退魔師の姉妹

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退魔師の姉妹

 ※登場人物、ストーリー共に

  過去のお話との関連性はありません。

【カンナ】

元退魔師。既婚者でスミレの姉。ユリの母。

これまで無敗の強さを誇っていたが、

結婚して現役を退き、夫と娘の三人で暮らす。

【スミレ】

退魔師。カンナとは年の離れた姉妹。

過去に淫魔に敗北して淫紋を刻まれたことがある。

潔癖症で、強い姉に依存し気味。

―――スミレの視点―――

「姉さん。私はもう一人前の退魔師よ。

 そんなに心配しないで?」
 電話口から姉さんの優しい声が聞こえる。妹を想う姉はいつまで経っても

過保護のままで、嬉しくもありもっと信頼して欲しいとも思う。

 姉さんは現役だった過去の十年間、一度も敗北の経験がない素晴らしい退

魔師だ。逆に私は姉さんに追いつこうと焦ったせいで淫魔に苦い敗北を喫し

たことがある。心配されるのは仕方ないけれど、私はもう立ち直ったのだ。

 その時、懐の携帯電話が僅かに震える。ディスプレイには暗号化された文

字がずらりと並んでいて、それが淫魔出現の知らせだと瞬時に解読する。

「ごめんなさい。淫魔が現れた報告があったの。

 すぐ出るからもう切りますね」
 気持ちを切り替えて私はディスプレイに示された場所へと向かった。私は

もう大丈夫。敗北したのはたった一度きりだし、それ以降は問題なく対処で

きている。姉さんのように完璧には無理でも、私は人々を守る退魔師なのだ

から。

★★★

 そこは廃ビルの地下。淫魔に魂を売った信奉者たちが召喚の儀式を行って

いた。女性の淫魔、サキュバスが複数の男性や女性と淫らに絡み合い、その

身をどろどろした精液で真っ白に汚している。

 なんて穢らわしい……信奉者は権力を持った裕福層の人間が殆どで、麻薬

の延長として淫魔の快楽を求めたり、不老不死を望む者も多い。

 もちろん淫魔に組みした者の末路は例外なく身の破滅だ。しかし淫魔たち

は言葉巧みに彼らを誘惑して利用しようとする。人が淫魔の快楽に抗うのは

困難で、それは私自身も身を持って経験済みだった。
「あら? どうやらお客さんのようね。

 あなたも早く混ざりましょう♥

 素敵な快楽を約束して……」

 サキュバスがその言葉を言い終えることはない。一瞬の静寂の後、彼女の

首がごとりと落ちて紅い鮮血が不潔な精液を洗い流していった。

 正気に戻った信奉者たちが悲鳴を上げながら逃げ出そうとするが、地下の

入り口は見えない結界で塞いである。彼らは後で記憶を消されて以前の生活

に戻っていく。法では裁けない以上、そうするしかないのだ。
「うわああぁっ!! 助けてぇっ!!!!」

 見えない壁に阻まれて錯乱している彼らを無視し、私は淫魔の気配を慎重

に探る。この儀式によって流出した魔力の量から考えると、低級なサキュバ

ス一匹だけとは思えなかった。

「―――!!!!!」

 その時、猛烈な衝撃が全身をびりびりと駆け巡る。筋肉が強制的に収縮さ

せられ、私の意思に関係なく武器を取り落してしまう。

 やっとの思いで振り返ると、信奉者の男がワイヤーの伸びている銃のよう

なものをこちらに向けていた。ワイヤー針を通じて高電圧を流し込み行動不

能にする護身用のテーザー銃。

 淫魔の存在と魔力の罠を警戒しすぎて一般人に気を配らなかった。退魔の

装備は高電圧からその身を守ってはくれない。
「おやおや。随分とマヌケな退魔師だ。

 守るべき人間のせいで負けちゃう気分はどう?」

 子供くらいの容姿の淫魔が動けない私のすぐ目の前に現れた。おそらく気

付かれないよう後ろの男を操ったに違いない。淫魔は完全に油断して無防備。

今なら確実に倒すことができる……

「くっ、あああぁぁっ――!!??」

 さらに別の男がテーザー銃を撃ち、強烈な痛みに思考が途切れた。淫魔を
攻撃するどころではなく指一本すら動かせない。

「あぁ、痛そう。辛い思いさせてゴメンね。

 その代わりに良いものあげるよ」

 淫魔が呪文を唱えながら小さな手でそっと私のお腹に触れる。淫らな魔力

がどんどん流し込まれ、痛みを凌駕する快感がじわじわと広がっていった。

 それは淫紋と呼ばれる呪いを刻みつける呪文。かつて敗北した時にも刻ま

れ、救出された後も一年近く消えずに苦しめられた。二度とあんな思いはし

たくないのに、身動きが取れない状況では為す術なく身悶えることしかでき

ない。
「う…あぁ……そん、な……」

 無情にも淫紋が完成し、それによってあらゆる感覚が快感へと変換されて

しまう。それはテーザー銃の高電圧も例外ではなく、痛みによるマゾヒステ

ィックな快感が心地よく脳髄を痺れさせていく。

 私は全身を駆け巡る激痛の快感によって失禁していた。清廉な退魔の装束

が自身の汚水で汚れ、まるで自ら誇りにツバを吐きかけている気分になる。

「やけにあっさり淫紋が定着したね。

 もしかして前にも同じ目にあったのかな?

 それじゃあ、今度は二度と

 退魔師に戻れないよう念入りに調教してあげる」

 淫魔がスカートを捲ると、そこには不釣り合いなほど大きなペニスが屹立

していた。サキュバスではなくインキュバスだったことに驚いたけれど、そ

れは私が今から犯されることを意味する。
「ひっ、だめっ、やめてっ――!!」

 インキュバスに犯される恐怖。しかし、私が本当に恐れているのは……犯

されることじゃない。

 姉さんにも他の仲間にも決して語らなかった真実。必死に忘れようとした

私の卑しい本性。私はかつて、淫魔がもたらす快楽の虜になっていた。

「まるで普通の女の子みたいな反応だよ?

 退魔師なのに犯されるのがトラウマなんて

 冗談にもならない。

 まぁいいや。君を"壊す"のは楽しそうだ」
「あっ、ああぁぁっ――♥♥♥♥」

 一切の手加減も容赦もなく、凶悪なペニスで膣の奥底まで貫かれた。淫紋

の影響で愛液に満たされた膣はインキュバスのペニスをしっかり受け入れて

しまう。体内をごりごり抉られる感覚。忘れていた快感。それら全てが私を

責め苛む。

「うわぁ、これは狭いなぁ。

 もしかして淫魔に犯されたとき以外に

 男性経験ないんじゃないの?

 こんなにエッチな体なのに宝の持ち腐れだよ。

 ボクがしっかり女の悦びを教えてあげる」

 ゆっくりと腰が前後に動かされ、膣全体がそれに合わせて形を変えていっ

た。まるでペニスを覚え込ませるような慎重で丁寧な腰使いに、意図せず甘

い喘ぎ声が私の口から漏れる。
「ひゃっ、あぁんっ♥♥」

 ふいに勢いよく腰を叩きつけられ、びりびりした快感で頭の中が真っ白に

なった。一年以上忘れていた絶頂の気持ちよさ。かつて私が虜となり溺れか

けたその快楽を脳に強制的に刻み込まれる。

 私は心の奥底で淫魔を望んでいた。それを無理やり抑え込んで、姉さんの

ような強い退魔師になるんだと言い聞かせてきた。

 卑しい本性など嘘だと強引に納得させてきた。そうやって事実をひた隠し、

姉さんや仲間に相談しなかったツケを払わされるのは必然。

「そう。その蕩けきった顔が君の正体さ。
 君は自分の本性を受け入れた上で戦うか、

 退魔師をやめるべきだった。

 さぁ、ボクにどうして欲しい?

 もう君は答えをわかっているだろう?」

 インキュバスが動きをぴたりと止め、そのまま腰を引いてしまう。膣を蹂

躙していた圧迫感が消え、安心どころか焦燥がじりじり湧き上がってきた。

違う。私は淫魔を滅する退魔師。奴を、殺さなければ……

「んんっ、あああぁぁっ――♥♥♥♥」

 先端から根元まで一気に貫かれる。途方もない気持ちよさと絶頂。焦燥が

消えて異様な多幸感に恍惚としてしまう。

 退魔師の誇りなどあっさり吹き飛んでしまった。姉さんの軽蔑した表情が

脳裏に浮かび、それすらも被虐的な快感となって私を悦ばせる。

 もう卑しい本性を認める以外に自分を維持できなかった。快楽に縋らない

と私が私でなくなってしまう。それこそがインキュバスの狙いだと頭で理解

していても、心と体が快楽以外を拒否していた。

「あぁ……私を、犯して下さい……♥

 もっと、快楽に……溺れさせて……♥」
 インキュバスがにやりと嗤い、返事とばかりに腰をがんがん叩きつけてく

る。一突きごとに気が触れるほど絶頂し、それが絶え間なく連続で襲ってき

た。

 淫紋が濃い紫色の光を発して私の魂を雁字搦めに絡め取る。以前の表面的

なものとは違って、二度目の淫紋はもはや絶対に消すことは不可能だった。

それは退魔師の道が絶たれたことを意味する。

「あぁ、ああぁぁあっぁぁっ――♥♥♥♥」

 退魔師スミレは死に、淫魔の奴隷へと生まれ変わった。このまま淫魔にさ

れるのか、人のまま弄ばれるのか、それは淫魔のみぞ知る……

―――カンナの視点―――

「スミレ殿が消息を絶って一週間。

 捜索は続けていますが、まだ手がかりは……」

「報告ありがとうございます。

 引き続きスミレの捜索をお願いします」
 淫魔討伐に向かったスミレが行方不明。経験不足と精神的にまだ未熟な点

があるとはいえ、単純な実力なら退魔師団でも上位だった。

 そのスミレが都内に出没するレベルの敵に遅れをとる可能性は低い。私も

捜索に加わりたいけれど、今の私はそんな権限もない引退した元退魔師。彼

女と仲間たちを信じて待つしかないのがもどかしい……

「失礼します、カンナ殿。

 実は先ほど本部にこのような映像が……」

 ただならぬ様子に私は急いでその映像を再生した。画質も音質も悪く、ぶ

れていることから素人がスマートフォンなどで撮影したものだとわかる。そ
こに映っていたものは、予想通りスミレの姿だった。

『うあぁっ! スミレさん、やめてっ!!』

 裸同然の格好で男性の前に膝をつき、その胸で男性のペニスを扱くスミレ。

その状況もだが、何より信じられないのは彼女の表情。まるで行為を楽しむ

ようにうっすら微笑んでいる……

『あぁっ! もう、でるっ……!!』

 ペニスがびくんと脈打って勢いよく精液が迸った。それはスミレの顔や胸

をどろどろに汚し、しかし嫌がるどころか恍惚としながらほぅっと息を吐く。
『残念ながらゲームオーバーだね。

 じゃあ、サヨナラ~♪』

 男性の絶叫とともに画面が真っ赤な血飛沫に染まる。暫くしてレンズの血

が雑に拭き取られ、幼い外見の少女……いや、少年の淫魔がこちらを覗き込

んだ。そして面白がるように嬉々として語りだす。

『スミレってあの有名なカンナの妹なんだってね。

 カンナさん見てる~?

