You are on page 1of 11

q CRATerre?

環境配慮型の建築・教育・途上国支援の実践

(建築家・クラテル「ポストマスター・コース」研究生)
はこの 部門がそれぞれ緊密に連

3
携しつつ活動を展開している。
クラテルの役割
世界から集まる研究生
としての活動の白眉は

81
O
N
G
年に始まり、現在も進行中の仏領
マイヨット島での圧縮土ブロック
による公共住宅建設事業であろう。

安田治文
ここではクラテル監修の下、これ
までの約 年間で 万戸のローコ

30

2
スト・ハウジングが建設され、数


万人の雇用が生み出された

1
0
0
現在、土の建築に関する研究機 という。
関は世界に存在するが、中でもド 一方、ラボラトリーの実績とし
イツ・カッセル大学と並んで先駆 ては﹃土の建築総論﹄
︽ TRAITE
フランス・グルノーブルに本拠地をもつ土の建築の研究所, クラテルである。

けとなるのはフランス・グルノー

Qu’est-ce que
クラテルとは?

DE CONSTRUCTION EN TER
ブル国立建築大学内の土建築研究 ︾︵ 年・ ページ参照︶の出版が

89

87
そこはローカルな経験がインターナショナルに通じる, 自由な広場だ。

RE
土を深めれば, 世界が広がる。土は現代の私たちの希望となり得る。


所﹁クラテルーエンサグ﹂である。 挙げられる。これはいわば﹁土の

1
もともとクラテルは同大学出身 建築の百科事典﹂であり、出版以
の建築家、パトリス・ドァト ︵ Pat 来、世界中の土の建築の研究者・
土の建築で世界を結ぶ有機的組織

、エンジニア、ユーゴ・

rice Doat 実践者に与えた影響は計り知れな
そんなことを示してくれるのが, 1979年に設立された
ウーベン︵ Hugo Houben
︶らにより い。同書は現在、英語、ロシア語
年に設立された土建築の へ翻訳されているが、日本語訳の

1
9
7
9
調査研究・修復・建設をミッショ 出版が実現すれば、先に出版され
ンとする であった。彼らの たゲルノート・ミンケ著の﹃土・

O
N
G
思いは﹁土を中心に用いてエネル 建築・環境﹄と並んで土の建築の

土は地球中にあって世界を結ぶ。
ギーや資源を浪費しない﹂
﹁貧富
の差を拡大しない﹂
﹁その土地の

クラテル創業者のひとり、パトリス
・ドァトさん一家と丸山さん。
建築文化を尊重する﹂建築のあり
方を探し求めることだった。

グルノーブル
リヨン
クラテル
パリ

CONFORT April 2012


年に技術者養成・普及のため

84
グランザトリエ
の教育部門、続いて 年に各種分
ngs
ngs
gs

86
hin
iin
ful
ul
ul
hi
ure

tiffu
mmymy

seeTTh
析試験のためのラボラトリー部門
Feeatur
eatur
ur

tif
seT
tu

ti
uti
neese
ut

Q
Dumum
Beeeaau
Fea
ea

paane
Bea
Du u

ann
D
が同大学内に設立された。現在で

B
JJap
Jaaap

079
080

表2 土の特性の同定試験
「土のお祭り」では、同時多発的にワークショップやセミ

地質学者のユベール・ギヨー
︵ ︶
教授︵ TRAITE DE
ナーが開かれる。泥を入れる船のかたちもおもしろい。

Hubert Guillaud
鉱物学的特性
微細粒子の特性

周辺風景の観察
著者︶による世界の土のヴァナキュラー
表1 ポストマスター・コース(DSA-terre)前半の

CONSTRUCTION EN TERRE
1

X線照射分析
建築文化論
土の建築への科学的アプローチについての座学と、各種分析試験および
2

各種構法︵版築、
圧縮土ブロック、荒壁土、アーチ、
ドーム︶の実技

硫酸塩)
(酸性⇔アルカリ性)

PH試験紙を用いる
化学反応性
化学的特性
途上国の居住環境改善、および先進国での環境配慮型住居の創造のた

炭酸塩、
匂いを嗅ぐ
めに必要な実務︵プロジェクト・サイクル・マネージメント手法、
ライフサ

化学分析
3

(塩、
イクル分析、
温熱環境測定、 耐震設計、デザイン実技など︶
文化遺産の保存修復に必要な実務の習得︵観光と世界遺産運営論、保
カリキュラム

乾燥による収縮性
存修復技術論、クラテル周辺の版築集落の保存修復プロジェクトの実

日干レンガの試作
4

サンプルの試作

アルコック試験
施など︶

収縮性

トローチ状
大バイブルとなるに違いない。 研究生は 分の がフランス人、 設団体等で活躍している。特筆す

圧縮ブロックの試作
2

空伱度と透水性

プロクトール試験
突き固めの試行
教育部門では、世界の土の文化 あとの 分の が外国人枠で、現 べきはこのため、クラテラが世界

圧縮性
2

遺産の保存修復、途上国の居住環 在はスペイン、ポルトガル、チリ、 中に張りめぐらされた土の建築ネ


境改善、および先進国における環 アルジェリア、モロッコ、中国人 ットワークのピボットとして機能
境配慮型建築開発の 分野の専門 などが在籍している。過去におい していることである。
84 3

