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3.oi狩れ柾ズ肪

染谷電子のバイファイラー巻き出力トランスASTR-
12を使用して,ユニティカップルド(UC)回路の
EL84プッシュプルアンプを製作した. UC回路は
高いドライブ電圧を必要とするが,本機ではインタ
ーステージトランスを使用して,回路構成をシンプ
ルなものとしている.出力管はEL84を使用し,塗
流B電圧を有効に使える固定バイアス方式として,
真 で す従-
rLJ. ′リン tl'･) すJ

最大出力12Wを得ている.本機は, CSPPアンプ
の印象をひっくり返すもので,中城の厚い,パワフ
ルな音のアンプに仕上がった.

-ト･カソード間にプッシュプル
LJ

カップルド(UC)回路です.ただ
はじめに
出力e｡が得られます. し,これを実現するには,特殊
クロスシャントプッシュプル この回路をそのまま実現しよう なバイファイラー巻線構造の出
(CSPP)回路は,図1の原理園 としても複数のB電源,バイアス 力トランスが必要となるのが大き
巨管 のように, 2本の真空管を逆並列 電源が必要になるので回路を工夫 な問題です 市販品でバイファ
事徴 接続してVlのプレートとVZの しなければなりません.代表的な イラー巻きをうたっているのは,
馴L カソード, V2のプレートとVlの 回路としては,図2(a)の出力ト 本棟で使用している染谷電子の
まう カソードを接続し,それぞれのグ ランスCT給電回路がありますが, ASTR-12, ASTR-20くらいしか

軸i リッド･カソード間に逆位相の信 この回路では信号経路にCl, C2 ありません.

ノて 号ell, e12を入力することでプレ という大容量のコンデンサーが必 これまでに発表されたCSPPア
/グ 要になります.できることなら, ンプでは,出力段そのものにかな
}が 信号経路に大容量のコンデンサー りの量の負帰還がかかっているの
e′2を入れたくありません･ にもかかわらず,さらに特性の改
これを改善したのが,図2(b) 善を狙ってオーバーオール負帰還
に示したマッキントッシュのパワ もかけています.そのため,周波
相た^Yl止托 すきなレ

ーアンプが採用しているユニティ 数特性や歪率といった物理特性は
[図1]クロスシャントプッシュプル
(CSPP)の原理図
､ r l 人         サ )     L .

掴2]多極真空管を使ってCSPP回路を実現する

MJ 2016/12 85
 ユニティカップルドEL84CSPPパワーアンプ
現 オ   こ   は と   ア   ら   ル   ま     ら 一 が あ   て

∴‥二
基準負荷 劔

5       10        20

負荷抵抗[kn〕

[図5] 1kHzでの最適負荷特性(歪率7%を最大出力とした)

亡図4]染谷電子の出力トランスASTR-12の特性と接続図
(メーカーデータシートより)

を使うことができます. NC-14と

荷として, 2組をカソード帰還と cspp回路では,出力インピー FM-14Dの特性と接続を図6に示

して使います,本棟では,図4の ダンスの低減と歪率の低減が期待 します
Pl-B-P2とKl-El/E2-K2を入 できますが,その一方で必要なド 初段ドライブ段にはロシア製
れ替えて配線して測定しましたが, ライブ電圧が大幅に増加してしま のdNdP(dHdn)を使います(写

特性に変化は認められませんでし います. EL84では,バイアス電 真1) 6NdPはプレート抵抗が

た. 圧から求まる最大ドライブ電圧は 1.8kE2と低いので, NC-14の5kE2

本棟では2次側を8E2としてい 約6Vrmsですが,本棟では最大 の1次巻線をドライブすることが

るので,プレート負荷は1.25kE2 出力時のグリッドドライブ電圧 できるだけでなく,初段にもう一
ということになります.いっぼ は40Vrms以上も必要になります つのユニットを使って3極管の2

う, EL84のAB級プッシュプル それでもEL84のバイアス電圧が 段増幅とし,必要な増幅度を稼ぐ

動作では,代表的な負荷インピ 低いので,最大ドライブ電圧はこ ことができます.
ーダンスは8kE2なので, CSPP の程度で済んでいます. 電源トランスはB電圧巻線が
では負荷インピーダンスはその インターステージトランスには, 220V/250V, 150mAでEL84を

1/4の2kE2となります.それで 1次側を直列で使うと変圧比が 使ったプッシュプルアンプにちょ

ち. ASTR-12の1次インピーダ 2 : 1と損失になってしまいますが. うど良い橋本電気のPT-150を使
ンスは1.25kE2でかなり小さいの EL84の電圧感度が高いので,こ います. B電源の整流は,筆者が
の は す て 常れ  巻特バ に の ツ 使

