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555 油 の破壊 確率 分布 とV-t特 性

UDC 621.315.615.2
.015.51:537.528
論 文
50-B69
変 圧 器 油 の 絶 縁 破 壊 確 率 分 布 とV-t特 性

東京芝浦電気株式会社 池 田 正 己

東京芝浦電気株式会社 毛 受 新 一

東京芝浦電気株式会社 村 野 稔

破 壊 確率V―t特 性 が 問題 に な る。 と こ ろ が,従 来
1. ま え が き
発 表 され たV-t特 性 は平 均破 壊V-t(い わ ば,50%
周知 の よ うに,CIGRE(国 際電 力 網会 議)は1974 破壊 確 率V-t)で あ る。 平均 破 壊V-tと 低 破壊 確 率
年 パリ 大 会 の 推 奨 テ ー マの一 つ と して,電 力 技術 の統 v-tが 平 行で あ る,す な わ ち,短 時間 域 と長時 間 城 で
計 的 ア プ ロー チ に 関す る論 文 を募 集 したが,絶 縁技 術 の,絶 縁破 壊 電 圧 の ば らつ きが 同 じで あ るか 否 か は こ
の それ は な く,時 期 尚早 の よ うで あ った(1)。しか し, れ まで 確 め られ て はい な い。
絶 縁 破壊 を 統 計 的 に と りま とめ よ う とす る動 きは除 々 本 研究 は,供 試油 ギャッ プに10秒 間,1分 間,10
に で はあ るが活 発 にな りつ つ あ る(2)。筆 者 らは 油入 絶 分 間,1時 間,10時 間AC一 定電 圧 を100∼500回 印
縁電 力 機 器 の統 計的 絶 縁 設 計法 を 確 立 す べ く,そ の 加 し,印 加 回数 とそ の うちの 破壊 回 数 の割 合 を求 め る
第一 段 階 と して,変 圧 器 絶縁 油 の 絶 縁 破 壊特 性 に つ とい う実 験 手 法に よ り,各 時間,各 電圧 の破 壊 確率 分
いて,ボ リュ-ム セ オ リと い う概 念 に よ り,体 系 化 を 布 を 求 め,そ れ らの 同一 破 壊 確率 電 圧 を結 ぶ こと に よ
試 みた(3)-(5)。 り,所 の破 壊 確 率V-t特 性 を 求 め,油 のV-t特 性
と ころで,500kV変 圧器 につ い て は1分 間 の 商 用 の 傾 き,飽和 特 性,さ らに,破 壊 電 圧の ば らつ きへ の
周 波耐 電 圧 試 験 に 加 えて,1.5E(E:常 規 対 地 電 圧) 時 間 の効 果 を明 らか に しよ うとす る もの で あ る。
1時 間 の 長 時 間 耐 電圧 試 験 が 行 な われ て い る。 そ の 試 油 の絶 縁破 壊 電 圧 は,油 中水 分,ガ ス量,不 純 物 あ
験 電 圧 を 決 め る うえ に,変 圧 器油 のV-t特性 が十 分 るい は温 度 とい った よ う な 多 く条 件 に よ り影 響 され
に考 慮 され て い る(6)。す な わ ち,V-t特 性 の 傾 きと飽 る(7)-(9)。これ ら の諸 条件 を運 転 中 の超 高 圧 変圧 器 内
和 傾 向の 有 無,飽 和す るま で の時間 と飽 和後 の 傾 きな の油 と同一 にす る た めに は実 際 の 変 圧器 内に 一種 のパ
どが詳 細 に 検 討 された 。 しか しなが ら,そ れ ま で発 表 イ ロ ッ ト油 ギ ャ ップを も うけ,破 壊 電 圧 を長 期 的 に追
され た 油 のV-t特 性 に 関 す る 実 験 デ ー タ は質,量 と 跡 調 査 す るの が理 想 で あ るが,実 施 は困難 で あ る。 そ
も,必 らず し も十 分 で な く,そ の 後,電 気 学 会 試験 電 こで,諸 条 件 の うち,油 中水 分,ガ ス 量,油 中不純 物
圧 標 準 特 別 委 員会 か ら高 電圧 試 験 専 門 委員 会 に変 圧 器 お よび温 度 条 件を 実 運 転器 と可能 な限 り,同 じに した
油 のV-t特 性 の 調 査 が 依頼 され て い る。 シュ ミレー シ ョン実 験 装 置を 実験 室 内に設 置 し,実 験

さて,変 圧 器 な ど油入 絶縁 機 器 は,通 常,工 場 絶 縁 を 行 な った 。 この 実験 にお い て,上 述 の諸 条 件 の各 々


試験 にお いて,小 さい危 険 率 で 合格 す るよ うに,絶 縁 が 油 の絶 縁破 壊 電 圧 やV-t特 性 に 及 ぼす 影 響 を 明 ら
設計 され る。 この た め,機 器 の絶 縁 設計に お い て,低 か にす るの で はな く,こ れ ら諸 条 件 が 複雑 に 影 響 を及
ぼ して い る実 運 転 器 内 の油 に つ いて,絶 縁 破 壊 確率 分

Breakdown Probability Distribution and V-t Characteristics of 布 とV-t特 性 を 求 め る の が本 実 験 の 目的 で あ る。


Transformer. By Masami. Ikeda, Member, Shinichi. Menju, 昼 夜 連続 で約1年 半 を か け て実 験 を行 な った が,こ
Member & Hitoshi. Murano, Member (Tokyo Shibaura
Electric Co., Ltd.) の 間,前 述 の諸 条件 以 外 の条 件 を 実 運 転 中の 変圧 器 と
池田正己:正 員,東 京芝浦電気株式会社重電技術研究所 同 じにす る よ うに十 分 な注 意を は ら った。
毛 受新 一:正 員,東 京芝浦電気株式会社重電技術研究所
村野 稔:正 員,東 京芝浦電気株式 会社重電技術研究所

