 30
Gonium pectoraleにおける選択可能なマーカーとして用いるのに適して
いたことを報告した。
【0710】
 本発明の実施形態では、選択可能なマーカーとして用いられるaphVIII遺伝子産
物をコードするヌクレオチド配列を含むベクターpPmr3が、脂質生合成経路発現カセ
ット配列をさらに含むように作製及び改変され、それにより形質転換ベクターを作り出す
。脂質生合成経路発現カセットは、表70から選択される1つ以上の脂質生合成経路タン
パク質をコードし、各タンパク質コード配列は、表69A∼表69DのとおりのGoni
um pectoraleの核遺伝子に固有のコドンの偏りを反映するように、Goni
um pectoraleにおける発現用にコドンが最適化される。表70の各脂質生合 40
成経路タンパク質について、コドンが最適化された遺伝子配列は、個々に、タンパク質コ
ード配列の上流でVolvox carteri hsp70A−rbcS3ハイブリッ
ドプロモーターに動作可能に連結し、且つタンパク質コード配列の3’領域で、又は下流
で、Volvox carteri rbcS3遺伝子3’UTR/ターミネーターに動
作可能に連結することができる。形質転換構築物は、形質転換ベクターを標的化してゲノ
ムに組み込むための、Gonium pectoraleゲノムに対する相同性領域をさ
らに含み得る。相同性領域は、内在する脂質生合成経路遺伝子の1つ以上のゲノム部位を
破壊するように選択され得る。形質転換ベクターによるGonium pectoral
eの安定な形質転換は、微粒子ボンバードメントを含む周知の形質転換技法又は他の公知
の方法により達成することができる。aphVIII遺伝子産物の活性を選択可能なマー 50
(220) JP 2018-99138 A 2018.6.28

カーとして使用して、限定されないがパロモマイシンを含むJaworski培地で、形
質転換ベクターにより形質転換されたGonium pectoraleを選択すること
ができる。Gonium pectoraleの脂質生成に適した成長培地としては、J
awaorski培地及びStein,American Journal of Bo
tany,Vol.45:9(1958),pp.664−672により報告される培地
が挙げられる。Gonium pectorale脂質の脂肪酸プロフィールの評価は、
本明細書に記載される標準的な脂質抽出及び分析方法により評価することができる。
【0711】
実施例32:Phaeodactylum tricornutumの操作
 Phaeodactylum tricornutumにおける本発明に従う組み換え 10
遺伝子の発現は、本明細書に考察されるとおりAptらにより教示される方法及びベクタ
ーを改良することによって達成することができる。簡潔に言えば、Apt et al.
,Molecular and General Genetics,Vol.252(
1996),pp.572−579は、ベクターDNAによるPhaeodactylu
m tricornutumの安定した核形質転換を報告した。Aptは、微粒子ボンバ
ードメントの形質転換技法を用いて、Phaeodactylum tricornut
umにプラスミドpfcpAを導入した。プラスミドpfcpAは、bleタンパク質コ
ード領域の上流でPhaeodactylum tricornutumフコキサンチン
クロロフィルa結合タンパク質遺伝子(fcpA)のプロモーターに動作可能に連結し、
且つbleタンパク質コード領域の3’領域で、又は下流で、Phaeodactylu 20
m tricornutum fcpA遺伝子の3’UTR/ターミネーターに動作可能
に連結した、抗生物質フレオマイシン及びゼオシンに対する耐性のための、Strept
oalloteichus hindustanusブレオマイシン結合タンパク質(b
le)をコードする配列を含む、ブレオマイシン耐性カセットを含んだ。pfcpAによ
る形質転換前、Phaeodactylum tricornutumは、50ug/m
lのゼオシンを含む培地で増殖することができなかった。pfcpAで形質転換すると、
Phaeodactylum tricornutumの形質転換体が得られ、これは、
50ug/mlのゼオシンを含む選択培地で増殖した。Phaeodactylum t
ricornutum ble遺伝子産物の発現により、50ug/mlのゼオシンの存
在下での増殖が可能となり、それによりPhaeodactylum tricornu 30
tumに用いられる選択可能なマーカーとしてのブレオマイシン抗生物質耐性カセットの
有用性が確立された。安定な形質転換体のゲノムDNAの評価は、サザン解析により行わ
れた。Aptは、形質転換したPhaeodactylum tricornutumの
選択及び維持が、50mg/Lのゼオシンを含有するLDM培地(Starr and 
Zeikus,Journal of Phycology,Vol.29,Suppl
ement,(1993)により報告されるようなもの)を含む寒天プレートで行われた
ことを報告した。Aptは、50mg/Lのゼオシンを含有するLDM培地におけるPh
aeodactylum tricornutum形質転換体の液体増殖を報告した。L
DM培地以外の培地中でのPhaeodactylum tricornutumの増殖
については、考察がなされている(Zaslavskaia et al.,Scien 40
ce,Vol.292(2001),pp.2073−2075、及びRadokovi
ts et al.,Metabolic Engineering,Vol.13(2
011),pp.89−95による)。Phaeodactylum tricornu
tumにおける異種遺伝子発現を可能にするのに適したさらなるプラスミド、プロモータ
ー、3’UTR/ターミネーター、及び選択可能なマーカーについては、Aptら、Za
slavskaiaら、及びRadokovitsらによる同じ報告中に報告がなされて
いる。Aptは、プラスミドpfcpA、並びにPhaeodactylum tric
ornutum fcpAプロモーター及び3’UTR/ターミネーターが、Phaeo
dactylum tricornutumにおける外来遺伝子発現を可能にするのに適
していることを報告した。さらに、Aptは、pfcpAでコードされるブレオマイシン 50
(221) JP 2018-99138 A 2018.6.28

耐性カセットが、Phaeodactylum tricornutumにおける選択可
能なマーカーとして用いるのに適していたことを報告した。
【0712】
 本発明の実施形態では、選択可能なマーカーとして用いられるble遺伝子産物をコー
ドするヌクレオチド配列を含むベクターpfcpAが、脂質生合成経路発現カセット配列
をさらに含むように作製及び改変され、それにより形質転換ベクターを作り出す。脂質生
合成経路発現カセットは、表70から選択される1つ以上の脂質生合成経路タンパク質を
コードし、各タンパク質コード配列は、表69A∼表69DのとおりのPhaeodac
tylum tricornutumの核遺伝子に固有のコドンの偏りを反映するように
、Phaeodactylum tricornutumにおける発現用にコドンが最適 10
化される。表70の各脂質生合成経路タンパク質について、コドンが最適化された遺伝子
配列は、個々に、タンパク質コード配列の上流でPhaeodactylum tric
ornutum fcpA遺伝子プロモーターに動作可能に連結し、且つタンパク質コー
ド配列の3’領域で、又は下流で、Phaeodactylum tricornutu
m fcpA遺伝子3’UTR/ターミネーターに動作可能に連結することができる。形
質転換構築物は、形質転換ベクターを標的化してゲノムに組み込むための、Phaeod
actylum tricornutumゲノムに対する相同性領域をさらに含み得る。
相同性領域は、内在する脂質生合成経路遺伝子の1つ以上のゲノム部位を破壊するように
選択され得る。当業者は、Phaeodactylum tricornutumゲノム
の配列内にあるそのような相同性領域を同定することができる(Bowler et a 20
l.,Nature,Vol.456(2008),pp.239−244による文献中
に参照される)。形質転換ベクターによるPhaeodactylum tricorn
utumの安定な形質転換は、微粒子ボンバードメントを含む周知の形質転換技法又は他
の公知の方法により達成される。ble遺伝子産物の活性をマーカーとして使用して、限
定されないがパロモマイシンを含むLDM培地で、形質転換ベクターにより形質転換され
たPhaeodactylum tricornutumを選択することができる。Ph
aeodactylum tricornutumの脂質生成に適した成長培地としては
、限定されないが、Radokovitsらにより報告されるようなf/2培地が挙げら
れる。Phaeodactylum tricornutum脂質の脂肪酸プロフィール
の評価は、本明細書に記載される標準的な脂質抽出及び分析方法により評価することがで 30
きる。
【0713】
実施例33:Chaetoceros sp.の操作
 Chaetoceros sp.における本発明に従う組み換え遺伝子の発現は、本明
細書に考察されるとおりYamaguchiらにより教示される方法及びベクターを改良
することによって達成することができる。簡潔に言えば、Yamaguchi et a
l.,Phycological Research,Vol.59:2(2011),
pp.113−119は、プラスミドDNAによるChaetoceros sp.の安
定した核形質転換を報告した。Yamaguchiは、微粒子ボンバードメントの形質転
換方法を用いて、Chaetoceros sp.にプラスミドpTpfcp/natを 40
導入した。pTpfcp/natは、natタンパク質コード領域の上流でThalas
siosira pseudonanaフコキサンチンクロロフィルa/c結合タンパク
質遺伝子(fcp)プロモーターに動作可能に連結し、且つ3’領域(natタンパク質
コード配列の下流)でThalassiosira pseudonana fcp遺伝
子3’UTR/ターミネーターに動作可能に連結した、ノーセオスリシンアセチルトラン
スフェラーゼ(nat)遺伝子産物(GenBank寄託番号AAC60439)をコー
ドする配列を含む、ノーセオスリシン(nourseothricin)耐性カセットを
含んだ。nat遺伝子産物は、抗生物質ノーセオスリシンに対する耐性を付与する。pT
pfcp/natによる形質転換前、Chaetoceros sp.は、500ug/
mlのノーセオスリシンを含む培地で増殖することができなかった。pTpfcp/na 50
(222) JP 2018-99138 A 2018.6.28

tで形質転換すると、Chaetoceros sp.の形質転換体が得られ、これは、
500ug/mlのノーセオスリシンを含む選択培地で増殖した。Chaetocero
s sp.におけるnat遺伝子産物の発現により、500ug/mlのノーセオスリシ
ンの存在下での増殖が可能となり、それによりChaetoceros sp.に用いら
れる選択可能なマーカーとしてのノーセオスリシン抗生物質耐性カセットの有用性が確立
された。安定な形質転換体のゲノムDNAの評価は、サザン解析により行われた。Yam
aguchiは、形質転換したChaetoceros sp.の選択及び維持が、50
0ug/mlのノーセオスリシンを含有するf/2培地(Guilard,R.R.,C
ulture of Phytoplankton for feeding mari
ne invertebrates,In Culture of Marine In 10
vertebrate Animals,Smith and Chanley(eds
)1975,Plenum Press,New York,pp.26−60により報
告されるようなもの)を含む寒天プレートで行われたことを報告した。Yamaguch
iによって行われたようなChaetoceros sp.形質転換体の液体増殖は、5
00mg/Lのノーセオスリシンを含有するf/2培地で実施された。別の培地中でのC
haetoceros sp.の増殖については、報告がなされている(例えば、Nap
olitano et al.,Journal of the World Aqua
culture Society,Vol.21:2(1990),pp.122−13
0、及びVolkman et al.,Journal of Experiment
al Marine Biology and Ecology,Vol.128:3( 20
1989),pp.219−240による)。Chaetoceros sp.における
異種遺伝子発現を可能にするのに適したさらなるプラスミド、プロモーター、3’UTR
/ターミネーター、及び選択可能なマーカーについては、Yamaguchiらによる同
じ報告に報告がなされている。Yamaguchiは、プラスミドpTpfcp/nat
、並びにThalassiosira pseudonana fcpプロモーター及び
3’UTR/ターミネーターが、Chaetoceros sp.における外来遺伝子発
現を可能にするのに適していることを報告した。さらに、Yamaguchiは、pTp
fcp/natでコードされるノーセオスリシン耐性カセットが、Chaetocero
s sp.における選択可能なマーカーとして用いるのに適していたことを報告した。
【0714】 30
 本発明の実施形態では、選択可能なマーカーとして用いられるnat遺伝子産物をコー
ドするヌクレオチド配列を含むベクターpTpfcp/natが、脂質生合成経路発現カ
セット配列をさらに含むように作製及び改変され、それにより形質転換ベクターを作り出
す。脂質生合成経路発現カセットは、表70から選択される1つ以上の脂質生合成経路タ
ンパク質をコードし、各タンパク質コード配列は、表69A∼表69DのとおりのCha
etoceros compressumの核遺伝子に固有のコドンの偏りを反映するよ
うに、近縁のChaetoceros compressumにおける発現用にコドンが
最適化される。表70の各脂質生合成経路タンパク質について、コドンが最適化された遺
伝子配列は、個々に、タンパク質コード配列の上流でThalassiosira ps
eudonana fcp遺伝子プロモーターに動作可能に連結し、且つタンパク質コー 40
ド配列の3’領域で、又は下流で、Thalassiosira pseudonana
 fcp遺伝子3’UTR/ターミネーターに動作可能に連結することができる。形質転
換構築物は、形質転換ベクターを標的化してゲノムに組み込むための、Chaetoce
ros sp.ゲノムに対する相同性領域をさらに含み得る。相同性領域は、内在する脂
質生合成経路遺伝子の1つ以上のゲノム部位を破壊するように選択され得る。形質転換ベ
クターによるChaetoceros sp.の安定な形質転換は、微粒子ボンバードメ
ントを含む周知の形質転換又は他の公知の方法により達成される。nat遺伝子産物の活
性を選択可能なマーカーとして使用して、限定されないがノーセオスリシンを含むf/2
寒天培地で、形質転換ベクターにより形質転換されたChaetoceros sp.を
選択することができる。Chaetoceros sp.の脂質生成に適した成長培地と 50
(223) JP 2018-99138 A 2018.6.28