で,かなりのミスマッチングとな れまで高い評価を受けてきた旧タ 近年好んで使っている炭化ケイ素

ってしまいます.そのため,最大 ンゴのNC-14を使うことができ ショットキーバリアダイオード

出力の低下が危慣されます.アン ました このNC-14は現行品で scslO5KG (耐圧1200V,定格

プ完成後に最適負荷を測定したと はないので,代わりにNC-14(オ 電流5A)を本棟でも使っていま

ころ,図5のように定格負荷8E2 リエントコア)の置き換えとして
で最大出力13Wが得られている 開発されたノグチトランス販売の
のでホッとしています. ファインメットコアのFM-14D

NC-14とFM-14Dの結線
(括弧内は. NC-14の端子番号) [写真1]左は初段･ドライフ段の
6N6P (6H6【),右は出力管のEL84
[図6]インターステージトランスNC-14とFM-14Dの特性と接続図 (6BQ5)

2016/12 87
 r
L

. i.t絹嘉一針11L h
黄
J
小さいので フアストリカバリー

･r
億
ダイオードUF4007で半波整流

L
J,
赤
し,平滑回路は比較的簡単なもの
としました.バイアス電圧に紛れ

茶
耐電圧 AC2kV l分間
てハムが入り込むのを恐れるあま
[図7]ノプチトランス販売のチョークコイルPMC-1018HWの特性と接続図 り,平滑回路のコンデンサーを過
度に大きくすると,バイアス電圧
す.巻線とダイオードの間に抵抗 EL84/6BQ5はエレクトロ･ハ の立ち上がりが遅くなり,出力督
470/3Wを挿入し,突入電流の ーモニックスとJJエレクトロニ
が先に動作し始め,過電流となっ
抑制と電源インピーダンスの調整 ック,タングソルのものが現行品 てしまう危険があります.
をしています. で購入できます. dNdPはロシア 全回路図を図8に示します.班
B電源の平滑回路用チョーク 固有の真空管ですが,電気的には 力段EL84の動作はプレート･カ
コイルはノダチトランス販売の 5687やJJエレクトロニックの ソード間電圧257V,カソード電 抵‡

PMC-1018HW(図7)を,平滑 ECC99と似ています. 6NdPの 流30mAなので,プレート損失

用電解コンデンサーはユニコンの ヒーター電圧は63Vなので,ヒ とスクリーングリッド損失は合計
loop+100FF/500Vブロック型 ーター配線はシンプルで済みます.
8.OWとなり,十分定格内に収ま
コンデンサーを使っています. バイアス回路は,必要な電流が っています.

6N6P l/2 6N6P 1/2 EL84

Nc-1472575V

l74.2V6256V(FM-l4D)2-257V 劔劔
20ーlLLF400V./- 剪 噸ﾒﾓ 3 茶● TP赤 ≡糧 3 2 9 7 Sﾒ fﾒ 7R I? ( 7R 鰐 信
僊STR-12

⊂o

H 56lPl57V30kn 劔 59V

iL7lG> 劔 6 88986ﾈ8ｲ ゅ b
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I(6H6∩) 劔剴 ﾈ ﾒ

LEDl2knl/4WpT-T50PMC-lOIBHW
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-､⊂⊃ ､ILO

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9G2 3A22DV 劔コ_ ⊂⊃ ⊂⊃ ﾈ6 ｸ6ﾂ ル ﾂ

ヤソロ

4(68Q5)AC.0.V.DOV250V.6!.ok'n.,2W

AeKD.,D2=S_CSsTo5KG.D3=UF.007;30;6ND63p幸描霊室書至宝
SCS105KG R･指定なき抵抗はIW型

[図8] EL84クロスシャントプッシュプルアンプの回路図

88 MJ
 ユニティカップルドEL84CSPPパワーアンプ

●
● ﾂ● ﾂ
ほ鳩欄儲濁繊  卜  真がか せ

L.]lHJ

10      100       lk l0k look

周波数〔Hz〕

[図13]周波数特性(OdB-0.5W)

001           01

入力電圧〔 V〕 □10OHz olkHz ●10kHz 劔

[図12]入出力特性(8【つ出九1kHz)

岩室.間k芸三.
を ⅣGす l･じ し

ロ■-

ool C･1      1      10

周波数〔Hz〕 出力〔W〕

[図14]タンビングファクター特性 [図15] 100Hz, 1kH乙10kHzの歪率特性

(1kHzと10kHzでは400Hzローカットフィルターを使用)

