■圧縮機特集 FEATURE : Compressor Technology

ロータリローブブロワの大容量化
西川世洋＊・栗岡義紀＊・森下裕一＊＊・山田祐二＊＊＊
＊ ＊＊ ＊＊＊
機械事業部・回転機技術部 機械工場・資材部 ㈱神鋼テクノ

KOBELCO Rotary Lobe Blowers for Large-size Iron Ore Direct-reduction Plants
Toshihiro Nishikawa・Yoshinori Kurioka・Hirokazu Morishita・Yuji Yamada

The recent demand for production capacity increase up to 1.2 megatons per year in direct-reduction plants
3
requires large displacement（10 800m /h）and high differential pressure（110kPa）for the plant's process
gas compressors. In order to apply an existing KR100S model in 1.2 megatons module plant, vibration
and acoustic pulsation analysis through advanced simulation techniques were developed and applied.
Theoretical mechanical reliability and performance expectations were confirmed in actual shop tests. Further-
more, new models the KR100L and KR100H, which can be applied in up to 2.0 megatons module plants,
are also introduced．

まえがき＝当社は 1977 年に世界最大級のルーツ型ロー

タリローブブロワ（Two-lobe rotary blower，
以下ブロワ）
1）
，2）
KR シリーズを開発・上市 した。以降，カタール，
エジプト，イラン，ベネズエラの MIDREX 法直接還元
製鉄プラントのプロセスガス送風機として計 59 台（1998
年 12 月現在）の製作実績を有し，その安定した操業実
績から高い評価をえている。近年，直接還元製鉄プラン
トは還元鉄年間生産量 120 万トン級まで大型化されてお
り，さらに 200 万トン級までの大型化も検討されてい
3）
る 。当社では 1995 年時点の最大実績であった 80 万ト
ン級（1998 年時点実績 100 万トン級）に対し，120 万ト
ン級プラントで要求される仕様まで既存モデル KR100S
3
の適用範囲を拡げるため，理論行程体積 108 000m /h（
回転数 600rpm 相当）・最高許容差圧 110kPa までの高速
・高差圧化に取組んだ。本稿では高速・高差圧化の際，
実施した各種シミュレーション技術適用による設計と所
写真 1 ロータリローブブロワ KR100S
内試運転による妥当性検証について紹介する。 Photo 1 KOBELCO Rotary Lobe Blower model KR100S
さらに，将来 200 万トン級までのプラント大型化に対
応できる KR100L と KR100H の新シリーズを紹介する。

1．高速・高差圧化へのシミュレーションと試運
転検証 Rotor
Air
Breather
Lobe
当社大型ロータリローブブロワ KR100S の本体外観を
4） Bearing
写真 1，構造図を第 1 図に示す。開発当時の設計許容値
Casing
より差圧を約 10％，回転数を約 20％ 適用範囲を拡大す
るにあたり，以下の項目を検討し検証した。 Timing
1.1 機械的強度 Gear

差圧上昇および回転数上昇が機械要素に与える影響に Taconite
ついて，同期歯車強度（AGMA SF1.7 以上）
，ローブ取 Seal

付ボルトとロータ軸強度，軸受寿命（217 000h）
，メカ Coupling
ニカルシール（PV 値）などについて設計強度を再度評
価し，十分余裕があることを確認した。また，ローブに
ついては第 2 図に示す 3 次元有限要素法（FEM）によ Spray Water
Nozzle
って平均応力，変動応力ともに十分に低いレベルである Lobe Flange Bolt
ことを確認している。 Machanical Seal

1.2 ブロワ本体・基礎系の振動解析 第 1 図 ロータリローブブロワの構造

ロータリローブブロワにおいては運転回転数 N に対 Fig. 1 Construction of KOBELCO Rotary Lobe Blower

68 KOBE STEEL ENGINEERING REPORTS/Vol. 49 No. 1（Apr. 1999）


第 2 図 ロータの FEM 解析（600rpm，
Fig. 2 FEM analysis of rotor lobe
なる。当社では伝達マトリックス法による数値解析で脈
動解析をおこない，ブロワ吐出サイレンサの減音効果が
最適になるように設計している。第 5 図にサイレンサ
消音量のシミュレーションと実測結果を示す。もっとも
支配的であり消音すべき脈動 1 次成分の実測消音量は予
想値と良く一致しており，従来解析手法が高速域におい
てもきわめて有効であることが示された。
1.4 吐出サイレンサ構造設計
サイレンサ設計にあたっては消音効果のみでなく，第
6 図に示すブロワ脈動との共振や定在波との共鳴などの
過大な振動発生要因を避ける設計が必要である。拡張型
サイレンサは第 7 図に示す長手方向（節数 m）と周方
向（節数 n）の振動モードをもち，m，
n の組合せで固有
値（共振振動数）が決まる。当社では有限要素法による
固有値解析を実施し，脈動周波数および高次成分がこの
∆P＝110kPa） 固有値と共振しないような構造に設計している。一例と

