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東京商工会議所23支部のご 案内

海外ビジネスガイドブック
支部名 郵便番号 住  所 TEL

千代田 〒101-0051 千代田区神田神保町3-19 ダイナミック・アート九段下ビル 2F 03-5275-7286

中 央 〒104-0061 中央区銀座 1-25-3 中央区立京橋プラザ 3F 03-3538-1811

 港 〒105-6105 港区浜松町 2-4-1 世界貿易センタービル 5E 5F 03-3435-4781

新 宿 〒160-0023 新宿区西新宿 6-8-2 BIZ 新宿 4F 03-3345-3290

文 京 〒112-0003 文京区春日1-16-21 文京シビックセンター 地下 2F 03-3811-2683

台 東 〒111-0033 台東区花川戸 2-6-5 台東区民会館 1F 03-3842-5031

 北 〒114-8503 北区王子 1-11-1 北とぴあ 12F 03-3913-3000

荒 川 〒116-0002 荒川区荒川 2-1-5 セントラル荒川ビル 9F 03-3803-0538

品 川 〒141-0033 品川区西品川 1-28-3 区立中小企業センター 4F 03-5498-6211

目 黒 〒153-0063 目黒区目黒 2-4-36 目黒区民センター 4F 03-3791-3351

大 田 〒144-0035 大田区南蒲田 1-20-20 大田区産業プラザ 5F 03-3734-1621

世田谷 〒154-0004 世田谷区太子堂 2-16-7 世田谷産業プラザ 2F 03-3413-1461

渋 谷 〒150-0002 渋谷区渋谷 1-12-5 区立商工会館 7F 03-3406-8141

中 野 〒165-0026 中野区新井 1-9-1 区立商工会館 2F 03-3389-1241

杉 並 〒166-0004 杉並区阿佐ヶ谷南 3-2-19 区立産業商工会館 2F 03-3220-1211

豊 島 〒171-0021 豊島区西池袋 3-27-12 池袋ウェストパークビル 9F 03-5951-1100

板 橋 〒173-0004 板橋区板橋3-9-7 板橋センタービ 8F 03-3964-1711

練 馬 〒176-0011 練馬区豊玉上 2-23-10 練馬産業会館 1F 03-3994-6521

江 東 〒135-0016 江東区東陽 4-5-18 江東区産業会館 2F 03-3699-6111

墨 田 〒130-0022 墨田区江東橋 3-9-10 すみだ産業会館 9F 03-3635-4343

足 立 〒120-0034 足立区千住 1-5-7 あだち産業センター 4F 03-3881-9200

葛 飾 〒125-0062 葛飾区青戸 7-2-1 テクノプラザかつしか 3F 03-3838-5656

江戸川 〒134-0091 江戸川区船堀 4-1-1 タワーホール船堀 3F 03-5674-2911


東京商工会議所

浅草分室 〒111-0033 台東区花川戸 2-17-8 ハン六ビル 8F 03-5828-8730

本 部 〒100-0005 千代田区丸の内3-2-2 東商ビル 1F 中小企業相談センター 03-3283-7700




は じ め に
 経済社会のグローバル化の進展、急激な円高の進行、人口減少・少子高齢化による国内市
場の停滞・縮小等、中小企業を取り巻く経営環境は、ますます厳しい状況にあります。
 一方で、成長著しいアジア諸国をはじめとする海外諸国からの資材調達等の輸入ビジネス、
自らが海外へ進出する海外展開ビジネス等に対応する経営も求められています。
 しかしながら、必ずしも経営基盤が盤石でない中小企業にとって、十分な知識や経験のな
いなかで海外ビジネスを展開することは、大きなリスクを負う可能性があります。

 東京商工会議所では、こうした状況を踏まえ、平成22年2月より、従来から行っている経
営相談事業を拡充し、中小企業相談センター内に海外ビジネスに関した相談ニーズに対応す
る「海外展開支援相談窓口」を開設し、様々な相談をお受けしています。
 また同年11月には中小企業国際展開推進委員会を設け、中小企業の皆様の意見を伺い、中
小企業の海外展開が円滑に進むよう、国や東京都、支援機関等に対し、要望を取りまとめ、
その実現を図っております。

 「海外展開支援相談窓口」では、海外駐在経験のあるコーディネーターを中心に、海外ビ
ジネスに関してのご相談を受けている中で特に、
「海外ビジネスにどう取組めばいいのか」
「貿
易実務の流れが分からない」「海外ビジネスを行う上での初歩的なガイドブックがないか」
といった、ご相談が多くありました。

 そこで、海外ビジネス初心者の中小企業を対象に、これまで相談者から最も多く受けてき
た質問や相談に焦点をあてるとともに、実際に支援した事例なども取り上げ、海外ビジネス
の心構えや貿易実務の流れ、支援機関の相談窓口等の紹介をしたガイドブックを作成いたし
ました。
 本来であれば、欧米なども取り上げるべきではありますが、アジアの国々への問い合わせ
が多かったことから、本書では、アジアを中心に取り上げております。

 東京商工会議所では、海外ビジネスのみならず、今後とも中小企業経営者の皆様のニーズ
に応えた経営支援活動に取組んでまいります。
 本ガイドブックが、海外ビジネスに取組んでおられる企業経営者の皆様の参考になれば幸
甚に存じます。

 東 京 商 工 会 議 所
 中小企業相談センター


~海外ビジネスガイドブック作成にあたって~
 このガイドブックは、東京商工会議所中小企業相談センター海外支援担当コーディネー
ターが、中小企業相談センターで海外展開に関する経営相談を受ける中で、 「海外ビジネス
を進めるうえで是非とも持つべき視点や考え方をお伝えしたい。」という気持ちから作成い
たしました。特に海外ビジネスの経験が浅い経営者の皆様にお読みいただくことで、 「海外
ビジネス」の大枠や勘どころが分かるような構成になっています。尚、本書では「輸出」・「海
外進出」に比重を置いて作成しました。

 現在、中小企業相談センターには9名のコーディネーター(中小企業診断士)がおり、そ
のうち海外支援担当コーディネーターは4名で、全員が海外駐在経験があります。日々、経
営戦略・販路開拓・事業承継・組織力強化・創業等についての事業者からの経営相談に他の
コーディネーターと共に応対していますが、海外展開に関する相談(輸出・輸入・海外進出
等)は、この4名の海外支援担当コーディネーターが応対しています。

 ビジネスの進め方に対する基本的な考え方は、 「海外」も「国内」も違いはない、と言う
ことです。
 押えたいポイントは「3つの取る(『確認を取る』、『コミュニケーションを取る』、『書面
に記録を取る』)」を着実に行うことです。海外では日本国内で「何とかなった」ことも「何
ともならない」ことが大半で、この「3つの取る」を少しでも疎かにすると、大きな落とし
穴が待っています。周到な準備を行わないまま海外ビジネスを進めると、会社の経営が行き
詰る状態になることも少なくありません(実際、海外ビジネスの相談に対し、 「まずは国内
の経営基盤をきちんと固めては?」といったアドバイスをすることもあります。 )。更に、中
小企業はヒト・モノ・カネ・情報の経営資源が限られているので、大企業と比べて「当たり
前のこともなかなか思うように出来ない」という事実もあります。

 このガイドブックの内容は、“網羅性”よりも“実効性”を重視し、相談者から最も多く受け
る質問や相談に焦点を当てて作成しました。本来であれば欧米にもっと紙面を割く必要があ
るかもしれませんが、本書では中国を始めアジアの国々を中心に記述しています。貿易実務
関係も、最低限持っておきたい知識に絞り、“海外ビジネスを進める上で必要な心構え”を中
心に記述しました。また、経営者が悩んだ上で東京商工会議所に相談にお越しになり、そこ
で実際に支援した事例も載せました。何よりも中小企業経営は唯一無二であり、海外展開も
一つたりとも同じケースはありえません。しかし、このガイドブックから経営者の皆様が「何
か」を得て、リスクを最小限に抑えながら創意工夫しながら海外ビジネスを行っていく、そ
のような積極的な海外ビジネス展開の糧としていただければ、と願っています。

 ~東京商工会議所中小企業相談センター~


INDEX

はじめに
海外ビジネスガイドブック作成にあたって

第1章 海外ビジネスへの心構え   第1節 海外進出の目的 2
                  第2節 国内ビジネスと海外ビジネスの違い 4
                  第3節 海外ビジネスの形態 6

第2章 海外ビジネスと組織人事   第1節 社内体制を整える 8
                  第2節 海外駐在の心構え 10
                  第3節 駐在員の処遇と現地スタッフの雇用 12
                
第3章 実践!海外ビジネス     第1節 販路開拓へのヒント 16
                  第2節 海外展示会 20
                  第3節 代理店活用法 22
                  第4節 リスクマネジメント 24
                  第5節 クレーム対応 26
                  第6節 海外進出の手順 28

第4章 国・地域別海外戦略のヒント 第1節 進出国選定のポイント 30
                  第2節 市場別海外戦略のヒント 32

第5章 事例に学ぶ海外ビジネス(東商相談事例の紹介) 38

第6章 東京商工会議所 海外ビジネスサポート事業 44

第7章 活用できる支援機関     1.総合支援機関 46
                  2.個別ニーズ支援機関 48
                  3.在日海外機関、経済交流団体 50

第8章 貿易実務の流れ       第1節 貿易取引の流れ 52
                  第2節 貿易制度 54
                  第3節 インコタームズとは 56
                  第4節 モノの流れ 58
                  第5節 カネの流れ 60
                  第6節 書類の流れ 61
                  第7節 保険 62
                  
(輸出のフローチャート) 64

第9章 使えるフォーマット集 68
                  1)貿易実務書類(Offer Sheet他)
                  2)海外取引の契約書の種類

第10章 海外ビジネス 実務チェックシート 84
第1章 海外ビジネスへの心構え

第1節 海外進出の目的
 今やグローバル時代として世界中の企業が自社製品の市場を求めての大競争と、日本その
ものが人口減少による内需の縮小傾向、この2つの要因が相まってただ単に日本の市場だけ
を相手にして事が足りる、という時代は終わりを告げました。「日本にいながらにして海外
を対象としてビジネスを行う・海外に進出してビジネスを行う」といったことは、生き残り
をかけてやらざるを得ない状況です。ここでは、まず海外ビジネスを進めるにあたっての心
構えをお話しします。

1
  海外ビジネスの目的とその心構えは? 
 海外ビジネスを進めていく目的は一体何でしょうか? ビジネスの領域を日本だけでなく
海外へ展開する目的は、売上拡大やコストダウンという利益に直接的に関わるものから、海
外の顧客や競合企業の情報収集といった間接的なものもあります。しかし、その目的を選ん
だ根拠が、単に「日本で上手くいかないから」といった理由だったり、十分な準備もしない
状態で手掛けたりするのであれば上手くはいきません。海外に活路を見出すために敢えてリ
スクを負ってでも勝負にでる、そのために「心構えをしっかり持つこと」、「トラブルやリス
クを被っても是が非でもやり遂げる」、といった強い意志を持つことが、何よりも重要なこ
とになります。

2
  海外ビジネスへの事前準備をしっかりやる 
 心構えがしっかり持てたら、その次に重要なのは「事前準備」です。行動することは非常
に重要なことですが、海外ビジネスへの準備もなしに展開すると、結局は高い授業料を払っ
てそのビジネスから撤退せざるを得なくなる場合がほとんどです。限られた経営資源を有効
に活用するためにも、いきなり社運がかかるような大きなリスクを抱え込まないためにも、
しっかりと準備を行ってください。一方、現在中小企業を応援する東京商工会議所を始めと
する公的支援機関は、様々な支援メニューの充実を図っています。これらの支援策を上手く
活用することで、時間の短縮やリスクの軽減といったことが可能になります。

3
  海外ビジネスへの戦略を立てる 
 海外ビジネスを成功させるためにも、戦略はしっかりと立てたいものです。 「敵を知り己
を知れば、百戦危うからず!」ではありませんが、まずは、経営環境の分析をできる限り緻
密に行い、海外ビジネスの必然性を納得した上で、戦略を立てていくことが肝要です。顧客・
競合他社・自社といったミクロの分析から、全世界の大きな流れと対象国での政治、経済情
勢、社会、技術革新とったマクロの分析もしっかりやりましょう。自社にとってのチャンス
とリスクを吟味し、そのチャンスを活かすために具体的な戦略を立ててください。

2
海外ビジネスへの心構え

心 構 え
 どれくらい真剣になっていますか?
 海外ビジネスを行うための目的とその具体的な目標数値などを十分に吟味
はできたでしょうか?しっかりと意欲を持って取り組みましょう。

事前準備
 成功へのカギは事前準備です。そこでのカギになるのは、経営資源(ヒト・
モノ・カネ、情報)の有効配分と将来への布石、および時間軸(タイムスケジュー
ル)です。また、戦略性も重要です。

戦略立案
 経営環境の分析もしっかりとする必要があります「敵を知り己を知れば、
百戦危うからず」の精神で分析を行ってください。

▼ビジネスを取り巻く環境

政治的要因 経済的要因

顧客

競合
自社
他社

社会的要因 技術的要因

 海外展開では、「顧客・競合他社・自社」といったビジネス環境、さらに取り巻く大きな
外部環境の分析もできるだけ、丁寧に行ってください。

○大きな外部環境分析
政治的要因:その国および近隣国の政治全般、制度や法律、日本との関係(歴
史的な面と現在)
経済的要因:その国の景気や為替レート、日本との貿易、大手主要企業の動向、等
社会的要因:その国の商慣習や国民性・ライフスタイル、対日感情、環境等
への意識のレベル感
技術的要因:技術革新、自然エネルギー、社会インフラ等

海外ビジネスガイドブック: 3
第2節 国内ビジネスと海外ビジネスの違い
 ビジネスでの原理原則それ自体は、日本国内でも海外でも違いはありません。 「相手の立
場に立って信頼をベースとして行っていること」、「重要なことは文章に残し、確認を行うこ
と」
、「トラブルが起きた時は迅速な対応を行うこと」 、これらはどこでビジネスを行っても
必要なことです。まして、海外ビジネスになると、日本で上手くできていたことでも上手く
できなることが数多くあります。なぜそのような現象が起こるのでしょうか?ここではその
点に関してお話しします。

1
  なぜ海外ビジネスになると上手くいかないことが増えるのか? 
 その答えはズバリ言いますと「ビジネスの基本を本当にしっかり行っていない」 、「海外で
は日本でなんとかごまかしていたことのメッキがはがれる」、それが原因です。例えばビジ
ネスを進める上で情報は非常に重要です、これは誰もが異論の無いことでしょう。旬な情報
や肝となる情報を収集して方針や対応を決めていく、日本に住んでいてそこで進めるビジネ
スに関わる情報は、我々は特に意識しなくてもどんどん入ってきます。TVや新聞/インター
ネットからでも、情報を簡単に仕入れることができます。しかし、海外の情報はかなり意識
して自分から取りに行かないと情報は入ってきません。基本的に日本語ではないので情報を
読む・聞くこともかなり苦労します。だから、「強い意思を持って情報を集める」という姿
勢で取組まないと、情報不十分でビジネスを行うことになり、失敗の確率が上がります。押
さえるべき点は確実に押さえて対応してください。

2
  国内ビジネス・海外ビジネスの違いとなるポイント 
 主に以下のような7点が挙げられます
 ・空間的・時間的な距離が遠い、そのために何事にも時間がかかる
 ・手間がかかるので、採算に乗せるためには取扱単位数量(ロット)が大きくなる
 ・上記の2点からも、金額が大きくなり現金化にも時間がかかり、その結果、資金繰りも
厳しくなる
 ・情報入手チャネルの欠如や絶対的な情報不足に陥りやすい
 ・歴史・宗教・文化等が異なることから価値観の違いが生まれ、ビジネス常識や進め方に
違いがでる
 ・使用言語の違いにより、十分な意思疎通が図れない
 ・国内ビジネスにはない外国為替、安全保障貿易管理、輸出入貿易実務等に関してある程
度の知識・経験が必要である

3
  ハンディキャップを克服するために 
 日本でもビジネスを進める初期段階で、ビジネスパートナーとは信頼関係構築のために面
談を多く行います。それと同様に、フットワーク良く相手とのコミュニケーションの量を増
やし質を上げて(できるだけface-to-face=膝を詰めて)話を行うことです。そして、リス
クに対する感度を高めること(常にこれで大丈夫かと自問自答すること) 、確認を取ること
と証拠を残すこと、といった基本動作を怠らないでください。

4
国内ビジネスと海外ビジネスの違い

海外ビジネスは国内ビジネスと比較して、
(特にトラブル面で)以下のような特徴になります。

○金額が大きく、期間も長くなりがち
 →リスクの見極めと適切な処理の必要性

○情報収集やコミュニケーション不足が起こり、勘違いや
誤解が起こりやすい
 →情報は自分から取りに行くもの、コミュニケーションの頻度もあげること

○初動対応のミスが大きな致命傷に
 →大局観と適切な状況把握による行動計画
  一貫性と柔軟性のバランス感覚

海外ビジネス
はね……。

東京商工会議所 海外支援担当コーディネーターからの一言!
 海外ビジネスでも失敗しないコツは、国内との違いをいかに克服するか、
です。そのために何より重要なことは、お互いの打ち合わせ事項や取り決め
事項等を書面に残すことです。例え契約書を作成したとしても、日本の契約
書に良く見かける「その他取り決めなき件についてはお互いに誠意を以って
取り決めるものとする。
」的な曖昧な部分は、トラブルのもとなので、いろ
いろなケースを想定し、それぞれのケースに関して相手と意見調整を行うこ
とが重要です。

海外ビジネスガイドブック: 5
第3節 海外ビジネスの形態
 海外ビジネスに対する心構えをしっかり胸に刻み、国内ビジネスと海外ビジネスの違いを
よく認識して、海外ビジネスを進めて行きしょう。一口に海外ビジネスといっても色々な形
態があります。経営資源であるヒト・モノ・カネ・情報の準備状況や会社の成長発展段階を
考慮して、利益は少ないがリスクも少ない形態から徐々にリスクは高いが利益も高い形態へ
と移行して行くのが一般的です。

1
  輸出入貿易 
 海外に駐在事務所や現地法人を設立し、社員を派遣する現地進出レベルに達するまでは、
自社の製品を輸出したり、海外の商品を輸入したりする輸出入貿易から海外ビジネスを始め
られることをお勧めします。
1.貿易商社等を経由した間接的な輸出入貿易
 海外ビジネスの第一歩として、海外企業の与信リスク・為替リスクの少ない形態を選択し
ましょう。自社商品の業界や輸出先地域に強い日本の貿易商社等に販売し、その会社に海外
のエンドユーザーへ販売してもらう間接輸出や、自社が輸入を希望する商品の業界や生産・
仕入地域に強いネットワークを持つ日本の貿易商社経由の間接輸入をお考えください。
2.自社にて直接行う輸出入貿易
 次に、自社が直接海外のエンドユーザーに販売する輸出貿易、海外の生産者や仕入先から
直接商品を購入する輸入貿易や、海外の代理店経由の輸出入貿易を考えましょう。海外にお
けるチャネルの形態の詳細については次頁をご参照ください。

2
  現地進出 
 輸出入貿易の実績を積み重ねる中で、海外市場・仕入先地域の状況等についての知識や経
験が豊富になります。その間、社内では海外進出に向けての経営資源の拡充、特に海外で業
務をこなせる人材の育成を怠りなく進めてください。
1.駐在員事務所の設営
 駐在員事務所は、市場調査等現地での事業成功の可能性の調査、ビジネスパートナー探し、
本格進出前の広告宣伝等に活動が限られ、輸出入貿易等、ビジネス活動の当事者にはなれま
せん。
2.支店の設置
 海外支店は、現地支店の代表者名で継続的なビジネス活動が行えることから、駐在員事務
所と異なり、輸出入貿易においても直接契約当事者として適時現地企業との踏み込んだ交渉
等が可能となります。
3.海外現地法人/生産拠点の設立
 現地法人には、自社が100%のシェアを持つ子会社形態から現地企業と資本を出し合う合
弁形態があります。一般的に、子会社の場合は、自社でコントロールできる利点がある半面、
現地パートナー企業の現地における知識・経験・人脈等を活用できないデメリットがありま
す。

3
  その他の形態 
 商品の移動を伴う輸出入貿易や人材の移動を伴う海外進出のみならず、海外企業に対して、
自社の持つ特許等の知的財産権等を活用したライセンス契約や、自社のサービス機能を提供
する業務委託契約という形態もあります。

6
海外ビジネスの形態(輸出販売の場合)

⇐    日本    ⇒ ⇐    海外    ⇒

B社 X社
(商社)
1.国内商社等を通じた間接輸出による販売

2.直接輸出

   
 ⑴ A社が海外のエンドユーザーに直接輸出販売 X社

 ⑵ A社が海外の代理店経由エンドユーザー
   への直接輸出販売

   ⑵-①:Agent経由 C社 X社
      (A-X間で輸出販売契約、C社は販売支援で口銭) Agent

   ⑵-②:Distributor経由 C社
      (A-C間で輸出販売契約、C-X間では国内販売契約) X社
A社 Distributor

 ⑶ A社の海外組織経由エンドユーザーに販売

   ⑶-①:駐在員事務所の情報収集活動等を
A社駐在員
         活用したエンドユーザーへの輸出販売 X社
事務所
      (駐在員事務所は営業活動を行えません)

   ⑶-②:支店経由でエンドユーザーに販売
A社支店 X社
      (本支店間の契約、支店-エンドユーザー間の契約)

   ⑶-③-ⅰ):現地法人(製造業以外)経由での販売 A社
X社
      (A-現法間の契約、現地法人-エンドユーザー間の契約) 現地法人

   ⑶-③-ⅱ):現地法人(製造業)経由での販売 A社現法
製造拠点
X社
      (X社への販売、本社へ委託生産品輸出)

