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NCの基礎知識4

NCコード

もくじ
1. アブソリュート方式とインクレメンタル方式 …2
2. 各種機能 …4
3. G コード …7
4. M コード …9

株式会社イプロス
Tech Note 編集部
NC コードは、NC プログラムに使用される、NC 工作機械の動作を決め
る指令コードです。NC コードで工具やテーブルの回転、移動、移動速
度などを指定します。G コードや M コード、その他のコードの意味と具
体的な指令方法について解説します。これらのコードには NC 工作機械
の種類やメーカに特化したものがあります。ここでは各メーカに共通し、
NC 旋盤やマシニングセンタで使用されるコードに絞って解説します。

1. アブソリュート方式と
 インクレメンタル方式

工具の移動を指令するには、アブソリュート方式とインクレメンタル方
式の2通りの方法があります。アブソリュート方式
(絶対値指令方式)
は、
工具の現在位置に関係なく、移動させたい点(目的点)をワーク座標
系原点からの座標値で指令します。インクレメンタル方式(増分値指令
方式)は、工具の現在点から移動させたい点(目的点)までの距離と
方向で指令します。

図 1 は、XY 平面図において、P0 からスタートして P1、P2・・と工具


を移動させ、最後に P0 まで戻す様子を示した図です。図 1 のように工
具を移動させる指令を、アブソリュート方式とインクレメンタル方式で
比較して表1に示します。P0がワーク座標系原点で1マスは10mmです。

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図1:XY平面図 +Y

50

P2
P1

-50 P0 50 +X

P4

P3

-50

表1:各方式による指 移動先 アブソリュート方式 インクレメンタル方式


P0 → P1 X 40.0  Y 20.0 X 40.0 Y 20.0
令値
P1 → P2 X-30.0 Y 30.0 X-70.0 Y 10.0
P2 → P3 (X-30.0) Y-30.0 (X 0)   Y-60.0
P3 → P4 X 20.0 Y-20.0 X 50.0 Y 10.0
P4 → P0 X 0  Y 0 X-20.0 Y 20.0

座標値で工具の位置がすぐに分かるアブソリュート方式がプログラミン
グの基本となります。P2 から P3 への移動では、X 軸は動いていないた
め両方式ともに指令を省略することができます。インクレメンタル方式
では、今回の例のように工具が始点 P0 から動き始めて P0 へ戻る場合、
座標軸ごとに指令値を全て足すとゼロになるため、指令値に誤りがな
いかチェックできます。
アブソリュート方式とインクレメンタル方式の切り替えについては、工作
機械により異なります。

NC 旋盤ではアドレスを変更して切り替えます。メーカにより G コードで
切り替えるものもあります。

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・アブソリュート方式ではアドレス X と Z により指令します。
・インクレメンタル方式ではアドレス U(X 軸方向)と W(Z 軸方向)
により指令します。

マシニングセンタでは G コードで切り替えます。
・アブソリュート方式では G90 を指令し、アドレスX、Y、Z により指令
します。
・インクレメンタル方式では G91 を指令し、アドレスX、Y、Z により指
令します。

2. 各種機能
1)O:プログラム番号
プログラム番号とは特定のプログラムを識別するための番号です。アド
レス O のあとに 4 桁以内の番号をあたえ、プログラム先頭に付けます。
O8000 番台や O9000 番台など、メーカや機種によりプロテクト(保護)
可能な番号があり、通常編集されたくないマクロプログラムやメンテナ
ンスプログラムなどで使われます。メーカによってはプログラム番号の
代わりにファイル名で管理ができる機種もあります。

また、
丸括弧でコメントを入れることが可能です。NC プログラムは通常、
NC 装置のメモリと呼ばれる記憶領域に保存し、そこから実行して加工
を行います。保存されているプログラムは一覧画面で確認できますので、
プログラム番号のあとにコメントを入れておくと管理しやすくなります。
丸括弧を付ければ、プログラム中のどこでもコメントを入れることが可
能で、機械の動きには影響しません。

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図2:丸括弧によるコ
【入力例】
メント入力例

O100(TEST-CUT-PRO);

G90 G17 G54;

N10(D20-DRILL);

G00 X0 Y0 S1000 M03;




