You are on page 1of 22

勇者の幼なじみの女騎士がサキュバス相手にとろとろにされ

ちゃう話①

一章

ある夢を見た。

これは私の記憶?

子供の頃から追っても追っても遠くへ行く背中。

周りの人は彼を見下していた。しかし私には彼はきっと何かを起こすという

不思議な確信があった。

彼を守れるよう、必死に鍛練に明け暮れた。王国初の女騎士団長になったと

きは彼はまるで自分のことのように喜んでくれた。

彼が勇者の神託を承った時は、今度は私が自分のことのように嬉しくなった。

しかし反面、本当に遠ざかってしまった背中に寂しさを感じた。

自ら志願して魔王討伐の旅へ同行したものの、その旅路は想像以上に過酷を

極めた。
魔王の部屋を前に立ち塞がる幹部たち。私は少しでも戦力を温存するため一

人残る。

自分でも無謀なのは百も承知だ。もう彼に会うこともないだろう。

また後で迎えに来る。勇者が叫ぶ。

私は心の中でさよならを済ませる。

戦闘は今までで最も厳しいものとなった。

魔道士のような見た目の魔物から次々に打ち出される魔法を陽動として近接

主体の魔物が怒濤の攻めを繰り出す。

肉が裂け、骨が折れる。痛みに歯を食い縛る。身体はとうに限界を迎えてい

た。

腹部への鈍痛とともに身体が宙に浮く。死を覚悟し、天を仰ぐ。

勇者たちは上手くやっただろうか。さよならは声に出しておけばよかった。

今更ながら後悔する。
全てを諦めゆっくり脱力する。

すると突如轟音とともに魔法が降り注いだ。近接主体の魔物は一撃で肉片と

化す。驚きに目を見開きつつ体勢を建て直し、残った全力を振り絞って魔道

士に飛びかかり剣を突き刺す。

勝った…偶然とはいえ勝利した。

早く勇者のところへ行かねば。重い身体を引きずり、歩を進める。

しかし魔王の間を目の前にしたその時、甘い香りとともに目が塞がれ世界が

暗転した。

真っ暗な空間に彼の背中が表れる。

彼の横に姫様が現れ、彼と腕を組む。

お似合いの 2 人の姿にズキンと胸が痛む。

心の奥底に仕舞い込んでいた気持ちが溢れ出す。
そうか、私は彼が…勇者のことが…

その瞬間、世界が光で満ちた。

目を覚ますと魔王の間の扉が半開きなことに気付く。そこから覗くのは床に

伏した勇者の姿。

まだ完全でない身体に鞭打って勇者の元へ走る。

不自然なほど勇者の服が綺麗なこと以外は特に異常は見られない。しかし勇

者の目は虚ろで全身は弛緩し、不規則な呼吸を繰り返す。

毒を疑った女騎士は手持ちの解毒ポーションを勇者の口へ流し込む。

口端から溢れるポーション。ゆっくりと勇者の喉が上下する。

勇者の身体に温かさが戻るが、依然として虫の息なのに変わりはない。

次に勇者の口に細かく千切った薬草を押し込む。しかし勇者にはそれを噛み、

飲み下すまでの力はなかった。
ふと女騎士の頭にある案が浮かぶ。

そして自分の想像に赤面し、それを祓うかのように首を思い切り左右にブン

ブンと振る。

ちらりと横目で勇者を見る。このままでは彼の死も時間の問題だろう。

女騎士は大きく唾を呑み込み、覚悟を決める。

彼女は薬草を自分の口に入れ、口内でゆっくりと液体になるまで咀嚼する。

これは医療行為、医療行為。やらしい意味はない医療行為。煩悩退散、煩悩

退散。頭の中で何度も繰り返す。

しかし唇が視界に入る度、嫌でも心臓が飛び上がる。