東京商工会議所 海外支援担当コーディネーターからの一言!
 海外ビジネスのステップは、まずは難易度の低い輸出入貿易から海外進出
へ徐々に移行して行くことです。昨今のインターネットの普及で日本に居な
がらにして情報収集・販売先 / 仕入先の選定・輸出入業務遂行が可能になっ
てきました。こうした状況はチャンスでもありますが、落とし穴もあります。
販売先や仕入先の信用状況によっては大きな損失を被る可能性もあります。
取引形態による難易度も考慮しつつ販売先/仕入先の信用調査を実施してく
ださい。その際には、我々海外コーディネーターが簡便な手法等についてア
ドバイスを差し上げます。海外進出の場合には、第 3 章 6 節の海外進出の
手順にもあります通り、事前準備としての事業計画/事業可能性評価/現地
調査をよりきめ細かく実施し最適の形態を選択することが重要です。

海外ビジネスガイドブック: 7
第2章 海外ビジネスと組織人事

第1節 社内体制を整える
 海外ビジネスを行うための社内の体制は、その展開レベルによって大きく分けて3つの段
階があります。ここではこの段階別に準備すべき点をお話しします。

1
  第1段階:海外(現地)での情報収集
 海外(現地)での情報収集のために、国内の担当者(経営陣、営業・企画・業務の担当等)
が安心して海外出張ができる規定を作ります。
 ・海外出張の旅費規定として、職位に応じた出張手当、交通手段や宿泊ホテルの等級
 ・為替レート適用、最初であれば支度金の準備、出張期間の保険、等
 ・パソコン等でのコミュニケーション手段の確保
 ・英文での呼称や名刺の作成(担当者だけでも十分)

2
  第2段階:会社として組織対応の実施
 会社の規模によって変わると思いますが、海外事業部等の組織を立ち上げ、社内外にその
組織を認知してもらう必要があります。社内では全社的に周知徹底を行い、社外的(対外的)
に以下のような準備が必要です。
 ・英文での組織名や役職の決定や交渉窓口の担当者の決定
 ・名刺での英文表記、ホームページの英文表記、書類のレターヘッドの英文化
 ・見積書をはじめとする他書類のレターヘッドの英文化
 ・海外からの問い合わせへの対応
 ・セールスポリシー(販売方針)の策定や代理店契約のひな型作成

3
  第3段階:海外への社員派遣
 本格的に海外とビジネスを行うようになると、現地に製造拠点や販売拠点を作らなければ
なりません。そのためには以下のような視点を持って準備を進めてください。また第1や第
2の段階でも、将来的に第3段階に進めるという経営判断があるのであれば、情報収集や仕
組みづくりの前倒しや教育等のトレーニングの開始も重要です。
 ・海外勤務規定の策定(現地払い給与・日本払い給与・税金や年金対応)
 ・現地で安心して仕事を行う体制づくり(住居・現地文化への理解・危機対応)
 ・派遣社員の適性(健康であること・マネジメント能力・業務遂行能力・語学力
これらは概ね重要度の重いものから並べてあります)
 ・現地スタッフの採用(適正な人数・能力と担当業務・処遇、教育制度)
 ・現地法制度や慣習
 ・在外日本人商工会議所等への加入
現地進出時での情報収集や現地生活での相談先として有効

8
社内体制を整える

第三段階
社員派遣レベル

・海外勤務規定の策定
第二段階 ・現地で生活する環境づくり
組織対応レベル ・現地スタッフの採用
・派遣社員の適性と教育
・組織をつくる
第一段階 ・英文での文書フォームの作成
情報収集レベル ・対応の方針の決定

・出張旅費規定の策定
・コミュニケーション手段の確保
・英文での呼称の決定

東京商工会議所 海外支援担当コーディネーターからの一言!
 現地進出を念頭とした海外展開で成功している企業の中には、何よりも準
備をしっかり行っている、というのが実感としてあります。
 例えば、自社のマネジメントスタイルや現地側のニーズをお互いに理解し
てもらうために、進出予定国の研修生を受け入れて、自社の日本の工場で数
年訓練をさせ、帰国後にその会社の幹部候補生として採用する、という仕組
みにしている企業も少なくありません。日本人同士でも相互理解は難しく
なってきている昨今、お互いの理解と現地化のスピードアップと深耕のため
にも、このような準備は非常に有効です。

海外ビジネスガイドブック: 9
第2節 海外駐在の心構え
 海外駐在は、言葉の壁が存在し、生活習慣等も異なる環境の中に身を委ねることになり、
いろいろと不安が多いものです。しかし、自分の見聞を広める他に自身のキャリアや日本の
ことを見つめ直す大きな機会であり、自身を磨くチャンスでもあります。このページでは、
海外に初めて駐在する方へのエールを兼ねて心構えについてお話しします。

1
  心構え 
 まず何よりも自分が派遣される国の歴史や慣習を知り、そしてその国を好きになること、
これはビジネスを進める上で一番重要なことです。そのためには、赴任前までにその国につ
いて書かれた本を数冊は目を通しておくこと、偏見を捨ててその国でお世話になるという謙
虚さを持つ、といった姿勢が必要です。また、現地では、日本からの駐在員を通して「日本
人ってこんな人だ」と判断されます。つまり駐在員は“日本人の代表選手”ということなの
えり

で、さすが日本人と思われるように襟を正したいものです。

2
  健康管理 
 海外に駐在して仕事を行うということは、業務環境が大きく変わるだけでなく、食べ物や
気候も違うので健康維持ができないことも多々あります。少なくとも年に一回は健康診断を
受けることや日頃からの節制と運動を心がけてください。(一時帰国時に日本で健康診断を
受けさせる企業も多くあります。)また、病院にかかった時に病状を英語または現地語で説
明できるような資料(旅行用の本でも最低限は事が足ります)を準備しておくこともお勧め
します。

3
  現地スタッフとの対応 
 よく日本人駐在員が現地スタッフから言われることに
 ・決断を行なわないのでマネジメントスタイルが分からない
 ・語学力不足で日本語ばかり、そのために理解できない
 ・現地のやり方を理解しようとせずに、日本のやり方を押しつける
 日本人が現地化(現地になじむこと)ができない理由に、日本人ばかりで集まって日本語
で仕事を進めていく、という現地側の声があります。現地で良い仕事を進めるためには、現
地のスタッフとの業務上の円滑な関係構築が必須になります。そのためには日頃から現地ス
タッフに声をかける等コミュニケーションの量を増やすこと、下手でも気にせずに英語もし
くは現地語で、自分の考えを伝える努力をすることが必要です。 (一方、賃金や待遇を含め
た要求も多いので、“NO”は“NO”で明確に伝えましょう)
 また、日本は会社の規模や役職でその人を判断する傾向が高いですが、海外ではまず何よ
りも個人の実力を見て判断します。海外駐在を機会に自分のマネジメントスタイルを確立し
たいものです。そのためにもマネジメントの勉強は赴任前にしっかり行ってください。

10
海外駐在の心構え

ポイントは3つ、心構え・健康管理・現地スタッフの活用

心 構 え
 相手の国・人を知り、好きになること
 日本を代表する、という気概を持つ

健康管理
 健康への過信は厳禁、健康診断は年1回は必ず受ける

現地スタッフの活用
日本人だけで仕事を進めない
コミュニケーションの質を高め、量を増やす
自分の意見を持ち、伝えていく
“NO”は“NO”とはっきり言う
自分のマネジメントスタイルの確立

東京商工会議所 海外支援担当コーディネーターからの一言!
 海外駐在は間違いなく人生の転機になります。考え方も価値観も違う外国
での仕事や生活、その中で現地スタッフからどれだけ信頼を得ることができ
るか?自分がそこで仕事をしていくことで「何が・どんな風に良くなった」、
という変化を起こしたいものです。また、せっかく海外で生活をしているの
で、その国への造詣を深め、日本からの出張者や知人が訪れた時には、喜ば
れる案内もできれば素晴らしいでしょう。更に自分が帰国する頃にはある分
野でのエキスパートとして(例えば、マネジメントスキル向上や語学など、)
ご自身のキャリアアップを目指してください。

海外ビジネスガイドブック: 11
第3節 駐在員の処遇と現地スタッフの雇用
 海外ビジネスを進めていく中で準備したいことに、駐在員の給与待遇の整備や現地スタッ
フの雇用等があります。また、日本では普段考えられないような危機管理も考えなければな
りません。ここでは駐在員の処遇と現地スタッフの雇用に関して、持ってもらいたい視点を
お話しします。

1
  給与面での整備 
 ここでは、海外のある国に駐在している(日本からの長期出張を含む)ことを前提に話を
進めます。給与も出張に伴う経費も現地での支払いが原則になりますので、現地通貨建てで
の支払いを考えなければなりません。また、海外駐在中も日本国内の社会保険料や住民税等
の支払いやローン返済のための内地給与払いといった、円貨での日本払いの一定額が必要に
なります。このように支払いが現地払いと日本払いの2本立てにすると、物価や為替が大き
く動いた時はどのように運用するかも考えなければなりません。現地での支払いはある程度
の生活水準が維持できるように配慮も必要です。(特に工場長や現地法人社長という役職で
あれば、対外的な影響も加味しての処遇が必要かもしれません)一般に多くの企業は手取り
額での給与を算定し、住居は別途社宅扱いして家賃の全額会社負担としています。(社宅は
利便性のみならず治安面や衛生面で十分な地区を確保してください)家族帯同の場合は更に
子供の通園・通学等の教育手当も必要です。かなり割高になることは事実ですから、それを
上回る収益をあげるビジネスモデルを構築してください。(後述コラムの「全世界所得」の
項目を参考)出張等の旅費規定も日本のような運用ができないこと(領収書がないことや航
空券の価格バラツキ等)もあるので、出張手当等の弾力的な運用が必要になります。

2
  給与面以外での整備 
 一番注意を払いたい点は安全面での対応です。政変や暴動といったものからデモに巻き込
まれるリスクがあること、しかもニュース等が日本のように日本語で瞬時に流れる事はない
ので、緊急連絡網の整備と在外日本人商工会議所等との連携もしっかりと行えるような体制
にしてください。

3
  現地スタッフ雇用 
 現地で仕事を進めるためには、現地スタッフを雇う必要があります。 (国と業種によって
は邦人何人に対して現地スタッフを何人以上雇うといったルールもあります)何よりも持っ
ておきたい視点は、現地で我々は仕事をさせてもらっているという「謙虚さ」です。そして、
日本と風習も教育制度も違うことを意識して、無理やり自分たちのやり方を押し付けないこ
とが重要です。トラブル回避のためにも、以下の点に留意して良いマネジメントを行ってく
ださい。
 ・給与や待遇のことはスタッフ間で情報交換されるので、全員を公平に扱うこと
 ・職務規定の設定を行い、業務内容には厳格な運用を行うこと
 ・人前では怒らない、指導や指摘は個別対応で行うこと
 ・一般に「問題ない」という言葉を良く使いますが、それを鵜呑みにしないこと
 ・どこまで分かっているか、実行するのか、といった点まで丁寧に質問を行い、確認すること
 ・文化風習の他に、宗教や地域性にも理解を深めること

12
駐在員の処遇と現地スタッフの雇用

給 与
 日本払いと現地払いの2本立てで対応する

 為替や物価の変動への柔軟性も考慮する

 家族を含めて生活していくための処遇を配慮する

 出張手当等の弾力的な運用も必要となる

待 遇
 特に安全面へ注意を払う

 社宅の立地(利便性・治安面・衛生面)を考慮する

 緊急連絡網と在外日本人商工会議所といった情報網を整える

現地スタッフ雇用
 日本と違うことを十分に認識する

 職務規定の厳格な運用を行う

 文化風習・その他にも十分配慮する

 質問と確認を適切に行う

東京商工会議所 海外支援担当コーディネーターからの一言!
 海外ビジネス、特に海外進出を伴うビジネスは、かなりのコストがかかり
ます。だからこそ、綿密に計画を練って準備をしっかり行うことが重要になっ
てきます。給与面でも日本と現地の2本立て、そこで為替リスク以外に物価
の変動も考える必要があります。そこで駐在する社員が意欲を持って、仕事
にまい進するために、これらの制度は丁寧に構築したいものです。また、現
地スタッフとトラブルを起こさないためにも、何よりもその国で仕事をさせ
てもらっているという謙虚さは常に持っておくこと、これがその国での現地
化の秘訣と言えます。

海外ビジネスガイドブック: 13
東京商工会議所 海外支援担当コーディネーターからの一言!

税金の話

 企業が海外展開を行う際税金の話は避けて通れません。事業関連の税金(法
人税等)はよく調べていますが、その他(駐在員が現地で受け取る給与や福
利厚生等)についても、現地法制を十分に把握することが重要です。
 国によって税制は異なるので、必ず税理士とご相談の上対応してください。

PE課税 Permanent Establishmentの略
  税務上の概念(恒久的施設)

 本格的に海外ビジネスを行うようになると、海外出張が多くなってきます。
下記の「全世界所得」と関連しますが、ある国に“183 日(1 年の半数以上)”
滞在した人は、その国の恒久的施設(インフラ関係、駅等公共施設建設には
その国の税金が使われ、それを出張時に利用している)受益者であることか
ら、ある程度税金を納めるべきだとの考え方です。

全世界所得

 納税対象となる所得額は、勤務地(例えば駐在地)で支払われる給与だけ
が対象ではなく、“全世界で稼いでいる給与所得すべて”が税金の対象とな
るという考え方です。例えば、ある人が現地で月額 10 万円を受け取り、残
りを住宅ローン等の引き落とし用に日本の口座へ支払われるように設定した
とします。この場合現地での所得額申告をこの 10 万円だけとすると、かな
りの過少申告になるということです。一般に日本人は海外駐在をした場合、
日本における社会保険等のコストや内地給与(日本での口座への支払い、特
にボーナスが多い)や現地での住居コスト(多くの企業が社宅扱いで給与と
は別建てで援助しているので)の便宜供与を受けています。それらの額も給
与所得の申告対象ということです。
(不足分は追徴税の対象で、多くの国は
累進課税制度を取っているので、正しく申請しないと追徴税が大変な額に上
りますので十分注意をしてください)

14
海外給与の決め方(一例)

 第3節では海外駐在員の処遇や現地スタッフ雇用の考え方を説明しましたが、社員の海外派遣の実
際は各社の海外展開の業務内容により千差万別です。
 短期出張では経費や給与は内地払いですが、年183日を超える長期出張や、駐在員事務所・海外現
地法人に出向させる場合、派遣国での各種税金・社会保険料などが発生します。駐在員にはその事務
所または現地法人から現地給与を支給し、日本では親会社から内地給与を円建てにて国内で払うこと
になります。ここでは海外に自社の社員を派遣(1年以上の長期派遣)する際の、海外給与・国内給
与、内地での社会保険(厚生年金、健康保険、労災保険など)の設定事例を紹介します。赴任国での
各種税金や各種保険制度は各国で違いがありますので事前に十分調査することが必要です。
 尚、海外給与を含む海外赴任規定を事前に整備することをお勧めします。詳細については弁護士ま
たは社会保険労務士の専門家を活用してください。

<海外給与の考え方>
◦派遣社員の国内年収を基準に各手当(海外インセンティブ、ハードシップなど)を加算した金額を
ベースとし、外貨建ての現地給与と円建ての内地給与を設定するのが一般的です。
◦現地給与(月給)は、日本と現地での生計費差異(生活費、住居費、教育費など)を勘案して算出
し、現地での税金、社会保険料も全額会社負担とすることとなります。
 
(現地で課せられる社会保険での年金受給権付与には滞在期間が満たずに需給できぬケースが多く
二重払いもあり得ます。)
◦内地給与はボーナス、社会保険・雇用保険の本人負担分、貯蓄・ローン相当分を円建てで支給する
ことを原則とするのが一般的です。これは、現地給与は現地で相応の生活をするための費用で、帰
任時原則使い切る範囲で支給する、本人の将来のための貯蓄や業績インセンティブなどは内地給与
で保障するという考え方がその背景となっていると考えられます。
◦内地での社会保険、雇用保険、労災保険は加入継続が必要です。年金保険については本人の将来の
年金額に不利益が生じないように、年金事務所や健康保険組合と保険料納付額につき調整が必要で
す。尚、雇用保険は海外勤務中に離職した場合失業認定が受けられないことや、労災保険では海外
就労は対象外のため「海外派遣者の特別加入制度」の申請・承認手続きが必要であることなど注意
が必要です。
◦尚、派遣国により現地の所得税、社会保険制度などは大きく違います。また現地医療費が高額で日
本の健康保険の給付だけでは不足となる地域がありますので、海外旅行傷害保険などの併用も研究
すべきです。
◎海外駐在員給与関係での会社の負担総額を下記に示します。
 <現地費用>
 (本人手取)現地給与(現地生活費、住宅費、教育費、医療費)
 (会社負担)現地税金、社会保険・雇用保険料(本人支払分・会社支払分いずれも)
 <内地費用>
 (本人手取)賞与、内地社会保険料相当、各手当(海外インセンティブ、ハードシップなど)
 (会社負担)内地社会保険・雇用保険料会社負担分
 (会社負担)労災保険料、海外旅行傷害保険など。

海外ビジネスガイドブック: 15
第3章 実践!海外ビジネス

第1節 販路開拓へのヒント
 海外ビジネスをこれから始めようとする企業にとって海外で販路開拓を行うことは容易で
はありません。自社の内部環境・外部環境を客観的に分析した上で、戦略をもって取組む必
要があります。ここでは、どのように販路開拓に取組むべきかをお話しします。

1
  市場調査 
 自社の商品・サービスに対し取引対象国でどのようなニーズがあるかを想定し、それを調
査する必要があります。また、国が異なれば、法律や制度が異なり、日本と同じビジネスが
展開できるとは限りません。例えば日本国内で中古家電を扱っている会社が輸出を始めよう
としても、海外では中古家電の輸入を禁止している国も多く、まずは取引対象国の法制度に
関する確認や理解が必要となります。

2
  現状分析 ~自社の強みを活かす~ 
 「あなたの会社は他社に負けない強みをもっていますか?」
 国内ビジネスと同様に海外ビジネスにおいても、この質問に対する回答はとても重要です。
もし、「特に強みはないけど、成長著しいアジアなら、日本製という信頼で売れるのではな
いか?」という期待を持っているとしたら、その認識は甘いと言わざるを得ません。実際に
海外で収益をあげている会社には必ず独自の強みがあります。客観的に自社の内部環境・外
部環境を分析してください。

3
  戦略策定 ~ビジネス形態を検討する~ 
 現状分析が終わったら、具体的に取引対象国においてどのようなビジネスの形態が展開で
きるかを検討してください。例えば、国内で資金繰りの厳しいメーカーが、単独で海外に新
工場を設立するのは資金的に難しいでしょう。商品の輸出や知的財産権を活かした技術ライ
センス契約といった選択肢が現実的かもしれません。このように状況に合わせて実現可能な
戦略を検討し、ビジネス形態を想定する必要があります。

4
  パートナーを探す 
 経営資源の限られる中小企業にとって、自社単独で十分な営業活動ができる会社は多くあ
りません。海外ビジネスに一緒に取組む信頼できる以下のようなパートナーを見つける視点
が重要になります。
 ・一緒に事業を展開する出資パートナー
 ・国内商社、現地の販売代理店
 ・自社と関連する商品・サービス・技術を提供する会社
 ・弁護士、公認会計士、経営コンサルタントなどの外部専門家
 ・その他の情報提供者(取引先、金融機関、友人等)
 海外ビジネスの検討段階からこれらのパートナー全てに恵まれていることはほとんどないで
しょう。しかし、自社の商品やサービスに特徴があり、そうしたニーズが海外市場にあれば、海
外ビジネスへのアプローチをしている中で、パートナーに巡り合うチャンスは必ず出てきます。

16
▼販路開拓のステップ

①市場調査 ②分析 ③戦略策定 ④パートナー選定


価 格、流 通 状 況、地 SWOT分析
(※)
を活用 短期と長期の視点 ・人づての紹介、展
域の特色、通関・関税・ ※企業の経営環境を 誰に・何を・どのよ 示会、ネット活用等
流通制限の有無、現地 内部(強み・弱み) うに・いくらで ・信用調査(登記簿:
販売コスト算出、競合 と外部(機会・脅威) ビジネス形態の決定 営業許可証の確認
状況等 に分けて分析し、戦 含む)
略策定に活かす方法

販路開拓の事例:環境設備メーカーがアジアでの販路開拓を検討したケース

①現状分析
強み(Strength) 弱み(Weakness)
・国内公共事業での実績 ・マスコミの取材実績あり ・国際人材の不在 
内部環境
・特許や運営ノウハウを持つ ・海外ビジネスの経験なし
・意思決定のスピードが速い ・資金余力不足
機会(Opportunity) 脅威(Threat)
外部環境 ・中国環境需要の広がり  ・海外からの強い引合い ・ノウハウの流出
・アジアでの高い経済成長率 ・海外競合他社の技術力向上

②戦略策定
 国内での実績をアジアの展示会・見本市で最大限アピールし、特許やノウハウ等の知的財産権
を活かした展開を検討。資金のかかる海外への投資(法人設立)は避け、設備や部品の輸出取引
や技術ライセンス契約を念頭に早期の収益獲得を図る。

③実際に展開したビジネス形態
期待する収益:
海外企業との取引の形態と 第一ステップ:設備輸出による代金回収
期待する収益を具体的にイ 第二ステップ:コア部品の継続輸出による代金回収
メージすることが重要 最終ステップ:海外での合弁事業による配当

①設備の輸出

②コア部品や
 原料の継続輸出
③設備販売先との合弁事業の展開(環境事業)
日本側:ノウハウの提供
中国側:土地・建物・設備・資金の提供

海外ビジネスガイドブック: 17
5
  販路開拓のアプローチ 
 海外の情報を収集し、販路開拓のきっかけをつくるために以下の方法が考えられます。日
本国内でできることも多くありますので、身近なことから取組んでいきましょう。
1)既存ビジネスから得られるヒント
 例えば国内の取引先が海外へ生産を移転する場合、国内の取引がなくなるリスクがある一
方で自社にとっても海外へ事業を展開するチャンスがあるかもしれません。取引先から得ら
れる情報は信頼性も高く、実際に海外へ進出している取引先からパートナー候補の紹介を受
けるケースも多いようです。また、貿易取引を行ったことのない企業でも、国内販売先を経
由して間接的に製品が海外へ流れているケースもあります。これは少なくとも自社の製品が
コストも含め海外で受け入れられていることを示しています。 販売ルートを確認し、ユーザー
情報を入手することで、同じような需要の掘り起こしが可能になります。
2)展示会・見本市への出展
 海外での展示会・見本市への出展は、パートナーを見つける確かな方法の一つです。詳細
は、次節で説明します。
3)各種支援機関の活用
 情報収集や海外ビジネスの相談に各種支援機関を活用できます。無償サービスも多く、積
極的に活用することで有用なアドバイスを得ることができます。 (第7章参照)
4)IT活用
 現在はインターネットにより、企業間の情報格差は大幅に縮まっています。中小企業こそ
積極的にインターネットをはじめとしたITを活用して、情報を収集・発信すべきです。
 〈活用方法の例〉
 ・英語ホームページの作成による外国企業へのPR
 ・JETRO海外情報の検索、TTPP
(国際ビジネスマッチングサイト)への登録
 ・海外取引ポータルサイトによる海外顧客・サプライヤーの検索 等

6
  販路開拓に必要な心構え 
 ここまで販路開拓のプロセスと具体的なアプローチについて説明してきました。
 海外の販路開拓には、新たな顧客を見つけるための積極的な営業活動とリスクや相手を見
極めて契約する慎重な態度の「攻めと守り」の両立が不可欠になります。次に挙げる基本姿
勢を再度確認して、必ず海外ビジネスを成功させるという強い意思をもって取組んでくださ
い。
 ・チャレンジ精神
  ビジネスがうまくいかなくても諦めないチャレンジ精神が大事です。ただし、その際も最
大リスクを予め見極め、事業経営にできるだけ影響を与えないよう注意が必要です。
 ・ヘッドワーク、フットワーク、ネットワーク
  自社のビジネスについてよく考え、現地に赴き、人の話を聞いて、信頼できるパートナー
を見つける姿勢が重要です。
 ・甘い話に注意
  海外は言葉も文化も違います。聞いた話が全て本当か慎重に見極める必要があります。
 ・契約前の交渉の重要性
  安易に相手の要望を受けず、必要な条件交渉を行いましょう。厳しい交渉の中で初めて
相手の本音を見極められることもあります。

18
●海外展開に必要な3つのワーク
自社の強みは何だ
ろう?
ヘッド 新たな市場はある
ワーク だろうか?

