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出力管6L6GCを多極管接続で使用し,局部PG

帰還や1段飛ばしクロスPG帰還をかけたAB級
動作のプッシュプルパワーアンプ 初段は差動増
幅による位相反転.初段ドライブ段とも6922/ 。71芸
E88ccを使見1段飛ばしPG帰還の有効・無効 l収34B

を選択できる切り換え機能を付けるなどPG帰還
の可能性をさらに追及 周波数特性では,低域は
20Hzまでフラット,高域側は-3dBになる周波
数は100kHz以上試聴では低音域が素直に伸び,
スピード感のある中高域が得られている.

即 断M乱,J li鯛- L附紺硝5 - 。根本舷根強駅レ巾SAJB。 L如毎 2。


特性や音の傾向を調べたので報告 系なら現行管もあるので楽に入手
はじめに
します. できますし,同一ソケットでバリ
昨年11月号に発表したEL84/ なあ,本磯の部品代は合計で エーションが豊富なので,種々挿
dBQ5 3結プッシュプル6Wパワ 約10万円になっています し替えて楽しめるものと思います.
ーアンプで プレートグリッ
(2)初段差動増幅による位相反転
設計方針
ド帰還(以下 PG帰還)を実装し, プッシュプルなので位相反転回
カソード帰還との音質比較も含め すでに述べたとおり, PG帰還 路が必要です.上下完全対称の反
て種々試してみた結果, PG帰還は, はスッキリと引き締まった低域が 転を実現するにはトランスか差動
①全体的な音の定位がよくなる 特徴だと思います.この傾向を検 回路が有力候補ですが.アンプ全
②低音域の音像が明確になり,カ 証することを主眼に,以下の方針 体の位相回転を少なくする観点よ
ソード帰還に比べて引き締まっ で設計します. り段間はCR結合とし,初段に差
た音になる (1)出力20W前後とする 動回路を置いて全段平衡回路にし
という傾向があると,筆者なりに 本棟は大出力を狙うものではあ ます.
感じています.また,同じ記事の りませんが,能率90dB以下の現 (3)局部帰還をメインとする
最後に報告したとおり,同年5月 代的なスピーカーでも十分に駆動 負帰還は出力段の局部PG帰還
号に掲載したEL34(3結)シング できる出力として, 20W前後は が主体となるので,内部抵抗を下
ルパワーアンプもPG帰還とカソ 欲しいので,規模的にはプッシュ げるために帰還量を極力大きく取
ード帰還を選択できる回路に変更 プルの選択となります.多極管接 ります.なお,アンプ全体の出
して比較しましたが,やはりPG 続で浅めのAB級プッシュプルの 力インピーダンスを下げる観点
帰還では,低音域の定位の良さと 条件で20Wレベルとなると, dLd で,出力段からドライバーへの一
引き締まり感が出てくる傾向があ 系やEL34など著名オーディオ管 段飛ばしクロスPG帰還も試しま
ると感じました による,プレート電圧300V以内 す.言鞠恥ま後述します.
そこで今回は, PG帰還の可能 での動作が候補となってきます.
性をさらに追及することを目的に,
回路説明
今回は3結ではか、ので,肩特性
多極管接続の出力段に局部PG帰 の良好なビーム管を選択すること 回路図は図1,使用する真空管
還をかけたパワーアンプを製作し, としてdLd系を起用します 6L6 の主要特性は表1のとおりです

92 MJ
pGは州ご相.%ははひ .]・ 日貼り、.....=:.

[図1] 6L6GCプッシュプルパワーアンプ回路図

以下,項目ごとに説明します. らEsg-275Vの特性は発表され [表1 ]使用真空管の主要特性


(1)出力没 ていません,そこで,真空管のス ・■漕、脊:_,㌔ 刪鼈鼬F襲熊 咾hヌ偬Hャ 俉3、2

6Ld系のプッシュプルとするこ クリーン電圧が異なる場合のプレ 用途 剴d力増幅用 處リ5 ( ク6偉Yр


ビーム管

とにしましたので, 6L6GCの特 ート特性を既存の特性グラフから


ヒーター .3V′0.9A 澱 h テ

性図を使って設計します. 求める方法として,図3の変換表
定 格 俐Y X7h8ネ ク6y6H 500V S b
[・1

450V
dL6GCは最大プレート損失 を用います.たとえば本機の場合,
20mA
30Wの大型管ですが,初期のdLd 与えられたプレート静性のEsgが
最大プレート損失 r 1.5W
やdLdGはプレート損失が19W 250V,必要なプレート特性の&g 5.OW
1