粒子の結合力
家養成を目的として 年に開講し ては中南米、中東などからも参加 年にはユネスコのイニシアチ

サンプルの試作
シガレット試験
88

凝集性

水性試験
透水性試験
トローチ状
た﹁ポストマスター・コース︵ しており、アジアは比較的少ない。 ブによりクラテル内にこのネット

圧縮試験

引張試験
D
S

﹂が挙げられる。 年間のうち
︶ 筆者は現在、 ∼ ワークのための事務局が設置され
A

2
0
1
0
2
0
1
2
ヶ月間は講義と実技 ︵表 ︶
、残 年セッションに在籍中である。 た ︵ Chaire UNESCO
。環境問題、

6

メチレンブルー試験
含水率による変化
りの 年半の間に 年間のフィー これまでの 年間で約
28 名 居住問題、復興支援など地球規模

シガレット試験
1

3
0
0

塑性限界試験
可塑性

透水性試験

液性限界/
ルドワークと論文執筆期間、 ヶ の を輩出しており、彼らは世 の問題への全世界的な取り組み強
O
B
6

月間の土のフェスティバルのため 界中に散らばって、国際 、 化が求められている昨今、クラテ

O
N
G
の準備・開催期間が含まれる。 大学・研究所、国連機関、土の建 ルの存在はさらにその重要性を増
このコースの募集は 年毎にし してゆくことであろう。

(粒度分析試験)
大きさの異なる

沈降状態の観察
粒子の分別
2

残留物の観察
粒度
か行われず定員は 数名。建築学、

手洗い時の
洗 時の

瓶詰による

20

沈降試験
土と砂とワラを足で練る。世界中
土を科学的に研究する

篩がけ
あるいは考古学、材料学の大学院

目視

の卒業者、あるいは O などで クラテルには建材としての土の
N
G

フィールドでの
の勤務経験者が大半を占めている 特性を分析するための機器、世界

実験室での
で見られる風景。

試験項目
着目点
各地の土のサンプル、さまざまな

試験

試験
︵選考の際にはポートフォリオやモチベ
ーション・レターが重視される。学費は 土ブロック、土パネルなどの建材

年間で ∼ 万円︶ サンプル等が えられたラボラト
16
18
2
リーが併設されており、ポストマ う。さらに、出来上がった建材と 院、学校等への転用案あり︶の設計・ 自身によるセルフビルドへの後方
スター・コースの研究生、 た しての強度 ︵圧縮/曲げ/せん断/耐 施工監理を担当している。 支援と技術移転である。
O
B

ちは自由にここを使うことができ 、構 造 体 と し て
水性/耐摩耗性他 ︶ コンセプトは以下 つの柱から この工法の採用に至るまでには、
3

る。クラテル自体や研究生 が の強度 ︵耐震/耐風ほか︶も把握し、 成る。一つめはインターロッキン 現地の土の適性試験 ︵粒度分析︶



O
B

関わるプロジェクトの土サンプル 基準適合とするか否かの判断をし グ・タイプの圧縮土ブロックによ インターロッキング・ブロックの


が世界各地からこのラボに送られ、 なければならない。 る工期最短化と低コスト化、二つ 強度試験 ︵一軸圧縮︶の実施、平屋
分析結果が返送される。この結果 たとえば、事業のもっとも初期 めは現地住民の﹁森の知恵﹂を総 建てとすることによる垂直荷重の
をもとに各現場レベルで適切な建 段 階 で は、
﹁ 粒 度 分 布・ 沈 降 試 動員した地場材料 ︵土、礫、砂、木 軽減、地震強風のない、すなわち
設システムの選択、土質の調整な 験﹂︵表 ︶をはじめ、保水性を調 材、ラフィア椰子、竹、柿渋など︶によ 水平荷重が軽微なアフリカ内陸部
3

どが行われる。 べる﹁メチレンブルー試験﹂
、膨 るアフリカ熱帯雨林建築の新たな 森林地帯という気候風土、などの
現地の土を左官材としてだけで 張性とねばりを調べる試験などが プロトタイプ開発、三つには住民 諸条件が検討された。
なく構造材として使うためには 行われる。これにより、まず、そ 熱帯雨林という、土の建築にと
様々な試験によって土の特性を把 の土が建材に適しているか否かが っては厳しい気候条件の下で圧縮

表3 あるサンプル土による粒度分析・沈降試験
篩を通った割合

%
握し、建材形式、構造様式に合っ 問われ、次にどのような建設シス 土ブロックによる建設をぜひ成功
100
粘土

0.002 0.001
90
80
70
60
50
40
30
20
10
0
た特性へと最適化する必要がある。 テム ︵版築/圧縮土ブロック/日干し シルト させ、日本の風土においても新た
場合によっては構造材としての使 レンガ/荒壁土など︶が適している なヴァナキュラー建築を生みだす

0.02 0.01
篩の目(㎜)*0.8ミリ以下は沈降試験による
用を断念することもありうるだろ かの判断が求められる。 ための足がかりとしたい。
現在 つの集落にそれぞれフィ

細砂

2
カメルーンのプロジェクト
ールド・ステーションを建設中で

0.2 0
土を篩うと、どんな粒子から構成さ
れているかがわかる。子どもたちも
楽しみながら、自然の仕組みを知る

ENSAG=Ecole Nationale Supérieure d Architecture de Grenoble

ポストマスター・コースのフィ あり、共に今年 月中旬の竣工を


名前は、Centre de recherche et d application en terre(土の調査研

3
粗砂
ールドワークは通常、世界各地の 目指し、追込み中である。詳しく
*2「カメルーンにおける熱帯雨林保全と住民生計の両立」プロジェクト

1
*1 CRAterre=Centre international de la construction en terre

クラテル たちからのオファー は 人間居住機構ウェブサイ

2
ことができる方法。

O
 http://craterre.org/

N
G
B *
を事務局が整理し、研究生に割り トを参照されたい。

3
*3 NGO人間居住機構 http://www.equipe-terre.org/

20 10
ふっていくのだが、私の場合は自
分で準備してきたプロジェクトへ


http://www.fosas.africa.kyoto-u.ac.jp/

100
の参加をもって当てることとした。

0
10
20
30
40
50
60
70
80
90
100

建築家、NGO人間居住機構理事長。福岡県
生まれ。1997年から2000年まで青年海外
協力隊員としてモロッコの土の建築(カス
バ)の保存修復に携わって以来、国際協力機
構(JICA)の派遣専門家としてアフリカ各
地で貧困削減事業に従事。2012年からフラ
ンス国立グルノーブル建築大学・土建築研究
所クラテルに在籍し土の建築の研究を進める
一方、途上国における居住環境改善、先進国
における環境配慮型建築の開発に土の建築技
篩に残った割合