Top of Pulsation Dampener

Pulsation Dampener

3 500

6 900
Blower Casing① Blower Center of Gravity
(Input Fluctuation Force 4 ton) FL＋5 500
500

Surface of
Foundation
5 000

Sole Plate② FL±0

Sole Plate of Blower
3 750

第 3 図 機械工 場 5 000kW 試 運 転 設 備 FL±0

と FEM 解析モデル FL−2 000
2 000

Heavy Foundation
Fig. 3 5 000kW shop test facility and 8 450
FEM analysis model

160
〈Measured
〈Calculated〉  AT Shop Test ’95. 11. 27〉
し 4N を基本周波数とする脈動周波数（一般に 25∼40
140 （Pd＝60kPa）
Blower Center
Vibration (Lobe Passing Frequency)  μm (p-p)

Hz）が振動の主原因となる。これがロッキングモード Blower Casing① of Fig. 3

of Gravity
と呼ばれる基礎の固有振動数に一致すると過大振動（共 Sole Plate  ② of Fig. 3
120
振）が生じ運転できないトラブルに至ることがある。こ Sole Plate of
のため，プラント設計者はこの固有振動数を避ける基礎 Blower
100
設計をおこなう必要がある。当社ではブロワの製作にと
Surface of
どまらず，MIDREX プラントの設計・施工部門や R&D 80 Foundation
部門に蓄積された経験技術と解析技術により，精度の高
い基礎振動シミュレーションが可能である。 60
第 3 図に当社機械工場 5 000kW 試運転設備のレイア
ウトと FEM 解析モデルを示し，第 4 図に解析結果と実 40

測結果の比較を示す。基礎コンクリート・台板・ブロワ
・サイレンサ系を組合わせたモデルによる定常振動応答 20

解析結果は 13Hz と 26．

5Hz に固有振動数をもつ応答を Natural Freq. of
Foundation
0
示し，実測からえられた振動値ときわめて良く一致して 0 15 20 25 30 35 40
いる。 Lobe Passing Frequency  Hz

1.3 吐出サイレンサ最適設計 150 200 250 300 350 400 450 500 550 600
Blower Speed  rpm
ロータリローブブロワは内部圧縮がない構造上，圧力
第 4 図 基礎振動解析と測定結果
脈動が発生しやすく，配管振動や騒音を発生させるため， Fig. 4 Comparison between vibration analysis and measurement at
高速化に際してはいかに圧力脈動を抑制するかが重要と shop test

神戸製鋼技報/Vol. 49 No. 1（Apr. 1999） 69

 ③
Discharge
Pulsation Dampener
N＝0 N＝2 N＝3
Blower
②
Suction
m＝1 m＝2 m＝3
① N＝1
Axial Nodal Pattern Circumferential Nodal Pattern
第 7 図 サイレンサの振動モード
70 Fig. 7 Vibration mode of pulsation dampener
Analysis
Discharge 2nd Chamber

60
Measured
Blower  Dampener
Attenuation  dB

50
① → ②

40
30
20
10
0 Rib for Stiffness
−10 FEM Grid
0 50 100 150 200
Frequency  Hz

7 580
80
70 Analysis
Measured
Blower  Dampener

60
Attenuation  dB

Discharge Outlet
① → ③

50
40
30
20
10
0 Type：Expansion Chamber
0 50 100 150 200 Material：Carbon Steel
Frequency  Hz 第 8 図 高速用吐出サイレンサの構造と FEM 解析モデル
第 5 図 吐出サイレンサ減音シミュレーションと測定結果 Fig. 8 Pulsation dampener and FEM analysis model
Fig. 5 Pulsation attenuation simulation and measurement of
pulsation dampener at blower discharge
250
n＝1
して，600rpm で最適な高速仕様のサイレンサは，第 8 f1＝600rpm/60×4＝40Hz n＝2
Natural Frequency f  Hz

n＝3
図に示すようにリブを追加し剛性を向上させている。第 200

9 図（a）に示す解析結果は十分な剛性を示し共振域が
150
避けられている。いっぽう，第 9 図（b）に示すリブが 3 f1
ない通常の構造では剛性が十分でなく低い固有振動数が 100
2 f1
存在するため，過大な振動を生じる危険がある。
50
f1 Natural Frequency to be Avoided
2．高速・高差圧化の所内試運転による検証 0
0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
1995 年 11 月から 1996 年 9 月にかけて，当社機械工 Fourier Mode  N