しては、限定されないが、f/2培地、並びにNapolitanoら及びVolkma
nらにより考察される培地が挙げられる。Chaetoceros sp脂質の脂肪酸プ
ロフィールの評価は、本明細書に記載される標準的な脂質抽出及び分析方法により評価す
ることができる。
【0715】
実施例34:Cylindrotheca fusiformisの操作
 Cylindrotheca fusiformisにおける本発明に従う組み換え遺
伝子の発現は、本明細書に考察されるとおりPoulsen and Krogerらに
より教示される方法及びベクターを改良することによって達成することができる。簡潔に
言えば、Poulsen and Kroger et al.,FEBS Journ 10
al,Vol.272(2005),pp.3413−3423は、プラスミドDNAに
よるCylindrotheca fusiformisの形質転換を報告した。Pou
lsen and Krogerは、微粒子ボンバードメントの形質転換方法を用いて、
Cylindrotheca fusiformisにpCF−bleプラスミドを導入
した。プラスミドpCF−bleは、bleタンパク質コード領域の上流でCylind
rotheca fusiformisフコキサンチン(fucozanthin)クロ
ロフィルa/c結合タンパク質遺伝子(fcpA、GenBank寄託番号AY1255
80)プロモーターに動作可能に連結し、且つ3’領域(bleタンパク質コード領域の
下流)でCylindrotheca fusiformis fcpA遺伝子3’UT
R/ターミネーターに動作可能に連結した、抗生物質ゼオシン及びフレオマイシンに対す 20
る耐性のための、Streptoalloteichus hindustanusブレ
オマイシン結合タンパク質(ble)をコードする配列を含む、ブレオマイシン耐性カセ
ットを含んだ。pCF−bleによる形質転換前、Cylindrotheca fus
iformisは、1mg/mlのゼオシンを含む培地で増殖することができなかった。
pCF−bleで形質転換すると、Cylindrotheca fusiformis
の形質転換体が得られ、これは、1mg/mlのゼオシンを含む選択培地で増殖した。C
ylindrotheca fusiformisにおけるble遺伝子産物の発現によ
り、1mg/mlのゼオシンの存在下での増殖が可能となり、それによりCylindr
otheca fusiformisに用いられる選択可能なマーカーとしてのブレオマ
イシン抗生物質耐性カセットの有用性が確立された。Poulsen and Krog 30
erは、形質転換したCylindrotheca fusiformisの選択及び維
持が、1mg/mlのゼオシンを含有する人工海水培地を含む寒天プレートで行われたこ
とを報告した。Poulsen and Krogerは、1mg/mlのゼオシンを含
有する人工海水培地中でのCylindrotheca fusiformis形質転換
体の液体増殖を報告した。別の培地中でのCylindrotheca fusifor
misの増殖については、考察がなされている(例えば、Liang et al.,J
ournal of Applied Phycology,Vol.17:1(200
5),pp.61−65、及びOrcutt and Patterson,Lipid
s,Vol.9:12(1974),pp.1000−1003による)。Chaeto
ceros sp.における異種遺伝子発現を可能にするさらなるプラスミド、プロモー 40
ター、及び3’UTR/ターミネーターについては、Poulsen and Krog
erによる同じ報告に報告がなされている。Poulsen and Krogerは、
プラスミドpCF−ble並びにCylindrotheca fusiformis 
fcpプロモーター及び3’UTR/ターミネーターが、Cylindrotheca 
fusiformisにおける外来遺伝子発現を可能にするのに適していることを報告し
た。さらに、Poulsen and Krogerは、pCF−bleでコードされる
ブレオマイシン耐性カセットが、Cylindrotheca fusiformisに
おける選択可能なマーカーとして用いるのに適していたことを報告した。
【0716】
 本発明の実施形態では、選択可能なマーカーとして用いられるble遺伝子産物をコー 50
(224) JP 2018-99138 A 2018.6.28

ドするヌクレオチド配列を含むベクターpCF−bleが、脂質生合成経路発現カセット
配列をさらに含むように作製及び改変され、それにより形質転換ベクターを作り出す。脂
質生合成経路発現カセットは、表70から選択される1つ以上の脂質生合成経路タンパク
質をコードし、各タンパク質コード配列は、表69A∼表69DのとおりのCylind
rotheca fusiformisの核遺伝子に固有のコドンの偏りを反映するよう
に、Cylindrotheca fusiformisにおける発現用にコドンが最適
化される。表70の各脂質生合成経路タンパク質について、コドンが最適化された遺伝子
配列は、個々に、タンパク質コード配列の上流でCylindrotheca fusi
formis fcp遺伝子プロモーターに動作可能に連結し、及びタンパク質コード配
列の3’領域で、又は下流で、Cylindrotheca fusiformis f 10
cp遺伝子3’UTR/ターミネーターに動作可能に連結することができる。形質転換構
築物は、形質転換ベクターを標的化してゲノムに組み込むための、Cylindroth
eca fusiformisゲノムに対する相同性領域をさらに含み得る。相同性領域
は、内在する脂質生合成経路遺伝子の1つ以上のゲノム部位を破壊するように選択され得
る。形質転換ベクターによるCylindrotheca fusiformisの安定
な形質転換は、微粒子ボンバードメントを含む周知の形質転換技法又は他の公知の方法に
より達成される。ble遺伝子産物の活性を選択可能なマーカーとして使用して、限定さ
れないがゼオシンを含む人工海水寒天培地で、形質転換ベクターにより形質転換されたC
ylindrotheca fusiformisを選択することができる。Cylin
drotheca fusiformisの脂質生成に適した成長培地としては、限定さ 20
れないが、人工海水並びにLiangら及びOrcutt and Patterson
により報告される培地が挙げられる。Cylindrotheca fusiformi
s脂質の脂肪酸プロフィールの評価は、本明細書に記載される標準的な脂質抽出及び分析
方法により評価することができる。
【0717】
実施例35:Amphidinium sp.の操作
 Amphidinium sp.における本発明に従う組み換え遺伝子の発現は、本明
細書に考察されるとおりten Lohuis and Millerらにより教示され
る方法及びベクターを改良することによって達成することができる。簡潔に言えば、te
n Lohuis and Miller et al.,The Plant Jou 30
rnal,Vol.13:3(1998),pp.427−435は、プラスミドDNA
によるAmphidinium sp.の安定な形質転換を報告した。ten Lohu
isは、炭化ケイ素ウィスカーの存在下で撹拌する形質転換技法を用いて、Amphid
inium sp.にプラスミドpMT NPT/GUSを導入した。pMT NPT/
GUSは、nptIIタンパク質コード領域の上流で、又は5’で、Agrobacte
rium tumefaciensノパリンシンターゼ(nos)遺伝子プロモーターに
動作可能に連結し、且つ3’領域(nptIIタンパク質コード領域の下流)でnos遺
伝子の3’UTR/ターミネーターに動作可能に連結した、ネオマイシンホスホトランス
フェラーゼII(nptII)遺伝子産物(GenBank寄託番号AAL92039)
をコードする配列を含む、ネオマイシン耐性カセットを含んだ。nptII遺伝子産物は 40
、抗生物質G418に対する耐性を付与する。pMT NPT/GUSプラスミドは、C
aMV 35Sプロモーターに動作可能に連結され、且つCaMV 35S 3’UTR
/ターミネーターにさらに動作可能に連結された、β−グルクロニダーゼ(GUS)レポ
ーター遺伝子産物をコードする配列をさらに含んだ。pMT NPT/GUSによる形質
転換前、Amphidinium sp.は、3mg/mlのG418を含む培地で増殖
することができなかった。pMT NPT/GUSで形質転換すると、Amphidin
ium sp.の形質転換体が得られ、これは、3mg/mlのG418を含む選択培地
で増殖した。Amphidinium sp.におけるnptII遺伝子産物の発現によ
り、3mg/mlのG418の存在下での増殖が可能となり、それによりAmphidi
nium sp.に用いられる選択可能なマーカーとしてのネオマイシン抗生物質耐性カ 50
(225) JP 2018-99138 A 2018.6.28