の設定であり,またdL6GBや が275Vなので,電圧変換率Feは
スクリーン電圧 S b
5881などの派生管は20-25W 1.1(=275V-250V)となり,こ
プレート電流 都&ヤ 250V 12mA
程度の規格になっています. の変換表から電流変換率FLを読 動 作 例 h8ネ ク6y6H 涛 b
負荷抵抗 綏カ

最遠 本磯は大出力を狙うのが目的で み取ると1.15となっているので, 14VI,,ak

E・下 はないので,これら種々のdLd系 250Vのプレート特性図の数値を, 出力電力 澱絛r

6.cmS 免ツ綏ユ2
く取 の派生管も使用できるように, Ep 電圧(横軸およびコントロールグ
増幅率 33
∩.LIE.
=Esg-275V. Zp -65mAの動作 リッド電圧Egl)を1.1倍,電流(縦
内部抵抗(働鵬値) "綏エR 3.5kr)
1児,卓二
点で妥当性を検討します(Ep :プ 軸)を1.15倍に読み替えれば こ
7)- レート電鼠Esg:スクリーング の特性図が使えます.こうして換
1)ッド電圧, Zp:プレート電流). 算した電流,電圧値を代入したの した線となり, Eg1-OVカープと
⊥ま

この動作点でプレート損失は17.9 が図4のプレート特性囲(Esg- の交点は45V/184mAとなりま


Wとなり,19W以内に収まります 275V)です. す.さらに負荷線を延長し,電流
6L6GCのプレート特性は図2 Ep=275Vとするので,プッシ 軸と交差する点が218mAなので,
のとおりですが,このグラフは ュプルの負荷線は275V/OmAの 負荷線の傾きは1.26kE2となりま
Esg-250Vのもので,残念なが A点から左上の肩部分B点に延ば す(275V÷218mA≒ 1.26kE2).プ

201 8/3 93
6L6GCプッシュプルパワーアンプ

いJc .那
rFU)   (抑ト15)

[図5] pG帰還の基本回路 [図6] pG帰還の解析図 [図7]入力インピーダンス

3義 わな ∫ Oo 備C#X 2 62 L6-OV 一才 秒 ) 秒 -3 秒 y 迭 V 剖b

す.

(2) PG帰還
本機は局部のPG帰還で,内部
'i
抵抗を引き下げる方針ですから,
PG帰還の帰還量について検討し
ます.
dLdGCのビーム管接続ではダ
rIB 牝
ンピングファクターDFはほとん
どゼロですから, DFを3程度ま
・Ⅴ) で上げるには4倍(12dB)の棉還
た, 量が必要です.出力管にPG帰還 510 100 r 8k 飛 負 + T夢 Q 50 淋 。 ) 300

ド をかけた場合の帰還量解析を図5
-7に示します. [図8コ6922/E88ccプレート特性

己庄 PG帰還前の所要人力(グリッ
ま ド・カソード間)は13.2Vですか ります.したがって, Rsの47kE2 の特性を揃える観点から双3極管
声は ら,帰還後の所要人力が4倍の との合計値である60kOが出力段 が妥当です.
;hす
53VになるようにRs, Rfを決め の入力インピーダンスとなります. これらの条件を満たす真空管と
己流 ればよいことになります.つまり, ドライブ段は,この60k幻負荷を して, 6DJ8ファミリー, 6BQ7,
しで Ⅰ点とG点の間の電圧が40Vにな 駆動できる設計が求められます. 5687, 12BH7などが候補にあ
しの ればよいので, Rf=200kE2と置く (3)ドライブ段 がりますが,適度な増幅率と直線
し と, R5 -200kE2 ⊥(163V+13.2V) 本機のドライブ段は,以下の条 性の良さが特徴で 現行生産品
■ス
×40V〒45.4kOとなります.そこ 件を満たすことが必要です. もあるdDJ8ファミリーの6922/
)て で, Rsに47kE2を実装すると, Ⅰ ①155Vp_p以上のドライブ出力 E88ccを選択することとします.
71 --L
点の所要入力は(163V+ 13.2V)- 電圧 図8が6922のプレート特性で
・拝 200kE2× 47k0-41.4V, 132V+ PG帰還後の出力段は最大出力 す.ドライブ段は130V, 6mA,
唱= 41.4V-54,6Vとなるので,実際 時に54.6Vrms- 155Vp_pの入力 バイアスー3.5Vを動作点とし,
lA の帰還量は20×Log(54.6T13.2) を要求します.したがって,ドラ 負荷抵抗を22kE2とします.也
±12,3dB(4.13倍)となります(図 イブ管はEg1-0のプレート特性 力段の人力インピーダンスが60
イ 6). 曲線の立ち上がりがよく,大電圧 kOですから,この段の実質負荷
′サ
次に, PG帰還後の出力段の入 が取れることが必須条件です. は22kE2〝60kE2± 16kE2となり, 16