のは,やはり12Wになってから ます.しかし,本棟はトランス結 特性や歪率における高域の特性に

成 でした 残留ハムは,人力ポリュ 合である上にオーバーオール帰還 も影響していると考えられます.
-ムを絞りきった状態で右チャン を使っていないので,帯域が狭め 100Hz, 1kHz, 10kHzの歪率を
で
I L)
ネルは0.79mV,左チャンネルは なのは仕方ないのでしょう.後述 測定しました(図15).ここで気
く 0.75mVでした のように,音楽を聴いている上で になるのは.各周波数のカープ
る 周波数特性を図13に示しま は何も問題はないのですが=- が平行になっているにしても数
す.帯域悔(-1dB)は20Hz∼ ON/OFF法で測定したダンピ 値が大きく違うことです.たと
15kHzなので 必要な帯域は確 ングファクター(DF)は, 10Hz えば出力0.1Wのとき, 1kHzで
保されているとはいえ,お世辞に ∼5kHzの低域から中城で4.4と は0.1%なのに, 100Hzでは0.27

も広いとは言えません いっぼう, 一定です(図14), 10kHz以上で %, 10kHzでは0.6%と言った具

これまでに発表されたCSPPアン は, DFが次第に小さくなってい 合です 歪みの内容を調べるため
プは,周波数特性や歪率といった ます.これは,高域でバイファ に, 1kHzと10kHzで出力2Wの
物理拷性は素晴らしいデータを示 イラー巻き出力トランスの巻線間 ときの高調波成分をFFT分析し
しています.これは,出力段に多 のバランスが崩れることによって てみました(図16).
量の局部負帰還がかかっている上 CSPPの働きが低下してしまうか そこからわかったのは, 2次の
に,かなりのオーバーオール負帰 らでしょう.このことはダンピン 高調波が15dBも違うということ
還がかかっているからと考えられ グファクターだけでなく,周波数 です. 10kHzの歪率が約5倍(14

MJ 2016/12 93
 l 免ﾂ ｮ馮ｹFvﾆｴ
負帰還なしですが,出力段では
l

かなりの局部帰還がかかっている
のでアンプの安定性チェックのた
めに,無負荷時と8E2と0.1/JFが

2次 次 i ′欠
並列のとき, 0.1〟Fのみのときの
10kHz矩形波の応答波形を観測
i 5次

しました(図18).
AuAiR..i≠l 凭r 儼 i止.L,A 價ﾒ ﾄﾄﾃ 5 iL 畔 ｵ ﾆ ⊥㌔上

2k      3k      4k      5k
無負荷ではわずかなオーバーシ
周波数〔Hz〕
ュートが, 0.1〟Fのみの容量負荷
Fl 基本渡lOkHz 剪

ではリンギングが発生しています
』 冓 i 鳴
が,すぐに収束するので問題はあ
.｢ -lヽL

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i 2次 冤 肪 b
りません.
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まとめ
l 【

r< -40
_ユ
l 3次 次

l i 鳴 l 十i

ー60 CSPPアンプの可能性を探る
㌦ R謦 ∃r 亦ｲ 玩 LR.t=" ためにも,トランス結合でEL84
1 0k      20k      30k     40k      50k

周波数(Hz〕 CSPPアンプを製作しました.物
[図16] 1kHz(上)と10kHz (下)歪みの高調波成分(出力2W), 理特性は実用的には十分なもので
10kHzでは2次の高調波が目立っている すが,とても優秀というわけでは
ありません.特に, 10kHzの歪
dB)も大きいのは,この2次高調 になります. 率はlkHzのものと比べて5倍ほ
波で説明がつきます.やはり,也 負荷8E2として100Hz, 1kHz, ど大きく,試聴時にはその影響が
力トランスの巻線間のバランスが 10kHzでの矩形波応答波形を観 大きいのではと危憤していました
高域で崩れるためと考えていま 測した結果を図17に示します. しかし,驚いたことに,歪みの成
す. 100Hz, 10kHzの歪率の悪化 周波数特性が20kHz以上で低下 分の多くが2次高調波だったため
が2次高調波によるものと考えれ しているので, 10kHzの波形は か,実際の試聴の結果は別物でし
ば,歪率の大きさとヒアリングの  鈍っています た
印象が違うことの説明がつくこと さらに,本棟はオーバーオール 試聴に使ったCDは『Double
RB』 (レイ･ブライアント,レイ･
ブラウン) [PHCE-57]と『helen

merrill』 (ヘレン･メリル)

[PHCE-4161]です. Double RB

の1曲目｢Glory Glory｣では.躍

動感に溢れたパワフルなベースと
ピアノを聴くことができました
helen merrillというと,ちょっ

とかすれたヘレン･メリルの声が
哀感を溶ませ,クリフォード･ブ
(b) 8⊂け0 1〟F並列接続
ラウンのトランペットが艶やかな
音で歌っている,そんな印象です
本機は,これまで聴いたCSPP
アンプの印象をひっくり返すもの
(C) 10kHz (C) 01〃Fのみ でした.中城が厚く,パワフルな
[図17コ 方形波応答波形(1V/dlV ) [図18]容量性負荷と無負荷時の 音のアンプ,音でなく音楽を聴く
1 0kHz方形波応答波形(1 V/dlV_) アンプという位置付けでしょうか.

94 MJ