1
2014年2月15日（土）〜 5月6日（火・休）
広島市現代美術館
主催　広島市現代美術館、中国新聞社
後援　広島県、広島市教育委員会、広島エフエム放送、尾道エフエム放送
協力　筑波大学貝島研究室、東京工業大学塚本研究室、
広島建築系学生団体 scale、公益財団法人広島市農林水産振興センター
Saturday, February 15 –Tuesday, May 6, 2014
Hiroshima City Museum of Contemporary Art
Organized by: The Hiroshima City Museum of Contemporary Art
/ The Chugoku Shimbun
Under the auspice of: Hiroshima Prefecture / Hiroshima
Municipal Board of Education / Hiroshima FM Broad Casting Co.,
Ltd. / Onomichi FM Broad Casting Co., Ltd.
In cooperation with: Kaijima Lab., The University of Tsukuba
/ Tsukamoto Lab., Tokyo Institute of Technology / Hiroshima
Architectural Students Group “scale” / Hiroshima City
Agriculture, Forestry and Fisheries Promotion Center
2 3
謝辞
広島県、広島市教育委員会、広島エフエム放送、尾道エフエム
放送、筑波大学貝島研究室、東京工業大学塚本研究室、広島建築
系学生団体 scale、公益財団法人広島市農林水産振興センター 広
島県、広島市教育委員会、広島エフエム放送、尾道エフエム放送、
筑波大学貝島研究室、東京工業大学塚本研究室、広島建築系学生
団体 scale、公益財団法人広
Acknowledgemrnts
Organized by: The Hiroshima City Museum of
Contemporary Art / The Chugoku Shimbun
Under the auspice of: Hiroshima Prefecture /
Hiroshima Municipal Board of Education / Hiroshima
FM Broad Casting Co., Ltd. / Onomichi FM Broad
Casting Co., Ltd.
In cooperation with: Kaijima Lab., The University
of Tsukuba / Tsukamoto Lab., Tokyo Institute of
Technology / Hiroshima Architectural Students Group
scale / Hiroshima City Agriculture, Forestry and
Fisheries Promotion Center
 ごあいさつ
このたび、広島市現代美術館におきまして、「アトリエ・ワン：マイクロ・パブリック・スペース」を開催致します。
　アトリエ・ワンは、塚本由晴と貝島桃代によって結成され、1 9 9 2年より活動を始めました。その領域は研究から
設計、まちづくり、美術展まで多岐にわたり、建築のみならず、幅広い分野で注目を集めています。彼らの表現は、
建築の根源的な問題を探求する真摯な姿勢が貫かれつつも、犬の鳴き声「ワン」からとられた名が端的に示すように、
つねに親しみやすさとユーモアに溢れています。それは、人々が生き生きとした体験を得る時空間を彼らが常に目
指して来たことと深く関わっていると言えます。
　アトリエ・ワンを特徴づける活動のひとつ「マイクロ・パブリック・スペース」は、地域の歴史、文化や環境、そこに
身を置く人々のふるまいの調査をもとに制作される、参加型のインスタレーション作品です。それらは、人々が行
き交い、活動することを支える装置であり、人々に開かれた場をつくり出すものといえます。本展覧会は「マイク
ロ・パブリック・スペース」作品の数々と、公共空間で観察、実践してきた事例を通して、美術館を含む公共の場（パ
ブリック・スペース）のあるべき姿をさぐる試みです。
　本展覧会の開催にあたり、アトリエ・ワンのスタッフの方々には展覧会に関わるあらゆる局面においてサポートを
いただきました。そして、多大なるご協力を賜りました、筑波大学貝島研究室、東京工業大学塚本研究室、広島建
築系学生団体scaleの皆様、また、貴重な作品を快くご出品くださいました美術館、関係団体ならびに、作品の素
材入手にご協力くださいました広島市農林水産振興センター、広島漁業組合、その他、関係各位の皆様に厚く御礼
申し上げます。
　最後に、本展の開催を引き受け、広島へ幾度も足を運び、対話を重ねるなかで実現へと導いて下さった塚本由晴氏、
貝島桃代氏に心から感謝の意を表します。
広島市現代美術館
4 5
Foreword
The Hiroshima City Museum of Contemporary Art is delighted to be hosting "Atelier Bow-Wow:
Micro Public Space."
Founded by Yoshiharu Tsukamoto and Momoyo Kaijima, Atelier Bow-Wow began operating
in 1992. Their activities range widely from research to design, urban planning and art exhibitions,
attracting attention not just in the architectural world but in a range of fields. While their
expression is steeped in a serious approach to pursuing fundamental problems pertaining to
architecture, it is at the same time highly approachable and full of humor, as shown clearly in
the name Bow-Wow, which is derived from the sound of a dog barking. It could be said that this
approach is closely linked to their constant striving to create space-time where people enjoy vivid
experiences.
Among the activities that distinguish Atelier Bow-Wow is their creation of "micro public spaces,"
participatory installations produced based on studies of the history, culture, and environment of a
region and of the behavior of the people who inhabit it. These installations might best be described as
devices for encouraging people to associate and engage in activities together, or as means of creating
space that is open to people. By presenting a number of these "micro public spaces" along with
examples of projects that have involved observation and practice in public space, this exhibition seeks
to explore the form public spaces, including art museums, should take.
In preparing this exhibition we have received invaluable support on all fronts from the staff
of Atelier Bow-Wow. We would also like to express our gratitude to the members of the Kaijima
Laboratory at the University of Tsukuba, the Tsukamoto Laboratory at the Tokyo Institute of
Technology and the Hiroshima Architectural Students Group "scale" for their tremendous
cooperation, to the art museums and related organizations for gracefully agreeing to lend their
precious artworks, to the Hiroshima City Agriculture, Forestry and Fisheries Promotion Center and
the Hiroshima Fishery Cooperative for their assistance in acquiring materials for the artworks, and
to all the other groups and individuals who have helped along the way.
Finally, we would like to warmly thank Yoshiharu Tsukamoto and Momoyo Kaijima for agreeing
to hold this exhibition and for traveling so often to Hiroshima and engaging in repeated discussions
in an effort to see it to fruition.
The Hiroshima City Museum of Contemporary Art
 目次
Contents

016 パブリック・スペースの内側、美術館の内側
Places of Behavior: Atelier Bow-Wow’s Architectural Practice and Thought

020 パブリック・スペースの内側、美術館の内側
Places of Behavior: Atelier Bow-Wow’s Architectural Practice and Thought

030 パブリック・スペースの内側、美術館の内側
Places of Behavior: Atelier Bow-Wow’s Architectural Practice and Thought

048 図版
Plates

116 パブリック・スペースの内側、美術館の内側
Places of Behavior: Atelier Bow-Wow’s Architectural Practice and Thought

128 パブリック・スペースの内側、美術館の内側
Places of Behavior: Atelier Bow-Wow’s Architectural Practice and Thought

164 パブリック・スペースの内側、美術館の内側
Places of Behavior: Atelier Bow-Wow’s Architectural Practice and Thought

6 7
 Artist’s Statement

8 9
→ パブリック・スペースの内側、美術館の内側
塚本 貝島
「ふるまい」の研究
　彼らは90年代初頭から、現在に至るまで、数多くの都市リサーチを行ってきたが、
なかには建築物（あるいはMPS）としての作品を作ることが前提とされていないも
のもある。その代表的な例が、黒田潤三とともに行った、
《メイド・イン・トーキョー》
3
である。無名の建築家の手によって、様々な用途や利用条件、立地条件に愚直に
応じることで生み出された風変わりな建築群を集約し、それらが個別の条件に応
じて導き出された、極端ではあるが一定の合理性を備えていることを示した。また、
中国、北京の天壇公園で撮影されたという映像には不思議な動きをする人々の姿
が捉えられている。木に背中を押し当て体を揺らす人、坂道を後ろ向きに歩き続
ける人など。それらを子細に観察していくと、そのひとつひとつが公園の環境に
適応し独自にあみ出された健康法のように見える。本展におけるインスタレーショ
ン作品《ふるまいの庭》（2014）はこうした映像により構成されている。これらの
作品は、身近な人々や事物が生み出す現象の魅力を見出す活動であり、赤瀬川原
平による「超芸術トマソン」や藤森照信らの「路上観察学会」に通じる作家性への懐
疑が認められる。しかし、アトリエ・ワンの観察行為が際立っているのは、建築や
MPSの創作と共通の問題意識に基づいている点にある。
　現象の観察と作品の創出とを結びつける、彼ら自身の言葉に「ふるまい」がある。
それは、人の所作だけを指すものではなく、動物、植物から気象現象、物質の特
性といった、無生物を含めたあらゆる物が一定の環境の中で反復的にみせる動き
／停止のパターンであり、周囲の事物と相互作用を交わしながら事象の成り行き
を規定しているものといえる。彼らはその概念を用い、人を含めた事物が相互に
関連し合う仕組みを理解し、再構築しようと試みてきた。ときに分野を大胆に横
断しながら提示されてきた彼らの表現とは、「ふるまい」の研究のそれぞれの一過
程であったといえる。塚本はその過程について、帰納的、演繹的プロセスを往復し、
繰り返すことで展開させる「転繹法」というアンリ・ルフェーブルのアイデアを例に
挙げ、自らの多様な表現のなかで意識される連続性について述べている4。つまり、
帰納的なアプローチとしての観察と、演繹的なアプローチである創出が互いにフィ
ードバックしながら展開していく。また別の見方をすれば、
こうした連鎖の構造は、
個々の試みがその規模を超えて、より大きな全体性へと可能性が開かれているよ
うに捉えることもできる。そして、発表形式の振れ幅はさらに拡大してゆくこと
も期待できるし、その場合、おそらく彼らの「ふるまい」の研究はより多角的に検
証されていくことだろう。
MPSが「展示」されること