し 力インピーダンスを計算します. ②低い負荷を駆動できる kE2の直線Aが実際の負荷線と


■十
図6より, G点から仮想接地点 入力インピーダンス60kE2の出 なります.したがって,出力電
の0点までの見かけ上の抵抗値は 力段をドライブするため,内部抵 圧はピークで40-220Vまでの
り 15kOです.この抵抗は図7のと 抗が低く,ある程度電流を流せる 180VpーPとなり,要求電圧を満た
こ発 おり,グリッドリークの100kE2と ことが・JZ虜です. します.
1梓 並列になるので,並列抵抗値は(15 (参上下段のバランスがよい なお,この動作での裸利得は24
.ま ×100) ⊥(15+100) 〒13kE2とな 平衡ドライブですから,上下段 倍ですが,アンプ全体の利得が高

MJ 201 8/3 95
I . = ・ . . 団 _ : ・ ⋮ . . ∴ ・ . 5 い 州 ︰ ・ ⋮ . i , : I .
特 性

以下, R-chを代表特性として
示します.
(1)入出力特性(図11)
本棟は合計19dBの負帰還をか
けるので,無帰還時の給合利得は
100倍超ときわめて高く, 120mV

入力で出力20Wに達します.出
力段のPG帰還12.3dBをかける
と380mV人力で,また加えてク
ロスPG帰還をかけると660mV
入力で,それぞれ最大出力の20
Wとなります.
以下 出力段PG帰還のみ,お
[図10]部分実体配線図
よびクロスPG帰還もかけた場合
について説明します.

: . ・ 朗 . 。 ・ . I . . .
アースやシャシーに流さないよう  ゼロ電位点を, 10E2の抵抗を介し (2)周波数特性(図12)
にします.そして,電源ループの  てシャシーアース点に接続します 周波数特性の低域は20Hzまで
フラット 高域側はいずれの場合
ち-3dBとなる周波数は100kHz
以上です.クロスPG帰還をかけ
た場合は, 150kHzに向けて利得
の落ち方が緩やかになり,わずか

に高域の揺れが残っているようで

' ・ ] . .

す.
_/ (3)ダンピングファクター(図
13)
ダンピングファクターは局部

・ ・

+NFBみtJ -,PGNF I.-Croup 】ll1 劔 ド 1 000

[図11]入出力特性 PG帰還のみで1.55,クロスPG

' r   .
(R-ch, 1kHz) 帰還をかけると2.7に上昇します
_00 1 0 偵
が,いずれも設計億に比べて低
い値に留まりました これは,本
200
機の負帰還の起点が出力トランス
000 の1次側であるため, 1次と2次
-2 0D 間の伝送ロスや2次側巻線・配線
などに起因するインピーダンスが,
-■FB無 ・l.PGNF 剪 辻メメ "

-400
-.●C PG 披 F

帰還電圧の監視対象外になってい
宅JS00
るためと考えています.
400
(4)歪率特性(図14-17)
-1000
図14 15はPG帰還のみの場
1200 LJ 合です.歪率が1%を超えるのは
4-6Wからで, 15Wで2%です.
- flo 一oo 1 ,000        10.000        1 00,000

周汝故(Hz) また, 1kHz時の歪みの内訳は大


亡図12]周波数特性(R-ch, 1/8W時) 半が3次歪みで 2次歪みは最大

100 MJ
6L6GCプッシュプルパワーアンプ

3   2   整 凸 1   1
00 50 00 部 881
出力まで1%以内とプッシュプル Ill.L

のバランスがよく取れていること -■CrOssPGF I-PGNF 剪

て がわかります.
図16, 17はPG帰還に加えて
クロスPG帰還もかけた場合で, 010周波数(Hz)1.00010.000

か 10Wで1%以下まで歪みが減少 [図13]ダンピングファクター(R-ch, 1/8W晴)

は します.
lV なお,残留雑音はいずれの場合
出 もAカープ補正後50iLVと低いレ
る ベルです.
一ト I 1「■ エ エ

ク (5)方形波応答(写真8-13)
lV PG帰還のみの場合は写真8
20
-10で,いずれも方形波がきれ
ク`'