フット ネット
出張して実際に見てみ ワーク ワーク この問題は国際弁護
ましょう。 士の友人に相談して
公的支援機関に相談し みましょう。
てみましょう。

●甘い話に注意
信用して
大丈夫?
私は●●と特
別なコネがあ
るので手数料
を払ってもら
えれば、話を
つなぐことが 安易に納得せず、相
できます。 手をしっかりと見極
め、戦略性をもって
交渉しましょう
●契約前の交渉の重要性

支払いは全額
前金で。品質
工場見学しなく
は国際規格に
ていいかな?
対応している
仕様書も交わし
ので問題あり
てないけど。
ません。

東京商工会議所 海外支援担当コーディネーターからの一言!
 海外取引は国内取引以上に取引先への「与信判断」が重要となります。「与
信判断」とは“取引先の信用状況に応じて取引可能範囲を決定すること”で
す。一般に商社では取引先の信用調査情報を入手し独自の格付けをして、格
付けに応じた「販売与信枠」を設定します。与信リスクは決済条件により異
なるため、高額取引では L/C(信用状)決済など、後払いの銀行送金より
リスクが低い決済方法を採用するのが一般的です。財務情報等の客観データ
と会社の風土や社長の人柄といった主観データを総合的に判断し、決済条件
と取引可能額を決定するというリスクの分析とその対策が中小企業にも求め
られます。

海外ビジネスガイドブック: 19
第2節 海外展示会

 海外ビジネスを軌道に乗せるためには、海外展示会(見本市や商談会を含みます)を有効
に活用してください。展示会出展に対する考え方や出展準備の進め方は原則国内の展示会と
変わりありません。多くの企業は、「展示会に参加することで目標を達成した」といった意
識が強く販路開拓の成果が得られていないケースもよくあります。ここでは、海外展示会へ
どのような点に留意して準備を行い、参加し、来場者へのフォローについてお話しします。

1
  準備 
 展示会は自社の営業とパートナー発掘への絶好の機会です。海外展示会は国内展示会に比
べてキーパーソンがより多く参加し、その場で商談が決まりやすい傾向があります。だから
こそ、しっかりと事前準備を進めて参加してください。そのために、以下のような点を留意
して準備を進めてください。
 ・展示会出展の目的(販路開拓・新製品のPR・情報収集等)の明確化
 ・予算と準備のスケジュールの策定
 ・前年展示会のデータ(出展者・来場者数・属性等)の確認
たて ね
 ・その場で値段を聞かれても良いように建値(運賃の負担等を明確にした価格や通貨)・
納期・ロットサイズの事前設定
 ・販売方針の確認と売買契約書や代理店契約書のひな型の準備
 ・
(英文や中文)での名刺や展示物の説明資料の作成とサンプルやノベルティの選定
 ・見込み客への事前の案内と商談の予約、通訳や展示デザイン業者や物流業者の手配
 ・ATAカルネ(展示物の当該国への持込みの際に通関等での簡素化の書類)の準備
  (※ATAカルネ:日本商事仲裁協会のホームページ(http://www.jcaa.or.jp/)をご参照
ください)

2
  当日の対応 
 展示会当日は予想や準備していなかったことも起こりえます。当日は必要に応じてミー
ティングを開催し、情報の共有や取るべき対応策の検討をしっかり行いましょう。
 ・展示会当日はかなり疲れます。体調管理に注意してください。
 ・名刺交換や商談終了後にメモや整理を行うこと(記憶のある当日中に実施)
 ・雑談やちょっとした会話から話が弾みヒントが拾えます
 ・競合他社や新製品等の情報収集も行いましょう

3
  事後フォロー 
 せっかく名刺を交換しても長い期間連絡を取らないと、相手から「当社の対応は遅いです
よ」とマイナスの印象を持たれます。重要と思われる相手には「すぐ連絡をとる」努力は行
いたいものです。
 ・来場者からの質問や問合せへの対応や不足した資料の送付
 ・商談の申し入れやメールでのやり取りの開始
 ・次年度への参加の可否と失敗や問題の確認

20
海外展示会

海外の展示会に参加するにあたってのポイント

展示会参加の目的の明確化
・新規顧客開拓  ・新製品や技術のPR   ・代理店や提携先の発掘
・市場調査や情報収集  ・従業員のモチベーション向上や教育の場

商談に向けた条件面での準備
・デリバリー(荷渡し)条件の決定(運賃や保険の負担は、売手か買手か)
・数量(ロット)
、サイズ(輸送に適したサイズはどの程度か)、梱包形態、
納期の設定
・一般的な契約条件や販売方針等をできれば英文の書面での準備

当日の対応
・具体的な商談対応(契約書等のサンプルを見せながらの交渉等)
・体調管理
・ミーティングを行い、必要あれば現場での軌道修正

事後フォロー
・早いうちに接点を持つ(20日以内が目安)
・反省会の実施(得た情報や今後の計画等の共有)

東京商工会議所 海外支援担当コーディネーターからの一言!
 展示会では非常に多くの名刺交換が行われます。しかし、なかには名刺の
コレクションだけで終わっているケースも少なくありません。名刺にも賞味
期限があります。せっかく手に入れた名刺もフォローが遅くなって賞味期限
切れになっては意味がありません。展示会終了後(帰国後)に実際どれくら
いフォローできるのでしょうか?何社ぐらいであれば、対応可能なのか事前
に確認し、海外展示会でもただ単に名刺の交換ではなく、印をつけることで
重要度のランク付けをする等工夫してはいかがでしょうか?

海外ビジネスガイドブック: 21
第3節 代理店活用法

 海外販路開拓の有効な方法の一つが代理店の活用です。
 商品に消費者を魅了するブランド価値や他社にない特徴がある場合、海外バイヤーから代
理店になりたいと打診を受けることがあります。ここでは代理店の活用についてお話ししま
す。

1
  代理店活用のメリット・デメリット 
 代理店活用には、以下のようなメリット・デメリットが考えられます。
 〔メリット〕
  ・代理店の販路、人脈、ノウハウを活用することができる
  ・営業活動において資金と時間を抑えることができる
  ・複数の代理店を起用すれば、営業活動をより広げることができる
 〔デメリット〕
  ・手数料を支払うため利益率が下がる
  ・エンドユーザーの情報が入りにくくなり、次の商品開発に活かせない
  ・販売に関するノウハウが自社に残りにくい
 これらのメリット・デメリットを考慮に入れて代理店の活用を検討する必要があります

2
  代理店の種類 
 日 本 で は 一 般 に 「代 理 店 契 約」 と 表 現 さ れ ま す が、 実 際 に は 1)Distributorship
Agreementと2)Agency Agreementの2つの形態があります。当事者間の権利義務が異な
るため注意が必要です。
Distributorship Agreement Agency Agreement
原則Distributor(輸入者)が行い、仕 値 決 め は 売 り 主(輸 出 者) が 行 い、
商品の値づけ
入との差益を輸入者の収入源とする。 Agentは手数料を受け取る。
債権回収のリスク負担 Distributorが負担する 売り主が負担する
一般にDistributorが倉庫を設け、製品 一般に倉庫を設けず、顧客への配送は
倉 庫
を流通させる。 売り主の指示により行われる。
Distributorが負い、売り主は拘束され Agentによるエンドユーザーとの契約
エンドユーザーへの契約責任
ない。 は、授権の範囲内で売り主を拘束する。

3
  代理店活用時の注意点 
 代理店の活用を検討する際は次の点に特に注意する必要があります。
 ・契約を独占、非独占のどちらにするか
 ・商標や意匠登録等必要な知的財産権保護を行っているか
 ・模倣品流出時の対応に対して、相互の役割分担をはっきり決めているか
 ・代理店となる会社は、営業に必要な知識・経験を有しているか
 ・売り主による営業支援の内容に関しお互いに合意しているか
 ・契約の付帯条件として、最低数量や目標、数量の設定を検討しているか
 ・契約期間や契約の解除条件を明確にしているか

22
代理店の種類

1)Distributorship Agreement

売買契約
売買契約 Distributor 売り主
エンドユーザー
値づけ (輸入者) (輸出者)
Distributorship
販売
在庫リスク Agreement
配送
債権回収リスク
販売-仕入=差益 

1)Agency Agreement

エンドユーザー 値づけ・売買契約 売り主


(輸入者) (輸出者)
手数料
在庫リスク
交渉 債権回収リスク
営業
(仲介) Agent Agency Agreement

貴社商品の販売 それでは、最低買取数
店として独占販 量は月30,000セット
売権を私にくだ でお願いします。
さい。

 独占販売権付与は、自社製品の販売機会を大幅に狭めてしまうリスクがあるため、慎
重に検討して決定しましょう。

海外ビジネスガイドブック: 23
第4節 リスクマネジメント

 海外ビジネスは日本国内でのビジネスに比べ、一般的には金額も大きくなり期間も長くな
る傾向にあります。コミュニケーションも、言葉の壁等による情報不足やお互いの意思疎通
がうまくいかないケースもよくあります。更に、これらが原因で意図する・しないに関わら
ず誤解や勘違いが起こり、その結果、トラブルをより大きく、より深刻なものにしてしまい
ます。トラブルが発生した際も、初動対応のちょっとしたミスが大きな致命傷になります。
一方、その対策は特に変わったことを行うのではなく、いかにビジネスの基本を忠実に守り
実践していくか、ということになります。ビジネスの基本である「確認をとる・証拠を集め
る・迅速に行動する」といった極めて当たり前のことを着実に行うことが、何よりのリスク
マネジメントになります。ここではカントリーリスク(その国の政治・経済・社会情勢等の
リスク)を除く、全般的なリスクマネジメントと与信に関してお話しします。

1
  トラブルを未然に防ぐには 
 当該国の特性や商慣習を知るための努力を怠らないこと、そのためのアンテナを張ること
が大事です。
〈情報収集〉
 ・
「目診(現地・現物・現実をしっかり見る・しっかり感じる。例えば仕入れ先の倉庫は
どの様な状態か?相手の事務所の雰囲気は?)」の頻度を上げて行う
 ・会計士や税理士といった専門家を活用する
 ・現地の在外日本人商工会議所や業界団体から情報を得る
〈仕組みの徹底と基準の更新〉
 ・確認作業(どのタイミングで・どれくらい・誰がするのか)を行う
 ・知らず知らずに変わっていたということのないように、常に振返りを行う

2
  トラブルが起こったら 
 情報収集と理屈の組み立て(相手と交渉するには理詰めで話を進めることが多いので)を
行い、迅速に行動を起こす。
 ・お詫びするべきことはすぐに詫びる(初動対応のミスが大きなクレームに発展すること
もある)
 ・関係者や関係事像をまずは大枠で捉え、最大のリスクは何かを考える
 ・トラブルの原因調査と解明を行い、応急処置を実施する
 ・再発防止のための恒久処置を行う
 ・必要に応じて賞罰を行う

3
  与信対策に関して 
 海外での与信は分かりにくいものです。一般の企業調査に関しては第7章2.個別ニーズ支
援機関の項を参照してください。上記で述べた「目診」も非常に重要です。また、初めてのビ
ジネスであれば全額前払いやL/C(信用状)を使った取引から開始することも先方と交渉し、
リスク軽減に向けた対策を講じてください。

24
リスクマネジメント

リスク回避にあたってのポイント
・風習や商慣習の違いを理解する
・確認をとることや文章にすること
・弱みを作らない/握られないこと
・相談相手(弁護士・会計士・在外日本人商工会議所、等)を持つこと
・現場で「何か変化がないか」という常に状況を確認する意識を持つこと

トラブルが発生したら
・情報収集と理詰めで対応
・詫びる点は詫び、主張する点は主張
・応急処置だけでなく、再発防止の恒久処置
・感情論に入らない、思い込みの排除

東京商工会議所 海外支援担当コーディネーターからの一言!
 海外でトラブルが起こっても、対応の基本は日本と同じです。迅速な情報
収集を行うこと、問題解明に向けた原因追究と対策の検討を速やかに行うこ
と。関係する人や組織は誰か?最大のリスクは何かを考えて、大局感を持っ
て解決に向けて対応することが重要です。また、同じ過ちを二度と犯さない
ためにも、しっかりとした恒久処置も行いましょう。
 一方、普段からトラブルを起こさないためにも、現地・現物・現実を見て、
変化の予兆を探ることやスタッフとコミュニケーションを密にとってリスク
の芽を摘んでいきたいものです。
 尚、この節では「カントリーリスク」は特に取り上げませんでしたが、ビ
ジネス対象国での社会情勢の変化(国内動乱や革命、輸出入の禁止や経済制
裁、法律や税制の変更・外貨準備高や対外債務からの国自身の信用問題、等)
からのリスクがあることも事実です。これらのリスクはビジネスリスクより
も大規模ですが、貿易保険の付保によりリスクの軽減策があります。詳しく
は日本貿易保険のホームページでご確認の上、個別に相談されることをお勧
めします。

海外ビジネスガイドブック: 25
第5節 クレーム対応

 海外ビジネスにおいてクレームの発生は避けたいものですが、実際には様々なクレームが
発生し、場合によっては紛争にまで発展するケースもあります。売り手(輸出者)と買い手(輸
入者)で立場の違いはありますが、クレームが発生する原因とその対策は共通しています。

1
  なぜクレームが発生するのか? 
 クレームが発生する理由として、以下の内容が考えられます。
  1)売り手と買い手の仕様に関する認識が合致していない。
不良の基準が合致していない。
  2)商品が仕様を満たしてない。納入された商品が不良品である。
  3)売り手または買い手に悪意がある。

2
  クレーム発生を防ぐ方法 
 クレーム発生の防止策として、 まず明確な契約書を締結していることが大前提となります。
契約書は売買双方の合意内容を反映したものであり、どちらに問題の原因があるか判断する
基準となります。さらに、発生原因ごとに次の防止策が考えられます。
  1)仕様の不一致について
   ・品質の保証内容を明記した仕様書を予め締結します。実際に中小企業ではこの仕様
書の締結作業を行っていないケースが多く、問題発生後の対応を難しくしています。
  2)不良品の発生について
   ・売り手として不良品が発生した場合は、品質管理の点から工程を確認する必要があ
ります。
   ・買い手として不良品を購入してしまった場合は、海外工場への取引前の調査が不十
分だったことが考えられます。最近ではネットでサプライヤーを開拓し、直接会わ
ずに高額な購入を決定し、大量の不良品発生でトラブルになるケースも増えていま
す。また、海外トレーダーが取扱工場の訪問を拒否するような場合は注意が必要で
す。
  3)取引先に悪意がある場合
   ・信頼関係は取引の基本です。初期の取引では、取引金額を抑えることが基本です。
   ・交渉段階で敢えて厳しい要求や細かい要望を出して、相手の反応を見ることも重要
です。

3
  クレーム発生後の対応 
 万一クレームが発生したら、速やかに対応しましょう。
 ・不良品の発生ロットを確認し、不良品の具体的な状況を把握しましょう。
 ・原因を究明し、同じ問題が発生しないよう対策を講じましょう。また、不良品により欠
品が発生しないよう対応しましょう。
 ・不良品や選別コストの金銭補償や代替品の出荷等実務的に交渉しましょう。もし話がま
とまらない場合は、仲裁機関や弁護士等専門家の活用も検討しましょう。

26
クレームの事前防止策
・事前調査の徹底  ・取引相手の見極め   ・明確な契約(※)
・仕様書の締結  ・免責事項  ・契約書に仲裁条項を規定
・決済リスクの低減(輸出取引におけるL/Cの活用)等
※契約の種類は第9章 使えるフォーマット集を参照ください。

クレームの解決方法
・早急な原因究明 ・当事者による話し合い
・第三者による斡旋・調停・仲裁 ・訴訟提起

貴社から提示
された契約書
実務的で細かい質
の◯条×項の
問が出てくるとい
意味は、具体
うことは信頼でき
的に「……」
そうかな…。
という意味で
すか?