セットの有用性が確立された。GUSレポーター遺伝子の検出可能な活性から、CaMV
 35Sプロモーター及び3’UTRが、Amphidinium sp.における遺伝
子発現を可能にするのに適していることが示された。安定な形質転換体のゲノムDNAの
評価は、サザン解析により行われた。ten Lohuis and Millerは、
F/2濃縮溶液(供給者Sigmaにより提供される)及び3mg/mlのG418を追
加した海水を含む培地中でのAmphidinium sp形質転換体の液体増殖、並び
にF/2濃縮溶液及び3mg/mlのG418を追加した海水を含む寒天培地でのAmp
hidinium sp.形質転換体の選択及び維持を報告した。別の培地中でのAmp
hidinium sp.の増殖については、報告がなされている(例えば、Manso
ur et al.,Journal of Applied Phycology,V 10
ol.17:4(2005)pp.287−v300)。Amphidinium sp
.における異種遺伝子発現を可能にするさらなるプロモーター、3’UTR/ターミネー
ター、及び選択可能なマーカーを含むさらなるプラスミドについては、ten Lohu
is and Millerによる同じ報告に報告がなされている。ten Lohui
s and Millerは、プラスミドpMT NPT/GUS並びにnos及びCa
MV 35S遺伝子のプロモーター及び3’UTR/ターミネーターが、Amphidi
nium sp.における外来遺伝子発現を可能にするのに適していることを報告した。
さらに、ten Lohuis and Millerは、pMT NPT/GUSでコ
ードされるネオマイシン耐性カセットが、Amphidinium sp.における選択
可能なマーカーとして用いるのに適していたことを報告した。 20
【0718】
 本発明の実施形態では、選択可能なマーカーとして用いられるnptII遺伝子産物を
コードするヌクレオチド配列を含むベクターpMT NPT/GUSが、脂質生合成経路
発現カセット配列をさらに含むように作製及び改変され、それにより形質転換ベクターを
作り出す。脂質生合成経路発現カセットは、表70から選択される1つ以上の脂質生合成
経路タンパク質をコードし、各タンパク質コード配列は、表69A∼表69Dのとおりの
近縁の種Amphidinium carteraeの核遺伝子に固有のコドンの偏りを
反映するように、Amphidinium sp.における発現用にコドンが最適化され
る。表70の各脂質生合成経路タンパク質について、コドンが最適化された遺伝子配列は
、個々に、タンパク質コード配列の上流でAgrobacterium tumefac 30
iensノパリンシンターゼ(nos)遺伝子プロモーターに動作可能に連結し、及びタ
ンパク質コード配列の3’領域で、又は下流で、nos 3’UTR/ターミネーターに
動作可能に連結することができる。形質転換構築物は、形質転換ベクターを標的化してゲ
ノムに組み込むための、Amphidinium sp.ゲノムに対する相同性領域をさ
らに含み得る。相同性領域は、内在する脂質生合成経路遺伝子の1つ以上のゲノム部位を
破壊するように選択され得る。形質転換ベクターによるAmphidinium sp.
の安定な形質転換は、ケイ素繊維媒介マイクロインジェクションを含む周知の形質転換技
法又は他の公知の方法により達成される。nptII遺伝子産物の活性を選択可能なマー
カーとして使用して、限定されないがG418を含む海水寒天培地で、形質転換ベクター
により形質転換されたAmphidinium sp.を選択することができる。Amp 40
hidinium sp.の脂質生成に適した成長培地としては、限定されないが、人工
海水並びにMansourら及びten Lohuis and Millerにより報
告される培地が挙げられる。Amphidinium sp.脂質の脂肪酸プロフィール
の評価は、本明細書に記載される標準的な脂質抽出及び分析方法により評価することがで
きる。
【0719】
実施例36:Symbiodinium microadriacticumの操作
 Symbiodinium microadriacticumにおける本発明に従う
組み換え遺伝子の発現は、本明細書に考察されるとおりten Lohuis and 
Millerらにより教示される方法及びベクターを改良することによって達成すること 50
(226) JP 2018-99138 A 2018.6.28

ができる。簡潔に言えば、ten Lohuis and Miller et al.
,The Plant Journal,Vol.13:3(1998),pp.427
−435は、プラスミドDNAによるSymbiodinium microadria
cticumの安定な形質転換を報告した。ten Lohuisは、ケイ素繊維媒介マ
イクロインジェクションの形質転換技法を用いて、Symbiodinium micr
oadriacticumにプラスミドpMT NPT/GUSを導入した。pMT N
PT/GUSは、nptIIタンパク質コード領域の上流で、又は5’で、Agroba
cterium tumefaciensノパリンシンターゼ(nos)遺伝子プロモー
ターに動作可能に連結し、且つ3’領域(nptIIタンパク質コード領域の下流)でn
os遺伝子の3’UTR/ターミネーターに動作可能に連結した、ネオマイシンホスホト 10
ランスフェラーゼII(nptII)遺伝子産物(GenBank寄託番号AAL920
39)をコードする配列を含む、ネオマイシン耐性カセットを含んだ。nptII遺伝子
産物は、抗生物質G418に対する耐性を付与する。pMT NPT/GUSプラスミド
は、CaMV 35Sプロモーターに動作可能に連結され、且つCaMV 35S 3’
UTR/ターミネーターにさらに動作可能に連結された、β−グルクロニダーゼ(GUS
)レポーター遺伝子産物をコードする配列をさらに含んだ。pMT NPT/GUSによ
る形質転換前、Symbiodinium microadriacticumは、3m
g/mlのG418を含む培地で増殖することができなかった。pMT NPT/GUS
で形質転換すると、Symbiodinium microadriacticumの形
質転換体が得られ、これは、3mg/mlのG418を含む選択培地で増殖した。Sym 20
biodinium microadriacticumにおけるnptII遺伝子産物
の発現により、3mg/mlのG418の存在下での増殖が可能となり、それによりSy
mbiodinium microadriacticumに用いられる選択可能なマー
カーとしてのネオマイシン抗生物質耐性カセットの有用性が確立された。GUSレポータ
ー遺伝子の検出可能な活性から、CaMV 35Sプロモーター及び3’UTRが、Sy
mbiodinium microadriacticumにおける遺伝子発現を可能に
するのに適していることが示された。安定な形質転換体のゲノムDNAの評価は、サザン
解析により行われた。ten Lohuis and Millerは、F/2濃縮溶液
(供給者Sigmaにより与えられる)及び3mg/mlのG418を追加した海水を含
む培地中でのSymbiodinium microadriacticum形質転換体 30
の液体増殖、並びにF/2濃縮溶液及び3mg/mlのG418を追加した海水を含む寒
天培地でのSymbiodinium microadriacticum形質転換体の
選択及び維持を報告した。別の培地中でのSymbiodinium microadr
iacticumの増殖については、考察がなされている(例えば、Iglesias−
Prieto et al.,Proceedings of the Nationa
l Academy of Sciences,Vol.89:21(1992)pp.
10302−10305)。Symbiodinium microadriactic
umにおける異種遺伝子発現を可能にするさらなるプロモーター、3’UTR/ターミネ
ーター、及び選択可能なマーカーを含むさらなるプラスミドについては、ten Loh
uis and Millerによる同じ報告に考察がなされている。ten Lohu 40
is and Millerは、プラスミドpMT NPT/GUS並びにnos及びC
aMV 35S遺伝子のプロモーター及び3’UTR/ターミネーターが、Symbio
dinium microadriacticumにおける外来遺伝子発現を可能にする
のに適していることを報告した。さらに、ten Lohuis and Miller
は、pMT NPT/GUSでコードされるネオマイシン耐性カセットが、Symbio
dinium microadriacticumにおける選択可能なマーカーとして用
いるのに適していたことを報告した。
【0720】
 本発明の実施形態では、選択可能なマーカーとして用いられるnptII遺伝子産物を
コードするヌクレオチド配列を含むベクターpMT NPT/GUSが、脂質生合成経路 50
(227) JP 2018-99138 A 2018.6.28

発現カセット配列をさらに含むように作製及び改変され、それにより形質転換ベクターを
作り出す。脂質生合成経路発現カセットは、表70から選択される1つ以上の脂質生合成
経路タンパク質をコードし、各タンパク質コード配列は、表69A∼表69Dのとおりの
Symbiodinium microadriacticumの核遺伝子に固有のコド
ンの偏りを反映するように、Symbiodinium microadriactic
umにおける発現用にコドンが最適化される。表70の各脂質生合成経路タンパク質につ
いて、コドンが最適化された遺伝子配列は、個々に、タンパク質コード配列の上流でAg
robacterium tumefaciensノパリンシンターゼ(nos)遺伝子
プロモーターに動作可能に連結し、及びタンパク質コード配列の3’領域で、又は下流で
、nos 3’UTR/ターミネーターに動作可能に連結することができる。形質転換構 10
築物は、形質転換ベクターを標的化してゲノムに組み込むための、Symbiodini
um microadriacticumゲノムに対する相同性領域をさらに含み得る。
相同性領域は、内在する脂質生合成経路遺伝子の1つ以上のゲノム部位を破壊するように
選択され得る。形質転換ベクターによるSymbiodinium microadri
acticumの安定な形質転換は、ケイ素繊維媒介マイクロインジェクションを含む周
知の形質転換技法又は他の公知の方法により達成される。nptII遺伝子産物の活性を
選択可能なマーカーとして使用して、限定されないがG418を含む海水寒天培地で、形
質転換ベクターにより形質転換されたSymbiodinium microadria
cticumを選択することができる。Symbiodinium microadri
acticumの脂質生成に適した成長培地としては、限定されないが、人工海水並びに 20
Iglesias−Prietoら及びten Lohuis and Millerに
より報告される培地が挙げられる。Symbiodinium microadriac
ticum脂質の脂肪酸プロフィールの評価は、本明細書に記載される標準的な脂質抽出
及び分析方法により評価することができる。
【0721】
実施例37:Nannochloropsis sp.の操作
 Nannochloropsis sp.W2J3Bにおける本発明に従う組み換え遺
伝子の発現は、本明細書に考察されるとおりKilianらにより教示される方法及びベ
クターを改良することによって達成することができる。簡潔に言えば、Kilian e
t al.,Proceedings of the National Academ 30
y of Sciences,Vol.108:52(2011)pp.21265−2
1269は、形質転換構築物によるNannochloropsisの安定した核形質転
換を報告した。Kilianは、エレクトロポレーションの形質転換方法を用いて、Na
nnochloropsis sp.W2J3Bに形質転換構築物C2を導入した。C2
形質転換構築物は、bleタンパク質コード領域の上流でNannochloropsi
s sp.W2J3Bビオラキサンチン/クロロフィルa結合タンパク質遺伝子VCP2
のプロモーターに動作可能に連結し、且つbleタンパク質コード領域の下流でNann
ochloropsis sp.W2J3Bビオラキサンチン/クロロフィルa結合遺伝
子VCP1の3’UTR/ターミネーターに動作可能に連結した、抗生物質フレオマイシ
ン及びゼオシンに対する耐性のための、Streptoalloteichus hin 40
dustanusブレオマイシン結合タンパク質(ble)のコード配列を含む、ブレオ
マイシン耐性カセットを含んだ。C2による形質転換前、Nannochloropsi
s sp.W2J3Bは、2ug/mlのゼオシンを含む培地で増殖することができなか
った。C2で形質転換すると、Nannochloropsis sp.W2J3Bの形
質転換体が得られ、これは、2ug/mlのゼオシンを含む選択培地で増殖した。Nan
nochloropsis sp.W2J3Bにおけるble遺伝子産物の発現により、
2ug/mlのゼオシンの存在下での増殖が可能となり、それによりNannochlo
ropsisに用いられる選択可能なマーカーとしてのブレオマイシン抗生物質耐性カセ
ットの有用性が確立された。安定な形質転換体のゲノムDNAの評価は、PCRによって
行われた。Kilianは、5倍濃度の微量金属、ビタミン、及びリン酸溶液を含み、及 50
(228) JP 2018-99138 A 2018.6.28

