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🐮野矢『論理学』序論・第1章

Tags文論理 野矢本
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いに気づいた場合は遠慮なく指摘していただけると助かります。
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このレジュメは野矢茂樹(1994)『論理学』. 東京大学出版会に基づいています。
読書会ではこれを読み進めるため、ここでは要点や語釈をまとめています。

読む前に:この本は著者野矢、禅僧道元・無門の対話形式で話が進み、注意点など
はそれによって説明されます。
論理学(学問領域)についてのイントロダクションはこのページを参照してくださ
い。

第一回語釈・解説
序論:論理と言語
この章では論理学のモチベーションについて語られる。
「論理」とは何か、ということがこの章の主題である。屁理屈小学生との対話から
論理の性質を浮き彫りにし、そして論理についての議論が始まる。野矢は論理学を

野矢『論理学』序論・第1章 1
広い意味では言語使用一般、狭い意味では推論実践を問題にする学問領域だと定め
る。

第1章:命題論理
第一節:命題論理の意味論
この章では命題論理(文論理)について学ぶ。今回は基本的な論理記号を知るとこ
ろまで読みます。
命題:様々な定義があるが、ここでは真偽を持つ記述文(p14)であると定める。
「無門は寺にいる」など。
意味論:命題の真偽を決める理論。命題論理なら真理表、述語論理や様相論理では
モデル・フレーム。
構文論:命題(記号)の取り扱い方を決める理論。タブロー・自然演繹・公理的方
法など。
全ての(形式・記号)論理体系はこの2つを定めることにより成立します。そ
のため重要な概念ではありますが、特に発展的な内容に関連した概念であるた
めこの時点ではそれほど気にする必要はありません。
原子命題:否定詞も接続詞も含まない命題
分子命題:原子命題をもとにして否定詞や接続詞を用いて構成された命題
特に数学寄りの文脈では原子式、分子式と呼ばれることが多い。
真理関数:n個の原始関数の真偽x1 , … , xnから分子命題yへの真偽への関数。
​ ​

記号が突然出てくるが、意味が理解できれば難しくはない。例えば「AさんはB
であり、なおかつCさんはDである(X ∧ Y )」のような命題の真偽は「Aさんは
B(X)」と「CさんはD(Y )」という2つの文の真偽によって定まる。この場合
に前者が真、後者が偽((X, Y ) = (1, 0))であるとすると、はじめの命題は偽
である(X ∧ Y = 0)。このことは2つの真理値(真, 偽)に一つの真理値
(真)を対応付けていることに等しい。
上では略記したが、多くの場合は真偽を与える関数v(付値関数)によって命
題の真偽をv(X ∨ ¬X) = 1のように書く。

野矢『論理学』序論・第1章 2
真理値:真偽x1 , … , xn, yを真理値という。
​ ​

真を1、偽を0と略記する。
結合記号 名称 読み方
¬A 否定 Aでない
A∧B 連言 AかつB
A∨B 選言 AまたはB
条件法 AならばB
​ ​ ​ ​

A⊃B
A≡B 同値 AとBは同値
A B ¬A A ∧ B A∨B A⊃B A≡B
0 0 1 0 0 1 1
0 1
​ ​ 1 0
​ ​ 1 ​ 1 ​ 0 ​ ​

1 0 0 0 1 0 0
1 1 0 1 1 1 1

第2回(以降)語釈・要約
条件法について:
「PならばQ」について、Pを前件(antecedents)、Qを後件
(consequents)という。
「QではないならばPでない」を対偶という。
「QならばP」を逆という。
「PではないならばQではない」を裏という。
命題とその対偶は同値(論理同値)であるが、他は一般に真偽が異なる。
「ならば」の時間性について言及されるが、これを表現できるようにした体系
として時相論理がある。
二値原理:命題は真か偽かのいずれかであるという原理。
排中律(P ∨ ¬P )とは異なる。これは定めた体系での式(法則)であり、二
値原理は主張である。
論理式について:

野矢『論理学』序論・第1章 3
命題記号:P , Q, R, …を命題を表す記号とする。これを原子式ともいう。
論理記号:¬, ∧, ∨, ⊃, ≡を論理記号という。これは否定子や接続子を意味す
る。
特に¬を否定子、∧, ∨, ⊃, ≡を結合子という。本によっては全て結合子と
呼ぶこともある。
論理式:いくつかの原子命題から論理記号を用いて組み合わされた式。些細な
ことだが、有限列のものだけを考える。
真理値分析:与えられた論理式がいかなる真理関数であるかを調べることを真理値
分析という。命題論理では真理表を使う。
恒真関数・恒偽関数:原子式の真理値によらず真が返ってくる関数を恒真関数、偽
が返ってくる関数を恒偽関数という。恒真関数・恒偽関数を表すような論理式はト
ートロジー・矛盾式と呼ばれる。
トートロジー:原始関数の真理値によらず常に真となる論理式。恒真式ともいう。
矛盾式:原始関数の真理値によらず常に偽となる論理式。恒偽式ともいう。
推論について:
前提A1 , … , Anから結論C を推論することをA1 , … , An → C と書く。
​ ​ ​ ​