 彼女に会いたいなら指定の場所に来なよ。

 早くしないと妹がどんどん人を殺しちゃうよ?』

 そこで映像は途切れた。淫魔がよくやる射精したら負けという悪趣味なゲ

ームをスミレを使って行っているのだろう。

 そしてさっきの男性は、捜索に出た退魔師の一人だと判明した。もはや一

刻の猶予もない。私が出向けば確実に淫魔の思うつぼだとわかっていても、

このまま何もせず待つことなどできない。

 久しぶりの退魔の装束と刀を身に着け、私は周りの反対を押し切って指定

の場所まで向かった。
★★★

「あ~ら、本当にのこのこやって来た。

 元最強の退魔師らしいけど

 アタシたちは何人も退魔師を吸い殺したの。

 人質なんて無くても、アタシたちだけで……」

 刀の一閃で二匹を同時に斬首する。何が起こったのかわからないといった

表情のまま、サキュバスたちは物言わぬ亡骸となった。
 雑魚相手では準備運動にもならないけれどブランクはさほど感じない。と

はいえスタミナと勘はそうとう鈍っているので長期戦は避けたいところだ。

 どれだけの淫魔が待ち構えているかと警戒していたが、先に進んでも入り

口の二匹以外は見当たらない。結界によって外部と断絶された建物内の開け

た空間。そこに小柄なインキュバスが佇んでいた。

「スミレを返すならこの場は見逃す。

 抵抗すれば皆殺しだ。さあ、どうする?」

 わざと殺気を隠さず静かに言い放つ。もちろん淫魔が素直に応じるはずが

ない。敵の気配や罠を探りつつ、インキュバスの返答を待つ。
「あぁ、君がカンナだね。ボクはジュノ。

 わざわざ来てもらって悪いんだけど

 スミレは君に会いたくないって。

 だから代わりに映像を用意したよ」

 壁にかけられた大型のモニターに映像が映し出された。そこには一匹のサ

キュバスがぐったりと横たわっている。長い黒髪が顔に張り付いて、激しい

性行為が行われていたことが伺えた。

 そして、そのサキュバスがゆっくりこちらを振り向く。私が見紛うはずも
ないその顔は、妹のスミレのものだった。

 淫魔化。彼らは性行為によって魔力を送り込み、人間を自分と同じ淫魔に

変える力がある。一般人ならともかく、退魔師は魔力に耐性があるので淫魔

化させられる危険は殆どない。

 現にかつてスミレが淫魔に敗北した時も、淫紋を刻まれたとはいえ淫魔化

には至らなかった。しかし、今回は……

「彼女は自分の隠された本性に気付いたんだ。

 表より裏の世界が相応しいってね。

 だから自ら望んで淫魔になると言った。

 姉としては複雑だろうけど」

 確かにスミレほどの実力者なら自分の意思でなければ淫魔化は不可能だろ

う。怒りと悲しみに目の前が真っ暗になる。怒りは私自身に向けられたもの

だ。彼女の心の闇に気付いてあげられなかった。

「さて。ここで最強の退魔師サマに提案だ。

 スミレを人間に戻したいなら

 君が代わりにボクのモノになってよ。

 もちろん君が頑張れば

 二人一緒にお家に帰れるかもね」
 私は無言で纏っていた霊力を解く。ジュノの言う通りにするのは愚行でし

かないが、私の犠牲でスミレが助かるという条件を無視するなど不可能だ。

「ふふ、本当に馬鹿な女ね。

 さっき殺されたお礼、たっぷりしてアゲル♥」

 後ろから赤い髪のサキュバスが抱きしめてくる。口ぶりからしてさっき入

り口で始末した淫魔のようだ。首を切断したはずなのに、なぜ……?

「アタシは男より女相手が得意なの♥
 ほぅら、動くのも抵抗もしちゃダメよ?」

 強引に振り向かされ、後ろから唇を奪われる。淫魔の魔力は危険な催淫作

用があるが、普段なら霊力で中和して影響を受けない。

 しかし今は霊力を全く纏っていない無防備な状態。生身の人間と同じよう

にその影響を全て受けてしまう。熱い吐息と共に舌が絡み取られ、唾液に含

んだ魔力が口移しでどんどん流し込まれていく。

 体の奥から猛烈な熱さと疼きが湧き上がり、意識も徐々に朦朧としてきた。

魔力が全身に回り始めているのがわかる。

 退魔の装束と下着を剥ぎ取られ、両手を拘束され押し倒されてしまった。

サキュバスは丸出しの秘所を前に舌なめずりする。
「あら? 元最強の割には可愛い反応ね♥

 強かったってことは、逆に経験は少ないの?

 それなら好都合だけど♥」

 サキュバスの指が秘所へと挿入されていく。淫らな魔力の影響ですでに秘

所は愛液で潤み、くちゅりという水音が小さく響いた。ぴりっという甘い痺

れ。僅かな刺激にも敏感に反応してしまう。

 そしてサキュバスの言葉は正しかった。無敗ということは淫魔に犯された

経験がなく、性行為も夫とのみ。自慰すらも滅多にしない私が、淫魔の指使

いに抗うことなどできはしない。

「ひっ、ぅ……♥」

 感じるところを知り尽くしたテクニックに私はされるがままに翻弄されて

いた。挿入された指は二本になってその動きも徐々に激しくなっていく。

 夫との性行為では体験したことのない絶頂の兆し。それがサキュバスによ

って魔法のように容易に引き出されてしまう。少しでも抗おうと唇をぎゅっ

と閉じるが、狙ったようにクリトリスが抓られて私は呆気なく絶頂してしま

った。

 そして淫魔の《エナジードレイン》によって霊力が吸い取られる。まだ微

量とはいえ、無敗だった私にとっては大きな敗北であり屈辱だ。
「まだ前戯ですらないのに大丈夫?

 その調子じゃ妹より簡単に堕ちるんじゃない?」

 私はジュノの馬鹿にした口調に言い返すこともできない。ぜぇぜぇと乱れ

た息すらまともに整えられず、絶頂の快感から抜け出せなかった。

 サキュバスはひくひくと震える秘所に口を近づけ、真っ赤な舌でれろりと

舐め上げてくる。

「ひゃぁんっ♥♥」

 クリトリスを口に含んで転がすようにしゃぶられ、むず痒いような未知の
感覚に頭が対処できない。敏感な部分に媚薬が塗りつけられて、それが耽美

な甘い快感だと教え込まされていく。

 そして今度は秘所の内部へと舌が侵入していった。当然ながらそんなこと

は初めてで、じゅるじゅる吸いながら内部を舐め上げられる抗えない快感に

強制的に絶頂させられてしまう。

「ひゃっ、ああぁっ、んんんんんっ♥♥」

 もう自分が大声で嬌声を上げていることすら気付かなかった。クリトリス

を弄り回されながら膣をしゃぶられて、繰り返し体がびくびく痙攣する。

 絶頂に次ぐ絶頂に何も考えられなかった。最初は小さな綻びだったものが

みるみる大きくなって、堰を切ったように霊力が流れ出ていく。奪われてい

く力を止めようと思うことすらできない。

 ただその圧倒的な気持ちよさを体が感じるに任せ、私の意識は闇の底へと

落ちていった……

「んんっ♥ 本当にうぶだったのね♥

 これでよかったのですか?」

「ああ。寝ている間も休まず調教してやって。

 魔性の快楽を知って心も体も美味しくなったら

 ボクが食べるんだからね」
 私はまだ知る由もなかった。これから自分がどれほどの快楽を体験し、ど

んな結末を迎えることになるのかを……

【ユリ】

カンナの一人娘。

退魔師や裏の世界とは何の関わりもなく

両親に愛されて育てられた。

【ジュノ】

可憐な少女のような外見のインキュバス。

性格は残忍で享楽的。

獲物を精神的に堕落させる手法を好む。

【クインラン】

筋肉質で大柄かつ眉目秀麗なインキュバス。

性格は残虐で支配的。

獲物を肉体的に堕落させる手法を好む。

―――スミレの視点、三日前―――
「ねぇ、お兄さん……

 少しだけお時間、頂けませんか?」

 背広をきっちり着込んだサラリーマン風の男性に上目使いで話しかける。

 訝しげに振り返った男性はいかにも真面目で誠実そうに見えた。しかし私

の顔と胸元に視線を移すと、すぐにだらしなく表情を綻ばせる。

 この数日で男が女に何を求め、どう接すれば望む反応を返すか手に取るよ

うにわかるようになった。例え拒否しようとしても、腕に胸元をぎゅっと押

し付けて誘えばたちどころに股間を勃起させてしまう。

「そんなに硬くして辛そうですね♥
 私が楽にしてあげますけど、どうしますか?♥」

 そう言って私は人気のない裏路地の奥へ男性を誘い込んだ。待ちきれない

と言うように男性の唇を奪い、ベルトを手際よく外していく。

 最初は消極的だった男性はもはや荒い息で私を食い入るように見つめてい

た。ぎちぎちに勃起したペニスを取り出し、もう何人もの精を搾り取ってき

た胸の谷間にゆっくり挟み込む。

 以前は大きくて重いだけの脂肪の塊に、なぜ男性の注目が集まるのか理解

できなかった。でも今は彼らの欲望が理解できる。私の中の淫らな本性が彼

らの望むことを教えてくれる。

 私は内なる声に従ってペニスを扱き上げていった。男性の口から漏れる気

持ちよさそうなため息。両側からぎゅぅっと圧迫すると、精液みたいに濃い

カウパーがどんどん垂れ流されていく。
「うぁ、きもち、いい……」

 男性は気付いていない。

 私は普通の人間じゃなくて、淫魔になりかけの危険な存在だということに。

快楽のままに射精すると生命力を吸い取られるということに。

 それでも一切の容赦なくペニスを扱き続け、程なくして男性は切なそうな

声と共に大量の白濁液を私を胸の中に漏らした。搾り取った生命力の甘美な

味に、意図せず私は恍惚としてしまう……

 ジュノが私を解放するために課してきた条件は、男性十人分の精を集めて

くること。これで、残りは後ひとり……
「うっ……はぁ、はぁ……」

 その場を立ち去ろうとして男性の意識があることに気付く。まだ淫魔の力

を使う時の加減に慣れていない。やりすぎると殺してしまうし、手加減しす

ぎると気絶させられないのだ。

 今回は相性もあって男性の体力はかなり残っている。そして射精したばか

りのペニスは少しも衰えていなかった。

 私は無意識にごくりと喉を鳴らし、朦朧とする彼の肩を支えて近くのホテ

ルへと向かう。これは彼を介抱するため。騒がれたら厄介だから対応するに

過ぎない。そう自分に言い訳しながら……

★★★

「あっ……ぁ……やめ、て……」
「どうしてそんな嘘をつくんですか?