び2ug/mlのゼオシンをさらに含むF/2培地(Guilard and Ryth
er,Canadian Journal of Microbiology,Vol.
8(1962),pp.229−239により報告される)でのNannochloro
psis sp.W2J3B形質転換体の液体増殖を報告した。Kilianはまた、人
工海水2mg/mlゼオシンを含む寒天F/2培地でのNannochloropsis
 sp.W2J3B形質転換体の選択及び維持も報告した。別の培地中でのNannoc
hloropsisの増殖については、考察がなされている(例えば、Chiu et 
al.,Bioresour Technol.,Vol.100:2(2009),p
p.833−838及びPal et al.,Applied Microbiolo
gy and Biotechnology,Vol.90:4(2011),pp.1 10
429−1441)。Nannochloropsis sp.W2J3Bにおける異種
遺伝子発現を可能にするさらなるプロモーター及び3’UTR/ターミネーターを含むさ
らなる形質転換構築物並びに形質転換体を選択するための選択可能なマーカーについては
、Kilianによる同じ報告に記載されている。Kilianは、形質転換構築物C2
並びにNannochloropsis sp.W2J3Bビオラキサンチン/クロロフ
ィルa結合タンパク質遺伝子VCP2のプロモーター及びNannochloropsi
s sp.W2J3Bビオラキサンチン/クロロフィルa結合タンパク質遺伝子VCP1
の3’UTR/ターミネーターが、Nannochloropsis sp.W2J3B
における外来遺伝子発現を可能にするのに適していることを報告した。さらに、Kili
anは、C2でコードされるブレオマイシン耐性カセットが、Nannochlorop 20
sis sp.W2J3Bにおける選択可能なマーカーとして用いるのに適していたこと
を報告した。
【0722】
 本発明の実施形態では、選択可能なマーカーとして用いられるble遺伝子産物をコー
ドするヌクレオチド配列を含む形質転換構築物C2が、脂質生合成経路発現カセット配列
をさらに含むように作製及び改変され、それにより形質転換ベクターを作り出す。脂質生
合成経路発現カセットは、表70から選択される1つ以上の脂質生合成経路タンパク質を
コードし、各タンパク質コード配列は、表69A∼表69DのとおりのNannochl
oropsis sp.の核遺伝子に固有のコドンの偏りを反映するように、Nanno
chloropsis sp.W2J3Bにおける発現用にコドンが最適化される。表7 30
0の各脂質生合成経路タンパク質について、コドンが最適化された遺伝子配列は、個々に
、タンパク質コード配列の上流でNannochloropsis sp.W2J3B 
VCP2遺伝子プロモーターに動作可能に連結し、且つタンパク質コード配列の3’領域
で、又は下流で、Nannochloropsis sp.W2J3B VCP1遺伝子
3’UTR/ターミネーターに動作可能に連結することができる。形質転換構築物は、形
質転換ベクターを標的化してゲノムに組み込むための、Nannochloropsis
 sp.W2J3Bゲノムに対する相同性領域をさらに含み得る。相同性領域は、内在す
る脂質生合成経路遺伝子の1つ以上のゲノム部位を破壊するように選択され得る。形質転
換ベクターによるNannochloropsis sp.W2J3Bの安定な形質転換
は、エレクトロポレーションを含む周知の形質転換技法又は他の公知の方法により達成さ 40
れる。ble遺伝子産物の活性を選択可能なマーカーとして使用して、限定されないがゼ
オシンを含むF/2培地で、形質転換ベクターにより形質転換されたNannochlo
ropsis sp.W2J3Bを選択することができる。Nannochlorops
is sp.W2J3Bの脂質生成に適した成長培地としては、限定されないが、F/2
培地並びにChiuら及びPalらにより報告される培地が挙げられる。Nannoch
loropsis sp.W2J3B脂質の脂肪酸プロフィールの評価は、本明細書に記
載される標準的な脂質抽出及び分析方法により評価することができる。
【0723】
実施例38:Cyclotella crypticaの操作
 Cyclotella crypticaにおける本発明に従う組み換え遺伝子の発現 50
(229) JP 2018-99138 A 2018.6.28

は、本明細書に考察されるとおりDunahayらにより教示される方法及びベクターを
改良することによって達成することができる。簡潔に言えば、Dunahay et a
l.,Journal of Phycology,Vol.31(1995),pp.
1004−1012は、プラスミドDNAによるCyclotella cryptic
aの安定な形質転換を報告した。Dunahayは、微粒子ボンバードメントの形質転換
方法を用いて、Cyclotella crypticaにプラスミドpACCNPT5
.1を導入した。プラスミドpACCNPT5.1は、nptIIコード領域の上流でC
yclotella crypticaアセチル−CoAカルボキシラーゼ(ACCas
e)遺伝子(GenBank寄託番号L20784)のプロモーターに動作可能に連結し
、且つ3’領域(nptIIコード領域の下流)でCyclotella crypti 10
ca ACCase遺伝子の3’UTR/ターミネーターに動作可能に連結した、ネオマ
イシンホスホトランスフェラーゼII(nptII)遺伝子産物のコード配列を含む、ネ
オマイシン耐性カセットを含んだ。nptII遺伝子産物は、抗生物質G418に対する
耐性を付与する。pACCNPT5.1による形質転換前、Cyclotella cr
ypticaは、100ug/mlのG418を含む50%人工海水培地で増殖すること
ができなかった。pACCNPT5.1で形質転換すると、Cyclotella cr
ypticaの形質転換体が得られ、これは、100ug/mlのG418を含む選択的
50%人工海水培地で増殖した。Cyclotella crypticaにおけるnp
tII遺伝子産物の発現により、100ug/mlのG418の存在下での増殖が可能と
なり、それによりCyclotella crypticaに用いられる選択可能なマー 20
カーとしてのネオマイシン抗生物質耐性カセットの有用性が確立された。安定な形質転換
体のゲノムDNAの評価は、サザン解析により行われた。Dunahayは、1.07m
Mのケイ酸ナトリウム及び100ug/mlのG418を追加した人工海水培地(ASW
、Brown,L.,Phycologia,Vol.21(1982),pp.408
−410により考察されるようなもの)におけるCyclotella cryptic
aの液体増殖を報告した。Dunahayはまた、100ug/mlのG418を含有す
るASW培地を含む寒天プレートでのCyclotella cryptica形質転換
体の選択及び維持も報告した。別の培地中でのCyclotella cryptica
の増殖については、考察がなされている(例えば、Sriharan et al.,A
pplied Biochemistry and Biotechnology,Vo 30
l.28−29:1(1991),pp.317−326及びPahl et al.,
Journal of Bioscience and Bioengineering
,Vol.109:3(2010),pp.235−239)。Dunahayは、プラ
スミドpACCNPT5.1及びCyclotella crypticaアセチル−C
oAカルボキシラーゼ(ACCase)遺伝子のプロモーターが、Cyclotella
 crypticaにおける外来遺伝子発現を可能にするのに適していることを報告した
。さらに、Dunahayは、pACCNPT5.1でコードされるネオマイシン耐性カ
セットが、Cyclotella crypticaにおける選択可能なマーカーとして
用いるのに適していたことを報告した。
【0724】 40
 本発明の実施形態では、選択可能なマーカーとして用いられるnptII遺伝子産物を
コードするヌクレオチド配列を含むベクターpACCNPT5.1が、脂質生合成経路発
現カセット配列をさらに含むように作製及び改変され、それにより形質転換ベクターを作
り出す。脂質生合成経路発現カセットは、表70から選択される1つ以上の脂質生合成経
路タンパク質をコードし、各タンパク質コード配列は、表69A∼表69DのとおりのC
yclotella crypticaの核遺伝子に固有のコドンの偏りを反映するよう
に、Cyclotella crypticaにおける発現用にコドンが最適化される。
表70の各脂質生合成経路タンパク質について、コドンが最適化された遺伝子配列は、個
々に、タンパク質コード配列の上流でCyclotella cryptica ACC
aseプロモーターに動作可能に連結し、及びタンパク質コード配列の3’領域で、又は 50
(230) JP 2018-99138 A 2018.6.28

下流で、Cyclotella cryptica ACCase 3’UTR/ターミ
ネーターに動作可能に連結することができる。形質転換構築物は、形質転換ベクターを標
的化してゲノムに組み込むための、Cyclotella crypticaゲノムに対
する相同性領域をさらに含み得る。相同性領域は、内在する脂質生合成経路遺伝子の1つ
以上のゲノム部位を破壊するように選択され得る。形質転換ベクターによるCyclot
ella crypticaの安定な形質転換は、微粒子ボンバードメントを含む周知の
形質転換技法又は他の公知の方法により達成される。nptII遺伝子産物の活性をマー
カーとして使用して、限定されないがG418を含む寒天ASW培地で、形質転換ベクタ
ーにより形質転換されたCyclotella crypticaを選択することができ
る。Cyclotella crypticaの脂質生成に適した成長培地としては、限 10
定されないが、ASW培地並びにSriharanら(1991)及びPahlらにより
報告される培地が挙げられる。Cyclotella cryptica脂質の脂肪酸プ
ロフィールの評価は、本明細書に記載される標準的な脂質抽出及び分析方法により評価す
ることができる。
【0725】
実施例39:Navicula saprophilaの操作
 Navicula saprophilaにおける本発明に従う組み換え遺伝子の発現
は、本明細書に考察されるとおりDunahayらにより教示される方法及びベクターを
改良することによって達成することができる。簡潔に言えば、Dunahay et a
l.,Journal of Phycology,Vol.31(1995),pp. 20
1004−1012は、プラスミドDNAによるNavicula saprophil
aの安定な形質転換を報告した。Dunahayは、微粒子ボンバードメントの形質転換
方法を用いて、Navicula saprophilaにプラスミドpACCNPT5
.1を導入した。プラスミドpACCNPT5.1は、nptIIコード領域の上流でC
yclotella crypticaアセチル−CoAカルボキシラーゼ(ACCas
e)遺伝子(GenBank寄託番号L20784)のプロモーターに動作可能に連結し
、且つ3’領域(nptIIコード領域の下流)でCyclotella crypti
ca ACCase遺伝子の3’UTR/ターミネーターに動作可能に連結した、ネオマ
イシンホスホトランスフェラーゼII(nptII)遺伝子産物のコード配列を含む、ネ
オマイシン耐性カセットを含んだ。nptII遺伝子産物は、抗生物質G418に対する 30
耐性を付与する。pACCNPT5.1による形質転換前、Navicula sapr
ophilaは、100ug/mlのG418を含む人工海水培地で増殖することができ
なかった。pACCNPT5.1で形質転換すると、Navicula saproph
ilaの形質転換体が得られ、これは、100ug/mlのG418を含む選択的人工海
水培地で増殖した。Navicula saprophilaにおけるnptII遺伝子
産物の発現により、G418の存在下での増殖が可能となり、それによりNavicul
a saprophilaに用いられる選択可能なマーカーとしてのネオマイシン抗生物
質耐性カセットの有用性が確立された。安定な形質転換体のゲノムDNAの評価は、サザ
ン解析により行われた。Dunahayは、1.07mMのケイ酸ナトリウム及び100
ug/mlのG418を追加した人工海水培地(ASW、Brown,L.,Phyco 40
logia,Vol.21(1982),pp.408−410により考察されるような
もの)でのNavicula saprophilaの液体増殖を報告した。Dunah
ayはまた、100ug/mlのG418を含有するASW培地を含む寒天プレートでの
Navicula saprophila形質転換体の選択及び維持も報告した。別の培
地中でのNavicula saprophilaの増殖については、考察がなされてい
る(例えば、Tadros and Johansen,Journal of Phy
cology,Vol.24:4(1988),pp.445−452及びSrihar
an et al.,Applied Biochemistry and Biote
chnology,Vol.20−21:1(1989),pp.281−291)。D
unahayは、プラスミドpACCNPT5.1及びCyclotella cryp 50
(231) JP 2018-99138 A 2018.6.28