(6–8%程度)のセメントを混ぜ、
究と応用センター)からとったもの。

私が参加したのは京都大学アフ

左/狩猟採集民ピグミー(前列・
左端は筆者)と焼畑農耕民バンツ
ー(後列)から同数動員された自
力建設部隊。中央/圧縮土ブロッ

廉価なプレス機で圧縮してつくら
れる。右/技術を覚えた現地作業
員は別の現場では講師となる仕組
ク。現場の土を主原料に最小限
赤い曲線はサンプル土の粒度、
斜線は圧縮土ブロックを想定し
た許容範囲を示す。この土の場
合、粘土、シルトが多すぎ、粗
砂が少なすぎる。つまり、乾燥
時の収縮が大きすぎ、圧縮強度
が弱いため、粗砂、細砂を添加
リカ地域研究資料センターによる

術を応用する活動を展開している。
http://www.equipe-terre.org/
(国立グルノーブル建築大学)

安田治文 YASUDA, Harufumi


﹁カメルーンにおける熱帯雨林保
p.80–81 *photo/Gino Maccarinelli

全と住民生計の両立﹂をテーマと

するなどする。

CONFORT April 2012


したプロジェクトで、調査団のた

2
め の フ ィ ー ル ド・ ス テ ー シ ョ ン

み。
︵ 年後のプロジェクト終了後は地元住

5
民に移譲予定。地場資源運営事務所、病

081
082
ローヌ・アルプ地方のリヨン郊
上/地震や台風の被害を受けたハイチで、住民たちが自力で「300
ドルの家」をつくれるようプロトタイプを建設。木軸造の枠組みに
土や日干し 瓦を充填してゆく。下/ドイツ、イタリア、オースト
リア、コロンビア、中国、韓国などから学生、建築家、研究者、ジ
ャーナリストが参加。食事はほぼ自炊で、料理の交流もあった。
研究と交流の祭

外の町、ヴィルフォンテーヌ︵ Ville
10e Festival Grains D’Isère

︶にグランザトリエ ︵ Les
fontaine
︶という、まさに
Grands Ateliers
子どもと大人を土がつなぐ

﹁大きな実験工房﹂がある。フラ
ハイチ災害復興住宅のための試作

ンスのみならず欧州の建築教育の
中でも先鋭的な試みとして創設さ
他文化と他言語,
CRATerre?

れた国の実習機関で、この地方の
鈴木晋作

建築大学の研究室や学生が木材、
土、レンガ、石などを用い、自ら
Qu’est-ce que

の手を動かして、建築の実験、試

作、実習、講義を行っている。
こ こ で、 年 月 日
2
0
1
1


︵ 水 ︶∼ 日︵ 日 ︶
、土の建築祭り
5

﹁ 10e Festival Grains D Isère


﹂が

グルノーブル大学院生たちの提案
による版築の実験住宅。版築壁を
機械を用いて工房で生産、フォー
クリフトで移動させたり、現場で
手でつくったものを連ねて壁を形
開かれた。 回目となる今回のテ のプログラムが組み合わされてお
10

頭と体で知るプログラム
ーマは、
﹁土に住まう ︵ Habiter La り、学生達は日ごとに、次のよう

成し、屋根を支える。
︶﹂。土の建築に関わる職人、 ここでは会期の前から即興的か な体験が得られるアトリエを る。

版築の実験住宅
Terre
アーティスト、研究者、建築家、 つオープンなワークショップが同 ﹁土を知る﹂科学的に土を分析

1
エンジニア、グルノーブル建築大 時多発的に開かれている。そこに し、理解し、応用する。
学や他国から自主参加の学生がフ は職人やアーティスト、建築家と ﹁土に親しむ﹂泥まみれになっ

2
ランスのみならず、世界中から訪 いった領域や、理論と実践の聖域 て身体を動かす経験を得る。
れる。日本からは建築家・丸山欣 はない。参加者たちは﹁それはす ﹁土を広げる﹂世界の土の技術

3
也氏 ︵アトリエモビル︶が ごい。かっこいい。エコロジカル を知り、建築の可能性を広げる。
2
0
0
2

年から毎年招聘されている。 だ﹂といって、その場で講習が始 ﹁土を形にする﹂職人、アーテ

4
祭りの主催者はクラテルで、国 まる。材料も道具もそろった広大 ィストの個性に触れる。
や地方が出資し、土の職人アソシ な空間の中で、できるだけのこと 学生は、それぞれの﹁イイトコ
エーション﹁アステル ︵ AsTerre
︶﹂ を身に付けよう、自分の現場や国 どり﹂をして自分の関心と特性を
が協力している。ヨーロッパのみ に持って帰ろうと、会場は高揚感 深め、いつしか﹁土のとりこ﹂に
ならず世界中を取り巻くエコロジ に沸くのである。 なる。
ー の 流 れ に 即 し た も の で あ り、 この製作展示的なワークショッ クラテルによって仕掛けられた
﹁セメントに替わる、再生可能な プは一見、始まりも終わりもない、 プログラムは、この工房の中だけ
土﹂を探るという大きなテーマが 成り行き任せに見えるが、クラテ に留まらない。土の理解、分析方
見えてくる。 ルによって実に巧妙に講義と実習 法の授業を履修したグルノーブル
建築大学の大学院生は、地元の小 した。

