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さとやま
里山-自然と人間が共生する場所
ぞうきばやし
山菜やキノコを採りに行く山、カブトムシやクワガタなどの昆虫に出会える雑木林、魚釣りので
きる川、いずれも人間にとって関わりの深い自然の風景である。こうした、人間と関わりの深い自
然、都市と原生の自然との間にあって人間が昔から利用してきた自然を「里山」と呼ぶ。
里山は、人里の近くにある山地や森林で、人と自然がいっしょにつくり上げてきた場所である。
そこでは、生き物たちが多様に関わり合うことで、特有の風土や生態系がつくられる。もともとの
自然の状態を維持し続けてきた原生の自然とは異なり、長い間にわたって人間の生活と密接に保ち
ながら、人の手によって変えられ、維持されてきた自然、それが里山である。
里山では、一昔前まで、人々が田畑を耕し、雑木林の木を伐って生活していた。木は生活用具を
作るための材料になるだけではなく、薪や炭などの燃料にもなった。また、落ち葉や実は畑の肥料
や家畜のえさとして利用された。木を伐り、落ち葉を集め、ササやススキのような繁茂しやすい植
物を刈り取るといった手入れを繰り返すことで、人々は里山の自然を守ってきた。
人間の生活を支える一方で、里山は多くの動植物の命を支えてきた。関東の雑木林には冬に葉を
くさばな
落とす木が多いが、葉が落ちることで、林の中には日光が入り、草花が育つ。草花にはハチやチヨ
ウが集まる。ハチやチヨウはカエルのえさになり、カエルはヘビやイタチのえさに、ヘビやイタチ
はフクロウやワシのえさになる。こうして里山では命の循環が行われているのである。
ところが、1960 年代以降、農村の生活は大きく変わった。生活のエネルギーは、薪や炭から石
油・ガス・電気へと代わった。田畑を耕していた牛や馬はトラクターに、堆肥は化学肥料に取って
代わられた。里山の木や落ち葉は不要になり、多くの里山が放置されてしまった。
放置された里山は、あっという間に荒れ地になる。木は枝を伸ばし、日光をさえぎる。地面には
くさばな
ササやススキが繁茂し、落ち葉も積もって日光が届かない。その結果、草花は育たなくなり、動植
物の命の循環も断ち切られてしまう。人の手が入らなくなった里山は、こうして生命力を失ってい
くのである。
しかし、人の手でつくった自然は、人の手で生き返らせることも可能なはずである。近年、里山
ま ち だ し きゅうりょうち
の環境を取り戻そうという動きが日本各地で広がっている。たとえば、東京都町田市の丘 陵 地 では、
NPO や市民が主体となって里山の再生に取り組んでいる。繁茂したササを刈り取るなどして雑木林
を再生し、池や小川など水辺の保護を行っている。また、里山ツアーや農業体験といった企画を通
して、里山のすばらしさと保護の大切さを市民に呼びかけている。こうした努力のおかげで、町田
きしょう め
の里山は徐々に生命力を取り戻している。希少植物が芽を出し、カエルやホタルが水辺に戻ってく
るなど、今では豊かな生態系を維持できるようになってきたという。町田の里山は市民にとっての
憩いの場として、見事に生き返ったのである。
都市化が進む現代において、一昔前の農村の生活に戻ることは不可能に近い。だが、人間がきち
んと関われば守れる自然が都会のすぐそばにあるということを忘れてはならない。里山は、昔も今
も、自然と人間の共生の場なのである。
1
『出会い』第 4 課
内容確認のための質問
1.「里山」とはどのようなものか。( )の言葉を使って説明しなさい。
里山とは ..........................................................................................................................................................
...................................................................................................................................... 自然のことである。
2.「里山」と「原生の自然」の違いを説明しなさい。
.................................................................................................................................................. 自然である。
3.里山の自然と人間の関係を説明しなさい。
①雑木林の利用法:
●木 → ・(..................................................)を作る
・(.......................)や(.......................)などの(.......................)にする
●落ち葉や実 → ・畑の(.................................)にする
・家畜の(.......................)にする
②雑木林の手入れ:
・木を(..................................................)
・落ち葉を(..................................................) →里山の自然を守る
・ササやススキを(..................................................)
4.里山の生態系における動植物の関係について、下の図を説明しなさい。
チヨウ 雑木林の木は冬に葉を(..........................................)
落葉樹
草花
→草花が(............................)
いつか土
ハチ →ハチやチヨウが(............................)
フクロウ
カエル →(............................)に食べられる
→(............................)に食べられる
ヘビ
→(............................)に食べられる
ワシ
→いつか(............................)になる 2
イタチ
『出会い』第 4 課
5.里山が放置されるようになった理由を説明しなさい。
・田畑を耕すのに、............................ではなく、....................................................を使うようになった。
・畑の肥料として、......................................................を使うようになった。
→里山の木や落ち葉は ........................................................................................... 。
6.放置された里山がどうなるか、説明しなさい。
放置する=人が伐ったり落ち葉を集めたりしない
→木の枝が(............................)・落ち葉が(............................)
→日光が(.................................)→草花が(................................)
→生態系が壊れる→里山は(.....................................................)
7.町立市の里山再生の取り組みについて説明しなさい。
里山再生の取り組み 取り組みの結果
■活用の例: ■例:
・(............................)の手入れ ①(..........................................)
・(............................)の保護 ②(..........................................)
・里山ツアーや(............................)
などの企画
8.「里山は、昔も今も、自然と人間の共生の場なのである」とは、どのような意味か。自分の言葉で説明しなさい。
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