 ペニスはもっとして欲しいって言ってますよ?

 ほら♥ これが気持ちいいのでしょう?♥」

 何度も射精されてどろどろになった服は脱ぎ捨てた。それでも男性のペニ

スは力強く屹立し、私は愛おしく感じていっそう丁寧に扱き上げる。

 いつの間にかぐちゅぐちゅといやらしい音が響き、精液が泡立つほど激し

く扱いていた。精液が発する生臭い匂いと、肌に付着するどろついた感触が

私を際限なく興奮させていく。

「ぅ……あぁぁ……」
 男性の体がひときわ大きくびくんと痙攣し、胸の谷間の底から勢いよく精

液が吹き上がった。

 それきり彼は糸の切れた人形のように動かなくなってしまう。よく見ると

彼の体は枯れ木のように細くボロボロになっていた。わざわざ確認するまで

もなく、誰が見ても明らかに死んでいる。

「あは……私、自分の手で人を殺しちゃった……」

 ジュノが捕らえた退魔師に射精を我慢させるゲームをした時、とどめを刺

したのは淫魔であり私じゃなかった。

 もちろん私も同罪だろうけど、それでも私が直接手を下したわけじゃない。
でも今回は……殺す必要が無かったにも関わらず、自分の意思で人を殺した。

しかも罪もない一般人を、だ。

 もう後戻りなんてできない。例え姉さんが助けに来てくれても人を殺した

事実は絶対に覆せない。それに何より、私は笑っていた。罪の意識よりも吸

い尽くした快感の方がずっと勝っているのだ。

 私は顔や服に付着した精液を綺麗に舐め取って、次の犠牲者を探しに夜の

街をさまよう。獲物を物色するその姿は、もはやサキュバスそのものだった

……

★★★

―――カンナの視点―――

 私が淫魔に捕らわれてから数日が経過していた。

 複数の淫魔によって私の体は執拗に愛撫が繰り返され、全身くまなく淫魔

の媚薬が塗り込まれる。幾度もの絶頂によって《エナジードレイン》の餌食

となり、今や霊力は殆ど底を突いてしまっていた。

 そして屈辱なのは食事の代わりにインキュバスの唾液を飲まされることだ。

 淫魔の精液や愛液は強力な媚薬だが、唾液には不老と延命の効果がある。
これにより食事は不要になるものの、私の体内を余すところなく淫魔の匂い

が染み付いていくのを感じた。

 しかし淫紋や魅了といった術は今のところ全て失敗している。力を奪われ

たとはいえ、魔力への耐性は健在で淫魔の術を受け付けないのだ。

 このまま従順なふりを続けて機をうかがい、隙を見つけてジュノを倒す。

それ以外に現状を打破できる方法はない。

「あーあ、もう雑魚にすら勝てないんじゃない?

 最強の退魔師も力を奪われちゃったら

 か弱い女の子と変わらないね。

 今日からはこの服……服、と言えるかな?

 まあいいや。これを着てもらうよ」
 毒々しい紫色の服らしきもの。それはゴムのような伸縮素材のボディスー

ツだった。言われるままに身に着けて手首のスイッチを押すと、ぶかぶかだ

ったものが体にフィットするサイズに収縮する。

 全身を軽く締め付けられる感覚にすら私の体は敏感に反応した。本当に淫

魔の望むように作り変えられたと自覚してしまう。

「うわぁ、体のラインがエロすぎ♪

 こんな見た目だけど防御力も高いんだよ?

 体の感度を確かめるついでに

 ちょっとだけ試してみよう」

 ジュノは無造作に片足で私のお腹を思い切り踏みつけてきた。硬いブーツ

が叩きつけられる鈍い音と鈍痛。突然の衝撃と痛みに体がくの字に折れ曲が

る。

 今度は脇腹が蹴り上げられて無理やり仰向けにされた。さらされた無防備

なお腹が再び無慈悲に踏みつけられる。

「あぐっ、ごほっ……!?」
「どうかな? そんなに痛くないでしょ?

 ねぇ、ちゃんと聞いてる?」

 確かに派手に蹴られたにしては痛みは思ったほどではなかった。しかし、

私を混乱させた原因は痛みではない。ジュノの容赦ない踏みつけに私は奇妙

な快感を覚えてしまう……

 お腹を踏まれたまま体重をかけられ、体がメリメリ軋む音が聞こえた。当

然もの凄い鈍痛を訴えているというのに、体の奥がじんじん疼く。
 この数日で数え切れないほど体験させられた絶頂。なぜか痛みによって私

はその絶頂に達しそうになっていた。意味がわからない。しかし私の体は確

実に痛みを快感だと認識している。

「あれぇ? 何で切なそうな顔してるの?

 最強の退魔師が実は淫魔にいたぶられて喜ぶ

 マゾだったなんて冗談でしょう?

 性癖は人それぞれだけどこれは酷いねぇ♪

 ほら、いっちゃいなよ♪」

 ジュノが両手で私の胸を力いっぱい押しつぶしてきた。小さな手のひらに
収まりきらず、マシュマロのようにぐにゃりと形を変える。

 サキュバスの繊細な愛撫とは真逆の暴力的な快感に身悶えてしまう。さら

に股間を思い切り膝蹴りされ、ついに私は絶頂してしまった。

「君にはマゾの素質があるようだね。

 これからは被虐の快楽もメニューに加えよう。

 あぁ、怪我しても元通り再生させるから

 安心して苦痛を楽しむといい」

★★★
―――カンナの夫の視点―――

 僕がカンナに初めて抱いた印象は、今とは正反対の冷たく恐ろしい女性と

いうものだった。

 淫魔の信奉者が街の大規模給水設備に淫魔の媚薬を混入させようとした事

件。阻止できたものの、十数人の一般市民が媚薬に汚染されてしまった。本

部の命令は全員処分して証拠を消せというもの。

 僕は彼らを治療しようとしたが、カンナは僕を無視して命令通り皆殺しに

した。まるで血の通っていない冷徹な殺人鬼そのもの。それ以降、事あるご
とに僕は彼女に反発していった。

 しかし長く接するとそれが本当のカンナではないと気付き、彼女の内面を

知る内に互いに惹かれ合い、恋に落ちた。

 彼女が妊娠したと周囲に告白した時の仲間たちの反応は、驚愕を通り越し

て異星人でも見るような顔だったのを覚えている。

「あなた、ユリ。行ってきますね」

「ママー! 行ってらっしゃい!」

 普段と変わらない、近所に買い物にでも行くような調子でカンナは出かけ

ていく。勘がいい娘のユリも彼女のただならぬ決意に気付いた様子はない。
 カンナの霊力は未だに健在だが、かつての異常なまでの強さは失うものが

なかったからだ。感情を押し殺し非情に徹して任務をこなしたからこそ、最

強と言わしめるほどの存在になれたのだ。

 だが今のカンナは違う。スミレを助けるという家族の情で行動する彼女は、

とても脆く危ういだろう。

 大切な家族が彼女の足枷にならないよう、僕は祈ることしかできなかった。

・クインラン編

―――カンナの視点―――

「くぅっ……んんっ……!!」

 ジュノとは別のインキュバス、クインランと名乗った筋骨隆々の淫魔に私

はがっしり組み伏せられ犯されていた。

 夫以外に許したことがなかった秘所を強引に割り開き、ごつごつした凶悪

なペニスで膣と子宮を蹂躙される。その屈辱と恥辱を怒りに変えて逆襲の時

まで耐え凌ぐつもりだった。

 しかし大きすぎるペニスに貫かれる痛みは最初だけで、粗暴な見た目に反

して弱いところを巧みに狙ってくる腰使いに私は次第に翻弄されてしまう。
「どうした? まだ始めて一週間だぞ?

 最初の威勢はどこにいった?」

「っ、誰が……貴様、などに……、っ!?」

 言い終わる前に無理やり唇が奪われ、荒々しく舌が絡み取られた。夫とは

何もかも違う男臭い唾液と吐息に嫌悪感を覚える。顔を背けようとしてもき

つく押さえられて身動き一つ取れず、私はクインランにされるがままだった。

 腰の動きが小刻みに早くなっていき、キスされたまま強制的に昇り詰めさ

せられていく。一切の抵抗が無駄だと私に思い知らせるような執拗な攻め。
そして、私の防波堤はあっさりと崩れ去ってしまう。

「ぅ……んんっ――――!!!!」

 目の前が真っ白に爆ぜて全身が激しい快感に包まれる。膣が収縮してクイ

ンランのペニスをぎゅうっと締め付ける感覚までもはっきり感じてしまい、

その形と快感を覚え込まされているみたいだった。

「いやらしく喰い付けて離さないじゃないか。

 まるでもっと欲しいと催促してるようだ。

 だが俺はこの程度じゃ満足できん。

 次は手加減なしでやらせてもらおう」

 繋がったままぐるりと後ろを向かされ、猛烈な勢いで腰が何度も叩きつけ

られる。さらに大きな手のひらで胸を握りつぶすように鷲掴みにされた。

 言葉通り手加減など全くない暴力的で獣のような性行為。こんなものは拷

問と同じでただ辛いだけ……そのはずなのに、クインランに乱暴に扱われる

ことに私は被虐の快感を感じてしまう。

「くく、さっきよりお前の秘所は喜んでいるぞ?