下地パネル、既製の土のブロックなどの展示もあり、さながら「土エキスポ」
会場には欧州各国の土、砂、藁や顔料、材料メーカーの既調合の土壁材、暖房
用温水パイプを埋め込んだプレキャストの土壁パネル、葦を結わえた塗り壁の

・中学校で課外授業として講義を
フランスから日本を見る
行う。子供たちはその上で、グラ
ンザトリエで泥まみれになって実 今回私は、丸山氏のサポートと
技を行う。版築住居が多く残るこ してこのアトリエに滞在し、製作
の地域の人々、子供たちに土の建 と研修講義を行った。適当な言語
築を知ってもらうのは、その保存 をなんとか駆使して学生や職人た
と再生に繋がると考えている。 ちと共に物をつくるうちに感じる

加えて今回は、世界中から招聘 のは、彼らの日本の職人、技術に
された先鋭の建築家、アーティス 対する憧れと、客観的な事実とし
トがミニレクチャーを毎日行い、 ての日本の左官の高度な技術と特
世界の土の建築の動きを知ること 殊性、また、それをつくり出した
ができた。日本からは丸山欣也氏 日本人の特別な建築観、自然観で
がこれまでの作品を、多田君枝氏 あった。
︵本誌︶が伝統と現代の左官を紹介 前回、久住有生さんが壁を塗る
ときは、いつの間にか人だかりが

作中。左2点/大学生が小学校に通い、
講義を行うところから始まる連続授業。
でき、その無駄のない動きに皆が

子どもたちは遊びながら土に親しむ。
右上/油圧式の土の圧縮機で土ブロッ
クをつくる。右下/版築のモデルを制

子どもたちが空想した妖怪を、パトリ
ス夫人ナタリー、娘さん、造形家のエ
リザベスさんが学生と一緒にデザイン
を起こし、共に泥団子を積んで造形し
見入っていた。まさに心技体とい
乾いたが、完成の翌日豪雨に襲われ、溶けて流れて、夢の迷宮は土に環ってしまった。
軸材に竹を立て、葦の束を互いに持たせかけ竹や縄で補強し、即興で空間がつくられ
て行く。葦の下地に泥を塗り、最後は子どもたちが色土と顔料で絵を描き、土の迷宮
が数日で出現した。この時期、現地は雨不足に悩まされており、泥はあっという間に

頭と手で知る土の科学、
った優美な鏝と鏝板と材料の共演 み、侘び寂びを愛でる、空間の中
は、何かの﹁道﹂や﹁舞﹂のよう にミクロな自然を見るといった感
にも感じられるのだろう。 覚がある。
たしかに日欧の職人は、鏝の音 これに対してヨーロッパでは、

美術教育
ひとつとっても、まるで違う。材 土には構造体、蓄熱体としての期

た。
料、道具が異なるので、必然の現 待が多く、その工法は機械化され、
象ではあるが、前者は﹁すぅー﹂ 粘土、骨材の調合、含水率の管理

丸山欣也氏による子どものための土の迷宮
と鏝で水面をなでて、スサが浮か は非常に科学的、合理的である。

同行し、クラテルの研究者、職人を知る。
建築旅人。広島に生まれ、神戸で育つ。建
築家丸山欣也氏に師事し、自然住宅の設計
施工「光風林」を経て2004年から日本と
世界の現場を歩くフリーランスのビルダー
に。NGOのボランティアとして東チベッ
ト、ラオスで現地の人々と生活しながら自
力建設を行う。07年から、ナントでのア
ートビエンナーレ(Estuaire)で丸山氏に

日本では、自然素材の住まいの施工、ロー
カルなテクニックを使ったワークショップ
んでくるように塗り、後者は﹁し どちらがいいということはない。
ゃりしゃり、がりがり﹂と鏝で砂 どこかで繋がる共通点は、職人の
を擦り付ける。その壁を具現化す ものづくりの探究心と、土と水を

鈴木晋作 SUZUKI, Shinsaku


る職人の感性が異なるのである。 扱うことに起因するエコロジー的

CONFORT April 2012


壁と対話し、自然を具現化した な感性といえるかもしれない。
ような水ごね、糊土の撫でものに また世界の職人、建築家が協働

を展開中。
見るように、日本の左官には、う し、交流するということは、新し
つろうものや自然なあり様を楽し い建築、材料、仕上げに留まらず、


この先の建築家像、職人像の発想

083
にもなるのではないだろうか。
環境配慮型建築の推進

084
選ばれ、クラテルの緊密な協力の ら開発されてきた工法で、ここで
ル・ドメイン・ドゥラテールから7∼10㎞東にある村。あちこちに版築や土でつくられた住宅や納屋が建っている。なんとも平和な風景だ。

もと、リヨン郊外のニュータウン は土を振動させながら圧縮させた
に低所得者層 ︵ ︶向 け の 土 土ブロックが、機械が完備された
M
H
L

の集合住宅が建てられた。これが 工場で製造された。主なサイズは
﹁ル・ドメイン・ドゥラテール︵土 × × センチで、版築に用い
土の現代建築の先駆けを80年代に竣工

20
20
50

﹂である。
の領域︶ る土よりも砂が多い材料に ∼
5
8

このプロジェクトの主な目的は、 パーセントのセメントを混入し、
Le Domaine de la Terre

伝統工法を現代住宅に適用するこ 強度を高めた。これらを目地材を
磯村雅子(クラテル修了生)
 編集部

とで、製造時に使うエネルギーが 用いて積み上げていった。
写真 Gino Maccarinell(*)

少ない土の建築の復活、再生への わら土壁は、液体状に溶かした
契機とすることだった。またさら 粘土と麦わらを混ぜ合わせた材料
CRATerre?

