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流体の特性と流体機器 20201207 佐々木

流体と流体機器
流体とは、気体(空気や排ガスや水蒸気(飽和蒸気~過熱蒸気))、液体(水やアル
コールなど)(厳密な定義は違いますが)のことで両方混ざり合った状態の場合もある。

本プラントでも、空気、排ガス、蒸気、水などの流体の流量、圧力、温度などを目標の
値にする(自動制御でも手動においても)ことが運転の基本となり、これら流体の特性を
理解することが重要で、通常運転時のみならず、トラブル時にも原因の特定に役立つ。
また、流体の流量、圧力、温度などを目標の値にするために仕事をさせるのが流体機械
でポンプ、ファン、ブロワ、コンプレッサーなどが該当する。

流量と圧力の関係
1)高架水槽から配管で水面より下に流す場合

H(m)

流量 Q(m3/h)
配管出口から流れ出る流量 Q は、圧力差(この場合は、タンク水面と配管出口の圧力差
となり、配管出口は大気圧(ゲージ圧 0)でタンク水面の高さ分の水の圧力(水頭圧))
に比例して流れる。ただし、無制限に流れる訳ではなく、配管を流れる際の抵抗(配管内
面の摩擦抵抗や曲がりの部分で乱れによる抵抗)に応じて流量が決まる。
また、その抵抗は流速(多くの場合は 2 乗)に比例して大きくなるので、当然ながら配
管径が太くなると流速が下がり、抵抗が少なくなるから流量は増える。

流量は、圧力差(差圧)に比例 抵抗(流れにくさ)に反比例 抵抗は流速の 2 乗に比


これらは電気のオームの法則と類似で 電流 I = 電圧 E/抵抗 R
熱の流れも同じで 熱流量 Q=温度差 ΔT/熱抵抗 R

上の例の場合、配管中バルブが無く、水面はボールタップ等で一定に保たれるとすると
流量は一定(配管の形状による)、流量を制御しようとすると配管にバルブを設け、抵
抗を調節して、その結果、流量は制御できる。 水の代わりに空気だとどうなる?
2)ポンプで地下水槽の水を高架水槽へ揚程する場合
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吐出圧力 Pd
実揚程 Ha(m)
吸込圧力 Ps

流量 Q(m3/h)

地下水槽の水を高架水槽に持ち上げるには、前ページとは違い圧力を高めてあげない
と流れないので、ポンプが必要になる。
ポンプで、どれ位圧力を高める必要があるかを示す値が全揚程 H といい、実揚程 Ha と
損失抵抗 hl の合計となる。 H=Ha+hl
また、全揚程 H=吐出圧力 Pd-吸込圧力 Ps となる。

ポンプの全揚程と流量の関係を示す曲線を性能曲線といい、一例を下に示す。

ポンプの特性曲線(流量と全揚程の関係)と流量に(主に二乗に)比例する抵抗曲

が交わる点が、その時の運転ポイント(流量と全揚程)となり決定される。
その運転ポイントから流量や全揚程を変更したい場合は、
① 配管抵抗を制御するバルブを設ける
② ポンプの回転数(インバータや流体継手などで)を変更する
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バルブ開度で制御するのは、細かくスピードが必要な制御(例えばボイラーの水位
制御)に向いていて、回転数で制御するのはそこまでのスピードが必要なく回転数を
下げると動力(回転数の 3 乗に比例)が減るので所内電力の低減にもつながる。

ポンプの種類 以下、(株)アピステの HP より引用


1.非容積式ポンプ
羽根車の回転により液体にエネルギーを付与する非容積式ポンプは、遠心ポンプ、プロペラポン
プ、粘性ポンプの 3 つに大別されます。ひとつずつ特徴を見ていきましょう。

① 遠心ポンプ
遠心ポンプは遠心力を利用したポンプ全般の総称です。その代表的なものに渦巻きポンプ、
タービンポンプ、多段渦巻ポンプがあります。

渦巻ポンプ
渦巻きポンプは、ケーシング内の回転羽根車に液体を流し、遠心力で圧力をかけて液体の輸送
を行います。20m 以下の比較的揚程が低い設備で使用されます。

タービンポンプ

タービンポンプは、渦巻きポンプの回転羽根車の外周に案内羽根を取り付け、より効率的に昇圧
して液体を輸送するポンプです。渦巻ポンプよりも高い揚程(20~30m 以上)の設備でも使用可能
です。