信頼できる相手と取引することが最大のクレーム防止策

国際仲裁の特徴
・一審制   ・柔軟な手続   ・当事者による仲裁人の選任
・非公開   ・国際的執行力  ・中立性
(主な仲裁機関:日本商事仲裁協会、アメリカ仲裁協会、国際商業会議所国
際仲裁裁判所、ロンドン国際仲裁裁判所、香港国際仲裁センター、シンガポー
ル国際仲裁センター等)

製造物責任について
 品質に対するクレームの他、海外取引においては製造物責任を問われるケースも増え
ています。製造物責任への対策については、販売する国における商品取扱上の法律や状
況を調べて、安全性確保のための措置や取扱説明書でのしかるべき説明をする必要があ
ります。海外ビジネスにおいては、売買双方の製造物責任の所在を明確にし、保険を付
保することも重要な対策の一つです。尚、東京商工会議所では、「中小企業海外PL保険
制度」を設けていますのでご活用下さい。

海外ビジネスガイドブック: 27
第6節 海外進出の手順

 海外進出の手順を、海外に生産拠点を設立する企業を例にとり、現地法人設立・生産拠点
建設から操業を開始するまでの手順についてお話しします。海外進出の成功要因は、十分な
事前準備です。社内に推進チーム等を組成し、海外進出目的を明確化し、国内・海外での調
査をもとに「事業可能性評価(フィージビリティ・スタディ)」を実施し、海外進出を社内
決定することになります。 海外進出決定後は、チーム員等を現地に派遣する等詳細な海外
進出計画に基づき現地法人設立・工場建設・人材採用等の操業開始のための諸準備を実施す
る手順となります。

1
  事業可能性評価(フィージビリティ・スタディ)
1.
「事業可能性評価」とは、進出目的達成のためのビジネスモデルを策定し、そのビジネス
モデルによる収益は、海外進出に伴う投資に見合う価値があるものなのかを分析・評価
することです。
2.具体的には、想定した進出国・ビジネスモデルに基づき、果たして市場性はあるのか、
どの程度の市場規模なのか、どのくらいの価格で販売可能なのか、各種コストはどのく
らいかかるのか、更に長期的視点でそれらの要素の変動リスクはどのくらいなのか、リ
スクが発現した時の影響はどうなるのか、進出期間を通じての採算はどうなるのかなど
を、いくつかのパターンに分けて分析・検討してください。
3.「事業可能性評価」を実施するうえでの留意点
 1)社員にも経営者の思いを共有してもらい、海外進出をスムーズに進めるためにも、検
討段階から社員がメンバーであるチーム等を組成し、海外進出計画・事業可能性評価
を実施してください。
 2)分析・評価で陥りがちな過ちは、「進出ありき」でリスクを過小評価したり、変動要
素を楽観的に捉えてしまう傾向にあることです。それを避けるために、一番起こりう
るケース・楽観的なケース・悲観的なケースを想定してください。場合によっては、
再度現地調査を行い、進出国・ビジネスモデルそのものを見直す等、新たな想定での
分析・検討をしてください。
 3)海外進出の知識・経験不足の場合には、東京商工会議所海外支援担当コーディネーター
やコンサルタント等の専門家を活用することをお勧めします。

2
  海外進出決定後の留意点 
1.海外進出決定後は、現地法人の設立・工場建設・人材採用等、現地における作業が一挙
に増加します。その対応としては、社内決定段階までに、社内の人事異動や組織変更・
社外人材の確保を含む人材配置を決定し、海外進出実行計画の中にしっかりと組み込み、
事前の準備をすることです。
2.また現場での諸作業において、海外進出実行計画と異なる状況が出てくることが多くあ
ります。
   その際、都度本社に問い合わせなければならないようでは最善の対応ができないこと
もあります。現場でタイムリーな決定ができる権限を持った人材の常駐も重要なポイン
トです。
(注)進出国の選定に関しては、第4章 第1節「進出国選定のポイント」をご参照くだ
  
さい。

28
海外進出の手順(海外に生産拠点設立の例)

海外進出決定まで
1.社内でチーム等の組成
  必要に応じ専門家等の確保
2.事業可能性評価(フィージビリティ・スタディ)
  国内調査/現地調査
  海外進出計画案作成
3.社内意志決定/海外進出実行計画作成

海外現地法人設立 操業開始までの準備
1.工場建設
1.申請書類作成
 ・工場設計         
2.投資庁・税関等の手続き
 ・消防署、環境局等への申請 
3.会社登記手続き
 ・工場建設
4.会社設立 
2.原材料手配 
5.銀行口座開設
 ・現地調達材料類の品質確認
6.資本金払込み
 ・現地調達備品購入準備
3.人材採用
 ・教育・研修
 ・就業規則作成

東京商工会議所 海外支援担当コーディネーターからの一言!
 海外ビジネスの準備段階における一番のポイントは、いかに現実的で精度
の高い進出計画を策定できるかです。現実的と考えた計画でも事業を開始し
てみると実際は違うことが多いものです。
 そこで慌てないためにも、事業パターンを、①一番起こりえるケース、②
楽観的なケース、③悲観的なケース、といった 3 パターンを考え、更にも
う一歩踏み込んで、④運悪く読みが全く外れた時のケース(撤退ケース)ま
で作成することをお勧めします。この撤退条件を事前に設定せず、撤退時期
を誤り、本社の経営をも危うくしてしまったという例があります。

海外ビジネスガイドブック: 29
第4章 国・地域別海外戦略のヒント

第1節 進出国選定のポイント
 進出国選定のポイントは、第3章 実践!海外ビジネス第6節海外進出の手順でお話しま
した通り、「事業可能性評価(フィージビリティ・スタディ)」の中で、自社の経営資源の制
約も十分に考慮しつつ、複数の候補国・地域を相互比較検討し、その実現可能性の高低・確
度をもって判断することです。

1
  候補国・地域の比較検討の視点 
1.マクロの視点としては、基本情報としての政治・経済情報や各種指標に基づく政治的・
経済的な安定度、外資の進出に対する各種規制・税務上のインセンティブ等の投資歓迎
度等を比較検討してください。
2.ミクロの視点としては、人件費・労使関係等の労働環境、会社設立・知的財産権保護等
の法制度の整備・運用状況、関税率・外国送金に関わる規制等の整備・運用状況、工場
立地の場合に特に重要となる電気・水道・物流・原材料仕入先等の関連産業の集積等の
インフラ整備状況等を比較検討してください。

2
  候補国・地域選定の留意点 
1.上記各視点から、候補国・地域を比較検討を行う際、現状分析の他に、将来予測が重要
なポイントになります。 進出後いつまで自社の競争優位性が維持できるかがより重要
だからです。仕入・製造コストの低減を求め中国に進出した企業が、時を経て労働コス
ト上昇により競争力を失うというように、候補国・地域の現在の労働コストの安さや優
遇税制の存在だけに惑わされないでください。最終的には、各視点の現状及び期間を設
定した将来予測に基づき、リスクとリターンの視点から総合的判断を下すことです。
2.リスクとリターンの視点からの判断に際しては、最短でも3~5年程度の海外進出戦略・
進出計画の策定が前提となります。その計画を遂行するうえで、候補国・地域において
将来的に自社の競争優位性を阻害する要因はあるのか、その可能性はどのくらいあるの
か、また逆に経済連携協定が結ばれる等競争優位性を高める要因はあるのか、結果とし
て進出計画の採算性はどうなるのか等を十分に考慮してください。
3.最後にもう一つ進出国・地域選定の留意点として、自社の社員を現地に派遣する際の社
員及び家族の生活環境にも十分配慮する必要があります。治安が悪く帯同した家族が安
心して生活を送れなければ、派遣社員も落ち着いてビジネスに従事することができませ
ん。結果として当初の目的・計画を達成することが出来ないケースも起り得ます。

30
進出国選定の主要評価事項

政治的安定度 投資歓迎度
・政治情勢 ・税法上のインセンティブ(優遇税制)
・経済情勢 ・外国送金等の外国為替管理規制
・法人税/個人所得税等のその他税制 

労働事情 生活環境
・労働力の質と量 ・治安事情
・労働力のコスト水準 ・住居/教育環境
・労使関係 ・派遣社員等のサポート体制

工場立地の場合の主要評価事項
・電気/水道/排水等のインフラ整備状況
・交通の利便性
・港湾/空港/内陸輸送等の物流整備状況
・用地/工場建設コスト
・産業集積状況
・良質安価な労働力確保の可能性

東京商工会議所 海外支援担当コーディネーターからの一言!
 進出国を選定する際に、
「新聞報道等でベトナム進出が急増している」「同
業者がタイに進出するらしい」「インドネシアに知人がいる」「現在マレーシ
アに販売代理店がある」等の理由により、安易に進出国・地域を決定される
ケースもあるようです。結果的に成功したケースもあるでしょうが、ほとん
どのケースが、期待に反した結果になっているようです。
 「いくら調査したところで将来のことは分からないのだから」とおっしゃ
る経営者の方もいます。その通りかもしれません。でも、経営者の果たすべ
き役割は、自社の海外進出計画を策定し、その計画の実現可能性をしっかり
と事前調査・検討し、リスクを極小化し、リターンを最大化できる進出計画
として進出国・地域の最終決定を下すことです。そうすれば、例え結果は予
想に反した場合でも、次に打つべき手を事前に用意する事ができるはずです。

海外ビジネスガイドブック: 31
第2節 市場別海外戦略のヒント

 ここでは成長著しい中国、香港、台湾、アセアン諸国を中心に、米国、韓国、インドを記
載しました。東京商工会議所海外支援担当コーディネーターから見た、ビジネスを行う上で
の視点として“一口メモ”形式でその特徴を簡単に記載しましたのでご参考にしてください。
 実際のビジネス実施にあたっては、「第7章活用できる支援機関」等を参照いただき、各
国ごとにそれぞれ調査を実施することをお勧めします。

⑴ 中国
 海外ビジネスに関する相談の中でも、相談件数の多い国の一つが中国です。
ここ数年における中国ビジネス環境の変化として、次の特徴が挙げられます。
 ・国民の購買力が高まり、「世界の工場から世界の市場」 として注目を集めています。
 ・外資に対する事業の制限が緩和される一方で、従来享受できた法人税減免等の優遇策は
減少しています。
 ・知的財産権保護は国内問題になりつつあり、法体系も急速に整備されています。
 ・豊かになった沿海地区ではサービス業の進出が増加し、製造業の拠点としては内陸都市
が注目されています。
 中国でビジネスを行うためには、 "変化の激しい中国を理解しようとする継続的な努力"
が不可欠です。

1
  中国人の特徴 
・仕事に対する考え方
  起業意欲や出世意欲が高い一方で、社員として真面目に働くことにやりがいを感じる人
は、一般に日本人ほど多くありません。社員のインセンティブを保つことは、組織運営の
ポイントになります。
・人間関係の重要性
  中国人同士のビジネスは、友人・知人間で進展することが少なくありません。その一方
で簡単に他人を信用することはありません。お互いに信頼できる関係をつくることができ
るかが重要になります。

2
  地域の特性を理解する 
 ひとくちに中国市場といっても、その面積は広大で、13億人の人口を抱えています。
 ビジネスを展開する時は、ターゲットとなる顧客層を明確にする必要があります。参考ま
でに現在ビジネスで注目されている各地域の特徴を下記します。
・東北地方:遼寧省、黒竜江省、吉林省を総称して「東北三省」と言います。日本に在住し
ている同地区出身者も多く、日本語人材が豊富なのが特徴です。大連市はIT
企業が集積し、アウトソーシングやコールセンターの拠点となっています。東
北人は「義理・人情に固い」と言われています。
・北  京:上海や広東省等の沿海都市に比べ、日本からの進出企業は少ないですが、持ち

32
株会社を北京におく企業も少なくありません。北京の人は「信用を重んじる」
といわれています。
・上  海:中国経済の中心であり、日本人居住者も多いのが特徴です。中国(香港を除く)
の中でも一人当たりGDPが突出して高いです。隣接する江蘇省や浙江省を含
めた経済圏を「大上海圏」と呼び、製造業の他、卸売、小売、サービス業でも
ビジネスの裾野が広がっています。
・山 東 省:青島市を省都にもつ沿海地区の省。朝鮮半島に近く韓国系企業の進出が多いです。
宴席で親交を深めてビジネスを進める伝統的なビジネススタイルを好みます。
・広 東 省:香港に隣接する深圳市や広州市を中心に加工貿易の拠点として発展した地域で
す。多くの華僑を輩出し、「実利的でビジネスを好む」と言われています。
 以上の通り、同じ中国でも地域によってビジネス環境や文化に違いがあります。また、最
近では中国に進出した日本企業や居住する日本人をターゲットにして中国で創業する日本人
も増えています。

▶コラム:「平等な評価」についての考え方の違い
 中国に進出した日本企業が直面する問題の一つに「人材が定着しないこと」がよく取り沙汰され
ます。実際に将来を期待された有能な人材が他社へ転職することも多く、中国の友人は 「日本企業
はとてもよくできた人材育成学校だ」 と冗談半分に揶揄していました。
 原因はやはり日本人と中国人の「給与」と「人事考課制度」に対する考え方の違いにあります。
日本では現在でも終身雇用に対する期待が大きく、一般に給与についてもボトムゾーンを重視しま
す。経営陣と組合との賃金交渉でも、その中心的話題は「ベースの水準」です。一方で、中国人は
出世意欲が高く、トップゾーンの給与レベルを重視する傾向があります。中国人幹部が一般社員の
10 倍以上の給与をもらうこともありますが、これに対し社員から不満が出ることはさほど多くあ
りません。大手中国家電メーカーでは、従業員の年度考課で毎年下位 10% の社員を自動的に解雇
にする制度を実施していますが、それが大きな問題になることはないようです。
 中国人の感覚では、能力もあり業績もあげている社員とそうでない社員との給与の差が少ない方
が不公平に感じるようです。実際に日本企業で給与体系の改革を実施し、成果主義を導入し幹部へ
の処遇をより厚くしたことにより、幹部に限らず全体的に社員の定着率が高くなったというケース
があります。
 海外進出にあたっては、その国ごとの考え方の特徴や違いをとらえ、現地の状況に即した経営体
制を作ることがビジネス成功の要件の一つだと思います。

▶コラム:中国でビジネスを発展させるために
 「中国でビジネスを発展させるためには、有力者との特別なコネが必要ですか?」 という質問を
受けることがよくあります。確かに人脈によって物事がうまく進むことはありますが、人間関係だ
けで仕事を進展させられるほど中国ビジネスは甘くありません。やはり自社の強みを活かし事業戦
略をもち、時間をかけて取引先や関係者との信頼関係を築くことが基本と言えるでしょう。また、
コンプライアンス(法令遵守)に対する意識は特に重要です。複雑な法制面もしっかりと把握し、
不正防止のための内部統制システムを構築することは中国で事業を発展させるために不可欠の要素
といえます。

海外ビジネスガイドブック: 33
⑵ 香港
 香港は1997年の中国への返還以降も 「一国二制度」 の政策のもと、自由貿易港として外資
系企業を優遇しています。97年10月以降、アジア通貨危機に伴う景気低迷を受け、観光誘致、
IT振興、中小企業・ベンチャー企業支援等競争力強化のための政策が実行に移されています。
 香港のビジネスにおける特徴は以下の通りです。
 ・関税障壁が低く、中国本土向けと比較して商品を輸出しやすい
 ・広東省珠江デルタ地区の加工貿易拠点としての取引が活発である
 ・貿易、金融、サービス業の比率が高い
 ・日本の農産物の主要な輸出先である
 ・集客力の高い国際展示会が多く開催されており、公的機関の支援メニューも豊富である
 ・香港人は食にこだわりをもち、外食産業が発達している
 ・「CEPA(中国本土・香港経済連携緊密化取決め) 」が締結され、香港から本土への市場
参入が優遇されている
  ※CEPA:Closer Economic Partnership Arrangement
香港―中国本土間の経済連携緊密化に関する協定。香港原産製品が中国本土
へ輸入される際の輸入関税が免除されるほか、香港のサービス業者、小売業
者に対して優先的に中国本土の市場参入を認める内容となっている

⑶ 台湾
 台湾は、1970年代から多くの日系企業が進出して日本とのビジネス関係も深い地域の一つ
です。また、台湾人は親日的で日本語が話せる人材が多いのも特徴です。儒教に基づく倫理
観と、中国の伝統的な家族制度が生きていて、家長を尊崇し、家族、人間関係を重視する傾
向にあります。
 台湾ビジネスの特徴は以下の通りです。
 ・長期的な展望よりも短期の利益を求める傾向が強い。
 ・商慣習上債権回収期間が長いことが多く、売上が増えると資金繰りが圧迫される。
 ・オーナー企業が多く、意思決定はトップダウン型が中心。
 ・パソコンや電子分野の製造業が盛んで、中国大陸へも多くの企業が進出している。
 ・中国大陸との経済交流も活発化しており、日本企業が台湾企業をパートナーとして中国
へ進出するケースも少なくない。

北京

上海 台湾

▶中国ビジネスゲートウェイとしての 広東省

香港・台湾の活用

香港

 ・中国市場に詳しい台湾や香港企業との連携も中国進出の一つの方法です。
 ・食品や飲食店は、進出への規制が緩く、食にこだわりのある顧客の多い香港を起点とし
てビジネスを展開するケースが増えています。

34
⑷ アセアン諸国
1
  アセアン(東南アジア諸国連合)とは、
 アセアンは、インドネシア・カンボジア・シンガポール・タイ・フィリピン・ブルネイ・
ベトナム・マレーシア・ミャンマー・ラオスの10カ国で構成され、 総人口は5億7,995万人
(2005
年)、GDPで3,431.2億ドル。2015年を目標に、アセアン自由貿易地域(AFTA)の市場統合
を通じて、欧州連合(EU)や北米自由貿易協定(NAFTA)に匹敵する地域経済圏を目指し、域
内は勿論、日本・中国・韓国・インド・豪州及びニュージーランド等とのEPA (経済連携協定)
やFTA(自由貿易協定)を締結する等、生産基地として、また新興市場として大きな潜在力
を秘めています。アセアンは多様な国々からなっておりかつ変化も速いです。各国の最新の
情報は、外務省やJETRO等から逐次入手するようにお願いします。
 ここでは相談の多いインドネシア・シンガポール・タイ・ベトナム・マレーシアと、昨今
話題の多いカンボジア・ミャンマーの特徴について東商海外支援担当コーディネーターのコ
メントを記載しました。

2
  アセアン国別戦略のヒント 
①インドネシア
 ・人口は世界第4位の2億4千万人、
生産基地・消費市場として大きな潜
在力を秘めた国・自動車・二輪車の
製造・販売拠点として第二次進出
ミャンマー
ブーム、裾野産業に進出のチャンス
 ・裾野産業を対象とした日本の商社等
による中小企業用の工場団地の活用
タイ
 ・東西に長い多島国、ジャワ島が中心、
バタム島*の自由貿易地域はシンガ
カンボジア
ベトナム ポールとの連携有効
②シンガポール
 ・日本からのアクセスが容易、アセア
マレーシア ンのハブ、隣接国/地域との連携有効
 ・インドネシア、マレーシアで製造し、
シンガポール シンガポールは販売といった役割分担
 ・人件費・土地リース代が高い、研究
開発業務やアジア域内における地域
統括・支援サービス業務など、資本・
知識集約型産業の進出がお勧め
 ・進出に対する規制が少ない自由貿易
国、欧米系進出企業も多く接点とし
ての活用
インドネシア

*シ ンガポール南海岸から約 20km のリアウ


諸島内にある島

海外ビジネスガイドブック: 35
③タイ
 ・親日的な仏教国、古くから多くの日系企業進出、工業団地・産業集積も進み、生活環境
も良好、中小企業にとって進出しやすい国の一つ
 ・インドネシア同様、自動車等の製造・販売拠点として第二次進出
ブーム、進出済み日系企業は第2の生産拠点として近隣諸国への
進出も活発化
 ・タクシン派の新政権発足、今後の最低賃金値上げ等の政策の成り
行きに注目

④ベトナム
 ・市場経済を推進しているが社会主義国であることの認識も
 ・タイ・インドネシア・マレーシアと比較してインフラ整備が今一歩、港湾設備・経済回
廊等の建設が進行中
 ・北部ハノイ地区は中国華南地区との連携、中国の代替生産基地としての日系企業の進出
増加、工業団地活用で裾野産業進出のチャンス
 ・南部ホーチミンはメコンデルタの中心、南部経済回廊の活用
で内陸カンボジア・ラオス等をバックヤードとして活用
 ・日本への留学生・技能実習生獲得を進出のチャンスに

⑤マレーシア
 ・古くはマレー人優遇策(ブミプトラ政策)による参入障壁、ルック・イーストを標榜、
シンガポールとともに東南アジアの優等生に
 ・日系企業は、電気・電子産業中心に 首都近郊セランゴール州、シン
ガポール隣接ジョホール州、ペナン島含むペナン州に多く進出、関連
裾野産業進出の機会に
 ・政府関連事業はマレー系企業と、民間事業は華僑との連携が有効

⑥カンボジア
 ・ベトナムよりも更にインフラ未整備、低価格衣料品等の特恵関税を活用できる製品の製
造委託にはチャンスも
 ・内 外 法 人 無 差 別 を 規 定 し た 投 資 法、 プ ノ ン ペ ン 経 済 特 区
(PPSEZ)、南部経済回廊などタイ・ベトナム等のバックヤー
ドとしての活用

⑦ミャンマー
 ・欧米諸国の経済制裁下、中国企業の進出が目立つ
 ・インフラ未整備、豊富で安価な労働力、タイ進出企業の第2次進出国としての期待も

36
⑸ その他主要国
アメリカ合衆国
・アジア地域と同様になじみがありイメージで湧きやすいが、情報過多で迷うことや現実と
のギャップが生じることも
・ビジネスのベースが契約社会であり、議事録は勿論、相互確認は極力書類にしておくこと
 9・11同時テロ以降は輸入品検査も厳しくなり、トレーサビリティ(履歴や追跡が可能で
あること)等の仕組み構築にも気を配る
・オープン(透明性)とフェアネス(公平性)およびコンプライアン
ス(法令順守)を重視といったお国柄
・儀礼的なことよりも実務的に話を進める傾向が高く、「何が自分(自
社)にメリットで、何がデメリットか?」という点を明確にし、交
渉の進める方が良い

韓国
・ビジネスの進め方は大手財閥系の企業を中心に即断即決型が多い
・仕事の延長で接待等も多く、お酒の量も一般的には多くなる傾向
・日本へのライバル意識が高いお国柄なので、誤解を招くような
不用意な発言に注意
・儒教の影響が大きく年長者への配慮は大事、また個人よりも組
織が重要視されやすい
・日本からのアクセスも便利なので、できるだけ実際に会って相
互理解を深めることも重要

インド
・最近の経済成長は目覚ましく製造業のみならずIT企業にも優秀
な人材を多く抱える
・2011年8月に日印間での投資や貿易の自由化に向けた経済連携
協定(EPA)の発効もあり、ビジネス交流はさらに伸びてい
く可能性は大きい
・多くの州が存在しその州ごとに宗教や言語も違い、税務面での
法制度も違いがある
・議論好きで交渉上手なので、理屈を組み立て論理的に話を進め
ていく必要あり

海外ビジネスガイドブック: 37
第5章 事例に学ぶ海外ビジネス
(東商相談事例の紹介)

1
  海外拠点を築くための視点 〈プリント基板加工業 創業30年 従業員80名〉
1)重要顧客の海外工場の現地調達
 A社は、複数の大手企業の下請けとして、電子部品業界の拡大とともに業績を伸ばしてき
ました。 今回の相談は、取引先のある大手企業からの要求によるものでした。その企業は
上場会社で積極的にアジア展開を図り、中国や他のアジア諸国の競合会社と生き残りをかけ
て15年前にアジアに生産拠点を持ち現地化を進めています。そこでA社に「今後の業界の流
れを勘案すると、海外に拠点を持つべきだ」と打診してきました。最初は、 「現地生産の供
給業者として、一緒にパートナー的に行いたい」といった申し出でした。
 しかし、A社がなかなか決心をつけずに態度を保留している間に、 「同社のアジア拠点で
の部品調達は、日本からではなくアジア域内から行う」という方針が本社から出されてしま
いました。つまり近い将来、「A社がアジアのどこかに生産拠点を作らない限り、同社のア
ジア工場への輸出はできない」とかなり厳しい要求になった訳です。さらに、 「A社がアジ
ア域内に拠点を作っても、購入量を保証するものではなく、あくまで国際競争での購買とな
る」といった情報も入ってきました。
 A社としては、この企業以外にも今後同じような申し出が出てくることを考え、重要な経
営判断として海外進出をしなければと判断しました。この大手企業を含めたA社の取引先の
企業(工場)が地図上に記載されたものを持参し、「どこに拠点を築くべきか?」「海外展開
を考える際の視点は何か?」と相談に来られました。