場 5 000kW 試運転設備において KR100S の高速・高差 (a) Stiffened by inner ribs optimized structure for high speed operation
  → Moderate Vibration Expected
圧検証のための試運転を実施した。その際実施した広域
にわたる運転条件を第 10 図に示す。運転結果は機械的 250
n＝1
強度，性能，振動・騒音ともシミュレーション予想設計 f1＝600rpm/60×4＝40Hz
Natural Frequency f  Hz

n＝2
n＝3
値に良く一致しており，KR100S の高速・高差圧化が検 200

Factor Gas Components 150

Standing Wave Temperature
Diameter of Pulsation Dampener 3f1
100
2f1
Natural Frequency Rigidity
Factor 50
of Pulsation Rib Position f1
Dampener Pressure Number Natural Frequency to be Avoided
Temperature 0
Piping, Support 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
Fourier Mode  N
Blower Speed
(Lobe Passing Frequency) (b) Normal structure → Severe Vibration Expected

第 6 図 サイレンサの振動要因 第 9 図 サイレンサの固有値解析
Fig. 6 Vibration source of pulsation dampener Fig. 9 Natural frequency of pulsation dampener

70 KOBE STEEL ENGINEERING REPORTS/Vol. 49 No. 1（Apr. 1999）

 110

100
Wet

Differential Pressure  kPa
90 ’96. 9. 11
80 Wet
’96. 8. 31
70
Dry
60 ’96. 8. 23

50 Wet
’85 ＆ ’85
40 Dry
’85. 3. 14
30

20
第１ ０図 高速・高圧社内検証試験運転条件 200 250 300 350 400 450 500 550 600
Fig. 10 Extensive experiences in shop Wet：With Water Injection
running test Blower Speed  rpm Dry：Without Water Injection

第 1 表 ロータリローブブロワ主要諸元 Model KR100H KR100S KR100L

Table 1 Specifications of KOBELCO Lobe Profile New Cycloid Cycloid Cycloid
Rotary Lobe Blowers Lobe Diameter m 1． 584 1． 624 1． 624
Lobe Length m 1． 13 1． 30 1． 57
Displacement m3/rev 2． 402 2． 999 3． 622
Max. Shaft Speed rpm 600 600 600
Displacement at Max. Speed m3/h 86 500 108 000 130 400
Allowable Differential Pressure kPa 135 110 91
Max Operating Pressure kPa 250 250 250
Approx. Size mm 2 943L×2 651W×2 971H 3 122L×2 651W×2 971H 3 392L×2 651W×2 971H
Weight Approx． ton 31 35 40
Feature For High Pressure Standard Model For Large Capacity
証された。

3．さらなるプラント大型化への新シリーズによ 135
Allowable Differential Pressure  kPa

KR100H
る対応
既存機種 KR100S に加え，ロングロータ大風量モデル
KR100L とショートロータ高差圧モデル KR100H を新た 110
KR100S
にシリーズ化した。第 1 表に主要諸元を，第 11 図にレ
ンジチャートを示す。新モデルでは，多くの実績をもつ 91
KR100L
現存モデル KR100S と同じ機械要素（軸受，メカニカル
シール，同期歯車など）を採用していることにより機械
的信頼が保たれ，さらに予備品が共用できる利点もある。 36 000 86 500 108 000 130 400
Displacement  m3/h
むすび＝直接還元製鉄用大型送風機であるロータリロー 第１ １図 ロータリローブブロワのレンジチャート
ブブロワの高速（600rpm）・高差圧化（110kPa）をシ Fig. 11 Range chart of Kobelco Rotary Lobe Blowers
ミュレーション予測と実証試験により検証し，既存モデ
ル KR100S の適用範囲を年産 120 万トン級プラントまで 参 考 文 献
拡大した。さらに，KR100S で検証された技術をもとに 1 ） 小谷重遠：R&D 神戸製鋼技報，Vol.28，No.1（1978），p.42．
2 ） 重河和夫ほか：R&D 神戸製鋼技報，Vol.34，No.2 （1984），p.81．
大風量モデル KR100L と高圧用モデル KR100H を新たに
3 ） Midrex Direct Reduction Corp.：Direct from Midrex 2nd
シリーズ化し，これらの組合せによって 200 万トン級プ Quarter（1997） ，Vol．22，No.3，p.5．
ラントまで当社ロータリローブブロワを適用可能とした。 4 ） 山田祐二：R&D 神戸製鋼技報，Vol.41，No.1（1991），p.26．

神戸製鋼技報/Vol. 49 No. 1（Apr. 1999） 71