　普段、私たちの美術館のエントランスホールには《マンガ・ポッド広島》が設置さ
10
れている。また、《スクール・ホイール》や《農具屋台》などの作品も、他の共同体
の手により保管され、地域の祭りやまちづくりのイベントで実際に活用されてい
る。通常それらは、とりわけて美術作品として鑑賞される訳ではない。一方で、
美術館の展覧会という枠組みにおいては、作者個人による表現行為として提示さ
れる。作品の個性を際立たせるために設えられた展示室という空間では、各々が
ひとつの完結した表現として記述され、そこで起こっている現象が、作品体験と
して認識される。これは、先に挙げた国際展での例のように、観客とのオルタナ
ティブな関係性を築き、全体の流れを修正するように介入した状況とは少し事態
が異なっている。展覧会でMPSが展示される時、それらの活用法が提示され、そ
の仕組みと生じる現象とが「作品」として可視化されることとなる。
　他方で、MPSのもうひとつの特質に、場に新しい視点を生み出すという点があ
る。たとえば、2013年にデンマーク、オールボーで発表されたMPS《Allotment
House》は、町の歴史、会場となったヨーン・ウッツォンによる建築、「ウッツォン・
センター」の意匠、そして展覧会とそこに集う作品と人々とに呼応するように据え
られていた。観客はその上部に上がることで、天窓が組み込まれた天井の意匠に
接近する視点、展示空間を高い視点から見下ろす視点を与えられる。それは、建
築、観客、それらの関係を文字通り異なる角度から見直す視点を再設定する興味
深い試みである。本展での新作《山水主義・広島》は、広島の農業、林業、水産業
に関連する素材として、稲藁、木材、カキ養殖で使用される連などにより構成さ
れる櫓状の作品である。この作品においても、当館展示室の特徴的な箇所としての、
１階と地下１階をつなぐ吹き抜け部分に介入し、そこを人が通過し、階下の展示
と観客を見下ろしつつ、自らもそのなかに加わってゆく一連の視点を設定するも
のとなる。これらの特質により、観客は自身が関与する作品や展覧会との関係性
について、内部と外部からの視点を得ることとなる。
表現主体の拡散
　これまでに述べたように、MPSはリサーチを経て、発表される場所やイベント
の背景、行き交う人々との関係性を織り込み、機能や形態が与えられている。と
ころが本展では、発表された場所から離れた地で、人々に提示される。そこから
生まれる可能性を、アトリエ・ワンは「地域における人材資源の発掘」としている。
つまり、MPSが持ち込まれることで、それらを活用し、能力を発揮する人々が集
約され、新たに見出される。このような特徴は、2006年以降の作品に顕著に見ら
れ、たとえば《人形劇の家》が持ち込まれることで、人形劇団が美術館に集まり、
《ス
クール・ホイール》が持ち込まれることで、何らかの知識を有した人が講師として
訪れる。より広く捉えれば、今回の新作MPSの制作にあたり協力を呼びかけた農・
11
→ Places of Behavior: Atelier Bow-Wow’s Architectural
Practice and Thought
Takeshi Matsuoka
1 Atelier Bow-Wow’s Issues of Concern: Disjunction and Disharmony
In order to understand Atelier Bow-Wow’s Micro Public Space, we must
first consider the issues they have engaged since the early 1990s. In their
preface for Behaviorology, published in 2010, they mention some of the simple
questions they had long asked themselves.
Why do buildings, designed by architects, tend to stand out from their
surroundings?…What will become of urban space when architects are
fascinated irst and foremost with new forms of architectural expression? Has
harmonious urban space disappeared? Can new types of order emerge that
can effectively replace this? (1)
Buildings created by architects stand out from their surroundings because
they lack connectivity with their encompassing environment. Atelier Bow-Wow
perceives the cause of this to lie in the fact that architects in post-war Japan
created residential architecture, primarily houses for single-family occupation. (2)
According to Atelier Bow-Wow, the reason people are so little visible
in suburban residential districts owes to “property subdivision, which has
reduced yard sizes, and the sealing of rooms for air-conditioner use. Such
factors are robbing people of occasions to spend time in yards and other
semi-outdoor spaces. Another factor is that the gaps produced in the urban
environment every time something is constructed have never received any
kind of definition, either as city space or living space.” In other words, the
disjunction and severance of the residence from its surroundings, as a factor
of the physical urban environment, is producing a situation in which people
are little visible. The reason it is necessary to overcome this disjunction,
self-containment, and fragmentation, Atelier Bow-Wow believes, is that the
absence of people affects the vitality of our lifestyle.
It is, of course, not only Atelier Bow-Wow who feel concerned that
today’s residence has become self-contained as a family space, with result
that regional society is weakening. Many people are currently engaged
in discussion and actual practice, with respect to this issue, thinking it
important to open architecture to society and take an active part in the
formation of a community.
In these circumstances, Atelier Bow-Wow’s perspective on the problem
is unique, for instead of community, they take “commonality” as their
catchword. “Commonality” may appear similar to words such as “community”
and “region” but is quite different in fact. In their use of this word, Atelier
Bow-Wow intends something different from opening self-contained spaces to
the outside in order to connect them to something collective and cooperative.
What then is “commonality?” It is what emerges when the boundaries
12
isolating a self-contained space from engagement with the outside are broken
down. Yoshiharu Tsukamoto uses the expression, “break down the rigid
boundaries between inside and outside,” (3) but here, we must make a clear
distinction between Tsukamoto’s intent and that of opening a small space to the
larger world outside to give it connectivity and form spaces for exchange with
others. Tsukamoto intends the opposite concept: not opening the space to the
community but rather breaking it down. In order to clearly express their intended
meaning of “breaking down,” Atelier Bow-Wow sets forth an important keyword:
“behavior.” Here, we have need to think about this keyword.
2 Behavior
Atelier Bow-Wow has explained the concept of “behavior” as follows:
We view buildings and urban spaces, themselves, within their relationship
with the “behavior” of their environment and that of the people living within
them. This is similar to an ecological approach of observing and analyzing
creatures within their relationship with their environment and other
creatures, in the actual circumstances they live in. This approach is sharply
in contrast with the mechanistic approach of the old-time biology upon which
architectural functionalism is modeled—that of bringing living creatures into
the laboratory and dissecting them in order to understand the anatomy of
their organs.
Above all, “behavior” has to do with movement. This means the movement
of people using a building and movement of the natural elements “light, heat,
wind and water” affecting the building. Certainly, when viewed as a lone
object, a building is an unmoving physical structure. Yet, when viewed as
something existing in time, it will be seen to be ever-changing, with people
actively passing through it, at times, or entirely empty of people or else
continually occupied, at other times. We can therefore see the building as a
space where different human actions occur from moment to moment. The
building also responds to the movement of the sun and conditions of the
weather, and grows warm or cold, dark or light. It may be struck by violent
winds or undergo sizzling hot sunlight.
Then, not only does a building undergo movement, whether of people or
natural elements, it also brings that movement into being or enables it to
exist in reality. Atelier Bow-Wow sees this movement-oriented “behavior” as
prescribed and patterned by custom, physical law, and natural providence.