2)まずは現地パートナーの選定から
 「どこに海外拠点を築くべきか?」という質問には、「どこの国の税制が有利でしょうか?」
「どの国の法律が有利でしょうか?」という内容が含まれます。基本的な考え方としては、
税制や法律も重要ですが、"現地で一緒に事業を行うパートナーがどれぐらい力になるか"
を考えるべきです。日本でも良いパートナーと仕事を進めれば成功するし、悪いパートナー
であれば成功しないのと同じです。
 A社の場合も、生産拠点構築のための合弁パートナーや将来的に地場で販売していくため
の代理店の存在、将来性を勘案した現在の取引先との「取引の伸びシロ」はどうか、といっ
た視点での判断が求められます。また、当該国1国だけで勝負するのではなく、域内で勝負
するのであればアクセスの利便性も今後の展開では大きな意味を持ってきます。
 A社では検討の結果、海外での組みたいパートナーは、将来を見据えて地場企業にも売り
込みがかけられる「販売力のある代理店候補」と方向づけしました。今後のパートナー探し
は、関係会社からの紹介や、海外展示会での発掘、業界紙からの選択等を通じて現地企業と
の接点を作り、何よりも複数回の面談を行い納得できるものにする、という基本方針を作り
ました。

38
海外拠点を築くための視点

海外拠点を築くときのポイントは
・現地パートナーの適性が一番重要
  
(その為に、何のための海外拠点か?どんな協力を仰ぎたいのかを明確に
すること)
・事業を一緒に行うパートナーを見極めるために
 何度も会うこと、事務所を訪問すること、仕事への取組み姿勢をしっかり
見ること、宴席でなく昼間ビジネスライクに面談を行うこと、最後は納得感、
この点を自問自答してください。税法や法律はその次の優先順位です

東京商工会議所 海外支援担当コーディネーターからの一言!
 日本人は、性善説に立って人を信じたり、嫌なことや面倒なことは見て見
ぬふりをする、といった傾向があります。個人的な好き嫌いや信用する/し
ないは別として、共同でビジネスを行うことができるのか?資質や経営資源
はどの程度か?それらを自分が納得して受け入れることができる状態になる
まで、何度も会って確認をしてください。中途半端な状態で進めると、後か
ら誤解や不信感が出てきて、結局は高い授業料を払うことになります。また、
面談も単独で会うのではなく、他の社員も交えて複数の目による確認も効果
的です。

海外ビジネスガイドブック: 39
2
  海外展開を通じて組織体制の強化を 〈自動車部品製造業 創業20年 従業員60名〉
1)ワンマン社長の悩み(幹部社員の育成)
 B社は、社長の営業力、優秀な技術と企画力で国内での業績を伸ばしてきた中堅企業です。
4、5年前までは国内ユーザーの対応で手一杯のため取引は国内のみでしたが、国内景気の
低迷に伴い海外展開を次の一手にしたいとの構想を持っていました。
 社長は何事にも前向きで、コンプライアンスや環境問題に関しても積極的に取組んでいま
す。しかし、同社は社長のカリスマ性で業容拡大を図ったものの、幹部社員が伸びないとい
う悩みがありました。多くの中小企業と同じように、「社長以外の社員をどうやって伸ばし
戦力アップを図るか、この課題を解決しない限り、これ以上の業容拡大は難しい」との認識
を持っていました。
 今までの仕事の進め方は、社長が指示を出し事業を進める典型的な「トップダウン型マネ
ジメント」でした。社長が不在だと全く意思決定ができないことも多く、今後の展開におい
て社長が海外出張で会社に不在となると、組織としての判断や決定に支障が出ることは明ら
かです。
 海外ビジネスに取組むにあたり、社員が自ら考え行動する「ボトムアップ型マネジメント」
にスタイルを変えていく方向性を決めて、社内改革に取組むことにしました。

2)海外展開プロジェクトチームの組成と権限委譲で社員に変化
 社長は、まず今回の海外展開に対してプロジェクトチームを設立し、それ以降のプロジェ
クト進行等はすべてそのプロジェクトメンバーに任せました。当初、社長は同社の製品は米
国の方が売れると考えていましたが、社員からはアジアの方が可能性があるとの意見が多く、
それに従いアジアでの展示会出展をチーム活動の最初の目標に決めました。
 展示会出展という具体的な目標が決まってから、一気にプロジェクトは活性化しました。
海外のバイヤーを意識した英語のホームページや会社案内の作成に始まり、展示会での想定
問答の準備や貿易実務の勉強会も開催し、結果社員のひとり一人に、従来行ったことのない
業務に対して「自発的に課題を設定しそれを解決していく」といった雰囲気が自然と発生し
てきました。
 特に中堅社員の自覚と意気込みに関しては、今までの管理職育成の悩みが無用の心配だっ
たと思えるほどに変わりました。また、社長はこの機会に従来の構想通り権限移譲を行い、
経営と対外交渉により専念ができるようになりました。さらに、今回の動きで感触を得た経
営幹部には、段階的に業務執行を任せ、役員待遇も視野に入れていく方針としました。海外
展開という大きく新しい事業領域の拡大をチャンスととらえ、自社の組織風土を改革した社
長の動きは見事でした。海外展開では今までの会社の体制を、機動的に動く組織体制へとしっ
かりと見直すことが必要です。全社員が組織人として動ける体制を構築し、その運用は効率
的・効果的か、といった機能面の見直しを行いたいものです。普段から「手をつけないとい
けない」と思ってもなかなかできていない社内体制整備や人材育成・活用も、海外展開を機
に取組んでみてください。

40
海外展開を通じて組織体制の強化

組織体制強化に向けた方策として、

権限移譲をする(権限・責任・義務を明確に)  
社内コミュニケーションを強化する
プロジェクトを立ち上げて雰囲気を醸し出す
自分で考えて行動する風土を作る
放任はいけない

東京商工会議所 海外支援担当コーディネーターからの一言!
「社員が育っていない、組織力が弱い」
 経営相談に来られる経営者の中には、
といった悩みを抱えている方も多くいらっしゃいます。今までは社長一人の
カリスマ性で引っ張ってきた組織も、企業規模が大きくなり一人だけでは目
が行き届かず、マネジメントを良くするためには、社員の育成と組織対応が
できる仕組みが必要という段階になっているわけです。
 そこで、今回のように海外への事業展開を行うという新たな取組みを、そ
のきっかけとすることを考えてはいかがでしょうか?それぞれの幹部社員の
役割を見直し、適切な権限移譲を行うことで育成の実践としてください。一
方、任せることの度が過ぎて放任となってもいけないので、しっかりと “報
連相” ができる体制にするといった社内コミュニケーションの仕組みの構築
も合わせて考えることで、組織力の向上を目指してください。

海外ビジネスガイドブック: 41
3
  独資かそれとも合弁か:中国編 〈自動車部品製造業 創業70年〉
1)中国への進出形態とその長所・短所
 C社は、樹脂成形と部品の組立を得意とし、安定した品質が評価を得てTIER2(※自動
車部品の二次サプライヤー)ながら、一部の部品は自動車メーカーに直接納入しています。
 自動車メーカーやTIER1(一次サプライヤー)の多くが海外展開を進めているなか、当
社も成長する海外市場への進出を図りたいと考えていました。その様な時に、中国内陸都市
へ既に工場を持つ得意先より、合弁パートナーとして地元企業の紹介を受けました。得意先
としては、C社が進出することで地元企業の品質レベルが向上することを期待したようです。
 しかし、C社にとって海外企業との取引は初めてであり、ましてや投資に関わることなの
で慎重に進める必要があると考え、情報収集の過程で東京商工会議所の相談窓口に来られま
した。
 相談では、中国における外資企業の設立形態について説明し、日系進出企業がどのように
会社を運営し、どのような点に苦労しているのかその傾向を説明しました。とりわけ、出資
形態は重要な問題です。 経営における意思決定権は基本的に出資した株式の比率に準じます。
合弁で進出した企業の中には、うまくいかず合弁を解消したり、撤退するケースもあること
から、最近では独資での展開が増加しているようです。しかし、経営権の確保には、独資で
の進出が望ましい一方で、資金面での負担の大きさや現地における販売網構築の困難さを踏
まえると合弁という選択肢もあります。
 この判断は、中国へ進出する目的、販売ルート、パートナー候補の有無とその信頼性など
様々な要素を踏まえ戦略的に判断する必要があります。

2)合弁を目指したがまずは技術協力契約での連携から
 C社は、その後合弁会社の設立を念頭にパートナー候補とお互いを訪問しあい、相互の事
業に関する情報交換や合弁事業の設立に関する考え方、今後の中国市場における取組につい
て意見交換を続けました。その結果、合弁会社を設立するにはお互いに不確定な要素も多く、
合弁事業を行うのは現時点では難しいという結論になりました。しかし、技術的協力を必要
とするパートナーと中国市場での足掛かりを求めているC社にとって何らかの提携ができな
いかと検討した結果、技術ライセンス契約(※)という形で話が進展しました。C社として
は、製造ノウハウを供与し、その対価を得る一方で、パートナーへの技術指導を通じて自ら
も中国市場への理解を深めることができます。また、C社は同時に沿海地区の工業開発区に
独資で進出することも決定し、その旨もパートナーへ伝えた上で、お互いに連携しながら中
国市場でビジネスを展開していくことを約束することができました。
 海外での投資は、資金もかかりマネジメントリスクを直接負うことから、その進出形態の
決定には難しい判断を迫られます。国内での事業運営と同様に、独資がいい、合弁がいいと
いう単純な答えはありません。しかしC社のように、広く関係者のアドバイスを受入れなが
ら、最後は不確定要素もあることを踏まえた上で判断を下すことが、海外展開全般に必要と
なる姿勢ではないかと思います。

42
中国における外資の投資形態
独資企業 合弁企業 合作企業

形  態 100%外国資本によって設立 中国企業と外国企業の出資 中国企業と外国企業が出資


した企業 による企業 比率にかかわらず、契約に
より責任分担・収益配分を
約定する形態。

メリット ・日本側の出資者のみで経 ・合弁パートナーの経営資 ・契約により、責任の分担、


営事項を決定できるため 源を活用できる 利益配分を決めることが
経営効率がよい ・初期投資が小さくなる できる
・政府との交渉がスムーズ ・外国側が優先的に投資を
に進む 回収することも可能

デメリット ・初期投資が大きい ・合弁パートナーが経営上 ・約定が不明確な場合、そ


・政府機関との交渉がうま の主導権を握る可能性が の後の運営で紛争が生じ
く進まない恐れがある ある やすい
・独自に市場開拓しなけれ ・意見が対立するとき、経 ・法人化しない場合は、投
ばならない 営効率が悪化する 資者が無限責任を負う
・撤退が難しい

※技術ライセンス契約
 貿易取引や海外での法人設立に並んで昨今増加傾向にある海外展開の一つです。投資に比べ経済的負担が少なく、
短期で収益の回収が期待できます。一方で知的財産権の流出や契約満了後に契約相手先が競合先になる可能性等の
リスクをよく検討する必要があります。

海外ビジネスガイドブック: 43

 京商工会議所
第6章 
海外ビジネスサポート事業
 東京商工会議所では、事前準備、実行まで、中小企業の海外ビジネスの段階に応じた様々
なサポート事業を実施しています。 お気軽にご相談ください。
 (各事業の最新情報は東京商工会議所ホームページをご覧ください)

⑴ 相談・情報提供
1
  海外ビジネス相談窓口 無 料 
    
 海外ビジネスに向けた事前準備段階から具体的な契約内容に対するアドバイスまで、大手
商社出身の中小企業診断士4名が相談コーディネーターとして広く相談を承っています。ま
た、日本貿易振興機構(JETRO)等の公的機関とも連携し、サービスの充実を図っています。
 (3283)
【中小企業相談センター 03 7700】

2
  海外ビジネスセミナー 無 料 
    
 中小企業経営者の方向けに国際展開の必要性への気付きの機会となる「中小企業のための
国際展開セミナー(地域・テーマ別)」をはじめ、国内取引とは違うノウハウや知識を学ぶ
実務セミナー等を実施しています。
 【中小企業相談センター 03
(3283)7700/中小企業部 03
(3283)7885】

⑵ ビジネス支援
1
  海外現地事情視察会 有 料 
    
 少人数グループ単位での現地企業視察や進出日系企業・現地企業との交流、現地最新事情
のブリーフィング等、海外展開先の検討に役立つ現地事情視察会を実施しております。  
 【中小企業部 03
(3283)7885】

2
  中小企業国際展開アドバイザー制度 有 料(初期相談無料)
    

 中小企業の国際展開支援に豊富な実績を持つ法人企業・団体等を、東京商工会議所が所定
の要件確認の上、「中小企業国際展開アドバイザー」として登録・管理を行います。公的支
援機関等の無料相談よりも個別具体的な支援を希望する中小企業の方は、国内・海外でアド
バイザーから実践的な支援を受けることができます。
  (初期相談は無料ですが、支援に関する費用はアドバイザーとの直接契約となります。 )
 【中小企業部 03
(3283)7885】

44
⑶ その他海外展開支援事業
 東京商工会議所では、中小企業相談センター/中小企業部以外に、テーマに応じた支援事
業を実施しています。詳細は、下記担当部署へお問い合わせください。

テーマ 内  容 担当部署 問い合わせ先

窓口 国際弁護士・貿易コンサルタントによる貿
中小企業相談センター 03-3283-7700
専門相談 易専門相談

ビジネス 国際展開セミナー、現地事情視察会、中小
中小企業部 03-3283-7885
支援 企業国際展開アドバイザー

海外企業信用調査 中小企業相談センター 03-3283-7700

中小企業海外PL保険 共済センター 03-3283-7909

海外取引 原産地証明、特恵(特定)原産地証明、そ
サポート の他貿易関係証明(営業証明、日本法人証 証明センター 03-3283-7610
明等)

海外取引情報サービス(東商HPへの英文
国際部 03-3283-7851
での企業情報掲載)

在日外国公館、外国商工会議所との連携に
国際部 03-3283-7762
情報提供 よる投資セミナー、交流会、商談会の開催

ビジネス研究会(大メコン圏、中国) 国際部 03-3283-7762

国際ビジネス講座・貿易実務講座(輸出、
研修センター 03-3283-7650
輸入、国際売買契約書など)
人材育成
BATIC
(国際会計検定) 検定センター 03-3989-0777

日商ビジネス英語検定 検定センター 03-3989-0777

東京商工会議所の海外ビジネスサポート

中小企業
支援機関

気付き 目的の明確化 事前準備 戦略立案・実行

相 相談・情報提供 ビジネス支援
海 外 ビ ジ ネ ス

海外ビジネス支援相談窓口
金融機関

海外ビジネスセミナー・個別相談会
東京商工会議所

国 海外現地事情視察会

商工会議所
在外日本人

中小企業国際展開アドバイザー(国内)

その他海外ビジネス支援事業(海外取引サポート・人材育成など)
海外商工会
議所


中小企業国際展開アドバイザー(海外)

海外ビジネスガイドブック: 45
第7章 活用できる支援機関

 東京商工会議所以外にも中小企業の海外ビジネスを支援する公的機関が数多くあります。
大きく分けて総合支援機関と個別ニーズ支援機関がありますが、それぞれの機関の特徴を踏
まえ、海外ビジネスのニーズに合わせてご活用ください。尚、各機関での相談は基本的に無
料ですが、ご利用する支援内容によっては有料の場合があります。詳細および最新情報は、
各機関までお問い合わせください。

1.総合支援機関
 海外ビジネスと一口に言っても、一体何から始めたら良いのかよく分からない、この商品
を輸入する際にどんな規制があるのか、海外に現地法人を設立する際の手続き、模倣品が出
回っているがその対応方法等、企業の海外ビジネスに関するニーズは、企業のおかれた状況
によって千差万別です。
 総合支援機関活用のポイントは、東京商工会議所と同様に、個別具体的なニーズに対する
支援を受けられることは勿論のことですが、その前に、ご自身が考えている問題・課題が、
本当の問題・課題なのか、他に問題・課題があるのではないか、海外ビジネスの方向性が果
たして本当にそうなのか等、全社戦略の中で診断・対応してくれる点です。

⑴ 日本貿易振興機構(ジェトロ)
  〒107-6006 東京都港区赤坂1-12-32アーク森ビル
  TEL 03-3582-5511 URL:http://www.jetro.go.jp/support_service
 ジェトロは、既に海外ビジネスの方向性や具体案を持っている企業を中心に、海外各国の
政治経済事情から始まり、輸出入貿易/海外投資等の詳細なデータベースを備え、国内外の
専門家を活用した海外ビジネスの総合支援機関です。主な支援メニューは下記の通りです。
平成23年8月末現在

ジェトロ海外情報ファイル(J-FILE) 国・地域別・産業別・テーマ別情報
各国/地域データ比較 投資コスト比較
海外ビジネス情報 貿易・投資相談Q&A 引き合い案件データベース
見本市/展示会データベース 貿易実務オンライン講座
セミナー・講演会 ビジネスライブラリー
海外コーディネーター貿易投資相談 海外ミニ調査サービス
展示会・商談会への出展支援 輸出有望案件支援サービス
海 外 展 開 支 援 海外進出企業への支援サービス 模倣品/海賊版被害相談窓口
知財侵害調査費用の助成 海外ブリーフィングサービス
ビジネスアポイントメント取得サービス

46
⑵ 中小企業基盤整備機構
  〒105-8453 東京都港区虎ノ門3-5-1虎ノ門27森ビル
  TEL 03-3433-8811 URL:http://www.smrj.go.jp/keiei/kokusai/index.html
 中小企業基盤整備機構は、中小企業ビジネス支援サイト(J-Net21)等を通じ、日本国内
の中小企業を総合的に支援しています。海外ビジネスもその一つの分野として、 「国際化支
援ポータル」、国内外の専門家を活用し、中小企業の海外展開を支援しています。主な支援
メニューは下記の通りです。
平成23年8月末現在
国際化支援ポータルサイト
国際化支援アドバイス活用事例
情 報 提 供 支 援 中小企業国際化支援レポート
国際化FAQ
海外調査
国際化支援アドバイス事業
販路開拓コーディネート事業
海 外 展 開 支 援
海外展示会出展支援
アドバイザーによる海外現地同行アドバイス

⑶ 東京都中小企業振興公社 国際化支援室
  〒105-0022 東京都港区海岸1-7-8東京都立産業貿易センター浜松町館2F
  TEL 03-3438-2026 URL:http://www.tokyo-trade-center.or.jp/TTC/index.html
 国際化支援室は、総合支援機関としての海外取引等に関する情報提供に加え、海外販路開
拓支援サービスに特徴があります。 海外ビジネスを希望する企業及び商品の優位性を見極め、
選抜されることが前提ですが、選抜された企業に対しては、販路開拓ナビゲーターがハンズ
オン支援を行ってくれます。主な支援メニューは下記の通りです。
平成23年8月末現在
貿易お役立ちコーナー
海外ビジネスデスク
情 報 提 供 支 援
海外販路開拓支援セミナー
海外ビジネススタートアップセミナー
海外販路ナビゲーターによるハンズオン支援
企業・団体/海外引合登録
海外販路開拓に関
企業・団体/引合情報検索
する支援
海外展示会出展支援
貿易実務講習会

⑷ その他総合支援機関
 支援対象企業の所在地に制約がありますが、中小企業の海外ビジネスの総合支援機関とし
て参考になる支援機関です。
平成23年8月末現在
首都圏産業活性化協会 〒192-0083 東京都八王子市旭町9-1八王子スクエアビル11F
(TAMA協会) TEL 042-631-1140 URL:http://www.tamaweb.or.jp/?page_id=7
横浜ワールドビジネスサポート 〒231-0001 神奈川県横浜市中区新港2-2-1横浜ワールドポーターズ6F
センター TEL 045-222-2030 URL:http://www.ywbc.org/cgi-bin/index.cgi

海外ビジネスガイドブック: 47
2.個別ニーズ支援機関

⑴ 輸出入貿易関連

平成23年8月末現在
①輸出入通関全般
東京税関
〒135-8615 東京都江東区青海2-7-11 東京港湾合同庁舎
☎03-3529-0700
輸出入通関
日本関税協会
〒103-0023 東京都中央区日本橋本町3-11-11 コミネビル3階
☎03-5614-8871 
東京税関
関税率 〒135-8615 東京都江東区青海2-7-11 東京港湾合同庁舎
☎03-3529-0700
農林水産省動物検疫所
動物検疫 〒235-0008 神奈川県横浜市磯子区原町 11-1
☎045-751-5921
農林水産省植物防疫所
植物検疫 〒231-0003 神奈川県横浜市中区北仲通5-57
☎045-211-7152~4(輸入関係)、7155(輸出関係)
日本通関業連合会
通関業者の探し方 〒105-0003 東京都港区西新橋1-1-3 東京桜田ビル3階
☎03-3508-2535
経済産業省 安全保障貿易管理
〒100-0013 東京都千代田区霞が関1-3-1
☎03-3501-1511(代表)
輸出入貿易に関する規制
安全保障貿易情報センター(CISTEC)
〒105-0001 東京都港区虎ノ門1-1-21 新虎ノ門実業会館4階
☎03-3593-1147
日本インターナショナル・フレイト・フォワーダーズ協会
〒104-0033 東京都中央区新川1-16-14
②国際物流
       アクロス新川ビル・アネックス 4階
☎03-3297-0351