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電 気 学会 論 文 誌B 556

2. 実 験 方 法 油 の絶 縁 破壊 電 圧 を定 期 的 チ ェ ックす るパ イ ロ ッ ト
油 ギ ャ ップ と してJISC2320で 定 め られ て い る12.5
<2・1> 供 試 油 お よび 油 循環 系 供 試油 はJIS C
mmφ,2.5mmギ ャ ップ長 の 球 ギ ャ ップを 用 い た。
2320,2号 油 を 用 い た。 供 試油 ギャ ップ は第1図 に示
<2.3> 高 電圧 実 験 装置 お よび実 験 管 理 方 法 高
した油 循環 系 の 油 ギ ャ ップ チ ェ ンバ 内 にあ る。 チ ェ ン
電 圧実 験 回 路 を第1図 に示 す 。AC電 圧 を10秒 ∼10
バ と油 入器 内の 油 は定 期 的 に循 環 され る。 この油 入 器
時 間,100∼500回 繰 り返 し 印加 し,破 壊 確 率分 布 を
と は電 力 用変圧器 で はな い が,500kV系 統 の対 地 絶
求 め る とい う単 調で 長 時 間を 要 す る 実験 で あ る ので,
縁 が 施 され て お り,用 い られて い る絶 縁 材 料,構 造 材
自動高 電 圧 実験 装 置を 用 いた 。 この実 験 装 置 は,第3
料 およ び冷 却 油 道方 式 と も電 力 用変 圧 器 に 酷似 して い
図 に示 す よ うな各 種 モ ー ドの 電 圧 を発 生 す る こ とがで
る(10)。こ の た め実 験 装 置 内の 油 に含 ま れ て い る不 純
き る。 こ こで,各 モ ー ド電 圧 を 次 の よ うに名 づ ける こ
物 の 質 お よび 量 は実 変 圧器 の そ れ と同 等 と毒 えて よ い
と にす る。
と思 わ れ る。この油 入 器 内 に ヒー タが 内蔵 され て お り,
○ ス テ ップ ア ップ 法 第3図(A)に 示 す よ うに,
内部 温度 が 外 部 よ り綱 御て き る。 また ゴム製 隔 膜 に よ
あ る電 圧 レベル で一 定 時 間保 持 し,耐 え たな らば次
る無 圧 密閉 形 油劣 化防止 コ ンサ ベ ー タを 用 い,超 高 圧
の レベル と階 段 的 に電 圧 を絶 縁 破 壊 が起 き るまで上
変 圧 器 なみ に 油 を外気 か ら完 全 に しゃ断 して い る。
げ る。N.S.U電 圧 あ るい はN.S.U法 と略称 す る
<2・2> 油 ギ ャ ップ 電極 系 供 試 油 ギ ャ ップ と し
こ とにす る。
て,平 等 電 界 お よび 不平 等 電 界 の2種 類 の油 ギ ャ ップ
○ ゼ ロステ ップ ア ップ 法 (B)図 に示 す よ うな モ
に つ いて 実 験 を行 な った。 そ れ ぞれ 電 極形 状 を 第2図 ー ド電 圧 で,各 レベル で 耐え た ら電 圧 を 零 に下 げ,
(A),(B)に 示 す 。電 極 材 料 は ステ ン レス(SUS27) 一 定時 間 休止 させ た 後
,次 に高 い レベル へ と電 圧を
で,電 極 表面 はJISO.85の 仕 上 げ を した。 平等 電 界
上 げ る。Z.S.U電 圧 あ る い はZ.S.U法 と略 称す
油 ギ ャ ップ の場 合,ギ ャ ップ長 の 不整 は10mm±1%
る こ とに す る。
で あ った 。
○ ラ ンダ ム ス テ ップ法 (C)に 示 す よ うな モ ー ド
電 圧 で,電 圧 レベ ル の順 序 を乱 数 に 基 づ き不規則 に
選 ぶ 。各 ス テ ップ 印加 後,Z.S.U法 と 同様 に電 圧

零 の 休止 時 間 を とる。R.S.U電 圧 あ るい はR.S.U
法 と略称 す る こ とにす る。
○ 直線 上 昇 法 (D)図 に示 す よ うに一 定電 圧 上 昇
速 度 で絶 縁 破 壊 す るま で上 昇 させ る。
コ ンデ ィシ ョニ ング実 験 に は直 線 上 昇 法 を 用 い た

が,本 実 験 は全てZ.S.U法 に よ った。 各 電 圧 レベ ル


の 設定 誤 差 を 定電 圧 装 置 の採 用 な ど に よ り,±1%以
下 に 抑 えた 。本 実 験 で は,油 ギ ャ ップの 繰 り返 し絶 縁
第1図 実験 回 路 と装 置
破 壊 に よ る累 積的 な電極 損 傷 や 油 の劣 化 な どの前 歴効
Fig.1. Experimental circuit and apparatus.
果 を な く し,各 実 験 に 独立 性 を 確 保す る こ とが,不 可
欠 で あ る。 そ の 目的 の た めの 対策 を以 下 に述 べ る。
(i) 高 電 圧試 験 用変 圧 器 の低 圧 側 に,サ イ リス ト
ダ イバ ー タ ギ ャ ップ を並 列 に 入 れ,油 ギ ャ ップの 破 壊

後 数 μsの うちに,破 壊 電 流 をバ イパ ス させ,電 極 の

(A) 平等電 界油ギャッ プ


(B) 不平 等電 界油 ギ ャ ップ

第2図 供 試 油 ギ ャ ップ 電極 形 状 第3図 各 種 モ ー ドのAC電 圧


Fig.2. Electrode configurations. Fig.3. Various mode AC voltages.