 お前は夫とセックスするより

 淫魔に無理やり犯される方が好みのようだ。
 どうした? 違うなら否定してみろっ!!」

「かはっ……!? ぐぅ、っ……!!」

 丸太のように太く硬い腕が私の首を後ろからぎりぎりと締め上げる。

 息ができない苦しみと骨が軋む激痛。涙と涎が止めどなく溢れ、私の顔は

とても退魔師と思えないほど情けなく歪んでいた。

 耐え難い屈辱と苦痛……しかしそれを感じれば感じるほど、私の中で得た

いの知れない快感がどんどん膨れ上がっていく。力によって支配するという

行為に、意志に反して屈したいと思わされてしまう。

 クインランは毎回必ず首を締めて窒息させる非道を性行為の最後に行って

いた。
 絶頂と失神を同時に味わう残虐な暴力を繰り返し体験させられ、被虐を快

感として脳に刷り込まされる。

「あっ、あぁっ、ああぁぁ―――♥♥」

 淫魔の唾液を食事代わりに毎日飲まされ、肉体が徐々に淫魔の要求に従順

になるよう変質しているのだが、私はそれを知る由もなかった。

 自分は元から強者に嬲られ喜ぶ歪んだ性癖を持っていたのではないか……

そうとしか思えない状況に追い込まれ、反抗心は確実に削り取られていく。

 熱く濃密な精液で子宮をいっぱいに満たされた私をクインランは無造作に

放り投げた。そして止めとばかりにお腹を力任せに踏みつける。
「ひぎゅっ……ぅ……ぁぁ……♥」

 潰れた蛙のような悲鳴が私の口から漏れ、秘所から大量の精液が押し出さ

れ溢れていく。それを彼はおかしそうに嗤いながら見下ろしていた。今の私

には、どうすることもできない……

★★★
 連日の過酷な調教に私の精神にもいよいよ限界が訪れようとしている。

 淫魔に気付かれないよう少しずつ集めている霊力はまだ充分とは言えない

が、先に私が屈してしまったら意味がない。

 可能な限り外の様子を探ったところ、奴らは定期的に獲物を探しにその大

半が出払うタイミングがあることがわかった。次のチャンスは明日。これが

脱出を試みる最初で最後の機会だ。

 こんなところで淫魔の奴隷になるわけにはいかない。私は絶対に帰ると誓

い、愛する夫へ思いを馳せる……

★★★

 淫魔たちが出払った絶好の好機に、集めた霊力を使って手枷と扉を破壊し

脱出を試みる。思った通り見張りは下級のサキュバスたったひとり。
「ひぃ!? どうやって牢から……っ!?」

 私を見て驚くサキュバスに最小限の力を叩きつけて騒がれる前に気絶させ

た。後はここから脱出して身を隠し、本部に救援の連絡を入れるだけ……

「くく、どこへ行く気だ?」

 クインランの野太い声が聞こえた瞬間、背後からがっしりと羽交い締めに

されてしまった。そしていつものように怪力でぎりぎり締め上げられる。
「密かに力を蓄えていたことはお見通しだ。

 残念だがお前は俺から逃げられない運命なのさ」

 見つかったのは想定外でも見たところクインランのみ。今の私が戦っても

充分に勝てる。あの下級サキュバスのように速やかに倒して、他に気付かれ

る前に身を隠せば問題ない。

「はあぁぁっ……!!」

 私は拘束から抜け出すために霊力で肉体を強化させた。湧き上がる力が白

い光となって見えるほどの凄まじさ。淫魔を遥かに超える力でこんなものは
簡単に抜け出せる……はずだった。

「どうした? 最強の退魔師なら

 霊力さえ使えれば俺など簡単に殺せるだろう?

 まさか振り払うこともできないのか?」

「ふざけるなっ! すぐに、こんなもの……

 っ……!! くぅっ……!!!!」

 残りの霊力を全て注ぎ込んで全力で振り解こうとしても、クインランの体

はびくともしなかった。今の私は鋼鉄の扉すら素手で破壊できるほど強化さ

れているはず。しかし彼の拘束を解くことができない。
 逆により強く押さえ込まれ、ボディスーツの前面が無理やり破り取られた。

剥き出しになった胸を乱暴に揉みしだかれながら乳首をしゃぶられ、がりっ

と歯を突き立てられる。

「ぅ……ぁ……そ、んな……」

 そしてついに苦労して集めた霊力が底を突いてしまった。強化された体が

元に戻り、脱力感と共に意識の外だった苦痛と激痛が一斉に襲いかかってく

る。

 痛みを快感と認識するようになった体は熱を帯びてじんじん疼き、勝手に

愛液が溢れてしまう。これを待っていたようにクインランは私を犯し、子宮

を抉りながら突き上げてきた。
 ずっと調教に耐えながら待ち続けたチャンスが無駄に終わったことで、そ

の絶望と諦観が抵抗の意志を著しく損なわせる。

「ひぅっ……あぁぁ……♥♥」

「なぜお前の力が通じないか種を明かそう。

 淫魔の唾液には実はもう一つの効果がある。

 長期に渡って摂取すると

 肉体が徐々に淫魔に従うよう変質していくのさ」

 肉体が淫魔に従うよう変質していく……そんなことは退魔師の知識にはな

かった。そして子宮を揺さぶられる快感に朦朧とする思考では、それが何を
意味するのか理解できない。

「最初に言った通り本当なら俺を楽に殺せた。

 だがお前の肉体は俺に逆らえない。

 こうやって首を絞められながら犯される

 被虐の快楽を渇望し、服従してしまう」

 そんなこと否定したいのに、口から出るのは娼婦のようないやらしい嬌声。

突き上げられるたびに感じる多幸感が私の心を優しく挫く。

「お前は素晴らしい女だが

 人の身はすぐに醜く老いて朽ちる。

 俺と同じ淫魔となって永遠を生きるべきだ。

 淫乱な本性、もはや人間の男では満たせまい。

 お前に相応しい男はいったい誰だ?」

 クインランの瞳が妖しい光を帯びて煌めいた。淫魔が最も得意とする魅了

の魔眼。魔力への耐性のおかげで私が魅了に掛かることはない。しかし、彼

に従う私の体はその耐性をあっさり放棄してしまった。

 魅了の魔力が私の思考を侵食し、クインランこそが私にとって唯一無二の

存在だと書き換えていく。彼に比べて非力で脆弱な夫など、取るに足らない

存在だと無理やり上書きされていく。
「あぁ♥ 私を、あなたと同じ淫魔にして下さい♥

あい
 犯して、痛めつけて、永遠に 壊 して……♥」

 クインランを受け入れると過去の人生が酷く空虚なものに思えた。こんな

にも気持ちいい快楽をなぜ知ろうとしなかったのか。なぜ退魔師になって愚

かな人間を守ろうなどと思ったのか。

 そして、なぜ私はあんなつまらない夫と結婚してしまったのか……

 でも今さらそんな些細なことはどうでも良かった。もう私には彼以上に愛

してくれる、愛すべき男がいるのだから……
★★★

―――カンナの夫の視点―――

「あぁっ、頼むっ……もう、やめてくれ……!」

「あら、どうして? 元妻のよしみで

 気持ちよくしてあげようと思ったのに♥」
 カンナが失踪してから僕は必死になって彼女を探し回った。毎日寝る間も

惜しんで探し続け、しかし彼女の方から僕の元へとやって来たのだ。

 僕たちの宿敵である、淫魔へと姿を変えて……

「前は胸でするなんて想像もしなかったでしょう?

 セックスだって淡白でつまらないものだった。

 一回果てたらもう勃たないなんて

 あなた男として最低のクズじゃない?」

 以前と同じ顔で、以前と正反対の性格に変貌したカンナ。恐ろしいほど美

しく、淫靡でいやらしいその姿は皮肉なことにサキュバスに相応しいと思え

た。

「カンナ。やはり娘も才能がありそうだ。

 スミレに連れて帰らせた。

 もうこんな場所に用はない。帰るぞ」

 大柄なインキュバスがカンナにそう言うと、彼女は嬉しそうに奴の腕に抱

きつく。男に甘え媚びるような仕草はもちろん以前の彼女になかったものだ。

 しかし僕以外の男にそういった態度を取るのを見せられると、既にサキュ

バスだとはいえ悔しさが込み上げてくる。
「くく、情けない男だ。

 これほどの女を妻にして宝の持ち腐れとはな。

 だがそのおかげで俺はカンナを手に入れた。

 せめてもの礼に、カンナの本性を見せてやろう」

 インキュバスはカンナを裸にして組み伏せ、巨大なペニスで犯し始めた。

あんなものが無理やり入れられたら苦痛しか感じないはず。しかしカンナの

表情は僕の見たことのない恍惚としたものだった。

「あぁ、ああぁぁあっぁぁっ――♥♥♥♥」
 退魔師としての毅然とした彼女。妻としての清廉で心優しい彼女。それら

のどれにも当てはまらない、ひとりの雌としての淫乱な彼女……

 だらしなく涎を垂らし嬌声を漏らす姿など本当のカンナじゃない。そう思

いたいのに、力強く膣を貫いて快感に喘がせるという、僕には絶対に真似で

きない行為に劣等感を覚えていた。

「まだまだこんなものじゃないぞ?

 さぁ、カンナ。奴にお前の全てを見せてやれ!」

 インキュバスが何かの術を唱えると、どこからともなく鎖が現れてカンナ

の両手を拘束する。そのまま吊るし上げられ身動き取れない彼女に向かって、

インキュバスは鞭を思い切り振り下ろした。
「あぎぃっ♥♥ ひあぁぁぁっ――♥♥」

 カンナの悲痛な悲鳴。そして鞭が振るわれるたびに白い肌に赤いミミズ腫

れが何本も刻まれていく。いったい奴は何をしているんだ? こんな拷問、

なぜ味方のはずの彼女にする必要がある?

