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今週の指標 No.

1252 2021 年1月 15 日

新型コロナウイルス感染症の影響による国内旅行消費の変化 ~旅行形態にみられる変化~

<ポイント>
1. 新型コロナウイルス感染症の世界的な拡大により、我が国の国内外旅行消費は何れも大きく落ち込んだが、
本稿では、国内旅行消費に焦点を当て、感染症の影響によりどのように変化したかを分析する。

2. まず、観光庁「旅行・観光消費動向調査」によると、国内旅行消費額は、緊急事態宣言期間を含む 2020 年
4-6月期は前年同期比▲83.2%と急減した。5月 25 日に緊急事態宣言が解除され、6月 19 日に都道府
県境をまたぐ移動の自粛要請も解除されると、7-9月期は前年同期比▲56.3%と減少幅は縮小したが、
依然として低い水準にある(図1(1))
。目的別内訳をみると、2019 年平均で約6割を占める観光・レク
リエーション(図1(2)
)は、4-6月期の減少幅が前年比▲85.0%と、帰省(同▲79.7%)や出張(同
▲81.0%)と比べて大きかった。しかし、7月 22 日から開始された Go To トラベルキャンペーン事業の
効果もあり、観光・レクリエーションの7-9月期前年比は前期から+31.4%ポイントの改善となり、帰
)1。
省(同+21.6%ポイント)や出張(同+15.7%ポイント)と比べて大きくなった(図1(3)

3. 国内旅行消費額の中で最大のシェアを占め、比較的戻りの早かった観光・レクリエーションについて詳し
くみると、感染症の影響により旅行者の旅行形態に変化が生じている。ここでは、感染拡大前の平均(2018
年~2019 年)と感染拡大の影響を受けた 2020 年について、それぞれ第3四半期までの特徴をまとめた。
(1)同行者数:例年多くみられた家族・親族や友人といった比較的大人数の旅行が急減した一方で、2020
年はひとりやパートナーとの旅行といった少人数の旅行の割合が増加(図2(1))

(2)宿泊有無:感染が拡大した3月以降は宿泊旅行も日帰り旅行もともに急減したが、特に宿泊旅行の
減少が大きく4~6月は日帰り旅行の比率が相対的に増加(図2(2)
)。
(3)宿泊数:2020 年は例年に比べて1泊の割合が増加し、旅行が短期化(図2(3))

(4)目的地:例年は同一都道府県内への旅行比率が約 20%の水準であるのに対し、2020 年は感染が拡
大した3月頃から同比率が 35%程度まで急上昇し、その後、緊急事態宣言の解除や Go To キャンペーン
事業の開始もありやや低下したものの、依然として約 30%程度の高い水準で推移し、遠方の旅行を控え
る傾向(図2(4)
)。
(5)交通手段:例年は鉄道・航空の利用が多いのに対し、2020 年は自動車の利用割合が増加する傾向が
続いており、旅行者が密を回避できる自動車を利用した近距離の旅行を選好(図2(5))

4. 以上のように、感染症の影響により国内旅行消費における旅行者の旅行形態には変化がみられ、これら
の変化をまとめると、旅行の「少人数化」、
「短期化」
、「近距離化」といったキーワードが浮かび上が
り、人々が感染予防を図りながら旅行という余暇を求めている様子がうかがえる。当面は感染拡大のリ
スクが続くことからも、家計の国内旅行消費と観光関連産業への影響を注視してまいりたい。

1なお、帰省については、7-9月期は例年お盆の帰省が増える時期ではあるものの、2020 年は7月後半から
8月前半にかけて感染が再拡大したため、その回復は鈍かった。出張については、テレワークの浸透などによ
り回復が鈍かったのではないかと考えられる。
図1:国内旅行消費額の推移

(1)国内旅行消費額(目的別)
(兆円)
10
9 帰省・
国内旅行 観光・
8 知人訪問等
レクリエーション
7
出張・業務等
6
5
4
3
2
1
0
Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅰ Ⅱ Ⅲ (期)
2017 2018 2019 2020 (年)

(2)目的別シェア(2019年) (3)目的別の前年比
(%)
-50
出張・業務 -53.6 2020年
-58.1 第3四半期
17% -60 -65.3

+31.4
-70 +21.6
20% +15.7
63%
-80
-85.0 -79.7 -81.0 2020年
帰省・ 観光・
第2四半期
知人訪問等 レクリエーション -90
観光・ 帰省・
出張・業務
レクリエーション 知人訪問等

図2:旅行形態の変化
(1)同行者
(百万人) (%)
120 50
自分ひとり+ その他
100 夫婦・パートナー
40
の割合(目盛右)
80 友人
夫婦・ 30
60 パートナー
家族・親族 20
40
自分 10
20 ひとり

0 0
平均 2020 平均 2020 平均 2020 (年)
Ⅰ Ⅰ Ⅱ Ⅱ Ⅲ Ⅲ (期)
(2)宿泊・日帰り (3)宿泊数
(百万人) (%) (百万人) (%)
50 80 60 100
日帰り旅行の比率 1泊の割合(目盛右)
(目盛右)
50
40 70 80
3泊以上
日帰り旅行
40
30 60 2泊 60
30
20 50 1泊 40
宿泊旅行 20

10 40 20
10

0 30 0 0
1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 (月) 平均 2020 平均 2020 平均 2020 (年)
2019 2020 (年) Ⅰ Ⅰ Ⅱ Ⅱ Ⅲ Ⅲ (期)

(4)同一都道府県内への宿泊旅行の割合 (5)最長交通機関
(%) (百万人) (%)
40 120 100
その他 自動車の割合(目盛右)
35
100 自家用車・ 80
30 レンタカー・
80 カーシェアリング 貸切バス・
25 2020年
長距離バス 60
20 60
鉄道・
15 40
モノレール
40
10 2019年
新幹線 20
20
5 航空

0 0 0
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12(月) 平均 2020 平均 2020 平均 2020 (年)
Ⅰ Ⅰ Ⅱ Ⅱ Ⅲ Ⅲ (期)

(備考)1.図1(1)~(3)、図2(1)~(3)、(5)は、観光庁「旅行・観光消費動向調査」により作成。
図2(1)~(3)、(5)は延べ宿泊者数。図2(5)は、最も長い距離を移動した交通手段を指す。
2.図2(4)、観光庁「宿泊旅行統計調査」により作成。

担当:内閣府 政策統括官(経済財政分析担当)付参事官(総括担当)付
浦野 愛理 (直通 03-6257-1569)
本レポートの内容や意見は執筆者個人のものであり、必ずしも内閣府の見解を示すものではない。

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