に建築材としての土に関する科学 を、木製の軸組に固定した型枠の
的、技術的な研究を促し、実際に 中に充填して壁を構築する工法。
Qu’est-ce que

公的機関を含む建設工事に関わる 壁の厚さは センチあり、型枠を


25
様々な分野のネットワークの確立 取り外した後、十分な乾燥養生が

を目指した。 必要となる。わらの量が多いため
建物は 階建または 階建てで、 引張り力と断熱性に優れている。
2

フランスのローヌ=アルプ地方、 棟、住戸総数は 戸。建設期間 棟の建物はさまざまなデザイ


11

8 65

12
リヨン南東部の郊外に、特色ある は ∼ 年。版築造、 ンだが、土の建物の最大の弱点で
1
9
8
2
1
9
6
土の建築が残る地域がある。ここ 圧縮土ブロック造、わら土造が用 ある雨水や湿気などに対する保護
では型枠の中に入れた土を叩き締 いられた。 として、軒の出を十分にとり、基
めて壁を構成する﹁版築﹂工法の 版築工法は前述の通り、型枠の 礎は 造で十分な高さをとるな

C
R
建物が、主に 世紀から 世紀初 中に土を入れ叩き締めて、堅固な どの対策がとられている。また、
18

20

頭にかけて建設された。 壁を構築する工法である。元々こ 外壁に土がそのまま表されている


しかしその後、伝統的な工法は の地域の土壌は、粘土分は少なく 版築造では、土の層ごとに水切り
廃れ、コンクリートや鉄を用いる 砂や砂利が多く含まれ、版築工法 用の石灰モルタルの層を取り入れ
建築が隆盛となる。そんな風潮の に適しているため、セメント等は たり、特に破壊の起きやすいコー
なかで大きな反響を巻き起こした 混入されていない。また伝統的な ナー部は石灰モルタルなどで補強
のが、 年、パリのポンピ 方法を改良し、木製の型枠の代わ するなどの工夫がされている。
1
9
8
1

ドーセンターで開かれた土の復活 りに鋼製の型枠が、叩き棒でたた 一部補修を行いつつ、 年近く

30
を提唱する展覧会﹁﹁
﹁ A rchitectures き締める代わりにエンジン付きの 経過した現在も比較的良い状態を
﹂であっ
︵ Down to earth
︶ ランマーが使用された。壁厚は 保ち、土の建築の伝統工法を現代

40
de terre
た。そして同展に付随して行われ センチで、断熱材も使用された。 によみがえらせた貴重な集合住宅
たコンペの結果、 人の建築家が 圧縮土ブロック造は数十年前か としての役割を果たしている。

4
参考文献:International Year of Shelter for the Homeless Project Monograph ìIn l Isle d Aveau : Le Domaine de la Terre î

* *
版築(pisè)の棟。円筒形の部分は階段室。コーナー部の白い三角形は石灰モルタルによる補強で、土壁の崩壊を防ぐ。この地方の版築建築に多く見られる方法。

磯村雅子 ISOMURA, Masako


大学卒業後、デザイン事務所、設計事務所勤務を経て、1995年に
クラテルへ。世界各地から集まった学生達とともに土の建築の世界
に出会う。その後も折に触れ日本や海外の土の建物との出会いを続
けている。

上右/集会所?。塔の部分
は5階建てで版築、両側は
圧縮土ブロック造。上左/
圧縮土ブロック造。レンガ
造のように目地材を用いて
積む。下右/置き屋根に半
透明の波板を使用した版築
の住宅。白い線は石灰モル
タル。下左/建物の周囲の
一部に補強のための木造の
筋交いが設けられた版築造
の住宅。クラテルでは、定
期的に断熱効果の調査を行
っており、土の建築の改善
に役立てている。

085 CONFORT April 2012


先生であり、
プロジェクトリーダーでもある。
多彩に活動する人々がたくさん集まってくる。
なのだろう。
鈴木晋作

粘土、自然系の顔料、カゼイン、セルロースなどを配合した塗
装(クレイペイント)や土の塗り壁の施工例。モロッコのマラ
ケシュで習得したタデラクトも得意とし、シンク、バスルーム

086
シルヴィー・ウイーラー
現場主義の土の装飾家

Sylvie Wheeler
どう個性を表現するか、
研究者であり、


土のアーティストであり、

などもよく施工するという。
CRATerre?
職業で枠をつくることはない、

Qu’est-ce que
クラテルの周辺には、

出張に行く彼女の車には、各種 初めての出産を契機に、シルヴィ
の材料と道具と共に、エスプレッ ーとその家族にとってエコロジー
ソマシーンとオーガニックのパン は最優先の課題となった。さらに
とジャムがお気に入りの と一 年後の父の死を経て、仕事でも

10
D
C
緒に入っている。現場に行く前に 自然素材を使うことを決意。父の
も必ず、優雅に朝食を楽しむ。道 死因は癌で、塗料の有害物質を長
すがらハーブをみつけては撫でて 年に渡って大量に摂取していたこ
□□□□□□□□□■□□□□□□□□□■ 匂 い を 楽 し み、 し き り に﹁ 可 愛 とが原因だったという。
い﹂という。そんなシルヴィー・ 常に研究と実践を続け、他分野
ウィーラーは南仏・モンペリエに の専門家ともアイデアを交換する
拠点を置く、土の塗装、左官装飾 のがシルヴィーのやり方だ。