ticaアセチル−CoAカルボキシラーゼ(ACCase)遺伝子のプロモーターが、
Navicula saprophilaにおける外来遺伝子発現を可能にするのに適し
ていることを報告した。さらに、Dunahayは、pACCNPT5.1でコードされ
るネオマイシン耐性カセットが、Navicula saprophilaにおける選択
可能なマーカーとして用いるのに適していたことを報告した。
【0726】
 本発明の実施形態では、選択可能なマーカーとして用いられるnptII遺伝子産物を
コードするヌクレオチド配列を含むベクターpACCNPT5.1が、脂質生合成経路発
現カセット配列をさらに含むように作製及び改変され、それにより形質転換ベクターを作
り出す。脂質生合成経路発現カセットは、表70から選択される1つ以上の脂質生合成経 10
路タンパク質をコードし、各タンパク質コード配列は、表69A∼表69Dのとおりの近
縁のNavicula pelliculosaの核遺伝子に固有のコドンの偏りを反映
するように、Navicula saprophilaにおける発現用にコドンが最適化
される。表70の各脂質生合成経路タンパク質について、コドンが最適化された遺伝子配
列は、個々に、タンパク質コード配列の上流でCyclotella cryptica
 ACCase遺伝子プロモーターに動作可能に連結し、及びタンパク質コード配列の3
’領域で、又は下流で、Cyclotella cryptica ACCase遺伝子
3’UTR/ターミネーターに動作可能に連結することができる。形質転換構築物は、形
質転換ベクターを標的化してゲノムに組み込むための、Navicula saprop
hilaゲノムに対する相同性領域をさらに含み得る。相同性領域は、内在する脂質生合 20
成経路遺伝子の1つ以上のゲノム部位を破壊するように選択され得る。形質転換ベクター
によるNavicula saprophilaの安定な形質転換は、微粒子ボンバード
メントを含む周知の形質転換技法又は他の公知の方法により達成される。nptII遺伝
子産物の活性を選択可能なマーカーとして使用して、限定されないがG418を含む寒天
ASW培地で、形質転換ベクターにより形質転換されたNavicula saprop
hilaを選択することができる。Navicula saprophilaの脂質生成
に適した成長培地としては、限定されないが、ASW培地並びにSriharanら(1
989)及びTadros and Johansenにより報告される培地が挙げられ
る。Navicula saprophila脂質の脂肪酸プロフィールの評価は、本明
細書に記載される標準的な脂質抽出及び分析方法により評価することができる。 30
【0727】
実施例40:Thalassiosira pseudonanaの操作
 Thalassiosira pseudonanaにおける本発明に従う組み換え遺
伝子の発現は、本明細書に考察されるとおりPoulsenらにより教示される方法及び
ベクターを改良することによって達成することができる。簡潔に言えば、Poulsen
 et al.,Journal of Phycology,Vol.42(2006
),pp.1059−1065は、プラスミドDNAによるThalassiosira
 pseudonanaの安定な形質転換を報告した。Poulsenは、微粒子ボンバ
ードメントの形質転換方法を用いて、Thalassiosira pseudonan
aにプラスミドpTpfcp/natを導入した。pTpfcp/natは、natタン 40
パク質コード領域の上流でThalassiosira pseudonanaフコキサ
ンチンクロロフィルa/c結合タンパク質遺伝子(fcp)プロモーターに動作可能に連
結し、且つ3’領域(natタンパク質コード配列の下流)でThalassiosir
a pseudonana fcp遺伝子3’UTR/ターミネーターに動作可能に連結
した、ノーセオスリシンアセチルトランスフェラーゼ(nat)遺伝子産物(GenBa
nk寄託番号AAC60439)をコードする配列を含む、ノーセオスリシン耐性カセッ
トを含んだ。nat遺伝子産物は、抗生物質ノーセオスリシンに対する耐性を付与する。
pTpfcp/natによる形質転換前、Thalassiosira pseudon
anaは、10ug/mlのノーセオスリシンを含む培地で増殖することができなかった
。pTpfcp/natで形質転換すると、Thalassiosira pseudo 50
(232) JP 2018-99138 A 2018.6.28

nanaの形質転換体が得られ、これは、100ug/mlのノーセオスリシンを含む選
択培地で増殖した。Thalassiosira pseudonanaにおけるnat
遺伝子産物の発現により、100ug/mlのノーセオスリシンの存在下での増殖が可能
となり、それによりThalassiosira pseudonanaに用いられる選
択可能なマーカーとしてのノーセオスリシン抗生物質耐性カセットの有用性が確立された
。安定な形質転換体のゲノムDNAの評価は、サザン解析により行われた。Poulse
nは、形質転換したThalassiosira pseudonanaの選択及び維持
が、100ug/mlのノーセオスリシンを含有する変法ESAW培地(Harriso
n et al.,Journal of Phycology,Vol.16(198
0),pp.28−35により考察されるようなもの)を含む液体培地中で行われたこと 10
を報告した。別の培地中でのThalassiosira pseudonanaの増殖
については、考察がなされている(例えば、Volkman et al.,Journ
al of Experimental Marine Biology and Ec
ology,Vol.128:3(1989),pp.219−240)。Thalas
siosira pseudonanaでの使用に適したさらなる選択可能なマーカーを
含むさらなるプラスミドについては、Poulsenによる同じ報告に考察がなされてい
る。Poulsenは、プラスミドpTpfcp/nat、並びにThalassios
ira pseudonana fcpプロモーター及び3’UTR/ターミネーターが
、Thalassiosira pseudonanaにおける外来遺伝子発現を可能に
するのに適していることを報告した。さらに、Poulsenは、pTpfcp/nat 20
でコードされるノーセオスリシン耐性カセットが、Thalassiosira pse
udonanaにおける選択可能なマーカーとして用いるのに適していたことを報告した

【0728】
 本発明の実施形態では、選択可能なマーカーとして用いられるnat遺伝子産物をコー
ドするヌクレオチド配列を含むベクターpTpfcp/natが、脂質生合成経路発現カ
セット配列をさらに含むように作製及び改変され、それにより形質転換ベクターを作り出
す。脂質生合成経路発現カセットは、表70から選択される1つ以上の脂質生合成経路タ
ンパク質をコードし、各タンパク質コード配列は、表69A∼表69DのとおりのTha
lassiosira pseudonanaの核遺伝子に固有のコドンの偏りを反映す 30
るように、Thalassiosira pseudonanaにおける発現用にコドン
が最適化される。表70の各脂質生合成経路タンパク質について、コドンが最適化された
遺伝子配列は、個々に、タンパク質コード配列の上流でThalassiosira p
seudonana fcp遺伝子プロモーターに動作可能に連結し、及びタンパク質コ
ード配列の3’領域で、又は下流で、Thalassiosira pseudonan
a fcp遺伝子3’UTR/ターミネーターに動作可能に連結することができる。形質
転換構築物は、形質転換ベクターを標的化してゲノムに組み込むための、Thalass
iosira pseudonanaゲノムに対する相同性領域をさらに含み得る。相同
性領域は、内在する脂質生合成経路遺伝子の1つ以上のゲノム部位を破壊するように選択
され得る。当業者は、Thalassiosira pseudonanaゲノムの配列 40
内にあるそのような相同性領域を同定することができる(Armbrust et al
.,Science,Vol.306:5693 (2004):pp.79−86によ
る文献中に参照される)。形質転換ベクターによるThalassiosira pse
udonanaの安定な形質転換は、微粒子ボンバードメントを含む周知の形質転換技法
又は他の公知の方法により達成される。nat遺伝子産物の活性をマーカーとして使用し
て、限定されないがノーセオスリシンを含むESAW寒天培地で、形質転換ベクターによ
り形質転換されたThalassiosira pseudonanaを選択することが
できる。Thalassiosira pseudonanaの脂質生成に適した成長培
地としては、限定されないが、ESAW培地、並びにVolkmanら及びHarris
onらにより考察される培地が挙げられる。Thalassiosira pseudo 50
(233) JP 2018-99138 A 2018.6.28

nana脂質の脂肪酸プロフィールの評価は、本明細書に記載される標準的な脂質抽出及
び分析方法により評価することができる。
【0729】
実施例41:Chlamydomonas reinhardtiiの操作
 Chlamydomonas reinhardtiiにおける本発明に従う組み換え
遺伝子の発現は、本明細書に考察されるとおりCeruttiらにより教示される方法及
びベクターを改良することによって達成することができる。簡潔に言えば、Cerutt
i et al.,Genetics,Vol.145:1(1997),pp.97−
110は、形質転換ベクターによるChlamydomonas reinhardti
iの安定した核形質転換を報告した。Ceruttiは、微粒子ボンバードメントの形質 10
転換方法を用いて、Chlamydomonas reinhardtiiに形質転換構
築物p[1030]を導入した。構築物P[1030]は、aadAタンパク質コード領
域の上流でChlamydomonas reinhardtiiリブロース−1,5−
二リン酸カルボキシラーゼ/オキシゲナーゼ小サブユニット遺伝子(RbcS2、Gen
Bank寄託番号X04472)プロモーターに動作可能に連結し、且つ3’領域(aa
dAタンパク質コード配列の下流)でChlamydomonas reinhardt
ii RbcS2遺伝子3’UTR/ターミネーターに動作可能に連結した、アミノグル
コシド3’’−アデニルトランスフェラーゼ(aadA)遺伝子産物をコードする配列を
含む、スペクチノマイシン耐性カセットを含んだ。aadA遺伝子産物は、抗生物質スペ
クチノマイシンに対する耐性を付与する。P[1030]による形質転換前、Chlam 20
ydomonas reinhardtiiは、90ug/mlのスペクチノマイシンを
含む培地で増殖することができなかった。P[1030]で形質転換すると、Chlam
ydomonas reinhardtiiの形質転換体が得られ、これは、90ug/
mlのスペクチノマイシンを含む選択培地で増殖し、それによりChlamydomon
as reinhardtiiにおいて用いられる選択可能なマーカーとしてのスペクチ
ノマイシン抗生物質耐性カセットの有用性が確立された。安定な形質転換体のゲノムDN
Aの評価は、サザン解析により行われた。Ceruttiは、形質転換したChlamy
domonas reinhardtiiの選択及び維持が、90ug/mlのスペクチ
ノマイシンを含有するTris−酢酸−リン酸培地(TAP、Harris,The C
hlamydomonas Sourcebook,Academic Press,S 30
an Diego,1989により記載されるようなもの)を含む寒天プレートで行われ
たことを報告した。Ceruttiは、90ug/mlのスペクチノマイシンを含有する
TAP液体培地でのChlamydomonas reinhardtiiの増殖をさら
に報告した。代替的な培地におけるChlamydomonas reinhardti
iの増殖については、考察がなされている(例えば、Dent et al.,Afri
can Journal of Microbiology Research,Vol
.5:3(2011),pp.260−270及びYantao et al.,Bio
technology and Bioengineering,Vol.107:2(
2010),pp.258−268)。Chlamydomonas reinhard
tiiでの使用に適したさらなる選択可能なマーカーを含むさらなる構築物、並びにCh 40
lamydomonas reinhardtiiにおける異種遺伝子発現を促進するの
に適したプロモーター(protomer)及び3’UTRを含めた多数の制御配列は、
当該技術分野において公知であり、考察がなされている(レビューとして、Radako
vits et al.,Eurkaryotic Cell,Vol.9:4(201
0),pp.486−501を参照)。Ceruttiは、形質転換ベクターP[103
0]並びにChlamydomonas reinhardtiiプロモーター及び3’
UTR/ターミネーターが、Chlamydomonas reinhardtiiにお
ける外来遺伝子発現を可能にするのに適していることを報告した。さらに、Cerutt
iは、P[1030]でコードされるスペクチノマイシン耐性カセットが、Chlamy
domonas reinhardtiiにおける選択可能なマーカーとして用いるのに 50
(234) JP 2018-99138 A 2018.6.28

