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鈴木:サンパウロの魅力~体験記

◆ サンパウロ・留学体験記 

サンパウロの魅力~体験記

鈴 木 達 郎

 2013 年 11 月 4 日に立教大学とサンパウロ大学間で協定が結ばれ、両大学間で学生交流が行わ
れることとなりました。私は、2009 年 3 月に法学部法学科を卒業しましたが、在学時代に、こ
のような魅力的な制度はありませんでした。そのため、在学時代にブラジルの文化的な多様性
に魅せられた私は、別のスキームで、1 年間、サンパウロ市内にある法律事務所で研修生活を送
りました。現在は、ご縁があり、この法律事務所で昼間働き、夜は、とある私立大学法学部で、
ブラジルの法律を基礎から学んでいます。
 私の紹介はさておき、皆さんはブラジルについてどんなイメージを持っているでしょうか。
2014 年に開催されるワールドカップ、2016 年のオリンピック、カーニバル、アマゾンの大自然、
BRICSを占める南米の新興国というイメージでしょうか。私が今まで通算 4 年間、ブラジルで生
活して得たブラジル(私の場合は、サンパウロのイメージといったほうが良いかもしれません)
に対する新しいイメージは、ブラジル人は、好奇心旺盛で、勤勉であるというものです。ブラ
ジルは、経済的な躍進を背景に、中間層の厚みが増していますが、まだ国民の間の貧富の格差
が激しい国です。地域的な経済格差(例えば、北東部とサンパウロがある南東部間)、人種間の
社会的格差(例えば、サンパウロ大学には、黒人教官がまだ 5 名しかいないという事実)等、様々
な格差が存在する国でもあります。人種間(特に黒人に対する)、地方(例えば北東部)出身者
に対する差別等がいまだ存在する国でもあります。しかし、こういった社会的な対立がプラス
の力を社会に与えていることも事実です。例えば、私の通う夜間大学のクラスには、一日働い
てから、授業に来る人たちが 8 割くらいなのですが、授業中には、常に先生を質問攻めにしま
す。授業料を出している分の知識は吸収したいという気迫と、卒業して社会的に這い上がって
やるという熱気が教室を取り巻いています。最初は、カオスだなと、辟易していましたが、教
室の友人や先生たちと大学生活を共有していくうちに、大学がブラジルにある社会的な対立点
を個人の努力で解決していく一つのチャンス、自身の未来を今より良くしたいという思いを実
現する一つの通過点なのだということに気づきました。まだ社会的な対立軸が多いので、社会
が何かをしてくれるという気持ちを持っている人は絶対数として少ないと思います。そのため、
大学という教育機関が社会的な対立軸を緩和又は少なくしていくという働きをしているのだと
思います。社会的な対立や圧力を皆さんもサンパウロで肌で実感することがあると思いますが、

