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離散数学 第 4 回 I 日時,場所
集合の記法 (1):外延的記法と内包的記法 I 6 月 10 日 (火) 第 6 限,A201 教室
I 出題範囲
I 第 1 回 (4 月 8 日) の最初から 第 6 回 (5 月 27 日) の最後までの内容
岡本 吉央 I 出題形式
okamotoy@uec.ac.jp I 演習問題と同じ形式の問題を 6 題出題する
I その中の 3 題は演習問題として提示されたものと同一である
電気通信大学 • ただし,発展問題は出題しない
I 全問に解答する
2014 年 5 月 13 日 I 配点:1 題 10 点満点,計 60 点満点
I 時間:90 分
I 持ち込み:A4 用紙 1 枚分 (裏表自筆書き込み) のみ可
最終更新:2014 年 5 月 12 日 09:28 参考:成績
I min{100, 中間試験の素点 + 期末試験の素点 }
岡本 吉央 (電通大) 離散数学 (4) 2014 年 5 月 13 日 1 / 35 岡本 吉央 (電通大) 離散数学 (4) 2014 年 5 月 13 日 4 / 35
概要 (シラバス掲載内容) 今日の概要
主題 今日の目標
I 理工学のあらゆる分野に現れる数学の言葉と論理を 集合に関する用語を正しく使うことができるようになる
徹底的に身につける I 集合の記述法 (外延的定義,内包的定義)
I これによって,論理的な思考を行う基礎能力を体得し,将来的に, I 集合の演算 (共通部分,合併,差)
専門書を読み解き,自分で学術的な文書を書くことができるように I 集合の包含関係
する
集合の包含関係に関する証明ができるようになる
I キャッチフレーズは「語学としての数学」
I この続きは次々回にも扱う
達成目標
以下の 2 項目をすべて達成することを目標とする.
1 数学における基本的な用語 (集合,論理,関数,関係) を
正しく使うことができる
2 数学における基本的な証明を正しく行うことができる
集合の記述 集合の記述
目次 集合
集合 (常識に基づく定義)
1 集合の記述 集合とはものの集まり
2 集合に対する演算 集合の記法
波かっこ 「{」と「}」を使って記述する
3 集合の包含関係 例:
I {0, 1, 2, 3, 4, 5, 6, 7, 8, 9}
I { あ, い, う, え, お }
4 集合の包含関係に関する証明
集合の要素とは?
格言
数学理解の基本は「定義」と「記法」の理解
岡本 吉央 (電通大) 離散数学 (4) 2014 年 5 月 13 日 7 / 35 岡本 吉央 (電通大) 離散数学 (4) 2014 年 5 月 13 日 8 / 35
集合の記述 集合の記述
記法
I x が集合 A の要素であることを次のように表記する U = { アメリカ, イギリス, イタリア, オーストリア, オーストラリア,
オランダ, カナダ, 韓国, ギリシャ, スウェーデン, スイス,
x ∈A
スペイン, ソ連, 中国, ドイツ, 西ドイツ, 日本, ノルウェー,
I x が集合 A の要素ではないことを次のように表記する フィンランド, フランス, ベルギー, メキシコ, ユーゴスラビア,
x 6∈ A ロシア }
例:A = { あ, い, う, え, お } とすると
I あ∈A 集合の「外延的定義」と呼ばれる
I ま 6∈ A
注
I お∈A
集合に対して「=」が何を意味するのかは後で紹介する
I う∈A
A = {2, 3, 5, 7}
= {7, 2, 5, 3} ←並べる順番が違っても集合としては同じ
U = {x | x は (2014 年までに) 近代オリンピックが開催された国 } = {n | n は 10 以下の素数である }
{ }
n は整数であり,かつ,
記法
= n 4
n − 17n3 + 101n2 − 247n + 210 = 0 を満たす
「{x | x がこの集合の要素であるための (必要十分) 条件 }」
集合の記述 集合の記述
B = {n2 | n は 10 以下の素数である }
表記法
= {22 , 32 , 52 , 72 }
I N = すべての自然数からなる集合 (自然数全体)
= {4, 9, 25, 49}
I Z = すべての整数からなる集合 (整数全体)
C = {m − n | m と n は 10 以下の素数である }
I Q = すべての有理数からなる集合 (有理数全体)
= {2 − 2, 2 − 3, 2 − 5, 2 − 7, 3 − 2, 3 − 3, 3 − 5, 3 − 7,
I R = すべての実数からなる集合 (実数全体)
5 − 2, 5 − 3, 5 − 5, 5 − 7, 7 − 2, 7 − 3, 7 − 5, 7 − 7}
I C = すべての複素数からなる集合 (複素数全体)
= {0, −1, −3, −5, 1, 0, −2, −4, 3, 2, 0, −2, 5, 4, 2, 0}