「よくカンナの顔を見てみろ。

 彼女の本性は苦痛で感じる真性のマゾヒスト。

 仮に今まで通り夫婦生活を送ったとしても

 お前がカンナを満足させることは絶対不可能だ。

 彼女を理解できてないのだからな」
 鞭で打たれるたび、悲鳴を上げながらカンナはうっすらと笑みを浮かべて

いた。愛液がどんどん溢れ、失禁したように太ももを濡らしている。

 インキュバスがついでというように乳首にピアスを嵌めた。ぶちりと針が

刺さる音と、恍惚としたカンナの喘ぎ声が響く。

 これがカンナの本性なのか、淫魔化して変貌したものなのか、僕にはもは

や判断できなかった。そして彼女の痴態に痛いくらい勃起している自分も信

じられない。そう思ったのを最期に、僕の頭はインキュバスに叩き潰されそ

の生涯を終えた。

END1
・スミレ編

―――スミレの視点―――

 ジュノが私を解放するために課してきた条件……男性十人分の精集め。そ

れを満たしたにも関わらず、私はどうすべきか迷っていた。

 刻まれた二度目の淫紋は生涯消えることはない。つまり淫魔の誘惑に極端

に弱くなった私は退魔師に戻ることが不可能なのだ。偉大な姉を目指してき

たのに、その目標をもはや追うことすらできない。

 そしてより致命的な理由は……私自身の心の内に秘めていた醜い本性。ジ

ュノに暴かれ、目の前に突きつけられた本当の私。

 秘所を貫く硬いペニスの感触と全身を駆け巡る快感が忘れられない。淫魔

のように男から精を奪い搾り取る心地よさが忘れられない。守るべき市民を、

私は自分の快楽のために殺してしまった。

 もう姉さんにも、退魔師の仲間たちにも会えない。私の居場所は……居て

もいい場所は、そこには存在しないのだ。

『誰かっ……た、助けてっ……!?』

 あてもなく夜の街をさまよっていた私の"淫魔の耳"に声が届く。淫魔だけ

が受信できる魔力による救難信号なのだが、既に半分以上が淫魔化している
私にもそれがはっきり聞こえてきた。

 もちろん普通の淫魔は仲間意識など皆無で助け合おうなど思わない。おそ

らく退魔師に追い詰められているだろう状況。

 しかし私はこれから自分がどうしたいのか見極めるため、あえてその現場

へと向かってみることにした。

★★★

 人払いの術で一般人を遠ざけた裏路地。そこには思った通り退魔師らしき

若い少年と低級なサキュバスが対峙していた。

 お互いに未熟でもサキュバスの方は少年の足元にも及ばない弱さで話にな
らない。少年の経験不足に助けられて善戦してはいるが、退治されるまであ

と数分というところだろう。

 知り合いの退魔師と遭遇しないよう私は所属していた支部の管轄外へ来て

いる。そのため当然ながら少年に心当たりはなかった。

 それにしてもこの支部では子供にも退魔師として活動させているのだろう

か? あの少年は明らかに独り立ちできるレベルじゃないのに、近くに指導

役の先輩の姿は見当たらないのだ。

 あの程度の雑魚ならともかく、例えば……もし私が相手だとしたら……

 どくん、と心臓が大きく脈打つ。今、私があの少年を襲うことを想像して、

どういう結果になるのか異常なほどリアルに頭に浮かんできた。
 よく見ると女の子と見間違えるほど可愛らしい顔。淫魔が獲物を見定める

ための特性によって、私は見ただけで少年との相性を瞬時に把握する。あの

子が欲しい。私の中の淫らな本性が激しく訴える。

 私はゆっくりと、戦いに集中している少年へと近づいていった……

★★★

―――退魔師の少年の視点―――

 我流で退魔師の技を学んだ僕は密かに淫魔退治をしている。別にこそこそ

する必要はないけど、退魔師に見つかるとお説教だの師団に強制加入だの面

倒だから仕方がないのだ。

 姉は正式な退魔師だった。でも淫魔に捕まって酷い陵辱を受け、心が壊さ

れてしまった。だから退魔師団なんて信用できない。

 僕自身の手で淫魔たちに復讐する。そう誓った。

「チビの分際で生意気なっ!!」

 まだ僕には実戦経験があまりない。だから今一歩踏み込めず淫魔にとどめ

を刺せないでいた。でもこいつが僕よりずっと弱いことはわかる。油断せず
確実に仕留めるため、僕は攻撃に意識を集中させた。

 まさに攻撃をしようとした瞬間、周囲に甘い匂いが漂ってきて下半身がぴ

くりと反応する。淫魔の力なのは間違いない。でも、ちゃんと目の前の淫魔

を警戒していたのにどうして……?

「ぁ、くぅっ……!?」

 みるみるペニスが硬くなり意に反して気持ちよさが膨れ上がっていく。抑

えることも耐えることもできず、僕はその場に膝をついてしまった。

 いけない。まだ敵がいるのに……早く、持ち直して淫魔を倒さないと……
「ねぇ、キミ。大丈夫……?」

 背後から女の人が声をかけてきた。人払いの術で普通の人はここに近づけ

ない。近づけるのは退魔師か敵のどちらかだ。

 退魔師ならまだいいけど、敵だったらまずい……

「サキュバスならもう逃げたから安心して?

 私はスミレ。元退魔師なの」

 長い黒髪の女性が暗闇から音もなく現れた。元退魔師……ということは今

はもう違うんだろうか? 退魔師の関係者とは会いたくないけど、少なくと
も敵じゃないから警戒はしなくていい、のかな?

 あのサキュバスは逃げてしまったらしい。でも、まだ辺りから甘い匂いは

残っていて僕の下半身も収まる気配はなかった。

「サキュバスの淫気にあてられたみたいね。

 私が診てあげるわ。

 そのままじゃ苦しいでしょう?」

 お姉さんがそっと近づいて僕の前に膝をつく。前屈みになるとその大きな

胸の谷間がはっきり見え、柔らかそうに揺れる胸に目が吸い寄せられてしま

う。

 当然ながら僕のペニスはさらに硬くなって誰が見てもわかるほどズボンを

盛り上げてしまった。お姉さんはわかっていると言うように優しげに微笑む

と、ズボンの上からゆっくりペニスを撫でる。

「あ、ちょっと……ひぁっ!?」
 ズボン越しに撫でられただけなのに、腰が砕けてしまいそうな激しい快感

がびりびり駆け上がってきた。まるで感じるところを完璧に把握してる的確

な愛撫に僕はされるがまま身悶えてしまう。

「こんなに敏感じゃサキュバスと戦えないわよ?

 ほら、こういうのはどう?」

 裏筋を指先でつーとなぞられ、かりかりと強く引っかかれる。その絶妙な

刺激にむず痒い切なさが込み上げてきた。

 下着には既にカウパーが溢れて濃い染みができているけど、それでもこの

刺激だけでは射精に至れない。お姉さんは妖しく見つめながら寸前のところ
で焦らしつつ僕を弄んでいる。

 なぜ初対面なのにこんなことをしてくるのか?

 彼女は本当に元退魔師なんだろうか?

 そんな当然の疑問を考えることができないほど、射精したい欲求が僕の中

で破裂しそうなくらい膨れ上がっていた。

「ねぇ? 直接触ったらどうなると思う?

 ズボン越しでこんなうっとりしちゃうんだから

 直接扱いたらどんなに気持ちいいか想像して?」

 そんなことを言われたらもうそれしか考えられなくなる。僕の目を見つめ

ながら、お姉さんの綺麗な手が下着の中にするりと入っていく。すべすべな

肌の感触がカウパーを絡ませながらペニスを包んでいく。

「っ、おねぇさ……だめっ、でちゃ、ぅ……!?」

 先端の敏感な部分がすりすりと擦られた瞬間、火花が散ったみたいに快感

がぱっと弾け、どぴゅどぴゅと濃い精液がお姉さんの手の中に吐き出された。

射精している間も先端をぐにぐに揉まれ、気持ちよさがずっと持続する。

 淫魔に攻められた時のために快楽に耐える訓練はしてきた。射精しないよ

う自分の意思でコントロールできたはずなのに、お姉さんの手は僕の意志を

簡単にすり抜けてしまう。
「ふふ♥ いっぱい出たね?

 まだ子供なのにこんなに精子溜まってたんだ♥

 ねぇ‥…お姉さんと続き、してみない?」

 指や手のひらにべっとり付着した僕の精液をお姉さんは美味しそうにぺろ

ぺろ舐め取っていく。淫魔と変わらない妖艶な姿から目が離せず、射精した

ばかりのペニスが期待するようにぴくりと反応した。

 淫魔と、変わらない……?

 それってなにか変じゃないか?

 お姉さんは人間なのに、さっきのサキュバスよりずっと危険な雰囲気があ

る。今すぐ逃げるべきだと本能が訴えていた。

 僕がここから逃げ出そうとした直前、お姉さんが上着の下に着ているセー

ターをぐいっと引き下げる。真っ白な肌とぷるんとした大きな胸が眼前に現

れて思わずたじろんでしまった。
「逃げ出そうとするいけない子は……

 こうしちゃうんだから♥」

 むちむちした胸をむにゅりと僕の顔に押し付け、そのままぎゅっと抱きし

められる。信じられないくらい柔らかくて、うっとりする良い匂い。

 周囲に残っている甘い匂いを何倍にも濃くしたような……それがお姉さん

自身から漂っていた。もう間違いない。このお姉さんは人間じゃなくて淫魔。

早く抜け出して逃げないと……

「むぐっ……、はな、せ……っ!!」
 息を止めて全力で暴れようとするけど掴まれた両手が振りほどけなかった。

本当なら霊力で筋力を強化すべきだったのに、未熟な僕は焦ってそこまで気

が回らない。人間を凌ぐ魔物の身体能力に子供が抵抗できるはずがないのだ。

 すぐに息苦しくなって濃密なサキュバスの匂いを吸い込んでしまう。脳が

侵されるみたいに痺れて思考がぐずぐずになっていく。

「あっ……ぁ……ふぁぁ……」

 それでも必死にもがき、やっとの思いで胸の谷間から抜け出したのに……

淫魔は瞳を妖しく煌めかせ待ち構えていた。既に朦朧としている意識が魅了
の魔眼に絡み取られ、抵抗心が完全に消滅する。

「退魔師を犯すのはキミが初めてなの♥

 上手に《エナジードレイン》できるかなぁ♥

 やりすぎちゃったらゴメンね?」

 淫魔が服を脱ぎ捨てると綺麗なのにいやらしい体が惜しげもなくさらされ

た。両腕で胸を押し上げると巨大な塊がこぼれそうになる。

 魅了された僕はこれら淫魔に犯されることに少しも危機感を抱けない。そ

れどころかペニスは早く犯してほしいと期待するように硬くそそり立つ。淫

魔は愛液が滴る秘所にペニスをあてがって、ぐっと腰を下ろしていく。

「ひぅっ!? にゃに、これぇ……

 あっ、うぁ……とけちゃ、ぅっ……!?」

 まだセックスの経験がない僕にとって、淫魔の熱い肉のうねりは本当に溶

けるとしか形容できない快感だった。もの凄い勢いで生命力や霊力が精液に

流れ出してしまうのがわかる。

 例え魅了されていなくても僕にはどうすることもできなかっただろう。そ

して魅了されているが故に、僕は不幸を感じることなく快楽に身を投じた。
「んん? キミ、もう漏らしちゃったの?♥

 あ、もしかして童貞だった?