この推論に対応する論理式は(A1 ∧ ⋯ ∧ An) ⊃ C である。これがトート


ロジーなら推論は正しいことになる。
​ ​

推論で調べるのは前提が全て真のときに結論が真であることであるが、上
式で実際にこれが調べられる。もし前提のどれかが偽ならA1 ∧ ⋯ ∧ An
が偽、(A1 ∧ ⋯ ∧ An ) ⊃ C は真であるから、前提が偽の場合は常に真に
​ ​

なる。そのため、式がトートロジーになることと、前提が真のときに結論
​ ​

が真であることが等しくなる。
シェファーの棒記号についての補足

野矢『論理学』序論・第1章 4
第二節:命題論理の構文論

野矢『論理学』序論・第1章 5
前述しましたが、構文論とは記号の取り扱い方、言うなれば式変形の仕方を定める
方法です。ここでは命題の真偽(意味)を考えないため、野矢によると「意味を抜
き去った」(p56)体系でもあります。
この節では公理的方法という方法について学びます。
公理:論理体系を定めるにあたり、無前提に正しいと仮定される式。
導出規則(推論規則):公理から式を導くために使われる規則。「A, AならばBが
成り立つならBを導出してよい」など。
余談だが、この規則はモーダス・ポネンス(MP)と呼ばれほとんどの論理体
系で認められている。
公理的方法・定理:公理から導出規則を用いて式を構成していく方法を公理的方法
という。ここで導かれた式を定理と呼ぶ。
正しい公理から正しい規則を用いて導くのだから、導かれた定理も正しいもの
であろう、ということである。
公理系:公理と導出規則が入った構造を公理系と呼ぶ。公理的方法は公理系におい
て行われる推論である。
以下では⊢を「導出してよい」、:=を「定義する」の略記とする。
公理系のサンプル1
公理1 (A ∨ A) ⊃ A
公理2 A ⊃ (A ∨ B)
導出規則1
​ ​

A, A ⊃ B ⊢ B
導出規則2 A ⊃ B, B ⊃ C ⊢ A ⊃ C

公理系のサンプル2
規則1 "A ⊢ B" ⊢ A ⊃ B
規則2 A, A ⊃ B ⊢ B
規則3 A ⊃ (D ∧ ¬D) ⊢ ¬A
規則4
​ ​

A, B ⊢ A ∧ B
規則5 − (1) A∧B ⊢ A
規則5 − (2) A∧B ⊢ B

野矢『論理学』序論・第1章 6
公理系LP
規則1 "A ⊢ B" ⊢ A ⊃ B
規則2 A, A ⊃ B ⊢ B
規則3 A ⊃ (D ∧ ¬D) ⊢ ¬A
規則4 ¬¬A ⊢ A
規則5 A, B ⊢ A ∧ B
規則6 − (1) A∧B ⊢ A
規則6 − (2)
​ ​

A∧B ⊢ B
規則7 − (1) A⊢ A∨B
規則7 − (2) B ⊢ A∨B
規則8 A ∨ B, A ⊃ C, B ⊃ C ⊢ C
定義 A ≡ B := (A ⊃ B) ∧ (B ⊃ A)

この公理系は自然演繹ND (Natural Deduction)とも呼ばれる。厳密な取り扱いはこ


れまでの勉強会のレジュメを参考にされたい。
公理系LP
公理1
2 ​

(A ∨ A) ⊃ A
公理2 A ⊃ (A ∨ B)
公理3 (A ∨ B) ⊃ (B ∨ A)
公理4 (A ⊃ B) ⊃ ((A ∨ C) ⊃ (B ∨ C))
導出規則
​ ​

A, A ⊃ B ⊢ B
定義1 A ∧ B := ¬(¬A ∨ ¬B)
定義2 A ⊃ B := ¬A ∨ B
定義3 A ≡ B := (A ⊃ B) ∧ (B ⊃ A)

この公理系はヒルベルトとアッカーマンが構成したため公理系HAとも呼ばれる。
これも以前のレジュメを参考にしていただきたい。
第3章で話題に挙げられるが、この公理系の正しさは健全性(導出されるなら恒
真)と完全性(恒真なら導出される)という概念を用いて証明される。上の公理系
LP、LP2は健全かつ完全であるが、これによって意味論(的真理)と構文論(的真
理)が結びつけられる。少し数学の道具を必要としてしまうが、厳密な証明を理解
したい場合は戸田山(2000)を参照されたい。

野矢『論理学』序論・第1章 7

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