2
0
の専門家である。 年にはモンペリエ大学で﹁歴 参加。エコロジカルな建物が具現

0
6
年創業の装飾塗装職人 史的建造物の発展と保存﹂に関す 化し、より多くの人に届くように

1
8
9
0
の家に生まれたシルヴィーは、 るプロフェッショナルライセンス との思いからだ。

80

年代初め、技能競技で 回金賞に も取得。現在は装飾ペインターか

3
各国の土の文化に学ぶ
輝いた経験をもつ父の元で技術を つ歴史的建造物と環境の保存を最
学び、職業訓練校を修了して、フ 優先した補修と仕上げのコンサル ﹁ 土への興味は尽きることがな
ランスでも珍しい女性職人として タントとして、仕事を行う。 い﹂というシルヴィーは、世界を
独立。パリで働いた後に、モンペ また、クラテルやエコロジカル 旅してその土地の土に触れ、試作
リエに拠点をもった。 な材料を供給するメーカー、アク も行う。 年代後半から、アジア、

80

全ヨーロッパを震撼させた テルなどと共に、技術をもつ専門 とりわけインドと日本を多く旅し

2
1
9
年のチェルノブイリ原発事故、 家を養成し、ワークショップにも てきた。なかでも﹁土壁﹂に興味

8
6
土の建築の歴史から実践まで
Trraaiité
té de Cons
Constr
Co nsstr
truc
uccti
u t on
on en tte
err
rre
文 磯村
磯 雅雅子

筆者は は同書の
同書のフラン
フラ
フラン
ラン
ラ ンス語版
ス を日本
を日本
日 語に翻 翻訳、出出版社版社
を探
を探している
を探し
探 ているいる。なお
い 。なお、英語
なお、英語
英語
語版はは Ear
arth
ar th
h Con
Constr
strucc
str
tio
on と
として
して
し て199
99
994
944年に出
年に出版され
版さ
版され
されている
されているる。

 クラ
クラ
クラ
ラテルの
テルの
の主要
主要な
要 メンバ
メンバ
バーであ

ーで るユーゴ・ウ
るユーゴ・ウ
ゴ・ ーベン氏とユ
ーベン
ベン
ン氏とユ
とユベール
と ル・ギヨ
・ギ

ギヨ
*1 Meilleur Ouvrier de France *2 www.akterre.com
氏は 他のメ
氏は
氏は、他の
のメンバー
バーや多く
や多
や多く
や多 の関係
の 係者とと
ともに、
もに
に 長年世界各地
長年世
年世
年世界各地
各地
地の
の土の

土の建
土の建築に
建築に
築に

*3 Association Nationale des Professionnel de la Terre Crue 
ついて
ついて調査、
い 調査、
調査
査 研究を
研究を行い、
を行い、
行い
い 普及
普及活
及活
及活動を行
を行ってき
ってき
きた。そ
た。その過程
過程
程にお
におけ
おける集大
る集大 www.asterre.org
*4 Ma terre première pour construire l avenir
成のひ
成の
のひとつと
の とつ
つととして、
して
て 198
19 年に Tr
9 9年に T ait
ai é d
dee C ons
on
nss tru
t ru
tr u cti
ctt on err re (英訳
o en Ter 英訳
訳本

個人間のつなぎ役である。
会のコーディネーターや、日仏の
っこい情熱的な性格で、職人、協
交流はその後も続いている。人懐
レンスを企画するなど、日本との
と農と住まいにまつわるカンファ
クショップを行い、日仏会館で食
では、日本の職人たちと共にワー

くを学ぶことになったという。
クラテルやアクテルからさらに多
をもち、技術を習得した。そして、
Ea
art
rrth
th Co
Const
nst
n struc tiion )が出版
uctio
u tion が された。
された
れ 。

ちなみにフランスでは、職業訓

グランザトリエで行われる祭り
 世界
世界各地
世 各地に
各地 は特色
は特 あ
ある土
土の建
の建築
建築が数多
数 く残され、今
数多く残さ
残 れ、今
残さ 、今
今もつく
もつ
つ られて
られているが

いる
いるが、
こ 本ではシ
この
この本 はシ
シンプ
ンプ
ンプル
プルなイラ
なイラストを
なイ ス
ストを用いて
用い
いて、土
、土の
土の建築
土の建築に
建築に
築に関わる
に関わる
関わ
わる普遍的
わ 普遍的なテー
なテー
テー
テー
マや一般的な
マや一般的な
な問題点を取り
問 点を取り
問題点を取 上げ、

上げ 簡潔
簡潔に
簡潔 まとめ
潔にまとめ
とめている
とめている
てい
い 。例え
例え
えば
ば、土
土の建築

の建
の工
の工法
工法を「掘
を「
を「掘
「 る、塗
る、
、塗
、塗る、型
る 型抜きす
抜きする、叩
抜き
抜きする 叩く」な
く」 ど
どと、
と 作業方
業 法から

法か わか
わかり
かり
かり
やすく
やす
す 12に
に分類し
2に分類して紹介
て紹
て紹介
紹 してい
て る。ま
る。また、日
た 日本にい
た、日本
本に てはな
はな
なかなか
なか
か馴染み

のない
ない
い古代
古代文
古代文明から
明 、アフ
、ア
、アフリカ大
カ大陸から
カ大陸から
から中近東
中近東
近東
近東、そし
東、そ
、そし
そしてヨー
そ てヨー
ヨーロッパ
ロッパ
パや南北
や南
南北
アメ カなど
アメリカ どの世界
世界史も交
世 も交えなが
も ながら、簡
ら、簡
簡潔にそ
にそ
そして壮
て壮
壮大に
大に
大にま
にまとめて
てい
いる
いる。