 初めての相手がサキュバスなんて大変だね♥

 それとも、誰よりも幸せなのかな?」

 精液が淫魔の膣に搾り取られていく。ペニスをしゃぶるみたいに咀嚼され、

精液と一緒に大切な力がどんどん僕の体なら吸い出される。死へと近づく行

為なのに淫魔の言葉通り幸せにしか感じない。

 異様な陶酔と多幸感。犯されるのが気持ちいい。力が奪われるのが気持ち

いい。霊力だけじゃなくて、体の中身まで全て精液に溶けているみたいだっ

た。
 もう諦めかけていた僕の心に元気だったころの姉の笑顔が浮かぶ。瞬きす

るほどの僅かな出来事だったけど、それは僕に正気を取り戻させるのに充分

すぎた。残りの霊力をかき集めて体内を浄化し、体の自由を取り戻す。これ

でようやくスタート地点。後は筋力を強化して淫魔を跳ね除ければ……

「あぁ、やっぱり子供でも退魔師なんだね。

 精気の味に気を取られていると

 思わぬ反撃を受ける可能性がある。

 これはいい勉強になったわ。

 教えてくれて、あ・り・が・と♥」

 淫魔の両手がそっと僕の顔に添えられる。まずい。また魅了されたらもう

逃げるチャンスは皆無だ。僕は必死に筋力を強化して淫魔の腕を掴む。お互

いの力は同じくらい。あと少しで引き剥がせる……

「っ……、くぅっ……!!」

 おかしい。互角の状態からさらに強く霊力を込めたのに引き剥がせない。

どれだけ強化してもやっぱり互角のまま平行線だ。

 にやにや笑いながら僕を見つめる淫魔の表情でやっと気付いた。最初から

お互いの力はぜんぜん互角じゃない。淫魔はわざと手加減して僕がもがく様

子を楽しんでいる。弄ばれてると気付いた時の絶望の表情を心待ちにしてい
る。そしてそれは淫魔の思い通りになってしまった。

「希望が絶望に変わる瞬間の切ない表情……

 それだけでいっちゃいそう♥

 ところで私、まだ腰を動かしてないんだけど

 もうとどめ刺しちゃっていいかな?」

 ゆっくりと淫魔が腰を左右に揺らす。意識の外だった蕩ける快感が一気に

襲ってきて僕は声にならない悲鳴を上げた。膣内で精液がぐちゅぐちゅとか

き混ぜられ、結合部からどろりと溢れ出ていく。

 耐えようと思う間もなくあっさり射精してしまった。精液が吸い出される

快感と霊力が奪われる喪失感。今度は魅了されていないため意識が明瞭で、
その背徳の快楽をはっきり脳に刻まれてしまう。

 退魔師はこんなにも激しい快楽に耐えて淫魔と戦わなければならない。今

更ながら自分の未熟さを思い知って涙が溢れた。

「ごめんね。キミを悲しませる気はないの。

 もういじめたりしないわ。

 深く魅了して、一気に吸い尽くしてあげる♥」

 再び魅了の魔眼によって僕の意識が淫魔に捕らわれる。そして淫魔は僕を

むちむちの胸に抱きしめながら腰を小刻みに上下させた。どろどろに絡みつ

く熱い肉ひだがペニス全体ををきつく締め付け、極上の快感となって僕を奈

落へと突き落とす。

「ひぐっ、ぁ、でちゃぅ……!?

 ぅあ……あぁ、やだ……すわな、いで……」
 蛇口が壊れたみたいに射精が止まらない。どくっどくっと気が狂いそうな

快感と共に濃い精液が溢れ出てしまう。あっという間に霊力は空になり、僕

の生命力までどんどん搾り取られていった。

 射精してから僅か一分足らずで目の前が暗くなる。音もまったく聞こえず、

あるのはペニスに感じる恍惚とした快感のみ。

「ひっ……ぁ……ぁぁ……」

 最期に一度だけ僕の体がびくりと痙攣し、ごぽりと大量の精液が漏れ出て

意識がぶつりと途切れた。
★★★

―――スミレの視点―――

「やあ、スミレ。

 罪もない一般市民に加えて

 退魔師とはいえまだ幼いの少年まで

 容赦なく吸い殺した気分はどう?」

 ジュノが嬉しくて堪らないといった様子で話しかけてきた。私は先ほど命

を一滴残らず吸い尽くした少年に視線を向ける。

 守るべき市民だけでなく退魔師の子供まで殺してしまった。それどころか

弄んでいたぶって、彼が死ぬまでの様子をしっかりと目に焼き付けていた。

彼の命の味を舌の上で味わうように、限りなく残酷に……

 そして殺した事実に後悔も懺悔もする気がない。これから自分はどうした

いのか……そんなもの、確かめるまでもなく誰の目にも明らかだ。
「君のお姉さんにも早く教えてあげよう。

 確か娘もいるんだよね?

 きっと素晴らしいファミリーが誕生するよ。

 旦那さんには気の毒だけど」

 ジュノに頷いて私は彼と共に夜の闇へ溶け込む。それこそが私の正しい姿

だと、空に浮かぶ満月が祝福しているようだった。

END2
・ジュノ編

―――ジュノの視点―――

「さて、スミレの方はともかく……

 カンナはどうやったら堕ちるんだろう?」

 首尾よくカンナを捕らえ、霊力を奪って逃げられなくしたまではよかった。

でもちっとも堕ちる気配がない。淫魔の唾液で少しずつ被虐体質に変えてい

るけど進行は亀の歩みだ。

 彼女を堕とすと豪語していたクインランは別の女の尻を追ってどこかに消

えてしまった。ファック!

 せっかく手に入れた玩具だけど捨ててしまおうか。ボクは苦労して調教す

るのは好きじゃない……面白おかしく楽しむのが好きなんだ。

「捨てるなんて勿体ないですね。

 それならわたくしに任せてみませんか?」

 友達が紹介してくれた娼館のオーナーが自信ありげに名乗りを上げた。人

間だけど退魔師を何人も調教した実績があって腕は確からしい。試しにどう

やるのか訊いてみると素晴らしい答えが返ってきた。これは彼女に任せるし

かない。
「ふふ、期待は裏切りませんよ。

 では準備をしましょう。家族再会の為の、ね」

★★★

―――カンナの視点―――

「君の精神力にはさすがのボクも降参だ。
 これが最後のゲームにするよ。

 見事クリアしたら君も妹も解放してあげる」

 ジュノと一緒に現れた妖艶な女性。あれは間違いなく魔女……それもかな

り力を持っているようだ。とても嫌な予感がする。そして、当たって欲しく

ない予感ほどよく当たるものだ。

「わたくしは娼館を経営しています。

 カンナさんとスミレさんには娼婦として

 ある顧客の相手をして頂きます。

 実はその方、現役だったころのカンナさんに

 辛酸を嘗めさせられたとか……
 きっとたっぷり可愛がってくれるでしょう」

 魔女が口にした男の名は東堂。奴のことは忘れもしない。欲に目が眩んだ

権力者の典型で、永遠の命を得るために淫魔を大量に召喚したのだ。

 罪のない多くの人々が犠牲になった大惨事。東堂は反省どころかそれを金

・・
銭で隠蔽しようとし、私は 多少やりすぎと言われる程度に奴に灸を据え……

後は記憶を消して事件は幕を閉じた。

 あれはもう十年近く前になるが、普通は消去した記憶が自然に戻ることは

ない。おそらく魔女が奴の記憶を戻したのだろう。

 東堂は思想や性格もだが、外見もそれに劣らないほど醜かった。直立した

蛙の如き体型で全身から香水でも隠しきれない酷い悪臭を放つ。油ぎった肌

に芋虫のような指、死んだ魚のような濁った目。夫と比べると同じ人間には

見えない……奴こそが魔物ではないかとさえ思えた。
「奴の相手をするなど、死んでも断ります!」

 私の反応を予想していたのか、ジュノがにやにや笑いながら部屋を出てい

く。そしてモニターにジュノの姿が映し出された。

 映っていたのは彼だけではない。裸にされた幼い少女が鎖に繋がれた痛々

しい状態で俯いている。はっとして息を呑む。見紛うはずもない、その少女

は家で夫と一緒に私の帰りを待っているはずの……私の娘、ユリだった。
『さて、ボクのゲームを断ってくれた君には

 やる気を出すためにも罰を与えよう。

 今から大事に育てた娘に淫紋を刻んであげる』

 ユリは私の血を引いているとはいえ退魔師の訓練をしていない普通の子供

だ。淫魔の毒牙にかかったら一溜まりもない。

 やめてと叫ぼうとすると、後ろから魔女が私の首に白い蛇のような腕を絡

みつかせた。そっと撫でるように、しかし確実に首が絞められていく。

「己の半身にも等しい大切な愛の結晶。

 穢れない純粋な心が淫靡な魔性に染まる瞬間、
 母親としてしっかり目に焼き付けなさい」

 ジュノは膨らみ始めたばかりの胸をいやらしく揉みしだき、まだ誰ともキ

スしたことのない唇を奪った。ユリは朦朧としているのか瞳は焦点が合って

おらず、何をされても抵抗する様子がない。

 されるがままのユリの体内に唾液と共に魔力が流し込まれていく。急速に

広がる淫らな魔力の影響でユリの頬は上気し、体はじっとり汗ばんでいった。

『やっぱり君の娘だけあって霊的な素質があるよ。

 退魔師として鍛えれば大成しただろうに。

 危険から遠ざけた苦労が水の泡になったね』
 くちゅり、と音を立ててジュノの指が幼い膣へと挿入される。そこで初め

てユリに僅かな反応があった。戸惑ったような、驚いたような小さな声。そ

の声は徐々に私が聞いたことのない、聞きたくない声色へと変わっていく。

 明らかに快楽に身悶える女の声と表情。淫魔の魔力で強制されているとは

いえ、自分の娘が穢されていくのを見るのは胸が抉られるようだ。

「逆に考えては如何です?

 大人になってから葛藤するよりも

 無垢な内に快楽に堕ちてしまえば葛藤もない。

 あの娘はきっと貴女たちより幸せですよ。

 今の貴女のように悩まなくて済みますから。

・・・・・
 新たな性癖に目覚めても、ね」
 魔女が腕に力を込めて頸動脈を圧迫し、血流が急激に遮られる。血圧低下

によって頭の中が真っ白になって周囲の音も思考も何もかも消え失せる。意

識がふわりと浮遊する奇妙な感覚。

 しかし失神する直前で力が緩められ意識が現実へと戻された。

「今のはいわゆる首吊りと同じ状態です。

 苦しさは感じなかったでしょう?

 さて、次はゆっくり自覚させてあげましょう」

 再び頸動脈がきゅっと絞められる。今度は徐々に脳への酸素供給が絶たれ

ていく。視界が白く霞み、じわじわと意識が浮遊していく感覚に襲われた。
「ぁ、か、はっ……ぃぎっ……」

 窒息のような苦しさはなく、むしろ真逆の恍惚としそうな浮遊感。酸欠に

よって認識能力が極端に低下して、その危険な快感に身を委ねてしまいそう

だった。やはり失神直前で力が緩められ、私の意識は再び現実へと引きずり

戻される。

 その異様な体験がさらに数回繰り返された。最後には本当に失神し、体を

びくびくと痙攣させながらだらしなく失禁までしてしまう。そして、流れ出

た液体は小水だけではなかった。

「淫魔の唾液の効力は恐ろしいですね。
 窒息プレイで感じるには時間が必要なのですが

 もう愛液を垂れ流してしまうとは。

 ほら、起きて下さい。

 貴女の大切な娘がそろそろ危ないですよ?」

 回復術によって無理やり覚醒されられる。しかし何度も味わった恍惚とす

る感覚は抜けず、危険にも関わらず心地よい快感となって私の意識を蝕んだ。

『ちょっとぉー? ボクを無視しないでくれるぅ?