適していたことを報告した。
【0730】
 本発明の実施形態では、選択可能なマーカーとして用いられるaadA遺伝子産物をコ
ードするヌクレオチド配列を含むベクターP[1030]が、脂質生合成経路発現カセッ
ト配列をさらに含むように作製及び改変され、それにより形質転換ベクターを作り出す。
脂質生合成経路発現カセットは、表70から選択される1つ以上の脂質生合成経路タンパ
ク質をコードし、各タンパク質コード配列は、表69A∼表69DのとおりのChlam
ydomonas reinhardtiiの核遺伝子に固有のコドンの偏りを反映する
ように、Chlamydomonas reinhardtiiにおける発現用にコドン
が最適化される。表70の各脂質生合成経路タンパク質について、コドンが最適化された 10
遺伝子配列は、個々に、タンパク質コード配列の上流でChlamydomonas r
einhardtii RbcS2プロモーターに動作可能に連結し、及びタンパク質コ
ード配列の3’領域で、又は下流で、Chlamydomonas reinhardt
ii RbcS2 3’UTR/ターミネーターに動作可能に連結することができる。形
質転換構築物は、形質転換ベクターを標的化してゲノムに組み込むための、Chlamy
domonas reinhardtiiゲノムに対する相同性領域をさらに含み得る。
相同性領域は、内在する脂質生合成経路遺伝子の1つ以上のゲノム部位を破壊するように
選択され得る。当業者は、Chlamydomonas reinhardtiiゲノム
の配列内にあるそのような相同性領域を同定することができる(Merchant et
 al.,Science,Vol.318:5848(2007),pp.245−2 20
50による文献中に参照される)。形質転換ベクターによるChlamydomonas
 reinhardtiiの安定な形質転換は、微粒子ボンバードメントを含む周知の形
質転換技法又は他の公知の方法により達成される。aadA遺伝子産物の活性をマーカー
として使用して、限定されないがスペクチノマイシンを含むTAP寒天培地で、形質転換
ベクターにより形質転換されたChlamydomonas reinhardtiiを
選択することができる。Chlamydomonas reinhardtiiの脂質生
成に適した成長培地としては、限定されないが、ESAW培地、並びにYantaoら及
びDentらにより考察される培地が挙げられる。Chlamydomonas rei
nhardtii脂質の脂肪酸プロフィールの評価は、本明細書に記載される標準的な脂
質抽出及び分析方法により評価することができる。 30
【0731】
実施例42:Yarrowia lipolyticaの操作
 Yarrowia lipolyticaにおける本発明に従う組み換え遺伝子の発現
は、本明細書に考察されるとおりFickersらにより教示される方法及びベクターを
改良することによって達成することができる。簡潔に言えば、Fickers et a
l.,Journal of Microbiological Methods,Vo
l.55(2003),pp.727−737は、プラスミドDNAによるYarrow
ia lipolyticaの安定した核形質転換を報告した。Fickersは、酢酸
リチウム形質転換方法を用いて、Yarrowia lipolyticaにプラスミド
JMP123を導入した。プラスミドJMP123は、hphタンパク質コード領域の上 40
流でYarrowia lipolytica LIP2遺伝子プロモーター(GenB
ank寄託番号AJ012632)に動作可能に連結され、且つhphタンパク質コード
領域の下流でYarrowia lipolytica LIP2遺伝子3’UTR/タ
ーミネーターに動作可能に連結された、ハイグロマイシンBホスホトランスフェラーゼ遺
伝子産物(hph)をコードする配列を含む、ハイグロマイシンB耐性カセットを含んだ
。JMP123による形質転換前、Yarrowia lipolyticaは、100
ug/mlのハイグロマイシンを含む培地で増殖することができなかった。JMP123
で形質転換すると、形質転換されたYarrowia lipolyticaが得られ、
これは、100ug/mlのハイグロマイシンを含む培地で増殖することができ、それに
よりYarrowia lipolyticaに用いられる選択可能なマーカーとしての 50
(235) JP 2018-99138 A 2018.6.28

ハイグロマイシンB抗生物質耐性カセットが確立された。JMP123に与えられる、Y
arrowia lipolytica LIP2遺伝子のプロモーター及び3’UTR
/ターミネーターのヌクレオチド配列は、hphコード配列のLIP2遺伝子座への相同
組み換えのドナー配列として機能した。安定な形質転換体のゲノムDNAの評価は、サザ
ン法によって行われた。Fickersは、形質転換したYarrowia lipol
yticaの選択及び維持が、100ug/mlのハイグロマイシンを含有する標準的な
YPD培地(酵母エキスペプトンデキストロース)を含む寒天プレートで行われたことを
報告した。形質転換したYarrowia lipolyticaの液体培養は、ハイグ
ロマイシンを含有するYPD培地で行われた。Yarrowia lipolytica
の培養に用いられる他の培地及び技法並びにYarrowia lipolyticaに 10
用いられる数多くの他のプラスミド、プロモーター、3’UTR、及び選択可能なマーカ
ーについては、報告がなされている(例えば、Pignede et al.,Appl
ied and Environmental Biology,Vol.66:8(2
000),pp.3283−3289、Chuang et al.,New Biot
echnology,Vol.27:4(2010),pp.277−282、及びBa
rth and Gaillardin,(1996),In:K,W.(Ed.),N
onconventional Yeasts in Biotecnology.Sp
rinter−Verlag,Berlin−Heidelber,pp.313−38
8を参照)。Fickersは、形質転換ベクターJMP123並びにYarrowia
 lipolytica LIP2遺伝子プロモーター及び3’UTR/ターミネーター 20
が、Yarrowia lipolyticaにおける異種遺伝子発現を可能にするのに
適していることを報告した。さらに、Fickersは、JMP123でコードされるハ
イグロマイシン耐性カセットが、Yarrowia lipolyticaにおける選択
可能なマーカーとして用いるのに適していたことを報告した。
【0732】
 本発明の実施形態では、選択可能なマーカーとして用いられるhph遺伝子産物をコー
ドするヌクレオチド配列を含むベクターJMP123が、脂質生合成経路発現カセット配
列をさらに含むように作製及び改変され、それにより形質転換ベクターを作り出す。脂質
生合成経路発現カセットは、表70から選択される1つ以上の脂質生合成経路タンパク質
をコードし、各タンパク質コード配列は、表69A∼表69DのとおりのYarrowi 30
a lipolyticaの核遺伝子に固有のコドンの偏りを反映するように、Yarr
owia lipolyticaにおける発現用にコドンが最適化される。表70の各脂
質生合成経路タンパク質について、コドンが最適化された遺伝子配列は、個々に、タンパ
ク質コード配列の上流でYarrowia lipolytica LIP2遺伝子プロ
モーターに動作可能に連結し、及びタンパク質コード配列の3’領域で、又は下流で、Y
arrowia lipolytica LIP2遺伝子3’UTR/ターミネーターに
動作可能に連結することができる。形質転換構築物は、形質転換ベクターを標的化してゲ
ノムに組み込むための、Yarrowia lipolyticaゲノムに対する相同性
領域をさらに含み得る。相同性領域は、内在する脂質生合成経路遺伝子の1つ以上のゲノ
ム部位を破壊するように選択され得る。当業者は、Yarrowia lipolyti 40
caゲノムの配列内にあるそのような相同性領域を同定することができる(Dujun 
et al.,Nature,Vol.430(2004),pp.35−44による文
献中に参照される)。形質転換ベクターによるYarrowia lipolytica
の安定な形質転換は、酢酸リチウム形質転換を含む周知の形質転換技法又は他の公知の方
法により達成される。hph遺伝子産物の活性をマーカーとして使用して、限定されない
がハイグロマイシンを含むYPD培地で、形質転換ベクターにより形質転換されたYar
rowia lipolyticaを選択することができる。Yarrowia lip
olyticaの脂質生成に適した成長培地としては、限定されないが、YPD培地、及
びChuangらにより記載される培地が挙げられる。Yarrowia lipoly
tica脂質の脂肪酸プロフィールの評価は、本明細書に記載される標準的な脂質抽出及 50
(236) JP 2018-99138 A 2018.6.28

び分析方法により評価することができる。
【0733】
実施例43:Mortierella alpineの操作
 Mortierella alpineにおける本発明に従う組み換え遺伝子の発現は
、本明細書に考察されるとおりMackenzieらにより教示される方法及びベクター
を改良することによって達成することができる。簡潔に言えば、Mackenzie e
t al.,Applied and Environmental Microbio
logy,Vol.66(2000),pp.4655−4661は、プラスミドDNA
によるMortierella alpinaの安定した核形質転換を報告した。Mac
Kenzieは、プロトプラスト形質転換方法を用いて、Mortierella al 10
pinaにプラスミドpD4を導入した。プラスミドpD4は、hptタンパク質コード
領域の上流でMortierella alpinaヒストンH4.1遺伝子プロモータ
ー(GenBank寄託番号AJ249812)に動作可能に連結され、且つhptタン
パク質コード領域の下流でAspergillus nidulans N−(5’−ホ
スホリボシル(phophoribosyl))アントラニル酸イソメラーゼ(trpC
)遺伝子3’UTR/ターミネーターに動作可能に連結された、ハイグロマイシンBホス
ホトランスフェラーゼ遺伝子産物(hpt)をコードする配列を含む、ハイグロマイシン
B耐性カセットを含んだ。pD4による形質転換前、Mortierella alpi
naは、300ug/mlのハイグロマイシンを含む培地で増殖することができなかった
。pD4で形質転換すると、形質転換されたMortierella alpinaが得 20
られ、これは、300ug/mlのハイグロマイシンを含む培地で増殖し、それによりM
ortierella alpinaに用いられる選択可能なマーカーとしてのハイグロ
マイシンB抗生物質耐性カセットが確立された。安定な形質転換体のゲノムDNAの評価
は、サザン法によって行われた。Mackenzieは、形質転換したMortiere
lla alpinaの選択及び維持が、ハイグロマイシンを含むPDA(ポテトデキス
トロース寒天)培地で行われたことを報告した。Mackenzieによる形質転換した
Mortierella alpinaの液体培養は、ハイグロマイシンを含有するPD
A培地又はS2GYE培地(5%グルコース、0.5%酵母エキス、0.18%NH4S
O4、0.02%MgSO4−7H2O、0.0001%FeCl3−6H2O、0.1
%微量元素、10mM K2HPO4−NaH2PO4を含む)で行われた。Morti 30
erella alpinaの培養に用いられる他の培地及び技法については、報告がな
されており、Mortierella alpinaに用いられる他のプラスミド、プロ
モーター、3’UTR、及び選択可能なマーカーについては、報告がなされている(例え
ば、Ando et al.,Applied and Environmental 
Biology,Vol.75:17(2009) pp.5529−35及びLu e
t al.,Applied Biochemistry and Biotechno
logy,Vol.164:7(2001),pp.979−90を参照)。Macke
nzieは、形質転換ベクターpD4並びにMortierella alpinaヒス
トンH4.1プロモーター及びA.nidulans trpC遺伝子3’UTR/ター
ミネーターが、Mortierella alpinaにおける異種遺伝子発現を可能に 40
するのに適していることを報告した。さらに、Mackenzieは、pD4でコードさ
れるハイグロマイシン耐性カセットが、Mortierella alpinaにおける
選択可能なマーカーとして用いるのに適していたことを報告した。
【0734】
 本発明の実施形態では、選択可能なマーカーとして用いられるhpt遺伝子産物をコー
ドするヌクレオチド配列を含むベクターpD4が、脂質生合成経路発現カセット配列をさ
らに含むように作製及び改変され、それにより形質転換ベクターを作り出す。脂質生合成
経路発現カセットは、表70から選択される1つ以上の脂質生合成経路タンパク質をコー
ドし、各タンパク質コード配列は、表69A∼表69DのとおりのMortierell
a alpinaの核遺伝子に固有のコドンの偏りを反映するように、Mortiere 50
(237) JP 2018-99138 A 2018.6.28