2)N:シーケンス番号
シーケンス番号とは、ブロックの位置をあらわすための番号です。アド
レス N のあとに 4 桁以内の番号をあたえ、ブロックの先頭に付けます。
必ず付ける必要はありませんが、NC 操作盤のサーチ機能を併用すると、
編集したい箇所を簡単に探すことができます。各工程の先頭に目印とし
て付けるとプログラムが見やすくなります。

図3:シーケンス番号
【入力例】
の入力例

O100(TEST-CUT-PRO);

N10(D20-ENDMILL-ROUGH);

G90 G54 G00 X0 Y0;




N20(D10-ENDMILL-FINISH);


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3)S:主軸機能
主軸機能とは、主軸の回転数を指令するもので、アドレス S に続く数値
で指令します。指令値は一分間あたりの回転数で、単位は min-1
(rev/min)です。指令できる最低主軸回転数と最高主軸回転数は機種
によって異なります。一度指令された回転数は変更されない限り保持さ
れるモーダル情報となります。
NC 旋盤の場合は周速一定制御機能により加工することが多く、その場
合はアドレス S のあとに周速(m/min)
、すなわち切削速度を指令します。

4)F:送り機能
送り機能とは、工作物に対する工具の送り量または送り速度を指令する
もので、アドレス F に続く数値で指令します。NC 旋盤の場合は通常、
工作物一回転あたりの送り量(mm/rev)
、フライス系加工であるマシニ
ングセンタの場合は送り速度
(mm/min)
を指令します。主軸機能と同様、
モーダル情報です。

5)T:工具機能
工具機能とは、使用する工具を呼び出すために指令するものです。ア
ドレス T のあとに各工具に割り当てられた工具番号をあたえて指令しま
す。NC 旋盤の場合、
メーカや機種により2 桁や 4 桁、
6 桁の番号があり、
その番号には工具番号のほかに、工具形状補正番号や工具摩耗補正番
号が含まれます。マシニングセンタの場合は、自動工具交換装置のツー
ルマガジンに格納できる工具本数により番号の桁数は変わり、100 本以
上格納できる機種は 3 桁まで使用できます。工具形状補正とは、ワー
ク座標系原点を決め座標系を設定する補正機能です。また、工具摩耗
補正とは、工具が摩耗したときなどに工具の刃先を補正して製品寸法を
調整する機能です。

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3. Gコード
G コードは準備機能と呼ばれ、指令されたブロックにおける工具の動き
やモードを指定します。アドレス G のあとにコード化された 2 桁の数値
で指令します。表 2 は NC 旋盤、表 3 はマシニングセンタの G コード
一覧です。表以外にも、機種やオプションなどの仕様により、3 桁のコー
ドも含めて多数あります。

表 2:Gコ ー ド 一 覧 G コード グループ 機  能


G00 位置決め(早送り)
(NC旋盤)
G01* 直線補間
01
G02 円弧補間 CW(時計回り)
G03 円弧補間 CCW(反時計回り)
G04 00 ドウェル
G28 00 リファレンス点復帰
G32 01 ねじ切り
G40* 自動刃先半径補正キャンセル
G41 07 自動刃先半径補正 左
G42 自動刃先半径補正 右
G50 00 座標系設定・主軸最高回転数設定
G90 外径・内径旋削サイクル
G92 01 ねじ切りサイクル
G94 端面旋削サイクル
G96 周速一定制御
02
G97* 回転数一定制御
G98 毎分送り指令
05
G99* 毎回転送り指令

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表3:Gコード一覧(マ G コード グループ 機  能
G00* 位置決め(早送り)
シニングセンタ)
G01 直線補間
01
G02 円弧補間 CW(時計回り)
G03 円弧補間 CCW(反時計回り)
G04 00 ドウェル
G17* XY 平面指定
G18 02 ZX 平面指定
G19 YZ 平面指定
G28 リファレンス点復帰
00
G30 第 2 ∼ 4 リファレンス点復帰
G40* 工具径補正キャンセル
G41 07 工具径補正 左
G42 工具径補正 右
G43 工具長補正 +
G44 08 工具長補正 −
G49* 工具長補正キャンセル
G54* ∼ G59 14 ワーク座標系 1 ∼6選択
G65 00 マクロ呼び出し
G66 マクロモーダル呼び出し
12
G67* マクロモーダル呼び出しキャンセル
G73 ∼ G89 固定サイクル
09
G80* 固定サイクルキャンセル
G90* アブソリュート指令
03
G91 インクレメンタル指令
G92 00 ワーク座標系の設定
G98* 固定サイクルイニシャルレベル復帰
10
G99 固定サイクル R 点レベル復帰