 カンナ。君さぁ、娘がどうなってもいいの?

 酷いねぇ。ママはユリより自分が大事だって』

『ひぅっ♥ ぁ……もぅ、やだぁ……』

 ユリの消え入りそうな喘ぎ声にはっとする。モニターの中ではジュノが激

しく指を動かしてユリの秘所はびちゃびちゃになっていた。

『次で終わりだからね、ユリ。

 さぁ、ママが見てるから

 教えた通りちゃんと言うんだよ?』
『ふあぁっ、いくっ♥ いっちゃ……

 あぁ、ああぁぁあっぁぁっ――♥♥♥♥』

 耳をつんざくほどのあられもない嬌声。小さな体がびくんと反り返り、秘

所から噴水のように愛液が溢れ出る。

 ジュノの指使いにされるがまま、もはや叫び声になった嬌声を何度も上げ

させられていた。私は娘のあり得ない痴態を呆然と見てることしかできない。

そして、長く続いた絶頂がようやく終わる。

『くく、お疲れ様♪ カンナ。見えるかな?

 綺麗な淫紋がしっかり刻まれたよ♪』
 ユリのお腹の子宮のある位置。そこには濃い紫色の淫紋が妖しい光を放っ

ていた。娘を穢された激しい怒りと悲しみが湧き上がる……はずなのに、な

ぜか私の心の中の感情は思ってもみなかった方向へと向かってしまう。

 大切なものが奪われる快感。自分の手の中からするりと抜け落ちていく絶

望が、被虐の快楽となって私に暗い悦びを植え付ける。

「酸欠で頭が変になってしまった?

 ふふ、そうだといいですね。

 まぁ最初の淫紋なら消せるじゃないですか。

 妹のスミレのように……

 だから安心してマゾの悦びを甘受して下さい」

 またしても魔女の白い指が私の首を優しく絞めていく。脳細胞が酸欠で死

滅してしまう破滅的な快感と共に、私はあっさり意識を手放した……

★★★

―――カンナの夫の視点―――
 妻に続いて娘まで行方不明になってしまった最悪の状況。退魔師団の捜索

も遅々として進まず、それどころか僕の身を守るという名目でつけられた監

視員に行動を制限させられる始末だ。

 そうして何もできないまま時間だけが無為に過ぎていく。スミレが最初に

消息を絶ってから一ヶ月後、家のポストに無記名の封筒が投函された。

 封筒の中には市販の DVD が一枚。ディスクの裏面を見ると書き込み済みの

ようだ。

 このタイミング……妻と娘に関わることなのは間違いない。内容を確認す

るべきなのに、見るのが怖かった。最悪の事態が現実になることが恐ろしか

った。僕は……この DVD を……

・再生する

 再生しようがしまいが、起こってしまった結果は変わらない。それなら確

かめるべきだ。僕は息を呑んで DVD をデッキに入れて再生ボタンを押した。


『こんばんは、カンナの旦那様。

 このホームビデオは素人の撮影ですので

 動画の構成や品質の粗さにはご了承下さい。

 では、どうぞお楽しみを……』

 いきなり現れた妖艶な女性が挨拶してすぐ場面が切り替わる。動画はスマ

ートフォンで撮影したらしく、撮影者の息遣いや手ぶれなど見やすいとは言

い難い。そして、驚愕の内容が映し出された。
『さ、撮影するのですか……?』

『くくく。せっかく大金を払ったんだ。

 それくらいは許して下さいよ。

 まぁ、誰にも見せませんから安心して下さい』

 その人物は僕がよく知るカンナに間違いない。彼女は肌が透けそうな薄い

ランジェリーを身に着け、恥ずかしそうに撮影者を見上げている。

 いつも露出の少ない服装の彼女と正反対のはしたない姿に、僕はハンマー

で頭をガツンと殴られたような衝撃を受けた。
『何を今さら恥ずかしがるんです?

 妹のスミレを見習いなさい。

 これじゃどっちが姉かわからないですねぇ?』

『申し訳ありません、東堂様。

 姉はまだ自分の立場が理解できてないんです。

 ここではご主人様を悦ばせるのが

 私たちの使命であり絶対の掟。

 そして今は東堂様が私たちのご主人様……♥』

 カンナと同じ格好のスミレが媚びるように近づいてきてキスをする。動画
ではその様子が画面外で映っていない。しかし漏れ聞こえるいやらしい音か

らそれが深く長く続いていると嫌でもわかった。

 揺れる画面の端にカンナの顔が映る。唇をきつく結んで耐えるように俯い

ているが、二人の行為を止める気配はない。

 どうして何もしないんだ? こんな娼婦のような真似、今すぐ止めるべき

だ。現役時代に淫魔が巣食う娼館を襲撃した時は、自ら体を売る娼婦たちを

激しく嫌悪していた。今の彼女は否定的なものの、拒否はしていない。

『スミレを見ると当時のカンナを思い出すよ。

 しかし今の熟した彼女も素晴らしい。

 あんな大きな娘がいる思うと興奮もひとしおだ。

 君には悪いが、熟れた人妻から頂くとしよう』

 撮影者……東堂と呼ばれた男がカンナに跪くよう命令じると、彼女はあっ

さり従って地面に膝をついた。上から見下ろすアングル。そしてカンナの目

の前には大きく盛り上がった股間がある。東堂は下着を脱がせろと更に命令

し、黒々としたグロテスクで巨大なペニスが晒された。

 次にカンナに何をさせるか見るまでもない。僕はやめろと大声で叫ぶが、

動画は無情にもその先を再生し続けた。
『んっ……げほっ!? ぅ、んぐっ……!』

 悪臭にえずきそうになりながら、それでもペニスを口内に咥え込む。僕で

すらカンナに口でされたことはない。それなのに見ず知らずの男に奉仕する

様子を見せられて、怒りや絶望……そして妻の痴態に対する暗い興奮がじわ

じわ燃え上がる。

 ふいに動画が真っ暗になった。突然の静寂で冷静になり、この状況に興奮

した自分を恥じる。

 この後はどうなったのか……録画をやめたのか、バッテリーが切れたのか、

少なくともあの行為は終わってないはずだ。
『おっと、間違えて停止ボタンを押してしまった。

 これからは操作ミスに気をつけるとしよう。

 ほら、カンナ。こっちを向きなさい』

 カンナの顔は白く濁った精液に塗れていた。べっとりへばりついて滴り落

ちないほど濃くて穢らわしい白濁液。しかも尋常ではない量だ。それが美し

い妻を汚らしく染め上げている。

 口の中にも大量に吐き出されたらしく、カンナの唇の端からも涎のように

精液が糸を引いていた。しかし彼女は苦しそうにしながらも口をきつく結び、

頬は膨らんで何かを含んでいるのか容易に想像できる。まさか、それは……
『途中で中断して申し訳ないが

 カンナは精液をもう三分近く口内に溜めている。

 そろそろ私の味や匂いを覚えた頃だろう。

 よし、もう飲んでいいぞ』

 視聴者、つまり僕に東堂が状況を説明していた。奴の穢らわしい精液を三

分も口に入れたままなんて拷問だ。しかも飲み込めだなんてふざけている。

 だがカンナは吐きそうになるのを懸命に堪えながら何度も喉を鳴らし、精

液をすべて飲んでしまった。ぜぇぜぇと息を乱しながら、飲み干した事実を

証明するように空になった口を大きく開く。

『さて、ではそろそろ本番を始めよう。

 実は淫魔に頼んで色々と肉体改造していてね。

 精力の増強はもちろん、このペニスは

 カンナの膣に最適な形状に変えてもらった。

 君のためだけに体の一部を改造したんだ。

 きっと気に入るはずだよ』

 それからの映像は筆舌に尽くしがたい凄惨なものだった。カンナは数え切

れないほど何度も犯され、体中が奴の精液でどろどろに汚されてしまう。当

然、膣内にも射精されてわざと精液が溢れ出る様子を間近で撮影までされた。

 カンナが気を失った後はスミレが相手になって再び激しいセックスが始ま
る。しかしスミレは自ら楽しむように積極的に上になって腰を振り乱し、そ

の様子は僕の知っている彼女とはかけ離れた淫乱なものだった。彼女の表情

は快楽の悦びに打ち震え、まるで淫魔そのものに見える。

 僕は知らず知らずの内に自慰に耽っていた。妻とその妹が蛙のような醜い

肥満体の男に犯される様子に、怒りを忘れて邪な快感を覚えていた。

 気が付くと二時間もの時間が過ぎ去り、まだセックスは続いているものの

ディスク容量の都合で途中で終わりになる。そして唐突に場面が切り替わり、

最初に出てきた妖艶な女性がまたしても現れた。

『お楽しみ頂けたでしょうか、旦那様?


 失敬。正確には元旦那様、ですね。

 もし彼女たちに会いたければ

 この住所までお一人でお越しください。

 もちろん退魔師団に連絡するのも貴方の自由。

 懸命な判断を期待しています。では……』

 画面の下に住所が表示される。迷いなどない。僕の頭の中では退魔師団の

監視をどうやって巻くか、かつてないほど冷静に考えを巡らせていた。

★★★
「んんっ、あああぁぁ、あぁぁっ――♥♥♥♥」

 今まで聞いたことのない妻のいやらしい嬌声。そしてぱんぱんという肉と

肉がぶつかり合う音が止むことなく鳴り響く。

「ちょっとぉ? アンタやる気あるのぉ?