lla alpinaにおける発現用にコドンが最適化される。表70の各脂質生合成経
路タンパク質について、コドンが最適化された遺伝子配列は、個々に、タンパク質コード
配列の上流でMortierella alpinaヒストンH4.1遺伝子プロモータ
ーに動作可能に連結し、及びタンパク質コード配列の3’領域で、又は下流で、A.ni
dulans trpC 3’UTR/ターミネーターに動作可能に連結することができ
る。形質転換構築物は、形質転換ベクターを標的化してゲノムに組み込むための、Mor
tierella alpinaゲノムに対する相同性領域をさらに含み得る。相同性領
域は、内在する脂質生合成経路遺伝子の1つ以上のゲノム部位を破壊するように選択され
得る。当業者は、Mortierella alpinaゲノムの配列内にあるそのよう
な相同性領域を同定することができる(Wang et al.,PLOS One,V 10
ol.6:12(2011)による文献中に参照される)。形質転換ベクターによるMo
rtierella alpinaの安定な形質転換は、プロトプラスト形質転換を含む
周知の形質転換技法又は他の公知の方法により達成される。hpt遺伝子産物の活性をマ
ーカーとして使用して、限定されないがハイグロマイシンを含むPDA培地で、形質転換
ベクターにより形質転換されたMortierella alpinaを選択することが
できる。Mortierella alpinaの脂質生成に適した成長培地としては、
限定されないが、S2GYE培地、並びにLuら及びAndoらにより記載される培地が
挙げられる。Mortierella alpina脂質の脂肪酸プロフィールの評価は
、本明細書に記載される標準的な脂質抽出及び分析方法により評価することができる。
【0735】 20
実施例44:Rhodococcus opacus PD630の操作
 Rhodococcus opacus PD630における本発明に従う組み換え遺
伝子の発現は、本明細書に考察されるとおりKalscheuerらにより教示される方
法及びベクターを改良することによって達成することができる。簡潔に言えば、Kals
cheuer et al.,Applied and Environmental 
Microbiology,Vol.52(1999),pp.508−515は、プラ
スミドDNAによるRhodococcus opacusの安定な形質転換を報告した
。Kalscheuerは、エレクトロポレーションの形質転換方法を用いて、Rhod
ococcus opacus PD630にプラスミドpNC9501を導入した。プ
ラスミドpNC9501は、Streptomyces azureus 23S rR 30
NA A1067メチルトランスフェラーゼ遺伝子の完全なヌクレオチド配列を、この遺
伝子のプロモーター及び3’ターミネーター配列とともに含む、チオストレプトン耐性(
thior)カセットを含んだ。pNC9501による形質転換前、Rhodococc
us opacusは、1mg/mlのチオストレプトンを含む培地で増殖することがで
きなかった。pNC9501でRhodococcus opacus PD630を形
質転換すると、形質転換体が得られ、これは1mg/mlのチオストレプトンを含む培地
で増殖し、それによりRhodococcus opacus PD630における選択
可能なマーカーとしてのチオストレプトン耐性カセットの使用が確立された。Kalsc
heuerにより記載される第2のプラスミド、pAK68は、耐性thiorカセット
、並びにポリヒドロキシアルカノエート生合成のための、lacZプロモーターにより駆 40
動される、Ralstonia eutropha β−ケトチオラーゼ(phaB)、
アセトアセチル−CoA還元酵素(phaA)、及びポリ3−ヒドロキシアルカン酸シン
ターゼ(phaC)遺伝子の遺伝子配列を含んだ。ポリヒドロキシアルカノエート生合成
欠損Rhodococcus opacus PD630株のpAK68形質転換後、形
質転換したRhodococcus opacus PD630が得られ、これは非形質
転換株と比べてより多量のポリヒドロキシアルカノエートを生成した。導入されたRal
stonia eutropha phaB、phaA、及びphaC酵素の検出可能な
活性から、pAK68プラスミドでコードされる調節エレメントが、Rhodococc
us opacus PD630における異種遺伝子発現に適していたことが示された。
Kalscheuerは、形質転換したRhodococcus opacus PD6 50
(238) JP 2018-99138 A 2018.6.28

30の選択及び維持が、チオストレプトンを含む標準的なルリアブロス(LB)培地、栄
養ブイヨン(NB)、又は無機塩類培地(MSM)で行われたことを報告した。Rhod
ococcus opacus PD630の培養に用いられる他の培地及び技法につい
ては、記載がなされている(例えば、Kurosawa et al.,Journal
 of Biotechnology,Vol.147:3−4(2010),pp.2
12−218及びAlverez et al.,Applied Microbial
 and Biotechnology,Vol.54:2(2000),pp.218
−223を参照)。Kalscheuerは、形質転換ベクターpNC9501及びpA
K68、Streptomyces azureus 23S rRNA A1067メ
チルトランスフェラーゼ遺伝子及びlacZ遺伝子のプロモーターが、Rhodococ 10
cus opacus PD630における異種遺伝子発現を可能にするのに適している
ことを報告した。さらに、Kalscheuerは、pNC9501及びpAK68でコ
ードされるthiorカセットが、Rhodococcus opacus PD630
における選択可能なマーカーとして用いるのに適していたことを報告した。
【0736】
 本発明の実施形態では、選択可能なマーカーとして用いられるthior遺伝子産物を
コードするヌクレオチド配列を含むベクターpNC9501が、脂質生合成経路発現カセ
ット配列をさらに含むように作製及び改変され、それにより形質転換ベクターを作り出す
。脂質生合成経路発現カセットは、表70から選択される1つ以上の脂質生合成経路タン
パク質をコードし、各タンパク質コード配列は、表69A∼表69DのとおりのRhod 20
ococcus opacusの核遺伝子に固有のコドンの偏りを反映するように、Rh
odococcus opacus PD630における発現用にコドンが最適化される
。表70の各脂質生合成経路タンパク質について、コドンが最適化された遺伝子配列は、
個々に、タンパク質コード配列の上流でlacZ遺伝子プロモーターに動作可能に連結す
ることができる。形質転換構築物は、形質転換ベクターを標的化してゲノムに組み込むた
めの、Rhodococcus opacus PD630ゲノムに対する相同性領域を
さらに含み得る。相同性領域は、内在する脂質生合成経路遺伝子の1つ以上のゲノム部位
を破壊するように選択され得る。当業者は、Rhodococcus opacus P
D630ゲノムの配列内にあるそのような相同性領域を同定することができる(Hold
er et al.,PLOS Genetics,Vol.7:9(2011)による 30
文献中に参照される)。形質転換ベクターによるRhodococcus opacus
 PD630の形質転換は、エレクトロポレーション(electoporation)
を含む周知の形質転換技法又は他の公知の方法により達成される。Streptomyc
es azureus 23S rRNA A1067メチルトランスフェラーゼ遺伝子
産物の活性をマーカーとして使用して、限定されないがチオストレプトンを含むLB培地
で、形質転換ベクターにより形質転換されたRhodococcus opacus P
D630を選択することができる。Rhodococcus opacus PD630
の脂質生成に適した成長培地としては、限定されないが、Kurosawaら及びAlv
arezらにより考察される培地が挙げられる。Rhodococcus opacus
 PD630脂質の脂肪酸プロフィールの評価は、本明細書に記載される標準的な脂質抽 40
出及び分析方法により評価することができる。
【0737】
 本明細書に引用されている全ての参考文献は、特許、特許明細書、刊行物を含め、Ge
nBank寄託番号も含め、その内容がすでに具体的に組み込まれているか否かにかかわ
らず、その全体が本明細書によって参照により組み込まれる。本明細書で述べられている
刊行物は、本発明と組み合わせて使用することが可能な試薬、方法及び概念を記載し、開
示する目的で引用されている。本明細書におけるいかなる記載も、これらの引用文献が本
明細書に記載した本発明との関連で従来技術であることを認めたものと解釈されるべきで
はない。特に、以下の特許明細書は、あらゆる目的のために、その内容全体が本明細書に
よって参照により組み込まれる:2008年6月2日に出願したPCT出願番号第PCT 50
(239) JP 2018-99138 A 2018.6.28

/US2008/065563号、名称「Production of Oil in 
Microorganisms」、2010年4月14日に出願したPCT出願番号第P
CT/US2010/31108号、名称「Methods of Microbial
 Oil Extraction and Separation」、及び2009年1
1月30日に出願したPCT出願番号第PCT/US2009/066142号、名称「
Production of Tailored Oils in Heterotro
phic Microorganisms」。
(240) JP 2018-99138 A 2018.6.28

