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書籍画像 桐野夏生 (2004年3月25日掲載)


『OUT』『柔らかな頬』『光源』『リアルワールド』『グロテス
ク』…次々と名作を私たちに届けてくれる作家、桐野夏生さん。時代
を鋭くえぐった社会的な衝撃作であると同時に、上質なエンターテイ
ンメント小説でもある桐野ワールドに惹かれる読者は数知れない。昨
年、いわゆる「東電OL事件」をモチーフとした大作『グロテスク』を
発表した桐野さんが、早くも次の作品を出版した。最新作『残虐記』
は、新潟の少女監禁事件に想を得て書かれたもので、またもや、衝撃
の話題作となっている。桐野作品にしてはコンパクトだが、構造も心
残虐記
理描写も非常に複雑で「小説を読む面白さ」を存分に堪能できる仕上
新潮社
2004年2月発行 がりだ。今年は『OUT』で米国ミステリー界の、というより、世界の
221P 20cm ミステリー界最高の名誉とされる、エドガー賞に日本人初のノミネー
ISBN:4-10-466701-3
トという快挙を成し遂げ、周囲は受賞の期待でいっぱい。しかし、ご
価格:1,470円 (税込)
本人は授賞式を「アカデミー賞の渡辺謙さんのように楽しんできま
す」とあくまで自然体で臨むつもりだそう。そんな桐野さんに話を伺
ってきた。
この書籍の一部を読むこと
ができます。
プロフィール
・画像版(10ページ)
桐野夏生
・PDF版(約
1951年石川県生まれ。'93年、『顔に降りかかる雨』
1.07MB)
で第39回江戸川乱歩賞を受賞。'97年、『OUT』が
PDFについて
「このミステリーがすごい!」の年間アンケートで
第一位を獲得し、翌年、日本推理作家協会賞を受
関連書籍
賞。'99年、『柔らかな頬』で第121回直木賞を受
・ 桐野夏生の関連書籍 賞。'03年、『グロテスク』で泉鏡花文学賞を受賞。
2004年には、『OUT』でアメリカのエドガー賞に日
書籍検索
本人として初めてノミネートされ、注目を集めてい
る。『ファイアボール・ブルース』『リアル・ワー
検索 ルド』『ダーク』他、著書多数。
すべて 書籍名 ・ 公式サイト:BUBBLONIA
著者名 ISBN
インタビュー
――幼い女の子を若い男が監禁するという『残虐記』のモチーフは、
新潟で実際にあった監禁事件を彷彿とさせますが、あの事件が執筆の
きっかけとなったのでしょうか。

https://web.archive.org/web/20050330022850/http://books.yahoo.co.jp/featured/interview/20040325kirino/01.html 1/3
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「いえ、たまたまあの事件があった、という感じです。映画にもなっ
たジョン・ファウルズの『コレクター』を昔、とても面白く読んだ記
憶があったので、もともと監禁小説というものを書いてみたいと思っ
ていました。それで、『残虐記』執筆前に『コレクター』を読み直し
てみたんですが、あまり面白くなかったんですよね(笑)。あれ?
前に読んだ時は面白かったのになぜだろう、と考えてみて思ったの
は、あの作品は監禁する男の側の話なのに、掘り下げられていない。
私は、閉じ込められた人間が何を思うか、に興味があります。例え
ば、『コレクター』には監禁された女の子が媚を売る場面があるので
すが、男は逆にそんな彼女に嫌悪を感じるように描かれている。でも
私は、本当にそうだろうか、と思った。もちろん、何が本当かどうか
は誰にもわからないけれども、極限状況の中で人はどんなふうに考え
生きるのかを、描いてみたくなったんです。そう思っていた時に新潟
の事件があったので、少し調べてみました。あの女性は文章が非常に
上手で言葉を持った人だ、と聞いて。もしかすると、閉じ込められて
いる中で言葉が増殖していくということはあるかもしれない、という
仮定を持ちました」

――そう考えると、『残虐記』の主人公が小説家という設定は自然で
すね。

「『事件を経て今どうやって生きているのか』を主人公に回顧させ、
語らせるわけですから、やはり話の仕方が巧みなほうがいい。だか
ら、小説家にしました。ですから、そういう意味では、あの新潟の事
件は確かにヒントになっています。事件の実際は誰もわからないけれ
ど、何が起きていたんだろう? という他人の興味と妄想のシャワー
を浴びて主人公は生きていくわけです。『皆、いろいろ想像している
んだろうなあ』と想像する自分が嫌でいたたまれなくなることがある
んじゃないか。そこを書いたら、嫌な小説かもしれないけれど面白
い」

――雑誌『新潮』4月号の松浦理英子さんとの対談で、この小説は「女
や子どもがどうやって素手で戦うかという物語ではあると認識してい
ます」と発言なさっていますが、この発言について詳しくお話いただ
けますか。

「主人公の少女は大人の男の欲望にぶち当たり、それがどういうもの
なのかを想像します。つまり、自分にはない欲望について想像するの
です。想像力がなくて欲望だけある人は、ある意味で犯罪者だと思う
のですが、想像力を働かせるという方法こそ、想像力を持たず欲望だ
けがある人物と戦う手段になりえるんじゃないか、と思いました。そ
して、欲望に取り囲まれ、肉体的にも精神的にも奪われるのは常に弱
い者――男性よりも、やはり女性や子どもであると思うのです。その
闘争が残虐なのです」

https://web.archive.org/web/20050330022850/http://books.yahoo.co.jp/featured/interview/20040325kirino/01.html 2/3
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――主人公を監禁する健治も子ども時代に欲望の標的にされていたか
もしれない、と主人公は想像していますね。もし、主人公の想像通り
だったとすると、子ども時代、健治自身は想像力で立ち向かわなかっ
たことになるわけですが、彼は想像力という武器を持てなかったとい
うことでしょうか。

「想像力を持つというのは特権です。対談で松浦さんに指摘されて、
私も初めて気づいた点に、言葉の問題があります。監禁当時、小学四
年生だった少女・景子と、学習する機会を奪われたまま大人になった
健治は、二十五歳なのにほとんど言葉のレベルが同じなんです。むし
ろ景子のほうが高いくらいです。多くの言葉を持たない者が想像力を
持つのは、難しい気がします。だから健治も、言葉を使って想像力の
毒の芽を発芽させることはできなかったのでしょう。でも、これは無
意識に書いてしまったんです。意識的な設定ではありませんでした。
不思議なものです」

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