③輸出入に関わる保険
日本貿易保険(NEXI)
貿易保険 〒101-8359 東京都千代田区西神田3-8-1 千代田ファーストビル東館3階
☎03-3512-7650 
日本損害保険協会
輸出入貿易における海上保険 〒101-8335 東京都千代田区神田淡路町2-9
☎03-3255-1844
消費者庁
製造物責任(PL)法 〒100-6178 東京都千代田区永田町2-11-1
☎03-3507-8800
PL保険の付保 日本・東京商工会議所中小企業PL保険
新日本検定協会
〒108-0074 東京都港区高輪3-25-23 京急第2ビル
☎03-3449-2611(代表)
④輸出入に関わる数量・成分分析
日本海事検定協会
〒104-0032 東京都中央区八丁堀1-9-7
☎03-3552-1241

48
海外貨物検査
食料品分析検査 〒103-0026 東京都中央区日本橋兜町15-6
☎03-3669-3783
日本商事仲裁協会
⑤仲裁 ・ 調停 〒101-0054 東京都千代田区神田錦町3-17 廣瀬ビル3階
☎03-5280-5161 
対日貿易投資交流促進協会(ミプロ)
〒170-8630 東京都豊島区東池袋3-1-3
⑥輸入貿易の各種手続き
       サンシャインシティ・ワールドインポートマートビル6階
☎03-3988-2791(代表)

⑵ 海外投資関連

平成23年8月末現在
東京商工会議所の企業信用調査(帝国データバンク等と
の連携)
☎03-3283-7700
日本貿易保険の海外商社名簿
〒101-8359 東京都千代田区西神田3-8-1
       千代田ファーストビル東館3階
☎0120-672-094 ☎03-3512-7712
帝国データバンク
〒107-8680 東京都港区南青山2-5-20 

①取引先検索・信用調査 東京商工リサーチ
〒100-6810 東京都千代田区大手町1-3-1 JAビル
☎03-6910-3111
ジェトロTTPP:コファスの調査・審査サービス
☎03-5521-2171
コファス・サービス・ジャパン
〒105-0001 東京都港区虎ノ門1-2-8 虎ノ門琴平タワー17階
☎03-5521-2171
ダン・アンドブラッドストリート
〒100-6811 東京都千代田区大手町1-3-1 JAビル11階
☎03-5860-0333 
東京都知的財産総合センター
〒110-0016 東京都台東区台東1-3-5 反町商事ビル1階
②知的財産権 ☎03-3832-3655
財務省関税局知的財産権HP
☎03-3599-6369
日本政策金融公庫
〒100-0004 東京都千代田区大手町1-9-3 公庫ビル
0120-154-540
③海外展開資金
商工組合中央金庫
〒104-0028 東京都中央区八重洲2-10-17
☎03-3272-6111
海外貿易開発協会(JODC)
〒104-0061 東京都中央区銀座5-12-5 白鶴ビル4階
☎03-3549-3050(代表)
④海外進出先企業の人材育成
海外技術者研修協会(AOTS)
〒120-8534 東京都足立区千住東1-30-1
☎03-3888-8211(代表)

海外ビジネスガイドブック: 49
3.在日海外機関、経済交流団体

 在日海外機関や各国との経済交流団体は多数存在します。
 下記のリストは東京商工会議所と交流のある先から選んだものです。
 その他にも有益な情報や協力を提供している団体がありますので、国ごとに協力的な団体
を調べられることをお勧めします。

⑴ 公的機関のホームページから大使館、公館を調べる。

外務省ホームページ 外務省駐日外国公館リスト
http://www.mofa.go.jp/mofaj/ 在外公館リスト・ホームページ
日本商工会議所ホームページ 在日外国商工会議所リスト
http://www.jcci.or.jp/ 在外日本人商工会議所リスト

⑵ 各国の在日海外機関や経済交流団体に問い合わせる。
日本国際貿易促進協会
〒101-0047 東京都千代田区内神田1-9-13 柿沼ビル4階 ☎03-6740-8261
上海市浦東新区駐日本経済貿易事務所
〒104-0033 東京都中央区新川1-24-12 上海国際ビル1階 ☎03-5542-6690
瀋陽市政府駐日本経貿代表事務処
〒105-0014 東京都港区芝2-13-4 住友不動産芝ビル4号館8階 ☎03-3798-3312
中    国
大連市駐日本経済貿易事務所
〒106-0031 東京都港区西麻布4-16-13 西麻布28森ビル10階 ☎03-5778-3839
香港貿易発展局 東京事務所
〒102-0083 東京都千代田区麹町3-4 トラスティ麹町ビル6階 ☎03-5210-5850
香港政府観光局
〒100-0005 東京都千代田区丸の内3-1-1 国際ビル2階 ☎03-5219-8291
日本アセアンセンター
アセアン諸国
〒105-0004 東京都港区新橋6-17-19 新御成門ビル1階 ☎03-5402-8001
インドネシア投資調整庁日本事務所 BKPM
〒100-0011 東京都千代田区内幸町2-2-2 富国生命ビル23階 ☎03-3500-3878
インドネシア
日本・インドネシア経済協力事業協会
〒102-0083 東京都千代田区麹町4-5 ☎03-3221-0613
タイ王国大使館経済投資事務所(BOI)
〒107-0052東京都港区赤坂2-11-3 福田ビルウエスト8階 ☎03-3582-1806 
タ    イ タイ王国大使館商務参事官事務所
(タイ輸出振興局DEP、タイ国政府貿易センター)
〒102-0083 東京都千代田区麹町5-4 セタニビル6階 ☎03-3221-9482
ベトナム商工会議所 日本代表事務所
ベ ト ナ ム
〒102-0093 東京都千代田区平河町1-9-5 平河町小泉ビル2階 ☎03-5215-7040

50
マレーシア貿易開発公社 東京事務所 MATRADE
〒104-0061 東京都中央区銀座8-14-14 銀座昭和通りビル6階 ☎03-3544-0712
マレーシア
マレーシア工業開発庁 東京事務所 MIDA
〒105-6032 東京都港区虎ノ門4-3-1 城山トラストタワー32階 ☎03-5777-8808
台湾貿易センター 東京事務所
〒102-0083 東京都千代田区麹町1-10 澤田麹町ビル3階 ☎03-3514-4700
台    湾 日台交流協会 東京本部
〒103-0032 東京都港区六本木3-16-33 青葉六本木ビル7階
☎02-5573-2600
大韓貿易投資振興公社(KOTRA)東京
〒100-0005 東京都千代田区丸の内3-4-1 新国際ビル9階 ☎03-3214-6951
韓    国
日韓産業技術協力財団(JKF)
〒102-0082 東京都千代田区一番町8 一番町FSビル2階 ☎03-3222-5231
中東協力センター
中    東
〒102-0077 東京都千代田区三番町8-1 三番町東急ビル7階 ☎03-3237-8026
駐日欧州連合代表部
〒102-0075 東京都千代田区三番町9-15 ヨーロッパハウス ☎03-3239-0441
在日フランス大使館対仏投資庁 日本事務所
〒106-8514 東京都港区南麻布4-11-44 ☎03-5798-6140
フランス食品振興会
欧    州
〒150-0013 東京都渋谷区恵比寿3-12-8 3階 ☎03-5789-0081
Germany Trade and Invest(ドイツ貿易・投資振興機関)
〒102-0075 東京都千代田区三番町2-4 三番町KSビル5階 ☎03-5276-9811
在日イタリア商工会議所
〒107-0052 東京都港区赤坂1-12-12 榎坂ビル3階 ☎03-3560-1100
ロシアNIS貿易会
ロシア・東欧
〒104-0033 東京都中央区新川1-2-12 金山ビル ☎03-3551-6215
アメリカ州政府協会(ASOA)
〒100-0014 東京都千代田区永田町2-14-3 赤坂東急ビル3F ☎03-3508-2058
ア メ リ カ
在日米国商工会議所
〒106-0041 東京都港区麻布台2-4-5 メソニック39MTビル10階 ☎03-3433-5381
PROMEXICOメキシコ大使館商務部
メ キ シ コ
〒100-0014 東京都千代田区永田町2-15-2 2階 ☎03-3580-0811

海外ビジネスガイドブック: 51
第8章 貿易実務の流れ

第1節 貿易取引の流れ

1
  輸出の流れ 
 海外と取引する場合、使用する書類、用語、商習慣等が異なるため、貿易の経験がない方
は、必要最低限の知識を習得する必要があります。
 輸出では、商品の選定、海外における市場開拓、顧客開拓から代金の回収までを行う必要
があります。
 以下のフローチャートは、輸出の流れの概要になります。

ステップ 実施事項・検討事項 問い合せ先

商品の選定 ・価格競争力、輸送適性の観点で検討 自社内で検討

輸出先国の選定 ・ターゲット国を仮説をもとに選定 自社内で検討

・輸入国における輸入規制や特別な検査の有無 相手国税関・法令所管省庁、税関
法的規制の確認 ・日本における許可、承認を要する品目、地域 相談官室、経済産業省等

・輸出先国における見込み顧客、顧客ニー 東京商工会議所、ジェトロ、金融
市場調査
ズ、競合他社、市場価格など 機関、民間コンサルタント等

サンプル、規格書の提示 ・顧客との品質確認 自社で実施

・取引条件の交渉
売買契約締結 ・取引条件合意後、契約書の作成 取引金融機関、国際弁護士
・必要に応じ為替予約

信用状(L/C)の入手 ・必ず船積前に信用状を受領すること
(信用状取引の場合) ・信用状の記載内容と契約条件の一致を確認
取引金融機関

船腹手配・保険契約 船舶・航空輸送会社
・信用状の記載内容に合致(船積期限)
(契約条件に応じて) 損害保険会社等

通関業者、税関相談官室、通関業
輸出通関手続き ・通関業者への代行依頼
連合会等

・船積み通知
輸入者への通知 自社で実施
・船名、船積日等の連絡

船荷証券(B/L)取得 ・船会社から船荷証券を取得 船舶会社

・買取銀行(Negotiation Bank)へ荷為
代金回収 取引金融機関
替手形の買い取り

52
2
  輸入の流れ 
 輸入では、海外における供給業者である取引先の開拓から貨物の引き取りまでを行う必要
があります。
 以下のフローチャートは、輸入の流れの概要になります。

ステップ 実施事項・検討事項 問い合せ先


・顧客ニーズ、価格競争力、安定調達の観 自社内で検討
商品の選定
点で検討

・輸入禁制品、輸入割当 経済産業省、税関相談官室、各法
法的規制の確認 ・輸入時に特別な許可・承認・検査・手続きの有
無(関税率も事前に調査) 令所管省庁等

・仕入れ先企業の評判、社長の人柄、信用 東京商工会議所、ジェトロ、金融
仕入れ先企業の選定
調書等 機関、民間コンサルタント等

・仕入先との品質確認 自社で実施
サンプル、規格書の確認
必要に応じ検査機関

・取引条件の交渉
売買契約締結 ・取引条件合意後、契約書の作成 取引金融機関、国際弁護士
・必要に応じ為替予約

信用状(L/C)の開設
・契約条件と同一の条件で開設依頼 取引金融機関
(信用状取引の場合)

船腹手配・保険契約 船舶・航空輸送会社
(契約条件に応じて) ・信用状の記載内容に合致(船積期限等)
損害保険会社等

・船積み通知 自社で実施
輸出者への確認
・船名、船積日等の確認

代金決済、船積書類 ・船荷証券(B/L)等の船積書類と引き換
取引金融機関
(船荷証券等)入手 えに代金決済

通関業者、税関相談官室、通関業
輸入通関手続き ・通関業者への代行依頼
連合会等

貨物引き取り ・輸入通関後、船荷証券と引き換えに貨物
通関業者
を引き取り

海外ビジネスガイドブック: 53
第2節 貿易制度

 ここでは、貿易にかかわる法制度の概要をお話しします。

1
  日本における貿易にかかわる主な法体系 
輸出入に関する基本法 ・外国為替及び外国貿易法(外為法)
  外為法に基く政省令(輸出貿易管理令、輸出貿易管理規則、輸入貿易管理令、
輸入貿易管理規則、輸入公表、外国為替令等)
・輸出入取引法
  武器や武器に転用可能な貨物の輸出には、仕向国や品目によって輸出禁止
となる場合や経済産業大臣の許可が必要になる場合があります。また、輸入
に対しても、医薬品や一部の水産物等でも承認が必要となります。
〈安全保障貿易管理〉
  大量破壊兵器や関連品目・技術の輸出は外為法や貿易管理令で規制されて
おり、輸出許可申請も義務付けられている品目があります。さらに法律で輸
出者の自主管理基準も定められています。詳しくは経済産業省または(財)
安全保障貿易情報センターにご照会ください。
通関に関する基本法 ・関税法、関税定率法、関税暫定措置法
その他の輸出入管理法 ・植物防疫法、家畜伝染病予防法、火薬取締法、薬事法、食品衛生法等の諸法

国際条約・協定等 ・WTO条約、IMF協定等包括的取決め
・ワシントン条約等特定品目について取決め

2
  貿易相手国の法制度 
 日本と同様に、相手国側においても貿易に関する法令や様々な規制があります。
 ある商品の輸出を検討の際には、まずは相手側の国でも輸入可能であるかどうかを確認す
べきです。さらにその国の貿易管理制度、為替管理制度、関税制度、輸出入手続きについて
も把握しておくことが重要です。
 ※上記日本の貿易関連法制度の詳細や各国の制度を調べるには、JETROホームページの
国・地域別情報や各国在日大使館や貿易関係の出先機関を利用してください。また第7
章活用できる支援機関もご参照ください。

3
  環境に関する規制の例 
 EUでは、以下のような環境に関する様々な規制が導入されています。これはEU以外の地
域にも規制が広がる傾向にあり、米国や中国といった貿易大国にも同様の規制やルールがあ
りますのでそれぞれ確認が必要です。
〈主なEUの環境規制〉
・「RoHS指令 (ロース指令:Restriction of Hazardous Substances《危険物質に関する制
限》)」
 電気・電子製品に対する鉛、水銀等の重金属に関する規制で、これらの物質の含有率を一
定値以下にする必要があります。

54
・「WEEE指令(ウィー指令:Waste Electrical and Electronic Equipment) 」
 電気・電子製品に関し、回収やリサイクルに関する取り決めです。
・「REACH規 則(リ ー チ 規 則:Registration, Evaluation, Authorization and Restriction of
Chemicals)」
 EU域内で化学物質を年間で1トン以上製造・輸入する事業者は、その化学物質を登録す
ることが義務付けられている等、化学物質に関する規制です。
・「ErP指令(イーアールピー指令:Energy-related Products) 」
 エネルギー関連製品に対する規制です。電化製品で良く見るCEマーキングも、この規制
の一環です。

日本から輸出できる 中国で輸入前に検査など

商品かな? 必要ないかな?

日本国内と中国で 輸入の際、事前登録が
商品の原材料に対する 必要な商品かな?
規制の違いはないかな?

東京商工会議所 海外支援担当コーディネーターからの一言!
●米国から食品を輸入した際、その食品に含有されている食品添加物が米国
では認可されているにもかかわらず、日本では認可されていなかったため
に、輸入差し止めとなったケースがあります。米国内向け商品と日本向け
の商品とでは、使用する食品添加物を分けてメーカーが生産していたにも
かかわらず、誤って“米国内向け商品を日本に輸出”してしまったのが、
その原因です。
 健康への影響の有無にかかわらず、国ごとに規制が異なります。このケー
スでは、輸入者側に過失は一切なかったため、輸入者に金銭的被害は発生
しませんでしたが、事前に必ず輸入地と輸出地の法律の違いを確認してく
ださい。
●「ハラル食品」または「ハラ―ル食品」をご存知でしょうか。イスラムの
世界でイスラム法に合致していることを「ハラル」
「ハラール」と言い、
イスラム教においてイスラム教徒が「食べて良いもの」を「ハラル食品」
と言います。
「ハラル食品」であるためには調味料など原料にさかのぼっ
て検証が求められ「ハラル」に関する証明書も輸入の際に求められること
もあるそうです。イスラム教国に食品を輸出する場合の基準にもなってい
ます。

海外ビジネスガイドブック: 55
第3節 インコタームズとは

 貿易実務と言うと、難しいものと感じるかもしれません。良く意味の分からない英語の用
語がたくさん出てくる、というのもその理由の一つでしょう。その代表例がインコタームズ
(International Commercial Terms)です。
 その中にはFOB、CFRといったアルファベット3文字の略語でありますが、貿易を円滑
に進めるために必要不可欠なものです。ここでは、このインコタームズについてお話します。

1
  世界共通ルール 
 インコタームズは、1936年に国際商業会議所で制定された貿易条件に関する世界共通の国
際ルールです。このルールにより、商慣習や文化が異なる外国の企業間で円滑に取引を行う
ことが可能となります。
 輸出者と輸入者のいずれの責任でもない火災により貨物が消失してしまった場合、どちら
がそのリスクを負担するのか。貿易には様々な費用が発生しますが、その費用負担を輸出者、
輸入者のいずれとなるのか。そのようなリスクと費用の負担を取り決めた規則がインコター
ムズなのです。
 制定後、数回の改定を経ており、現在はインコタームズ2010が最新のものです。その中で
11の取引条件が記載されています。

2
  代表的なインコタームズ 
 使用頻度の高い代表的なインコタームズを紹介します。
 ・EXW(Ex Works)  : 工場渡し
   輸出地の工場で引き取り、輸入者が輸入地まで自社で運ぶ条件。
 ・FOB(Free On Board)  : 本船渡し
   輸出港で船に積み込むまでを輸出者の責任で手配する条件。船は輸入者が手配するこ
とになります。
 ・CFR(Cost and Freight)  : 運賃込み
   輸出者が輸入地までの輸送費用を負担する条件。
 ・CIF(Cost, Insurance and Freight) : 運賃・貨物保険料込み
   輸出者が輸入地までの輸送費用と貨物保険費用を負担する条件。
 ・DAP(Delivered At Place) : 仕向地持込渡し
   輸入地で荷卸しの準備ができる状態にするまでを輸出者が行う条件。輸出者に輸入通
関の義務はありません。インコタームズ2000のDDU(Delivered Duty Unpaid:関税抜
持込渡し)に相当します。
 ・DDP(Delivered Duty Paid)  : 関税込持込渡し
   輸入地での輸入通関から関税支払いまでを輸出者が行い、 荷卸しを輸入者で行う条件。

3
  具体例 
 ある商品を日本に輸入するため、中国のメーカーに見積依頼をした際、US$100/pc CIF
YOKOHAMAと価格提示された場合、「横浜港までの輸送費、貨物保険代込みで商品1個当
たりUS$100」という意味です。

56
日本から中国への輸出
運賃は、どちらの負担になるのか?
 US$1,000/MT FOB Tokyo   : 運賃は輸入者負担
 US$1,000/MT CFR Shanghai : 運賃は輸出者負担

▼インコタームズ2010における危険の移転時期の図示
 

仕出地 仕向地

EXW FCA FAS DAT DDP


CPT FOB DAP
CIP CFR
CIF

※インコタームズ2010では前のページで紹介しているインコタームズ以外にも5つ
の条件があります。詳細は、ジェトロ貿易ハンドブック2012等の貿易実務書をご
参照ください。

海外ビジネスガイドブック: 57
第4節 モノの流れ

 複雑な貿易実務を理解するためには、モノの流れ、カネの流れ、書類の流れをそれぞれ理
解する必要があります。まず輸出を例にとりモノの流れをお話しします。

1
  FCLとLCL 
 FCL、LCLという言葉をご存知でしょうか。貿易で商品を運ぶ際、コンテナに商品を積載
することが多いと思います。大量に出荷する場合、コンテナ満載になるので「FCL(Full
Container Load)」と呼び、少量の出荷でコンテナのスペースの一部のみ使用することを「LCL
(Less Than Container Load)」と呼びます。FCLかLCLかによってもモノの流れは若干異
なります。
 コンテナの大きさは、20フィートコンテナと40フィートコンテナが標準的なものです。

2
  輸出のモノの流れ 
から
 輸出国では、まず“空”のコンテナを船会社から売り手の工場または倉庫に運び、そこで
コンテナに商品を積み込みます。これを「バンニング(Vanning) 」と呼びます。
 満載となったコンテナは、船会社指定の「コンテナヤード(CY : Container Yard)」に運
び込まれ、輸出申告を行った上で、船に積み込まれます。 「コンテナヤード」とは、港湾等
に設置されているコンテナを一時保管する場所で、通常“保税地域”となっており、ここで
輸出通関が行われます。 (「コンテナヤード」が“保税地域”でない場合、別の“保税地域”
で輸出通関がなされます。 )
 船が輸入国に入港すると、 「コンテナヤード」等の“保税地域”で輸入通関がなされ、通
関後、輸入国内を流通します。
 LCLの場合、コンテナヤードではなく「コンテナフレートステーション(CFS : Container
Freight Station)
」という場所に商品が運び込まれ、自社商品以外の商品と混載されます。

3
  保税地域 
 上記のとおり、輸出入通関手続きは基本的に“保税地域” (「ボンドエリア」とも言います)
で行われます。
 “保税地域”とは、外国貨物(外貨・がいか)を一時保管出来る場所のことで、以下の5
種類が法律で定められています。
 ・指定保税地域:税関手続きを簡易、迅速に処理するために設けられた地域で、地方公共
団体等が所有・管理している土地や建物等の公共的な地域。主として、
税関所在地の近くに設置されています。
 ・保 税 蔵 置 場:外国貨物を置くことが出来る場所として、税関長が許可した場所です。
 ・保 税 工 場:外国貨物について関税を課さないままで加工・製造出来る場所として税
関長が許可した場所です。
 ・保 税 展 示 場:外国貨物を展示する会場として、税関長が許可した場所です。
 ・総合保税地域:上記の保税地域が有する外国貨物の蔵置、加工、製造、展示等の各種機
能を総合的に活用出来る地域として、税関長が許可した地域です。