お願い…今だけは目を覚まさないで…

指先まで真っ赤になった彼女は勇者の両頬に手を当てる。そして彼女はゆっ

くりと唇を重ね、唾液とともに薬草を流し込んだ。
村に戻った私たちは歓喜に満ちる人々を尻目に泥のように眠った。

翌日、勇者のもとに王の使者を名乗る男が参上した。

使者が言うには、王が一度世界を救った我が国の勇者に会いたいと言うこと

だ。

ただの仲間にすぎない私に同伴する資格はない。第一、私も騎士団に戻らね

ばならない。

きっと彼は姫様を娶るのだろう。夢に出たことが現実となって押し寄せる。

その日は私は一度も彼と話さなかった。いや、話せなかったといった方が正

しかったのかもしれない。

彼が王様に謁見する日がやって来た。

私はその日権限を利用し、無理矢理城門の警護につく。

遥か前方から勇者がやって来る。

私は彼を呼び止める。
「おめでと、姫様を幸せにするんだぞ?」

私は上手く笑えているだろうか。彼はどんな表情をしているだろうか。確認

する間もなく、彼が入城する。

私は彼の背中に人生で二度目のさよならを告げた。

もう日が暮れる。

職務を終えた私は芝に腰掛け、ぼんやりと川を見つめる。幼い頃ここで遊ん

だっけ…何気ない思い出が胸から溢れる。

気付けば頬に涙が伝っていた。何であんなやつに恋したんだろう。後悔とと

もに滴る涙が次々と地面を濡らす。

背後で誰かが脚を止める音がした。何千回、何万回と耳にした足音。気付か

れないように急いで涙を拭い振り向かずに声をかける。

「何しに来たのよ。」

彼女はゆっくりと腰を上げ、手を背後で組む。
「昔からかくれんぼは下手だったよな、お前。」

もう昔の話なんてしないで…彼女は涙をぐっと堪える。

「さっきさ、王様にさ、城門でお前に言われたようにさ、姫様を嫁に取らな

いかって言われたんだ。」

彼女は無理矢理笑顔を作り、勇者の胸をポンと小突く。

「よかったじゃん。大出世だね。容姿端麗、品行方正、料理も家事もできる

し気遣いもできる。超優良物件だよ。」

だんだんと声が小さくなるのを感じる。抑えきれない涙がポロポロと落ちる。

「あんたも幸せにね。浮気するんじゃないぞ。」

彼女は踵を返して走り出す。

すると右手を彼に掴まれる。

「放してっ…もう…会いたくないの…」
尚も涙を溢しながらどうにか手を引き抜こうともがく彼女だが、固く掴まれ

たその手は女騎士である彼女の力でも振り払えるものではなかった。

「俺、断ってきた。」

「え…」

彼女の動きが止まる。

「ずっと大切な人がいるんですってさ。そしたら王様にワシの姫を貰えない

のか!!って激怒されてあっという間に国に仇なす逆賊に仕立て上げられち

まったよ。」

勇者は、いや、今では追放の身となった元勇者はけらけらと笑う。

「ばか…なの…?」

「今更だろ。」

彼女は先程とは別の涙を流す。
「俺さ、もうこの国にはいられない。だけどお前がいいなら俺と一緒に来て

ほしい。」

彼は彼女はの目を真っ直ぐ見据える。

「好きなんだ。」

彼女は涙で顔を歪める。抑えても抑えても止まらない熱い雫が閉ざした心を

溶かしていく。

「ばかじゃないの!大馬鹿よ!!」

彼女は彼の胸元を何度も殴る。

「げふっ…ちょっ…加減を…」

彼女の腕力に彼は苦しそうに呻く。

「ばか!あほ!何でそんなこと簡単に出来るの!一生の栄誉を捨てられるの!

