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インド中世社会におけるバクティの

ダイナミズムに見る大衆性

2190190015 中村朱里
バクティの語源
• √bhaj… 分有する、受け取る、経験する、入る、崇拝する

神と人間の関係において下のように意味が置き換えられる

「神が分有する / 神に分有される」

「神が気に入る / 神に気に入られる」

赤松明彦『ヒンドゥー教 10 講』 (2021) 岩波書店 146 頁


『バガヴァッド・ギーター』
• 知識の道(ジュニャーナ・ヨーガ)

• 行為の道(カルマ・ヨーガ)

• 信愛の道(バクティ・ヨーガ)
バクティ運動
• 7・8世紀に南インドで興る

• シヴァ教の詩人、ナーヤーナールやヴィシュヌ教の詩人、アール
ヴァ―ルらが寺院を巡り、神への思いをうたった

• 南インドを皮切りに、デカン、ベンガル、北インドの地へと広
がっていく

• 北インドの、アーリア人達のバラモン主義と先住民文化が融合し
た新たなヒンドゥー教と、南インドの文化が融合した時代
『バーガヴァタ・プラーナ』
• 10世紀頃、アールヴァ―ル等宗教詩人達に影響を受け成立

• クリシュナに対するロマンティックでエロティックな情愛が描かれる

『バガヴァッド・ギーター』
知識へ行為によって解脱を目指す

『バーガヴァタ・プラーナ』
一心に神の名を唱えて帰依することで救いに至る
(信愛に頼る)
ラーマ―ヌジャ
• ヴェーダーンタ哲学の思想家であり、ヴィシュヌ教シュリ―
ヴァイシュナヴァ派の開祖

• ヴェーダーンタ哲学の根本経典『ブラフマ・スートラ』の注釈書
『シュリ―・バーシュヤ』を著した

• 11世紀~12世紀に生きた?不明
シャンカラとの相違点
• シャンカラ「不二一元論」
→ ブラフマンのみが唯一の実在であり、個我と現象世界は迷妄によって現
れたマーヤー(幻)である

• ラーマ―ヌジャ「被限定者不二一元論」
→ 限定された者(ブラフマン)は個我と世界の諸事物を身体とし、その身
体によって限定された者として実在する
バラモンへの哲学から民衆への哲学へ
• 最高神と現象界との関係(従来のヴェーダンタ哲学)

最高神と人間の人格的な交わり(ラーマーヌジャ以降の哲学)

シャンカラの哲学が上層階級(バラモン)に向けられた哲学で
あったのに対し、ラーマーヌジャは、民衆への哲学へと転換した
まとめ
● バクティ運動は民衆に開かれたものだった
・宗教詩人達による俗語の使用
・宗教詩人達のカーストや身分の多様さ(女性や不可触民)
・現象世界を幻だとするシャンカラのネガティブな思想から、
神と現象世界の実在を説くラーマ―ヌジャのポジティブな思想へ
・神と現象世界との関係という問題から、神と人間の人格的な交わりという
現実的な救済思想へ
・対象がバラモン(上層階級)から民衆へ

→ より大衆に受け入れられやすいものとなっていったことが、バクティ運動が
中世インド社会のダイナミズムとなった理由の一つと言える
参考文献
• 『インド哲学 10 講』赤松明彦 (2018) 岩波書店
• 『ヒンドゥー教 10 講』赤松明彦 (2021) 岩波書店
• 『南アジア史』辛島昇 (2004) 山川出版社
• 『ヒンドゥー教史』中村元 (1979) 山川出版社

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