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新疆ウイグル自治区におけるビールホップクラスター

1125-33-2032 木村有希

クラスターとは「特定分野における関連企業,専門性の高い供給業者、サービス提供者、関連業
界に属する企業、関連機関(大学,規格団体,業界団体など)が地理的に集中し、競走しつつ同時
に協力している状態」(Porter, 1998)のことである。クラスターの形成には企業等の地理的な集中
が必要である。単なる産業集積とは異なり、生産性の向上とイノベーションの誘発効果があるとさ
れる。新疆ウイグル自治区は経済発展が遅れている地域であり、農業における産業構造の調整の
遅れなどから貧困人口は農牧総人口の 36.5%を占める。しかし、その中でも農業分野において技
術革新を中核としたクラスターを形成して競争力を獲得し、同時に農民の所得確保を実現してい
る事例も見ることができる。
新疆ウイグル自治区では、新疆三宝楽農業科技開発有限公司(以下、新疆サッポロ)を中心とす
るビールホップクラスターが形成されている。日本向けはサッポロビールの1社のみであるが、国内
市場向けの企業は複数あり、一般的には3年間にわたっての契約がなされる。1 年目に契約農家
のホップを試験的に利用し、問題がなければ 3 年後に本格的な生産に移行する。今回は新疆サッ
ポロが行なっている施策について記したいと思う。生産コストの負担は農民が行うのが一般的だ
が、新疆サッポロが地元農民に対して技術指導を行っている。また、農民が作業を行う際に従う標
準を作成し、資金の借り入れを行う場合には会社が連帯保証人となる。面積的にはホップは大き
な割合を占めておらず、建設兵団 222 弾の耕地面積の中では5%程度である。しかし、ホップによる
所得は農家所得全体の 10%を占めており、建設兵団の農産物の中では経済性と安定性が高い部
門であると評価されている。
新疆ウイグル自治区の開発は新疆生産建設兵団(以下、建設兵団)と呼ばれる、農場、牧場、企
業を運営する組織に拠るところが大きい。現に新疆サッポロの出資の 50%は建設兵団傘下の企業
からであり、圃場の土地はもともと小麦やアブラナが植えられていた建設兵団の土地である。また、
農民用の住宅建設の 30%を負担するなど建設兵団の補助する部分は多岐にわたる。貧困農村は
本来、企業が主導するクラスター形成のイニシアティブが十分にある環境とは言い難い。新疆ウイ
グル自治区の貧困農村開発のためのクラスター形成を可能にしているのは、クラスター形成のイ
ニシアティブを建設兵団が担っているためである。しかし、農村に技術が持ち込まれ、効率化された
生産によって農村が発展したこと自体は、産業に関連する企業の成果であることは間違いない。

参考文献
Porter, M. ( 1998 ) :” Clusters and Competition: New Agendas for Companies, Governments,
Institutions” On Competition, Harvard Business School Press, pp.155-196
木南莉莉(2010)『中国におけるクラスター戦略による農業農村開発』農林統計出版

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