The customar y, patterned character of “behavior” can be seen in the
relationships among the elements, in the interplay of those elements with
their surroundings, and in their lowing in conjunction while relating with one
13
 Essay

14 15
→ パブリック・スペースの内側、美術館の内側
松岡 剛　（広島市現代美術館学芸員）
マイクロ・パブリック・スペース（以下MPS）とは、アトリエ・ワンが展覧会をはじめ
とするアートイベントを舞台に発表してきた、機能をもつ建築的、家具的構造物に
よるインスタレーション作品であり、身体的に関与することのできる装置をとおし
て形成される、人が集う場である。アトリエ・ワンはMPSを出現させる事で、慣れ
親しんだ行動や認識にわずかなズレを生じさせる。
　塚本由晴による2005年の論文「マイクロ・パブリック・スペース」には、公共空間
についての次のような言葉がある 。 1
パブリック・スペースというのは個人の空間ではないが、そこに関わるひとり
ひとりが、「内側」から支えることによって成立する空間なのではないか。
彼がここで述べる「内側」とは、場において共有される規範を形成する原理であり、
また、それを主体的に担い、生産（あるいは再生産）している側という意味合いを
持っている。そして、自身のMPSについて次のように述べる。
街を歩き、その場所が持続して来た「内側」を感じ、そしてその「内側」の構成
を物質的に理解し、その関係や扱いを組み替え、普段と少し異なる現象をつく
り出す。
「普段と少し異なる」という、このズレこそが、そこに関わる人々に規範の存在を
意識させ、より積極的に場に関与していくきっかけを生じさせる。あらゆる場面
で効率化、専門分化が進行し、空間や場所の機能と規範が強固に規定されてゆく
現代社会にあって、既存の概念では捉えきれない活動を積極的に受け入れ、新し
い文化として提示する現代美術館とは、これからの社会の在り方を模索し、人々
がその可能性を感じられるような実験場となり得るのではないか。本来パブリッ
クなスペースである美術館にマイクロな「パブリック・スペース」が出現することに
よって試されているのは、そのようなことである。
MPSのはじまり
　アトリエ・ワンは、
《マンガ・ポッド》（2002）や《ファーニ・サイクル》
（2002）
、《ホ
ワイト・リムジン屋台》（2003）といった、MPSを代表する初期の作品群を発表し
た後、それらをシリーズとして統合し、後に続く作品を導くものとして「マイクロ・
パブリック・スペース」という名称を用い始めている。
　また、本人たちが指摘するように、MPS作品に繋がる特徴は、1992年の《田園
に佇むキオスク》にまで遡ることできる2。土をゲート型に固めて作られたこの野
16
菜直売所では、内部の壁に開いた穴から野菜の一部が姿を覗かせ、人々はさなが
ら収穫を楽しむように野菜を手に取ることができる。あるいは、1994年の計画案
《パブリック・キッチン・オペレーション》は、中心に円形劇場、その周囲に階段状の
客席を配し、そこから長いキッチンカウンターが放射状に広がる計画であり、後の
《ホワイト・リムジン屋台》、《ロック・スケープ》（2008）とも直接繋がる場の形成方
法、造形的特徴を見てとることができる。つまりMPSは、彼らの活動における最
初期から探究されてきた建築のひとつの可能性であり、次第に一つの流れを形成
し、シリーズとして意識化されてきたものと捉えることができる。
　彼らは、MPSの制作にあたり、発表の場となる地域のリサーチを行い、直接的
なだけでなく、ユーモアや創意をもって、意匠や機能に反映させる。たとえば、
「越
後妻有アート・トリエンナーレ2003」にて発表された《ホワイト・リムジン屋台》は、
新潟の雪景色を連想させる白い塗装が施され、白い食べ物、飲み物が振る舞われた。
そして、「第4回上海ビエンナーレ2002」での《ファーニ・サイクル》は現地でのリサ
ーチに基づき、路上で展開される人々のプライベートな生活風景とダイナミックで
いきいきとした自転車の活用がひとつに統合されている。こうした、ローカルな
要素を含み持つ表現は、とくに開催地の地域性をテーマに据えた展覧会において
重要な役割を果たしてきた。また、作品の制作や活用に他者の介在を促し、美術
（建築）以外の生活の営みを組み入れた表現は、90年代後半より重要な位置を占め
るリレーショナル・アートとも共通点をもつなど、同時代の美術との共振もその活
動範囲を拡大させた要因として考えられる。
　また、一般に建築表現は、作品の不可動性により、展示においては図面や模型
といった関連資料に依存しがちであるが、MPSは仮設性、あるいは可動性を備え、
一時的な発表の場においても実際の作品提示が可能であり、展覧会の特性を十分
に反映して機能する。また、近年多様な展開を見せる建築家によるインスタレー
ション作品と比してもユニークなのは、MPSは人々の生活と結びついた身体行為
を誘発する点において、さながら小さな建築物のように機能する点である。実際、
MPSは美術展において、展覧会と観客の関係性にズレを生じさせる装置としての
役割も担ってきた。展覧会場である美術館建築に外部を巡る渡り廊下を接続させ、
観客を館外へと導く《モンキー・ウェイ》（第27回サンパウロ・ビエンナーレ、2 0 0 6
年）や、観客がマンガを読みながら周囲とは隔絶された空間で休憩することのでき
る《マンガ・ポッド》（光州ビエンナーレ2002）などの例が示すように、時には展覧
会全体の流れに休止を差し挟むようにして、オルタナティブな回路を形成する。そ
れは、彼らが展覧会という場と人々の関係に注意を向けてきたことが可能にした
表現といえるし、展覧会というメディアの身体的体験の場のあり様を自覚し、そ
こに意識的に介入してきた成果と捉えるべきだろう。
17
「ふるまい」の研究
　彼らは90年代初頭から、現在に至るまで、数多くの都市リサーチを行ってきたが、
なかには建築物（あるいはMPS）としての作品を作ることが前提とされていないも
のもある。その代表的な例が、黒田潤三とともに行った、
《メイド・イン・トーキョー》
3
である。無名の建築家の手によって、様々な用途や利用条件、立地条件に愚直に
応じることで生み出された風変わりな建築群を集約し、それらが個別の条件に応
じて導き出された、極端ではあるが一定の合理性を備えていることを示した。また、
中国、北京の天壇公園で撮影されたという映像には不思議な動きをする人々の姿
が捉えられている。木に背中を押し当て体を揺らす人、坂道を後ろ向きに歩き続
ける人など。それらを子細に観察していくと、そのひとつひとつが公園の環境に
適応し独自にあみ出された健康法のように見える。本展におけるインスタレーショ
ン作品《ふるまいの庭》（2014）はこうした映像により構成されている。これらの
作品は、身近な人々や事物が生み出す現象の魅力を見出す活動であり、赤瀬川原
平による「超芸術トマソン」や藤森照信らの「路上観察学会」に通じる作家性への懐
疑が認められる。しかし、アトリエ・ワンの観察行為が際立っているのは、建築や
MPSの創作と共通の問題意識に基づいている点にある。
　現象の観察と作品の創出とを結びつける、彼ら自身の言葉に「ふるまい」がある。
それは、人の所作だけを指すものではなく、動物、植物から気象現象、物質の特
性といった、無生物を含めたあらゆる物が一定の環境の中で反復的にみせる動き
／停止のパターンであり、周囲の事物と相互作用を交わしながら事象の成り行き
を規定しているものといえる。彼らはその概念を用い、人を含めた事物が相互に
関連し合う仕組みを理解し、再構築しようと試みてきた。ときに分野を大胆に横
断しながら提示されてきた彼らの表現とは、「ふるまい」の研究のそれぞれの一過
程であったといえる。塚本はその過程について、帰納的、演繹的プロセスを往復し、
繰り返すことで展開させる「転繹法」というアンリ・ルフェーブルのアイデアを例に
挙げ、自らの多様な表現のなかで意識される連続性について述べている4。つまり、
帰納的なアプローチとしての観察と、演繹的なアプローチである創出が互いにフィ
ードバックしながら展開していく。また別の見方をすれば、
こうした連鎖の構造は、
個々の試みがその規模を超えて、より大きな全体性へと可能性が開かれているよ
うに捉えることもできる。そして、発表形式の振れ幅はさらに拡大してゆくこと
も期待できるし、その場合、おそらく彼らの「ふるまい」の研究はより多角的に検
証されていくことだろう。
MPSが「展示」されること
　普段、私たちの美術館のエントランスホールには《マンガ・ポッド広島》が設置さ
18
れている。また、《スクール・ホイール》や《農具屋台》などの作品も、他の共同体
の手により保管され、地域の祭りやまちづくりのイベントで実際に活用されてい
る。通常それらは、とりわけて美術作品として鑑賞される訳ではない。一方で、
美術館の展覧会という枠組みにおいては、作者個人による表現行為として提示さ
れる。作品の個性を際立たせるために設えられた展示室という空間では、各々が
ひとつの完結した表現として記述され、そこで起こっている現象が、作品体験と
して認識される。これは、先に挙げた国際展での例のように、観客とのオルタナ
ティブな関係性を築き、全体の流れを修正するように介入した状況とは少し事態
が異なっている。展覧会でMPSが展示される時、それらの活用法が提示され、そ
の仕組みと生じる現象とが「作品」として可視化されることとなる。
　他方で、MPSのもうひとつの特質に、場に新しい視点を生み出すという点があ
る。たとえば、2013年にデンマーク、オールボーで発表されたMPS《アロットメン
ト・ハウス》は、町の歴史、会場となったヨーン・ウッツォンによる建築、
「ウッツォン・
センター」の意匠、そして展覧会とそこに集う作品と人々とに呼応するように据え
られていた。観客はその上部に上がることで、天窓が組み込まれた天井の意匠に
接近する視点、展示空間を高い視点から見下ろす視点を与えられる。それは、建
築、観客、それらの関係を文字通り異なる角度から見直す視点を再設定する興味
深い試みである。本展での新作《山水主義・広島》は、広島の農業、林業、水産業
に関連する素材として、稲藁、木材、カキ養殖で使用される連などにより構成さ
れる櫓状の作品である。この作品においても、当館展示室の特徴的な箇所としての、
１階と地下１階をつなぐ吹き抜け部分に介入し、そこを人が通過し、階下の展示
と観客を見下ろしつつ、自らもそのなかに加わってゆく一連の視点を設定するも
のとなる。これらの特質により、観客は自身が関与する作品や展覧会との関係性
について、内部と外部からの視点を得ることとなる。
表現主体の拡散
　これまでに述べたように、MPSはリサーチを経て、発表される場所やイベント
の背景、行き交う人々との関係性を織り込み、機能や形態が与えられている。と
ころが本展では、発表された場所から離れた地で、人々に提示される。そこから
生まれる可能性を、アトリエ・ワンは「地域における人材資源の発掘」としている。
つまり、MPSが持ち込まれることで、それらを活用し、能力を発揮する人々が集
約され、新たに見出される。このような特徴は、2006年以降の作品に顕著に見ら
れ、たとえば《人形劇の家》が持ち込まれることで、人形劇団が美術館に集まり、
《ス
クール・ホイール》が持ち込まれることで、何らかの知識を有した人が講師として
訪れる。より広く捉えれば、今回の新作MPSの制作にあたり協力を呼びかけた農・
19
林・水産業の関係者も、作品が新たに美術館に呼び込んだ人々であるといえる。 といった要素を通じて、彼らの問いと提案は、多様な立場の人々に開かれた、生
　また、《マンガ・ポッド》が展示された際の「作品の一部と間違えられるくらいマ き生きとしたものとなっていくはずである。展覧会を体験するということが、見
5
ンガを読み耽ける人がいて、展示空間の中で独自の時間をつくり出していた 。
」と る、触れるだけでなく、使う、演じる、異なる使い方を考案する、あるいは、学ぶ、
いうエピソードは、表現の主体について考える際に、重要な示唆を与えてくれる 教えるといった、広がりをもった出来事として起こりうる場として、美術館の潜在
だろう。 能力が引き出される。それは、作家、あるいは観客といった、訪れる人々がもた
　《マンガ・ポッド》の作者はアトリエ・ワンであるが、そこで巻き起こる現象を引 らす現象を既存の原理に従って管理するのではなく、ときにそれらを糧として変
き起こしている主体は、利用者の役割を担う観客でもある。たとえ《人形劇の家》 容を遂げる、そのような強さと寛容さを備えたメディアとしての可能性である。
や《スクール・ホイール》で演者を務めるとまではいかなくとも、MPSの造形を楽
しみ、記録映像をみることでその機能を確かめることから一歩踏み出し、作品に
触れ、その使い手となることで、観客は知らず知らずのうちに表現における主体
的な立場に身を置くことになる。
　また、彼らが近年展開しているシリーズ「パブリック・ドローイング」も、表現の
担い手を巡る重要な問いを投げかける。そこでは、彼らが計画を手がけた空間を
含む様々な公共の場が、多くの人々の手で描き出される。広島において学生たち
と協同し、制作される平和記念公園を対象とした新作では、そのモチーフは丹下
健三らによる作品としての公園計画だけではなく、その場を人々がどのように活
用している（いた）かという事柄にも焦点が当てられ、なかには公園の設計者や管
理者の意図や予想から逸脱した、闊達な振るまいをも含んだものとなるだろう。
パブリック・ドローイングの「パブリック」には、描出された空間の特質である公共
性と、描く行為の主体が多数の人々に開かれている状態として公開性の意味が重
ねられている。これらの作品は、手分けして作業が進められるため、個々の着眼
点と描き方の個性を反映した細部が組み合わされ、全体が構成される。このように、
公共空間の計画者や、パブリック・ドローイングという形式とプロセスを設定した
アトリエ・ワンだけでなく、それ以外の人々も関与し、思いがけないディテールを
生み出す可能性を秘めている。それは、公共空間を巡る思考がひろく人々に開か
れて行く様子を想起させる。

　このような表現が織りなす本展覧会は、創出する者としてのアトリエ・ワン／享
受する者としての観客、という関係が自明のものではなくなり、その役割を巡る
せめぎ合いの場所となることが期待される。それはちょうど塚本がパブリック・ス
ペースについて述べた、「そこに関わるひとりひとりが、
「内側」から支えることに
1 . 塚本由晴「マイクロ・パブリック・スペース」『新建築』2005年2月pp.47-51
よって成立する空間」になぞらえることもできるだろう。そのような状況とは、ア 2 . 塚本由晴；貝島桃代『アトリエ・ワン・フロム・ポスト・バブル・シティ』2006年、INAX出版、p.172
3 . 貝島桃代、黒田潤三、塚本由晴は「チーム・メイド・イン・トーキョー」を結成し、1996年には展覧会「アーキテクチュア・オブ・
トリエ・ワンによる美術館の慣習に対する問いと、その公共性をめぐる提案ともい ザ・イヤー 1996 ／カメラ・オブスキュラ あるいは革命の建築博物館」
（池袋メトロポリタンプラザ、東京）におけるインスタ

える。表現のそこかしこに込められたユーモアによって可笑しさの共有が図られる レーション作品として発表、2001年には『メイド・イン・トーキョー』
（鹿島出版会）を刊行した。
4 .「アトリエ・ワン」『太陽レクチャーブック006建築家の仕事』2006年、平凡社p.42
なか、観客自身の身体的関わりと、他の観客の関わりの可視化、表現主体の拡散 5 . 前掲出、塚本、2005年

20 21
→ Places of Behavior: Atelier Bow-Wow’s Architectural
Practice and Thought
Masatake Shinohara　( )
1 Atelier Bow-Wow’s Issues of Concern: Disjunction and Disharmony
In order to understand Atelier Bow-Wow’s Micro Public Space, we must
first consider the issues they have engaged since the early 1990s. In their
preface for Behaviorology, published in 2010, they mention some of the simple
questions they had long asked themselves.
Why do buildings, designed by architects, tend to stand out from their
surroundings?…What will become of urban space when architects are
fascinated irst and foremost with new forms of architectural expression? Has
harmonious urban space disappeared? Can new types of order emerge that
can effectively replace this? (1)
Buildings created by architects stand out from their surroundings because
they lack connectivity with their encompassing environment. Atelier Bow-Wow
perceives the cause of this to lie in the fact that architects in post-war Japan