多段渦巻ポンプ

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さらに高い揚程の設備に使用したい場合は、多段渦巻ポンプを用います。ひとつの軸に回転羽

根とケーシングを何段も重ね、段階的に揚程を上げる仕組みになっています。

この 3 つの遠心ポンプの能力比較は次の通りです。

【遠心ポンプの能力比較】
渦巻ポンプ<タービンポンプ<多段渦巻ポンプ

② プロペラポンプ
船のスクリューに似た羽根車を持つポンプをプロペラポンプと呼び、軸流ポンプと斜流ポンプの
2 つに分けられます。

軸流ポンプ
軸流ポンプは円筒面の中を同心の羽根車から吐き出された液体が流れる仕組みで、揚程は 5m
程です。低揚程・大容量での使用に適しており、河川の排水用として多く用いられています。

斜流ポンプ

斜流ポンプは羽根車から吐き出された流体が羽根車の主軸と同じ中心を持った円錐面内を流れ
る構造になっており、比較的、低揚程・高流量で使用されるポンプです。

2.容積式ポンプ

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容積式ポンプは、一定容積内にある液体に加圧してエネルギーを与えるポンプの総称です。その
構造によって往復動ポンプと回転ポンプの 2 つに分けられています。

①.往復動ポンプ

ピストンやプランジャーなどの往復動により吸込・吐出を行うポンプを総称して「往復動ポンプ」と
呼びます。往復動ポンプは、大きく 3 つに分類されます。

ピストンポンプ
ピストンポンプは最も古くから使われているポンプで、シリンダー内のピストンを往復させて 2 つ
の弁を組み合わせることで吸水・吐出を行います。灯油ポンプや家庭用の井戸などに用いられてい
ます。

プランジャーポンプ
プランジャーポンプは、プランジャー(ロッド状のピストン)を往復運動させてポンプ内の液体容積
を変化させ、吐出口に押し出す仕組みのポンプです。

高圧が得られやすく、吐出し量の調整を簡単に行えるため、高圧ガス機器などによく利用されて
います。

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ダイヤフラムポンプ
ダイヤフラムと呼ばれる膜と 2 つの逆止弁から構成されるポンプは、ダイヤフラムポンプと呼称さ
れます。ダイヤフラムを左右・上下運動させてポンプ内の容積を変化させ、吸込・吐出を行います。

シールレスのためエア噛み・空転による焼損を起こさないというメリットがあり、高粘度流体の輸
送などに用いられています。

②.回転ポンプ

回転ポンプとは、歯車やローターを回転運動させて吸込・吐出を行うポンプの総称で、容積が一定
のため定量性があります。ギアポンプ・スクリューポンプ、ベーンポンプがこれに該当します。

ギアポンプ・スクリューポンプ

ギア(歯車)やスクリュー(ねじ)を噛み合わせて歯の間に液体を導き、そのまま回転させて液体の
輸送を行うポンプをギアポンプ、あるいはスクリューポンプと呼びます。

粘性の高い液体の輸送には適していますが、ギアを嚙み合わせる構造のため粉体や固形物を含

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む流体を輸送すると摩耗や噛み込みが発生しやすいという一面があります。

ベーンポンプ(偏芯ポンプ)

ベーンポンプとは、ケーシング内を多数の羽根(ベーン)が付いた回転子が回って液体を輸送
するポンプを指します。

ギアポンプ・スクリューポンプと比べて異物に強く、ベーンが多少摩耗しても効率が低下しにく
いといった特徴を持っています。

送風機(ファン、ブロワ)
送風機もポンプと同様、流量と圧力の関係を示す性能曲線があり、流速による抵抗
曲線と交わるポイントが運転ポイントとなる。そこから、流量、圧力を変えた運転と
するためには、回転数や吸込ダンパ等で制御するのは、ポンプと同じである。
異なる点は、流体が気体で比重が非常に小さいため、高低差による圧力差は無視で
きる点や気体は圧縮性が大きいことがあげられる。