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557 油 の 破壊 確 率 分布 とV-t特 性

損傷 や油 の 劣 化 を最 小 限 に と どめ る。 に 近 くまで 下 が る。
(ⅱ) 絶 縁 破 壊 に より 生 じる気 ほ うや カ ー ボ ンな ど
の分 解 生 成 物 を す みや か に電 極 間 か ら除 去,清 掃 す る 3. 実 験 結 果お よ び検 討

た め に,供 試 油 ギ ャ ップ の下 方 で 油 中撹(か く)拌 機 <3・1> 実 験 管理 デ ー タ お よ び実 験 デ ータ の プ ロ ッ


を 回 わす 。 ト法 第4図 に第1次 コ ンデ ィシ ョニ ン グ実験 開始
(ⅲ) 油 チ ェンバ と油入 器 内の油 を 定期 的 に 循環 さ 時 点 か ら,平 等 電 界 油 ギ ャ ップ の全 実 験 が終 了す るま
せ る ことに よ り,チ ェ ンバ 内 総油 量 を 等価 的 に大 き く で の 実験 管 理 デ ー タを 示 す。 パ イ ロ ッ ト油ギ ャ ップの
し,多 数 回 の 絶縁 破 壊 に よ る1の 劣 化 の進 行 を 少 な く 破 壊電 圧 は終 始 安定 して いた が,供 試 油 ギ ャ ップ のそ
す る。 れ は コ ンデ ィ シ ョニ ング 実験 中 に増 加 傾 向を 示 した 後
(ⅳ) 油 分 析(油 中水 分,分 解 ガ ス 分析),パ イロ に安定 した。通 常,油 ギ ャ ップ の破 壊 電圧 は コ ンデ ィ
ッ ト油 ギ ヤ ップ お よ び 供 試 油 ギ ャ ップ のJISC2320 シ ョニ ン グ回数 と と もに増 加 す る傾 向 が あ るが,電 極
に基 づ く直 線 上 昇電 圧 によ る破 壊 実 験 を定 期 的 に実 施 表 面 の微 少 な 凹 凸 や気 ほ うお よ び電 極 内部 の 吸 蔵 ガス
し,油 の 劣 化 や 供 試油 ギ ャ ップ電 極 の 損 傷 を監 視 しな な どの絶 縁 上 の弱 点 が放 電 の繰 り返 しに よ り,除 々に、
が ら実験 を 進 め る。 取 り除 か れ るた め と も考 え られ る(11)。
<2・4> 処 理 条 件 お よ び実 験手 順 1図 の 油入 当初,50O回 の直線 上昇 法 に よ る第1次 コ ンデ ィシ
器 はタ ンク ご と乾 燥 され,循 環 系を 接 続後 真 空 注油 さ ョニ ング後,本 実 験入 りす るつ もりで あ った が,そ の
れた 。乾 燥,真 空処 理 は超 高圧 変 圧器 と同 じ管 理 基 準 後 の1,200回 の絶 縁破 壊値 は 不 安定 で あ った た め,コ
で行 な わ れ,注油 完 了 後 の 油 中 水分 は3ppm(油 温 ンデ ィ シ ョニ ング未 完 了 と判 断 して,こ の1,200回 の
10℃)で,油 中ガ ス 量 は0.5%で あ った 。
実 験 を 第2次 の コ ンデ ィ シ ョニ ング とみ な した。
実 験 順序 を 第1表 に実 験 内 容 と と もに示 した。 油 中水 分 は,油 入 器 の油 温 が室 温 に近 くな った と き
第1図 に 示 した油 中撹拌機 と ポ ンプ の運 転 は次 の よ に サ ンプリ ング し測 定 した。 油入 水 分 は4∼8ppmに
うに行 なわ れ た。Z.S.U法 の 休止 時 間 お よび 絶 縁破 変 化 して い る。 これ は,実 験 の進 行 中 の季 節 の 移 り変
壊 後 の清 掃 時 間 と して2分 間 を と り,前 半 の1分 間 だ わ りに伴 う温 度変 化 に よ り,油 中器 内 の絶 縁 物 水分 と
け油 中撹拌 機 を 回 わ した 。 ポ ンプ は第1表 の各 行 の実 油 中水 分 の平衡 状 態 が 変 わ る た め と解 釈 で き る。 こ
験 後,1時 間 運転 し,そ の 後1時 間 以 上 放 置 して か ら, の 程度 の油 中水 分 の 変 化 は実 運転 中の電 力用 変圧 器 で
表 の 次の 行 の 実 験 へ進 め た。1時 間 の ポ ンプ運 動 に よ も,当 然 起 きて い る は ず で あ り,そ れ を 模擬 す るの
る送油 量 は,油 チ ェ ンバ の 油 量の 約3倍 で あ る。 も,本 実 験 の 霞的で あ る。
油入 器 の 内 蔵 ヒー タ は油 ギ ャ ップ の 実験 の進 行 とか 上述 の実 験 管理 デー タか らは第1次 ∼ 第10次 実験
か わ りな く,8時 間ON,12時 間OFFを 繰 り返 し まて の供 試 系 に状 態 変 化 はな い よ うに考 え られ るが,
た。た だ し,油 温 の 上 限 設定値 は60℃ で あ る。 油 温 本 実験 中の1分 間Z.S.U法 に よ る,合 計500回 破 壊
の上 が り具 合 は気 温 に よ り異 な るが,4∼6時 間で 上 電 圧値 に,増 加 あ るい は減 少 と い った一 定 の 傾 向が な
限値 に 上 が り,ヒ ー タOFF後8∼12時 間 で ほぼ気 温 い こと を連(runs)の 検 定 に よ り,確 か さ95%で 確
め て い る。
第1表 実 験 内答 お よ び順 序
Z.S.U法 によ る破 壊 確率 分 布Ps(Vi)はZ.S.U法
Table 1. Test details and sequence.
の 実験 結 果 か ら,次 の(1)式 で求 め られ る。

こ の シー ケ ン スを10回 繰 り返 し,そ れ ぞれ 第1次 ∼第10次 と名 づ 第4図 実 験 管理 デ ー タ


け る。 各 行 の 実 験方 注 に よ る総 実 験 回 数 は印加回 数列に示 した 回数
の10倍 である。
Fig.4. Test controldata.