created residential architecture, primarily houses for single-family occupation. (2)
According to Atelier Bow-Wow, the reason people are so little visible
in suburban residential districts owes to “property subdivision, which has
reduced yard sizes, and the sealing of rooms for air-conditioner use. Such
factors are robbing people of occasions to spend time in yards and other
semi-outdoor spaces. Another factor is that the gaps produced in the urban
environment every time something is constructed have never received any
kind of definition, either as city space or living space.” In other words, the
disjunction and severance of the residence from its surroundings, as a factor
of the physical urban environment, is producing a situation in which people
are little visible. The reason it is necessary to overcome this disjunction,
self-containment, and fragmentation, Atelier Bow-Wow believes, is that the
absence of people affects the vitality of our lifestyle.
It is, of course, not only Atelier Bow-Wow who feel concerned that
today’s residence has become self-contained as a family space, with result
that regional society is weakening. Many people are currently engaged
in discussion and actual practice, with respect to this issue, thinking it
important to open architecture to society and take an active part in the
formation of a community.
In these circumstances, Atelier Bow-Wow’s perspective on the problem
is unique, for instead of community, they take “commonality” as their
catchword. “Commonality” may appear similar to words such as “community”
and “region” but is quite different in fact. In their use of this word, Atelier
Bow-Wow intends something different from opening self-contained spaces to
the outside in order to connect them to something collective and cooperative.
What then is “commonality?” It is what emerges when the boundaries
22
isolating a self-contained space from engagement with the outside are broken
down. Yoshiharu Tsukamoto uses the expression, “break down the rigid
boundaries between inside and outside,” (3) but here, we must make a clear
distinction between Tsukamoto’s intent and that of opening a small space to the
larger world outside to give it connectivity and form spaces for exchange with
others. Tsukamoto intends the opposite concept: not opening the space to the
community but rather breaking it down. In order to clearly express their intended
meaning of “breaking down,” Atelier Bow-Wow sets forth an important keyword:
“behavior.” Here, we have need to think about this keyword.
2 Behavior
Atelier Bow-Wow has explained the concept of “behavior” as follows:
We view buildings and urban spaces, themselves, within their relationship
with the “behavior” of their environment and that of the people living within
them. This is similar to an ecological approach of observing and analyzing
creatures within their relationship with their environment and other
creatures, in the actual circumstances they live in. This approach is sharply
in contrast with the mechanistic approach of the old-time biology upon which
architectural functionalism is modeled—that of bringing living creatures into
the laboratory and dissecting them in order to understand the anatomy of
their organs.
Above all, “behavior” has to do with movement. This means the movement
of people using a building and movement of the natural elements “light, heat,
wind and water” affecting the building. Certainly, when viewed as a lone
object, a building is an unmoving physical structure. Yet, when viewed as
something existing in time, it will be seen to be ever-changing, with people
actively passing through it, at times, or entirely empty of people or else
continually occupied, at other times. We can therefore see the building as a
space where different human actions occur from moment to moment. The
building also responds to the movement of the sun and conditions of the
weather, and grows warm or cold, dark or light. It may be struck by violent
winds or undergo sizzling hot sunlight.
Then, not only does a building undergo movement, whether of people or
natural elements, it also brings that movement into being or enables it to
exist in reality. Atelier Bow-Wow sees this movement-oriented “behavior” as
prescribed and patterned by custom, physical law, and natural providence.
The customar y, patterned character of “behavior” can be seen in the
relationships among the elements, in the interplay of those elements with
their surroundings, and in their lowing in conjunction while relating with one
23
another and interplaying with their environment.
From the above, we can say that “behavior” is movement; it is guided by
custom and regularity; and it can be seen within conjunction, relationship,
and interplay.
What we need to give care to, here, is this: When Atelier Bow-Wow says
“behavior,” they do not intend facets of human psychology such as self-
perception. They are viewing architectural space not as a reflection of
consciousness or psychology but rather as something that takes shape in
connection with “behavior” as a reality; architectural space as something
that supports “behavior.”
Because they do see architectural space this way, their endeavor has
nothing to do with architectural creation in association with cooperative
awareness and public spirit for the betterment of conditions created by self-
contained spaces closed to the outside. The problem with a self-contained
space is not that it relects self-closure. A self-contained space is a problem
because it is a space created without recognition of “behavior,” which is to
say, of elements in interplay, luid and lowing. A self-contained space gives
no thought to the flow of behavior. To the contrary, it is a space created in
order to fragment this low.
This is Atelier Bow-Wow’s answer to the question, “Why do buildings
created by architects stand apart from their surroundings? ” They see
architecture, in its state of “standing apart,” as cut off from its natural
connection with “behavior.” Then, their study of “behavior” has also yielded
an answer to the question, “Already, harmonious urban spaces have been
lost; can a new order emerge able to effectively replace this?” Order in the
urban environment, this is to say, is rooted in “behavior” and functions in
support of behavior. Order, therefore, must not become something that
obstructs “behavior” in an unnatural form but something always permitting it
to low with fresh vitality.
This, then, is what they intend by “breaking down.” When they say “break
down the boundaries between inside and outside,” they mean breaking
down that which obstructs and stultifies the flow of “behavior.” Naturally,
architecture is the construction of buildings, and insofar as it is, it means not
breaking down but, to the contrary, creating and giving order. For this reason,
when Atelier Bow-Wow says “break down,” we should not think it means acts
that produce a loss of order. It is an endeavor to bring back the concern for
“behavior” that is lacking from self-contained architecture. “Breaking down”
is the practice of newly creating architecture in accord with the movement
and conjunction of “behavior.” It means to work in accord with the natural
low of “behavior” and break down boundaries and make them pliable, and on
this basis, to create architecture anew. To break down and create is a single
24
architectural undertaking—to build.
3 Places of Behavior
What Atelier Bow-Wow values above all, when creating architecture in
support of “behavior,” is a lively state of “fun.” This factor, “fun,” is frequently
missing from public spaces that are created on the basis of modern urban
planning. According to Atelier Bow-Wow, “Because it lacks content conducive
to the reinement of behavior, in many cases it is a public space in form only,
without vitality.”