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立教大学ラテンアメリカ研究所報 第 45 号

留学生活の中で、こういった負のパワーをプラスのパワーに変えていけるブラジル社会の若さ
やダイナミックさをぜひ感じていただきたいです。
 大学の 4 年間のうちの 1 年を地球の裏側にあるブラジル、しかもサンパウロで過ごすという選
択をするのは、簡単なことではないかもしれません。大学の授業、ゼミ活動、部活、サークル、
アルバイトやインターン、就職活動、国家試験対策、友達との飲み会、彼女(彼氏)との恋愛等、
日本での大学生活は毎日が充実しているに違いありません。1 年のブランクを海外でというのは
リスクがあると思う人もいるでしょう。しかし、本当に大学時代にしかできないことがあると
思います。今までの自分像、そして、今の時点で予測可能な自分の将来像を描いている人もい
るでしょう。大学の 4 年間で、皆さんにぜひ試していただきたいのは、暗闇への跳躍です。今ま
でのステレオタイプをリセットして、人間としての幅を引き伸ばすことのできる機会、それが
海外留学の醍醐味だと思います。飛び出す先は、暗闇でしかないかもしれませんが、飛び出し
た後は、皆さんが、ご自分の絵を描いていけばよいと思います。ブラジルで描く絵は、今まで
日本で描いてきた絵とは違ったカラーが出てくると思います。
 英語圏への留学とは違い、南米への、そして、ブラジルへの留学というと、治安面は大丈夫
だろうかと心配なさる方も多いと思います。私の場合ですが、通算 4 年間サンパウロで生活して
いますが、犯罪の被害にあったことはありません。それはなぜかというと、地元の人が危険だ
という場所には行かない、夜の一人歩きは避ける、注目を浴びるような服装で歩かない等の基
本的なことを毎日してきたからだと思います。基本的なことを守れば、犯罪に巻き込まれるこ
とはありません。これは、日本でも同じことだと思います。皆さんが通うことになるサンパウ
ロ大学へは、法学部を除いて、大学都市(cidade universitária)キャンパスに各学部があります
ので、地下鉄(大学最寄駅を走る路線は、最新の冷暖房完備の車両で、駅構内には、ガードマ
ンがいますので、安全です)とバス(最寄り駅から各学部前まで)で移動できます。法学部は、
セントロ地区にありますので、基本的に、安全な地下鉄のみの移動で大丈夫だと思います。
 サンパウロ州は、日系移民やその子孫(6 世まで誕生していると聞いています)が集中して住
んでいる州で、特にサンパウロ市には、国外最大の東洋人街(リベルダージ地区)があり、日
本食レストラン(自家製麺のラーメン屋まであります)から雑貨店、しょうゆ、みそ、納豆、
豆腐、漬物、各種弁当、日本からの輸入品(カレー、ラーメン、調味料、お菓子等)を売るスーパー
等があり、日本食が懐かしくなったときには、重宝です。また、日系の諸団体があり(文化福
祉協会、都道府県連合会、各県人会等)、何か困ったことがあれば、日本語で相談ができるよう
になっています。また、サンパウロ立教会(立教大学を卒業した移住者や駐在員が会員)も組
織されておりますので、些細なことでも、ご相談ください。こういったことからもサンパウロ
市は、世界で一番日本人に理解があって、過ごしやすい都市であると言ってもいいと思います。
 言葉のことですが、南米でトップクラスのサンパウロ大学の先生や学生とは、いざとなれば、
英語で意思疎通が可能だと思いますが、学生生活以外では、基本的には、ポルトガル語を使っ
ていくことになると思います。私は、ブラジルに行く前に、ポルトガル語の知識はありません
でした。そのため、半年前から、文法のみを一通り勉強していきましたが、最初の 1 ヶ月は、耳
も慣れていないため、ブラジル人が何をいっているのか分かりませんでしたが、3 ヶ月目以降か

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鈴木:サンパウロの魅力~体験記

ら、だんだんと会話も弾むようになり、帰国直前には、CELPE-BRAS(ブラジル文部省が実施
している外国人のためのポルトガル語検定試験)の中級対策ができるくらいまでになっていま
したので、心配する必要は全くありません。現地に飛び込んで慣れていけば、大丈夫です。ブ
ラジル人の友達を作っていく中で、理解度は、格段に早くなります。もうすでに、ポルトガル
語を勉強しているという方は、4 月と 10 月にあるCELPE-BRASを受験することをお奨めします。
 だらだらと長文になってしまいましたが、言いたいことは、新興国ブラジルで、1 年間、将来
のブラジルを動かしていくこととなるサンパウロ大学(大統領、キャリア官僚、著名な学者を
数多く輩出)の学生と机を並べて、共に学び、時には、議論して、皆さんの大切な大学 1 年間を
充実したものにしましょうということです。この地球の裏側での 1 年間は、今後の社会人生活、
人生の大切な糧となること間違いありません。
 では、サンパウロの街角で、皆さんとカイピリーニャを片手に、語り合える日を楽しみにし
ています。Boa sorte. Seja bem vindo à cidade de São Paulo!!!!

*本稿は立教大学とサンパウロ大学の大学間協定が締結された 2013 年末に執筆されたものであ


る。

(すずき たつろう 本学法学部 2008 年度卒業生,サンパウロ在住)

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