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第2表 実験結果
〓...(1)
Table 2. Experimental results.
こ こで
,NはZ.S.U法 の 実 験回数,ni,njはi,j

番目 の 電 圧 レ ベ ルVi,Vjで 破 壊 した 回 数 で あ る。 い

ま,Viの 電 圧 を1回印 加 して 破 壊 す る 確 率,い わば

シ ン グ ル シ ョ ッ ト破 壊 確 率 の 分 布 をP(Vi)と す る。

ps(Vi)はZ.S.U法 に よ って, Viと い う 電 圧 レベ

ル 以 下 の レベ ル で 破 壊 す る 確 率 で あ るか ら,V1,V2,
…Viの 各電 圧 レ ベ ル の シ ン グ ル シ ョ ッ ト破 壊 確 率

を 積 算 して 求 ま る 。 ゆ え にps(Vi)とp(Vi)の との関

係 は,次 の(2)式 で 関 係 づ け られ る。 こ の 式 に お い

〓...(2)
て,p(Vi)が 確 定 して も, iの 数 の 大 小,す な わ ち,

階 段 的 に 上 げ る電 圧 ス テ ッ プ 幅 の 細 か さ に よ り,ps

(Vi)は 変 わ っ て し ま う 。 そ れ ゆ え,Z.S.U法 の 破壊

確 率 分 布ps(Vi)と い う 表 わ し方 は 普 遍 的 な もの と は

い え な い(14)。 今後,単 に 破 壊 確 率 分 布 と 称 す る 場合

は シ ン グ ル シ ョ ッ ト破壊 確 率 分 布p(Vi)を 指 す こと

に す る 。p(Vi)はZ.S.U法 の 実 験 結 果 を も と に,次

式 で 求 め,確 率 紙 に プ ロ ッ トさ れ る。

〓...(3) あ る 。mは シ ェ ー プ パ ラ メ ー タ と呼 ば れ,確 率 密度

関 数 の 広 が り,す な わ ち,ば ら つ きの 大 小 を 表 わ す 。
<3・2> 各 時 間 に対 す る破 壊 確 率分 布 平等 およ
そ してVoはV〓Voに お い て,確 率 が 零 に な る電 圧
び不 平 等 電界 油 ギ ャ ップ の10秒 間,1分 間,1時 間
を 表 わ し,ロ ケ ー シ ョンパ ラメー タ と いわ れ る。
と10時 間電圧 の実 験 結 集を 第2表 に示 し,そ れぞ れ
第5図 ∼ 第7図 の 回 帰 直 線 は 各 プ ロ ッ トの 散 ら ば り
前 節 で 述 べた 数 学 的処 理 に よ り,各 電 圧 の シ ングル シ
と,各 プ ロ ッ トの ウ ェ イ トを 考 慮 し た 最 小 自 乗 法 に よ
ョ ッ ト破 壊確 率 分布 を 求 め,そ り らを ワ イブ ル確 率 紙
っ て 求 め た も の で あ る 。 回帰 直 線 か ら近 似 ワ イ ブ ル 分
にプ ロ ッ トした(第5図 ∼第7図)。
布 の 各 パ ラ メ ー タ が 算 出 され る(16)。算 出 結 果 を 第3表
油 の 破壊 確 率 分布 は ワイ ブル 分布 に適 合 す る と いわ

こ示 し た 。10秒 間,1分 間,1時 間 お よ び10時 間電
れ て お り(5)(15)第5図 ∼ 第7図 の 実験 デー タ もよ く直
圧 の シ ェ ー プ パ ラ メ ー タmは お お よ そ8.0前 後 で,
線 上 に 乗 ってい る。 ワ イブ ル分 布 以 外 の正 規 分 布 や極
時 間 特 性 は な い よ うで あ る 。m≒8.0は 変 動係 数 で表
値 分 布,あ るい はガ ンマ分 布 な どは,油 の破 壊 の ば ら
わ す と15%に 相 当 す る。 この変 動 係 数 は油 の 破壊 電
つ き近 辺 で は,ど の分 布 もよ く似 て い る。 ゆ え に油 の
圧 の ば ら つ き と し て,大 方 の 認 め る値 よ り 大 き い(5)。
破壊 確 率 分布 が どの分 布 に 最 もよ く適 合す るか とい う
こ れ は,単 一 条 件 に コ ン ト ロー ル さ れ た油 に つ い て,
ことを 十 分 に小 さな過 誤 の もとで,数 理統 計 的 に 判定
す る こ とはで きな い し,物 理 的 現 象面 での 裏 づ け の な 第3表 ワ イブル パ ラ メー タの 推定 値
い限 り,あ ま り意 味の ない 議論 とい え よ う。 こ こで い Table 3. Estimated parameeers of Weibull

え る こ とは,実 験 デ ー タを ワイ ブル 分 布関 数 に 適 合 さ distribution.

せ て み た と こ ろ,工 学 的 に満 足 しう る程度 良 い 一致 を
みた の で,変 圧器 油の 絶 縁 破壊 確率 分 布 を ワ イブ ル分

布 で 体 系 づ けて も構 わな い とい う こ とで あ る。 電 圧 に
対 す る ワイ ブル 分布 は次 の(4)式 で 表 わ され る。
p(V)=1-exp〔−{(V−Vo)/V1}m〕...(4)
こ こ で,V1は モ ダ ー ル 値 で あ り,ワ イブル 分 布 の ス