Micro Public Space is a practical attempt to produce lively, fun spaces
by creating them as “places of behavior.” It is, we can say, an endeavor
to intervene in actual urban space through spatial creation. Although we
generally know what kinds of spaces induce a sense of lively vitality in
people, it is unclear just what enables such spatial vitality or what conditions
are needed for creating a lively space. Atelier Bow-Wow keenly perceives
the answer to be a “place of behavior.” They realize, moreover, that it is
impossible to create such “places of behavior” through outside manipulation
of urban space. The secret is to grasp the tendencies of the site’s “behavior”
and, on that basis, employ spatial mechanisms to guide that “behavior” in a
new direction or else to a new state of being.
Atelier Bow-Wow feels that the true fun and vitality of a “place of behavior”
cannot be experienced privately by a lone individual. When viewed from the
perspective of “behavior,” they say, human beings are seen to “share a particular
custom or standard, something not entirely reducible to individual experience.”
“Behavior” is not something belonging to the individual’s inner world; rather,
it arises as an action or custom of involvement in a speciic place. “Behavior,”
therefore, is something shared that no individual person can exclusively possess,
and it is, moreover, something rooted in a speciic place. As such, it manifests
as an experience of physical being, not sourced in individual consciousness
or psychology. Naturally, this physical experience cannot happen in a vacuum;
some kind of place or environmental support is necessary.
On this basis, we can say that what Atelier Bow-Wow calls “commonality”
is this “place of behavior.” It is a composite of customary “behavior” and
the specific place that enables that behavior to happen, the latter being
what Atelier Bow-Wow produces in their practice of architecture. The
production of a “place of behavior” as a fun, richly vital place is the creation
of “commonality.”
4 Viewing the World in Connection with Atelier Bow-Wow
Creating “a place of behavior” is not necessarily easy to do. As I have
argued above, Atelier Bow-Wow has practiced and thought about architecture
25
 because of their concern that buildings created by architects stand apart
from their surroundings, with result that cities are losing their harmony.
What they have revealed in their work is the “place of behavior” and the
“commonality” it possesses. Their pursuit is currently motivated, we can say,
by their desire to realize city spaces that enable vital, fun experiences.
In truth, efforts being made in this direction are not limited to architecture.
There are many people who, even if not architects, feel they would like to
make the city a fun, vital place. Then, Atelier Bow-Wow’s pursuit also holds
implications for people who seek to know what conditions are needed in
order for people to live well together.
Atelier Bow-Wow is seeking out the conditions needed to impart fun
and vitality to the city, in concrete terms in their architectural practice and
thinking. Perhaps what is needed in the field of contemporary humanities,
however, is philosophical and ideological investigation of this concreteness.
This means carrying on the endeavor of Koji Taki, who from the 1960s
absorbed himself in discussions with architect Kazuo Shinohara and
contact with Shinohara’s architecture, and developed his own thought
through dialogue with concrete objects—buildings—seeking to discover
spatiotemporal truths thereby (Architect Kazuo Shinohara, Seidosha, 2007).
Naturally, the endeavor to create “closed space” that Taki perceived in
Shinohara’s architecture is diametrically opposed to Atelier Bow-Wow’s
aims. Still, in Taki’s view, Shinohara sought to create “closed space” in an
attempt to recover concreteness in human existence. He did so at a time
when architecture was primarily concerned with technocracy, which is to
say, manipulating space from the outside, and living spaces were in danger
of losing concreteness. Shinohara was confronting a situation of increasing
mass-production of confining houses for single families. To this extent,
the “closed space” sought by Shinohara differed in meaning from that
of the closed mass-produced house, in which human existence suffered
estrangement from the outdoors. Shinohara had faith his method of closure
would, paradoxically, lead to a recovery of human concreteness.
Through their practice of architecture, Atelier Bow-Wow seeks to reinvest the
qualities of fun and vitality in the city. Their efforts as such, I think, are related
to Shinohara’s endeavor to retrieve the concreteness of existence. Shinohara’s
gesture of closure is, for a certain, entirely different from Atelier Bow-Wow’s
practice of “breaking down and creating” in accord with behavior. Yet,
common to both is a desire to employ architecture to overcome the increasing
abstraction, loss of richness, and loss of vitality that marks our living spaces. (4)
If, in Shinohara’s architecture, Koji Taki saw an endeavor to restore
concreteness to existence, then what do we see in the architectural practice
of Atelier Bow-Wow? Essentially, we see an endeavor to revitalize the
26
everyday world through the creation of “places of behavior.” Shinohara,
by closing the residence, sought to restore concreteness to life within the
residence. Atelier Bow-Wow, in contrast, creates a “place of behavior”—
a territory open to involvement with its surroundings, smack in the middle
of the flow of everyday life—and awakens vitality in it. In every case, it is a
micro practice in a localized site, and in this sense, not something able in
a twinkling to transform the world we live in. Our contemporary world is
overtaken by a sprawling, abstract urban environment. Arata Isozaki has
called this, “a transition from metropolis to mega-metropolis,” (5) and it is likely
utopian thinking to believe that a complete reform of this trend is possible.
Still, in such circumstances, Atelier Bow-Wow’s architectural practice, even
if localized and micro-scale, keenly detects the low of “behavior,” responds
to it, and endeavors to awaken change there. This they do by engaging the
customary character of a place through spatial creation, employing steady,
sound methods that are not in the least conceptual. Wherever they have made
an intervention, in their practice of Micro Public Space, they have steadily
brought about change and succeeded in creating a lively space.
The soundness of Atelier Bow-Wow’s endeavor and their steadiness of
thought in response to the concrete, in accord with the physical, offers us
hints for a contemporary philosophical and ideological analysis of the urban
environment, as a basis for envisioning the future. Their work even offers
richly suggestive hints for how we, in our own lives as city residents, might
impart fun and vitality to our surroundings.
Translated by Brian Amstutz
(1) This and other quotations below not provided with notes are taken from Atelier Bow-Wow, Terunobu Fujimori, Washida
Menruro, Yoshikazu Nango, Enrique Walker, The Architectures of Atelier Bow-Wow: Behaviorology, Rizzoli, 2010.
(2) “Architectural practice had theretofore taken the conventional community or state as its foundation, and as
such, when the individual was taken as a foundation, the individual architect’s existence became aggrandized.
Schematically, the same kind of thing occurs to some degree throughout the world, but this became most
substantial in Japan and the USA, where an environment arose for industry to create many individual houses, and
it is Japan that has ever since maintained this situation. (Yoshiharu Tsukamoto + Masatake Shinohara, “Space,
the Individual and the Overall—Is Public Space that Surpasses Political Aims Possible?—Towards Commonality,”
10+1website, http://10plus1.jp/monthly/2013/10/post-85.php).
(3) Masayo Koike + Yoshiharu Tsukamoto, Kenchiku to Kotoba (Architecture and Language), Kawade Shobo
Shinsha, 2012, p. 61.
(4) Prudence is necessary in ascribing common aspects, even while recognizing a stream of thinking from Kazuo
Shinohara to Kazunari Sakamoto and Atelier Bow-Wow. Naturally, Tsukamoto himself, in a discussion with this
writer, described Atelier Bow-Wow as critical of Kazuo Shinohara’s stance of “taking the individual as a foundation.”
As such, one must be careful not to hastily draw a connection between them without due consideration. Even
then, however, the architectural knowledge fostered in the process of the Shinohara-Taki relationship passing on
to the Sakamoto-Taki relationship has been inherited in some form, we can believe, by the two Atelier Bow-Wow
architects, who studied with Sakamoto.
(5) Isozaki, Arata, Isozaki Arata Shinkenchiku Ronshu (6), Iwanami Shoten, 2013, p. 282.