 一方
 一
一方では土を構成
一方では土
は を
を構成
を構
構 するミ
する クロの
クロ 世界
世界、
世界 直径
界、直径 0.002
0.0 2 ㎜以下
.0002 ㎜以下の粘土
以下の
の粘土
土粒子
粒子や
子 砂、

砂利な
利などの
利などの特
どの特性や働きなど
性や働
性や働
働きなど
きな
など、土壌
土壌
土壌学から
らの専門
門的
的な内
な内容
容や、
や 土の性
土 性質を識
質を識
質を
を識

が参加できるこの協会は、情報や
ョンの共同主宰者でもある。誰も
が参加するアステルアソシエーシ
建築家、材料供給者など
立された土の職人やアーティスト、

は、各地で頻繁に行われている。
国 認 定 の 研 修 ︵ 資格が取得できる ︶
タデラクト、版築、または補修の
また、職人や企業主催の塗り壁、
り、参加者にも日当が支払われる。
り、国の支援の下に講師はもとよ
練が公的な制度として守られてお
別 るための
別する めの
めの実験方
験方
方法も紹介され
法も紹
も 介され
れている
る。主要
。主要
要な工法
工法
工法(版築
版築や土レ
版 や土
土 ンガな
シルヴィーは、

)の施工
ど) 施工
施工手順も
工手順
手順も
順 、土の
、土
土の採掘か
採掘 ら始ま
採掘
採掘から始 り、材
、材料の混
、 料の混ぜ合わ
ぜ合わせなど
など
どの準備
準 方 3

法や用
法や
法や用
や用いる道
道具の説
具 説明、そ
明、そして完
明、そして完
して
て完成に至

成に るまで
るま
までのほぼ
のほ す
すべて
べての工程
べ 工程
工程に関す
程に関す
関す

る記述
記 がある
記述 ある。問題
。問題
問 点に関
問題 に関
関しても
して
て 水に弱
水 い土

い土壁
土 の防水
の 水、防湿
防湿
湿対策、
、そして

土のも
の ろさを
ろさ
さを保護す
さ 保護するため
護するた
るため
ため
ための手法
手 などが
手法な 丁
丁寧に説明 れてい
説明されている。

 この
このよ
こ ように
うに土の建
土の建築に関
築に関
に関
関する様
す 様々な実
々な実
な実
実際
際的な
的な事例が
的な 例が
が紹
紹介
紹介さ
介され
れて
れてい
ているが、

2
この本
この が意図
の本が意
意 してい
てい
いる
るのは
るの
の 、最終
最終的な結
最終的な結
的な結果
的な結果や解
果や解
や 決
決方法
方法を
を示
を示す
示す
すのでは
ではなく、
ではなく

なく、
く、 0
0
基礎的な知識
基礎的
礎 な知識
知識
識を得
を得
を得る
得るための

ため 手がか
が りとし
がかりと
と て更な
て更
更 る可能
る可能性
る可 性を
性を探
を 求して
し いくこ
くこ

年に設

1 6
とで る。実
とで
とである。実際、2
際 211世紀
際、
際、2
際、21世紀
世紀
世 になり
にな
なり、土の
土 建築に
土の建築 対する
建築 対す 関心が
心 高
心が高まり
ま 、世界

世界 5

0
各地の
地 地域
地の地域性
域性豊か
豊かな
豊かな
か 伝
伝統
伝統的
統的
的な技術
な技
技 や意匠
や意匠
匠が見直
が見直
見 されて
れて
れていると
ていると
いる
る ともに

とも 、未来
未来

につな
つな
ながる新しい建
がる新
る しい建
る新 い建
建築表現
築表現も求め
築表 も求められて
も求 られ
られて
れ いる。
る。

紹介される予定だという。
渡り、南アメリカ、アジア大陸が
与えたかというものだ。 日間に
建築が、西洋にいかにひらめきを
流﹂会議を準備中だ。世界の土の
ーは 月の﹁土の装飾における交
土﹂展に協力しており、シルヴィ
地を巡回する﹁未来を建てる私の
からポンデュガールを皮切りに各

している。
現させる契機となることを目的と
技術を共有、土の建築や装飾を実
アステールは、

 日本
日本
本には伝
は 統
は伝
は伝統的に
統的
統的に
的に
的 土壁の
土壁の意匠に
意匠に
匠に関して
関して
し 高度な
高 左官技
左官技
技術が残
残されて
され
れ いる。

繊細
繊細
繊細で
細で洗
洗練
洗練さ
練 れた塗
れた塗り壁や
れた り壁や
壁 土蔵づ
壁や土蔵づくりな
りな
などは、
どは、
は、他の国
は、他の国
他の国々には
はない日
日本の
本の文
本の文
の文 10 4

化や風
や風
や風土に根
土 根ざした
土に ざした
ざした
た土の建
建築技術
技 であ
技術である
あ 。この
この
の本には
本に 日本の
日 の事例は
日本 事例 紹介さ
事例は
事例 紹
紹介

れて
れていない
ない。
い またこの本の
またこ
た の本の
たこ 本 内容を
本の内容
容 すべて理解す
すべて理
すべ
すべて理解
理解す
解 ること
こと
とは容易
容易
易ではな
では
ではない。し
い。し