ケ ー ル パ ラ メ ー タ と 呼 ば れ,強 度 の 基準 に な る電 圧 で

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559 油 の 破 壊 確率 分 布 とV-t特 性

短 期 間 に 実施 され た 実 験結 果 と比 較 し て の こ とで あ m=143S-1.08...(6)
る。 本 実 験 の よ うに 実 運 転器 内 の油 に 及 ぼす 油 中 水 時 間 に対 す るmあ るい はSの 関係 を 第8図 に 示 した
分,ガ ス 量,油 中不 純 物 お よび 油温 の影 響 を模 擬 した が,mは7.60∼8.35の 範囲 で ば らつ き,変 動 係 数で
油 につ い て の,長 期 間 に わ た る実験 で は この 程度 に大 表 現 す る と約15%と な る。 この図 よ り変 動係 数 は時
きな変 動 係数 に な る もの と解 釈 で き よ う。 間 にほ とん ど影 響 され な い とい う重要 な 結 論が 引 き出
当初,破 壊 確 率が 零 に な る電 圧Voを 見 い出 す こと され る。
を 実験 の一 つ の 重要 な眼目 に 置 き,0.2%破 壊確率と 筆 者 らは 以前 に直 線 上 昇AC電 圧 に よ り,破 壊 確
い う十 分 に低 い 確率 域 まで 調 査 した が,第5図 ∼ 第7 率 分 布 を 求 めた こ とが あ る。 その とき得 られ た変 動 係
図で 電 圧 の低 下 と と もに破 壊 確 率 も直 線 の ま ま垂 下 す 数 は8.15%で あ った(5)。この値 も第8図 に 示 した が,
る こ とか ら,Vo=Oと い う近 似 を せ ざ る を得 なか っ 本実験 の 一 定電 圧 印 加 の破 壊 確率 分 布 か ら求 め た変 動
た。 この よ うにVoが 見 い出 せ な か った の は供 試油 ギ 係 数 と比 べ は るか に小 さ い こ とか ら,一 定 電 圧 の破 壊
ャ ップ のStressed Oil Volumeが 小1平
さか った ため と 確 率分 布 は直線 上 鐸電 圧 の実験 結 果 で は 論 じられ な い
考 え られ る(5)(15)。 こ とが わか る。

破 壊 確 率 分 布 のば らつ き を示 す シ ェー プパ ラメ ー タ 第7図 に不平 等 電 界 油 ギ ャ ップ の実 験 結果 を 平 等電
mと 変 動 係 数S〔=(標 準 偏 差)/(平均値)(%)〕 との 関係 界 の1分間 の 回帰 直線 と比 較 して示 した 。不 平 等 電界
は(5)式 で 表 わ され,(6)式 で 近 似 され る。 の1分間 の 回帰 直 線 の み がや や 傾 きが 少 な いが,不 平

等 電 界 の10秒,1時 間 と も,平 等電 界 の1分 間 とほ


〓...(5)
とん ど同 じ傾 きで あ る。 第3表 にmを 比 較 したが,
平 等,不 平 等 電 界油 ギ ャ ップ と もほ ぼm≒8で 差 はな
い よ うで あ る。
<3.3> P%破 壊 確 率V-t特性 各時 間 にお け

第5図 単 等 電 界 油 ギ ャ ップ の破 壊 確 率 分 布
Fig. 5. Breakdown probability distributions
of uniformly stressed oil gaps.

第7図 不 平等 電 界 油 ギ ャ ップ の破 壊 確率 分 布
Fig. 7. Breakdown probability distributions
of non-unifomly stressed oil gaps.

第8図 絶縁
破壊 電 圧 の ば
らつ き の時 間
依 存性

第6図 平 等 電 界 油 ギ ャ ップ の 破壊 確 率 分布
Fig. 8. Time dependency on the variation
Fig. 6. Breakdown probability distributions
coeffient of breakdown voltages.
of unifomly stressed oil gaps.

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電 気 学会 論 文 誌B 560

る破 壊 確 率分 布 が 第5図,第6図 の よ うに求 め られ た の破 壊電 圧 で あ る。
ので,各 破 壊 確 率電 圧 をV-t特 性 の 形 式 で ま とめ る さて,こ こで見 方 を 変 えて,一 定時 間 を印 加 した場
ことが 可 能 で第9図 のp%破 壊 確 率V-t特 性 が得 ら 合 の破 壊電 圧 の 確 率分 布 か ら,V-t特 性 を統 計 的 に推
れ る。 この 図か ら明 らか の よ うに10分 まで は時 間 の 定 して み る。 単 位 時間 の 電 圧 に 対 す る 破 壊 確 率分 布
増 加 に対 して直 線 的 にp%破 壊 確 率 電 圧 は低下 し, p1(V)は 前述 の よ うに,次 の(8)式 で 表 わす こ とがで
10分 を 過 ぎた あた り か ら,破 壊 電 圧 の減 少 は飽 和 平 き る。式 中のmは 第3表 で示 した よ うに約8で あ る。
たん 化 す る。 さ らに時 間 が10時 間 前後 にな るとV-t p1(V)=1−exp{−(V/V1)m}...(8)
特 性 は ほ とん ど平 らに な って しま う。各 時 間 の破 壊 確 いま,油 ギ ャ ップ 系 に課 電 時 間 に対 して の何 ら状態 変
率 分布 が300∼5,500回 の実 験 に よ って 求 め られ た た 化 が な け れば,す な わ ち,独 立事 象 と して取 り扱 えれ
め,第9図 の各 点 の信頼 性 は か な り高 い。 第10図 の ばN時 間 印 加 した場 合 の 破壊 確率 分 布PN(V)は 単
斜 線 域 に よ り50%V-t特 性 の95%信 頼 区 間を 示 し 位 時 間をN回加 えた こ と と確 率 的 に は等 価 で あ るは
たが,た か だ か ±4∼10%の 幅 で あ る。 ず で あ り,確 率則 か ら次 の(9)式 で 求 め られ る。
第9図 の50%破 壊 確率V-t曲 線 上 の10秒 と1 1−pN=(1−pi)N