27
→ ふるまいの場：アトリエ・ワンの建築実践と思考
篠原 雅武　（大阪大学特任准教授、社会哲学・思想史）
1 アトリエ・ワンの問題関心：遊離と不調和
　アトリエ・ワンのマイクロ・パブリック・スペースを理解するには、90年代初頭以
来彼らがずっと抱えてきた問題関心のことを、まずは考えてみる必要がある。た
とえば、2010年に刊行されたbehaviorologyの冒頭では、彼らがいつも考えてい
た素朴な疑問があげられている。
　建築家が作る建物はどうして周りから浮いてしまうのか？建築家は新しい建
築表現に熱狂しているが、そうなると都市空間はどうなってしまうのか？調和
のとれた都市空間はもはや失われ、それにかわる秩序は生まれないのか？ 1
　建築家が作る建物が周りから浮くとは、その建物をとりまく環境との連関を欠
落させるということである。アトリエ・ワンはその要因が、戦後日本で、建築家の
作る建物が住宅であり、しかもこの住宅が、一家族のために限定されたものとし
てつくられてきた事情にあると認識する2。
彼らがいうには、郊外住宅地で人の気配がしないのは、「敷地の細分化による庭
の縮小や、空調機の導入による室内の密閉化が、軒下や庭のような半外部の空間
で暮らす機会を奪ってしまったからであり、建設のたびに生じる隙間が都市空間
としても、生活空間としてもろくな定義を受けてこなかったからである」
。つまり、
住宅の遊離、切り離しという、都市環境の物理的側面にかかわる状態が、人の気
配のなさという状態を引き起こす、ということである。この遊離、自足化、断片
化を克服しなくてはならないのは、人の気配のなさという、私たちの生活にかか
わる事態をなんとかしなくてはならないからだと、アトリエ・ワンは考えていると
いえそうである。
　現代においては、住宅が家族のための空間として自足し、そのことゆえに地域
社会が形骸化しているということは、アトリエ・ワンにかぎらず、いろいろなとこ
ろで問題化されつつある。建築を社会へと開くこと、共同性の形成に参画するこ
とが重要であるということをめぐっては、さまざまなところで、さまざまな人が
議論し、実践している。
　そういった現状にあって、アトリエ・ワンの独自なところは、共同性ではなく、
commonality（共有性）を標語として打ち出しているところにあるといえそうであ
る。それは、共同性や地域といった言葉とは、似て非なるものである。それが意
味するところは、自足した空間を外へと開き、共同的なものへとつなげていくと
いうのとは異なっている。
　commonalityとはどのようなことか。それは、自足した状態にある空間の境界を、
外とのかかわりにおいて、崩していこうとするこころみにおいて、生じるものの
28
ことである。「内と外という強固な境界を崩す」という言い方を塚本由晴はしてい
るが3、これは、小さな空間をその外側の大きな世界にむけて開き、他者との交流
空間にむけてつなぐということとは明確に区別されることとして考えておくべき
だろう。個の反対概念である共同性に向けて開放し、つなぐのではなく、崩すこと。
この「崩す」という言葉の意味するところを的確に捉えるためには、アトリエ・ワン
が提示する重要なキーワードである「ふるまい」がどのようなことであるかについ
て、考えておく必要がある。
2 ふるまい
　アトリエ・ワンは、「ふるまい」についてこう述べている。
　建築や都市空間自体を、そこにともにある環境や人々の生活といった物事の
「ふるまい」との関係の中で捉えるのである。これは、建築の機能主義がモデル
にしていた古典生物学が、生物を実験室に持ち込み器官の組み合わせへと解体
して理解する機械論的なアプローチであったのに対して、生物が実際に生きて
いる状態を、他の生き物や環境との関係の網の目として観察・分析しようとす
る生態学的なアプローチに近い。
　「ふるまい」は、なによりもまずは動きにかかわる。それは、建築を利用する人
の動きであり、建築をとりまく「光、熱、風、水」などの自然の要素の動きといっ
たことである。たしかに建築は、それだけを単体で捉えるならば、静止した物理
的実在である。だが、これを時間的なものとして、時間とともに経過していくも
のとして捉えるならば、人が通過することもあれば、誰もいないこともあり、誰
かがそこで佇んでいることもあるというように、その時その時で異なっている行
為の起こる空間として、捉えることができる。あるいは建築は、太陽の動き、気
候の状態などに応じて、暖められていることもあれば、冷えていることもあり、
暗いこともあれば、明るいこともある。暴風にさらされることもあれば、カンカ
ン照りの日差しをうけていることもある。
　そして建築は、人であれ、自然であれ、なんらかの動きのもとにあるだけでなく、
そうした動きを、現実のもの、つまりは現実において現れているものとする営み
のことである。アトリエ・ワンは、こうした動きとしての「ふるまい」を、習慣や物
理法則、自然の摂理のもとで規定され、パターン化されたものと考える。
「ふるまい」
の習慣性、パターンは、要素間の関係や、要素をとりまくものとの相互作用、そして、
諸要素が、この関係と相互作用において、連関しつつ流動しているところにおい
て見出される。
29
　以上より、「ふるまい」は動きであり、習慣化・規則化されたものであり、連関・
関係・相互作用において見出されるものということができる。
　ここで注意しておく必要があるのは、彼らが「ふるまい」というとき、それは人
間の自己意識や精神といった内面的なものとはかかわりのないところで考えよう
としている、ということだ。彼らは空間を、意識や精神の反映として捉えるので
はなく、
「ふるまい」の現実性との関係において形成されるものとして、
「ふるまい」
を支えるものとして捉えている。
　そうであるからこそ、外に対して閉ざされた自足的空間が作り出される状況に
対して、共同体意識や公共心といったものとの関連で建築空間をつくるといった
試みは、彼らには、無縁である。自足的空間が問題なのは、それが自足した意識
の反映だからというのではない。自足的空間は、「ふるまい」という、相互連関し、
流動する流れのようなものへの感覚を欠いた状態でつくりだされた空間だから問
題なのだ。自足的空間は、「ふるまい」の流れに配慮せず、むしろこの流れを断片
化していくものとして、つくりだされた空間である。
　これが「建築家が作る建物はどうして周りから浮いてしまうのか？」という問い
に対する答えである。アトリエ・ワンは、
「周りから浮いてしまう」
という状態に、
「ふ
るまい」の自然な連関から断ち切られている状態をみいだす。そしてこの「ふるま
い」の連関への着目が、「調和のとれた都市空間はもはや失われ、それにかわる秩
序は生まれないのか？」という問いへの答えを導き出していくことになる。つまり、
都市空間の秩序は、「ふるまい」に依拠しそれを支えるものである。当然のことな
がら、それは「ふるまい」を不自然なかたちでせき止めるものであってはならず、
つねに生き生きとした状態で流れさせていくものでなければならない。
　これが、「崩す」ということである。彼らが「内と外の境界を崩す」というとき、
それは、「ふるまい」の流れを阻害し停滞させているものを崩すということである。
もちろん建築は、建築物を建てることであり、そのかぎりでは、崩すこととは逆
向きの、つくり、秩序づけていく営みである。だからこそ、彼らが「崩す」という
ときは、ただ無秩序を現出させる活動を意味していると考えるべきではない。そ
れは、自足した建築において欠如している「ふるまい」への配慮を取り戻そうとす
る営みである。「崩す」とは、「ふるまい」の動き、連関に即しつつ、建物を新たに
作り出そうとする実践である。「ふるまい」の自然な流れに即して境界を緩やかな
ものへと崩しつつ、そのうえで、つくりあげていく。崩すこととつくることが、
建築するという、ひとつの営みになっている。
3 ふるまいの場
　アトリエ・ワンが、「ふるまい」を支えるものとして建築をつくるというとき、そ
30
こでとりわけ重視されるのは、生き生きとした状況、「楽しさ」である。それは、
近代的な都市計画のもとでつくりだされるパブリックスペースには、往々にして欠
落しているものである。彼らがいうには、そこでは、「ふるまいが洗練されて行く
だけの内容に乏しく、パブリックスペースとしては生命力のない形式的なものにと
どまっている場合が多い」。
　マイクロ・パブリック・スペースは、「ふるまいの場」としての空間を作り出すこと
をつうじて、「生き生きとした楽しい状況」を出現させる実践である。つまり、空
間をつくることによる、都市現場への介入の試みであるということができるだろ
う。私たちは、人が生き生きとしている空間とはどのような空間であるかをなん
となくではあれ知っているが、生き生きとしていられる空間が何により可能とな
るか、楽しい空間の条件とは何であるかを、はっきりとはしらない。アトリエ・ワ
ンは、それが「ふるまいの場」であることを、鋭敏に把握している。しかも彼らは、
「ふるまいの場」の創出が、都市空間に対する外側からの操作では不可能であるこ
とを知っている。その秘訣は、介入を試みる現場に内在する「ふるまい」の傾向性
の把握を踏まえたうえで、そこで空間的なさまざまな仕掛けを試み、
「ふるまい」を、
新しい方向ないしはあり方にむけて導くことである。
　アトリエ・ワンは、「ふるまいの場」の楽しさ、生き生きとした状況は、個として
の人間が、内向している状態で、その内面において経験されるものではないと考
えている。彼らは「ふるまい」という観点から見えてくる人間を、「特定の習慣や
規範を共有しており、完全に個に還元されることのない存在」と考えている。
「ふ
るまい」は、個としての人間の内的世界に属するものではなく、特定の場において、
行為やかかわりの習慣として成り立っている、ということだ。それゆえに、「ふる
まい」は、誰であれ排他的に専有することのできない共有物で、しかも、特定の場
に根ざすものであり、だからこそ、意識や精神に属さない、身体性のそなわるも
のである。もちろんこの身体性は、真空では成り立ちえず、なんらかの場、環境
的な支えを必要とする。
　こうしてみると、アトリエ・ワンのいうcommonalityは、この「ふるまいの場」
であるといえそうである。それは、「ふるまい」という習慣的なものとそれを成
り立たせる場―これを作り出すのが、彼らの建築実践である―の複合からなる。
この「ふるまいの場」を、生き生きとした、楽しいものとして生産することが、
commonalityの創出である。
　
4 アトリエ・ワンとの接点で考えてみる
　「ふるまいの場」の創出は、かならずしも、容易なことではない。これまで論
じてきたように、アトリエ・ワンは、建築家の建てる建物が周囲から浮いてい
31
て、そのことゆえに都市の調和が失われているという問題関心から、建築の実践
と思考を試みてきた。そこで見出されたのが、「ふるまいの場」であり、それが
commonalityという特性をもつということであるが、これらの探求は、都市で楽
しさを、生き生きとした経験の場を現実のものとしてつくりだしたいという欲望
に促されたものといってもいいだろう。
　じつは、こうした探求のこころみは、かならずしも建築に限定されるものでは
ない。べつに建築家でなくても、都市を楽しく、生き生きとしたものにしたいと
考える人は多いだろう。またそれは、人間が共に生きていることの条件がどのよ
うなものであるか、それはどのようなものであることが望ましいのかと問う人間
にとっても、示唆的なこころみである。
　アトリエ・ワンは、建築の実践と思考の過程で、都市の楽しさ、活気をつくりだ
すための条件を具体的に追求しているが、もしかしたら、現代の人文学において
必要なのは、この具体性との関連で、哲学・思想を試みることなのかもしれない。
　それは、多木浩二が、1960年代以来、建築家・篠原一男と交流しその建築作品
と触れる中で、建築という具体物を相手に己の思考を試し、そのことで時空間に
おける真理を発見しようとした試み（『建築家・篠原一男』青土社、2007年）を継
承する、ということだ。
　もちろん、多木が篠原の建築にみた、閉じた空間を作ろうとする試みは、アト
リエ・ワンとは正反対のものではある。しかしながら、多木のみるところ、篠原が
閉じた空間をつくろうとしたのは、技術主義、つまりは外から空間を操作する論
理が主流となっている建築の状況にあって、そこで危機に陥っている人間の具体的
な実存を回復しようとしたからである。それは、一家族に向けて閉塞した戸建て
住宅が大量生産されていく状況との対決において試みられたのであって、そのか
ぎりでは、篠原が求めた閉鎖性は、大量生産型の戸建住宅の閉鎖性（そこでは、人
間の実存が疎外されている）とはその意味合いが異なっていた。閉じることが、逆
説的にも、具体的な人間性の回復につながるという信念が、そこにはあった。
　アトリエ・ワンが、その建築の実践をつうじて、楽しさ、生き生きとした状況を
都市に回復させようとしているのは、篠原のこうした具体的実存の回復の試みと、
連続しているのではないかと私は思う。篠原の閉ざすという身振りは、ふるまい
に即した建築実践―崩し、つくりあげていく―とは、たしかに真逆ではある。だが、
生活の場の抽象化、形骸化、活気のなさを、建築を建てることで克服したいとい
う欲望は、両者において共通している 。
4
　多木は、篠原の建築に、具体的実存の回復の試みをみてとったが、では私たちは、
アトリエ・ワンの建築実践に、何をみてとることができるか。それはつまるところ、
「ふるまいの場」の創出をつうじた、日常世界の活性化の試みであるといえないか。
32
篠原は、住宅を閉ざすことで、その内部に、具体的実存の回復を試みた。これに
対してアトリエ・ワンは、閉鎖されることのない日常世界の只中に、
「ふるまいの場」
を、周囲とのかかわりにおいて閉じることのない領域としてつくりだし、そこを
活気づかせようとする。
　たしかにそれらは、いずれもがローカルな現場での、ミクロな実践ではある。私
たちが生きている世界の総体を一挙に変えるというものではない。現代世界は、
全域的にスプロールしていく抽象的な都市性により、覆い尽くされている。これ
を磯崎新は「大都市から超都市への移行」と把握しているが5、この趨勢の全面的な
変革が可能であると考えるのは、もしかしたら、まったくのユートピアでしかない
のかもしれないが、そうした状況にあって、アトリエ・ワンの建築実践は、ローカ
ルでミクロであっても、「ふるまい」の流れの具体性を鋭敏に感知し、反応し、そ
こで変化を引き起こそうとするものである。それは、空間の創出をつうじた、場
の習慣性にかかわるところで変化を起こすというものであり、それゆえに、けっ
して観念的ではなく、着実なものである。マイクロ・パブリック・スペースの実践は、
そのいずれもが、介入をこころみた現場において、着実に変化をもたらし、生き
生きとした状況をつくりだすものである。
　この試みの着実さ、モノに即した具体性に応じて考えようとすることは、都市
的な環境を現代において捉え、未来の像を描き出すという哲学的・思想的な試み
をすすめるうえでヒントになるし、また、市民として暮らしを営む立場からみても、
私たちの身の回りにおいて、活気、楽しさをつくりだすにはどうしたらよいかと
考えるとき、示唆に富むヒントを与えてくれるはずである。
1 . 以 下 の 引 用 箇 所 は、 断 り 書 き の な い 場 合、Atelier Bow-Wow, Terunobu Fujimori, Washida Menruro, Yoshikazu
　 Nango, Enrique Walker, The Architectures of Atelier Bow-Wow: Behaviorology, Rizzoli, 2010 .からのものである）