かし
かし世界各地
各地
各地に点在
点在
在する多
る多種多様

種多様な土の

な土
土の
土の世界の
界の概要を
界の概要
要 知るこ
要を知る
る とで、
とで
で、世界の
世界の
界の
界の
中の
中の一
の 地域と
の一 とし
して
しての
ての日本の
て 本 左官技
官技術の特徴を再
術の特
術の
の特徴
徴を再
を 認識し
認識 、
、これ
これ
これらの伝
れらの伝
らの
の伝統を確
統を確
確 2
0
かに受
かに受
受け継ぐ
け継 ことと
と 、さら
さ にそれ
さら それ
れらを生
らを生かして
かし
かし 新しい
して新しい表現を
表現を創造す
表現 創
創造
創造するた
るため 1
年 月

3 2
の一助とし
の一
の一助
の一助として
とし ほしい
としてほし 。
4

087 CONFORT April 2012


088
上/鏝をあてるジゼル。下/1972年、ガー
ナで、地元のナンカニの女性から土の民間技
術を学び、土に魅せられて行く。
修復プロジェクトにおいて、建築
ジゼル・タクシィル
土と人に寄り添う, 静かな情熱

Gisèle Taxil
鈴木晋作
Photos/AKTC, Gisèle Taxil

建築家であり、土のアーティスト
家として現場を担当、多くの技術

2004∼2006年に行われたマリ、
モプチの大モスクの大修復。日干
しレンガの構造に土の下塗りをほ
どこし、バンコ・プーリ「banco
pourri」という、米の佅殻入りの
泥の上塗りを重ねる。佅殻を腐ら
せるために、あらかじめ2、3週
ジゼル・タクシィルは、フラン 的な任務を遂行した。このモスク

間前に土と練って寝かせた。
スの建築家であり、アーティスト は、ジェンネの大モスクに影響を

である。グルノーブル建築大学、 受けて 年に建設されたも

70 1
9
3
6
クラテルで土の建築の専門学位を ので、 年代後半に塗られたセメ
CRATerre?

取得し、 年間建築設計を経験し ントが土に付着せず、落下し、漏


3

た後、専門家として、土で建造、 水が構造的な問題に繋がっていた。
装飾された建築遺産の保護活動に これはほかの多くの土の建築でも
Qu’est-ce que

従事した。 起こっている問題である。彼女は
年にはガーナのセブン ふたたび土を使うことによって、
1
9
9
9
ソロウズ大聖堂の聖母マリア像の この建築を蘇らせた。
修復に専念した。そこで、
﹁ ナン また最近では、モザンビーグに
カニ﹂という、ブルキナファソ南 おける同財団のコミュニティセン
部、ガーナ北部の少数民族の女性 ターの建設のデザイン面と地元の
たちから泥土のアートとテクニッ 材料、主に竹と土による建設方法
クを学んだ。 に関し、助力している。
その後、彼女はアガ・カーン財 エレガントで知的な雰囲気は、

団の文化事業の個人コンサルタン 一見、
﹁泥﹂と結びつきにくいよ

1
トとして、 年から うに感じられるが、接しているう

2
0
0
4

2
0
0
年までマリ・モプチの大モスク ちに、タフで行動的な一面も見え

6
てくる。 水防虫に役立つのである。また、 化炭素の排出量、材木の依存度、

*1 Aga Khan Trust for Culture


砂や砂利、さらには小さな石でさ 代用品の輸入の削減やエネルギー
自然の本質を追究したい
上右/ Moon light 2011年。カオリンを
使った作品(0.5×0.5m)の一部。上左/
The first four 2004年。4つのパネル作品
のうちのひとつ。イゼル地方の土を使ってい
る。中/ Impression 2011年 0.5×0.5
m 土の硬押さえ、小石伏せ込みと金箔のコ

2009年 モデュールになった鉄枠と土を融
ンポジション。下/ The three cubes

えも構造的な補強、耐水性を発揮 効率における土の建築の利点を研
彼女の泥のアートに対する情熱 することを知った。 究している。
的な関心は、前述の通りナンカニ 彼女はその経験を通し、装飾的、 また、ジゼルは、 年よ

2
0
0
3
合させた家具的なオブジェ。

という民族の女性たちとの親密な また素材、工法の科学的研究に至 り在住作家として、前掲で紹介し


共同作業から始まった。 り、自らも手を動かし、アーティ た土の建築祭にも参加している。
そして土着的で伝統的な土の芸 ストとして活動している。作品は、 期間中は公開製作を行い、講演の
術は独特で洗練されており、高度 壁掛けや立体作品などさまざまだ。 際も、先駆者として今後世界に羽
な技術的な知識を反映して、素材 アフリカ、アジアでの実践的な経 ばたく学生を諭し、勇気付けるよ
が驚異的な品質を有していること 験と素材、工法に裏づけされた、 うに語り掛けをする彼女がいる。
を、身を持って知ることとなる。 実存的な理念を持った現代的な土 作品づくりにおいて、下地の吸
そこでは、泥のアートは単なる表 の建築家、アーティストなのであ 水︵フレッシュチーズとアンモニアを調
現ではない。壁に描かれた多彩な る。
﹁アート作品を通じて、土と 合して精製したオリジナルのカゼイン︶
浮き彫り装飾は、土の住まいの表 いう素材の自然の本質を追究した や、下地の厚み ︵凹凸をつける︶を
面の保護にもなっているのである。 い﹂のだという。 巧みにコントロールし、乾燥する
現地の有機的な素材の使い方か 近年、アジアに居を移し、カン 過程で起こるクラックや色の変化
らも多くを学んだ。たとえば、植 ボジアやインドネシア・バリで文 を楽しむ姿は、静かに土と会話し
物の油、 じた煮汁がつなぎや防 化的な遺産を調査しながら、二酸 ているようである。

CONFORT April 2012


089

You might also like