【数1】

10

20

30

40
(241) JP 2018-99138 A 2018.6.28

【数2】

10

20

30

40
(242) JP 2018-99138 A 2018.6.28

【数3】

10

20

30

40
(243) JP 2018-99138 A 2018.6.28

【数4】

10

20

30

40
(244) JP 2018-99138 A 2018.6.28

【数5】

10

20

30

40
(245) JP 2018-99138 A 2018.6.28

【数6】

10

20

30

40
(246) JP 2018-99138 A 2018.6.28

【数7】

10

20

30

40
(247) JP 2018-99138 A 2018.6.28

【数8】

10

20

30

40
(248) JP 2018-99138 A 2018.6.28

【数9】

10

20

30

40
(249) JP 2018-99138 A 2018.6.28

【数10】

10

20

30

40
(250) JP 2018-99138 A 2018.6.28

【数11】

10

20

30

40
(251) JP 2018-99138 A 2018.6.28

【数12】

10

20

30

40
(252) JP 2018-99138 A 2018.6.28

【数13】

10

20

30

40
(253) JP 2018-99138 A 2018.6.28

【数14】

10

20

30

40
(254) JP 2018-99138 A 2018.6.28

【数15】

10

20

30

40
(255) JP 2018-99138 A 2018.6.28

【数16】

10

20

30

40
(256) JP 2018-99138 A 2018.6.28

【数17】

10

20

30

40
(257) JP 2018-99138 A 2018.6.28

【数18】

10

20

30

40
(258) JP 2018-99138 A 2018.6.28

【数19】

10

20

30

40
(259) JP 2018-99138 A 2018.6.28

【数20】

10

20

30

40
(260) JP 2018-99138 A 2018.6.28

【数21】

10

20

30

40
(261) JP 2018-99138 A 2018.6.28

【数22】

10

20

30

40
(262) JP 2018-99138 A 2018.6.28

【数23】

10

20

30

40
(263) JP 2018-99138 A 2018.6.28

【数24】

10

20

30

40
(264) JP 2018-99138 A 2018.6.28

【数25】

10

20

30

40
(265) JP 2018-99138 A 2018.6.28

【数26】

10

20

30

40
(266) JP 2018-99138 A 2018.6.28

【数27】

10

20

30

40
(267) JP 2018-99138 A 2018.6.28

【数28】

10

20

30

40
(268) JP 2018-99138 A 2018.6.28

【数29】

10

20

30

40
(269) JP 2018-99138 A 2018.6.28

【数30】

10

20

30

40
(270) JP 2018-99138 A 2018.6.28

【数31】

10

20

30

40
(271) JP 2018-99138 A 2018.6.28

【数32】

10

20

30

40
(272) JP 2018-99138 A 2018.6.28

【数33】

10

20

30

40
(273) JP 2018-99138 A 2018.6.28

【数34】

10

20

30

40
(274) JP 2018-99138 A 2018.6.28

【数35】

10

20

30

40
(275) JP 2018-99138 A 2018.6.28

【数36】

10

20

30

40
(276) JP 2018-99138 A 2018.6.28

【数37】

10

20

30

40
(277) JP 2018-99138 A 2018.6.28

【数38】

10

20

30

40
(278) JP 2018-99138 A 2018.6.28

【数39】

10

20

30

40
(279) JP 2018-99138 A 2018.6.28

【数40】

10

20

30

40
(280) JP 2018-99138 A 2018.6.28

【数41】

10

20

30

40
(281) JP 2018-99138 A 2018.6.28

【数42】

10

20

30

40
(282) JP 2018-99138 A 2018.6.28

【数43】

10

20

30

40
(283) JP 2018-99138 A 2018.6.28

【数44】

10

20

30

40
(284) JP 2018-99138 A 2018.6.28

【数45】

10

20

30

40
(285) JP 2018-99138 A 2018.6.28

【数46】

10

20

30

40
(286) JP 2018-99138 A 2018.6.28

【数47】

10

20

30

40
(287) JP 2018-99138 A 2018.6.28

【数48】

10

20

30

40
(288) JP 2018-99138 A 2018.6.28

【数49】

10

20

30

40
(289) JP 2018-99138 A 2018.6.28

【数50】

10

20

30

40
(290) JP 2018-99138 A 2018.6.28

【数51】

10

20

30

40
(291) JP 2018-99138 A 2018.6.28

【数52】

10

20

30

40
(292) JP 2018-99138 A 2018.6.28

【数53】

10

20

30

40
(293) JP 2018-99138 A 2018.6.28

【数54】

10

20

30

40
(294) JP 2018-99138 A 2018.6.28

【数55】

10

20

30

40
(295) JP 2018-99138 A 2018.6.28

【数56】

10

20

30

40
(296) JP 2018-99138 A 2018.6.28

【数57】

10

20

30

40
(297) JP 2018-99138 A 2018.6.28

【数58】

10

20

30

40
(298) JP 2018-99138 A 2018.6.28

【数59】

10

20

30

40
(299) JP 2018-99138 A 2018.6.28

【数60】

10

20

30

40
(300) JP 2018-99138 A 2018.6.28

【数61】

10

20

30

40
(301) JP 2018-99138 A 2018.6.28

【数62】

10

20

30

40
(302) JP 2018-99138 A 2018.6.28

【数63】

10

20

30

40
(303) JP 2018-99138 A 2018.6.28

【数64】

10

20

30

40
(304) JP 2018-99138 A 2018.6.28

【数65】

10

20

30

40
(305) JP 2018-99138 A 2018.6.28

【数66】

10

20

30

40
(306) JP 2018-99138 A 2018.6.28

【数67】

10

20

30

40
(307) JP 2018-99138 A 2018.6.28

【数68】

10

20

30

40
(308) JP 2018-99138 A 2018.6.28

【数69】

10

20

30

40
(309) JP 2018-99138 A 2018.6.28

【数70】

10

20

30

40
(310) JP 2018-99138 A 2018.6.28

【数71】

10

20

30

40
(311) JP 2018-99138 A 2018.6.28

【数72】

10

20

30

40
(312) JP 2018-99138 A 2018.6.28

【数73】

10

20

30

40
(313) JP 2018-99138 A 2018.6.28

【数74】

10

20

30

40
(314) JP 2018-99138 A 2018.6.28

【数75】

10

20

30

40
(315) JP 2018-99138 A 2018.6.28

【数76】

10

20

30

40
(316) JP 2018-99138 A 2018.6.28

【数77】

10

20

30

40
(317) JP 2018-99138 A 2018.6.28

【数78】

10

20

30

40
(318) JP 2018-99138 A 2018.6.28

【数79】

10

20

30

40
(319) JP 2018-99138 A 2018.6.28

【数80】

10

20

30

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(320) JP 2018-99138 A 2018.6.28

【数81】

10

20

30

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(321) JP 2018-99138 A 2018.6.28

【数82】

10

20

30

40
(322) JP 2018-99138 A 2018.6.28

【数83】

10

20

30

40
(323) JP 2018-99138 A 2018.6.28

【数84】

10

20

30

40
(324) JP 2018-99138 A 2018.6.28

【数85】

10

20

30

40
(325) JP 2018-99138 A 2018.6.28

【数86】

10

20

30

40
(326) JP 2018-99138 A 2018.6.28

【数87】

10

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30

40
(327) JP 2018-99138 A 2018.6.28

【数88】

10

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30

40
(328) JP 2018-99138 A 2018.6.28

【数89】

10

20

30

40
(329) JP 2018-99138 A 2018.6.28

【数90】

10

20

30

40
(330) JP 2018-99138 A 2018.6.28

【数91】

10

20

30

40
(331) JP 2018-99138 A 2018.6.28

【数92】

10

20

30

40
(332) JP 2018-99138 A 2018.6.28

【数93】

10

20

30

40
(333) JP 2018-99138 A 2018.6.28

【数94】

10

20

30

40
(334) JP 2018-99138 A 2018.6.28

【数95】

10

20

30

40
(335) JP 2018-99138 A 2018.6.28

【数96】

10

20

30

40
(336) JP 2018-99138 A 2018.6.28

【数97】

10

20

30

40
(337) JP 2018-99138 A 2018.6.28

【数98】

10

20

30

40
(338) JP 2018-99138 A 2018.6.28

【数99】

10

20

30

40
(339) JP 2018-99138 A 2018.6.28

【数100】

10

20

30

40
(340) JP 2018-99138 A 2018.6.28

【数101】

10

20

30

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(341) JP 2018-99138 A 2018.6.28

【数102】

10

20

30

40
(342) JP 2018-99138 A 2018.6.28

【数103】

10

20

30

40
(343) JP 2018-99138 A 2018.6.28

【数104】

10

20

30

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(344) JP 2018-99138 A 2018.6.28

【数105】

10

20

30

40
(345) JP 2018-99138 A 2018.6.28

【数106】

10

20

30

40
(346) JP 2018-99138 A 2018.6.28

【数107】

10

20

30

40
(347) JP 2018-99138 A 2018.6.28

【数108】

10

20

30

40
(348) JP 2018-99138 A 2018.6.28

【数109】

10

20

30

40
(349) JP 2018-99138 A 2018.6.28

【数110】

10

20

30

40
(350) JP 2018-99138 A 2018.6.28

【数111】

10

20

30

40
(351) JP 2018-99138 A 2018.6.28

【数112】

10

20

30

40
(352) JP 2018-99138 A 2018.6.28

【数113】

10

20

30

40
(353) JP 2018-99138 A 2018.6.28

【数114】

10

20

30

40
(354) JP 2018-99138 A 2018.6.28

【数115】

10

20

30

40
(355) JP 2018-99138 A 2018.6.28

【数116】

10

20

30

40
(356) JP 2018-99138 A 2018.6.28

【数117】

10

20

30

40
(357) JP 2018-99138 A 2018.6.28

【数118】

10

20

30

40
(358) JP 2018-99138 A 2018.6.28

【数119】

10

20

30

40
(359) JP 2018-99138 A 2018.6.28

【数120】

10

20

30

40
(360) JP 2018-99138 A 2018.6.28

【数121】

10

20

30

40
(361) JP 2018-99138 A 2018.6.28

【数122】

10

20

30

40
(362) JP 2018-99138 A 2018.6.28

【数123】

10

20

30

40
(363) JP 2018-99138 A 2018.6.28

【数124】

10

20

30

40
(364) JP 2018-99138 A 2018.6.28

【数125】

10

20

30

40
(365) JP 2018-99138 A 2018.6.28

【数126】

10

20

30

40
(366) JP 2018-99138 A 2018.6.28

【数127】

10

20

30

40
(367) JP 2018-99138 A 2018.6.28

【数128】

10

20

30

40
(368) JP 2018-99138 A 2018.6.28

【数129】

10

20

30

40
(369) JP 2018-99138 A 2018.6.28

【数130】

10

20

30

40
(370) JP 2018-99138 A 2018.6.28

【数131】

10

20

30

40
(371) JP 2018-99138 A 2018.6.28

【数132】

10

20

30

40
(372) JP 2018-99138 A 2018.6.28

【数133】

10

20

30

40
(373) JP 2018-99138 A 2018.6.28

【数134】

10

20

30

40
(374) JP 2018-99138 A 2018.6.28

【数135】

10

20

30

40
(375) JP 2018-99138 A 2018.6.28

【数136】

10

20

30

40
(376) JP 2018-99138 A 2018.6.28

【数137】

10

20

30

40
(377) JP 2018-99138 A 2018.6.28

【数138】

10

20

30

40
(378) JP 2018-99138 A 2018.6.28

【数139】

10

20

30

40
(379) JP 2018-99138 A 2018.6.28

【数140】

10

20

30

40
(380) JP 2018-99138 A 2018.6.28

【数141】

10

20

30

40
(381) JP 2018-99138 A 2018.6.28

【数142】

10

20

30

40
(382) JP 2018-99138 A 2018.6.28

【数143】

10

20

30

40
(383) JP 2018-99138 A 2018.6.28

【数144】

10

20

30

40
(384) JP 2018-99138 A 2018.6.28

【数145】

10

20

30

40
(385) JP 2018-99138 A 2018.6.28

【数146】

10

20

30

40
(386) JP 2018-99138 A 2018.6.28

【数147】

10

20

30

40
(387) JP 2018-99138 A 2018.6.28

【数148】

10

20

30

40
(388) JP 2018-99138 A 2018.6.28

【数149】

10

20

30

40
(389) JP 2018-99138 A 2018.6.28

【数150】

10

20

30

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(390) JP 2018-99138 A 2018.6.28

【数151】

10

20

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(391) JP 2018-99138 A 2018.6.28

【数152】

10

20

30

40
(392) JP 2018-99138 A 2018.6.28

【図1】 【図2】

【図3】 【図4】
(393) JP 2018-99138 A 2018.6.28

【配列表】
2018099138000001.app
(394) JP 2018-99138 A 2018.6.28

フロントページの続き

(51)Int.Cl. FI テーマコード(参考)
C10L 1/08 (2006.01) C10L 1/08           
C12N 15/113 (2010.01) C12N 15/113 130Z      
C12N 15/54 (2006.01) C12N 15/54           
C12N 15/09 (2006.01) C12N 15/09    Z      
C12N 15/56 (2006.01) C12N 15/56           
C12N 15/53 (2006.01) C12N 15/53           
C12N 15/55 (2006.01) C12N 15/55            10
A23D 9/02 (2006.01) A23D 9/02           
C10L 1/02 (2006.01) C10L 1/02           

(31)優先権主張番号 61/548,616
(32)優先日     平成23年10月18日(2011.10.18)
(33)優先権主張国  米国(US)

(72)発明者 スコット フランクリン
アメリカ合衆国 カリフォルニア 94080, サウス サンフランシスコ, ゲートウェイ 
ブールバード 225 20
(72)発明者 アラビンド ソマンチ
アメリカ合衆国 カリフォルニア 94080, サウス サンフランシスコ, ゲートウェイ 
ブールバード 225
(72)発明者 ジャニス ウィー
アメリカ合衆国 カリフォルニア 94080, サウス サンフランシスコ, ゲートウェイ 
ブールバード 225
(72)発明者 ジョージ ルデンコ
アメリカ合衆国 カリフォルニア 94080, サウス サンフランシスコ, ゲートウェイ 
ブールバード 225
(72)発明者 ジェフリー モーズリー 30
アメリカ合衆国 カリフォルニア 94080, サウス サンフランシスコ, ゲートウェイ 
ブールバード 225
(72)発明者 ウォルト ラキットスカイ
アメリカ合衆国 カリフォルニア 94080, サウス サンフランシスコ, ゲートウェイ 
ブールバード 225
(72)発明者 ザオ ジンワ
アメリカ合衆国 カリフォルニア 94080, サウス サンフランシスコ, ゲートウェイ 
ブールバード 225
(72)発明者 リヤズ バアット
アメリカ合衆国 カリフォルニア 94080, サウス サンフランシスコ, ゲートウェイ  40
ブールバード 225
Fターム(参考) 4B026 DC07 DG20 DP10
        4B064 AD87 AD89 CA08 CA19 CC24 DA10 DA16
        4B065 AA83X AA84X AB01 AC14 BA02 CA13 CA41 CA54
        4H013 BA02
(395) JP 2018-99138 A 2018.6.28

【外国語明細書】
2018099138000001.pdf

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