分,1分 と10分,10分 と1時 間,さ らに1時 間 と10


∴pN(V)〓1− 〔exp{−(V/V1)m}〕N (9)
時 間 の そ れぞ れ の点 間 で,(7)式に 基 づ く,べ き数n
(8),(9)式 でp1(N)=pN(V)=pと お き,そ れぞ れ
を 算 出 す る と,そ れ ぞ れ第3表 に示 した よ う に18,
のp%破 壊 確 率 電 圧Vp1とVpNvの比 が 次式 のよ う
18,21,37で あ る。(今 後,V-t特 性 の 傾 き を このn
に求 ま る。
によ って表 わ す こ とに す る(17)。)
Vp1/VpN=N1/m...(10)
(Va/Vb)n=tb/ta...(7)
こ こ で,Va,Vbは そ れ ぞ れV-t曲 線 上 の 時 間ta,tb 前述 の2N回 印 加 とい う ことを連 続N時 間 印加 した
と考 え れ ば,単 位 時 間 とN時 間 と の間 のV-t特 性
の傾 きは(10)式 のmと な り,電 圧 に対 す る ワ イブル
分布の シェ プ パ ラメ ー タ と等 し くな る。 この よ うに
して 破 壊電 圧 の ば らつ き か ら推定 したV-t特性 の傾
きを 第10図 の鎖 線 で 示 し,実 験 に よ って 得 ら れ た
V-t特 性 の傾 き と比 例 した。 明 らか に,両 者 のV-t特

性 の 傾 き は異 な る。 これ まで 発表 され た 油 ギ ャ ップの
V-t特 性 の傾 きを 全 て調 査 して も,第10図 鎖線 のよ

うに 大 き な傾 きは報 告 され て い な い(6)(17)(18)。
第9図 p%破 壊 確 率V-t特 性 油 ギ ャ ップの 破 壊 確率 分 布 か ら 統 計 推論 で 求 め た
Fig. 9. p% breakdown probability V-t V-t特 性 と実 験 で 得 たV-t特 性 が 違 う とい う こと は,
characteristics.
電 圧 が 零 の状 態 か ら電 圧 を 上 げ,単 位 時 間保 持 し,耐
え た な ら無 電 圧 に もどす とい う実 験 をN回 行 な うと
い う こ とと電 圧 を 上 げ て,N時 間 保持 す る とい う実
験 は等価 で はな い ことを 意 味 す る。 等価 で ない 原 因の
一 つ に電 圧 を 上 昇 させ る とい う過 程 の 影 響で はな いか

と考 え られ るが,電 圧 上 昇 中 あ る いは 上昇 後10秒 以
内に 生 じた絶 縁 破壊 を 実 験 結果 か ら除 いて も,や は り
確 率 分布 の傾 きは た い して 変 わ らず,や は りm≒8で
あ る。 したが って 電 圧上 昇 過 程 の 直 接 的影 響 で は な
第10図 50%破 壊 確 率V-t特 性 の く,本 質 的 に は電 圧 が 一 定 に な った後 の課 電 時 間 に対
信 頼 性 限 界 お よび 破 壊電 圧 のば らつ き して,油 の 状態 変 化 が な い,す な わ ち,各 時 間 域 と も
か ら推 定 され たV-t特 性
独立 事 象 と して 取 り扱 え る と い う前提 に 問題 が ある と
Fig. 10. Confidence limit of 50% breakdown
考 え られ る。V-t特 性 が 長時 間 域 で単 たん 化 す る こと
probability V-t characteristics and V-t chara-
cteristics estimated from breakdown voltage を考 え る と,こ の 状 態変 化 と は油 が水 分 や ガ ス を 吸 っ
variation. た り,部 分 放 電 の た め劣 化 した り とい った 課 電 時 間 に

<46> 95巻11号
561 油 の破壊 確 率分 布 とV-t特 性

対 して,蓄 積増 大 され る性 質 の もので はな く,逆 に, が,ど の時 間 領域 で もa<1の,い わ ゆ る初 期 故 障形


課 電 時 間 の 経 過 と と も,絶 縁破 壊 しに く くな る とい っ で あ る。
た状 態 変 化 で あ る と考 え られ る。 物 理 的解 釈 は容 易で <3・4> 変 圧 器長 時 間絶 縁 試 験電 圧 の検 討 前節
は な いが,油 ギ ャ ップ内 に存 在 して い た絶 縁 破 壊 の 引 で述 べ た よ うに,油 ギ ャ ップ の破 壊 特性 は初 期故 陣 形
き金 に な る欠 陥 が 静電 気 力 に よ って 取 り除 かれ る こ と と考 え れ ばV-t特 性 が 長 時間 域 で 傾 きが な くな る こ
によ り,絶 縁 破 壊 しに くい 状 態 に変 わ って い く。 あ る とが説 明 で き るが,偶 発故 障 と考 え る と特 性 は直 線 の
いは,油 ギ ャ ップ 内 に課 電 開 始 前 に存 在 して いた 欠 陥 ま ま低 下 し続 け るは ずで あ る。
が,課 電 開始 後,最 初 の10分 程 度 で 顕 在 化,す な わ Kaufman氏 は 変圧 器 の 絶 縁 試験 法 に つい て 重要 な

ち,絶 縁 破壊 とい う現 象 に な り,そ れ 以 上 耐 えた 油 ギ 提 案を 行 な ったが そ の 内容 の 一 つに,変 圧 器 油 のV-t


ャ ップで は,そ の ス トレスで 顕 在 化 す る程 度 の大 き さ 特 性 を根拠 に して,1.5E(E:常 規 対 地電 圧)に よ る
の 欠 陥が も と もと存 在 して い ない ケ ー スで あ る た め, 1時 間 な い しは2時 間 の長 時 間試 験 の 推 奨が あ る(19)。