= {−5, −4, −3, −2, −1, 0, 1, 2, 3, 4, 5} 例:
√
I 2∈N I 2 6∈ Q
√
I −3 6∈ N I 2∈R
√
I −3 ∈ Z I 1 + 2i ∈ 6 R
√
I 1
2 6∈ Z I 1 + 2i ∈ C
I 1
2 ∈Q
岡本 吉央 (電通大) 離散数学 (4) 2014 年 5 月 13 日 13 / 35 岡本 吉央 (電通大) 離散数学 (4) 2014 年 5 月 13 日 14 / 35
集合の記述 集合に対する演算
集合に対するイメージを持つ 目次
集合 {2, 3, 5, 7}
1 波カッコは箱 1 集合の記述
2 3 5 7
2 波カッコは境界 2 集合に対する演算
2 3
5 7 3 集合の包含関係
オイラー図と呼ばれる 4 集合の包含関係に関する証明
5 今日のまとめ
集合に対する演算 集合に対する演算
共通部分 合併
共通部分とは? 合併とは?
集合 A, B の共通部分を A ∩ B と表記し, 集合 A, B の合併を A ∪ B と表記し,
A ∩ B = {x | x ∈ A かつ x ∈ B} A ∪ B = {x | x ∈ A または x ∈ B}
で定義する で定義する
例: オイラー図 例: オイラー図
I A = {a, b, c, d, e, f } I A = {a, b, c, d, e, f }
A B A B
I B = {a, b, c, g , h} のとき, d a
g
I B = {a, b, c, g , h} のとき, d a
g
I A ∩ B = {a, b, c} e b I A ∪ B = {a, b, c, d, e, f , g , h} e b
h h
f c f c
「共通部分」は「積集合」,
「交わり」とも呼ばれる 「合併」は「和集合」,
「結び」とも呼ばれる
差集合 空集合
差集合とは? 空集合とは?
集合 A, B に対して,差集合 A − B を 「∅」または「∅」と表記する
要素を持たない集合を空集合と呼び,
A − B = {x | x ∈ A かつ x 6∈ B} 注 1:空集合は「{ }」とも書く
で定義する 注 2:空集合の記号「∅」と「∅」はギリシャ文字「Φ」,
「φ」と違う
例: オイラー図
I A = {a, b, c, d, e, f }
A B
I B = {a, b, c, g , h} のとき, d a
g
I A − B = {d, e, f } e b
h
f c
「A − B 」の代わりに「A \ B 」と書くこともある
集合に対する演算 集合の包含関係
3 集合の包含関係
4 集合の包含関係に関する証明
5 今日のまとめ
http://en.wikipedia.org/wiki/File:Csg tree.png
岡本 吉央 (電通大) 離散数学 (4) 2014 年 5 月 13 日 21 / 35 岡本 吉央 (電通大) 離散数学 (4) 2014 年 5 月 13 日 22 / 35
集合の包含関係 集合の包含関係
部分集合:直感 部分集合:定義
次の 2 つの集合を考える オイラー図による直感
部分集合とは? (論理を使った定義)
I A = {a, b, c, d, e, f }
A B A が B の部分集合であるとは,
I B = {a, b, c, d, e, f , g , h, i}
a b c g h i
A は B の部分集合 d e f x ∈A ならば x ∈B
次の 2 つの集合を考える オイラー図による直感
I A = {a, b, c, d, e, f }
部分集合とは? (直感)
I B = {a, b, c, d, e, f , g , h, i} A B
集合 A が集合 B の部分集合であるとは, a b c g h i
A が B に含まれている (包含されている) こと A は B の部分集合 d e f
「含まれている」とは? 論理を使って書くことを考える
部分集合の表記法
A が B の部分集合であることを「A ⊆ B 」と表記する
「A ⊂ B 」や「A j B 」と表記することもある
岡本 吉央 (電通大) 離散数学 (4) 2014 年 5 月 13 日 23 / 35 岡本 吉央 (電通大) 離散数学 (4) 2014 年 5 月 13 日 24 / 35
集合の包含関係 集合の包含関係
例 同じ集合
表記法:復習 同じ集合
I N = すべての自然数からなる集合 2 つの集合 A と B が同じであることを
I Z = すべての整数からなる集合
A ⊆ B かつ B ⊆ A
I Q = すべての有理数からなる集合
I R = すべての実数からなる集合 が成り立つことと定義し,
「A = B 」と表記する
I C = すべての複素数からなる集合
B A A=B
I N⊆Z
A and B ⇔
I Z⊆Q
I Q⊆R
I R⊆C
目次 例題 1
例題 1:次の命題は正しいか?