 さっきから十秒もたずに射精してるじゃない」

 妻のあられもない痴態。しかしそれは僕の腕の中ではなかった。妻を犯し

ているのは動画に出ていた東堂という肥満体の男。僕を犯しているのは赤い

髪の低級なサキュバスだ。

 東堂は僕が射精を五分耐えたら家族全員を解放すると約束した。何度でも

挑戦していいが、五分以内に射精したらその回数だけカンナを絶頂させる、

という条件。僕に選択の余地はなく、その狂ったゲームは開始された。

「あぁーあ♪ またあの女、イかされたわね。

 見てあのトリップ中の麻薬中毒者みたいな顔♥

 元最強の退魔師とは思えないアリサマ♥」
 いつの間にかスミレが後ろから白い裸体を絡みつかせ、胸やクリトリスを

愛撫している。そして東堂は妻だけでなくスミレと交互に挿入を繰り返して

いるようだ。瓜二つの淫らな嬌声が交互に響き、僕の興奮を際限なく高める。

「あぁん♥ 話の途中で漏らすとか最低ね♥

 東堂さぁん、もう一回追加お願い♥」

 返事の代わりと言わんばかりに東堂は猛烈な勢いでがんがん腰を突き上げ、

あっという間に妻を絶頂させてしまう。

 過去の僕とのセックスで妻はそういった反応をしたことはない。言葉で“気

持ちよかった”と言われて納得していたが、それが間違いだったと奴にはっき
り見せつけられてしまった。

 外見も性格も最低の男に最愛の妻も娘も義妹も奪われ、もはや何をする気

もおきない。ただ興奮を感じて機械的に射精するだけだ。

「うわぁ、パパってこんなにダサかったんだぁ♪

 今までのママが可哀想♪

 ユリにもパパの血が流れてると思うと

 もうサイッテーの気分だよ♪」

 ユリが僕をなじり、東堂に寄り添って甘えながらねだっている。そしてあ

ろうことか奴のアナルを自分から舐め始めた。

 命よりも大切な家族が壊されてしまった絶望。しかし僕はその命より欲望

を優先して無為に捨てようとしている。低級なサキュバス如きに搾り尽くさ

れるという情けない形で。

 数分後、僕の人生は人として最低な結末で幕を閉じた。妻と結婚して娘を

もうけた最良の思い出にしがみつきながら……

END3

・破棄する
 ディスクに何が映っているのか、僕には確認する勇気がなかった。そして

悟る。もう二度と妻にも娘にも会えないということを。

 僕の人生を一変させた出来事から数年後。退魔師として凡庸だった僕は血

反吐を吐きながら必死に修行を重ね、さらに寿命を削る禁呪にまで手を出し

て突出した霊力を手に入れた。

 そして手当り次第に淫魔を見つけ出し狩り始める。期待なんてしていない

けれど、倒した敵が手掛かりを持っている僅かな希望に縋った。無茶な戦い

方で仲間から気味悪がられる厄介者。いつの間にか数多の敵を倒した功績に

よってそれなりの地位を得ていたが、そんなものは虚しさが増すだけ。喜び

合う相手は、隣にいない。

★★★

 数年前のあの日と同じ、ポストに無記名の封筒が投函されていた。中身は

やはり書き込み済みの DVD が一枚。まさか妻と娘を拉致した犯人だろうか?

確かめる方法はひとつ。今の僕はもう恐れない。失うものなどないのだから。
『こんばんは、かつてのカンナの旦那様。

 貴方がこれほど力をつけるとは予想外でした。

 こちらにも相当な損害が出て困っているのです。

 そこで提案があります』

 妖艶な女性……おそらくかなり力のある魔女が提案の内容を話し始めた。

カンナたちは淫魔となって魔女の監視下にいる。本来なら淫魔化して数年も

経てば人間に戻れないが、魔女の特殊な呪法を用いれば可能性はゼロではな

いという。

 魔女の言う呪法を使用するには、カンナたちを傷つけず弱らせなければな

らない。つまり、セックスによって僕は射精を耐えつつ、彼女たちを絶頂さ
せればいいということだ。

 淫魔相手にセックスするなど馬鹿げている。しかし僕は罠を承知で魔女が

指定した住所に向かった。彼女に会えるなら僕の命なんて安すぎる。

★★★

「いつも真面目な格好のあなたに

 無精髭がこんなに似合うなんて知らなかった。

 私の姿は変わらないけど、中身は違う……」

 淫魔に成り果てたカンナが僕を見つめて静かに微笑む。その表情はあの頃
の優しい彼女そっくりで、淫魔らしさは微塵も感じない。

「今の私には淫魔たち全員が仲間であり家族なの。

 だから裏切ることはできない。

 私を愛しているなら、吸い殺されるか、

 強引に奪うか……あなたが選んで?」

 堪らなくなってカンナの唇を奪う。数年ぶりの彼女の感触、匂い、そして

暖かさ。何も変わらない。淫魔となってその魅力は魔性の美貌と呼べるほど

高まっているが、やはり彼女は僕の知る妻なのだ。

 最後にカンナと愛し合ってから数年間、誰ともセックスはしていなかった。

そんな状態で今の彼女と繋がったらどうなるか火を見るより明らかだろう。

 でも僕はもう自分を抑えられない。かつての DVD にどんな映像が記録され

ていたのか想像するだけで身を焦がす思いだった。

「さぁ、その鍛えた体で私を犯して。

 あの過去を忘れるくらい滅茶苦茶に、ね……」
 カンナを押し倒し、極限まで高ぶったペニスを熱く蕩ける秘所へ突き入れ

る。予想を遥かに超えた快感の波に飲み込まれ、呆気なく精液が搾り取られ

てしまう。どくんどくんと膣内に射精して霊力が吸い上げられていく。

「あぁ♥ 激しい霊力のうねりが流れ込んでくる♥

 いっぱい修行して力をつけたんだ♥

 でも肝心のペニスは以前と同じ貧相なまま♥

 この程度で私を奪えると思ってたの?♥」

 優しい微笑みから一転して相手を嘲笑する淫魔の表情に変貌していた。そ

れでも彼女の魅力は少しも衰えず、それどころかぞくぞくして余計に興奮す
る。

 欲望のままに腰を何度も叩きつけ、まるで自ら進んで精液を提供するよう

に射精していた。カンナは嬉しそうに僕を見つめながら流し込まれる霊力を

貪る。このままではすぐに力尽きる……はずだった。

「んん……♥ はぁ、はぁ……♥

 あ、れ……? なにか、おかし……あぁん♥♥」

 余裕だったはずのカンナが反対に快楽に飲まれそうになっている。あり得

ない、と驚愕した表情を浮かべ、すぐにだらしなく快感に喘ぎ始めた。

 カンナたちが淫魔化していることは想定済みだ。だから僕は修行と並行し

て淫魔について狂気と呼べるほど研究している。

 退魔師では得られなかった邪法をとある魔女の協力で非合法に手に入れ、

精液に細工を施すことに成功した。普通は射精と共に霊力や生命力が奪われ

・・・・
るが、逆に淫魔を酔わせることができる。

 命を削っているのでこれは分の悪い諸刃の剣。しかし黙って吸い殺される

よりは遥かにマシだ。
「義兄さん、私がいること忘れていません?

 姉さんと二人同時に、お相手してもらいます」

 妖艶に嗤うスミレが僕とカンナの間に割って入り、カンナに劣らない豊満

な胸を僕の顔にぎゅっと押し付けてきた。

 顔が沈み込むほど柔らかいのにぷるんとした弾力で押し返してくる。しっ

とり汗が浮かぶ胸の谷間は甘い匂いに満ちていて、姉と似ているのに明らか

に異なる個性を主張していた。うっとりして腰の動きが止まり、その隙にカ

ンナがするりと抜け出してしまう。

「妙な術を使うなんて酷いじゃない、あなた。
 じゃあ先に霊力だけ空っぽにしてげる♥」

 二人の凄まじい巨乳にペニスが挟み込まれ、ぐにぐにと扱き上げられる。

快感もさることながらその光景も途方もなく淫靡でいやらしかった。

 精液を体内に射精しなければ邪法の効力は充分に発揮されない。このまま

胸の谷間に射精したら霊力を余計に消費するするだけだ。何とかして二人を

引き剥がし、体勢を整えなければ……

「もう、暴れないで♥ 絶対逃さないんだから♥」

 白い裸身が淫らに絡み合い、むちむちした胸が押し付けられぐにゃりと形

を変える。そんな光景に僕は目を奪われ魅入る以外に何もできない。
 ぬちゅぬちゅと体液が泡立って白い肌をどろどろに汚し、ペニスが悦ぶよ

うにびくっと痙攣する。もうこれ以上、耐えるなんて無理だ。情けない悲鳴

を上げながら、精液が噴水のように勢いよく飛び出した。

 二人の胸の谷間に白濁液がまるで池のように溜まっている。そして禁呪に

より命を削って得た霊力も射精量に比例して失われてしまう。

「凄くたくさん出ましたね、義兄さん♥

 これじゃ、すぐに精を、使い果たし、て……?」

 スミレの表情が先程のカンナのようにとろんと呆けていた。間近で僕の精

液の匂いを嗅いだため、効果は弱いものの恍惚としている。

 咄嗟に二人を押しのけ、スミレを後ろから抱き上げた。まず先に彼女を絶

頂させようとして、義妹を犯すことに躊躇してしまう。迷っている時間はな

い。僕は仕方なくスミレのアナルへと挿入した。
「ひぎゅっ♥ そっち、だめぇ……♥」

 大きいのに引き締まったスミレのお尻を両手でがっしり掴み、下からがん

がん突き上げる。どうやらアナルに弱いらしく最初の威勢とは裏腹に彼女は

気持ちよさそうな喘ぎ声を奏でた。

 畳み掛けるように腸内に射精して精液を注ぎ込む。スミレがぐったり倒れ

込むとその隙にバックの体勢でさらに強くアナルを突き上げる。そして驚く

ほど簡単に彼女を絶頂させることができた。

 後は同じように呆けているカンナだけ。もう少しで家族を取り戻せる。僕

は希望を胸に抱いて彼女へ覆い被さっていった。
★★★

「まさかカンナとスミレを絶頂させるとは……

 精液に細工をして淫魔と勝負するなど

 例え考えついても実行するのは狂気の沙汰。

 貴方の家族への深い愛情、感服です。

 そう思いませんか? ユリ?」

 僕の上で娘のユリが無邪気に微笑みながら腰を振っていた。娘に犯されて

いる。それも想定していたが、実際に現実になるとその衝撃は計り知れない。

しかしなぜか幼い膣内に射精しても邪法の効力が発揮されなかった。そして

あっという間に霊力が吸い上げられ、今度は命まで搾り取られようとしてい

る。

「これはわたくしの言い方も悪かったのですが

 淫魔になったのはカンナとスミレのみ。

 まだ幼いユリを淫魔化するのは忍びなく、

・・
 代わりに魔女にしてあげました」
 ユリが魔女に……? それなら淫魔にしか効果のない邪法が効かないのは

当然だ。しかし今さら知ったところでもう何もかも遅い。

 僕の命の炎は、今まさに消えかけていた。

「えぇ? パパ、もうお終い?

 せっかく久しぶりに会ったんだから

 ユリともっと遊ぼうよ♥」

 どくっと最期の精液と共に残りの命がユリの膣内に搾り取られ、僕は絶命

した。ただひとつ幸いだったのは、家族全員に囲まれて死ねたことだろう。

 それを幸せと呼んでいいかは別として……
END4

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