(以下、楽天市場 MONJU ショップ HP より引用)

送風機の羽根車の種類

シロッコファン
遠心式送風機の中で、最も小型なタイプです。

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ターボファン
効率が良く、風量、静圧とも広範囲に使用できます。

プレートファン

構造がシンプルで粉じんや粉体の吸引に適しています。

流体機器に発生する問題(キャビテーション、サージン
グ)
1)キャビテーション
ポンプは、原則液体を搬送する機械なので、エア(気体)が入ると性能が劣化する。
(そのためのエア抜きが重要)

また、水の場合の 1 気圧(1013 m Bar)で沸点 100℃ですが、半分の 0.5 気圧になる


と沸点が 81℃になる。つまり、圧力が下がると低い温度で気体(水蒸気)になる。

上記のようなことが、ポンプ内部で発生する場合があり、 81℃の水がポンプ吸込部
で 0.5 気圧まで下がると気体となり気泡ができ、インペラ部で圧力が上昇すると気泡
が押しつぶされ、それを繰り返すことで衝撃波が発生し音、振動が激しくインペラを
損傷させる。このことをキャビテーションという。

特に高温の液体の場合には要注意で、吸込圧力が低くなる(例えば吸込側のタンク
レベルが下がる。ストレーナが詰まるなど)とキャビテーションを起こし、性能が出
なくなるだけではなく、ポンプが故障する原因となる。そのため、吸込圧力は規定以
上の圧力が必要となる。

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キャビテーションを防止するため、ボイラの給水ポンプが地下に設置され、脱気器
付きの給水タンクが 3 階にある。なぜか?

2)サージング (エネ管.com より引用)

送風機の場合も、ポンプと同様に性能曲線があり「一次側圧力と二次側圧力の差」と「風量」
に相関関係があります。圧力と風量の関係を表したものが次の図になります。

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送風機の場合も、ポンプの運転と同様で風量と圧力の関係が右肩上がりになる低風量の
領域で運転をすると、圧力と風量が大きく変動しダクトが振動します。これを送風機のサージ
ングといいます。
送風機の場合は、ほぼすべての機種の性能曲線に上図のような「圧力と風量の関係が右上
がりになる領域」があるため、低風量域で運転するとサージングが発生します。そのため、一
般的にサージングと言われるのは液体のポンプではなく送風機に使われることが多いです。
サージングが発生すると、送風機が故障したりダクトが外れたりするのでサージング発生領域
の運転にならないよう注意が必要です

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本プラントでの流量と圧力の制御例
流量をコントロールするため、圧力(差圧)を調整する必要が有る、本プラントでの一
例として、FD ファン空気を各火格子ホッパ毎に流量を変えて制御する場合を示す。

下の例では、総空気量 13,000 m 3 N/hを流す差圧として、①ファン吐出圧 10mBar


― ② 火格子上の燃料表面 0mbar=10.0mBar となる。(炉内圧の負圧は ID ファン
側)
また、火格子の場合は、4 分割ホッパに均等の流量とすることは無く、2 番ホッパに一番
多く流し、4 番ホッパは一番少なく流す必要があるため、③各ダンパを 2 番は開度大で差圧
を小さくし、反対に 4 番は開度小で差圧を大きくする必要がある。
ダンパ部(④-③)以外の差圧は、流量の 2 乗に比例するのでダンパの差圧と反対に 2
番の差圧が大きく 4 番は少ないこととなる。(差圧の数値は正確に計算、また実測した値
ではないので参考値である)

④-1
④-2 ④-3 ④-4

③-1 ③-2 ③-3 ③-4



F

圧力、差圧(単位 mBar)
場所 ホッパ#1 ホッパ#2 ホッパ#3 ホッパ#4
① ファン吐出圧 10
①-② 差圧 0.5
② 共通ダクト圧 9.5
③-② 差圧 0.3 0.4 0.2 0.1
③ 各ダンパ前 9.2 9.1 9.3 9.4
④-③ 差圧 4.2 3.1 5.3 8.4
④ 各ホッパ内 5.0 6.0 4.0 1.0
⑤-④ 差圧 5.0 6.0 4.0 1.0
⑤ 炉内 0.0

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