2 .「建築の実践が、それまでの共同体や国家を根拠にしたものから、個を根拠にしたものになり、それにあわせて建築の表
　 現においても建築家の個性が大きく扱われるようになりました。図式的には世界中で同じようなことが多かれ少なかれ起
　 きていたのですが、個人住宅をたくさんつくる産業としての環境があったためにそれが具体化したのが日本とアメリカで、
　 その状態をさらに維持して今日まで展開してきたのが日本なのです」 （塚本由晴＋篠原雅武「空間と個と全体──政治
　 的意図を凌駕する公共空間は可能か──コモナリティのほうへ」『10＋1 website』http://10 plus 1 .jp/monthly/2013/10 /
　 post- 8 5 .php）。
3 . 小池昌代＋塚本由晴『建築と言葉』河出書房新社、2012年、p.61
4 . この共通するものについては、篠原一男、坂本一成、アトリエ・ワンという流れを意識しつつ、慎重に考えてみる必要が
　 あるだろう。もちろん、塚本自身が筆者との対談で述べているように、篠原一男の「個を根拠とする」姿勢に対しては、
　 アトリエ・ワンは批判的である。そのかぎりでは、安易にその間に連続性を見ようとするのは慎むべきだが、そうはいっ
　 ても、篠原−多木の関係が坂本−多木へと受け継がれていく過程で培われた建築知が、坂本のもとで学んだアトリエ・ワンの
　 二人に何らかの形で受け継がれていると考えることはできるのではないか。
5 . 磯崎新『磯崎新建築論集（六）』岩波書店、2013年、p.282
33
→ Places of Behavior: Atelier Bow-Wow’s Architectural
Practice and Thought
Masatake Shinohara　
(Specially Appointed Associate Professor, Osaka University, Philosophy / History of thought)
1 Atelier Bow-Wow’s Issues of Concern: Disjunction and Disharmony
In order to understand Atelier Bow-Wow’s Micro Public Space, we must
first consider the issues they have engaged since the early 1990s. In their
preface for Behaviorology, published in 2010, they mention some of the simple
questions they had long asked themselves.
Why do buildings, designed by architects, tend to stand out
from their surroundings?…What will become of urban space when
architects are fascinated first and foremost with new forms of
architectural expression? Has harmonious urban space disappeared?
Can new types of order emerge that can effectively replace this? (1)
Buildings created by architects stand out from their surroundings because
they lack connectivity with their encompassing environment. Atelier Bow-Wow
perceives the cause of this to lie in the fact that architects in post-war Japan
created residential architecture, primarily houses for single-family occupation. (2)
According to Atelier Bow-Wow, the reason people are so little visible
in suburban residential districts owes to “property subdivision, which has
reduced yard sizes, and the sealing of rooms for air-conditioner use. Such
factors are robbing people of occasions to spend time in yards and other
semi-outdoor spaces. Another factor is that the gaps produced in the urban
environment every time something is constructed have never received any
kind of definition, either as city space or living space.” In other words, the
disjunction and severance of the residence from its surroundings, as a factor
of the physical urban environment, is producing a situation in which people
are little visible. The reason it is necessary to overcome this disjunction,
self-containment, and fragmentation, Atelier Bow-Wow believes, is that the
absence of people affects the vitality of our lifestyle.
It is, of course, not only Atelier Bow-Wow who feel concerned that
today’s residence has become self-contained as a family space, with result
that regional society is weakening. Many people are currently engaged
in discussion and actual practice, with respect to this issue, thinking it
important to open architecture to society and take an active part in the
formation of a community.
In these circumstances, Atelier Bow-Wow’s perspective on the problem
is unique, for instead of community, they take “commonality” as their
catchword. “Commonality” may appear similar to words such as “community”
and “region” but is quite different in fact. In their use of this word, Atelier
Bow-Wow intends something different from opening self-contained spaces to
the outside in order to connect them to something collective and cooperative.
What then is “commonality?” It is what emerges when the boundaries
34
isolating a self-contained space from engagement with the outside are broken
down. Yoshiharu Tsukamoto uses the expression, “break down the rigid
boundaries between inside and outside,” (3) but here, we must make a clear
distinction between Tsukamoto’s intent and that of opening a small space to the
larger world outside to give it connectivity and form spaces for exchange with
others. Tsukamoto intends the opposite concept: not opening the space to the
community but rather breaking it down. In order to clearly express their intended
meaning of “breaking down,” Atelier Bow-Wow sets forth an important keyword:
“behavior.” Here, we have need to think about this keyword.
2 Behavior
Atelier Bow-Wow has explained the concept of “behavior” as follows:
We view buildings and urban spaces, themselves, within their
relationship with the “behavior” of their environment and that of the
people living within them. This is similar to an ecological approach of
observing and analyzing creatures within their relationship with their
environment and other creatures, in the actual circumstances they live
in. This approach is sharply in contrast with the mechanistic approach
of the old-time biology upon which architectural functionalism is
modeled—that of bringing living creatures into the laboratory and
dissecting them in order to understand the anatomy of their organs.
Above all, “behavior” has to do with movement. This means the movement
of people using a building and movement of the natural elements “light, heat,
wind and water” affecting the building. Certainly, when viewed as a lone
object, a building is an unmoving physical structure. Yet, when viewed as
something existing in time, it will be seen to be ever-changing, with people
actively passing through it, at times, or entirely empty of people or else
continually occupied, at other times. We can therefore see the building as a
space where different human actions occur from moment to moment. The
building also responds to the movement of the sun and conditions of the
weather, and grows warm or cold, dark or light. It may be struck by violent
winds or undergo sizzling hot sunlight.
Then, not only does a building undergo movement, whether of people or
natural elements, it also brings that movement into being or enables it to
exist in reality. Atelier Bow-Wow sees this movement-oriented “behavior” as
prescribed and patterned by custom, physical law, and natural providence.
The customar y, patterned character of “behavior” can be seen in the
relationships among the elements, in the interplay of those elements with
their surroundings, and in their lowing in conjunction while relating with one
35
another and interplaying with their environment.
From the above, we can say that “behavior” is movement; it is guided by
custom and regularity; and it can be seen within conjunction, relationship,
and interplay.
What we need to give care to, here, is this: When Atelier Bow-Wow says
“behavior,” they do not intend facets of human psychology such as self-
perception. They are viewing architectural space not as a reflection of
consciousness or psychology but rather as something that takes shape in
connection with “behavior” as a reality; architectural space as something
that supports “behavior.”