10分 以 上 電圧 を加 え て もほ とん どの場 合 破 壊 しない 。 そ の バ ックデ ー タに な って い る の が,Crampに よる


な ど の解 釈 が 考 え られ る。 変 圧 器油 のV-t特 性 の研 究 で あ る(20)。Crampは 変
実験 法 と して,N.S.U法 を用 い ず,Z.S.U法 を用 圧 器 油 の絶 縁 破壊 を 偶 発 故障 と して取 り扱 って お り,
いた理 由 は,油 の絶 縁 破 壊 の 時間 依 存性 に この よ うな 「油 中 の電 極 系 は過 去 の ヒス テ リシスに影 響 され な い」

性 質 が あ る こ とを 重視 した か ら で あ る。 す な わ ち, とい う基本 前 提 を基 に議 論 を展 開 して い る。 この前 提
N.S.U法 の よ うに,低 ス トレス か ら除 々 に時 間 を か が な り立 て ば前 節 で述 べ た よ うに,V-t特 性の傾きは

けて,高 ス ト レ ス に 上昇 さ せ れ ば,上 述 の状 態 変 化 約8に な る はず で あ り,破 壊電 圧 は 長時 間 域 で もそ の


が,一 種 の エ イ ジ ング作 絹 とな って,実 験 デ ー タを乱 ま まの 傾 きで 限 りな く低 下 し続 け るはず で あ る 。 この

す おそ れ が あ るた め で あ る。 よ うに偶 発破 壊 論 で は油 のV-t特 性 の 傾 き 自体や そ

時 間 と電 圧 の両 方 を 含 め,拡 張 した ワ イ ブル 分 布 関 の平 たん 化 を説 明 で きな い。

数 は(11)式 で表 わ せ る(22)。 Kaufmanはn=25と し,(7)式 か ら検 証 時 間1年

p(ν,t)=1-exp{-(ν/ν1)m・(t/t1)a}...(11) 間 と して,1時 間1.45Eを 印 加す る こ とが 等 価 で あ


こ こで,t1お よびaは,そ れ ぞ れ,時 間 に 対 す る ワ る と算 出 した 。 こ こで1年 間 は 「
最 初 の6∼12か 月 無
イブル 分 布 の ス ケ ール お よ び シェー プ パ ラメー タ で あ 事 で あ った 変 圧器 は25年 以 上 寿命 を ま っ と うす る確
る。 ワイ ブル 分布 は信 頼性 工学 で 多用 され て い るが, 率 が 高 い」 とい う経 験 か ら割 り出 して い る。 しか し,
(11)式 のaの 値 に よ り,次 の よ うに故 障 あ るい は破 壊 我 が国 にお い て は,そ の妥 当姓 を適 切 に 評価 で きな い
の 性 質が 吟 味 で き る(16)。 (21)

a>1… …摩 耗 あ る い は疲 労 故 障形 で,時 間が 増 す と 変 圧 器 の絶 縁 事故 が 油 の絶 縁 破壊 に よ って起 こ る と


故 障 や 破 壊 す る確 率 が 増 加 し,あ る 時間 で ピー は単 純 に は いえ な い と思 うがKaufman氏 の仮 定 の よ
クに達 す る。 時間 に対 して状 態 変 化 が あ るわ け うに,油 の破 壊 に よ る もの とす るな らば,本 研究 で 明
で,部 分 放 電 劣 化V-t特 性 は この 形 に属 す る。 らか に され た油 の 破壊 の 時 間特 性 に 関 して の初 期 故 障
a=1… … 偶発 故 障形 で,故 障 や 破壊 が 起 こる のが 全 形 の性 質 はkaufman氏 の 経験 則 を 裏 づ けた もの とい
くの偶 発 的 確 率現 象 で あ り,時 間に 対 して,状 え る。
態 変 化 が な いた め,確 率 的V-t特 性 とい え る
(10)式 が 成 り立 つ 。
a<1… …時 間が 達 つ に つ れ,初 期 的故 障 が 出 つ くす

か,あ る い は良 化 され る ため除 々 に故 障 や破 壊
が しに く くな る。初 期 故 障 形 と呼 ばれ る。
と こ ろで,一 定 破 壊 確 率V-x特 性 は(11)式 の 第11図 V-t
{}内 を 一 定 に 置 くこ とか ら求 ま る。 特 性 の 傾 きの 時
V=kt-(a/m)...(12) 間依存性
k:定 数

第9図 のV-t特 性 の傾 きか ら,(a/m)が わか り,第


3表 で す で にmが 求 ま って い るか ら,各 時 間 領域 ご Fig. 11. Time dependency on inclination of
V-t characteristics.
との αが 算 出 で きる。 算 出 結果 を第3表 に書 き加 え た

昭50-11 <47>
電 気学 会 論 文誌B 562

こ とで あ る。 本 実験 の よ うに実 運 転 器 内 の油 の 破 壊 に

及 ぼす 油 中水 分,ガ ス 量,油 中不 純 物 お よ び油 温 の影
響 を 模 擬 した 油 に つい て の全 季 節 に わ た る長 期 間 の実
験 で は,こ の 程 度 のば らつ き に な る もの と考 え られ る。
(2)低 破 壊 確 率域 で 存在 が 予想 され た,そ れ 以下
の ス トレスで 破 壊 確率 が 零 に な るス トレス(ロ ケ ー シ
ョンパ ラ メー タ と呼 ばれ る)を0.2%破 壊確 率 域 まで
調 査 した が見 い 出 せ なか った 。