1 集合の記述 集合 A = {1, 2, 3},B = {2, 3, 4} に対して,A ⊆ B である
格言 (第 1 回講義より)
2 集合に対する演算
証明の基本は「定義に立ち戻る」こと
3 集合の包含関係 定義に立ち戻って,命題を書き直す
x ∈ {1, 2, 3} ならば x ∈ {2, 3, 4}
4 集合の包含関係に関する証明
「∼ならば…である」という命題が正しいか,正しくないか
正しい場合
5 今日のまとめ I 前回のように証明する (次々回に再度説明)
正しくない場合
I 「∼」を満たすが「…」とならないものを見つける (反例を挙げる)
岡本 吉央 (電通大) 離散数学 (4) 2014 年 5 月 13 日 27 / 35 岡本 吉央 (電通大) 離散数学 (4) 2014 年 5 月 13 日 28 / 35
集合の包含関係に関する証明 集合の包含関係に関する証明
例題 1 (続) 例題 2
例題 1:次の命題は正しいか? 例題 2:次の命題は正しいか?
集合 A = {1, 2, 3},B = {2, 3, 4} に対して,A ⊆ B である 任意の集合 A, B に対して,A ∪ B ⊆ A ∩ B である
証明:正しくない.
命題の否定
I それは,1 ∈ A であるが,1 6∈ B であるからである. ある集合 A, B に対して,A ∪ B ⊆ A ∩ B とならない
命題の否定を定義に立ち戻って書き直したもの
「x ∈ A ∪ B ならば x ∈ A ∩ B 」とならない
ある集合 A, B に対して,
「∼が存在する」という命題の証明法
1 存在する,といっているものを 1 つ見つけ,
「それを考える」と書く.
2 それが要求されている性質を満たすことを論じる (証明する).
集合の包含関係に関する証明 今日のまとめ
例題 2 (続) 目次
例題 2:次の命題は正しいか?
任意の集合 A, B に対して,A ∪ B ⊆ A ∩ B である 1 集合の記述
証明:正しくない.その理由は以下の通りである.
I A = {1, 2}, B = {2, 3} を考える. 2 集合に対する演算
I このとき,A ∪ B = {1, 2, 3},A ∩ B = {2} であるので,
1 ∈ A ∪ B ,1 6∈ A ∩ B となる. 3 集合の包含関係
I したがって,A ∪ B ⊆ A ∩ B とならない.
命題の否定を定義に立ち戻って書き直したもの 4 集合の包含関係に関する証明
「x ∈ A ∪ B ならば x ∈ A ∩ B 」とならない
ある集合 A, B に対して,
「∼が存在する」という命題の証明法 5 今日のまとめ
1 存在する,といっているものを 1 つ見つけ,
「それを考える」と書く.
2 それが要求されている性質を満たすことを論じる (証明する).
岡本 吉央 (電通大) 離散数学 (4) 2014 年 5 月 13 日 31 / 35 岡本 吉央 (電通大) 離散数学 (4) 2014 年 5 月 13 日 32 / 35
今日のまとめ 今日のまとめ
今日のまとめ 残った時間の使い方
この講義の目標 I 演習問題をやる
I 語学としての数学,コミュニケーションとしての数学
I 相談推奨 (ひとりでやらない)
I 質問をする
今日の目標 I 教員とティーチング・アシスタントは巡回
集合に関する用語を正しく使うことができるようになる
I 退室時,小さな紙に感想など書いて提出する
I 内容は何でも OK
I 集合の記述法 (外延的定義,内包的定義) I 匿名で OK
I 集合の演算 (共通部分,合併,差)
I 集合の包含関係
集合の包含関係に関する証明ができるようになる
I この続きは次々回にも扱う