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竹山 美宏
1この観点からの数学入門書として, 新井紀子『生き抜くための数学入門』(イースト・プレス) を
強く薦める. 「とは」「なぜ」の重要性については, この本の冒頭で書かれている.
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2. 講義の受け方
2.1. 復習をする. 数学に限らず, 大学で学ぶ内容は, 講義を一度聴いただけで理解で
きるほど易しくはない. 特に, 大学で学ぶ数学は難しいのが当たり前だと思っておい
た方がよい. ただし, わからないことから逃げてはならない. したがって, 講義の後
では復習することが必要となる.
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3. 演習の取り組み方
3.1. 演習の目的. 演習の授業では, 講義で学んだ命題や定理を使って, 具体的な問題
を解く. この過程は二つの部分からなる.
(1) 問題を自分で解く.
(2) 自分の解き方を文章にして書き下す (ないしは口頭で説明する).
問題を解くというと (1) の過程だけに力点を置きがちだが, (2) も非常に重要である.
学問とは, 自分のなかにある正しさを, 言葉を使って他者と共有する営みである. 講
義 (およびその復習) は自分のなかに正しさを構築するためのものである. 演習の授
業では, 言葉と論理を正確に使って, 他者と正しさを分かちあう練習をする. 課題を
提出する形式であれ, 板書で発表する形式であれ, 演習は他者とのコミュニケーショ
ンが目的であることを強く意識しよう.
3.2. 答案を書くときに心掛けること.
自分が理解していないことを書かない そもそも自分のなかに正しさがなければ (自
分が正しいと考える解法がなければ), それを伝えることはできない. 高校や予備校
の先生から「入試では点数につながるようなことを何でもいいから答案に書け」と
教えられたかもしれないが, 大学の演習でわかっているフリをしても, 得られるもの
は何もない. 教科書や参考書の内容をまったく理解せずに, 数字や文字だけを取り
換えて丸写しした答案を作るのは, もうやめよう.
文章として書く 数学の答案は全体としてひとまとまりの文章でなければならない.
特に, 数式は文章の一部となるように書く. たとえば, 「x2 = x + 1」と書いてある
だけでは, 「x2 = x + 1 が成り立つ」なのか「x2 = x + 1 であるとすると」なのか,
わからない. また, 数式だけを並べても, 「犬・明日・行く」のように単語を並べる
のと同じで, 何を意味するのかが明確にはならない. 数式の前後には論理を組み立て
る言葉 (∼のとき・∼とすると・∼であるから, など) をつけて, 全体として文章とな
るように書く. 教科書の文章をお手本にすると良いだろう.
数学用語を使ってみる 英作文の練習では, 英単語を自分で実際に使ってみること
が基本である. 数学用語も同じで, 正しく使えるようになるためには練習が必要であ
る. 演習で答案を作るときには, 積極的に数学用語を使ってみよう. ただし, 使うと
きにその用語の定義を必ず確認すること.
読み手に伝わるように書く 答案は, 自分がわかっていることをアピールするため
の場ではなく, 自分の思考を言葉で他人に伝えるための手紙である. 自分の答案を読
み手 (他者) の目で見直して, 相手に伝わるように表現できているかどうか確認する.
きちんと説明できないことは, きちんと理解していないことと同値である. 上手く
言葉にできないのなら, 教科書や参考書を読み直そう.
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4. 数学の文の読み取り
4.1. 文の骨組をとらえる. 教科書の内容が理解できないときは, まず, 次のことを意
識して文の骨組をとらえる. 以下の例文は『明解 微分積分』(南・笠原・若林・平良
著, 数学書房) 2からの引用である.
2筑波大学理工学群数学類 1 年生対象の微積分の授業の教科書.
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