ばかじゃない!?何でっ…私だけ悩んでっ…ばか…」
彼女は一通り罵声を浴びせると目を潤ませて彼の胸に飛び込む。

「…でも……好き…」

彼の腕が彼女の身体を優しく包み込む。

ふと顔を上げると彼と目が合う。

彼の心臓が早鐘を打つのを感じる。そして私の心臓も…

軽く唇を突き出しそっと目を瞑る。

彼の心臓がどきりと跳ねる。頬にそっと手が添えられる。

彼の吐息を鼻頭で感じる。そして唇に広がる優しい弾力。

ちゃんと出来ているだろうか。私も彼の首に手を絡め、一心不乱に返す。痺

れるように甘い感覚が脳を満たす。慣れ親しんだ彼の匂いが鼻孔を擽る。互

いに唇を啄み、幾度も幾度も息が苦しくなるまで唇を重ねる。

これ以上は抑えられなくなる、私は唇を離す。夕焼けに染まった二人の顔。
しかし赤いのはそれだけではないだろう。

私は彼の腕を組んだ。

これからは隣で…彼に聞こえないようにそっと呟いた。

二章

※警告※

以下、前回から話が進展します。

『幸せに暮らしましためでたし×2』で終わりたい方は二章を飛ばすことを強

く推奨します。

今作では R-18 パートまでは進みません。

しかし雰囲気が一気に暗くなるのでお気をつけ下さい。

三章では混乱を避けるため、おまけとして各々の本名と現在公開可能な情報

を出します。

蛇足なのは承知ですが見てもらえると嬉しいです。

あの日の夜、私たちは誰にも告げずに村を出た。
その後、勇者と無縁の遠く離れた国の村で私たちは身を落ち着けた。

結婚はしていないがお互いにいずれそうなることは何となく確信していた。

それはいいのだ。しかし最近新たに深刻な悩みができた。

彼が一向に手を出してこない。

泣く子も黙る騎士団の元団長とはいえ女のはしくれ、そうなる覚悟も準備も

とっくにしてある。しかし待てど暮らせど、あまつさえ慣れない誘惑をして

みても彼にのらりくらりとかわされてしまう。

そんな日が続いたある夜だった。

その日は月明かりが雲に隠れた風の強い夜だった。魔王を撃ち取った日もこ

んな夜だった。こんな日は嫌でも思い出す。

隣のベッドから呻き声が聞こえる。

最近夜になると彼は悪夢を見る。この日は特に酷い日であった。彼に手を伸

ばし、そっと手を握る。
温かい人肌に安堵する。

すると寝ていたはずの彼が突然立ち上がり、部屋を後にする。大声で呼び止

めるが彼の耳には届いていない様子である。彼は玄関の扉を開き、ふらふら

と外へ歩き出す。

心配になった私は飛び起き、万一のため装備を整えて玄関の外へ踏み出す。

すると足元から白色の光が溢れる。

「これはっ…転移魔法っ!!」

2人の姿はその場から跡形もなく消え去った。

目を開け、辺りを見渡すとそこはかつて魔王のいた部屋だった。

空の玉座は次なる王を待っているかのように不気味に光を反射する。

そしてその元へふらふらと歩き出す元勇者…
「ふふっ、いらっしゃい勇者様。いや魔王様❤」

不気味な甘ったるい声が部屋に反響する。

玉座の裏から顔を出したのは真っ黒な服に身を包んだ魔物。

彼女はヒール音を鳴らしながら彼に近づく。

私は元勇者の彼の襟首を掴み、引き戻す。そして剣、正確にはレイピアとい

うフェンシングの武器のような物、の切っ先を正体不明の魔物に向ける。

「あらあら、随分物騒なお嬢さんだこと。勇者様が可哀想。」

「転移魔法もあんたの仕業?何が目的?」

「あははっ、面白いことを言うお嬢さんね。魔物である私が転移魔法なんて

使えるわけないじゃない。」

魔物は恐ろしい現実を突きつける。

「彼は自分で転移魔法を使ったのよ。この部屋に戻るためにね。」
彼をここに置いておいてはならない。即座に判断した私は、彼の首に手刀を

打ち込み意識を刈り取ると、彼に転移魔法をかけた。

光とともに消える彼の身体。

魔物は怪訝そうに尋ねる。

「あら、どうして貴女は逃げなかったのかしら?」

「元凶があんたならあいつは何度でもここへ来る。ならあいつが意識を失っ

ている間に元凶を叩くのが一番早いでしょ?」

女騎士は再び剣を取り、答える。

「ふふっ、意識を失っている間に…か。私もナメられたものね。」

魔物は手を真横に広げ、夥しい魔力を放出する。

一瞬にして空間が歪んだと思うと部屋の四方の壁に魔方陣が浮かび上がる。

「ちょうどいいわ、これで邪魔は入らない。私を阻むのなら勇者様の前に貴
女をいただくことにするわ❤」

魔物が指を鳴らすとその姿は黒い霧に包まれる。

「私はサキュバス…新魔王の眷属となる女…その足掛かりとして邪魔な貴女

をとろとろに溶かしてあげる❤」

「ふざけるな!!」

女騎士は大地を強く蹴り、一瞬でサキュバスの心臓を貫く。

音速にも匹敵するその速さから繰り出される突きは一撃必殺の威力を持つ。

「あはっ…彼とおんなじ❤そうやっぱり貴女が例の…」

サキュバスの身体が霧散し女騎士の背後から伸ばされる手。その手はするす

るっと彼女の全身を滑り拘束する。

「へぇ、進化すると実体化のインターバルが減るのね。勉強になるわ。」

「放…せっ…」
女騎士はサキュバスの腕の中でもがく。

「大人しくしなさい。ね…ナデーシュダ?」

名前を呼ばれた途端に全身に甘美な痺れが走り脳に快楽物質が分泌される。

「な…なんれ私の名を…」

淫魔は質問に答えることはなく、その艶かしい首筋に歯を突き立てた。

ふわりと鼻にかかるどこか覚えのある香気。

「これは…この前の…」

そして女騎士は床に崩れ落ちた。

三章

サキュバス♀(ラナ)