いに通っています.特筆すべき ノク

お は10kHzで,立ち上がりが速く,
(
上空
仁コ 残留振動もほとんどありません.
ループ帰還と違って遅延した信号
■\ _/

が帰還される現象が発生しにくい
で ため,位相補正なしで抜群の安定
▲ゝ
ロ 性を示します.このあたりが局部
001        010        1 00       1000

iz 帰還の優れた点といえそうです. 出力(W)
一方,クロスPG帰還をかけ
け [図14]歪率特性(R-ch,帰還のみ)

得 た場合は写真11-13のとおりで
か 10kHzの立ち上がりはさらに速 (6)パワーバンド(図18) コアの直流磁化がなく,低音域が
で くなりますが,わずかな振動が残 50Hz∼20kHzの範囲で正弦 素直に伸びます.また,高域位相
ります.大きなピークがあるわけ 波が18Wまで通ります.低域は 補正が入っていないので,スピー
図 ではないので位相補正はしていま 20Hzで4Wと,出力トランス設 ド感のある中高域が得られます.
せんが,この違いが音にどのよう 計の狙い値どおりです. 以下のヒアリング結果は,筆者
部 P す 低 本 ス 次 線 析 い

な影響を与えるのか(あるいは与 の部屋における個人的な感想です
ヒアリング結果とまとめ
えないのか),ヒアリングで検討 から,その前提でお読みください.
します. 本機はプッシュプルのご利益で (洋室6畳JBL LE8T十2402)

+100Hz -1kHz -1DkHz 劔


ー1kHz総合 剪

・.-■-1kHzH2 剪 リ ツ

+1kHzH3 剪 一l

5- _-∫
場はす大大

■項

1 00                 1000 001        010        1 08        1000

出力(W) 出力(W)

[図15] 1kHz歪率内訳(R-ch, PG帰還のみ) [図16]歪率特性(RICh,クロスPG帰還あり)

MJ 201 8/3 101


(AAI
l I

一 ・..■- 牟 エ 鮭 H

∼.WYY
一一一一一 牟 H ド_J


20      1 00        1.000        10,000       1 00,000

周波牡(HZ)

[図18]パワーバンド(R-ch)

m柑桃恥掛川耶ひLH・。・︰︰L

音像がわずかに大きくなる印象を
受けますが,複数の楽器や声が重
なる曲では,局部PG帰還のみの
/

- 場合とほとんど違いがありません
でした.計測上のダンピングファ
出力(W)
クターは1.55から2.7に上昇する
[図17] 1kHz歪率内訳(R-ch,クロスPG帰還あり)
ので,スピーカーシステムや試聴
環境によっては違いが出るかもし
れません

芦芦等
(2)電源共振周波数による違い
スピーカーや部屋の状況で効果
が変わってくると思います.私の
スピーカーシステムはバスレフポ

L製、∵Z・:・・㌧,.
ートの共振が55Hz (A音)近辺で

すから,アンプは16HzのC音共
波形(R-ch, i-100Hz, 形(Lch, i-1kHz, PG 形(LICh, f-10kHz. PG
振とするほうが残響のバランスが
PG帰還 上 人九 下  帰還 上.入九下 出力) 帰還,上人九下'出力)
よいようです.ここの周波数の選
択は,実際に音出ししてみるのが
一番です.

岳ii
(3)まとめと感想
ビーム管接続のdLdに12dBの
PG局部帰還という組み合わせは,
本誌記事やネットを探しても前例
が見当たらないと思います.しか
:(.:= TZ
し,今回チャレンジしてみて好結
形(R-ch, I-100Hz,ク 形(L-chJ-1kHz.クロ 形(Lch, f-10kHz,ク
ロスPG帰還,上人九下 スPG帰還,上:入九下・ ロスPG帰還,上▲入九 果が得られたと思います.
出力)        出力) 下 出力) 6L6系以外でも,オーディオ
用の多極管であるdCA7, 6Vd,
(1)クロスPG帰還の有無によ PG帰還の特徴であるように思い KT88などは,固定バイアス時の
る違い ます.一般的に,オリエントコア グリッドリークが100kE2以上ま
出力段の局部PG帰還のみで試 の出力トランスは低域音像が広が で許容されているので,本税と同
聴したところ,リアリティのある る傾向にあるのですが,本棟では 様に多量のPG帰還が比較的容易
';..

低音域と,全域の音像定位の良さ その現象をうまく制御できている にかけられます.多極管接続+


が感じられました 特にピアノや と思います PG帰還によって,パワーと音質
弦楽器の独奏曲を再生したときに 局部PG帰還に加えてクロス を両立させる試みを,もう「段進
楽器の実在感が明確になる点は, pG帰還をかけると,独奏楽器の めたいと考えています.

102 MJ 201

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