58
日本から中国への輸出の場合

1)FCL

① ①

① 工場にてバンニング コンテナヤード(CY)にて輸出通関 船積み

② ②
② 工場から倉庫へ出荷

② 倉庫にてバンニング

2)LCL

工場から出荷 コンテナフレートステーション(CFS) 船積み


にてバンニング輸出通関

通 関
貿易メモ  輸入(輸出)の時に通関を行います。税関に対し、輸出(もしくは輸入)する
商品を申告します。通関は保税地域で行われますが、輸入の場合、関税(※ 63 ペー
ジ「貿易メモ」参照)を支払う点が輸出とは大きく異なります。
 通関に関し、不明な点がありましたら、東京税関までお問い合わせください。

税 関 名 住   所 電話番号

東京税関 税関相談官室 東京都江東区青海2-7-11
(東京港湾合同庁舎) 03-3529-0700

海外ビジネスガイドブック: 59
第5節 カネの流れ

 距離的に遠く離れ、法律も異なる外国企業との決済は、どのように行うのでしょうか。特
に、輸出の場合、代金を回収できなければ、会社の利益には貢献できません。カネの流れを
お話しします。

1
  決済手段 
 日本国内であれば、支払は“掛け”で行われることが多いでしょう。商慣習や常識、言語
が同一の国内取引では、リスクがそこまで大きくないためです。しかし、商慣習等が異なる
外国企業との貿易では、確実に債権を回収する工夫が必要です。
代表的な決済手段を以下に紹介します。
 ・信用状(L/C : Letter Of Credit)
 ・電信為替送金(Telegraphic Transfer Remittance)
 電子為替送金は、国内取引における銀行振込に相当します。しかし、船積み前に代金を支
払えば、輸出者が商品を出荷しないリスクが輸入者に残り、船積み後に代金を支払うことに
なれば、輸入者が代金を支払わないリスクが輸出者に残ります。よって輸出者・輸入者双方
の信頼関係が必要になるため、取引開始間もない場合、信用状での決済が一般的です。

2
  信用状取引 
 信用状取引は、輸入者および輸出者の双方のリスク軽減に役立ちます。その仕組みは、以
下の通りです。
 まず輸入者は、取引銀行等に「L/Cの開設」を依頼します。この銀行を「開設銀行(Opening
Bank)」と呼ぶのですが、L/Cとは、 “開設銀行の支払い確約書”であるとご理解ください。
 「開設銀行」は、船積書類と引き換えに支払いを確約するため、船積書類には細心の注意
が必要です。タイプミスのような些細な誤りであっても、L/Cの内容と船積書類の内容が異
なれば、代金が支払われない可能性があります。書類の確認は、慎重に行いましょう。
 L/Cは開設後、輸出地の銀行経由輸出者に通知されます。この銀行を「通知銀行(Advising
Bank)」と呼びます。輸出者は、L/Cの内容に合致するよう船積みを手配し、船積完了後、
船積書類を銀行に持込み代金の支払いを要求します。この銀行を「買取銀行(Negotiation
Bank)」と呼びます。
 「買取銀行」から送付された船積書類は、開設銀行経由輸入者へと渡り、輸入者は無事貨
物を引き取ることができます。
 上記の通り、輸出地、輸入地それぞれの銀行に対し、信用状取引固有の名称がありますが、
L/Cの開設を依頼する輸入者のことを「申請者(Applicant) 」、代金を回収する輸出者のこ
とを「受益者(Beneficiary)」と呼ばれることも覚えてください。
 上記の流れをフローチャートにまとめました。64ページの図をご参照ください。

60
第6節 書類の流れ

 貿易には様々な書類が必要になります。英文表記の書類が多いため、煩雑に感じるかもし
れませんが、書類のもつ意味と流れを理解することにより、貿易がより身近なものになるで
しょう。以下では、輸出を例に書類の流れをお話しします。

1
  船積書類 
代表的な船積書類は以下の通りです。
・「Invoice(送り状) 」:
      商品名、数量、金額等が記載された送り状であり請求書の意味合いもあります。
・「Packing List(梱包明細書) 」:
      商品の荷姿、重量等が記載された書類です。
・「Bill Of Lading(B/L ; 船荷証券) 」:
      船会社が輸出者に対して発行する有価証券で、この書類の所有者が貨物の受領
者となるため、最も大切な船積書類です。
・「Insurance Policy(保険証券) 」:
      貨物保険を申し込むと、保険会社から発行される書類です。
・「Certificate Of Origin(原産地証明書) 」

      商工会議所が発行する書類で、輸出商品の生産地を証明する書類です。輸出国
によって、適用される関税率が異なる場合があるため、輸入者から要求される
ことがあります。

2
  輸出通関 
 貨物を輸出する場合、税関に輸出申告を行う必要がありますが、現在では輸出申告は電子
おつ なか
化されています。通関業者(「乙仲」と言います)が輸出申告を代行し、輸出申告書に船積
書類を添付して申告を行い、税関から輸出許可書を取得します。

3
  信用状取引(L/C)の書類の流れ 
 電信為替送金の場合、船積書類は輸出者から輸入者に国際クーリエで直送すれば良いので
すが、L/Cの場合、書類の流れは大きく異なります。
 前ページで述べた通り、輸出者が船積完了後、L/Cに記載されている船積書類すべてを銀
行に持ち込みます。銀行は、L/Cの内容と船積書類を照合し、不一致がないかを確認し、問
題がなければ代金を輸出者へ支払います。
 輸入地での書類の流れは、64ページのフローチャートをご参照ください。

海外ビジネスガイドブック: 61
第7節 保険

 海外ビジネスには、一定のリスクが発生します。しかし、単にリスクを恐れていては、せっ
かくのビジネスチャンスを逃すことにもなりかねません。ここでは、リスクヘッジの一つの
手段である様々な保険についてお話しします。

1
  貨物保険 
 貿易では船や飛行機を利用することが多いですが、船や飛行機のトラブルや貨物が盗難に
遭う等の事故の可能性は決してゼロではありません。そのようなリスクにより貨物が棄損す
ることに備えるため、 「貨物保険」を付保することが一般的です。
 インコタームズがCIF等の場合は、売主が貨物保険費用を負担、CFR等の場合は、買主が
負担します。
 保険料=保険金額 (※1)×保険料率
(※2)
  ※1 保険金額は、CIF価額の110%とすることが一般的です。
  ※2 保険対象となる事故の範囲により、保険料率は異なります。詳しくは、損害保険
会社各社にお問い合わせください。

2
  貿易保険 
 海外との取引では、時に大きな損害が発生します。例えば、輸出先の国に対し経済制裁が
発令され、日本から輸出不可能となり大量の在庫を抱えてしまうこともあるでしょう。買主
が倒産し販売代金が回収不能となることも少なくありません。そのような損害を被ると、中
小企業の経営には致命傷にもなりかねません。
 このような取引のリスクヘッジには、 「貿易保険」が有効です。独立行政法人日本貿易保
険(NEXI)や民間の保険会社で運営されており、代金回収リスク等をてん補する「貿易一
般保険」や輸入の際の前払金返済不能リスクをてん補する「前払輸入保険」等があります。

3
  海外PL保険 
 細心の注意をもって海外ビジネスに取り組まれることかと思いますが、海外に販売した商
品により、人の身体や財産を傷つけてしまう可能性は否定できません。傷害等に対する補償
以外に、訴訟となった場合、海外では弁護士費用が高額なものになります。
 そのようなリスクをカバーできるのが「海外PL保険」です。国内でPL保険に加入されてい
る企業は多いかと思いますが、海外ビジネスでは別途海外PL保険に加入する必要があります。
 民間の保険会社でも運営されていますが、東京商工会議所では、会員であれば有利な基本
保険料で海外PL保険に加入することができます。

保険 問い合わせ先 電話番号
貿易保険 日本貿易保険 0120-672-094
海外PL保険 東京商工会議所 共済センター 03-3283-7909
お取引のある損害保険会社にお問い合わせください。なお、株式会社東商サポート&サー
貨物保険
ビス(東京商工会議所損害保険共済制度幹事代理店 TEL:03-3213-3846)でもお受けいたします。

62
⃝為替レート:日本円と外国の通貨(外貨)との交換レートは時々刻々変動し

貿易メ
ます。貿易の場合、決済は米ドルで行うことが多いと思いますが、輸出の場
合は米ドルを日本円に、輸入の場合は日本円を米ドルに銀行で交換する必要
があります。
 TTM(Telegraphic Transfer Middle Rate : 仲値)
   銀行の基準レートのことで、毎日午前 10 時頃に発表されます。
 TTS(Telegraphic Transfer Selling Rate)
   輸入者が、日本円を米ドルに交換する際に適用されるレートです。通常 TTM に 1 円足した
金額となります。銀行が外貨を売ることになるため Selling Rate を呼ばれます。
 TTB(Telegraphic Transfer Buying Rate)
   輸出者が、米ドルを日本円に交換する際に適用されるレートです。通常 TTM から 1 円引い
た金額となります。銀行が外貨を買うことになるため Buying Rate を呼ばれます。
⃝為替先物予約:海外との取引を外貨で行う場合、変動する為替レートにより、当初の想定よりも
利益が増大する場合もあれば、損失を被る場合もあります。損失を回避するための手段の一つに
為替先物予約があります。銀行に手数料を払うことにより、将来の代金決済の為替レートを予約
した時点で固定することができます。
⃝関税:通常、自国の産業保護等を目的として、輸入品に税金をかけています。これが関税です。
商品を「HS コード」と呼ばれるコードで分類し、HS コードごとに関税率が設定されています。
(HS コードは、最初の 6 桁が全世界共通で、日本は 9 桁としています)発展途上国から輸入さ
れた商品に対しては、その国の輸出振興のために通常国と比べ関税率は低く設定されており、 「特
恵関税」と呼びます。また日本が「経済連携協定 (EPA)」を締結している国に対しても、通常
より低い関税率が適用され、これにより連携国間の貿易促進が期待できます。
⃝船の手配:輸出の場合、CIF や CFR 等売主が船を手配することが多いようです。買主に販売価
格を提示するには、まず船会社に運賃を確認する必要があります。売買契約が締結されると、実
際に船のスペース(船腹)を予約することになりますが、L/C 決済の場合は注意が必要です。
L/C には様々な条件が記載されていますが、その一つに「Latest Shipment(船積期限) 」があ
ります。この船積期限内に出港する船を予約しましょう。

海外ビジネスガイドブック: 63
輸出のフローチャート

日本からA国への輸出L/C決済の場合の例

輸入地

凡例
:書類
:お金 ③

A国の銀行 ⑭
Opening Bank
A

税関
Custom
② ⑮ ⑯

⑳ ⑲ ⑱


通関業者 ⑰ 輸入者
Custom Broker Applicant

㉑ ㉒

保税地域
(CY、CFS)

【全体の流れ】
① 売買契約書の締結(Sales Contract) ⑬ 代金支払い
② L/Cの発行依頼(L/C Application) ⑭ 荷為替手形・船積書類送付
輸出
③ L/Cの発行(L/C Opening) ⑮ 船積書類、手形引き受け
①売
④ L/Cの到着通知 ⑯ 手形決済 ⑤船
⑤ 船腹予約  ⑰ 輸入通関代行依頼 ⑥船
⑩船
⑥ 船積み依頼書(Shipping Instruction) ⑱ 輸入申告(Import Declaration)
⑪船
⑦ 輸出申告(Export Declaration) ⑲ 関税納付 ⑫荷
⑧ 輸出許可 ⑳ 輸入許可 ⑬代
⑨ 原産地証明書(Certificate of Origin) ㉑ B/L提示
⑩ 船荷証券(Bill of Lading) ㉒ 貨物引き取り 注意点
※上図は
⑪ 船積み通知(Shipped Advice) A 銀行間決済  東京商
⑫ 荷為替手形の買い取り ※Advi

64
輸出地 輸出地

日本の銀行 日本の銀行
Advising BankまたはAdvising Bankまたは
Negotiation Bank Negotiation Bank

税関 税関
Custom Custom
④ ⑫ ⑬ ④ ⑫ ⑬

⑧ ⑦ ⑧ ⑦

輸出者 ⑥輸出者 通関業者⑥ 通関業者


Beneficiary Beneficiary
Custom Broker Custom Broker

⑨ ⑤ ⑨ ⑩ ⑤ ⑩

商工会議所 商工会議所 船会社 船会社


Chamber of Chamber of Shipping CompanyShipping Company
Commerce and Commerce and
Industry Industry

出者(Beneficiary)
輸出者(Beneficiary) 輸入者(Applicant)
輸入者(Applicant)
売買契約書の締結(Sales Contract)
①売買契約書の締結(Sales ①売買契約書の締結(Sales
Contract) Contract)
①売買契約書の締結(Sales Contract)
船腹予約 ⑤船腹予約 ②L/Cの発行依頼(L/C Application)
②L/Cの発行依頼(L/C Application)
船積み依頼書(Shipping Instruction)
⑥船積み依頼書(Shipping ⑮船積書類、手形引き受け
Instruction) ⑮船積書類、手形引き受け
船荷証券(Bill of Lading)受領
⑩船荷証券(Bill of Lading)受領 ⑯手形決済 ⑯手形決済
船積み通知(Shipped Advice)
⑪船積み通知(Shipped ⑰輸入通関代行依頼 ⑰輸入通関代行依頼
Advice)
荷為替手形の買い取り ⑫荷為替手形の買い取り
代金支払い ⑬代金支払い

注意点
は輸出入手続きの概要を記したものです。実際の手続きすべてを表したものではありませんので、
※上図は輸出入手続きの概要を記したものです。実際の手続きすべてを表したものではありませんので、
商工会議所、金融機関、通関業者等と相談の上、貿易を行ってください。
 東京商工会議所、金融機関、通関業者等と相談の上、貿易を行ってください。
ising BankとNegotiation Bankが異なる場合もあります。
※Advising BankとNegotiation Bankが異なる場合もあります。

海外ビジネスガイドブック: 65
輸出のフローチャートの説明
 前頁は日本からA国にL/C決済での商品輸出の事例として、契約から船積、代金決済まで
を、L/Cとそれに関する書類(Shipping Documents)の流れを図式化したものです。番号
の順に沿って下記に簡単に説明します。尚、これはあくまで一例ですので各々の段階で専門
業者や銀行・税関等の窓口にて実際の流れや手続き方法を確認しながら遂行してください。
① 売買契約書の締結
 取引内容が取引先と合意したらまず売買契約書を2通発行し、互いにサインしたのち各々
1通保管します。
・上記の「2通」とは売主と買主で2名の場合です。契約上の関係者がそれ以上の場合は関
係者分発行します。
・契約書は輸出入申告やL/C開設、貿易保険・海上保険付保や後日のクレーム発生時等に必
要な書類ですので必ず作成しサインを取付けておくべき書類です。
・契約書には品質・数量・金額やその他取引条件を漏らさず記載する必要があります。
② L/Cの発行依頼
 A国の輸入者(L/C Applicant)は自社と取引のあるA国側の銀行(L/C Opening Bank)
に対し、日本の輸出者(L/Cでの代金受領者、Beneficiaryと呼ぶ)宛に、①の契約書に基い
たL/Cを開設するよう依頼します。
③ L/Cの発行
 A国のL/C Opening Bankは日本の銀行に対して、日本の輸出者宛にL/Cを発行すること
を通知します。L/Cの内容自体は通常銀行間のテレックスまたは電子通信で伝送されます。
この場合の日本側の銀行をL/C Advising BankまたはL/C Negotiation Bankと呼びます。
④ L/Cの到着通知
 日本の銀行はL/Cに記載された日本の輸出者(Beneficiary)に対しL/Cが発行されたこと
を通知すると共にL/Cの書面を輸出者に対し発行します。
・L/Cは銀行経由で「輸入者が代金を支払うことを確約」している書類ですので最も重要な
書類です。
・L/Cの内容が契約した条件と齟齬が無いかチェックします。 齟齬があれば至急訂正(Amend)
を輸入者に要請することが必要です。
・L/Cが契約書通り開設されて初めて契約が成立したと言えます。輸出者としてはここで初
めて原材料の手配や部品の仕入れが出来るということを意味しています。
・貿易保険の付保や為替の予約等も、契約書締結時かこのL/C入手時に行うと良いでしょう。
⑤ 船腹予約(せんぷく予約:船のスペースを予約すること)

⑥ 船積依頼書(Shipping Instruction)

⑦ 輸出申告(Export Declaration)

⑧ 輸出許可
 上記⑤~⑧については運送会社が代行してくれる場合がほとんどですので、運送会社の窓

66
口と連携して契約書面やL/C面上に規定された船積時期・船積条件に合わせ、運送条件・時
期・運賃等を確定します。また船積書類の様式も定型的なものであれば用意されていますの
で活用できます。
 (尚、商品によっては輸出申告や輸出許可取得が事前に必要な場合があり、輸出商談を始
める前からチェックしておくべきことですので注意してください)
⑨ 原産地証明書(Certificate of Origin)
 輸出先国での輸入通関の際に原産地証明書の提出を義務付けている国々が多いです。
 日本の原産地証明書は日本商工会議所が発行しており、東京地区では東京商工会議所が委
託されて発行業務を行っております。
⑩ 船荷証券(Bill of Lading)
 船荷証券(B/Lとも言う)とは「貨物を船に乗せたこと」を船会社とその船の船長が証明
している証書です。船積後、輸出者にこのB/Lが発行され、輸出者はこのB/Lとその他の輸
出書類をL/C Advising Bankに提示するとAdvising BankはそのL/Cに基き代金を支払うとと
もにこれら船積書類をL/C Opening Bank経由輸入者に送付します。輸入者はこのB/Lを現
地の船会社に提示して貨物を引き取ることができます。
⑪ 船積通知(Shipped Advice)
 貨物を載せる船が決定し日本からの出港日や輸入先の港への入港予定が決定したら、輸出
者は輸入者宛にFAXやメールで船名、船会社名、現地入港予定日、B/Lナンバー等を連絡し
ます。
 船積通知は、船積前(出港前)の通知であればShipping InstructionとかShipping Advice
と言い、出港後の通知であればShipped Adviceということになります。
⑫ 荷為替手形の買い取り

⑬ 代金支払い

⑭ 荷為替手形・船積書類送付

⑮ 船積書類、手形引き受け

⑯ 手形決済
 ⑫から⑮まではL/C決済の流れです。輸出者はL/Cに基きShipping Documents と代金支
払い請求をAdvising Bankに提示します。これを銀行側から言えば「荷為替手形の買い取り」
ということになります。L/Cの要求に一致した一連の書類をAdvising Bankが買取り(輸出
者に代金を支払い)し、その書類をOpening Bankに郵送しOpening Bankと銀行間で決済を
行います。Opening Bankはその代金を輸入者の口座から引き落とします。
 尚、L/Cの種類や輸入者、輸出者の銀行取引の状態により代金支払いの時期が輸入国側の
送金後となる場合もありますので、十分に銀行窓口と打合せをしてください。
 以上が輸出者側からの契約から船積、代金受領までの流れです。図表の⑰以降は輸入者側
が行う手順で今回説明は省略いたします。
 また上記の説明は代表的な実務の流れです。L/Cについても色々な種類や条件があり、現
地銀行と日本側銀行の関係や輸入者の信用力等で様々な条件が付く場合もありますから、取
引に先立ち銀行との事前相談をお勧めします。

海外ビジネスガイドブック: 67
第9章 使えるフォーマット集

 この章では、貿易実務に使える書類や契約書の雛型を紹介します。
 いずれも実務に役立つものですので、ぜひ参考にしてください。

1)貿易実務書類
 ・Offer Sheet(見積書) P70
 ・Sales Contract(契約書) P72
 ・L/C(信用状) P74
 ・Invoice(送り状) P76
 ・Packing List(梱包明細書) P78
 ・Bill of Lading(船荷証券) P80
      「ジェトロ貿易ハンドブック2011」
出典
 ・Certificate of origin(原産地証明書)
P82

2)海外取引の契約書の種類
 海外ビジネスには様々な形態があり、その形態に応じた契約を締結する必要があります。
契約締結は初めて海外ビジネスを行う企業にとって専門的知識を要する難しい作業ですが、
契約雛型を参考にすることで取組み易くなります。
 ここでは、日本商事仲裁協会から出版されている契約書式例を紹介します。(詳細は日本
商事仲裁協会へお問い合わせ下さい)

 ・委託販売契約
   日本に本店をおく委託者が、特定の製品を委託販売ベースで外国の受託者に販売・輸
出することを想定した契約条項例です。

 ・委託加工契約
   生産に必要な原材料の全部または一部を、委託者が受託者に提供し、受託者がそれを
加工して委託者または受託者の指定する第三者に輸出し、受託者はその対価として加工
賃を受け取る取引を想定した契約書例です。

 ・購入基本契約
   日本企業が製品の部品を外国企業(サプライヤー)から継続的に購入するにあたって
の基本的事項を取り決めた契約書例です。

 ・OEM製品製造供給契約(輸出用)
   国内製造業者が、外国購入者からの依頼を受け、当該外国購入者の商号及び商標を用
いて製品を製造・供給することを想定した契約条項例です。

68
 ・OEM製品製造供給契約(輸入用)
   国内購入者が自己の商号および商標を用いて販売する製品の製造・供給を外国製造業
者に依頼した場合に締結される契約書例です。

 ・総代理店契約(輸入用)
   国内企業が外国企業から特定の製品についての独占的販売権を受けるという形態の契
約関係を創設、維持するための契約書例です。

 ・総代理店契約(輸出用)
   国内企業が外国企業に対して、特定の製品について、ある一定地域における独占的販
売権を付与することを想定した契約条項例です。

 ・合弁契約
   日本法人と外国法人が外国に株式会社形態の合弁会社を設立することを想定した契約
書例です。

 ・技術協力および実施許諾契約(ライセンサー版)
   日本企業がライセンサーとして、外国企業(ライセンシー)に対して、その技術の供
与(実施許諾)を行うことを想定した条項例です。