Because they do see architectural space this way, their endeavor has
nothing to do with architectural creation in association with cooperative
awareness and public spirit for the betterment of conditions created by self-
contained spaces closed to the outside. The problem with a self-contained
space is not that it relects self-closure. A self-contained space is a problem
because it is a space created without recognition of “behavior,” which is to
say, of elements in interplay, luid and lowing. A self-contained space gives
no thought to the flow of behavior. To the contrary, it is a space created in
order to fragment this low.
This is Atelier Bow-Wow’s answer to the question, “Why do buildings
created by architects stand apart from their surroundings? ” They see
architecture, in its state of “standing apart,” as cut off from its natural
connection with “behavior.” Then, their study of “behavior” has also yielded
an answer to the question, “Already, harmonious urban spaces have been
lost; can a new order emerge able to effectively replace this?” Order in the
urban environment, this is to say, is rooted in “behavior” and functions in
support of behavior. Order, therefore, must not become something that
obstructs “behavior” in an unnatural form but something always permitting it
to low with fresh vitality.
This, then, is what they intend by “breaking down.” When they say “break
down the boundaries between inside and outside,” they mean breaking
down that which obstructs and stultifies the flow of “behavior.” Naturally,
architecture is the construction of buildings, and insofar as it is, it means not
breaking down but, to the contrary, creating and giving order. For this reason,
when Atelier Bow-Wow says “break down,” we should not think it means acts
that produce a loss of order. It is an endeavor to bring back the concern for
“behavior” that is lacking from self-contained architecture. “Breaking down”
is the practice of newly creating architecture in accord with the movement
and conjunction of “behavior.” It means to work in accord with the natural
low of “behavior” and break down boundaries and make them pliable, and on
this basis, to create architecture anew. To break down and create is a single
36
architectural undertaking—to build.
3 Places of Behavior
What Atelier Bow-Wow values above all, when creating architecture in
support of “behavior,” is a lively state of “fun.” This factor, “fun,” is frequently
missing from public spaces that are created on the basis of modern urban
planning. According to Atelier Bow-Wow, “Because it lacks content conducive
to the reinement of behavior, in many cases it is a public space in form only,
without vitality.”
Micro Public Space is a practical attempt to produce lively, fun spaces
by creating them as “places of behavior.” It is, we can say, an endeavor
to intervene in actual urban space through spatial creation. Although we
generally know what kinds of spaces induce a sense of lively vitality in
people, it is unclear just what enables such spatial vitality or what conditions
are needed for creating a lively space. Atelier Bow-Wow keenly perceives
the answer to be a “place of behavior.” They realize, moreover, that it is
impossible to create such “places of behavior” through outside manipulation
of urban space. The secret is to grasp the tendencies of the site’s “behavior”
and, on that basis, employ spatial mechanisms to guide that “behavior” in a
new direction or else to a new state of being.
Atelier Bow-Wow feels that the true fun and vitality of a “place of behavior”
cannot be experienced privately by a lone individual. When viewed from the
perspective of “behavior,” they say, human beings are seen to “share a particular
custom or standard, something not entirely reducible to individual experience.”
“Behavior” is not something belonging to the individual’s inner world; rather,
it arises as an action or custom of involvement in a speciic place. “Behavior,”
therefore, is something shared that no individual person can exclusively possess,
and it is, moreover, something rooted in a speciic place. As such, it manifests
as an experience of physical being, not sourced in individual consciousness
or psychology. Naturally, this physical experience cannot happen in a vacuum;
some kind of place or environmental support is necessary.
On this basis, we can say that what Atelier Bow-Wow calls “commonality”
is this “place of behavior.” It is a composite of customary “behavior” and
the specific place that enables that behavior to happen, the latter being
what Atelier Bow-Wow produces in their practice of architecture. The
production of a “place of behavior” as a fun, richly vital place is the creation
of “commonality.”
4 Viewing the World in Connection with Atelier Bow-Wow
Creating “a place of behavior” is not necessarily easy to do. As I have
argued above, Atelier Bow-Wow has practiced and thought about architecture
37
because of their concern that buildings created by architects stand apart
from their surroundings, with result that cities are losing their harmony.
What they have revealed in their work is the “place of behavior” and the
“commonality” it possesses. Their pursuit is currently motivated, we can say,
by their desire to realize city spaces that enable vital, fun experiences.
In truth, efforts being made in this direction are not limited to architecture.
There are many people who, even if not architects, feel they would like to
make the city a fun, vital place. Then, Atelier Bow-Wow’s pursuit also holds
implications for people who seek to know what conditions are needed in
order for people to live well together.
Atelier Bow-Wow is seeking out the conditions needed to impart fun
and vitality to the city, in concrete terms in their architectural practice and
thinking. Perhaps what is needed in the field of contemporary humanities,
however, is philosophical and ideological investigation of this concreteness.
This means carrying on the endeavor of Koji Taki, who from the 1960s
absorbed himself in discussions with architect Kazuo Shinohara and
contact with Shinohara’s architecture, and developed his own thought
through dialogue with concrete objects—buildings—seeking to discover
spatiotemporal truths thereby (Architect Kazuo Shinohara, Seidosha, 2007).
Naturally, the endeavor to create “closed space” that Taki perceived in
Shinohara’s architecture is diametrically opposed to Atelier Bow-Wow’s
aims. Still, in Taki’s view, Shinohara sought to create “closed space” in an
attempt to recover concreteness in human existence. He did so at a time
when architecture was primarily concerned with technocracy, which is to
say, manipulating space from the outside, and living spaces were in danger
of losing concreteness. Shinohara was confronting a situation of increasing
mass-production of confining houses for single families. To this extent,
the “closed space” sought by Shinohara differed in meaning from that
of the closed mass-produced house, in which human existence suffered
estrangement from the outdoors. Shinohara had faith his method of closure
would, paradoxically, lead to a recovery of human concreteness.
Through their practice of architecture, Atelier Bow-Wow seeks to reinvest the
qualities of fun and vitality in the city. Their efforts as such, I think, are related
to Shinohara’s endeavor to retrieve the concreteness of existence. Shinohara’s
gesture of closure is, for a certain, entirely different from Atelier Bow-Wow’s
practice of “breaking down and creating” in accord with behavior. Yet,
common to both is a desire to employ architecture to overcome the increasing
abstraction, loss of richness, and loss of vitality that marks our living spaces. (4)
If, in Shinohara’s architecture, Koji Taki saw an endeavor to restore
concreteness to existence, then what do we see in the architectural practice
of Atelier Bow-Wow? Essentially, we see an endeavor to revitalize the
38
everyday world through the creation of “places of behavior.” Shinohara,
by closing the residence, sought to restore concreteness to life within the
residence. Atelier Bow-Wow, in contrast, creates a “place of behavior”—
a territory open to involvement with its surroundings, smack in the middle
of the flow of everyday life—and awakens vitality in it. In every case, it is a
micro practice in a localized site, and in this sense, not something able in
a twinkling to transform the world we live in. Our contemporary world is
overtaken by a sprawling, abstract urban environment. Arata Isozaki has
called this, “a transition from metropolis to mega-metropolis,” (5) and it is likely
utopian thinking to believe that a complete reform of this trend is possible.
Still, in such circumstances, Atelier Bow-Wow’s architectural practice, even
if localized and micro-scale, keenly detects the low of “behavior,” responds
to it, and endeavors to awaken change there. This they do by engaging the
customary character of a place through spatial creation, employing steady,
sound methods that are not in the least conceptual. Wherever they have made
an intervention, in their practice of Micro Public Space, they have steadily
brought about change and succeeded in creating a lively space.
The soundness of Atelier Bow-Wow’s endeavor and their steadiness of
thought in response to the concrete, in accord with the physical, offers us
hints for a contemporary philosophical and ideological analysis of the urban
environment, as a basis for envisioning the future. Their work even offers
richly suggestive hints for how we, in our own lives as city residents, might
impart fun and vitality to our surroundings.
Translated by Brian Amstutz
(1) This and other quotations below not provided with notes are taken from Atelier Bow-Wow, Terunobu Fujimori, Washida
Menruro, Yoshikazu Nango, Enrique Walker, The Architectures of Atelier Bow-Wow: Behaviorology, Rizzoli, 2010.
(2) “Architectural practice had theretofore taken the conventional community or state as its foundation, and as
such, when the individual was taken as a foundation, the individual architect’s existence became aggrandized.
Schematically, the same kind of thing occurs to some degree throughout the world, but this became most
substantial in Japan and the USA, where an environment arose for industry to create many individual houses, and
it is Japan that has ever since maintained this situation. (Yoshiharu Tsukamoto + Masatake Shinohara, “Space,
the Individual and the Overall—Is Public Space that Surpasses Political Aims Possible?—Towards Commonality,”
10+1website, http://10plus1.jp/monthly/2013/10/post-85.php).
(3) Masayo Koike + Yoshiharu Tsukamoto, Kenchiku to Kotoba (Architecture and Language), Kawade Shobo
Shinsha, 2012, p. 61.
(4) Prudence is necessary in ascribing common aspects, even while recognizing a stream of thinking from Kazuo
Shinohara to Kazunari Sakamoto and Atelier Bow-Wow. Naturally, Tsukamoto himself, in a discussion with this
writer, described Atelier Bow-Wow as critical of Kazuo Shinohara’s stance of “taking the individual as a foundation.”
As such, one must be careful not to hastily draw a connection between them without due consideration. Even
then, however, the architectural knowledge fostered in the process of the Shinohara-Taki relationship passing on
to the Sakamoto-Taki relationship has been inherited in some form, we can believe, by the two Atelier Bow-Wow
architects, who studied with Sakamoto.
(5) Isozaki, Arata, Isozaki Arata Shinkenchiku Ronshu (6), Iwanami Shoten, 2013, p. 282.
39
40