・偽名として頻繁にヴァナと名乗る。
・乙女なので年齢は秘密、でも2世紀は生きている。

・勇者『様』なくせにタメ語。ちょっとお姉さん系の性格。

・元魔王軍幹部。

→幹部内では最弱だったが、それは魔物は魅了にかからないのが理由。人間

相手だと基本的に無敵。

・男でも女でも食える。

・精気はおやつ、性交で分泌される液は豪華なディナー感覚。

・吸った精気を魔力と経験値に変えられる便利体質。長期戦になればなるほ

ど強いがそもそも短期で倒されるほど弱くない。

騎士♀(ナデーシュダ)

・基本的に『ナデーシュダ』なんて勇者以外呼ばない。みんな『団長』とか

『騎士さん』とか。

・姓と父称もあるが関係ないので割愛。

・年齢:けっこう若い。

・実はいいとこのお嬢様。

・勇者大好き。てか当事者たち以外はみんな知ってた。

勇者♂(本名なし)
・神託を賜った元村人。神のご加護でパワーアップ!!

・本名がないのは作者が考えるのが面倒だっただけ。作者は絶対に名前を呼

ばせないように苦労している。

・軽い攻撃魔法、回復魔法と剣技で戦う。

・騎士と同い年。

【現在公開可能なラナの基本能力】

→勇者の精液によって進化!上位サキュバスに!!

・元の容姿に多少制限されるが自身の容姿を自由に変えられる。また、高濃

度の魔力を注入することで相手の容姿も変化させられる。

→自身の身体年齢の操作も可能に。何の役に立つかと聞かれると困る。

・魔力を込めたキスにより身体の部位の自由を奪う。

・指を片手銃としてハート型の弾丸を打ち出し命中部位の自由を奪う。自由

が奪われた部分は本人の意思に関係なくラナが自由に動かせる。しかし相手

の身体操作にはかなりの集中力を要するため、あまり実用的ではない。弾速

はかなり遅いが物をすり抜け追尾する。壁、床と見なされるものに当たると

消滅する。

→弾速が上昇、一撃で全身の自由を奪う。以下同。
・投げキッスで片手銃の 5 倍の大きさの弾を出す。性能は変わらない。連続

仕様不可。

→連続仕様可能になる。また使用時の溜めで速度調整が可能に。

・両手銃で弾速の速い片手銃が出せる。速度により追尾機能が消失。

→魅了効果、貫通効果が追加。相手を魅了状態に陥れる。また人体を貫通す

るため、ガード不可となった。

・魔方陣より無数のハート型の矢を打ち出す。矢は一直線に飛んで行き、追

尾はしない。効果は片手銃と同様、速度は両手銃以上。普通は個人 vs 複数で

使用。詠唱、発射に時間がかかり隙だらけのためここぞというときにしか使

えない。

→2~3 個程度の規模なら無詠唱でも可能に。それでもかなり使い勝手は悪い。

・霧化により身体を霧散させることができる。連発不可、一度実体化し始め

ると全身が完全に終わるまで再使用ができない上に実体化の速度もまぁまぁ

遅いためわりと隙が大きい。

→相変わらず連発不可。しかし霧散から実体化の時間が劇的に減少。不意を

つければ距離を積めても実体化できる程度の余裕ができた。

・『吸血』という名の魔力注入。歯を尖らせ血管に直接魔力を流す。一発で

相手の意識を失わせる。傷口に多少なりとも唾液が付着するため目覚めると

軽い興奮状態を引き起こす。あまりやり過ぎると相手が廃人のようになるた

めコントロールが難しい。

・フェロモンで相手を魅了し、発情状態にする。その際特徴的な甘い香りを

漂わせる。これで意識を失わせることも可能。濃度によって幻覚を見せたり、
洗脳することもできる。

・→上位になったことで相手を魔物化させることが可能になった。相手の心

を屈服させ、両者合意のもとで高濃度の魔力を注入することで相手の身体を

サキュバスに作り替えることができる。その際、どちらか一方がサキュバス

化を望まない場合は単純に魔物化する。

You might also like