 ・技術協力および実施許諾契約(ライセンシー版)
   日本企業がライセンシーとして、外国企業(ライセンサー)から、外国企業の有する
技術の供与(実施許諾)を受けることを想定した条項例です。

 ・秘密保持契約・共同開発契約
  (秘密保持契約)
 共同開発契約の締結に先立って、技術情報やノウハウを開示し合うこ
とを前提とした契約書例です。レター形式を2例、通常の契約形式を
1例取り上げています。
  (共同開発契約)
 日本企業と外国企業が、ある設備の共同研究開発を行うことを想定し
た契約書例です。

 ・中外合弁経営企業契約
   日本企業が中国企業と取り交わす国際合弁契約を想定した条項例です。中国語条文、
英語条文およびその日本語訳が掲載されています。

 ・技術ライセンス契約(中文)
   日本企業が中国企業に対してノウハウの実施許諾をする際のライセンス契約を想定し
た条項例です。中国語条文、英語条文およびその日本語訳が掲載されています。

問合せ先:日本商事仲裁協会
▶東京事務所 業務部  電話 03-5280-5181  FAX 03-5280-5160
▶大阪事務所      電話 06-6944-6164  FAX 06-6946-8865

海外ビジネスガイドブック: 69
貿易実務書類

Offer Sheet(見積書)

輸出者から輸入者にOfferするレターの例

70
【構成要素】
① レターヘッド(Letter Head) :差出人の社名、住所等
② 日付け(Date):米国式は月・日・年、英国式は日・月・年の順。月は英語で書く
③ 参照番号(Reference Line):差出人側の文書参照番号
④ 書中宛先(Inside Address):封筒とレターの分離に備えて書く
⑤ 敬辞(Salutation):宛先や相手の性別や地位、こちらとの親密度により変わる

米国式 英国式
初めて出す相手、相手の名が不明、フォーマルな場合
複数(御中) Ladies and Gentlemen: Dear Sirs, / Messrs(会社名)
性別不明(各位) Dear Sir or Madam: Dear Sie or Madam,
男 性 Dear Sir: Dear Sir,
女 性 Dear Madam: Dear Madam,
既にレターの応答をしたことがあり、名前が分かっている相手のとき
男性名 Dear Mr.(last name): Dear Mr.(last name),
女性名 Dear Ms.(last name): Dear Ms.(last name),
個人的に親しい間の時 (ビジネスレターではあまり使いません)
個人名 Dear(first name): Dear(first name),

⑥ 件名(Subject):以前のレターを参照する場合は、下に「Ref: (参照番号)」を記載
⑦ 本文(Body):Thank you......から始まりWe are looking......で終わる文章まで
⑧ 結辞(Complimentary Close) :敬辞と同様、相手との関係により変わる

初めて出す相手、相手の名前が不明等、フォーマルな場合
Respectfully yours, Yours faithfully,
官公庁向け Very truly yours, Yours respectfully,
Yours very truly,
Truly yours, Yours truly,
一般企業向け
Sincerely yours, Yours sincerely,
既にレターの応答をしたことがある場合や名前が分かっている時
Sincerely, Sincerely,
個人的に親しい間の時
Best regards, Best wishes,
With best regards, With best wishes,

⑨ 差出人側社名
⑩ 差出人の署名(サイン) (Signature) :自筆サイン
⑪ 差出人名のタイプ(Sender/Addresser) :自筆サインが読めない場合に備えてのタイプ
⑫ イニシャル(Identification Initials)
:前に大文字で文責者、後に小文字でタイプした者
⑬ 同封物(Enclosure/Attachment) :通常は本文中に記述のないものは同封しない
⑭ Copy送付先(Copy to) :名宛人以外に同じものを送った場合に、送付先を記載する

海外ビジネスガイドブック: 71
Sales Contract(契約書)

輸出契約書(売り契約書)の例

72
 輸出者側によって作成されたSales Contract(Sales Note)の一例。
輸入者側からの契約書(注文書)の場合はPurchase Contract(Purchase Order)と記載さ
れる。
 尚、契約書(後述の裏面約款含め)は実用に供する前に弁護士等のリーガルチェックをお
勧めします。

【構成要素】
① 輸出(売り)契約書/輸入(買い)契約書の契約書の明示
② 売り手(輸出者):本例は輸出者側のフォームによる輸出契約書なので、住所等はレター
ヘッドに記載されている形になる
③ 契約成立文言:下線部分で「本契約が裏面(裏面約款)も含めたものである」と示され
ている
  ※裏面約款とは、取引の基本条件を契約書の裏面に記載することであり、契約キャンセル、
クレームや損害賠償、紛争解決方法等を規定しておくもの。詳細は日本商事仲裁協会
等の契約書ひな型を参考に作成してください。
④ 作成日付
⑤ 契約書番号
⑥ 買い契約者名、住所
⑦ 輸入者名(荷受人)、住所:買い契約者と荷受人が同じである場合は「Same as buyer」
等と記載
⑧ 商品名と品質:本例では商品番号・商品名で特定されている
⑨ 数量と数量単位
⑩ 単価:通貨単価を明記し誤解の無いようにする
⑪ 合計金額:通貨単位を明記し誤解の無いようにする
⑫ 貿易条件:通常、インコタームズで表現される
⑬ 船積港・仕出し港:通常は輸出港
⑭ 荷卸港・仕向け港:通常は輸入港
⑮ 梱包・包装条件:その品目の輸送に適した梱包が記載される
⑯ 引き渡し条件:本例では分割積みを禁止している
⑰ 船積時期:本例では、輸出者が信用状(L/C)を2月15日までに受領することを条件と
した船積時期の取決めとなっている
⑱ 検査条件:本例では、日本での数量、品質、状態を最終的な検査条件としている
⑲ 保険条件:本例ではFOB契約なのでBuyer側手配としている
⑳ 支払条件:本例では、L/C付一覧払い手形決済条件としている
㉑ その他の条件:本例では特に規定が無いのでブランク
㉒ 輸入者の署名:タイプ打ち署名と手書きのサインを併記する
㉓ 輸出者の署名:タイプ打ち署名と手書きのサインを併記する
㉔ 輸入者による署名日

海外ビジネスガイドブック: 73
Letter of Credit、L/C(信用状)

信用状の例

74
 信用状発行銀行からのレターの一例。SWIFTを利用した信用状では、上記のような表組
では無く箇条書きになっているが、記載内容に違いは無い。

【構成要素】
① 信用状発行銀行
② 原本である旨の表示
③ 取り消し不能信用状である旨の表示
④ 信用状の発行日
⑤ 信用状番号
⑥ 通知銀行:ここを経由して届けられたものであることを確認すること
⑦ 発行依頼人:通常は輸入者名が記載されている
⑧ 受益者:通常は輸出者名が記載されている
⑨ 信用状の金額:取引金額との相違がないことを確認すること
⑩ 船積期限:船荷証券の発効日の期限として指定されている
⑪ 信用状の有効期限
⑫ 手形買い取りの方法:本例では、一覧払い為替手形による買い取りと指示されている
⑬ 船積書類と通数:手形買い取りの際に指示が求められる、商業送り状、船荷証券等の船
積書類の種類・通数が指定されている
⑭ 商品と貿易条件:契約した商品、貿易条件と相違が無いことを確認すること
⑮ 船積港と荷卸港
⑯ 分割積み、積み替えの可否
⑰ その他の手形買取条件:本例では、船積書類発効日以後の買取期限、手形買取銀行の限定、
日本国内で発生する銀行手数料は輸出者負担であることが示されている
⑱ 支払確約文言:信用状発行銀行が、この信用状で示した条件(信用状条件)に従って振
り出された手形に対して、支払うことを確約することを示した文言
⑲ 信用状発行銀行の署名:タイプ打ち署名と手書きのサインを併記する
⑳ 信用状統一規則準拠文言:本例が国際商業会議所(ICC)の信用状統一規則の2007年版
(UCP600)の規定に従うものであることを示している文言

 (注)⑩、⑪、⑰に記載され、指定されている各日付が、輸出者として無理の無い現実的
な日程になっているかを確認すること。

海外ビジネスガイドブック: 75
Invoice(送り状)

商業送り状の例

① ②

④ ⑤

⑥ ⑦ ⑪

⑧ ⑨ ⑫

⑩ ⑬



⑯ ⑰

76
 商業送り状(Commercial Invoice)の一例。
 商業送り状は、輸出者が作成する船積書類の必須書類です。日本では、輸出通関に際して、
輸出者作成の商業送 り 状 が 必 要 で す。 ま た 輸出国によっては、税関送り状(Customs
Invoice)を要求しているところもありますので、その場合はフォームおよび記載事項を運
送会社等と事前に打ち合わせを行い、作成する必要があります。

【構成要素】
① 輸出者名、住所
② インボイス番号(作成者がつける番号)
③ インボイス作成日
④ 契約者名、住所(輸入者と契約者が違う場合に記載する。輸入者と契約者が同一の場合
記入不要)
⑤ 輸入者(荷受人)、住所
⑥ 船積みする船名
⑦ 船積み予定日
⑧ 船積み港、仕出し港(通常は輸出港)
⑨ 経由港
⑩ 荷卸し港・仕向け港(通常は輸入港)
⑪ 注文番号
⑫ 契約番号
⑬ 支払条件(この場合はL/C)
、信用状番号
⑭ 商品名(信用状付決済の場合、ここの記載は信用状の記載と一致している必要がある)
⑮ シッピングマーク(荷印)
⑯ 原産地国
⑰ 貿易条件
⑱ 品目、価額明細
⑲ 総数量、総金額
⑳ 輸出者名と手書きサイン

海外ビジネスガイドブック: 77
Packing List(梱包(包装)明細書)

梱包(包装)明細書の例

78
 梱包明細書(Packing List, P/L)は、輸出者が作成する船積書類の一つであり、送り状の
補完書類と位置付けられている。また通関時に提出する書類でもある。

【構成要素】
① 輸出者名、住所
② 輸入者名(荷受人) 、住所
③ 契約者名、住所(輸入者と契約者が同一であれば記載不要)
④ パッキングリスト作成日
⑤ パッキングリスト番号:作成者(輸出者)がつけた番号
⑥ インボイス番号:このパッキングリストの貨物に関わるインボイスの番号
⑦ 船積する船名
⑧ 船積日、船積予定日
⑨ 船積港・仕出港:通常は輸出港
⑩ 経由港:積み替えがある場合に記載する
⑪ 荷卸港・仕向港:通常は輸入港
  ※最終仕向地(Final Destination)が別にある場合は、それを記載する欄も必要
⑫ 商品名
⑬ 数量:数量単位も併せて記載する
⑭ 正味重量(Net Weight) :貨物の正味重量に風袋の重量を加えた総重量を記載する
⑮ 総重量(Gross Weight):貨物の正味重量に風袋の重量を加えた総重量を記載する
⑯ 容積(Measurement):船賃の計算は比重が“>1”の時はその重量に対して、 “<”の
時はその容積に対して計算される
⑰ 梱包毎の貨物の数量:どの梱包に、何が、いくつ入っているかを表示する
⑱ 荷印:契約書で定めた記号を記載する
⑲ 梱包総数:全商品の合計梱包数を記載する
⑳ 商品総数:全商品の総数を記載する
㉑ 正味重量合計:全商品の正味重量の合計を記載する
㉒ 総重量合計:全商品の総重量の合計を記載する
㉓ 容積合計:全商品の容積合計を記載する
㉔ 輸出者の署名:タイプ打ち署名と手書きのサインを併記する

海外ビジネスガイドブック: 79
Bill of Lading、B/L(船荷証券)

船荷証券の例

100-0005

80
 船荷証券は船積書類の必須書類の一つ。運送契約の証拠書類であり、かつ証券面に記載さ
れた受取人に、この船荷証券と引き換えに貨物を引き渡すことを約束した引換証でもある。
また、裏書によって流通させることが出来る流通証券、有価証券でもある。輸出者が提出し
た船積依頼書(Shipping Instruction)を基にして作成され、運送人(船会社)が貨物を受
け取ったことを証して発行する。

【構成要素】
① 船荷証券番号
② 荷主:貨物の送り主(通常は輸出者)名を記載する
③ 荷受人:貨物の受取人を記載する(※荷為替手形決済では輸入者名を記載せず、本例の
ような指図式とするのが一般的。送金決済の場合では、輸入者名を記載する。 )
④ 着船通知先:荷受人欄に輸入者名が記載されない場合に、船会社が貨物の輸入地到着の
連絡先として指定される(本例では契約先であるシンガポールの会社になる。シンガポー
ルの会社は本B/Lに基きThird Party B/Lを作成しマレーシアの輸入者にその他の船積書
類と共に送付することになる)
⑤ 船荷証券発行主(船会社)名
⑥ 運送約款:この船荷証券に係る運送約款の表面約款部分(一部省略)
⑦ 本船に積む前の運送がある場合の運送人や船名等
⑧ 船会社への荷渡し地
⑨ 本船名と航海番号
⑩ 船積港仕出し港
⑪ 荷卸港・仕向け港
⑫ 船会社からの引き渡し地
⑬ 最終引渡地
⑭ カートン番号
⑮ 荷印
⑯ 梱包数
⑰ 商品毎の品目名、数量、重量、容積
⑱ 船会社が受領した梱包数の文字表記(改ざん防止のため)
⑲リ  マーク記載欄:船会社が受領した貨物に瑕疵があった場合には、この商品欄に事故適用
 (リマーク、Remark)が記載される。※本例ではリマークが付記されるような瑕疵は無い。
⑳ 運賃および諸費用:本例では着払い(Freight Collect)条件なのでこの欄に運賃等詳細
が記載されるがここでは省略する。 (輸出者が元払いする場合はFreight Prepaidと表記さ
れ、運賃は記載されない)
㉑ 運賃換算時の換算レート
㉒ 運賃の支払い地
㉓ この船荷証券の発行地および発行日
㉔ 船荷証券の発行部数:通常は3通要求される
㉕ 船積証明:本船に実際に貨物が積み込まれた年月日の追記と船会社による署名
㉖ 船会社のタイプ打ち署名と手書きサイン
㉗ 収入印紙:日本での発行には200円の収入印紙が必要

海外ビジネスガイドブック: 81
原産地証明書作成例・留意事項

82
海外ビジネスガイドブック: 83

 外ビジネス
第10章 実務チェックシート

チェック実施日:  平成  年  月  日    記入者:            

★定期的にこれらのチェックリストを使って、自社の現状把握に努めてください

1【海外ビジネスの心構え】 (2項目)

□  海外ビジネスを進めていく目的は明確か?
□  海外ビジネスに対して、社員全員が本気になっているか?

2【海外ビジネスの戦略策定】 (11項目)

□  取引相手国における商品・サービスの流通・価格情報を調査したか?
□  取引相手国の輸入規制や法制、関税をチェックしたか?
□  安全貿易管理に準拠しているか?
□  取引相手国の社会的特色(歴史、文化、風習等)は理解しているか?
□  外部環境(機会と脅威)と内部環境(自社の強みと弱み)の分析はしたか?
□  経営資源を有効に活用した戦略を立案しているか?
□  想定されるケース(楽観・悲観ともに)を検討し、対応策は練ったか?
□  事業化計画を作成し、そのスケジュールを基に月次でやるべきことは明確か?
□  ビジネスを遂行するにあたって資金計画を策定したか?
□  最悪のケースを想定し、撤退条件を検討したか?
□  公的機関の支援策は活用しているか?

3【販路開拓と貿易実務】 (13項目)

□  社内体制(対外的な呼称、担当者の決定)はできているか?
□  為替・信用状・物流、等の一定レベルの理解はできたか?
□  貿易実務のモノ・カネ・書類の流れをしっかりと把握しているか?
□  海外展示会等への参加を含め、最新の情報を常に収集しているか?
□  英文(中文)でホームページ・レターヘッドは作成したか?
□  ビジネスパートナーの選定と、そことのコミュニケーションは十分か?
□  運送会社との契約、貨物保険や貿易保険の付保は行ったか?
□  為替や金利を踏まえて代金回収に対して細心の注意を払っているか?
□  売買契約書・代理店契約書・機密保持契約書は作成したか?
□  製品やサービスの仕様書は明確に規定されているか?
□  見本での確認や実際の検品体制は万全か?

84
□  相手先の信用状態を確認しているか?
□  自社の企業秘密の保全に手を打ったか?

4【現地法人設立と事業運営】 (11項目)

□  海外勤務規定は作成したか?
□  赴任者の適性(やる気や前向きさ、健康状態、語学力)は妥当か?
□  インフラや社宅・一時帰国制度・家族へのサポート等は確認検討をしたか?
□  健康管理や定期検診の実施、安全面や救急病院等の確認、等は十分か?
□  現地日本人会への入会や現地の弁護士や会計士といった相談相手はいるか?
□  現地事業会社の社内規則や職務規定は作成したか?
□  現地スタッフとは普段からコミュニケーションは良くとっているか?
□  現地スタッフと定期面談の実施や彼らの教育研修制度は検討したか?
□  現地でのマネジメントを行うための自己研鑽は積んでいるか?
□  現地の言葉や文化を、好奇心を持って学ぼうとしているか?
□  日本人だけですべてを終わらせようとしていないか?

5【海外ビジネスのアフターフォロー】 (6項目)

□  継続的なビジネスを行うために仕組みづくりはできているか?
□  更なるコストダウンに向けて手を打っているか?
□  情報発信は常に行い、販路開拓に向けて次の一手を打っているか?
□  取引先との定期的な訪問や報告のやり取りを行っているか?
□  P(計画)D(実行)C(確認)A(修正)のサイクルを回しているか?
□  コンプライアンスを順守し、何事にも公平(フェア)でいるか?

6【トラブル回避への対策】 (13項目)

□  現地の業界での商慣習は確認したか?
□  日本でのやり方を押しつけていないか?
□  常に現地・現物・現実を見て判断しているか?
□  交渉の記録や証拠を残すように日頃から業務を行っているか?
□  常に情報を集め、相手を説得するために理屈にあった説明ができるか?
□  不正が起こり得ないようなチェック体制は構築したか?
□  業務フローをスタッフ等が把握できているか?
□  交渉には誠意を持って対応し、確認を取る作業は怠っていないか?
□  NoはNoと明確に伝えたか?
□  以前のクレームに対して、応急処置でなく恒久処置を施したか?
□  常に冷静で全体像を捉え、別の視点から見ることを意識しているか?
□  緊急連絡網の整備、居場所の明確化と不在時の対応はできているか?
□  トラブルが発生した時に迅速な対応ができる仕組みを作っているか?

海外ビジネスガイドブック: 85
~執筆者紹介(五十音順)~
秋島一雄(あきしまかずお)
中小企業診断士・キャリアカウンセラー
大手商社で営業10年海外業務部5年、半導体メーカーで営業5年の経験を経て独立、駐在地
は米国(ダラス)、タイ、インドネシア。現在は東京商工会議所のコーディネーター以外に、
コンサルティング会社経営と東洋大学大学院中小企業診断士養成課程講師、産業能率大学講
師も務める。
○得意分野:経営戦略立案・営業展開・経営幹部育成・展示会支援・能力開発・組織力強化
○執筆担当:1章・2章・3章・5章
○モットー:「自分で考え、自分で行動すれば、毎日がいい転機(天気)!」

加来国雄(かきくにお)
中小企業診断士・フィナンシャルプランナー
大手商社でエネルギー輸出入貿易・海外事業投資歴30年、その間マレーシア合弁企業販売責
任者歴4年、その後中小企業経営者歴4年を経て独立、現在「経営革新と人材育成なくして
会社の発展はない」との価値観を共有する中小企業経営者の相談役・道案内役を務めている。
○得意分野:よろず相談・輸出入貿易/海外展開支援・環境/エネルギー分野・人材育成
○出筆担当:1章・4章・7章
○モットー:
「一期一会」を大切に「人皆師」と学べど「未だ木鶏たりえず」、万年青年を目
指せ!

坂口 到(さかぐちいたる)
中小企業診断士
大手商社で化学品の貿易に従事。駐在したタイでは製造業への出向も経験。8年間の勤務後、
外食産業へ転職。すぐに米国駐在となり、飲食店の立ち上げを行う。帰国後、食材・資材の
調達、品質管理業務に7年間従事。現在は独立しコンサルティング会社を経営。食品業界、
卸売業界を中心に活動中。
○得意分野:海外展開支援、コストダウン戦略立案、食品・飲食業界支援(営業から製造現
場改善まで)
○執筆担当:6章・8章
○モットー:「お客様は神様です!」

鶴野祐二(つるのゆうじ)
中小企業診断士・行政書士
大手商社で鋼材貿易に従事。中国留学経験あり、商社では一貫して中国ビジネスに携わる。
上海に5年間駐在し、事業会社の運営を経験。11年間の勤務後独立し、現在は若手国際派診
断士として東京商工会議所コーディネーターの他、公私の機関で企業の中国ビジネス支援を
中心に活動している。
○得意分野:海外戦略立案、中国貿易支援、中国事業会社経営全般、外国人採用支援・在留
資格
○執筆担当:3章・4章・5章・9章
○モットー:「融通無碍(ゆうずうむげ)」 信念をもって環境の変化にしなやかに対応しま
しょう

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海外ビジネスガイドブック
平成23年9月 初版発行
平成24年3月 第2版発行
平成26年3月 第3版発行
発行所:東京商工会議所 中小企業相談センター
    〒100―0005 東京都千代田区丸の内3―2―2
    電 話:03―3283―7700
印刷所:勝美印刷株式会社

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