G コードは、機能として次の 2 つに分けることができます。

・ワンショット
指令されたブロックでのみ有効(00 グループの G コード)

・モーダル
一度指令されると、次に同じグループの別の G コードが指令されるま
で有効(00 グループ以外の G コード)

モーダルな G コードは、NC 装置の電源投入時やリセットボタンを押し


た際に初期状態になります。一覧表の各グループにおいて、* 印がつい
ている G コードが初期状態で選択されているコードです。G コードは、

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異なるグループであれば、同一ブロック内にいくつも指令することがで
きます。もし間違えて、同一グループの G コードを同じブロックに指令
した場合は、最後に指令したものが有効となります。

4. Mコード

M コードは補助機能と呼ばれ、主軸の正転・逆転・停止やクーラント
の ON・OFF など、機械側の個々の機能を制御するコードです。アドレ
ス M のあとにコード化された 2 桁の数値で指令します。表 4 に M コー
ド一覧(NC 旋盤・マシニングセンタ共通)を示します。表以外にも、
機種やオプションなどの仕様により、3 桁のコードも含めて多数あります。

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表4:Mコード一覧 M コード 機  能 内  容 動  作
プログラムの終了に関するコード
プログラムで指令された全
M02 プログラムエンド ての動作が停止し、NC 装置 A
はリセット状態になります。

M02 と同様の機能です。た
だし、NC 装置のリセット後、
M30 プログラムエンド 現在選択中のプログラムの A
頭出し(リワインド)をしま
す。

プログラムの一時停止に関するコード

プログラムで指令された全
ての動作が停止します。停止
する前のモーダ ル情報は全
M00 プログラムストップ て保持されていますので、起 A
動ボタンによりプログラム
途中からの再起動ができま
す。

M00 と同様の機能です。た
だし、NC 操作盤のオプショ
M01 オプショナルストップ ナルストップスイッチが A
ON の時のみ有効となりま
す。

主軸の回転に関するコード
M03 主軸正回転 主軸を正回転させます。 W
M04 主軸逆回転 主軸を逆回転させます。 W
M05 主軸停止 主軸の回転を停止します。 A
クーラント(切削油)の ON・OFF に関するコード
クーラントポンプを起動し、
M08 クーラント ON W
クーラントを供給します。
クーラントポンプを停止し、
M09 クーラント OFF クーラント供給を停止しま A
す。
サブプログラムに関するコード
サブプログラムを呼び出し、
M98 サブプログラム呼出し A
実行します。
サブプログラムを終了し、メ
M99 サブプログラムエンド A
インプログラムへ戻ります。

M コードの機能分類として次の 3 つに分けることができます。
・指令されたブロック内の工具移動指令と同時に機能が動作するもの。
(表中の W:WITH)
・指令されたブロック内の工具移動指令が完了した後に機能が動作する
もの。
(表中の A:AFTER)
・ブロックに M コードのみ単独で指令しなければならないもの。

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M コードは 1 ブロックに 1 個指令します。最近では複数個を指令できる
機種もありますが、プログラムの互換性を考えるならば、1 ブロック 1
個で作成します。

図4:Mコードの入力
【入力例】

G01 X100.0 Y200.0 F100 M08;

S1000 M03;


G00 Z100.0 M09;

M05;


M00 や M01 についている 0 はリーディングゼロと呼ばれ、M0 や M1


のように省略ができます。

いかがでしたか? 今回は NC プログラムの G コードや M コード、そ


の他のコードの意味と具体的な指令方法について解説しました。次回
は、NC 加工の段取り作業について解説します。お楽しみに!

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NC の基礎知識 4:
NC コード
初版 2019 年 6 月 20 日

著者: 中国職業能力開発大学校 生産機械システム技術科 
能開教授 古城 良祐

発行元: 株式会社イプロス Tech Note編集部


E-mail:media@ipros.jp
URL:https://technote.ipros.jp/

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