第12図 変圧 器 絶 縁 試験 電 圧 の検 討 (3) p%破 壊 確率V-t特 性 を 求 め た。V-t特 性

Fig. 12. Estimation of dielectric test voltage の 傾 き は10分 ま で はn=18で あ るが,10分 を越 え


for power transformers. る と平 たん 化 し,1時 間 と10時 間 の 間で はn=37と,
一方 ほ とん ど平 た ん とな る。
,電 気 学 会 試験 標 準 特別 委 員 会 のWG-Iは,
(4) 実 験 結 果 よ り,変 圧 器 油 の絶 縁 破 壊 は課 電 直
国 内 外で 報 告 され たV-t特 性 の 実験 デ ー タを 調査,
後 に起 こ り易 い,い わ ゆ る初 期 故 障形 で ある と推 側 さ
検 討 し,462∼468kV,1∼2時 間 とい う変 圧 器 の長 時
れ,V-t特 性 の傾 きの 平 たん 化 は この性 質 の た めで あ
間試 験 電 圧 お よび 時 間を 答 申 して い る。
る と考 え られ る。
このWG-IとKaufman氏 の 論 法 を参 考 に して,
(5) 電 気学 会試験 電圧 標 準 特 別 委 員 会WG-Iで
今回 求 め た油 ギ ャ ップの 実験 デー タ か ら,絶 縁 試 験 電
変 圧器 の 長 時 間試 験 電 圧 をV-t特 性 を基 礎 に して検
圧 を検 討 してみ る。
第11図 に油 ギ ャ ップ のV-t特 性 の傾 きの 時間 依 存 討 し,462∼468kV,1∼2時 間 の試 験 電圧 値 と試験 時

性 を示 した が,長 時 間 域 に な る ほ ど 傾 きは小 さ くな 間 を本 委 員 会 に答 申 して い る。

り,1時 間 と1O時 間の 間 で はn=37で あ る。10時 間 本 研 究 に よ って 得 ら れ た 変 圧 器油 のV-t特 性 の実

以上 の 長時 間 域 で はV-t特 性 が 低 下 し続 け る と仮定 験 デ ー タか ら同様 な 試算 を 行 な った と ころ,WG-Iの

す る。 実際 に はV-t特 性 の 傾 き は前 述 した よ うに初 答 申 した 試験 電 圧 値 お よび 時 間 は妥 当 で あ る こ とが 確

期 故 障 形の 性 質 の た め,n=37よ り平 たん 化 す る。 認 され た 。
V-t特 性 の 傾 きを大 きめ に仮 定 す る こ とは試 験 電 圧 を 終 わ りに,本研 究 につ い て ご指 導 と助 言 を賜 った慶

高 め に算 出 す る ことに な り,絶 縁強 度 を検 討 す る うえ 応 大 学 天 野教 授,東 京 芝 浦 電気 株 式 会社 重 電 技術 研 究

には 安全 側 で あ る。 この よ うにn=37の まま,1.5E 所 築 地所 長,村 田変圧 器 設 計部 長,矢 成 変 圧 器開 発設


1時 間 の試験 電 圧 を 第12図 の よ うに の ば す と1.033 計主 査 に 深 く感 謝 す る次 第 で あ ります 。
E,106時 間(114年)の 試 験 と等 麺 に な る。 (昭和50年3月31日 受 付,同50年7月21日 再 受 付)

以 上 の よ うに,WG-IやKaufman氏 の考 え 方 に従
って本 実 験結 果 か ら,変 圧 器 のAC長 時 間 試 験電 圧 文 献
を求 め る と,1.5E1時 間 と い う,ほ ぼWG-Iと (1)第25回CIGRE大 会 報 告:電 学 誌95,33 (昭50-1)

Kaufman氏 の結 論 と同 じ試 算 値 に な り,そ れ らの結 (2) た と え ば,Occhini:IEEE 71 TP 157-PWR

(3) Kawaguchi, et al: IEEE Trans, Power Apparatus Syst.


論の 妥 当性 が 確 認 され た 。 PAS-91,9 (1972-1)
(4) Murano, et al: IEEE C 73 029-6 (1973-2)
4. む す び (5) Murano, et al: IEEE C 74 236-6 (1974-2)
(6) 電 気 学 会 試験 電 圧 標 準 特別 委最 会WG-1報 告(昭47-7)
超 超 高電 圧 変圧 器 の 運 転状 態 と ほ とん ど同 じ状 態 を (7) 石 井 ・上田:電 気 学 会 論文 誌92-A,154 (昭47-3)
(8) E. T. Norris: Proc. Instn Elect. Engrs 428 (1963-2)
作 り出 しう る実験 装 置 を 用意 し,長 期間 に わ た り変 圧 (9) 堤,他:電 学 誌91, 2166 (昭46-11)
(10) 石田,他:昭50電 気 学 会 全 国大 会 No. 1258
器 油 の絶 縁 破壊 電 圧 を 追跡 した 。 そ の結 果,次 の知 見
(11) 電 気 学会 編:放 電 ハ ン ドブ ッ ク,改 訂新版 (昭49)
を 得た 。 (12) 清 水,他:変 圧 器,(昭41-4)日 刊工業新聞社
(13) 水 野:統計 の 基 礎 と 実際(昭45)光 生館
(1) 油 の 絶縁 破 壊 確 率 分布 は 課 電 時 間 に 依 存 せ (14) Sie, et al: IEEE Power Apparantus Syst. PAS-88 (1969-6)
(15) Higaki, et al: IEEE 1975 Winter Powe Meeting
ず,m≒8の ワ イブ ル分 布 で近 似で き る。m=8は 変 (16) 塩 見:故 陣 物 理 学入 門,日 科技連
(17) 井 関,他:電 学 誌81, 1060 (昭36)
動 係 数 で 表現 す ると15%に 相 当す る。 この変 動 係数 (18) 倉 橋,他:昭46電 気 学 会 東 京支 部 大 会No.168
(19) Kaufman, et at: IEEE Trans. Power Apparatus Syst.
は油 の破 壊 電 圧 の ば らつ き と して,大 方 の認 め る値 よ PAS-87, (1968-1)
(20) Cramp: MS.S. thesis
り大 き い。 これ は,単 一 条 件 に コ ン トロール され た油
(21) 電 気 協 同 研 究 会:大 容 量 変 圧器 事 故 防 止 対 策専 門 委員 会 資 料
に つ いて の 短期 間 に実 施 され た実 験結 果 と比 較 して の (22) 金 子:電 学誌95, 384 (昭50-5)

<48> 95巻11号

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